利用者を〈見る〉インターフェースがもたらすもの


今週、私たちはSamsungを代表する次世代スマートフォンを垣間見る可能性が高いが、大方の噂によると、そこには利用者が小さな画面を注視しているか目をそらしたかを検知する自動スクロール機能が搭載されるしい。具体的な内容は一切明らかにされていないが、他でも視線追跡の技術は、画面に向かっているかどうかだけでなく、意識を集中しているかどうかまで正確に把握できる水準に達している。

利用者が端末に集中するのと同じくらい利用者に集中する端末がやってくる。これはGalaxy S IVに限った話ではない。そしてその時,アプリケーション市場における膨大な革新の可能性と、モバイル広告にとって一儲けできるチャンスがもたらされる一方で、そこには過去5年間に位置情報サービスの普及がもたらした問題が小さく思えるほどのプライバシーの懸念が潜んでいる。

アプリの変革

自動スクロールは、ユーザーの意識がどこにあるかを検知することでアプリに可能になる応用のごく一面にすぎない。もちろんそれは便利であり、モバイル機器における「ページ」の概念や、スクロールバーさえも全く無意味にするかもしれない。しかし、アプリ使用時に利用者がどこを見ているかという新情報を得ることによるソフトウェアインターフェースの変革に比べれば、些細なことだ。

デザインは一つではなくユーザー毎にあつらえる

ユーザーの行動に合わせてリアルタイムに変わる動的インターフェースを想像してほしい。そして十分賢い技術をもってすれば、アプリのレイアウトはパーソナル化における次のフロンティアになるかもしれない。今日の開発者が推薦エンジンやアルゴリズムを使い、ユーザーがアプリを開くたびに最も魅力あるコンテンツで出迎えようと努力しているように、明日われわれは、「万人向けデザイン」の概念を捨て、一人一人によって異なる戦略をとるアプリを目にするようになるかもしれない。

そしてコンテンツといえば、あなたの目が自然にどこを見るかを端末が知っているなら、あなたのコンテンツ嗜好もよくわかっているだろう。どんな種類のコンテンツが好きかだけでなく、何にいちばん興味を引かれたかを具体的に知ることができる。個々のシーン毎に何が視聴者の目を捕えたか、どの登場人物が受け入れられたか、シーン内でどの部分が視聴者の関心を引きよく注目されたか等を分析して、ヒートマップや動画を作ることさえとっぴな考えとはいえない。このいずれもが、Flipboardのような既存のパーソナル化エンジンを後押しし、パーソナル化ウェブの精度を高める。

マーケターの楽しみ

人がどこを見ているかを知ることはマーケターの夢だ。アプリのどこに広告を配置すべきかを正確に教え、消費者の注目を引くために何が有効で何がそうでないかに関して驚くべき知見を与えてくれる。そして、他の購買層データと統合することによって、さらに効果の高い購買者ターゲティングが可能になるだろう。

企業や広告主がモバイル広告のROI[投資収益率]を高める手段を探し求めているのは当然であり、 Googleも例外ではない。顔面フィードバックデータを収集することは、マーケティングで次のレベルに上がるために秘密の暗号を手に入れるのと同じ効果がある。ただし、扱いは慎重にする必要がある。そこには乱用の可能性がいくらでもある。例えば、アプリ内であなたが一番好きなコンテンツを見つけた場所に、次々と広告が現れるようになったり、あなたが注目するのを待って売り込みの集中砲火を欲びせる自動再生ビデオ広告を想像してほしい。

広告における顔や目の追跡技術には良い使い道も悪い使い道もある

あらゆるマーケティングツールと同じく、顔や目の追跡技術には良い使い道も悪い使い道もある。しかし、どちらもこの新しいモバイルデータに内在するプライバシー問題と戦う必要がある。

顔データは、プライバシーの境界線か?

位置情報は、消費者の間に少なからぬ騒動を引き起こし、未だに誰もが安心できる技術とは言えない。カメラ内にある視線や顔の動きを検知するために作られたセンサーによって集められたデータは、個人のプライバシーにとって全く新しい境地に踏み込むものであり、監視機関や、懸念をもつユーザー、恐らく政府関係者らによっても厳密に監視されるべきだ。

問題は、この種のデータを集めることが、その利用に対する大規模な反対運動を引き起こすほどの警戒心を与えるかどうかだ。位置情報はユーザーにとっての利点があまり明らかではないにも関わらず、何とか切り抜けて今や新しいアプリの殆どに採用されている。果たして顔面追跡も同じ試練を受けるのだろうか。個人を特定しない形で使われるならば不満を鎮められるのだろうか。私にはすぐに答えが思いつかないが、モバイルファースト世代は、旧世代よりも個人データの共有に意欲的なので、初期の反射的抵抗を何とか乗り切れるかもしれない。

結局、自分を知っているスマートフォンの方が知らないものより良い。そして、自分を「見る」ことの出来るスマートフォンの方がそうでないものより自分を知っている。このテクノロジーがしっかりと根をおろすまで、数年間は心許ない状態が続くかもしれないが、時折興味深い利用法が数多く出てくるころを期待したい。

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(翻訳:Nob Takahashi)

Amazon Redshift はビッグデータ分析を変えるのか

編集部注: この記事はシリコンバレーでHapyrusを起業した藤川幸一(@fujibee)によるゲスト記事である。Hapyrusはクラウド上のビッグデータのためのウェブサービスを提供する会社で、500startupsや日本の有名な複数のエンジェルから投資を受けている。

昨年11月にAmazon Web Services(以下AWS)が初めてのユーザーカンファレンスre:InventでAmazon Redshift(以下Redshift)を発表して以来、ビッグデータ分野での破壊的プロダクトとしてメディアに紹介されて来ました。そしてついに、先日2月15日に一般公開されたRedshiftですが、エンタープライズ向け製品ということもあって、AWSの他のプロダクトよりも単価が高め(1時間あたり0.85ドルの利用料)です。このため触ってみたいけれども敷居が高いという方も多いのではないでしょうか。また、破壊的と言われていてもピンと来ない方が多いと思います。Hapyrusでは、長年AWS上のHadoopサービスであるAmazon Elastic MapReduceを簡単に利用できるようにするサービスを提供してきた経験と、米国でRedshiftの検証に公開前からAWSチームとともに携わってきた実績を踏まえて、Redshiftの特徴と用途について解説したいと思います。

Redshiftはデータウェアハウスの価格破壊

データウェアハウスとは、データ分析や管理のためのシステムですが、要するにデータの追加のみで、更新をほとんどしないビッグデータ向けのデータベースのことです。MySQLなどの通常のDBシステムとの違いはトランザクションをミリ秒単位で処理(OLTP)したり、頻繁に更新したりはできないですが、大量の過去データを保持し、データ集計などの計算(OLAP)を得意としています。企業の意思決定のためのBI(Business Intelligence)システムや、過去のデータを元にしたシステムの最適化などに利用されます。

この用途の違いのため、特殊なハードウェアなどで提供されることが多く、また大企業のデータ分析で利用されることが多かったため、数千万円から数億円以上という価格帯で、大変高価と考えられて来ました。

しかし、最近のHadoopを始めとする低コストなビッグデータ処理技術の発達から、大量データ分析の価値が見直され、広告テクノロジーやソーシャルゲームなどの、より小さな組織でもビッグデータを分析して新しいビジネスを生み出す事例も出始めています。

今まではビッグデータ分析とデータウェアハウスは、その価格差ゆえに別物と考えられることが多かったのですが、Redshiftはその価格差を壊し、スタートアップなどの小規模なビジネスでもビッグデータ分析を十分可能にしてしまったのです。ここが「破壊的」と称される所以です。今までも、Hadoopを利用すれば比較的低コストで同様な処理(例えば Hadoop Hiveを利用するなど)ができましたが、実はHadoopを実用化する場合、優秀なHadoopエンジニアの獲得や大規模なサーバ管理など、潜在的なコストが大きく、小規模ビジネスが簡単かつ十分にその恩恵を受けるのは難しかったのです。

具体的なポイント

では、Redshiftと既存のデータウェアハウス技術、Hadoopとの違いは何なのでしょうか。

- 価格
例えば、このようなキーワード(データウェアハウス 価格 億円)で検索してみて下さい。数テラバイト規模のデータウェアハウスでも、億円単位のプライスタグがついています。さらに、その管理のために複数のデータベース管理者を雇う必要があります(参考資料)。 これと同様なものをAmazonはテラバイト単価で最低年間1,000ドル(3年reserved instance/最低2TBから)で提供するというのです。さらに、データベース自体はAmazonがクラウド上で管理しますので、この価格に管理コストに含まれています。はっきり言うと、100万ドル対1,000ドルレンジの比較です。桁が3つも違います。実際に、このコストの差を埋める根拠を求めるのは非常に困難だと思います。これが、なぜあんなに騒がれていたかの理由です。

Hapyrusで、Hadoopで同等な処理(Hive上で同じSQLクエリー)でのベンチマークを集計して公開した(下図・日本語版はこちら)のですが、通常の実行コストを比較したものだけでも速度・コスト共に10倍以上もRedshiftが優っているという結果がでました。このベンチマークは一時SlideShareのHottest Slideにもなりました。それだけRedshiftはビッグデータ関連のエンジニアの関心が高いということです。HadoopやHiveは、基本的にその専門家を雇う必要がありますが、Redshiftは後述するように普通のWebエンジニアでも操作ができます。


- データウェアハウスとしての性能
ここから少し技術的な説明になりますが、最大の特徴はカラムナー(列指向)と呼ばれるデータ格納方式です。IBM NetezzaやHP Verticaなどの最新のデータウェアハウスで採用されている方式ですが、これはデータベースの各カラム(列)ごとに、データを保存する方法です。これに対して、通常のデータベースは行指向データベースと呼ばれます。行指向の場合、インデックスを利用して特定の行を瞬時に取り出すのは得意ですが、データの全件集計などはすべてのデータを処理する必要があるので不得手です。カラムナーの場合は、特定のカラムのみ計算すればよく、集計処理に向いています。

さらに、カラム内には特定のデータが繰り返し現れることが多いので、圧縮効率が非常に良くなります。Redshiftでは、7種類(2月28日現在・参考資料PDF)の圧縮アルゴリズムから各カラムごとにそれを選べます。さらに、投入するデータや現在格納されているデータから最適な圧縮方法を見つける方法も提供されています。

このように、クエリーに必要な、圧縮されたカラムだけをメモリ上に載せて計算を実行するので、対象がビッグデータであっても驚くようなスピードで結果を得られるのです。

Hadoopでもこのカラムナーのメリットを活かす追加モジュール(RCFile、HBaseなど)がいくつか公開されていますが、技術的な敷居もあり、標準的に使われているかというとそうでもないと考えています。

他のデータウェアハウスと比較しての最大の特徴は、Amazonらしくスケーラビリティーです。MPP(Massively Parallel Processing)と呼ばれる仕組みを備えていて、データ量が増えるに従って処理・保存サーバー数を増やし、処理速度を維持・向上することができます。Hapyrusではこの機能について、データ読み込みとクエリー速度の両方をベンチマークで確認しました


実はRedshiftは元々、Amazonが出資しているParAccelという会社が提供するテクノロジーを元に開発されています。MPPはその会社や、他のベンダーからも提供されている機能ですが、これがAWSから提供されるということに意味があります。つまり、これがAmazon独自の最大の特徴なのですが、スケールアウト(台数を増やす)のが、ものの数クリックで完了するのです! これは他のベンダーがどんなに頑張っても真似できない、パブリッククラウドサービス独自の部分だと思います。

まとめると、カラムナーデータベースであり圧縮オプションが豊富、MPPによりスケーラブルでスケールアウトは数クリックで完了。初めてこれらの事実を知って、さらに検証が完了した時、身震いしたのを覚えています。

- 既存技術との互換性
RedshiftはPostgreSQLという既存のデータベースを元に構築されています。つまり、PostgreSQLのドライバーや、それに対応している各種ツールはほぼすべて利用できるということです。通常のJDBCドライバーですべての操作が可能です。つまり、一度データをRedshiftに入れてしまえば、既存のアプリケーションや新規に作ったウェブサービスなどからも、容易に利用できるということです。もちろん、PostgreSQLのすべての機能が使えるというわけではありませんが(例えばデータタイプがプリミティブに限定されるなど)、利用する敷居はHadoopに比べて格段に低いと考えられます。

- 現状の問題点
一番の懸念点は、まだ一般公開されたばかりで、実績があまり公表されていないことでしょう。しかし、そもそもこの技術は世界一のECサイトであるアマゾンで利用されて検証されているものですし、かなり前から非公開ながら、いろいろな企業で検証されてきたということです。公開当初は広く使われるようになるということでいくつか問題も出てくると思いますが、すぐに落ち着いてくるでしょう。

前述のベンチマークで、Redshiftへのデータの一括ロードにかなりの時間がかかるという結果がでましたが、インスタンスを複数にすることでかなり改善することがわかっていますし、またHapyrusでも一括ではない継続データアップロードの仕組みを提供しようとしています

また、技術内容や利用方法についてもまだ広く知られていませんが、このような記事を通して、HapyrusとしてもRedshiftを利用する方々を応援して行きたいと思っています。

Hadoopとの住み分け
もちろん、Hadoopのほうが得意なことも多々あります。例えば、各レコード全体を処理していくものや、複雑な機械学習を利用した分析など、より高度な処理はHadoopでしか出来ないものもあります。また、頻繁に分析しない処理(例えば年に1回、月に1回のペタバイト級のバッチ処理など)は、Hadoopのほうがコストパフォーマンスが良くなる可能性があります。逆に、数分や数十分前のデータに対して短時間にリアルタイムに近い分析をしたい広告テクノロジーやデジタルマーケティング、ソーシャルゲームなどの分析には、テラバイト級のデータである限り、Hadoopや他のテクノロジーよりもRedshiftのほうが優位にあると考えられます。

Redshiftはビッグデータ分析のキラーアプリケーション
今まで、筆者はビッグデータ技術で一般利用が可能なものはHadoopしかなく、それをどれだけ使いやすくするか、ということがどのような規模の会社でもビッグデータの恩恵に与れる最短の道だと信じて進んできました。しかしまさに、それはRedshiftによってひっくり返されてしまいました。これはとても嬉しいことです。なぜならば、より簡単に、より低コストでビッグデータ分析の道がどんな規模の会社に対しても開けたということだからです。Redshiftを利用することで、皆がクラウドビッグデータを活用してよりよい世界が実現されることを願っています。

ヤフーが映画館でのオンデマンド上映を実現するドリパスを買収

ドリパスはリクエストした映画に一定の人数がその映画を見たいと集まったら劇場で上映されるというオンデマンドの映画上映サービスで、2010年8月からスタートしている。現在のところ提携によって3,000作品の映画を全国の78館の映画館で上映できるのだという。

このドリパスをヤフーが買収した。買収額は明かされていないがドリパスを運営するブルーム代表取締役社長の五十嵐壮太郎氏によれば数億円程度だという。それも大きくはない額だというから、1、2億円程度なのかもしれない。

買収以前からすでにヤフーとはGyaoやヤフー映画と提携して、トラフィックを流してもらう関係だった。それは、エンターテインメント領域でのO2Oというビジネスにヤフーが興味を持っていたからだという。買収後はブルームはヤフー本体に吸収され、ドリパスはGyaoとヤフー映画と共同で引き続き現在のO2Oの事業を継続していくという。ドリパスでは映画だけではなく、Jリーグの試合や演劇など映画館や劇場を使ったエンタメ領域の面を広げようとしている。

ブルームはこれまでリヴァンプとオープンネットワークラボから数百万円の出資を受けているという。ドリパスはオープンネットワークラボの4期生だった。なお、オープンネットワークラボにとっては、これが初めての支援先のイグジットとなる。

公開からわずか3週間、Mailboxは毎日5000万通メールを処理している




わずか数週間前に公開されて以来、メール管理アプリのMailboxはかなりの大ヒットになっている。その人気ぶりに、125万人以上がウェイティングリストに登録した。この早期の成功で困るのは、Mailboxが需要に答えるそばから新しいユーザーが待ち行列に加えられていくことだ。同社はこれまでに約50万人の申請を処理してきたが現在の成長曲線から見て、列は伸びる一方のようだ。

メールのスヌーズとプッシュ通知を処理するために、Mailboxはユーザーのメールをクラウドから取り出し再フォーマットしてから送り出す。このため、サービスが新規ユーザーを追加する際には、スケールアップに耐えられることを確認する必要がある。しかし、処理されるユーザーの数もメッセージの数も膨大だ。

「現在私たちは1日に約5000万通のメッセージを配信している」とCEOのUnderwoodは私に言った。これは一般公開からわずか3週間後のことだ。比較のために挙げると、Twitterが同じ量のメッセージをさばくようになるまでには3年を要している。もちろん、これはMailboxがユーザーのメールボックス内にある大量の既存コンテンツを管理しているからだ。

本誌は、同社のスタートから最近数週間の急成長に関して、Underwoodと数分間のおしゃべりをしてアプリの簡単なデモも見せてもらった。まだMailboxに登録していない人は、今見逃がしているものを上のビデオでチェックされたい。

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(翻訳:Nob Takahashi)

Googleストリートビュー・チームにロング・インタビュー―ラリー・ペイジの車の屋根のカメラからグランドキャニオンの谷底まで

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最近、私はGoogleでストリートビューを創造したメンバーに長時間インタビューする機会があった。そこでこのプロジェクトがラリー・ペイジの夢想から始まって世界中の誰もが特に意識もせずに使う日常必須のツールへと成長したのか、そのプロセスを詳しく学ぶことができた。

ラリー・ペイジの車の屋根に積まれたかさばったカメラから始まったストリートビュー撮影システムはワゴン車、乗用車、三輪車、二輪車、はてはバックパックやスノーモビルにさえ搭載されている。2007年5月25日にスタートして以来、ストリートビューはGoogleが世界を観察する視覚となった。ときには賛否の議論を巻き起こすこともあるが、Googleは前進を止めない。

ストリートビューのエンジニアリング・ディレクター、Luc Vincentとエンジニアリング・マネージャーDaniel Filipに会う前に、私はGoogleマップについてできるかぎり勉強していった。それでもストリートビューのコンセプトが生まれた当時、それがいかに「空に浮かんだパイ」のような夢物語だったかには気づかなかった。ストリートビューがこれほど身近になった今、多くの人々がこの誤解をしているものと思う。


そこに行く前のその場所の様子を知りたい

フランケンシュタインみたいな不気味な外見の車だった

Vincentによれば、ストリートビューの最初のコンセプトはスタンフォード大学のMarc Levoyの研究だという。 Levoyと彼の学生の一人がビデオを撮影してそれを1枚の画像に貼り合わせる技術を開発した。Googleはサンフランシスコ中の道路を撮影することができるかどうか見るためにこのプロジェクトに少額を投資した。その結果、ビデオの1コマずつを解析して非常に長大な街路の写真を合成することが可能だと判明した。写真は歪んでおり、画質は悪かったが、これがストリートビューの第一歩になった。

このテストの後、ラリー・ペイジは自分の車の屋根に巨大なカメラをくくりつけ、サンフランシスコ中の道路の写真を撮ってまわった。それらの写真をつぎはぎした巨大な画像はそのままでは役に立たなかったが、Vincentによれば、このテクノロジーはさらに興味深いものになった。

最初のストリートビュー開発チームは20%ルール〔社員は勤務時間の20%を自分の自由な実験に充てられるというGoogle独特の規則〕を使う少数の社員たちからなっていた。バンの屋根にはカメラとGPSとレーザーが搭載されていた。レーザーは建物など沿道の物体までの距離を測定するためだった。システムはこれによって3Dモデルを作り、画像を整合性を保って貼り合わせることができた。カメラはバンの車内のコンピュータ・アレイに接続され膨大な写真がその場で処理された。しかしまだまだ初歩的ななレベルだった。Vincentによれば―

フランケンシュタインみたいな不気味な外見の車だったが、われわれの目的に十分なくらいベイエリアの画像データを収集することができた。われわれは警備部門からバンを借りて街を乗り回した。しょっちゅうエラーが出て仕事が止まった。

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正規のプロジェクトになる

しかし本格的にやるとものすごい費用が…

20%ルールで自分の好きなことをするのと、他人を巻き込み、正式なプロジェクトとして承認を受けるべく努力するのは全く別だ。Vincentのチームは十分なデータを集めてからそれを1つに継ぎ合わせてサービスとして意味のあるものに.した。

2005年の第3四半期にVincentのチームは金曜日の定例テクノロジー会議にストリートビューを持ちだした。ここで、エンジニアリング担当副社長を含めて、20%ルール以外の社員を充てることが承認された。2005年の10月にストリートビューは正式にGoogleの新プロジェクトに格上げされた。いよいよ後戻りはできなくなったわけだ。地球を隅から隅まで1ピクセルも余さずにデジタル画像化する途方もないプロジェクトが動き出した。対外的には秘密のままだったが、VincentはStreetViewプロジェクトに新規の人材を採用することができるようになった。Filipが最初の採用者だった。今でもこの2人がストリートビュー事業のリーダーだ。

2006の始め、ストリートビュー・チームのフルタイムのメンバーは7人だった。目的は実際に稼働するサービスを作り上げること。

この時期、われわれはいくつかの問題に取り組んでいた。ユーザー・インタフェースの専門家はチームに1人しかいなかった。見た目のとおりのパノラマ画像をユーザーが扱いやすい形で表現するのに非常に苦労した。というのはその当時、まだGoogleマップがなかったからだ。

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意外に思う読者も多いだろうが、この時点では今われわれが見るようなGoogleマップは存在していなかった。ストリートビュー・チームはいわばGoogle自身と比べてさえ進みすぎていた。Vincentによれば、

われわれはまず新しいプラットフォームを作らねばならなかった。信頼性が高く、大規模に拡大可能でかつ車載可能なシステムでなければならなかった。われわれは8台のデジタル一眼レフを放射状の花びら形に配置した。完全な情報を得るためにシステムが高価になってもやむを得ないと覚悟していた。

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データ処理

なんでもいいからできる限りの情報を集め、その後で使い方を考える

他のすべてのGoogleの活動と同様、ストリートビューでも収集したデータに対する膨大な処理が行われている。Googleはしばしばものに取り憑かれたようにあらゆるデータを収集しようとし、これがプライバシーに敏感な一部人々の反感を買っている。しかしGoogleは「なんでもいいからできる限りの情報を集め、その後で使い方を考え、人々の役に立てる」というアプローチを繰り返してきた。

ストリートビューで収集される情報量は膨大なものだ。Vincentのチームのバンは写真撮影の他に、GPS情報、周囲4箇所のレーザーによる対象物までの距離、風速、その他あらとあらゆる情報を記録した。

しかも現在ストリートビューのデータは全世界47カ国に散らばった3000のシステムから収集されている。

Vincentによれば、

ストリートビュー車には4、5台のコンピュータを積んだラックを装備してあったが、いつも何かが壊れた。われわれはこういうストリートビュー車を3、4台作って主にカリフォルニアでテストを繰り返した。始終不調になるので、なかなか規模を拡大することができなかった。

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800万キロを走破した現在、不調が起きる確率は著しく減った。

データから意味を引き出す

われわれの両親の世代でも意味のある情報を簡単に引き出せるようにするためにストリートビュー・チームはありとあらゆる地理情報を処理できる部内用ツールを開発した。GPS、レーザー測距装置から得られたデータと写真を重ね合わせて、意味ある結果が得られるかを検討した。大量の試行錯誤の末に、ついに意味のある利用法にたどり着いた。

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ストリートビュー・カーのドライバーは撮影済みデータを収めたハードディスクを5台ずつまとめてGoogleに送る。 それらはデータセンターで情報を吸いだされ、情報は中央データベースに格納される。

データセンターでの処理の1つは、人物の顔と車両のナンバープレートにモザイクをかけることだ。今となっては当たり前に思えるプライバシー上の配慮だが、ストリートビューが登場するまではこんなことは誰も思いつかなかった。そこでGoogleはこの作業が自動的に実行できるシステムを開発しなければならなかった。またストリートビュー・カーは同じ場所を15回撮影する。システムは15枚の写真を合成して露出、光線の反射、陰などを調整してできるだけ多くの情報が表示されるようにする。こうして完璧なパノラマ画像を用意するのだ。

同時にシステムは画像から道路標識などの情報を読み取り、Googleマップシステムに転送する。これも膨大な処理量となる。

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ストリートビュー車のそれぞれのカメラが写真を撮ると同時にその瞬間の位置情報とレーザー測距による空間情報も記録されている。これによってストリートビュー・チームはここに見られるような見事なパノラマ写真を合成することが可能になる。

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水平方向を撮影するカメラと天頂を向いた魚眼レンズを装備したカメラによって沿道の建造物の3D画像が合成される。

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この取材で知ったのだが、水平方向のカメラの視界が他の車両で遮られたときには他のアングルから撮影された写真で隠された部分を補うことができるシステムが用いられている。3D画像に撮影車自身が写らないのもこの技術によるものだ。

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リリース、そして現在

トラフィックはあっという間にわれわれの処理能力を超えてしまった

2007年にストリートビューが公式にローンチされたとき、対象地域はサンフランシスコ、ニューヨーク、ラスベガス、マイアミ、デンバーだけだった。当時のカメラはそれぞれ5メガピクセルで、これは今の携帯のカメラ程度だ。現在用いられているカメラの解像度はなんと75メガピクセルだ。

ストリートビューはリリースと同時に大人気となったのだが、実はGoogleもストリートビュー・チームも公開前は果たしてユーザーにどのように受け止められるのかまったく予想がついていなかった。もちろんGoogleは公開に備えてそれなりにコンピュータの処理能力を用意はしていた。

〔ストリートビューの〕トラフィックは見ている前で天井まで跳ね上がった。そしてあっという間にわれわれの処理能力を超えてしまった。Googleで仕事をしていて良い点はそのサービスへのトラフィックと関心をリアルタイムでモニタできることだ。ストリートビューはローンチの直後からでとてつもない関心を集めていた。世界中のウェブサイトがストリートビューから引用した面白い写真を掲載し始めた。

ストリートビューのユーモラスな写真やショッキングな写真は以来、さまざまな議論を呼びつづけている。最近もストリートビュー車が野生のロバをはねたという非難がいわれないものだと説明しなければならなかった。

いずれにせよ初期型のバンは大量に製造するのに向かなかった。ここに写っているカメラはテントウムシ型で、水平方向の8台のカメラと天頂を向いた魚眼レンズ装着のカメラで構成されている。これを搭載した自動車が世界中を日夜走り回った。目にした読者も多いに違いない。

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しかしこのストリートビュー・カメラが現在の形になるまでにはかなりの時間と努力が必要だった。Vincentによると、Googleが社内で利用する他のハードウェアの多くと同様、結局カメラもフレームもGoogleが独自に開発することになった。いちどテクノロジーのコア部分が完成すると、ストリートビューは小さな町や外国でも必要とされるようになったので、チームは二輪車にも搭載できるようにシステムのダウンサイジングを図った。有名なストリートビュー・トライク(人力三輪車)は自動車が入れない狭い路地や史跡の内部などを走り回っている。

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2010年にバンクーバーで冬季五輪が開催されたとき、チームのメンバーの一人が山の景色をストリートビューに加えようと発案した。それはいいアイディアだということになって、カメラがスノーモービルに搭載された。気温がカメラには低すぎたのでエンジニアは自分のジャケットを脱いでカメラに被せなければならなかった。その後も次々に新しいアイディアが湧きでた。

われわれは人々を結びつけたかったのです

どうして屋外の写真ばかり撮っているのだ? 屋内のパノラマ写真もクールじゃないか? 特に有名な美術館、博物館の中は皆が見たいはずだ。そこでストリートビュー・カメラを載せたトロリーが開発された。屋内ストリートビューについてVincentはこう言う。

われわれは広い屋内空間を撮影するために小型のコンピュータシステムを開発し、すべてを手押し車に載せた。三脚では時間を食いすぎる。難しかったのは屋内ではGPS信号が受信できない点だった。そこでわれわれはGPSなしにトロリーの正確な位置を決定できるようレーザー位置測定に基づく複雑なアルゴリズムを開発しなければならなかった。このトロリーのおかげで現在50箇所の美術館、博物館の内部をストリートビューで見ることができる。

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Vincentがストリートビュー・システムは十分な数の写真を撮影していないと感じるようになったため最新タイプのストリートビュー撮影システムには15台ものカメラが装備されている(魚眼レンズのカメラは必要がなくなった)。Googleは画像の質と正確性の限界を一歩先へ進める努力を常に続けている。Appleが地図サービスを独自にローンチしようとして大いに苦労していることは記憶に新しいが、Googleはこうしたすべてを2005年から延々と続けてきたのだ。そればかりでなく、2007年以降、Googleの地図プロジェクトは信じられないほど巨大なスケールに拡大している。これに追いつくのは並大抵のことではあるまい。

インタビューの最後に、私はVincentに「そもそもなぜこんなことを始めようと考えたのか?」と尋ねてみた。彼大真面目な表情で答えた。「われわれは人々を結びつけたかったのです」〔Facebookのモットーとして有名)

複雑高度なものを日常ありふれたものに

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Googleのテクノロジーのほとんどは舞台裏に隠れていてユーザーの目には触れない。ユーザーはソーセージがどうやって作られるかいちいち細かいことを知りたいとは思わない。気にするのはおしいかまずいかだけで、おいしければユーザーは戻ってくる。友だちにも勧めるだろう。VincentはGoogleのプロダクトが一般ユーザーにとって「当たり前のもの」になるのを好んでいる。そうなればイノベーションをさらに先へ進めることができるからだ。

将来、ストリートビューができそうなことは多い。バックパックで人が背負って歩けるトレッカー撮影装置は森や山で遭難した人々を捜索するのも応用できる。すでにグランドキャニオンの壮大な景色がいながらにして体験できるようになっている。

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地図サービスでGoogleに追いつくためにはまずこうした高度に洗練されたハードウェアを今すぐ大量に配備する必要があるだろう。なにしろ現在も何千台ものこのカメラが世界中を撮影しつつあるのだ。

また関心のある場所の映像をスマートフォンでこれほどスムーズに閲覧できるのも驚くべきテクノロジーだということを忘れないほうがよい。もしかすると、そのうち読者もGoogleマップづくりに参加できるかもしれない。あのGoogle Glassのユーザーが目の前の光景を撮影してGoogleに送ると、それがストリートビューの一部になるかもしれない。

今はクレージーに聞こえるアイディアかもしれないが、なにしろ巨大なデジタルカメラを自分の車の屋根に積んで走り回るファウンダーのいる会社だ。どんなクレージーなことを始めるか予想もつかない。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+

自転車乗り必携?!:Chaotic Moon、周囲360度を記録するビデオカメラ搭載自転車用ヘルメットを開発

SXSW Interactiveのような大規模テックイベントでの楽しみのひとつは、地元のアントレプレナーたちと直接に会って、どんな仕事をしているのか見せてもらえることだ。と、いうわけで、今回はChaotic Moonにおじゃました。オースチンでシステム開発およびアプリケーション開発を行なっている。

Chaotic Moonの仕事としてはルパート・マードックのThe Dailyを思い起こす人も多いだろうか。あるいは最近登場してきたMarvel Unlimitedに注目している人も多いかもしれない。このChaotic Moon、最近従業員のひとりが自転車に乗っているときにひき逃げにあってしまった。こうした事故を防ぐにはどういう仕組みが必要なのだろうかと、自転車乗りむけのプロダクトを開発した。

作り上げたのは7つのカメラを搭載する自転車用ヘルメット(プロトタイプ)だ。周囲360度をカバーし、急な動きや大きな音を検知するために加速度センサーおよびマイクも搭載している。このプロダクトは、何か緊急事態が発生した際の情報収集を行う自転車向けの「ブラックボックス」として機能する。しかしそれだけではなく、自転車の安全についての注目を集め、自転車業界に向けて、こうしたプロダクトが簡単かつ比較的安価に作成できることを示すのも目的としている。

「簡単」というのは、製作期間の話だ。Chaotic Moon LabのGMを務めるWhurleyによると、1週間ほどで本プロダクトを作り上げたのだそうだ。ちなみに「カメラを搭載するだけなら簡単だろう」と考える人もいるかもしれない。実は本プロダクト用にソフトウェアの開発も行なっている。すなわちすべてのカメラからの情報を一斉にダウンロードして同時に表示するというアプリケーションだ。動作の様子については、冒頭に掲載したビデオ映像を確認してみて欲しい。

原文へ

(翻訳:Maeda, H)

スマートフォン用温度計Thermodoは24時間でKickstarterの目標額の倍を突破

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ソフトウェア開発からハードウェアの製作にシフトするという難題に挑戦しているRobocatが、幸先の良いスタートを切った。このデンマークのスタートアップが作っているスマートフォン用の温度計アクセサリThermodoは、Kickstarterの目標額35000ドルに昨日(米国時間3/7)わずか7時間で到達し、今日は倍以上になっており、それでも出資志望者は絶えない。そこでRobocatは今朝、目標額の増額を発表したが、そのやり方を見ていると同社は、これまでのKickstarterのプロジェクトの中で最優秀の一つではないか、と思えてくる。

増額の目標額は複数あって、たとえば12万5000ドルはAndroid用バージョンの開発だ。Androidデバイスへの対応はサードパーティのデベロッパがちょっと頑張ればできるのだが、この額に達したら同社自身が公式のAndroid対応機を作り、すでにあるアプリケーションThermoもAndroid化する。

25万ドルでは、多色化が始まる。出資はは25ドル以上を出せば赤をもらえる。そして最高額の50万ドルを超えたら、全員がアルミニウム製のThermodoをもらえる。Robocatには今すでにアルマイト製もあるが、それは特注となり、一般出資者のオプションは黒と白と赤の塗装製品のみだ。

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増額目標はThermodoの最初の額の達成を踏まえた、一種のお遊びでもある。そこが、プロジェクトのデザインとしてすてきだと思う。Robocat自身としては、製造を開始できるだけの額があればよいわけだから、その額しか求めなかった。でも支援者が増えた場合のプロジェクトのアップグレードの演出も、すでに考えていたのだ。一人当たりの出資額は小さいし、目標額も最初からほとんど射程内だから、みんな安心して出資できる。もしかしてだめかも、という不安がない。

Thermodoは当然、増額された目標額のどれかに必ず到達するだろう。そして製品の出荷量は相当多くなる。たぶんいちばんおもしろいのは、そこだ。ソフトウェア企業がハードウェアアクセサリの大量生産を、どうやって無事に乗り切るのか。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

スマートフォン用温度計Thermodoは24時間でKickstarterの目標額の倍を突破

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ソフトウェア開発からハードウェアの製作にシフトするという難題に挑戦しているRobocatが、幸先の良いスタートを切った。このデンマークのスタートアップが作っているスマートフォン用の温度計アクセサリThermodoは、Kickstarterの目標額35000ドルに昨日(米国時間3/7)わずか7時間で到達し、今日は倍以上になっており、それでも出資志望者は絶えない。そこでRobocatは今朝、目標額の増額を発表したが、そのやり方を見ていると同社は、これまでのKickstarterのプロジェクトの中で最優秀の一つではないか、と思えてくる。

増額の目標額は複数あって、たとえば12万5000ドルはAndroid用バージョンの開発だ。Androidデバイスへの対応はサードパーティのデベロッパがちょっと頑張ればできるのだが、この額に達したら同社自身が公式のAndroid対応機を作り、すでにあるアプリケーションThermoもAndroid化する。

25万ドルでは、多色化が始まる。出資はは25ドル以上を出せば赤をもらえる。そして最高額の50万ドルを超えたら、全員がアルミニウム製のThermodoをもらえる。Robocatには今すでにアルマイト製もあるが、それは特注となり、一般出資者のオプションは黒と白と赤の塗装製品のみだ。

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増額目標はThermodoの最初の額の達成を踏まえた、一種のお遊びでもある。そこが、プロジェクトのデザインとしてすてきだと思う。Robocat自身としては、製造を開始できるだけの額があればよいわけだから、その額しか求めなかった。でも支援者が増えた場合のプロジェクトのアップグレードの演出も、すでに考えていたのだ。一人当たりの出資額は小さいし、目標額も最初からほとんど射程内だから、みんな安心して出資できる。もしかしてだめかも、という不安がない。

Thermodoは当然、増額された目標額のどれかに必ず到達するだろう。そして製品の出荷量は相当多くなる。たぶんいちばんおもしろいのは、そこだ。ソフトウェア企業がハードウェアアクセサリの大量生産を、どうやって無事に乗り切るのか。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

陰険な解雇をされた25歳の共和党スタッフが著作権法改革の闘士になるまで

Strike Me Down

DC界隈*の誰かが、知的財産(intellectual property, IP, 知財)の抜本的な改革に関する共和党の公式報告書があることを嗅ぎつけ、著作代理店にそのドキュメントをインターネットから削除させ、執筆を担当したスタッフを解雇させた。しかしその、こそこそとした政治工作は裏目に出た。若き犠牲者Derek Khannaはたちまち、エンタテイメント業界や通信業界が行うロビー活動に反対する生ける殉教者として、ニュースメディア上のスターになった。彼が批判した巨額のロビー活動は、イノベーションを犠牲にしてまで反海賊法をごり押しすることで、かねてから悪名高い。〔*: DC界隈、日本なら‘永田町界隈’。〕

それから3か月後にKhannaは、携帯電話のキャリアよりも消費者の権利を優先せよという陳情に10万名の署名を集め、それに基づいて、消費者優先を法制化し、今や存在しない委員会のドキュメントに彼が記した原則を支持するよう、大統領府と議会を説得した。そしてその説得は成功した。陳情成立の翌日には、大統領府(ホワイトハウス)からの支持を法案化する作業が始まった。その公式文書には、Khannaへの感謝の言葉も載っていた。

[ツイート訳: 携帯電話を消費者がアンロックできるよう努力している。それは、自由の問題だ。自分の電話機だから、自分でアンロックできるべきだ。]〔筆者のホームページ。〕

知財のエキスパートで、科学技術政策に関する人気の高いブログTechDirtを主宰しているMike Masnickは、“連中は彼を解雇して黙らせようとしたが、逆に彼への関心が高まり、デジタルの草の根運動において、彼に強大な声を与えた”、と述べている。“そのため彼は非常に短期間で(しかも予期しない)大きな成功を収め、彼の、携帯電話のアンロックに関する陳情は、これらの問題に関する古い考え方と新しい考え方の違いに、強い光を当てた。古い考え方は“罰則”中心型だ。新しい考え方はオープンであること(openness)とつながり(connectivity)の力を重視する。そして、両者が衝突するときには、ほとんど毎回、新しい方が勝利する”。

an unauthorized report and a scapegoat

党公認の報告書なのにスケープゴート

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その25歳の共和党員は、下院の保守的な政策シンクタンクRepublican Study Committee(共和党調査委員会, 以下RSCと略記)の嘱託だった。彼が書いた公式報告書は、アーチストのために鷹派的な知財保護を主張する団体、たとえばRecording Industry Association of America(RIAA, Napsterの訴訟で有名)などと違って、“著作権法をめぐる三つの神話とそれらの解体にどこから着手すべきか”を、明らかにしようとしている。

保守派のお題目である自由市場主義に依拠しつつ報告書は、“著作権は資本主義の自由放任の原則のあらゆる側面を侵犯している。著作権の現行の体系では、コンテンツの製作者に対し、コンテンツの独占が、保証され、法によって守られ、国の助成金すら得ている”、と論じている。

著作権に関する現状維持派を批判する人たちは、その悪例の典型として、Amazonの、“ワンクリックで今すぐ買う”ボタンに対する特許取得努力をよく取りあげる。それは特許の濫用であり、誰にでもできる当たり前のようなことを法で保護しようとしている、と彼らは批判する。物理財と違ってソフトウェアには稀少性がない。Amazonもそのほかのオンライン小売サイトも、まったく同じボタンをまったく同じ時間に使える。報告書は暗に、政府や司法の介入なくAmazonとその競合他社が自由市場で自由に競争することが重要、と示唆している。

その大胆な報告書は、こんな新聞見出しを生み出した: “An Anti-IP Turn for the GOP?”(共和党は反知財派に変身か?)。これはThe American Conservative紙に載った見出しだ。学習委員会は党の検討を経ることなく、勝手に報告書をWebサイトから削除し、公式の謝辞(お詫びの言葉)を載せた: “昨日みなさまがご覧になった著作権法に関する政策概要記事は委員会内の適切な検討なく公開されたものです…ここにその過誤をお詫びし、不注意に関する全責任を負うものであります”(委員会の事務局長Paul Teller)。今や存在しないドキュメントと同じく、Khannaもまた、ご都合主義的に嘱託契約を打ち切られた。

firing and going rogue

解雇され一匹狼に

委員会(RSC)は、この試練に関して完全に沈黙したため、かえって目立ってしまった。Khannaは、本誌TechCrunchにくれたメールで、次のように回想している: “この問題について報告書を書けと言われたから、書いたのだ。その報告書はオフィスにいた数人の人たちが読み、正規の手続きを経て承認された。Webサイトに謝辞を書いた事務局長のTeller自身も、校閲し手直しをして(その部分は今でも持ってる)、そのメモを承認した”。

Khannaは、彼をスケープゴートに仕立てた人物については何も言わなかったが、The Washington Examiner紙の報道では、それはコンテンツ業界と仲良しの下院議員Marsha Blackburnだ(政治家に対する本誌の格付けでは : Fの人)。Center for Responsive Politicsによると、共和党の全議員/候補者の中で、音楽業界からいちばん多く政治資金をもらっている人が、彼女だ。

Blackburnの事務所は、本誌のコメントリクエストに対して無返答だ。上のExaminer紙の報道が嘘なら、本誌などへのコメントで真実を明かした方が得策なはずだが。

彼の解雇理由は不可解だが、結果は明らかだ。彼は政治の世界の鼻つまみ者になった。あるテクカンファレンスで、一人の国会議員が彼の就職斡旋依頼を断固として断っている様子を、たまたま目撃したことがある。

村八分にめげなかったKhannaは、一匹狼として彼のオープンインフォメーションメッセージを発言していった。当然ながら彼が向かったのは、議会ではなく報道機関だ。彼はAtlantic紙の署名論説”The Most Ridiculous Law of 2013 (So Far): It Is Now a Crime to Unlock Your Smartphone“(2013年の今、もっとも滑稽な法律: 自分のスマートフォンをアンロックすると犯罪になる)を書き、なんとそれは、Facebook上で58000のLike(いいね!)を集めた(ざっと推定すると、ビュー数は100万を超えたと思われる)。

unknown friends in high places

高い所から未知の友が

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関心の高まりに乗じて彼は、その期せずして入手したセレブの地位を、Sina Khanifarに貸し出した。Khanifarの、携帯電話のアンロック禁止をやめさせよ、という陳情が、ホワイトハウスを動かし始めていた。今の合衆国の著作権法は、人びとがすでに所有している電子製品にも適用される。AT&TのiPhoneに関するサービスのひどさにうんざりしたユーザは、違うキャリアに乗り換えるための“アンロック”という方法を見つけた。そして、携帯電話のアンロックは向こう6年間著作権法の対象外、としていた国会図書館が今年突然、心変わりをした。

草の根コンビは、これまで多くの人が失敗したことに成功した。陳情の署名が、政府が公式にその陳情に対応しなければならない数である10万を超えたのだ。ホワイトハウスも、儀礼的な返答ではなく、その陳情を支持するという大胆で前向きな宣言を発表した

ホワイトハウスのシニアアドバイザーR. David Edelmanはこう書いている: “ホワイトハウスは、消費者は犯罪や処罰の危惧なく自分の携帯電話をアンロックできるべきだ、と信ずる11万4000名あまりのみなさまと同じ考えです。ご自分のモバイル製品の代価をご自分で払い、特別なサービス合意事項やそのほかの義務事項が契約中にない場合には、その製品をほかのネットワークで使えるべきです。それは常識であり、消費者の権利を守るための重要事項であり、また、活発な競争のあるワイヤレス市場が革新的な製品を生み出し、消費者のニーズを満たす堅実なサービスを提供していくためにも重要です”。

おそらくコンテンツ業界のロビー活動家たちは自覚していないと思うが、今のオバマ政権内部には、KhannaやKhanifarらの同類と言っても過言ではないオープンインフォメーションの擁護者たちが山のようにいる。ソーシャルメディアを活用する画期的な選挙戦を成功させたオバマ政権では、スタッフの多くが(そしてインターネット業界にいるスタッフの友人たちが)、選挙戦がそうであったように、政府自体をもインフォメーションフレンドリーにしよう、という合唱に参加しているのだ。

そもそも、ホワイトハウスの陳情システムであるWeThePeopleも、オバマが自分の政権をより参加性に富んだものにするために起用して、彼らのために特別の部署まで作った、テクギークたちの脳が産み落としたものだ。一部の陳情には言葉だけで応じたり、記者団相手のようなはぐらかしをすることもあるが(マリファナを合法化せよなど)、オープンインフォメーションの支持に関しては非常に強力で明白だった。

つい先月には、ある陳情に応えて、1億ドルというぞっとするような金額を国が金を出した研究にはオンラインで無料/自由にアクセスできるための環境作りに配分した。従来は、政府の研究資料でも高価な有料データベースからしか見られなかったのだが。

Khannaは結果的に、ホワイトハウスの中に自分の仲間を作った。皮肉なことに、二つの集団がブログやオンラインのツールを通じてオープンに結びつき、力を 発揮できたのは、彼が無公示状態でクビになったおかげだ。彼が殉教者にならなかったら、今の熱気はなかっただろう。そしてその圧倒的な大衆の支持と、前向きに応えざるを得ない今の状況がなかったら、ホワイトハウスも政策の処方箋を与える決断を、しなかっただろう。

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敵の急所へ向かう

Khannaの仕事はまだある。次は消費者団体Electronic Frontier Foundationのような、有名な科学技術政策提言組織と組んで、本格的な著作権改革を開始しなければならない。両者はすでに、国会図書館のような政府機関が持っている特権を終結させるための動きを開始している。そのためには、その特権を支えている事実上のデジタル著作権法、Digital Millennium Copyright Actを廃止または修正する必要がある。

国会図書館はすでに、ホワイトハウスの宣言を拒否しており、今後は強力なコンテンツロビーたちも拒否の唱和に加わるだろう。これからのKhannaらの敵は大金持ちで、団結力もあり、しかも鳴り物入りで派手な宣伝活動を展開するだろう。

その戦闘は、草の根活動家たちの気骨を試す。しかし結果の如何に関わらず、このデジタルのダビデがロビイストのゴリアテと戦う機会は、ギークな政府高官たちとの連合と、彼らの熱意を強力な声に変えたオンラインツールがなかりせば、あり得なかっただろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Thermodoは、iPhoneのヘッドホンジャックに差さる小さな温度計


デンマークのスタートアップ、RobocatはAppleのiOSデバイス向けに数多くのソフトウェアを開発してきたが、今日(米国時間3/7)同社は新分野に手を広げ、iPhone、iPad、およびAndroidデバイス用に新しいハードウェアを発表した。Thermodoは、非常に小さな温度計で、デバイスのヘッドホンジャックに差すと、本物の温度データをアプリに送り込む。

c881ba11f5cb2b723e9a7ef1b3c5fea0_largeThermodoのハードウェアは、受光式温度センサーをオーディオジャックの中に組み込み、少さな円筒状のキャップで保護したもので、デバイスからわずか1/4インチ[6~7mm]しか突出しない。専用の電源を必要とせず、気象データを音声信号にして端末に送信し、API経由で対応する温度に変換される。同APIはThermodoの専用アプリで最初に利用される他、同社が過去に発売したHazeThermoの両アプリでも使用できる。

Thermodoはオフラインで室内でも室外でも動作し、付属のキーホルダー型ケースを使えば、使用していない時にもこの小物体をなくさずにすむ。Robocatは、同社のオープンソースSDKを使えば、究極的には、Raspberry Pi、Mac、ArduinoベースのガジェットなどどんなデバイスでもThermodoを利用可能だと言っている。

b6aae6d8bcc4e4be866bfbfeec7c4d8b_large私はRobocatのファウンダー、Willi Wuにこのプロジェクトについて、そもそも何がきっかけで始まったかを聞いた。彼によると、会社が元々中核としていたモバイル天気アプリから、ユーザーのフィードバックに基づいて多角化した結果だという。

「実はThermodoのアイディアは、ユーザーからの間接的な要望が基になっている」と彼は言った。「われわれは多く人から星1つの評価を受け、それはユーザーの求めていたものがその場の温度自体だったからだった。現在iPhoneにはデバイス内の温度を読み取る機能も、そのための専用センサーもない。そこでわれわれはこの問題に挑戦し、考えられる最もシンプルな解として見つけたのがThermodoだった」

SquareのクレジットカードリーダーやJawboneのUPフィットネスバンドも、ヘッドホンジャックを使ってスマートフォンと通信しているが、WuによるとThermodoのアプローチは全く異なるという。これによって今後同社がこの技術を使ってさまざまな種類のセンサーを作る可能性が大きく広がった、と彼は言った。

a107d2e1de07888013b3f3780d428858_large「ThermodoはSquare等のソフトモデムベース製品のように、音声をデータに変換しているのではない」と彼は言う。「われわれはこの手法をあらゆる種類のアプリケーションに応用できることに気付いた。やっているのは、温度を電気インピーダンスに変換することで、このインピーダンスはわれわれが『Thermodo原理』と呼んでいるものによって決定する。今では、あらゆる種類のデータをこの電気インピーダンスに変えることができるようになった。例えば、風速、圧力、明るさ等だ」

Wuによると、Robocatの技術責任者はすでにこの方法で抵抗やコンデンサーを測定しており、会社ではこれらの新しい検知能力の実験段階に入っている。いずれThermodoは、太陽の下のあらゆるもの(太陽の明るさを含む)を測るための姉妹デバイスをいくつも作ることができるだろう。

Thermodoの目標金額はわずか3万5000ドルで、予約購入のためのプレッジはThermodo1台19ドルから。これはすぐに目標を達成するプロジェクトなので、Robocatの新たなハードウェアへの取り組みから、次に何が出てくるか楽しみだ。

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(翻訳:Nob Takahashi)

iPhoneのヘッドフォンジャックに挿入する超小型温度計Thermodo, Kickstarterで資金募集中


デンマークのRobocatは、AppleのiOS製品のソフトをたくさん作ってきたが、今日(米国時間3/8)は、iPhone、iPad、それにAndroid製品でも使えるハードを出してきた。Thermodoと呼ばれるそのハードウェアは、デバイスのヘッドフォンジャックに挿入して使う温度計で、それが送信する温度データをほかのアプリケーションが利用することもできる。

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Thermodoの中にあるのはパッシブな温度センサーで、それを収めている筒状の筐体は、デバイスの外に突き出る部分の長さがわずかに1/4インチだ。電源は不要で、温度データをオーディオ信号で送信し、APIがそれを温度に翻訳する。その値を利用するのはThermodoに同梱されるiOS用のアプリでもよいし、また以前に同社がリリースしたHazeThermoのようなアプリでもよい。

Thermodoはオフラインで動作し、室内でも外でも使える。使わないときはキーリング付きの専用ケースに入れておくと紛失のおそれが少ない。同社はオープンソースのSDKを提供しているので、今後はRaspberry Pi、Mac、 Arduinoを使ったガジェットなど、どんなデバイスでもThermodoを利用できる。

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RobocatのファウンダWilli Wuによると、これまではモバイルのお天気アプリ専門でやってきたが、ユーザからの要望に応えるために今回はハードウェアにちょいと脇道した。

“ユーザから、ずばり温度計ハードウェアのリクエストが来たわけではない”、と彼は説明する。“アプリに対し、星が一つだけというネガティブな評価をくれる人たちの中には、自分が今いるところの今の温度を知りたい、という要望がいくつかあった。しかしiPhone自体には温度計にアクセスする機能はないし、そのためのセンサーもない。だから、ヘッドフォンジャックに何かを挿入するという、いちばん簡単なソリューションを思いついたのだ。それがThermodoだ”。

そのほかの外付けデバイス、たとえばSquareのクレジットカードリーダーやJawboneのフィットネスバンドなどは、ヘッドフォンジャックを使ってスマートフォンとコミュニケーションしようとする。Wuによれば、しかしThermodoは、それらとはやり方が全然違う。このやり方なら今後、いろんなほかのセンサーでも使える可能性がある。

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“Thermodoは、Squareのようなソフトモデム方式の製品のように、音をデータに翻訳しない”、と彼は言う*。“うちのやり方は、ありとあらゆる種類のアプリケーションに応用できる。うちのやり方では、温度を電気抵抗に変換して、その抵抗値をThermodoのAPIが読む。適当な物質や構造を見つければ、どんなものでも電気抵抗に変換できる。風速でも気圧でも明るさでも何でも”。〔*: ここでの‘音’は、ヘッドフォンジャックからの出力としての音。〕

Wuによれば、Robocat社の技術陣のトップはすでに、抵抗器の抵抗値やコンデンサの容量をこのやり方で計測しており、温度だけでなくそのほかのセンサーでの実験もすでに始めている。だから今後はThermodoの兄弟製品がいろいろ登場して、何でも測定できるようになるだろう。

ThermodoはKickstarterで35000ドルというささやかな金額を募っている。あなたも19ドル出資すると、Thermodoを一つもらえる。目標額にはすぐに到達すると思うが、ぼくとしてはRobocatの次のハードウェア製品が楽しみだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

企業にとってFacebookデザイン改訂の意味は、広告の大型化とページフィードの顕在化。しかし「友達のみ」のセクションも

Facebookが今日(米国時間3/7)大々的に発表した新しいニュースフィードでは、ユーザーの写真が大きくなったが、ニュースフィード中の広告も大きくなる。「われわれはユーザーがフィード内で見るあらゆるコンテンツを、今まで以上に没入的にする。これはあらゆるものが対象であり広告もそこに含まれる」とFacebookの製品デザイン責任者、Julie Zhuoは言った。Facebookページは「フォロー中フィード」のおかげでペーシビューが増えるかもしれない。しかし今回Facebookには、「Facebookページのない」フィードもできた。

Mark ZuckerbergをはじめとするFacebookの幹部らは、プレゼンの中で広告に関して一切言及しなかった。話をしたのは、Q&Aセッションで質問された時だ。

しかし、このデザイン変更が広告主に影響を与えるのはこの部分だ。FacebookはUIを整理整頓して、中央のフィードで多くのスペースを写真に与えた。企業は写真を載せたフィード広告を買えば、その写真も大きく表示される。これには、大型のホームページ全面広告や高級雑誌の広告を使い慣れている高級ブランドを呼び寄せる効果がある。

Facebook以外のウェブサイトは、自分たちのコンテンツを見せびらかす良い機会を得ることになる。Facebookは、Pinterestからシェアされたコンテンツが豪華に表示されるところを披露したが、これはこの画像共有サイトにとっても、そこからトラフィックを誘導されるEコマース店舗にとっても有難いはずだ。Zuckerbergは、Quoraをはじめ他のサイトにとっても後押しになるだろうと言った。シェアされたリンクに表示される抜粋が以前より長くなるため、内容のある優れたサイトは恩恵を受けるが、人々が勘違いしてクリックすることを狙った釣り見出しにとっては不利になるだろう。

Pinterest Share

さらにFacebookは、ユーザーが様々なコンテンツ別フィードを選べるようにした。これは、ユーザーがどのフィードを常用するかによって、ビジネスページやプロのライターを有利にも不利にもする。Facebookページのみの「ページフィード」は、格上げされて「フォロー中」フィードに名前が変わった。ここには、ユーザーが「いいね!」を付けたFacebookページやフォロー中の著名人の最新情報が流れてくる。これは、Facebookページやプロのコンテンツ制作者にとっては有利だ。なぜなら以前はFacebookが標準ニュースフィードをフィルターする方式のために、最新情報の一部しかユーザーの目に触れなかったからだ。これで情報に貪欲な人々にとっては、効率よく記事を見つける方法ができた。

一方で、Facebookの中にFacebookページや著名人の入り込めない領域もできた。友達のみフィードは、企業にとって特に問題だ。もしユーザーがこれを常用すれば、企業ページへの関心を表すために気軽にいいね!を付けたり、サードパーティーをパーソナル化したりしても、それらの記事をフィードで見なくてもよくなる。

全体で見れば、ユーザーにとっては選択肢が増えただけだ。企業発のコンテンツを見たければ、以前よりも簡単にそれが可能になった。見たくなければ、スキップできる。企業にとって後者は好ましいことではないかもしれないが、今回の改訂は人々がサイトで過ごす時間を増やし、Facebook体験全般を向上させる。これは、日々そして今後何年にも渡って、企業がユーザーに売り込む機会が増えることを意味している。、

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(翻訳:Nob Takahashi)

コミュニティサイトTopixは政治専門のサブサイトを作ってからトラフィックが急増

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Topixは、ローカルに限定したオンラインディスカッションのサイトだが、2004年にスタートし、そして昨年、トラフィックが一気に上昇した。CEOのChris Tollesによるとその原因は、政治を話題の中心にしたため、という。

トラフィックは2012年の1年間で前年比40%増加し、1月のユニークビジター数は1240万に達した。各月の一人の平均滞在時間は11.5分で、スマートフォンからの利用が多い。というか、トラフィックの半分以上はモバイルからだ。

2011年の時点ですでにTollesは、政治的なコンテンツがサイトのトラフィックを押し上げている、と語り、政治への関心をうまく利用するための戦略を見つけようとしていた。その結果ローンチしたのが、政治中心のサブサイトPolitixだ。ユーザはそこで、政治記事を共有したり、アンケートに答えたり、また嫌われ者にならずに堂々と政治ニュースに関する意見を述べたりできる。Tolles曰く、政治好きはFacebookでは典型的な嫌われ者だそうだ。

昨年は大統領選があったから、主な政治サイトはどこもトラフィックが伸びた。でもTopixの数字は選挙後の12月と1月でも成長傾向が変わらない(財政の崖とか歳出削減措置などで議論が沸騰したのかもしれない)。Tollesによると、2月も一日あたりのユニークビジター数は約100万だから、落ち込みはない。

同社はこのほど、新しい役員を任命した。一人目のMike Sawkaは同社に7年いた人で、今回、技術担当VPになった。もう一人のSchuyler Hudakは、2010年のカリフォルニア州知事選でJerry Brown候補の選挙参謀の一人だった人。彼は事業開発部長としてTopixに招かれた。

Tollesは売上の額を明かさないが、利益はずっと出ているそうだ。それなら買収のターゲットになるかな? 彼は答えて曰く、“話はいつもあるが、でもうちは長期構想で事業を育てている。今の時点では、買収されるか、どこかを買収するか、その可能性は半々ぐらいだ”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

3Dプリントをしてくれる/作品を売ってくれるShapewaysがデベロッパポータルとAPIを立ち上げ

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“3Dプリント屋さん”のShapewaysは、2012年に名を上げた。つまり昨年はLux Capitalが率いるラウンドによりシリーズBで620万ドルを獲得し、ニューヨーク市に隣接するロングアイランド市に本格的な工場を建てた。そして今同社は、デザインや実際のプリントに伴う面倒な細部を、より容易にすることを目指している。

まず、デベロッパたちの心をかき立てて多様なデザインアプリケーションを作ってもらいたい。そしてそれらを、Shapewaysのプリントサービスや販売発送サービスにつなげたい。そのために同社は今日(米国時間3/7)、3Dプリントに関心があるデベロッパのためのポータルとRESTによるAPIをローンチした。

Shapewaysは要するに、3Dプリント工房と消費者向けのマーケットプレースを合わせたような会社だ。自分で3Dプリントできない/したくないアーチストやデザイナーは、自分の作品の設計ファイルをShapewaysにアップロードしてプリントしてもらい、それを送ってもらって楽しむ。しかし、自分の作品を売りたいと思っている人はShapewaysの上にオンラインショップを作って、そこにいろんな作品を並べ、売れるのを待つ。

APIは最近アップデートしたShapewaysのサービスに対応していて、設計をアップロードするときにもっと細かい指定ができるし、また素材や仕上げの指定に対する料金がリアルタイムで分かる。しかしAPIリリースの主な目的は、言うまでもなく、創造の手段としてのアプリケーションを作ってもらうことだ。

“今ではアプリケーションはShapewaysの主役の一つ”、と同社のElisa Richardsonは言う。したがって今後は、アプリケーションの見せ方を工夫していく、と。

APIの正式公開は今朝だったが、これまでShapewaysは数名のデベロッパに協力してもらって非公開ベータをやっていた。そこから生まれたアプリケーションが、なかなかにくい。たとえばMixeeMeと名付けたアプリケーションは、ユーザがMii的なアバターをデザインして、それをShapewaysでプリントしてもらえる。そしてTinkerCadというアプリケーションは、ブラウザ内で使う3Dオブジェクトのデザインツールで、完成したデザインのプリントを発注することもAPIを呼び出して行う。

APIとそれを利用したいろんなアプリケーションの魅力で、Shapewaysは3Dプリントを世の中のメジャーに押し上げたいと願っている。そのためには、消費者から見たShapewaysの顔を、良くしなければならない。そのため今は、マーケットプレースと製造プラットホームの化粧直しに専念している。また外見の美化と並行して、売り手に対する待遇だが、それはShapewaysでは前から良かったということだ。

Shapewaysのブログには、今その上に約8000のショップがあり、彼らは昨年50万ドル近い利益を稼いだ、と書かれている。CEOのPeter Weijmarshausenが最近Forbes誌に語っているところによると、来年はShapewaysの上に初の百万長者が現れるだろう、という。とはいえ、Shapewaysにも競合他社はいる。Cubifyは3Dプリンタを売ると同時にそれらのユーザの作品も売っている。またAzavyなども、3Dプリントを今後の新たな商材にしようとしている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

GoogleとMPEG LAがVP8ビデオコーデックのライセンス問題で合意, より安心して使える規格に

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Googleのビデオ圧縮形式VP8は、同社がかつてOn2 Technologiesから買収し、今ではパテントライセンスが無料で交付されるオープンスタンダードだ。しかしH.264のパテントとライセンスを管理しているMPEG LAはそのことを黙認せず、2011年には、パテントプールを作成しコーデックに関する特許侵犯でGoogleを訴訟する構えを見せていた。しかし今日(米国時間3/7)、MPEG LAとGoogleは、両者が合意に達したことを発表した。MPEG LAはGoogleに、“VP8と初期のVPxビデオ圧縮技術に不可欠な、11の特許所持者が保有している技法”のライセンスを交付する。

この合意は、それによってGoogleが、合意の範囲内にある技法をいかなるVP8ユーザにも二次ライセンスでき、また、次世代のVPxコーデックをもカバーするものだ。この契約の一環としてMPEG LAは、VP8のパテントプールを作る取り組みを中断する。Googleがライセンス料を払うことになったものと思われるが、合意の財務的詳細は公表されていない。

“Googleとの合意によってVP8が多くのユーザに可利用なったことは喜ばしい。”

MPEG LAの理事長兼CEO Larry Horn.

VP8をめぐる不確かさは、Google以外の企業等の採用を妨げていた。たとえばMicrosoftは、VP8をベースとして作られているGoogleのメディアファイル形式WebMを、同社のブラウザでサポートしていない。しかし、今や多くのブラウザベンダがサポートしているWebRTCは、コーデックとしてVP8を使用している。

“これは、VP8の広範な普及を目指して努力しているGoogleにとって、重要な達成点だ”、とGoogleの特許関連法務担当部長Allen Loが、今日の声明で述べている。

Googleの努力にもかかわらず、H.264は今でもビデオコーデックのデファクトスタンダードだ。しかしVP8がWebRTCの規格の一環であることは、オープンスタンダードの支持者たちにとって励みになる。またVP8の不確かさがなくなったことによって、MicrosoftもWebRTCを同社のInternet Explorerブラウザに、同社独自の規格に代えて採用するかもしれない。

ただし当面は、VP8コーデックハードウェアのサポートは乏しく、依然としてすべてのビデオ製品が、CPUの負担を軽減するためにH.264のコーデックチップを使い続けるだろう。

次世代のH.265とGoogleのVP9コーデックは共に、すでに開発が始まっており、今回の合意は今後のビデオコーデックの競合にさらに拍車をかけるだろう。だが、VP8をめぐる不確かさが消えたことによって、その採用が今後広まることも確実だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

話題のFacebookリニューアル。さらなる利便性を目指すデザイン方針は「Mobile-Inspired」

photo-2巷ではFacebookの新ニュースフィードに関する話題が花盛りだ。ちなみにFacebookでプロダクト部門バイスプレジデントを務めるChris Coxによると、Facebookの新デザインは「統一性」に重点をおいたものだとのこと。Facebook内ではこれを「mobile-inspired」と呼んでいるのだそうだ。今回リリースしたニュースフィード面での変化も、あるいは写真フィードの変更も、確かにデバイスによらない統一性を意識したものであることがお分かりになるだろう。これまでのFacebookとは確かに違う狙いをもってのリニューアルのようだ。

昨今の風潮として「デスクトップオンリー」のデザインというのは流行らない。少なくともメンローパークにあるFacebook HQ内ではそのように考えられている様子。時代はやはり「モバイル」であるらしい。ところで「時代はモバイル」といったとき、何を心がければ良いのだろう。より関係の深い情報を、タッチ操作などで簡単に、そしてすっきりとしてデザインで見せることが、一層大切になっているのだろう。

「Facebook内のいずれのページにも、わざわざホームページに戻ることなく移動できるようになりました」とCoxは言っている。フロッグデザインのマーク・ロルストンも、利用者の関わるところからは「技術」的な要素を消してしまうことが大事であるというようなことを言っている。美しい、レスポンシブなデザインとはつまりそういう方向性にあるものだろう。そして今回のFacebookが目指すところも同じだと言ってよさそうだ。

なぜこうした方向性をとるようになった理由のひとつとして、Coxは次のような例を挙げている。すなわちFacebook利用者の35%は、画面サイズの関係もあって右側に表示されるチャットバーを全く見ていないのだそうだ。そのせいで、メッセージ関連トラフィックが伸びていないこともあるのだとのこと。こうしたことを新たなレスポンシブデザインにより解決しようと考えているわけだ。

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新たなフィード画面は、本日よりウェブ上で展開されている。モバイルデバイスでは来月から適用していきたいとのこと。但し、利用者からのフィードバックを受け取りつつ、新デザインの摘要はゆっくりと進めて行きたいと考えているそうだ。

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今回の更新をまとめれば、すなわち「ごちゃごちゃにサヨナラ!」ということになる。

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ちなみに発表の席で広告についての話は何もなかった。「ごちゃごちゃ」という面ではもっとも不満の声が大きい部分でもある。広告の提示方式につき、どのように考えているのかは今後の様子を見て行きたいと思う。もし広告出現頻度が増えてくるようであれば、結局利用者の感じる「ごちゃごちゃ」と、Facebookが考えるところのものが異なるということになるわけだろう。Facebookが10億以上の人びとと同じように感じることができているのかどうか、今後に注目してみたい。

リニューアルの理由を説明するビデオを掲載しておこう。

原文へ

(翻訳:Maeda, H)

Facebook、内容別ニュースフィードを公開。写真、音楽、友達のみ、等々


今日(米国時間3/7)Facebook本社で、Mark Zuckerbergが最新版のニュースフィードを披露した。そこには「モバイルから始まった」デバイス間共通のデザインが使用され、フィードはコンテンツの種類別に分かれ、画像は大きくなった。フォトアルバムも没頭型に改訂され、シェアしたリンクのプレビューも大きくなった。

これらの変更は今日から公開され、数週間のうちに行き渡る予定だ。Facebookが好評不評のフィードバックを得られるよう、公開はゆっくりと慎重に行われる。ここに本誌がいち早く使ってみたビデオがあるので新デザインのルックスと使用感をご覧いただきたい。

他のニュースフィードの改訂としては、チェックインした場所の地図が大きくなり、人々がどこにいるかが正確に表示されるようになった。PinterestからFacebookへの投稿がより鮮明になり、Facebookでの見映えが「Pinterestで見た時に近く」なった。ビデオも大きく表示される。複数の友達が同じ記事をシェアした時は、記事の左側にシェアした友達の顔が表示される。

Facebookは、今話題のコンテンツも注目しやすくした。ファンは様々なニュースソースによる「テイラー・スウィフトに関する最新記事」を見ることができる。

Photos Feed

ユーザーがフィードを選べるようになった。FacebookのニュースフィードチームのChris Struhaがこの内容別フィードを披露してくれた。フィードは、ユーザーがチェックする頻度に基づいて並べ替えられるので、いちばんよく見るフィードをすぐに使える。ウェブ、モバイルの両方で提供される。フィードの種類は以下の通り。

  • 友達のみ:友達の書き込みだけを最新順に表示する
  • 音楽:友達が聴いている曲、新しくリリースされたアルバム、気に入りそうなアーティストの紹介など
  • 写真:写真だけ。Facebookに直接アップロードされたものだけでなく、Instagramなど他の写真アプリからシェアされたものも含まれる
  • フォロー中:ページフィードの改訂版で、いいね!を付けたFacebookページの記事をすべて表示する
  • ゲーム
  • 親友
  • 趣味・関心、友達リスト

Feed List

Mark Zuckerbergはこう説明した。「パーソナルなレベルで、われわれは利用者が気にかけている人々や友達のことを見たり感じたりできるサービスを作っている。われわれの目標は、世界中の人たちにパーソナル化された新聞を届けることだ。新聞には1面が必要で、そこから興味のある記事を堀り下げていけるべきだ。ビジュアルで、リッチで、魅力的であるべきだ。単なるテキスト以上のものが掲載されるべきだ。開始当初からニュースフィードにおけるわれわれのゴールは、他のどんなサービスが提供しようとしてきたものとも異っていた。ユーザーが望めばどんな種類のコンテンツでも・・・そしてどんな視聴者に向けてもシェアできるべきだ。写真が伝えるものは全く別物だ」

誰もがポケットの中にカメラを持っている今、ニュースフィードの主役はビジュアルなコンテンツだ。ニュースフィードのコンテンツは50%近くがビジュアルだ。Facebookページのコンテンツがニュースフィードに占める割合は30%近い。誰もが友達とシェアしたいが、興味のあるメディアやアーティストや世界のリーダーたちの最新情報も見たがっている。

今回の新機能は、数日前私が記事で予想したものに近かった。ウェブの新デザインが届いたユーザーには、ニュースフィードの上部に切り替えボタンが表示される。公開は今日から始まるが、数週間数ヶ月をかけて徐々に広まっていくだろう。Facebookモバイルアプリのアップデートは数週間のうちに公開される。

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[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi)

ベイブリッジが豪華な電飾アニメーション, アーチストのLeo Villarealにインタビュー

昨夜(米国時間3/6)は豪華なライトアップThe Bay Lightsと呼ばれる屋外の巨大アートを演出した。880万ドルを投じたその美術的装備が、長年地味なぱっとしない色だったサンフランシスコのベイブリッジを、向こう2年間、毎晩、LEDを使った世界最大の光の彫刻に変える。

それはまず何よりも芸術作品だが、大量のテクノロジがそれを支えている。西側1.8マイルに取り付けられている25000個のLED電球は、ソフトウェアのアルゴリズムにより、一つ一つがプログラムによって点滅し、しかも同じパターンは二度と現れない。ハードウェアもテクノロジの粋だ。電球を保持するクリップは特別設計で、何か月にもわたる厳しい気象条件に耐える。また出資はすべて民間からで、中でもサンフランシスコのベイエリアの有名テク企業やそのトップたちがこぞって賛助している。YahooのCEO Marissa Mayer、SV Angelのファウンダで古参の投資家Ron Conway、Y Combinatorのパートナーで元GoogleのPaul Buchheit、ZyngaのCEO Mark Pincus、WordpressのファウンダMatt Mullenwegなどなど。

そこでTechCrunch TVはライトショウが始まる前の記者会見にカメラを持ち込み、撮影取材をした。混み合った会場をかき分けかき分けしてThe Bay Lightsを作ったアーチストLeo Villarealつかまえ、質問がたった二つというインタビューをした。彼自身がアートとテクノロジの二股をかけた人生を歩んできている。学歴のメインは彫刻と対話的通信技術だ。また大学卒業後は1990年代にパロアルトにあったPaul AllenのInterval Researchで、ソフトウェアの世界に浸った。

上のビデオは記者会見の席で行ったVillarealの短いインタビューだ。彼は、テクノロジとアートの交錯について、および、The Bay Lightsの制作工事における技術的な難関について語っている。

またインタビュー以外にも彼は、おもしろいことを言った。誰かが、この作品の見どころと彼のヴィジョンについて尋ねた。そのときの彼の答えはまさに、科学と芸術の結合を見事に解説している:

“ものごとを形作っている規則と構造に関心がある。とりわけ、ぼくという人間を作ったのは、ソフトウェア産業におけるすばらしい体験だと思う。今度の作品が表現しているものは、橋のまわりで起きているいろんなものの動きに触発された抽象的なシーケンスだ。それらの動きはつねに、一瞬先にどうなるか分からないし、予見不可能、他から制御されないという意味で、きわめて主観的なのだ。”

本当に美しい眺めだ。このベイブリッジの姿を見たら、そこから逆に何かを触発される人たちも現れるだろう。ベイブリッジの美しい隣人ゴールデンゲートブリッジ(金門橋)が、長年そうだったように。

下のビデオは、The Bay Lightsのライブストリーミングだ。毎日、太平洋時間で日没から午前2時までライトアップが行われる。

このライブのストリーミングビデオは、livestream.comのacmeliveからだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Lumio ― 美しく装丁された書籍のような外観を持つランプ

lumioKickstarterでの素晴らしいプロジェクトというのは、非常にシンプルなものであるケースが多い。今回ご紹介するLumioも、やはりシンプルな美しさをまとったものでると言える。木製のカバーのついたハードカバー書籍のような姿をしたランプだ。灯りをともすには、その書籍風のカバーを開く。もちろん閉じれば灯りは消える。誰でもわかる仕掛けに、万人が認める美しさを備えているプロダクトだ。

Lumioを考案したのは建築家兼デザイナーであるMax Gunawanだ。彼はコンパクトカーに搭載できるモジュラー型住宅を作ろうと考えた。しかし、ワーキングプロトタイプを作るにもかなりの費用がかかることがわかった。そこで彼は、まずは他のプロダクトを世に出すことを決意したのだった。

「モジュラー住宅をひとまずおいておいて、コンパクトさという特徴を引き継いだ折りたたみ式ランプを作ることにしました。スケッチブックのように折りたためるランプを作りたいと考えて、今のデザインが頭に浮かんだのです」とMaxはKickstarterページに記している。「こうしてLumioが生まれたのです」。

LumioはLEDで灯りをともす。フル充電時で8時間の点灯が可能となっている。カバーはダークウォルナット、ウォームチェリー、そしてブロンドメイプルが用意されている。カバーには磁石が埋め込まれており、Lumioは金属部分に容易にくっつけることができるようにもなっている。

Kickstarterページでこれまでに調達できた額は40万ドル。当初は6万ドルが目標であったので、これを大きく上回ることとなった。投資募集期間は残り僅かだ。今回の募集に応じてLumioをゲットするならば、すぐに申し込みをした方が良さそうだ。

原文へ

(翻訳:Maeda, H)

Internet Explorer反トラスト審判がやっと決着, Microsoftは$731Mの罰金刑を控訴せず

Flag of European Union

欧州委員会(European Commission, EC)が今日(米国時間3/6)、MicrosoftのInterenet Explorerブラウザの配布形式をめぐる反トラスト法違反に対して5億6100万ユーロ(7億3100ドル)の罰金を科す、と発表した。そしてMicrosoftは謙虚にも、これに対する公式声明として、 その違反の原因となった“技術的エラー”に対して“全責任”を負う、控訴をしない、と述べた。

これまでMicrosoftは反トラスト法違反に関して欧州委員会の決定をことごとく控訴してきたから、今回は180度の態度転換となる。その理由はおそらく、最近(7月)に行った控訴が不発だったことと、最近の同社が巨悪というイメージを払拭しようとしているからだろう。本誌TechCrunchも、今回、控訴は“ほとんどありえない”と見ている。判決に対する声明の全文は、こうだ:

“弊社はこの問題を起こした技術的エラーに関して全責任を負い、それに関した謝罪をした。弊社は委員会に、状況の完全かつ率直な評価を提供した。また弊社は、弊社のソフトウェア開発とそのほかの業務工程を強化して、このような過誤の再発を防ぐための施策を講じた。

今回の審判には数か月を要し、10月には公式の告訴状が委員会に提出されていた。

ECのこの判決は、ある意味では死に馬をむち打つようなものかもしれない。このところのヨーロッパでは、Internet Explorerはブラウザの首位の座をFirefoxに脅(おびや)かされていたし、また両ブラウザは昨年半ば以来、 Chromeに敗退している(グラフ)。いずれにしてもMicrosoftは、もはやユーザのマインドシェアにおいても支配力を失い、スマートフォンなどの新しい戦場では、はるか後方に取り残されていた。しかし今なおWindowsはもっともユーザ数の多いデスクトップPCのプラットホームであるため、今後とも、Microsoftがその地位を利用して自己製品の利用促進のために行ういかなる行為も、注視に値する。

今回の罰金刑は、Microsoftが今とは違う位置にいた2011年2月から2012年7月までの間に起きたことに、関連している。その頃はすでに、EUによる反トラスト法違反に関する調査は、ブラウザをオペレーティングシステムに同梱する同社のやり方にまで立ち入っており、そしてその調査により、同社がWindows 7を、Internet Explorerを選択肢の一つとしてユーザがオプトアウトできるための、分かりやすい方法を与えることなく、配布していたことが明らかとなった。ECによれば、およそ1500万人のユーザがこの欠陥の被害者となった。

しかし今やその欧州委員会も、Microsoftの時代が過ぎ去りつつあることを、一般的な世間知として認めているようだ。今日行われた記者会見で、委員会の競争政策担当主幹Joachin Almuniaは、違反…Microsoftの言葉では技術的な欠陥…が生じた期間について述べるとき、やや言葉を慎重に選びながら、“これは今後二度とないことであり、今回の判決に限ってのことだが、判決の財務的な受益者はMicrosoftだ”、と述べた。この判決でいちばん得をするのはMicrosoft自身だ、と。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))