上海モーターショーで注目を集めていたEVたち

2021年で19回目を迎えた上海モーターショーでは、電気自動車やハイテク自動車が数多く出展された。中国、欧州、米国の自動車メーカーが集い、SAIC(上海汽車)、General Motors(ゼネラルモーターズ)、Liuzhou Wuling Motors(柳州五菱汽車)のジョイントベンチャーによる低価格志向の​​Wuling Hong Guang(五菱宏光)Miniから、高級車のMercedes(メルセデス)EQSまで、あらゆる価格帯の最新製品が披露されている。

一部の自動車メーカーは、規制当局が許可しさえすれば自律走行を実現できることを示唆する表現を用いて、ドライバー支援システムの機能をアピールした。ただし明確にしておくと、これらのシステムは自律的ではない。他の自動車メーカーはこの主張には触れなかったが、自社の車のソフトウェア機能を公表。この動きはTesla(テスラ)の人気が高まって以来続いているものだ。

このショーで我々の目を引いたものを本記事で紹介しよう。TechCrunchのRita Liaoによる中国の自動車に関する記事もお見逃しなく。Teslaが中国において自社の電気自動車の品質に関する苦情が広がる中、中国の消費者に合わせた車両の開発に取り組んでいることを伝えている。

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Audi(アウディ)

Audiは2021年、中国のパートナー企業であるFAW(第一汽車) やSAICとともにスポットライトを浴びた。3社は、Audi A6 e-tronコンセプトカー、Audi Q5Lのアップデート、Audi A7L、まだベールに包まれているSUVスタディAudi concept Shanghai(コンセプトShanghai)など4つのワールドプレミアを発表している。

Audi Q5L SUVは、FAW-VW(FAW-フォルクスワーゲン)ジョイントベンチャーの長春工場で引き続き製造される。一方、2021年内に生産開始予定のAudi A7Lリムジンは、SAIC Audi(SAICアウディ)ジョイントベンチャーが製造。中国市場向け上海製モデルとなるAudi A7Lには、適応型エアサスペンション、後輪ステアリング、四輪駆動などの機能が搭載される。

A6 etron

展示のAudi A6 e-tron(画像クレジット:Wu Kai/VCG via Getty Images)

A6 etronコンセプトは、馴染みのあるA6とは趣を異にする。このオール電気自動車はAudiの「プレミアムプラットフォームエレクトリック(PPE)」で構築されており、同プラットフォームは2022年後半に始まる同社のCおよびBセグメント生産車の基盤アーキテクチャになる予定だ。

Audi A6 e-tronコンセプトはA6と同じ要素も共有する。広いクーペルーフアーチと短いオーバーハングを備えたスポーツバックとして設計され、22インチ(約56cm)の大径ホイールがその外観を仕上げている。A6 e-tronコンセプトは、合計350kWの出力と590ポンドフィート(約973Nm)のトルクを発揮する2つの電気モーターを装備。その充電アーキテクチャはPorsche Taycan(ポルシェ・タイカン)と同じ800ボルトを提供し、WLTP基準で434マイル(約700km)の航続距離を実現する。

BYD

Warren Buffet(ウォーレン・バフェット)氏が出資するBYD(比亜迪)は、Teslaと高いセールスを競い合い「Han(漢)」シリーズの販売台数は2020年の発売以来着実に増加している。

BYD Han

展示のBYD Hanの車両(画像クレジット:VCG/VCG via Getty Images)

BYDのHanフラッグシップシリーズには、電気自動車3台とハイブリッド車1台が含まれている。中国の漢王朝にちなんで名付けられた高級電気セダンシリーズは、2020年販売を開始した。BYDの長距離EVは約375マイル(約600km)走行可能で、同社によると、その「ブレード」バッテリーパックは従来型のバッテリーパックよりも安全性が高いという。

Geely Holdings Inc.(吉利控股集団)

中国の自動車コングロマリットである同社は2021年の上海モーターショー会場のかなりの部分を占め、最新のものを含む複数のブランドを展示。Polestar(ポールスター、極星)、Volvo Cars(ボルボ・カー)、Lynk&Co(リンク・アンド・コー、領克)、Geometry(几何)、そして新しいZeekr(極氪)ブランドがEVを出展している。

Geometry Pro

2021年上海モーターショーで発表された几何A-Pro(画像クレジット:Geometry/Geely Holdings)

Geelyのマスマーケットブランドは、そのGeometry A車両の新しい拡張バージョンを発表した。「Geometry A Pro」と呼ばれる同モデルは、150kWのバッテリーを搭載し、1回の充電で600km(372マイル)走行できる。同ブランドは2019年にローンチし、これまでに3モデルを展開。AモデルとCモデルが中国市場で販売されている。グローバルパートナーの選定に向けて、Geometry Cの輸出を年内に開始する計画だ。

Lynk & Co. 05

画像クレジット:Geely holdings/Lynk & Co.

同社はLync&Co.05のプラグインハイブリッド型の最新版を発表した他、年内に公開される電動パワートレイン搭載のLync&Co.製品で採用するScalable Product Architecture(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャ、SPA)も初めて披露した。

Polestar 1 Special Edition

2021年上海モーターショーでのPolestarのラインナップ(画像クレジット:Polestar/Geely Holdings)

Geelyが所有するVolvoのEVパフォーマンスブランドの展示では、ハイブリッド電気自動車Polestar 1とオール電気自動車Polestar 2の他、マットゴールドの2021年スペシャルエディションが注目を集めた。同車両がオール電気ではなくハイブリッドであることは確かだが、この特別バージョンは特筆に値する。

同スペシャルエディションは、カーボンファイバー強化ポリマー製の軽量ボディ、純正トルクベクタリング機能を備えたツインリア電気モーターに加え、曙ブレーキや調節可能なオーリンズダンパーなどの高性能コンポーネントを搭載。パワートレインは619HP、738ポンドフィート(約1000Nm)を引き出し、WLTP基準による純電気航続距離は60マイル(97km)。特注のマットゴールドカラーがエクステリアとブレーキキャリパーに施され、ブラックホイールを装着する。

Volvo XC40 Recharge

Volvo XC40の車両、2021年4月20日の上海モーターショーで公開(画像クレジット:Hector RETAMAL / AFP via Getty)

このスウェーデンのブランドは、2030年以降の新車販売をすべて純粋なバッテリー式電気モデルにする計画で、同社初のオール電気自動車XC40 Rechargeを本ショーに出展。同社の次のEVはC40になることを発表している。

Zeekr 001

Zeekrは2021年上海モーターショーで同ブランド初モデルの電気自動車を発表(画像クレジット:Zeekr/Geely Holdings)

Zeekrは同ブランドのフラッグシップであり、初モデルとなるEV、Zeekr 001を披露した。ブランド名Zeekrは、Generation Z(ジェネレーションZ)のZと「geek(マニアックな技術や知識を有することを表す)」を組み合わせたもので、ソフトウェアを前面に押し出すことを意図している。

Zeekrによると、同ブランドの車はオンラインや中国各地のエクスペリエンスセンターでも販売され、最終的には欧州や北米にも拡大する計画だという。Zeekr 001にはデュアルモーターが搭載されており、4つの車輪すべてに動力を供給。566ポンドフィート(約767Nm)のトルクを提供し、0mphから60mphまでの加速は4秒未満。1回の充電による航続距離の推定値は700 km(434マイル) を超えるとしている。

Zeekrブランドは今後5年間で5車種を市場に投入する計画で、そのすべてがGeely Holdingsの純電気SEAアーキテクチャをベースに開発される。

Mercedes(メルセデス)

このドイツの自動車メーカーは、上海モーターショーでEQBとEQSをはじめとする数車種を披露。いずれも同社の成長中のEQブランドの一部である。

EQB

メルセデス・ベンツの新しいEQB(画像クレジット:Mercedes-Benz)

同社は今回のショーで、コンパクトなマスマーケット向けのオール電気SUVを発表した。内装を中心にGLBを思わせる同車種は、2021年中国で発売される予定だ。欧州向けのグローバルモデルをハンガリーで生産し、2022年には米国で発売を開始する。

内燃エンジンGLBのスタイルを受け継いでいるのは一目瞭然だが、EQBのエクステリアの差別化要素として、前後に配される連続したライトストリップなど、電気EQブランドで共通するデザインが採用されている。アルミホイールは最大20インチ。グレードによってはローズゴールドやブルーの装飾トリムが施される。メルセデスは、パワートレインや航続距離、価格の詳細についてはまだ明らかにしていない。

EQS

Mercedes EQS 580 4MATIC(画像クレジット:Mercedes-Benz)

メルセデス・ベンツは上海モーターショーに先立って、自社ブランドEQのワールドプレミアを開催した。EQSは、電気だけで動く高級セダンとしては初めて、同社の新ブランドEQとして発売される。米国市場に最初に導入されるモデルは、329HPのEQS 450+と516HPのEQS 580 4MATIC。これは中国市場にとっても重要な車両となるだろう。

Sクラスのオール電気版となるこのモデルには、テクノロジーが詰め込まれている。例えば、車には350個のセンサーが搭載されており、距離、速度、加速度、照明条件、降水量、気温、座席の利用状況、ドライバーの目の動き、同乗者の会話などを記録する。TechCrunchはEQSを試す機会も得た。その時の印象はこちらの記事で紹介している。

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NIO(上海蔚来汽車)

Nioは、1月に発表されたET7の詳細を明らかにした。同社はまた、合計100カ所の自社ブランドの電力交換ステーションと、500カ所の充電ステーションおよび1万を超える充電設備を含むその他のインフラを中国の8つの省で展開すると発表した。

Nio ET7電動セダン、2021年4月19日月曜日の2021年上海モーターショーにて(画像クレジット:Qilai Shen/Bloomberg via Getty Images)

Nio ET7

ET7はNioの電気自動車のフラッグシップセダンだ。同社はこの車のインテリアを正式に発表した。インテリアにはストームグレー、サンドブラウン、エーデルワイスホワイトの3色のアースカラーがあしらわれている。同社は、既存のクラウドホワイト、スターグレー、ディープ・ブラック、サザンスターに加えて、サンライズ・ベージュ、ルミナス・オレンジ、アークティック・グリーンなど、可能性のあるエクステリアカラーについても若干の情報を提供した。

ET7の150kWhバッテリーは、中国のNEDCテストプロトコルにおいて621マイル(999km)という桁外れの航続距離を実現している。NEDCのテストは楽観的な推定値を出すことで知られており、欧州のWLTPテストに比べてはるかに少ない可能性は高いだろう。

Nioはまた「高速道路、都市、駐車場、バッテリー交換などのシナリオで、リラックスできる安全なポイント・ツー・ポイントの自動運転体験を段階的に提供する」と主張する、自動運転技術NIO Autonomous Driving(NAD)についても強調した。その表現は、この技術が野心的なもので、依然としてドライバー支援システムのカテゴリー下に属することを示唆している。加えて、中国の規制では、ドライバーがハンドルを握った状態で常にコントロールできることが求められている。

Nioは今後数カ月以内にET7の生産を開始し、2022年第1四半期に発売する予定だ。

SAIC-GM(上汽通用)

SAIC−GM−Wuling Automobile(上汽通用五菱汽車股份有限公司)は、SAICとGeneral Motors、そしてLiuzhou Wuling Motorsのジョイントベンチャーで、5000ドル(約54万円)を下回る低価格帯のHong Guang Mini EVを発表した。

Hong Guang Mini EV

Wuling Hong Guang Mini電気自動車、SAIC-GM-Wuling Automobile製(画像クレジット:Zhe Ji/Getty Images)

本稿のメイン写真にも採用されているWuling Hong Guang Mini EVは、2021年中国で最も人気を集めたEVの1つで、2月だけで5万7000台以上が販売され、価格は4230ドル(約46万円)となっている。このフェザー級EVは、最高効率かつ少ない構成部品で生産される。広西チワン族自治区の麗水工場では毎分1台の新車が生産されており、1台が完成するまでわずか4時間ほどだ。最も基本的なモデルは、AからBへのユーティリティ用に開発されたもので、インテリアもフード下もシンプルで機能的な車両に仕上がっている。

この愛らしいMiniの滑らかな走りは時速62マイルを超えることはなく、1回の充電による航続距離は約75〜110マイル(121~177km)で、市街を短時間移動するのに最適だ。5600ドル(約60万円)のモデルへのアップグレードにはエアコンとパワーウィンドウが含まれており、これはHVAC換気システムとシンプルなラジオを備えた標準モデルの簡素な性質を示している。

Toyota(トヨタ)

この日本の自動車メーカーは、2025年までにToyota bZブランド7車種を含む15車種のオール電気自動車を全世界で発売することを発表、新しいbZブランドは上海モーターショーでデビューした。

Toyota bZ46

Toyota bZ4X、2021年4月20日の第19回上海モーターショーで展示(画像クレジット:Hector RETAMAL / AFP via Getty Images)

Toyota bZ4Xは技術的には単なるコンセプトに過ぎないが、その重要性は無視できない。上海モーターショーで発表されたこのコンセプトカーは、トヨタの新しいオール電気自動車ラインアップの幕開けとなる。

トヨタの新しいbZブランド(beyond Zeroの略)は、サイズやデザインの多様なバリエーションで使用できる専用の基盤プラットフォームを備える。同社によると、このような幅広い選択肢を単独で用意するのは難しいため、さまざまな分野の専門知識を持つパートナーと共同でシリーズを開発しているという。トヨタはスバルにbZ4Xの開発を依頼し、BYD、ダイハツ、スズキもbZシリーズのパートナーだ。

トヨタはbZ4Xを日本と中国で生産する計画で、2022年半ばまでに世界中で販売を開始したいとしている。

Volkswagen(フォルクスワーゲン)

このドイツの自動車メーカーは、上海モーターショーを通じてIDブランドにおける3台目の電気自動車を発表した。この製品は中国市場向けに特別に設計されている。

VW ID 6

Volkswagenは2021年上海モーターショーで全電動式のID.6 CROZZとID.6 Xを初公開(画像クレジット:Volkswagen)

VW ID.6には、中国北部で製造されるID.6 CROZZと南部で製造されるID.6 Xの2つのバージョンが用意されている。ID.6はVWの最もゆとりのあるIDブランドモデルで、最大7名まで乗車可能だ。この車両は4つの特徴的な構成要素を持ち、航続距離は最大588 km(中国NEDC)となっている。

Xpeng(小鵬)

Xpengは上海モーターショーで3台目の車両を発表したが、その1台はLiDAR(ライダー)を使って高度なドライバー支援システムの能力を高めることを目指すものだ。

Xpeng P5

XPengのP5電気自動車、2021上海モーターショーにて(画像クレジット:Qilai Shen/Bloomberg via Getty Images)

Xpeng P 5はこの中国の自動車メーカーにとって3台目の車種だが、LiDARセンサーを内蔵して生産されるのは初めてだ。同社によると、セダンの前部の両側に組み込まれた2つのセンサーは、天候や暗闇に関係なく、歩行者、他の車、自転車、スクーターなどを検知して識別することができる。

Xpengの会長兼CEOのHe Xiaopeng(何小鵬)氏は、P5は同社史上最も先進的で技術的に野心的なモデルだと語った。

LiDARセンサーとソフトウェアを組み合わせることで、高度なドライバー支援システムを実現し、完全自動化に向けて前進させるという。センサーとソフトウェアシステムは堅牢だが、車両は自動運転ではない。TechCrunchのLiaoが報じているように、XpengのNavigation Guided Pilot(NGP) システムはTeslaのNavigate On Autopilotをベンチマークとしており、自動的な車線変更、ランプの出入り、他の車両の追い越し、そして中国の複雑な道路状況でよく見られる、別の車の急なカットインを操作することができる。しかし、ドライバーはハンドルを握ったままでいなければならない。2〜4年後にレベル4の自律走行を実現するという目標を掲げているが、現実的な推進は規制にかかっている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:電気自動車中国上海

画像クレジット:Zhe Ji/Getty Images / Getty Images

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(文:Kirsten Korosec、Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

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