イタリア地裁がDeliverooの配達員ランキングアルゴリズムに対し「差別的」と判決、賠償命令

イタリアの地裁は、3つの労働組合が起こした訴訟において、純粋なアルゴリズムによるマネージメントに打撃を与えた。ボローニャ裁判所は、オンデマンドフードデリバリープラットフォームDeliverooで使用されていた評判ランキングアルゴリズムは、地元の労働法に違反してギグ配達労働者を差別したと裁定した。

先にイタリアで報道されたこの判決は、Deliverooのランキングアルゴリズムは、労働を留保する場合に法的に保護された理由を明確に区別しなかった — 例えば、配達員が病気だった、あるいは、保障された権利に基づいてストライキを行使しているなど、法的に保護された理由で働いていないのか、それとも、当初自ら示したほど生産的でなかった、など、もっとささいな理由だったのか区別がないので、配達労働者を差別したとしている。

イタリア労働総同盟(Italian General Confederation of Labour; CGIL)は声明の中で、ボローニャ裁判所の判決を「デジタル社会での、労働組合の権利と自由の征服において画期的な転換点」と呼んだ。

判決についてDeliveroo社にTechCrunchがコメントを求めたところ、同社の広報担当者からこのような声明が送られてきた。

「この判決は、Deliverooがイタリアや他の市場ですでに使用していない、過去の予約オプションモデルに関するものです。ライダーは、いつ働くか、どこで働くか、少しの間、または望む限りの時間など、選択する完全なフレキシビリティを持っています。予約システムというものはなく、仕事を受け入れる義務もないということです」。

「ライダーが望むフレキシビリティを提供するために、私たちは自営業(モデル)を提供しているのです。すべてのアンケート調査で、ライダーは圧倒的に何よりもフレキシビリティを重視していると示しています。最新の調査では、80%以上の確率でした。現在Deliverooは、自営業のライダーとして働くための申込を毎週何千も受理しており、英国内ではライダーの数を倍増させました。昨年、英国では2万5,000人だったライダーの数は、5万人に増えています」。

DeliverooイタリアのゼネラルマネージャーであるMatteo Sarzana(マッテオ・サルザーナ)氏から声明を得たAnsa.itによると、裁判所はDeliverooに対し、申請者に5万ユーロ(約630万円、プラス訴訟費用)を支払うよう、そして同社のウェブサイト上で判決を公開するよう命じたという。これに対し同社は、裁判官の裁定に留意するものの、賛同はしていないこと、さらに、ランキングアルゴリズムとリンクされているシフト予約システムは、もはや市場で使用されていないことを強調した。

「旧システムの公平性は、裁判の過程で客観的かつ現実的な差別の事例が一つも出てこなかったことからも確認されています。裁定は、具体的な証拠のない仮説と潜在的な評価にのみ基づいている」とサルザーナ氏は声明の中で付け加えた(イタリア語からの翻訳)。

オンデマンドデリバリーアプリで知られる同社は、本拠地イギリスでも法的課題の数々に直面している。(自営業の配達人としての)ギグ労働者の分類に関しての問題や、ライダーの団体交渉権に反対しているためだ。

英国の下院議員Frank Field(フランク-フィールド)氏が2018年に主導した調査は、(ギグの)「柔軟な」労働モデルを20世紀の造船所になぞらえ、Deliverooが生成する二重労働市場は、一部のライダーにとっては非常にうまく機能するが、他の者たちには非常に悪いと言っている。

ボローニャ裁判所の判決はまた、大規模な「自営業」労働力をアルゴリズムを使って管理する他のギグプラットフォームに対する数々の法的異議申し立てがここ数ヶ月の間、ヨーロッパで提訴されていることからも注目される。

この中には、昨年夏にオランダでUberの自動化された意思決定に対する異議申し立てを行ったUberドライバーのグループが含まれており、汎EUデータ保護法に言及している。

配車サービス会社のOlaも同様の課題に直面しているが、自営業者の労働力を管理するツールとしての技術的な監視とデータ使用が対象になっている。

これらのケースに関する判決はまだ係争中だ。

同時にEUの議員は、大規模なオンラインプラットフォームがアルゴリズムによるランキングシステムがどのように機能しているかについての情報を規制当局に提供することを義務付ける新法を提案している。AIによって動く巨大企業に対し、より幅広い社会的な監視を可能にすることを目的としたものだ。

プラットフォームのアルゴリズムの監視と説明責任を可能にするこの動きは、透明性の欠如と、自動化された決定がバイアス、差別、搾取を拡大する可能性についての懸念に応えるものと言える。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Deliveroo フードデリバリー 差別

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(翻訳:Nakazato)

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TechCrunch Japan

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