より安価で優れた太陽電池パネルを開発するRegher Solar、激増する宇宙産業からの需要に応えられるか?

質問自体には簡単に答えられる。今後10年間で打ち上げられる人工衛星は何機か?人工衛星に必要な太陽電池パネルの枚数は?現状人工衛星に使える太陽電池パネルは何枚あるのか?その答えは「たくさん」「ものすごくたくさん」「まったく足りない」である。Regher Solar(レガーソーラー)は、製造コストを90%削減しつつ、桁違いに多くの人工衛星用太陽電池パネルを製造して名を成そうとしている。

「控えめな目標」とはいえないが、幸い同社は科学的にも市場的にも有利な状況にあり、追い風に乗っている。問題は、コストと性能のバランスを取りながら、なるべく簡単にこれを実現することである。もちろん、簡単に答えが出る問題であれば、すでに誰かがそれをやっているはずだ。

宇宙で使用される太陽電池と地上の太陽電池は大きく異なる。地上では大きさや質量の制約があまりないので、より大きく、より重く、そして安価な太陽電池を作ることができる。効率が悪くても問題はない。一方、宇宙で使用する太陽電池は、効率が良く、非常に軽く、放射線や温度変化などのさまざまな危険に耐えるものでなければならない。小さな規模で高価な材料を使用して製造するトップクラスの製品で、地上用の太陽電池と比較して5~10倍のコストがかかる。

Regher Solarが開発した太陽電池パネルは、宇宙用としての最高品質ではないものの「まあまあ良い」レベルは満たしている。しかも、コストは(高品質の製品の)数分の一で、一般的なプロセスで大規模に製造することができる。20億円の静止衛星に最高品質の太陽電池パネルを利用できるのは、全体のコスト(200億円)に占める太陽電池のコストの割合が少ないからである。しかし、寿命の短い小型衛星を1万機展開する場合はどうだろうか。総コストに占める太陽電池パネルのコストの割合を抑えるためなら、性能が20%低下しても許容できるはずだ。

Regher Solarの共同設立者かつCEOのStanislau Herasimenka(スタニスラウ・ヘラシメンカ)氏は、同社の製品は簡単に開発できたものではなく、新しい宇宙経済にとって何が重要かを理解し、繰り返し改良を重ねてきたものだと説明する。

「(宇宙用太陽電池パネルの)技術は、小規模かつ高コストを前提に進化してきました」「宇宙用のパネルは、ゲルマニウムやガリウムヒ素などの非常に高価な基板上で、高額な加工が数多く行われます。そして宇宙での使用に耐える接合、高価なガラスや炭素繊維、アルミニウムの基盤、手作業による組み立て……最高の性能と低劣化性は実現されますが、まったく拡張性がありません。10倍の量を生産したいと思っても不可能なのです」。

それでも、今後打ち上げられる衛星の数は確実に2倍、3倍、そして10倍になるだろう。地上用のパネルをそのまま宇宙に持って行くわけにはいかないし(すぐに壊れる)、ガリウムヒ素などの化合物でセル(太陽電池の素子)を製造しているメーカーの在庫ではまったく足りない。そこでRegher Solarが開発したのが、宇宙用、地上用の両方の長所を取り入れた、宇宙用でありながら安価で簡単に製造できるセルである。

20ミクロンのシリコン基板を使用し、柔軟性のあるRegher Solarのシリコン太陽電池パネル(画像クレジット:Regher Solar)

ヘラシメンカ氏は次のように話す。「現在、私たちは研究開発用のパイロットラインを運用して、少量のパネルを製造しています。50kW、つまり宇宙用太陽電池パネルの約5%のサイズです」「私たちはシリコン基板で自動生産可能な製品を設計しました。1年後にはパイロットラインを離れ、現在のパネルの10倍に相当する10メガワットまで規模を拡大できるはずです」。

新しい製品とはいえ、特別な技術や新開発の技術を使用しているわけではないので、ヘラシメンカ氏がいうような増産も可能かもしれない。同氏は、宇宙用レベルの性能を地上用並みの価格で実現するために行った改良をいくつか紹介してくれた。

まず、シリコン基板の厚さを大幅に薄くしたことで、逆説的に放射線の吸収が少なくなり、耐放射線性が向上した。また、添加する不純物を変え、低温で硬化するようにして、ダメージを受けても80℃に加熱するだけで修復できるようにした。コーティング、接合、ボンディングを空間的に安定させた。ベゼルを細くして、太陽光に反応するセルが占める面積を増やした。さらに同社は、(この画像のように)パネルに柔軟性を持たせることで、一般的ではない形状にも対応可能で、物理的な耐久性が向上した製品も計画している。

Regher Solarの「solar blanket(太陽の毛布の意味)」の柔らかさを示す研究室の技術者(画像クレジット:Regher Solar)

どこまで開発を進めるべきかは、衛星コンステレーション(衛星を複数機協調させることで機能するシステム)に属する衛星のコストと計画寿命という動く目標に依存する。意外かもしれないが、Starlink(スターリンク)のようなコンステレーション企業にとっては、衛星の性能が良すぎるのは有害である。何千機もの衛星で構成される衛星コンステレーションでは経済性が問われる。打ち上げから5年後に交換する予定であれば、必要以上に性能を上げたり、コストをかけたりするべきではない。もし、5年後にまだ100%の性能を有しているのであれば、どこかでかなりの費用を節約することができたはずだ。

「コンステレーションの設計者は、指定された軌道で一定期間衛星が機能することを想定して設計しています」とヘラシメンカ氏。「衛星の寿命は2週間でも15年でも不適切です。ほとんどの衛星は徐々に軌道を下げて地球に近づき、5~7年で寿命を終えます。だから、私たちはこの条件を満たすようにパネルを設計したのです。5~7年以上経ってパネルが劣化するとしても、クライアントにとって問題ではありません。つまり、私たちも気にかける必要はないのです」。

Regher Solarはこの新しい市場に挑戦し、2019年にTechstars(テックスターズ)のプログラムに参加。その後、メーカーとの対話を開始し、取引の計画を立てた。さらに、米国国家航空宇宙局(NASA)の中小企業技術革新制度(SBIR)フェーズIと米国国立科学財団(NSF)のSBIRフェーズIIで、総額110万ドル(約1億3000万円)を獲得している。ヘラシメンカ氏によれば、プロトタイプと検証資金を獲得したRegher Solarは、夏の間に3300万ドル(約38億円)分の基本合意書を取り交わし、さらに5000万ドル(約58億円)分の合意に向けて調整中だという。

有望な市場が故に、迅速に行動しないと他の企業が参入してパイを奪われてしまうかもしれない。「たった数年ですべてが変わってしまい、業界がそれに気づいたときには市場のチャンスはなくなっていることすらあるのです」とヘラシメンカ氏はいう。Regher Solarがこの機会を逃したくないのは当然のことだが、彼らは現在、まずは試験的な製造ラインを立ち上げ、次にフルスケールの製造ラインを立ち上げるために多額の投資を必要としている。具体的な内容はまだ明かされていないが、ヘラシメンカ氏によると、機関投資家による500万ドル(約5億8000万円)のシードラウンドが年内に完了する予定で、個人投資家からも90万ドル(約1億円)の投資を受けるという。

既存の航空宇宙企業が関心を示し、NASAやNSFにも(SBIRで)認められたRegher Solarの活躍の場は広がりそうだ。しかし、難しいのは新しいパネルの設計なのか?それとも実際に製造することなのか?それは今後明らかになるだろう。

画像クレジット:Regher Solar

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

SpinLaunchが運動エネルギーを利用した発射システムで試作機の初飛行に成功

運動エネルギーを利用した宇宙への発射システムを開発しているスタートアップ企業のSpinLaunch(スピンローンチ)が、初めてプロトタイプの打ち上げに成功した。これは、7年前に設立されたこの会社にとって、実物大のシステムのテストに向けた重要なマイルストーンとなった。

このシステムのコンセプトは非常に斬新だ。SpinLaunchの基本的な考え方は、大きな真空密閉室と極超音速のテザーを使い、宇宙船を回転させて大気圏を脱出するのに十分な速度(最高時速約8000キロメートル)を得て、軌道に到達させようというもの。つまり、ロケットもロケットエンジンも使わないということだ。従来の一般的な打ち上げシステムよりも、巨大なレールガンに近いもので、宇宙飛行に対する考え方が明らかに異なる。

SpinLaunchによると、電子機器の小型化や炭素繊維などの高強度素材の進歩により、機体と小型衛星の両方とも高い重力加速度に耐えられるようになったため、このようなシステムが可能になったとのこと。

プロトタイプの打ち上げは、米国時間10月22日にニューメキシコ州のスペースポート・アメリカで行われた。今回のテストでは、実際に予定しているシステムの約3分の1の大きさ(それでも自由の女神像よりは大きい)の加速器を使って、試験機体を超音速で打ち上げることに成功しただけでなく、後のテストに再利用するために機体を回収することもできた。

2014年に設立されたSpinLaunchは、今後6〜8カ月間で約30回のサブオービタルテスト飛行を行うことを目指していると、CNBCは報じている。このスタートアップには、Airbus Ventures(エアバス・ベンチャーズ)、Kleiner Perkins(クライナー・パーキンス)、GVが出資している。

SpinLaunchは最初の軌道飛行の場所を公表していないが、同社のウェブサイトには「米国の沿岸地域」になると記されている。

画像クレジット:SpinLaunch

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フロリダ工科大学と食品調味料のハインツが火星環境を再現し栽培・収穫したトマトで作ったケチャップ発表

フロリダ工科大学と食品調味料のハインツが火星環境を再現し栽培・収穫したトマトで作ったケチャップ発表

Florida Institute of Technology / Heinz

フロリダ工科大学と食品調味料のハインツが、火星基地内の環境を再現した環境で栽培・収穫したトマトから作ったケチャップに「Heinz Marz Edition」と名付けて発表しました。映画『オデッセイ』では、火星基地に取り残されたマット・デイモン演じる主人公ワトニーがジャガイモを栽培して生きながらえましたが、ハインツはこれと同じ条件でトマト栽培をおこなったわけです。

フロリダ工科大学の研究チームは、火星基地の環境を再現する「Red House」と称する温室を構築しました。まずケチャップの原材料となるトマトは、ハインツが持つ様々な品種の中からまず最初に30株を選び、モハベ砂漠で集めた砂を火星の土壌に見立て、赤いLEDライトを照らして2000時間以上のパイロット栽培で製鋼する可能性の高い4種類を選び出したとのこと。そして最終的にうまくいくと判定された2種類を個別に450のバケツに植え、ハインツとの密接な協力の下で大規模な栽培に移行したとのこと。

オルドリン宇宙研究所の生物科学准教授アンドリュー・パーマー氏は、「このプロジェクトでは、食料の長期的な収穫を検討しました。ハインツのトマトケチャップにふさわしい品質の作物を収穫するのは夢でもなければ難しいと思われましたが、達成することができました」と語り「ハインツのトマト専門家との共同作業により、地球外での長期的な食糧生産の可能性を確認できました。世界最大級の食品会社と協力することで、私たちが学べることはたくさんあります」と述べています。

ただ、実験を通じて収穫できたトマトは数百個に留まり、予想よりも少ない数だったとのこと。求める量の収穫を実現するには、より広い栽培スペース、光と温度、灌漑の適切な供給が課題として残ったとのこと。また個々の容器での栽培よりトラフを用いて複数の種類の作物や果物を栽培するほうが多様で有効な微生物を増やすことができ、植物が病気になりにくい環境とすることができると、パーマー氏は述べました。

なお、プロジェクトとハインツ社は研究で収穫したトマトを使い、カリフォルニアの研究施設でトマトケチャップ「Heinz Marz Edition」を限定的に生産しました。そしてそのボトルの1本を飛行機で高度37kmほどの上空に持って行き、マイナス74℃の温度環境にも晒して品質に問題がないかも確認しました。

ただ残念ながら、このように火星の環境についての研究の一環で作られた「Heinz Marz Edition」は一般向けに販売する予定はありません。ちなみに本来なら火星を意味する英単語は「Mars」ですが、このケチャップが「Marz」になっているのは、ハインツの綴り(Heinz)に引っかけてのことです。

フロリダ工科大学と食品調味料のハインツが火星環境を再現し栽培・収穫したトマトで作ったケチャップ発表

Florida Institute of Technology / Heinz

フロリダ工科大学と食品調味料のハインツが火星環境を再現し栽培・収穫したトマトで作ったケチャップ発表

Florida Institute of Technology / Heinz

(Source:Florida Institute of TechnologyEngadget日本版より転載)

Rocket LabのElectronロケットブースター回収、三度目の挑戦を実況中継で見よう

Rocket Labが今夜(米国時間11/10)、その再利用事業をさらに一歩進めて、同社のElectronロケットから三度目のブースター回収を行なう。

その「Love at First Insight」と呼ばれるミッションは、東部時間午後11時25分(日本時間11月11日午後1時25分)に、ニュージーランドのマヒア半島の打ち上げ基地より離陸する。打ち上げの実況中継はRocket LabのWebサイトで見られる。

Rocket Labは一段ブースターの回収に過去二回成功している。それは、SpaceX以外では同社だけだ。最初の回収は2020年11月、次が2021年5月だったが、後者ではペイロードをすべて失った(後述)。どちらのブースターもパラシュートで着水し、すべてが計画通りなら今夜のブースターもそうなる。しかし今度の回収にはおまけがあって、ブースターの降下を追尾し観察するためにヘリコプターが近傍でホバリングする。

このヘリコプターの参加はたいへん重要で、Rocket Labsがその再利用計画の究極の目標に近づいたことを意味している。つまりそれは、パラシュートでブースターの降下速度を減衰して空中でそれを捉えることだ。今夜のヘリコプターはまだ空中捕捉を試みないが、今後のそのやり方の実行性を検証するためのテストを行なう。

CEOのPeter Beck氏は声明でこう言っている: 「私たちはElectronの降下の完全なコントロールに成功し、ステージを海から引き上げることができた。そこで今度は、次の段階へ進む。それは、ブースターが宇宙から地球へ下降するとき、ヘリコプターがロケットをキャッチすることだ。野心的な試みだが、これまでの各回の回収ミッションでハードウェアと工程を改良してきたから、不可能を当たり前に変えることができるだろう」。

ミッションの主な目標は画像衛星BlackSky Earthを二基、軌道へ送ることで、Rocket Labと打ち上げサービスSpaceflightの合意では、BlackSkyのために立て続けに五基を打ち上げる計画の一部だ。衛星の打ち上げは8月を予定し、ほかにも二基が計画されていたが、ニュージーランドの小規模なコロナウイルス禍によりロックダウンが敷かれ、ロケットの打ち上げも遅れた。

CEOのPeter Beck氏は第三四半期の決算報告で投資家に対し、「全世界的に厳しいCOVID-19対策により計画が阻害された。現在敷かれている在宅命令により、打ち上げの実行は妨げられている」、と弁解している。

二基のBlackSky衛星はすでに軌道にある他の七基と合流する。それはこの地理空間情報企業が、年内にそのコンステレーションを14基の衛星へと拡大する計画の一環だ。今年初めにBlackSkyの衛星二基が、Electronの第二段点火の直後に起きた重大な異状により失われた

これはRocket Labの22回めのElectronの打ち上げであり、今年の5度目のミッションだ。

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: Rocket Lab

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NASAがアルテミス有人月面着陸を2025年に延期、ブルーオリジンによる訴訟で

Blue Origin(ブルーオリジン)がNASA(米航空宇宙局)を相手取って起こした有人着陸システム(HLS)に関する訴訟が先週判事によって却下されたこと、中国の宇宙開発計画が進展していることが、米国時間11月9日に行われたNASAのアルテミス計画に関するブリーフィングで、NASA関係者が最も気にかけていたことだった。

NASAのBill Nelson(ビル・ネルソン)長官は、この訴訟について強い言葉を残した。HLSを巡る訴訟で「7カ月近くを失った」と述べた。その結果、今後予定されている2つのミッションが1年以上も延期されることになった。現在、アルテミス2が2024年5月に、女性と有色人種の初の月面着陸を目指すアルテミス3が2025年までに実施されることになっている(アルテミス1は、NASAのスペースローンチシステムとオリオンカプセルを使用した初めての無人ミッションで、2022年初めに予定されている)。

アルテミス計画は、アポロ計画以来、人類を月に戻すためにNASAが計画してきた野心的な一連の打ち上げだ。HLSは、宇宙飛行士を月面に運ぶ最後のカプセルとなる。

Blue Originは、HLSをSpaceX(スペースX)に発注したNASAの決定について、米会計検査院への申し立てに失敗した後、8月にHLSの発注をめぐってNASAを提訴した。同社は、NASAによる提案の評価が「違法かつ不適切」であると主張し、他の抗議活動でも単一の契約を結んだことが反競争的であると述べていた。

しかし、Blue Originとの法廷闘争が、ミッション遅延の唯一の理由、あるいは支配的な理由であるかどうかは不明だ。例えば、ネルソン長官は、トランプ政権が第3ミッションの目標を2024年としていたことについて「技術的な実現可能性に拠っていない」とし、議会が複数の有人着陸システムの開発を支援するための十分な資金を計上していないことも指摘していた。

上院予算委員会は、NASAがHLSプログラムの開発者を2社選ぶことを望んでいることを極めて明確にしていたが、そのために追加で計上した予算はたった1億ドル(約113億円)だった。

「この6カ月間よく調べてみた結果、私にとって明らかになったのは、プログラムの長期的な成功のためには、NASAが真剣に変化する必要があるということだ」と長官は述べている。

また、サプライチェーンの混乱や労働力へ影響を与えている新型コロナウイルス感染症も、遅れの原因の1つだと指摘している。

ネルソン長官「我々は、非常に積極的で優れた中国の宇宙プログラムに直面している」

ネルソン長官はまた、急速に進歩している中国の宇宙計画を繰り返し取り上げ、中国が宇宙飛行士を月に着陸させる能力は「ますます高まっている」と指摘する。同氏は、NASAが安全かつ技術的に実現可能な方法により「ブーツで月面に降り立ち、競争相手を打ち負かす 」ために、できる限り積極的に取り組むと誓った。

中国の宇宙開発はここ数年、驚異的なペースで進んでおり、2021年初めには、独立した宇宙ステーションの最初のコアモジュールを迅速に打ち上げた。2022年までに予定されている11回の打ち上げのうち、3回目の打ち上げだった。また、中国は米国以外で唯一、火星に探査機を着陸させており、10年後までにより複雑なサンプルリターンミッションを計画している。

ネルソン長官は「中国の宇宙計画や中国軍の発言は、彼らが非常に積極的になろうとしていることを示唆しています」と述べた。

画像クレジット:NASA

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

打ち上げプロバイダーSpaceflightが顧客のペイロードを初めて2つの異なる軌道に投入へ

打ち上げサービスプロバイダーのSpaceflight Inc(スペースフライト)は現地時間11月9日、顧客の宇宙機を初めて2つの異なる軌道に展開すると発表した。同社の軌道変換機Sherpaシリーズの能力を拡大する。

軌道変換機(OTV)は、衛星が軌道上の最終目的地に到達するための一般的な手段となっており、小さな宇宙開発企業は、独自の推進システムを持つためのコストや煩わしさを回避しつつ、OTVの費用を割って負担し合うことができる。これは、SpaceX(スペースX)がライドシェア・ミッション・プログラムで打ち上げ費用を企業が割り勘にできるようにしているのと同じだ。

シアトルに本社を置くSpaceflightは、化学推進システムを搭載した新型のSherpaスペースタグを使用して、この演習の実行を目指している。同社は新型機をSherpa-LTC1と呼んでおり、過去12カ月で3種類目のSherpa OTVを発表したことになる。Spaceflightは、6月にSpaceXのTransporter-2ミッションで飛行した、Sherpa-LTEという電気推進システムを搭載したSherpaタグと、2020年にデビューさせたSherpa-LTも開発した。

Sherpa-LTC1は、2022年1月にフロリダ州ケープカナベラルから打ち上げられる予定のSpaceX Transporter-3に乗って宇宙へ向かう。このスペースタグは、顧客の宇宙機13機を2つの軌道に乗せる予定だ。Sherpa OTVはまず9つの小型衛星を展開し、その後、低高度に移動して残りの4つのCubeSat(小型人工衛星)を展開する。

ミッションの顧客は、Capella Space、Umbra Space、Lynk Global, Inc.、Kleos Space、NASA(米航空宇宙局)、Spacemanicと提携しているチェコ航空宇宙研究センター、Space Products and Innovation (SPiN)、Portland State Aerospace Societyなどだ。

この新しいスペースタグは、Benchmark Space Systemsが開発した「環境に優しい」推進システムを使用しており、同社によれば、さまざまなサイズの宇宙機の迅速な軌道移動を可能にするという。Spaceflightの事業開発担当SVPであるGrant Bonin(グラント・ボニン)氏は「LEO(地球低軌道)での実施はほんの始まりにすぎません。これらの機能やサービスは、LEOを超えて他の軌道へのアクセス、宇宙輸送やさまざまなミッションサービスの開発において重要な役割を果たすでしょう」と話した。

Spaceflightは9月、2022年の月低空飛行ミッションで別のSherpaであるSherpa-ESをデビューさせることを発表した。

画像クレジット:Spaceflight Inc.

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

地上のRF信号を衛星で受信して地球を分析するHawkEye 360

Solafuneと日本マイクロソフトが衛星画像データを超解像度化する技術コンテスト実施、英語版リリースしグローバル展開も開始

地球観測業界の大手企業各社は、画像処理衛星を使って情報や分析を提供しているが、スタートアップ企業のHawkEye 360(ホークアイ360)はそれとは異なる方針を採っている。目に見えない電磁スペクトルは、目に見える世界と同じように情報に満ちているという前提のもと、同社は船舶用無線機や緊急用ビーコンが発するような無線周波数(RF)信号を監視・分析している。

投資家もこれに同意する。HawkEyeのシリーズDラウンドでは、1億4500万ドル(約164億円)もの新たな資金が集まった。このラウンドは、Insight Partners(インサイト・パートナーズ)とSeraphim Space Investment Trust(セラフィム・スペース・インベストメント・トラスト)が主導し、アラブ首長国連邦を拠点とするStrategic Development Fund(ストラテジック・デベロップメント・ファンド)が追加資金を提供。また、新規の投資家としてJacobs(ジェイコブズ)、Gula Tech Adventures(グラ・テック・アドベンチャーズ)、116 Street Ventures(116ストリート・ベンチャーズ)、New North Ventures(ニュー・ノース・ベンチャーズ)が加わった他、既存投資家のAdvance(アドバンス)、Razor’s Edge(レーザーズ・エッジ)、NightDragon(ナイトドラゴン)、SVB Capital(SVBキャピタル)、Shield Capital(シールド・キャピタル)、Adage Capital(アデッジ。キャピタル)も参加した。

2015年の設立以来、HawkEyeはすでにパートナーとの大きなネットワークを築き、9機の衛星を軌道上に打ち上げてきた。同社のコンステレーションの特徴は、衛星が3機1組のクラスターに分かれて飛んでいることで、これはJohn Serafini(ジョン・セラフィーニ)CEOによると、RF信号の地理的な位置情報を取得するためのアーキテクチャだという。現在はさらに7つのクラスター(計21機)の衛星を開発中で、2023年中頃までに軌道に乗せることを目指している。

画像クレジット:HawkEye 360

地理空間情報産業の多くは、衛星を所有してデータを収集する企業と、そのデータを購入して情報に変換する企業に二分されていると、セラフィーニ氏は説明する。しかし、HawkEyeは当初から完全な垂直統合型の企業として自らを位置づけており、自社で装置を構築し、衛星を運用し、データを処理して独自の分析を行い、その情報をSoftware-as-a-Service(サービスとしてのソフトウェア)モデルとして顧客に販売している。

また、HawkEyeは政府機関のアプリケーションに特に力を入れており、米国政府や国際的な防衛・情報機関を顧客としている。

「私たちは、防衛、セキュリティ、インテリジェンス、および一部の民間アプリケーションに適している商用RFの価値提案を、非常に明確にしたいと考えました。そして、政府関係の顧客を成功に導くために、当社のDNAを独自に構築したかったのです」と、セラフィーニ氏は語る。「私が言いたいのは、米国政府を相手にセールスするなら、片手間では無理だということです。全力で取り組まなければなりません」。

HawkEyeは、衛星メーカーであるトロントのUTIAS Space Flight Laboratory(トロント大学航空宇宙研究所スペース・フライト・ラボラトリー)と協力して、衛星に自社の装置を搭載している。直近では、6月末に3機の衛星をSpaceX(スペースX)のFalcon 9(ファルコン9)相乗りミッションで打ち上げ、Space Flight(スペースフライト)の軌道輸送機「Sherpa-FX(シェルパFX)」を使って軌道に到達させた。

2021年に入ってから、HawkEyeは合計5000万ドル(約56億4000万円)分の契約を獲得している。将来的には、今回調達した資金を利用して、計画中のコンステレーションの規模を10クラスタから20クラスタに倍増させ、地球上のほぼすべての場所を約12分で再訪できるようにしたいと、セラフィーニ氏は述べている。さらにHawkEyeは、コンステレーションの規模をより早く拡大するために、Space Flight Labとの提携と並行して、衛星の組み立てに乗り出すことも計画している。

画像クレジット:HawkEye 360

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

リッジアイが衛星画像により軽石の漂着状況がわかるウェブアプリ公開、被害の把握や本土への漂着予測に活用

AI・ディープラーニング技術のコンサルティングと開発を手がけるリッジアイが7.8億円を調達
「軽石ビューア」を使って確認した軽石の漂流状況(Sentinel-2 ©ESA)

「軽石ビューア」を使って確認した軽石の漂流状況(Sentinel-2 ©ESA)

衛星データとAIを駆使した開発・コンサルティングなどを行うRidge-i(リッジアイ)は11月5日、小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」の噴火で発生した軽石の漂着状況が衛星画像でわかるウェブアプリ「軽石ビューア」を公開した。

このアプリでは、中央のバーを左右にドラッグすることで、異なる日付の衛星写真を比較できる。比較したい画像の2つの観測日はそれぞれ指定が可能(観測データのない日もある)。地図はドラッグによる移動やズームが行える。海岸沿いの海上に薄茶色に見えるのが軽石だ。衛星画像は、欧州宇宙機関(ESA)のSentinel-2のものを利用している。

今後は、関東への漂着にも備え、関東地方に特化した「軽石ビューア」も公開予定のとのこと。

 

iRocketとデブリ除去・衛星サービスのTurion Spaceが地球低軌道へ10回の打ち上げ契約を締結

ニューヨークに拠点を置く再利用可能ロケットのスタートアップiRocket(アイロケット)は、最初の商用顧客を獲得した。同社は米国時間11月4日、Y Combinator(YC)の卒業生であり、軌道上デブリの除去や衛星サービスのための宇宙機を開発しているTurion Spaceと複数回の打ち上げ契約を締結したと発表した。

契約条件によると、iRocketは10回の打ち上げで、Turionが開発中のDroid衛星20基を軌道に乗せる予定だ。

iRocketは、完全に再利用可能なロケットの開発を進めており、まずShockwave(ショックウェーブ)打ち上げロケットを開発し、2年後には軌道に乗せることができるようになるとしている。自律的に3DプリントされたShockwaveは、最大で約300kg(661ポンド)および1500kg(約3300ポンド)のペイロードに対応することができる。同社は、NASAのマーシャル宇宙飛行センターで、インジェクターテストやロケットエンジンテストなどのハードウェアテストを開始した。次は完全な組み立てテストだと、CEOのAsad Malik(アサド・マリク)氏はTechCrunchに語っている。

「開発は順調に進んでおり、Turionとのパートナーシップはそれを強化するものです」と同氏は語った。iRocketは、米国宇宙軍、M&J Engineering Group、VCのVillage Globalから資金提供を受けている。

再利用可能な上段を持つiRocketと、Droid宇宙機を持つTurionは、両社とも宇宙ゴミの除去に目を向けている。Droidは軌道上のゴミをロボットアームを使いドッキングして除去し、最終的には大気圏再突入で燃え尽きるよう、十分に低い軌道に引きずり込ことで、デブリを除去する。

Y Combinatorの2021年夏期コホートに参加していたTurionは、2022年10月にDroidのプロトタイプ1号機の打ち上げを目指している。同社はそのミッションのためにすでに別の打ち上げ契約を結んでいるが、どのプロバイダーを選択したかは明らかにしていない。

この最初の打ち上げでは、軌道上デブリを除去したり、衛星にサービスを提供することはできない。TurionのRyan Westerdahl(ライアン・ウェスターダール)CEOは「領域認識活動のみを行う予定です」と説明する。「私たちはこの衛星を『Just Get It Up There』と呼んでいますが、これはできるだけ早く軌道に乗せたいからです。なぜなら、当社がすべきことの大部分は、地上オペレーションを本当に強化することだからです」とも。

Turionは、YCに加えて、Soma Capital、Forward VC、Pi Campus、FoundersX Ventures、Harvard Management Company、Imagination VCからも資金提供を受けている。

ウェスターダール氏は「当社の最優先事項は、地球低軌道における持続可能な未来を築くことであり、積極的なデブリ除去はそのための大きな要素です」と述べている。

両社はまた、軌道上でのサービスに関する将来のコラボレーションの可能性についても示唆している。ウェスターダール氏は、TurionがiRocketと協力して、ロケット会社のペイロードの何分の一かで軌道上の最終デリバリーを行い、宇宙ゴミの除去と組み合わせる可能性を示唆した。

画像クレジット:Maciej Frolow/Photodisc / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

米連邦地裁、SpaceXの契約をめぐるベゾス氏のNASAへの訴訟を棄却

連邦判事は、Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏のBlue Origin(ブルーオリジン)がNASAを相手に起こした、2021年初めにNASAがElon Musk(イーロン・マスク)氏のSpaceX(スペースエックス)に月着陸機の契約を発注したことをめぐる訴訟を却下した。

訴状の棄却により、2024年に人類を月に送ることができる月着陸システムの設計を促進するためのNASAの取り組みであるHuma Landing System(人間着陸システム)プログラムをめぐる数カ月にわたる物語が終結した。

NASAが29億ドル(約3206億円)の費用をかけて着陸機を開発するために、SpaceXだけを選んだと発表したとき、Blue Originは抗議活動を始めた。Blue Originは、防衛関連企業のDynetics(ダイネティックス)とともに、政府の監視機関である米国会計検査院に、1社に発注することは反競争的であり、選定プロセスが偏っているという理由で、この決定について苦情を申し立てた。

確かにNASAは過去の前例から逸脱して1社のみを契約対象としたが、米国会計検査院は最終的に各社の訴えを退けた。米国会計検査院によれば、NASAの契約資金が予想よりも少なかったため、1社しか選定できなかったというのがその理由だった。

同じ頃、ベゾス氏はNASAのBill Nelson(ビル・ネルソン)長官に公開書簡を送り、契約と引き換えに着陸機の開発費を20億ドル(約2273億円)減額し、パスファインダーミッションを自己資金で行うことで予算問題を解決することを提案した。

しかし、この方法もうまくいかなかったため、Blue Originは8月に訴訟を起こした。訴状によると、NASAによるHLSプログラムの提案評価は「違法かつ不適切」であるとしている。

連邦判事のRichard Hertling(リチャード・ハートリング)氏が訴えを却下した理由は現在公開されておらず、その正確な理由はまだ明らかになっていないが、同氏は月末近くに文書を公開するための修正案を作成するよう当事者に命じた。

このニュースを受けて、マスク氏は1995年の映画「ジャッジ・ドレッド」のミームをツイートした。

画像クレジット:Blue Origin

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Yuta Kaminishi)

アマゾンの衛星インターネット事業「Project Kuiper」、2022年までに2基の衛星プロトタイプ打ち上げを目指す

Amazon(アマゾン)の衛星インターネットプログラムである「Project Kuiper(プロジェクト・カイパー)」は、農村部や僻地にグローバルなブロードバンド・アクセスを提供するために、2022年末までに2つのプロトタイプ衛星の打ち上げを目指している。

プロトタイプ衛星の打ち上げ・運用にはまず、Federal Communications Commission(米連邦通信委員会)の承認が必要になる。Amazonの子会社でProject Kuiperを運営するKuiper Systems(カイパー・システムズ)は、米国時間11月1日、連邦通信委員会に、いわゆる「実験用ライセンスの要請」を提出した。

その目的は、衛星の推進力、電力、姿勢制御システム、熱設計、無線によるソフトウェア更新機能をテストし、検証することだ。2年間のライセンスを要請したKuiper Systemsは、長期にわたる性能とテレメトリのデータ収集を行う他、打ち上げオペレーションとミッション管理に関するデータも収集する。

この2基の衛星は、2020年FCCがKuiper社に使用ライセンスを与えた3つの軌道高度のうちの1つである、地表から590キロメートルの位置で運用される。このライセンスの下で、Amazonは今後6年以内に、計画しているコンステレーション全体(3236個)の約半分の衛星を打ち上げなければならない。

同社の実験用ライセンス申請書によると、衛星は軌道に打ち上げられた後、南米、アジア、テキサスの地上局と4つの顧客端末装置に接続されるとのこと。これについて同社は「Amazonが開発した革新的で低コストの顧客端末」のプロトタイプと記しているだけで、カスタマーユニットについての詳細は明らかにしていない。

Kuiper社では、ミッション終了時に衛星が「推進型軌道離脱」を行うと述べている。このプロセスが失敗した場合、衛星は打ち上げから3年半後に軌道減衰によって受動的に軌道を離脱するという。

ライセンスが承認されれば「KuiperSat-1(カイパーサット1)」と「KuiperSat-2(カイパーサット2)」と名付けられた2つのプロトタイプ衛星は、2022年の第4四半期までに2回のミッションに分けてケープカナベラルから打ち上げられることになる。

Amazonは、この2つのミッションの打ち上げ業者として、ABL Space Systems(ABLスペース・システムズ)を選択した。ABL社の「RS1」ロケットはまだ軌道に到達したことはないものの、同社は2021年中にアラスカで、この高さ88フィート(約26.8メートル)のロケットの最初の打ち上げを計画していると述べている。ABL社は先日、2億ドル(約228億円)の資金調達を完了したことを発表しており、これにより同社の評価額は24億ドル(約2735億円)にまで上昇したと報じられている。

両社は「数カ月前から」協業しており、すでに2回の統合設計レビューが完了していると、Amazonは述べている。

「これは長期的な協力関係の始まりであり、今後もABL社の事業拡大をサポートしていきたいと私たちは考えています」と、Amazonは声明の中で述べている。

現在はSpaceX(スペースX)のStarlink(スターリンク)が独占している急成長中の衛星ブロードバンド市場に参入しようとしているAmazonにとって、この2基のプロトタイプは商業化への重要な足がかりとなる。Allied Market Research(アライド・マーケット・リサーチ)によると、この市場は2030年までに最大186億ドル(約2兆1200億円)を生み出す可能性があるという。

Amazonは、Project Kuiperに少なくとも100億ドル(約1兆1400億円)の投資を計画している。このeコマース界の巨大企業は2020年4月、United Launch Alliance(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)との間で9回の打ち上げに関する契約を結んだと発表した。Amazonデバイス&サービス担当SVPのDavid Limp(デヴィッド・リンプ)氏は、2020年のTC Sessions:Space(TCセッションズ:宇宙)で、このプロジェクトでは複数の打上げ業者を探すことになると語っていた。

「3200個以上の物体を宇宙に打ち上げなければならないとなると、多くの打ち上げ能力が必要になります」と、語った同氏は「我々の希望としては、1社だけではなく、複数の業者にお願いしたいと考えています」と続けた。

画像クレジット:Amazon

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

SpaceXのStarlinkがインド法人を設立、2022年末までにターミナル20万台の展開を目指す

KDDIがイーロン・マスク氏率いるSpaceXのLEO衛星通信サービスStarlinkをau通信網に採用

関係者によると、Elon Musk(イーロン・マスク)氏が率いるSpaceX(スペースX)の子会社Starlink(スターリンク)はインドで法人登録を行い、現地政府へのライセンス申請の準備を進めている。

Starlinkのインド担当ディレクターであるSanjay Bhargava(サンジェイ・バルガヴァ)氏は、11月1日にLinkedInへの投稿で「SpaceXがインドに100%出資の子会社を設立したことを喜んでお伝えします」と述べた。Starlinkのインド現地法人は、Starlink Satellite Communications Private Limitedという社名で登録されている。

インターネット企業がインドでサービスを提供するためには、現地法人が必要だ。ライセンスを取得すると仮定して、Starlinkは2022年12月までに16万以上の地区で20万台のターミナルを提供することを計画している。これは、8月時点で14カ国でユーザー10万人にターミナルを出荷した同社にとって野心的な目標だ。

PayPalの元幹部であるバルガヴァ氏は、10月初めに新しい役職に就いた。Starlinkはここ数カ月で、AMDのインドにおける政策活動を監督していたParnil Urdhwareshe(パーニル・ウルドワレシェ)氏をインド事業のマーケット・アクセス・ディレクターとして採用するなど、現地で重要な幹部を多数採用してきた。

SpaceXの広報担当者は、バルガヴァ氏の起用について9月に送った問い合わせに回答しなかったが、同社の最高経営責任者であるマスク氏は、週末にツイッターでこうした展開を認めた。

小型衛星を打ち上げて地球低軌道ネットワークを構築し、低遅延のブロードバンドインターネットサービスを提供している代表的な企業の1つであるStarlinkは、インドの農村地域へのサービス提供を目指していると、マスク氏はツイッターで述べ「サンジェイはX/PayPalを成功に導き、賞賛に値します」と付け加えた。

バルガヴァ氏はLinkedInへの別の投稿で「Starlinkは、十分なサービスを受けられない人々にサービスを提供したいと考えています。ブロードバンドプロバイダーの仲間や、志の高い地区のソリューションプロバイダーと協力して、人々の生活を改善し、救っていきたいと考えています」と述べた。週末には、インドの有力シンクタンクであるNiti Aayogと協力して、Starlinkの初期展開に向けて国内12地区を特定すると発表した。

インドでは、5億人以上がインターネットを利用しているにもかかわらず、同じくらい多くの人々がいまだにインターネットを利用していない。業界の推計によると、農村部に住む何億人ものインド人が、ブロードバンドネットワークにアクセスできていない。

「政府の承認プロセスは複雑です。今のところ、政府に申請中のものはありません。我々が取り組んでいる申請については、我々の側にボールがあります」とバルガヴァ氏は述べた。

「全インドでの承認に時間がかかる場合は、パイロット版の承認を迅速に得るというのが我々のアプローチです。今後数カ月のうちにパイロットプログラムの承認または全インドの承認を得られると楽観的に考えています」とバルガヴァ氏は先月話し、もし政府の承認を得られなかった場合、来年末までに配備する実際のターミナル数は目標よりはるかに少ないか、あるいはゼロになる、と付け加えた。

画像クレジット:Joan Cros / NurPhoto / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

筑波大学が「富岳」全システムを使い宇宙ニュートリノの数値シミュレーションに成功、ゴードン・ベル賞の最終候補に選出

筑波⼤学計算科学研究センターは10月28日、宇宙大規模構造におけるニュートリノの運動に関する大規模数値シミュレーションを、ブラソフシミュレーションというまったく新しい手法を用いて、理化学研究所のスーパーコンピューター「富岳」上で成功させたことを発表し、その動画も公開した。この研究論文は、米国計算機学会(ACM。Association for Computing Machinery)のゴードン・ベル賞の最終候補(ファイナリスト)に選出されている。

これは、筑波大学、京都大学、東京大学、理化学研究所の共同による研究。宇宙の銀河の分布を示す宇宙大規模構造は、何も存在しない「ボイド」と、銀河が多く集まる領域が泡の集まりのような形で構成されている。この数値シミュレーションでは、その宇宙大規模構造の中のニュートリノとダークマターの運動が計算された。数十年も前から、N体シミュレーションに代表される粒子シミュレーションと呼ばれる手法での計算は試されてきたが、人工的な数値ノイズが入るなどの問題が解決できずにいた。そこで研究グループは、数値シミュレーションコードを開発し、数値ノイズの影響を受けない、「多数の粒子の集団的振る舞いを記述するブラソフ方程式を直接数値的に解く手法」であるブラソフシミュレーションを採用した。

ダークマターの空間分布。1 h-1 Mpcは約466万光年。

ニュートリノの空間分布。

ただし、この手法は計算量や必要なメモリーの量が膨大になるため、なかなか実現できなかったのだが、⽂部科学省の「富岳」全系規模⼤規模計算実施公募に採択されたことで、「富岳」の全システムが使えることとなった(通常、利用者には「富岳」の性能の一部が割り当てられる)。研究グループは、「ブラソフ方程式の数値解法としては、これまでになく高精度で、かつ演算量の少ないアルゴリズム」を開発し、「富岳」のプロセッサーに合わせてプログラムの実装を全面的に見直すことで、理論ピーク性能の15%という実行性能を達成。さらに「計算ノード間のネットワーク構成に合わせた並列化」により最大96%という高い並列化効率を達成した。その結果、「富岳」の全システムの93%にあたる14万7456ノードを用い、最大で約400兆個のメッシュを使ったシミュレーションに成功した。中国のスーパーコンピューター「天河⼆号」(Tianhe-2)で行われた過去最大の数値シミュレーションと同等の数値シミュレーションが、約1/10の時間で実行できたことになる。

この研究により、ブラソフシミュレーションの大規模な数値シミュレーションが、スーパーコンピューターによって高い並列化効率で実行できることが示された。このことから、核融合プラズマや宇宙の磁気プラズマの振る舞いの研究にも、この手法が適用できるとのことだ。

人工衛星メーカーTerran OrbitalがSPAC合併で株式公開へ、企業価値は約1793億円

さくらインターネットの衛星データプラットフォーム「Tellus」Ver.3.0で衛星データの売買が可能に

小型衛星大手メーカーのTerran Orbital(テラン・オービタル)は、特別買収目的会社(SPAC)のTailwind Two Acquisition Corp.との合併により上場する。取引後の企業価値は15億8000万ドル(約1793億円)で、Terran Orbitalは約4億7000万ドル(約533億円)の資金を獲得する。

このうち、3億4500万ドル(約391億円)はTailwind Twoの出資によるもので、これに加えてAE Industrial Partners、Beach Point Capital、Daniel Staton、Lockheed Martin、Fuel Venture Capitalから5000万ドル(約56億円)のPIPE資金が提供される。さらに、Francisco PartnersとBeach Point Capitalが7500万ドル(約85億円)を追加で拠出しており、取引終了時にはFrancisco PartnersとLockheed Martinから最大1億2500万ドル(約141億円)の債務コミットメントを得られる可能性がある。

今回の発表は、宇宙関連の新興企業が現金を調達して株式を公開する方法として、SPAC合併に依然として注目していることを示している。これまでにVirgin OrbitPlanetRedwire、BlackSky、Spire GlobalSatellogicRocket Lab、Momentus、Astraなどの宇宙関連企業が、この手法で数十億ドル(数千億円)の資金を調達した。

Terran Orbitalは、主に米政府向けに人工衛星の設計、製造、エンジニアリングを行う受託製造会社だ。Terranの業務の約95%はNASAと国防総省に関連していると、CEOのMarc Bell(マーク・ベル)氏は2021年初めのTechCrunchとのインタビューで語った。

Terran Orbitalは3億ドル(約340億円)を投じてフロリダ州スペースコーストに世界最大の人工衛星製造施設を開設することを9月に発表した。この66万平方フィート(約6万1316平方メートル)の施設では、年間1000個の人工衛星の完成品と100万個以上の人工衛星部品を製造することができる。これは宇宙産業では前例のない規模だ。

人工衛星の製造に加えて、Terran Orbitalは独自の地球観測コンステレーションを運用して衛星画像をサービスとして提供することも目指している。ベル氏は声明の中でこれを新しいSaaS「サービスとしての衛星」と呼んだ。

合併取引は、Terran OrbitalとTailwind Twoの両取締役会から全会一致で承認されており、2022年の第1四半期中に完了する見込みだ。

画像クレジット:NicoElNino / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

東京の宇宙ベンチャーGITAIが国際宇宙ステーション内で自律型ロボットアームの技術実証に成功

東京の宇宙ベンチャー企業であるGITAI Japan(ギタイジャパン)は、日本時間の2021年10月13日から10月17日にかけて、国際宇宙ステーション(ISS)内で行われた自律型ロボットアームの技術実証に成功した。これは、同社が宇宙でサービスとしてのロボット技術を提供する準備に向けた重要なマイルストーンとなる。

「GITAI宇宙用自律ロボットS1」と呼ばれるこのロボットアームは今回、ケーブルやスイッチの操作と、構造物やパネルの組み立てという2つの作業を行った。これらの作業は、一般的にクルーが行う作業だが、宇宙におけるさまざまな活動で汎用的に使用することができる。今回の実証が成功したことで、NASAはGITAIロボットの「技術成熟度(Technology readiness levels、TRL)」をTRL7に引き上げた。TRLは全部で9段階まであり、GITAIがロボットを商業化するには、すべてのTRLを満たすことが重要になる。

この技術実証は、宇宙企業であるNanoracks(ナノラックス)の「Bishop(ビショップ)」エアロック内で行われた。Bishopエアロックは、ステーションの外装に取り付けられた世界初(かつ唯一)の商用エアロック・モジュールだ。Nanoracksは今回、打ち上げ機会の提供、軌道上での運用管理、データのダウンリンクも担当。同社は先週、Voyager Space(ボイジャー・スペース)およびLockheed Martin(ロッキード・マーティン)と共同で完全民間の商業宇宙ステーションを起ち上げる計画を発表している。

関連記事:民間宇宙ステーション「Starlab」は地球低軌道経済の到来を予感させる

GITAI宇宙用自律ロボットS1は、8月末に実施された23回目の商業補給サービスミッションで、SpaceX(スペースX)の「Cargo Dragon(カーゴ・ドラゴン)」カプセルに搭載されて軌道へ輸送された。日本のスタートアップ企業であるGITAIは、軌道上での宇宙船の整備や建設・製造作業など、宇宙における一般的な作業を行うためのロボットを開発している。次のステップは、ISSの外で、GITAIロボットの試験を行うことだ。

「今回の実証の成功は、GITAIロボットが、汎用性があり、器用で、比較的安全(人間の生命を脅かすリスクが少ない)で、安価な労働力を求める宇宙機関や商業宇宙企業のソリューションになり得ることを証明するものです」と、NASAは技術実証の最新情報を更新し「このオプションの提供は、宇宙の商業化という目標達成を促進させることになります」と述べている。

しかし、GITAIは単にロボットアームを作ることだけを目指しているわけではない。同社の長期的なビジョンでは、ロボットは月や火星の表面にスペースコロニーを建設するための重要なツールになると考えている。このようなロボットによる労働力は、地球外の環境で人間が生存できるようになるのを加速させるために役立つ可能性が高い。2021年3月、同社は総額18億円のシリーズB資金調達を完了し、2023年に予定されている軌道上船外技術実証に向け、人件費と開発費に投じている。

先週行われた技術実証の映像はこちら

画像クレジット:Gitai

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

「地球外文明からのメッセージかも」と話題になった謎の電波信号BLC1が分析される

「地球外文明からのメッセージかも」と話題になった謎の電波信号BLC1が分析される

ESA/Hubble & NASA

オーストラリアのパークス天文台の観測データから検出され、「地球外文明からのメッセージかも」と話題になった謎の電波信号BLC1(Breakthrough Listen Candidate 1)ですが、残念ながら宇宙からのメッセージではなかったことが判明しました。2021年10月25日付の科学ジャーナル「Nature」が報じています。

BLC1は、ロシアの資産家が出資して行われた地球外生命体を探査するプロジェクト「ブレイクスルーリッスン」で発見されました。同プロジェクトは、複数の天文台で得られたデータから「地球外生命体が存在する痕跡」を探しており、オーストラリアのパークス天文台の観測データを調べたところ、謎の電波信号が検出されたといいます。

パークス天文台の観測データは「プロキシマ・ケンタウリ」という星の観測プロジェクトで得られたもので、地球の環境下で得られるものとは異なる電波信号でした。また、プロキシマ・ケンタウリには「プロキシマ・ケンタウリb」「プロキシマ・ケンタウリc」という2つの惑星があることも、「地球外文明からのメッセージでは」という期待に拍車をかけました。

宇宙から飛来した電波と期待される一方で、BLC1は解析が進んでも同様の信号を再び捉えられることはありませんでした。また、パークス天文台では過去に家電製品の電波干渉がデータに取得されていたこともあり、「天文台内や近辺からの電波干渉」という可能性も高まります。

「ブレイクスルーリッスン」はBLC1を解析する中で、過去のプロキシマ・ケンタウリの観測データも調査。するとBLC1に似た信号が約60も検出され、プロキシマ・ケンタウリとは別の方向からのものも中にはありました。

さらに、BLC1の周波数は、一般的に使用される発振器が持つ周波数と同様であることも分かり、BLC1は宇宙からのものではなく、地球由来であるという結論に至りました。

残念ながら宇宙からのメッセージではなかったと結論付けられたBLC1ですが、同プロジェクトでは今後もプロキシマ・ケンタウリの観測を続けるといいます。また、BLC1のデータはより多くの科学者が研究できるよう一般公開するとのこと。さらに研究が続けば、いつかは本物の宇宙からのメッセージが検出されるかもしれません。

(Source:NatureEngadget日本版より転載)

水を推進剤とする衛星用エンジンを開発する東京大学発のPale Blueが4.7億円調達、量産体制を構築

水を推進剤とする衛星用超小型推進機の実用化を手がけるPale Blueが7000万円を調達

環境にやさしい水を推進剤とする超小型衛星用エンジン(超小型推進機)の開発などを行う、東京大学発のスタートアップPale Blue(ペールブルー)は10月28日、シリーズAラウンドにおいて4億7000万円の資金調達の実施を発表した。

引受先は、既存投資家であるインキュベイトファンド、三井住友海上キャピタルに、今回新たに加わったスパークス・イノベーション・フォー・フューチャー、ヤマトホールディングスとグローバル・ブレインが共同で運営するCVCファンド「KURONEKO Innovation Fund」の4社。

同時に、商工組合中央金庫からの2000万円の融資契約を締結し、さらに経済産業省の令和2年度補正宇宙開発利用推進研究開発を受託(初年度予算最大3億円)。これにより、累計調達額は約10億円となった。

水イオンスラスター(水プラズマ式推進機)の作動の様子

水イオンスラスタ(水プラズマ式推進機)の作動の様子

Pale Blueの製品には、現在水蒸気で推進する高推力多軸の「水レジストジェットスラスタ」、水プラズマで推進する低燃費の「水イオンスラスタ」、水蒸気と水プラズマで推進する高推力、多軸、低燃費の「水統合スラスタ(ハイブリッドスラスタ)」という3種類の超小型推進機がある。これまでに同社は、大学や研究機関などと連携して、これらのエンジンの宇宙実証プロジェクトを進めてきている。すでにフライトモデルの開発が完了し、企業や政府からの受注も増えているとのことだ。

水レジストジェットスラスタ(水蒸気式推進機)

水レジストジェットスラスタ(水蒸気式推進機)

水統合スラスタ(水蒸気式+水プラズマ式推進機)。大きさは9cm×9cm×12cm

水統合スラスタ(水蒸気式+水プラズマ式推進機)。大きさは9cm×9cm×12cm

近年では、超小型衛星によるコンステレーション構築の機運が高まっているが、打ち上げの際に、大型衛星との相乗りの場合希望する軌道が選べないことがある。また、重力や空気抵抗で高度が下がり衛星の寿命が短くなってしまう問題もある。そこで、高性能な推進機が求められている。経済産業省が令和2年度補正宇宙開発利用推進研究開発で、モジュール型の推進機の開発と実証を行う企業を公募したのもそんな背景からだ。Pale Blueはその審査に通り、予算を獲得できた。

今回調達した資金は、グローバルも含めたチーム強化、量産体制の構築や新たな研究開発に使われる。「圧倒的な安全性・価格競争力・持続可能性を持つ、水を推進剤とした超小型推進機の社会実装を加速させ、宇宙空間における新たなモビリティインフラを構築することで、地球周辺及び地球以遠における持続可能な宇宙開発に貢献します」とPale Blueでは話している。

さくらインターネットの衛星データプラットフォーム「Tellus」Ver.3.0で衛星データの売買が可能に

さくらインターネットが石狩データセンターの主要電力をLNG発電に変更、年間CO2排出量の約24%にあたる約4800トンを削減

クラウドコンピューティングサービスを展開するさくらインターネットは10月26日、衛星データプラットフォーム「Tellus」(テルース)のバージョン3.0の提供を開始した。このバージョンから、新機能として衛星データの売買が可能な「Tellus Satellite Data Traveler」が追加された。

Tellus Satellite Data Travelerでは、ユーザーは衛星のセンサーの種類、時刻、関心領域(AOI。Area of Interest)などを指定して衛星データを検索し、購入できる。購入したデータは、任意の場所に保存が可能。

また今回、Tellusで衛星データを販売する企業(衛星データプロバイダー)は、日本スペースイメージング(JSI)、日本地球観測衛星サービス(JEOSS)、パスコの3社となる。今後、JSIが提供する米Maxarの衛星からのデータ(現時点では個別問い合わせ対応)、JEOSSの衛星「ASNARO-2」のデータも加わる。さらに、パスコが運用する衛星「ASNARO-1」と、2020年度中の打ち上げが予定されているJAXAの先進光学衛星「だいち3号」(ALOS-3)のデータも順次販売が開始されるとのこと。

Tellusは、経済産業省の「政府衛星データのオープンアンドフリー化・データ利活用促進事業」として開発と運用が行われている衛星データプラットフォーム。2019年2月21日のサービス提供開始以来、アカウント登録者数は2021年10月26日時点で2万4000人を超えている。Tellusにおいて「宇宙アセットを民主化する」というミッションを掲げるさくらインターネットでは、「衛星データと地上データの産業利用を促進し、衛星データを利用して新たな価値を創造する」と話している。

英国宇宙庁が不要な衛星2機の除去プログラムに日本の宇宙スタートアップ「アストロスケール」を選定

スペースデブリ(宇宙ごみ)除去などの軌道上サービスに取り組むアストロスケールホールディングスは10月26日、英国の宇宙庁UKSAの低軌道上の非協力物体(運動制御が不能になったドッキング機能を持たない衛星)2基の除去を検討するプログラム「COSMIC」(コズミック)に選定されたことを発表した。これは、ドバイで開催されている国際宇宙会議においてUKSAが行った発表を受けてのこと。

アストロスケールは2020年8月25日、軌道上での模擬デブリ(クライアント)の捕獲に成功している。この際使用された、民間企業としては世界初のデブリ除去技術実験衛星「ELSA-d」(エルサディー)のミッションで培われた技術がCOSMICで活かされる。ELSA-dは、本体である捕獲機(サービサー)と模擬デブリとをともに宇宙に打ち上げ、捕獲実験を行った。デブリは磁石でサービサーとドッキングする仕組みになっている。現在、ELSA-dは、サービサーの自律制御機能による「非回転状態のクライアントの捕獲」や「回転状態のクライアントの捕獲」の実証実験の準備が進められている。

これと並行して、欧州宇宙機関(ESA)の通信システム先端研究「Sunrise」(サンライズ)プログラムにおいて、複数のクライアントを捕獲し除去できるELSA-M(エルサ・エム)の開発を、ロンドンの通信衛星コンステレーション企業OneWebと進めている。

COSMICでは、このELSA-Mのサービサーを仕様変更して使われる。いったん低軌道に打ち上げられたELSA-Mは、クライアントの軌道へ移動してクライアントを捕獲し、廃棄用軌道まで降下してクライアントを大気圏に放出する(最終的に大気圏に再突入させることで燃え尽きさせる)。そして次のクライアントの軌道まで移動して、捕獲、放出を繰り返す。このミッションでは、軌道上での修復作業も想定されていて、宇宙空間での宇宙状況把握の実証実験も行われるとのことだ。

日本を本社と研究開発拠点を構えるアストロスケールは、イギリス、アメリカ、シンガポール、イスラエルに事業展開をしている。

ブルーオリジン、ボーイングなどがシエラスペースとの民間商業宇宙ステーション建造を発表

軌道上の不動産ラッシュがついに始まる。Sierra Space(シエラ・スペース)が、民間宇宙ステーション打ち上げ計画のさらなる詳細を発表した。Blue Origin(ブルーオリジン)とBoeing(ボーイング)がこのチームに加わり、2020年代の後半に宇宙ステーションを軌道に送り込む計画だという。

「Orbital Reef(オービタル・リーフ)」と名付けられたこの計画中のステーションには、Redwire Space(レッドワイヤー・スペース)、Genesis Engineering(ジェネシス・エンジニアリング)、Arizona State University(アリゾナ州立大学)の技術やサービスも含まれる予定だ。これは商業宇宙ステーションの計画としては3番目に発表されたもので、数日前にはVoyager Space(ボイジャー・スペース)、Nanoracks(ナノラックス)、Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)の3社が、2027年に打ち上げを予定している商業宇宙ステーションの計画を発表したばかりだ。そしてもう1件、Axiom Space(アクシオム・スペース)も商業宇宙ステーションを計画している。

Sierra Spaceが最初に商業宇宙ステーションの計画を発表したのは、2021年4月のこと。その背景には、間もなく閉鎖される国際宇宙ステーション(ISS)の代わりになるものを求めて、民間企業の声が高まっているという状況がある。Sierra Nevada Corporation(シエラ・ネヴァダ・コーポレーション)の一部門である同社は、Orbital Reefに使用される大型で膨張式の「LIFE(Large Integrated Flexible Environment、大型で統合された柔軟性の高い環境)」と呼ばれる居住区の開発を進めている。今回の最新ニュースは、先に発表されたこの計画に基づくものだ。

Orbital Reefは「地球外多目的ビジネスパーク」として運営されることになると、Blue Originの先進開発プログラム担当シニアVPであるBrent Sherwood(ブレント・シャーウッド)氏は、米国時間10月25日に開催されたメディア向け発表会イベントで語った。この宇宙ステーションは、科学研究、製造、メディア、エンターテインメント、観光など、さまざまな商業目的に利用することができると、シャーウッド氏は考えている。Orbital Reefは完全運用が始まれば最高10人が滞在可能で、その内部容積は現在のISSの約90%になる見込みだという。

Blue Originはコアモジュール、ユーティリティ・システム、そして重要な点として、同社の重量級打ち上げシステムである「New Glenn(ニューグレン)」大型ロケットを提供する。Boeingは、宇宙ステーションの運用と科学モジュールを担当し、人間を宇宙ステーションへ往復させるStarliner (スターライナー)を提供する。Redwire社は、微小重力研究技術と宇宙空間における製造、ペイロードの運用と展開可能な建造物を提供する。

メリーランド州に本拠を置くGenesis Engineeringは、日常業務や観光を目的とした1人用の宇宙船を開発し、アリゾナ州立大学は大学コンソーシアムを率いて研究助言サービスを提供する。

「微小重力環境は、科学的・商業的な発見のためのまったく新しい場を提供します」と、Redwireの民間宇宙・渉外担当エグゼクティブVPであるMike Gold(マイク・ゴールド)氏は述べている。「微小重力を利用した研究・開発・製造を習得した国や企業が、将来の世界経済のリーダーになると、我々は確信しています」。

しかし、このステーションのコストがどの程度になる見込みであるかは、あまり明らかになっていない。各社の役員は、プロジェクトに投入する資本や全体の投資額について、具体的に述べようとはしなかった。シャーウッド氏は「ご質問の件は、我々のビジネスケースの一部であり、具体的な数字を申し上げるつもりはありません」と語った。

NASAは、Commercial Low Earth Orbit Destinations(商業的地球低軌道目的地開発)プロジェクトの一環として、初期の宇宙ステーション計画の提案に対し、最大4億ドル(約456億円)を投資することを計画しているが、この資金は複数の提案に分配されるため、1つのステーションを開発して打ち上げる費用全体の中では、ほんの一部にしかならないと思われる。NASAは先月、これらの資金の一部を獲得しようとする企業から「およそ1ダースほどの提案」を受け取ったと、CNBCに語っている。

もう1つ、まだ明らかになっていない重要なパズルのピースは、Blue Originの「New Glenn」、Boeingの「Starliner」、Sierra Spaceの「Dream Chaser(ドリーム・チェイサー)」という各社が開発しているスペースプレーンの打ち上げ能力だ。これらの機体で宇宙に到達したものはまだ1つもないが、Boeingは2022年前半にStarlinerの打ち上げテストを行うことを目指している。Blue Originは同年の第4四半期にNew Glennの打ち上げを予定しており、Sierra SpaceはDream Chaserを使ってISSへ向かう7回のミッションをNASAと契約している。

画像クレジット:Blue Origin

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)