家計から仮想通貨まで、お金の専門家に無料で相談できる「おかねアンサー」正式リリース

専門家に、スマホやウェブから気軽に相談できるサービスが日本でも増えている。中でも分野を絞った専門家による相談サイトとしては、草分け的な存在の「弁護士ドットコム」や医師相談サービスの「アスクドクターズ」、AIの通知との組み合わせで中小企業の課題に専門家が答える「SHARES(シェアーズ)」など、さまざまなカテゴリーのものが出てきている。

セオリアが9月3日に正式リリースした「おかねアンサー」は、お金に関する専門家への無料相談サービスだ。一般消費者からの相談に専門家が回答。フィナンシャルプランナーや、税理士、社労士、司法書士など士業の専門家のほか、企業勤めの証券アナリストなども回答者として参加するという。

回答ジャンルには「家計」から「保険」「資産運用」「不動産・住宅ローン」「老後・年金」「税金」などのほか、今、注目度が高い「仮想通貨」もあり、お金に関する相談を幅広く受け付ける。

セオリアは代表取締役の堤健正氏と取締役CTOの造田知宏氏によって2018年1月に設立されたスタートアップだ。堤氏はエムスリーでアスクドクターズのプロダクトオーナーを担当し、その後DeNAでメディア事業やオートモーティブ事業を手がけていた人物。造田氏も同じくDeNAでゲームのデータ分析などに携わった後、メディア事業、オートモーティブ事業でリードエンジニア、プロダクトオーナーを務めた。

堤氏はセオリア設立とおかねアンサーを開発したきっかけについて、次のように語る。

「まずは父が銀行マンで、小さい頃から金融に興味があったこと。大学院卒業後の進路でもITベンチャーと金融業とで迷って、一度はITの道へ進んだが、いつかこの分野で勝負したいと考えていた」(堤氏)

さらに専門家への悩み相談と解決の原体験が、会社設立時にあったという。

「社会保険(厚生年金保険・健康保険)は、設立済みの法人の登記簿などの書類がなければ申請ができず、適用できない。設立月の社会保険をどうするか、ということで税理士に確認したところ『いったん国民年金・国民健康保険に加入するか、元の会社の保険を任意継続するしかないのでは』という答えだった。ところが社会保険労務士に聞いてみたら、さかのぼって適用できることが分かった」(堤氏)

堤氏はこのことから「こうした情報は個別でなかなか聞けない」ということと「適切な専門家に相談すれば早く解決する」という知見を得たという。「ただ一方で、それだけのことを確認するのに、専門家に面談を予約して1時間拘束して……となると重すぎる。また『専門家だからどの分野も分かる』というわけではなく、適切な人に聞かないと、質問によっては不利益になることもあり得ると知った」(堤氏)

もう一点、堤氏が事業立ち上げに踏み出した理由は、エムスリーでのアスクドクターズ運営の体験があったことだ。

「アスクドクターズについては、事業計画からプロダクト設計、体制づくり、アライアンスまで、いろいろなことを手がけた。事業を伸ばすためのKPI設計やプロダクトの品質向上のポイント、ユーザー数を伸ばすための工夫などは、システムなどに投資してお金をかければいいというものではなく、手もかけなければならない。そのノウハウを持っていれば、新しい価値が提供できるのではないかと考えた」(堤氏)

また「所得の伸び悩みや老後の不安が背景にある一方で、仮想通貨など、お金そのものの考え方が変わってきている」と堤氏は言い、「そうした環境のもと、お金に対する情報が求められている」と市場のトレンドも上向きであると分析する。

セオリアでは、エンジェル投資家の有安伸宏氏、砂川大氏、稲田雅彦氏ほか、複数名の個人投資家を引受先として、数千万円規模の資金調達を完了。「CGM(Consumer Generated Media:ユーザー参加によるコンテンツ生成メディア)に強い投資家が投資に参加してくれたことが、我々の強みとなっている」と堤氏は話している。

おかねアンサーは先に述べたように、現在は無料で提供されている。収益化については、アスクドクターズや弁護士ドットコムのような個人課金(既存のQ&A閲覧への課金)や事業者への広告、ユーザーと専門家との面談のマッチングで相談1回につき手数料を取るなど、いくつかの方法を検討しているそうだ。

「時期は明確には決めていないが、早期に10万件のQ&A登録を目指したい」という堤氏。「サービスのベースはあくまでもQ&A。アスクドクターズにせよ、弁護士ドットコムにせよ、同様のサービスでは成長に長い年月が必要だということは見てきている」と言いながら「いまはAIに可能性がある」と話す。

将来的なサービスの展開について、堤氏は「コンテンツテキストを学習データとして取り込み、自動回答や提案をすることも可能になるのではないかとみている。どういう悩みにはどう回答するとよいのか、Q&Aをデータベースから作っていくことで、AIで何かできるのではないかと考えている」と語った。

写真右からセオリア代表取締役 堤健正氏、取締役CTOの造田知宏氏

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TechCrunch Japan

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