神戸市が遠隔操作ロボを使った新型コロナPCR検査や非接触看護ロボの開発・社会実装支援へ

神戸市は6月3日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、医師が遠隔操作することでPCR検査を可能にするロボットや、医師や看護師、看護助手が新型コロナウイルスの感染者を非接触で看護可能にするロボットの開発・社会実装支援を進めていくことを発表した。

パートナー企業は、医療用ロボットの開発などを手掛ける2014年に設立で神戸市拠点のメディカロイド。同社は、川崎重工業とシスメックスがそれぞれ50%出資する合弁会社だ。今回の提携により、神戸市と公益法人の神戸医療産業都市推進機構が、メディカロイドに対して助言や協力のほか、助成金などで支援する予定だ。

現在のPCR検査は、医師が対面で患者の鼻に綿棒を入れて検体を採取する方法が一般的だ。そのため、採取時に患者の咳やくしゃみによる飛沫感染を防ぐため、一般の患者とは隔離された場所を設けるのはもちろん、医師や看護師は防護服を着用する必要があった。この検体採取を医師が遠隔操作するロボットを使うことで、医師や看護師の感染リスクを大幅に下げられる。

医師側でロボットを操作する訓練は必要だが、検体採取用の綿棒が患者の鼻腔のどこまで奥に挿入されているのか、鼻腔内の鼻水や鼻くそなどの障害物で綿棒に負荷がかかっているかなどをリアルタイムでモニターできるため、対面での検体採取と変わらないレベルの作業が可能とのこと。

もちろん、採取した検体を使った実際のPCR検査にもロボットを導入する。具体的には、検体のウイルス不活性処理、自動核酸抽出装置を使った核酸抽出、リアルタイムCR装置による遺伝子増幅などを経て結果判定となる。これらの工程にロボットを導入することでを24時間フル稼働でのPCR検査が可能になるという。現在神戸市では1日あたり、行政検査で最大242検体、病院・医師会で最大220検体の採取が可能とのことだが、ロボットを併用した24時間のPCR検査が実現すれば検査スピードの大幅な向上が期待できる。通常、保健所の労働時間は8時間程度なので単純計算で3倍の検査スピードになる。そして、新型コロナウイルスに感染した患者のケアについては移動型ロボットを導入する、具体的には食事や薬の搬送、検温などのバイタル測定を担当。検体採取時と同様に、ロボットが運搬を担うことで看護師や看護助手などの感染リスクを大幅に減らすことができる。なお、この看護ロボットには、産業用移動ロボットの「TRanbo」が使用される予定だ。

看護ロボットはクラウドで医師や看護師、感染症指定医療機関、PCRセンターなどと繋がっているので、感染患者の受け入れなどで迅速な連携も可能になりそうだ。

メディカロイドは、今後は神戸市や神戸市内の医療機関と実証実験などを進め、今年10月を目標に一般の医療機関への導入を進めたいとのこと。ただし、検体採取など医療行為と見なされるロボットの操作については関係各省庁の許認可が必要のなので、一部の工程のロボット化については10月以降にずれ込むと考えられる。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。