トヨタらの支援で品質管理ロボットのElementary Roboticsが一般商用製品をローンチ

2年の歳月と1700万ドル(約18億3000万円)あまりを投じて、品質管理用のロボットの開発に取り組んでいたロサンゼルスのElementary Roboticsが、ついに商用製品の提供を開始した。

CEOのArye Barnehama(アリエ・バーネハマ)氏によると、同社はすでに自動車産業や消費者向け包装製品、航空宇宙、防衛産業などの分野に、トヨタに代表されるような大企業の初期顧客がいる。現在、バーネハマ氏と彼に協力する労働者たちによるロボット技術は、最初のパイロット段階の6社以外にも、他の企業も幅広く利用できるようになっている。

同社のロボットは、大きな箱に3次元で自由度のあるガントリーシステムを付けたもののようで、縦横方向に動くとともにジンバルにマウントされたカメラが製品を可視化できるようにする。

画像クレジット:Elementary Robotics

ロボットはオブジェクトをスキャンすると、同社と協力している企業が提供した物体の分類と比較され、欠陥と良品をを判断する。

バーネハマ氏が強調するのは、Elementaryのロボットが製造工程における人間の介入や評価行為に代わるものではないことだ。「機械学習は人間と組み合わせた方が常にうまくいく。結局のところ、工場を動かしているのは人間だ。夜間に明かりを消して無人で動いている工場ではない」とバーネハマ氏はいう。

今回の商用化を支えたのは、2019年末に同社が調達した1270万ドル(約13億7000万円)の資金だ。

その際のリード投資家はThreshold Venturesで、すでに同社のパートナーであるMo Islam(モー・イスラム)氏がElementary Roboticsの取締役会にいる。そのラウンドは既存の投資家であるFika VenturesやToyota AI Ventures、Ubiquity Venturesなども参加し、資金は主にElementary Robotics社の研究開発に投じられる。

イスラム氏は「ロボティクスの中でも、製造業で使われるものに昔から関心があった」と語る。イスラム氏がElementary Roboticsに見ているものは、Cognexのような上場している大企業と競合できる企業だ。また、複雑性が少なくてデプロイが簡単なElementaryのハードウェアも、重要なセールスポイントとしてイスラム氏らの投資を確信させた要素のひとつだ。

Elementaryによると、設置から本番稼働までわずか数日で行えるため企業のコスト削減に貢献し、リモートワークもできるため労働者の安全も確保できる。ユーザー企業がElementaryを気に入っているのはこれらの要素だ。

「我々が今日の立ち上げを喜んでいるのもその点だ。パーツやデータのサンプルをもらったら、その日のうちに動かせるようになる。システムから得られるデータが増えるに従って、機械学習の性能も向上する。そのことが顧客にわかってもらえるのは、稼働開始から1週間後ぐらいだ」とバーネハマ氏はいう。

画像クレジット:Elementary Robotics

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

MIT製のルンバ似ロボットがボストンの食料倉庫で新型コロナを紫外線で消毒

MIT(マサチューセッツ工科大学)のCSAIL(コンピュータ科学とAIラボ)は研究プロジェクトの1つを利用してグレーターボストンフードバンク(GBFB)の倉庫の消毒サービスを提供し始めた。GBFBは食料配給のチャリティ団体で、MITは新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を抑制することにより同団体が活動を継続できるよう支援する。

CSAILがデザインし、Ava Roboticsと共同製作したロボットシステムは、新型コロナウイルスが付着した可能性がある物体表面を消毒するのと同時に、空気中に感染性のあるウイルスのエアロゾルが浮遊している場合にも一掃する効果があるという。

CSAILが提供するのは高度な消毒殺菌システムだが、家庭用掃除ロボットのルンバにやや似ている。強力な紫外線を利用して完全自動で施設の消毒を行う。人間の操作者を必要としないロボットであることがキーポイントだという。物体の表面や空気中のエアロゾルのウイルスを消毒できるレベルの紫外線は人体に有害なので人間が操作することができないからだ。

設計チームはAvaのテレプレゼンスロボットを利用し、遠隔地にいるロボットの操作者を表示するディスプレイ部分を取り外し、上の写真のように紫外線ランプのアレイに置き換えた。カメラとセンサーによってロボットは置かれた空間をマッピングする。ロボットは指定されたポイントをナビゲートしながらエリア内を消毒していくが、どの部分の消毒を済ませたかを記憶できるという。このシステムでは人間のスタッフが通常作業する場所を指定することで、優先的に消毒するゾーンを設定できる。

このシステムは移動経路の再設定にも柔軟に対応できる。GBFB倉庫で消毒が必要なエリアは食品の在庫状態によって常に変化するためロボットの巡回ルートは頻繁に変更が必要だ。開発チームは、将来はさらに高機能なテレプレゼンスロボットを利用し、多様なセンサーによって人間の作業員の動作や在庫状況を把握してどの部分が消毒が必要であるか優先度を自動的に判断して動作できるようにしていきたいと考えている。しかし当面はそのような調整は人間が行う。

食料供給を必要とする人々に食品を届けるGBFBは、新型コロナウイルスのパンデミックに際して極めて優先度の高い活動であるため、CSAILはまずここでの利用に焦点を当てている。ただしCSAILの研究者は今後この種のロボットシステムが食品企業、学校、航空機など清潔を保ち頻繁な消毒を必要とする複雑な空間で広く利用されるようになると考えている。

画像:Alyssa Pierson – MIT CSAIL

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ロボット系スタートアップが成功するには何が必要か

編集部注:本稿を執筆したRajat Bhageria氏は、Chef RoboticsのCEO兼、Prototype Capitalのマネージングパートナーである。


いたるところでロボットが活躍する時代が到来する―われわれはかつて、こう約束されていた。自動車を自在に運転できるロボットから、食器洗い、運送、料理、実験作業、法律文書の作成、芝刈り、帳簿の記帳、家の掃除まで、あらゆる作業を行える完全自律型ロボットが活躍するときが来る、と。

しかし現実には、ターミネーターやウォーリー、HAL 9000、R2-D2のようなロボットは存在しない。せいぜい、クリックする気にもならない広告が自動的に選別されてFacebook(フェイスブック)に表示されたり、夜更かしして鑑賞するほどの価値もないおすすめ映画がNetflix(ネットフリックス)で次々に表示されたり、iRobot(アイロボット)のロボット掃除機Roomba(ルンバ)が部屋を掃除したりする程度だ。

一体、どこで間違ってしまったのか。あの夢のロボットたちは今、どこにいるのだろう。

自らロボット開発企業を創業し(現在の社名はChef Robotics(シェフ・ロボティクス)、食品ロボット業界のステルス企業である)、Prototype Capital(プロトタイプ・キャピタル)というベンチャーキャピタルファンドを立ち上げて多くのロボット/AI関連企業に投資してきた筆者は、これまでずっとこの質問の答えを見つけようと、調査や考察を続けてきた。この記事では、その過程で学んできたことをまとめてみたい。

現状

まず第一に、ロボットは決して新しいものではない。実は、産業用の6自由度多関節型(6つのモーターが直列接続されている)ロボットアームが開発されたのは1973年頃のことで、今でも数十万台が稼働している。ただ、現在もその頃から何も変わることなく、厳密に管理されたファクトリーオートメーション環境で同じ作業を延々と繰り返しているというだけのことだ。このようなファクトリーオートメーション(FA)ロボットによって、FANUC(ファナック)、KUKA(クーカ)、ABB、Foxconn(フォックスコン)といった数十億ドル企業が多数誕生した(そう、これらの企業は自前でロボットを製造している)。どの自動車製造工場でも数百台(Tesla(テスラ)の場合、数千台)は動いている。FAロボットは本当によく働く。車一台分の大重量も持ち上げることができるし、ミリ単位の高精度な作業もこなせる。

もう少し全般的なことをいうと、現在、産業オートメーションの世界は完全成熟期に入っている。いわゆる「システムインテグレータ」が幾百社も存在しており、「(他に用途がない)極めて限定的な動作を数百万回実行するオートメーションマシンが欲しい。それができるシステムを作ってくれ」と頼めば、システムインテグレータは、いくらでも対応してくれる。Coca-Cola(コカ・コーラ)のボトル充填、Black & Decker(ブラック・アンド・デッカー)のドリル製造、Proctor & Gamble(プロクター・アンド・ギャンブル)のシャンプー製造など、一般的な製品の大半はこのような方法で製造されている。費用は100万ドル(約1億円)で完成まで1年待ちなんていう場合あるが、システムインテグレータに頼めば、ほとんどどんなシステムでも作ってくれる。このようなシステムの問題は、その大半がいわゆる「ハードオートメーション」であるという点だ。つまり、これらは電子機械工学システムであり、設計およびプログラムで指定されたとおりのインプットがあれば、寸分違わず動作する。しかし、例えばコカ・コーラの2リットルボトルを500ミリリットルボトル用の充填機に入れると、システムはたちまちどうしてよいかわからなくなり、正常に作動しなくなる。

もう1つ、多くの生産ロボットが稼働している分野がある(ただし、レコメンダーシステム、メールのスパム検出プログラム、写真アプリ用の対象認識システム、チャットボット、音声アシスタントといった、純粋にソフトウェアのみのAIエージェントは除く)。手術支援ロボットの分野だ。この分野の最大手企業の1つであるIntuitive Surgical(イントゥイティブ・サージカル、時価総額660億ドル(約7兆円))は、すでに約5000台の遠隔操作ロボットを製造設置した実績を持つ。ただし、これらのロボットは医師によって文字通り「遠隔制御」されるものであり、自律的に動作することはほとんどない。しかし、病院での死因のうち40%以上が医師によるミスに関連していることを憂慮して追加費用を支払ってでも手術支援ロボットによる手術を受ける患者が増えている。また、病院側もそのようなロボットを大量に導入しており、Verb Surgical(ヴァーブ・サージカル)、Johnson & Johnson(ジョンソン・アンド・ジョンソン)、Auris Health(オーリス・ヘルス)、Mako Robotics(メイコー・ロボティクス)など、この分野の大手企業がその流れに乗っている。

ファクトリーオートメーションロボットと手術支援ロボットの共通点として気づくのは、どちらも細部に至るまで管理および制御された環境で動作するという点だ。ファクトリーロボットは、実際には「考えている」のではなく、同じ動作を延々と繰り返しているだけだ。手術支援ロボットの場合、ほとんどすべての知覚、思考、および制御は人間のオペレータ(つまり医師)によって行われている。しかし、ファクトリーオートメーションロボットに自分で考えさせたり、手術支援ロボットに人間からの指示なしで判断させたりすると、システムはたちまち機能不全に陥る。

ロボットが増えない理由

ひとつはっきりさせておきたいのは、日常生活、つまりまったく制御されていない環境で動くロボットが今の世界にはまだ出現していない、という点である。日常の世界で動くロボットが存在しないのはなぜなのか。ロボットが活躍するディストピア的な未来の実現を阻止している最も大きな要因は何だろうか。ハードウェア、ソフトウェア、インテリジェンス、経済的な要因、人とロボットのインタラクションなど、さまざまな問題が考えられる。

この質問に答えるには、ロボットとは一体何なのかを理解しておくことが重要だ。文献によると、ロボットとは次の4つを実行するエージェントである。

  • 知覚する:何らかのセンサー(カメラ、LiDAR(光検出と測距)、レーダー、IMU(慣性計測装置)、温度センサー、光センサー、圧力センサーなど)を使って世界を知覚する。
  • 考える:センサーのデータに基づいて判断を下す。ここで登場するのが「機械学習」だ。
  • 行動する:判断に基づいて作動し、自分の周りの物理世界に変更を加える。
  • 通信する:自分の周りにいる他者と通信する(この部分はごく最近、モデルに追加された)。

この50年の間に、どの領域でも劇的な進歩が見られた。

  • 知覚する:カメラやその他のセンサー(LiDAR、IMU、レーダー、GPSなど)は劇的に価格が下落している。
  • 考える:Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス)やGoogle Cloud Platform(グーグル・クラウド・プラットフォーム)などのクラウドコンピューティングにより、ソフトウェアを驚くほど安く構築できるようになった。しかも、こうしたクラウドコンピューティングサービスは従量課金制で利用できる。ゲーム用のグラフィックスカードに使用されていたGPU(NVIDIA製のものなど)が、機械学習アプリケーションに最適な並列処理の実行に利用されるようになった(今は、クラウド上でホスティングされているGPUもある)。旧来のパーセプトロン上にディープニューラルネットワークなどのアルゴリズムを構築することで、物体の認識や自然言語の理解だけでなく、新しいコンテンツの作成も可能となった。
  • 行動する:この領域がおそらく最も成熟していると思われる。ロボットの世界を大きく2つの分野、つまり、操作ロボット(人間が手を使うときと同じように世界とやり取りするロボット)の分野とモバイルロボット(歩く/動き回るロボット)の分野に分けられるとすると、自動車業界はモバイルロボットハードウェアにおけるほとんどの問題を解決してきたし、産業オートメーションは(物体の体勢は一定であるという条件下における)物体の操作に関する多くの問題を解決してきた。ロボット業界はハードウェアの製造には極めて熟達しており、基本的に何でも実行できるロボットを作るのに必要な基本ハードウェアはそろっている。
  • 通信する:2000年代および2010年代のインターネット革命やモバイル革命により、ユーザーインタラクションの世界は大きく進歩した。あまりにも劇的な進歩だったため、シンプルなUI(ユーザーインターフェイス)やUX(ユーザーエクスペリエンス)を提供していない会社の話など聞く気にもならない。この分野には、Jibo(ジーボ)、Anki(アンキ)、Rethink Robotics(リシンク・ロボティクス)といった今はなき企業が大きく貢献した。

以上からわかるように、純粋に技術的な観点から見ると(経済的側面および人とのインタラクションについては後述する)、知覚や行動は大きなボトルネックにはなっていないようだ。高性能で安価なセンサーは手に入るし、優れたアクチュエーション技術もある(これは産業オートメーションの寄与するところが大きい)。

したがって、問題は主に「考える」部分にある。University of Pennsylvania(ペンシルベニア大学)工学部の学部長でRobotics GRASP Lab(ロボティクス・グラスプ・ラボ)の創業者でもあるVijay Kumar(ビジェイ・クマール)氏によると、日常生活で働くロボットが現れないのは「物理世界が連続的であるのに対して、コンピュータの世界、つまりロボットの知覚と制御は離散的であり、現実世界は極めてあいまいで推測不能だからだ」という。言い換えると、ある操作ロボットがティーカップを持ち上げられるからといって、その同じロボットがワイングラスを持ち上げられるとは限らないということだ。大半の企業が採用している「考える」というパラダイムは現在、機械学習、より具体的にはディープラーニングの考え方に基づいている。このパラダイムの基本的な前提は、従来のコンピューティングにおける「プログラミング」のように何らかの入力を受け取りそれに基づいて出力を吐き出すのではなく、トレーニングデータという形でエージェントに大量の入力と出力の両方を与え、エージェント自体にプログラムを作らせるというものである。われわれが代数の授業で直線の式はy = mx + bであると習ったように、機械学習アルゴリズムにyとxを与えると、そのアルゴリズム自体がmとbを見つけることができる、というのが基本的な考え方だ(もちろん、式はこれよりはるかに複雑だが)。大抵の場合、このアプローチで目的はほぼ達成できる。

しかし、われわれが住むこの世界はとてつもなく予測不能であるため、「こうなったら、これを実行する」というトレーニングデータをいくら大量に与えてもうまくいかない。どれだけ多くのトレーニングデータを与えても、実世界に存在する、ありとあらゆるケースを予測することなどできないからだ。われわれは、自分が何を知らないのかを知らない。したがって、過去にエージェントに発生したことのあるケース、およびこれから発生するであろうすべてのケースについてのトレーニングデータが得られない限り、このディープラーニング型モデルでは完全な自律性を実現することはできない(起こり得るかどうか自分でもわからないことを予測することなどできるはずがない)。知的生命体としての人間は本当の意味で考えることができる。ディープラーニング型のエージェントは考えていない。パターンのマッチングを行っているだけだ。エージェントがそれまでに与えられたことのあるどのパターンにも一致しないケースに行き当たると、そのロボットは異常終了する(自律運転車両なら衝突事故を起こす)。

本当に使えるロボットを増やすために私たちができること

以上の理由から、ディープニューラルネットワークでは完全自律型システムはおそらく実現できないと思われる(OpenAI(オープンAI)などの企業がパブロフの報酬/罰則型学習アプローチを模倣した強化学習アルゴリズムに投資している理由もそこにある)。とはいえ、「完全自律型エージェントを構築するにはどうすればよいか」という質問自体が間違っているとしたら、ロボット系スタートアップは当座どうすればよいのだろうか。

完全自律性を追求しないという考え方を実証している企業がある。自律型の紙文書デジタル化に特化したスタートアップRipcord(リップコード)だ。本社はカリフォルニア州ヘイワードにある。今、企業はデジタル化したい大量の紙文書を抱えている。「大学まで出てホチキスの針を外す仕事をしたい人などいない」と同社のAlex Fielding(アレックス・フィールディング)CEOはいう。このニーズに応えるのがリップコードだ。デジタル化したい大量の文書をリップコードに送ると、ロボットセルがそれらの文書を取り込み、1枚ずつ取り出してはスキャナーに置いてスキャンし、元通りに積み重ねていく。工場でアレックスと話しているときに気づいたのだが、彼は「人間が行う作業を自動化する」という考え方には一度も触れなかった。「リップコードは人の作業効率を40倍にする」というのが同社のうたい文句だ。筆者はそれを実際にこの目で見てきた。リップコードの作業施設では、1人の作業員が4つのロボット作業セルを監視している。筆者の見学中に、超高速で書類の山を1枚ずつ処理していたロボットが、あるページまで処理したところで迷って停止したことがあった。すると、システムを監視していた作業員が見ている画面に、発生した問題を伝える明確な通知が表示された。作業員が10秒ほどで問題を手早く修正すると、ロボットは即座に復帰して次のページの処理を始めた。

「ロボット開発企業を成功させるためにはどうすればよいか」という質問を、「人間が行う作業を自動化するエージェントを作るにはどうすればよいか」ではなく、「人間の作業効率を40倍にすると同時に、人間の知性を利用してあらゆるエッジケースにも対応できるエージェントを作るにはどうすればよいか」という質問に置き換えてみたらどうだろう。人工知能のさらなる進歩を待つ間、当面はこのアプローチがロボット開発企業を成功に導く公式になりそうだ。

このアプローチを実証している企業がもう1つある。Kiwi Robotics(キウイ・ロボティクス)だ。カリフォルニア州バークレーに本社を置くキウイ・ロボティクスは、食品デリバリー用モバイルロボット「Kiwi(キウイ)」を製造している。しかし、CEOのFelipe Chávez(フェリペ・チャヴェス)氏は「当社はAI企業ではない。デリバリー企業だ」という。フェリペはキウイ・ロボティクスを創業したとき、高給取りの機械学習エンジニアを大勢雇うのではなく、ハードウェアプロトタイプを作成し、キウイを遠隔操作するための低レイテンシーソフトウェアを構築した。最初はすべての判断を人間がキウイに代わって行い、いずれは完全自律になるように徐々にアルゴリズムを構築していく、というのがフェリペの作戦だった。現在、キウイ・ロボティクスは(フェリペの出身地である)コロンビアに数十人の遠隔操作員で構成されるチームを置き、10万件を超える配達実績を持つ。1人の操作員が複数のロボットを監視しており、ロボットがほとんどすべての判断を行う。操作員は配達経路を修正するだけだ。対照的に、完全自律型ロボットに投資している競合他社の多くは、1000件の配達を達成するのにも苦戦している。[情報の完全開示:筆者は自ら立ち上げたファンド、プロトタイプ・キャピタルを介してキウイ・ロボティクスに投資している。]

この両社において最も重要な要素は、機械学習アルゴリズムではなく、マンマシンインターフェイスだ。昨今のロボット開発企業に欠けているのはこれではないだろうか。ドローンによる血液配送会社Zipline(ジップライン)の創業者で、ロボット工学の先駆者でもあるKeenan Wyrobek(キーナン・ワイロベック)氏によると、「『人件費削減』という宣伝文句は米国市場のビジネス経営者が使うには効果的だが、私はそういう考え方で失敗したロボット系スタートアップを数え切れないほど見てきた。設計・エンジニアリング担当チームには、システムを使う全ユーザーの生産性を上げることに注力させるべきだ。ロボット自体が優秀かどうかはどうでもよい。ロボットにはユーザー(セットアップ、再構成、トラブルシューティング、保守などの担当者)がいる。ユーザーの生産性のほうが重要だ。ユーザーこそ設計プロセスの中心に据えるべきである。そうでなければ、投資利益を達成するようなロボットを開発することなどできない」。

また、Bright Machines(ブライト・マシーンズ)のCEOでAutodesk(オートデスク)の元共同CEOのAmar Hanspal(アマー・ハンスパル)氏は、「ブライト・マシーンズもオートデスクもそうだったが、ロボット開発企業というのは初めに技術ありきでスタートしてしまい(ロボットは高度な技術でありワクワク感もあるので、技術自体が最終目的になってしまう)、解決しようとしている問題が二の次になる傾向がある。重要なのは解決しようとしている問題を明確にし、続いて、その問題を解決するための優れたUXを構築することである。ロボットは目的を達成するための手段であって目的そのものではない」と説明する。

日常の中で活躍するロボットを増やすために他にできること

ここまでで、ロボットが日常生活の中で活躍するようになると期待されながら、それが一向に実現してこなかった最大の理由の1つは、日常世界が極度に不確かで推測不能であり、ディープラーニングモデルに基づく人工知能でありとあらゆるケースに対応するのは不可能であるため、ということがわかった。したがって、ロボット開発企業が目指すべきなのはおそらく、人件費節約モデルではなく、「人間拡張」モデルだと思われる。Apple(アップル)とAirbnb(エアービアンドビー)がよい例だ。両社ともエンジニアリングではなく人間中心型設計を第一とする考え方を持ち、すばらしいユーザーエクスペリエンスを実現するために投資している。

以下、日常の中で活躍できるロボットを増やすためにできることを他にもいくつか挙げてみたい。

まずは、「製品を作る前に売る」ことだ。シリコンバレーのソフトウェア界では、Eric Ries(エリック・リース)氏の著書「リーン・スタートアップ」によって、「素早くローンチして、製品が市場にフィットするまで検証と学びを高速で繰り返す」という考え方が広まった。この考え方をソフトウェアスタートアップに適用すると、驚くほどうまくいく。しかし、ハードウェアおよびロボットの世界では事情が異なる。工学系の人材が多いスタートアップは創業当初、売ることについてはあまり考えず、エンジニアリングに集中し、とにかくロボットを作ることばかりに注力する。ロボットが完成すると、次は客先に出向いて売ろうとするのだが、顧客には「このロボットでは当社の目的を達成できない」と言われ、ランウェイの短いスタートアップは作り直す余裕がなく、そのまま破綻してしまう。そんなことが何度も繰り返されてきた。ソフトウェアスタートアップであれば、リーン・スタートアップ式のアプローチが機能する。なぜなら、クラウドのおかげでローンチにほとんど費用がかからず、現場で検証と学びを繰り返し、高速でデプロイできるため、シードラウンドでも目標達成まで5~6回は試行錯誤が可能だ。しかし、ハードウェアの世界では、開発に初期費用がかかり、デプロイにも時間が必要で、試作と検証を繰り返すサイクル期間も長いため、目標達成までに試せるのはせいぜい1~2回である。

誤解のないようにはっきりさせておくが、ハードウェアはロボット業界にとって大の得意分野である。しかし、ソフトウェア中心型のシリコンバレーにとってはそうではない(アップルとテスラは明らかな例外だが)。おそらくロボット系スタートアップが破綻する原因の1つは、作る前に売るという考え方が欠如していることだ。典型的な例を1つ挙げよう。Boeing(ボーイング)社は、Pan Am Airlines(パンアメリカン航空)の伝説的創業者Juan Trippe(ファン・トリップ)に機体を売り込む際に、「こちらがBoeing 747です。お気に召しますでしょうか。ダメですか。承知しました。では持ち帰って作り直してきます。…(作り直してきたものを見せて)こちらでいかがでしょうか」などとは言わなかった(つまり「リーン・スタートアップ」式の検証と学びの繰り返しは行わなかった)。その代わり、ボーイング社はパンアメリカン航空が望む機能をすべて装備した機体十数機の前払い注文を取り付けた。これでボーイング社は、最初からパンアメリカン航空の意に沿った機体を作ることができたのだ。言い換えると、ボーイング社は機体を作る前に売っているのである。システムインテグレータも何かを作る前には必ず受注を確定させ、前払い金を支払ってもらう。ハードウェア企業や政府の軍事部門もやはりそうだ。ロボット開発企業も、Bill Gates(ビル・ゲイツ)の先例に倣って、MS-DOSを書く前にMS-DOSをIBMに売るのと同等の戦略を取ればよい。

作る前に売ることには、ユニットエコノミクス(ビジネスの最小単位1個あたりの収益性)が適正かどうかを素早く確認できるという利点がある。ロボット産業は、技術的なリスクだけでなくユニットエコノミクスのリスクも抱える分野の1つだ。制約がある環境下でもすばらしいアイデアを思い付き、試作機を作り、ベンチャーキャピタルから出資を受け、優れたマンマシンインターフェイスを構築したのはよいが、採算が取れずにやはり破綻していった企業は多い。作る前に売ることで、自社の経済状況だけでなく顧客の経済状況も分析して、折り合いを付ける必要がある。作る前に売ろうとして誰も欲しがらない場合は、「そのようなプロダクトは完成したとしても顧客は買ってくれない、だから次のアイデアに進もう」という決断を、極めて低リスクのうちに下せる。

エコノミクスの側面をより全体的に考えると、前払いモデルからRobotics as a Service(サービスとしてのロボティクス、RaaS)モデルにシフトする必要があるだろう。ロボット製品を購入する企業の多くは利益率が非常に低く、たとえ1~2年で投資を回収できるとしても、システムに10万ドル(約1100万円)を超える額を前払いする余裕はない。さらに悪いことに、「すでに機能しているものがある」ときに何かを変えるための行動を起こすには多大のエネルギーが必要であるため、よほど強力なインセンティブがないと購入に踏み切れない。そのため、大抵の顧客はロボットの導入をあきらめ、結果としてロボット開発スタートアップは破綻する。ここで手本にできるのが太陽電池業界の例だ。太陽電池の収益モデルは多くのマイホーム所有者にとって大変説得力のあるものだが、2000年代のかなり長い間、太陽電池の設置台数は低迷していた。なぜだろうか。多くの米国人にとって、太陽電池導入の初期費用は、たとえ数年で採算が取れるとしても負担が大きすぎたためだ。太陽電池業界の転換点は、技術ではなく収益モデルの改革によって訪れた。Solar City(ソーラー・シティ)、Sunrun(サンラン)、Sun Power(サン・パワー)などの企業が、顧客側の初期費用はほぼゼロで太陽電池を設置し、発電された電気の料金をPPA(電力購入契約)に基づいて1キロワット時単位で支払ってもらうという革新的な収益モデルを導入したのだ。同じことはクラウドコンピューティングによるイノベーションにも当てはまる。OracleやSAPを使うために多数のサーバーを自社で購入する代わりに、サーバーを「使った分だけ支払う」(従量課金)モデルを、Salesforce(セールスフォース)などの企業が考案した。ロボット開発企業が成功するには、収益モデルを工夫することが必要である。そうすれば、顧客側の初期費用をほぼゼロに抑えて、使った分だけ支払ってもらうことができる(ロボットの稼働時間分、スキャンした紙の枚数分、洗った皿の枚数分、走行距離分、出荷した積荷のキロ数分、等々)。

作る前に売ることには、ハードウェアを作っている最中でも現場で常にテストできるという利点もある。「デプロイ後に検証と学びを繰り返す」というのは従来、ソフトウェアが持つ利点だった(ただしAppleはMacのハードウェア開発をローンチの5~7年前に開始することが多い)。すでに受注契約が成立しているため、顧客自身もそのプロダクトを機能させることに強い関心を持つことになる。成功事例が非常に多い1つの戦略として、創業初期は顧客にアドバイザー株を提供して、そのプロダクトを経済的にも技術的にも軌道に乗せるために開発側と協力していこうという強いインセンティブを顧客に与えるという方法がある。

しかし、何もかもソフトウェア界の流儀に倣う必要はない。昨今のシリコンバレーでは、VCの大半がハードウェア偏重のロボット系スタートアップへの出資に二の足を踏む傾向がある。彼らは「もっとソフトウェア的なアプローチを取ってもらえれば出資する」と言う。このため、多くのロボット系スタートアップがほぼ100%市販のハードウェアを使い、持てる力のすべてをソフトウェアに注ぎ込もうとする。それでうまくいくロボット導入事例もある。しかし実際には、ハードウェアのエラー発生率はソフトウェアよりもずっと低い。ハードウェアは何千年も前から存在しており、ハードウェアに比べればまだ発生初期であるコンピューティング時代よりも、われわれはその扱いに習熟している。多くの場合、ハードウェアの問題解決能力はソフトウェアよりもずっと高い。例えば、ビンピッキングの例を考えてみよう。現在、数十社のスタートアップが大手VCから数億ドルを調達し、容器から物体を取り出して置くことができる汎用的なビンピッキング機能を実現するためのディープラーニングおよび強化学習システムを開発している。一方、筆者はラスベガスで開催されたPACK Expoで、Soft Robotics(ソフト・ロボティクス)という企業を見つけた。この企業はほぼ完全にハードウェアベースのアプローチでビンピッキング機能を実現している。コンピュータビジョンをまったく使わない新型のグリッパーで、物をつかんで置く動作を見事にこなす(コンピュータビジョン系スタートアップのロボットよりもずっと安定している)。もちろん、ソフトウェアとトレーニングデータで性能向上を図ることは重要なのだが、もっとシンプルで堅牢な解決策があるのに、なぜわざわざ複雑な方法で問題を解決しようとするのだろうか。ハードウェアから逃げるべきではない。ハードウェアの使い方を考え直せばよいだけだ。

一般的に、シリコンバレーのVCは、「10億ドル(約1100億円)の価値が見込めない会社は、経営する価値もなければ、投資する価値もない」という考え方を生み出した。このため、ロボット開発企業の創業者はVCから資金を調達しようと、想定されるあらゆる顧客が使える汎用的な技術を創り出そうとする。その結果、VCを説得して出資を取り付けたとしても、結局1人の顧客も本当に満足させることができない製品ができあがることになる。今でこそ一流と呼ばれる企業も、創業当初は本当に小さな市場で勝負していた。さまざまな側面を持つこの現実世界で汎用的に使えるロボットを、創業初日から作ろうとするのが間違いなのだ。それよりも、最初は1、2社にターゲットを絞り込み、そこだけに注力することが重要だ。その顧客の問題を解決できたら、他の顧客もおそらく同じようなものを求めていることに気づくだろう。ロボット開発企業の場合、創業当初はおそらく、消費者向けまたは企業向けソフトウェアの開発企業ほど短期間で急成長することはないだろう。これには前例がある。実は、Intel(インテル)とパソコンが登場する前の時代には、今のオートメーションシステムインテグレータとよく似たやり方でコンピュータビジネスが行われていた。例えばミサイルの軌道計算など、1つの機能だけに特化した専用コンピュータの開発をエンジニアリング会社に依頼すると、100万ドル(約1億円)の費用と半年ほどの納期で、部屋を占領するくらい巨大なコンピュータが納品されていた。コンピュータ業界も最初は成長が遅くて拡張性もなかった。ロボット業界も最初はそうなるだろう。それでよい。数十億ドルの利益を回収できる可能性は十分に残っている。

成功するロボット系スタートアップを作る方法の最後の点は、消費者向けB2C企業を設立するのではなく、垂直型B2Bのソリューションを売る(つまり、ドリルを売るのではなく、「壁に空けた穴」を売る)ことだ。B2C企業の将来性には限界があった。では、自社の技術が既存の顧客に受け入れてもらえない、あるいは採算が取れないのであれば、自社で開発した技術を自社が顧客になって使えばよいのではないか。結局のところ、自社の技術が他社より優れているのなら自力でも利益を出せるだろうし、それに、環境も管理できるため技術的にも容易になるはずだ。かつて革新的な高頻度取引(コンピュータと独自のアルゴリズムを持つプログラムを用いて毎秒何百回にも及ぶトレードを自動的に行うこと)企業が、自社技術を他のヘッジファンドに売る代わりに自分でヘッジファンドを設立したことがあったが、要はそれと同じ考え方だ。われわれはこれまで、B2Cのロボットレストラン、AIを構築して自動化を図ったエンドツーエンドの法律事務所、ロボットが消費者を接客するカフェなどが失敗した例を見てきた。問題は2つあった。1つは、レストランのようなB2Cビジネスの大半はうまくいかず、スタートアップも大半は破綻するが、両方やるのは、ランウェイが制限されているスタートアップには難易度が高すぎるという点。もう1つは、こうしたブランド店が成功しなかったのは技術が機能しなかったからではなく、その消費者ブランドが弱かったからという点だ。高度な技術製品を作るために必要なチームと消費者ブランドを作るために必要なチームはまったく異なる。よくあるのが、技術は機能していても、ブランドが弱いため、顧客は一度来店して写真くらいは撮るが、リピート率が悪く採算が取れるレベルまでには至らないというケースだ。同じことが教育関連ロボットや「おもちゃ」のロボットにも当てはまる。こうしたロボットは「格好いい」けれど、そのようなロボットを売る会社が安定して継続的に利益を上げた例はない。なぜなら、そのようなロボットは「あれば格好いい」けれど「どうしても必要なもの」ではないからだろう(今回のコロナ禍のような経済的危機が起こると誰もそんな製品は欲しがらない)。

ちょうどAWSが昨今のインターネット企業の成功をサポートするプラットフォームとなってきたように、最近、ロボット開発企業の成功をサポートするプラットフォームが構築されているようだ。これも一見すばらしいアイデアのように思えるが、AWSとは大きく異なる点がある。AWSの場合、プラットフォームが登場するより前にはすでに、すばらしいビジネスを構築し、より優れた製品を開発するためにAWSに料金を支払う余裕のあるソフトウェア企業が数多く存在していた。しかし現在、ロボティクス分野でそのようなB2Bプラットフォームを機能させるには、十分に収益を上げているロボット開発企業の数が明らかに足りない。iPhoneのキラーアプリが豊富にあってはじめてApp Storeというプラットフォームが意味をなすのと同じだ。

間もなく急発展しそうな分野

ロボット開発企業が選択を間違いかねないポイントがこれほど多いと、日常生活でロボットが活躍するようになるまでの道のりはまだ遠い。以下に、今後2~4年ほどの短期間で日常的に見かける機会が今より増えそうなロボットのタイプをいくつか挙げてみたい。

より自律性の高いファクトリーオートメーションロボット。ファクトリーオートメーションの場合、顧客はすでに存在する。システムの自律性をさらに向上させる優れた技術が開発されれば、導入を希望する顧客は大幅に増えるだろう。

半自律型遠隔操作ロボット。手術支援ロボット、テスラのオートパイロット、キウイなどと同じように、一部自律型で、人間を置き換えるのではなく、人間拡張を目標とするロボット開発企業が大幅に増えるだろう。

工場に似た環境で動くマニピュレーション(作業)ロボット。2015年にグーグルが自動運転車に投資したことが大きなきっかけとなって、VC各社が「これからは自動運転だ(driving is driving is driving)」と考えて、自律運転車に数億ドルを投資した。1つの街で1台の車の自律運転を実現できれば、それを広く展開することは極めて容易だろう。現在、自律運転車の開発はちょっとした冬の時代に入っており、次にすべきことについて何かアイデアを持っている企業はほとんどない(現実世界があまりにもランダムで予測不能なため、ディープラーニングでは対応できないことがその主な理由だと考えられる)。一方、後れを取っていたマニピュレーションロボット開発が今、勢いを取り戻しつつある。というのは、自律運転車の開発企業を辞めるエンジニアが増えており、彼らは、もっと近い将来に実用化できるものを探し求めているからだ。マニピュレーションロボットのシステムは細部まで制御された環境で動くことが多く、これから数が増えると思われる(ブライト・マシーンズのMicrofactories(マイクロファクトリーズ)やAMP Robotics(AMPロボティクス)のリサイクル仕分けロボットなど)。

同じように、現在、「クラウドへ移行する」動きが進んでいる。考えてみてほしい。第一次産業革命が起きるまで、織物は家庭で作られていた。しかし、織物の生産を工場で集中的に行えば、スケールメリットを生かせることが発見された。その結果、織物を家庭で作る人はほとんどいなくなった。これを現在の状況に当てはめて、日常のありとあらゆる作業が「クラウド」へと移行した世界を想像してみてほしい。料理、食器洗い、洗濯、衣類の折りたたみなどの家事は、集中ロボット施設を使って代行してくれる人に委託できる。そのような世界なら、ロボットが最も効率よく働ける環境(工場)で、という条件付きではあるが、日常生活の中でロボットが活躍する機会はいくらでもある。

そうなると、人が自宅で行う家事はおそらく掃除くらいになるだろうが、そこにも、部屋の掃除、芝刈り、屋内モール清掃や他のB2B用途、屋外の雪かきなど、掃除ロボットシステムが活躍する機会はいくらでもある。

ロボットの未来にはまだまだ大いに期待できるし、その未来は確かに実現可能なものだ。作る前に売る、早期に低リスクでユニットエコノミクスを健全化する、現場で頻繁にシステムをテストする、早期の顧客にアドバイザー株を供与して作る側と同じインセンティブを与える、汎用的なロボットを作るのではなく特定の顧客の問題を解決するロボットを作る、ロボットを単にソフトウェアとして考えるのではなく、優れたハードウェアとソフトウェアの組み合わせとして考える、垂直型のB2Bアプリケーションを追求する、といった点を実践することが役に立つ。より広い意味では、何でもソフトウェア事業と同じ考え方で対応するのではなく、今こそ問題へのアプローチ方法を一から考え直すべき時期なのかもしれない。

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(翻訳:Dragonfly)

無人カフェロボ「root C」運営が1.7億円を調達

需要予測AIを搭載した無人カフェロボット「root C」を開発するNew Innovationsは6月24日、DEEPCORE、THE SEED CAPITAL、社名非公開の事業会社(関係者によると金融系の大手企業とのこと)および個人投資家を引受先とする第三者割当増資により1.7億円を調達したことを明らかにした。

New Innovationsでは昨年7月にDEEPCOREとTHE SEED CAPITALから7000万円を調達したことを発表しており、今回のラウンドも含めた累計調達額は2.4億円となる。

同社が手がけるroot Cは専用のスマホアプリと連動したカフェロボットだ。アプリから自分の好みのコーヒーをオーダーして決済を済ませておけば、指定して時間にサクッとテイクアウトできるのが特徴。コーヒーの需要を事前に予測して抽出を開始する需要予測AIも搭載する。

昨年8月に大阪・なんば、今年3月には東京・丸の内(新東京ビル)にて実証実験を実施。主にオフィスワーカーがオフィスのデスクでコーヒーを楽しむ際の手段として利用された。

今回の調達はそこで得られたフィードバックなどを基にプロダクトの改良を行うためのものだ。アプリのUI/UXの一新やユーザーにあったコーヒーを提供するためのレコメンデーションエンジンの強化、サブスクリプションモデルの実装などを進めていくという。

New Innovationによると新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあり、直近では人を介さずにサービスを提供できる非対面販売ソリューションとしてのニーズも高まってきているそう。「現在すでに『root C』の設置に関する問い合わせに加えて、店舗の無人化などOMOソリューションについても複数の企業様からの引き合いをいただいています」とのことだった。

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自動野菜収穫ロボのinahoが実証事業・補助金プロジェクト3種類に採択

inaho RaaS

自動野菜収穫ロボット開発のinaho(イナホ)は6月23日、「労働力不足の解消に向けたスマート農業実証」「イノベーション創出強化研究推進事業」「ものづくりスタートアップ・エコシステム構築事業」と3カ月連続でプロジェクトに採択されたと発表した。AIを使った自動野菜収穫ロボットを開発するとともに、RaaS(Robot as a Service)として生産者に「派遣」し、日本の農業が抱える人手不足と経営課題を解決する。

国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構の「労働力不足の解消に向けたスマート農業実証」の事業概要は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う産地の労働力不足に対応し、強い生産基盤を構築するため、スマート農業技術の実証を緊急的に実施するというもの。inahoは、自動収穫ロボットをアスパラガス農家へ導入し、収穫作業の自動化・省力化を通じて労働力不足の解消を図る。

また、同機構の「イノベーション創出強化研究推進事業」の概要は、革新的な技術・商品・サービスを生み出していくイノベーションの創出に向け、「知」の集積と活用の場による研究開発事業の推進を目的に研究を委託するもの。inahoは、平畝(ひらうね)対応の自動野菜収穫ロボットが枠板式高畝栽培システムでも利用可能となるよう画像診断システムの改良などを行う。

経済産業省の「ものづくりスタートアップ・エコシステム構築事業」は、ソフトとハードの融合領域におけるスタートアップ(ディープテック系)のエコシステム構築を目的に、スタートアップが製品開発・量産化設計・試作の実証などを行う費用の一部を補助する。inahoの取り組み内容は、自動野菜収穫ロボットの開発において、安全性・環境耐性・コスト低減の実現に向けた量産化設計・試作としている。

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チトセロボティクスが時給980円のロボット導入・運用サブスクを発表

Chitose Robot Services

チトセロボティクスは6月23日、ロボットによる自動化・省人化の提供を目的に、時給980円の「ロボット労働力」をうたうサブスクリプションサービス「Chitose Robot Services」の提供を7月1日より開始すると発表した。使用済み食器の洗浄業務というモデルケースの場合、使用時間6時間/日程度で月額料金は29万6400円(税別、リース費用含む)。

Chitose Robot Servicesは、ロボットの初期費用や消耗品費用の支払い、各種保険、メンテナンスなどの手続きをパッケージ化した月額定額サービス。制御用ソフトウェアを洗練させるとともに、ハードウェア費用を最小限に抑え、リースやレンタルの枠組みを用意することで、初期導入費用ゼロを実現した。Chitose Robot Services同社ロボットは、特許を保有する独自制御技術「ALGoZa」(アルゴザ)により、現場レイアウトやハンドリングする物品の種類に変更が発生しても、プログラムの再開発なしに自律的に動きを変更可能。

またロボットがより良い労働力となるために、稼働状況や不具合情報をネットワーク経由でリアルタイムで収集し、解析のもと動作速度・認識精度の向上などソフトウェアの自動アップデート機能を無料で提供する。現場にロボット運用のスキルがなくても遠隔メンテナンス機能による支援があるという。

チトセロボティクスは、食品・物流の現場における人材不足・労働生産性が低いという課題に対して、ロボット技術による解決を目指している。現在は、飲食業界の厨房作業・物流倉庫の仕分け作業・工場の複雑な組立作業など人手作業が多く残る現場に対して、ロボット技術による自動化ソリューションを提供している。

倉庫搬送ロボ開発の中国Geek+が約210億円調達

Amazon(アマゾン)のKivaに似た倉庫搬送ロボットを製造する、北京拠点のスタートアップであるGeek+は、米国時間6月18日の木曜日、シリーズCの資金調達ラウンドで2億ドル(約210億円)以上を調達したと発表した。

これにより、5年前に設立された同社がこれまでに調達した資本金の総額は約3億9000万ドル(約420億円)となった。新ラウンドは2回に分けて行われ、2019年夏にはGGV CapitalとD1 Capital、そして今年初めにはV Fundがリードした。他の出資者にはWarburg Pincus、Redview Capital、Vertex Venturesが含まれている。

同社は物流にあわせたロボティクスソリューションの開発、サービスとしてのロボットの収益化モデルの強化、パートナーシップの拡大を今後も進めていくとしている。

Geek+は中国のロボットソリューションプロバイダーとして、世界で1万台以上のロボットを展開しており、20カ国以上の300社の顧客とプロジェクトにサービスを提供している。

先月、Geek+は北米で事業を展開するオーダーフルフィルメント&ディストリビューションセンターシステムインテグレーターであるConveycoとの提携を発表(未訳記事)し、同社の自律型移動ロボット(ARM)を北米大陸で販売すると発表した。この事業を率いるのは、以前にはアマゾンでKivaロボティクスシステムの機械工学を監督した、米国地域担当COOのMark Messina(マーク・メッシーナ)氏だ。

Geek+の野心的な海外進出は、中国のテクノロジー企業のボイコット(米国務省プレスリリース)を求めるトランプ政権からの継続的な圧力の中で起きた。同社の地元では、Geek+はAlibabaSuning(いずれもGeek+のプレスリリース)のような小売大手と密接に連携し、倉庫での人力によるピッカーの代わりを務めている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

クアルコムの新しいロボット開発プラットフォームは5G対応

米国時間6月17日の午前に、Qualcomm(クアルコム)は、そのロボット開発プラットフォームの最新バージョンを発表した。今回同社が発表したのは、昨年発表したRB3から番号を1つスキップしたRpbotics RB5というものだが、最大の特徴は特に5G接続性の提供にあるようだ。

次世代のワイヤレステクノロジーである5Gは、IoT製品やロボット製品などの主要な構成要素と見なされており、幅広いコネクテッドデバイスに新しいレベルの高速ワイヤレスをもたらす。こうしたことから同社がここを懸命に推進しようとしていることは不思議ではない。もちろんシステムは、念の為に4Gもサポートしている。

クアルコムは、サードパーティによるロボット開発の最前線に参入しようとしている、数多くの事業者の1つだ。おそらく同社にとってのライバルの中で、最も注目すべき対象はNvidia(エヌビディア)のIsaacプラットフォームである。しかしクアルコムは、コンポーネントという観点から、接続性、処理能力、AIに関する深い知識と共に、多くのことを確実に行っている。また、すでに新しいプラットフォーム向けに開発を始めているIntel(インテル)、パナソニック、AirMap、SLAMCORE、ROS gatekeepers、Open Roboticsなどの有力なパートナーも多数抱えている。

このシステムは、インテルのRealSense深度カメラやパナソニックのTOF(飛行時間)カメラなど、多くのサードパーティコンポーネントをサポートする予定だ。現在、新しいプラットフォームを採用している早期採用メーカーは20社以上におよび、最初の商用製品は今年の末までにはリリースされる予定だ。

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(翻訳:sako)

ドイツの産業用ロボット向けノーコードプログラミングスタートアップのWandelbotsが約32.2億円を調達

ドイツのドレスデンに拠点を置くWandelbotsは、83Northが主導したシリーズBで3000万ドル(約32億2000万円)を調達した。他にNext47ならびにMicrosoftのM12ベンチャー投資部門も今回の調達に参加している。Wandelbotsは、非プログラマーが産業用ロボットに簡単にタスクを「教える」ことができるようにすることを目指すスタートアップだ。

Wandelbotsは調達資金を利用して、ハンドヘルドのコードフリーデバイスであるTracePenの市場デビューを加速させる予定だ。TracePenを使うことで人間のオペレーターは産業用ロボットが模倣すべき望ましい振る舞いを、すばやく簡単に実演してみせることができる。通常、特定のタスクを実行するようにロボットをプログラミングするためには、目的を達成するための非常に専門的なスキルセットを持つプログラマーが必要なだけでなく、膨大な量のコードを書くことも求められる。これに対してWandelbotsは、ロボットに何をしたいかを示すだけでプログラミングを簡単にできるようにしたいと考えている。そして新しいタスクを実行したり、組立ラインの他の場所に組み込むために再プログラミングする際には、また別の振る舞いを示せば良い。

Wandelbotsがこうしたことを可能にするために開発したソフトウェアは、もともとドレスデン工科大学のコンピュータサイエンス学部で行われていた研究から生まれたものだ。このスタートアップは、2017年のTechCrunch Disrupt Battlefieldコンテストのファイナリストであり(未訳記事)、2018年にはPaua Ventures、EQT Venturesなどが率いたシリーズAラウンドで、680万ドル(約7億3000万円)を調達した。

Wandelbotsにはすでに、Volkswagen(フォルクスワーゲン)、BMW、Infineon(インフィニオン)などの大手企業を含む、複数の著名なクライアントを抱えている。そして米国時間6月17日には、その製品TracePenを初めて一般向けに販売し始める。同社のテクノロジーは、産業用ロボットのプログラミングに、何カ月もの時間とそれに関連するコストを費やしているすべての人たちを救える可能性を秘めている。そして最終的には以前は予算要件から諦めざるを得なかった小規模な企業でも、この種のロボットを実用的に活用できる可能性が生まれるのだ。

関連記事:Wandelbots wants to reinvent the way we program robots(未訳記事)

電子メールでWandelbotsのCEOで共同創業者であるChristian Piechnick(クリスチャン・ピエニック)氏に対して、 Tesla(テスラ)を含む企業たちが、これまで以上に工場を自動化しようとする際に直面する課題を、彼らのプラットフォームは解決することができるのかと質問した。

「自動化に関わる破綻現象は、ロボットによる自動化によって導入された柔軟性のなさ、複雑さ、コストによって引き起こされました」とピエニック氏はメールで返信してきた。「普通人びとは、ロボットの総所有コストの75%がソフトウェア開発によるものであることを意識していません。ロボットによって引き起こされる問題が利益を殺していたのです。これこそがまさに、私たちが取り組んでいる問題です。私たちはメーカーの方々が、これまでにない柔軟性でロボットを使用できるようにし、ロボットの利用コストを大幅に削減します。当社の製品は、ノンプログラマーが簡単にロボットに新しいタスクを教えることを可能にすることで、見つけるのが困難でコストのかかるプログラマーの関与を減らすことができるのです」。

Wandelbotsが今週発表するデバイスならびにコンパニオンプラットフォームであるTracePenは、実際には元からあるビジョンを進化させたものだ。元のビジョンでは、スマートな衣服を使用してリアルタイムで人間の行動を完全にモデル化し、ロボットの指示に変換することに重点を置いている。ピエニック氏によると、TracePenへ向けた会社のピボットは同じ基礎となるソフトウェア技術を採用しているものの、プロセスと操作の面では顧客が既にいる場所により近い場所で使えるようになっており、それでも元のコスト削減と柔軟性という性質を失っていないという。

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私はピエニック氏に、新型コロナウイルス(COVID-19)とそれがWandelbotsのビジネスにどのように影響したかについて質問した。それに対する彼の答えは、それが自動化への需要を押し上げ、その自動化に役立つ効率性への需要を様々な目立つ形で押し上げているというものだった。

「新型コロナウイルスは、様々な形でグローバルな製造業の考え方に影響を与えてきました」と彼は書いている。「まず、グローバルに分散したサプライチェーンのリスクを軽減するために、リショアリング(海外に出した拠点を国内に呼び戻すこと)を行なうという大きな傾向があります。ボリュームを拡大し、品質を確保し、コストを削減するためには、先進国にとって自動化は当然の結果です。私たちは、ほぼ即座にROIを実現できる技術と、非常に短い市場投入時間によって、時流に乗ることができています。さらには、人間の労働者への依存と職場の制約(例えば労働者間の距離)が、自動化の需要を途方もなく増大させているのです」。

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(翻訳:sako)

未来の惑星探査の鍵を握る群で活動する自律型昆虫ロボット

自動車ほどの大きさの火星探査六輪ロボットローバーの打ち上げが準備されている一方、将来の惑星探査と科学ミッションには、もっと小さなハードウェアでまかなえるようになる可能性がある。例えば、それぞれが自律的に協調行動ができる昆虫サイズのロボットの群が考えられる。

群で活動する昆虫型ロボットは、いくつもの機関や企業で開発が進められているが、カリフォルニア州立大学ノースリッジ校(CSUN)は、先日、主に地球外で使用するだけでなく、地球上の採鉱、工業、捜索救助などにも使える自律型ロボット群の開発に米国防省から巨額の助成金を受け取った(CSUNプレスリリース)。

53万9000ドル(約5800万円)というこの助成金は、CSUNのNhut Ho(ヌハット・ホー)機械工学科教授に贈られたものだ。彼はNASAのSTEAHMのためのAutonomy Research Center(自律研究センター)のディレクターも務めている。ちなみにSTEAHMとはScience(科学)、 Technology(テクノロジー)、Entrepreneurship(起業家精神)、Arts(アート)、Mathematics(数学)、Humanities academics(人文科学)の頭文字を取った言葉だ。この研究の目的は、未知の過酷な環境に投下すれば、基本的に外部からの指示を得ることなく、与えられた使命の達成方法を自分で考えて行動できるロボットの群を作ることにある。

最終的にこうしたロボット群は、規模の異なる他の群に自らを組み入れて目前の難関にさまざまな角度から取り組んだり、群の仲間を失うような苦境でも冗長性や役割の変更などを活かして対処するなど、困難に立ち向かいながら複雑な問題を解決できるようになる。

このシステムは、NASA Jet Propulsion Laboratory(ジェット推進研究所、JPL)と共同で、地下環境の自律探検と地図作りの最適な方法を探るというテストが予定されている。

そもそもこのような方式が考え出された理由には、1台の大きなローバーよりも、小さなローバーの群のほうが潜在的利便性がずっと高いという点がある。ごく基本的なレベルでは、本来的に冗長であることだ。もし、NASAのPerseverance(パーセベランス)のようなローバーが致命的エラーに見舞われば、実質的にミッションはそこで終わる。しかし、群の場合はメンバーがいつくか失われたところで、ミッション全体には影響しない。また群は自ら小グループを組織して、広い範囲にすばやく展開し、大型のローバーなら1つずつ順番に対処するところを、複数の仕事を並行してこなすことができる。

CSUNのこのプロジェクトは前述のJPLの他にも、Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)、Intel(インテル)、Clearpath Robotics(クリアパス・ロボティクス)、Telerob(テレロブ)、Velodyne(ベロダイン)、Silvus Technologies(シルバス・テクノロジーズ)をパートナーに迎えて進められている。昆虫型ロボットが実際に火星の赤い土を踏むまでには、まだ長い時間がかかるが、これは間違いなく、大きくて底の深い財布を握る公的資金源の興味と支援が得られた強力な証拠だろう。

画像クレジット:Julian Stratenschulte / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

工場内で材料を運搬する自動走行ロボ開発のOTTO Motorsが32億円調達

Clearpath Robotics(クリアパス・ロボティクス)のCEOで共同創業者のMatthew Rendall(マシュー・レンドール)氏は工場内にある「何マイル」もの道路を目にすると、自動走行車両がそこを行き来する様子を思い描く。

そして過去5年間、同社は産業部門のOTTO Motorsを通じゴールに向かって歩を進めてきた。2015年に立ち上げられたOTTO Motors(オットー・モーターズ)は自動走行のモバイルロボットプラットフォームを工場に届けるために多くの企業と契約した。この中にはGE(ゼネラル・モーターズ)やトヨタ、Nestlé(ネスレ)、Berry Global(ベリー・グローバル)が含まれる。

OTTO Motorsは新たに調達した2900万ドル(約32億円)を事業拡大にあてる。シリーズCラウンドはKensington Private Equity Fundがリードし、Bank of Montreal Capital Partners、カナダ輸出開発公社 (EDC)そして既存投資家からiNovia CapitalとRRE Venturesが参加した。これまでにOTTO Motorsは計8300万ドル(約91億円)を調達した。

OTTO Motorsの自動走行モバイルロボットプラットフォーム(AMRs)は倉庫や工場内で材料運搬に使用される。レンドール氏によると、これらのロボットはかつては贅沢なものとみられていたが、今では必需品となっている。新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックという要因、そして企業は安全に業務を進める必要があることから、今後ロボット活用は進むばかりだとレンドール氏は確信している。

ロボット、より広い意味ではオートメーションはしばしば製造分野においてはジョブキラー(職を奪う存在)と捉えられている。しかしAMRsは現在誰もやっていない業務を担当し、人間がより高度で賃金の高い業務を担えるようにする、とレンドール氏は主張する。

「オペレーションがまだピークに達していない、最大限の処理能力での行われていないという状況が増えているが、それは業務を担う人材を見つけられないからだ」とレンドール氏は最近のインタビューで述べている。同社の顧客の1社が、人材を確保できないために施設の一部を完全に閉鎖したという例も引き合いに出した。

工場は往々にして小さな町、あるいはコミュニティが点在し労働力に限界があるところに立地する。近くにAmazonが施設を設置すると、労働力不足は一層ひどくなる。

「既存の製造施設や倉庫から有能な人材を引き抜く真空管のようなものがある」とレンドール氏は語った。

Deloitte and Manufacturing Instituteが実施した2018年の調査では、2018年から2028年にかけて米国ではスキルギャップにより240万のポジションが埋まらないと予測している。スキルギャップはOTTO Motorsが現在、フォーカスしている日本などを含め、他国でも見られるようになっている。日本では若年者層よりも高齢者層の人口の方が多い。労働力は増える一方だと見られていた中国ですら、今や国家ロボット戦略を持っているとレンドール氏は指摘した。

OTTO Motorsは、製造メーカーが価値の低い労働をロボットにアウトソースできるAMRsを開発した。「誰かにお金を払ってやってもらう仕事の中で最も価値が低いものは、ポイントAからポイントBに歩くというものだ。人材が確保できている場合、フォーカスして欲しいことは自動車組み立てのようにポイントAやポイントBに止まって行う作業だ。パーツを持って倉庫内を歩くのはマシーンにアウトソースできることだ」。

OTTO Motorsの当初の顧客ベースは自動車産業と運輸産業だった。今ではOEM10社のうち6社と協業している。しかし医療デバイスやヘルスケアの部門でも同様にうまくいっている、とレンドール氏は述べた。

同氏によると、新型コロナ禍で食料、飲料、医療デバイス産業の事業者が新型コロナのリスクを低減しようとしているために需要が拡大しているという。

画像クレジット:OTTO Motors

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(翻訳:Mizoguchi

神戸市が遠隔操作ロボを使った新型コロナPCR検査や非接触看護ロボの開発・社会実装支援へ

神戸市は6月3日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、医師が遠隔操作することでPCR検査を可能にするロボットや、医師や看護師、看護助手が新型コロナウイルスの感染者を非接触で看護可能にするロボットの開発・社会実装支援を進めていくことを発表した。

パートナー企業は、医療用ロボットの開発などを手掛ける2014年に設立で神戸市拠点のメディカロイド。同社は、川崎重工業とシスメックスがそれぞれ50%出資する合弁会社だ。今回の提携により、神戸市と公益法人の神戸医療産業都市推進機構が、メディカロイドに対して助言や協力のほか、助成金などで支援する予定だ。

現在のPCR検査は、医師が対面で患者の鼻に綿棒を入れて検体を採取する方法が一般的だ。そのため、採取時に患者の咳やくしゃみによる飛沫感染を防ぐため、一般の患者とは隔離された場所を設けるのはもちろん、医師や看護師は防護服を着用する必要があった。この検体採取を医師が遠隔操作するロボットを使うことで、医師や看護師の感染リスクを大幅に下げられる。

医師側でロボットを操作する訓練は必要だが、検体採取用の綿棒が患者の鼻腔のどこまで奥に挿入されているのか、鼻腔内の鼻水や鼻くそなどの障害物で綿棒に負荷がかかっているかなどをリアルタイムでモニターできるため、対面での検体採取と変わらないレベルの作業が可能とのこと。

もちろん、採取した検体を使った実際のPCR検査にもロボットを導入する。具体的には、検体のウイルス不活性処理、自動核酸抽出装置を使った核酸抽出、リアルタイムCR装置による遺伝子増幅などを経て結果判定となる。これらの工程にロボットを導入することでを24時間フル稼働でのPCR検査が可能になるという。現在神戸市では1日あたり、行政検査で最大242検体、病院・医師会で最大220検体の採取が可能とのことだが、ロボットを併用した24時間のPCR検査が実現すれば検査スピードの大幅な向上が期待できる。通常、保健所の労働時間は8時間程度なので単純計算で3倍の検査スピードになる。そして、新型コロナウイルスに感染した患者のケアについては移動型ロボットを導入する、具体的には食事や薬の搬送、検温などのバイタル測定を担当。検体採取時と同様に、ロボットが運搬を担うことで看護師や看護助手などの感染リスクを大幅に減らすことができる。なお、この看護ロボットには、産業用移動ロボットの「TRanbo」が使用される予定だ。

看護ロボットはクラウドで医師や看護師、感染症指定医療機関、PCRセンターなどと繋がっているので、感染患者の受け入れなどで迅速な連携も可能になりそうだ。

メディカロイドは、今後は神戸市や神戸市内の医療機関と実証実験などを進め、今年10月を目標に一般の医療機関への導入を進めたいとのこと。ただし、検体採取など医療行為と見なされるロボットの操作については関係各省庁の許認可が必要のなので、一部の工程のロボット化については10月以降にずれ込むと考えられる。

運搬ロボ開発のLocus Roboticsが約43億円を資金調達、DHLが本格導入、UPSが試験導入

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックは、多くの企業が前進する手段として自動化に目を向ける中、ロボット工学にも大きな影響を与えるだろう。大規模な自動化は避けられないと以前から考えられてきたが、企業が人間的な要素を排除するプロセスを模索する中で、このパンデミックはその動きを加速させようとしている。

Locus Roboticsはこれまで、資金調達で大きな問題を抱えていなかった。米国マサチューセッツ州を拠点とするこのスタートアップは、昨年4月に2600万ドル(約28億円)を調達(未訳記事)しており、今回のシリーズDラウンドで4000万ドル(約43億円)を調達した。これで総額は1億500万ドル(約110億円)以上になる。Zebra Technologiesが主導した今回の最新ラウンドは、Locus Roboticsがヨーロッパ本社の立ち上げで事業を拡大しようとしている同社にとっては、非常に重要なものとなっている。

「今回の資金調達により、Locusはグローバル市場への展開を加速させることが可能になる」とCEOのRick Faulk(リック・フォーク)氏はリリースの中で述べている。「世界中の小売業、産業、ヘルスケア、3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)事業が新型コロナウイルスのパンデミックを乗り切る上でのサポートを強固にし、より立場を強化することを保証する」。

Locusは、米国ではビンを運搬するロボットですでに好評を得ている。2月には、同社のロボットが1億ユニットのピッキングを達成したことが明らかになった。これは、ペンシルバニア州にあるDHLの施設での出来事だ。その翌月、DHLは2020年に同社のロボット1000台を配備することで合意。4月には、UPSが自社施設でLocusロボットを試験的に導入することを発表した。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

巨大ミミズのように穴を掘るGEのソフトロボット

今朝ログインしたときには、巨大なミミズロボットを取材する予定は入っていなかった。しかし、それは今目の前にあり、私はそれのためにここにいる。問題のロボットはGE Researchのチームによって設計され、DARPAのUnderminer(掘削者)プログラムの一部として、250万ドル(約2億7000万円)の賞金を獲得した。このプログラムは、軍事環境での迅速なトンネル掘削を促進するために創設された。

ロボット工学における近年の流行にならって、GEチームはタスクを遂行するために、生物学的インスピレーションへと目を向けた。彼らが生み出したのは、セグメント化された巨大なソフトロボットで、巨大な機械式ミミズのように徐々に進んで行く。

ロボットの筋肉は、無脊椎動物に見られる、流体で満たされた構造の「水力学的骨格」(hydrostatic skeleton)を模倣してデザインされている。このロボットの場合、前進する際に大きな役割を果たすのがその人工筋肉であり、さまざまな地下環境に適応できるようにデザインされている。このデザインは、狭い空間に押し入る能力を伴いながら、さまざまな動作の自由を提供する。

成功へのもう1つの鍵は、地下で自律的に機能できる適切なセンサーを組み込むことだ。なにしろそのような状況下では、ロボットをリモートコントロールすることは難しい可能性があるからだ。

「これらのトンネルシステムは地下に置かれているため、ロボットが適切な場所で移動してトンネルを掘ることができるように、自律的に動きセンシングできる機能を組み込む必要があります」と、プロジェクトリーダーのDeepak Trivedi(ディーパック・トリべディ)氏はリリースで述べている。「幸いなことに、私たちは、ラボ全体から制御、AI、センシングの専門家たちを引き込んで、これらの新機能を統合することができます」。

プロジェクトは有望だが、完成はほど遠い。最終目標は、500メートルのトンネルを秒速10cmで掘り進むことができるロボットだ。なおGEのニューヨーク州ニスカユナで撮影された上記のラボビデオは、4倍に高速化されている。

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(翻訳:sako)

北京拠点のロボット企業のGeek+がConveycoと提携、北米各地の倉庫で中国製自律移動ロボが動き回る

中国製ロボットがまもなく、北米各地の倉庫のフロアを動き回る姿が見られるようになるだろう。豊富な資金力を持ち、工場や倉庫、サプライチェーンの物流自動化に特化した中国ロボット企業のGeek+は、北米全域で事業を展開している注文処理・配送センターシステムインテグレータであるConveyco(コンベイコ)と戦略的パートナーシップを結び、北米での事業拡大を強化する。

新型コロナウイルスのパンデミックにより世界中の物流サービスが人手不足に直面し、一方ではeコマース販売の増加に対応し、感染予防に着手する中で、倉庫内の反復作業を無人ロボットに置き換えるという急増した需要において、Geek+は大きなチャンスをつかんでいる

今回の提携により、Geek+の自律移動ロボット(ARM)がConveycoの顧客となる北米全域の小売、eコマース、オムニチャンネル、物流分野に提供される。両社は声明の中で、今回の提携はGeek+の海外販売を大幅に促進すると同時に、Conveycoが「さまざまな業界における倉庫や物流業務の効率化、柔軟性の向上、コスト削減を実現する」のに役立つだろうと述べている。

北京を拠点とするGeek+はこれまでに世界中で1万台のロボットを運用し、中国やドイツ、イギリス、アメリカ、日本、香港、シンガポールにオフィスを構え、約800人の従業員を抱えている。同社のクライアントにはNike(ナイキ)、Decathlon(デカスロン)、Walmart(ウォルマート)、Dell(デル)などがある。

Crunchbaseが収集した公開データによると、Geek+は2015年の設立以来、5回の資金調達ラウンドで約3億9000万ドル(約420億円)を調達しており、その中には2018年におこなわれた1億5000万ドル(約160億円)という同社史上最大の資金調達ラウンド(未訳)含まれる。投資家にはWarburg PincusやVertex Ventures、GGV Capitalなどが名を連ねている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

ただいま募集中:自律ロボットオペレーター

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)は経済に急ブレーキをかけた、しかし新しく生まれたある仕事は、進み続けているどころか、その速度をさらに増している。

テレオペレーション(より正確に言うなら、自律配送ロボットのテレオペレーション)は、まだ商用化プールの奥深くに潜り込めていないこの業界内のニッチな仕事である。しかし、人間が自律ロボットをリモートで監視および誘導するこの仕事が、過去数か月間の非接触型配送へ需要の高まりとともに成長を遂げてきている。

そして、図らずもCOVID-19が労働力供給源を拡大したようだ ―― 少なくともPostmates(ポストメイツ)にとっては。

オンデマンド配送のスタートアップPostmatesは昨年、自動運転車テレオペレーション企業のPhantom Auto(ファントム・オート)と提携した。Postmatesは、Phantom Autoのソフトウェア開発キットを使用して、Serve(サーブ)という名で知られるクーラーボックス型の自律配送ロボットを、リモートで監視、誘導、または操作する。

このパートナーシップは、Phantom Autoにとっては自動運転ロボットタクシーアプリケーションを超えて、歩道、倉庫、貨物ヤードをターゲットとする物流ビジネスへ多様化しようとする取り組みの一環である。どの分野も現在、自律運用やテレオペレーションが導入されつつある分野だ。

配送ロボットの隆盛

自動運転トラック、ロボットタクシーサービス、ならびに自動運転車技術の他の応用を公道上に展開しようとする「競争」は、COVID-19が登場するずっと以前に鈍化していた。技術者たちが、自動運転車テクノロジーはハンドルを握る運転手がいなくても十分安全であるということを立証するという、予想よりもはるかに困難な課題に深入りするにつれて、実配備の予定はどんどん遅れていった。資本力の乏しい小さなスタートアップの中には方向転換を図ったものもあったが、失敗した企業もあった。

そしてCOVID-19は、1つの例外を除いて開発をさらに遅くした…その例外とは、道路上ではなく、歩道や自転車レーンを走行する自律配送ロボットたちだ。COVID-19が都市、郡、州に在宅命令の発行を促したため、Refraction AI、Starship Technologies、そしてPostmatesなどのスタートアップは、需要が増している。かつては新奇なものであると考えられていた自律型ロボットが、受け入れられ求められるようにさえなったのだ。たとえば、NuroのR2配送ロボットは、COVID-19治療センターに転用されたカリフォルニアの2つのスタジアム周辺へ、医薬品を配送するために使用されている。

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自動配送ロボットの1台を監視しているPostmatesの従業員 写真提供:Postmates

COVID-19が米国に流れ込んだとき、Postmatesの幹部たちは、これは長い試練になるという結論に達した。同社はすでに、エンジニアリングスタッフには在宅勤務を導入していたが、テレオペレーターたちは、まだ会社のオペレーションセンターに通ってきていた。

3月中旬までには、在宅命令がサンフランシスコとロサンゼルスで発令された。どちらの都市も、Postmatesが自律配送ロボットを運用している市場だ。ほどなくPostmatesは行動を起こし、テレオペレーター(彼らの名称に従うならフリートスーパーバイザー)たちを在宅勤務へとシフトした。

「これは2週間や3週間で終わるものではないという認識を、私たちは持っていました」と最近のインタビューで語ったのは、Postmatesの特別プロジェクト担当副社長であるAli Kashani(アリ・カシャニ)氏だ。「私たちは果たせる役割に気付いたのです ―― 実際に何かを成し遂げることができるのです」。

Postmatesは、そのServeロボットの配備を強化する決定を下した、その結果より多くのテレオペレーターが必要になったのだ。こうした自律ロボットオペレーターは、Serveボットが目的地との間を安全に行き来できるようにするために必要とされている。

Phantom Autoのソフトウェアを使用することで、Postmatesのフリートスーパーバイザーたちは、数千キロ離れた場所からロボットを監視することができる。スーパーバイザーは、レストランや受取り手の近くの最初と最後の15フィートでロボットを案内する場合や、混雑した道をロボットが横断するのに助けが必要な場合に介入を行なう。

これらのロボット案内人たちは、いくつかの方法を使って支援を行なう。人間のテレオペレーターは、ロボットが正しい選択をするのを助けるために、OKもしくはNGを伝えるといった形の単純なものを、システムに入力できる。また従業員は、ハンドヘルドのリモートコントローラーを使用して、リアルタイムでロボットの方向を変え、加速、減速することもできる。

オペレーションセンターに人を詰め込む代わりに、Postmatesは技術を従業員の家に持ち込んだ。同社は、Phantom Autoの支援を受けて、自宅のワークステーションをセットアップし、管理者が接続をより効率的にモニターできるように、インターネットをアップグレードし、新しい標準操作手順を開発した。

カシャニ氏によれば、3月中旬に最初の在宅命令が発令された数日後には、Postmatesはフリートスーパーバイザーたちが自宅から働けるようにしたと言う。

COVID-19がなければ、考えれてみれば明らかなこの動きは、決して起きなかったかもしれない。通常の運用状況では、フリートスーパーバイザーたちサンフランシスコとロサンゼルスにあるPostmatesの集中運用センター施設で働いていたのだ。

その仕事が従業員の家に移されたとき、Postmatesはこれまでよりはるかに大きな労働力供給源があることに気が付いた。Postmatesは、自社のオフィスから遠く離れた場所に住む労働者や、自宅からの移動が困難な障害を持つ人々を雇用できるようになったのだ。

3月17日のサンフランシスコでの在宅命令の発令以降、同社はフリートスーパーバイザーの数を30%増やしている。Postmatesは正確な従業員数を発表していない。

カシャニ氏は、ロボット配送への需要が不足したことはないと述べる。「この種のビジネスの制約は、どれだけ多くのロボットを製造して展開できるかだけですよ」 とカシャニは言った。そして、投入されるロボットの数が増えるほど、必要となるフリートスーパーバイザーの数も増えるのだ。

画像クレジット: Ouster

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(翻訳:sako)

ノースカロライナ州立大学が開発した柔らかく曲がる4足歩行ロボは走りと泳ぎでソフトロボの新記録達成

ソフトロボットはいろいろ便利なので、最近は研究と生産の両分野で人気がある。特に重要なのがロボットが果物のような柔らかい物を握る機能への応用だ。

逆にこの分野では、スピードはあまり話題にならない。でも、ノースカロライナ州立大学のチームは、速い動きと柔らかい素材が両立しうることをデモで示した

研究者が設計したのは4足歩行のロボットで、中央部がしなやかに曲がるので馬のギャロップように前進できる。2本の足が同時に前進するのだ。下のビデオで見るように、とてもかわいらしい歩行だ。

開発チームによると、このLEAPと名付けられたロボットは毎秒自分の身長の2.7倍の距離を前進する。この距離は、これまでのソフトロボットの記録の3倍に近い。しかも、ひれを装着すると身長の0.78倍の秒速で泳げる。これまでのソフトロボットの記録は、身長の0.7倍だった。

開発チームは、チータからヒントを得たそうだ。なぜなら、速いロボットを作ろうとすると、参考にするのはチータ以外ありえないからだ。

助教授のJie Yin(ジー・イン)氏がニュースリリースで「チータからヒントを得て、スプリングを動力とする『双安定』な脊椎を持つソフトロボットを作った。双安定(Bistable)とは安定状態が2つあることだ。ソフトなシリコン製のロボットが並行に装着しているチャネルにポンプで空気圧を急速に送り込み、2つの安定状態を素早く切り替える。2つの状態を切り替えるとき大量のエネルギーが放出されるので、ロボットは床や地面に対して力を素早く発揮できる。それによりロボットは、面の上をギャロップで前進でき、足を地面から上げるような効果が生まれる」。

この技術の用途について開発チームの話はまだ曖昧だ。この奇妙で小さなロボットは、現実世界に仕事を見つけられるだろうか。開発チームは目下、捜索や災害救助、製造業などを挙げている。

イン氏は 「今後この技術の実用化については、民間部門と協力して細部を仕上げていきたい」と付け加えた。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Boston Dynamicsの小型4足歩行ロボがシンガポールの公園をパトロール中

Spotを商用化する発表して以来、Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)は建設業からテレカンファレンスまで、さまざまな応用方法を公開した。2020年4月に同社は、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者を遠隔訪問するプラットフォームに興味を持っている地元の病院と提携すると発表した。

世界的なパンデミックが、この優れた技術を持つ4足歩行ロボットの驚くべきイノベーションに、拍車をかけていることがわかった。中でも意外なのは、シンガポールが4足歩行ロボットのSpotを使って公園をパトロールし、市民同士がソーシャルディスタンスを保つよう警告するために使用することだ。このパイロットプログラムは米国時間5月8日から開始され、オフピーク時の時間帯に2週間実施される。

シンガポールのビシャン・アンモキオ・パークでは、遠隔操作でロボットを操作(これもソーシャルディスタンスの一貫)し、2マイル(約3.2km)をパトロールする。そしてSpotからは、ソーシャルディスタンスを保つように促す録音メッセージが再生される。また、集会を監視するためのカメラも搭載されているが、政府は顔情報の追跡や個人情報の収集には使用しないと主張している。

リリースによると「Spotには安全センサーが搭載されており、ルート上の障害物や人を検知する」としている。「衝突を避けるために、1m以内にある物体や人物を検出するアルゴリズムが組み込まれている。テスト期間中、Spotには少なくとも1人の公園職員が同行する」。テストが順調なら、ロボットはピーク時にもパトロールをするようになる。

新型コロナウイルスのパンデミックがテクノロジーの世界にもたらす魅力的な波及効果の1つは、ロボット工学と自動化への関心の高まりだ。新型コロナウイルスがどのように業界の将来を形作るのかについては、TechCurnchのベンチャーキャピタル調査を参照してほしい。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

産業用ロボティクスAIのスタートアップCovariantが約43億円調達

米国カリフォルニア州バークレーを拠点とする創業3年のスタートアップであるCovariantは今週、Index Venturesが率いるシリーズBで4000万ドル(約42億5800万円)を調達したことを発表した。これにより調達総額は6700万ドル(約71億3300万円)になる。カリフォルニア大学バークレー校のPieter Abbeel(ピーター・アビール)教授を共同創業者とする同社は、産業用ロボットに自律性を持たせる研究・開発に専念している。

いまはますます多くの企業が、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックの最中にあって前進するための方法としてロボティクスとオートメーションに着目している。Covariantは1月にステルスを脱し、すでに同社の技術がヨーロッパや北米に実在する工場で使われていると発表した。3月に同社は、産業用ロボットの上位企業ABBとのパートナーシップを発表した。

アビール氏は、今回の投資に関連するニュースリリースで「Covariantを創業したときの目標は、AIを装備したロボットが現実世界で自律的に作業できるようにすることだった。そのマイルストーンに到達した今では、弊社の普遍的なAI技術を新たな用途や、新たな顧客環境、そして新たな業界に拡張していくことに、次の大きな利益機会がある」と語る。

新たな資金はCovariantの人員増と、同社の技術が適用される新たなカテゴリーの探究にあてられる。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

MoxieはiRobotの元CTOが作った技術的に魅力ある幼児向けロボット

今日にいたるまで、Roomba(ルンバ)はホームロボティクスの最も成功した事例の一つだ。これは、iRobot(アイロボット)社が10年にわたる失敗の繰り返しを経て、外見のシンプルさと内面の高度な技術を組み合わせて達成した成功だ。

他のロボットがここまで大きな成功を収めていないのは努力が足りなかったからではない。この分野には将来有望な注目すべき失敗が溢れている。ソーシャルホーム・ロボティクスのゴミ箱に最近追加された作品の目立ったところにAnki(アンキ)やJobo(ジボー)がある。どちらのプロジェクトも興味深く予算も豊富だったが、結局生き残ることができなかった。

関連記事:アップルのWWDCで華々しくデビューしたロボットのAnkiもついに倒産へ

USC(南カリフォルニア大学)のロボティクス教授、Maja Matarić(マヤ・マタリック)氏とiRobotの元CTO(最高技術責任者)、Paolo Pirjanian(パオロ・パージャニアン)氏が2016年にロサンゼルスで設立したEmbodied(エンボディード)は、この分野に参入した最新の会社だ。このスタートアップを支援するのは、Intel Capital(インテル・キャピタル)、Toyota AI Ventures(トヨタ・AIベンチャーズ)、Amazon Alexa Fund(アマゾン・アレクサ・ファンド)、Sony Innovation Fund(ソニー・イノベーション・ファンド)、JAXX Venture Partners(ジャズ・ベンチャー・パートナーズ)、Calibrate Ventures(キャリブレート・ベンチャーズ)、Osage University Partners(オセージ・ユニバーシティー・パートナーズ)、Grishin Robotics(グリシン・ロボティクス)の各社。

Ankiのロボット、Cozmoの歴史にならい、EmbodiedはPixar(ピクサー)社員とあやつり人形師、Jim Henson(ジム・ヘンソン)氏の協力を得て、リアル世界のロボット・キャラクターを具体化した。一目見て、その出来栄えは十分に魅力的だ。

同社はMoxieを紹介するビデオのシリーズを公開し、その驚くほど豊かな表情と自然な体の動きをアピールしている。子供の教育と発達に焦点を当てているEmbodiedは、神経科学者と小児発達の専門家の力も借りてロボットを仕上げ、まもなくベータテストを開始する。

「われわれはテクノロジーを利用するやり方の転換点にいる」と同社CEOのPirjanian氏が声明で語った。「Embodiedでは、人間機械間のやりとりの方法を再考、再発明し、簡単な言葉による指示を超え、次世代コンピューティングを利用して流暢でソーシャルなやり取りのできる新しいレベルの機械を作ろうとしている。Moxieは感情に訴える会話と迫真の表情やボディーランゲージを通じて子供の感情表現を理解し、心理学と神経学を活用して深い絆をつくる」

Moxieは、善意、友情、共感、敬意など毎週異なるテーマに焦点を絞り、子供に合わせて時間と共にコンテンツをパーソナライズしていく。Moxieはこの分野の魅力的な試みと思われるが、まだまだ初期段階にある。ホームロボットの発売に伴う多くの本質的な困難さに加え、1499ドルと価格も法外だ。リスクを承知で挑戦したいなら、Moxicは現在予約受付中で秋に出荷予定だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook