暗号資産取引のリスク検知でマネロン対策を支援するBassetが5000万円を調達

(写真右から3人目)Basset代表取締役CEO 竹井悠人氏

暗号資産(仮想通貨)による“自由な”取引が世の中に与えたのは、国境を越えた自由な送金や安価な送金コストといったメリットだけではない。日本では2017年4月に資金決済法が改正され、仮想通貨交換業者の登録制が導入されたが、その後もコインチェックZaifなど、取引所からの暗号資産流出事件が起こっているし、投機的な取引による利用者保護の問題や、違法な売買、マネーロンダリングで利用されるといった不適正な取引のリスクもある。

これらの課題を受けて、今年6月7日にはあらためて、資金決済法と金融商品取引法の改正法が公布された。また国際的にも規制強化への要求が高まるマネーロンダリングやテロ資金供与に関しては、6月21日、政府間会合である金融活動作業部会(FATF)から暗号資産サービスプロバイダーに対し、対策の強化を求めるガイドラインが発表されている。

暗号資産を巡るこのような背景の中、仮想通貨交換業者にも厳格な本人確認「KYC(Know Your Customer)」に加えて、資産の預入れ、引出しの取引を都度リスク評価・分析する「KYT(Know Your Transaction)」が求められるようになっている。2019年7月に設立されたBasset(バセット)は、仮想通貨交換業者や行政機関向けに、ブロックチェーン取引の分析・監視ソリューションを開発するスタートアップだ。9月18日、BassetはCoral Capitalを引受先として、5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

“RegTechカンパニー”として金融機関を支援していく

Basset創業者で代表取締役CEOの竹井悠人氏は、前職のbitFlyerではCISO(Chief Information Security Officer)およびブロックチェーン開発部長を務めていた。ほかの3名の創業メンバーもbitFlyerに在籍していた同僚たちで、bitFlyerからスピンアウトするような形で独立したのがBassetだ。

竹井氏はbitFlyerでの業務を通して「暗号資産の取引所では今後、コンプライアンスがとても重要になる」と考えていた。同時にデータ分析の観点からも、コンプライアンスプロダクトの分野に強く魅力を感じていた。だが、bitFlyerは仮想通貨取引所。コンプライアンス製品をつくる会社ではないし、スタートアップとしてイノベーションを追うステージを卒業して、取引所、金融機関として安定した運営を金融庁からも求められるフェーズにあった。そこで竹井氏は「新しいチャレンジにそろそろ取り組むタイミング」として、6月末にbitFlyerを退職し、Bassetを立ち上げることにしたという。

Bassetが開発しているのは、暗号資産のマネーロンダリングを防止するためのデータ分析サービスだ。これはブロックチェーンデータを分析することで、資金の流れを追うプロダクトである。BTC(ビットコイン)やETH(イーサリウム)をはじめ、金融庁のホワイトリストで指定された暗号資産のリスク検知・評価とマネーロンダリング対策に対応していく予定だ。

Bassetでは、仮想通貨取引所や、金融庁などの行政機関へのソリューション提供を想定している。また警察や司法機関などでの利用も考えられている。竹井氏は「我々が把握しているだけでも、世界で過去2年間にサイバー攻撃によって取引所から暗号資産が流出した金額は1200億円相当にのぼり、流出した資産は小口の送金を繰り返してマネーロンダリングされ、犯罪者の手に渡っている」と述べ、「これらの取引による資金の流れは、世界各国の警察が欲している情報だ」と説明する。

竹井氏は「コンプライアンス関連のニーズは金融機関の間でどんどん高まっている。ブロックチェーンの世界はすべてデータでできている。その中でコンプライアンス遵守に対応する『レギュレーション(法規法令)×テクノロジー』のRegTechカンパニーとして、クライアントを支援していきたい」と話している。

世界的に見ると、同様のソリューションを提供する企業としては、米・ニューヨークに拠点を置き、欧米でサービスを展開するChainalysis、英・ロンドンに本社があるElliptic、今年5月に楽天ウォレットが提携したCipherTraceといった先行者がいる。

「彼らが日本市場へ進出するという話もあり、今後戦っていくことになるということは認識している」と竹井氏は述べつつ、「コンプライアンス強化のためには1つのサービスを使っていればよいということはなく、我々のような別の分析ソリューションが要らないというわけではない」と続ける。

「こういった分析ツールでは、どれだけ多くのデータをカバーするかというのが重要。海外の会社が英語圏で強いのは当然だが、一方アジア言語圏はどうかと言えば、日本語、中国語などのソースについては我々の方が目が届きやすい。そこにフォーカスをして差別化を図ろうと考えている」(竹井氏)

竹井氏によれば、あるシンクタンクが発表した統計では、金融機関が使うコンプライアンス関連のテクニカルソリューションの数は、これまで1製品で完結していることが多かったのだが、ここ数年は利用する製品数が増える傾向にあるのだという。「理由としては、データソースのカバレッジが多ければ多いほどよい、という状況の中で反社会的勢力のデータベースなど複数のデータをチェックすることが増えていることが挙げられる。また顧客や企業の照会をするといった、さまざまな用途がある中で、複数製品を組み合わせてコンプライアンスプログラムを組むのがより一般化しつつあるためだ」(竹井氏)

そのような背景から「我々のようなブロックチェーンのフォレンジック(インシデントにおける証拠調査・解析)の分野でも、1つの製品のみならず、複数の製品を組み合わせて利用していただくということは、今後あるのではないか」と竹井氏は見ている。

取引可視化はマーケティングに使える可能性も

プロダクトは現在も鋭意開発中。「MVP(Minimum Viable Product)はできあがっており、現在、いくつかの仮想通貨取引所でトライアルで利用してもらっている」(竹井氏)とのことだ。

調達資金はエンジニア採用などに主に投資すると竹井氏は述べている。ほかに、世界各国の犯罪者データベースを参照するためのデータパートナーシップ締結や、サーバー運用、分析のための計算にかかるフィーなどにも充てる可能性があるという。

竹井氏は今後の同社の展望について、「ブロックチェーン関連のコンプライアンスという領域をスタート地点としているが、実際の犯罪捜査に役立てるためには、まだまだいろいろな機能が足りていない。また取引所のコンプライアンス対応として、反社チェックまですべてやりたいとなるとブロックチェーンのデータだけでは完結しないので、ほかのデータも集め始めている。データを広げる、機能を増やすという観点での拡大は考えている」と話す。

また「捜査・コンプライアンスに関するフォレンジックツールとしてだけではなく、暗号資産の取引が可視化できるということは、マーケティングにも使える可能性がある。さらに、例えば将来ビットコインでの支払いを受け付けたいという店舗が増えた場合に、そうした店舗でマネーロンダリングの検出プラットフォームとして利用してもらい、店頭での高額商品の購入がマネーロンダリングの温床にならないような使い方というのも想定している」とも竹井氏は語っていた。

DAppsをスマホから楽しめるウォレットアプリ「GO! WALLET」のAndroid版登場

スマホからDAppsを利用できるブラウザ搭載ウォレットアプリ「GO! WALLET(ゴーウォレット)」を展開するスマートアプリは6月18日、同アプリのAndroid版をリリースした。

GO! WALLETはイーサリアムのウォレット機能とDAppsのブラウザ機能を兼ね備えたサービス。現在ERC20・ERC721形式に対応しており、これらに該当するトークンやアセットをウォレットで管理できるほか、イーサリアム上で動くDAppsアプリやブロックチェーンゲームをスマホから楽しめるのが特徴だ。

スマートアプリでは2018年10月にGO! WALLETのiOS版をリリース。10月末にはセレスから5000万円を調達し、同アプリのアップデートに取り組むとともにAndroid版の開発を進めてきた。

iOS版のリリース時からはアプリ上でDAppsや仮想通貨に関連するニュースが読める機能が加わったほか、2019年3月より独自のリワードポイント「GO!ポイント」をスタートしている。

これは広告の閲覧やアンケートの回答、商品の購入など該当するアクションを行うことで報酬となるポイントを得られる仕組み。貯めたポイントはETHやDAppsのアセットなどと交換(アセットとの交換については現在準備中)でき、スマートアプリ代表取締役社長CEOの佐藤崇氏によるとこれが1つのフックとなって国内外でユーザーが広がっているという。

現在は英語圏向けだけでなく中華圏・韓国語圏・ロシア語圏向けにもサービスを展開していることもあり、約2万人のiOS版ユーザーの内訳を見ても日本に続いてロシアやウクライナ、ベトナムなどのユーザーが多い。

佐藤氏の話では日本でも昨年秋に「My Crypto Heroes(マイクリプトヒーローズ)」が登場し、これを機にこれからイーサリアムをベースとしたブロックチェーンゲームが増えてくるのではないかとのこと。

スマートアプリでは「GO! WALLET」を軸として、国内はもちろん全世界のDApps・ブロックチェーンゲームとユーザーとの接点となるマーケティングプラットフォームを構築し、これらの経済圏の拡大を目指していくという。

今後はBTC、EOS、ICNなどのマルチトークンへの対応を予定。また煩雑な登録作業がほとんど必要無いサードパーティウォレットアプリとして一定の支持を得ていることもあり、カジュアルに仮想通貨や仮想通貨を活用したサービスを始めたいユーザーの受け皿となるように、ウォレット機能のアップデートにも取り組んでいく計画だ。

Facebookの独自仮想通貨でユーザー間の送金や購入代金の支払いが可能に

Facebookは、Libraというコードネームで呼ばれる仮想通貨の詳細を発表する準備をようやく整えたようだ。同社の仮想通貨の概要を説明するホワイトペーパーが、今のところこの6月18日に発表される予定となっている。複数の投資家が、Facebookからこの日付を明かされた、と主張する、ある情報筋からもたらされた話だ。

一方、Facebookの北ヨーロッパを担当する金融サービスおよびペイメントパートナーシップ部門長のLaura McCracken氏も、ドイツの雑誌、WirtschaftsWocheのSebastian Kirsch氏に、ホワイトペーパーが6月18日に発表されるはずであると明かしている。また、その仮想通貨は、たとえば米ドルのような単一の通貨に連動するのではなく、通貨バスケット制を採用して、 価値の変動を防ぐことになるという。Kirsch氏は「私は、火曜日にアムステルダムで開催されたMoney 2020 EuropeでLauraに会いました」と、私に明かした。それは彼女が、同僚のFacebookのペイメント担当役員のPaulette Rowe氏の講演を聴いた後のことだった。「彼女によれば、彼女はDavid Marcus氏が率いる『Facebookブロックチェーン』チームの活動には関与していない、ということでした。彼女は私に、詳しいことは6月18日にホワイトペーパーが公開されるまで待つように言ったのです」。彼女は彼に、その発表の日付が、すでに公になっているはずだと伝えたのだが、実はそうではなかった。

そして米国時間の6月5日、TechCrunchは6月18日に関するニュースの差し止めを、Facebookのブロックチェーンチーム担当の、あるコミュニケーション部門長から要求された。とはいえ、The InformationのAlex Heath氏とJon Victor氏も、すでに米国時間の6月5日、Facebookの仮想通貨プロジェクトが今月後半に発表されると報じている。

Facebookは、同社の仮想通貨プロジェクトに関するニュースについてのコメントを控えている。パートナーとなる企業や政府とのゴタゴタが生じた場合には、発表の日時が変更される可能性は常にある。ある情報筋によれば、Facebookは2020年に正式に仮想通貨の扱いを開始することを目標にしているという。

それをLibraと呼ぶのか、何と呼ぶのかは別として、これはFacebookにとって、商取引と支払い機能の新時代の幕開けとなるだろう。たとえば、友人同士で、無料、または安い手数料での支払いが可能となったり、海外に出稼ぎに出ている労働者が稼いだお金を家族に送金したりするのにも使えるだろう。一般の送金サービスは手数料が高過ぎるので、これは歓迎されるはず。

Facebookの仮想通貨を利用すれば、クレジットカードの取引手数料を回避できるので、従来からある電子商取引にとっても、安価な支払い方法を確保できることになる。さらに、気に入ったニュース記事に対して支払う少額取引や、コンテンツのクリエーターへのチップの支払いなどを促進する可能性もある。またFacebook自身にとっては、誰が何を購入しているか、あるいはどのブランドが人気なのか、といった情報が得られるので、広告の計測やランク付け、コアビジネスを増強するためのターゲティングにも有効だ。

Facebookの仮想通貨の仕組み

Facebookのブロックチェーンプロジェクトについて現在分かっているのは以下の通り。

名前:Facebookは、この仮想通貨の正式名として、Libraというコードネームをそのまま使う可能性がある。以前にBBCが主張したGlobalCoinという名前にはならないだろうと、The Informationはレポートしている。ロイター通信によれば、FacebookはスイスでLibra Networksという名前の金融サービス会社を登記したという。Libra(てんびん座)という名前はLIBORをもじったものかもしれない。それは、London Inter-bank Offered Rate(ロンドン銀行間出し手金利)の略で、銀行間での借入の基準金利として使われるもの。LIBORが銀行向けなら、Libraは一般市民向けというわけだ。

トークン:Facebookの仮想通貨は、ステーブルコインになるはず。一定の価値を維持するように設計されたトークンで、支払いまたは交渉の過程で価格が変動することによる話の食い違い、やっかいな問題の発生を防ぐ。Facebookは、仮想通貨の価値を安定させるための担保として、複数の国際不換通貨を含む10億ドル規模の通貨バスケットと、低リスクの債権を創出するための資金の拠出について、すでにいくつかの金融機関と交渉していると、The Informationは報じている。Facebookは、ステーブルコイン公開の事前承認を得るため、多くの国々との交渉も進めているという。

TechCrunch Disrupt 2016で講演するFacebookのブロックチェーンチームの責任者、David Marcus氏(左)。

使い方:Facebookの仮想通貨は、MessengerやWhatsAppといったFacebookの製品を介して、無料で転送可能となる。Facebookは、その通貨による支払いを受け付けるよう、業者と協力して作業を進めていてる。サインアップボーナスを提供する可能性もある。The Informationによれば、Facebookは、ATMのような物理的な装置も導入したいと考えている。ユーザーは、それを使って仮想通貨を通常の貨幣と交換することができる。

チーム:Facebookのブロックチェーンプロジェクトは、PayPalの元社長で、現在はFacebookのMessenger担当副社長David Marcus氏が率いている。そのチームには、Instagramの製品担当副社長だったKevin Weil氏や、Facebookの元財務部門の責任者、Sunita Parasuraman氏も参加している。The Informationによれば、このParasuraman氏が、仮想通貨の財務を監督するという。さらに、Facebook社内のさまざまな部門から抜擢された多くの優秀なエンジニアが参加しているということだ。このチームは、機密保持のため、他の従業員の立ち入りを禁止したFacebookの本社の専用エリアで仕事をしてきた。とはいえ、立ち上げにはあちこちとのパートナーシップが必要なこともあって、少なからぬ情報がリークされてきた。

ガバナンス:Facebookは、その仮想通貨を監督するための独立した財団法人を設立することを協議していると、The Informationは報じている。その仮想通貨を使った取引を認証可能なノードを運用する企業に対しては、1000万ドル(約10億8500万円)を拠出するようFacebookは求めている。その支払いと引き換えに、その通貨のガバナンスに対する発言権が得られる。そうしたノードの運用者は、財務的な利益が得られる可能性もある。このプロジェクトのガバナンスについて、一定レベルの分権化を実現することで、Facebookが世界の通貨に対して強大な力を獲得することによって規制の対象となるのを防ぐことができるかもしれない。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

優秀なロボットをフォローして仮想通貨を自動売買、efitが約9000万円を調達

仮想通貨の自動売買サービス「QUOREA(クオレア)」を展開するefitは5月27日、複数の投資家を引受先とする第三者割当増資により約9000万円を調達したことを明らかにした。

同社に出資したのは既存投資家であるKVPのほか、岡三キャピタルパートナーズ、社名非公開の東証一部上場企業とその他1社。累計の調達額は約1.2億円になるという。

QUOREAは“投資ロボット”をフォローすることで、手軽に仮想通貨の取引ができるサービスだ。以前“勝率の高いトレーダー”の注文を真似して全自動のシステムトレードができる「マネコ」を紹介したけれど、QUOREAの場合はトレーダーではなく他のユーザーが作成した投資ロボットをフォローする。

同サービスでは高度な数理モデルなどを組み込んだクオンツ運用やテクニカルトレードを自動で行う投資ロボット(アルゴリズム)を、プログラミングの知識なしで制作することが可能。現在登録されているロボットは1500を超えるという。

各ロボットについては累計損益などの運用成績、リターンやリスクといった概要、AIによる「オススメ度」がチェックできるので、ユーザーはその中から自分に合ったロボットを探す。

ロボットの成績をチェックしたりフォローする際には特に費用がかからず、実際に自動売買を行った場合に月間のトータル取引高に応じて手数料が発生する仕組み。またロボット制作者は自身が制作したロボットを使って他のユーザーが利益を得た場合、収益を得ることができる。

efitでは今後QUOREAの機能強化や新機能の開発に取り組むほか、仮想通貨に加えて株式やFXへの対応を進めていく計画だ。

高勝率のトレーダーを”マネ”して自動で取引、仮想通貨取引の「マネコ」が1億円調達

仮想通貨のフォロートレードサービス「マネコ」を運営するGaiaは4月16日、NOW、リミックスポイント、名称非公開の上場企業1社、複数の個人投資家から総額1億円を調達したと発表した。

フォロートレードとは、みずから取引をするのではなく、勝率の高いトレーダーと同じ注文を”まね”することができるサービスだ。利用は簡単で、ランキングで過去の利益額などを参考に理想のトレーダーを探し、投資金額などを設定すればいい。あとは、そのトレーダーが出した注文通りに自動的にトレードが行われる。自分で取引のタイミングを考えたりする必要がないため、「とりあえず仮想通貨に触れてみたい」という初心者には適したサービスなのかもしれない。

Gaiaは同サービスを2018年12月にリリース。2019年3月までに仮想通貨取引所のLiquidとBitMEXに対応している。同社は今回調達した資金を利用して、アライアンスの強化、中長期的な人材強化、海外展開や他の金融商品への展開を進めるとしている。

中国はビットコインのマイニングを禁止か

仮想通貨のマイニングは中国政府の最新の標的となっている。自国の経済にとって障害となりそうなものを徐々に排除する政策の一環だ。

同国の国家発展改革委員会(NDRC)は、世界最大のビットコイン採掘市場である中国の経済を率いる計画機関だ。今週の月曜日に、促進、制限、あるいは排除を計画している分野のリストを発表した。仮想通貨の採掘とは、ビットコインやその他のデジタル通貨を、コンピューターの能力を利用して生成する活動のこと。今回、他の多くの分野とともに、当局が「排除」したいと考えているリストにノミネートされた。その理由は「安全な生産条件が欠如し、多大なリソースを浪費し、環境を汚染した」からとされている。

ビットコインの評価が2018年に急落したことはよく知られている。2017年12月の最高額2万ドルから、4000ドルを下回るまでに落ち込んだのだ。今回の中国発のニュースは、ビットコインへの楽観的な見方が回復している最中に届いた。先週には、Bitcoinの価値は、2018年の11月以降では初めて5000ドルを上回るまで急上昇していた。

今回の公式見解は、パブリックコメントを待つ改訂されたリスト、という体裁を取っていて、規制の強制力を持つものではない。当局は、仮想通貨採掘がいつまでに禁止されるのかという期限についても触れていない。このようなガイドラインは、通常は産業活動に対する中国政府の態度を反映している。このNDRCのリストは、数年ごとに改定されるものだが、規制したいとしている産業への実際の影響力は限られていると見る向きもある。

「2006年末までに排除すべきだとされたものが2011年にも存続していました。その2019年版でしょう」と、ブロックチェーンに注力するPrimitive Venturesの創立パートナーであるDovey Wan氏はツイートしている。

もしこの禁止令が実行に移されれば、採掘、生産用のツールを業界に提供することで仮想通貨の波に乗った一連の中国企業に大きな打撃を与えることになるだろう。特に、最近香港でのIPO申請が失効したばかりのBitmainは、禁止によって多大な影響を受けるはずだ。マイニング用に最適化されたハードウェアを供給するBitmainは、採掘用のハードウェアのトッププロバイダーとして広く知られている。2018年上半期の同社の収益のなんと94%が、同社の仮想通貨マイニング用ハードウェア「Antminers」によるものだった。

Bitmainの広報担当者は、このニュースに関するTechCrunchからの問い合わせに対し、コメントを拒んだ。

仮想通貨業界は、中国政府から厳しい査察を受けてきた。詐欺や投機に対する懸念のためだ。その結果、2017年には新規の仮想通貨公開が禁止されることになった。一方、環境保護主義者は、ビットコインの採掘にともなう無駄なエネルギー消費に抗議してきた。中国は昨年初めに、一部のビットコイン採掘者に対する電力供給を制限することを計画していたという話も、Bloombergの情報源から伝わっている。

中国が仮想通貨マイニングへの締め付けを検討したのは、今回が初めてではない。2018年1月、中国は地方政府に対して、ビットコインの採掘企業を廃業に追い込むよう依頼したとされる。中国の金融ニュースを出版するYicaiが入手した文書に記述されていることだ。しかし地方政府は、そのような指導に従うことに消極的だったのだろう。中国の仮想通貨マイニング活動の多くは、開発途上の内陸地域で散発的に行われている。そうした場所では、電力は余剰にあり、政府も生産活動の拡大に熱心に取り組んでいる。強大なNDRCからの新たな指令が、この業界を抑制することになるのかどうか、まだまだ予断を許さない。

画像クレジット:IvancoVlad/Getty Images

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

仮想通貨を物理的にプレゼントできるカード「ウォッカ」、セガサミーなどから資金調達

ビットコインをオフラインで配布するためのウォレットカード事業を展開するウォッカは2月8日、セガサミーホールディングス、トランスコスモス、オークファンなどから資金調達を実施したと発表した。金額は非公開だが、関係者らからの情報によれば調達額は5000万円程度とみられる。

ウォッカが展開するのは、デジタル化された仮想通貨を含むトークンを物理的にシェア/プレゼントするためのプラスチック製のウォレットカード「Wodca(ウォッカ)」だ。用途としては、企業の販促やプロモーションのためにトークンを配布することなどが考えられる。

WodcaにはカードごとにユニークなIDが振り分けられ、カードの裏面にWodcaでカードを認証するのための「Access Code」、トークンの口座にあたる「Wallet Address」、外部のウォレットにトークンを送信するために必要な「Private Key」がスクラッチ加工によって記載されている(コインなどで削って初めてコードが見られる)。

カードの所有者は、IDとAccess Codeを使ってWodcaのWebサイト上でアクティベーションをすると、Wallet Addressにビットコインやイーサリアムなどのトークンが送信される仕組みだ。Private KeyはWodcaのシステムを含むインターネット上のサーバーには保存されておらず、カード裏面に記載されているのみ。だから、Wodcaはインターネットから完全に隔離されたセキュリティ性の高い「コールドウォレット」として機能する。

ウォッカは今回調達した資金を利用して、人材採用による開発体制の強化を行うとしている。「仮想通貨市場の成長のためには、ルール/法令の整備とともに、より多くの人が安心して日常の生活で使用できる環境になる必要がある。すべての人が簡単で安全な仮想通貨ウォレットを持てる社会を構築していきたい」(ウォッカ)

金融庁、コインチェックを仮想通貨交換業者として正式登録

金融庁は1月11日、仮想通貨交換業者のコインチェックを改正資金決済法にもとづく業者として正式登録したと発表した。同社は2018年1月に約580億円相当の仮想通貨NEMが流出したことを発表。同社はこれにより、日本円を含む取り扱い通貨全ての出金を停止するなどサービス一部の一時停止を余儀なくされた。また金融庁はこれを受け、コインチェックに対して2度の業務改善命令を出すなどしていた。

コインチェックは2018年11月までに事件の発端となったNEMを含む全仮想通貨の購入、入金を再開するなど徐々に提供サービスの再開を進めてきたが、ついに今回金融庁はコインチェックを正式な登録業者として認めることとなった。同社は今後、登録を受けていない「みなし事業者」ではなくなり、登録済みの仮想通貨取引所として運用できるようになる。

コインチェックなど仮想通貨関連記事が上位に(2018年1月ランキング)

2018年にアクセス数の多かった記事を月別に紹介していく年末企画。まず2018年1月を振り返ってみると、仮想通貨(暗号通貨)関連の記事にアクセスがトップ4を独占した。TechCrunch Japanでは、仮想通貨やブロックチェーンに関する記事は1年を通じて人気があるが、1月のアクセスは異常ともいえる規模だった。

注目はやはり、1月26日未明に発生した仮想通貨の取引所であるコインチェックから仮想通貨MEMが流出した事件。コインチェックはこの後、マネックスグループ傘下となり取引所のセキュリティ体制を強化。日経報道によると、まもなく金融庁から仮想通貨の登録業者として認可される見込みだ。

5位に入ったのはiPhoneのバッテリー問題の記事。バッテリー劣化による突然のシャットダウンを回避するため、Appleが意図的に旧iPhoneの性能を落としていたことが発覚し大騒ぎとなった。その後、Appleは低価格でのバッテリー交換に応じる決断を下した。

1位 Bitcoin、Ethereum、その他ほとんどすべての暗号通貨が暴落
2位 コインチェックが580億円のNEM不正流出について説明
3位 仮想通貨の税金計算をサポートする「G-tax」ベータ版公開
4位 Bitcoinを150ドルから1000ドルに釣り上げたのは一人の仕業だったらしい
5位 iPhoneの29ドルのバッテリー交換はほとんど無条件になった

ステーブルコインに1億3300万ドルの資金を調達したBasisが事業を泣く泣く断念し投資金を返還へ

18カ月前にニュージャージー州ホーボーケンに設立された暗号通貨のスタートアップが、供給を柔軟化して、価値を野放しにするのではなく、およそ1ドルを維持できるように見かけ上伸縮させる「ステーブルコイン」を提供するという話を、今年の初めに伝えた。この会社は、「投機目的ではなく、実際に使える新しいトークンを作る」という大志を抱いていた。

投資家たちは(すべてではないが)この考え方に惚れ込んだ。事実、8カ月前にBasisは、1億3300万ドル(約150億8800万円)の資金を手に入れた。投資を行ったのは、Bain Capital Ventures、GV、名うてのヘッジファンド・マネージャーStan Druckenmiller、元連邦準備制度理事Kevin Warsh、Lightspeed Venture Partners、Foundation Capital、Andreessen Horowitz、WingVC、NFX Ventures、Valor Capital、Zhenfund、Ceyuan、Sky9 Capital、Digital Currency Groupなどといった顔ぶれだ。

CEOのNader Al-Najiがプリンストン大学のクラスメイトだったLawrence Diao、Josh Chenと共に設立したこの会社は、本日(アメリカ現地時間12月14日)、事業を停止すると発表した。そしてBasisは、事業の推進に使用されなかった資金を、投資家たちに返却するという。

Al-Najiが、少し前にBasisのウェブサイトに投稿した説明によれば、彼らの技術的ロードマップとアメリカの証券法の規制との折り合いがつかなかったようだ。具体的には、散発的に入る規制の指導に、創業者たちも予想できない影響があったとAl-Najiは書いている。

そのひとつとしてBasisが即座に気がついたのは、「ボンドトークンもシェアトークンも、有価証券ではないと認めざるを得ない」ということだ。さらに、「未登録証券という性質上、ボンドトークンとシェアトークンは規制対象となり、発行から1年間はアメリカ国内の公認投資家のみが所有できるようトークンを管理し、海外の利用者の合法性を審査する責任を(Basisが)負う」という。

Al-Najiはこの状況の問題点をこう話している。「譲渡制限を実行するためには、集中化したホワイトリストが必要になります。これでは検閲に反対する私たちのシステムが意味を失うばかりか、オンチェーン取り引きの流動性が大幅に失われます」

結果的に、オンチェーン取り引きの参加者が減れば、それが不利に作用してBasisの安定性が低下する。そこが重要だと彼は言う。

いわゆるステーブルコインが単に実現不可能なものなのか、または価格を一定に保つことでアセットアプローチを行うという考え方そのものが間違っていたのか、Basisに起きた今回の事件からは判明されない。しかしこの夏、ステーブルコインの人気が高まったとは言え、いまだに実証されていない暗号通貨支払いアプリ技術の導入に、Basisが力を入れた理由はよくわかる。暗号通貨サービス企業Blockchainの研究主任Garrick Hilemanが、9月、Technology Reviewに話したところによると、2017年には準備中のステーブルコインはわずかに一握り程度だったものが、この秋には60に迫る勢いだという。

我々は、Basisに投資した一部の人たちに接触し、詳しい話を聞いた。その間、Basisは巨額の資金を獲得しながら、Al-Najiは、いつBasisが流通するのかわからないと正直に述べていたことは注目に値する。つまり彼は、Basisが守れない約束は口にしなかったということだ。少くとも、我々には直接言わなかった。

下は、投資家と支援者に向けた彼の手紙の全文だ。

18カ月前、私たちは、よりよい通貨システムを構築するという野心的な目標に向けて出発しました。それは、ハイパーインフレに強く、中央集権的支配を受けず、従来の通貨システムよりも安定的で頑強なものです。これが成功すれば、社会に多大な恩恵をもたらすと私たちは感じていました。そして、私たちはそれを行う絶好の立場にあると感じていました。

私たちは、安定的で非中央集権的な暗号通貨Basisを提案する白書を作成し、その構想の実現可能性を示しました。

Basisは、需要の変化に応じて売買したいというトレーダーに動機を与えることで安定します。この動機は、定期的に行われる「ボンド」トークンと「シェア」トークンのオンチェーン取り引きを通じて引き起こされます。Basisのエコシステムが発展するためには時間がかかるため、まずは私たち自身がトレーダーの役割を果たすことで、大きな資本を集める必要があると感じました。

そうして、私たちは白書でお伝えしたとおり、1億3300万ドルの資金を調達できました。これにより、さまざまな投資家をと関係を築き、事業の価値を高め、大きな安定化基金を構築して、システムの強化が可能になりました。そして私たちは、素晴らしく優秀な人材を集め、システムの立ち上げを目指して始動しました。

しかし残念なことに、私たちのシステムをアメリカの証券法の規制に準拠させようとしたとき、Basisの発行に重大な問題が起こりました。

規制の指導が時間をかけて少しずつ入るようになると、弊社の弁護士たちは、ボンドトークンもシェアトークンも有価証券ではないと認めざるを得ないとの合意に達しました(Basisには中央組織が存在しないため)。

未登録の証券という立場のため、ボンドトークンとシェアトークンは譲渡制限の対象となり、Intangible Labsと共に、発行から1年間はアメリカ国内の公認投資家のみが所有できるようトークンを管理し、海外の利用者の合法性を審査する責任を課せられました。

譲渡制限を実行するためには、集中化したホワイトリストが必要になります。これでは検閲に反対する私たちのシステムが意味を失うばかりか、オンチェーン取り引きの流動性が大幅に失われます。

オンチェーン取り引きの参加者が減れば、それが災いしてBasisの安定性が損なわれ、利用者はBasisのそもそもの魅力を感じなくなります。さらに、ボンドトークンとシェアトークンの取り引きに譲渡制限をかければ、私たちはBasisのエコシステムを構築する力を実質的に失います。

譲渡制限は発行後12カ月で失効するのが一般的ですが、ボンドトークンとシェアトークンの取り引きは私たちの金融方針に従って続けるならば、譲渡制限と集中化したホワイトリストは、いつまでも必要となります。

私たちは、私たちの製品の魅力と競争力を保ちつつ、規制に準拠した形でローンチできる道をいくつも探りました。そのなかには、ボンドトークンとシェアトークンの金融的性質を抑えた機能を追加して、海外でローンチするというものや、中央集権的な安定したメカニズムでスタートするというものもありました。しかし、結局それらの代替案は、利用者にとっても投資家にとっても魅力が欠けるものであり、私たちのビジョンに矛盾し、事業を進める正当性にも欠けます。

そのようなわけで、大変に残念ながら、私たちは投資家のみなさまに資金をお返しする決断を下したことをお知らせしなければなりません。これは、まことに無念ですが、Basisの事業の中止を意味するものでもあります。

誰にとっても望まれない結果となりましたが、私たちは、承知の上で、規制環境が味方してくれるほうに、いちかばちかの掛けをしていました。この世話に絶対にはなりたくないと思っていたトークン販売契約の冒頭に資本金返却の条項を加えたのは、まさにそれが理由です。私たちが望んでいたシステムを立ち上げることはできませんでしたが、このような状況でも、少くとも正しいことができたことを投資家の皆様に感謝したいと思います。

最後に、私たちと、私たちの事業を支えてくださったみなさまに、心より感謝申し上げます。私たちを信じてくれた、寛大なる支援者、パートナーのみなさま、私たちの目標のために集まってくれた素晴らしいチームのみんなに。みなさんは、世界を変えるチャンスを与えてくれました。また挑戦できる日を楽しみにしています。

それではまた。

CEO Nader Al-Naji

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(翻訳:金井哲夫)

コインチェック、イーサリアムやネムなど3通貨の入金・購入を再開

コインチェックは10月12日、仮想通貨イーサリアム(ETH)、ネム(XEM)、リスク(LSK)の3通貨について入金と購入を再開した。本日よりサービス再開となる。「外部専門家による協力を受け技術的な安全性の確認が完了」したためとコインチェックはコメントしている。なかでも特に、XEMに関してはコインチェックの仮想通貨流出事件で実際に流出した通貨にあたるため、今回のサービス再開は大きな進歩と言える。

同社は10月30日に新規口座開設と4種類の仮想通貨(BTC、BCH、LTC、ETC)の入金と、3種類の仮想通貨(BCH、LTC、ETC)の購入を再開している。同社がこれまでに再開してきた各取扱仮想通貨のサービス・機能は以下の通り。

このほか、コインチェックは現在、XRPとFCTの入金・購入、レバレッジ新規建取引、Coincheck Payment、Coincheck でんきのサービス再開準備を整えているところだ。

コインチェック、新規口座開設と一部通貨の入金・購入を再開

コインチェックは10月30日、2018年1月に発生した仮想通貨流出事故の影響でこれまで停止していた新規口座の開設、および一部仮想通貨の入金・購入を再開すると発表した。仮想通貨の入金再開対象となる通貨は、BTC、ETC、LTC、BCH。購入再開の対象通貨は、ETC、LTC、BCHとなる(BTCの売買はもともと停止対象外だった)。

今回の一部サービス開始により、コインチェックにおいて現時点で利用できるサービスは、新規口座開設、仮想通貨の入金・購入(BTC、ETC、LTC、BCHに限る)、仮想通貨の出金・売却(全取扱通貨)、日本円の入出金、レバレッジ取引における決済と証拠金の入金、Coincheck貸仮想通貨サービス(全取扱通貨)となる。

なお、コインチェックは仮想通貨ETH、XEM、LSK、XRP、FCTの入金・購入や、ビットコイン決済サービスの「Coincheck Payment」などの各種サービスについて、「引き続き安全性の確認を行い、準備が整い次第、順次再開してまいります」とコメントしている。

ウガンダの王子と仮想通貨スタートアップが起こすアフリカの金融革命

仮想通貨とブロックチェーンの愛好家は、何年もの間、銀行の中央集権的な世界を批判してきたが、発展途上国の銀行の多くは、その特権的な場所に立ち、それを続けている。しかし、ブロックチェーン技術が発展途上の経済にとって、もっとも画期的であると判明したら、どうなるだろう。

たとえばアフリカだ。アフリカ諸国の消費者たちは、プリペイド式携帯電話の料金をチャージするための銀行取り引きだけでも、いちいち手数料を取られることに不満を募らせている。通信時間が、事実上、お金として扱われている。すでに経済発展をした国々で生まれた、そうした銀行のやり方は、銀行手数料が携帯電話のチャージ料金を上回るような発展途上国ではうまく機能しない。

南アフリカに拠点を置くスタートアップWalaは、それを早期に実現している。既存の銀行インフラを利用して顧客取引を促進しようと、ウォレットのように機能するスマートフォンアプリを開発した。しかし、ほぼすべての取り引きに高額な銀行手数料がかかるため、Walaの顧客基盤も、スマートフォン世代にモバイルウォレットを提供するというWalaの初期のビジネスモデルも、痛手を被った。

料金のかからないソリューションが必要だったが、既存の金融システムでは難しい。そのとき、彼らは仮想通貨に切り替えることができると気がついた。そうすれば、業者同士のピアツーピア・ネットワークでの支払いが可能になり、通信料金、データ料金、電気料金、さらには学校の学費までこれで支払うことができる。

昨年の12月、イーサリアム・ベースの$DALAトークンを新規仮想通貨公開(ICO)で売却して120万ドル(約13億7000万円)を調達したWalaは、現在、ウガンダ、ザンビア、南アフリカで数千件の取り引きを助けている。そのほとんどは、1ドル以下のマイクロペイメントだ。

2018年5月に彼らの通貨$DALAをローンチしてから(現在はWalaのモバイルアプリからアクセス可能)、10万を超える$DALAウォレットが利用され、同社によれば、250万$DALAを超える取り引きが行われているという。この(少なくとも今のところは)マルチチェーンの暗号資産は、ウォレットにEther、取り引きにはStellarを使用している。しかし、ひとつのプラットフォームに固定されているわけではない。

$DALAのプロトコル(Kopa、Soko、Kazi)を通して、消費者は、国境を超えた、低コストの、高効率な独自の金融サービスにアクセスできるようになり、新しい非中央集権型の金融システムでの利益の獲得、貯蓄、貸し借り、鳥時期が可能になる。

だが、それはWalaの最終目標ではない。

10月2日、Walaは、ウガンダのギガワット規模の太陽光発電計画と手を組み、ブロックチェーンによるクリーンエネルギー経済を構築すると発表した。

仕組はこうだ。

エネルギーの老舗企業であるCleanPath Emerging Markets Uganda(CPEM)は、ウガンダ政府、ウガンダ・エネルギー鉱物開発省と共同でこのプロジェクトを進めている。つまりウガンダ人は、この巨大な新規インフラ建設プロジェクトから生み出される太陽光エネルギーを、$DALAで使えるようになるということだ。

CPEMは、DALAブロックチェーンのプラットフォームを使って、台帳、業務委託契約、パートナー契約を管理する。同社はすでに、1万1000メガワット以上の再生可能エネルギーを作り出した経験を持っている。

ウガンダに新しいクリーンエネルギー経済を創出することを目的としたこの15億ドル(約1710億円)規模の計画は、新たな雇用を生み、クリーンエネルギー経済を立ち上げるだけでなく、ウガンダに新しい経済発展をもたらす。ウガンダの消費者は$DALAで太陽光発電された電気を購入でき、労働者は$DALAで賃金を受け取り、この計画自体が$DALAで推進されるのだ。

Walaの共同創設者でCEOのTricia Martinezは、オスロで開かれたPathfounderの会場で、私にこう話してくれた。「$DALAをローンチして以来、私たちが見てきた数字は驚異的なものです。現在の利用者は大半がウガンダ人なので、今回の提携関係は、$DALAを使うことで、さらに利益が増すようになるという自然な流れでした。利用者間には大量のトラフィックがあり、それはウガンダ人が、日常の取り引きに暗号資産を使う準備ができていることを示しています。

しかしこの物語は、映画『ブラックパンサー』の幻の王国ワカンダから歩み出てきたような、聡明なアフリカの王子の存在なくしては実現しなかった。

なぜなら、CPEMの創設者はブガンダ王国(ウガンダの王族のひとつが治める地域)の王子、Kudra Kalemaだからだ。その家系の歴史は、少なくとも14世紀にさかのぼる。現在、ブガンダは、ウガンダから大幅な自治権を与えられた君主制の王国となっている。

「この計画とDalaとの提携に、私たちは大変に興奮しています」とブガンダ王国のKudra Kalema王子は話す。彼はCPEMの経営パートナーであり共同創設者でもある。「$DALAでウガンダ人にクリーンエネルギーを提供できるようになることで、私たちはより開放的な非中央集権型の金融システムを育てることができます。それは古い技術では不可能なことでした」

TechCrunchの独占インタビューで、Kalema王子は私にこう話している。「私たち一族は、自分たちがこの土地の管理人だと考えています。そこで私は、ほぼ10年をかけて、この国を良くする方法を探ってきました。しかし、人々がスイッチをひねって明かりを点けることすらできないような状態で、何ができるでしょうか」

最大の課題は、安価な電力の供給だと彼は悟った。それを再生可能な形で実現する。それは太陽光発電でなければいけない。マイクログリッドでは解決できないことがわかった。もっと大規模にする必要がある。

しかし、なぜ彼は仮想通貨の導入を思いついたのだろう。

「ウガンダの財政構造には十分な力がないことが明確になったので、$DALAを使い始めました。何かが必要であることは明らかでした。私たちが行おうとしていた計画に役立つまでに、ウガンダ・シリングを安定させる道はありせんでした。Walaは、すでにウガンダに投資し、発展途上の市場に仮想通貨を持ち込もうと考えていただけでなく、この国にとって最良の金融機関の形を作ろうとしていました。それは、私たちがやろうとしていたことと一致します。ごく自然な成り行きです」

「今あるものは使い物にならないと、
ウガンダの人たちは言っています」
—Kudra Kalema王子

$DALAと太陽光発電計画を組み合わせるのは、アメリカなどの国よりも、ウガンダのほうがやりやすいと彼は言う。「ウガンダ人の80パーセント以上が35歳以下の若者で、高い教育を受けています。リープ・フロッギングという言葉は好きではありませんが、まさにそれが起きています。彼らは、昔に習ったことを捨て去る必要がないのです。彼らは、自分たちのためになる解決策を学ぼうと、必死になっています。ウガンダで、いかに早くモバイル・マネーが浸透したかを見ればわかります。外から押し付けられたからではなく、人々が自ら欲していたから、それだけの力を持てたのです。今あるものは使い物にならないと、ウガンダの人たちは言っています。銀行の手数料や送金のコストなどです。もう使えないとわかっているものに力を入れるこどなど、ウガンダ人はしません」

ウガンダは、今後も新しい技術を貪欲に求める市場でいるだろう。先日、Binanceが法定通貨と仮想通貨の取引所をウガンダに開設すると発表したが、それもそのひとつだ。

彼はこうも言っている。「ウガンダは、常にこうしたものの先頭にいました。大英帝国の保護領になる前から、ウガンダは、アフリカで新しい商売を始める道を探しに人々が集まる場所でした。私たちには複雑な部族制度がありました。そのために、イギリスはウガンダを侵略するのではなく、保護領としたのです」

この計画の詳細は野心的だ。Kalema王子のCPEMは、ギガワット規模の太陽光発電所建設計画により、人口の25パーセントにクリーンエネルギーを届け、20万人分の雇用をクリーンエネルギー経済の中に生み出すことを目指している。

この発電所で作られる電気は、現在のウガンダの総発電量の2倍に相当する(平均的なアメリカの石炭火力発電所のおよそ2基分だ)。現在は、国民の75パーセントが電気を使えない状態にある。

$DALAを使えば、ウガンダ人は手数料なしに電気が使えるようになる。毎日の買い物にも使え、政府機関、業者、仮想通貨取引所などでウガンダの法定通貨に交換することもできる。

さらに、CPEMとウガンダ政府は、貧しい人たちに電気を無料で与える助成制度を作ることができる。しかも、そうした助成の記録は、完全な監査が可能で、改ざんの心配もない。

アフリカの市場に嵐を起こそうとに、小さなスタートアップがやって来た話は2014年に始まる。

そもそも、アメリカのエンジェル投資家とソーシャルインパクト・ベンチャー投資企業(Impact Engine)に支援されていたTricia Martinez(上の写真)のWalaだが、2016年、ロンドンのアクセラレーターBarclays Techstars Acceleratorに加わった。その後、南アフリカのケープタウンに事務所を開設し、社員を増やしていった(現在は12名)。

間もなく、南アフリカのベンチャー投資企業Newtown Partnersから投資を受け、Walaは$DALA暗号資産を発行し、Dala財団を設立した。Newtown Partnersのトップに、Civicとイーサリアム・ベースのプロジェクトで知られるVinny Linghamがいるのは、おそらく偶然ではない。

Martinezは、仮想通貨が、アフリカのような新興市場が長年欲していた解決策になると情熱を燃やしている。「この計画の価値尺度と価値貯蔵が$DALAであることが、その実用性を証明していて、新興市場での望ましい金融システムになる可能性を示しています。立ち上げの時期から関ることができて、とても嬉しく思うと同時に、消費者のための的確で使いやすい金融システムの構築を手伝えることを、とても楽しみにしています」

彼女はこうも話している。王子もウガンダ政府も「金融包摂を促進して、人々にとって、金融をより効率的なデジタルシステムにするためのパートナーを探していました。そのとき、私たちのことを聞いたのです。話をしてみると、私たちは互いに、暗号資産の上にエコシステム全体を構築できると感じました」

「消費者が単にエネルギーを仮想通貨で購入するというだけでなく、エネルギーグリッドを建設する人たちの賃金も仮想通貨で支払われるということなのです。そのため、とくにエネルギーの観点から、みんなはブロックチェーンで透明化を果たそうと、大変な関心を持つようになりました。政府と一緒に、より信頼性の高い記録を付けることで、汚職の可能性も低減できます」

Martinezはこう指摘する。「ウガンダの10万人以上の利用者が見守る中で、人々はすでに電気や製品やサービスを買っています。この計画の目標は、電気を買う人々が、私たちが提供する他のすべてのサービスも利用してくれるようになることです。私たちは、現金の交換所の開設も予定しています。人々が、街でモバイル・マネーを現金に、また現金をモバイル・マネーに交換できるようにするのです」

これは本当に大きな計画だ。「ウガンダ」と「仮想通貨」という言葉が同じ文章の中に登場するのを見て、陳腐で否定的な評価を下す人もきっといるだろう。

しかし、新興国の渇望、熱心な王子、住民の団結と結びついたWalaの現地での活動は(西欧諸国でのブロックチェーンの会議によくいる肘掛け椅子にふんぞり返った評論家と異なり、その重要さはどんなに誇張しても物足りないほどだが)、決して見くびってはいけない。

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(翻訳:金井哲夫)

仮想通貨の巨人Binanceは法定通貨取り引きと非中央集権型取引所に未来を賭ける

Binanceは、1年前にどこからともなく現れたスタートアップだが、今や世界でもトップクラスの仮想通貨取引所になっている。それが、ビジネスを次の段階に推し進めようと、大きく動き始めた。これには、国際市場での法定通貨と仮想通貨の取り引き、そして同社の通貨取り引きサイトを補完する非中央集権型の取引所の開設といった計画が含まれている。

同社は、今の弱気な市場においてすら、毎日10億ドル以上の仮想通貨の取り引きを行っている。しかし今日まで、仮想通貨同士の取り引きしか許可されてこなかった。これは主に、法定通貨の交換サービスを認可する法的規制の問題に行く着くのだが、今はその転機を迎えている。

先週、シンガポールで開催されたCoindeskのイベントで、CEOの趙長鵬(ジャオ・チャンポン:CZ)は、世界中の市場に法定通貨の交換サービスが可能な取引所を大量に開設する計画を明らかにし、詳しい話をTechCrunchのインタビューで話してくれた。

「今のところ、私たちは中央集権型で仮想通貨同士の取り引きを行っています」と趙は話す。「法定通貨のゲートウェイは提供いていないので、そこは他社に依存しています。しかし、世界中の政治家と交渉したところ、法定通貨のチャンネルを持つことができました。法定通貨を、仮想通貨の世界へ簡単に持ち込めるようにしたいのです」

機関投資家による資金は確かに必要だ。Bloombergの分析によれば、仮想通貨の価格は1月の高値から55パーセントも下落した。そのため、Binanceのような主要プレイヤーは、この傾向を逆転させるために、大手による多額の資金援助が必要となる。不誠実な相場師が仮想通貨の世界から立ち去ることから、価格が下がることを歓迎する人も少なくないが、仮想通貨への関心の低下は、取り引きの促進によって利益を得ている人たちにとっては好ましくない。

趙は、今年中に3箇所の法定通貨取引所を開設し、2019年までに10箇所に増やす計画を口にしていた。「理想的には、ひとつの大陸に2箇所」とのことだ。この計画の目標のひとつには、大手の機関投資家が仮想通貨エコシステムに資金を投入しやすくすることがある。それによって、Binanceだけでなく、業界全体が潤う。

小売り業者と機関投資家との両方に対応したいと、彼は話す。「私たちは、ターゲットを小売り業者に絞ってきましたが、機関投資家が仮想通貨の世界に入ってくることを、とても楽しみにしています」

2018年7月、ツークで開催されたTechCrunchのブロックチェーン・イベントで話をするBinanceのCEO趙長鵬(写真:Daniel Vaiman/Explore To Create)

 

Binanceはすでにリヒテンシュタインで合弁事業を行っており、マルタで法定通貨を扱うこと、そしてシンガポールに取引所を準備していることを公表している。現在はまだ限定的なベータ版だが、シンガポールの取引所は、顧客確認、トレーディングフロー、スケーラビリティーといった分野の負荷テストを済ませた後、来月中には営業を開始するという。

Binanceが興味を示している他の市場について、彼はとくに言及していなかったが、いずれも仮想通貨の主要市場でありながら規制が厳しい中国、日本、アメリカは対象地域から除外すると明言している。中国は、少し前にICOと取引所を禁止した。アメリカは仮想通貨の解析を始めている。日本は、取引所で扱えるトークンの種類が制限されているなど、取引所の認可に関する規制が非常に厳格だ。

「日本では仮想通貨が発達していますが、取り引きに関する規制が厳しすぎます」と趙は言う。「そのため、取引所の開設がとても難しい」

実際、現地での営業を断念する前に東京にオフィスを構えていたことのあるBinanceが、日本で営業免許を取得しようとすれば、取り扱うトークンの種類を日本の規制に合わせて選び直さなければならない。だから、その判断は理にかなっている。いずれにせよ、趙にはまだ日本を再評価する気はなさそうだ。

Coinbaseはさらに多くの仮想通貨を準備しているようだ(本文は英語)

また趙は、中国のICOと取引所を禁止した決断を「評価する」と述べ、アメリカでは他社に重労働を丸投げできてハッピーだと話している。

「アメリカには興味がありますが、優先度は一番ではありません。他の人たちが私たちより先に入るでしょう」と彼はTechCrunchに語った。

ニューヨーク州司法長官Barbara Underwoodは報告書の中で、州の取引法に違反している可能性のある3つの取引所のうちのひとつとしてBinanceを挙げていることを考えれば、それは驚くに当たらない。これについて、趙はコメントを控えた。いずれにせよ、アメリカの法律の枠内で取引所を開設するためには、アメリカの規制の側にせよ、Binanceの側にせよ、変えなければならないことが山ほどある。

その代わりに、マルタやバーミューダのような仮想通貨に寛大な国に参入したBinanceは、提案中の取引所の開設に成功すれば、シンガポールにオフィスを構える予定だという。

法定通貨の他に、同社は、売り手と買い手が仲介者を通さずに直接取り引きできる非中央集権型取引所(DEX)の開設も目指している。

著名な人たちは、中央集権型取引所を非難してきた。イーサリアムの開発者Vitalik Buterinは、資金管理、資産選択、価格など、中央集権型取引所の多くのものを「地獄で燃やしてしまえ」とまで言い放っている。Binanceは、それが同社の市場ポジションであるという単純な理由から、独自のDEXを持つ他の企業と同程度に進歩しているようなので、他者を追随させることができるだろう。

BinanceのDEXは、今日行われている取り引きの流れを劇変させるだろうが、(趙がCoindeskに語ったところによれば、過去6カ月で3億5000万ドル(約395億円)の利益を出した)Binance自身は、それでも利益を上げることができる。なぜなら、そのDEXはBinance自身のブロックチェーン上で、同社のノードを大量に使って運用されるからだ。ノードが取り引きに使われれば、ネットワーク使用料が入ると趙は話している。

同時に、DEXの利用量が増えればBinanceのBNBトークンの価値も上がり、利益が得られると趙は主張している。

先日、Binanceは、DEXの本当に初期型のデモを公開したが(ネタバレになるが、大したものではなかった)、完全版のサービスが今年の年末か、遅くとも2019年の初めには使えるようになると趙は話している。現在はBinanceのCEOである趙だが、Bloombergに先物取引用のソフトウエアを開発していた経験もあり、プロジェクトの開発も指揮している。

「開発は順調です」と彼は言う。「私たちのDEXは非常にシンプルですが、高速です」

 

取引所のビジネス以外にも、Binanceは仮想通貨業界全体を成長させる事業にも取り組もうとしている。今年の初め、同社によると10億ドル(約1130億ドル)相当の投資ファンドの設立を発表した。企業と、新しい仮想通貨投資ファンドに直接投資するという。また、世界中でアーリーステージのアクセラレーター・プログラムを実施するという意欲的な計画もある。仮想通貨エコシステムを支援して、新しいビジネスの開発を助けることが狙いだ。

両方のプロジェクトを管理するBinance Labs部門の責任者Ella Zhangは、先月、ブロックチェーンと仮想通貨の実際の使用事例は、Binanceがビジネスとして「成功」するために欠かせないと、TechCrunchに率直に語っていた。

注:著者は少額の仮想通貨を保有している。理解を深めるためには十分だが、人生を変えるほどの額ではない。

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

仮想通貨税金計算サービスのクリプタクト、ジャフコ、マネーフォワードらから3.3億円を調達

仮想通貨投資家向けの税金計算および資産管理サービスを提供するクリプタクトが、3.3億円の資金調達を発表した。ジャフコ、マネーフォワード、D4V投資事業有限責任組合、ベンチャーラボ、SV-FINTECH1号投資事業有限責任組合、スマートキャピタルらを引受先とする第三者割当増資を実施する。

同社は合わせてマネーフォワードとの業務提携を発表した。まず、セミナー開催など仮想通貨分野の情報提供に取り組む。将来的には、マネーフォワードのサービスから、クリプタクトの仮想通貨投資家向け機能を活用するなどの連携も考えているとのことだ。

調達した資金の使途として、(1) マーケット成長のための情報発信、(2) 新たな仮想通貨投資家向けサービスを含めたワンストップの投資家支援プラットフォームの提供、(3) 人材採用を挙げている。

クリプタクトは、ゴールドマン・サックス出身で金融分野のエンジニアおよび投資家の経歴を持つアズムデ・アミン氏が代表取締役となり設立。2017年12月に最初のサービスとして仮想通貨投資家向けの無償の税金計算サービス「tax@cryptact」を公開した。2018年2月には税理士向けの有償サービス「taxpro@cryptact」(関連記事)を、同3月には仮想通貨のポートフォリオ管理機能サービス 「portfolio@cryptact」(発表資料)をそれぞれ開始。これらを統合して仮想通貨投資家向けのプラットフォーム「grid@cryptact」を提供する。今後は、仮想通貨の情報収集、分析、投資実施までワンストップで行えるプラットフォームの構築を目指すとしている。

クリプタクトのサービスの利用者は、現在約3万人。一方、日本で仮想通貨投資を行っている利用者は350万人とみられている。「そのほぼすべてのユーザーが税金計算サービスtax@cryptactについてはターゲットになる」(クリプタクト)。その理由は、日本の仮想通貨の税制が煩雑なため、税金計算にはツールが必須となるためだ。

今の日本の税制では、仮想通貨の取引ごとに法定通貨建てで実現損益を計算して申告することが求められる。そのため仮想通貨投資家の税金計算の負担は非常に大きい。クリプタクトによれば、「単一の取引所で円建での売買しか取引せず、かつ取引件数が手計算で行えるほど少ない場合を除けば、税金計算ツールの利用は欠かせない」としている。事実上、仮想通貨取引を行っているほぼすべてのユーザーにとって税金計算ツールが欠かせないとの見解だ。

今回同時に発表したマネーフォワードとの提携は、短期的にはセミナーなど情報発信から始める形だが、将来的にはマネーフォワードのサービス内で、クリプタクトの仮想通貨の資産管理や税金計算ができる方向を目指しているとのことだ。

「マネーフォワードとの連携では、仮想通貨の業界をより成熟・健全化していくために協力してく。例えば納税に関するサポートは業界のさらなる健全化につながる」とクリプタクトは説明する。

今、日本の仮想通貨を取り巻く状況は厳しい。その背景には、仮想通貨の大量盗難事件、仮想通貨交換業者に対する相次ぐ行政処分、そして2017年末の価格のピーク時と比べて相場が大幅に下落していることなどがある。規制強化にともない仮想通貨交換業のライセンスのハードルは高くなり、ライセンスを前提としたビジネスを考えていたスタートアップ企業は計画の見直しを迫られている。このような状況のもとで、税金計算など仮想通貨投資家を支援するツールの整備が進むことは、仮想通貨市場の健全化という観点で見ても、また仮想通貨の税制の煩雑さに悩む個々の利用者にとっても良いニュースといえるだろう。

ブロックチェーンでチケット転売防止、京大発スタートアップLCNEMの「Ticket Peer to Peer」

京都のスタートアップ企業であるLCNEMは、パブリックブロックチェーンを応用した転売防止機能を備えるチケット発行管理のサービス「Ticket Peer to Peer」を公開した(発表資料)。パブリックブロックチェーンの機能を、送金やゲームなどではなく、チケットの管理に使う。その仕組みはシンプルだが賢く、新しい。

最大の特徴である転売防止の仕組みについは後述することにして、概要を先に説明しておく。「Ticket Peer to Peer」はイベントのチケットの発行が行えるサービスで、仮想通貨NEMのパブリックブロックチェーンをバックエンドとするSaaS型クラウドサービスとして作られている。イベント会場などでQRコード読み取りによりチケットを検札する仕組みも備えている。

収益モデルは利用料モデルだ。発行するチケット1枚あたり50円をサービス側に支払う。支払い方法はPayPalだ。動作するブラウザはChrome、Edge、Operaとのこと。

チケットを発行するには、申し込み手続きなどは特に必要なく、Webサイト上の最小限の操作だけで完結する。サービスへのサインインにはGoogleアカウントを使うため、Googleアカウントの所有者であれば(つまり、多くのインターネットユーザーは)最小限のクリック数で使い始めることができる。イベント主催者のWebサイトにコードを埋め込む形で利用する。Webサイトへの埋め込み方のドキュメントも公開している。

Ticket Peer to Peerは、この2018年10月21日開催のイベント「BlockChainJam2018」の受付ページですでに使われている。LCNEMの木村優氏(代表取締役兼CTO)は「誰でもオープンに使ってもらいたい」と話す。

ユーザーの導線という意味では、イベント主催者のWebサイト内で申し込みを完結でき、ページ遷移が発生しない点もメリットだ。

改ざんできないブロックチェーンの特徴を転売防止に応用

今回のサービスTicket Peer to Peerの最大の特徴は、NEMのパブリックブロックチェーンを応用した転売防止の仕組みだ。以下に説明する。

まず、ブロックチェーン上の「アドレス」がそれぞれ1枚のチケットの役割を果たす。発行するチケットごとにユニークなアドレスを発行する形となる。

ブロックチェーンの機能により、各アドレスごとにブロックチェーン上のトランザクション(送金処理に相当する)を受け取っているか否かが分かる。受け取っていないチケットは「有効」、受け取ったチケットは「無効」とする。例えば、イベント会場でQRコード読み取りによりチケットを検札すると、その時点でチケットのアドレスにトランザクションが送られて「無効」になる。

同様に、もしチケットが転売されているのを誰かが発見した場合、NEMブロックチェーン上でトランザクションをそのチケットのアドレスに送信することにより(これは、NEMウォレットがあれば誰でも行える操作である)、チケットを無効化できる。つまり、チケット転売の通報と無効化を同時に行える。さらに、「誰が通報して無効化したのか」もブロックチェーン上に改ざんできない形で、つまり異論が出ない形で記録される。

ここで、転売の第一発見者に対してブロックチェーン上で報酬を送金することにより、通報のインセンティブとすることができる。それぞれのチケットの最初の通報者に限り報酬を送ることができるので、通報に関する不正や異議は発生しにくい仕組みとなっている。なお、通報者に対してどのような報酬をいくら送るのかはサービスの範囲外で、イベント主催者側の裁量となる。

通報のインセンティブとして送金できる報酬の形態は仮想通貨NEMのモザイク(トークン)ということになる。例えば、仮想通貨NEMのトークンXEM(ゼム)を送ることもできるし、日本円と連動する「LCNEMステーブルコイン」(内容は後述する)を送ることもできる。

LCNMEは、京都大学経済学部の現役の学生である木村優氏が2018年3月に設立したスタートアップ企業。今までに、Googleアカウントを持っていればきわめて簡単に使い始めることができる仮想通貨NEMのウォレットアプリ「LCNEM Wallet」や、日本円や米ドルなどと価格が連動しNEMウォレットで送受金できる「LCNEMステーブルコイン」とユニークなプロダクトを作ってきた。

LCNEMステーブルコインの法的な扱いだが、金融庁への法令適用事前確認手続き(ノーアクションレター)により、パブリックブロックチェーンを使ってはいるが法的には仮想通貨ではなく「前払式支払手段」であることが確定している。つまり、今や取得が非常に困難となった仮想通貨交換業のライセンスなしに発行することができるわけだ。

LCNEMは政治メディア×トークンエコノミーを目指すPoliPoliとも業務提携し、技術面での支援を行っている。PoliPoliも、やはり現役の慶應義塾大学の学生が起業したスタートアップである。

現役学生が作ったLCNMEのサービス群は、現段階ではUIがやや無愛想に見えるものの、発想のシンプルさ、賢さ、新しさが目を引く。ブロックチェーンの「ネイティブ世代」が作ったサービスの今後に期待したい。

仮想通貨取引所「Zaif」から仮想通貨約67億円流出、フィスコGが50億円支援で株式過半数取得

テックビューロは9月20日、同社が運営する仮想通貨取引所「Zaif」においてハッキング被害により総額67億円相当の仮想通貨が流出したと発表した。ハッキング被害にあった仮想通貨は、BTC、MONA、BCHの3通貨。流出した67億円相当の仮想通貨のうち、45億円が顧客からの預かり資産であり、残りの22億円は同社が保有する資産という。

この流出事件をうけ、テックビューロはフィスコのグループ企業であるフィスコデジタルアセットグループの子会社に支援を要請。これにより、フィスコデジタルアセットグループはテックビューロの株式の過半数を取得し、50億円の資本提供を行うこととなった。

2018年1月に発生したコインチェックのNEM流出事件と同じく、今回のハッキングのターゲットとなったのもホットウォレット(ネットワークに接続されたウォレット。手軽に仮想通貨を取り出しやすい一方で、セキュリティに懸念がある)だった。テックビューロは顧客からの入出金に対応するために、顧客からの預かり仮想通貨の一部をホットウォレットに保管している。その入出金用のホットウォレットを管理するサーバーに対し、2018年9月14日17時頃から19時頃までのあいだ、外部からの不正アクセスが行われたという。具体的なアクセスの手法については、公表されていない。

現在、テックビューロは入出金を停止している。再開のめどは立っておらず、「システムの安全性が確認われることが前提」と同社はコメントしている。流出した預かり資産について、同社はフィスコデジタルアセットグループから調達した50億円によって流出した分の仮想通貨を調達し、「お客さまの資産に被害が及ばないように準備を行う」(テックビューロ)としている。フィスコから調達した資金は今月下旬には提供されることを前提として、準備・交渉をしているという。

なお、ロイターが報じたところによれば、金融庁は20日にもテックビューロへの立ち入り検査を実施する予定だという。

テックビューロは今回の流出事件をうけ、「(テックビューロ経営陣は)過半数の支配権を取得するフィスコグループの経営陣に引き継ぎなどをする責務をまっとうした場合、経営責任として弊社の役員を退任する方針だ」と発表している。

楽天が仮想通貨交換業参入へ、みんなのビットコインを2億6500万円で買収

楽天は8月31日、連結子会社である楽天カードを通じて、仮想通貨交換業を営むみんなのビットコインの全株式を2億6500万円で取得することを明らかにした。

本株式取得は楽天カードと、みんなのビットコインの親会社であるトレイダーズインベストメントとの間で締結された株式譲渡契約に基づくもの。10月1日を株式譲渡実行予定日としている。

Eコマースを中心にトラベルやデジタルコンテンツ、金融など70を超えるサービスを運営する楽天。これらのサービスを楽天会員を中心としたメンバーシップによって結びつけ、独自の「楽天エコシステム」を拡大させてきた。

そのような環境において同社では2016年に「楽天ブロックチェーン・ラボ」を英国に設立し、ブロックチェーン技術の研究を推進。将来的にEコマースや実店舗での決済、個人間での決済手段として、仮想通貨による決済機能の役割が大きくなっていくと見込んでいるようだ。

仮想通貨の決済手段を円滑に提供していくためには仮想通貨交換所機能の提供が必要であること、 また楽天証券において、FX顧客を中心に仮想通貨による運用機会の提供を期待する顧客の声が大きくなっていることもあり、仮想通貨交換業への参入を検討してきたという。

今回買収したみんなのビットコインは、2017年3月30日に仮想通貨交換所のサービスを開始。2017年9月7日に仮想通貨交換業者の登録申請書を提出し、現在はみなし仮想通貨交換業者として営業している。2018年4月25日には関東財務局より業務改善命令を受け、現在は指摘事項の課題について改善を図っている段階だ。

楽天ではみんなのビットコインが仮想通貨交換業者の登録を目指すには、楽天グループの傘下で事業を強化することで、事業の安定や拡大の実現とともにユーザーへ価値を提供できると判断。株式譲渡に関する協議に入ったという。

株式取得の決定に至った理由として「これまでのみんなのビットコインによる仮想通貨交換業のノウハウと楽天グループの広範な金融事業におけるノウハウを合わせ、事業体制の確立を行うことで、早期の仮想通貨交換業者としての登録と今後の仮想通貨に関するサービス発展に向けた事業展開が期待できると判断し、今回の株式取得の決定に至りました」としている。

AnyPay、株式配当のように“収益を分配するトークン”の発行システムを開発中

割り勘アプリ「paymo」などを提供するAnyPayは8月10日、グループ会社でシンガポールに籍をおくAnyPay Pte.Ltd.にて収益分配型のトークン発行システムを開発中であることを発表した。2018年中にもシンガポールと日本でリリースされる予定だ。

株式ではなく、仮想通貨を発行することによって資金を調達するICOは、新しい資金調達手法として徐々に市民権を獲得しつつある。coindeskによる統計を見ると、2018年7月末時点におけるICOによる累計資金調達額は世界全体で200億ドル(約2兆2000億円)を超え、特に2017年から急速に普及してきたことが分かる。

写真: coindesk

しかし、その一方で、日本を含む各国ではこの新しい資金調達手法に適用する法律や規制が十分に整備されていないのも事実だ。そのために、ICOによる資金調達を断念する企業も多い。

そんななか、仮想通貨を利用した新しい資金調達手法として近年注目を浴びているのが、金融商品関連法令にもとづく金融商品としてトークンを発行して資金調達を行うSTO(Security Token Offering)だ。通常、ICOでは仮想通貨を発行する企業のサービスなどで利用できるトークンを発行することが一般的。これらのトークンは「ユーティリティトークン」と呼ばれる一方で、STOによって発行するトークンは、企業の所有権や配当など取引可能な資産によって裏付けられた「セキュリティトークン」と呼ばれる。

金融商品関連法令に則ったかたちでトークンを発行するためには、発行するトークンが金融商品であると認められなければならない。規制が不十分という環境のなか、仮想通貨による資金調達を実現するためには、株式などの金融商品に近い性質をもつセキュリティトークンはこの点で有利となる。

そのような背景もあり、STOによる資金調達を計画する企業が増えてきてはいるものの、実施に先立って調査すべき法的要件や必要書類は多岐に渡り、経験がない企業がイチからSTOを実施するのは非常に困難であることも事実だ。

そこでAnyPayは、これまで展開してきたICOコンサルティング事業で培った知見を利用し、企業がより簡単にSTOを実施できるようなシステムを開発中だ。AnyPayはコンサルティング事業を通して、これまでに「数社」の企業を相手にICO実施のサポートを行ってきた。そのなかには、STOによって合計約1800万ドルを調達した企業もあるという(ただし、この例はインド企業)。

開発中のトークン発行システムの詳細はまだ明らかにはなっていないものの、同システムでは「トークン発行機能、STOを実施したあとの配当配布やIRを円滑に進めるためのツール」が利用可能になるという。

なお、AnyPayは同システムの運営において、Gunosyやインキュベイトファンドなど事業会社やVCとの協業パートナーシップを交わしたことも併せて発表している。これらのパートナーが担う役割について、ICOコンサルティング事業の責任者である山田悠太郎氏は、「事業会社のパートナーとは、ブロックチェーンの仕組みを活かしていかにセキュアで透明性のある全体の仕組みを作っていくかなど(システムの開発面で)協業を進める。パートナーシップに参加する各ファンドとは、彼らの投資先企業のバリューアップをSTOによってお手伝いすることで、ファンドとAnyPayの両社にメリットのある協業ができると考えている」と話した。

仮想通貨取引所向けウォレットのスタンダード目指すフレセッツ、UTECとセレスから約3.5億円を調達

仮想通貨やブロックチェーン技術の研究開発を行うフレセッツは6月18日、UTEC(東京大学エッジキャピタル)およびセレスを引受先とした第三者割当増資により総額3億4900万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回調達した資金をもとにエンジニアの採用など組織体制を強化する方針。近日公開予定の事業者向けウォレット管理システム「Bitshield」の開発を進めるほか、マーケティング活動への投資も行う。

フレセッツは2017年8月の設立。同年9月にセレスとストーンシステムから約2300万円、2018年3月にも同じくセレスとULSグループから約3500万円を調達している。

社内に専門家がいなくても導入できるウォレット

フレセッツが現在開発しているのは、複数のホットウォレットとコールドウォレットをそれぞれマルチシグで複合利用できる事業者向け(仮想通貨取引所向け)のウォレットだ。

「コールドウォレット(ネットワークに接続されていない環境に秘密鍵を保存したウォレット)」や「マルチシグ(送金に必要な秘密鍵を分割し複数管理することでセキュリティを高める技術)」については1月にコインチェックからNEMが流出した騒動で取り上げられたこともあり、仮想通貨を保有していない人であっても聞き覚えがあるキーワードかもしれない。

この1件の影響もあり、金融庁では仮想通貨交換業者への一斉検査を実施。複数の事業者が行政処分の対象となり、一時は16社あったみなし業者も半数以上が登録申請を取り下げている。

こういった背景からすでに仮想通貨交換業に参入している事業者やこれから参入を目指している事業者は、これまで以上にセキュリティ面に配慮する必要がでてきた。特に安全性と利便性を兼ね備えたウォレットの整備は急務だ。

今までウォレットと言えば一般ユーザー向けのものが複数登場する一方で、事業者向けのものはアメリカの「BitGo」などほんのわずか。このBitGOでさえもAPI利用が前提となるため、コンプライアンス面がネックになる場合もあるという。

フレセッツのBitshieldはそのような事業者の課題を解決すべく、ウォレットの組み合わせやマルチシグによる運用管理をはじめとした機能により安全面を担保。それと同時に可用性やスケーラビリティを実現することを目指したものだ。

Bitshieldでは根幹となる標準化されたモジュールと、顧客ごとにカスタマイズできるモジュールを明確に分割。社内に高度な知識やスキルを持つ専門家がいない事業者でも、社内の内部統制基準に合わせて導入できることが特徴だ。技術面のアップグレードや、将来的に金融庁から新たな要望があった場合にも対応できるように設計しているという。

利用料金は初期費用と月額の利用料。BitGoのように出金額の一定割合(0.25%)が手数料となる仕組みではなく、取引額の大きい取引所でも使いやすい形で提供する。

まずは近日中にビットコイン向けのウォレットをリリースする計画で、年内を目処にイーサリアムなどほかの通貨への対応を目指す。

事業者向けウォレットのデファクトスタンダードを目指す

フレセッツの代表取締役社長を務める日向理彦氏は、東京大学の博士課程在学中にビットコインと出会ったことをきっかけに、モナコインの取引所の開発・運営を始めビットコイン決済のできるECサービスや、Twitter上でビットコインを送金できるサービスなどを開発してきた。

並行して専門家向け、初心者向けに仮想通貨関連の勉強会をかれこれ約2年に渡って運営。エンジニアとしてプロダクトを開発するだけでなく、ナレッジの提供や情報発信なども積極的に行っている。

フレセッツ創業のきっかけとなったのは、2017年4月の改正資金決済法の施行が決まった2016年の秋頃。これを機に仮想通貨交換業への参入を決める企業が一気に出てきた中で、上述したようなウォレットの問題が発生し、日向氏のもとに相談が寄せられたのだという。

共同創業者である余語邦彦氏とともにいくつかの事業者を回り、事業者向けウォレットのニーズを確認。8月にフレセッツを創業しBitshieldの開発を始めた。

2人の話では「社内に専門的な技術者がいない事業者が仮想通貨交換業に参入するのは日本がはじめてのこと」で、そこに海外展開も含めて大きなチャンスがあるという。まずは事業者向けウォレットのデファクトスタンダードを目指しつつ、ゆくゆくはウォレット以外にも同社の仮想通貨・ブロックチェーン技術を活用したプロダクトを開発する予定だ。