建設中の中国の宇宙ステーションに3人の中国人宇宙飛行士が到着

3人の中国人宇宙飛行士が、中国の宇宙ステーションのコアモジュール「Tianhe(天和)」に初めてドッキングに成功した。

この3人の宇宙飛行士は、中国では2016年以来の有人ミッションとなる宇宙船「Shenzhou(神舟)12号」で打ち上げられた。3人は9月まで宇宙ステーション「Tiangong(天宮)」のコアモジュールに滞在する予定だ。これは中国史上最長の有人宇宙ミッションとなる。

中国北西部の酒泉衛星発射センターから離陸したNie Haisheng(聶海勝)氏、Liu Boming(劉伯明)氏、Tang Hongbo(湯洪波)氏の3人は、打ち上げから7時間余りで最終目的地に到着。聶海勝氏は、2005年の「神舟6号」とその8年後の「神舟10号」で、地球低軌道を周回した経験が2度ある。劉伯明氏も一度、2008年に「神舟7号」で宇宙に出たことがある。

軌道上にいる間、3人の宇宙飛行士は忙しい日々を送ることになるだろう。中国初の宇宙ステーションを稼働させることを目的とするミッションは、2022年までに11回の打ち上げが予定されているが、今回はその3回目に当たる。神舟12号ミッションの目的は、コアモジュールを始動させ、そのシステムをテストし、後に続く宇宙ステーション組み立て作業の準備を整えること。残る8回の打ち上げのうち、3回は有人飛行になる予定だ。

近年、宇宙への野心を隠さずにいる中国にとって、独自の宇宙ステーションを建設することは論理的なステップだ。2011年に米国議会で可決された法律により、中国は国際宇宙ステーションへの搭乗を禁じられているからだ。しかし、だからといって中国の宇宙ステーションが自国専用になるわけではないと、中国政府は16日の記者会見で述べている。

BBCの報道によると、中国有人宇宙事業弁公室の主任補佐であるJi Qiming(季啓明)氏は、中国は「この点に関しては、一般に協力を歓迎する」と述べている。「近い将来、中国の宇宙ステーションが完成した後には、中国人と外国人の宇宙飛行士が一緒に飛行したり作業したりする姿を見ることができると信じています」と、同氏は語った。

急成長している宇宙開発計画の一環として、中国は5月に探査車「Zhurong(祝融)」を火星に送り込み、米国以外で火星にロボットを着陸させた唯一の国となった。

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カテゴリー:宇宙
タグ:中国有人宇宙飛行

画像クレジット:China News Service

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

1台でPCとモバイル両方のUXを実現、Androidアプリも動くLinuxベースの「JingOS」を開発する中国Jingling

中国の著名なコンピューター科学者であるKai-Fu Lee(カイフ・リー、李開復)氏のSinovation Venturesが、ソフトウェア開発者のニッチ市場を狙っている。2021年4月にこのベンチャーキャピタルは、Linuxベースのタブレットとノートパソコンを開発する中国のスタートアップ「Jingling」の1000万ドル(約11億円)のエンジェルラウンドをリードした。ラウンドの他の投資家には、プライベートエクイティ企業のTrustbridge Partnersが含まれている。

Jinglingは2020年6月に創業されたばかりの企業だが、早くも、AlibabaのLinuxディストリビューション「Aliyun OS」や中国のオペレーティングシステムソリューションプロバイダーであるThunder Software、そして中国のオープンソースコミュニティなどから80名の社員が集まっている。

同社スタッフの大半は、現在、北京でJingOSと呼ばれるLinuxベースのOSを開発し、残りはJinglingのサプライチェーンがある深圳でハードウェアを開発している。

Sinovation VenturesのパートナーであるPeter Fang(ピーター・ファン)氏は次のように語る。「OSは投資価値の高い分野です。確かにiPad ProとMagic Keyboardの組み合わせは、仕事と娯楽向けの最良のプロダクトベースですが、今のところどのタブレットメーカーも、Androidのためのより優れたユーザー体験を提供できていません。そこで私たちはJingOSを支援することに決めました」。

投資家として彼は「この投資は、今後はARMベースのモバイルとデスクトップデバイスがさらに増えるというSinovationの認識と予想にも基づいています」と述べている。

Jinglingの最初のプロダクトであるJingPad A1タブレットもARMアーキテクチャをベースとし、正式発売前にすでに500台が販売され、クラウドファンディングキャンペーンでも大きな関心を集めている。Jinglingは現在、Tsinghua Unigroupのプロセッサーを使用しているが、Liu(リウ)氏によると将来的にはQualcommとMediaTekのチップセットを使う考えだという。

ソフトウェアのレベルでは、JingOSはGitHub上のオープンソースであり、すでに世界で5万回以上ダウンロードされている。その多くは米国とヨーロッパからだ。

しかし、Linuxのタブレットやノートパソコンを欲しい人が何人いるだろうか?Zhu Rui(シュ・ルイ)氏とともにJinglingを立ち上げたLiu Chengcheng(リウ・チェンチェン)氏によると、デベロッパーコミュニティからの需要は、同社の初期の成長を十分支えられるほどに大きいという。リウ氏はかつて、中国の指導的スタートアップニュースサイト36Krを創設、シュ氏はOSのエキスパートでMotorolaとLenovoに在籍していた。

リウ氏によると「一般的な消費者市場で、最初の足場を築くのは難しい」ため、Jinglingはその第一歩としてLinuxのコミュニティを狙ったのだという。

「Linuxの市場は大手テクノロジー企業にとっては小さすぎるし、小さなスタートアップが取り組むには難しすぎる。中国でモバイ用OSを開発しているのはJinglingの他にはHuawei(ファーウェイ)ですが、HuaweiのHarmonyOSは主にIoTを狙っている」とリウ氏は語る。

新しいOSを立ち上げるのは確かに無謀に近い挑戦だが、過去にも例はある。Linuxのノートパソコンも以前から存在しているが、Jinglingが考えているのは、1つのデバイスでデスクトップとモバイルの両方のUXを実現することだ。Jinglingが開発したJingOSは、WPS OfficeやTerminalのようなLinuxのデスクトップソフトウェアと、Androidアプリの両方と互換性がある。タブレットのJingPad A1には着脱式のキーボードがあるため、すぐにノートパソコンに変身する。それはAppleの、iPad用のMagic Keyboardと同じ仕組みだ。

リウ氏は「プログラマーへのギフトのようなものです。Linuxシステムの中でコードを書けると同時に、出かけるときにはAndroidのモバイルアプリも使えます」という。

今後、Jinglingはユーザーベースを拡大し、約2年間でChromebookの市場を攻略したいとリウ氏はいう。Chromebookは2020年のPC市場で10.8%のシェアを獲得し、Microsoftが支配するマーケットに徐々に食い込んでいる。しかしながらそれは、Chromebookが強いだけでなく、Windows搭載のパソコンの需要が鈍化しているためだとリウ氏は考えている。

Chrome OSの搭載機はノートブックのChromebookとデスクトップ機のChromeboxがあり、価格も仕様、機種、メーカー等により200ドル(約2万2000円)から550ドル(約6万500円)と幅がある。それに対してJingPad A1は、549ドル(約6万400円)からという価格になっている。パンデミックになってからリモートで仕事や勉強をする人が増え、タブレットもPCも売上が伸びているが、長期的に見るとJinglingは価格調整が必要であり、それなくして市場に自分の居場所を見つけることは困難だろう。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:LinuxAndroid中国タブレットSinovation VenturesJingling資金調達

画像クレジット:Jingling’s Linux tablet JingPad

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(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

TikTokが米国ユーザーの「顔写真や声紋」を含む生体情報の収集を表明

米国時間6月2日水曜日に発表されたTikTok(ティックトック)の米国におけるプライバシーポリシーの変更では、同社のソーシャルビデオアプリがユーザーのコンテンツから「生体識別子および生体情報を収集する場合がある」という項目が新たに追加された。これには「フェイスプリント(顔写真)やボイスプリント(声紋)」などが含まれると説明されている。TikTokにコメントを求めたところ、製品開発におけるどのような理由でユーザーから自動的に収集する情報に生体情報を加える必要が生じたのかは確認できなかった。しかし、そういったデータ収集活動を始める場合には、ユーザーに同意を求めると述べている。

生体情報収集の詳細については、同ポリシーの「自動的に収集する情報」の下に新たに追加された「画像および音声情報」セクションの項目として記述されている。

これは、TikTokのプライバシーポリシーの中で、アプリがユーザーから収集するデータの種類を列挙している部分であり、すでにかなり広範囲にわたっている。

新しいセクションの最初の部分では、TikTokがユーザーのコンテンツに含まれる画像や音声に関する情報を収集する場合があるとし「ユーザーコンテンツに含まれる物体や風景の識別、顔や体の特徴と属性の画像内の有無や位置、音声の特徴、テキスト化した会話内容など」と説明している。

気味が悪いと思うかもしれないが、他のソーシャルネットワークでは、アクセシビリティ(例えば、Instagramの写真の中に何が写っているかを説明する機能)の強化やターゲティング広告のために、アップロードされた画像の物体認識を行っている。また、AR(拡張現実)効果の演出のためには、人物や風景の位置を認識する必要があり、TikTokの自動キャプションは話し言葉をテキスト化することで実現している。

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また、このポリシーでは、新たなデータ収集は「映像の特殊効果、コンテンツモデレーション、人口統計学的分類、コンテンツや広告のリコメンデーション、個人を特定しないその他の処理」を可能にするためとも述べている。

新しい項目の中でも特に気になるのは、生体情報の収集計画の部分だ。

そこには次のように書かれている。

当社は、お客様のユーザーコンテンツから、フェイスプリントやボイスプリントなど、米国の法律で定義されている生体識別子および生体情報を収集することがあります。法律で要求される場合、当社は、そのような収集を行う前に、お客様に必要な許可を求めます。

この声明自体は、連邦法、州法、またはその両方を対象としているのかどうかを明確にしていないため、曖昧なものとなっている。また、他の項目と同様に、TikTokがなぜこのデータを必要とするのか説明しておらず「フェイスプリント」や「ボイスプリント」という言葉の定義さえもない。加えて、どのようにしてユーザーから「必要な許可」を得るのか、同意を得るプロセスは州法や連邦法を参考にするのかについても言及はない。

これは憂慮すべきことだ。というのも、現在のところ、生体認証情報プライバシー法を制定しているのはイリノイ州、ワシントン州、カリフォルニア州、テキサス州、ニューヨーク州など、ほんのひと握りの州にすぎないからだ。TikTokが「法律で要求される場合」にのみ同意を求めるのであれば、他の州のユーザーはデータ収集について知らされる必要がないということになりかねない。

TikTokの広報担当者は、生体情報の収集における同社の計画や、現在または将来の製品にどのように関わるかについて、詳細は明らかにしていない。

「透明性に対する継続的なコミットメントの一環として、当社が収集する可能性のある情報をより明確にするために、今回プライバシーポリシーを更新した」と同担当者は述べる。

そして、同社のデータセキュリティへの取り組みに関する記事、最新の透明性レポート、アプリ上でのプライバシーの選択についての理解を深めることを目的として最近立ち上げたプライバシーとセキュリティのページを紹介した。

画像クレジット:NOAH SEELAM/AFP via Getty Images

今回の生体情報に関する開示は、TikTokが一部の米国ユーザーの信頼回復に取り組んでいる時期と重なる。

Trump(トランプ)政権時、連邦政府は、TikTokが中国企業に所有されていることから国家安全保障上の脅威であるとして、米国内での運営を全面的に禁止しようとした。TikTokは、この禁止令への対抗として、TikTokの米国ユーザーのデータは、米国内のデータセンターとシンガポールにのみ保存していることを公表した。

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同社はまた、北京を拠点とするByteDance(バイトダンス)が所有しているにもかかわらず、TikTokのユーザーデータを中国政府と共有したことも、コンテンツを検閲したこともないと述べている。また、頼まれても絶対にしないとしている。

TikTokの禁止令は当初、裁判所で却下されたものの、連邦政府はその判決を不服として控訴した。しかし、Biden(バイデン)大統領が就任すると、同政権はトランプ政権の措置を再検討するため、控訴プロセスを保留した。そして、6月4日現在、バイデン大統領は、監視技術に関連する中国企業への米国の投資を制限する大統領令に署名しているが、同政権のTikTokに対する立場は不明のままだ。

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しかし、今回の生体情報収集に関する新たな開示は、ソーシャルメディアアプリがイリノイ州の生体認証情報プライバシー法に違反したとして、2020年5月に提起されたTikTokに対する集団訴訟における9200万ドル(約100億円)の和解を受けたものであることは注目に値する。この集団訴訟は、TikTokがユーザーの同意なしに個人情報や生体情報を収集・共有したことをめぐる、同社に対する20件以上の個別訴訟とも併合されていた。具体的には、特殊効果を狙ったフェイスフィルター技術への使用に関するものだ。

そういった状況のため、TikTokの法務部門は、アプリによる個人の生体情報収集に係る条項を追加することで、将来の訴訟に対する予防策を手早く講じたかったのかもしれない。

今回の開示は、米国向けのプライバシーポリシーにのみ追加されたものだ。EUなど他の市場では、より厳しいデータ保護法やプライバシー保護法があることも忘れてはならない。

この新しいセクションは、TikTokのプライバシーポリシーの広範な更新の一部であり、他にも旧版のタイプミスの修正から、セクションの改訂や新規追加まで、大小さまざまな変更が加えられている。しかし、これらの調整や変更のほとんどは、簡単に説明できる。例えば、TikTokのeコマースへの意欲を明確に示す新しいセクションや、ターゲティング広告に関するApple(アップル)の「App Tracking Transparency(アプリのトラッキングの透明性)」に対応する調整などが挙げられる。

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大局的に見れば、TikTokは、たとえ生体情報がなくても、ユーザーやコンテンツ、デバイスに関するデータをふんだんに持っている。

例えば、TikTokのポリシーには、ユーザーのデバイスに関する情報を自動的に収集するとすでに記載されている。その情報には、SIMカード・IPアドレス・GPSに基づく位置データ、TikTok自体の利用状況、ユーザーが作成・アップロードしたすべてのコンテンツ、アプリから送信したメッセージのデータ、アップロードしたコンテンツのメタデータ、クッキー、デバイス上のアプリやファイル名、バッテリーの状態、さらにはキーストロークのパターンやリズムなどが含まれている。

これは、ユーザーが登録したり、TikTokに連絡したり、コンテンツをアップロードしたりしたときに送られる「ユーザーが提供することを選択した情報」とは別だ。この場合、TikTokは、ユーザーの登録情報(ユーザー名、年齢、言語など)、プロフィール情報(名前、写真、ソーシャルメディアアカウント)、プラットフォーム上でユーザーが作成したすべてのコンテンツ、電話やソーシャルネットワークの連絡先、支払い情報、加えてデバイスのクリップボードにあるテキスト、画像、動画を収集する(Apple iOS 14の警告機能により、TikTokや他のアプリがiOSのクリップボードのコンテンツにアクセスしていることが発覚したことはご記憶にあるだろう。今回のポリシーでは、TikTokは「ユーザーの許可を得て」クリップボードのデータを「収集する場合がある」としている)。

プライバシーポリシーの内容自体は、一部のTikTokユーザーにとっては、すぐに気がかりになるものではなく、むしろ、バグだらけのロールアウトに関心が集まった。

一部のユーザーは、プライバシーポリシーの更新を知らせるポップアップメッセージが表示されたものの、そのページを読もうとしても読めなかったと報告している。また、ポップアップが繰り返し表示されるという報告もあった。この問題は全ユーザーに共通ではないようだ。TechCrunchによるテストでは、このポップアップに関する問題は発生しなかった。

【追加レポート】Zack Whittaker(ザック・ウィッタカー)

カテゴリー:ネットサービス
タグ:TikTok生体情報アメリカSNS個人情報プライバシーフェイスプリントボイスプリント透明性中国

画像クレジット:SOPA Images / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

ラッシュが続く中国LiDARメーカーへの投資、Hesaiがシャオミ、美団、政府系CITICなどの主導で328億円超調達

より多くの自動車メーカーやロボタクシースタートアップがリモートセンシング技術を車両に搭載しているのと並行して、LiDAR(ライダー)メーカーへの投資ラッシュが続いている。

この投資ブームに一番最近乗ったのは、2014年に上海で設立されたLiDARメーカーで、パロアルトにもオフィスを構えるHesai(禾赛科技)だ。同社は中国時間6月8日、著名なプライベートエクイティ企業Hillhouse CapitalのVC部門であるGL Ventures、スマートフォンメーカーのXiaomi(シャオミ、小米科技)、オンデマンドサービス大手のMeituan(美団)、そして中国大手政府系コングロマリットCITIC(中国中信集団公司 / 中信公司)のプライベートエクイティプラットフォームであるCPEが主導するシリーズD資金調達ラウンドで、3億ドル(約328億円)以上を調達したと発表した。

Hesaiは、今回の新たな資金調達は、OEM顧客向けのハイブリッド固体LiDARの量産納入、スマートマニュファクチャリングセンターの建設、自動車用LiDARチップの研究開発などに充てられるとしている。同社は、これまでに「数億ドル(数百億円)」の資金を蓄積してきたという。

このラウンドには、Huatai Securities(華泰証券)、Lightspeed China Partners(LCP)、Lightspeed Venture Capitalの他、Qiming Venture Partners(啟明創投)も参加した。また、Bosch(ボッシュ)、中国最大手の検索エンジンBaidu(バイドゥ、百度)、米国の大手半導体メーカーON Semiconductor(オン・セミコンダクター)も同社に出資している。

この分野では、EVメーカーNIO(ニーオ、上海蔚来汽車)のサプライヤーである中国のLiDARメーカーInnovusionも、2021年5月にシンガポール政府系ファンドTemasek(テマセク)が主導して6400万ドル(約70億円)のシリーズBラウンドを実施した。中国のドローンの巨人DJIから独立したLivox(ライボックス)もまた、テスラのライバルXpeng(シャオペン、小鵬汽車)に採用され勢いを増している新興LiDARメーカーだ。

LiDARの用途は、ロボタクシーや乗用電気自動車だけではない。XiaomiやMeituanがHesaiに出資した理由もそこにある。Xiaomiは、製造サプライヤーを通じて数百種類のコネクテッドデバイスを製造しており、センシング技術が不可欠な産業オートメーションの恩恵を容易に受けることができる。さらにXiaomiは2021年、EVの製造に参入する計画を発表した。

中国で数億人の消費者に食品を配達しているMeituanも同様に、人間の配達ライダーをLiDAR搭載の無人バンやドローンに置き換えることで多くの利益を得られるだろう。

500人以上のスタッフを擁するHesaiの顧客は、23カ国70都市に及んでいるという。同社の顧客には、Nuro(ニューロ)、Bosch、Lyft(リフト)、Navyaの他、中国のロボタクシー事業者Baidu、WeRide、AutoXなどが名を連ねている。同社は2020年、データラベリングサービス企業のScale AIと提携し、カリフォルニア州でHesaiのLiDARを使って収集したデータをもとに、自律走行アルゴリズムのトレーニング用データセットをオープンソースで提供することを開始した。

2020年7月には、LiDAR技術のパイオニアであるVelodyneとHesaiは長期ライセンス契約を締結し、米国、ドイツ、中国での訴訟手続きを終結させた(訳註:2019年8月からVelodyneはHesaiとSuteng Innovation Technologyを相手取り特許侵害の申し立てを行っていた)。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:LiDAR中国Hesai資金調達

画像クレジット:Hesai

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

アップルの新しい暗号化ブラウジング機能は中国、サウジアラビアなどでは利用できない

Apple(アップル)は、米国時間6月7日に始まった年次ソフトウェア開発者会議(WWDC21)において、プライバシーに焦点を当てたいくつかのアップデートを発表した。そのうちの1つである「Private Relay(プライベートリレー)」と呼ばれる機能は、すべての閲覧履歴を暗号化し、データを追跡・傍受が誰からもできないようにする。このため国家の検閲制度の下で生活している中国のユーザーが特に興味を持つものだ。

私の同僚であるRoman Dillet(ロマン・ディレット)記者が以下のように説明している

Private Relayがオンになると、あなたのブラウジング履歴を誰も追跡できない。あなたのデバイスと、情報をリクエストするサーバーの間に介在するインターネットサービスプロバイダーも追跡できない。実際、どのように機能するか詳細についてはもうしばらく待たなければならない。

だが興奮は長くは続かなかった。Appleはロイターに対して、Private Relayは中国の他、ベラルーシ、コロンビア、エジプト、カザフスタン、サウジアラビア、南アフリカ、トルクメニスタン、ウガンダ、フィリピンでは利用できないと述べている。

Appleからのコメントはまだ得られていない。

仮想プライベートネットワーク(VPN)は、中国のユーザーが「グレート・ファイアウォール」と呼ばれる検閲装置を回避して、普通の手段ではブロックされたり速度が低下したりするウェブサービスにアクセスする場合の一般的な手段だ。しかし、VPNは必ずしもユーザーのプライバシーを保護するものではない。VPNは、ユーザーのインターネットプロバイダーの代わりにVPNプロバイダーのサーバーにすべてのトラフィックを流しているだけなので、ユーザーは実質的に自分のアイデンティティの保護をVPN会社に委ねていることになる。一方Private Relayでは、Appleにさえユーザーの閲覧履歴を見せることはない。

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Appleのソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長であるCraig Federighi(クレイグ・フェデリギ)氏は、Fast Company(ファースト・カンパニー)によるインタビューの中で、新機能がVPNよりも優れていると思われる理由を説明している。

「私たちはユーザーのみなさまに、Appleを信頼できる仲介者として信じていただきたいとは思っていますが、私たちを信じるしかないようになって欲しいとも思っていません。なぜなら私たちにも、ユーザーのみなさんのIPアドレスと向かっている先の目的地を同時に知る手段がないのです。これはVPNと異なっている点です。私たちは、人々がこれまでVPNを利用しようと決めたときに求めていた多くの利点を提供したいと思いましたが、同時に単一の仲介者を信頼するという意味で、難しく危険とも考えられるプライバシーのトレードオフを強いられることは無いようにしたいと考えたのです」。

Private Relayが、中国をはじめとする制限されている国のユーザーのシステムアップグレードから除外されるだけなのか、それともそれらの地域のインターネットプロバイダーによってブロックされるのかは不明だ。また、2020年からオンライン検閲が強化されている香港のAppleユーザーがこの機能を利用できるかどうかも不明だ。

中国で事業を展開する他の欧米ハイテク企業と同様に、Appleも北京政府を敵に回すか、米国内で支持している価値を無視するかの狭間に立たされている。Appleには、北京政府の検閲圧力に抵抗しては屈してきた歴史がある。たとえば中国国内のすべてのユーザーデータを中国国営のクラウドセンターに移行したり、中国国内での独立系VPNアプリを排除したり、中国内でのポッドキャストでの言論の自由を制限したり中国のApp StoreからRSSフィードリーダーを削除したりするなどの対処だ。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:AppleWWDC 2021WWDCVPNグレート・ファイアウォール中国サウジアラビア

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(文:Rita Liao、翻訳:sako)

米バイデン政権が中国テック・通信企業への投資禁止措置を拡大

バイデン政権は、中国政府による監視や軍事機器に貢献していると見なされる中国企業への投資を制限するトランプ時代の規制を修正、強化した。大統領命令に挙げられた最初の59企業の中には、テック、宇宙、通信の大手企業の名前もあり、財務省の命令によってさらに追加される見込みだ。

「中国による中国国外における監視技術の使用、および抑圧を促したり深刻な人権侵害につながる中国監視技術の開発と利用、異常かつ並外れた脅威にあたるものです」と、大統領行政命令の発令に際してバイデン氏は述べた。

この大統領令は、トランプ政権の長期に渡り追加され続けた中国企業ブラックリストに由来する。リストは政府調達、米国企業による民間投資、その他の目的に使用されてきた。大手テック企業のZTEとHuawei(ファーウェイ)は2019年に当初から載せられ、他の企業も定常的に追加されていった。

バイデン大統領の命令はこれを精緻化したもので、一部を改訂あるいは拡張し、中でも何が危険な行為あるいは中国当局との協業を構成するかの定義が変更された。中国のウイグル人イスラム教徒および香港その他の反体制派の監視に関与している企業を含むように定義を拡大している点が注目される。

新たな企業リストには、過去2年間に掲載された企業の多くが含まれるほか、数多くが追加されている。China Mobile(中国移動通信)、China Aerospace(中国航天科技集団)、Hikvision(ハイクビジョン)から半導体メーカーのSMICまで、IT、通信、航空宇宙に関わる主要企業がリストに載る危機にさらされているようだ。これらの企業に対する直接投資だけでなく、禁止された企業を含むインデックスファンドなどの仲介手段への投資も禁止される。

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財務省は、従来の国防省に代わってリストの保守と更新の責任を持ち、追加および抹消を行う。

「一連の課題に真正面から取り組むことは、米国国家安全保障の根本的関心事と民主主義の価値を守るというバイデン政権の公約と一致するものであり、今後も政権は中国企業のリストを適宜更新していく」と大統領令に付随した概況報告書に書かれている。

ホワイトハウスがトランプ大統領が始めた中国との貿易戦争を継続し、精緻化しようとしていることは明白だ。米国による圧力が中国の政策に十分な影響を与えるのか、また国際社会の支持が必要になるのかは、近々大統領が本件ならびに他の法令への支持を求めて同盟国を訪問することで明らかになるだろう。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:ジョー・バイデンアメリカ中国ブラックリストSMICChina MobileChina AerospaceHikvision投資

画像クレジット:Blake Callahan / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

今も米国の自治体は中国共産党に関連する監視技術を購入している

この記事は、映像監視ニュースサイトIPVMとの提携により発表された。

TechCrunchが入手した契約データから、米国の少なくとも100の郡や町、そして市が、米国政府が人権侵害と関連づけた中国製の監視システムを購入していることがわかった。

米国政府は、2019年にHikvision(ハイクビジョン)とDahua(ダーファ)という中国のテクノロジー企業2社を経済ブラックリストに追加したが、一部の自治体は、その後、数万ドル(数百万円)以上を投じて両社の監視装置を購入している。この2社は、ウイグル族のイスラム教徒が多く住む新疆ウイグル自治区の少数民族に対する、中国の継続的な弾圧と関連している。議会はまた、中国政府によるスパイ活動を助長する恐れがあるとして、米国の連邦政府機関がハイクビジョンとダーファのテクノロジーを新たに購入したり、契約を更新したりすることを禁止した

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しかし、このような連邦政府の措置は、州や市のレベルにまでは適用されていない。連邦政府の資金が使われていない限り、地方自治体はビデオカメラや赤外線スキャナーをはじめ、そういった中国製の監視システムを特に制約なく購入できる。

この契約の詳細は、連邦政府や州政府の支出を追跡しているGovSpend(ガヴァスペンド)が、IPVM(アイ・ピー・ヴイ・エム)を通じてTechCrunchに提供したものだ。IPVMは、映像監視に関する主要なニュースサイトであり、ハイクビジョンとダーファの禁止令を注視している。

今回のデータ、およびIPVMが以前に報告したところによると、最大の支出はジョージア州Fayette(フェイエット)郡の教育委員会によるもので、2020年8月に公立学校での体温チェックに使用されるハイクビジョンのサーマルカメラ数十台を49万ドル(約5400万円)で購入している。

フェイエット郡公立学校の広報担当者Melinda Berry-Dreisbach(メリンダ・ベリードライスバッハ)氏の声明によると、カメラは、ハイクビジョンの正規販売店でもあり、以前から取引のあるセキュリティベンダーから購入したという。この声明では、教育委員会がハイクビジョンの人権侵害との関連性を認識していたかどうかについては触れられていない。また、ベリードライスバッハ氏は、フォローアップの質問には答えていない。

ハイクビジョンやダーファのモデルを含む多くのサーマルスキャナーについては、IPVMの調査により、測定値が不正確であることが判明し、誤った測定値による「深刻な公衆衛生上の潜在的リスク」があると、米国食品医薬品局(FDA)が、公衆衛生上の警告を発するに至っている。

人口9万5000人のノースカロライナ州Nash(ナッシュ)郡は、2020年9月から12月にかけて4万5000ドル(約490万円)以上を投じてダーファのサーマルカメラを購入した。郡長のZee Lamb(ジー・ラム)氏は、購入とその機材が郡内の公立学校に配備されたことを認めるメールを転送してきたが、それに対するコメントはなかった。

また、ニューオーリンズ市の一部を含むルイジアナ州のJefferson(ジェファーソン)郡は、2019年10月から2020年9月にかけて、ハイクビジョンの監視カメラとビデオストレージを3万5000ドル(約380万円)で購入したことがデータからわかっている。しかし、郡の広報担当者からのコメントはない。

連絡を取った自治体のうち、購入したテクノロジーと人権侵害との関連性について答えたのは1地区だけだった。カリフォルニア州のKern(カーン)郡は、2020年6月、保護観察局のオフィス用としてハイクビジョンの監視カメラとビデオ録画機器に1万5000ドル(約160万円)以上を支出した。契約のデータによると、地元の業者であるTel Tec Security(テル・テック・セキュリティ)がハイクビジョンの製品を同郡に販売していた。

カーン郡の最高行政責任者であるRyan Alsop(ライアン・アルソップ)氏は、ハイクビジョンと人権侵害との関連性について問われると「ハイクビジョンに関する問題についてはまったく知らない」という。

「繰り返すが、当郡はハイクビジョンと契約したのではなく、テル・テック・セキュリティと契約したのだ」とアルソップ氏は答えた。

カーン郡では、郡の保護観察所で使うハイクビジョンの機器購入に1万5000ドル(約160万円)以上を費やしている。(データ提供:GovSpend

フロリダ州Hollywood(ハリウッド)市では、ハイクビジョンのサーマルカメラに3万ドル(約330万円)近くを費やしたが、同市の広報担当者は、中国のこのテクノロジーメーカーが「すぐに納品可能で、規定のプロジェクトスコープに合致し、プロジェクト予算内でソリューションを提供する唯一の大手メーカーだった」と述べている。このカメラは、新型コロナウイルス感染症の拡散を抑制するために、従業員の体温の測定に使用された。広報担当者は、人権侵害との関連性については言及しなかったが。連邦政府の禁止令は同市には適用されないと述べている。

Human Rights Watch(ヒューマン・ライツ・ウォッチ)のシニア研究員であるMaya Wang(マヤ・ワン)氏は、地方レベルでのプライバシー規制が不十分であることが、自治体がこのテクノロジーを購入する一因になっていると指摘する。

「問題の1つは、この種のカメラが、原産国や人権侵害に関連しているかどうか以前に、プライバシー基準に準拠しているかどうかを確認するための規制がないまま、国内のさまざまな地域、特に州や市のレベルで導入されていることだ」とワン氏は電話で語り、そして「また、企業の実績に基づいて、その企業が人権を侵害していないかどうかを厳密に調査し、より良い企業を選択することにより、プライバシー保護を重視する企業が勝ち残るような規制の枠組みもない」と付け加えた。

ウイグル族を抑圧する中国政府の継続的な措置の一環として、ウイグル族を監視するための監視テクノロジーの供給をハイクビジョン、ダーファなどに大きく依存していると米国政府は強く主張しているが、中国政府はこれを繰り返し否定している。

国連の監視機関によると、中国政府は近年、100万人以上のウイグル人を収容所に拘留しており、これが米国における監視テクノロジーメーカー2社のブラックリスト入りにつながっている。

米国商務省は、政府の経済ブラックリストに両社を加える際、ハイクビジョンとダーファが「中国政府によるウイグル人、カザフ人、その他のイスラム系少数民族に対する弾圧、恣意的な大量拘束、ハイテクを駆使した監視などの活動が行われる上で、人権侵害や虐待に関与してきた」と述べている。Biden(バイデン)政権は、この人権侵害を「ジェノサイド(大量虐殺)」と呼んだ。

この報道について、上院情報委員会の委員長を務めるMark Warner(マーク・ワーナー)上院議員は、TechCrunchに次のように述べている。「中華人民共和国の企業は、本当に『独立』しているわけではない。そのため、米国の団体が中国企業の機器を購入する際には、中国での民族抑圧を助長する企業を支援しているだけでなく、この監視機器を介して収集されたデータが中国共産党と共有される可能性があることを認識するべきだ。以前から、企業や大学を含むアメリカの団体が、新疆ウイグル自治区などに対する中国共産党の監視・検閲活動を助長していることに心を痛めていた」。

「しかし、これは問題の一部に過ぎない。米国人は、中国共産党がさまざまな手口でアメリカ市民のデータ収集に取り組んでいることにも関心を持つべきだ。このような機器を購入することのリスク、そして人権や安全保障との密接な関係について、地方自治体を含めアメリカ人を啓蒙する必要がある」とワーナー上院議員は述べる。

IPVMは、各社の監視技術がウイグル人の弾圧にどのように使われているかも大きく報じてきた。ダーファ製品には、警察に「リアルタイムのウイグル人警告」を提供するために人種検知のコードが含まれていることが判明した。

2021年初め、Thomson Reuters(トムソン・ロイター)財団は、ロンドンの議会の半数と英国の最大20都市が、ウイグル人の虐待に関連した技術を使用していることを明らかにした。また、Guardian(ガーディアン)紙は、英国の学校でハイクビジョンの監視技術が使用されていることを報じた

ダーファは、この報道を受けて、ブログに声明を掲載し「メディアでの一部報道とは異なり、当社は特定の民族をターゲットとするテクノロジーやソリューションを開発したことはない」と主張した。そして声明には「これに反する主張は単なる誤りであり、そのような主張を裏付ける証拠は、これまで確認されていないと認識している」と付け加えられている。

ハイクビジョンは、コメントの要請に応じていない。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:アメリカ中国プライバシー個人情報監視

画像クレジット:Zhengshun Tang (opens in a new window)/ Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Dragonfly)

ファーウェイがAndroidに代わるスマホ向けHarmonyOSを正式に発表

Huaweiコンシューマビジネスグループのソフトウェア開発担当プレジデントWang Chenglu(ワン・ チェンルー)氏

ハイパーコネクテッドな世界で生活していることを想像してみよう。中国の通信機器大手Huawei(ファーウェイ)独自のHarmonyOSは、デバイスを動かしているシステムにかかわらずすべてのデバイスに互換性を持たせることで、あるデバイスから別のデバイスに切り替えて使う際のユーザーエクスペリエンスの遅れやギャップをなくすことを目指している。

2019年にHuaweiは米国のエンティティリストに追加され重要なチップセットGoogleのAndroid開発者向けサービスなど米国のテクノロジーの利用が禁止されたが、エンティティリスト追加から2年経って、Androidに代わるHuaweiのスマートフォン向けオペレーティングシステムが発表された。

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米国時間6月2日、Huaweiは正式にスマートフォン向け独自オペレーティングシステムのHarmonyOSを発表した。同社は2016年にオペレーティングシステムの開発を開始し、2020年9月にはタブレット、電気自動車、スマートウォッチ向けにオープンソース化した。同社のフラッグシップデバイスであるMate 40などは同日からHarmonyOSにアップグレードできる模様で、今後数四半期でローエンドモデルにも順次HarmonyOSが搭載される。

Huaweiは、HarmonyOSはAndroidやiOSにとって代わるためのものではないとしている。むしろHarmonyOSのアプリケーションはもっと広範囲にわたり、スマートフォンやタブレットだけでなく、増えつつあるスマートデバイスでも動作する。そのため同社は、ハードウェアや家電メーカーがこのエコシステムに参加するように努めてきた。

これまでに50万以上の開発者がHarmonyOSベースのアプリケーションを開発している。GoogleやFacebookといった欧米の主力アプリのHarmonyOS版が開発されているかどうかは明らかになっていない。

一部の中国テック企業はHuaweiからの呼びかけに答えている。スマートフォンメーカーのMeizuは同社のWeiboアカウントで、同社のスマートデバイスがHarmonyOSに対応するかもしれないと示唆したMeizuよりかなり大手のOppo、Vivo、Xiaomiは、ライバルのオペレーティングシステムの採用にはおそらく抵抗があるだろう。

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HuaweiはHarmonyOSが動作するデバイスを1つのコントロールパネルにまとめようとしている。例えば、1台のテレビと複数のヘッドフォンのBluetooth接続をリモートでペアリングする。スマートフォンでプレイしていたゲームをシームレスにタブレットに引き継ぐ。ユーザーのスマートウォッチから収集したヘルスケアデータをもとにスマート豆乳ブレンダーがドリンクをカスタマイズする。

HarmonyOSが搭載されていないデバイスも、シンプルなプラグインでHuaweiのデバイスと通信できる。WindowsのノートPCにHarmonyOSのプラグインがインストールされていれば、PCに保存されている写真をHuaweiのスマートフォンに直接保存できる。ということは、Android、さらにiOSは、いつか共通の言葉でHarmonyOSと話せるようになるのだろうか。

来週にはAppleのWWDCが開催されるというタイミングで、HarmonyOSが発表された。Macrumorsが指摘したように、Appleの最近の求人情報には新しいコンセプトであると見られるhomeOSの記載があり、Appleのスマートホーム戦略と関連しているようだ。

Huaweiは、HarmonyOSがAndroidの派生であるという憶測を否定し、Androidのコードと同一のコードは1行もないと述べた。Huaweiの広報は、HarmonyOSがLinuxベースであるかどうかについてコメントを避けた。AndroidはLinuxカーネルをベースにしている。

テック大手数社が独自のモバイルオペレーティングシステムの導入を試みたことがあるが、成功しなかった。AlibabaはLinuxベースのAliOSを開発したが、長いことアップデートされていない。Samsungは独自のTizenを手がけたが、スマートテレビなどいくつかのIoT機器に搭載されるにとどまっている。

先行企業と比べると、Huaweiは開発者の関心を集められるかもしれない。米国政府によって重要なチップサプライヤーが遮断され、最先端スマートフォンの製造が阻害されかねない状況になって大きな市場を失ったにもかかわらず、Huaweiは今も中国最大のスマートフォンブランドの1つだ。Androidに不満を持つ開発者のニーズを捉えることができれば、HarmonyOSは開発者にとっての次の選択肢となるチャンスがある。

米国の制裁では、HuaweiがAndroidのオープンソースソフトウェアを使うことは禁止されていない。中国の大手スマートフォンメーカーは自社向けのAndroidオペレーティングシステムを開発するためにAndroidのオープンソースソフトウェアを使用している。しかし米国政府の禁止措置によってHuaweiのスマートフォンでGoogle Playのサービスを利用できなくなり、国外のコンシューマー市場としては終わりを告げられたようなものだった。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:HuaweiOSHarmonyOSスマートフォン中国

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(文:Rita Liao、翻訳:Kaori Koyama)

Tencentが中国本土から海外の教育サイトローディングをスピードアップするサービスを展開中

新型コロナウイルスパンデミックが引き続き世界中の暮らしと航空網を一変させている中、海外の学校に入学した数十万もの中国人学生が行き詰まっている。中国の自宅で学習しながら、彼らはみな、ある1つの問題に直面している。学校のウェブサイトや他の教育リソースのローディングが耐え難いほどゆっくりなのだ。これは、すべてのウェブトラフィックが通称「グレート・ファイアウォール」という中国の検閲システムを通過しなければならないためだ。

そこに好機を見いだしたAlibaba(アリババ)のクラウド部門は、米国のサイバーセキュリティソリューションプロバイダーFortinetとのバーチャルプライベートネットワーク(VPN)手配を通じて、中国の学生を海外の大学のポータルへと結びつけたとロイターは2020年7月に報じたが、Tencent(テンセント)も似たようなプロダクトを展開しているとも指摘していた。

Tencentのサービスの詳細が明らかになった。「Chang’e Education Acceleration」というアプリはAppleのApp Storeに2021年3月に登場した。選ばれた海外の教育サービスのローディング時間をスピードアップするというものだ。Tencentはアプリについて「在宅でそして海外で学ぶ学生や研究者にインターネットアクセラレーションと教育リソースの検索サービスを提供することを目的とした、Tencentからのオンライン学習無料アクセラレーター」と簡潔に説明している。

教育使用のためのAlibabaのVPNと異なり、Chang’eはVPNではない、とTencentはTechCrunchに語った。VPNをどのように定義づけているか、あるいはChang’eがテクニカル的にどのように機能しているかTencentは説明しなかった。同社は2020年10月にアプリのオフィシャルウェブサイトでChang’eの提供が始まったと述べた。

「VPN」という言葉は中国では隠れた意味を持つ。往々にして「グレート・ファイアウォール」を不法にバイパスすることを意味する。人々は婉曲表現「アクセラレーター」あるいは「サイエンティフィックインターネットサーフィングツール」と言及する。TechCrunchが行ったテストでは、Chang’eがスイッチオンになると、iPhoneのVPNステータスは「オン」と表示される。

TencentのChang’eウェブサイト「アクセラレーター」はリモート学習を余儀なくされている中国人学生が学校のウェブサイトを早く取り込めるようにするのを手伝っている(スクリーンショット:TechCrunch)

ウェルカム画面では、Chang’eはユーザーに「アクセラレーション」のための国を米国やカナダ、英国を含む8カ国から選ぶよう尋ねる。また、各地域のレーテンシータイムとどれくらいスピードアップするかの予想も表示する。

国を選ぶと、Chang’eはユーザーがアプリのビルトインブラウザーで訪ねることができる教育リソースのリストを表示する。そこにはトップの大学79校(大半が米国と英国)のウェブサイト、Microsoft Teams、Trello、Slackのようなチームコラボツール、UDemy、Coursera、Lynda、Khan Academyといったリモート学習プラットフォーム、SSRNやJSTORなどの研究ネットワーク、Stack Overflow、Codeacademy、IEEEなどのプログラミングとエンジニアリングのコミュニティ、世界銀行とOECDが出している経済データベース、PubMed、Lancetといった医学生のためのリソースが含まれる。

これらのサービスの多くは中国でブロックされていないが「グレート・ファイアウォール」下にある中国本土でのローディングはゆっくりとしたものだ。ユーザーはリストに含まれていないサイトをリクエストすることもできる。

Chang’eを通じてスタンフォード大学のウェブサイトにアクセス(スクリーンショット:TechCrunch)

Chang’eはユーザーのスマートフォンの全トラフィックではなく、選んだサイトだけを自由にアクセスできるようにしているようだ。中国で禁止されているGoogle、Facebook、YouTube、その他のサイトはChang’eを通じても利用不可だ。AndroidとiOSの両方で無料で利用できるChang’eは現在のところユーザーに登録は求めていない。オンラインでの行動が厳しく規制されている中国では珍しい方針であり、ほとんどのウェブサイトはユーザーに実名での登録を求めている。

Chang’eを通じて利用できるサービス(スクリーンショット:TechCrunch)

AlibabaとTencentによるサービスは、違法あるいは中国の国益を損なうと思われる情報をブロックするための中国政府の検閲システムによって引き起こされた迂闊な結果だ。大学、研究機関、多国籍企業、輸出業者は往々にして、当局が無害だと考えるもののために検閲回避アプリを探すことを余儀なくされる。

VPNプロバイダーは中国で合法的に運営するために政府の承認を得る必要があり、ライセンスを取得したVPNサービスは中国の国家セキュリティを危険にさらすウェブサイトのブラウジングが禁止されている。2017年にAppleは中国政府の命令を受けて何百もの無認可VPNアプリを中国のApp Storeから削除した。

2020年10月にTechCrunchは、VPNアプリとブラウザーのTuberは中国のユーザーがFacebook、YouTube、Googleといった世界のインターネットエコシステムを垣間見れるようにしていると報じたが、記事の掲載からほどなくしてアプリは削除された。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Tencent中国オンライン学習留学グレート・ファイアウォールVPN

画像クレジット:GREG BAKER/AFP / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

テスラがアップルと同じく中国のユーザーデータを現地サーバーで保管すると発表

中国で活動する外国のテック企業にとって、中国におけるユーザーデータの取り扱いはデリケートな問題となっている。Apple(アップル)が中国の顧客データを同国の国有企業のクラウドサービスが管理するサーバーに保管するという動きは、長年にわたって欧米で論争を巻き起こしてきた。最近のニューヨークタイムズ紙の調査では、この設定により中国政府が同国内のAppleユーザーデータに容易にアクセスできる可能性があることが判明したが、Appleは顧客およびそのデータの「安全性を危険にさらしたことはない」と述べている。

中国で多額の収益を上げている数少ない米国テック企業の1つであるTesla(テスラ)も、同様のデータ計画を検討している。電気自動車メーカーの同社は、中国にデータセンターを設立して「データ保存の現地化」を進めており、将来的にはさらにデータ施設を増やす予定であると、マイクロブログプラットフォーム「Weibo(ウェイボー、微博)」の公式アカウントを通じて発表した。中国本土で販売されたTesla車から発生するすべてのデータは、中国内で保管されるとのこと。

Teslaの動きは、カメラやセンサーを搭載した自動車メーカーがデータを収集・利用する方法を規制するために中国政府が2021年5月に発表した新しい草案に対応したものだ。要件の1つには「個人的なデータや重要なデータは、(中国)国内に保存されるべきである」とある。

中国当局がTesla中国の顧客に対してどの程度のデータアクセス権を持っているのかは不明だ。Appleの場合、中国のユーザーのデータを保護する鍵は同社の管理下にあるとしていた

Teslaは最近開催された上海モーターショーで、ある顧客が同社の欠陥パーツに抗議し広く同情を集めたことで、中国のメディアや世間の支持を失った。また、世界水準のデザインや自律走行技術に多額の投資を行っているNio(ニオ、上海蔚来汽車)やXpeng(シャオペン、小鵬汽車)といった中国国内のライバル企業との競争も激化している。

関連記事:批判が高まる中、テスラが中国向けの新車両を検討中

米国の企業であるTeslaは、同社の2つ目に大きな市場である中国の政府のご機嫌をとりたいと考えているようだ。数日前には同社は、中国のサイバーセキュリティ監視当局が提案した新しい自動車政策について論じる業界シンポジウムに、Baidu(バイドゥ、百度)、Alibaba(アリババ)、そして研究機関やシンクタンクとともに登場した。

中国のインターネット規制当局が定義する自動車が生成する「重要なデータ」には、軍や政府の施設内の交通状況、政府が公開している以上の測量や地図データ、充電グリッドの状況、顔、音声、車のナンバープレート情報など、国家安全保障や公共の利益に影響を与えると判断されるデータが含まれる。

この規則では、自動車サービス事業者に対して、デフォルトでユーザーを追跡しないこと、さらに収集されるデータの種類とその理由をユーザーに通知することが求められる。また、データが収集された場合、情報は匿名化され「最小限の期間」のみ保存されるべきであるとある。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Tesla中国

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

米国がシャオミの中国共産党軍事企業指定を解除

トランプ政権の標的にされていた中国の有名なテクノロジー企業の1つXiaomi(シャオミ)がこのほど「Communist Chinese Military Company」(CCMC、中国共産党の軍事企業CCMC)を指定している政府のブラックリストから除外された。

2021年5月25日に提出された文書によると、コロンビア特別区連邦地方裁判所は1月、米国防総省によるXiaomiのCCMCへの指定を取り消した。

関連記事:トランプ政権が世界3位の中国スマホメーカーXiaomiも防衛ブラックリストに追加

Xiaomiは2月、軍事ブラックリストに載せたことで米政府を訴えた。3月、にワシントンD.C.裁判所はXiaomiに対し、DoD指定に対する予備的差し止め命令を出した。DoD指定は「恣意的で気まぐれな」決定だとして、すべての米国人がXiaomiの証券を購入したり所持したりすることを禁止するものだった。この判決は、中国のスマートフォンメーカーに対する「修復不能な損害」を防ぐために下された。

関連記事:シャオミがブラックリスト入りを巡り米政府を提訴

ブラックリストから外れたことについて、Xiaomiは次のように述べている。

当社は世界中のユーザー、パートナー、従業員、株主のみなさまからの信頼とご支援に感謝しています。当社は、当社がオープンで透明性が高く、株式を公開し、独立して運営・管理されている企業であることを改めて表明します。当社は、ユーザーのみなさまに信頼性の高いコンシューマーエレクトロニクス製品とサービスを提供し、革新的な技術によって世界中のすべての人々がより良い生活を享受できるように、誠実な価格ですばらしい製品を絶え間なく作り続けていきます。

Xiaomiの国内競合企業であるHuawei(ファーウェイ)は、米国の貿易ブラックリストに掲載されたことで、同国の重要な技術へのアクセスが禁止され、世界中でのスマートフォンの販売に支障をきたしており、いまだに苦労している。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Xiaomi中国アメリカ

画像クレジット:Budrul Chukrut/SOPA Images/LightRocket/Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

北京市が自律走行車両の公道試験の許可をJD.com、Meituan、Neolixに

北京郊外の人は、人間の配達員を乗せて通りを注意深く走行する自律運転の配達ミニバンを近所で目にし始めることになりそうだ。

現地時間5月25日に開かれたモビリティ会議での北京市当局の発表によると、同市はJD.com、Meituan、Neolixに亦荘開発区域の専用の公道で自律走行する配達車両を試験する許可を与えた。同区域は北京市による経済・技術的成長を目的とする試験エリアで、自動運転ベンチャーのためのインフラを用意しようと5Gを積極的に展開している。

3社は荷物を配達するのにNuroのものと似ている、ボックスに車輪がついたかわいらしい車両を使う。中国の電気自動車スタートアップLi Autoが支援する創業3年のNeolixは、小売や監視、その他の市サービスのための自律走行車両にフォーカスしている。その一方で、テック大企業であるJD.comとMeituanは、無人配達が自社の中核事業にとって重要性を増していると考えている。

Meituanの自動走行配達車両(画像クレジット:Meituan via WeChat)

オンライン小売のJD.comは専属の配達スタッフを抱えているが、Meituanの方はレストランのテイクアウトを顧客に届けるのにライダーの全国ネットワークに頼っている。両社ともここ数年、社内で自動運転テクノロジーに取り組んでいて、中国で配達ドローンの小型車両をテストしている。

Neolixは2021年6月までに北京の路上で配達車両150台を走らせる予定だ。JD.comは展開する車両の台数を明らかにするのは却下した。Meituanにはコメントを求ることができていない。

試験を担当する北京市当局は5月25日のイベントで、亦荘開発区域での配達専用の車両の運用に関するルールも示した。ロボットは「非モーター車両」に分類される。これからするに車両は車ではなく自転車や電動スクーターに近い区分になるようだ。中国の都市の道路状況は、予測できない歩行者、リースに繋がれていないペット、無謀なスクーター利用者のおかげで米国の道路、あるいは歩道やバイクレーンよりずっと複雑だ。

さらに重要なのは、ロボットは「現場と遠隔に」セーフティドライバーを置く必要があると規則にある。

Neolixの配達ロボット(画像クレジット:Neolix via WeChat)

JD.comは、同社のテクノロジーによってリモートセーフティドライバーは運行中の配達ロボット最大50台をモニターできると話す。車両は物流センターやスーパーマーケットから周辺のオフィスビル、集合住宅、学校のキャンパスなどへと荷物を運ぶ。顧客はテキストメッセージで送られてくるピックアップ用のコードを使って注文したものをバンから直接取ることができる。

対照的に、試験エリアでのNeolixの車両は周辺のオフィスビルで働く人向けのスナックやランチを売って回るモバイル自動販売機のようだ。ユーザーはロボットに搭載された小さなスクリーンで注文してQRコードで支払いをすれば、アイススクリームや温かいお弁当をすぐさま入手できる。

カテゴリー:モビリティ
タグ:JD.comMeituanNeolix中国北京自動運転ロボット配達

画像クレジット:JD.com’s delivery robot. Photo:JD.com

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

中国のフィンテックWalletsClubは世界で使える「eウォレットのためのVisa」を目指す

WalletsClubの共同創業者:CEOのシュー・ジシャン氏、COOのZeng Xianru(ツェン・シェンルー)氏、CTOのLiu Hang(リュー・ハン)氏

デジタル決済が世界中で主流になりつつある。モバイルネットワーク事業者の業界団体であるGSMAが発表したレポートによると、2020年末までにアクティブユーザー10万人超を抱えるモバイルマネープロバイダーは300社超となった。合計で3億を超えるモバイルマネー口座が世界中で毎月使われている。

eウォレットとして広く知られるモバイルマネープロバイダーは、従来の銀行に頼ることなく携帯電話を通じての送金、支払い、支払い受け取りに使われている。広く浸透し、強固なネットワーク効果を享受している限り、使い勝手はいい。しかし年間ユーザーが10億人を超えるAnt GroupsのAlipayのような人気のサービスですら、大半の国ではさほど浸透していないために中国外では実際には使用できない。

そこでの問題は、従来の銀行が持つ相互運用性が大半のウォレット間ではないことだ、とWalletsClubを創業する前にAlibabaのクラウド部門とAlipayの基礎インフラ構築に携わったXue Zhixiang(シュー・ジシャン)氏は指摘した。

2019年に香港で登記し、中国本土にオペレーションチームを抱えるWalletsClubはデジタルウォレットのためのVisaになることを狙っている。世界の何百もの電子マネーサービス間での送金を可能にするというものだ。

「デジタルウォレットのための手形交換所のようなものです」とCEOのシュー氏は話した。

決済システムは金融取引に関わっている2者の仲介だ。資金の有効性を認証し、取引を行う2者間の送金を記録することで、送金の効率とセキュリティを確保するようデザインされている。WalletsClubを使ってリアルタイムに支払ったり、支払いを受けたりすることができる、とシュー氏は主張した。同社のテクノロジーは金融機関が世界中でデータを交換するのに使われている「ISO 20022」基準に基づいているとも話した。

言い換えると、WalletsClubは個人エンドユーザーではなく、世界中の何百ものeウォレットを追いかけている。同社のビジョンは、送金する側と送金を受け取る側のサービスプロバイダーあるいは金融機関がWalletsClubの会員である限り、あらゆるモバイルウォレットを使って人々がどこででも支払えるようにすることだ。これはVisaやMastercardがネットワーク内のさまざまな銀行が発行しているクレジットカードをいかに処理しているかに似ている。WalletsClubは取引ごとに定額手数料を課すことで収益をあげる計画だ。

電子ウォレットに相互運用性を加えることで、決済システムが動いているところであればどこでも互換性を獲得するため、特定の地域でサービスを提供する小規模事業者ですら成長できる。

従来の金融システムに挑む代わりに、WalletsClubは銀行サービスを利用できていない個人が簡単にデジタルウォレットを使ってお金を動かせるようにする手段を提供したいと考えている。この手段は銀行口座を開設するより簡単だ。何百万人という東南アジアの労働者のような、母国に送金する必要がある出稼ぎ労働者の中にそうした送金に対する大きな需要がある。

WalletsClubは潜在的には数社のテリトリーに侵入している。母国に送金する移民労働者は現在、長年にわたって展開されているWestern UnionやMoneyGramといった送金サービスに頼っている。いずれのサービスもユーザーが送金したり金を受け取ったりするのに足を運ぶ「エージェント」の大きなネットワークを持つ。2018年にAlipayは香港のユーザーがフィリピンのGCashアカウントに送金できるようにしたが「Ant Groupのフォーカスは送金というより決済だった」とXue氏は述べた。

世界銀行のデータによると、故郷を離れている労働者からの母国への送金は2019年に、中国を除く低中所得国における最大の海外からの資金調達源となった。送金額は5000億ドル(約54兆4625億円)超となり、そうした低中所得国の海外直接投資の水準を上回った。

モバイルウォレットの手形交換所が脅かすその他の業種としては、事業者がさまざまなデジタル決済手法を統合しなくてもいいようにしているクロスボーダー決済アグリゲーターがある。

初期段階にあるWalletsClubにとって最大の課題は顧客との信頼関係の構築であり、同社は香港、シンガポール、カナダにいる中国人起業家が興した電子マネーサービスと協議中だ。こうした創業者たちがここ10年の中国のフィンテックブームから学んだことのおかげで、中国で開発されたウォレットは特に新興マーケットで数多く展開されている。それらの多くはTencentやAntのような巨大企業と競合するのは難しいとわかっていて、中国のフィンテックをめぐる規制強化はいうまでもない。

「メンバーを20社集め、メンバー間の毎日の決済が数百件あれば、当社は基本的に利益をあげられます」とシュー氏は話し、目標は2021年中に参加企業12社を獲得することだと付け加えた。

関連記事:中国政府がジャック・マー氏のフィンテック帝国Ant Groupの「修正」計画を発表

カテゴリー:フィンテック
タグ:WalletsClubデジタルウォレット中国送金

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

トヨタ出資の自動運転Pony.aiがカリフォルニア州から無人運転テスト許可を取得

中国のロボタクシースタートアップPony.ai(ポニーエーアイ)は、カリフォルニア州の当局から自動運転車両をセーフティードライバーが乗り込むことなしに3都市で試験する許可を取得した。

全部で55社がセーフティドライバー付きでの自動運転車両のテストを行う許可を得ているが、ドライバーなしの許可を得ている企業はずっと少ない。Ponyは同州でこの手の許可を得た8番目の企業であり、その他の企業は中国企業のAutoX、Baidu、WeRide、そして米国企業のCruise、Nuro、Waymo、Zooxだ。この中でNuroだけがいわゆる運営許可を得ていて、商業展開ができる。

自動走行車両のテストを管轄するカリフォルニア州車両管理局が発行する許可は、同州でのPony.aiの既存の活動を拡大する。同社は2017年からセーフティドライバー付きでの自動走行車両テストを許可されてきた。

新たな許可の下で、Pony.aiは自動走行車両6台をドライバーなしで、フリーモント、ミルピタス、アーバインの特定の道路でテストできるようになる。許可には制限がある。車両のスピードは時速72km以下で、良好な天候と小雨の状況でのみ走行が許される。試験はまずフリーモントとミルピタスで午前10時から午後3時の間に行われる。

こうしたドライバーなしのテスト許可を得ている企業は保険の証明か500万ドル(約5億4000万円)相当の債券を提出し、またテクノロジーでつながった遠隔オペレーターを訓練するなどいくつかのルールに従わなければならない。当局によると、ドライバーなしのテスト許可取得企業は、ドライバーレス車両が関わった事故が発生した場合、10日以内に州車両管理局に報告し、テストを止めた場合は年次レポートを提出する必要もある。

2016年に元Baidu開発者のJames Peng(ジェームズ・ペン)氏とLou Tiancheng(ルー・ティエンチェン)氏によって創業されたPony.aiは比較的短い期間に多くのパートナーや投資家を獲得した。2020年11月に同社は2億6700万ドル(約290億円)の資金調達後に評価額が53億ドル(約5770億円)に達した、と述べた。中国とカリフォルニアで事業を展開する同社は、トヨタからの4億ドル(約436億円)を含め、創業以来10億ドル(約1089億円)を調達した。Pony.aiはBosch、Hyundai、トヨタを含む自動車メーカーやサプライヤーといくつかの提携やコラボレーションを抱えている。

関連記事:後付け自動運転システムを開発する中国のスタートアップPony.aiが276億円の資金調達、評価額5476億円に

Pony.aiは小型車から大型トラックまであらゆるサイズの車両のためのアグノスティック・バーチャル・ドライバーと呼ぶものを構築中で、それはライドシェアとロジスティック(配達)サービスネットワークで運用される見込みだ。同社は2019年に、自社の自動テクノロジーを長距離トラックマーケットに応用するためにOEM、そしてサプライヤーと協業している、と話した。しかし同社はおそらくロボタクシーでの取り組みで最も知られている。

Pony.aiはカリフォルニア州フリーモントとアーバイン、中国の広州でライドシェアをテストしてきた。2019年にPony.aiの自動走行システムとViaの配車プラットフォームを搭載したHyundaiのクロスオーバー電動自動走行車両Konaが顧客を乗せて公道走行を開始した。BotRideという名称のロボタクシーサービスはドライバーレスではなく、常にセーフティドライバーが運転席にいた。BotRideの試験は2020年1月に完了した。

Pony.aiはその後、PonyPilotという一般向けのロボタクシーサービスをアーバイン地区で開始した。新型コロナウイルスパンデミックが世界に広がったため、Ponyはロボタクシーサービスの対象を人から荷物へとシフトさせた。2021年4月にPony.aiはeコマースプラットフォームのYamibuyと、アーバイン地区の顧客への自動走行ラストマイル配達の提供で提携したと発表した。新たな配達サービスは、新型コロナパンデミックをきっかけとするオンライン注文の急増に対処する追加の能力を提供すべく立ち上げられた、とPony.aiは当時述べていた。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Pony.ai自動運転カリフォルニア中国ロボタクシー

画像クレジット:Pony.ai

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

台湾Gogoroが中国でのバッテリー交換ネットワーク構築で大手二輪メーカー2社と提携

インド最大の二輪メーカーとの提携を発表してから1カ月もたたずして、Gogoro(ゴゴロ)は新たにグローバル展開計画における大きな一歩を踏み出す。今回のマーケットは中国だ。交換可能なスマートバッテリーを含め、Gogoroのテクノロジーが中国最大のバイクメーカーの1社、Dachangjiang Group (DCJ)と電動二輪トップ企業の1社、Yadeaが製造するスクーターに使用される。DCJとYadeaはそれぞれのブランドの新しい二輪車を開発する合弁会社に5000万ドル(約55億円)を出資する。製造する二輪はバッテリー、ドライブトレイン、コントローラー、他の部品を含めGogoro Networkを活用する。

関連記事:電動スクーターの台湾Gogoroが世界最大規模のインド二輪メーカーHero MotoCorpと提携

「AT&Tを作るのにDCJとYadeaがタグを組むようなものだと考えてください」とGogoroの共同創業者でCEOのHorace Luke(ホレイス・ルーク)氏はTechCrunchに語った。「Gogoroは2社の二輪を動かすテクノロジーになります。当社がEricssonだと考えてください」。

2021年4月にGogoroとHero MotoCorpは、インドでバッテリー交換ネットワークを構築し、電動二輪車を製造するための戦略的提携を発表した。Gogoroのインドと中国における新しい取引は、2015年に最初のGogoro Smartscooterを立ち上げて以来、同社が取ってきたグローバル戦略で最大のものだ。

Gogoroの特徴的なテクノロジーである交換可能なバッテリーは、歩道に設置できるほど十分小さい充電ステーションでライダーが新しいものに交換することができる。Gogoroが拠点を置く台北市では交換ステーションは見慣れた光景で、通常は店先、あるいはガソリンスタンドや駐車場の横に設置されている。Gogoroのバッテリーは交換可能であるため、それらバッテリーを使う電動二輪を充電するために駐輪させる必要はない。これは「走行距離の懸念」、充電が必要になる前にどれくらい走行できるか、という消費者の心配を解決する。最大の課題はGogoro Networkで動く二輪のライダーに利便性を提供できるよう、十分な交換ステーションを設置することだ。

DCJとYadeaの合弁会社は試験を行う杭州でまず事業展開し、2022年に他の都市にも拡大する。車両の発売と価格については2021年後半に発表される。

中国政府は2020年に、発売される新車両は2035年までに化石燃料ではなく「新しいエネルギー」を使用しなければならないという新規則を導入した。DCJとYadeaは合計で中国の都市の半数以上の358都市、4万7000もの小売業者をカバーしている。これは、合弁会社がひとたび杭州外に事業を拡大すれば、急速に成長することができることを意味する、とルーク氏は話した。

Gogoroは自らを他の電動モビリティ企業のためのターンキーソリューションと位置づけ、自社ブランドは充電インフラと評判を獲得するための方法だったとしている。台湾では、Gogoroの電動二輪が月間売り上げの4分の1近くを占めていて、交換可能バッテリーはSuzuki Taiwan、Yamaha、Aeonといった他のメーカーにライセンス提供される前に最初にGogoro Smartscooterで使用された。

「プラットフォームがうまくいくことを証明するための回り道のようなものでした」とルーク氏は話した。「我々は自前の車両や小売チェーンを構築しなければならず、いま顧客40万人とステーション2000カ所をサポートしています。その証明となったケースによりこうした大手パートナーとの協業が可能となりました。ですので、大手企業が当社にデータを求めたとき、ユニットエコノミクス、耐性、ステーション、どう機能するかを示すことができました。何年もかかりましたが、最大の方法で可能にする準備をしていました」。

DCJは年間約200万台の二輪を出荷していて、合弁会社で初めて電動二輪を製造する。「DCJは電動へ移行するテクノロジーを探していて、電動二輪へのトランジッションを始めるのに当社のプラットフォームが最適であると証明するために我々は2年近く協議してきました」とルーク氏は述べた。

Yadeaは2020年に1000万台超の電動二輪を販売したが、リチウムイオンバッテリーの代替を求めていた、と同氏は付け加えた。Aimaとともに、Yadeaは中国で最も知られている安価な電動二輪ブランドの1つで、その一方でNiuがプレミアムマーケットを独占している。

Gogoroは2011年の創業以来、4億8000万ドル(約524億円)を調達した。投資家にはHTC、Temasek Holdings、そして元米副大統領のAl Gore(アル・ゴア)氏によって共同設立されたグリーンテック投資会社Generation Investment Management (GIM)が含まれる。

発表資料でGIM会長のゴア氏は「Gogoroの中国におけるYadea、DCJとの提携は、すでに展開されているインドでのHero MotoCorpとの協業の上に構築されました。今回の提携は世界の二輪リーダーがスマートバッテリー交換でアジアにおける持続可能性の革命に火を付けるという明確なサインを発信するものです」。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Gogoroバッテリー中国電動バイク

画像クレジット:Gogoro

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(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi

中国のインディーゲームを世界へ発信、明の鄭和にちなんだ「Westward」が33億円のデビューファンド調達を計画

三国時代の遺跡と今日の製造業で知られる中国の都市「合肥」。この街で、無骨な美学とダークなストーリー展開にファンも多い欧米のロールプレイングゲームを制作する小さなスタジオを発見したMaxim Rate(マキシム・レイト)氏は胸を躍らせた。

「デザインとCGが実にすばらしく、中国で作られたものとは感じさせません」と同氏は話す。

合肥のこの例のような、創業間もない中国のスタジオを見つけ出し、彼らが国際的なプレイヤーを獲得できるよう支援することがレイト氏の使命である。中国の規制当局がゲームパブリッシングに関する規則を強化しライセンスの取得を困難にしているため、小規模なスタジオの多くが苦戦を強いられている。2020年以降、Apple(アップル)は中国当局の要請により中国のApp Storeから何千もの非正規のゲームを引き上げている。このような状況下、若手開発者たちは自国以外の地域に目を向けるようになったのだ。

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「問題は、こういったスタートアップに海外展開の経験がないということです」とレイト氏。

自身も熱心なゲーマーである同氏は、2020年中国のクロスボーダー決済会社を辞めた後、中国のゲームを海外に展開するためインキュベーターと投資を兼ねた会社を立ち上げた。Westward Gaming Ventures(ウェストワード・ゲーミング・ベンチャーズ)と名づけられたこの会社は、明の時代に国の支援を受けて「西海」への航海に乗り出した中国の武将であり探検家でもあった鄭和を着想源としている。

TechCrunchのインタビューに応じた同社は、デビューファンドとして2億元(約33億円)の資金調達を計画していると話している。1スタジオあたり200万〜400万元(約3300万〜6600万円)を目安に今後3年間で資金を投入する予定で、現在幅広いジャンルの20~30チームと交渉中だという。

今回設立されるファンドは「Qualified Foreign Limited Partners(QFLP)」と呼ばれており、同氏によるとこれにより初めて外国人投資家が米ドルおよびユーロで中国のゲーム会社に直接投資できるようになる。QFLPのライセンスを保有している機関は限られており、Westwardはライセンスを保有していないものの、中国の大手金融コングロマリットのプライベートエクイティ部門と提携することで外国人による直接投資の正当性を獲得している。同金融コングロマリットは現時点では企業名を公表していない。

このような複雑な規制を乗り越えるため、Westwardは近年中国と海外のゲーム会社によって設立された最大規模の合弁事業で法的および財務的プロセスを監督したアドバイザーなどからの協力を得ている。企業名は明かされていないが、このパートナーシップも外国企業が中国のゲーム合弁事業の過半数の株主となった初めてのケースである。

中国では付加価値サービスなどの機密性の高い分野への外国投資が制限されているため、多くの企業は複雑な海外法人を設立して海外からの資金調達を行っている。こういった制限により、資金に乏しいスタジオがグローバル市場への進出を支援してくれる外国人投資家を獲得することが難しくなってしまい、結果としてTencent(テンセント)やByteDance(バイトダンス)のような中国の大手企業に買収されるか支援を受けるかという2択を迫られることになる。

中国ゲームの台頭

中国の独立系ゲーム会社が海外資本を獲得するためのハードルを下げるということだけがWestwardの目的ではない。海外展開に向けて入念に準備を整えるというのも同社の仕事である。

「中国のゲームスタジオは規模の大小にかかわらず、海外に進出する際にはユーザー獲得の術として広告に大きく依存していました。ゲームが軌道に乗ることもありましたが、その理由が分からずただテストを続けていました。失敗したスタジオはそのまま諦めてしまうこともあります」とレイト氏は話す。

ゲームの海外展開とは、翻訳して公開ボタンを押し、Facebookで広告キャンペーンを展開するだけでできるような単純なことではない。

そのゲームがRPGなのか、ターゲットとなるユーザーはカジュアルそれとも本格的なプレイヤーなのか、グラフィックはどうするのかなどゲームの開発初期段階に関わり、ゲームのポジショニングをサポートするというのがWestwardの計画だ。また開発者に対しては、ワークスペースの提供、技術支援、マーケティングやローカライズのノウハウの提供、パブリッシャーとの連携、海外での運営支援なども行う予定である。

画像クレジット:Westward Gaming Ventures

投資後のサポートを提供するため、Westwardは同社自身も本拠地としている深セン市にあるゲームのインキュベーター、V+ Gaming Society(V+ゲーミング・ソサエティ)と提携した。

地政学的な緊張が高まるにつれ、中国のテック企業は欧米においてますます多くの課題に直面している。自らを「グローバル企業」と呼ぶ企業も多く、中国のルーツを完全に否定することさえも少なくない。

しかしWestwardは、同社が制作を支援するゲームが非中国のゲームであるなどと言って装う必要はないと考えている。「本当に良いゲームなら、それがどこで制作されたかなんて事はほとんどのプレイヤーは気にしません」。

「むしろ、海外のプレイヤーにも理解できるような中国文化の要素がゲームに含まれていたら良いのではと考えています」。

レイト氏、Edward He(エドワード・ヒー)氏とともに同社のパートナーを務めるAmy Ho(エイミー・ホー)氏によると「中国的」であると同時に文化的な境界線を超えることができた数少ない中国のゲームの1つが「Chinese Parents」だという。このシミュレーションゲームはユーザーに中国での子育てを体験させるというもので、世界的なヒット作となっている。

レイト氏がベンチマークとしたのは、20〜30年前に輸出が開始された日本のゲームだという。「日本的」な精神が宿りながらもグラフィックやゲームデザインは「グローバル化」されたものだ。

Tencentの他にも、新進気鋭のスタジオであるLilith(リリス)やMihoyo(ミホヨ)など、すでに世界的に成功した中国メーカーからのタイトルは存在する。以前はSteam(スチーム)の中国ユーザーの多くが海外タイトルの中国語版を急ぐよう求めていたが、今では欧米のユーザーが中国ゲームの英語版を要求することも珍しくないとレイト氏は話している。

政治的な問題よりも、特に小規模なスタジオにとっては「現地の個人情報保護法を遵守しながら、製品の新バージョン制作に必要なキーデータをいかにして収集するか」が大きな課題だとホー氏はいう。

Westwardは資本の50~70%を中国の機関投資家が占めることになるだろうと想定している。中国からの投資があれば、嫌でもセンサーシップの問題が台頭する。ホー氏はWestwardがスタジオにリソースと資本を提供する一方で、スタジオが投資家の影響を受けないように独立性を確保することに努めると述べている。

うまく進めば、同社のサポートにより中国と世界の文化交流が促進されることになるかもしれない。北京は同国のソフトパワーを輸出しようと試みているが、ゲームがそのパイプとなってくれるのではとレイト氏は考えている。貿易戦争が続く中、中国企業に外国人が出資すれば、中国の「ブランド」にも良い影響を与えるかもしれないと、同氏は期待を膨らませている。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Westward中国ゲームインキュベーター

画像クレジット:Westward Gaming Ventures

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(文:Rita Liao、翻訳:Dragonfly)

中国Xpengが展開するLiDARを利用した自律運転EV

Elon Musk(イーロン・マスク)の、LiDAR(Light Detection and Ranging、光による検出と測距)に依存する企業は「破滅する」という発言は有名で、実際Tesla(テスラ)は、自動運転機能は視覚認識で成り立つという信念の元、レーダーを撤去しようともしている。しかし、中国のXpeng(シャオペン、小鵬汽車)は異なる考えのようだ。

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2014年に設立されたXpengは、中国で最も有名な電気自動車のスタートアップ企業の1つで、設立からわずか6年で上場を果たしている。同社はTeslaと同様、自動化を自社戦略の重要な課題と考えているが、Teslaとは異なり、レーダー、カメラ、Alibaba(アリババ)が提供する高精度地図、自社開発のローカリゼーションシステムの他、さらに最近ではLiDARを組み合わせて道路状況を検知、予測している。

Xpengの自律走行研究開発センターを統括するXinzhou Wu(ウー・シンヂョウ、吳新宙)氏は、TechCrunchのインタビューに応じ「LiDARは、子どもやペットなどの小さな動く障害物や、運転中の誰もが恐れる他の歩行者やバイクに対しても正確に距離を測定し、走行可能な空間を3Dで提供してくれます」と話す。

「LiDARに加えて、位置や速度を示す通常のレーダー、基本的なセマンティック(意味的)な情報を大量に持つカメラがあります」とウー氏。

Xpengは、2021年下半期に納車を開始する量産型EVモデルP5にLiDARを搭載する。この車はファミリーセダンで、Alibabaのマップに掲載された中国の高速道路や一部の都市の道路を、ドライバーが設定したナビに基づいて走行することができるようになる。LiDARを搭載していない旧モデルでは、すでに高速道路での運転アシストが可能だ。

「Navigation Guided Pilot(NGP)」というこのシステムは、TeslaのNavigate On Autopilotをベンチマークとしているとウー氏は話す。例えば車線変更、ランプへの進入、退出、追い越しの他、中国の複雑な道路状況ではよく観られる突然の割り込みに対する操作などを、すべて自動的に行うことができる。

「都市部は高速道路に比べて非常に複雑ですが、LiDARと精密な知覚能力があれば、基本的に3層の冗長性を持ったセンシングが可能になります」。

ADAS(先進運転支援システム)であるNGPでは、ドライバーはハンドルから手を離さず、いつでも車両をコントロールできる状態である必要がある(中国の法律では、ドライバーが路上でハンドルから手を離すことは認められていない)。Xpengの野望は、2~4年後にドライバーを排除すること、すなわちレベル4の自律性に到達することだが、実際の導入は規制次第とのことだ。

「しかしそれについてはあまり心配していません。中国政府はテクノロジーの規制に関して、実は最も柔軟だと思っています」とウー氏は話す。

LiDAR陣営

マスク氏がLiDARを嫌うのは、レーザーを使ったリモートセンシング手法のコストが高いことにある。ウー氏によると、初期の段階ではロボタクシーの上で回転するLiDARユニットに10万ドル(約1090万円)ものコストがかかっていたという。

「今では、少なくとも2桁は低くなっています」と話すウー氏。ウー氏は米Qualcomm(クアルコム)に13年在籍した後、2018年末にXpengに入社し、同社の電気自動車の自動化に取り組んでいる。現在は、Xpengの中核である、500人のスタッフを擁する自律走行研究開発チームを率いており、このチームの人数は2021年末までに倍増するという。

LiDARを搭載した新型セダンについては「次は、エコノミークラスをターゲットにしています。価格的にはミッドレンジと言えるでしょう」とウー氏は話す。

Xpengの車両に搭載されるLiDARセンサーは、深圳に本社を置くドローン大手のDJI(ディー・ジェイ・アイ)の関連会社であるLivox(ライボックス)が提供する。Livoxはより手頃な価格のLiDARが売りで、Xpengの本社かクルマで約1.5時間の広州を拠点とする。

関連記事:テスラの中国ライバルXpengがDJI系列LivoxのLiDARセンサーを採用へ

LiDARを採用しているのはXpengだけではない。Xpengのライバルで、より高価格帯の市場をターゲットにしている中国のNIO(ニーオ)は、2021年1月にLiDARを搭載したクルマを発表したが、このモデルの生産開始は2022年になる予定である。最近では、中国の国有自動車メーカーBAIC(北汽集団)の新しいEVブランドであるARCFOX(アークフォックス、極狐)が、Huawei(ファーウェイ)のLiDARを搭載した電気自動車を発売すると発表した。

マスク氏は最近、Teslaがカメラと機械学習による純粋なビジョンに近づくにつれ、製品からレーダーを完全に撤去するかもしれないと示唆している。マスク氏はTeslaの古いソースコードのコピーをXpengが持っていると主張しており、Xpengに好意的な感情を抱いていない。

2019年、Teslaは同社のエンジニアであったCao Guangzhi(ツァォ・グゥァンヂー、曹廣志)氏に対し、企業秘密を盗んでXpengに持ち込んだとする訴訟を起こした。Xpengは不正行為を繰り返し否定している。ツァォ氏は現在、Xpengに在籍していない。

供給の課題

Livoxは、ドローンメーカーであるDJIに「育てられた」独立した事業体であると主張しているが、ある関係者の話では、Livoxは別会社という位置づけの「DJI内のチーム」にすぎないという。DJIとの距離を主張する意図は、DJIが米国政府のエンティティリストに登録されているためだ。Huaweiを含む多数の中国ハイテク企業の主要サプライヤーがエンティティリストにより排除されている。

さらにXpengは、NVIDIA(エヌビディア)のXavierシステムオンチップ・コンピューティングプラットフォームや、Bosch(ボッシュ)のiBoosterブレーキシステムなどの重要部品を使用している。世界的に見ても、半導体の供給不足は続いており、自動車の幹部たちはチップにさらに依存するようになる自動運転車の将来のシナリオに悩み始めている。

関連記事:Google、Intel、Dell、GMなどテックと自動車業界のCEOたちが世界的なチップ供給不足問題で米政府と討議

Xpengはサプライチェーンのリスクを十分に認識しているようだ。「第一に、安全性は非常に重要です。安全性の課題は国家間の緊張よりも重要です。新型コロナウイルス感染症に影響を受けているサプライヤーもありますし、複数の供給路を検討しておくことは、私たちが非常に重要視している戦略の1つです」とウー氏は話す。

ロボタクシーの攻勢

Xpengは、Pony.ai(ポニーアイ)や広州のWeRide(ウィーライド)など、中国で急増している自律走行ソリューション企業と手を組むこともできた。しかし、Xpengは彼らの競争相手となり、自社で自動化に取り組み、人工知能のスタートアップ企業を打ち負かすことを誓ったのだ。

EVメーカーとロボタクシーのスタートアップ企業の関係について、ウー氏は「自動車用の大規模なコンピューティングが手頃な価格で利用できるようになり、LiDARの価格が急速に低下している現在、この2つの陣営に大差はありません」。

「(ロボットタクシー会社は)量産車の開発を急ぐ必要があります。2年後にはすでに量産可能な技術になり、ロボタクシー企業の価値は今よりもずっと低くなってしまうと思います」とウー氏は続ける。

「私たちは、自動車産業に求められる安全性と検査の基準を満たす技術の量産方法を知っています。これは、生き残りを左右する非常に高いハードルです」。

Xpengにはカメラのみに頼る計画はない。LiDARのような自動車技術の選択肢がより安価で豊富になってきた今、なぜそれを利用せずにカメラのみにこだわる必要があるのか、とウー氏は問いかける。

「私たちは、マスク氏とTeslaに敬意を払い、彼らの成功を願っています。しかし、(Xpengの創業者である)Xiaopeng(何小鵬)の有名なスピーチにあるように、私たちは中国で、そして願わくば他の国でも、さまざまな技術で競争していきます」。

5Gは、クラウドコンピューティングやキャビンインテリジェンスと一体になって、Xpengの完全自動化の実現を加速させることになると思われるが、ウー氏は5Gの利用法についてはあまり詳しく語らなかった。無人運転が可能になり、ドライバーがハンドルから手が離すことができるようになれば、Xpengは車に搭載される「多くのエキサイティングな機能」を探求するだろう。すでにノルウェーで電気SUVを販売しているXpengは、さらなるグローバル展開を目指している。

カテゴリー:モビリティ
タグ:XpengLiDAR中国自律運転電気自動車ロボタクシー

画像クレジット:Xpeng

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(文:Rita Liao、翻訳:Dragonfly)

上海モーターショーで注目を集めていたEVたち

2021年で19回目を迎えた上海モーターショーでは、電気自動車やハイテク自動車が数多く出展された。中国、欧州、米国の自動車メーカーが集い、SAIC(上海汽車)、General Motors(ゼネラルモーターズ)、Liuzhou Wuling Motors(柳州五菱汽車)のジョイントベンチャーによる低価格志向の​​Wuling Hong Guang(五菱宏光)Miniから、高級車のMercedes(メルセデス)EQSまで、あらゆる価格帯の最新製品が披露されている。

一部の自動車メーカーは、規制当局が許可しさえすれば自律走行を実現できることを示唆する表現を用いて、ドライバー支援システムの機能をアピールした。ただし明確にしておくと、これらのシステムは自律的ではない。他の自動車メーカーはこの主張には触れなかったが、自社の車のソフトウェア機能を公表。この動きはTesla(テスラ)の人気が高まって以来続いているものだ。

このショーで我々の目を引いたものを本記事で紹介しよう。TechCrunchのRita Liaoによる中国の自動車に関する記事もお見逃しなく。Teslaが中国において自社の電気自動車の品質に関する苦情が広がる中、中国の消費者に合わせた車両の開発に取り組んでいることを伝えている。

関連記事:批判が高まる中、テスラが中国向けの新車両を検討中

Audi(アウディ)

Audiは2021年、中国のパートナー企業であるFAW(第一汽車) やSAICとともにスポットライトを浴びた。3社は、Audi A6 e-tronコンセプトカー、Audi Q5Lのアップデート、Audi A7L、まだベールに包まれているSUVスタディAudi concept Shanghai(コンセプトShanghai)など4つのワールドプレミアを発表している。

Audi Q5L SUVは、FAW-VW(FAW-フォルクスワーゲン)ジョイントベンチャーの長春工場で引き続き製造される。一方、2021年内に生産開始予定のAudi A7Lリムジンは、SAIC Audi(SAICアウディ)ジョイントベンチャーが製造。中国市場向け上海製モデルとなるAudi A7Lには、適応型エアサスペンション、後輪ステアリング、四輪駆動などの機能が搭載される。

A6 etron

展示のAudi A6 e-tron(画像クレジット:Wu Kai/VCG via Getty Images)

A6 etronコンセプトは、馴染みのあるA6とは趣を異にする。このオール電気自動車はAudiの「プレミアムプラットフォームエレクトリック(PPE)」で構築されており、同プラットフォームは2022年後半に始まる同社のCおよびBセグメント生産車の基盤アーキテクチャになる予定だ。

Audi A6 e-tronコンセプトはA6と同じ要素も共有する。広いクーペルーフアーチと短いオーバーハングを備えたスポーツバックとして設計され、22インチ(約56cm)の大径ホイールがその外観を仕上げている。A6 e-tronコンセプトは、合計350kWの出力と590ポンドフィート(約973Nm)のトルクを発揮する2つの電気モーターを装備。その充電アーキテクチャはPorsche Taycan(ポルシェ・タイカン)と同じ800ボルトを提供し、WLTP基準で434マイル(約700km)の航続距離を実現する。

BYD

Warren Buffet(ウォーレン・バフェット)氏が出資するBYD(比亜迪)は、Teslaと高いセールスを競い合い「Han(漢)」シリーズの販売台数は2020年の発売以来着実に増加している。

BYD Han

展示のBYD Hanの車両(画像クレジット:VCG/VCG via Getty Images)

BYDのHanフラッグシップシリーズには、電気自動車3台とハイブリッド車1台が含まれている。中国の漢王朝にちなんで名付けられた高級電気セダンシリーズは、2020年販売を開始した。BYDの長距離EVは約375マイル(約600km)走行可能で、同社によると、その「ブレード」バッテリーパックは従来型のバッテリーパックよりも安全性が高いという。

Geely Holdings Inc.(吉利控股集団)

中国の自動車コングロマリットである同社は2021年の上海モーターショー会場のかなりの部分を占め、最新のものを含む複数のブランドを展示。Polestar(ポールスター、極星)、Volvo Cars(ボルボ・カー)、Lynk&Co(リンク・アンド・コー、領克)、Geometry(几何)、そして新しいZeekr(極氪)ブランドがEVを出展している。

Geometry Pro

2021年上海モーターショーで発表された几何A-Pro(画像クレジット:Geometry/Geely Holdings)

Geelyのマスマーケットブランドは、そのGeometry A車両の新しい拡張バージョンを発表した。「Geometry A Pro」と呼ばれる同モデルは、150kWのバッテリーを搭載し、1回の充電で600km(372マイル)走行できる。同ブランドは2019年にローンチし、これまでに3モデルを展開。AモデルとCモデルが中国市場で販売されている。グローバルパートナーの選定に向けて、Geometry Cの輸出を年内に開始する計画だ。

Lynk & Co. 05

画像クレジット:Geely holdings/Lynk & Co.

同社はLync&Co.05のプラグインハイブリッド型の最新版を発表した他、年内に公開される電動パワートレイン搭載のLync&Co.製品で採用するScalable Product Architecture(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャ、SPA)も初めて披露した。

Polestar 1 Special Edition

2021年上海モーターショーでのPolestarのラインナップ(画像クレジット:Polestar/Geely Holdings)

Geelyが所有するVolvoのEVパフォーマンスブランドの展示では、ハイブリッド電気自動車Polestar 1とオール電気自動車Polestar 2の他、マットゴールドの2021年スペシャルエディションが注目を集めた。同車両がオール電気ではなくハイブリッドであることは確かだが、この特別バージョンは特筆に値する。

同スペシャルエディションは、カーボンファイバー強化ポリマー製の軽量ボディ、純正トルクベクタリング機能を備えたツインリア電気モーターに加え、曙ブレーキや調節可能なオーリンズダンパーなどの高性能コンポーネントを搭載。パワートレインは619HP、738ポンドフィート(約1000Nm)を引き出し、WLTP基準による純電気航続距離は60マイル(97km)。特注のマットゴールドカラーがエクステリアとブレーキキャリパーに施され、ブラックホイールを装着する。

Volvo XC40 Recharge

Volvo XC40の車両、2021年4月20日の上海モーターショーで公開(画像クレジット:Hector RETAMAL / AFP via Getty)

このスウェーデンのブランドは、2030年以降の新車販売をすべて純粋なバッテリー式電気モデルにする計画で、同社初のオール電気自動車XC40 Rechargeを本ショーに出展。同社の次のEVはC40になることを発表している。

Zeekr 001

Zeekrは2021年上海モーターショーで同ブランド初モデルの電気自動車を発表(画像クレジット:Zeekr/Geely Holdings)

Zeekrは同ブランドのフラッグシップであり、初モデルとなるEV、Zeekr 001を披露した。ブランド名Zeekrは、Generation Z(ジェネレーションZ)のZと「geek(マニアックな技術や知識を有することを表す)」を組み合わせたもので、ソフトウェアを前面に押し出すことを意図している。

Zeekrによると、同ブランドの車はオンラインや中国各地のエクスペリエンスセンターでも販売され、最終的には欧州や北米にも拡大する計画だという。Zeekr 001にはデュアルモーターが搭載されており、4つの車輪すべてに動力を供給。566ポンドフィート(約767Nm)のトルクを提供し、0mphから60mphまでの加速は4秒未満。1回の充電による航続距離の推定値は700 km(434マイル) を超えるとしている。

Zeekrブランドは今後5年間で5車種を市場に投入する計画で、そのすべてがGeely Holdingsの純電気SEAアーキテクチャをベースに開発される。

Mercedes(メルセデス)

このドイツの自動車メーカーは、上海モーターショーでEQBとEQSをはじめとする数車種を披露。いずれも同社の成長中のEQブランドの一部である。

EQB

メルセデス・ベンツの新しいEQB(画像クレジット:Mercedes-Benz)

同社は今回のショーで、コンパクトなマスマーケット向けのオール電気SUVを発表した。内装を中心にGLBを思わせる同車種は、2021年中国で発売される予定だ。欧州向けのグローバルモデルをハンガリーで生産し、2022年には米国で発売を開始する。

内燃エンジンGLBのスタイルを受け継いでいるのは一目瞭然だが、EQBのエクステリアの差別化要素として、前後に配される連続したライトストリップなど、電気EQブランドで共通するデザインが採用されている。アルミホイールは最大20インチ。グレードによってはローズゴールドやブルーの装飾トリムが施される。メルセデスは、パワートレインや航続距離、価格の詳細についてはまだ明らかにしていない。

EQS

Mercedes EQS 580 4MATIC(画像クレジット:Mercedes-Benz)

メルセデス・ベンツは上海モーターショーに先立って、自社ブランドEQのワールドプレミアを開催した。EQSは、電気だけで動く高級セダンとしては初めて、同社の新ブランドEQとして発売される。米国市場に最初に導入されるモデルは、329HPのEQS 450+と516HPのEQS 580 4MATIC。これは中国市場にとっても重要な車両となるだろう。

Sクラスのオール電気版となるこのモデルには、テクノロジーが詰め込まれている。例えば、車には350個のセンサーが搭載されており、距離、速度、加速度、照明条件、降水量、気温、座席の利用状況、ドライバーの目の動き、同乗者の会話などを記録する。TechCrunchはEQSを試す機会も得た。その時の印象はこちらの記事で紹介している。

関連記事:【レビュー】2022年のメルセデス・ベンツEQSはラグジュアリーEVの未来に賭ける、ただし賭金は高い

NIO(上海蔚来汽車)

Nioは、1月に発表されたET7の詳細を明らかにした。同社はまた、合計100カ所の自社ブランドの電力交換ステーションと、500カ所の充電ステーションおよび1万を超える充電設備を含むその他のインフラを中国の8つの省で展開すると発表した。

Nio ET7電動セダン、2021年4月19日月曜日の2021年上海モーターショーにて(画像クレジット:Qilai Shen/Bloomberg via Getty Images)

Nio ET7

ET7はNioの電気自動車のフラッグシップセダンだ。同社はこの車のインテリアを正式に発表した。インテリアにはストームグレー、サンドブラウン、エーデルワイスホワイトの3色のアースカラーがあしらわれている。同社は、既存のクラウドホワイト、スターグレー、ディープ・ブラック、サザンスターに加えて、サンライズ・ベージュ、ルミナス・オレンジ、アークティック・グリーンなど、可能性のあるエクステリアカラーについても若干の情報を提供した。

ET7の150kWhバッテリーは、中国のNEDCテストプロトコルにおいて621マイル(999km)という桁外れの航続距離を実現している。NEDCのテストは楽観的な推定値を出すことで知られており、欧州のWLTPテストに比べてはるかに少ない可能性は高いだろう。

Nioはまた「高速道路、都市、駐車場、バッテリー交換などのシナリオで、リラックスできる安全なポイント・ツー・ポイントの自動運転体験を段階的に提供する」と主張する、自動運転技術NIO Autonomous Driving(NAD)についても強調した。その表現は、この技術が野心的なもので、依然としてドライバー支援システムのカテゴリー下に属することを示唆している。加えて、中国の規制では、ドライバーがハンドルを握った状態で常にコントロールできることが求められている。

Nioは今後数カ月以内にET7の生産を開始し、2022年第1四半期に発売する予定だ。

SAIC-GM(上汽通用)

SAIC−GM−Wuling Automobile(上汽通用五菱汽車股份有限公司)は、SAICとGeneral Motors、そしてLiuzhou Wuling Motorsのジョイントベンチャーで、5000ドル(約54万円)を下回る低価格帯のHong Guang Mini EVを発表した。

Hong Guang Mini EV

Wuling Hong Guang Mini電気自動車、SAIC-GM-Wuling Automobile製(画像クレジット:Zhe Ji/Getty Images)

本稿のメイン写真にも採用されているWuling Hong Guang Mini EVは、2021年中国で最も人気を集めたEVの1つで、2月だけで5万7000台以上が販売され、価格は4230ドル(約46万円)となっている。このフェザー級EVは、最高効率かつ少ない構成部品で生産される。広西チワン族自治区の麗水工場では毎分1台の新車が生産されており、1台が完成するまでわずか4時間ほどだ。最も基本的なモデルは、AからBへのユーティリティ用に開発されたもので、インテリアもフード下もシンプルで機能的な車両に仕上がっている。

この愛らしいMiniの滑らかな走りは時速62マイルを超えることはなく、1回の充電による航続距離は約75〜110マイル(121~177km)で、市街を短時間移動するのに最適だ。5600ドル(約60万円)のモデルへのアップグレードにはエアコンとパワーウィンドウが含まれており、これはHVAC換気システムとシンプルなラジオを備えた標準モデルの簡素な性質を示している。

Toyota(トヨタ)

この日本の自動車メーカーは、2025年までにToyota bZブランド7車種を含む15車種のオール電気自動車を全世界で発売することを発表、新しいbZブランドは上海モーターショーでデビューした。

Toyota bZ46

Toyota bZ4X、2021年4月20日の第19回上海モーターショーで展示(画像クレジット:Hector RETAMAL / AFP via Getty Images)

Toyota bZ4Xは技術的には単なるコンセプトに過ぎないが、その重要性は無視できない。上海モーターショーで発表されたこのコンセプトカーは、トヨタの新しいオール電気自動車ラインアップの幕開けとなる。

トヨタの新しいbZブランド(beyond Zeroの略)は、サイズやデザインの多様なバリエーションで使用できる専用の基盤プラットフォームを備える。同社によると、このような幅広い選択肢を単独で用意するのは難しいため、さまざまな分野の専門知識を持つパートナーと共同でシリーズを開発しているという。トヨタはスバルにbZ4Xの開発を依頼し、BYD、ダイハツ、スズキもbZシリーズのパートナーだ。

トヨタはbZ4Xを日本と中国で生産する計画で、2022年半ばまでに世界中で販売を開始したいとしている。

Volkswagen(フォルクスワーゲン)

このドイツの自動車メーカーは、上海モーターショーを通じてIDブランドにおける3台目の電気自動車を発表した。この製品は中国市場向けに特別に設計されている。

VW ID 6

Volkswagenは2021年上海モーターショーで全電動式のID.6 CROZZとID.6 Xを初公開(画像クレジット:Volkswagen)

VW ID.6には、中国北部で製造されるID.6 CROZZと南部で製造されるID.6 Xの2つのバージョンが用意されている。ID.6はVWの最もゆとりのあるIDブランドモデルで、最大7名まで乗車可能だ。この車両は4つの特徴的な構成要素を持ち、航続距離は最大588 km(中国NEDC)となっている。

Xpeng(小鵬)

Xpengは上海モーターショーで3台目の車両を発表したが、その1台はLiDAR(ライダー)を使って高度なドライバー支援システムの能力を高めることを目指すものだ。

Xpeng P5

XPengのP5電気自動車、2021上海モーターショーにて(画像クレジット:Qilai Shen/Bloomberg via Getty Images)

Xpeng P 5はこの中国の自動車メーカーにとって3台目の車種だが、LiDARセンサーを内蔵して生産されるのは初めてだ。同社によると、セダンの前部の両側に組み込まれた2つのセンサーは、天候や暗闇に関係なく、歩行者、他の車、自転車、スクーターなどを検知して識別することができる。

Xpengの会長兼CEOのHe Xiaopeng(何小鵬)氏は、P5は同社史上最も先進的で技術的に野心的なモデルだと語った。

LiDARセンサーとソフトウェアを組み合わせることで、高度なドライバー支援システムを実現し、完全自動化に向けて前進させるという。センサーとソフトウェアシステムは堅牢だが、車両は自動運転ではない。TechCrunchのLiaoが報じているように、XpengのNavigation Guided Pilot(NGP) システムはTeslaのNavigate On Autopilotをベンチマークとしており、自動的な車線変更、ランプの出入り、他の車両の追い越し、そして中国の複雑な道路状況でよく見られる、別の車の急なカットインを操作することができる。しかし、ドライバーはハンドルを握ったままでいなければならない。2〜4年後にレベル4の自律走行を実現するという目標を掲げているが、現実的な推進は規制にかかっている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:電気自動車中国上海

画像クレジット:Zhe Ji/Getty Images / Getty Images

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(文:Kirsten Korosec、Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

アップルの中国におけるスマホ売上回復、ファーウェイは王座を失う

中国におけるHuawei(ファーウェイ)のスマートフォンのライバルが、2020年失ったマーケットシェアを急速に奪い返しつつある。

マーケティングリサーチの企業Canalysの調査報告によると、2021年第1四半期で中国では9240万台のスマートフォンが購入され、トップのVivoは23%、姉妹企業Oppoは22%という僅差で2位になった。米国の制裁でサプライチェーンから重要なチップを失ったファーウェイは、スマートフォンの売り上げも落ち込み3位の16%に終わった。そしてXiaomiとApple(アップル)がそれぞれ4位と5位になった。

前年同期、すなわち2020年第1四半期と比べると、すべての大手スマートフォンブランドの中でファーウェイだけを除く全社がマーケットシェアを伸ばした。Appleの中華圏における売上はほぼ倍増し、2021年3月で終わる3カ月の売上は177億ドル(約1兆9287億円)となった。最新の決算報告によると、これまでのすべての四半期売上の中で断トツだ。

今週行われた決算報告でTim Cook(ティム・クック)CEOは「「iPhone 12ファミリーに対する中国のお客様の反応には特に満足しています。中国では、2020年の第2四半期に他の国よりも早くシャットダウンの段階に入ったことを忘れてはなりません。そのため、この四半期には比較的大きな影響を受けました。その点を考慮して結果を考慮する必要があります」と述べている

ファーウェイのシェアは同じ第1四半期で41%から16%へと落ち込んだが、通信機器大手である同社は主にコスト削減により利益率を上げている。2020年11月には低価格機Honorのラインを売却した

今期はまた、中国のスマートフォン市場が4年ぶりに成長した四半期でもある。Canalysによると、その成長率は27%だったという。

CanalysのアナリストであるAmber Liu(アンバー・リュー)氏は「有力ベンダーは市場トップを目指して競争しており、今期は2020年第1四半期、あるいは2020年第4四半期と比較しても、スマートフォンの発売数が異常に多かった。ファーウェイの制裁とHonorの売却は、消費者とチャネルが代替ブランドに対してよりオープンになる中で、この新しい市場成長の特徴となっています」と述べている。

関連記事:ファーウェイが低価格スマートフォンのHonor事業部を政府系企業などからなるのコンソーシアムに売却

カテゴリー:ハードウェア
タグ:HuaweiApple中国スマートフォンCanalysHonor

画像クレジット:Miguel Candela/SOPA Images/LightRocket/Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

PayPalの中国における野心と苦戦、クロスボーダー決済に注力

過去数カ月、PayPal(ペイパル)は中国での事業拡大に向けて静かに準備してきた。

最近開催された、ダボス会議の中国版Boao Forumで、米国の決済大手PayPalは同社の中国での戦略がAlipayとWeChat Payの複占に挑むというものではないと述べた。その代わり、PayPalはクロスボーダー事業にフォーカスし、中国の小売業者が集金したり、中国の消費者が海外の商品購入の代金を支払ったりするためのゲートウェイを提供する。

これはもちろん儲けが多い分野だ。マーケット調査会社iResearchによると、中国のクロスボーダーeコマースのマーケット規模は2016年の約3兆元(約50兆円)から2021年には6兆元(約100兆円)近くへと急増した。

しかしこの分野は近年競争が激しくなっており、PayPalの参入は遅かったかもしれない、と中国で米テック大手に勤めるとあるマネジャーは話した。この人物はメディアに話すことを許可されていないため、匿名を希望した。

オンラインで商品を販売する中国の輸出業者にとって最大のマーケットプレイスの1つであるAmazonでは、小売業者が集金するための確立されたオプションがすでにある。高額な送金手数料はいうに及ばず、海外での銀行口座開設は小さな中国の輸出業者にとっては難しい。よって、そうした業者は往々にして、米国のPayoneer、中国のPingpongLianlianなどサードパーティの送金決済ソリューションに頼る。こうしたサービスの業者の売り上げを母国の銀行口座に振り込む手数料は比較的少額だ。

中国は外国為替と電子決済に関し、厳格な規定を設けている。しかしPayPalはすでに規制当局の認可を得ている。同社は中国の決済会社の株式を購入したのち、2021年1月に中国でオンライン決済の事業許可を得た初の海外企業となった。

政府からの認可の取得は最初のステップにすぎない。PayPalのアピールは主に、中国のeコマース輸出業者にどんなサービスを提供できるのかによるところが大きい。中国ではAmazonやeBayのような企業が溢れかえっている。

「最終的には、顧客はどのサービスが一番安くて使いやすいかを重視します」と前述のマネージャーは話した。

「中国のクロスボーダー決済ソリューションはプロダクト、スケール、手数料の点ですばらしい成果を上げました。PayPalに可能性があるとは思いません」。

それでも、PayPalアプリの広範なリーチを考えたとき、主要なマーケットプレイスで販売する代わりに自社オンラインストアを構築した輸出業者は、顧客からの支払いを受けるためのツールとしてPayPalを必要とするかもしれない。

クロスボーダー決済に関しては、PayPalはずいぶん前から中国で広く使われてきたTencentのWeChat Pay、Ant GroupのAlipayと競合している。WeChat Pay、Alipayいずれも中国の海外旅行客が中国国内と同様に海外の小売店でも決済できるよう、グローバル提携を積極的に進めてきた。そうした海外商品の国内での買い物では往々にして中国企業のeコマースアプリを使う。それらのアプリでは決済処理業者としてAlipayやWeChat Payを使う傾向にある。

現在保留されているAntのIPO目論見書によると、クロスボーダー決済はAntの主な成長目標にもなっている。同社の2020年上半期の売上高における海外事業の割合は約5%にすぎなかった一方、その大半はクロスボーダー決済によるものだった。目論見書を提出した当時、AntはIPOから得られる純利益の40%、額にして528億香港ドル(約7400億円)をクロスボーダー決済と業者サービス、海外での機能性の拡大にあてる計画を持っていた。

「PayPalがAntよりも安い手数料を提供できるかどうかにかかっています」と以前中国企業のクロスボーダーウォレット部門で働いていた人物は語った。「しかしPayPalは安い手数料では知られていません」。

関連記事:Antの超大型IPOが延期、中国当局がアリババ創業者から事情聴取

カテゴリー:フィンテック
タグ:PayPal中国クロスボーダー決済Ant Group

画像クレジット:Yichuan Cao/ NurPhoto / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi