Web接客ツール「CODE」提供のエフ・コードが2.8億円を調達、マイナビなどと資本業務提携

ウェブマーケティングツール提供とコンサルティング事業を展開するエフ・コードは9月27日、マイナビ、オークファン、そして複数の個人投資家を引受先とした普通株式の発行による第三者割当増資の実施、ならびに日本政策金融公庫による挑戦支援資本強化特例制度の適用を受け、合計約2.8億円の資金調達を実施したと発表した。シリーズAと位置付ける2018年4月以来の資金調達額は累計で約4.2億円となる。

調達した資金をもとに財務基盤の強化を図るとともに、2018年7月(7月17日)にローンチした次世代型Web接客ツール「CODE Marketing Cloud」の持続的な開発による機能拡充、およびこれを軸とした事業の成長促進を加速させる。「CODE Marketing Cloud」に関しては以前に詳しく紹介しているので、そちらを参考にしていただきたい。

マイナビは運営する各メディアにおいて「CODE Marketing Cloud」の活用を検討。メディアの利便性・価値の向上を図るとともに、将来的には互いの強みを生かした新たなビジネス開発も見据え、協働を進めていく。オークファンとも同様に、オークファンのデータ面における強みとエフ・コードの技術の連携により、新たなデータビジネスの構築に取り組む。

「CODE Marketing Cloud」はリリース直後より、大手企業を始めとした数十社への導入が進んでいる。導入した企業は、Webサイト来訪者の訪問回数・訪問ページ等の行動履歴や連携した外部データソースの情報を元に、Webサイト内のユーザー一人ひとりへの接客を最適化することが可能になり、CVR向上やROI向上などの成果が見込める。また、ツールの運用支援コンサルティングを行うことで、マーケターの工数を削減すると同時に、効果的な導入・運用のためのサポートにおいても価値を提供する。

エフ・コード代表取締役社長の工藤勉氏は今回の調達に関して「“データの利活用”に資する機能を中心とした商品開発」が大部分となると話した。同氏は「この先、我々は様々な資本提携を結んで行くと考えている」と話した上で「各事業社間で上手くデータを利活用するようなスキームを我々が間に立って作っていければ良いのではないか」と説明していた。今後も取材を続けたいと思う。エフ・コードが経営理念として掲げる「マーケティングテクノロジーで世界を豊かに」という世界観が今後、更に大きなものになることを期待したい。

語学力よりつながり重視、多様性をフラットに楽しめる英会話カフェ「LanCul」が5600万円を調達

LanCul代表取締役CEOの阪野思遠氏

語学スクールより気軽に英語での会話を楽しみたい。身に付けた英語を忘れないように話す機会を持ちたい。そうした人たちに向け、最近、都市部を中心に英会話カフェのサービスが増えている。その英会話カフェ事業を展開するLanCul(ランカル)は9月25日、日本ベンチャーキャピタル、DBS、StartPointを引受先とする、総額約5600万円の資金調達実施を発表した。

LanCulは2013年2月の創業。下北沢でカフェと英会話を組み合わせた、いわゆる「英会話カフェ」を開設し、運営してきた。現在は、10月1日にスタートする2店を含めると、都内17店のカフェ・バーでサービスを展開する。1店舗目の下北沢の直営店以外では既存のカフェ・バーと提携し、空席をシェアする形を取っている。

LanCulのサービスは大きく分けて、グループトークの「CONEECT」とマンツーマンレッスンの「FOCUS」の2つ。主要サービスのCONNECTでは、ユーザーは予約不要で全店舗を利用可能。自分が行きたいときに各店を訪れて、ブラウザ上のシステムからチェックインした後は、飲み物や食べ物をとりながら「メイト」と呼ばれる外国人スタッフと自由に英語での会話を楽しめる。メイトの顔ぶれや混雑状況をクラウドで確認して、訪れる店を選ぶことも可能だ。

料金体系はスポーツジムと似ていて、いつでも通い放題のプランで月額1万9800円、平日夕方のみ通い放題のプランが月額1万1980円、平日午後のみ、または土日祝日のみ通い放題のプランでは、それぞれ月額9800円(いずれも税抜価格)。このほかに月4回・月2回利用可能なプランと、単発で1時間だけ利用できるプランがある。

月額制の通い放題各プランでは、規定の日時の範囲内であれば、何回でも、何時間でも通うことができる。また逆に30分だけ顔を出す、といったライトな使い方も可能だ。LanCul代表取締役CEOの阪野思遠氏は「コミュニティとして濃い付き合いができるようなサービス・料金設計をした。週4〜5回通うというユーザーもかなりの割合でいる。友だちとお茶する感覚で利用してもらっている」と話す。

阪野氏は「ユーザーが他の国の人の考え、文化の多様性に触れることができ、利害関係なしで会話できる場として、サービスを提供している。LanCulのグループトークでは、日本人同士でも英語で会話するのだが、年齢や肩書きなどの上下関係なしでフラットに話ができる。そういう会話を楽しむことで元気になってもらい、ユーザーの生活に活力をもたらす、というのが、LanCulで本来やりたいこと」と語る。

情報番組や雑誌、ウェブメディアなどでも話題となる英会話カフェには、競合サービスも多い。阪野氏は「競合には、語学スクールを母体にした英会話カフェが多いが、LanCulは元々の目的、サービスのアプローチが違う」という。「LanCulが目指すのは、会話によって他の文化に触れ、生活が豊かになること。多様性を実感して、人と人とのつながりをつくるために会話ができるようにしよう、というサービスなので、英語の上達そのものを目的にはしていない」という阪野氏。また、スクール発の英会話カフェでは、利用料金は安いがスクールの受講へつなげることを目的とした、客寄せ的なものもあるという。

語学×外国人とのつながりということで言えば、「フラミンゴ」のようにカフェで講師と待ち合わせてレッスンを受けられるような、スキルマッチングの仕組みもある。こうしたサービスについては、阪野氏は「英会話スクールと同じで予約が必要であることと、マンツーマンレッスンなので自分に合う先生を探す手間がかかるということが難点」と話す。「予約なしでも行ける利便性、コミュニティの濃さによる安心感がLanCulの特長。僕は人とのつながりを作るにはコミュニティが一番と考えている。LanCulでは会員同士の会話でもケミストリーが生まれている。『誰かいるから顔を出す』といったコミュニティの濃さは、マンツーマンでは難しい。つながりを育むことができるのがLanCulの価値だ」(阪野氏)

こうした「つながり重視」の考え方の原点は、阪野氏の生い立ちに由来する。阪野氏は上海出身。10歳の時、母の再婚で日本へ来ることになった阪野氏は、まったく日本語が話せなかった。初めは日本語も、日本の文化も受け入れられなかった阪野氏。だが、当時経験した言葉の壁・文化の壁、味わった挫折が阪野氏を「オープンにした」という。

「カルチャーを受け入れて好きになること、知りたいと思う気持ちができたことで、友人もできるようになり、言葉もわかるようになった。オープンになることで、コミュニケーションの“良い循環”ができる」と阪野氏。その後、英語も同じように「好き」「知りたい」というところからスタートすることで、すんなり身に付いたと話す。「コミュニケーションの濃さ、モチベーションの高さが外国語を身に付けるには重要。文法から入る語学教育は面倒くさいし、行きたくない気持ちが生まれて合理的ではないと思う。なぜみんな、違うやり方を続けるのか」(阪野氏)

LanCulでは外国人スタッフの採用でも語学重視ではなく、会話を盛り上げるファシリテーション能力、ユーザーがハッピーになれるかどうかを重視しているという。ユーザー側も最初は「アメリカ英語が学びたい」「イギリス英語が話せる人がいい」など、英語ネイティブによる会話を求めるが、結局は「楽しくなければモチベーションが下がり、続かない」ということで、楽しく会話できるメイトの方が人が集まるそうだ。現在在籍するメイトの数は、フルタイム、パートタイム合わせて約70名。出身国は約30カ国にのぼる。

今回の資金調達は、LanCulにとってシードラウンドにあたる。採用および店舗展開を加速し、2020年末までに関東一円を中心に100店舗までの拡大を目指すという。また、全国展開や東アジアなど海外への進出も検討しているそうだ。

現在は英語での会話ニーズが高いため、英語にフォーカスしているLanCul。だが「さまざまな国の出身者が自分の国や、旅してきた国のカルチャーを自然と伝える形になっている」と阪野氏はいう。今後、多言語展開も視野に入れていると言い、同じモデルで別の言語のサービスも考えているとのことだった。

さらに、よりテクノロジーを活用し、ユーザーに個別最適化された利用環境を整えたいというLanCul。阪野氏は「関連データの蓄積により、データを活用した何らかのサービスの提供にも取り組みたい」と述べていた。

プレイリストを軸とした新音楽サービス「DIGLE」“音楽体験をより豊かに、楽しく”

世界最大の音楽ストリーミングサービス「Spotify」が日本でローンチしてからちょうど2年ほど経ち、ここ日本でも音楽聴取の文化は徐々にだが変わりつつある。形式は物理的な販売からデジタルダウンロード、そして定額配信へと移行し、音楽の聴取・シェアの仕方もこれまで以上に多様になった。

僕がパンク少年だった中学生の頃はお気に入りの曲をCDからMDに録音して「ミックステープ」のようなものを作り、自分で聞いたり友達に貸したりしていた。その頃はSpotifyやApple Musicも、SoundCloudやBandcampもまだ誕生していなかったからだ。だが今は当時の僕が羨ましく思うくらい簡単に、より多くの人に自分がオススメしたい楽曲のリストを共有することができる。

そのように誰でも簡単に音楽のプレイリストをシェアすることができる「ストリーミング時代のミュージックプラットフォーム」がCotoLab.の提供する「DIGLE」だ。音楽ストリーミングサービスと直結しているので、登録し自分で作ったプレイリストを投稿・公開することで他のユーザーから“いいね”やコメントを貰え、人気が出るとランキングに掲載される。

音楽好きが作ったプレイリストが沢山掲載されているので、今までに聴いたことがなかった新しい音楽に出会うにはもってこいの場だ。ジャンルもロックやポップ、アコースティックなど様々なものが作られている。

CotoLab.は現在の日本での音楽聴取の方法について「世界各国で定額制音楽ストリーミングサービスが普及しており、日本国内でも大物アーティストの楽曲配信が続々と解禁されるなど、ストリーミングは着実に影響力を増してきている」と説明している。同社いわく「ストリーミングでは“プレイリスト”での音楽の聴き方が浸透しており、影響力あるプレイリストを作成している”プレイリスター”が登場してきている」そうだ。そういった経緯から、「プレイリストが人々の音楽体験をより豊かに、楽しくできるものだと考え」プレイリストを軸としたサービスを展開することになったという。

CotoLab.の代表取締役 西村謙大氏いわく、ストリーミングサービスとは別にスマートスピーカーなどが普及し始め音楽の「BGMとしての利用」が増え「プレイリストでの音楽の聞き方がより一般的になる」という変化を見越してDIGLEの開発にいたったという。世界のストリーミングユーザーの半数強がアルバム単位でなくプレイリストで音楽を聴いていると指摘した上で「日本でもストリーミングのユーザーはどんどん増えている。今後(日本でも)そういう聴き方になっていくのでは」と話した。「そうなった時に、僕たちはサービスとメディアを通してそういった聴き方に合った情報の出し方をしたいと考えている」(西村氏)

DIGLEに加えてCotoLab.が展開し力を入れているのが「DIGLE MAGAZINE」というメディアだ。他の音楽メディアと違い「DIGLEがプレイリストに特化しているように、DIGLE MAGAZINEもプレイリストに特化している。面白いプレイリストを毎日1つ紹介する、ということをベースでやっている。埋め込みのプレイヤーがあるので、そのまま音楽にアクセスできる」と西村氏は説明した。DIGLE編集部が提供しているプレイリストの他にも、ネクストブレイクを狙う新進気鋭のアーティストたちが紹介されているなど、コンテンツも豊富だ。

そんなCotoLab.は9月20日、シードラウンドにて三菱UFJキャピタルや豊川竜也氏、その他個人投資家3名を引受先とする第三者割当増資、さらに日本政策金融公庫からの融資と合わせて総額4200万円の資金調達を実施したと発表した。

現在はSpotifyの音源に特化しているが、Apple Musicなどへ他のサブスクリプションサービスへの対応などを目指し開発を進めていくという。DIGLE MAGAZINEに関しても、コンテンツ量を増やしていく予定だ。

「今まではサービスに力を入れており、メディアにはそこまで力を入れていなかった。今回の調達をきっかけに、色んなライターさんに関わっていただいて質と量の両方を増やしていく予定だ」(西村氏)

「現状、サービスもメディアもウェブのみでの展開なので、将来的にはアプリ化したい」と西村氏は話していた。

シェフ版のWeWorkで“飲食店経営のサービス化”へ――favyがマイナビから10億円を調達

“飲食店が簡単に潰れない世界”の実現に向けて、食領域で複数のサービスを展開するfavy。同社は9月25日、マイナビを引受先とした第三者割当増資により約10億円を調達したことを明らかにした。

favyと言えば6月に約5億円を調達したばかり。そこからわずか数ヶ月で新たに10億円もの資金を調達したことになる。

マイナビとは事業面で連携を深めて飲食店向けのサービスを一気に拡大していく狙いもあるが、どうやら調達した資金を基に新サービスを含むサービス群の拡充と、いわば“シェフ版のWeWork”とも言えるシェフ向けのコワーキングスペースの開発に力を入れていくようだ。

マイナビとのタッグで営業網を一気に拡大

以前から紹介しているように、favyの事業は幅が広い。

月間閲覧者数が6700万人を突破したグルメメディア「favy」を始め、簡単にホームページが作れる「favyページ」やサービスEC「ReDINE」といったWebサービスに加え、自ら飲食店も経営している。

現在もさらなるラインナップの拡充を進めていて、つい先日にはキッチンも客席もシェアするレストラン「シェフのためのコワーキングスペース」を今秋銀座にオープンすると発表したばかり。また本日より前回取り上げた飲食店向けのMAツール「顧客管理ツール」と、favyの導入店舗へ食材や調理器具、サービスを紹介できるプラットフォーム「favy store」の提供も始めた。

冒頭でも触れた通り、favyにとって今回の資金調達のポイントのひとつはマイナビとタッグを組んだことだろう。今年に入ってぐるなび×楽天食べログ(カカクコム)×KDDIRetty×ヤフーといったように、グルメサービスを提供する各社と他業界の大手企業が連携を深めている。

favyのパートナーはマイナビということになったが、特に営業面でプラスの影響が大きいようだ。同社代表取締役社長の髙梨巧氏によると、すでに「マイナビバイト」を運営するマイナビのアルバイト情報事業本部とfavyのサービスの販売協力トライアルを都内で始めているそう。

これまでfavyでは東京と大阪の2拠点で営業を進めていて、顧客となる飲食店もその2地域が中心だった。そこに営業体制1000名以上、60を超える拠点をもつ同事業部のリソースが加えることで全国の飲食店へfavyのプロダクトを一気に広げる計画だ。

高梨氏いわく「B2BのSMB(中小企業)向けのプロダクトは泥臭い営業活動が重要」であり、「現在約50人体制の社内営業チームを大幅に強化し営業の面を作ることで、プロダクトの拡充だけでなく飲食店とのマッチングを進めていく」という。

また採用面に強みを持つマイナビと飲食店向けの採用ブランディングサービスを共同開発し、飲食店の人手不足に関する課題の解決も目指す。

ソフト領域のサービス拡充とハード領域への進出

並行して、調達した10億円を使ってfavyはこれからどんなことに取り組むのか。鍵となるのは「ソフト」と「ハード」という2つの軸だ。

favyではこれまでSaaSのような形で、飲食店の“集客”の課題を解決するプロダクトを軸に展開してきた。本日より提供開始となったMAツールもまさにこの領域のサービスだ。

今回マイナビとタッグを組むことで採用面でのプロダクトも今後強化できるだろうし、多くの飲食店をサポートしたり直営店で貯めたナレッジを活用したりすることで、メニュー開発や企画の面でも飲食店を支援できるだろう。

これまでサービスの拡充を図ってきた中でソフト領域がある程度整ってきたからこそ、「ハード領域にも積極的に取り組んでいくフェーズ」(高梨氏)に変わってきたのだという。

それに向けた動きのひとつが本日スタートしたfavy storeだ。ここには飲食店の「仕入れ」をサポートするプロダクトで、食材はもちろん、調理器具、家具、ユニフォーム、清掃、予約サービス、店舗BGM、アプリなど飲食店経営に役立つツールが掲載される。

メーカーなど出店する企業にとっては、favyを導入する全国3万店舗以上の飲食店に掲載料無料で自社の商品を紹介できるのがメリット。高梨氏によればこのサービス単体で収益化を図る意図はないそうで、サービスの利便性が増した結果「飲食店がfavyを選ぶ理由になればいい」と話す。

まずは100以上のストアがサービス上に並ぶことを目指していて、調達した資金の一部はこのfavy storeやMAツールのシステム開発、エンジニアの採用強化に用いる。

WeWorkがオフィスをサービス化したように、飲食店経営もサービス化

そしてもうひとつ、favyが資金を投じて取り組んでいるのが、シェフが料理だけに集中できる新しい形態のコワーキングスペース兼シェア型レストランだ。

「WeWorkがオフィスをサービス化したのと同じようなことを、飲食店でもできるのではないかと考えている。シェフが自分で飲食店を構え、運営するにはかなりの初期コストがかかる。料理を作る以外の部分をフルセットでサポートすることで、飲食店経営をサービス化したい」(高梨氏)

高梨氏の話す通り、favyのコワーキングスペースではシェフが起業する際の課題となる「出店コスト」「スタッフの採用」「集客ノウハウ」が必要ない。

見た目は1つの飲食店に見える約120坪(120席ほどを予定)の店舗のキッチンには5人のシェフが滞在でき、それぞれに調理機材と収納スペースが用意。客席はもちろん、ホールスタッフも5人でシェアをする(スタッフはfavyが採用)。集客面でもfavyのグルメメディアと、同社が培ってきたナレッジを用いたサポートを受けられるのが特徴だ。

キッチンに立つシェフは定期的に入れ替わり、某アイドルグループの総選挙のように来店者が飲食店を評価し、ランキング化される仕組みを考えているそうだ。

「スタートアップ的な表現をすると、シェフがもっと簡単にPMF(プロダクトマーケットフィット)を図れるようにしたい。一度自分で飲食店を始めると、ピポットをするのも難しい。最初に初期コストを抑えて色々と試し、コアなファンができた段階で自分の店舗を持てばリスクも少ない」(高梨氏)

高梨氏によると以前から飲食店経営のサービス化の構想やシェフ向けのコワーキングスペースのアイデアがあったそう。これまでの期間は、そこに必要なモジュールをひとつずつ仕込んでいた段階だったと言えるのかもしれない。

favyでは今秋を目処に第一弾となるスペースを銀座にオープンする計画。「1拠点を作るのにけっこうなコストがかかる」(高梨氏)そうで、急激に多拠点展開をするという訳ではなさそうだけど、今後全国に同様のスペースを広げていきたいという。

街のおでかけメディアとSaaSでリアル店舗の集客課題解決へ、Patheeが三井物産らから6.5億円を調達

写真左からEight Roads Ventures Japanの村田純一氏、Pathee代表取締役の寺田真介氏、三井物産の大久保忠治氏

徒歩5分圏内の地域情報を検索できるサービス「Pathee(パシー)」を提供するPathee(2018年2月にトライトゥルーから社名変更)は9月25日、既存株主のEight Roads Ventures Japanに加え、三井物産(リード投資家)、地域創生ソリューション、第一勧業信用組合、シークウェル、SMBCベンチャーキャピタルを引受先とする第三者割当増資により総額6.5億円を調達したことを明らかにした。

Patheeでは今回調達した資金を基にビジネスサイドおよび開発組織の体制強化を進める方針。コンシューマー向けのおでかけメディア「Patheeメディア(Web版のPatheeのような位置付け)」、実店舗のマーケティング課題を解決するSaaS「Patheeパートナー」の拡大を目指す。

なおPatheeにとって今回のラウンドは2017年6月にEight Roads Ventures Japanなどから3億円を調達したシリーズAに続くもの。同社ではそれ以前にも2014年にオプトベンチャーズらから1.3億円を、2012年にはサムライインキュベートから数百万円規模の資金を調達している。

目的に沿ったスポットを探せるローカル情報検索サービス

同社が以前から手がけているPatheeについては何度も紹介しているけれど、個人的には初めて使ってみた際に「周辺のスポット検索に特化した『かゆい所に手が届くGoogleマップ』のようなツール」という印象を受けた。

Patheeは現在地やこれから向かうエリアから「徒歩5分圏内にあるお店やスポット」を検索できるサービスだ。

たとえば急にトイレに行きたくなって現在地付近でトイレを探したい場合、待ち合わせの駅に早く着いてしまったので少し休めるスポットを探したい場合、出先で切らしてしまった文房具を買いたい場合など、目的に沿った場所を検索できる。

この“目的に沿った”というのがPatheeの最大の特徴であり、意外と他のマップツールでは実現できていない価値だ。

たとえば「新宿で少し休憩できる場所」を検索するために、「新宿 休憩」というキーワードでGoogle検索をしてみる。すると休憩所や展望休憩室などスポット名に「休憩」と含まれる場所に加え、たくさんのホテルが表示される。

一方Patheeの場合だとどうなるか。アプリで検索すると出てくるPatheeメディアのコンテンツを見てみると「新宿パークタワー8Fに誰でも利用できる休憩ラウンジがある」とか「小田急百貨店 新宿本館の屋上はベンチ数が申し分なくて子どもが遊べるスペースが充実している」といった密な情報が出てくるのだ。

Patheeメディアのコンテンツはアプリとも連動。該当するコンテンツがある場合はWebだけでなくアプリ上でもチェックできる

Patheeはユーザーの目的がより具体的なほど、そのポテンシャルを発揮する。たとえば前回も紹介したけれど「カレンダー」を探している場合、必ずしも文房具店に絞る必要はないかもしれない。

近年のドラッグストアではコスメやお菓子など医薬品以外の商品が充実しているお店も多いが、近くの店舗で「コスメ」を買いたいユーザーにとって、ドラッグストアでもニーズを満たせる可能性はあるだろう。

「ユーザーは達成したい目的があって検索し、お店に行く。“お店のジャンル”という括り方は時代に合っていない。目的をベースにお店を探せるメディアが求められているが、そこに対してアプローチしているサービスはなかった」(Pathee代表取締役の寺田真介氏)

そもそも飲食店の情報を扱うサービスは複数ある一方で、非飲食店の情報を整理したサービス自体が少ない。その情報をユーザーの目的に沿った形で検索できるようにしたことで、事業の成長に繋がっているという。

寺田氏によるとPatheeメディアは2017年6月の調達時から約1年でMAUが300%成長し、月間のPVも800万を超えたそう。90%がスマホからのアクセスということもあり、出先でお店を探す際に重宝されているようだ。

Patheeと連携したSaaSで小売店舗のデジタルシフトを支援

このPatheeメディアをフックとして、現在同社が力を入れ始めているのが小売店舗のデジタルシフトをサポートするSaaS型のプロダクト「Patheeパートナー」だ。

メディアの成長に伴って店舗からの問い合わせが増える中で、約100店舗へヒアリングを実施。そこで見えてきた店舗側のニーズに応えるべく、4月に同サービスをローンチした。

「Web上でのプレゼンスを高めたいというのはもちろん、特にこだわりのある店舗ではユーザーに対して伝えたい情報はあるけれど、上手く届けられていないという課題があった。突き詰めるとマーケティングに関して課題を感じている店舗が多かったので、そこを支援しようとヒアリングベースで作ったのがPatheeパートナーだ」(寺田氏)

もちろんInstagramやTwitterなどを器用に使いこなす小売店舗もあれど、全ての店舗がデジタル化の波に乗れているわけではない。そもそもホームページがなかったり、あっても更新が止まっている店舗も存在する。

飲食店は食べログやホットペッパーなどのグルメサービスが比較的普及しているが、非飲食店に関してはWebサービスを使いこなすという文化も根付いていない。海外であればYelpがローカルビジネスのレビューサイトとして飲食店以外の情報も広くカバーし、様々な企業が広告を出稿していたりもするけれど、日本の場合はまだ空いている領域と言えるだろう。

そんな小売店舗のマーケティング課題を解決すべく、Patheeパートナーでは「店舗がやらないといけないコンテンツマーケティングを全部カバーする」(寺田氏)プロダクトを展開していくという。

同サービスは簡易ホームページ作成ツールのような機能を備え、そこにインスタを始めとしたSNSやブログの最新情報をウィジェットっぽく自動で取り込むことで、情報を一箇所に集約することが可能。管理画面から複数のSNSやGoogleマイビジネスなど、リアル店舗を運営する際によく使うツールを一元管理することもできる。

そのほかチェーン店向けに店舗情報や権限を管理できる機能のほか、クーポンの発行機能や、Patheeメディアの記事と連携したアクセス統合分析機能などを備える。

各種ツールの運用にかかっていた時間を削減するだけでなく、分析機能を使って「どのような目的を持ったユーザーが店舗ページに来店しているか」を把握し、店舗の運用に活かせる点も特徴。一例をあげると、靴屋が「サンダルを紹介した記事とスニーカーを紹介した記事では、どちらがより多くのユーザーを集めているか」を分析することで、これまで掴めていなかったユーザーのニーズを探るといった具合だ。

寺田氏の話では4月のリリースから約5ヶ月で100店舗近くまで導入が進んでいるそう。今はチェーン店での利用が多く、ジャンルとしてはインスタ受けが良さそうなアパレルや靴、水着、ジュエリーといった「おしゃれ小売」店舗が中心だ。

今後は調達した資金も活用して、PatheeメディアとPatheeパートナーの2軸で事業の拡大を目指す方針。特にPatheeパートナーについては新機能も追加し、リアル店舗がその存在感を高められるような仕組みを整備しながらマネタイズも進めていくという。

「この領域はユーザー側だけをやっていても店舗だけをヨイショしていてもダメで、両軸を良くしていかないと難しい。その意味ではSaaSを通じて小売のデジタルシフトの手助けができれば、その情報を見るユーザーの実店舗での買い物も、もっとしなやかにできると考えている。ここを起点にビジネスも世の中も変えていくチャレンジをしていきたい」(寺田氏)

ユーグレナ、新株予約権の発行により約50億円の資金調達へーー2020年9月期までに売上300億円めざす

ユーグレナは9月20日、同日開催された取締役会においてSMBC日興証券を割当予定先とした第三者割当により新株予約権を発行すると発表した。これにより、新株予約権が行使された場合の資金調達額は約50億円となる。

ユーグレナは2020年9月期までをターゲットに、グループ連結売上高300億円の達成と、国産バイオジェット・ディーゼル燃料の実用化を掲げた中期経営計画を発表している。同社は今回調達した資金を利用して、シナジーや顧客基盤の強化が見込まれるヘルスケア分野などでのM&A、PR戦略による顧客基盤の強化、新規素材開発などの研究開発を推進するとしている。

同社はこれまでに、健康食品の通販事業を手がけるクロレラサプライ、女性向けサプリメント通販事業のフックなどを完全子会社化している。今後も、ユーグレナ本体の販路の拡大やシナジー効果を最大化するためのM&Aを積極的に行っていく方針のようだ。

なお、ユーグレナは新株予約権の発行という手段を選んだ理由について、「既存株主の利益に配慮
し当社株式の過度な希薄化の抑制や株価への影響を軽減するとともに、当社の資金需要や株価の
状況に応じた資金調達の柔軟性を確保すること、および中期経営目標の実現を図ることが可能な資金調達を行うことに重点を置いて、多様な資金調達方法を比較検討してきた」結果であるとコメントしている。

チャットボットの“質問力”で働きたい個人と企業をマッチングする「TeamFinder」

HR Techの中でも、人材採用に関するプロダクトの進化が今年に入って活発になっているように感じる。8月に正式公開されたAIヘッドハンティングの「scouty」、採用面接や履歴書不要で働く人とお店などの求人をマッチングする「タイミー」、人の代わりにAIが採用面接する「SHaiN」、求職者になる前のファン層に、ポジションができる前から働きかけるタレントプール型の人材採用サービス「EVERYHUB」など、これまでの採用情報を告知して人材を募集する「媒体型」とは少し違ったアプローチのサービスが、続々とローンチしている。

NOBORDER(ノーボーダー)が8月20日にリリースした「TeamFinder(チームファインダー)」ベータ版も、新しい採用のあり方を提供しようとするサービスだ。TeamFinderが働きたい個人と採用したい企業・チームを結び付けるのに使うのは、チャットボット。個人ユーザーの回答を独自のアルゴリズムで分析し、条件に合う企業とマッチングする。

NOBORDERの創業者で代表取締役の竹田裕哉氏は、リクルートエイブリック(現リクルートキャリア)で9年半、情報システムや法人営業、マネジメント職などに携わっていた。その後、HR関連ビジネスの事業部長やベンチャーの取締役を経験。2015年に1社目を起業した後、2018年1月にNOBORDERを設立した。リクルート時代から一貫して考えていたのは「適材適所をつくっていく」ことだと竹田氏はいう。

優秀なエージェントの「質問力」をプロダクトに反映

竹田氏は、TeamFinderにチャット形式を取り入れた理由について「パフォーマンスの高い人材紹介エージェントは、インタビュー能力が高い。そのインタビューをサービスとして再現しようとした」と説明する。

「給与の金額や条件だけでなく、求職者がどんな仕事にやりがいを感じ、どう働ければ幸せなのか、ということまで引き出せるエージェントこそ、よいマッチングを作ることができる。企業人事に対しても、いきなり『年収いくらぐらいの、どういう経歴の人が欲しいですか?』とか聞いちゃうような人は、あまりパフォーマンスが出ない。これはコンサルタント一般、もしくはお医者さんなどでも同じで、よい質問ができる人は課題を見つけやすく、問題を解決する能力が高いと言えるだろう」(竹田氏)

一方で、そうした能力は属人的でもある、と竹田氏は指摘。「当たる人によって得られるサービスが変わってしまう。そこで一流のエージェントが行うインタビューをチャットに落とし込むことで、どの人にも同じパフォーマンスでサービスが提供できるのではないかと考えた」と述べる。

TeamFinderでは、最初の登録時の質問は、最低限必要なものに5問程度答えるだけでよい。職歴などの登録も任意だ。

竹田氏はその理由をこう語る。「20代で転職が初めて、といったユーザーにとっては、あまり細かい質問に答えていくのは面倒くさいもの。また職務経歴書などのフリーフォーマットでは、人によって伝わる情報に差が出る。例えば同じ『営業』とあっても、対法人なのか個人向けなのか、ルートセールスか飛び込みか、などによって、営業に使う“筋肉”は全然違うはず。だから質問は、それよりも重要な情報だけに絞った方がいい」

竹田氏はまた「人材紹介サイトなどで、有名大学卒で上場企業の職歴で登録すると、それだけでスカウトがいっぱいくる。受け取る企業側にしても、バラバラのフォーマットにたくさんの情報が入っている状態になるので、読み取ること自体が大仕事になってしまう。読まれないものに無駄な工数がかかっている状態」とも述べる。

「TeamFinderでは、基本の質問に加えて、さらに回答していくことができる。例えばスタートアップで仕事がしたいといっても、立ち上げ直後で社員数名のフェーズなのか、数百人のフェーズなのかで、全く仕事の内容は変わってくる。どういうフェーズの会社に行きたいか、組織風土や価値観はどんなところがよいのか。プラスの質問で、基本回答の内容を因数分解していくとともに、定性的なことも尋ねて、レコメンドの精度を上げるようにしている」(竹田氏)

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TeamFindeの設問は全部で50問あり、追加の質問では答えたくないものはスキップすることもできる。8割方の質問は選択肢を選ぶだけで回答できるが、いくつか自由回答で答えるものもあるそうだ。竹田氏は「採用の面談の時に、少ない情報だけでは表面的な質問や会話しかできない。TeamFinderでは、企業と個人とで会話を深めるための設問を用意するようにしている。会話のきっかけづくりはUI・UXで実現できると考えている」と話す。

ユーザー登録は新卒・中途採用にかかわらず、誰でも可能。業務委託や兼業・副業での登録もできる。「ユーザーの45%ぐらいが兼業・副業での仕事を探している。そこのセグメントにはこだわらずに使えるようになっている」(竹田氏)

求人する企業側は、レコメンド対象としたい人材を設定することができる。竹田氏は「採用担当者にとって、既存のサービスの問題点は、業務の量が多くなり、効率が悪いこと」という。「採用担当者はよい人材を採るためには『とにかくスカウトしろ』『とにかく人に会え』と量をこなすことが推奨されがちだが、本当は会った人をどれだけ理解できるかが重要。適切な質問をすることで、TeamFinderは採用担当者の業務削減にもつなげられる」(竹田氏)

TeamFinderは、求職者と企業を直接結び付けるわけではなく、アルゴリズムに基づいてレコメンドを出すだけだ。また、恋愛マッチングアプリと同じように、レコメンドされた案件について双方が『気になる』とチェックしないと、連絡が取り合えない仕組みになっている。

採用時の成果報酬は発生せず、月額サブスクリプションモデルでサービスの利用が可能。求人登録を10件まで、人材レコメンドを5件まで、「気になる」アプローチを3件までに制限したフリープランは無料で試すことができる。求人登録数を無制限、レコメンド20件まで、「気になる」アプローチ10件までのエントリープランは月額3万円だ。

「“適材適所”は人材だけでなく、経営資源にも必要」と竹田氏は言う。「資金調達をしたスタートアップが投資する点といえば、マーケティングや採用。でも『採用にお金をかける』といって、現状では求人媒体への掲載料やエージェントへの報酬に費用がかかりやすい。本来なら、プロダクトの開発や、採用した人への給与といったことにお金をかけたいはず」と竹田氏。TeamFinderの価格設定はそうした考えにしたがったものだ。

また求人媒体で起こりがちな課題として「量と質のジレンマ」がある、と竹田氏は述べる。「媒体が大きくなり、閲覧者や求人情報が集まりやすくなればなるほど、見つけたい情報を見つけにくくなる。TeamFinderでは、10万件の案件、100万人のユーザーでもマッチングできるように設計している」(竹田氏)

CtoC、国境を越えたチームビルディングにも展開を予定

8月20日のベータ版ローンチから2週間で約300人がユーザー登録し、マッチングも成立し始めたというTeamFinder。今後、ユーザーインタビューも行いながら、プロダクトの改良を行っていくという。

さらに竹田氏は、起業家などチームビルディングを目指す個人を対象にした個人同士のレコメンドを、TeamFinderで年内にも始めたい、と話している。「個人と法人のマッチングを対象にサービスを開始したが、TeamFinderでは、個人対個人の人脈づくりやチームづくりも実現したかった。サービスを始めてみたら、ユーザーの45%が兼業・副業目的だったことで、CtoCのレコメンドも求められているはず、という仮説が合っていたことを実感した」(竹田氏)

ビジネスでの人脈づくりを目的としたサービスにはyentaなどもあるが、竹田氏は「設問の工夫で、レコメンドの理由も明確になるような形にして、チームづくりができるようなサービスにしたい」と述べている。

NOBORDERは7月にアメリカ・シアトルにも拠点を構えていて、米国法人立ち上げの準備も進めているという。次のステップとして、TeamFinderの海外版ローンチも目指しており、国境を越えたチームづくりができるサービスとしての展開を図っていく。

「アジアや中国へ拠点を作ってオフショアで事業展開する、というこれまでの動きではなく、エストニアで起業をして、セキュリティについてはイスラエル、デザインはサンフランシスコ、開発はウクライナで、といったような、国境を越えて共同で何かを作ることができる仕組みを用意したい」(竹田氏)

NOBORDERでは、2018年3月に複数のエンジェル投資家を引受先として、約3000万円の第三者割当増資を実施。また9月20日には追加の調達を行い、プレシードラウンドとして合計4000万円の資金調達を完了している。

車椅子型パーソナルモビリティのWHILLが50億円調達、B向け新事業や自動運転機能を準備中

車椅子型のパーソナルモビリティ(個人向け移動デバイス)を開発するWHILLは9月18日、SBIインベストメント、大和証券グループ、ウィズ・パートナーズ、および既存投資家から約50億円を調達したと発表した。2016年5月に調達した約20億円など過去のラウンドを合わせると、累計調達金額は約80億円となる。

WHILLは「すべての人の移動を楽しくスマートにする」ことをミッションに、車椅子型のパーソナルモビリティを開発する日本のスタートアップだ。同社は2014年9月にフラグシップモデルである「WHILL Model A」の販売を開始。つづく2017年4月にはModel Aよりも価格を抑えた普及価格帯モデルの「Model C」を発表している。それぞれの販売数などは非公開だが、WHILL代表取締役の杉江理氏によれば、「Model Aの販売台数は『1000台以上』というところだが、Model Cの販売台数は近い将来1万台に届く勢いだ」と語る。

WHILLにとってメインの販売チャネルは、医療機器などを取り扱う販売代理店経由でのセールスだ。創業当初より日本とアメリカにオフィスを構えていたWHILLは、2018年1月より日本に加えて北米でもWHILLの販売を開始。2018年6月にはイギリス、イタリアなどヨーロッパ地域にも進出している。

このように、これまでは個人に向けてパーソナルモビリティを販売してきたWHILLだが、同社は今後、移動をサービスとして展開するMaaS(Mobility as a Service)事業を新たに立ち上げることによってBtoBの領域にも注力する。空港、商業施設、スポーツ施設などの施設を通して、長距離の移動が困難な人たちに向けてWHILLを貸し出すというサービスだ。また、そのために必要な「自動停止機能」や「自動運転・自動追従機能」などの実装に向けてパートナー企業らと研究を進めている最中だという。

現時点では具体的な導入先、料金プラン、そしてWHILLに搭載される新機能などの詳細は明らかにされていない。しかし、杉江氏によれば、WHILLは2019年に開催するCESへの出展を予定しており、その場でこのMaaS事業の詳細を発表するとしている。

WHILL代表取締役の杉江理氏

スタートアップは国際投資をいかに確保できるか

【編集部注】Jose DeustuaはペルーのアクセラレーターUTEC Venturesのマネージングディレクター。UTEC Venturesはペルー最大の投資イベントPeru Venture Capital Conferenceを開催している。

中南米でスタートアップが資金を調達するのは、砂漠のど真ん中で水飲み場を探すようなものだ。どこかにあるはずだ、というのは分かっているが、タイミングよく見つけるのは死活問題だ。

そうした状況であっても、この地域におけるベンチャーキャピタル投資はこれまでになく活発になっている。Andreessen HorowitzやSequoia Capital、そしてAccel Partnersなど主要各社がコロンビア、ブラジル、メキシコといったマーケットで創業への投資を行なっている。しかし同時に、スタートアップ創業者たちは彼らの周りで起こっている巨額投資のニュースにじれったい思いでいるかもしれない。というのもスタートアップ創業者のほとんどが投資ステージに近づくのだが、往々にしてそれは蜃気楼以外の何物でもないと認識する。

これは中南米だけの問題ではないだろう。世界中どこでもスタートアップは投資家探しに苦労している。ベンチャーキャピタルは次のユニコーンを探し出そうと果てしない追求を続け、これまでより少ない案件により多くの資金をつぎ込んでいる。米国欧州においてベンチャーキャピタルの案件数は減少していて、確立されたエコシステムに身を置く起業家ですら、ビジネスを展開するための材料を探そうと遠くに目を向け、起業家の多くは中南米などの新興マーケットに向かっている。

スタートアップ創業者が新興マーケットの人間であれ、外国人であれ、幸いにも会社を大きくするために必要な投資を海外から探し出す方策はある。以下、我々がペルーで展開しているUTEC Venturesアクセラレータープログラムに参加しているスタートアップに勧めていることを紹介しよう。これはあなたにも勧めたいことだ。

シード期の資金調達はまずローカルで

新興マーケットのスタートアップとして、ローカルからの投資を見つけ出すのは簡単なことではない。事実、だからこそまず海外からの投資をあたるのだろう。しかし、手始めにローカルからのシード投資を探すというのは、その後に控える海外からの投資確保にまず必要なことだ。

たとえば、ペルーでは昨年、スタートアップにシード資金として720万ドルが投じられた。そのうち100万ドルが海外ファンドからのものだった。これは、新興マーケットに関心のある海外投資家は、シードラウンドにおいてはそれほど活発ではなく、企業がそれなりの価値を示してからのラウンドに関心を持っていることを示している。

海外投資家の関心を集めたければ国際的なスタートアップであるべき

そのため、我々は全てのスタートアップにシード期における1回目、2回目の資金調達はペルーで行い、その後海外からの投資を模索するようアドバイスしている。これは他の新興マーケットにおいても言えることだ。

最初のラウンドで資金を調達するために最も重要なことは、確固としたチームを有していること、そして客を引きつけ、また地元の競争相手より優れたビジネスアイデアを持っていることを示すことだ。これらを満たせば、ローカルでシード資金を調達するのはそう難しいことではないだろう。ローカルのエンジェル投資グループとネットワーキングをする時や投資イベントの時に必要なのは、良い売り込み資料といくらかの忍耐力だ。

さらに大きく競争の激しいマーケットで成功するためには

もし海外の投資家をひきつけたいのなら、国際的なスタートアップでなければならない。言い換えると、国際的な投資機関のトップに向き合う前に、より大きく競争の激しいマーケットでプロダクトを売ることができると示す必要がある。ペルーと中南米における新興マーケットのスタートアップにとって、これは中南米で最も発展しているメキシコ、ブラジル、アルゼンチンのマーケットに進出することを意味する。

例として、コロンビアの配達サービスRappiを挙げる。Andreessen Horowitzが主導した、初の大きな国際投資で2016年初めに資金を調達したのち、Rappiはメキシコへと事業を拡大した。その1カ月後にシリーズBラウンドを実施。今年初めには、ドイツの食料配達会社主導のラウンドを実施し、そこにはたくさんの米国投資家も加わって1億3000万ドルを調達した。

同じことが、中南米以外の新興マーケットでもいえる。ベンチャーキャピタル投資で西欧諸国に遅れをとっている東欧では、多くの起業家が自国で商売を成功させるとすぐさま西欧に進出し、ビジネスを最初から立ち上げたりそこで拡大させたりする。成熟したマーケットからの資金調達をしたいと考えているなら、そうしたマーケット、少なくとも同規模のマーケットに拠点を置くべきというのはこれで明らかだろう。すなわち、国際投資を模索する際に最初にフォーカスすべきは、現地マーケットでローカル企業になることだ。それから、成熟したマーケットー米国やメキシコ、西欧または別のところーでそれまでに収めた成功を再現させればいい。

国際投資の全てが国際VCによるものとは限らない

国際ベンチャーキャピタルから目がくらむような投資を確保するというのに注意がいきがちだが、思いのままに国際投資を確保するには他にもたくさんの方法がある。

新興マーケットの政府は、経済成長のエンジンとなる自国のスタートアップエコシステムを活性化させるようなプログラムを急激に増やしている。国内でビジネスを立ち上げると決めた起業家に対しエクイティフリーの資金を提供するという形でサポートするなど、政府による多くのプログラムが展開されるようになっている。

中南米のような新興マーケットでは大企業による投資が重要

中南米だけでも例はたくさんある。たとえば、Start-Up Chileはチリから世界に進出するようなビジネスを立ち上げようとする起業家に最大8万ドルを提供する。プエルトリコのParallel18は同様の趣旨で7万5000ドルをあてる。ペルー政府も、スタートアップがペルーでソフトローンチするのを最大4万ドルの提供でサポートするプログラムを、きたるPeru Venture Capital Conferenceで発表する計画だ。

他にも手段はある。中南米のような多くの新興マーケットでは、コーポレートキャピタル、または大企業のスタートアップ投資が非常に大きな役割を果たす。事実、米国のテック大企業Qualcommの投資部隊、Qualcomm Venturesは中南米において最も活発なグローバル企業投資家となっている。 NaspersやAmerican Express Ventures、他企業のファンドもこの地域のスタートアップに盛んに関心を寄せている。

外国政府によるサポートの増加、そしてグローバル展開する大企業の関心も併せて、国際投資を確保することは実際に可能であり、あなたが思うほど難しいことではない。国際ベンチャーキャピタルから資金を調達するにはいくつかオプションがあるが、これから打って出ようとしているマーケットでどういう選択肢があるのか、時間をかけて検討した方がいい。

だから、新興マーケットでローカルの起業家なのかそれとも外国人の起業家なのかに関係なく、国際投資を模索しない手はない。鍵となるのは、グローバル視点で考えることと、直面している問題の解決にテクノロジーを使うことだ。その上で、まずは自国でそれなりの成果を出し、それを今度はさらに大きなマーケットで再現させる。一歩踏み出すと打開するための手段がある。それをうまくつかめれば、投資の井戸は結局枯渇しているわけではなかった、ということに気づくだろう。

イメージクレジット: Loskutnikov / Shutterstock

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(翻訳:Mizoguchi)

筋トレやランニングなどの“独りフィットネス”をプロトレーナーが音声でサポートする「BeatFit」

最近、都市部を中心に24時間営業のジムが増えている。マシン特化型で、セルフサービスでトレーニングを行うため、比較的低価格で、いつでも好きなときに利用できるのが特徴だ。ただ「いつでもできる」「自分でできる」というのは反面、自らモチベーションを上げて、やる気をコントロールする必要があるのも確か。これは24時間ジムに限ったことではなくて、ランニングやウォーキングなどでも同じことだ。

ともすれば、くじけやすく怠けがちな私たちの心を励ますように、トレーニングの管理やフィットネスの支援をする、さまざまなアプリが誕生している。「BeatFit」もそうしたアプリのひとつ。ランニングや筋トレなど、1人で行うフィットネスをプロのトレーナーによる音声ガイドでサポートするというものだ。

トレーナーの音声ガイドに加えて、BeatFitでは、トレーニングに合ったノリのいい音楽も流れる。4月にベータ版が登場したBeatFitは、アウトドアランニング、ランニングマシン、インドアバイク、筋力トレーニング、ストレッチといったジャンルで、運動レベル別・時間別にコンテンツを配信。レベルは初心者から上級者まで幅広く、運動時間も6分から60分まで選ぶことが可能だ。アプリは最初の1カ月は無料、その後は月額980円の定額で、全コンテンツを利用できる。

現在BeatFitでは、120を超えるクラス(トレーニングコンテンツ)を配信。9月1日には「トレーニングログ機能」「お気に入り機能」「フィルター機能」を追加し、またジャンルに「ヨガ・瞑想」を加えて、正式版としてリリースした。主に24時間ジムを利用するユーザーを中心に利用されており、アプリの利用をInstagramやTwitterなどに投稿する「熱量のあるユーザー」も増えているという。

トレーニングを長く続けるための購読型アプリ

アプリを運営するBeatFitは2018年1月の設立。創業者であるCEOの本田雄一氏、CPOの永田昌一氏、COOの宮崎学氏の3人が共同で代表取締役を務める。3人がBeatFitの着想を得たのは2017年12月のことだ。それまではフィットネスについて別々のアイデアを持ち、議論も白熱したというが、BeatFitで構想が一致してからは、スピーディーに起業が決まり、開発がスタートしたという。

CEOの本田氏は、福岡で一度起業した後、2015年から2017年にかけてアメリカへ留学。アメリカのフィットネス文化に触れ、日本でもこのジャンルは伸びると感じたが「ジャンルに、はやり廃りがある」ことに懸念があったという。そこで「プラットフォームとしてコンテンツを提供する形にすれば、流行に左右されないサービスができる」と考えたそうだ。

「もともとフィットネスおたくだった」という本田氏は、パーソナルトレーナーを付けることで「体が変わったことを実感した」という。「でも週2回で数万円から数十万円の費用がかかるトレーナーは、高額すぎてサステナブルでない。これを継続させるためにはどうすればいいか、ということを考えていた」(本田氏)

プロダクトのデザイン・開発を担当する永田氏も、本田氏と同時期にアメリカへ留学している。留学中、高齢者向けVRシステムの開発を手がける中で「お金があれば施設へ入ることはできるが、そこで過ごす人が必ずしも幸せでないのでは、と感じ、健康寿命について考えた」という。

また、永田氏は留学中に10Kgほど太り、帰ってきてからトレーニングを始めたが、継続して運動することが難しかったそうだ。ところが「トレーナーを付けてみたら全然違った」という。「2時間かけてジムにいて運動していたことが、トレーナーを付けることで30分で効率よくできる。トレーナーの重要さが分かった」(永田氏)

COOの宮崎氏は、電通からSpiral Venturesへ移り、プリンシパルとしてシンガポールに在住。その後、スパークスグループで未来創生ファンドの運用に携わった。スパークスでは、リハビリ系ロボットへの投資なども行っていた宮崎氏。投資先への助言の合間に、医師から聞いた「ロボットなどの機器はある。だがリハビリを続けるためのモチベーションを保つ仕組みがない」という言葉が印象深かった、と話している。

宮崎氏は「以前から、アメリカやシンガポールなど医療保障が十分でない国では、健康習慣への関心が強かったが、近年は日本でも24時間営業のフィットネスジムが増え、少子化時代を見据えた医療費問題などもあって健康意識が高まっている。またApple WatchやFitbitなどのウェアラブル端末も普及した」と日本のフィットネス市場を分析する。

その一方「パーソナルトレーナーについては、RIZAPのCMが話題になるなど、存在は知られるようになったが、いざ依頼するとなると金額が高いため、短期間の利用で終わってしまう人が多い」と宮崎氏。「継続して運動を続けるためには、アプリを通じて、低価格でトレーニングのクラスをサブスクリプション(購読)型で受けられるのは理にかなっている」と話す。

本田氏も「サブスクリプション型はフィットネスジムと構造が似ている。1回通うのも100回通うのも同じ額なら、多く通おうと考えるものだ。お金を払うから行く、続けられる、というスタイルはヘルスケアと相性が良い」と述べる。

こだわり抜いた音声コンテンツによるガイド

BeatFitでは「音声」ガイドのみで、トレーニングが進められる点がキモとなっている。世の中を見ると、YouTubeを始め、アプリでも、動画でトレーニング内容が見られるものが多い。そうした中で、あえて音声にこだわる理由を宮崎氏に聞いた。

「確かにビデオコンテンツは多いし、動きをどうするかを確認するには有効だ。でも『じゃあトレーニング中に動画を確認しながら運動するか?』と言われたら、どうだろう。BeatFitでは運動しながら聞く、ということにこだわって『聞くだけで分かるコンテンツづくり』に注力している」(宮崎氏)

確かに私も、BeatFitでいくつかのクラスを試してみて、ストレッチでどこの筋を意識すればいいのか、足や手の形や位置はどうすればいいのか、といった点をトレーナーが声できめ細かく指示してくれるので、気持ちよく運動できるな、という印象を持った。ただ、例えばヨガのポーズなど、自分が一度も見たこともやったこともない動きを、音声の指示だけで正しくやるのは、さすがに難しいのではないかと感じた。

こうした分かりにくい部分については、近日中に、要所要所を短い動画で事前にチェックしてからトレーニングできるように、機能とコンテンツを追加するとのことだった。開発中のバージョンを見せてもらったところ、音声ガイドを一時停止して、動画で動きを確認してからまた元のトレーニングに戻る、といったことも可能になるようだ。

だが、あくまで「動画はサブで、メインは音声」とのこと。その背景には「音声ベースだと安く、大量に、高品質なコンテンツが提供できる」側面もあるという。「動画ではちょっと間違えた、というときにうまく編集することが難しく、一から撮り直しになってしまう。音声のみなら、簡単に編集できるので多くのコンテンツが供給できる」(本田氏)

BeatFitでは、オフィスに録音ブースとトレーニングができる空間を備えた、自社スタジオを構えている。本田氏は「自社スタジオがあることで、たくさんのクラスを用意することができ、更新も頻繁に行える。結果としてユーザーがいろいろなトレーニングを選べて、飽きずに続けられる」と話す。

BeatFitのコンテンツにはもうひとつ特徴がある。トレーナーの音声ガイドの後ろでBGMとして流れる音楽だ。洋楽ポップスやロック、ヒップホップなどのヒット曲をふんだんに使い、リズムに合わせて楽しくトレーニングができるようになっている。

「音楽にトレーナーの声を掛け合わせ、DJプレイに近いような、高度なコンテンツづくりを行っている。こうした加工をともなうコンテンツでは、音楽の権利処理のハードルが高い。そこをきちんと押さえている点も我々のアドバンスだ」(宮崎氏)

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同社は9月3日、シードラウンドで総額1億200万円の資金調達実施を発表した。資金のうち、8200万円はJ-KISS型新株予約権方式により、SIG Global Japan Fund、MTパートナーズ、谷家衛氏、宗清晶氏、Asia Venture Group、ほか個人投資家から調達。また日本政策金融公庫から2000万円の融資を受けている。

資金調達を受けて、BeatFitでは、よりよいコンテンツづくりとソフトウェアの改良を目指す。また、健康増進への取り組みを保険料に反映する、健康増進型の保険を導入している生命保険会社や、フィットネスジムなど、法人とのアライアンスも進めたいとしている。さらにフィットネスマシンやウェアラブル端末との連携、AIスピーカーによるサジェスチョンなどにも取り組んでいく構えだ。

本田氏は「BeatFitは、パーソナルトレーナーの市場を食いに行くものではなく、共存できると考えている」と話している。「費用面で頻繁にはトレーナーが付けられない、という方が、合間で自習的に使ってもらうことで、トレーニングを継続して行うことができる。フィットネスジムでも、インストラクターがいないときや、グループレッスンの待ち時間などに活用してもらえれば」(本田氏)

訪日外国人向けショッピング支援アプリ「Payke」運営が10億円を調達

商品に付いているバーコードをスキャンすることで、訪日外国人が自国語で商品情報を確認できるショッピングサポートアプリ「Payke(ペイク)」。同アプリを提供するPaykeは、8月30日に総額10億円の資金調達を実施していたことを明らかにした。第三者割当増資の引受先はEight Roads Ventures Japan、SBIインベストメント、沖縄振興開発金融公庫、SMBCベンチャーキャピタル、INTAGE Open Innovation Fund。Paykeの累計調達額は、12.2億円となる。

Paykeは2014年11月の設立。2015年11月にリリースされたアプリ、Paykeは、商品バーコードをスキャンすることで、商品に関する情報を母国語で見ることができるというもの。原材料や使い方などの基本情報のほか、商品の魅力や製造秘話、ユーザーの口コミも確認でき、商品をインバウンド観光客へ訴求することが可能となる。

現在アプリは、英語、繁体字、簡体字、韓国語、日本語、タイ語、ベトナム語の7言語に対応。ユーザーの95%以上が外国人ユーザーだ。2017年1月には台湾、香港、マカオのアプリストアで1位を獲得しており、アジア各国のユーザーに利用されているという。

また、Paykeでスキャンされた商品データについては、「いつ」「誰が」「どこで」「何を」スキャンしたかを収集。メーカーなどの企業向けに、商品や店舗に対する「興味」データとして一部提供され、インバウンドマーケティングに活用されている。

小売店向けには、スマホアプリと同じサービスが店頭で利用できるタブレット端末もレンタルで提供。アプリをインストールしていない観光客に貸し出すことで、購入率や購入単価向上、対応スタッフの人件費削減につながるとして、店舗での導入が進んでいるという。

Paykeは2018年8月現在、総ダウンロード数が約70万にのぼる。商品登録点数は2018年5月の段階で25万アイテムを突破。メーカーへ提供するB2Bサービスの導入数も、2018年8月現在で約1200社に達している。

VRイベントプラットフォーム「cluster」運営が4億円をシリーズBラウンドで調達

VRイベントプラットフォーム「cluster」を提供するクラスターは9月12日、シリーズBラウンドで総額約4億円を調達したことを明らかにした。第三者割当増資の引受先はXTech Venturesグローバル・ブレインKDDIの各社が運営するファンド。また資金調達にあわせ、前ユナイテッド取締役の手嶋浩己氏が社外取締役として就任した。

クラスターは、VR上で音楽ライブやイベントなどを開催できるプラットフォームclusterを運営する。cluster上では同時に最大5000人と接続が可能。クラスターが目指すのは“ひきこもりを加速させる”バーチャル上でのエンタメ体験の提供だ。

例えば、バーチャルYouTuber(VTuber)をはじめとしたバーチャルアイドルが増える中、リアルタレントが行うような商業活動をバーチャル上でもできるように、有料イベントを開催できるチケット機能を7月にcluster上で公開している。

今回の資金調達でクラスターは、事業拡大に向けたプロダクト開発や人材採用強化を図る。

クラスターは2016年4月に5000万円を調達2017年5月に2億円を調達しており、これまでの累計調達額は約6.5億円。2017年6月よりcluster正式版を提供している。

米Solid Powerが2000万ドル調達、全固体電池で“ポスト・リチウムイオン”目指す

コロラド大学出身のスタートアップSolid Powerは9月11日、Volta Energy Technologies、Hyundai CRADLE、Samsung Venture Investment、三桜工業、Solvay Ventures、A123 Systemsなどから2000万ドルの資金を調達、シリーズAの投資ラウンドを終えたと発表した。

Solid Powerはコロラド大学ボルダー校からスピンオフしたスタートアップ企業。2012年からソリッドステートバッテリー(全固体電池・ASSB)の研究を続けている。同社は2017年12月、BMWとパートナーシップを結び、EV用全固体電池の開発を目指すと発表していた

同社は調達した資金をもとに、マルチメガワットでロール・ツー・ロール方式を導入した設備を完成させ、生産拡大を図る。同設備は2018年末までに建設が完了し、2019年に本格稼働する予定だ。生産能力の向上により、「全固体電池を自動車産業、航空宇宙産業、防衛産業を含む複数の市場に供給する準備が整う」と同社は説明している。同社が掲げる最終目標は全固体電池が「リチウムイオン電池に取って代わる」バッテリーとして選ばれるようになることだ。

共同創業者でCEOを務めるダグ・キャンベル氏は「当社は『ポスト・リチウムイオン電池』技術の最有力候補だ。全固体電池は、EV、電子産業、防衛産業、医療機器の市場を一変させる。Solid Powerの技術で安全性や性能、コストに細心の注意を払った競争力のある製品を生み出し、業界に革命を起こす用意ができている」と語っている。

水産養殖の課題解決をめざすウミトロンが3億円の追加調達、養殖専用の保険を開発中

IoTや衛星データの活用により水産養殖の課題解決を目指すUMITRONは9月11日、スパークス・グループが運営する未来創生ファンドより約3億円を調達したと発表した。これは2018年6月に発表した約9.2億円の資金調達に続くもので、本ラウンドでの調達総額は約12.2億円となる。

UMITRONは日本の起業家3人がシンガポールで立ち上げた水産分野のスタートアップ。IoT、衛生リモートセンシング、AIなどのテクノロジーを活用することで水産養殖に関連する課題の解決を目指している。そのソリューションの1つが、魚のエサやりを自動化する「UmiGarden(ウミガーデン)」だ。

生簀にUmiGardenを設置すると、センサーによって飼育状況が自動でモニタリング・記録される。それによって得た魚群データが解析され、エサやりの最適なタイミングや量が把握できるという仕組みだ。スマホを通じて遠隔でのエサやりも可能となる。

UmiGardenによって生産者が抱える負担の軽減をめざすUmitron。でも、水産養殖の“課題”はそれだけじゃない。自然の海を利用する養殖ならではの自然災害リスクもその1つだ。同社によれば、海面養殖はグローバルで現在の100倍以上の生産ポテンシャルがあるとする研究結果はある。だがその一方、2016年にチリで発生した赤潮の被害総額が800億円以上にのぼるなど、養殖経営の安定性の向上も乗り越えなければならない課題の1つだ。

そのため、ウミトロンではIoTなどのテクノロジーによって生簀内の状況を判断し、その時価総額を推算する技術を開発。例えばクルマのように、魚という資産の価値を定量化することで水産養殖専用の保険を提供するための研究開発に取り組んでいる。

同社は2018年8月より水産養殖保険のためのデータサービスの実証実験を開始。今後同社は、この保険サービスの開発を共同で進めるパートナーを国内外で募集するという。

語学学習のQ&Aアプリ「HiNative」が6.5億円調達、登録ユーザー数は1年強で3倍以上に

写真左より、YJキャピタル代表取締役の堀新一郎氏、Lang-8代表取締役の喜洋洋氏

外国語学習者向けのQ&Aアプリ「HiNative」を運営するLang-8は9月10日、YJキャピタル、大和企業投資、FFGベンチャービジネスパートナーズ、個人投資家の千葉功太郎氏などから約6億5000万円を調達したと発表した。

これまでにもTechCrunch Japanで紹介してきたHiNativeは、外国語を学習する人向けに開発されたQ&Aアプリだ。たとえば、「〇〇は英語で何と言う?」などと質問すると、その言語のネイティブスピーカーが回答してくれる。テキストでの回答のほか、音声で回答する機能もある。また、そのように語学学習に直接つながる質問だけではなく、日本語を学ぶ外国人が「(就活の)合同説明会では履歴書は必要ですか?」など、その国の文化や慣習についても盛んにQ&Aが行われているのが特徴だ。

HiNativeは2014年11月にサービスリリースされ、2018年8月時点で登録ユーザー数は341万人だという。Lang-8は2017年6月にはユーザー数が100万人を突破したと発表していたから、そこから1年と少しの期間でユーザー数を3倍以上に伸ばしていることが分かる。サービスが対応する言語も110言語にまで増え、240の国と地域で利用されるようになった。

今回のラウンドに参加しているYJキャピタルは、2年前に行われた前回ラウンドで、「HiNativeがもつ可能性に自信が持てなかった」という理由から出資を見送ったという経緯がある。そのYJキャピタルで代表取締役を務める堀新一郎氏も、現在のLang-8については「この2年間でKPIが強烈な右肩上がりで成長を遂げている」とコメントしている。

「コミュニティの価値はユーザー数が増えれば増えるほど高まっていく。ユーザーが増えたことで回答者の層が厚くなり、ユーザーにとっての価値もさらに高まる。まずはユーザー数を数千万人規模にまで伸ばしたい」(Lang-8代表取締役の喜洋洋氏)

ユーザー数の伸長に貢献したのは、Lang-8が以前から注力してきたYouTuberマーケティングだ。これは、外国語学習の領域で影響力のあるYouTuberと直接契約を結び、HiNativeを実際に使用する動画をアップロードしてもらうなどの施策。Lang-8はこの施策を国内だけでなく海外のYouTuberに対しても行っており、その結果、登録ユーザー数の約97%が海外ユーザーなのだという。ここ最近では、ベトナムなど東南アジアからの登録が伸びているそうだ。

今回のラウンドで約6億5000万円を調達したLang-8。同社はこの資金を利用して、海外利用比率のさらなる向上を目指すための新規ユーザーの獲得、回答率やスピードの改善などのサービス向上、マーケティング施策などの強化を行っていく。

「HiNativeを通して目指すのは、世界中のネイティブスピーカーがもつ知と経験の共有だ。(冒頭で紹介した)合同説明会の例など、たとえ特別な知識や経験がなくとも、ネイティブスピーカーの『当たりまえ』が誰かにとっては非常に価値のある情報になり得る。HiNativeを利用すれば、疑問に対してすばやく適切な答えがかえってくるという世界を早く作りたい」(喜氏)

エンジニア向けニュースアプリのMewcketが6000万円調達、ダイレクトリクルーティング機能も

エンジニア向けニュースアプリ「Mewcket」を提供するMewcketは9月7日、ベンチャーユナイテッドから6000万円を調達したと発表した。

Mewcketはエンジニア向けの記事をまとめたニュースアプリだ。同アプリでは記事全文を自然言語処理にかけてキーワードなどを抽出し、それぞれの記事の特徴を分析。そして、ユーザーの趣向に合った記事をAIがリコメンドするという機能が特徴的だ。

Mewcketはもともと、エンジニア向けの求人情報を閲覧できるスマホアプリとして始まったが、その後、その求人アプリにも搭載されていたエンジニア向けニュースの配信機能に特化したかたちへピボットした。Mewcket代表取締役の小林奨氏によれば、現在のアプリは「毎月約1000人」のペースで会員登録者数が伸びているという。

また、同社は今回の資金調達と同時に、企業がMewcketに登録するエンジニアを直接リクルーティングできる機能を追加。機能の公開時点で数十社からの申込みがあるという。小林氏によれば、すでに記事それぞれのキーワードや特徴を抽出しているMewcketでは、それを読むエンジニアの興味分野やスキル、転職意向などをある程度数値化することが可能だという。Mewcketのダイレクトリクルーティング機能を利用する企業は、それらの情報をもとにエンジニアの勧誘活動を行うというわけだ。

今回6000万円の資金調達を実施したMewcketは、2016年8月の設立。2017年10月に同社が数千万円(金額非公開)を調達したというニュースはTechCrunch Japanでも紹介した。Mewcketは今回調達した資金をもとに、エンジニアの採用を加速するとしている。

スマホでプロのスタイリストがコーデ提案、チャットで相談もできる「SOÉJU(ソージュ)」

自分に似合う服を、できるだけリーズナブルに着こなしたい。ファッション誌の「着まわし特集」が今でも人気企画であることからも分かるように、これは私たちの永遠の課題だ。この課題を解決するために、ファッション×テック業界でも、日々さまざまなサービスが生まれている。採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT」を無料配布し、体型データに合った服をオーダーメイドできるようにした「ZOZO」。ファッションの世界にサブスクリプションモデルを取り入れた「AirCloset」。そして着まわし提案アプリやD2C(Direct to Cunsumer:製造者から消費者が直接購入できる)ブランドの数々。

オンラインスタイリングサービス「SOÉJU personal(ソージュパーソナル)」は、ライフスタイルの変わり目でもあり、体型も変化する30代、40代の女性をメインターゲットにしたファッションのサービスだ。仕事や家事に追われて、なかなか毎日のコーデまで考えている余裕がない、というこの世代の女性に「自分の体や好みにピッタリくる着こなし」や「持っている洋服の見直し方」を、プロのスタイリストがオンラインで教えてくれる。

サービス利用の流れは以下の通りだ。まずは会員登録を行い、対面、もしくはオンラインで、スタイリストによる「ファッション診断カウンセリング」を受ける。カウンセリングの費用は1時間で5000円。体型タイプやファッション志向を診断し、似合うシルエットの服を提案してもらえて、対面の場合は試着体験ができる。そして、自分のライフスタイルや希望に合わせて、スタイリストが今後のスタイリングの方向性を提案する。

その後、定期的に「オンラインパーソナルスタイリング」が受けられる。6スタイルの着こなし提案画像をスマートフォンに毎月配信するマンスリープランと、3カ月に1度のシーズンごとに配信するシーズナルプランの2種類があり、費用はそれぞれ1回の配信当たり3000円だ。

オンラインパーソナルスタイリングでは、LINE@による「スタイリスト ホットライン」も提供。チャットで日々のファッションの悩みをスタイリストに相談することができる。回答は3営業日以内にもらえるので、大切な会食や商談の前にお勧めのコーディネートが知りたい、という具合に使えそうだ。

サロンでのカウンセリング、定期的な着こなし提案では、手持ちの服も含めて相談ができる。昔買って、あまり着なくなったアイテムからも、使えるものはコーディネートに取り入れて提案してくれる、ということなので、私のようにタンスの肥やしが捨てるに捨てられず困っている、という人にもよいかもしれない。

代官山に9月22日オープンするサロン「SOÉJU代官山」

ソージュパーソナルを運営するモデラート代表取締役の市原明日香氏は、「最初のカウンセリングで展示アイテムも試着してもらいながら、着まわししやすく、投資対効果の高いスタイルを提案していく」と話す。

ソージュパーソナルは、同社が2015年10月から提供するオンラインスタイリングサービス「Let Me Know」を前身としている。9月22日にカウンセリング用のサロン開設と自社商品ブランド「SOÉJU(ソージュ)」を立ち上げるにあたってサービスをリニューアルし、9月6日、先行予約を開始した。

市原氏は、「サービスの基本的な部分はLet Me Knowと同じだが、リニューアルで、よりシックで大人っぽいスタイルの提案に集中していく」と説明している。

「これまではセレクトショップと同じく、さまざまな色味やスタイルの洋服を取りそろえてコーディネートしてきた。これからは自社ブランドのソージュで、ベーシックでシンプルなアイテムを作るので、それらを使ったスタイル提案もしていく。着まわしがきき、その分、トップスや小物のスタイリングでいろいろなバリエーションを楽しんでもらえる」(市原氏)

モデラートがソージュブランドで商品開発しているのは、ベーシックなデザインで着まわししやすい、それでいて安っぽくならない、高級感のある素材で作ったアイテムだ。第一弾商品としてワンピース、ギャザースカートとタックパンツを展開する。

試作品を取材のビデオチャット越しに見せてもらったけれども、いずれも黒のシンプルなデザインで、確かにおしゃれが苦手な私でも、仕事着として取り入れやすそうだった。ブラウスやニット、ジャケットやスカーフなどの小物で工夫すれば、1週間の着まわしも考えやすいだろう。

市原氏は「D2Cモデルを取り入れ、海外のハイブランドが使うような上質な生地を使いながら、価格は市価の3分の2程度に抑えている」と説明。ワンピースなら、デパートなどで3万円以上するものを1万8000円からと、1万円台のリーズナブルな価格で提供するという。

またモデラートでは9月6日、D2C商品の本格展開に先駆けて、Makuakeでソージュの第一弾アイテムの販売プロジェクトを開始する。アイテム購入で、ソージュパーソナルのファッション診断カウンセリングの短縮版(30分)を受けられ、ソージュのアイテムと手持ちのアイテムやおすすめのアイテムを組み合わせた3種類のコーディネート画像を後日受け取ることができる。

モデラートは2014年12月、マーケティングのコンサルティング及びクリエイティブ制作会社として設立。代表の市原氏はアクセンチュアで経営コンサルティング、ルイ・ヴィトン ジャパンでCRMに従事していた。その後、子どもの看病を経て、フリーランスとして復職するときに、ファッションについての悩みに遭遇。「一度キャリアやファッションから完全に離れてしまうと取り残されてしまう」と感じ、「自分のクローゼットに入っているアイテムをどう自分の体型・雰囲気に合わせてコーディネートするか」で日々頭を悩ませていたという。

「インフルエンサーの着こなしをまねても自分には合わないことがほとんど。自分にあったアドバイスをプロのスタイリストから継続的に受けられれば」との思いと、同じような悩みを抱える同世代の女性の声を受けて、2015年にオンラインスタイリングサービスを始めた。

2017年7月には、前身のサービス Let Me Knowが500 KOBE ACCELERATORに選出された。またモデラートは、1号ファンドが組成されたばかりのFull Commit Partnersから、5月30日に2480万円をシードラウンドで調達している。

市原氏は「調達により、D2C商品の開発を早めることができた。今後は開設するサロンの機能拡充も進めていく」と資金調達と今後の展開について話している。

モデラート代表取締役の市原明日香氏

店舗向け生産性向上アプリ「はたLuck」運営のナレッジ・マーチャントワークスが2.7億円を調達

店舗を抱えるサービス業向けに、生産性向上支援アプリ「はたLuck」や次世代幹部のための研修サービスを提供するナレッジ・マーチャントワークスは、総額2.7億円の資金調達を実施したと発表した。引受先はGMO VenturePartnersエン・ジャパンDDホールディングスブレインパッドバリュークリエイトの各社と、レオス・キャピタルワークス代表取締役社長の藤野英⼈氏ほか複数名の個⼈投資家。今回の調達は同社にとって、シリーズAラウンドにあたる。

2017年3月創業のナレッジ・マーチャントワークスは、店舗サービス業の次世代幹部向けに、事業・組織改革のための研修プログラムを提供。また、店舗の生産性向上を支援するクラウドサービスとアプリの「はたLuck」シリーズを運営している。

はたLuckは、店舗のシフト・タスク管理のほか、従業員向けのアンケートや目標管理機能、ビジネスチャット機能などを備え、店舗内のコミュニケーションのズレを可視化することで、生産性向上や従業員のロイヤリティ、エンゲージメント向上を促す。

ナレッジ・マーチャントワークスでは調達資金により、はたLuckの開発体制、AIによる店舗内データ分析の強化を図る。UI向上や、ゲーミフィケーションを活用した能力向上機能を発展させていくという。

ドライブシェアアプリ「CREW」運営のAzitが総額約10億円を資金調達

クルマに乗りたいユーザーと、マイカーに人を乗せたいドライバーとをつなげるマッチングアプリ「CREW(クルー)」を運営するAzit(アジット)は9月3日、総額約10億円の資金調達実施を明らかにした。第三者割当増資の引受先はEight Roads Ventures Japan、グローバル・ブレインモバイル・インターネットキャピタルクルーズの各社と複数の個人投資家。

CREWは、2015年10月からサービスを開始した、ドライブシェアのプラットフォームだ。アプリで出発地と目的地を設定すると、近くを走るCREWに登録済みのドライバーとマッチングをし、クルマで送っていってもらうことができる。

目的地に到着すると、乗った側・乗せた側が、それぞれ相互に評価する。乗った側のユーザーは、ガソリン代や高速代金などの実費とサービス利用料を、アプリを経由したクレジットカード決済で支払う。サービス利用料は、1ドライブ当たり20円のマッチング手数料と、移動のモニタリング、カスタマーサポートなどに対応するための「安心安全手数料」20円/分。都内の一般道で約15分乗車したとして、だいたい400円台から600円台ぐらいに収まるようだ。

またこれらの費用とは別に、ドライバーに対して任意の謝礼を支払うことができる。謝礼の有無や金額は、乗った方が自由に設定できる。

現在は実証実験中で、東京都内の一部地域と鹿児島県与論島を対象地域としてサービスを提供。都内では夜20時から深夜3時の時間帯で利用可能だ。

自家用車で人を運ぶドライブシェア、ライドシェアは、日本では許認可の問題があり、タクシーとしての許可を受けずにドライバーを抱えてタクシーサービスを提供(営業)することはできない。CREWでは「乗せてもらった側が支払うのは、実費とプラットフォームの利用料に加えて、乗る方が任意に決められる『感謝料』」という形を取ることで、「運送に対する直接の対価が発生しない『無償運送行為』にあたる」としている。これにより、いわゆる「白タク」ではない、合法のサービスであるとの解釈を採っている。

また、ドライブシェアサービスでよく問題となるのが、ドライバー、もしくは乗る側がどんな人か分からない、という点だ。CREWはドライバー、ユーザーともに登録が必要。特にドライバーに関しては、対面での面接や免許証・自動車保険・自賠責・車検証などの書類審査、SNS情報連携による身元の透明性確保などによるスクリーニングを行っているという。

Azitでは調達資金をもとに、CREWの事業拡大のための組織拡大、マーケティングを行っていくという。また、実証実験を行っている与論島と同様のローカルエリアサービスも含め、全国各地へのサービス提供にも取り組むとしている。

家計から仮想通貨まで、お金の専門家に無料で相談できる「おかねアンサー」正式リリース

専門家に、スマホやウェブから気軽に相談できるサービスが日本でも増えている。中でも分野を絞った専門家による相談サイトとしては、草分け的な存在の「弁護士ドットコム」や医師相談サービスの「アスクドクターズ」、AIの通知との組み合わせで中小企業の課題に専門家が答える「SHARES(シェアーズ)」など、さまざまなカテゴリーのものが出てきている。

セオリアが9月3日に正式リリースした「おかねアンサー」は、お金に関する専門家への無料相談サービスだ。一般消費者からの相談に専門家が回答。フィナンシャルプランナーや、税理士、社労士、司法書士など士業の専門家のほか、企業勤めの証券アナリストなども回答者として参加するという。

回答ジャンルには「家計」から「保険」「資産運用」「不動産・住宅ローン」「老後・年金」「税金」などのほか、今、注目度が高い「仮想通貨」もあり、お金に関する相談を幅広く受け付ける。

セオリアは代表取締役の堤健正氏と取締役CTOの造田知宏氏によって2018年1月に設立されたスタートアップだ。堤氏はエムスリーでアスクドクターズのプロダクトオーナーを担当し、その後DeNAでメディア事業やオートモーティブ事業を手がけていた人物。造田氏も同じくDeNAでゲームのデータ分析などに携わった後、メディア事業、オートモーティブ事業でリードエンジニア、プロダクトオーナーを務めた。

堤氏はセオリア設立とおかねアンサーを開発したきっかけについて、次のように語る。

「まずは父が銀行マンで、小さい頃から金融に興味があったこと。大学院卒業後の進路でもITベンチャーと金融業とで迷って、一度はITの道へ進んだが、いつかこの分野で勝負したいと考えていた」(堤氏)

さらに専門家への悩み相談と解決の原体験が、会社設立時にあったという。

「社会保険(厚生年金保険・健康保険)は、設立済みの法人の登記簿などの書類がなければ申請ができず、適用できない。設立月の社会保険をどうするか、ということで税理士に確認したところ『いったん国民年金・国民健康保険に加入するか、元の会社の保険を任意継続するしかないのでは』という答えだった。ところが社会保険労務士に聞いてみたら、さかのぼって適用できることが分かった」(堤氏)

堤氏はこのことから「こうした情報は個別でなかなか聞けない」ということと「適切な専門家に相談すれば早く解決する」という知見を得たという。「ただ一方で、それだけのことを確認するのに、専門家に面談を予約して1時間拘束して……となると重すぎる。また『専門家だからどの分野も分かる』というわけではなく、適切な人に聞かないと、質問によっては不利益になることもあり得ると知った」(堤氏)

もう一点、堤氏が事業立ち上げに踏み出した理由は、エムスリーでのアスクドクターズ運営の体験があったことだ。

「アスクドクターズについては、事業計画からプロダクト設計、体制づくり、アライアンスまで、いろいろなことを手がけた。事業を伸ばすためのKPI設計やプロダクトの品質向上のポイント、ユーザー数を伸ばすための工夫などは、システムなどに投資してお金をかければいいというものではなく、手もかけなければならない。そのノウハウを持っていれば、新しい価値が提供できるのではないかと考えた」(堤氏)

また「所得の伸び悩みや老後の不安が背景にある一方で、仮想通貨など、お金そのものの考え方が変わってきている」と堤氏は言い、「そうした環境のもと、お金に対する情報が求められている」と市場のトレンドも上向きであると分析する。

セオリアでは、エンジェル投資家の有安伸宏氏、砂川大氏、稲田雅彦氏ほか、複数名の個人投資家を引受先として、数千万円規模の資金調達を完了。「CGM(Consumer Generated Media:ユーザー参加によるコンテンツ生成メディア)に強い投資家が投資に参加してくれたことが、我々の強みとなっている」と堤氏は話している。

おかねアンサーは先に述べたように、現在は無料で提供されている。収益化については、アスクドクターズや弁護士ドットコムのような個人課金(既存のQ&A閲覧への課金)や事業者への広告、ユーザーと専門家との面談のマッチングで相談1回につき手数料を取るなど、いくつかの方法を検討しているそうだ。

「時期は明確には決めていないが、早期に10万件のQ&A登録を目指したい」という堤氏。「サービスのベースはあくまでもQ&A。アスクドクターズにせよ、弁護士ドットコムにせよ、同様のサービスでは成長に長い年月が必要だということは見てきている」と言いながら「いまはAIに可能性がある」と話す。

将来的なサービスの展開について、堤氏は「コンテンツテキストを学習データとして取り込み、自動回答や提案をすることも可能になるのではないかとみている。どういう悩みにはどう回答するとよいのか、Q&Aをデータベースから作っていくことで、AIで何かできるのではないかと考えている」と語った。

写真右からセオリア代表取締役 堤健正氏、取締役CTOの造田知宏氏