ただいま募集中:自律ロボットオペレーター

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)は経済に急ブレーキをかけた、しかし新しく生まれたある仕事は、進み続けているどころか、その速度をさらに増している。

テレオペレーション(より正確に言うなら、自律配送ロボットのテレオペレーション)は、まだ商用化プールの奥深くに潜り込めていないこの業界内のニッチな仕事である。しかし、人間が自律ロボットをリモートで監視および誘導するこの仕事が、過去数か月間の非接触型配送へ需要の高まりとともに成長を遂げてきている。

そして、図らずもCOVID-19が労働力供給源を拡大したようだ ―― 少なくともPostmates(ポストメイツ)にとっては。

オンデマンド配送のスタートアップPostmatesは昨年、自動運転車テレオペレーション企業のPhantom Auto(ファントム・オート)と提携した。Postmatesは、Phantom Autoのソフトウェア開発キットを使用して、Serve(サーブ)という名で知られるクーラーボックス型の自律配送ロボットを、リモートで監視、誘導、または操作する。

このパートナーシップは、Phantom Autoにとっては自動運転ロボットタクシーアプリケーションを超えて、歩道、倉庫、貨物ヤードをターゲットとする物流ビジネスへ多様化しようとする取り組みの一環である。どの分野も現在、自律運用やテレオペレーションが導入されつつある分野だ。

配送ロボットの隆盛

自動運転トラック、ロボットタクシーサービス、ならびに自動運転車技術の他の応用を公道上に展開しようとする「競争」は、COVID-19が登場するずっと以前に鈍化していた。技術者たちが、自動運転車テクノロジーはハンドルを握る運転手がいなくても十分安全であるということを立証するという、予想よりもはるかに困難な課題に深入りするにつれて、実配備の予定はどんどん遅れていった。資本力の乏しい小さなスタートアップの中には方向転換を図ったものもあったが、失敗した企業もあった。

そしてCOVID-19は、1つの例外を除いて開発をさらに遅くした…その例外とは、道路上ではなく、歩道や自転車レーンを走行する自律配送ロボットたちだ。COVID-19が都市、郡、州に在宅命令の発行を促したため、Refraction AI、Starship Technologies、そしてPostmatesなどのスタートアップは、需要が増している。かつては新奇なものであると考えられていた自律型ロボットが、受け入れられ求められるようにさえなったのだ。たとえば、NuroのR2配送ロボットは、COVID-19治療センターに転用されたカリフォルニアの2つのスタジアム周辺へ、医薬品を配送するために使用されている。

postmates-phantom-wfh

自動配送ロボットの1台を監視しているPostmatesの従業員 写真提供:Postmates

COVID-19が米国に流れ込んだとき、Postmatesの幹部たちは、これは長い試練になるという結論に達した。同社はすでに、エンジニアリングスタッフには在宅勤務を導入していたが、テレオペレーターたちは、まだ会社のオペレーションセンターに通ってきていた。

3月中旬までには、在宅命令がサンフランシスコとロサンゼルスで発令された。どちらの都市も、Postmatesが自律配送ロボットを運用している市場だ。ほどなくPostmatesは行動を起こし、テレオペレーター(彼らの名称に従うならフリートスーパーバイザー)たちを在宅勤務へとシフトした。

「これは2週間や3週間で終わるものではないという認識を、私たちは持っていました」と最近のインタビューで語ったのは、Postmatesの特別プロジェクト担当副社長であるAli Kashani(アリ・カシャニ)氏だ。「私たちは果たせる役割に気付いたのです ―― 実際に何かを成し遂げることができるのです」。

Postmatesは、そのServeロボットの配備を強化する決定を下した、その結果より多くのテレオペレーターが必要になったのだ。こうした自律ロボットオペレーターは、Serveボットが目的地との間を安全に行き来できるようにするために必要とされている。

Phantom Autoのソフトウェアを使用することで、Postmatesのフリートスーパーバイザーたちは、数千キロ離れた場所からロボットを監視することができる。スーパーバイザーは、レストランや受取り手の近くの最初と最後の15フィートでロボットを案内する場合や、混雑した道をロボットが横断するのに助けが必要な場合に介入を行なう。

これらのロボット案内人たちは、いくつかの方法を使って支援を行なう。人間のテレオペレーターは、ロボットが正しい選択をするのを助けるために、OKもしくはNGを伝えるといった形の単純なものを、システムに入力できる。また従業員は、ハンドヘルドのリモートコントローラーを使用して、リアルタイムでロボットの方向を変え、加速、減速することもできる。

オペレーションセンターに人を詰め込む代わりに、Postmatesは技術を従業員の家に持ち込んだ。同社は、Phantom Autoの支援を受けて、自宅のワークステーションをセットアップし、管理者が接続をより効率的にモニターできるように、インターネットをアップグレードし、新しい標準操作手順を開発した。

カシャニ氏によれば、3月中旬に最初の在宅命令が発令された数日後には、Postmatesはフリートスーパーバイザーたちが自宅から働けるようにしたと言う。

COVID-19がなければ、考えれてみれば明らかなこの動きは、決して起きなかったかもしれない。通常の運用状況では、フリートスーパーバイザーたちサンフランシスコとロサンゼルスにあるPostmatesの集中運用センター施設で働いていたのだ。

その仕事が従業員の家に移されたとき、Postmatesはこれまでよりはるかに大きな労働力供給源があることに気が付いた。Postmatesは、自社のオフィスから遠く離れた場所に住む労働者や、自宅からの移動が困難な障害を持つ人々を雇用できるようになったのだ。

3月17日のサンフランシスコでの在宅命令の発令以降、同社はフリートスーパーバイザーの数を30%増やしている。Postmatesは正確な従業員数を発表していない。

カシャニ氏は、ロボット配送への需要が不足したことはないと述べる。「この種のビジネスの制約は、どれだけ多くのロボットを製造して展開できるかだけですよ」 とカシャニは言った。そして、投入されるロボットの数が増えるほど、必要となるフリートスーパーバイザーの数も増えるのだ。

画像クレジット: Ouster

原文へ]
(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。