中国政府のAnt、Alibabaへの規制強化を受けて世界の投資家は中国のハイテク株から脱出中

ジャック・マー(馬雲)氏が設立したAntとAlibabaは最近まで中国のテクノロジー・エリートの最高の達成点として歓迎されていた。しかしこの世界的企業グループが中国政府から厳しい取り締まりを受けたことで世界の投資家は中国のテクノロジー株から脱出し始めている。

中国の主要テクノロジー企業の株価は急激に下落している。Alibaba、Tencent、JD.com、Meituanは数日で時価総額2000億ドル(20.7兆円)を失ったとBloombergは推計している。

中国を代表するフィンテック企業であるAntグループの株式上場が土壇場で政府から中止を命ぜられたことで関連企業である電子商取引の巨人も大きく動揺していた。中国政府の市場監視機構は反競争的行為の疑いでAlibabaの捜査を始めたと伝えられる。

Antグループ自身は12月26日に政府の召喚を受け、ビジネス慣行を「修正」する計画を提出することを余儀なくされた。

Alibabaの株価は、10月下旬の直近の高値から約30%下落している。さらに中国国内市場におけるテクノロジー株も広範囲に下落している。 中国のテクノロジーに焦点を当てた上場株投資信託の1つは、今日の取引による1.5%の下落を含めて直近高値から約8%ダウンした。

投資家がAlibaba株式に投資するために利用した米国預託証券(ADR)はニューヨーク証券取引所での12月23日の取引終了時の1株あたり256ドルからわずか1日で約222ドルに下落した。 同社は今日、さらに0.5ポイント下落している。 今四半期当初には1株あたり319ドル以上だった。

中国でハイテク企業と中国共産党との間で緊張が高まっていることは明らかでこれまでも投資家を強く懸念させていた。しかしジャック・マー氏の中国政府との関係は他の有名起業家の場合と比べても一層険悪化なものとなった。Tencentのファウンダー、ポニー・マー(馬華騰)氏、百度の共同ファウンダー、エリック・ヨン(徐永)氏とロビン・リー(李延紅)氏はジャック・マー氏とくらべて脚光を浴びまいとしている。

Bloombergは現在の市場の状態を簡明にまとめている。それによれば、最も直接的に政府の標的となっているのはジャック・マー氏のように見えるが、別の機会に中国の規制当局はTencentのゲームにおける影響力を減殺しようと焦点を当てている。

特にAlibabaの事態は悪化の一途をたどっており、大規模な自社株買いプログラムによっても出血を止めることができなかった。

今回の新たな規制は、単発的、一過的なのか、それとも中国政府がハイテク企業を国益に従属させようする努力の表れなのかはまだはっきりと見極められない。アメリカと中国の間でテクノロジー上の対立が激化しする中、これまで政治を避けて成長を遂げてきた多くの企業が外交と国家安全保障の十字砲火にさらされることになるかもしれない。

一方、新たに中国政府から後押しされて幸運が微笑んでいる企業もある。

これはCPU分野では以前から明白で、中国がテクノロジーの自立化を推進する中で新たな事業と新たな富豪が生まれつつある。Liu FengFeng(刘峰峰)氏は国内に新しい半導体メーカーを建設しようとするTsinghon(清鸿光科)を設立してすぐに500万ドルを調達することができた。機械学習アプリケーションに特化したチップセットを製造すIntellifusion社は、4月に1億4100万ドルを追加調達している。

非政府投資家は、中国政府の規制の風向き次第で危機に直面するリスクがある中国のテクノロジー・スタートアップを支援することに意欲を失うかもしれない。 この地域の他のスタートアップ市場(とりわけインド、日本)が中国の規制強化から恩恵を受けるかどうかは、2021年に津注目すべきトピックの一つとなるだろう。
画像:Getty Images

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滑川海彦@Facebook

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TechCrunch Japan

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