脅しに出たFacebook、我々がやらなければ中国に乗っ取られる

Facebookは、中国が権威主義的な社会的価値観を輸出するという懸念を、事業の分割や抑制を求める圧力への反論の材料にし始めた。Facebookの幹部たちは口々に、もし米政府が企業規模の制限、企業買収の妨害、暗号通貨の禁止などに出れば、そうした制約のない中国企業が海外で勝利し、巨大な力と膨大なデータを中国政府にもたらすようになると主張している。CEOのマーク・ザッカーバーグ氏、COOのシェリル・サンドバーグ(Sheryl Sandberg)氏、コミュニケーション担当副社長のニック・クレッグ(Nick Clegg)氏はみな、この立場を表明している。

この論点は、米国時間7月16日と17日の米議会によるLibra(Facebookが主導し2020年前半に運用開始を目指しているデジタル通貨)に関する公聴会で改めて具体的に語られた。Facebookのブロックチェーンを扱う子会社Calibraのデイビッド・マーカス(David Marcus)氏は、米下院金融サービス委員会のために用意した意見書で、こう述べている。

「米国は、デジタル通貨と支払いの分野ではイノベーションを主導できず、他国がそれを行うようになると私は考えています。もし行動を起こせなければ、たちまち、まったく価値観が異なる別の者にデジタル通貨を支配されるようになるでしょう」。

2019年7月16日、ワシントンD.C.の連邦議会で開かれた上院銀行住宅都市委員会公聴会で証言するFacebookのCalibra代表デイビッド・マーカス氏。同委員会は「Facebookが提案するデジタル通貨とデータプライバシーに対する考察」に関する公聴会を開いた(写真: Alex Wong/Getty Images)

マーカス氏は、昨日開かれた上院銀行小委員会でも、こう話している。「このまま動かずにいれば、10年15年後、世界の半分はブロックチェーン技術に依存した社会となったときに、我々の国家安全保障の手段が及ばない事態になりかねません」。

この議論は、下院が検討している「巨大ハイテク企業の金融業参入を禁止する」法律に対抗するものだ。ロイターの報道によれば、この法案は、Facebookなどの年間収益が250億ドル(約2兆7000億円)を超える企業は「デジタル資産の設立、維持管理、運用を行うべきではない。これらは交換媒介物、勘定単位、価値の保存など同様の機能に広く使われることを想定している」とのことだ。

Facebookは、暗号通貨は避けて通れないとのメッセージを伝えようとしている。Libraの禁止は、良心を欠くいい加減な企業にこの技術を支配させるチャンスを与えるだけかも知れない。しかし、Facebookのこの主張は、暗号通貨のためだけではない。

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この考えは、ちょうど1年前、ザッカーバーグ氏がRecorde誌のカーラ・スウィッシャー(Kara Swicher)氏のインタビューに応えたときに固まった。「この質問は政策的な観点からのものだと思います。つまり、米企業を世界に輸出したいか?」。

「私たちはこの国で育ち、ここでとても大切に感じている多くの価値観を共有していると思います。そうすることは、安全保障の面でも価値観の観点からしても、総じてとてもいいことだと思います。なぜなら、それとまったく異なるのが、率直に言って、中国企業だからです。もし私たちが、『オーケー、ボクたちは国家として、それらの企業の羽根を切って、他の場所での活動を難しくするよに決めよう。そこでは小さくなるからね』というスタンスを受け入れたとしましょう。すると、たくさんの企業が私たちがやている仕事に参入を望むようになり、またそれが可能になります」。

それはとくに中国企業のことを指しているのかと質問すると、ザッカーバーグ氏はこう強調した。

「そう。それに、彼らの価値観は我々のものとは違います。選挙妨害やテロリズムのことを政府が把握したとしても、中国企業は我々ほど協力的にはならず、その国の利益のために力を貸すなんてことは、絶対にないと思います」。

2018年4月10日、ワシントンD.C.キャピトルヒルにあるハート上院オフィスビルで開かれた上院司法および商業の合同委員会で証言するFacebook共同創設者、会長、CEOのマーク・ザッカーバーグ氏。ザッカーバーグ氏(33歳)は、8700万人のFacebookユーザーの個人情報がイギリスの政治コンサルティング企業Cambridge Analyticaに渡った事件とトランプ氏の選挙キャンペーンとの関係が報道された後に証言を求められた

今年の4月、ザッカーバーグ氏は、人権に関する実績に乏しい国々でのデータローカライゼーション規制にFacebookが反対する理由を述べた際に、さらに一歩踏み込んでいる。彼は、外国にデータが保管されることの危険性を説いている。規制当局がFacebookの活動や、各地でのイノベーションの発生を阻止すれば、まさにそれが起きる。哲学者ユヴァル・ハラリ氏に、ザッカーバーグ氏はこう話した。

「将来を考えるとき、非常に不安になることに、私が示してきた価値観(インターネットとデータに関するもの)が、すべての国に共通する価値観ではないという問題があります。どこかのとても権威主義的な国で、ヨーロッパやその他の多くの地域で用いられている規制の枠組みからかけ離れたデータ政策が話題になり導入される。GDPRのような、人々の自由や権利を尊重する規制を各国が受け入れる、という形とは違うものとしてすぐに思い浮かぶのが、現在広まりつつある権威主義的なモデル、つまり各国が全員のデータをその国のデータセンターで管理するという方法です。もし私が政府の人間で、そこへ軍隊を送り込めば、監視や軍事のための欲しいデータにいくらでもアクセスできてしまうのです。

それは非常に暗い未来です。インターネットサービスを構築する人間として、または単に世界の市民として、進んで欲しくない方向です。もし、政府があなたのデータにアクセスできるようになれば、あなたが何者かを特定し、あなたとあなたの家族を捕らえ、傷つけ、本当に深い身体的危害を与えることが可能になります」。

Facebookがこのほど雇い入れたコミュニケーション部門の責任者ニック・クレッグ氏は、1月、記者団に対してこう話した

「これらはもちろん、道理に適った質問ですが、驚くほどの頭脳と、私たちが大西洋を挟んで要求しているプライバシーやデータ保護に関する法律や規制の制約を受けずに大規模にデータを処理できる能力を合体させた中国については、あまり語られていません。(そしてそのデータは)論議を呼んでいる中国政府の社会信用システムのような、さらに陰湿な監視に悪用されます」。

Facebookの共同創設者クリス・ヒューズ(Chris Hughes)氏の、Facebookは分割させるべきという主張に対して、クレッグ氏は5月にこう書いている。「Faebookは分割してはいけない。しかし、責任は果たさなければいけない。インターネットの世界で私たちが直面している難題を心配するのなら、成功している米企業を解体するのではなく、インターネットの権利に関するルールに従うことを考えるべきだ」。

その翌月ベルリンでのスピーチの中で、彼はこう力説した。

「もし、私たちヨーロッパと米国がホワイトノイズを切って協力を始めなければ、インターネットがもはやユニバーサルな空間ではなく、それぞれの国が独自のルールと権威主義的な体制で、市民の自由を制限する一方で吸い上げた市民のデータの貯蔵庫が立ち並ぶ世界となったとき、私たちは夢遊病者のように、そこをさまようことになります。私たち西側諸国が、ただちに、徹底的にこの問題に取り組まなければ、その答は、我々の手から離れてしまいます。地球上の私たちの側に共通のルールを作れば、それが好例となり、残りの世界も追従します」。

COOのシェリル・サンドバーグ氏は、5月に行われたCNBCのインタビューで、かなり直接的にこの問題点を突いている。

「分割は可能ですし、他のハイテク企業も分割できるでしょうが、人々が心配している根底の問題は解決されません。人々がハイテク企業の規模と権力を心配する一方で、米国では中国企業の規模と権力、そして中国企業は今後も分割されないことを知り、心配が持ち上がっています」。

2018年9月5日、ワシントンD.C.米連邦議会で開かれた外国による影響工作におけるソーシャルメディア・プラットフォームの使用に関する公聴会で証言するFacebook最高執行責任者シェリル・サンドバーグ氏。TwitterのCEOジャック・ドーシー氏とFacebookのCOOシェリル・サンドバーグ氏は、外国の工作員が、どのように彼らのプラットフォームを使い、世論に影響を与え操ろうとしているかという質問に晒された(写真:Drew Angerer/Getty Images)

脅しの戦法

事実、中国は個人の自由とプライバシーに関して、米国とは異なる価値観を持っている。そしてそう、Facebookを分割すれば、WhatsAppなどの製品が弱体化し、中国の巨大ハイテク企業TencentのWeChatなどの急速な増殖を招くだろう。

しかし、Facebookの問題を回避できたとしても、オープンで公正なインターネットにもたらされる中国の影響がなくなるわけではない。この問題を「規制強化は中国に利する」という枠にはめれば、誤った二元論を生む。ザッカーバーグ氏がウェブを通して自由を輸出しようと真剣に政府と協力する意志があれば、もっと建設的なアプローチが考えられる。さらに、適切な規制がない中で犯された過ちにより積み重ねられたFacebookへの不信感が、米国的な理想が米企業によって広められるという認識を、間違いなく大きく傷つけたということもある。

Facebookの分割は、特にそれが今後の不正を防ぐための理路整然とした理由ではなく、Facebookの不正行為に基づいて行われるなら、答えにはならないだろう。結局のところ有効なアプローチは、大規模に、または急速に成長するソーシャルネットワークの今後の買収を止めること、本当の意味でのデータのポータビリティーを保証させ、競合他社に乗り換える自由を現在のユーザーに与えること、プライバシーに関するポリシーの適切な監視を行うこと、そして、Libraの運用開始を、ユーザーを混乱させないよう、テロリストに悪用されないよう、世界経済を危機に陥れないよう、いろいろな段階でのテストを重ねる間、遅らせることだ。

脅しの戦法は、Facebook自身がそれを恐れていることの証でもある。長年、安全戦略で成長を続けてきた結果、ついにそこへ辿り着いてしまったのかも知れない。米連邦取引委員会による50億ドル(約5400億円)の制裁金が課されても、1四半期の収益がそれを超える企業にとっては、ちょっと手首を叩かれた程度のことでも、分割となればダメージは大きい。恐怖を振りまくことより、悪用を防ぐことに集中して規制当局と誠意をもって協力することが、Facebookの利益になる。中国の脅威を持ち出し、政府当局者の不安を煽るのが、政治的にはうまいやり方であって、もしかしたら有効なのかも知れない。しかし、それは間違っている。

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(翻訳:金井哲夫)

Coinbaseが大口保有者の売買動向を提供へ

Coinbaseはその膨大なユーザーベースを活かして、人々の取引行動と価格の相関についてより詳しい情報を提供しようとしている。現在Coinbaseでは15種類の暗号通貨の取引が可能であり、この新機能から何らかの兆候をに読み取れるかもしれない。

価格と変動情報に加えて、ユーザーはCoinbaseの大口顧客が今どんな動きをしているかを見ることができる。それぞれの通貨について、買い/売りの比率がわかる。

舞台裏でCoinbaseは、保有残高が上位10%に入るユーザーの行動を追跡し、そのうち何人のユーザーが過去24時間に順位を上げたか下げたかを数える。データは2時間毎に更新される。

Coinbaseは他にも2種類のデータポイントを算出する。各通貨の平均保有期間と支持率だ。ここではCoinbaseの全ユーザーを対象に、特定の通貨を売ったり別のアドレスに送金したりする前にどれだけの期間保持しているかを調べてデータを提供する。

ただし、ユーザーがハードウェアウォレットやその他のセキュアなウォレットに資金を移動した場合はアカウントから消えてしまうので、Coinbaseはユーザーがもはやその資金を「保有」しているとは見なさない。

さらにCoinbaseは、価格データを監視することで、複数の通貨の間に価格の相関があるかどうかを調べる。この機能を使ってユーザーはバランスのとれた暗号通貨ポートフォリオを作ることができる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

FacebookはLibraのプライバシー保護監督を依頼したと証言した規制機関に連絡していなかった(CNBC報道)

CNBCの報道によると、Facebook幹部のDavid Marcus氏が上院銀行委員会で同社の暗号通貨のデータ保護を監督すると証言したSwiss Federal Data Protection and Information Commissioner(FDPIC、スイス連邦データおよび情報保護委員会)は、同委員会に監督を依頼しているとされるFacebookから未だ何も聞いていない。

CNBCに寄せられた声明の中でFDPICの広報責任者、Hugo Wyler氏は次のように述べた。

Facebookの新会社Calibraの責任者であるDavid Marcus氏が、Libraのデータ保護を当委員会が監督する旨の発言をしたと聞いている。今日に至るまで委員会はLibra関係者から連絡を受けていない。われわれはしかるべき時が来たらFacebookあるいはその代理人から具体的な情報が提供されることを期待している。そうなって初めて、われわれは委員会の法律顧問および監督責任者としての任務を遂行することができる。いずれにせよ、われわれは公開討論における同プロジェクトの進展を見守っていく」

Facebookによる国の通貨政策を回避しようとしている行為は、すでに米国をはじめ世界の立法者たちから批判を浴びている。

「暗号通貨を作る計画を発表したFacebookは、同社のユーザーたちの生活に対して、歯止めのない侵入を続けている。同社が過去に起こしてきた問題を踏まえ、私はFacebookに対して、議会および規制当局が諸問題を調査し行動を起こすまで、暗号追加の開発を一時停止するよう要求する」と、下院金融サービス委員会委員長のMaxine Waters議員がFacebookの暗号通貨発表当日の声明で語った。

FRBのJerome Powell(ジェローム・パウエル)議長もFacebookとその暗号通貨計画に苦言を呈した。「Libraはプライバシー、マネーロンダリング、消費者保護、金融安定性などに多くの深刻な問題を引き起こす」と先週Powell氏は語った。

日頃は民間企業の自由競争的アプローチを擁護しているSteven Mnuchin(スティーブン・ムニューチン)財務長官でさえ、Libraに関してPowell氏と同様の懸念を表明している。

「ビットコインをはじめとする暗号通貨は、サイバー犯罪、脱税、脅迫、ランサムウェア、違法薬物、人身売買など数十億ドル規模の違法行為に悪用されている」とMnuchin氏は昨日(米国時間7/15)の記者会見で述べた。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Libraはスイスの規制下に入るとFacebookが米国議会で証言予定

ブロックチェーンを扱うFacebookの子会社Calibraの代表のDavid Marcus(デヴィッド・マーカス)氏は、米国時間7月16日、17日に予定されている米国連邦議会での証言に先立ち、その内容を公開した。これによると、Libra Associationは、本社を置くスイスの政府による規制下に入るとのことだ。それまでの間は、Libra AssociationとFacebookのCalibra Walletは米国の税制、反資金洗浄規制、不正防止に関する法律に準拠するという。

「Libra Associationは、認可を受け、規制に従い、監督当局による監視の下に置かれることを期待しています。Libra Associationはジュネーブに本社があるため、スイス連邦金融市場監督機構(FINMA)の監督下に置かれることになります」とマーカス氏は記している。「私たちはFINMAと予備会談を行いました。そして、Libra Associationのための適正な規制の枠組みの中で彼らと関わっていくことになります。またLibra Associationは、FinCEN(米国財務省の金融犯罪捜査網)に金融業者として登録する意向があります」

関連記事:Facebookは暗号通貨Libraを発表:知っておくべきこと(未訳)

米国の資金洗浄対策(AML)や顧客確認(KYC)の法律にLibraがどう準拠するかについては、マーカス氏はこう説明している。「Libra Associationも、規制当局、中央銀行、議員と同じように、資金洗浄やテロへの資金供与などをなくすための努力を行っています」。さらにマーカス氏はこう話す。「またLibra Associationは、AMLおよび銀行秘密法を尊重し、その政策と手続き、その他の国際的な安全保障上の法律を守り、テロリズムへの資金供与と戦います。Libraネットワークで金融サービスを提供したいと考える人たちにも、それに準拠してもらいます」

彼は、犯罪者は法の取り締まりを避けるために現金で取り引きを行うため、「Libraは、摘発と法の執行を後退させるどころか、強化します」と主張している。「不正行為が横行する紙幣取り引きのネットワークから、デジタルネットワークへの移行を促進します。そこでは、適正な顧客確認(KYC)の実行による出入り口の管理が機能し、法執行機関や規制当局にはオンチェーン取り引きの独自の分析を可能にする手段が与えられます。したがって、金融犯罪の監視と取り締まりの効力は増大します」

Facebook自身については、マーカス氏はこう書いている。「Calibraウォレットは、 米外国資産管理局(OFAC)が定めたAMLおよびCFT(テロ資金供与対策)プログラムのためのFinCENの規則に従っています。同様に、Calibraも銀行秘密法を遵守し、世界で採用されているKYCおよびAML、CFTの手法を採り入れます」

こうした答えは、金融法にうるさい人たちをなだめる役に立つかも知れないが、私は、議会からもっと主観的な質問がなされることを期待している。ケンブリッジ・アナリティカ事件のような、プライバシー上の約束を破ったりフェイクニュースを流すといった10年間にわたり不祥事を続けてきたFacebookを信頼できるかどうかだ。

そのため私は、Facebookがコミュニケーションの形を変革したとするマーカス氏の以下の声明で、その変革によって社会が混乱したと怒る議員たちと仲良くやれるようになるとは思えない。「私たちは、数十億の人々のための無料で無制限のコミュニケーションを数多く民主化してきました。同じことがデジタル通貨と金融サービスにも起きるよう、支援したいと思っています。しかし、ひとつだけ重要な違いがあります。私たちは、私たちが育ててきたネットワークと通貨の支配権を放棄します」。議会は「民主化」を「混乱」と解釈するだろう。だから、それがお金の世界でそれが起きることを、快く思わない。

FacebookとCalibraは、銀行口座を持たず、銀行や送金業者から多大な手数料を搾取されている貧困家庭を救済するという前向きな意図があるのかも知れない。しかし、Facebookは純粋な利他主義で動いているわけでもない。Facebookは大きく3つの方法でLibraから利益を得ることにしているが、それはマーカス氏の証言には示されていない。

  1. Facebookは、従来の通貨による、Libraの担保として保有するLibra準備金から得られた利益の一部を受け取る。Libraの人気が高まれば、数十億ドル単位にまで膨れ上がる。
  2. Libraを使えば簡単に安価にネット決済ができるため、マーケティング予算はFacebookやGoogleなどのチャンネルに効率的に変換されるようになり、インターネットでの商取引が増大し、Facebookの広告の売り上げも伸びる。
  3. Calibraを通して新しい金融サービスを販売する。可能性としては、Facebookデータを統合すればローンやクレジットを格安に利用できるサービスをユーザーに提供することで、債務不履行が減少し、他のプレイヤーよりも多くのマージンをFacebookが獲得できるようになる。

現実には、フォトシェアリングなどよりずっと大きな賭になる。規制当局の認可にも、適正で詳しい検査が必要になる。FacebookがLibraの所有権からいかに遠ざかろうとしても、それを立ち上げ、育ててきたFacebookが、今も引き続きプロジェクトを主導している。もし議会が、「大きいことは悪いこと」であり、LibraがFacebookをさらに肥大化させるとすでに信じ込んでいたのなら、FacebookとLibraを切り離して、その暗号通貨の利点とリスクを認識することは難しくなる。

マーカス氏の証言の全文は以下のとおり。

Libraの仕組みに関する詳しい解説は、下の記事をお読みいただきたい。

関連記事:Facebookは暗号通貨Libraを発表:知っておくべきこと(未訳)


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(翻訳:金井哲夫)

無料送金アプリ「pring」にワンタップ送金が可能な「スワイプ送金」が加わる

pringは7月16日、、送金アプリ「pring」(プリン)に「スワイプ送金」機能を追加した。pringは、チャット感覚で送金できるUIが特徴で、金融機関の口座からの資金のチャージや、口座への振り込み、送金や受け取りなどがすべて無料で行える。pring上の資金をセブン銀行ATMで直接引き出すこともできる。パーティーや飲み会などの代金を、事前もしくは事後にスムーズに受け渡せるのがメリットだ。

現在pringを利用できる金融機関は、みずほ銀行、三井住友銀行、りそな銀行、住信SBIネット銀行、楽天銀行、ジャパンネット銀行、イオン銀行、埼玉りそな銀行、福岡銀行、西日本シティ銀行、愛知銀行、伊予銀行、愛媛銀行、関西みらい銀行(旧関西アーバン銀行を除く)、北九州銀行、熊本銀行、群馬銀行、京葉銀行、四国銀行、七十七銀行、親和銀行、千葉銀行、筑波銀行、東邦銀行、百十四銀行、広島銀行、北洋銀行、宮崎銀行、武蔵野銀行となっている。

これまでpringでは500円を送金するためにチャット画面では5回タップする必要があったが、スワイプ送金機能を使えば送金する硬貨の画像を選び、指ではじくだけのワンタップで送金可能になる。

ALSOKも出資のディーカレットが32億円調達、仮想通貨の決済技術開発にアクセル踏む

仮想通貨(暗号通貨)の取引・決済サービスを提供しているディーカレットは7月11日、総額32億円の資金調達を実施した。出資企業は、筆頭株主であるインターネットイニシアティブのほか、KDDI、コナミホールディングス、住友生命保険、大同生命保険、明治安田生命保険、中部電力、阪急阪神ホールディングス、松井証券、エネルギア・コミュニケーションズ、綜合警備保障(ALSOK)、凸版印刷の計12社。

今回の調達した資金は開発体制を強化に当て、デジタル通貨の新たな決済プラットフォーム開発を進める。より多くの企業からの出資を受けることで、仮想通貨からデジタル通貨へサービスの範囲を拡大する狙いがある。

同社のサービスは、資金の預け入れを銀行だけなく、金融機関を利用したペイジー入金、ローソン、ファミリーマートなどで依頼できるコンビニ入金を用意しているほか、日本円への出金機能も備える。QRコードを使った送金も可能だ。

南米フィンテック依然好調、ソフトバンクなどがブラジルの担保貸付サービスに250億円出資

投資家がラテンアメリカのスタートアップに積極的に進出を続ける中、どの分野よりも注目を集めているのがフィンテックだ。地域全体の資産が増えるにづれ、適切な財務サービス(特に融資)の利用は、普通の現金よりも新しい金融ツールを使いこなしたいと思っているモバイル志向のミドルクラスにとって不可欠だ。

それが、ブラジルの消費者向けクレジットカードの巨人であるNubank(ニューバンク)を企業価値約40億ドルに押し上げた理由だ。そして担保貸付サービスのCreditas<(クレディダス)が、ソフトバンク・ビジョン・ファンドおよびソフトバンクグループから2.31億ドル(約250億円)を調達したのも同じ理由だ。既存投資家のVostok Emerging Finance、Santander InnoVentures、Amadeus Capitalらもこのラウンドに参加した。

年にSergio Furio(セルジオ・フリゴ)氏が設立したCreditusは、低金利と引き換えに抵当を供出するブラジル人顧客向けに貸付けを始めた。そして2017年には、多方面の種類の貸付を行う総合金融会社になった。

Creditusは、Kaszek Ventures、Quonaの Accion Frontier Fund、Redpoint eVentures、QED Investors、Naspers Fintech、International Finance Corporation、EndeavorのCatalyst fundといった国内外の投資家による資金のおかげで、ブラジルの金融サービス分野で最大のスタートアップになった。同社は調達した資金を使って提供サービスの幅を広げ、無担保消費者ローンやクレジットカードといった新規ビジネスを始めようとしているらしい。

もし無担保貸付分野への参入に成功すれば、CreditasはNubank(Creditasの筆頭出社であるソフトバンクと出資について交渉していると報じられた)と対等に戦えるようになる。

「Creditasは、効率と低価格によってす素晴らしい体験を提供し、ブラジルにおける低費用貸付の民主化を進める努力を続けている。今回の投資によって我々の計画が加速され、ブラジル国民の生活を改善するビジネスモデルを拡大していくつもりだ」とフリオ氏が声明で語った。

出資に伴い、ソフトバンク・ビジョン・ファンドおよびSoftBnak Latin America Fundの代表者がCreditasの取締役に就任する。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

7payは絶不調だがセブンで20%還元始まる、LINE Payなら23.5%以上の還元に

PayPayとLINE Pay、メルペイは7月11日、セブン-イレブンで最大20%還元となる合同キャンペーンを開始した。キャンペーンは本日11日から始まり21日までの11日間。開始日も実施期間も「イレブン」合わせだ。還元上限は各社につき1000円相当で、計3000円相当となる。さらに、第2弾キャンペーンも8月12日からの実施が決まっている。7月1日にサービスを開始したものの、不正アクセスによって7月3日以降は実質使えなくなっている7payはキャンペーン対象外だ。

最大の20%還元を受けられる難易度は、LINE Payが最も低い。セブン-イレブンでコード決済するだけだ。マイカラーなどには関係なく一律20%の還元が受けられる。還元はLINE Payボーナスとなり、決済時に即時付与される。実際にはマイカラーの0.5〜2%と、コード決済の3%の還元が上乗せされるので23.5〜25%の還元になる。ローソンやファミリーマートで通常20%還元、金土曜が25%還元となる、d払いの7月限定キャンペーンと同様の高還元率だ。

次に容易なのはメルペイ。アカウントに銀行口座を連携させるか、eKYCによる本人確認を済ませたうえで、コードもしくはiDで決済すれば20%還元となる。還元はメルペイポイントとなり、決済翌日に付与される。

PayPayは、決済手段によって還元率が変わる。PayPay残高およびYahoo!マネーでの決済で20%還元となるが、Yahoo! JAPANカードでの決済の場合は19%還元となる。Yahoo!以外のクレジットカードでの決済は還元の対象外だ。とはいえ、普段から金融機関の口座からチャージしてPayPay残高で支払っている利用者にとっては、いつもどおりの決済で20%還元が受けられる。還元はPayPayボーナスとなり、翌月20日ごろに付与される。

給与即日払いのペイミーが7億円調達、今冬に決済プラットフォームを実装へ

ペイミーは7月8日、7億円の第三者割当増資を発表した。引き受け先は、ミクシィ、サイバーエージェント、インキュベイトファンド。

同社は、給与即日払いサービス「Payme」を運営している2017年7月設立のスタートアップ。勤怠データとPaymeを連携させることで、実労働時間から給与計算を即時に実行して即日払いを実現するのが特徴だ。導入企業は、飲食チェーン、人材派遣、小売、コールセンター、 アミューズメント、物流など250社を超え、累計流通金額は15億円を突破、導入先従業員数は12万人に達しているとのこと。利用できる金額の上限は、その日までに稼いだ額の70%まで。この範囲内であれば1000円単位でいつでも即日払いを申請できる。

今回の資金調達で同社は、Payme上に決済プラットフォームとしての新機能を今冬をメドに実装する予定だ。従来の「口座受け取り」以外の受け取り手段を追加することで、キャッシュレス化を推進し、資金の偏りによる機会損失をなくすことを目指す。

なお現在同社は、エンジニア、セールス、PR、マーケティング、コーポレートの5つの職種で人材を募集している

7pay以外は大丈夫か?主要Payログイン時の安全性まとめ

7月1日から始まったセブン&アイ・ホールディングスの独自コード決済である7payは、7月2日に不正アクセスが発覚し、900人が総額5500万円の被害にあったと同社は公表した。

同社は、リーダー機器の初期導入コスト、手数料/ライセンス料などのランニングコストがコード決済に比べて高価なNFC-F(FeliCa)を利用した電子マネーであるnanacoからの移行を目論んでいたと思われるが、今回の失態で戦略の練り直しを迫られるだろう。おそらくセブン-イレブンへの7pay導入のあとは、イトーヨーカドーやデニーズなどもロードマップに入っていたはずだ。

7Payは、独自の7iDというアカウントと、そのパスワードが盗まれると2段階認証もなくそのまま第三者がログインできてしまう脆弱なシステムだった。しかも、パスワード再設定時に別のメールアドレスが使えたので、7iDと登録した生年月日、電話番号が盗まれてしまうと、パスワードも自由に再設定できた。

チャージ用には別のパスワード必要だが、そのパスワード設定のルールが、半角小文字の英数字もしくは数字を使った6〜16文字の文字列という簡単なものだった。大文字小文字の混在や英数字混在などのルールも設けなかったので、英単語や自分の名前の一部などを設定している場合はパスワードを破られやすい状態だった。7iDと同じパスワードにしている場合はなおさらだったのだ。同社では現在、7payの新規登録やチャージは停止しているが、クレジットカードを登録済みの利用者は、念のため情報を削除しておいたほうがいい。

7payに関連する各社の報道を受けて、QR/バーコード決済にネガティブなイメージを持ってしまった利用者も多いことだろう。そこで気になるのが、7pay以外のコード決済か安全なのかどうか?主要なコード決済のセキュリティ仕様を以下にまとめた。なお、ここで紹介するのはあくまでもログイン時のセキュリティだ。チャージ用のクレジットカードそのものを盗まれた場合は、各アプリでは対処できない。盗まれた場合は、できるだけ早くクレジットカード会社に連絡してカードそのもの無効にしよう。

PayPay

基本的に、利用者とは異なる電話番号を持つスマホからは決済できないため、IDやパスワードを盗まれてもそれほど深刻な問題にはならない。電話番号を変更する際は、PayPayアカウントが紐付いている電話番号から利用者が作業する必要がある。アカウントのパスワードを忘れた場合は、登録済みの電話番号もしくは電子メールに再設定用ページのURLが送られる。

PayPayはYahoo! IDのアカウントとパスワードでもログインできるが、こちらはログイン後に登録した電話番号にSMSで認証コードが送られてくる。

ちなみにPayPayは、2018年12月に登録するクレジットカードのセキュリティコードを無制限で入力できる脆弱性が露呈した。この脆弱性を突いた不正アクセスは13件回確認されたが、その内の9回は該当者本人によるものであることが判明。残りの4件についてものPayPayでの実被害はなかった。この後、セキュリティコードの入力制限を設けたほか、クレジットカード会社が用意している3Dセキュア(本人認証サービス)との連携を取り入れて、セキュリティを強化している。

LINE Pay

LINEアカウントを紐付いているための、セキュリティはかなり強固だ。LINEでは、2016年に発生したトーク履歴流出事件のあと、利用者が面倒だと感じるほど強固なセキュリティ仕様に変更している。アカウントを引き継ぐには、まずは既存アカウントと紐付いているスマートフォンなどから「アカウント引き継ぎ」のスライドボタンをオンにする。そして36時間以内に新端末に同じアカウントとパスワードを入力しなければならない。「アカウント引き継ぎ」のボタンをオンにせずに新端末に乗り換えた場合は、友だちリストやトーク履歴、利用サービスをすべて引き継げなくなる。

そもそもLINEアカウントからログアウトする機能は備わっていないので、盗んだアカウント情報でログインする際も、前述の移行作業が必要になる。Facebookアカウントでもログイン可能だが、その場合もやはり元の端末で移行設定しておかないと作業を進められない。元の端末でアカウントを削除すれば引き継ぎ可能だが、削除時にアカウントに紐付いているすべてのサービスが解除されるので、LINE Pay残高だけを盗み取ることはできない。

d払い

MVNOではないドコモ回線を使っている場合は電話番号と紐付けられているので、異なる電話番号からアカウントを乗っ取るのは難しい。d払いはMVNOやドコモ以外の他キャリアの回線でも使えるが、ログインにはdアカウントに登録したメールアドレスとパスワードが必要だ。d払いアプリにdアカウントで初めてログインする場合は2段階認証が必要になり、登録済みのメールアドレスに認証コードが飛ぶ仕組みになっている。


しかし、別のスマートフォンやPCのウェブブラウザーで盗まれたdアカウントのIDとパスワードでログインすることは可能だ。ここで登録メールアドレスなどを変更されてしまうと、アカウントを乗っ取られてしまう。これを防ぐには、2段階認証の強度を「弱」から「強」に変更しよう。これで、dアカウントサイトへのログインについても登録メールアドレスに送られた認証コードの入力が必要になる。

楽天ペイ

IDとメールアドレスでログインできる。初回のログイン時にSMSによる2段階認証が必要だが、SMSを送る先には任意の電話番号を選べる。つまり、IDとメールアドレスを盗まれてしまうとログイン自体はできてしまう。

ただし、すでに登録してあるクレジットカードのセキュリティコードを入力する必要があり、間違って4回入力すると一時的にロックがかかる。一方で、新たにクレジットカードを登録する操作は可能だ。会員情報などの閲覧や変更も可能なので、そもそもの楽天IDのパスワードを強固にしておく必要があるだろう。

Origami Pay

メールアドレスとパスワード、もしくはFacebookアカウントとの連携で利用できる。別端末での初回ログイン時にメールアドレスとパスワードを入力すると2段階認証プロセスが走り、アカウントに登録している電話番号にSMSに認証コードが届く。

このコードをアプリに入力すると、さらに登録済みメールアドレスにも異なる認証コードが送られる。こちらを入力して初めてOrigami Payを利用可能になるので、セキュリティはかなり高い。

au Pay

現状では。au回線を使っているユーザー以外では使えないので、それだけでもセキュリティは高い。利用するには、auの電話番号と設定したパスワードが必要で、同じau回線であっても異なる電話番号を入力してもログインできない。

FamiPay

登録した電話番号とパスワードでログインする仕様。電話番号が異なる別のスマホからも登録した電話番号とパスワードでログインできるが、結局は登録した電話番号に認証コードが飛ぶため、第三者がFamiPayを不正するのは難しい。なお、「ファミペイアプリ」から一度ログアウトした場合は、同じ端末からの再ログインであっても事前登録した電話番号に認証コードが送られる。

電話番号を変更する場合は、新旧の電話番号FamiPayのパスワード、そして電話番号変更コードが必要だ。この電話番号変更コードはコールセンターに連絡しないと発行されない。

中国では顔認識にも美顔フィルターを搭載へ、自分の顔が醜いと利用を拒否

中国の顔認識ソフトウェアは、正確なだけではダメなのだ。Alibaba(アリババ)傘下でQRコード決済サービスなどを展開しているAlipayは最近、ユーザーの外見がソフトウェアの成功の鍵であることを証明した。

米国時間7月2日、Alipayは中国語のソーシャルメディアであるWeibo(微博、ウェイボー)で、その決済アプリの「あなたのお顔で払いましょう」システムにビューティーフィルター(美顔フィルター)を加えたと発表した。1週間後には、Alipayの顔スキャンシステムを装備している小売店全店に、その機能が行き渡る。

AlipayはWeiboにこう書いている。「あなたは(自撮りアプリの)ビューティーカメラで撮ったのよりもずっと美しくなります。あなたご自身も感動されるでしょう」。

この新しい機能は、顔認識マシンは人の顔を醜くするという苦情への対応だ。ニュースポータルであるSina Technologyが行った調査によると、回答者の60%以上がこの決済方法では自分の顔がふつうのカメラよりも醜くなる、と答えている。美容を気にする人々は、スーパーマーケットの混みあったレジでコンピューターの大きな画面に自分の無愛想な顔が映ったらとっても嫌だろう。

中国では美容意識の高まりにより、香港に上場した美顔セルフィーアプリのMeitu(美图、メイツー)を捨てて、最近Nasdaqに上場して1億8000万ドルを獲得した整形手術のマーケットプレイスのSo-Young(ソヨン、新氧)へ行く人も増えている。

メッセージングの大手WeChatの決済アプリWeChat Payも、Alipayに追随して美顔認識を採用するだろうか?ビューティーフィルターは企業にとって、必須ではないが競争上無視できないツールだ。スマートフォンメーカーのXiaomi(シャオミ)も最近Meituをマネて、セルフィーやステッカーやグラフィクスを重視した新機種を発売した。

Alipayの月間アクティブユーザーは10億を超えている。WeChatの決済アプリはそこまで行っていないが、3月には1日に処理するトランザクションが10億を超えたと発表した。

画像クレジット: Alipay via Weibo

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ウォレットアプリの「Kyash」が約15億円調達、3大メガバンクと米VCが投資

左からKyash代表取締役の鷹取真一氏、CTOの椎野孝弘氏

Kyashは7月3日、サンフランシスコに本社を置くGoodwater Capitalならびに三菱UFJキャピタルをリードとするシリーズBラウンドにおいて約15億円の資金調達を実施したと明かした。同ラウンドには凸版印刷、ジャフコ、新生企業投資、SMBCベンチャーキャピタルも参加している。

Kyashは2016年12月に発表されたシリーズAでは約10億円を調達しており、累積資金調達額は約28億円となった。

Kyashは2017年4月にウォレットアプリの「Kyash」をリリース。今年の4月には法人向けの決済プラットフォーム「Kyash Direct」を提供開始し、決済技術を他社へ開放した。

今回のラウンドに三菱UFJキャピタルがラウンドに参加したことにより、Kyashの投資家勢に3メガバンクが揃うかたちとなった。Kyashはこれまでに三井住友銀行ならびにみずほキャピタルからの出資を受けている。

FacebookやTwitter、Spotifyなどに投資を実施してきたGoodwater CapitalのマネージングパートナーであるEric J. Kim氏は「Kyashは、従来の銀行が提供しているサービスをより合理的な方法で提供することができ、世界中で急拡大しているチャレンジャーバンクの類型に属している。プロダクトのリリースからわずか2年足らずで、決済領域におけるテクノロジーカンパニーのリーダーとして『価値移動のインフラ』を創りあげ、Visaからカード発行ライセンスを取得するまでにいたったKyashのさらなる成長を期待している」とコメント。

TechCrunch Japanでは、今回の調達に関してKyash代表取締役の鷹取真一氏に話を聞いた。

今回のラウンドには米のGoodwater Capitalが参加しているが?

鷹取氏「日本には巨大な小売市場があるけれど、キャッシュレス比率が諸外国と比べて圧倒的に低い。すなわち、ポテンシャルがまだまだある。日本では10月から政府がキャッシュレス還元を支援したり、来年にはオリンピックが開催される。更に、政府はキャッシュレスビジョンの中でキャッシュレス比率を40パーセントまで高めるという明確なコミットをしており、この大きな市場を魅力に感じる海外の投資家が増えてきている。とはいえ、日本の決済市場はかなりの飽和状態であり、『興味はある』という方は多くいるが、本当に出資にいたったのは今回のケースが初。Goodwater CapitalはFacebookやTwitter、Spotifyなど世界でも有名な企業の投資実績があり、これからの銀行になっていくような事業者に、グローバルに出資をしている。日本の中で可能性がありそうな事業者ということで、お話をいただき、ご縁にいたった。そしてKyashとしては、国内だけではなく、中長期としては海外も当然見ている」

日本の決済市場におけるKyashのポジションは?

鷹取氏「端的な答えとしては、金融領域のインフラを作っているというところ。KyashでもKyashというウォレットを出しているが、他の事業者もウォレットや自社のサービスとしてエンドユーザーに届けるところは色々とやっている。そのような中で、Kyashの強みは、プロセシングや送金などの仕組みのテクノロジーを他社に解放しているところ。プラットフォーム化をして、自社のサービスだけではなく他のサービスもそこに乗って収益化ができるような場を提供していく。そういう事業者であるという部分が他社との大きな違いだ」

日本のキャッシュレス化の現状をどう見ているか?

鷹取氏「僕の中で、『キャッシュレス1.0』が、ポイントばら撒きやインセンティブにより、まずは『経済的な便利』で使い始めてもらうというステージ。『キャッシュレス2.0』では、本当の意味での金融機能が価値を発揮してくる。支払いサイクルや受け取りのサイクルが短くなるなど、金融機能がより強化されることにより生まれる付加価値に、より強力なユーザーがユーザーが付いてくると思っている。現在はかなりの飽和状態で、ポイントや還元の話が盛り上がっている。だが、僕たちはその先を見ており、給料や報酬が即座に受け取れるとか、1ヵ月後にしか払われなかったものが1〜2週間で払われるとか、金融機能を強化していくことによって、人々がよりお金にアクセスしやすくなる仕組みを作っていきたい」

調達した資金をもとにKyashは開発体制強化のための人材を確保する。鷹取氏は「決済事業者という域を超えて、バンキング領域やそういうところに入っていく。新しいライセンスの取得やセキュリティーに対する投資を強めていきたい」と話していた。

Revolutで支払い額を切り上げ、チャリティへの寄付が可能に

FintechスタートアップのRevolutは、チャリティへの寄付を簡単にしたいと考えている。新機能では、カードの支払金額を最も近い整数へと切り上げ、少額をチャリティーに寄付できる。時間が経てば、大きな金額となるかもしれない。

Revolutにはすでに、少額をためておくValutsという機能がある。今回の機能も同様のものだが、お金を貯めるかわりに寄付をする。

取り引きの端数を処理するのにくわえ、少額に2倍、3倍、4倍と倍率をかけることもできる。また、毎日や毎週、毎月に一定の金額を寄付することもできる。

寄付に最低金額は設定されていない。たまにしかカードを使わなかったとしても、Revolutは寄付を実施する。また、チャリティパートナーへの報酬も存在しない。100ドルを寄付すれば、慈善団体が100ドルを受け取る。

寄付目的をタップすると、寄付した金額を確認することができる。また、顧客全体から各チャリティにどれだけ寄付が支払われたかも表示される。もちろんタップ一つで、寄付を中止することもできる。

Revolutは今のところ、Save the ChildrenWWFILGA-Europeの3つの慈善団体と提携している。将来的に、対応する慈善団体は増える予定だ。

 

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

セブン-イレブンの独自コード決済「7pay」の詳細判明、複数クーポンのまとめ使いも可能に

セブン-イレブンは6月30日夜。「セブン-イレブン」アプリをアップデートし、同社独自のコード決済「7pay」に対応した。7payが始まるのは7月1日からだが、会員登録すれば6月30日の時点でチャージなどが可能だ。

チャージ方法は、各種クレジットカード・デビッドカード、セブン銀行ATM、nanacoポイント、レジで現金が選べる。同日から始まるファミリーマートの「FamiPay」は、レジでの現金とファミマTカードの2種類しかチャージ方法が用意されておらず若干ハードルが高かったが、7payは先行する汎用コード決済サービスと同等以上の多彩なチャージ方法を用意している点はうれしいポイントだ。

チャージ先をクレジットカードにした場合の決済方法はPayPayとは異なる。7payでは金額を指定してクレジットカードから事前チャージする方式。PayPayでは、支払金額がクレジットカードから即時チャージされるて決済される方式で、事前チャージは不要だ。

セブン-イレブンアプリでは7pay対応に併せて、複数のクーポンを同時に利用できる機能も搭載した。クーポンの画面の各クーポンに用意されている「まとめて使う」ボタンをタップしたあと、右上の「まとめて使う」をタップすれば複数のクーポンのバーコードを一覧表示できる。ここから7payのバーコードを呼び出すことも可能で、複数クーポンの使用と7payの決済がスムーズに行えるようになっている。

コード決済方法はほかと同じで、セブン-イレブンのレジでバーコードを見せればいい。

「ファミペイアプリ」の詳細判明、会員登録と通販は7月1日から

ファミリーマートは6月30日18時ごろから、従来の「ファミリーマート」アプリのアップデートを開始した。アップデート後は「ファミペイアプリ」に名称が変わる。

現在のところ、アプリをダウンロードできるのみで会員登録などは7月1日からとなる。少しややこしいが、アプリの名称は「ファミペイアプリ」、ファミリーマートの独自コード決済の名称は「FamiPay」だ。

FamiPayでは、FamiPayの開始に伴うキャンペーンで7月いっぱいはチャージ時に15%還元される。これは決済時に還元される他社のコード決済とは異なる点で、FamiPayであれば特に用途がなくてもキャンペーン中にチャージさえしえておけば15%の還元を受けられるのがメリットになる。

ただしチャージ方法は、ファミマのレジで店員に現金を渡してチャージするという方法しかなく、残念ながら金融機関の口座からチャージには対応していない。キャッシュレスを推進するはずが、チャージには現金が必要という少々本末転倒な謎システムだ。

なお、JCBのクレジットカード機能が付いたファミマTカードと紐付けることは可能で、決済時に支払い金額ぶんだけチャージされる。こちらは完全にキャッシュレスなのだが、FamiPay決済のためだけにクレジットカードを増やすというのは現実的ではないだろう。

還元率は200円に付き1ポイントが付与される0.5%還元なので、通常で3%のPayPay、0.5〜2%のLINE Pay(7月末まではコード払いのみ+3%還元)に比べると見劣りするが、FamiPayの魅力はファミペイアプリで配布される各種のクーポンにある。従来もファミマTカード会員向けに同様のクーポンが配布されていたが、今後はファミペイアプリの会員のみの特典となる。8月以降は回数券なども登場する予定だ。

そのほかファミペイアプリでは、電子レシート機能なども使える。なお、写真プリントサービスの「famimaPhoto」をタップすると、同名の別アプリが起動してファミリーマート店舗内のマルチコピー機で写真の印刷などが可能だ。

会員登録と同様に、ジェネレーションパスが運営するオンラインストア「kaema」も7月1日にオープンする。同ストアはFamiPay決済が可能で、こちらもFamiPayのサービス開始を記念してFamiPayボーナス10倍キャンペーンを実施する。同社は、2018年7月にファミリーマートの親会社であるユニーファミリーマートホールディングスと業務提携を発表しており、kaemaでのFamiPay決済はこの提携によって実現したと言える。そのほかファミペイアプリでは、従来のアプリと同様に新商品情報などもアプリで参照できる。

なおファミペイアプリでは、従来のファミリーマートアプリが利用できた「モバイルTカード」などは利用できなくなる。

 

ファミマコード決済「FamiPay」が7月1日登場、最大15%還元の総額88億円キャンペーンも実施

ファミリーマートは6月27日、独自のコード決済サービス「FamiPay」(ファミペイ)を7月1日から開始することを発表した。セブン-イレブンの「7pay」に続く、コンビニエンスストア系のコード決済サービスとなる。

7payとは異なり、既存のファミリマートアプリでは利用できず、6月30日の夕刻に公開予定の「ファミペイ」アプリを使ったコード決済となる。通常のポイント還元率は0.5%(200円につき1円相当)だが、7月31日までの期間限定でチャージ額の最大15%を還元する「総額88億円あげまくっちゃうキャンペーン」も実施する。具体的には、現金チャージで10%、ファミマTカード(クレジットカード)のチャージで15%を還元するというもの。還元額の上限はそれぞれ2000円、3000円。資金の移動に手数料が発生するはずのクレジットカードのほうが還元率や還元上限が高いのは意外だ。

なお、サービス開始時のチャージ方法はファミリーマートのレジでの現金支払い、ファミマTカード(クレジットカード)経由のみ。今後は、フィンテックスタートアップのPring(プリン)のソリューションを活用した銀行口座連携への対応も予定しているが、他社のクレジットカードとの連携は予定していない。

そのほか7月限定で、利用者全員にファミチキをプレゼントする「ウェルカムクーポン」も配布する。ファミマT会員と同様に、ファミペイ限定価格での商品提供も予定しているという。

コード決済だけでなく、LINE Payアプリなどと同様にクーポンやポイント機能を搭載。決済とクーポン利用、ポイント付与が1アクションで完了する点が特徴だ。なお、11月移行はdポイント、Tポイント、楽天スーパーポイントとの連携も予定しているという。スタンプ機能も実装しており、5杯で1杯がタダになるコーヒースタンプが使えるほか、8月からはコーヒー回数券も利用できるとのこと。

ファミリーマートでの電気代やガス代、各種税金といった収納代行の支払いにFamiPayを利用できる点には注目。1件あたり10円相当のFamiPayボーナスも付与される。LINE Payでは公共料金や税金の請求書をその場で読み取ることでコード決済が可能だが、対応する支払い先が限られていた。FamiPayの場合、わざわざファミリーマートに行く必要はあるものの、コンビニで支払える請求書であればすべてコード払いでキャッシュレスにできる点は魅力だ。

FamiPayをLINE PayやPayPayなどの汎用コード決済に比べると、通常還元ポイントが0.5%と低いので還元キャンペーン以外で敢えて使う必要性は感じない。FamiPay利用者に向けた特別価格をどれだけ魅力的に設定できるかには注目だが、ファミチキなど自社で値付け可能な独自製品が中心になると考えられる。今回の発表内容だけで判断すると、メインのコード決済手段として普及させるのは相当難しいだろう。

コード決済の場合、現金やクレジットカード、金融機関の口座からチャージとなるので、運営側は与信照会(オーソリ)する必要がないうえ、即時決済のため代金が回収できないというリスクもない。そのぶん決済手数料をクレジットカードよりも大幅に抑えられるため、今後も独自経済圏の構築を目指して小売業大手を中心に参入してくる確率は高い。コード決済業界の混沌はまだまだ続きそうだ。

Visa LINE Payカードの詳細判明、初年度3%還元で8月に予約開始

LINE Payは、ビザ・ワールドワイド・ジャパンとオリエントコーポレーションと連携した、Visaブランドのクレジットカードの詳細を発表した。LINE Pay上で先行予約受付を8月に開始する予定だ。

同カードは、カードブランドがVisaでオリエントコーポレーションが発行する。年会費は、初年度が無料のほか、次年度以降も年間1回以上の利用で無料となる。なお、次年度以降で1年間に一度も使わなかった場合は税別1250円の年会費がかかる。

特徴は、初年度は3%のLINEポイントがバックされる高還元率と、Visaのタッチ決済を使える点。Visaのタッチ決済とは、欧米で普及しているNFCを利用した決済システム。決済端末にカードを近付けるだけで決済が完了する。

LINE Payカードならではの特徴として、支払いと同時にLINEアカウントから決済通知を受け取れる。また、LINE Payの前月の利用実績に応じて0.5〜2%の還元を受けられるマイカラーとも連動する。

また、Visaが東京五輪の決済テクノロジーのスポンサーであることから、日の丸をイメージした赤いカードをスペシャルバージョンとして枚数限定で発行する。公開されているカードデザインはイメージだが、赤はLINE Payの基調色である緑の補色なので、このイメージ画像にLINE Payのロゴが緑で入ればかなり目立つだろう。

LINE Payとメルペイの「Mobile Payment Alliance」にNTTドコモが参画、加盟店開拓で連携へ


LINE Pay、メルペイとNTTドコモは6月27日、キャッシュレスの普及促進を目的とした業務提携に関する基本合意書を締結。LINE Payとメルペイが設立したモバイルペイメントにおける加盟店アライアンス「Mobile Payment Alliance」にNTTドコモが参画する。

「LINE Pay」「メルペイ」「d払い」が一団となり、加盟店開拓で連携する。店舗事業者は、いずれか1つのサービスのQRコードを設置するだけで、前述の3つのサービスを取り扱うことができるようになる。

3社の協力はあくまで加盟店開拓とQRコードの共通利用について。LINE Payとメルペイの業務提携によるMobile Payment Allianceは2019年3月に発表されていた。

FacebookのLibraは「大きくて悪い」電子マネーなのか?

Libraに関しては書くべきことが山ほどある。それに、すでに書かれている記事で的外れなものも山ほどある。それはたぶん、私が思うに、ほとんどの批評家が発展途上国で長時間過ごした経験を持たないからだ。途上国は、明らかにそのターゲット市場だ。まずは、Libraのプロモーション動画を見て欲しい。

Libraには、この世の終わりのような反応が見受けられる。新たなディストピアを招くとの警鐘だ。その論理はこうだ。1)Libraはたちまち世界を席巻する。2)LibraはFacebookが発行している。3)Facebookは悪い。4)世界の終わりだ! その最初の仮説に、私は面食らった。裕福な欧米の人間は、すでにたくさんの決済システムが使える状態にある。それらは、取り消し可能な取り引き、競争可能な取り引き、マイレージ制度、信用枠が使えるなど、Libraよりもずっと優位な存在だ。

私は、Libraに関する技術的、法的、政治的、そして高度な分析結果を数多く見てきた。その多くは価値のある内容だったが、今のところ、実際にターゲットとされる利用者のことは、ほとんど語られていない。つまり、Libraの白書が言うところの銀行口座を持たない人たちだ。しかしどうも、Libraが目新しく、興味をそそられ、重要に感じる人たちとは、カテゴリーが少し違うようだ。しかし、誰もこのことを語ろうとしない。これほど多岐にわたって、しかも深く追求できる議論の宝庫であるにも関わらず、実際の利用者について触れられないというのは奇妙だ。

白書では、「銀行口座を持たない人」は17億人と推定されている。しかしこの数字は……、怪しい。このデータは、世界銀行のグローバル・フィンデックス・データベース2017から引用している。「それなら、信頼できる最新のデータなのだろう」と思われるかも知れない。たしかにそうだ。しかし、この同じ白書に、2104年から2017年の間に「銀行口座を開設」した人の数は5億5100人とも書かれている。Libraが運用を開始するときまでに「17億人の銀行口座を持たない人」は半減する計算になる。それは銀行のお陰ではなく、電子マネーのプロバイダーのお陰だ。

東アフリカで電子マネーM-Pesaが誕生したのをきっかけに、電子マネーは広く世界に普及した。西アフリカのOrange Money、インドネシアのOvo、インドのPaytm、そしてもちろん中国のWeChatとAlipayと、スマホの中のお金は、発展途上国ではもはや新しいものではない。

こう聞くと、裕福な国々と同じように、地元の言語を話し、市場をよく理解し、広く流通している競争相手が大挙してLibraを待ち構えているように思われるだろうが、それは違う。Libraの利点は、端的に言えば、現地通貨ではなく、国際通貨だといということだ。それには、優位な点もあり、またアキレス腱もある。しかもその市場は、厳密に言えば銀行口座を持たない人たちではない。電子マネーの口座は持っていたとしても、国際通貨にアクセスできない人たちだ。

なぜ、そのアクセスが必要なのか? 裕福な国で暮らす家族が途上国に送金するというのは日常的なことだが、その額は全体で年間5000億ドル(約53兆5000億円)にのぼる。その大部分が、ウエスタンユニオンなどの、遅くて手数料の高い業者を通じて行われている。それに従い、Libraの白書でも、問題提起の章で「送金」を大きく取り上げている。

しかし、両替に関しては論拠に欠ける記述がわずかにあるだけだ。なぜそれが問題なのか? なぜなら、送金はじつに大きな市場でありながら、以前の記事で述べたとおり「たしかに、5000FaceCoinをガーナの家族に0.1パーセントの手数料で送れるのは有り難い。しかし、その後ガーナの家族は、両替所でなんとかそれをクレジットに変換しなければならない。その作業は、今これを書いている時点で、時間がかかり、大変に面倒で、ユーザーに優しくなく、しかも通常の送金方法よりも高くつくことが非常に多い」からだ。

「現地がLibraを受け入れたら、問題ないんじゃないの?」と思うだろう。しかし、a)途上国の地元産業に新しい決済方法を受け入れさせるのは大変に難しく、b)地元の税金を払うために、結局、彼らも両替手数料を支払わなければならなくなる(Libraでの納税を可能にして、Libraを国の通貨にするよう政府に提言する楽天的な人が現れる前に、ひとつ忠告しておく。政府は、マネーサプライの権限を手放すようなことは、決してしたがらない)。

したがって、真に大規模な受け入れを実現するには、とくに産業と金融機関の取り引きにおいて、両替の制度が鍵になる。送金の分野では、普段から利用者のための通貨の両替サービスで大変な競争が繰り広げられている。Facebookは、それとなく市場に依存して、競争力の高い、流動的で、効果的で、効率的で、広く名が通った、Libraとそれが流通しているすべての国の現地通貨の両替を行おうとしているように見える。たぶん。しかし、それは高望みだ。

だが、個人や家族といった小さなスケールなら、Libraはずっと有効だろう。LibraはM-Pesaに取って代わるものではないし、それを狙ってはいないだろう。むしろLibraは、ケニヤ・シリングに対する米ドルのような関係の電子マネーになろうとしている。Libraは、国際的な準備通貨になれる可能性がある。おそらくそれは金融機関向けではなく、個人向けだ。そのレベルなら、両替もそれほど重要でなくなる。

米ドルは、少額であっても世界中のほぼ全域で使えて、送金もできる。貧困な国々では、そのほとんどで、米ドルが事実上の影の通貨となっている(私は、タクシーの運転手たちが20ドル札にやたらと詳しい地域に行ったことがある。20ドル紙幣には、種類によって偽造しやすいものと、しにくいものがあるからだそうだ)。さらに、米ドルは強い通貨だという理由だけで、現地通貨とは異なり、貯め込まれることがある。ベネズエラ、ジンバブエ、それにアルゼンチンなどを見ればわかるだろう。

Libraも、同じようになると私は期待している。個人は両替所に口座を開く必要がなく、LocalBitcoinsと同じようなスタイルで、Libraを現地の両替所に送るだけで済む。両替所は、Libraを受け取ると、相応の現地通貨を送り返す。願わくば、安い手数料で。

もしそれが実現すれば、そしてFacebookの圧倒的なサイズと浸透力で、そのようなサービスがほぼ世界全域で使えるようになれば、たとえLibraが裕福な国々で、また業界や金融機関で人気を得られなかったとしても、世界中の個人や家族が、受け取り、貯蓄し、使い、国際的に強い通貨に素早く(願わくば)ウェスタンユニオンなどより劇的に安い手数料で両替できる初めての通貨となるだろう。分散型の暗号通貨のような乱高下も、使用の制限も、ユーザーをないがしろにするようなこともない。これは大変なことだ。とってもいいことだ。

決して保証はできない。Libraには、まだ不確かな点が数多く残されている。アイデンティティ問題という非常に固い殻を砕く必要があるかも知れない。さらに、Facebookの技術力はさておき、これは、政治家や規制当局(そしてジャーナリズムも)目の敵にしているFacebookが発行する電子マネーだ。少なくともこれは、最初から彼らに対する反撃であり、それが多くの人々に、Libraの裏にある本当の狙いは何なのかと疑いを抱かせることにもなる。

だが、そこにある本当に大切なものも、一括りにして投げ捨てるのはよくない。もしLibraが、ある程度の規模でなんとか成功したなら、それは世界の大勢の人たちとって、生活と切り離せない非常に重要なものとなる。油断は禁物だ。プライバシーについては気を配るべきだ。適格な疑問を持とう。これは分散型のソリューションではなく、今後も決してそうはならないことを忘れてはいけない。私の立場は、みなさんと同じだ。私自身、Facebookに厳しい批評家との評価をいただいている。

みなさんが、憤慨と批判に走りたくなるのは無理もない。しかし、世界でもっとも貧しく弱い立場にある無数の人たちに大きな恩恵がもたらされる可能性は、どうか無視しないで欲しい。あなたは、分散型の、認証が必要ない、検閲を受け付けない形式のほうが好ましいとお考えだろうか? 私もだ! もし、Libraのように実用間近で、そうした電子マネーをご存知なら、教えて欲しい。

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(翻訳:金井哲夫)

Facebookの仮想通貨「Libra」の登場で考える、お金とはどうあるべきものか?

Facebookコンソーシアムから、プロジェクトLibraのホワイトペーパーが発表されたことを受けて、インターネット、ハイテク業界、金融サービス業界、そして政策界のすべてが、プロジェクトの可能性についての大激論を重ねている。

私たちはまだ、Libraのある世界の、極めて初期段階に立っているだけだ。なにしろまだこれは提案書段階なのだ。そして、答えを待つ疑問がまだ山積している状態なのだ。このプロジェクトは、私たちのお金に対する認識を再定義することができるかもしれないし、あるいは完全に失敗してしまうかもしれない。どちらになるかがはっきりするには、この先何年もかかるだろう。

より詳しい内容が明らかになるまで、(他の何千人もの)評論家たちの並べるプロジェクトへの意見に、特に付け加えられることはないのだが、この瞬間の私たちには一歩後ろに下がって、お金そのものについて考え直す機会が与えられている。私たちは自分自身に問いかけるべきだろう。現在お金はどのように働いていて、将来どのように働くべきなのだろうか。

お金は、日々の生活の中にある、時代遅れのアナログな部分である。過去25年間には、通信(Eメール)から書店(Amazon)、そしてタクシー(Uber)に至るまで、ほとんどのサービスビジネスがデジタル化されてきた。だが、フィンテックが隆盛を誇り、消費者金融における著しい技術革新があったにもかかわらず、お金自体は不思議なくらい変わっていない。

お金の未来は始まったばかりだ

お金が変わらずにいたままだったのには、正当な理由がある。通貨は国家によって管理および発行が行われており、そして多くの理由から、通貨は国家によって管理および発行される必要がある。しかしその理由は、現行の「既成事実」を反映したものに過ぎない。私たちが、他の資産でみてきたものと同じレベルでの破壊的なイノベーションを許すには、お金というものは影響が大きすぎ、また重要すぎるものなのだ。しかし、もし今私たちが、ロールズ(Rawls)博士の言う原初状態(original position)から新しくお金をデザインしたならば、おそらくかなり異なるものになるだろう。

Libraは、お金について、単にそれが何であるかだけでなく、それがどういうものであるべきかを、私たちがオープンに語る機会を与えてくれる。そして規制や競争といった激しい逆風に直面しているLibraが、この先どうなるかにかかわらず、私たちがお金の未来に関して熟考した時間は、決して無駄にはならない。以下に示したものは(決して網羅的ではないが)いくつかの議論のネタである。レベルは基本的なものから風変わりなものまで様々なものが含まれている。

お金は無料で使えるべきだ

最も明らかなことから始めよう。簡単に言えば、お金を使うために誰かにお金がかかってはならないということだ。金融機関やフィンテックは(ゆっくりと)この合意に向かって進んでいるものの、多くの場合に、人びとは自分のお金にアクセスするだけのために支払いを行う必要がある。

ATMは引き出し手数料を請求する。小切手は印刷するのにお金がかかる(そして米国が先進的な国だと思っているひともいると思うが、世界の小切手の90%は米国内で書かれているのだ)。海外送金には送金手数料、銀行間送金にも手数料、小切手の換金にも手数料、PayPalで仕入先に支払うにも手数料など、枚挙に暇(いとま)がない。

Venmo、Square Cash、WeChat Pay(そしてそれ以前のClinkle)のようなアプリの当初からの約束は、送金や支払いを無料で行うことができるというものだ。Apple PayとGoogle Payは、ドルではなく携帯電話を対面購入のための主要手段にすることで、その約束をさらに一歩進めている。手数料なしで銀行もしくはクレジットカードから引き落としを行うのだ。

しかし、こうしたアプリは多くの国で同等のものが提供されているわけではない。M-Pesaのようなモバイルマネーサービスは、ケニアやその近隣諸国で広く普及しているが、アフリカ最大の経済規模を誇るナイジェリアのような国では、依然としてかなりのキャッシュコスト問題を抱えており、現金の利用に対する高価な政策的制限がかけられている。私はアフリカ東部で何度も「キャッシュを出すことができない」というエラーメッセージに遭遇した。ここでは銀行口座を持っているだけで、少なくないコストがかかる可能性があるのだ。

ただお金を使うためだけに手数料を支払うのは、時代遅れの標準なのだ。

お金は即座に送金されるべきだ

この記事を読んでいるほとんどの人にとっては、即時支払いと数日かかる支払いの違いは重要ではない。給料の支払いは金曜日もしくは月曜日に行われることが多い。Venmoのキャッシュアウトは、銀行口座への入金に1日か2日かかることがある。

しかしBrookings研究所のアーロン・クライン(Aaron Klein)氏が指摘しているように、遅い支払いは貧しい人々に不当な影響を与える。小切手の決済、送金資金の決済、または給与の支払いが行われるのに時間がかかるということは、請求書に対する支払いのために、当座貸越利息(一時的に口座がマイナスになるときにかかる利息)が発生することを意味する。つまり週末の食料品の買い物のために、十分なお金がないということにつながるかもしれない。こうした現実のために、消費者たちは給料担保金融業者(年間に徴収する利息は70億ドル/約7500億円)や小切手換金業者(年間手数料20億ドル/約215億円)に向かったり、もしくは貸越利息(年間240億ドル!/約2兆5700億円)を払ったりしているのだ。

アイデンティティはお金の中にプログラムされるべきだ

NPRはKickstarterの支払いを待っていたときに、次のように指摘した「Chase銀行の当座預金口座に電子的に送金するために、私たちが必要としているのはAmazon並に使いやすい銀行です。それは単なる情報伝達に過ぎないのです。どれくらい時間がかかるのでしょう。1分?1時間?いや、かかったのは5日でした」。こうなる理由は、米国でお金が動くレールが40年以上前に作られたものだからだ。クライン氏が指摘するように、今やワシントンDCからフィラデルフィアへの送金よりも、スロバキアからフランスへの送金の方が迅速に行えるようになっている。そしてこの遅延を修正することこそが、米国内での富の不平等と戦うための最も手っ取り早い手段である可能性があるのだ。

これはお金の将来にとっての、もう一つの明らかな勝利だ。

そしてその将来の兆候は現れ始めている。Earninのようなアプリや、ウォルマートなどの雇用主たちが、リアルタイムに労働者たちへの支払いを始めている。このことによって、人びとは自分が稼いだお金をすぐに使えるようになるのだ。Libraは自身のウェブサイト上で、お金を得ることそして使うことが「テキストメッセージを送信するのと同じくらい簡単で安価でなければならない」と述べている。お金はコミュニケーションと同じスピードで動くべきなのだ。

お金は「ワンクリック」で使えるべきだ

Amazonはワンクリック購入技術を追求し 、消費者と購入決断の間の最後の小さな障害を取り除いたことで有名だ。お金そのものもそうであって良いはずだ。お金を貯金し、友達に送り、融資や投資をしたり、請求書の支払いをしたり…こうした活動はみな使い勝手のよいUIに置き換えられるべきなのだ。しかし残念ながら、現在、あなたのお金にアクセスするためには、しばしばパスワード、PIN、ID、または2段階認証が必要になる。これらはすべてセキュリティにとって絶対に重要なものだが、不便を誘発しがちだ。

幸いなことに、過去数年のデジタルIDシステムはイノベーションの成熟が進んだ分野だった。現在スマートフォンのOSは、指紋やFace IDのようなバイオメトリック識別方法を使って、利用者のお金の使用承認をすることを可能にしている(成功の度合いは様々だが)。3Boxのような分散型IDシステムは、その上に構築された任意のサービスの許可に利用できる1つの汎用的な、自己所有IDプロファイルを売り込んでいる。

アイデンティティはお金の中にプログラムされるべきだ。もし通貨単位が「所有権」フィールドを持つことができるなら、ユーザーに結びついたより面倒の少ない識別子を用いてアンロックして、所有権が変わったときに再コードすることで、ワンクリック利用が可能になる。(これはEverledgerのダイヤモンド登録プログラムと同様に機能する)。これによって盗難も防ぐことができる。もし「所有権」IDフィールドが十分に守られていて、正当な譲渡でしか変更されないとするならば、仮にフィールドが不正に書き換えられた(つまり盗まれた)場合には、お金が使えないようにプログラムすることもできる。これは関連したある点を思い出させる…

お金は安全であるべきだ

モバイル決済の最も速い導入率を誇る都市の1つは、ソマリアのモガディシュだ。それは何故か?モバイルマネーが安全だからだ。モガディシュでは致命的な路上強盗が頻発しており、現金を持ち歩くことは生死に関わる問題なのだ。未来のお金は安全にデジタル化されているために、物理的な盗難がもはや不可能になっている。

お金は安定しているべきだ

ソマリアで、盗難がモバイルマネーの普及を促進している一方で、BBCによるレポート「 The surprising place where cash is going extinct (現金が絶滅する驚くべき場所)」は、近隣のソマリランドにおける、また別のキャッシュレス支払い促進要因を指摘している。ソマリランドシリングの急速な切り下げによって、以前は買うことができた商品が2倍の値段になってしまった。こうしたことから、買い物客たちは現金の束を使う代わりにモバイルドルを選ぶようになったのだ。

急激な変動がないこと。これは、Libraやその他のステーブルコイン(例えばGemini Dollarや、不幸な命運を辿ったBasisなど)たちが表明している約束の1つである。ケイトリン・ロング(Caitlin Long)氏は「発展途上国の中央銀行は、法定通貨の価値を維持する規律に欠けていることで悪名高いものたちです。このため購買力を失うこともしばしばあるのです」と指摘している。世界的なコンソーシアムが管理する通貨は、その不安定さを弱めることができる。

現在お金はどのように働いていて、将来どのように働くべきなのだろうか?

ハイパーインフレはそれほど珍しいことではない。私は2年前にジンバブエを訪れたときには、商品が3種類の価格で提示されている状況だった。昨年ヨーロッパでは1年の間に、トルコのリラが自身の危機によって、その価値を25%落とした。そして現在のベネズエラでは、インフレ率が100万%を超え、商品が買えない状況に陥っている。こうした出来事に対する最も一般的な説明は、国民がその通貨の価値を守る政府に対しての信頼を失ったときに、それは起きるというものだ。こうした価値の低下は、皮肉なことに、Bitcoinに安定を求めて、大量の資本逃避を引き起こした(ジンバブエの首都ハラレのBitcoin ATMもその1つだ)。

興味深いことに、Libraは提案された史上初の超国家的通貨ではない(経済学者ケインズ卿のバンコール計画を参照)。またLibraはバスケット方式に基づく最初の国際準備通貨でさえない。IMFはドル、ユーロ、人民元、円、そしてポンドに対して固定された混合国際準備資産であるXDRを管理している(Libraは人民元を除いた同じ通貨に対して固定される)。だがLibraは、非国家管理型としては世界初の国際準備通貨候補であり、個人が実際に使える初めてのものである。

米ドルが金本位制をやめたように、いつの日かLibra自身が(マット・リバイン氏が「共同フィクション」と呼ぶ)十分な固有の価値を持つようになり、その基礎となる通貨のバスケットから切り離すことができるようになるかどうかは、まだ不明である。

未来のお金は、個々の政府への信用に結びつくべきではない。急速な切り下げの危機に直面しないように、それ自身の価値と安定性を独立して保つべきなのだ。

お金は相互運用可能であるべきだ

インターネットの発展は全く違う形で行われたかもしれない。インターネットの黎明期を振り返ってみると、複数の競合する「囲われた庭」としてのインターネットたちが並行して成長し、ユーザーを奪い合い、そして相互の通信を拒むというシナリオは常に発生する可能性があった。幸いなことに、ICANNのような非営利団体の活動のおかげで、世界はほぼ1つのインターネット上で運営されている。中国のような特定のウェブサイトを利用できない国でさえも、インターネットのページは、世界中のあらゆる場所で使われているものと同じ一連のプロトコルを使用して、互いに通信している。

お金でも違いはないはずだ。ある通貨を使ってある国でランチ買うことと、同じ通貨を使って他の国でランチを買うことが、同じくらい簡単に行えるべきなのだ。物理通貨なのかデジタル通貨なのかを問わず、どんな購入行為に対しても、同じ支払いプロトコルが根底にあるべきだ。通貨間の移動は瞬時に無料で行われるべきであり(オンラインあるいはデジタルの)通貨取引所を訪れる必要はない。

極めて狭い用途向けに構築された暗号通貨(仮想通貨)の急増は、注目に値する。しかし真の相互運用は、利用者たちが手作業でそれぞれの通貨を交換することなく、面倒なく交換が行えるユースケースを実現する、世界共通の交換機構が登場することでしか実現しない。

異なる種類のお金は、地域別のものではなく、用途別のものであるべきだ

前項のポイントから派生した話題だ。もしお金が自分自身が何に使えるかを決定するルールを組み込んでいたとしたらどうだろうか?ダン・ジェフリース(Dan Jeffries)氏は、これがどのように見えるかについて、参考になる例をいくつか提供している:デフレーションコインはインフレーションに連動し、自動的に自身の価値を調整するだろう。またインフレーショントークンは、支払いを奨励するために、すぐに価値を失うように構成することができる。

政府は、環境にやさしい商品への支払いの際に、商品の価格を自動的に割り引く通貨を作成することによって、そうした商品の購入に報いることができる。通貨には、(例えばスターバックスなどが)特典やロイヤルティプログラムを自動的に組み込むことができる。特定の期間に使わなければ無効になってしまう通貨や、特定の日程になったり、特定のきっかけが与えられないうちは有効にならない通貨を考えることもできる。これは、単なる「デジタルゴールド」ではない「プログラマブルマネー」としての暗号通貨が行っている約束だ(これはEthereum/Bitcoinの議論である)。

お金はオープンな開発プラットフォームであるべきだ

もしお金がプログラム可能なものになれば、お金の上に構築できるものの可能性は、果てしなく広がる未踏の空間となる。最も明らかな例のいくつかは金融アプリケーションだ(例えば、プロジェクトLibraのウォレットであるCalibraのように)。

単一デジタル通貨の誕生と普及は、最初のステップにすぎない。そのステップに続いて、融資(機関投資家やピアツーピア)、投資、貯蓄、贈答などのアプリケーションが登場する。例えばユースケースとして、銀行にSMSで問い合わせて大きな買い物を行うための1週間のマイクロローンを申し込むことを想像してみよう、ローンは承認されてSMSで返信が返されてくる。あるいは、毎週子供への小遣いを自動的にSMSで送ることを想像してみよう、お小遣いを使い切ってしまわずに、一部を貯金に取り分けることができた場合には、それに対して「ボーナス」小遣いを与えることもできる。デビッド・グレーバー(David Graeber)氏が指摘するように、金融エコシステムの真の成長の可能性を生み出すのは、クレジット供与および投資アプリケーションだ。

多くの人びとはLibraを、その上に潜在的に無限のアプリケーションを構築して収容できる、iOSのApp Storeのような未来のプラットフォームとして捉えている。例えばこれらは、共通配車アプリ、航空リワードアカウント、eコマースエクスペリエンスなどで、みなお金が組み込まれた同じレールの上にプラグインされ、アカウント間のお金の移動を一切必要とせず、UIは完全にユーザーの(例えば何かを買いたいといった)意図によって駆動される。

お金は(なんらかの)ガードレールを持っているべきだ

お金が持っているべき最後の機能は、組み込みのガードレールだ。これは最も物議を醸している議論であり、検閲に抵抗する人たちや、自治的暗号通貨コミュニティの人たちの気持ちをざわつかせるようなものだ。

デジタルマネーには、安全ガードレールを作ったり、例えば、テロリストへの融資、ブラックマーケットの購入、マネーロンダリング、盗んだ資金の送金などを防いだりするための、トレーサビリティやプログラム可能なルールを、持たせられる可能性がある(たとえ、立法者たちの初期の反応が、懐疑から激怒までのすべてを含むとしても)。

それでも、デジタルマネーのガードレールに懐疑的になるべき正当な理由がある。抑圧的政権は、それらを資本逃避とオフショアリングを封じ込めるために使うことができる(これが中国におけるBitcoin向けの主要なユースケースだ)。彼らは個人の財布を狙って、移動や購入の自由を遮断し、個人の正確な物理的位置を追跡することができる。お金を無効にするために、ガードレール機能を悪用するバックドアハックは、国のインフラを完全に凍結し、金融システムをダウンさせるという影響を与える可能性がある。ガードレールをどこに設定するか、そしてそれらは国境を越えて異なるかどうかを検討する際には、そうした負の可能性も計算に入れることが重要だ。

お金の未来は始まったばかりだ。

なんと刺激的な時代だろう。何世紀にもわたる金融サービスのゆっくりとした進歩が、乗り越えられる可能性はこれまでになく高まっている。ブロックチェーンと暗号システムの創意工夫が組み合わされたインターネットは、世界を1つの金融標準に導く共通グルーバルネットワークのためのフレームワークを、構築できる可能性がある。ここからそこにたどり着く前には、答えなければならない疑問が山積している。だが触媒として振る舞うLibraを前にして、私たちはついに問いかけを始めているのだ。この先のさらなるイノベーションに備えよう。それはまだ始まったばかりなのだ。

【編集部注】著者のニック・ミラノビック(Nik Milanovic)氏は、モバイルペイメント、オンライン融資、クレジット、そしてマイクロファイナンスなどの分野で10年の経験をもつ、フィンテックならびにファイナンシャルインクルージョン(金融包摂)の信奉者である。

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(翻訳:sako)