アップルが104億円を投じる「人種の公平性と正義のためのイニシアチブ」関連の新たな取り組みを発表

2020年6月、Apple(アップル)は「人種の公平性と正義のためのイニシアチブ(REJI)」に1億ドル(約104億円)を投じた。このイニシアチブを主導しているのは、アップルの環境、方針、社会的イニシアチブ担当バイスプレジデントであるLisa Jackson(リサ・ジャクソン)氏だ。アップルは米国時間1月13日、このイニシアチブの一環として、いくつかの新たな取り組みを発表した

アップルのTim Cook(ティム・クック)CEOは声明で次のように述べている。「あまりにも長い間、人種差別やその他の差別の犠牲になってきたコミュニティに力を与えるために、私たちは学生から教師、開発者から起業家、住民組織から正義の提唱者まで、幅広い業界やバックグラウンドを持つパートナーとともに、REJIの最新のイニシアチブを立ち上げます。私たちはこのビジョンの実現を支援し、我々の言葉と行動を、我々が常にアップルで大切にしてきた、公平性と多様性を受け入る価値観に一致させることを誇りに感じます」。

アップルは、歴史的に黒人の多いカレッジや大学のための革新と学習の中心地であるPropel Center(プロペルセンター)に、2500万ドル(約26億円)を提供する。この資金は、アトランタ大学センター内のバーチャルプラットフォームと物理的なキャンパスの両方に使われる予定だ。アップルは、その新しい建物の完成予想図をいくつか公開した(上と下の画像を参照)。

学生たちは人工知能、農業技術、社会正義、エンターテインメント、アプリ開発、拡張現実、デザイン、芸術創造、起業家精神など、専門の様々な教育コースを受けることができるようになる。アップルは単に資金を提供するだけでなく、同社の従業員もカリキュラム開発を手伝ったり、メンターシップを提供する。学生のためのインターンシップの機会も用意される。

また、アップルはデトロイトのダウンタウンに、若い黒人起業家に焦点を当てた「Apple Developer Academy(アップル・ディベロッパー・アカデミー)」を開設する。これはミシガン州立大学との共同事業で、デトロイト中のすべての学習者を対象とし、起業家、クリエイター、コーダーのための貴重なスキルを教える。

そこでは2つのプログラムが用意される。30日間の入門プログラムは30日間で、さらに深く掘り下げたい人は、10カ月から12カ月の集中プログラムを受けることもできる。アップルによれば、これら2つのプログラムで年間1000人の学生に教えることを目指しているという。

3つ目の取り組みは、黒人や有色人種色の起業家に向けて投資機会を拡大することに焦点を当てている。アップルはニューヨークに拠点を置くベンチャーキャピタル企業のHarlem Capital(ハーレムキャピタル)に1000万ドル(約10億4000万円)の資金を提供する。ハーレムキャピタルとアップルの間では、今後さらに多くのコラボレーションが行われる予定だ。

そのほか、アップルはSiebert Williams Shank(シーバード・ウィリアムズ・シャンク)のClear Vision Impact Fund(クリア・ビジョン・インパクト・ファンド)に2500万ドル(約26億円)を出資し、キング牧師の記念館であるThe King Center(キング・センター)にも寄付を行っている。

以上がアップルの人種的公平性と正義のためのイニシアチブは継続的な取り組みであり、常に新しい機会を評価することが求められる。アップルが資金を提供する相手は、誰でもいいというわけではない。それぞれの機会を個別に評価し、最良のコラボレーションを見つけようとしている。

関連記事:アップルが人種間の公平と正義のためのイニシアチブを創出して1億ドルを拠出

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Apple差別

画像クレジット:Apple

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

非営利Tech集団「ZIAI」がAIを活用したSNS自殺関連キーワード検知システムのβ版をリリース

非営利Tech集団「ZIAI」がAIを活用したSNS自殺関連キーワード検知システムのβ版をリリース

任意団体NPO「ZIAI」は1月13日、SNS上に投稿された自殺関連キーワードを自動で収集し、アカウント名や投稿内容を整理して一覧化、ワンクリックで該当者へのアプローチを可能にする自殺検知システムのβ版をリリースしたと発表した。

令和元年の自殺者総数から逆算すると、日本では毎日55人が自殺しており、自殺死亡率(人口10万人あたりの自殺者数)もG7中で最下位という。特に10代後半から20代の男女では、死亡原因の第1位が自殺という状況が続き、自殺による経済損失は年間数千億円にのぼるとされる。

その対策として、現在の日本では、自殺に関連するキーワードを主要インターネットメディアに記載・検索・投稿すると、厚生労働省や関係NGO、各地域の相談窓口が自動的に表示されるものの、これらはいわゆる「プル型」の仕組みとなっている。

政府としてもSNSを活用したオンライン相談の取り組みを強化しているものの、年間53万人とされる自殺未遂者の推計に対し、年間のSNS相談件数は約2万件、つまり全体の4%に過ぎないという。

ZIAIは、SOSを受け身で待つのではなく、社会からその声を拾い上げる「プッシュ型」の仕組みが必要不可欠としている。

AI自殺検知システムは、インターネット上の自殺関連投稿データをリアルタイムで自動収集し、ハイリスク者に対して連絡を行う。アカウント名や投稿内容を整理して一覧化し、AIアルゴリズムとプロのカウンセラーの視点を掛け合わせ、ハイリスク者と判定された方のみにワンクリックでメッセージを送ることが可能。

今後はオンライン相談を実施する関連NGOや教育・医療機関と連携し、返信者に対するオンライン・オフライン双方での介入を進めることで、社会からSOSの声を拾い上げる世界の実現を目指す。

非営利Tech集団「ZIAI」がAIを活用したSNS自殺関連キーワード検知システムのβ版をリリース

ZIAIは、自分を殺すのではなく、自分を愛せる社会を創ることをミッションとした非営利Tech集団。ハイリスク者の感性分析によるアルゴリズム開発やSNS自殺検知システム開発など、テクノロジーを軸にした自殺予防の仕組み作りを行っている。

メンバーは社会起業家やスタートアップのCTO、海外在住のデータサイエンティストなど、それぞれが本業を持つスペシャリストで構成されている。

自殺行為自体を未然に防ぐことは、この問題の根本的解決ではなく、それに至った背景や原因を取り除いて初めてその対象者にとって意味のある活動になるという。今後もZIAIは、テクノロジーを軸に、国や地方自治体、医療や教育機関、NGOとの有機的な連携を促進し、自殺念慮(死にたい気持ち)を予防するための解決策を模索し続けるとしている。

関連記事
2021年に最優先すべきはパンデミックから精神的に立ち直るための技術
自分だけのAIライフパートナーと対話できる「PATONA」アプリのCapexが総額1億円を調達
AIが思考と感情を分析しメンタルケア手法「ジャーナリング」を支援するmuuteアプリ
コロナ禍で急成長の瞑想アプリ「Calm」が日本上陸、日本語オリジナルコンテンツも提供開始
Facebookライブにアップされた自殺動画の拡散防止に失敗した各SNSの理由
チャット相談サービス「メンヘラせんぱい」がキャバ嬢と臨床心理士に相談できる新プランを提供
Daybreak Healthが10代向けオンラインメンタルヘルス治療を開始
メンタルヘルスをタブー視するアジアの文化に挑むIntellect
Netflixがメンタルヘルス関連の若者向けインスタライブシリーズを開始
Redditが精神的に追いつめられた人をサポートするメンタルヘルスのCrisis Text Lineと提携
瞑想の医学的有効性を証明するためHeadspaceが100億円調達

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:いじめAI / 人工知能(用語)自殺自殺防止自傷行為メンタルヘルス(用語)日本(国・地域)

私は言論の自由の擁護者だがその意味がわからなくなった、技術と言論の自由に待ち構えているものとは?

米国の大統領はおそらく世界最強だといわれている。その彼がTwitter(ツイッター)に投稿できない。そしてFacebook(フェイスブック)にも。それだけでなく、先週私たちが目撃したように、その他の多くのソーシャルネットワークに対してもだ(まあ彼はまだ核ミサイルの発射コードを手にしているので、それはそれで熟考すべき興味深い力だが)。

先週行われた禁止の数々は異例のものだった。しかし、Donald Trump(ドナルド・トランプ)大統領だって異例だ。今世紀にはもう、ホワイトハウスの現在の占有者のような口調で、公にわめき立てる大統領は登場しないかもしれない(少なくともそう願うことができるだけだが)。しかし、トランプ大統領の危機全体が本当に例外的なものであるならば、それは単に無視することができる。ルールというものは、言論の自由に関するルールでさえも、例外的な状況に対処するための例外を常に持っていたのだ。大統領が暴力的な抗議を挑発して、その結果追放される。米国の行政リーダーシップ史における、ユニークな瞬間であることは間違いない。しかし、主役は別として、最高裁の判例の下で、暴力的な脅迫が何十年もの間禁止されてきたテック業界や出版社たちの反応は特に異例なものではない。

では、なぜそれを私たちは無視しないのか?何か大きなものが足元に埋まっていることを、実感しているからではないだろうか?私たちの世界の情報アーキテクチャ全体が変化して、現代の米国を支配してきた言論の自由をめぐるルールの構造を、完全に覆してしまったのだ。

言論の自由は、科学と合理性と実証主義をともなう人間の進歩主義と、深く絡み合っている。「marketplace of ideas(アイデアを公開討論する場)」の目的は、議論が相互の対話として行われ、自分たちの事実と推論が検証され、悪いアイデアがより良くより実績のあるものによって洗い流されるようにすることだ。もちろん時には論争になることもあるが、最終的には挑発よりも解明を目的としたポジティブな論争なのだ。

私が言論の自由に対する「絶対主義者」なのは、そうした人類の進歩を信じているからであり、「アイデアを公開討論する場」という概念が、世界を探求し自己を内省するために、人類が種として歴史的に構築してきた最良のメカニズムであると信じているからなのだ。だが、先週の出来事を目撃した今、私たちの情報共有地がうまく機能しているふりを続けることもできない。

どうやら、それは矛盾しているようなのだ。私は言論の自由を支持しているものの、「真の意味」では支持していないのだ、という意見は理解できる。それでも、システムの何かの間違いに対して、いくつかのより深い、より基礎的な質問をするためにの合理的な判断一時休止をすることはあるだろう。私の苦しみは、ACLU(米国自由人権協会)が公式声明で見せた苦しみと同じものだ。

それは「我々は(トランプ大統領を)非難するが、(ネット企業の対応も)懸念している」というような、生ぬるいどっちつかずの意気地なしの反応だ。言論を取り巻く環境が急速に変化する中での穏当な対応の1つではある。同じいい方をするなら、私は「アイデアを公開討論する場」の強い擁護者だ、しかし残念ながら、それはもう今は潰えてしまった「アイデアを公開討論する場」の「1つ」に過ぎなかったということだ。ともかく、うまくいってないことを全部考えてみよう。

  • 情報が多すぎて、どんな合理的な人間でもすべてを処理することは不可能だ
  • 溢れる情報の多くはゴミであり、明らかな詐欺であり、さらに悪いことにそれが配布されている情報システムそのものを、混乱させ弱体化させるためにデザインされた秀逸な心理的プロパガンダの断片だったりする
  • 私たちはこれまで、これほどまでに多くの人たちが、公共の場所に対してこれほど制限もほとんどなしに信念や、戯言や、侮蔑を撒き散らすことを許してこなかった
  • 対話の中にアイデアはほとんど残されていない。構成主義的な思考と同様に、協調関係は死にかけている。今や「ストア」は同じ公共の広場の中ではなく、それぞれの個人のフィードの中に置かれているので、もはや「公開討論する場(marketplace)」は存在しない
  • ひと握りの支配的な独占プラットフォームからの強制的な誘導がコミュニケーションのやり方を荒々しく傷つけ、慎重な議論や論争よりも、有力な「クリックベイト」の方を奨励している
  • テックプラットフォームで見られるユーザーのエンゲージメント数が非常に多いことを考えると、大多数の人がこれを気に入っているようだ

私たちは、何十年も前からこうした事態が訪れることには気がついていた。人間が処理できない、現代の工業化された世界の複雑さをテーマにした、Alvin Toffler(アルビン・トフラー)の「Future Shock(未来の衝撃)」が出版されたのは1970年のことなのだ。1980年代から1990年代にかけてのサイバーパンク文学やSFは、この迫りくる猛攻撃に向かって広範囲に応戦してきた。インターネットが急速に拡大する中で、Nicholas Carr(ニコラス・カー)の「The Shallows(ネット・バカ)」のような本が、インターネットがいかに私たちが深く考えることを妨げているかを問いかけていた。それが出版されたのは10年前だ。現在は、地元の書店に行けば(もし書店がまだ存在していて、読者が実際に1000ワード以上の文章を読む能力がまだあるとするなら)、メディアと通信の未来を分析し、インターネットが認知的に私たちに何をしているかを分析しているさまざまな書籍を見つけることができる。

私の「言論の自由」に対する絶対的な信念は、米国で言論の自由がどのように機能すると考えられているかに対する、いくつかの明確な仮定に基づいていた。残念ながら、それらの仮定がもはや成り立たないのだ。

私たちはもはや、市民が自分たちが直面している問題について、おそらく怒りながらでも議論を交わすことができるような、おなじみの公共の広場があると仮定することはできない。私たちはもはや、クズ情報が編集者によって、または出版社によって、または読者自身によってフィルタリングされると仮定することはできない。私たちはもはやメッセージを携えて私たちに接触してくる人たちが、ある程度身辺調査済で、真実や事実を基に語っていると仮定することはできない。

私たちはすでに公開討論の場のあらゆる場所が、ありのままに機能しているのだと仮定することはできないのだ。

それこそが仕事の場でも生活の場でも、言論の自由の権利に日々頼っている私たちにとって、この時代を厳しいものにしているものなのだ。そうした基本的な仮定がなければ、言論の自由の権利は、私たちが期待しているような、人間の進歩主義と合理性の砦とはならない。私たちの情報共有地は、必ずしも最高で質の高いアイデアが最上位に浮上し、私たちの全体的な議論を推進してくれることを保証してはくれない。

私は寛容な米国人の感覚として、言論の自由を心から信じている。なので私と同じように、私たちの「公開討論の場」の危険な状態を本当に心配している友人も多い。しかし私たちはみな、目の前にある現実に直面する必要がある。システムは現実として本当に壊れていて、単に「言論の自由を!」と叫ぶだけでは、それを変えることはできない。

今後とるべき道は、言論の自由をめぐる会話を、私たちの世界の情報アーキテクチャをどのように改善していくべきかというより広い問いかけへと転換させることなのだ。クリエイターや、アイデアを生み出す人や、それらを分析する人が、適切な経済状況の下にそれを行うことを保証するにはどうすればよいのか?それは、作家、映画製作者、小説家、研究者、その他のすべての人が質の高い仕事ができるようにすることを意味する。おそらく長期間にわたって、収入が減らないようにするために「トップに留まり」続けようと、新しい写真や考察を10分ごとにアップロードしなくてもいいようにするということだ。

事実と「真実」が常にすぐにではないにしても、徐々にでも最終的には勝利をおさめることを確実にするためには、コミュニケーションの各階層におけるインセンティブをどのように整えていけば良いのだろうか?情報の大量流通にともなう力が、正確性や合理性に対する公の義務という概念を少なくとも何らかのかたちで体現している人たちによって、きちんと持たれるようにするにはどうすればよいのだろうか?

何よりも重要なのは、読者や視聴者の1人ひとりが、自分の目にした情報を処理する能力を高め、主体的な行動を通じて合理性に向かって議論を進めていくにはどうしたらよいのだろうか?賢く勤勉な顧客がいなければ、どのような市場も生き残れない。情報のための市場も例外ではない。人々が嘘を要求するならば、世界は彼らにそれを与えるだろう。すでに私たちが目にしたように容赦なく。

テクノロジーだけではこの問題を解決することはできないが、テクノロジーがその解決の一部となることは絶対にできるし義務づけられてもいるのだ。適切なインセンティブを備えた代替プラットフォームは、人類が世界を理解する方法と、現在、起こっていることを完全に変えることができる。これは非常に重要で知的に興味深い問題であり、野心的な技術者や創業者にとっては取り組むに値する魅力的な対象となるはずだ。

言論の自由は必ず守る決意だが、今、目の前にあるような状態のシステムでは擁護できない。ならば唯一の防御策は、このシステムの再構築を行い、上手く機能し続けているコンポーネントを強化し、機能していないコンポーネントを修理または交換することだ。魂の救済への道筋が誤った情報で埋めつくされているべきだとは思わない。私たちはみな、このシステムをあるべき姿にするための道具と力を持っているのだ。

関連記事:トランプ大統領はこうしてプラットフォームを失った、テック業界にとって前代未聞の歴史的な1週間を振り返る

カテゴリー:その他
タグ:ドナルド・トランプソーシャルメディアSNSアメリカコラム言論の自由ACLU

画像クレジット:mercava / Getty Images

原文へ

(翻訳:sako)

多様性・インクルージョンを評価するデータ駆動型プラットフォームKanarysが3.1億円調達

Mandy Price(マンディ・プライス)氏は、1年少し前にKanarys(カナリス)を立ち上げるために2人の共同創業者と一緒に起業家精神を身につけるまでは、すでに弁護士として個人事務所で大きな成功を収めていた。

ハーバード・ロー・スクールの卒業生である彼女にとって、企業のダイバーシティとインクルージョンへの取り組みの成果をハードデータを使って測定するための支援を行う会社を起業する必要はなかったが、立ち上げる必要があると感じたという。

会社を立ち上げてから1年が経過した現在、ファストフードのYum Brands(ヤム・ブランズ)、バスケットチームのDallas Mavericks(ダラス・マーベリックス)、百貨店のNeiman Marcus(ニーマン・マーカス)といった十数の企業がサービスを利用しており、その拡大を支援するため同社は300万ドル(約3億1000万円)のシードファンディングを調達した。

プライス氏にとって、Kanarysを立ち上げようと思ったきっかけは、彼女自身が法律の世界で働いていた経験にある。きっかけとなったのは彼女自身の成功に対する同僚からの些細な嫌がらせや賃金の格差、さりげなく見下した態度ではなく、彼女の経験はユニークなものではなく、何千人もの他の女性やマイノリティが毎日同じ経験に直面していることを知っていたからだった。

「私は職場で、他の多くの女性や有色人種の女性が経験してきたことと同じようなことをたくさん経験してきましたが、自分の子供たちにも同じような経験をさせたくなかったのです」とプライス氏は語る。

そこで、自身もダラス地域の連続起業家である夫のBennie King(ベニー・キング)氏と、テキサス大学オースティン校とハーバード大学の同級生であるStar Carter(スター・カーター)氏とともに、プライスは2019年後半にKanarysを立ち上げた。

同社は、雇用機会均等委員会に提出されるレポートや昇進、採用、福利厚生を含む様々なポリシーの評価を利用して、同業他社との比較でその企業のパフォーマンスを追跡調査している。

「我々が目にする不公平の多くは、構造的・体系的な観点からのものです。Kanarysは、企業がどのように不公平を持続させているかを見極めることができます」とプライス氏は述べている。

Kanarysはまず企業の方針や慣行の独立した評価から始め、四半期ごとに顧客の従業員を対象に調査を実施して、企業が掲げた達成目標をどの程度クリアしているかを確認する。また、既存の人事システムと統合して、給与の公平性や昇進などを追跡する。

このサービスは、同社の300万ドルのシードラウンドを主導したZeal Capital Partners、Rise of the Rest Seed Fund、Morgan Stanley(モルガン・スタンレー)、Jigsaw VC、Segal Venturesから支援を得た。

「組織は通常、個別の介入によってこの問題に対処しようとしてきました」とプライス氏は述べる。「我々が主張しているのは、両方の面から対処しなければならないということです。見られる不公平の多くは、組織的・体系的なポリシーや慣習に基づいています」。

Kanarysは顧客のためにダイバーシティとインクルージョンの取り組みに関する情報を追跡するだけでなく、求職者のためにGlassdoorのような約1000社を含むデータベースを提供している。その焦点は労働者の満足度だけでなく、従業員が勤務先のダイバーシティへの取り組みをどのように見ているかにある。

特筆すべきは、Kanarysの創業者たちは事業を立ち上げ、ベンチャーキャピタルを調達する(あまりにも少ない)黒人起業家の仲間入りをすることだ。同社が提供するデータによれば、2017年の調査では、米国で調達されたベンチャーキャピタルの98%は男性が占めていた。一般的に黒人起業家が受けるVC出資の割合は1%未満で、黒人女性創業者は、ベンチャーキャピタルの資金調達のわずか0.6%(CNN記事)を占めている。

「ビジネスにおけるDEI(Diversity・Equity・Inclusion、多様性・平等・インクルージョン)に焦点を当てることは、従業員のために正しいことであるだけでなく、ビジネス的にも良い意味を持つことがわかっています」とKanarysの創業者兼CEOであるプライス氏は声明で述べた。「KanarysのDEI データは、ダイバーシティ目標とインクルージョンプログラムに関連した実際の横断的なメトリクスを使用して、正確かつ即時に情報に基づいた意思決定を行うことを初めて可能にし、最終的にはビジネス目標の底上げにつながります」。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Kanarys資金調達DEI

画像クレジット:TechCrunch/Bryce Durbin

原文へ

(翻訳:Nakazato)

「Two Screens for Teachers」が今度はサンフランシスコの教師に2台目のモニターを寄贈

サンフランシスコ統一校区の教師は誰でも、必要ならセカンドモニター(パソコンの2台目のモニター)を、非営利団体Two Screens for Teachersから無料でもらうことができる。同団体は先にシアトルで同じ事業を展開していたが、今度はサンフランシスコの先生が、ここで申し込みできるようになった

モニターを2台所有することはパワーユーザーや贅沢の部類と思われがちだが、教師の毎日は、いわば巨大なグループ通話であり、授業用と児童生徒との通話用、計2台のモニターがあればとても便利だ。

Two Screens for Teachersは、Walk ScoreのMatt Lerner(マット・ラーナー)氏とMike Mathieu(マイク・マチュー)氏が2020年9月に始めた。最初は教師にモニターを購入するためのひと口100ドル(約1万300円)の募金サイトだったが、すぐにもっと大きな活動になった。

地元の企業やVCたちからの寄付で、シアトルのすべての先生にモニターを買ってあげられるほどのお金が集まった。募金より効率的だ。モニターの入手も、パソコンの大手メーカーであるDellなどからバルクで買えるようになり、ずっと安くなった。

サンフランシスコは十分な資金を集めるために最適な次の場所であり、今ではオークランド、レッドウッドシティ、コントラコスタ郡と同様に、サンフランシスコのために十分な資金が集めている(サンノゼはまだ少し不足している)。

この注目すべき地図は、希望に満ちたものであると同時に恐ろしいものである。達成されたものに対する必要なものの規模を示している。

2台目のモニタが必要な教師の場所と人数を示す地図(画像クレジット:Two Screens for Teachers)

全米の15万名あまりの先生にモニターを届けるのは巨大すぎるプロジェクトのように思えるが、ささやかな始まりからわずか数カ月で、Two Screens for Teachersは大都市から小さな町まで、全部で2万台を配布することができた。このペースを考慮すると、ひと桁アップなんて簡単だと思える。

全国の教師にセカンドモニターが行き渡るために要する資金は、およそ2300万ドル(約23億6000万円)で、1人の億万長者が払えるほどとても小さな額だ。時価総額や評価額が1年で10倍になった人なら、1枚の小切手で済む寄付の額だ。あなたの善意が全国隅々まで行き渡ることをお望みなら、ぜひご検討を。

ここがその寄付用サイトのリンクとなる。

所得が億単位でない人でも、このやり方なら先生にモニターを届けることができる。

関連記事:Two Screens for Teachersがシアトルの公立学校教師全員に2台目のモニターを寄贈

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Two Screens for Teachers教育寄付

画像クレジット:Two Screens for Teachers

原文へ

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

イタリア地裁がDeliverooの配達員ランキングアルゴリズムに対し「差別的」と判決、賠償命令

イタリアの地裁は、3つの労働組合が起こした訴訟において、純粋なアルゴリズムによるマネージメントに打撃を与えた。ボローニャ裁判所は、オンデマンドフードデリバリープラットフォームDeliverooで使用されていた評判ランキングアルゴリズムは、地元の労働法に違反してギグ配達労働者を差別したと裁定した。

先にイタリアで報道されたこの判決は、Deliverooのランキングアルゴリズムは、労働を留保する場合に法的に保護された理由を明確に区別しなかった — 例えば、配達員が病気だった、あるいは、保障された権利に基づいてストライキを行使しているなど、法的に保護された理由で働いていないのか、それとも、当初自ら示したほど生産的でなかった、など、もっとささいな理由だったのか区別がないので、配達労働者を差別したとしている。

イタリア労働総同盟(Italian General Confederation of Labour; CGIL)は声明の中で、ボローニャ裁判所の判決を「デジタル社会での、労働組合の権利と自由の征服において画期的な転換点」と呼んだ。

判決についてDeliveroo社にTechCrunchがコメントを求めたところ、同社の広報担当者からこのような声明が送られてきた。

「この判決は、Deliverooがイタリアや他の市場ですでに使用していない、過去の予約オプションモデルに関するものです。ライダーは、いつ働くか、どこで働くか、少しの間、または望む限りの時間など、選択する完全なフレキシビリティを持っています。予約システムというものはなく、仕事を受け入れる義務もないということです」。

「ライダーが望むフレキシビリティを提供するために、私たちは自営業(モデル)を提供しているのです。すべてのアンケート調査で、ライダーは圧倒的に何よりもフレキシビリティを重視していると示しています。最新の調査では、80%以上の確率でした。現在Deliverooは、自営業のライダーとして働くための申込を毎週何千も受理しており、英国内ではライダーの数を倍増させました。昨年、英国では2万5,000人だったライダーの数は、5万人に増えています」。

DeliverooイタリアのゼネラルマネージャーであるMatteo Sarzana(マッテオ・サルザーナ)氏から声明を得たAnsa.itによると、裁判所はDeliverooに対し、申請者に5万ユーロ(約630万円、プラス訴訟費用)を支払うよう、そして同社のウェブサイト上で判決を公開するよう命じたという。これに対し同社は、裁判官の裁定に留意するものの、賛同はしていないこと、さらに、ランキングアルゴリズムとリンクされているシフト予約システムは、もはや市場で使用されていないことを強調した。

「旧システムの公平性は、裁判の過程で客観的かつ現実的な差別の事例が一つも出てこなかったことからも確認されています。裁定は、具体的な証拠のない仮説と潜在的な評価にのみ基づいている」とサルザーナ氏は声明の中で付け加えた(イタリア語からの翻訳)。

オンデマンドデリバリーアプリで知られる同社は、本拠地イギリスでも法的課題の数々に直面している。(自営業の配達人としての)ギグ労働者の分類に関しての問題や、ライダーの団体交渉権に反対しているためだ。

英国の下院議員Frank Field(フランク-フィールド)氏が2018年に主導した調査は、(ギグの)「柔軟な」労働モデルを20世紀の造船所になぞらえ、Deliverooが生成する二重労働市場は、一部のライダーにとっては非常にうまく機能するが、他の者たちには非常に悪いと言っている。

ボローニャ裁判所の判決はまた、大規模な「自営業」労働力をアルゴリズムを使って管理する他のギグプラットフォームに対する数々の法的異議申し立てがここ数ヶ月の間、ヨーロッパで提訴されていることからも注目される。

この中には、昨年夏にオランダでUberの自動化された意思決定に対する異議申し立てを行ったUberドライバーのグループが含まれており、汎EUデータ保護法に言及している。

配車サービス会社のOlaも同様の課題に直面しているが、自営業者の労働力を管理するツールとしての技術的な監視とデータ使用が対象になっている。

これらのケースに関する判決はまだ係争中だ。

同時にEUの議員は、大規模なオンラインプラットフォームがアルゴリズムによるランキングシステムがどのように機能しているかについての情報を規制当局に提供することを義務付ける新法を提案している。AIによって動く巨大企業に対し、より幅広い社会的な監視を可能にすることを目的としたものだ。

プラットフォームのアルゴリズムの監視と説明責任を可能にするこの動きは、透明性の欠如と、自動化された決定がバイアス、差別、搾取を拡大する可能性についての懸念に応えるものと言える。

関連記事:フードデリバリーのDeliverooが客によるピックアップも選択肢として提供

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Deliveroo フードデリバリー 差別

[原文へ]

(翻訳:Nakazato)

グーグルとアルファベットの従業員が労働組合結成を模索中

Google(グーグル)とAlphabet(アルファベット)の従業員200人以上のグループが、組合を結成する取り組みを発表した。Communication Workers of America Union’s Campaign to Organize Digital Employees(CODE-CWA、アメリカ通信労働組合のデジタル従業員組織キャンペーン)のサポートを受けて、Alphabet Workers Union(Alphabet労働組合)は従業員と契約労働者の両方に門戸を開くことを模索している。

これまでに227人が労組支援に署名し、組合費として年俸の1%を払うことを約束した。署名した労働者の多くがサンフランシスコ・ベイエリアのオフィスに勤務していて、1人はケンブリッジの勤務だ。

しかし明確にしておくと、Alphabet労働組合は従来の労組と比べ少々変わっている。現在の加入者はAlphabetの従業員13万2121人のうちわずか227人。Alphabet労組が意図するところは必ずしもAlphabet傘下企業と駆け引きができるようになることではなく、共通の目的に向かって一致して取り組むことだ。

「これは歴史的なことです。主要テック企業におけるテックワーカーによる、テックワーカーのための初の労組です」とグーグルでソフトウェアエンジニアとして働くDylan Baker(ディラン・ベイカー)氏は声明で述べた。「我々は代表を選び、民主的に決定を下し、費用を払い、そして会社に自分たちの意見を反映させたいと望むグーグルの全労働者が労組に加入できるようにするためにスキルを持つ幹事を雇います」。

Alphabet労組は、Kickstarter(キックスターター)やGlitch(グリッチ)のようなテック企業での2020年初めの労組結成に続くものだ。加えて、ピッツバーグのグーグルと契約しているHCL Technologies(HCLテクノロジーズ)の労働者とベイエリアのテック企業カフェテリアワーカーも2020年に労組を結成した。

「労働者の産業があります。労働者の新世代、特にテックとゲームの業界においては若い人が急激に増えています」とCODE-CWA組合幹事のWes McEnany(ウェス・マクアナニー)氏は、なぜテック企業に労組が増えているのかについてTechCrunchにこう述べていた。「一部の人は、本当に悪いことをしている企業で働いてかなり儲けています。彼らは、もういい加減にしろ、というような社会的地位にいると思います」。

グーグルは過去数年、多くの労働問題を抱えた。グーグルでのストライキ実行、ストライキ組織者に対する報復措置の報道、Timnit Gebru(ティムニット・ゲブル)博士の最近の退職などがあり、グーグルの労働者が取り組みを公式なものにすることに決めたというのは驚きではなない。

プレスリリースの中で労働者たちは、Alphabet傘下企業で働く労働者の半数以上が契約業者であり、それゆえに彼らは多くの福利厚生が受けられていない点も指摘した。加えて、ハラスメントで訴えられた幹部にかなりの額の退職金が支払われた件や、軍のドローン技術など政府との契約の一部も問題視している。

一方、全米労働関係委員会(NLRB)はちょうど先月、グーグルが労働者を調査し、広範に干渉し、そして全国労働関係法によって保障されている権利の行使を抑制することで全国労働関係法に違反したとしてグーグルを提訴した。

NLRBはまた、「従業員が労組を結成、加入、サポートしたり、他の保護された言動に従事する」ことをグーグルが思い止まらせていたとも主張している。

そうした主張は労働者が組合を結成したい理由だ。ただ、彼らは現在、労働条件について集団で話し合う法律上の権利を持っていない。

従来のプロセスでは、次のステップはAlphabetからの承認を模索することになるだろうが、これは難しい。Kickstarterの労働者が2019年にKickstarterに承認を要求したとき、労働者の大半が労組をサポートしていたにもかかわらず同社経営陣は却下した。承認するどころか経営陣はNLRBと正式な選挙を行うよう強制した。これを受けてKickstarterの労働者は職場をボイコットしたが、Kickstarter労組は発足してから承認されるまでにおおよそ10カ月かかった。

TechCrunchへの最初の声明に続いて出した2つめの声明文の中で、グーグルの人事担当ディレクターKara Silverstein(カラ・シルバーステイン)氏は次のように述べた。

「我々は、協力的でやりがいのある職場づくりに常に懸命に取り組んできました。従業員はもちろん当社が支持する労働の権利を有します。しかしこれまでそうしてきたように、今後も全従業員に会社が直接関わります」。

Alphabet労組は正式に承認されればCWA Local 1400に属する。

「この労組結成は、グーグルワーカーによる何年にもわたる果敢な取り組みの結果です」とグーグルでプログラムマネジャーとして働くNicki Anselmo(ニッキ・アンセルモ)氏は声明で述べた。「『実名』ポリシーとの戦いからProject Maven反対、セクハラをした幹部に支払われた言語道断の退職金への抗議に至るまで、我々が集団で行動したときのAlphabetの対応を目の当たりにしてきました。ニュースで騒がれた後でもAlphabet従業員が敬意を払われるよう、新しい労組は共有する価値観を確かなものにする持続可能な組織です」。

労働者たちはまた、労組結成を決めた理由を詳細につづった論説をニューヨークタイムズ紙に出している。

関連記事
Kickstarterの正社員たちが労働組合を結成
オンラインのコードコラボツールGlitchが労使協調の下で労働組合を結成
全米労働関係委員会がグーグルを従業員の監視やその他の労働違反で告発

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:GoogleAlphabet労働組合

画像クレジット:Alex Tai/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

原文へ

(翻訳:Mizoguchi

2020年の注目すべき労働問題を振り返る

今週はあまりたくさんのことが起きなかったので、この機会を借りて2020年の注目すべき労働関連の話題を振り返ってみたい。

ギグ・ワーカー vs Uber、Lyft、Instacartなど

カリフォルニア州の住民立法案 Proposition 22は、Uber、Lytf、DoorDashらのギグカンパニーの支持を受けて通過し、ギグワーカーは個人事業主として分類されることになった。これは賛成側にとって2億ドル以上の価値をもたらす重要な法案だった。しかし戦いは終わっていない。詳しくはこちらで読める(未訳記事)。

Amazonのつまづきの数々

Amazon(アマゾン)は年間を通じてさまざまな労働争議に直面し、その多くは同社の倉庫従業員監視(VICE記事)に関わるものだった。

一例を挙げると、元Amazonの倉庫係であるCharistian Smalls(チャリスタン・スモールズ)氏は2020年3月、ニューヨーク州スタテン島の同社配送センターでストライキを起こした後に解雇された。その結果ニューヨーク州司法長官は、Amazonがスモールズ氏を解雇したことで連邦労働安全法およびニューヨーク州の公益通報者保護法に違反したという疑いで捜査している。

スモールズ氏の解雇は、他の倉庫労働者たちを奮い立たせ、後にAmazon倉庫内の変革を要求する国際組織を編成するきっかけとなった。主催者らは労働者への報復がAmazon Workers Internationalを組織化する原動力の1つだったと語った。一方、Amazon経営陣は、スモールズ氏を疑う発言を繰り返し、同氏を抗議行動の首謀者だと指摘した。

かつてAmazon広報担当者は本誌に対し、同社はスモールズ氏を抗議の組織化を理由に解雇したのではないと伝えた。Amazonは「他者の健康と安全を脅かし雇用条件に違反した」ために同氏を解雇したと語っている。

2020年11月、スモールズ氏はAmazonを相手取って訴訟を起こし、同社が従業員にPPE(個人用保護具)を支給しなかったと主張した。

テック・ワーカーによる組合結成

Kickstarter(キックスターター)とGlitch(グリッチ)は、テック企業として労働組合を結成した初期の会社だ。Kickstarter社員たちは2020年2月に組合結成を投票で決めた。1カ月後、Glitchも投票によって組合を結成した。

2020年9月時点で少なくとも10社のテック企業が組合結成を積極的に進めていると、OPEIU(事務専門職従業員国際労働組合)の北東部組合組織責任者であるGrace Reckers(グレース・レッカーズ)氏が本誌に語っている。

「労働者たちは自分たちが作っている製品が、どのように使われているかを決めることができません」と彼女はいう。「シリコンバレー企業のほとんどは、より良い世界を作り、私たちの生活を簡単・革新的にするというメッセージを発信していますが、同時に、すばやく動いて物事を破壊するという哲学の下で行動しています」。

【情報開示】筆者のパートナーはGlitchに勤務し、組合の交渉委員会に所属している。

Pinterestが厳重な監視下に置かれる

Pinterest(ピンタレスト)の元従業員であるIfeoma Ozoma(イフェオマ・オゾマ)氏とAerica Shimuzu Banks(エアリカ・シムズ・バンクス)氏の2人は、同社における人種および性差別を声高に非難(未訳記事)した。その直後、Pinterestの前COOであるFrancoise Brugher(フランソワーズ・ブルーガー)氏が同社を性差別で訴訟(未訳記事)し、Pinterestは2250万ドル(約23億2000万円)で訴訟を和解した。

しかしオゾマ氏とバンクス氏は、自分たちの扱いについてブルーガー氏と比較して二重基準であると私に説明した。ブルーガー氏が2000万ドル(約20億1000万円)を受け取ったのに対して、オゾマ氏とバンクス氏が受け取った退職手当は報酬の1年分以下だった。

「これは、黒人女性が先陣を切って不平等を暴き、そこへ白人女性がやってきてすべての恩恵を受ける、という昔ながらの米国の伝統に沿うものです」とバンクス氏は私に語った。

ゲブル博士のGoogle辞職が波紋を呼ぶ

カリフォルニア州サンフランシスコ、2020年9月7日。GoogleのAI科学研究員であるTimnit Gebru(ティムニット・ゲブル)氏が2018年9月7日にMoscone Centerで行われたTechCrunch Disrupt SF 2018第3日の壇上で講演(画像クレジット:Kimberly White/Getty Images for TechCrunch)

Google(グーグル)のAI研究者のトップであるTimnit Gebru(ティムニット・ゲブル)博士は、会社のDEI(多様性・公平・受容)ヘの取り組みと彼女の研究論文を巡る承認手続きに失望したことを訴えるメールを直属の部下に送ったことでGoogleを解雇されたと語った。ゲブル氏がそのメールを送ったのは、言語モデルに関するAI倫理の論文に彼女と同僚の名前を載せることをGoogleが許可しなかったことを受けたものだった。以前ゲブル氏は上司にメールを送り、もし会社が彼女の具体的条件を認めなければ会社を去るつもりだと書いていた。その後Googleは同氏の辞意を受け入れたことを伝え、彼女の業務メールへのアクセスを切断した。

2020年12月にGoogleのCEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏は、ゲブル氏の退社に至った経緯を再調査すると発言した。ピチャイ氏は、会社は「多大な才能をもつ著名な黒人女性指導者がGoogleを去った事実の責任を受け入れる」必要があると社内メモに書いた。さらに同氏は、このことがGoogle社内の過小評価されているコミュニティに「波及効果」をおよぼしていることについても言及した。

Alexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏が取締役の席を黒人に譲る

Reddit(レディット)の共同ファウンダーであるAlexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏は、同社取締役を辞任し、後任を黒人にするよう会社に求めた。Redditはオハニアン氏の提案を受け入れ、Y CombinatorのCEOであるMichael Seibel(マイケル・サイベル)氏を指名した。

コワーキングスペース「The Wing」でトラブル発生

ワシントンDC。女性専用コワーキングスペース The WingのファウンダーであるAudrey Gelman(オードリー・ゲルマン)氏。The Wingはニューヨーク市でスタートし、ワシントンDCはニューヨーク以外で初めての事業所(画像クレジット:Evelyn Hockstein/For The Washington Post via Getty Images)

The Wing(ウィング)は、人種その他の差別を巡る疑惑を受けて炎上した。CEOのAudrey Gelman(オードリー・ゲルマン)氏は辞任し、対応を怠ったことを後日謝罪した。

元従業員に送ったメモの中でゲルマン氏は、The Wing在任中に有色人種女性に対する差別と戦わなかったことを謝罪した。同氏はさらに、成功と規模拡大を急いだ自身のやり方が「会社の描いた価値に見合った健全で持続可能なカルチャーや、自分たちの価値を認められ尊重されていると社員が感じられる職場の慣行を犠牲にしていた」ことを認めた。

つまり、The Wingは「サービス業界における歴史的な迫害と人種差別の根源を絶つことをせず、より優しく穏やかなバージョンに見せていただけでした」とゲルマン氏は述べている。

関連記事
Amazonはパンデミック中に労働者に個人防護具を提供しなかったと訴えられる
Kickstarterの正社員たちが労働組合を結成
GoogleのAI倫理研究チームの共同リーダーが部下宛てメールが原因で解雇されたと語る
グーグルCEOがAI倫理研究チームのゲブル博士辞任の真相調査を要求
コワーキングスペース運営The Wing元CEOが有色人種の女性に対する差別と闘わなかったことを謝罪

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:労働組合

画像クレジット:JOHANNES EISELE/AFP via Getty Images / Getty Images

原文へ

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

中国政府のAnt、Alibabaへの規制強化を受けて世界の投資家は中国のハイテク株から脱出中

ジャック・マー(馬雲)氏が設立したAntとAlibabaは最近まで中国のテクノロジー・エリートの最高の達成点として歓迎されていた。しかしこの世界的企業グループが中国政府から厳しい取り締まりを受けたことで世界の投資家は中国のテクノロジー株から脱出し始めている。

中国の主要テクノロジー企業の株価は急激に下落している。Alibaba、Tencent、JD.com、Meituanは数日で時価総額2000億ドル(20.7兆円)を失ったとBloombergは推計している。

中国を代表するフィンテック企業であるAntグループの株式上場が土壇場で政府から中止を命ぜられたことで関連企業である電子商取引の巨人も大きく動揺していた。中国政府の市場監視機構は反競争的行為の疑いでAlibabaの捜査を始めたと伝えられる。

Antグループ自身は12月26日に政府の召喚を受け、ビジネス慣行を「修正」する計画を提出することを余儀なくされた。

Alibabaの株価は、10月下旬の直近の高値から約30%下落している。さらに中国国内市場におけるテクノロジー株も広範囲に下落している。 中国のテクノロジーに焦点を当てた上場株投資信託の1つは、今日の取引による1.5%の下落を含めて直近高値から約8%ダウンした。

投資家がAlibaba株式に投資するために利用した米国預託証券(ADR)はニューヨーク証券取引所での12月23日の取引終了時の1株あたり256ドルからわずか1日で約222ドルに下落した。 同社は今日、さらに0.5ポイント下落している。 今四半期当初には1株あたり319ドル以上だった。

中国でハイテク企業と中国共産党との間で緊張が高まっていることは明らかでこれまでも投資家を強く懸念させていた。しかしジャック・マー氏の中国政府との関係は他の有名起業家の場合と比べても一層険悪化なものとなった。Tencentのファウンダー、ポニー・マー(馬華騰)氏、百度の共同ファウンダー、エリック・ヨン(徐永)氏とロビン・リー(李延紅)氏はジャック・マー氏とくらべて脚光を浴びまいとしている。

Bloombergは現在の市場の状態を簡明にまとめている。それによれば、最も直接的に政府の標的となっているのはジャック・マー氏のように見えるが、別の機会に中国の規制当局はTencentのゲームにおける影響力を減殺しようと焦点を当てている。

特にAlibabaの事態は悪化の一途をたどっており、大規模な自社株買いプログラムによっても出血を止めることができなかった。

今回の新たな規制は、単発的、一過的なのか、それとも中国政府がハイテク企業を国益に従属させようする努力の表れなのかはまだはっきりと見極められない。アメリカと中国の間でテクノロジー上の対立が激化しする中、これまで政治を避けて成長を遂げてきた多くの企業が外交と国家安全保障の十字砲火にさらされることになるかもしれない。

一方、新たに中国政府から後押しされて幸運が微笑んでいる企業もある。

これはCPU分野では以前から明白で、中国がテクノロジーの自立化を推進する中で新たな事業と新たな富豪が生まれつつある。Liu FengFeng(刘峰峰)氏は国内に新しい半導体メーカーを建設しようとするTsinghon(清鸿光科)を設立してすぐに500万ドルを調達することができた。機械学習アプリケーションに特化したチップセットを製造すIntellifusion社は、4月に1億4100万ドルを追加調達している。

非政府投資家は、中国政府の規制の風向き次第で危機に直面するリスクがある中国のテクノロジー・スタートアップを支援することに意欲を失うかもしれない。 この地域の他のスタートアップ市場(とりわけインド、日本)が中国の規制強化から恩恵を受けるかどうかは、2021年に津注目すべきトピックの一つとなるだろう。
画像:Getty Images

原文へ

カテゴリー:
タグ:

滑川海彦@Facebook

Pinterestが差別訴訟・ストライキ後、職場文化の推奨事項を導入すると発表

Pinterestは米国時間12月16日、ブログ記事の中で、取締役会の特別委員会の勧告を導入することを約束する、と発表した。この委員会は今年6月、2人の元従業員、Ifeoma Ozoma(イフェオマ・オゾマ)氏とAerica Shimizu Banks(エアリカ・シミズ・バンクス)氏が、Pinterestで働いていた時の人種・性差別の訴えを公表した直後に結成されたものだ。

WilmerHale(ウィルマーヘイル)法律事務所に職場環境の考察を依頼した委員会は、350人以上の現従業員と元従業員に話を聞き、Pinterestでの多様性、公平、インクルージョンの改善に向けた提言を行った。その中から、次にいくつか挙げる。

  • 管理職・役員を含む全社員を対象にした、アンコンシャスバイアス(無意識の先入観)研修の義務化
  • 包括性と無意識の先入観に関する追加トレーニングを提供
  • 求職者との面接パネルに「多様な人材」を入れる
  • DEI(Diversity・equity・inclusion、多様性・公平・インクルージョン)を支援し、推進するため努力している従業員に褒賞
  • ダイバーシティ報告書を年2回、少なくとも2年間発行し、2年後には年1回発行する
  • 昇格資格基準を設ける
  • Pinterestのハラスメント・差別ポリシーを強化する
  • 一貫した公正な結果を保証するため、職場調査チームを一元化する

こちらから、すべての推奨事項を見ることができる。Pinterestは、TechCrunchへの声明の中で、これらの変更を実行するよう全力を尽くすと述べている。

「私たちは従業員を尊重しており、Pinterestで働くすべての人材にとって多様で公平、包括的な環境を構築することが私たちの責任であると認識しています。」とPinterestの広報担当者は述べている。「私たちは変化の緊急性を理解しているため、この数ヶ月間、Pinterestのすべての人々が安全に感じ、歓迎され、支援されていると感じるようになるべく行動を起こしました。すべての従業員が本社の一員だと感じ、支持されていると感じる文化を確保する過程にあると信じています」とも。

PinterestのCEOであるBen Silbermann(ベン・シルバーマン)氏は、従業員へのメモの中で、今週後半には社内全員がこの勧告について話し合ったり、質問をしたりする機会が設けられる予定だと述べた。シルバーマン氏はまた、提案の多くが 「すべての従業員が含まれ、サポートされていると感じる文化を構築するために、すでに進行中の取り組みを反映している 」ことに勇気づけられたと感じている、と述べている。

米国時間12月14日、Pinterestは前COOであるFrancoise Brougher(フランソワーズ・ブロワー)氏との性差別訴訟を2250万ドル(約23億3000万円)で和解した。しかし、その高額な支払いは、テック業界の不平等の一部を浮き彫りにした。ブロワー氏が訴訟を起こしたのは、オゾマ氏とバンクス氏が訴えを公表した後の8月のことだった。ブロワー氏が数千万ドルを手にしたのに対し、オゾマ氏とバンクス氏が受け取ったのは、1年分の報酬に満たない退職金のみだ。

「多くの、とだけでは言い切れない数多くの他のケースのように、私たちは黒人女性として身をさらし、自分たちに起こったことを何もかもすべて共有して、そこに誰かが急降下して『進歩』を回収する土台を作ったのです」とオゾマ氏は以前TechCrunchに語った。「ここには何の進歩もありません。なぜなら、(最も)害を受けた者たちに対しての償いはないからです」。

関連記事:Pinterestが性差別訴訟で前COOと23.4億円で和解

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Pinterest  差別

[原文へ]

(翻訳:Nakazato)

来年提出予定の英国オンライン危害法案が、注意義務違反に対して年間売上高10%の罰金を提案

目下論議の的となっているポピュリスト的な計画を、英国はさらに押し進めていく模様だ。子供たちを危険にさらす可能性のあるオンライン上の違法または有害なさまざまなコンテンツを規制するというものである。2019年4月に始まった同協議に対して英政府が出した最終的な結論は、「Online Safety Bill(オンライン安全法案)」を来年の導入に向けて進めていくというものだ。

「チャイルドグルーミングやいじめ、ポルノグラフィーなどの有害なコンテンツや活動から子供たちを守るため、技術プラットフォームはより積極的にならなければなりません。この法案は、未来の世代がインターネットの恩恵を十分に享受しながらも被害のリスクを軽減させるためのより良い保護措置となってくれることでしょう」。

「Online Harms(オンライン危害)」ホワイトペーパーに関する協議への部分的な回答によると、英国の情報通信庁であるOfcom(オフコム)が今後の規程を施行するための機関として選出されたという。

本日発表された計画によると、Ofcomは児童虐待、テロリスト関連、自殺促進などの違法なコンテンツにさらされている子供を保護するための注意義務を怠ったとみなされた企業に対して、1800万ポンド(約25億円)の罰金、もしくは全世界で年商の10%のうちどちらか高い方の金額の支払いを命じることが可能になる。

Ofcom はまた、規程を遵守していないサービスへの英国内でのアクセスをブロックする権限を持つというが、それが具体的にどのようにして達成されるかは明らかではない(またこの法律が、ブロックされたインターネットサービスに英国人がVPNを使用してアクセスするのを阻止するものなのか否かも不明である)。

英政府によると規制当局のランニングコストは、同法律の対象となる、年間収益に基づくしきい値を超えた企業が負担することになるが、その支払いが今後どこで発生するかはまだ明らかではない(また、テック系大手企業やその他の企業が監視のためにどれだけのコストを捻出しなければならないかも明らかではない)。

オンライン安全の「注意義務」ルールは、Facebook(フェイスブック)のようなソーシャルメディアの巨人だけでなく、出会い系アプリや検索エンジン、オンラインマーケットプレイス、ビデオ共有プラットフォーム、インスタントメッセージングツール、さらには消費者向けクラウドストレージや、ユーザー同士が関わり合うビデオゲームまで、幅広いインターネットサービスを対象としている。

政府のプレスリリースによると、準プライベートメッセージングサービスと同様に、P2Pサービス、オンラインフォーラム、ポルノサイトもこの法律の対象となるとのことだ。

これにより、この法的要件が企業にエンドツーエンドの暗号化を使用しないよう圧力をかける可能性があるかどうかという厄介な疑問が浮上する(例えば堅牢に暗号化された違法コンテンツを監視できないことでペナルティを受ける場合もあるだろう)。

「この新規制は、英国に住む人々がアクセス可能なユーザー生成コンテンツをオンラインでホストしている世界中の企業や、オンラインで個人的または公に他者との交流を可能にしている企業すべてに適用されます」と英政府はプレスリリースに書いている。

このルールにはコンテンツや活動に対する責任のカテゴリーが存在し、トップティア(カテゴリー1)は「最大のオンラインプレゼンスと高リスクの機能」を持つ企業にのみ適用されているが、これは要するにFacebook(フェイスブック)、TikTok(ティックトック)、Instagram(インスタグラム)、Twitter(ツイッター)のことを指しているのだろう。

「こういった企業は『成人に身体的または心理的に重大な危害をもたらすであろうリスク』という観点からコンテンツや活動のリスクを査定する必要があります。そしてどのような種類の『合法的だが有害な』コンテンツがプラットフォーム上で許容されるのかを利用規約で明確にし、これを透明性と一貫性を持って施行する必要があります」と書かれている。

英政府の広報によると、カテゴリー1の企業は、オンライン被害に取り組むための措置について透明性報告書を公表することも法的に求められることになるようだ。

同法律の対象となるすべての企業は、人々が簡単に有害なコンテンツや活動を報告でき、またコンテンツの削除を申し立てできるような仕組みを構築する必要がある。

英政府は、英国企業の3%未満がこの法律の適用範囲に入ると考えており、「大多数」はカテゴリー2のサービスになると付け加えている。

言論の自由の保護も組み込まれる予定だ。政府はこの法律はニュースサイトの記事やコメント欄などには影響しないと伝えている。

同法には、企業の上級管理職に刑事制裁を課す規定も含まれる予定だ(二次法で国会が導入)。これについて政府は、企業が新規制に真剣に取り組まなかった場合には、権力を行使することを躊躇しないと付け加えている(Ofcomからの情報要求に「完全、正確、タイムリーに」対応しなかった場合など)。

同計画についてコメントしたデジタルセクレタリーのOliver Dowden(オリバー・ダウデン)氏は次のように述べている。「私はテクノロジーの大いなる支持者ですが、だからと言ってテクノロジーに規制が必要ないというわけではありません。今日、英国はオンライン規制に対するこれまでで最も包括的なアプローチで、オンラインの安全性に関する世界基準を設定しています。私達は新時代を迎えつつあり、テクノロジー企業は、子供や弱い立場にあるユーザーを保護し、この業界への信頼を回復し、言論の自由の保護措置を法的に制定するための説明責任を果たさなければなりません」。

「この釣り合いのとれた新しい枠組みは中小企業に不必要な負担をかけるものではなく、大手デジタル企業が従うべき強固なルールを設定し、現代テクノロジーの素晴らしさを存分に利用して私たちの生活を向上させるためのものです」。

別の補足声明でPriti Patel(プリティ・パテル)内務大臣は、「ハイテク企業は公共の安全を第一に考えなければなりません。それができない場合、その責任をとることになるでしょう」と付け加えている。

OfcomのCEOであるDame Melanie Dawes(デーム・メラニー・ドーズ)氏は、より広範となったこの新監視権限を歓迎し、コメントを残している。「インターネットは大きなメリットをもたらしてくれますが、5人に4人がインターネットに関する懸念を抱いています。このことは、ユーザーを深刻な被害から保護するだけでなく、表現の自由を含むオンラインの素晴らしさを認識する賢明でバランスのとれたルールの必要性を示しています。私たちは、新しい技術とデータのスキルを身につけることでこの課題に備えて準備を進めており、議会が計画を最終決定する際には議会と協力して取り組んでいきます」。

英政府は法律の導入に先立ち、テロ活動やオンラインでの児童の性的搾取の防止に取り組むための企業向けガイダンスを提供するため暫定的な実践規範を米国時間12月15日に公表した。議論と精査のために長い期間を要するため、法制化されるのは早くとも2021年後半だろうと言われている。

オンライン上で「子供を守る」という名のこの政治的な取り組みは、タブロイド紙レベルの支持を得ることはできるだろう。しかし政府が思い描いている注意義務規程の広範な適用は、英国の技術セクターの大部分が多大な影響を受けるということもあり、プライバシーやセキュリティへの影響に関する連鎖的な懸念を含め、経済団体、起業家、投資家、法律や政策の専門家からの大きな批判を受けることになるだろう。

大きな被害を発生させている一握りの巨大プラットフォームに焦点を絞るのではなく、小規模なデジタルビジネスにしわ寄せを与えかねないオンライン安全法案を推進するこの計画は、すでにテック業界からの批判を集めている。

スタートアップや英国のテックセクターを擁護するデジタル政策団体のCoadec(コアデック)は、この計画が起業家にとって「混乱に満ちた地雷原」だとして批判している。同計画はデジタル競争の促進とは逆行するもので、デジタル広告分野における市場の集中についての懸念に対応するために政府が最近発表した他の措置を打ち消すことになると主張している。

「先週、政府はデジタル市場での競争を促進するために、CMA(Competition and Markets Authority/競争市場局)内に新しいユニットを設置することを発表しました。その数日後、政府はそれとは正反対の効果をもたらす危険性のある規制措置を発表しました」とCoadecのエグゼクティブディレクターであるDom Hallas(ドム・ハラス)氏は声明で述べている。「英国の投資家の86%が、ビッグテックへの取り組みを目的とした規制はテック系スタートアップにダメージを与え、競争を制限するような悪い結果につながる可能性があると述べています。この計画は競合他社に不釣り合いな影響を与え、法律を遵守するためのリソースを持つ大企業だけに利益をもたらす、混乱に満ちた地雷原になる危険性があります」。

同氏はさらに、「英国のスタートアップは、より安全なインターネットを望んでいます。しかし、今回の提案はeコマースからシェアリングエコノミーまで、ソーシャルメディアとはかけ離れた幅広いサービスを対象としており、1年半近く前に政府が提案を発表した時と比べてターゲットが絞られているようには感じられません。政府がスタートアップの創業者を常に懲役刑で脅すのではなく、協力的に取り組んでくれるようになるまでは、我々側としては効果的な提案ができません」と述べている。

政府の提案におけるズレの一つに金融被害がある。詐欺や安全でない商品の販売などの問題はフレームワークから明確に除外されているが、これは政府がこの規制が企業にとって「明確で管理しやすい」ものでありことを望んでおり、また既に存在するルールを重複して課してしまうリスクを回避するためと伝えている。

また英政府によると「リスクの低い」サービスの中には、法律が過度に負担になることを避けるため注意義務を免除される場合もある。

Eメールサービスも対象外となることが確認されている。

ソーシャルメディア上に掲載されたインフルエンサーによる宣伝など、ある種の広告は法規制の対象となるものの、広告主とFacebookやGoogle Adsなどの広告サービスとの直接契約を介して法規制対象のサービスに掲載された広告は「既存の規制でカバーされている」ため規制対象から除外されるという。あたかもアドテックの複占企業が有害な広告を掲載するのを、理由もなく許容しているかのようである。

結局のところ英国の既存の規制は、Facebook上やGoogleの広告ツールを介して見られるような暗号化された悪質広告の流れを止めるためにさほど大したことを行ってきたわけではない。そしてこの結果、例えばFacebookや他の企業の行動を正してもらおうと消費者相談担当者によるキャンペーンが起きている。

消費者団体のWhich?(ウィッチ?)は、オンライン安全法案の中で政府が金融詐欺に十分な注意を払っていない点を批判している。同団体の政策・アドボカシー担当ディレクターであるRocio Concha(ロシオ・コンチャ)氏は政府の発表を受け声明の中で次のように述べている。「政府がオンラインプラットフォームにはユーザーを保護する責任があると認識していることは好ましいことですが、もしオンライン上の詐欺が次期法案で取り扱われなければ、大きなチャンスを逃してしまうことになります。私たちの調査によると詐欺による金銭的、精神的な負担は非常に明白で、Facebookのようなソーシャルメディア企業やGoogleのような検索エンジンはユーザーを保護するためにより多くのことに取り組む必要があります」。

「偽の広告が表示されないよう管理を強化するなど、サイト上の不正コンテンツに対してオンラインプラットフォームにより大きな責任を課し、ユーザーが安心してオンラインを楽しめるようにする明確な計画が立案されることを期待しています」。

欧州連合の議員団は、違法で有害なコンテンツを規制するための汎EU政策パッケージを本日中に発表する予定だが、ここでのデジタルサービス法はオンライン上での違法商品の販売に対して取り組むとともに、オンラインサービス上の煩わしいコンテンツを報告するためのルールを統一することも提案している。

関連記事:米大統領選挙の夜、バイデン氏と同じくらい大きな勝利を勝ち取ったVerge Aeroのドローン

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:政治

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

アリババがウイグル人を識別する自社クラウド部門の民族検知アルゴリズムに「がく然」

中国の巨大テック企業数社は、権力機構のためにウイグル人イスラム教徒を識別する技術を有しているとの調査結果を受け、国際的な批判にさらされている。

Alibaba(アリババ)のクラウドコンピューティング部門であるAlibaba Cloud(アリババ・クラウド)は、民族やその人が「ウイグル人」であるか否かを識別できる顔認識アルゴリズムを開発していたことが、映像の監視を行う業界団体IPVMの調査でわかった。

ウイグル人やカザフ人などのイスラム教少数民族向けの悪評高い中国の「職業訓練プログラム(中国外務省リリース)」を、中国政府はテロ対策だとして擁護(中国外務省リリース)を繰り返してきた。

アリババは声明の中で、Alibaba Cloudが「アルゴリズムとしての民族性」や「いかなるかたちにせよアリババのポリシーと価値観に反した人種または民族の差別や識別」などを含む技術のテストを行っていたことを知り「がくぜんとした」と述べている(Alibabaリリース)。

「私たちは、自社技術が特定の民族に対して使われることを決して意図しておらず、それを許すつもりも毛頭ありません。私たちは、自社製品が提供するものから、民族を示すタグを一切排除しています。この試験的技術が、いかなるお客様にも使用されたことはありません。私たちの技術が特定の民族を対象に使われること、特定の民族を識別することに使われることはなく、それを許可することもありません」と同社はいい加えた。

2019年のセキュリティ侵害事件で、Alibaba Cloudがホスティングしていた「スマートシティー」監視システムに民族の識別やイスラム教ウイグル人にラベル付けできる能力があることが発覚したと、TechCrunchでもお伝えした。当時、アリババは、公共のクラウドプロバイダーとして「顧客のデータベース内のコンテンツにアクセスする権限を持たない」と話していた。

IPVMはまた2020年12月の初め、Huawei(ファーウェイ)と、顔認識製品Face++で知られる人工知能のユニコーン企業Megvii(メグビー)が、システムがウイグルコミュニティーのメンバーの顔を認識すると中国政府に通報する技術を共同開発していたことを突き止めた(The Washington Post記事)。

これらの中国テック企業は海外進出を目指しているが、北京からの要求と、その人権問題への態度に対する国際的な監視の目との間に挟まれて、ますます苦しい状況に追い込まれている。

クラウドコンピューティングは、アリババで一番の急成長セグメントであり、海外の顧客をより多く呼び込みたいと同社は目論んでいる。調査会社Gartner(ガートナー)の調査(Alibabaリリース)によれば、Alibaba Cloudは2019年、アジア太平洋地区の最大手企業となり、世界で3番目に大きい(Alibabaリリース)サービスとしてのインフラストラクチャー(IaaS)提供企業になった。

アリババのクラウド部門は、前年比で60%の成長を果たし、9月までの3カ月間(Alibabaリリース)、全社の収益10%を支えた。この四半期の時点で、中国本土に拠点を置き人民元で取引を行っているA株上場企業のおよそ60%がAlibaba Cloudの顧客になっていると、同社は主張している。

関連記事:中国のとあるスマートシティ監視システムのデータが公開状態になっていた

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Alibaba中国顔認証差別

画像クレジット:Alibaba Databases In Hebei / Getty Images

原文へ

(翻訳:金井哲夫)

Airbnbが2025年末までに社員の20%をマイノリティにする目標を発表

このほど上場して1000億ドル(約10兆円)企業になった、ホームシェアリングと体験の事業を展開するAirbnb(エアビーアンドビー)が、社内の多様性を向上させるための目標を設定した。その理由について「現状は満足するに程遠い」からだ、と同社はブログ投稿に書いている

2025年末までに、Airbnbは米国の社員の20%を過小評価されているマイノリティの人にする目標だ。ここには米国先住民、アラスカ先住民、黒人、アフリカン・アメリカン、ヒスパニックあるいはラテン系、ハワイ先住民、太平洋諸島の住民が含まれる。現在、同社における過小評価されているマイノリティ社員の割合は12%にすぎない。

2つめの目標は2025年末までに女性の割合を50%にまで増やすことだ。現状では、グローバルで46.9%だとAirbnbは話す。だが、同社は2018年の数字を非公開とした2019年以来、ダイバーシティフルレポートを発表していないことは記すに値する。

これらの目標を打ち出す前の2020年6月、同社は2021年末までに役員会や経営陣の20%を有色人種にすると約束していた。現在、Airbnbの役員会には黒人のKenneth Chenault(ケネス・シェノールト)氏が、経営陣には黒人でグローバルダイバーシティの責任者Melissa Thomas-Hunt(メッリッサ・トーマス-ハント)氏がいる。

Airbnbが目標を設定したのは今回が初めてではない。2016年に同社は過小評価されているグループの従業員の割合を2017年までに9.64%から11%に上げると約束した。そして同社はその目標を達成した。これはDEI(Diversity・equity・inclusion、多様性・平等・インクルージョン)を高めるのに目標設定が有効との主張を裏付けている。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Airbnb

画像クレジット:Stefanie Keenan / Getty Images

原文へ

(翻訳:Mizoguchi

Twitchが自社の不品行を指摘されたことを受け、ヘイトコンテンツとハラスメントを規制するポリシーを改定

今年、有害な職場や嫌がらせが多数報告されたことを受けて、Twitch(ツイッチ)は、ストリーマーコミュニティに対しヘイトコンテンツやハラスメントを規制する新しいポリシーを導入すると発表した。このポリシーは2021年1月22日から施行される。ツイッチのセーフティーチームは、この新しいガイドラインに基づき、ポリシーに違反している可能性のあるコンテンツの評価方法を変更する。同社によると、今後は、ストリーマーの文言や行為の意図よりも、コンテンツ自体とコンテンツが及ぼす影響のほうをより重視していくという。また、ヘイト行為やハラスメント(セクシャルハラスメントを含む)に関するガイドラインを拡張、明確化、強化するという(セクシャルハラスメントについては今回から独自のセクションが設けられた)。

新しいポリシーについて詳細に説明したブログ記事でも触れられているとおり、「言葉や行為は、人を傷つけたり害を及ぼしたりする意図がなくても、意味を持ち影響を及ばす」。

ツイッチは、ストリーマーとハラスメントのターゲットになっている人が起こったことを苦にしていない場合でも、ツイッチコミュニティ内の他の誰かが苦にしているかもしれない、と説明する。つまり今後は、ストリーマーの行為を、その意図のみに基づいて評価するのではなく、その行為が他者を虐待するものでガイドラインに違反しているかどうかという観点から評価することになる。

また、罰則措置を取るかどうかを決定する際には、他の要因も考慮するという。たとえば、ターゲットとなったユーザーまたはモデレーションチームからの報告、チャンネルタイムアウトや発言禁止など、その行為が嫌がられていることを示す指標などが考慮される。

また、新しいポリシーでは、特定の行為がハラスメントとみなされ禁止されることがより明確に記載されている。たとえば、十分に裏付けのある暴力的悲劇の餌食となるのは、クライシスアクターだと主張している。つまり、嘘をつく行為のほか、別の人にDDoS攻撃、ハック、ドキシング(他人の個人情報をインターネット上にさらすこと)、スワッティングを行うよう他者を仕向ける、別の人のソーシャルメディアアカウントを悪意をもって急襲するようあおるといった行為だ。つまりプラットフォーム外の行為であっても新しいガイドラインの適用範囲に含められることになる。

また、「カースト」、「肌の色」、「移民ステータス」が、ヘイトコンテンツかどうか判断するために使用するアイデンティティー特徴リストに追加される。このリストには、保護対象となる特徴として、人種、民族、国籍、宗教、性別、ジェンダー、ジェンダー・アイデンティティー、性的指向、身体障害、重度の病状、退役軍人ステータスなどがすでに含まれている。

ツイッチではヘイトスピーチとヘイトシンボルはすでに禁止されているが、今回のガイドラインでは、ヘイトグループ、ヘイトグループのメンバーであること、ヘイトグループのプロパガンダを共有することも明示的に禁止されている。また、「明示的に教育的なコンテキスト」で使う場合を除き、黒人/褐色人/黄色人/赤ら顔などの表現も禁止されている(これは新たに変更されたものではなく、文言がより明確になったという意味だという)。

別の注目すべき変更点として、歴史的かつ象徴的に奴隷制と米国の白人至上主義グループを連想させるという理由で、南部連合国旗が禁止されることになった点が挙げられる。

ハラスメントははっきり分からないことがあるため、新しいポリシーでは、テキストではなくエモートを使って不正行為と判定されるのを免れようとするさまざまな方法についても目を光らせている。改定されたポリシーでは、セーフティーチームが悪意のあるコンテンツをレビューしているときに、エモートの組み合わせ方も(たとえテキストが含まれていない場合でも)チェック対象となる。

また、セクシャルハラスメントに対する規制が手ぬるいというコミュニティからの批判を受けて、新しいポリシーでは、セクシャルハラスメントを独立したセクションに移し、女性を性的対象とみなす行為や嫌がらせ行為であると判断する基準を下げ、より厳しくしている。

セクシャルハラスメントに関する注目すべき変更点として、女性の魅力について繰り返し言及することも、たとえ褒め言葉であったとしても、相手から不快であると示唆された場合(発言者がすでに発言停止、タイムアウト、チャンネル入室禁止などの措置を受けている場合)には、セクハラ行為とみなされるようになった点が挙げられる。また、誰か(著名人も含む)の性的特徴や容貌についてわいせつな発言や明示的な発言をすることも禁止される。相手が要求していないヌード画像やビデオのリンクを送信することも禁止される。

ツイッチによると、新しいポリシーを施行する前に、近々3回のライブセッションを別々の日に開催して、クリエーターたちにさまざまな変更点を案内し、質問する機会も与えるという。セッションの内容は後でオンデマンドで観ることもできる。1回目は12月11日午前10時からCreatorCampで、2回目は12月16日午前10時から/twitch上セッションで、最後は2021年1月1日正午から/CreatorCamp上セッションで開催する。

ツイッチはさまざまな禁止行為に課せられる罰則規定については必ずしも変更するつもりはないようだ。ただし、新しいポリシーはより詳細に記述されているため、違反の重大度に合わせて罰則措置を適切なレベルに調整できると考えているという。たとえば、軽度の違反であれば警告か短期の利用停止、重度の違反行為であれば初犯であっても無期限利用停止にするといった具合だ。

ブロクの記事ではポリシーの実施に関する質問にも回答している。たとえば、古いコンテンツの扱いはどうなるのか、報告が提出されていないのハラスメントの処理はどうするのか、といったことだ(新しいポリシーは、1月22日以降に作成された新しいコンテンツにのみ適用される。ツイッチが措置を講じるには誰かからの報告が必要だ。というのは、冗談を言い合ったり相手をからかったりすることが許される状況でユーザーを罰するのを避けたいからだ)。

もちろん、ツイッチがこの新しいガイドラインをどの程度適切に実施できるのかについては多くの人が疑問に思うかもしれない。ツイッチという会社自体、その企業文化が、有害で虐待的であるとして最近指摘されたからだ。

ツイッチの現社員や前社員からの報告には、ツイッチの幹部やスタッフが、職場と広範なツイッチコミュニティの両方で、性差別、人種差別、ハラスメント、その他の不正行為を実際に行っていたか無視していたと書かれている。こうした話を聞くと、男性が女性ストリーマーを「おっぱいストリーマー」と呼んだり、同僚の女性社員を暴行したりすると言われているような会社が、果たしてセクシャルハラスメントポリシーを適切に実施できるだろうかという疑問が湧いてくる。ツイッチでは、男性社員が女性の同僚にCワードを発したりツバを吐いたりすると、女性社員はマネージャーに「一体君は何をやったのかね」と聞かれる、とある報告には書かれている。また、多くの女性が、痴漢行為、強制的なキス、不快なマッサージなど、職場で受けた性的暴力について説明している

ツイッチには、他の領域でも選択を誤った前歴がある。Gamesindustry.bizの報告によると、Black Lives Matterを支持するビデオを特集しておきながら黒人ストリーマーには1行しかしゃべらせないとか、プライド・セレブレーション(サンフランシスコで毎年ゲイやAIDS患者の人権を訴えて開催される祭)ビデオで”G”は”gamer”(ゲーマー)の略語でもあると言ってみたり、ヒスパニック文化遺産月間でユーザーがソンブレロやマラカスをエモートに追加できるようにするなど、いろいろと物議を醸している。

同社によると、ポリシーの改定は今年始めから行われていたものだが、性的不品行に関する疑惑も含め最近のコミュニティとの対話は、変化の証だ。

今年始め、ツイッチのCEO Emmett Shear(エミット・シアー)氏は、この件については広く人々の声を聞いてきたし、会社は変わることを目指しているとする社員へのメモを公開した。このポリシーはその第一歩だが、ツイッチには証明すべきことがまだたくさん残されている。

関連記事:ライブストリーミング配信のTwitchが著作権付き音楽を使えるストリーマー向けツールを導入

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Twitch 

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

Pinterestが性差別訴訟で前COOと23.4億円で和解

Pinterest(ピンタレスト)は米国時間12月14日、前COOであるFrancoise Brougher(フランソワーズ・ブロワー)氏提出した性差別訴訟で和解したことを発表した2020年8月(未訳記事)、ブロワー氏はPinterestを訴え、性差別、報復および不当解雇を主張した。

和解の一環としてPinterstはブロワー氏と弁護士に対して2000万ドル(約20億8000万円)を支払い、Pinterestおよびブロワー氏がともに、テック業界の「女性および過小評価されている人々の向上」のために250万ドル(約2億6000万円)を供出することを約束した、と同社が提出書類に書いた

「Pinterestは、多様で公正で開放的な職場環境を育む重要性を認識しており、企業カルチャーの改善に向けて今後も行動していく」とPinterestとブロワー氏は和解に関する共同声明で語っている。「ブロワー氏はPinterestが職場環境を改善するためにとった有意義な措置を歓迎しており、全従業員が疎外されず支えられていると感じるカルチャーを作ることを約束するようPinterestに期待している」。

ブロワー氏が訴えを表面化してまもなく、Pinterest社員は彼女の告発およびPinterest元社員の黒人2人の訴えに応えてストライキを敢行した。ブロワー氏の訴訟以前に、Aerica Shimizu Banks(エアリカ・シミズ・バンクス)氏とIfeoma Ozoma(イフェオマ・オゾマ)氏が、Pinterestを人種差別で訴えた。

ストライキに加えて、Pinterestの全体に構造的変革を求める嘆願書が回覧された(Coworker.org投稿)。要求されている変革には、昇進基準と定着の完全な透明性、総報酬の透明性、およびCEOと2階層以内の従属関係にある社員の少なくとも25%を女性に、8%以上を過小評価されている従業員とすることが挙げられていた。

それ以来、Pinterstは取締役会レベルで明らかな変化を見せた。ストライキの数日後、PinterestはAndrea Wishom(アンドレア・ウィショム)氏を同社初の黒人取締役に任命したと発表した。2020年10月にPinterestは、2人目の黒人取締役であるSalaam Coleman Smith(サラーム・コールマン・スミス)を加えた。

Pinterestは、経営者レベルの多様性改善のために雇用と面接のプロセスを強化し、インクルーシブ教育を改定するとともに、Pinterestが報酬を決定するを詳しく書いた社内Wikiシステムを立ち上げたと語った。

関連記事:Pinterestが初の黒人ボードメンバーを発表、不動産会社社長でマルチメディア制作会社の元幹部

カテゴリー: パブリック / ダイバーシティ
タグ:Pinterest

画像クレジット:Smith Collection/Gado / Getty Images

原文へ

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

マサチューセッツ州知事は顔認識利用を禁止する警察改革法案に署名せず

マサチューセッツ州のChalie Baker(チャーリー・ベーカー)知事は、警察改革法案(未訳記事)を州議会に差し戻し、いくつかの条項の削除を議員らに依頼した。警察および公的機関による顔認識技術の利用を州全体で禁止する、というこの種の規制として米国で初めての条項も含まれている。

同法案は、警察によるゴム弾と催涙ガスの使用も禁止しており、数カ月におよぶ膠着状態を幹部議員が取りまとめ、米国時間12月1日に州の下院と上院を通過した。州議会に法案が提出されたのは、武器を持たない黒人男性ジョージ・フロイド氏が殺された事件を受けたものだ。殺害したミネアポリスの警察官は後に殺人罪で告訴された。

ベーカー知事は議会宛の書簡で、禁止措置に反対であることを訴え、顔認識の利用は児童性犯罪者や二重殺人者を含むいくつかの犯罪者の有罪判決に役立ったと語った。

The Boston Globe紙のインタビューでベーカー知事は、「顔認識を禁止するものに署名するつもりはない」と語っている。

同法案の下では、州全体の警察および公共機関は顔認識の使用を禁止(未訳記事)され、唯一の例外として令状があれば州の運転免許証データベースに対して顔認識検索をかけることができるとしている。

法案はマサチューセッツ州下院議会を92対67で通過、上院を28対12で通過した。いずれも拒否権に対抗できる大多数ではなかった。

Boston Globeは、ベーカー知事は同法案を直ちに拒否するつもりはないと語ったと伝えている。議会が修正(あるいは同じ)法案を知事に提出した後、署名するか拒否権を行使するかはベーカー知事次第だ。マサチューセッツ州法では、知事は10日間署名しないことによって、法案を成立させることができる。

「警察による歯止めのない監視技術の利用は全員の匿名性、プライバシー、および言論の自由に害を及ぼすものでもあります。私たちは議会に対し、ベーカー知事の修正を却下し、政府の顔認識利用に関する常識的な規制案の通過を確実にするよう強く要請します」と、米国自由人権協会(ACLU)マサチューセッツ州支部長のCarl Rose(カール・ローズ)氏は述べている。

ベーカー知事室はコメント要求に直ちに返答はしなかった。

関連記事:多様性、公平性、機会均等を実現するための初心者向けガイド

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:顔認識マサチューセッツ

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

原文へ

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

グーグルCEOがAI倫理研究チームのゲブル博士辞任の真相調査を要求

人工知能の研究員Timnit Gebru(ティムニット・ゲブル)氏が先週、Google(グーグル)を退職したことに関連して同社のCEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏がスタッフに送ったメモをAxiosが入手した。それによるとグーグルは、「ゲブル氏が辞任に至った情況を調査し、我々に改めるべき余地ともっと丁重なやり方がありえなかったかを点検する」という。

先週、ゲブル氏は、彼女が同社のDEI(多様性・公平・受容)へのアプローチと、彼女の研究論文の承認プロセスに失望したというメールを直属の部下に送った後、同社を解雇されたと述べた。ゲブル氏はそのメールを、グーグルが言語モデルに関するAIの倫理に関する論文(MIT Technology Review記事)に彼女と同僚の名前を明記することを許可しなかったことの後に送った。ゲブル氏は以前、彼女の上司たちにメールを送り、彼女の特定の条件を彼らが認めないなら去る用意がある、と宣言した。その後グーグルは彼女に、彼女の辞任を受け入れたと告げ、彼女が職場のメールにアクセスできないようにした。

ピチャイ氏のメモには「すばらしい才能のある傑出した黒人女性のリーダーが不満を抱いてグーグルを去ったという事実に対する責任」を、会社は受け入れる必要があると述べられている。彼はまたグーグルで過小評価されている人びとの間に「波及効果」が生じている、と記している。

グーグルはコメントを拒否したが、メモは本物だと認めている。メモの全文はここで読める

ピチャイ氏のメモの2日前には、2000名あまりのグーグル社員とそのほか数千名の支援者たちがゲブル氏を支持する書簡に署名した。

「グーグルはゲブル氏の優れた才能と豊富な貢献を受容する代わりに、彼女を同社の自己保身主義と人種差別と精神的いじめと研究の検閲と、いまでは報復の解雇に直面させている。2020年12月2日の夜、チームに宛てたゲブル氏のメール(Twitter投稿)でグーグルの役員たちは、彼女が辞任を選んだと主張した。それは嘘である。ゲブル氏との直接の通信でこれらの役員たちは彼女に、彼女が直ちに解雇であると告げた(Twitter投稿)。そして、彼女がGoogle Brainのダイバーシティとインクルージョンメーリングリストに送ったメール(Platformer記事)を、解雇の口実とした」と書簡では述べられている。

支持者たちはさらに続けて、ゲブル氏の論文の扱い方の決定に関与した者全員がAI倫理研究チームに会って、何が起きたのかを説明するよう求めている。彼らはまた、意思決定の透明性を増すことと、Google Researchが学術研究の人格性と自由を尊重することを求めている。

関連記事:GoogleのAI倫理研究チームの共同リーダーが部下宛てメールが原因で解雇されたと語る

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Google

画像クレジット:Photo by Kimberly White/Getty Images for TechCrunch/Getty Images

原文へ

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

バイデン時代のテクノロジー

ハイテク産業を愛したオバマ政権で8年間を過ごした次期大統領Joe Biden(ジョー・バイデン)氏だが、トランプ政権による4年間の中断を経た今、この長い蜜月時代に終止符が打たれたようだ。

2020年、テクノロジー界に警告が発せられている。2016年米大統領選挙におけるロシア政府の介入疑惑を皮切りに、ソーシャルメディアにはびこる危険性が飛躍的に高まり、市民を幻滅させたり過激化させたりするような過激主義や誤報が各地で充満するようになった。最大手のデータブローカー集団らは潜在的な競合他社をどんどん買収してさらに権力を増し、他の追随を許すことなく巨大化の道を進んでいる。共和党と民主党が一丸となってテクノロジーを規制する計画を推進するほどにまで事態は悪化している。

過去10年間、広告を通して世界中の情報業者が悠々と巨大企業へと成長することを許し続けてきた世界。これが大きな間違いだったとやっと気づいたのが現在だ。

バイデンとビッグテック

バイデン氏の選挙活動においてテクノロジーへの課題はさほど重要視されておらず、Elizabeth Warren(エリザベス・ウォーレン)氏がビッグテックへの反発を選挙戦の会話中に持ち出したのにも関わらず、バイデン氏はハイテク問題への言及をほぼ避け続けてきた。テクノロジー産業全般に対する同氏の姿勢は謎に包まれているが、分かっていることもいくつかある。

次期大統領はトランプ政権のGoogleに対する独占禁止法違反訴訟を引き継ぎ、 Facebook、 Amazon、Appleへの訴訟を追加していく可能性さえあると言われている。しかし同氏の選挙活動の初期資金調達に元GoogleのCEOであるEric Schmidt(エリック・シュミット)氏の後ろ盾があったこともあり、バイデンチームがFacebookのような企業を公然と攻撃するのと比べると、Googleとの関係性はより複雑だと考えられる。

バイデン氏が大統領候補としてノミネートされて以来数か月が経った今、Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏とトランプ氏率いるホワイトハウスとの仲の良さが、バイデン政権に継承される可能性の低さは明白だ。9月までにバイデン陣営はザッカーバーグ氏に対して、Facebookが選挙を巡る偽情報の「最大の宣伝者」であると非難する痛烈な書簡を書いており、この熱は未だ解消されていないようだ。バイデン氏の副コミュニケーション・ディレクターは、Facebookが民主主義を「破壊した」として批判している。この4年間Facebookがトランプ政権の寵愛を受けるために行ってきた多くの決断を、同社は後悔することになりそうだ。

それでも、テック業界全体を悲観視する必要はない。ビッグテックがすべてではないのだ。全く新しい産業を切り開き、連邦政府の金をたっぷりと注ぐことになるかもしれない気候計画(上院の統制力の欠如はともかく)のほか、電気通信や交通機関、エネルギー効率の高い住宅計画といった国のインフラを活性化させる計画など、バイデン氏の計画にはさまざまな明るい兆しを見ることができる。

また独占禁止法は通常、テクノロジー界からは脅威とみなされることが多いが、最大手ハイテク企業らによる長年の反競争的な行為によってイノベーションへの多くの道が閉ざされてきたため、今ではスタートアップ全般にとっては返ってメリットとも言える。議会、州、連邦政府が有意義な規制をまとめることができれば、これまでなら買収して吸収されたり、テクノロジー界の中核をなすメガ企業に真っ向から潰されたりしていたであろうスタートアップ企業に、喜ばしい道が開けるかもしれない。

次期副大統領Kamala Harris(カマラ・ハリス)氏にも可能性を見出すことができる。テクノロジー分野出身のハリス氏は、オフィスにベイエリア風を吹かせることになるだろう。最も興味深いのはハリス氏の義理兄弟であるTony West(トニー・ウェスト)氏の存在だ。ウェスト氏はUber(ウーバー)の最高法務責任者であり、Lyft(リフト)やUberのようなギグエコノミー企業に対して、正社員に与えられる福利厚生を労働者に与える必要性を免除する、カリフォルニア州の「Proposition(プロポジション) 22」を推進する上で同氏は重要な役割を果たした。ハリス氏は組織労働者のサイドにつき、この問題に対してはウェスト氏の反対側に立った

テック業界におけるハリス氏の人間関係に関しては完全には明らかになっていないが、どうやら4年前のHillary Clinton(ヒラリー・クリントン)氏当選の流れの中で財務省や商務省ポストの有力候補だったSheryl Sandberg(シェリル・サンドバーグ)氏とは友好的な関係にあるようだ。

バイデン政権はまた、テクノロジー界の権力者らと、あらゆる種類の密かなつながりを持つことになる。その多くはオバマ政権で任務に就き、その後シリコンバレーに進出した顔ぶれだ。元オバマ大統領の環境保護庁長官で現在AppleのLisa Jackson(リサ・ジャクソン)氏や、元オバマ大統領のスポークスマンで現在Amazonのグローバル企業担当副社長のJay Carney(ジェイ・カーニー)氏が良い例だ。

テック業界からの人材流入

バイデン政権の人事移行リストにはテック業界からの人物名が大勢見られるが、業界における最近の実績を理由に引き抜かれたわけではなく、オバマ政権時代からそのまま引き継がれた名前が多い。例えば、同リストにはUberの最高信頼セキュリティ責任者であるMatt Olsen(マット・オルセン)氏の名前が挙げられているが、これは配車サービス業界における同氏の深い知識が認められたというよりも、オバマ政権下での諜報機関での経験が評価されたものである。

このリストにはFacebookやGoogleの出身者は含まれていないが、Chan Zuckerberg Initiative(チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブ)のメンバー4人と、Eric Schmidt(エリック・シュミット)氏による慈善プロジェクトSchmidt Futures(シュミット・フューチャーズ)のメンバー1人が含まれている。このリストには、米政府初のCTOを務めたAneesh Chopra(アニーシュ・チョプラ)氏や、以前にTwitterやGoogleで勤務し、オバマ政権下で副最高技術責任者を務めたNicole Wong(ニコール・ウォン)氏が含まれており、オバマ政権時代との継続性も示唆されている。また、デジタルサービス機関の18Fで働いていた人物の名前や、公共問題を解決するためにハイテク界から人材を借りているUSDSからの名前も含まれている

他にもAirbnbのDivya Kumaraiah(ディブヤ・クマライア)氏とClare Gallagher(クレア・ギャラガー)氏、LyftのBrandon Belford(ブランドン・ベルフォード)氏、StripeのArthur Plews(アーサー・プレウス)氏、DellのCTO であるAnn Dunkin(アン・ダンキン)氏など、テック業界からの名前が挙がっている。この顔ぶれは新政権の空き枠を埋めるのに一役買うと思われるが、実際誰が内閣に招聘されるかははっきりしない。

内閣におけるテクノロジー

政権移行チームについてあれこれ推測したりバイデン氏の過去の発言を読み込んだりする以外、今我々は待つことしかできない。組閣人事によって政権の優先事項を読み取ることができるだろうが、今は噂話だけが頼りである。

噂の一部をお伝えしよう。元HPとeBayのCEOであり、失敗に終わった短編ストリーミングプラットフォームQuibiの舵取りをしていた Meg Whitman(メグ・ホイットマン)氏は、商務省における党派を超えた選択肢の代表的存在ではあるものの、Quibiでの失敗はあまり幸先の良いものではない。

Eric Schmidt(エリック・シュミット)氏の名前はホワイトハウスでの何からの技術作業部会のリーダーとして浮上しているが、Googleに対する連邦反トラスト法の訴訟や、ビッグテックに対する法的対処の可能性を考慮すると、あまり幸運とも言えないチョイスである。財務長官候補として名前が挙がっているAlphabetの取締役メンバーRoger Ferguson(ロジャー・ファーガソン)氏は、金融企業の現職を退任したばかりのため、さらにさまざまな推測が飛び交っている。

オバマ政権下の労働局で勤務していたSeth Harris(セス・ハリス)氏も、内閣ポジションに就く可能性を示唆するリストにどうにか紛れ込んでいる。すでにバイデン氏の政権移行に関与しているハリス氏は、「従業員と独立したコントラクターの間のグレーゾーンを占める人々のため」の「新しい法的カテゴリー」を提案し物議を醸している。LyftはどうやらProp 22が通過した後、具体的に彼の論文を引用したようだ。労働に関する法律は今、非常に注目度の高い問題であり、ハリス氏が部門の舵取を任命された場合、労働活動家の間で論争に火が付く可能性が高いだろう。実際、Bernie Sanders(バーニー・サンダース)氏自身も同役割のため活動中と言われている。

その一方で、カリフォルニア州の司法長官Xavier Becerra(ハビエア・ベセラ)氏が司法省の閣僚級の役職に就く可能性があると言われている。ベセラ氏はハイテク業界の出身ではないが、現在Googleに対する独占禁止法違反訴訟を抱えているカリフォルニア州の司法長官として同州に駐在している。Bloombergとの最近のインタビューにおいて、バイデン政権下での反トラスト問題について同氏はイノベーションを阻害するテック業界の「巨人」について非難しており、反競争的な行為を繰り返すテック企業に圧力をかけることについて州の司法長官は「主導権を握っている」と述べている。

「結局のところ皆、競争を望んでいますよね。実際、イノベーションを望むならば、競争は不可欠なのです」とベセラ氏は言う。連邦議会のため司法長官のオフィスを去った次期副大統領ハリス氏の後を継いだベセラ氏は、再度ハリス氏の後を追い、1月にハリス氏が上院を去った際の空席を埋めることになるのかもしれない。

結論として、全体的におなじみの名前がいくつか登場しているのは確かだが、2020年は2008年ではない。過去10年間に出現した巨大テック企業問題は、非常にデリケートな課題だ。バイデン政権からどのような優先順位が付けられるにせよ、オバマ時代の技術系出身者の黄金時代は終わり、我々は新たな時代に直面しているのだ。

関連記事:バイデン次期大統領の気候変動対策はグリーンニューディールに依存しない

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:ジョー・バイデン 政治

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

グーグルのAI倫理研究チームの共同リーダーが部下宛のメールが原因で解雇されたと語る

倫理と人工知能の分野における研究や発言で注目を集めているTimnit Gebru(ティムニット・ゲブル)氏は、彼女の直属の部下に送信したメールのためにGoogle(グーグル)から解雇されたと語っている。ゲブル氏によると、グーグルが彼女を解雇したのは、彼女が部下に送った電子メールが原因であり、それに「グーグルのマネージャーに期待されていることと矛盾する行動」が反映されていたと、同社がいっているという。

グーグルのAI倫理チームの共同リーダーだったゲブル氏は、米国時間の12月2日夜、次のようにTwitter(ツイッター)に投稿した。それは全米労働関係委員会がグーグルに対し、従業員の監視と従業員の違法な解雇を主張して告発状を提出した直後のことだった。

グループの女性たちとメンバーに送ったメールが原因で、Jeff Dean(ジェフ・ディーン)に解雇されました。すでに私の会社のアカウントは無効になっています。即刻解雇されたということですね。

ゲブル氏によると、誰からもはっきりと解雇とはいわれていないが、上司から1通からメールが届いたそうだ。

「あなたの条件を明確にしてくださったことに感謝致します。あなたが求める1番と2番の条件に我々は同意できません。その結果としてグーグルを辞めるというあなたの決断を尊重し、あなたの辞職を受け入れます」。

そのメールは、ゲブル氏によると、「あなたが昨夜、AIグループの非管理職の従業員に送信したメールには、グーグルのマネージャーに期待されていることと矛盾する行動が反映されている部分があります」と続いていたという。

Casey Newton(ケイシー・ニュートン)氏が入手した(Platfomer記事)問題の電子メールには、ゲブル氏が「散々話し合った後」彼女が組織のやり方にどれほど失望させられたかということが論じられている。2020年、同社が雇用した女性は14%ほどに過ぎないと彼女は書いている。グーグルのAIチーム内で研究者たちを率いるSamy Bengio(サミー・ベンジオ)氏は39%の女性を雇用したが、彼にその意欲はなかったという理由を、ゲブル氏は指摘している。

何がいいたいかというと、文書を書いても意味がないから止めろということです。どこから来たのかわからない(そして会うこともない)DEI OKR、行き当たりばったりの議論、「私たちの進歩を妨げる有害な環境を止める必要がある」よりも「私たちにはもっとメンターシップが必要だ」、自分を犠牲にした絶え間ない戦いと教育、それらは重要ではありません。なぜなら、説明責任がゼロだからです。39%の女性を雇う意欲はありません。あなたの人生は、あなたが少数派の人々のために擁護を始めたとき、そしてあなたに良い評価を与えたくないリーダーを動揺させ始めたときに悪化します。これ以上の文書や会話が何かを達成することはありません。私たちがしたことは、感情的に憤りを露わにして黒人の研究を全社的に行っただけです。それからどうなったか知っていますか?最も本質的かつ可能なやり方で黙らせようとしているのです。

ゲブル氏のメールには、主流から外れた声を黙らせることの問題、彼女の専門的意見がどのように退けられてきたか、そして彼女がどれほどグーグルからガスライト(心理的嫌がらせ)を浴びたと感じているかについても言及されている。

我々はゲブル氏とグーグルの両方にコメントを求めている。

Bloombergが報じたように、ゲブル氏はテック業界における多様性の欠如や、テック業界の黒人が直面している不公平について率直に語ってきた。Bloombergによると、グーグルが他の労働者に声を上げてはいけないという合図を送るためにゲブル氏を解雇したと彼女は考えているという。

ゲブル氏は倫理と人工知能の分野で第一線で活躍する発言者だ。2018年、ゲブル氏はAlgorithmic Justice League(アルゴリズムにおける偏見の是正などに取り組む団体)の創設者であるJoy Buolamwini(ジョイ・ブオラムウィーニ)氏と共同で、顔認識システムにおける偏重の研究を行った。彼女らは、肌の色が明るい男性と肌の色が濃い女性では誤認率に高い格差があることを発見し、これらのシステムは肌の色が濃い人にはうまく機能しないという結論に至った。

ゲブル氏の発表以来、彼女は技術コミュニティの人々から絶大な支持を受けている。

グーグルはこの件に対するコメントを拒否したが、ゲブル氏の上司であるジェフ・ディーン氏からの社内メール(Platfomer記事)を指摘。そのメールの中でディーン氏は次のように述べている。

尊敬される研究者として、またAI倫理チームのマネージャーとしてのティムニットの役割を考えると、私はティムニットが私たちの仕事についてこのように感じるようになってしまったことを残念に思います。また、今週あなた方の中の何百人もの人々がティムニットから、重要なDEIプログラムの仕事を止めろと書かれたメールを受け取ったことも残念に思います。止めないでください。進捗のペースにフラストレーションが溜まっているのは理解していますが、私たちにはこれからも重要な仕事がありそれらに取り組む必要があるのです。

関連記事:全米労働関係委員会がグーグルを従業員の監視やその他の労働違反で告発

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Google

画像クレジット:Photo by Kimberly White/Getty Images for TechCrunch / Getty Images

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

バイデン次期大統領の気候変動対策はグリーンニューディールに依存しない

グリーンニューディールは、多くの民主党議員が推し進めている気候関連イニシアチブの広範な決議案である。しかしそれがなくとも、Joe Biden(ジョー・バイデン)次期大統領には、インフラや景気刺激策の一環として、意欲的なエネルギー転換計画を進める多くの機会があるだろう。

専門家、投資家、次期大統領のアドバイザーによると、共和党が上院の支配を維持することができたとしても、議会が初仕事として取り組むことになるインフラや景気刺激策の法案に、気候に優しい政策を組み入れるチャンスはいくらかあるようだ。

これは、地球規模の気候変動の原因となる温室効果ガスの排出量を削減する技術に注力している既存企業や相次ぐスタートアップにとっては朗報だ。そして、Mitt Romney(ミット・ロムニー)氏のような穏健派の共和党員でさえ頑なな態度を示す気候問題にも関わらず、前述のような変化が起きる可能性がある。

11月、ロムニー氏は報道番組「Meet the Press(ミート・ザ・プレス)」で、「多くの人が、保守的な原則が依然として我が国の世論の大部分を占めていると言っていることは知っています」と述べ、「私は、皆さんがグリーンニューディール政策の可決を望んでいるとは思いません。また、皆さんが石炭、石油、ガスの撤廃を望んでいるとは思っていませんし、すべての人へのメディケアや増税など、経済を減速させる政策には興味がないと思っています」と続けた。

既に、現在の市況により、石油、ガス、エネルギーの大手企業の中には、再生可能エネルギーへの移行を余儀なくされている企業もある。これらの企業が米国内の製油所の閉鎖を始めると、これらの雇用に対する代替案の整備へのプレッシャーを議会はますます強く感じることになるだろう。

例えば、11月初めにShell(シェル)はルイジアナ州にあるプラントを閉鎖し、約650人の従業員を解雇すると発表した。閉鎖は主に新型コロナウイルス感染症のパンデミックによってもたらされた石油需要の減少によるものだが、オランダに本社を置くシェルも、英国に本社を置く同業のBPも、化石燃料の消費は2019年にピークを迎え長期的な減少に向かうと考えている

米大手の石油・ガス企業といえども、新型コロナウイルス感染症の経済的影響や世界規模の化石燃料離れに対する免疫を持ち合わせてはいなかった。Chevron(シェブロン)とExxonMobil(エクソンモービル)の大手2社の株価は、石油業界の需要の急激な減少と他の下げ要因が考慮され、この1年で下落している

一方、米国の大手電力会社の中には、化石燃料を使用した発電の段階的な廃止に取り組んでいるところもある

再生可能エネルギーへの移行は、少なくともここ米国では、政府の指導があまりなくても、すでに市場が後押しする形で進行している。このような背景から、問題は、政府が再生可能エネルギーへの移行を支援すべきかどうかではなく、米国の雇用を救うためにどれだけ早く刺激策を実行できるかということである。

次期大統領のアドバイザーも、「[近いうちに]出てくるであろう本当に重要な気候関連の政策の多くは、実際には再生可能エネルギーに関連するものではないだろう」と語っている。

では、景気刺激策はどのようなものになるのだろうか。どのように配分され、何を財源とするのだろうか。

画像クレジット:Artem_Egorov/Getty Images

 

景気刺激、新型コロナウイルス感染症、そして気候変動

バイデン次期大統領は、次期政権の最初の優先事項をすでに詳しく述べている。既に23万8000人(記事執筆時点)を超える米国人が死亡した新型コロナウイルス感染症パンデミックの対策が何よりも優先されるが、パンデミックへの対応によって引き起こされた景気低迷への対応もすぐに後に続くだろう。

アナリストやアドバイザーによると、気候に優しいイニシアチブは、その取り組みの過程で大きな存在感を示し、化石燃料ビジネスの老舗企業だけでなく、新しいテクノロジー企業にも恩恵をもたらす可能性があるという。

今年の初め、バイデン陣営のアドバイザーは「問題を再燃させることなく私たちが確実に前に進む絶好の機会となる計画に資金を投入していく」と語っている。

手にした何兆ドルもの資金がどのように使われるのかを推測するには、短期、中期、長期の目標について考えると良いだろう。

短期的には、できるだけ早く始められる「shovel-ready(ショベル・レディ)な」プロジェクトに力が注がれるだろう。例えば、環境のための改築や建物の改修、水道設備や電力網の修理とアップグレード、電気自動車の製造に対するインセンティブを増やすこと、環境修復や埋め戻しプロジェクトのための資金を増やす計画などのイニシアチブだ。

これらの支出は、いくつかの試算によると総額7500億ドル(約78兆円)に達する可能性があり、国内経済に長期的な利益をもたらす可能性のある産業や製造業を中心に米国人の雇用を回復させるのに役立つだろう。低所得者の農山村部や都市部のコミュニティを支援するために全米各地に設けられた政府指定のオポチュニティ・ゾーンを対象とした支出については特にそう言える。

これらの取り組みにオポチュニティ・ゾーンを組み込めば、資金をさらに迅速に活用する機会となる。また、テック要素を含むインフラプロジェクトの優先順位を高く定める方法があれば、技術的なリスクを克服してきたスタートアップにとって、より望ましい環境が整う。

「政策、特に連邦政府の政策を立案するときはいつでも、達成したい目標に適したインセンティブを設けなければならない」とバイデン氏のアドバイザーは述べる。

中長期的な目標は、より新しいテクノロジーに依存する場合があるため、計画や開発に時間がかかる可能性が高く、また、連邦政府の資金を受けて建設を開始する以前に、自治体や州のレベルで計画手続きを踏まなければならない。

さまざまな業種の労働市場に向けた労働力を準備するために、これらのプロジェクトには、開発、および労働者の訓練や再教育のための資金として、さらに600億ドル(約6兆2000億円)が費やされると予想される。

義務ではなくインセンティブによる促進

バイデン政権の気候政策が直面する最大のリスクの1つは、トランプ政権下で任命された、ますます保守層に共感的になる司法から法的な異議申し立て受ける可能性があることだ。

そのような異議申し立てにより、バイデンチームは、規制の鞭よりもビジネスに優しい飴を採用することの経済的利益を強調せざるを得なくなるかもしれない。

次期大統領のアドバイザーは、「可能な限り、市場が自ら解決策を見いだし、いつでもまず、義務化ではなくインセンティブに委ねるのが望ましい」と述べた。

今週のニュースで報じられたように、Pfizer(ファイザー)が新型コロナウイルス感染症のワクチンについて良好な結果を得たことから、現政権下で進行中のワクチン開発計画の中に有望なモデルがいくつかあることが判明した。

ファイザーは保健福祉省の「ワープ・スピード作戦」には参加していないが、同社は、ワクチンの市場を保証する20億ドル(約2100億円)の契約を政府と結んだ

コネチカット州のクリス・マーフィー上院議員が言及しているような官民パートナーシップは、特に石炭からの脱却によって最も打撃を受けるであろう地域を中心に、気候変動の分野でも採用される可能性がある。

特にダコタ州、モンタナ州、ウェストバージニア州、ワイオミング州など、化石燃料からの転換によって最も打撃を受けるであろう地域では、その支出保証の一部は、放棄された天然ガスの井戸や石炭採掘事業の環境修復という形で提供されるかもしれない。その中には、過去数十年間にエンジニアリング会社や石油会社が培ってきたものと同様のスキルを要する、新しい地熱エンジニアリングプロジェクトの開発によるものもあるだろう。

また、水素をベースとした経済にも明るい兆しがある。水素をベースとした経済は、国内にある石油やガスのインフラや専門知識を活用して、よりクリーンなエネルギーの未来へと移行することができる(注:必ずしもクリーンなエネルギーの未来とは限らないが、以前よりもクリーンになることは確かだ)。

既に日本のような国では、石油を水素燃料に置き換えるための基盤の構築が進められており、このようなインセンティブに基づいたプログラムや官民パートナーシップは、いくつかの業界のスタートアップにとっても大きな後押しとなるだろう。

Electrical transmission grid and power plant

画像クレジット:Cameron Davidson/Getty Images

 

富を分かち合う(農山村部編)

バイデン政権が制定する政策は、経済的機会に広く取り組む必要があり、選挙キャンペーン中に提案された計画の多くは、その必要を満たすものだった。政権移行に向けたウェブサイトによると、なかでも重要な提案の一つは、「取り残された地域社会の優良な組合員や中産階級の雇用を創出し、汚染の影響を受ける地域社会の過ちを正し、農山村部、都市部、部族など、私たちの偉大な国家全体から最高のアイデアを打ち出す」というものであった。

電力網や公益事業のインフラに早期に重点を置くことで、米国全土に雇用創出の大きな機会が生まれ、テクノロジー企業にとっても後押しとなる可能性がある。

エネルギーと気候に焦点を当てたベンチャーキャピタル、Congruent Ventures(コングレント・ベンチャーズ)の共同設立者であるAbe Yokell(エイブ・ヨーケル)氏は、「この国の電力インフラは古く、老朽化しており、安全ではない。インフラの観点から見ると、送配電は切実にアップグレードを必要としているのに、長い間、十分な資金が投入されてこなかった。そしてそれは、再生可能エネルギーを米国全土に普及させることと、あらゆるものの電化を実現することに直結している」と述べている。

電気インフラの再生と、電力や水道の新しいブロードバンド機能や監視技術を組み合わせることは、Verizon(ベライゾン、TechCrunchの親会社)や他のネットワーク企業に大きな利益をもたらすだろう。さらに、公益事業会社にとってはありがたいことに、料金を調整する方法が整備されることになる。

インフラをアップグレードするこのようなプロジェクトは、コストがかさんでますます使い物にならなくなっている石炭関連資産を再利用する方法を見つけるのにも役立つ。

ヨーケル氏は次のように語る。「石炭を燃やす意味はもうない。資金がないにもかかわらず、発電所は責務上の理由から石炭を燃やし続けているが、現役の炭鉱でさえも閉鎖したいとみんな思っている」。

ヨーケル氏によると、これらの炭鉱を廃止し、エネルギー貯蔵を使用して分散型エネルギーグリッドのノードとして再利用することができれば、石炭プラントが以前行っていたように、電気容量の平滑化を行うことができ「大勝利」となる。エネルギー貯蔵の導入は、かつてはコストの問題だった。しかし「今では立地の問題だ」と同氏は言う。

より新しい効率的なテクノロジーを使って古い水力発電資産で再発電することは、「ショベル・レディ」プロジェクトで再生事業を大きく進展させるもう一つの方法であり、スタートアップがこの動きの恩恵を受けることができる分野でもある。それはまた、農山村部のコミュニティに雇用をもたらすことにもつながる。

インフラへの投資は、都市部でも農山村部でも有望だが、刺激策の効果はそれだけでは終らない。

農山村地域には、バイデン政権移行チームが指摘するように「気候に配慮した農業や、放棄された油田や天然ガス田を埋め戻したり、放棄された石炭、石材、およびウランの鉱山を再生利用したりする25万人分の雇用を含む回復と保護の分野」でビジネスチャンスがある。また、石油産業の労働者にとっては、新しく成長しているテクノロジーを駆使した地熱エネルギー産業で職を得る大きなチャンスがある

トランプ政権下で急増した農業助成金は、気候により一層の焦点を当てた形で継続される可能性がある。トランプ政権が2020年の間に農家に配る予定の460億ドル(約4兆8000億円)と同程度の補助金が、単にそのまま農家に支給されるのではなく、「カーボンファーミング(炭素貯留農法)」への補助金という形で支払われると予測される。炭素貯留農法への補助金を約束して農場の票を取り込むことは、炭素価格(政府関係者の間ではほとんど失敗している)をめぐる議論を再開するきっかけになるかもしれない。炭素貯留農法以外にも、生体材料、コーティング、さらには食品などに利用される合成生物学の急速な技術革新により、米国中西部の大規模なバイオ燃料発酵槽や原材料を活用する新たなバイオ製造業が誕生する可能性がある。

さらに、水圧破砕法の本格化や石油価格の高騰に後押しされて鉄道インフラが拡大すれば、全米への鉄道輸送が可能な他の分野の製造業を発展させる機会と可能性が広がる。

Volkswagen(フォルクスワーゲン)は、2019年11月13日水曜日、電気自動車計画の北米拠点となるテネシー州で、8億ドル(約830億円)規模の工場拡張に着工した。画像クレジット:Volkswagen

 

富を分かち合う(都市編)

地方経済活性化に有効な支出策は、米国の大都市にも同様に適用できる。電気自動車を中心としたインセンティブや、車両のアップグレードを義務付ける連邦政府の指令を通じて自動車産業を活性化させる動きは、自動車メーカーと関連OEMメーカーにとって絶大な効果があるだろう。

都市インフラのための官民パートナーシップは、まずアップグレードの計画と管理のために確保された資金から支援を受けることができる。そうすることで、全米のスタートアップによる新技術の採用が促進されると同時に、その実装の過程で相当数の新たな雇用が創出される可能性がある。

都市経済の再活性化と気候政策が交錯しうる大きな分野の1つは、耐気候構造化、エネルギー効率の高い電化製品の設置、建物の改修といった、比較的地味な分野だ。

不動産管理会社Jonathan Rose Companies(ジョナサン・ローズ・カンパニーズ)の環境影響担当ディレクター、Lauren Zullo(ローレン・ズーロ)氏は次のように述べている。「どの地方自治体も、グリーン経済や低炭素経済への移行に高い関心を寄せており、都市は民間の不動産部門と提携する方法を本気で模索している。建築物がグリーン経済とは無関係ではいられないことが分かっているためだ。そして、地元の建物を改修するあらゆる仕事は、そのまま地元の経済活動になる」。

グリーンレトロフィット(既存の建築物を環境への配慮に基づいて改修すること)や分散型再生可能エネルギーの導入に資金を投入することは、地域経済、特に気候変動の最前線にいるコミュニティを優先的に支援する地域経済にとって、大きな追い風となる。

ズーロ氏は、オバマ政権の第1期に可決された2009年の米国復興・再投資法(American Recovery and Reinvestment Act of 2009)に言及し、次のように語った。「多くの投資が復興法に基づいてこのような形で行われてきた。多くの[資金]は、低所得者向けの住宅や手頃な価格の住宅に割り当てられた低所得者向けの耐気候構造化を中心に支出された。[これらの]資金により、エネルギー消費量を30%から50%削減することができ、光熱費の節約が達成できたことは、対象のコミュニティに変革をもたらした」。

これらのプログラムの重要性について、ズーロ氏は、さらに次のように説明した。「低所得者は、公共料金やエネルギーコストの負担が不釣り合いに大きい。低所得者層のコミュニティに割り当てる、または彼らを対象にする形で提供できる、あらゆる種類の省エネの機会は、単に二酸化炭素排出量だけでなく、それらの低所得者層のコミュニティの生活や成功にも影響を与える」。

財源の確保

このように控えめな法案でさえ、景気刺激策の財源は何か、どのように配分されるのかという質問にバイデン政権が答えることができなければ、議会を通過させることはできないだろう。

ツイートの中で、政治評論家のMatthew Yglesias(マシュー・イグレシアス)氏は、国には「アイスクリームパーティーを開く余裕がある」、つまり、共和党は減税を続け、それと同時に政府は景気刺激策への支出を続けることができる、と述べた。

「[金利]は非常に低いのです。国は、我々はいくつかの有望な事業に投資し、減税で『相殺』するアイスクリームのオプションを買う余裕があります」とイグレシアス氏はツイートしている。

バイデンのアジェンダには「この有望な事業に投資し、富裕層への課税によってそれを回収しよう」というようなもので溢れています。

しかし、金利は非常に低いのです。国は、我々はいくつかの有望な事業に投資し、減税で「相殺」するアイスクリームのオプションを買う余裕があります。

-Matthew Yglesias (@mattyglesias)2020年11月10日

大恐慌の初頭にHerbert Hoover(ハーバート・フーバー)政権が設立した復興金融公社(Reconstruction Finance Corporation、RFC)のように、議会は、資金を分配するための組織を設置することもできるだろう。復興金融公社は、Franklin Delano Roosevelt(フランクリン・デラノ・ルーズベルト)政権下で拡大され、破綻の危機にある金融機関や農場、企業などに資金を分配することができるようになった。

この制度自体が成功だったかどうかは定かではないが、RFCは、連邦預金保険公社や関連する商品金融公社(RFCとは異なり、現存する)とともに、1940年代に米国が大恐慌から脱却し、世界が戦争に巻き込まれる中で製造業を促進するための基礎を築いた。

現在まで長年にわたり存続している商品金融公社は、政府が設立したいと考えているインフラストラクチャ金融公社のモデルになるかもしれない。

一部の投資家はこのアイデアを支持している。インフラ分野のある投資家はこう語る。「これは、州、地方自治体、または民間企業に資金を渡し、地方債や通行料で賄うことができる近代的なインフラプロジェクトを提案している事業体への多額の補助金付き融資を、州、地方自治体、または民間企業レベルで引き受けられるようにするということだ。これにより、インフラへの投資を希望し、関連する技術的な要件を有する可能性があるどの事業でも融資が受けられる環境が整う」。

一部の投資家は、インフラ銀行を通じた融資から得られる資金を産業のリショアリング(海外に移した生産拠点を自国内に戻すこと)に充て、企業からの潜在的な税収で融資コストの一部を相殺することを提案した。このような施策の中には、融資が地元の金融機関を通じて行われるようになれば、さらなる経済的恩恵をもたらすものもあるだろう。

都市インフラを中心に投資するベンチャーキャピタルファンドUrban.us(アーバン・ドット・アス)のマネージングパートナーであるMark Paris(マーク・パリス)氏は、「これらの資金を提供するための手段をどうするか。実は、既存のアーキテクチャが使える。それは地方債市場だ」。

インフラの答え

バイデン政権は、トランプ政権の気候変動政策の流れを反転させるための手段には事欠かないが、これらの連邦政策の変更の多くは法廷論争に発展する可能性が高い。

David Roberts(デヴィッド・ロバーツ)氏はVox(ヴォックス)の記事の中で、バイデン氏が米国経済の脱炭素化に向けた道筋に沿って取ることができる直接的な政策のいくつかについて、非常にわかりやすく説明している。それらには、トランプ大統領が取り消しまたは縮小した125を超える気候・環境規制を復元すること、環境保護庁と協力してオバマ時代のクリーンパワープラン(電力事業者向けの二酸化炭素排出削減に関する政策)の拡大版を新しく策定すること、運輸省による新しい燃費基準の開発を推進すること、そしてカリフォルニア州独自の非常に積極的な車両基準を支持することが含まれる。

また、バイデン氏は、投資のための金融モデルに気候リスクを織り込むよう金融市場を促すことにより、気候に優しいビジネスへの投資や化石燃料からの撤退をさらに促進できる、とロバーツ氏は指摘する

米国最大の金融サービス機関のいくつかは、すでにそのような取り組みを行っており、石油・ガス会社は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響で株価が下落し、需要が急落する中、再生可能燃料や無公害燃料への移行の必要性と格闘している。

昨年Mother Jones(マザー・ジョーンズ)氏が示唆したように、トランプ政権が移民を国家安全保障上の緊急事態と宣言したのと同様に、バイデン政権が気候変動を国家安全保障上の緊急事態と宣言することもあり得る。そうなれば、バイデン氏は経済を再構築し、産業政策に直接影響を与える広範な権限を持つことになる。

国家気候緊急事態を宣言すれば、バイデン氏は次期大統領のエネルギー計画を構成するインフラ構想の多くを実現するために必要な権限を手にすることになるが、それを支持する国民の信認が得られるとは限らない。

その一歩を踏み出す前に、バイデン氏は、まず立法面で手を尽くそうとするかもしれない。ねじれ状態にある議会では、それはインフラ、雇用、産業インセンティブに焦点を当てることを意味する。

バイデン氏は9月の演説で「気候変動の影響は選択できません。それは党派的な現象ではないからです。それは科学です。私たちの対応も同じでなければなりません。科学に基づいて、共に行動する。全員で取り組むことが必要です」と述べた。

そして次のように続けた。「これらは雇用を創出し、気候変動を緩和し、遅くとも2050年までの排出実質ゼロを軌道に乗せるための具体的で実行可能な政策です。インフラに投資して、それをより強く、より回復力のあるものにすると同時に、気候変動の根本原因に取り組むことができます」。

関連記事:ナタリー・ポートマンとジョン・レジェンドは革ではなく菌糸の服を着る

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:ジョー・バイデン 環境問題

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)