NASAとボーイングがStarliner宇宙船の発射台からの緊急脱出システムテストをライブ配信

NASAの商業乗員輸送プログラムに参加するBoeing(ボーイング)社は、早ければ来年にも米国の宇宙飛行士を国際宇宙ステーション(ISS)へと輸送するために開発した新しい宇宙船「CST-100 Starliner」の重要なテストを、米国時間11月4日に実施する予定だ。

Starlinerは発射台からのアボート(緊急脱出)試験を実施予定で、打ち上げ前の万が一に備えて搭載したエンジンを使い、宇宙船をロケットから迅速に避難させるシステムを実証する。テストは米国東部標準時で午前9時(太平洋標準時で午前6時、日本時間午後11時)に開始され、テストのウィンドウ(実施予定時間)は3時間が設定されている。

予定では、ニューメキシコ州のホワイト・サンズ・ミサイル発射場の小型テスト発射台に設置されたStarlinerは、高度4500フィート(約1400m)に到達したのち、発射地点から約7000フィート(約2100m)離れた地点に着陸する。宇宙船のサービスモジュールとベース部分の熱シールドが宇宙船から分離し、カプセルはパラシュートで地上に降下し、エアバッグを展開して衝撃をさらに緩和する。下のアニメーションでは、テストの概要が確認できる。

このテストで重要なのは、完全に静止した状態から宇宙船がロケットを離れ、パラシュートを展開するのに十分な高度に到達する能力を実証することだ。NASAはBoeingとSpaceX(スペースX)に、宇宙飛行士が搭乗するミッションを開始する前に、発射台からの緊急脱出テストを成功させることを要求している。

民間乗員輸送計画のパートナーであるBoeingとSpaceXは、早ければ来年前半にも宇宙飛行士を搭乗させた宇宙船の打ち上げを予定している。NASAは2011年にスペースシャトル計画が終了して以来、宇宙飛行士の輸送をロシアのソユーズロケットに頼ってきたため、アメリカから打ち上げられるロケットで宇宙飛行士をISSに打ち上げる能力を再び得るために、両社と協力している。

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(翻訳:塚本直樹Twitter

SpaceXが有人宇宙船「クルードラゴン」のパラシュート試験に13回連続成功

SpaceXは、13回に渡るパラシュート試験に成功した。同社の宇宙船であるCrew Dragon(クルー・ドラゴン)で利用予定の第3世代パラシュートシステムだ。直近のテストでSpaceXは、短く編集ビデオをTwitterで公開し、パラシュートの一つを意図的に作動させないシステムの実験を見せ、仮に部分的に不具合が起きた場合にも飛行士がが安全に着地できることを示した。

NASAの宇宙飛行士を乗せたCrew Dragonを打ち上げる計画のSpaceXにとってこれは大きな一歩だ。先月NASAのJim Bridenstine(ジム・ブライデンスタイン)長官はカリフォルニア州ホーソンのSpaceX本社を訪れ、SpaceXのElon Musk(イーロン・マスク)CEOとこの商用クルー計画の進捗状況について話あった。その時Musk氏は、改善したMark 3パラシュートシステムのテストを最低10回成功させてから飛行士を乗せると話していた。

「宇宙飛行士を飛ばす前に、最低でも10回連続でテストに成功させるつもりだ」と当時Musk氏は話した。「パラシュートの動作が安定していることを10回のテストで確実にするためだ」

当時Musk氏は、年内に少なくとも10回テストする予定であることも言っていたので、13回という数字は十分計画を満たしており、これはMusk氏が概して楽観的な目標日程を設定するSpaceXにとって、予定より早い進捗という珍しい事態だと言える。

Crew Dragonに使われているこの第3世代のパラシュートは、ナイロンの代わりにザイロンを使用している。SRI(スタンフォード研究所)で開発されたポリマー材料で、パラシュートで使用する糸の強度をナイロンの約3倍にできる。SpaceXは縫製パターンも変更し、新しいパラシュートの負荷バランスを最適化している。

SpaceXの次のステップは打ち上げテストで早ければ今週水曜日にも行われる。地上で行われCrew Dragonの脱出用エンジンをテストする。その後は空中での脱出用エンジンテストを年内に実施することを期待しており、非常時に離陸後のFalcon 9ロケットからCrew Dragonが脱出するところを見せる。

NASAとSpaceXは両者とも、今後のテストが順調に行われれば来年早くに有人飛行が実施できると楽観的な見方をしている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

小型人工衛星ネットワークを利用するIoTシステム向けSDKをKeplerが公開

トロントのKepler Communications(ケプラー・コミュニケーションズ)は、通信サービスを提供するための靴箱サイズの人工衛星を開発し、その実際の打ち上げ配備もしている。同社はこのほど、最初のSDKを作って関心あるデベロッパーの登録を待っている。同社の衛星を商用利用する顧客はこのデベロッパーキットを使ってKeplerが来年から提供するナローバンドのIoT接続を利用でき、それが実際に有料で提供される来年からは同社のパートナーにもなる。

SDKをこのように早期に公開するのは、Keplerが提供するIoT接続を関心のある企業に試用しテストしてもらうためだ。Keplerのサービスの供用範囲はグローバルなので、IoTのオペレーターは単一のネットワークで比較的安くシステムを構築運用でき、輸送用コンテナの追跡とか鉄道のネットワーク、家畜や穀物などの積荷の追跡をグローバルに行うことができる。

Keplerによると、同社のIoTネットワークはこの目的のために特製された重量10kg以下のナノサテライトの集合で構成されてる。実際の打ち上げは来年以降になるが、消費者向けHDビデオストリーミングなどのように広帯域を必要としない業種に狙いを定めている。そういう業種にとっては、カバー範囲が広くてリモートアクセスの多い、しかも安定性の良い堅牢なネットワークが鍵だ。

軌道上に衛星の星座と呼ばれる複数の人工衛星を配置して提供するIoT接続は、最近ますます関心が高まり投資の対象にもなっている。そして大企業はそれらを利用してモニタリングや積荷などの追跡を現代化しようとしている。例えば、Swarmは同じ目的の150個の小型衛星の打ち上げをFCCに許可された

2015年創業のKeplerは、これまでに2000万ドルあまりを調達し、2つの小型衛星を昨年11月と今年の1月に打ち上げている。同社の発表によると、来年半ばにはISKとGK Launch Servicesとの契約でさらに二つをソユーズロケットで打ち上げる予定だ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

米国空軍の宇宙試験機「X-37B」が780日間の軌道滞在から帰還

米国空軍が運用する試験宇宙機X-37Bが軌道を離れ、NASAのケネディー宇宙センターに無事着陸した。SpaceXのロケットで打ち上げられてから2年以上を経ての帰還となった。

かつてはX-37B Orbital Test Vehicle(軌道試験機)と呼ばれた同機はこれが5回目のミッションだったが、何が行われていたのかはよくわからない。X-37Bの本質はそのミッションのほとんど秘密なので、この軌道小旅行で何が起きていたかの詳細を知ることは今後もないだろう。それでもこれが米国空軍の使用しているテクノロジーを誇示するものであり、中でも「高信頼性、再利用可能、無人宇宙試験プラットフォーム」の開発に役立てようとしていることはわかっている。

空軍の情報から、航空電子工学、誘導システム、熱遮蔽、推進システム、大気圏再突入システムなど一連のテストが行われていることがわかっている。さらに、機体の長さが約9メートルで、スペースシャトルの縮小版とも言えること、空軍から請け負ったボーイング社が作ったこともわかっている。そしてなにしろこれは空軍の話なので、この宇宙飛行機で行われるあらゆる実験が最終的に防衛ないしは軍事に使われることもわかっている。米国にとってそれは、宇宙が急速に新興都市となりつつあり、他の多くの国々が宇宙の防衛と軍事に予算を投入していることを踏まえると当然の行動だ。

X-37Bは、新記録となった780日間の飛行を終えしばらく地上に滞在したあと、2020年のいつか再びケープカナベラル空軍基地から飛び立つ予定だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

NASAの火星探査車「Mars 2020」が6輪ホイールで初接地

NASAの火星探査車であるMars 2020は、地球から何億マイルも離れた過酷な環境の中で、自律的に活動しなければならない。現在はまだNASAのジェット推進研究所で開発中だが、どのマイルストーンも重要なものだ。そして今週、Mars 2020は完全に組み立てられ、自身の6輪のホイールで自重を支えながら接地した。

この接地テストは、原子力エンジンやホイールの移動能力、センサーアレイ、ナビゲーションシステムなど、探査車で進められている多くのテストのうちの1つだ。この6輪のロボット探査プラットフォームは、2020年7月に予定されている打ち上げの準備を進めており、火星探査機のCuriosityのミッションを引き継ぐために火星へとに送られる予定だ。

Curiosityは2011年に打ち上げられ、2012年8月に火星に着陸した。この探査機は2年間のミッション用に設計されていたが、2012年12月に無期限のミッション延長が決定された。そして着陸から7年たった今も、今年にはコンピューターを切り替えつつ稼働を続けている。

Mars 2020の探査車はCuriosityから多くのアップグレードが実施されているが、これは新しい探査車の開発チームによる、何年にも及ぶCuriosityの火星表面での経験の恩恵であることは想像に難くない。Mars 2020では環境に対する耐久性の向上などの改良が施されており、Curiosityを補完するさまざまな科学・研究装置も搭載される。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXは2022年までに月面にStarshipを着陸させ、2024年までに月面着陸に備える予定

毎年恒例の国際宇宙会議(IAC、International Astronautical Congress)で行われた、SpaceXに対する一連の簡単なインタビューの中で、SpaceXの社長でCOOのGwynne Shotwell(グウィン・ショットウェル)氏は、まもなく登場するStarship宇宙船のミッションスケジュールに関する同社の現在の考えについて少しばかり明らかにした。Starshipは現在、SpaceXの南テキサスとフロリダの施設で並行して開発されているが、これらはFalcon 9とFalcon Heavyの後継者であると同時に置き換えを意図した多目的ロケットである、搭載重量はより多く月や最終的には火星に到達する能力を有する。

「私たちはStarshipを1年以内に軌道に乗せたいと熱望しています」と、ショットウェル氏は語る。「そして必ず2022年以前に月に着陸したいと考えています。そしてうまくいったなら2024年までに月面着陸する人たちのために必要な資源の運搬を始めたいと考えています。とても野心的なタイムフレームですね」。

まさにそれは大胆なタイムラインであり、ショットウェル氏自身が繰り返し述べているように、「野心的な」タイムラインだ。テック産業同様に、宇宙産業では、プロジェクトで作業しているチームに実際の能力の限界を発揮させるように、積極的なスケジュールを設定することは珍しくない。SpaceXのCEOであるイーロン・マスク氏も、しばしば現実と一致しないタイムラインに取り組むことで知られており、ショットウェル氏はIACでのステージ上のインタビューの別の部分で、マスク氏の野心的な目標設定をいいものだとほのめかした。

SpaceX President and COO Gwynne Shotwell at IAC 2019

SpaceXの社長兼COOであるグウィン・ショットウェル氏。ワシントンDCのIAC 2019にて

「イーロンがこうした信じられないほど大胆な目標を出すと、世間は『そんなことはできっこない、軌道なんかには行けない、軌道に到達できるロケットなんか作れっこない、Heavyが軌道に乗ることなんてない、Dragonがステーションに到達することはない、Dragonが帰還できるはずがない、そしてロケットを再着陸させることなんて不可能だ』と言うのです」と彼女は言った。「だから、率直に言って、私は世間が『できっこない』と言うのを聞くのが大好きです。それは、私の素晴らしい6500人の従業員たちを鼓舞して、そのことをやり遂げる気にさせるからです」。

SpaceXは以前、1年以内という短期間のうちにStarshipによる最初の軌道試験飛行を開始するという目標について公表していた。これまでのところ同社は「Starhopper」という名のデモンストレーション用宇宙船を建造しテストした。これは、宇宙船のベース部に新しいStarship打ち上げシステムとSuper Heavyに使用するRaptorエンジンの1つを組み合わせて構成したものだ。

その機体を使った低空飛行を成功させた後、SpaceXはStarshipテスト機のMk1ならびにMk2の組み立てを始めた。これは、最終的な軌道宇宙船のフルスケール品と同等のもので、それぞれボカチカ(南テキサス)とケープカナベラル(フロリダ)のチームによって建造されている。これらは、SpaceXが軌道用、そして最終的には人間のテスト飛行のために追加のプロトタイプを構築する前に高高度試験を実施する予定だ。

SpaceXはすでに、NASAと連携しているIntuitive Machinesやispaceと契約を結んでいる。両社は2024年のArtemisプログラムによる月面着陸に先行して、月に貨物を運ぶ役割を担っている。とはいえ、これらの貨物輸送ミッションはすべて輸送にFalcon 9を使うことが指定されている。

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(翻訳:sako)

NASAが月の南極の地表下で結氷水を探すVIPER探査車を2022年に打ち上げ

NASAは月に、黄金のように貴重な液体を探している。それは石油ではなく、ごく普通の水だ。水が恒久的にあれば我々にとっても必要だから、それを知ることはきわめて重要だ。そこでNASAは、VIPER(バイパー)と呼ばれる探査車を月の南極へ送り込もうとしている。それは1972年以来最も長期の月面ミッションになる。

VIPERは、Volatiles Investigating Polar Exploration Rover(揮発性物質調査用極地探検探査車)の頭字語で、計画では2022年12月に月面へタッチダウンする。そのミッションは、極地域の恒久的に影の部分に水の存在を直接目撃して、その量を求めること、だ。

月のその年中暗い部分は、何百万年もかけて氷結水を集めてきた。陽が当たらないので、溶けないし蒸発もしない。NASAはすでにこれまで、一般的な領域で探針を地表下に差し込み、結氷水の存在を確認したが調査としての精度は低い。ロボットを送って正確な測定をすべきだ。

VIPERはゴルフカートぐらいの大きさで、探査用の機器を積んでいる。その中のNeutron Spectrometer System(中性子スペクトル分析システム)が、地表下の水を見つける。それに関してはNASAのアドミニストレーターであるJim Bridenstine(ジム・ブリデンスティン)氏が昨日、少し言及している

関連記事:NASA Administrator Jim Bridenstine explains how startups can help with Artemis Moon missions(人間の月滞在事業にスタートアップも貢献できる、未訳)

VIPERが水の上に来ると、TRIDENT(The Regolith and Ice Drill for Exploring New Terrain、新たな地質構造を探求するための表土と氷用ドリル)が展開される。それは文字どおりTrident(三叉鉾)のようだが今週出会った最高の頭字語だ。そのドリルは長さが1mで、スペクトロメーター(分光器)が月の土壌を分析するための試料を掘り取る。

試料採掘とスペクトル分析を大面積にわたって行うと、地表下の水の所在を地図に落とし、大きなパターンを掴めるだろう。月の上の、人間が大好きな物質の存在をもっと体系的に理解できるかもしれない。

waterhunt

探査車VIPERがマップした月の表面下の結氷の視覚化

トップの画像でおわかりのように、この探査車は目下開発途上だ。まだ、その動き回る部分をテストしているにすぎない。それは探査車本体の一番肝心な部分だけど。

月の南極の陽が射さない部分でのミッションだから、ソーラーパネルなどはなく今回積む電池で100日しか仕事できない。しかしそれでも、米国が月面で過ごした日数の記録を更新する。最近の数年間で大量の探査車を月面の至るところに展開した中国の場合はどうだろうか。

おもしろいことに、この探査車の展開は外部契約プロジェクトであるCommercial Lunar Payload Services(月面商用荷重サービス)の一環だ。つまりこのペイロードサービスに参加するどこかの企業がたぶん、VIPERを軌道から月面へ着地させる着陸船を作るのだ。打ち上げが近くなれば、もっと詳しい記事を書けるだろう。

関連記事:NASA calls for more companies to join its commercial lunar lander program(商用月面着陸船に多くの企業の参加をNASAは求む、未訳)

画像クレジット: NASA

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アルテミス有人月飛行計画にはもっと多くのスタートアップを呼び込みたいとNASA長官が呼びかけ

世界の宇宙産業、宇宙機関、研究者が一堂に集まり宇宙技術と宇宙ビジネスについて話し合う国際宇宙会議が今週開かれたが、私はNASAのJim Bridenstine(ジム・ブライデンスティン)長官に、NASAが意欲的に推進するアルテミス計画におけるスタートアップの役割をどう考えるかを尋ねた。アルテミス(ギリシャ神話に登場するアポロの双子の姉妹から命名した)計画とは、月に再び人類を送り(今回は滞在も予定している)、そこを拠点に火星などのさらに遠くの宇宙探査につなげようというものだ。

ブライデンスティン長官は、報道向けの質疑応答で、この質問に見事に答えてくれた。それによると、この計画では、大小さまざまなスタートアップによる貢献が非常に期待されており、若い宇宙企業が大きなインパクトを与える形で貢献できる分野が数多くあるという。

「企業には、大企業もあれば中小企業もありますが、知っておいて欲しいのは、この(ルナ)ゲートウェイで私たちが構築しているものはオープンアーキテクチャーであり、民間のパートナーと進めてゆきたいと考えていることです」とブライデンスティン長官。「そのため実際に、この国際宇宙会議には数多くの企業が参加しています。月に行くと公言している大企業です。彼らは持続性を求めており、アルテミス計画に加わりたいと考えています。ゲートウェイは、そんな企業に開放されています」。

NASAルナ・ゲートウェイの想像図。オライオン・カプセルがドックに接近しているところ

ルナ・ゲートウェイは、NASAが月の周回軌道に載せて、宇宙船の拠点にしようと計画している宇宙ステーションだ。物資をいったん月の軌道に集めておくことで、月面に下ろす作業を確実に、簡単にする重要なステップとなる。だがブライデンスティン長官は、NASAがアルテミス計画のために最初に提示した公募告示(BAA)では、ゲートウェイを利用せず、直接、月面に降りる民間企業の提案も歓迎していると指摘していた。

これまで月探査は、SpaceX(スペースエックス)のような潤沢な資金力と強固な基盤を持つニュースペース企業と呼ばれる一部の革新的企業が受け継いでいた。しかし、アルテミス計画が求める企業の役割は、地球から月の軌道まで移動できる宇宙船の建造のような膨大な資金を要する仕事に限らないとブライデンスティン長官は言う。

「月面に物資を届けておく必要があります」と彼は話す。アルテミス計画では2024年に人を月面着陸させる予定だが、そこで使用されるスペース・ローンチ・システム(SLS)とオライオン有人カプセルがミッションを確実に達成できるように、前もって物資を送り込んでおく必要があるという。「ゲートウェイで着陸船を準備する際にも、おそらくバイパー中性子分光計や赤外線分光計など、地表や氷や、月面上に何がどこに、どれくらいの量で存在するかを調査するためのハードウェアを月面に設置する際にも【中略】そうした科学機材を月に送り届けなければいけません」。

ブルー・オリジンのブルー・ムーン着陸船

実際、NASAが予定している2024年の月面有人着陸に先駆け、または同時期に月着陸船で物資を運び込む準備を進めている企業がある。Peregrine(ペレグリン)月着陸船を2021年に打ち上げる予定のAstrobotic(アストロボティック)と、Blue Moon(ブルー・ムーン)着陸船のBlue Origin(ブルー・オリジン)だ。どちらの着陸船も、そしてその着陸船が運ぶ物資も、月での人類の持続可能な活動を円滑化するために、スタートアップが開発した機材やシステムを利用する可能性がある。事実、ブライデンスティン長官は、計画中の機材の中には、高度なデータ収集ハードウェアよりもずっとワイルドなものがあると話していた。

「たぶん、これも予算によりますが、また今から2024年の間に実現できるとは確約できませんが、月面に空気で膨らむ住居を建て、そこを月面に降り立った宇宙飛行士たちの拠点とし、長期間の滞在を可能にするといったことも考えられます」と彼は言う。「実現可能な範囲なのかって?もちろんです」。

さらにブライデンスティン長官は、NASAがすでに数多くの小規模ながら革新的な企業と協力していること、そしてさらに多くのパートナーを探し続けたい旨を話していた。NASAから発注される月への物資輸送の需要は確実なものであり、発展性があり量も増えていくと長官は指摘していた。

「SLSとオライオンに加えて、さらなる可能性を私たちは必要としています。そこでは、あらゆる種類の民間事業者にチャンスがあります」と彼は言う。「また私たちは、NASAが関わるスモールビジネスへの投資や調査も行っており、常にスモールビジネスを支援しています。事実、私たちは商業月運搬サービス(CLPS)プログラムを進めています。契約した企業は現在9社。【中略】そのうち2社は、2021年に月に物資を輸送するという依頼に取り組んでいます。【中略】この9社に留まらず、さらなる企業を引き込みたいと考えています。もっと大規模な月着陸の可能性を提供してくれる大きな企業の参加も期待しています。なぜなら前にも述べましたが、月面への物資輸送の需要は今後さらに高まるからです」

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(翻訳:金井哲夫)

SpaceXは衛星ブロードバンドサービスStarlinkの供用を2020年内に開始

SpaceNewsによると、SpaceXの社長でCOOのGwynne Shotwell(グウィン・ショットウェル)氏が、今週のInternational Astronautical Congress(国際宇宙飛行会議)の間にワシントンの同社オフィスで行われた記者会見で、来年中には一般消費者向けのStarlinkサービスを立ち上げると明言した。このイベントのステージにも立ったショットウェル氏は「それまでには6回から8回、グループにまとめたStarlink衛星のペイロードをローンチする必要がある」と述べた。今年の5月に打ち上げられたものもその中に含まれる。

同社のこれまでの話では、地球全域をカバーするためには24回の打ち上げが必要とされていた。そして来年の最初の供用域は、米国北部とカナダの一部と言われていた。またショットウェル氏によると、24回で地球全域がカバーされるがそれでもまだ粗いので、あと数回の追加的打ち上げが必要だそうだ。

SpaceX President and COO Gwynne Shotwell

SpaceXの社長兼COO Gwynne Shotwell氏

SpaceXが最近提出した文書によると、これまで許可を得ている1万2000基に加えてさらに3万基を打ち上げて、合計4万2000基の衛星群になる。SpaceXのスポークスパーソンの、TechCrunch宛てのこの前の話では「それはStarlinkのネットワークの総容量の応答性とデータ密度を高めて、ユーザーが求めるニーズの今後の成長に備えるため」とされていた。

グローバルなブロードバンドの衛星群を保有し運用することによりSpaceXの収益は大きく伸び、また究極の月への打ち上げを含め、今後のより意欲的な事業を追究するときの重要な柱となるだろう。衛星群の整備は、これだけの規模ともなると費用も膨大になるが、しかしSpaceXはほかにもStarshipのような大きな製品開発を目指している。それはペイロード容量を拡大して軌道への貨物搬送量を増やし、同社自身と顧客のコストを長期にわたり削減するプロジェクトだ。

記者会見でショットウェル氏は「すでにStarlinkの接続テストを米空軍の研究所のために行っている」と述べた。料金は明らかにしなかったが、SpaceNewsによると米国の場合80ドルという低料金らしい。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ヴァージン・ギャラクティックが10月28日に初の宇宙旅行関連上場企業に

Richard Branson(リチャード・ブランソン)氏が率いるVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)は10月28日に、商用宇宙旅行を実現するという野心的な計画について、市場がどう判断するかを知ることになる。同社の株主は今年発表された、米国時間10月25日の金曜日にスタートするChamath Palihapitiya(チャマス・パリハピティヤ)氏のSocial Capital Hedosophi(ソーシャル・キャピタル・ヘドソフィ)との合併と10月28日のニューヨーク証券取引所への上場を認めた。

Virgin GalacticとPalihapitiyaは今年7月に、Virgin Galacticへの8億ドル(約870億円)の投資を含む契約を発表した。Branson氏のVirgin Galacticは、Virginブランドの2社の宇宙企業(もう1社はVirgin Orbit、ヴァージン・オービットで、商業的な小型衛星の打ち上げを目的としている)のうちの1社で、宇宙船のSpaceShipTwoと改造飛行機による発射プラットフォームを使って、観光客をサブオービタルの宇宙空間に連れていくことを目指している。

Virgin Galacticは最近、最新スケジュールによれば来年前半に始まる25万ドル(約2700万円)の宇宙旅行で、乗客が着用する宇宙服を発表した。同社の宇宙船は最大で6人の乗客を乗せるられるため、各フライトで最大150万ドル(約1億6000万円)の収入を得られる。Virgin Galacticによると、すでに600人以上がこの旅に参加するために予約を済ませている。

10月28日の取引開始日には、市場の投資家がそのビジネス計画の価値に信頼を置くかが明らかになるはずだ。一方、Virgin Galacticは研究ミッションを望む顧客と契約しており、収益源として有望である以上の将来性を示している。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

小型ロケット打ち上げスタートアップFireflyがロケット産業大手Aerojet Rocketdyneと提携

Firefly Aerospace(ファイヤーフライ・エアロスペース)は、Aerojet Rocketdyne(エアロ・ロケットダイン)と手を組むことになった。これは、小規模な新規参入の宇宙スタートアップが経験豊富な伝統的ヘビー級企業と提携するという理想的なかたちだ。Firefly2013年に設立され、小型衛星用の打ち上げ機Alpha(アルファ)を市場に送り出すために、これまでに216万ドル(約2億3500万円)を調達している。

同社は、決定的な意味を持つ最初の打ち上げを、来年の2月から3月の間に予定し準備を進めていると、同社の創設者でCEOのTom Markusic(トム・マルクシック)博士は、今年ワシントンD.C.で開催された国際宇宙会議で発表。同社の成長に関する近況と、FireflyとAerojetとの新しい提携話について語った。

Firefly Aerospaceの創業者でCEOのトム・マルクシック氏

マルクシック氏は、Aerojetのスペースビジネス部門上級副社長であるJim Maser(ジム・メイザー)氏と同席し、AerojetがFireflyに、Beta(ベータ)というわかりやすい名称の次世代打ち上げ機にエンジンを供給すること、その本格的な開発はアルファの打ち上げ後に始まること、そして定期的な商用サービスを開始することを説明してくれた。

ベータは中型の打ち上げ機で、アルファに比べて積載容量が大きく最大積載重量は8.5トンとなる。アルファはFireflyの最初のロケットで、1トンの衛星を軌道に打ち上げることができる。「Fireflyはそのサイズを需要はあるが供給が足りていないスイートスポットに特定した」とマルクシック氏は話していた。

その中間領域は、あまり活用されていない部分でもある。その比較的大きなペイロードを軌道に載せるには大きなエンジンが必要になるからだ。彼らはその解決策を探し回り、AerojetのAR-1エンジンを見つけた。推力50万ポンド(2200キロニュートン)という完璧なソリューションだった。

マルクシック氏とメイザー氏は、一般論として、この業界に参入したばかりのスタートアップや若い企業は、Aerojetのような老舗企業にとって最重要パートナーになると力説していた。Aerojetは1942年に設立され以来、ロケットおよびミサイル業界で貢献してきた。

Fireflyのアルファ打ち上げ機。

「早く動くことも、失敗することもオーケーですが、他者の失敗や、自分自身の失敗を繰り返したくはありません」とマルクシック氏は、経験豊富な企業と提携する利点を述べた。「この提携はエンジン供給の合意に留まらず、より広範囲な恩恵をFireflyにもたらす」とマルクシック氏は話している。

「Aerojetは、宇宙空間のための素晴らしい推進装置を揃えています。例えばXR-5です」とマルクシック氏。「これは5kw(キロワット)のホールスラスターで、私たちのOTV(軌道間輸送機)にも、地球と月との間での大規模なミッションに使用する高度なOTVにも使えます。さらに彼らは、他のステージでも利用できる、飛行実績のある提案中の化学スラスターも数多く保有しています」。

プリバーナーの試験を行うAerojetのAR-1エンジン

Fireflyは、軌道間輸送機を使って、より高度な打ち上げ能力を提供することを計画している。その野心は、打ち上げ機を超えて宇宙空間での製造にまでおよんでいる。それは同社にとって大変に魅力的な事業だマルクシック氏は言う。なぜなら、打ち上げコストを削減する究極の方法は打ち上げコストの必要性を丸ごとなくすことだからだ。Fireflyの最終目標は、その方法を問わずたくさんの商用人工衛星を軌道に載せることだ。そこには山ほどのチャンスがある。しかし現在のところ、同社の最大のチャレンジは目の前にあるもっとも重要なゴールに集中することだとマルクシック氏。

「我が社と同じように宇宙を目指す企業は、少なくとも100社はあります」と彼は言う。「今は、その夢を語る大勢の人たちの中に私たちも紛れています。私は、この会社を通じて、そうした空論家の集団から一刻も早く抜け出て、実際に宇宙で宇宙船を飛ばしているエリート集団に加われるよう精力を傾けています」。

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(翻訳:金井哲夫)

アリアンスペースが初の月へのライドシェアミッションを2023年に提供

ヨーロッパの打ち上げ事業者ことArianespace(アリアンスペース)は米国時間10月22日、国際宇宙会議で月探査に関するいくつかの刺激的なニュースを発表した。同社でCEOを務めるStéphane Israël(ステファン・イスラエル)氏によると、今後打ち上げられるAriane 6ロケットは、4年後に月へのライドシェア・ミッションを行う予定だという。

「我々は2023年までに、Ariane 6による月への最初のライドシェアミッションを提供する予定で、政府や民間の顧客を検討している」 と、イスラエル氏はイベントのステージで語った。

このライドシェアミッションでは、最大8.5トンの貨物を月へと向かう軌道に投入することができる。Israël氏によると、Arianespaceは有人宇宙船の輸送を計画している一方で、Ariane 6による着陸機と探査機を投入し、NASAのアルテミス計画を含めた有人ミッションへの準備を整えられるとしている。

Ariane 6は、現在ArianespaceがESA(欧州宇宙機関)の指示の下で開発中の、2段式の中〜大型ロケットだ。来年には初のテスト打ち上げを行う予定で、2023年には商業ペイロードを搭載した初の月周回軌道ミッションを実施することを目標としている。

Ariane 6がこの目標を達成できれば、月への有人飛行を確実にするだけでなく、インフラを設置して月にとどまり、長期間の生活、活動、研究を可能にするための重要な輸送システムになるかもしれない。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

イーロン・マスクがSpaceXの衛星インターネット「Starlink」を使ってツイート

SpaceX(スペースX)でCEOを務めるElon Musk(イーロン・マスク)氏は、同社の衛星コンステレーションことStarlinkが提供するインターネット接続を米国時間10月22日の午前に利用した。Musk氏は軌道上のStarlinkの衛星によるネットワークを通じてシンプルにツイートを発信し、現在の状況を説明した。

Starlinkは、独自の衛星ブロードバンドネットワークを立ち上げて運用するSpaceXの野心的なプロジェクトで、これまで高速なインターネットへの信頼性の高いアクセス方法がなかった地域を含む、世界中へのブロードバンド接続を提供する。

SpaceXは今月、これまでに計画されていた1万2000機に加え、さらに3万機のStarlinkの衛星を軌道に乗せる計画を提出した。同社は非常に高い需要に対応する準備を進めており、将来的にはすべての潜在的な顧客に信頼性の高いサービスを提供するために、小型衛星のネットワークをどの程度拡大する必要があるのかを検討しているという。

SpaceXは昨年の2機のプロトタイプ衛星に続き、2019年5月に最初の60機の衛星を打ち上げた。これらの衛星は、無線信号を受信して変換する、Musk氏のコメントによればピザ箱サイズの地上基地と連携して機能する。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASA長官が人類は2035年までに火星に行けると発言、ただし予算が付けば

NASAのジム・ブライデンスタイン長官は米国時間10月21日月曜日に開始された年次国際宇宙会議で、複数の国際宇宙機関の代表者と共同で講演した。最後に講演者全員にある質問が投げかけられた。人類はいつ火星に行けるのか?

ESAのヨハン・ヴェルナー長官が(翌日の)「火曜日」と冗談を言ったあと、ブライデンスタイン長官は自身の信じる本気の答えでフォローした。誰もが政府の援助と必要なサポートが得られるという前提で、早ければ2035年に宇宙飛行士が火星に着陸することが可能だと語った。

「我々は月面着陸計画を加速しているのと同様、火星着陸も加速している。それが現状だ」とブライデンスタイン氏は語り、2024年までに初めて女性を月に送り、初めて米国人を火星に送るアルテミス計画の加速された時間軸に言及した。

「予算が十分にあれば」と、ブライデンスタイン氏は各国のNASAに相当する機関の仲間たちに向かって言った。「2035年までに実現できるだろう」。「目標は5年以内に月に着陸し、2028年までに持続可能にすること」と、ブライデンスタイン氏は代表者講演の後の記者会見で語り、持続可能とは「別の世界で長い期間居住して働ける」という意味だと付け加えた。

ブライデンスタイン氏の挙げた前提は、小さなことではない。NASAは、2024年までに月へ行く計画の議会小委員会の予算聴聞会で、強い懐疑心を持たれたばかりだからだ。2035年を目標とする火星計画の実現性に関するNASAの科学的および技術的評価によると同局は2015年時点ですでにこの時期を検討していた。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Rocket Labは月やその先への小型衛星打ち上を目標に

国際宇宙会議にてRocket Lab(ロケット・ラボ)は、現在の低軌道を越えた、月への貨物輸送を含む軌道への小型衛星打ち上げサービスを開始すると発表した。より長距離を目指すこのサービスでは、同社の宇宙船ことPhoton(フォトン)により、追加のロケットステージと組み合わせて到達範囲を拡大する。同社は、この新しく遠方を目指す宇宙船により、早ければ2020年第4四半期(10月〜12月)に運用が開始できると期待している。

これは昨年打ち上げサービスを開始して以来、LEO(低軌道、地表から約320km〜1900kmの間)に焦点を当ててきた、ロケット打ち上げスタートアップのビジネスを大きく拡大する。Rocket LabのCEO兼創設者のPeter Beck(ピーター・ベック)氏はプレスリリースの中で、これらは軌道への打ち上げに興味がある政府と民間のクライアントの両方から、追加のインバウンドを呼び込むものだと述べた。

Beck氏によると、この需要は有人探査と月周辺のインフラ建設(NASAのアルテミス計画には、国際協力によるLunar Gatewayの月軌道ステーションと、月面基地の建設が含まれる)へとより多くの投資が期待される時にのみ増加するという。小型衛星は低リスクな先行ミッションを提供し、より大きく永続的なプレゼンスを確立するために必要な、先行インフラを確立するのに役立つだろう、と主張している。

ベック氏によると、すでに既存の需要もあり、多くの研究機器とフルサイズの人工衛星が、深宇宙探査の実施を待っているという。つまり、Rocket Labはこれが将来の需要の予測ではなく、すでに市場に存在する満たされていないニーズに対応するものだと強調している。

この目標を達成するためにRocket Labが使用するPhotonは、ElectronのKick Stageの発展型だ。これをElectronと組み合わせることで、Rocket Labの顧客はLEOから地球の軌道を超え、月までのあらゆるミッションのためのソリューションを手に入れられると同社は述べている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

日本がアルテミスプログラムに向け、NASAのLunar Gateway計画に参加

NHKによると、日本は月を周回する軌道上に宇宙基地を建設する、NASAのLunar Gateway(ルナ/ゲートウェイ)プロジェクトに参加することを正式に発表した。Lunar Gatewayは2024年までに初の米国人女性、そして米国人男性の宇宙飛行士を月面に着陸させることを目指す、NASAのアルテミス計画の重要な要素だ。

この発表は、安倍首相が出席した宇宙開発戦略本部の会議で確認された。日本がNASAの取り組みに参加すべきかどうかを検討するために設置された委員会の勧告を政府が受け入れた。

委員会はLunar GatewayでNASAと協力すれば、日本の利益になると判断した。その中には、宇宙を平和的なベンチャーや研究に関する国際協力の場にするという点で、技術リーダーとしての地位を高め日米関係を強化することも含まれる。

日本がどのようにLunar Gatewayへと参加するかについての詳細は、まだ明らかにされていない。日本の月面探査スタートアップのispaceはこのニュースを歓迎しており、今年発表したDraperとの提携により、何らかのかたちで貢献することを期待している。

「今後の月探査と日米関係を大きな期待とともに歓迎したい」と、ispaceの創設者兼CEOの袴田武史氏は電子メールで伝えている。「Draperとispaceとのパートナーシップは、商業レベルでの持続可能な月開発へと向けた、日米の取り組みを補完するものと確信している」。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

Swarmの150個の衛星打ち上げ計画にFCCがGOサイン

Swarm Technologies(スワーム・テクノロジーズ)は、帯域幅は狭いながらも世界中のスマートデバイスを衛星を使って常時接続することを目指している。そして、同社はやっとFCC(米連邦通信委員会)から承認を得たところだ。どうやらFCCは、Swarmのサンドイッチサイズの衛星が、追跡するには小さすぎるということを、もはや心配していないようだ。

画像クレジット: Swarm Technologies

SwarmのSpaceBEE衛星は、他の手段ではオンラインにすることが面倒なデバイスへの接続を提供する小さな衛星だ。トウモロコシ畑の真ん中にある土壌モニターや、または海洋の真ん中にあるブイを考えてみてほしい。そういったものの信号は、低遅延や高帯域幅を必要としない。したがって、それらにサービスを提供する衛星の要件は、消費者向けブロードバンドの要件よりもはるかに緩いものとなる。

その結果、Swarmの衛星は小さいものになった。実際小さすぎて、追跡するのが難しく、他の衛星に対して危険なのではないかとFCCが心配するほどだった。申請時に同社に課せられた責任の一部は、それが杞憂であることを示すことだった。

FCCによる承認は、商業運用のために宇宙へ行くための許可を得るために必要な、長いプロセスのほんの1つのステップに過ぎないが、しかし大きな1歩だ。FCCは、計画されている150個の衛星、多少拡大することを決めた場合には最大600個を打ち上げる許可をSwarmに与えることに加えて、運用に必要な無線の周波数も割り当てた。もちろん必要な周波数での送信が禁止されていたら宇宙にいても役には立たない。

なお、老舗の衛星通信プロバイダーであるORBCOMM(オーブコム)は、自身に割り当てられたスペクトルの一部をSwarmが奪うことになると異議を唱えていた。FCCはそれは事実ではなく、実際にはその周波数帯における勢力を拡大しようと同社が権力闘争を仕掛けているという結論に達した。従って彼らの意見は却下された。

SpaceXもまた、Swarmが軌道上のデブリの拡散範囲を適切に考慮していなかったことを示唆するコメントを提出した(特に、衛星のアンテナをさまざまな計算に含めることを無視していると指摘した)。また、その衛星群は国際宇宙ステーション(ISS)に対してのリスクになるかもしれないとも述べた。しかし、これらの質問に対応してSwarmから提出された文書は、FCCを完全に満足させたようだ。「SwarmはSpaceXの懸念に対処するために適切な措置を講じたことが判明した」 と述べたうえで、今後提出される軌道上デブリに関する規則を遵守することを条件に彼らの申請を承認した。

かつてSwarmは、適切な承認なしにテスト衛星を打ち上げてFCCから罰金を受けたという汚点を、うまく乗り越えることができたようだ。宇宙事業に関わる煩雑な役所仕事の量は膨大であり、特に上でもおわかりのように、競合相手がそれに対して努力を重ねているときには、その規則に対して抵触してしまうことは珍しいことではない。

ようやく書類が整ったので、Swarmは年内に衛星群全体を軌道に乗せる予定である。

「FCCによる、Swarmへの周波数と打ち上げの承認は、弊社にとって大きなマイルストーンです。Swarmはいまや、全世界を覆う衛星群によるデータコミュニケーションマーケットに、2020年末までに一番乗りを果たす準備が整いました」とTechCrunchに声明で語るのは、CEOで共同創業者のSara Spangelo(サラ・スパンジェロ)氏だ。

「これは、衛星業界、宇宙における米国のイノベーション、そして世界中の多数のIoT顧客にとって重要な瞬間です。Swarmはそれらに双方向データサービスをサポートできることにとても興奮しています」とCTOで共同創業者のBen Longmier(ベン・ロングマイア)氏が付け加えた。

スパンジェロ氏とロングマイア氏は今月初めのTechCrunch Disruptに参加し、スパンジェロ氏はBessemer Venture PartnersのTess Hatch(テス・ハッチ)氏やOneWeb CEOのAdrian Steckel(エイドリアン・ステッケル)と共に、私がモデレーターを務めたパネルに登壇した。そこで私たちは、新しい宇宙経済に関連するさまざまなトピックについての対話した。もしそうしたビジネス参入に興味があるならば、下の動画は興味深いものだろう。

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(翻訳:sako)

初となる女性だけの宇宙遊泳、NASAがライブ配信

NASAの宇宙飛行士のChristina H Koch(クリスティーナ・H・コーク)氏とJessica Meir(ジェシカ・メイア)氏は米国時間10月18日の朝から、史上初の女性だけによる宇宙遊泳を実施している。2人は国際宇宙ステーション(ISS)の故障した電源制御装置の修理を予定しており、現地時間午前6時30分(日本時間23時30分)からライブ配信が始まり、7時50分(日本時間0時50分)にISSのエアロックを離れる。

この歴史的なミッションは、当初の予定から7カ月後に実施される。当時、ISSには2人の女性のうちの1人が必要とする中サイズの宇宙服がなかったため、宇宙遊泳が実施できなかったのだ。Anne McClain(アン・マクレイン)宇宙飛行士は当時、koch宇宙飛行士と一緒に宇宙遊泳を行う予定だったが、McClain宇宙飛行士の任務は6月に終わった。McClain宇宙飛行士は大きなサイズの宇宙服も試みたが、動きの制限が大きすぎた。

NASAは10月に2つ目の中サイズの宇宙服を送って、同じ問題が二度と起こらないようにしたが、複数の男性宇宙飛行士による宇宙遊泳が可能なのに、女性にはできるなかったという差別への批判に直面した。しかし、NASAは宇宙服に関する差別に真摯な関心を持っていたようで、アルテミス計画のために設計された宇宙服は、あらゆる体型と大きさの宇宙飛行士に最大限の機動性を提供するように設計されていることを強調した。

女性だけによる宇宙遊泳という今回のミッションは、NASAだけでなく、人類の宇宙探査史上においても重要な一歩だ。このエキサイティングかつ重大なイベントは、YouTubeでのライブ配信で閲覧できる。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

初めて直接観測された恒星間彗星「ボリソフ彗星」とは?

太陽系を新たな星間物体が訪れた。ただし宇宙人の乗り物でないことは間違いない。これは星間空間から来たこと確認できた初めての彗星であり、ハッブル宇宙望遠鏡はその驚くべき画像をキャッチした。これは素晴らしいことだ。なぜならその彗星は二度と戻ってこないから。

おそらく読者は、恒星間天体といえば数多くの見出しを飾ったオムアムアを思い出すだろう。記事のほとんどはエイリアンの宇宙船か何かだという発想だった。もちろんその仮説が報われることはかったが、それは別世界からの使者でなくても十分興味深い物体だった。

この新たな彗星、2I/Borisov(ボリソフ彗星)は、今年8月クリミアに住むアマチュア天文家のGennady Borisov(ジェナディ・ボリソフ)氏が最初に見つけた。地球近傍天体の専門家らが軌道を解析た結果、実際に星間空間から来たものであるという結論に達した。

どうしてわかるのか?例えば、その物体は時速17万7000kmで動いていた。「あまりに速いため太陽の存在を気にかけないほどだった」とボリゾフ彗星を観測するハッブルのチームを率いるUCLAのDavid Jewitt(デビッド・ジュイット)氏が語った。
【編集部注】上のGIF動画に見られる軌跡は物体の速度を表すものではなく、地球の自転によるもの。

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基本的に、飛んできた角度や速度から考えて、太陽の超長軌道にすら存在せず、ただ通り過ぎた確率が高い。そして12月初旬には、太陽から200万マイル以内を通過する。幸い何かにぶつかる恐れはない。それは純粋に宇宙の偶然であり、数カ月後にはいなくなる。

しかし、この短期間の滞在は彗星の組成を研究する重要な機会であり、どうやら我々の「地元」の彗星とよく似ているらしい。ボリソフ彗星が超神秘的ならクールだったかもしれないが、地球との類似性もまた大いに興味深い。これは、太陽系以外の恒星系でも彗星の組成が異なるとは限らないことを示唆している。
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ボリソフ彗星は、黄道を極めて急角度、超高速で通過しており、これは太陽を周回しているという考えを除外するのに十分な証拠である。

一方、ボリソフ彗星はオムアムアとは大きく異なっている。オムアムアは不活性で長細い岩石のように見えた。彗星はそれ自身非常に興味深いものであり動的でもある。粉塵の雲であったり小さな核を氷が包んでいるものだったりする。絵に描いたように美しいが、しっぽはみんなが期待する方を向いているとは限らない。

実は、こうした星間物質は珍しいものではなく、太陽系のある瞬間におそらく数千は存在している。しかし、検出、研究できるほど大きくて明るいものはめったにない。

ハッブル宇宙望遠鏡は来年1月、おそらくそれ以降もボリゾフ彗星の観測を続ける。決して帰ってくることはないので、可能である間はできる限りデータを集めたい意向だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ロケットラボが9機目のエレクトロン・ロケットを打ち上げ

Rocket Lab(ロケットラボ)は7台目のエレクトロンロケットを米国時間10月16日に打ち上げた。発射時間は協定世界時(UTC)の午前1時22分(日本時間の10月16日の午前9時22分)。「As The Crow Flies」と名付けられたこのミッションは、ニュージーランドのLC-1発射施設で実施され、Astro Digital(アストロ・デジタル)の積荷を載せて軌道へ向かう。

この打ち上げは元々別の衛星を低地球軌道に飛ばす予定だったが、打ち上げ直前に積荷が変更された。ロケット打ち上げでは異例なことであり、Rocket Labは自社の商業サービスモデルの柔軟性を誇示する結果となった。 Rocket Labのもう1社の顧客は遅延を余儀なくされたが、Astro Digitalは画像用衛星群「Corvus」(コルウス)の1基を軌道に乗せることになり、結果的に打ち上げ時期が早まった。

Rocket Labは予定どおり発射準備が進められ、発射予定時刻の20分前ほどからライブ中継された。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook