ブルーオリジン、ボーイングなどがシエラスペースとの民間商業宇宙ステーション建造を発表

軌道上の不動産ラッシュがついに始まる。Sierra Space(シエラ・スペース)が、民間宇宙ステーション打ち上げ計画のさらなる詳細を発表した。Blue Origin(ブルーオリジン)とBoeing(ボーイング)がこのチームに加わり、2020年代の後半に宇宙ステーションを軌道に送り込む計画だという。

「Orbital Reef(オービタル・リーフ)」と名付けられたこの計画中のステーションには、Redwire Space(レッドワイヤー・スペース)、Genesis Engineering(ジェネシス・エンジニアリング)、Arizona State University(アリゾナ州立大学)の技術やサービスも含まれる予定だ。これは商業宇宙ステーションの計画としては3番目に発表されたもので、数日前にはVoyager Space(ボイジャー・スペース)、Nanoracks(ナノラックス)、Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)の3社が、2027年に打ち上げを予定している商業宇宙ステーションの計画を発表したばかりだ。そしてもう1件、Axiom Space(アクシオム・スペース)も商業宇宙ステーションを計画している。

Sierra Spaceが最初に商業宇宙ステーションの計画を発表したのは、2021年4月のこと。その背景には、間もなく閉鎖される国際宇宙ステーション(ISS)の代わりになるものを求めて、民間企業の声が高まっているという状況がある。Sierra Nevada Corporation(シエラ・ネヴァダ・コーポレーション)の一部門である同社は、Orbital Reefに使用される大型で膨張式の「LIFE(Large Integrated Flexible Environment、大型で統合された柔軟性の高い環境)」と呼ばれる居住区の開発を進めている。今回の最新ニュースは、先に発表されたこの計画に基づくものだ。

Orbital Reefは「地球外多目的ビジネスパーク」として運営されることになると、Blue Originの先進開発プログラム担当シニアVPであるBrent Sherwood(ブレント・シャーウッド)氏は、米国時間10月25日に開催されたメディア向け発表会イベントで語った。この宇宙ステーションは、科学研究、製造、メディア、エンターテインメント、観光など、さまざまな商業目的に利用することができると、シャーウッド氏は考えている。Orbital Reefは完全運用が始まれば最高10人が滞在可能で、その内部容積は現在のISSの約90%になる見込みだという。

Blue Originはコアモジュール、ユーティリティ・システム、そして重要な点として、同社の重量級打ち上げシステムである「New Glenn(ニューグレン)」大型ロケットを提供する。Boeingは、宇宙ステーションの運用と科学モジュールを担当し、人間を宇宙ステーションへ往復させるStarliner (スターライナー)を提供する。Redwire社は、微小重力研究技術と宇宙空間における製造、ペイロードの運用と展開可能な建造物を提供する。

メリーランド州に本拠を置くGenesis Engineeringは、日常業務や観光を目的とした1人用の宇宙船を開発し、アリゾナ州立大学は大学コンソーシアムを率いて研究助言サービスを提供する。

「微小重力環境は、科学的・商業的な発見のためのまったく新しい場を提供します」と、Redwireの民間宇宙・渉外担当エグゼクティブVPであるMike Gold(マイク・ゴールド)氏は述べている。「微小重力を利用した研究・開発・製造を習得した国や企業が、将来の世界経済のリーダーになると、我々は確信しています」。

しかし、このステーションのコストがどの程度になる見込みであるかは、あまり明らかになっていない。各社の役員は、プロジェクトに投入する資本や全体の投資額について、具体的に述べようとはしなかった。シャーウッド氏は「ご質問の件は、我々のビジネスケースの一部であり、具体的な数字を申し上げるつもりはありません」と語った。

NASAは、Commercial Low Earth Orbit Destinations(商業的地球低軌道目的地開発)プロジェクトの一環として、初期の宇宙ステーション計画の提案に対し、最大4億ドル(約456億円)を投資することを計画しているが、この資金は複数の提案に分配されるため、1つのステーションを開発して打ち上げる費用全体の中では、ほんの一部にしかならないと思われる。NASAは先月、これらの資金の一部を獲得しようとする企業から「およそ1ダースほどの提案」を受け取ったと、CNBCに語っている。

もう1つ、まだ明らかになっていない重要なパズルのピースは、Blue Originの「New Glenn」、Boeingの「Starliner」、Sierra Spaceの「Dream Chaser(ドリーム・チェイサー)」という各社が開発しているスペースプレーンの打ち上げ能力だ。これらの機体で宇宙に到達したものはまだ1つもないが、Boeingは2022年前半にStarlinerの打ち上げテストを行うことを目指している。Blue Originは同年の第4四半期にNew Glennの打ち上げを予定しており、Sierra SpaceはDream Chaserを使ってISSへ向かう7回のミッションをNASAと契約している。

画像クレジット:Blue Origin

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

NASAとボーイングが無人軌道飛行テストのやり直しを2021年3月に予定

NASAとBoeing(ボーイング)社は、現在進行中の商業乗員輸送プログラムにおける重要な資格認定実証ミッションである軌道飛行テスト2(OFT-2)について、可能な限り早い日付として2021年3月29日を検討している。ボーイングは、国際宇宙ステーション(ISS)へ宇宙飛行士を輸送する有人宇宙打上げシステムの開発と認可取得を行うためにNASAから選ばれた2社目の企業で、現在も宇宙船の認証に向けて作業を進めている。選ばれたもう1つの企業であるSpaceX(スペースX)は、すでに最初の現行サービスミッションに成功している。

ボーイングは2019年12月にこのミッションの最初のバージョンを打ち上げた。同社のStarliner(スターライナー)CST-100有人宇宙船は、ULAのロケットに搭載されて計画通りに離陸し、ミッションの一部を完璧にこなした。しかし、このカプセル型宇宙船に搭載されていたミッションタイマーにエラーが発生し、地上通信が一瞬途切れたため、修正が間に合わず、今回の実証飛行の最大の目的であった宇宙ステーションにドッキングするための軌道投入に十分な燃料を確保しておくことができなかった。

ボーイングはそれでも、スターライナーカプセルの大気圏再突入、降下、回収を成功させることができた。これらはすべて、他の重要なミッションの目標を達成するための良いテストになった。

しかし、ボーイングとNASAは、最終的な有人飛行による実証ミッションを実施する前に、無人軌道飛行テスト(OFT)を繰り返す必要があるという判断を下した。

長時間にわたる徹底的な調査の後、ボーイングとNASAは双方とも、ソフトウェア開発プロセスとパートナーシップの変更を実施し、ミッションタイマーに影響を与えたようなエラーが将来的に起こらないように対策した。

両社は当初、最初のトライから約1年後の2020年12月中にこのミッションの再打ち上げを望んでいたが、その後スケジュールがずれ込み、最終的には来年の第1四半期が最も早くて実施可能な時期となった。

NASAはボーイング社の宇宙船が認証を取得し、宇宙飛行士の地球低軌道への商業輸送サービスを、1社ではなく2社に頼ることができるようにしたいと望んでいる。そのように多様なプロバイダーの組み合わせが可能になれば、有人宇宙飛行を中心とした地球軌道上における商業活動の増加を促進するのにも役立つはずだ。

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カテゴリー:宇宙
タグ:ボーイングSpaceXNASA宇宙船

画像クレジット:NASA / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

ボーイングとNASAは無人軌道飛行の再挑戦を2020年9月に設定

Boeing(ボーイング)とNASAは、Commercial Crew(商業乗員輸送開発)計画におけるボーイングのCST-100宇宙船の定期有人飛行用としての認可取得に向けた予定を更新した。CST-100とボーイングの商業乗員輸送開発にかける強い想いは、2019年に初めての無人軌道飛行テスト中の思わぬ障害に遭遇した。ソフトウェアのエラーのために飛行予定が狂い(未訳記事)、ミッションを早々に断念。国際宇宙ステーション(ISS)まで送るという目標を達成できなかったのだ。

米国時間8月28日のNASAのブログ記事には、NASAとパートナーであるボーイングは、無人飛行テストの再挑戦を2020年12月よりも前に実施することを目指していると書かれていた。これには、完全に再利用可能なStarliner(スターライナー)CST-100が使用され、人は乗らないものの、軌道上のISSとのランデブーとドッキング、帰還、着陸の操縦、カプセルの回収といった打ち上げの際の乗員の作業を、ライブかつ完全自動のシミュレーションで行うことにしている。

2019年12月に行われた最初の軌道飛行テスト(OFT)では、同宇宙船は、計画どおりUnited Launch Alliance(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス、ULA)のAtlas V(アトラス・ファイブ)ロケットに載せられフロリダ州ケープカナベラルから打ち上げられた。ところが、ロケットから切り離された直後、宇宙船に搭載されたミッションタイマーに問題が発生した。それによりスラスターが誤作動し、燃料が浪費される事態に陥った。通信障害も発生したため、NASAはこの事故に対処できず、計画どおりにISSまで飛行するために必要な燃料を残せなかった。だが、カプセルは無事に地球に帰還し、飛行中の貴重なデータを提供してくれた。

NASAとボーイングは、その後、ボーイングのソフトウェア開発計画を包括的に見直し、さらにNASA自身も官民パートナーシップに付随する実務も再検討し、いくつもの是正処置を講じた。その審査が2020年7月に完了し、現在、NASAとボーイングは、2回目のテスト飛行に向けて活動を再開している。

ボーイングにとって、この出直しにかけるものは大きい。商業乗員輸送開発におけるNASAのもう1つのパートナーであるSpaceX(スペースエックス)には、認証プログラムに関して少なくとも1年は先を越されている。SpaceXは先日、Dragon(ドラゴン)宇宙船を使った初の有人試験ミッションを成功させ、早ければ10月には最初の有人運用ミッションを実施する予定だ。

OFT-2がボーイングの思惑どおりに進めば、Starlinerの最初の有人試験飛行は、早ければ2021年6月の打ち上げが可能となる。最初の運用ミッションは、現在は2021年12月に設定されている。もちろん、これらすべての予定は確定でない。

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カテゴリー:宇宙

タグ:Boeing NASA

画像クレジット:Boeing

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(翻訳:金井哲夫)