器用にたこ焼きを返す調理ロボットを開発、コネクテッドロボティクスが6700万円調達

調理ロボットを開発するコネクテッドロボティクスは1月25日、500 Startups JapanDraper Nexusエースタート、複数の個人投資家を引受先とする第三者割当増資を実施したと発表した。調達金額は6300万円だ。

写真中央がコネクテッドロボティクス代表取締役の沢登哲也氏

コネクテッドロボティクスは企業向けの調理ロボットを開発するスタートアップだ。同社はその第1弾として、たこ焼き調理ロボットの「OctoChef」を2018年春にリリースする予定としている。

この調理ロボットがなかなかスゴイ。ロボティクスに関しては素人の僕がOctoChefの話を聞いた時、どこまで自動化できるのだろうと疑問に思った。でも、その答えは”最後まで”だった。

このロボットが実際動いている動画を見て欲しい。たこ焼きのなかに入れる具材こそ調理済みのものだけれど、生地の流しこみからたこ焼きのひっくり返し、そして容器への移し替えまですべてをロボットが行っている(まだまだ大阪人の読者からはツッコミが入る出来かもしれないが)。

「ロボットが苦手とするのは”切る”という動作。その工程が少ないたこ焼きはロボットでも可能だと考えた。あまりに素早い動きを繰り返すと安全性も低くなるし、動力のロスも大きくなる。だから、焼き上がるまでの待機時間がある点もロボットとは相性がいい」とコネクテッドロボティクス代表取締役の沢登哲也氏は話す。

聞けば、このロボットのプロトタイプの開発費用は200〜300万円ほどだったという。しかも、それに要した期間もわずか2ヶ月だ。「プロトタイプの開発に必要なロボットはオリックス・レンテックを通してレンタルした。このような環境が整ったことで、ロボットビジネスを始めるためのハードルはかなり低くなった」(沢登氏)

同社はOctoChefのような調理ロボットを「2年で投資回収できる程度の」価格で企業に提供していく。また、そういった買取型のマネタイズだけでなく、初期費用を抑えることができるサブスクリプション型も将来的なビジネスモデルとして視野に入れているという。

沢登氏は、東京大学大学院でロボット工学を学んだあと、最初は飲食店の立ち上げというかたちでビジネスの世界に足を踏み入れた。彼の祖父母や叔父が長年飲食店を営んでいたことから、もともと飲食業界への興味があった沢登氏は言う。その後、飲食とロボティクスを組み合わせた「飲食ロボット」の製造を専門としたコネクテッドロボティクスを2014年2月に創業した。

同社は今回調達した資金をロボットエンジニアの採用とロボット機材の購入費用に充てるという。今後はたこ焼きだけではなく、カレー、寿司、牛丼、焼き鳥などの自動調理にも取り組んでいく予定だ。

不動産テックのライナフが伊藤忠テクノロジーベンチャーズなど5社から3.2億円を資金調達

スマートロックなどのIoTデバイスを切り口に不動産サービスを展開する、不動産テックのスタートアップ企業ライナフは1月25日、伊藤忠テクノロジーベンチャーズをリード投資家として、長谷工アネシス住友商事、FFGベンチャービジネスパートナーズ、既存投資家である三井住友海上キャピタルを引受先とした、総額3.2億円の第三者割当増資の実施を発表した。

今回の資金調達は、三井住友海上キャピタルおよび三菱地所が出資に参加した2016年2月、三菱地所、DGインキュベーション、西武しんきんキャピタル他が参加した2016年11月に続くもので、シリーズBラウンドにあたる。

ライナフでは、スマートロックの「NinjaLock(ニンジャロック)」、オートロック付きの共有エントランス向け開錠システム「NinjaEntrance(ニンジャエントランス)」をIoTハードウェアとして提供。また、これらのハードと連動して、不動産オーナーや管理会社向けに「スマート内覧」「スマート会議室」「スマート物確」といったサービスを提供してきた。

ライナフ代表取締役の滝沢潔氏は「今回の調達は資本・業務提携としての目的が強い」と話している。「これまでの株主構成では、どうしても既存株主のための事業展開と見えてしまう。不動産各社へのサービス提供も進めているが、サービスの単なる“運用”から“拡大”へと進むために、一社に限らず、さまざまな不動産プレイヤーからの応援をいただいているという形にしたかった」(滝沢氏)

大手不動産プレイヤーとして新たに株主に加わった長谷工アネシスは、長谷工グループのサービス事業を行う企業で、マンション販売や賃貸マンションの管理事業などに加え、スマートマンション事業や保険サービスなども手がける。ライナフでは今後同社と、マンション建設や不動産事業、住宅関連サービスへのICT活用について検討していく予定だ。

また住友商事とは、同社が保有する不動産や販売するマンションへのサービス導入を検討してもらうほか、商社として、海外展開への支援をライナフとしては期待しているという。

福岡銀行グループのVCであるFFGベンチャービジネスパートナーズについては、銀行と地元不動産会社との金融機関としてのつながりを生かし、九州地域への進出で協業する予定で、滝沢氏は「これを機に関東以外への進出も強化していく」としている。

今回の調達資金は、営業体制強化のための人材採用のほか、「カスタマー・サクセス」部門の強化にも充てる。滝沢氏は「現在提供しているサブスクリプション型のサービスで、投資の回収を完了して収益を上げるためには、顧客に2年目以降も継続していただくことが重要。新規顧客の開拓はもちろんだが、既存顧客への定期訪問などでより多くの物件へのサービス導入をお勧めし、さらにその顧客がまだ利用していない新サービスも使ってもらえるような体制づくりを行っていく」と説明している。

なお、ライナフでは既存の空室向けサービスのほかに「住生活領域についても、日本初となる新しい取り組みを予定している」として、1月30日に新サービスを発表するそうだ。滝沢氏の話では、どうやらそれは、2017年3月のLIXILとの提携の際にTechCrunchが取材で聞いた、スマートホームならぬ「スマートドア」構想と関係しているらしい。

このスマートドア、あるいは「サービスが入ってくる家」と滝沢氏が呼ぶ構想は、米Amazonが2017年11月から開始した、不在時でも家の中に荷物を届けてくれるサービス「Amazon Key」と似ている。

2017年3月の取材当時の滝沢氏の話では、スマートロック付きのドアが家の外側と内側の2カ所に設置され、不在でもドアとドアの間で荷物の受け取りやクリーニングなどの宅配サービスが受けられ、内側のドアが開けられるキーを発行すれば家事代行サービスも受けられる、というサービスが想定されていた。どのようなサービスになるのか、発表の内容も追って記事にする予定だ。

マーケティング分析ツール「マゼラン」を提供するサイカが4.5億円を調達

クラウド型マーケティング統合分析ツール「XICA magellan(サイカ・マゼラン、以下マゼラン)」を提供するサイカは1月24日、INTAGE Open Innovation Fund、NTTドコモ・ベンチャーズ、アイ・マーキュリーキャピタル、そして既存投資家のDraper Nexus Venturesを引受先とした第三者割当増資により、4億5000万円を調達したと発表した。

マゼランは、インターネット広告、テレビCM、交通広告といったさまざまな広告の効果を、オンライン・オフラインを統合して評価・分析することができるツール。広告予算の最適な配分案が提示され、費用対効果の改善が期待できる。2016年9月に正式リリースされてから、1年あまり。国内の広告宣伝費ランキング上位100社(東洋経済オンライン記事による)のうち、1割の企業に利用されているという。

今回の資金調達発表と同じ1月24日には、導入・運用工数が軽減する機能や、分析の制度改善を簡易化する機能などを追加した、マゼランの新バージョンを提供開始している。

サイカは2012年の創業。2013年11月に開催されたTechCrunch Tokyo スタートアップバトルでは、マゼランの前身となる、素人でも使える統計分析ツール「adelie」(現在はサービスを終了)でマイクロソフト賞を受賞した。これまでに数回の資金調達を実施しており、直近では2016年3月に、電通デジタルが運営するファンド、Draper Nexus Venture Partners Ⅱ、アーキタイプベンチャーズの3社から資金調達を行っている。

サイカでは今回の資金調達を機に、マゼランの機能拡充と、販売拡大のための人員やマーケティング活動の強化に投資していく、としている。

SmartHRが15億円調達、東京海上日動火災保険との連携も視野に

労務管理クラウド「SmartHR」を提供するSmartHRは1月23日、戦略的スキーム「SPV(Special Purpose Vehicle)」を活用して15億円の資金調達を完了したと発表した。また、今回の調達に併せて、500 Startups Japan代表兼マネージングパートナーのJames Riney氏が社外取締役に就任することも明らかとなった。

写真中央がSmartHR代表取締役の宮田昇始氏、その右が500 Startups Japan代表兼マネージングパートナーのJames Riney 氏。

今回SmartHRが資金調達に利用したSPVは、特定の企業やプロジェクトに投資することを目的に専用のファンドを組成し、このファンドを通して資金を供給するスキームだ。SmartHRのプレスリリースによれば、SPVを利用した資金調達は米国では事例があるものの、「日本では未だ前例の少ないスキーム」としている。

SmartHRにとってシリーズBとなる今回のラウンドでは、既存株主である500 Startups Japanが専用のファンドの組成を行い、東京海上日動火災保険日宣、機関投資家3社、CVC、個人投資家などをLPとして資金調達を行った。SPVを利用した資金調達は、(日米両方の)500 Startupsにとって初めてのことだという。

スタートアップがSPVを利用するメリットとしては、資金調達活動にかかる負担を軽減できることなどがある。一方、500 Startups Japanにとっては、ファンド規模などの理由からこれまではシード・シリーズAが同ファンドの主戦場だったが、SPVを利用することでそれ以降のラウンドからも利益を得られる仕組みを手に入れたことになる。

SmartHRは今回調達した資金を利用して、サービスの追加開発、人材採用、マーケティング活動の推進を行っていく。また、オンライン利用率が8.9%とまだ低い社会保険・労働保険分野の電子申請の啓蒙を行い、クラウド人事労務ソフトの市場拡大を目指していくとしている。

「税務関係の書類(に関わる業務)はバリューを出しやすいが、社会保険や労働保険分野の書類作業はただ書き写すだけというような作業も多い。SmartHRを利用することで、そこにかかる時間を圧縮し、バリューアップにつながるような他の作業に集中できる」(SmartHR代表取締役の宮田昇始氏)

これに加え、具体的にはまだ不明だが、今回からSPVのLPとなった東京海上日動火災保険との業務提携、ならびに金融における新規事業も視野に入れているという。

SmartHRは2013年の創業で、TechCrunch Tokyo 2015スタートアップバトルの優勝企業だ。クラウド人事労務ソフトのSmartHRを導入する企業は現在9300社を超えた。2016年8月にはシリーズAで5億円の資金調達も行っている

“証券3.0”を目指すFinatextが14億円で証券会社を設立——取引の基礎となる機能をAPIで提供

株式市場の予測アプリ「あすかぶ!」や金融機関向けの投信データ提供サービスなどを手がけるFinatextは1月23日、新たに設立した子会社スマートプラスを通して証券業に参入すると発表した(スマートプラスの設立は2017年3月で、証券業登録は12月26日に完了)。さらに、Finatextは2017年5月にJAFCOから14億2500万円の資金調達を行っていたこともTechCrunch Japanの取材で明らかとなった。

2013年創業のFinatextはこれまで、株式市場の予想アプリ「あすかぶ!」や仮想通貨を使ったFXの予想アプリ「かるFX」といったコンシューマー向けの投資アプリを手がけてきた。また、2016年4月からはこれと並行して日本アイ・ビー・エムと共同でロボアドバイザーのエンジンを金融機関に提供するビジネスも行っている。

このように、これまでは間接的に証券業に関わってきたFinatextだが、彼らは新子会社のスマートプラスを設立して証券業に直接参入することを決めた。スマートプラスを通して彼らが目指すのは“証券3.0”の実現だ。

Finatextは、伝統的な対面営業の証券業を”証券1.0”、また、その業界がインターネットによって効率性を追求し、手数料の引き下げや商品ラインナップの充実を進めてきたことを”証券2.0”と呼ぶ。そして、投資家が多様な証券サービスの中から自分の趣向に合ったサービスを自由に選べる世界というのが、Finatextが目指す証券3.0だ。

それを実現するために必要となるキーファクターが、「BaaS(Brokerage as a Service)」という考え方。これは、各証券会社がこれまで自社で一式に提供してきた証券インフラ、証券取引の執行機能、フロントエンドサービスをアンバンドル化し、その中の基礎的な部分であるインフラと執行機能をFinatextがAPIとして提供するというもの。執行機能部分はスマートプラスが担当し、証券インフラ部分は同社とパートナーシップを結ぶ大和証券が提供する。

そうすれば、証券会社はユーザーと直に接するフロントエンドサービスに注力することができるようになるとFinatextは主張する。また、証券サービスの開発コストが極小化されることで新規参入者が増え、小規模ニーズにも対応した多様な証券フロントサービスが生まれるようになるという。

Finatextは、片手で迅速に取引が可能なUIや、自然言語解析による情報と銘柄の関連付けなどが特徴の株式取引アプリ「STREAM」を2018年初旬にリリースする予定だ。証券3.0が実現すれば、ユーザーエンドの技術に強みをもった他業種の企業でも、STREAMのようなアプリを開発することで独自の証券サービスを提供できるようになる。それがFinatextが目指す新しい証券業界のカタチだ。

レシピ動画サイトのdelyがソフトバンクなどから33.5億円の大型調達、新規事業やM&Aも視野に

この2年ほどで大きく市場を拡大させたレシピ動画サービスだが、その競争はさらに激化しているようだ。2017年末には「DELISH KITCHEN」を運営するエブリーが20億円超の資金調達を発表して業界を騒がせたが、今日1月22日には「kurashiru(クラシル)」を運営するdelyがその金額を上回る33億5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。今後は調達した資金をもとに、人材やマーケティングを強化。さらに新事業やM&Aなども視野に入れているという。

今回の資金調達はソフトバンク、YJキャピタルの運用するファンドであるYJ2号投資事業組合、アカツキ、ユナイテッドなどを引受先とした第三者割当増資。なおYJキャピタルやユナイテッドはdelyの既存投資家だ。今回の調達により、同社は累計約70億円を調達したことになる。

dely代表取締役の堀江裕介氏

delyは2014年の創業。もともとはデリバリーサービスを展開していたが、約半年でピボット。その後はキュレーションメディア事業を展開。その中で反響のあった「動画」を軸にして、現在のクラシルを作った。

クラシルは当初、FacebookやInstagramなどのプラットフォームに動画を掲載する「分散型」の動画コンテンツを配信していたが、その後スマホアプリを展開。2017年8月には、レシピ動画数が世界一になった(ナイルの「Appliv」調べ。料理レシピ動画掲載アプリ内のレシピ動画数)と発表した。同年12月時点でのアプリダウンロード数は1000万件を超えた。

「マーケティングコストをかけたこともあるが、テレビ(でのプロダクト紹介)での露出も多いので、マスへ展開できつつある。本来オンラインマーケティングとテレビCMだけでは時間がかかるところが、うまくいっている。僕自身もテレビに何回か出演しているが、そこまでになるとテレビCMを見てもダウンロードしてくれないような属性……例えばガラケー(フィーチャーフォン)からスマートフォンに変えたばかり、というような人にもリーチできるようになってきた」(dely代表取締役の堀江裕介氏)

そう語る一方で、「料理のサイトでは、お金がかかるのは分かっていた。50億円なり、100億円なり必要だと思っていた。スピードが速い戦いではあるが、想定どおりだ」(堀江氏)と周辺環境も踏まえて説明する。

クラシルでは現在、タイアップ広告のほか、アドネットワークと月額480円の課金サービスを展開してマネタイズを進めている。

「課金は積み重ねるモデルなので、直近は広告(アドネットワーク)が中心になる。またタイアップも順調。(クライアントとして)想定していた上位50社に関してはほとんどタイアップをやらせてもらった。メーカーの広告予算は『テレビCM+ネット広告』で毎年すでに用意されているので、(その年度の)途中から入るのは難しかった。だが、一度やってくれた企業は翌年の予算を用意してくれている」

「(クックパッドなどの競合と)コンペでバチバチに当たるかというとそうでもない。オンラインに対する予算は全体的に増えており、かつ分散している。彼ら(クライアント)にとって『次のヘビーユーザー』となる40歳以下の層は、テレビを観なくなってきている。そこに当てるのはモバイル動画。テレビが観られないようになってから、その層にアプローチするのでは遅い。そういう流れができている」(堀江氏)

業績については開示していないが、狙えば今年度の単月黒字化も見えている状況だという。「とは言えまだまだ成長フェーズ。(黒字化するより)広告費用にどんどんつぎ込む」(堀江氏)

また冒頭に触れたとおり、今後は新規事業の展開に加えて、スタートアップのM&Aや投資も検討しているという。

「料理のメディアだけに閉じたマーケットは(規模が)見えているので、会社としては事業を複数作ろうとしている。今で言えば仮想通貨回りだとか、いろいろなものがある。僕は『モバイル動画』の波(トレンド)にはギリギリ乗れたが、それまで大きな波はなかった。今の会社を経験しつつも、新しいことを探し続けるのは役目では無いのか。どこまでいっても『大きいこと』を言ってしまうので、いつも自分との戦い。でもそれを達成しつつあって、やっと“ほら吹き”から“マトモ”になってきた」(堀江氏)

現在は新規事業に向けた人材も採用中だ。海外で活躍するエンジニアなども新規事業に向けて採用を薦めているという。「情報を僕自身が取って、インタビューして、発信して、仲間を集めるフェーズだと思っている」(堀江氏)

旅の魅力を引き立てる“物語”をポケットに、音声ガイドアプリ「Pokke」提供元が数千万円を調達

旅行で有名な観光スポットへ行くと、いわゆる「音声ガイド」を目にすることがたまにある。スポットの見どころや背景などを音声で紹介してくれるあの機械だ。

僕は割と現地のことを事前に調べてから行く派なのだけど、それでも音声ガイドを聞けば初めて知ることもあり、旅の満足感がさらに上がる。そんな体験を昨年とある鍾乳洞へ行った時にもしたばかりだ。もちろん機械ではなく、人間のガイドを雇って現地の案内をお願いすることが多いという人もいるだろう。

ガイドで紹介されるような土地の背景やエピソードを、常にポケットに入れて持ち運ぶことができたら、もっと多くの人が旅を楽しめるのではないか。そんな思いから生まれたのが、多言語トラベル音声ガイドアプリ「Pokke」だ。

30都市、400以上の音声ガイドコンテンツを提供

Pokkeはヴェネツィアやパリ、鎌倉といった観光都市の物語を音声で楽しめるサービス。自分専用のガイドをいつでもどこでも持ち運べ、テキストや動画アプリとは違ってハンズフリー。手だけでなく目も画面に奪われることなく、訪れた場所を見ながら自分のペースでガイドを聞ける。

音声ガイドはスポットごとに作られていて、見所ごとに複数のチャプターに分かれている。長さは平均で30分ほど、ガイドによって20分〜60分と幅が広いという。料金はひとつのガイドあたり数百円(240円〜600円)のものが多く、無料コンテンツもある。

現地で実際に行われているガイドと同レベルの情報を、事実を淡々と紹介するのではなく、より興味を抱きやすいような“物語”として届けるというのがPokkeのチャレンジであり特徴だ。

現在は世界30都市、合計で400以上のコンテンツを配信。日本語を含む10ヵ国語に対応しているので「旅行先で、母国語のガイドが雇えない問題も解決できる」(Pokke提供元であるMEBUKU代表取締役の入江田翔太氏)という。

GPS連動によって現在位置と音声ガイドの位置を地図上で確認できる機能を備えるなど、基本的には現地で「旅ナカ」に使われることを想定。ただPokkeのガイドを参考に旅行の日程を組んだり見どころを調べたりなど、旅マエに使うこともできそうだ。

物語を知ることで旅がもっと楽しくなる

MEBUKUは代表の入江田氏を含む5人のメンバーが集まって、2015年の7月に創業したスタートアップ。同社は本日ANRIとノーマディックを引受先とした第三者割当増資により、数千万円を調達したことを明らかにしている。

具体的なプロダクトのアイデアが固まっていない状態で起業したそうだが、同年秋にPokkeの構想が生まれ、2016年3月にAndroid版をリリースした。きっかけとなったのは、あるメンバーが旅先のアルカトラズ刑務所で音声ガイドを聞いた時の体験だという。

「一見何もないような空間でも『スプーンで掘って逃げようとした』という物語を聞いたことで、心を揺さぶられて旅の体験が変わった。自分自身もアウシュビッツで音声ガイドを聞いた際に同じ経験をしたので、普通に旅するだけでは気づけない各所の物語や歴史、秘密を提供することで、もっと旅を楽しいものにできるのではと考えた」(入江田氏)

当初は事実をシンプルに紹介するという割とオーソドックスな形式でコンテンツを作っていたが、より多くの人に楽しんでもらうために構成や演出を変えた。

「(当初のコンテンツを)自分たちで聞いていても、あまり面白くないと感じた。同じ情報でも演出や見せ方次第で大きく変わる。問いかけを入れるなど構成を変えたり、臨場感を作るために効果音やBGM、『住職の生の声』を入れるなどしている。音声ガイドももっと進化していかないといけない」(入江田氏)

新たな切り口のガイドや、訪日外国人向けコンテンツも強化

新たな取り組みとして、ひとつのスポットを複数の切り口で紹介することもはじめている。たとえばPokkeでは台湾の九份に関して“DJがラジオ番組風に紹介した”特別版のガイドを提供。今後はこのような見せ方のガイド制作に加えて、ユーザーへのパーソナライズやグループで楽しめる機能、ゲーミフィケーションの活用といった機能開発に取り組む方針だ。

また現在は8〜9割が海外のガイドとなっているが、訪日外国人向けに日本国内のガイドも増やしていくという。

現代では「個人での旅行」「現地により深く没入する体験的な旅行」を求める人も少なくない。スマートフォンを1人1台所有する時代だからこそ、持ち運べる音声ガイドアプリを通じて普通に旅するだけでは気づけない発見や、物語を提供していきたいという。

「(土地や作品の背景にある物語などを)知らないがゆえに十分楽しめなかった、というのはもったいない。知らない土地に旅行に行ったり、知らない作品を目にすることは多いと思うので、そこをどう埋めていけるか。Pokkeを通じて取り組んでいきたい」(入江田氏)

AIがダイエットメニュー・レシピを提案するアプリ「CALNA」運営が1億円を調達

健康的な食生活をサポートする人工知能アシスタント「CALNA」を提供するmeuron(ミューロン)は1月17日、INTAGE Open Innovation FundSBIインベストメントを引受先とする第三者割当増資を実施したと発表した。調達金額は1億円だ。

アプリのリリース時にTechCrunch Japanでも紹介したCALNAは、ユーザーが入力した身長や体重などのデータとアンケート診断の結果をもとに、AIがユーザーに最適なダイエットメニューを提案してくれるアプリだ。

同アプリを単に“料理レシピ”として捉えると、競合には今では定番アプリとなった「クックパッド」がある。しかし、CALNAはユーザーの好みを学習したAIが何品分ものレシピをまとめて提案し、それをすべて考慮したうえで作業工程を最適化し、買い物リストや調理手順まで教えてくれるという特徴がある。

CALNAは2016年10月のリリース時より、大手コンビニや外食チェーンのメニューの中から適切な組み合わせを提案する「外食中心ダイエットプログラム」を無料で提供。また、2017年3月からは、レンジで簡単につくれるレシピなど、1品あたり5〜20分で調理できる作り置きレシピを毎月配信する「あっという間の作り置きプログラム」を月額480円で提供開始した。

有料プログラム「あっという間の作り置きプログラム」のリリース後の状況についてmeuron代表取締役の金澤俊昌氏は、「徐々に継続率も伸びてきているが、まだユーザーからは沢山の要望を頂いており、今月末にリニューアルする予定だ」としている。

これまでにユーザーとCALNAの人工知能との会話は1900万件を超えた。同社は今回の資金調達により、ラウンドに参加したINTAGE Open Innovation Fundの設立会社であるインテージホールディングスおよびSBIインベストメントとの連携を開始する。具体的には、市場調査とマーケットリサーチを本業とするインテージホールディングスの協力の下、ユーザーと人工知能との会話データを活用した事業開発を進めていくと金澤氏は話す。

meuronは2014年10月の創業。今回を含む累計調達金額は2億1800万円となる。

ネット広告のレポート作成を自動化、AIが運用を支援する「Roboma」ベータ版リリース——運営会社が4000万円を資金調達

GoogleやFacebook、Twitterといったインターネット広告の出現で、小さな企業や事業部門、スタートアップなどでも比較的低価格で“それなりに”効果的な広告出稿が可能になった今。一方で、マーケティング担当者は広告レポートの作成や、GoogleやFacebook広告の運用の最適化などに追われ、特に小規模な組織では兼務でこうした作業に時間を費やさなければならないことから、本来やるべき分析やマーケティング戦略立案に手が回らない、といったケースも増えている。

こうしたネットマーケティング業務の負荷を、AIの活用によって自動化しようというサービスが始まった。RoboMarketerが1月16日、提供を開始した「Roboma(ロボマ)」ベータ版は、AIによりネット広告のマーケティング業務を支援するクラウドサービスだ。

Robomaは、Facebook、Instagram、Google Adwords、Twitterといったプラットフォームの広告アカウントを連携。連携した広告アカウントのレポートを自動し、費用やCPA(Cost Per Acquisition:ユーザー獲得コスト)などの指標をグラフ化できる。管理画面の閲覧権限を広告代理店やチームに付与することで、レポートの共有も容易に行える。これまでクローズドベータ版として一部企業に限定してサービスを提供してきた。

「Roboma」のスクリーンショット

現状はいわゆるダッシュボードとしての機能が中心だが、今後はデータに基づいてAIアシスタントが運用型広告の最適化をアドバイス。経験やノウハウがない担当者でも最適な運用ができるようになることを目指す。一部のテストユーザーに関してはすでに広告の運用の自動化を行っており、CPAベースで20%の改善が実現した事例もあるという。

「マーケティングの部署は慢性的にリソース不足で、コストセンターとみられることが多い。企業の成長に連れてやることは増える一方だが、その割には人材が全然増えないということもあり、効率化や自動化は絶対に求められる。だが(自社製品と比較すると、マーケティング向けの自社ツールの)開発は後回しになってしまうし、(運用を担当する)代理店も深くは関わらない。(Robomaにより)本来的なブランディング、マーケティング戦略といった『頭を使う』というところに集中できれば」(RoboMarketer 代表取締役の岡崎哲朗氏)

利用料金は、広告アカウント数が1アカウント・広告数100までは月額無料で利用可。3アカウント・広告数500までのベーシックプランが月額9800円、10アカウント・広告数2000までのプロプランが月額2万9800円だ。

またRoboMarketerはRobomaベータ版リリースと同時に、総額約4000万円の第三者割当増資の実施も発表している。引受先はエウレカ創業者の赤坂優氏など、個人投資家だという。

RoboMarketerは、2017年6月の設立。岡崎氏はグリーでマーケティングプロモーションを担当し、海外プロモーションの責任者を務めたのち、スタートアップでのマーケティング責任者を経て起業した人物だ。同社には元ミクシィのマーケターなども参画し、サービスを開発。インターネットマーケティングの最新のトレンドを取り入れ、専門知識がなくても使えるサービスを目指すとしている。

RoboMarketerは今回の調達資金をもとに開発体制の強化を進める。また、将来的には海外でのサービス展開についても検討している。

「メディアは今が変革期」ミレニアル世代向け分散動画のワンメディアが3.5億円調達で本始動

左からB Dash Ventures代表取締役の渡辺洋行氏、ワンメディア代表取締役の明石ガクト氏、グリー代表取締役会長兼社長の田中良和氏

「学生時代から自主製作で映像を作るサークルをやっていて、ある日後輩から『ヤバいサイトがある』と紹介されたのがYouTube。自分が製作した動画をアップしてみたら世界中から反応があって、これはウェブ業界がすごいことになると思った」——ワンメディア代表取締役の明石ガクト氏は、オンライン動画との出会いについてこう語る。

ワンメディアはミレニアル世代向けの分散型動画メディア「ONE MEDIA」の運営や動画コンテンツの制作を手がけるスタートアップ。同社は1月11日、B Dash Ventures運営のファンド「B Dash Fund 3号投資事業有限責任組合」およびグリーを引受先とした総額約3.5億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

ONE MEDIAの動画の1つ「小橋賢児のDo what you can’t

ワンメディアは2014年6月の創業。代表の明石氏は前述のYouTubeの衝撃もあり、周囲が映像業界に就職する中、エキサイトに入社してウェブを学んだ。そうしているうちにVICENowThisのような海外の動画メディアの隆盛を知り、映像サークルの後輩だった執行役員の佐々木勢氏とともに、自ら動画制作の会社を立ち上げた(当時の社名はSpotwright。その後WHITE MEDIAに社名を変えた後、2017年11月にワンメディア(ONE MEDIA)に社名、ブランド名を変更した)。

動画の“波”に乗れなかった創業期

「ただ、その頃は全然動画ブームが来ないんですよ。言ってみれば、2015年までは動画のファーストウェーブ。UUUMが立ち上がって(創業は2013年6月)、YouTuberがやってきた頃。うちには全然仕事が来ない(笑)。2016年になってやっと動画の波が来ました。これがセカンドブーム。短尺量産の動画が流行していましたが、僕たちはそれはやらないと決めていた。そんなことを言っても、お金はどんどんなくなっていく。預金残高10万円を切ったところでエンジェルが助けてくれて、なんとか首の皮一枚繋がったのが2016年夏の出来事です」(明石氏)

そのタイミングで、エンジェルが提供してくれた恵比寿のマンションに拠点を移し、さらにメンバーの人数も減らして、再起を誓ったという。

「創業してすぐはドキュメンタリーをやりたかったんです。だけどこれが全然観られなくて……。メディアになりたかったけど、メディアになるためにはコンテンツ量が大事。(コンテンツが)積み上がって、日々コミュニケーションが生まれて、視聴者や読者が付いてくる。でも当時は月1本しか動画が出せない状況。まず食いつなぐために受託をやっていました」

「受託でも認められるためには本数が必要で、また『格』を持たないといけないと考えていました。当時の動画メディアといえば、料理の早回しやネイルのレクチャー、セクシーなものなど。いろいろとありましたが、なくなっていくものも多かった。なのであれば、僕らは『世の中の難しいことを分かるようにする』ということをやっていこう、そしてメンバーが8人もいない中で、月間60本の動画を作れるようにしよう、と考えたのが転換のきっかけでした」(明石氏)

動画は3秒でジャッジされる

明石氏が“動画のサードウェーブ”と語るONE MEDIAの動画は2〜4分程度で、料理動画などと比較すると長尺なモノが多い。だが明石氏が語るように動画のテンプレートを複数用意し、映像編集ソフトのライブラリも自社開発するなどして、制作効率を上げる仕組み作りを続けてきた。

例えばエモーショナルに情報を伝えたいときは、テーブルに資料や関連するアイテムを並べて、人物や事象を伝える「テーブルトップドキュメンタリー」というフォーマットを使う。また数分間の短い時間で情報量を多く伝えたいのであれば、インフォグラフィックを使うといった具合なのだという。“盛り上がり”の作り方も意識した。アニメーションやインパクトのあるテキストを使用して、冒頭からユーザーを離脱させないようにしているという。

創業から手がけた動画は1200本。現在ONE MEDIAブランドの動画は、FacebookやLINE、スマートニュースなどで配信している。2017年には、Facebookで1750万回の再生と6万回の「いいね!」を得た。LINEでの配信では、フレンド登録数(視聴登録数)が2カ月で2万5000人になった。4分の動画でも、20%ほどのユーザーが視聴を完了するのだそう。

ONE MEDIAのオフィス

「これまでやってきた動画は、1つ1つの粒度が大きかった(結果、月に1本しか出せなかった)。YouTuberが人気な理由は、毎日やっているから。Instagramであれば、粒度はさらに細かくなっている。視聴者がメディアを受け取る粒度は細かくなる一方、長くコミュニケーションをしないといけなくなっています。今はまさにメディアの変革期」

「再生回数は作ろうと思えば作れます。きれいな女性の映像で、冒頭の3秒の時間は取れるかも知れない。ですが、本当に価値のあるものを作らないとビジネスにはなりません。視聴が完了しないのは、最後まで見るモチベーションがないから。SlackもFacebookも通知を出してくる中で視聴者の時間を奪うのは大変。でもそれが取れたときに、テレビや新聞、雑誌よりも濃い関係が作れる。動画は3秒でジャッジされる。その3秒の中で捕まえないといけないし、10秒の間に『最後まで観よう』と思ってもらわないといけない。そうすれば、30秒だろうと60秒だろうと急激に視聴は下がらない」(明石氏)

現在はONE MEDIAで複数の番組を制作するほか、企業向けにタイアップ動画も積極的に制作。トヨタや本田技研などの制作実績もあり、今年度(2018年5月決算)前期は黒字化を達成しているという。チームメンバーも再び拡大しており、C Channelのメディアプロデューサーを務めた疋田万理氏が編集長に、伊藤忠テクノロジーベンチャーズでの投資経験もある元エキサイトの及川和宏氏が執行役員に就任するなどしている。

同社は今回調達した資金をもとに、エンジニアを含めた人員拡大を図るほか、配信先の拡大や異業種メディアとの取り組みも進めるという。また、“映画館つきオフィス”を秋頃までに立ち上げたいと語る。

「ブランドに人は集まり、ブランドが仕事を生む。映像クリエーターを目指す人が会社に来てくれて、僕らは加速できた。VICEにも(クリエーターの)スパイク・ジョーンズが入って変わった。僕らもそうならないといけない」

「ブランドを作るのは目に見える『モノ』だけ。なので、本当の意味でのオフィスを作りたいし、そこに映画館を作りたい。ミレニアル世代に合わせた新しい映画館を作って、クリエーターが世の中に出てくる場所にしたい。僕ら自体も、著名人やネット外のメディアとのコラボしていく。僕らはメディアであると同時にコンテンツスタジオ。僕らは機材も、チームも、広める手段もあるのでMV(ミュージックビデオ)もやっていきたい」(明石氏)

ワンメディアのメンバーら。左から、執行役員の佐々木勢氏、オフィスマネージャーの渡辺かおり氏
、クリエイティブディレクターの斎藤省平氏、代表取締役の明石ガクト氏、編集長の疋田万理氏、執行役員の及川和宏氏

千葉大発のドローンスタートアップACSLが未来創生ファンドなどから21億円を資金調達

空撮などで主に使われる一般向けの民生用ドローンでは、安価な中国製の製品が世界的にもシェアを取っているのが現状だ。そうした中で、土木建築現場での点検や測量・測地、物流・宅配といった産業用途に特化した国産ドローンを開発するのが、千葉大学発のドローンスタートアップである自律制御システム研究所(以下ACSL)だ。

そのACSLが1月9日、未来創生ファンドおよびiGlobe Partnersが運営するファンド、みずほキャピタルが運営するファンド、投資家の千葉功太郎氏が運営するDrone Fund東京大学エッジキャピタルが運営するファンドを引受先とする、総額21億2000万円の第三者割当増資の実施を発表した。

ACSLは2013年11月、当時、千葉大学教授だった野波健蔵氏により設立された。研究室で1998年から行われていた独自の制御技術とドローン機体開発・生産技術をベースに、大手企業向けの産業用ドローンに特化して開発を進めてきた。2016年3月には楽天およびUTECから総額7.2億円の資金調達を実施し、共同でゴルフ場での実証実験を行っている。今回の調達で、ACSLの累計資金調達額は約28億円となる。

ACSLが2016年後半にリリースしたドローン「PF1」は、さまざまな用途に対応できるのが特徴。高解像度カメラとジンバルを搭載すれば建物やインフラの点検に、キャッチャーを搭載すれば物流に……といった感じで、農薬散布や測量、災害対策などにも活用できる。

 

2017年前半には、周囲をレーザーでスキャンして周辺環境の3Dマッピングを行う「SLAM」画像処理を実装した、非GPS環境対応ドローン「PF1-Vision」も提供。この機体では、例えばGPS信号の受信できない橋桁下やトンネル、屋内といった環境でも自律飛行でき、施設内壁の撮影による点検作業が可能だ。

また、ドローンを活用して業務改革・無人化を実現したい顧客に対して、最新ドローンとパイロットによる検証環境を提供するサービスも、ACSLでは行っている。本格導入の前に、ドローン導入による効果、有用性の評価検証が実施できる。

ACSLは今回の調達資金について「今後の海外進出によるグローバル環境での競争、技術革新の加速を見据えた、中期的な経営資本の増強」と位置付け。「画像処理やAIによるエッジコンピューティング、自律制御の進化、さらに、目視外や第3者上空飛行を見据えた安全性・信頼性の向上、IoT等最新技術の統合のための開発激化を見通し、中期的な成長戦略の実現を目指す」としている。

「MixChannel」生みの親の新たな挑戦は“車”のコミュニティ「CARTUNE」、1.1億円の調達も

10代の女子中高生を中心にして人気を集めるライブ・動画コミュニティアプリの「MixChannel」。このサービスを手がけた元Donutsの福山誠氏。同氏が立ち上げた新会社のマイケルが1月10日、経営共創基盤(IGPI)を引受先とした1億1000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。なおマイケルではシードラウンドでもIGPIから資金を調達しており、同社のパートナー 取締役マネージングディレクターである塩野誠氏が社外取締役に就任している。

福山氏はグーグルを経て2011年にシンクランチを設立。ランチマッチングサービス(現在は就活生に特化している)の「ソーシャルランチ」を立ち上げ、1年4カ月後となる2012年12月にはソーシャルゲームなどを手がけるDonutsに会社を売却。その後Donutsで新規事業として立ち上げたのがMixChannelだった。

「(もともとは)『女子高生向けサービス』というくくりではなかったが、2012年頃に10代が使う『動画×コミュニティ』で作ったサービスがMixChannelだった。ユーザーがコミュニティを動かしてくれて、だんだんと今のかたちになっていった。やはりコミュニティを作るのが好きで、運営も楽しい。新会社も本質的にはコミュニティの会社だ」(福山氏)

そんな福山氏がDonutを退職後、2016年12月に立ち上げたのがマイケルだ(ちなみに人名のような社名だが、「マス向け、幅広いユーザー向けのサービスを作りたい」という思いから、ユーザーとしても存在するであろう人名のような社名にしたということだった)。同社は現在、車に特化したコミュニティアプリの「CARTUNE」を展開している。

CARTUNEは、車を趣味にするユーザーに特化したコミュニティアプリ。ユーザーはTwitterやLINE、Facebookなどのアカウントでログインし、愛車の車種と写真を登録すればユーザー登録が完了(所有車を登録しないとログインできないが、他のユーザーの投稿を閲覧することはできる)。愛車の写真やカスタム・ドレスアップパーツの写真や動画を投稿したり、他のユーザーの投稿を閲覧したりできる。投稿はInstagramライクなUIで表示されるが、車種別やタグ別で閲覧できるのが特徴となっている。ちょっと面白いのは、ナンバープレートの自動加工機能。車の写真を撮影するとどうしても移ってしまうナンバープレートを自動認識し、ナンバーが分からないように加工することができる。

CARTUNEは2017年5月にスタートしたが、現在10万ダウンロードを達成。20代から30代を中心にユーザーを拡大している。実数は公開していないが、WAUも上昇中。ちなみに男性比率は99%なんだそう。

「『若者の車離れ』とはよく言われるが、手段としての車ではなく、車自体を楽しんでいる人達は集まるところには集まっている。(テック業界で)車と言えば、『自動運転』『EV』といったトレンドを思い浮かべる。だが違う軸もある。車はある意味で『嗜好品』としても残り続ける」(福山氏)

福山氏がそう考える根拠は大きく3つだ。1つ目は「活発なパーツ売買」。フリマアプリやオークションサービスでは、車のパーツの取引は非常にアクティブなのだそう。パーツの中古売買市場は、約600億円で、直近の3年で10%成長。またワンオフ品と言われるような一品モノのカスタムパーツなどは今CtoCでの取引が多いという。2つ目は車を趣味にする人達が「イベント・リアル体験文化」を持っていること。例えばアフターパーツの商業イベント「東京オートサロン」には、3日で32万人が来場するし、カスタムカーの展示イベント「スタンスネイション東京」には、1000台の出展があり、単日で2万人が来場している。

そして3つ目が「名車のリバイバル」。メーカー側も往年の名車の純正パーツを再販売するなどしているそうで、ファンの付いている車種に関しては「長く乗る」というカルチャーがあるという。「あくまで趣味としての車好きだけで言っても250万人ほどの規模。そういう人達の情報交換の場を作るのがCARTUNEの目標だ」(福山氏)

車のコミュニティとしては、カービューが2004年から提供する「みんカラ」が先行している。みんカラは月間約4億2000万PV、MAU約750万(2016年10月~2017年3月までの平均値)と大きい。福山氏はCARTUNEでスマホ時代のコミュニティ作りをしていきたいと語る。

マイケルでは今回調達した資金をもとに、CARTUNEの運営体制を強化し、プロモーションを拡充する。今後はオフ会の実施や、中古パーツの売買情報のサポートなどを行っていくとしている。

マイケル代表取締役社長の福山誠氏

不正検知サービスのカウリスが1.6億円調達、セブン銀行とのアプリ共同開発も

クラウド型不正アクセス検知サービスの「FraudAlert(フロードアラート)」を提供するカウリスは1月9日、Sony Innovation Fund電通国際情報サービスセブン銀行、コンサル会社のリヴァンプを引受先とする第三者割当増資を実施したと発表した。調達金額は1億6000万円だ。

FraudAlertは、他人のID・パスワードを不正に利用してサービスへのログインを行う「なりすまし攻撃」を検知するためのサービス。アクセスに使われた端末、IPアドレスなど、約50のパラメーターをもとにアクセス者がユーザー本人であるかどうかを判断するという。

同サービスは現在、主に金融機関など合計10社に導入されている(実証実験を含む)。セキュリティ対策に予算をもつ大企業を中心に導入が進んでいるようだ。

また、カウリスは今回のラウンドに参加したセブン銀行との業務提携も進める。カウリスの広報担当者によれば、セブン銀行はキャッシュカード不要で入出金や送金ができるスマートフォンアプリの開発を進めている。そこで重要となるセキュリティ対策としてカウリスの不正検知技術を利用していく予定だ。

カウリスは2015年の創業。2017年4月には数千万円規模の資金調達も実施している。

ゲームやDVDのバーコードを“ピコ”れば即現金化の新アプリ「PICOL」——買取モールのウリドキが公開

目の前にあるアイテムが、すぐに現金化される「即時買取」サービス。フリマアプリ以上に簡単に、そしてスピーディーに商品を査定、現金化できることで2017年に大きな注目を集めた。

この市場を切り開いた「CASH(キャッシュ)」を提供するバンクはDMM.comにより70億円で買収。それを追いかける形で11月末にメルカリも「メルカリNOW」を発表している。2つのサービスの今後も気になるところだが、またひとつこの領域で新たなサービスが生まれようとしているので紹介したい。

ゲームやブランド品など様々な商品の買取価格を比較できるプラットフォーム「ウリドキ」を提供するウリドキネット。同社は1月4日、ゲームソフトなどのバーコードをスマホでピコる(読み取る)だけで即座に現金化できるアプリ「PICOL(ピコル)」をリリースした。

あわせて同社では、2017年の夏にエウレカ共同創業者である赤坂優氏やVCを引受先とした第三者割当増資により資金調達を実施したことも明らかにしている。具体的な調達額は非公開だが、関係者によると数千万円後半の規模だという。

バーコードをピコるだけで目の前のゲームが現金に

PICOLはゲームやCD、DVDなど「メディア系商材」といわれる商品を対象にした即時買取サービスだ。

CASHの場合は売りたい商品の写真を撮ることで料金が査定されるが、PICOLの場合はメディア系商材に付与されているバーコードをスマホでピコり、商品の状態を選択すると査定がスタート。買取金額が表示され、ユーザー情報と集荷日時を登録すればアプリ内のウォレットにお金がたまる。

ウリドキネットではまず本日1日限定でPICOLのテスト版をリリースする。買取対象となるのはゲーム機本体およびゲームソフト。査定金額の上限は最大5万円まで、PICOL全体での買取金額の上限は300万円までとなる。換金した商品については、査定日の翌日から5日以内に配送業者が自宅まで無料で集荷にいく。

ウリドキネット代表取締役CEOの木暮康雄氏によると、PICOLの構想は既存のネット買取サービスのフローでは不安に思ったり、面倒に感じたりするユーザーが一定層いると考えたことから始まったという。

ウリドキを含めて従来のネット買取サービスでは、まず査定をした後に商品を業者へ送る。最終的な金額の確定は業者が実物を見た後で、双方が合意に至れば金額が振り込まれるというのが通常の流れだ。

「物を送ってから金額が確定するということに不安を感じるユーザーもいる。それならば送る前に金額が確定し先に振り込まれるほうが、ユーザーも安心して使えるから利便性が高いのではと考えた」(木暮氏)

今年の初旬頃からリユース業者の関係者との間でも新しい仕組みの構築について話がでていたそうだが、その間にCASHに始まりメルカリNOWなど市場が盛り上がってきた。「ゲームという商材で即時買取サービスをリリースするとどうなるのか、予想がつかない部分もある」(木暮氏)ということで、まずは1日限定でリリース。ユーザーの反応を見ながらDVDやフィギュアといった領域に拡大していく予定だという。

既存事業で蓄積したデータを活用して適正価格を実現

「ゲームやDVDなどメディア系商材は得意中の得意。今まで蓄積してきたデータを生かして、納得感の高い査定金額を提示できる」——先行するサービスとの違いについて尋ねた際の、木暮氏の回答だ。

写真左がウリドキネット代表取締CEOの木暮康雄氏、右がCTOの益田恭平氏

2014年に設立された同社の主力サービスは、多様なアイテムの買取金額を比較できるウリドキ。さまざまなリユース企業の買取価格を比較した上で査定を申し込み、金額に納得すれば自宅まで集荷に来てもらえることが特徴で、特にゲームを中心としたメディア系商材の買取が活発だ。このウリドキを通じて培ってきた知見やつながりが、PICOLの強みになりえるという。

「日々ゲームに関する膨大な買取価格のデータが更新されていることに加え、ウリドキを通じて買取業者とのつながりも強い。いくら即現金化できるとしても、市場価格とかけ離れた(安い)価格ではユーザーが離れてしまう。市場にもユーザーにも適正な価格を提示できるという点については、これまでやってきた強みを活かせる」(木暮氏)

たとえばメルカリNOWは買い取った商品を運営元のソウゾウがメルカリ内で販売するということだった。一方PICOLの場合は運営が買い取ったあと、リユース業者へ販売する形をとる。

ウリドキの最高買取価格をそのまま提示できるわけではないが、きちんとした価格で買い取ってくれる業者との結びつきも強いからこそ、他社よりも高い査定金額を提示できるというのが木暮氏の見解だ。またバーコードを活用しているため商品の間違いも起きづらいのも、即時買取には相性がよくリスクを抑えられるという。

「ウリドキは少し時間がかかっても高い価格でちゃんと売りたい人が多く、玄人も多いイメージ。一方で慣れていない人や手軽に売りたいという人を取りきれていない部分がある。PICOLでは従来の買取フローでは不安がある人や、手軽に早く金額を確定させたいという人が使いやすいサービスにしていきたい」(木暮氏)

「DELISH KITCHEN」提供のエブリーが約20.6億円を調達、累計調達額は54.3億円に

レシピ動画メディア「DELISH KITCHEN」など複数の動画メディアを展開するエブリーは12月28日、WiL、伊藤忠商事、GMO VenturePartners、Ad Hack Venturesおよび既存株主であるDCM Venturesを引受先とした第三者割当増資により、約20.6億円を調達したことを明らかにした。

同社は2015年の9月創業。2016年6月に約6.6億円、2017年3月に約27億円を調達。今回の調達と合わせて累計の調達額は54.3億円になるという。これまでグロービス・キャピタル・パートナーズ、DBJキャピタル、SBIインベストメント、SMBCベンチャーキャピタル、グローバル・ブレイン、INTAGE Open Innovation Fund、SEGNEL VenturesなどのVCに加え、エウレカ共同創業者の赤坂優氏など複数の個人投資家が出資している。

エブリーではDELISH KITCHENのほか、ライフスタイル動画メディア「KALOS」、ママ向け動画メディア「MAMA DAYS」、ニュース動画メディア「Timeline」という4つのサービスを展開。同社では今回の資金調達を踏まえて、さらなる事業拡大に取り組む。

特にDELISH KITCHENは現在レシピ動画メディア市場を牽引するサービスのひとつに成長している。2016年12月のアプリリースから半年後の2017年5月にには600万DL、同年11月には900万DLを突破。レシピ動画の本数は1万本を超え、アプリおよびSNSアカウントでの動画再生数は月間で5億2000万回以上だという(11月時点)。DELISH KITCHENの詳細については11月に公開されたインフォグラフィックに詳しい。

DELISH KITCHENでは2018年1月末から人気雑誌や書籍、料理研究家によるプレミアムレシピの掲載を開始。出版社や料理研究家とのレシピの共同開発に加えて広告パッケージ展開にも取り組む方針だ。

レシピ動画についてはdelyが提供する「kurashiru(クラシル)」が12月に1000万DLを突破したほか、レシピサイトの雄であるクックパッドも12月から料理動画事業を本格化することを発表。料理動画数No.1を目指し、代官山に料理動画の撮影スタジオ「cookpad studio」をオープンしている。

自転車メディア「FRAME」の自転車創業が資金調達、シェアサイクル時代に向けた新サービスも展開

自転車メディア「FRAME(フレイム)」を提供する自転車創業は12月27日、複数の事業会社および個人投資家2名を引受先とした第三者割当増資により、資金調達を実施したことを明らかにした。関係者によると数千万円規模の調達だという。

今回同社に出資した事業会社は、エボラブルアジア、カヤック、クララオンライン、ノーマディックの4社。各社とは事業間の連携も進めていく方針だ。

自転車創業のメンバー。写真右から2番目が代表取締役CEOの中島大氏

オウンドメディアが月間60万UUの自転車メディアへ成長

自転車創業はその社名の通り自転車に関する事業に取り組むスタートアップだ。最初に手がけたのは駐輪場のAirbnbともいえる、シェアリングエコノミーサービス「PEDALRest」。同サービスでKDDIのインキュベーションプログラムKDDI∞LABOに採択され、プログラム期間中の2013年11月に代表取締役CEO中島大氏とCTO幸龍太郎氏の2人で創業したのが始まりだ。

現在の主力事業は月間60万UUの自転車メディアFRAME。もともとは自転車保険比較サービスの集客目的で立ち上げたオウンドメディアだったが、メディアとして収益化できるほどに成長した。

中島氏によると、既存の自転車系ウェブマガジンはレース層をターゲットにしているものが多いそう。そこでFRAMEではもう少し母数が多いホビー層をターゲットに設定。おすすめの自転車やグッズの紹介、メンテナンス方法などのハウツーコンテンツに加え、グルメや旅行などライフスタイル系のネタも掲載している。

シェアサイクルの普及を見据えた新メディアも

またシェアサイクルが今後普及することも見据えて、8月には新サービス「FRAME OUT」のベータ版をローンチした(現在はスマートフォンからのみアクセス可能)。FRAME OUTはユーザーがまちの見どころやスポットを投稿する自転車よりみちサービス。「シェアサイクルがインフラ化した際に求められるであろう観光コンテンツを、UGC(User Generated Contents)として提供していく」(中島氏)

自転車創業では調達した資金をもとにFRAMEおよびFRAME OUTの成長に向けた運営体制の強化を図るとともに、調達先である事業会社との協業や連携にも取り組む。エボラブルアジアとは同社のOTA(オンライン旅行代理店)サービスとの協業、カヤックとはカマコンなど全国的に派生する地域コミュニティとの連携、クララオンラインとは同社が10月に解説した「シェアバイクラボ」との連携を進めるという。

「まずはFRAMEを自転車ウェブマガジンNo.1にすること、そしてFRAME OUTの正式版リリースとプロダクトマーケットフィットの達成を目指していきたい」(中島氏)

未開拓のペットテック市場に挑むシロップが資金調達、次なる構想はペットライフ・プラットフォーム

ペット関連のサービスを複数展開するシロップは12月27日、福岡銀行系のベンチャーキャピタルであるFFGベンチャービジネスパートナーズ、獣医師の佐藤貴紀氏など複数の個人投資家を割当先とする第三者割当増資を実施。融資と合わせて総額3800万円を調達したことを明らかにした。

シロップのメンバー。写真中央が代表取締役の大久保泰介氏

今回の資金調達は2016年12月に続くもの。前回はサイバーエージェント・ベンチャーズやiSGSインベストメントワークス、エウレカ共同創業者の西川順氏を含む個人投資家から数千万円規模と見られる金額を調達している。

今後は運営体制を強化しながら、飼い主とペットのデータを活用して最適な情報や商品を提供する「ペットライフ・プラットフォーム」を目指していく。

専門メディアとマッチングサービスを展開、単月黒字化も

現在シロップが展開しているのは、ペットの飼い主向けメディア「ペトこと」と保護犬猫と飼いたい人をマッチングする「OMUSUBI(おむすび)」の2つ。

2016年5月リリースのペトことは、ペットの健康管理やしつけなどを中心に飼い主に必要な情報に特化したメディアだ。既存のペットメディアではかわいい動物のコンテンツなどライトな記事も多いが、ペトことの場合は獣医師やトレーナーなど専門家が病気やしつけに関する記事を執筆。

シロップ代表取締役の大久保泰介氏いわく「マニアックだけど、飼い主にとっては絶対に必要な知識」を届けることで差別化を図っている。

もうひとつのOMUSUBIは犬猫の殺処分問題を解決する目的で2016年12月にベータ版をリリース。保護犬猫の飼い主を募集する団体と、飼いたい人をマッチングする。2017年9月からは提供範囲を拡大し登録団体が28団体、累計の会員数が1300名。累計の応募数も200を超えた。

大久保氏の話では2017年12月には黒字化も達成の見通し。「記事や動画制作、リアルイベントやソーシャルグッドのプロモーションなどタイアップ案件に加えアフィリエイトも好調。たとえばペットと泊まれる宿を紹介した記事からは月間総額で1600万円の予約が発生している」(大久保氏)という。

ペット関連事業者だけではなく自動車や住宅メーカーからの関心も高まってきていて、今後はこのような間接企業とのタイアップも拡大していく方針だ。合わせて今後は広告収入以外のマネタイズ手段の開発に向けた取り組むも強化する。それがペトことを軸としたメディアコマースだ。

メディアを軸にコマース事業を開始、サプリなど自社ブランドも

ペトことでは2018年の3月に大幅なリニューアルを実施する予定。スポット検索やQ&Aなどコミュニティとしての機能を搭載するとともに、自社ブランドや外部の商品を購入できるコマース機能を追加。コンテンツを読んで終わりではなく、ユーザーの行動や商品購入までつなげる狙いだ。

すでにペット向けのサプリメント「SUPPY」の開発に着手していて、2017年11月にはクラウドファンディングを通じて約140万円を集めた。2018年1月から国内と東南アジアで一般販売を開始する予定で、今後はサプリに加えてフードやおもちゃなどの開発も検討していくという。

OMUSUBIでもレコメンド機能の開発や団体管理ツールの開発に加えて、保護犬猫だけでなく優良なブリーダーと飼い主をマッチングすることにも取り組む。ブリーダーとのマッチングについては仲介手数料をとることも検討する。

同サービスについてはエウレカ共同創業者の西川氏の存在も大きいそう。エウレカはマッチングサービスの「Pairs」を提供しているが、そこで培った知見も生かしていくことで成長を見込む。

シロップが掲げるペットライフ・プラットフォーム構想

シロップが今後見据えているのは、既存サービスを通じて蓄積されたデータをもとに、個々の犬猫に最適な情報や商品を提供するペットライフ・プラットフォーム「PETOKOTO」の展開だ。OMUSUBIでペットを迎え、ペトことを通じて飼育するといったように、飼い主がペットを迎えてから飼い終わるまでをサポートするプラットフォームを目指していく。

その上でカギを握るのが「オーダーメイドに近い情報や商品を提供すること」であり、そのための基盤となるデータの蓄積だ。

「この業界で起業してから約3年かかって、飼い主にとって必要な情報は属性によって異なることがわかってきた。たとえばトイプードルがかかりやすい病気があるように、犬種などによっても欲しい情報は変わる。年齢やペットの状況、飼い主の生活環境なども加味すると、オーダーメイドに近いレコメンドサービスが必要になる」(大久保氏)

今後の展望としてはまずペトことやOMUSUBIを通じて会員のデータを蓄積していく。ある程度データが溜まった段階で、そのデータを活用して個々に最適化された情報や商品を提供するというのが次のステップだ。コマース事業を本格化するのもこのタイミングになるという。そしてその先には獣医療の改革などペットヘルスケア領域でも事業を展開する。

写真右は株主でもある獣医師の佐藤貴紀氏

大久保氏の話では、獣医療の需要が増えている一方で供給が不足しているのが現状。ひとりの獣医師が幅広い専門領域のニーズに応えるのは難しいことに加え、動物病院の7割が獣医師ひとりで経営しているそう。たとえばAIを活用した画像解析やIoTプラットフォームなど、獣医の負担を減らすサービスにも取り組む方針だ。

海外ではBARKのようにメディアやマッチングプラットフォームで集客をしてコマースで売り上げを作っているペットテックスタートアップもあるが、日本ではまだまだ開拓の余地が残されている領域。ペットヘルスケアとなるとなおさらだ。

「この業界は課題も山積み。事業をきちんと伸ばしながらも発生する売り上げの一部をOMUSUBIの登録団体に寄付するなど、まずは保護犬猫というところからペット産業全体を健全化し、業界を盛り上げるチャレンジをしていきたい」(大久保氏)

人の手のように器用でパワーのあるロボットハンド、サイボーグの実現に向けメルティンが総額2.1億円調達

手がふさがって猫の手も借りたい時、そのうち「ロボットの手」なら増やせるようになるかもしれない。

サイボーグ技術の開発に取り組むメルティン MMI(メルティン)は本日、第三者割当増資と助成金によりシリーズAとして総額2.1億円の資金調達を実施した。引受先はリアルテックファンド、スパークス・グループの運営する未来創世ファンド、日本医療機器開発機構(JOMDD)だ。助成金は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究開発型ベンチャー支援事業/シード期の研究開発型ベンチャーに対する事業化支援(STS)および、東京都の医療機器産業参入促進助成事業から得ている。また、資金調達と同時に内科・循環器科の専門医で元FDA医療機器審査官である内田毅彦氏が同社の取締役に就任したことを発表している。

直感的なロボット操作のための生体信号処理技術

大学発のスタートアップであるメルティンは、生体信号処理技術とロボットハンドの開発を行なっている。まず、生体信号処理については、筋電の正確な読み取りと処理を可能にする技術を開発している。これは腕に貼ったセンサーから生体信号を読み取り、機械学習で分析することで、グー、パー、チョキといった手のアクションを判別できるというものだ。

メルティンでは3つのセンサーを使うだけで正確な読み取りができ、設定の時間も1秒程度しかかからない。生体信号処理の正確性に合わせ、優れたユーザービリティもメルティンの特徴とメルティンの代表取締役を務める粕谷昌宏氏は説明する。将来的には筋電のみならず、神経信号や脳波でもこの生体信号処理技術を応用していく予定だ。

直近では、この生体信号処理技術を医療の現場で役立てていくという。具体的には、医師が患者の診察の際に、診断補助に使えるデバイスを想定している。すでに医療機関と協力して、デバイスの検証を進めている段階と粕谷氏は話す。今回、調達した資金は主にこのデバイスの検証と実用化に充てる予定だという。

ジッパーを開けられるロボットハンド

もう1つ、メルティンでは小型軽量でパワーがあり、高速に動くロボットハンドを開発している。現在、多くの遠隔操作ロボットが開発されているが、実際にロボットで作業を行うとなると、ロボットの手の性能が課題となる。今あるロボットハンドの多くは握力が弱かったり、指の太さから細かい作業がしづらかったりする。例えば、ジッパーを開けたり、パソコンのUSBを引き抜いたりする作業を行うのが難しいと粕谷氏は説明する。メルティンは、ワイヤー駆動のロボットハンドを開発することで、人の手のように卵を掴む柔らかい動きができると同時に、10kgくらいの物なら持ち上げて落とさない力を与えることに成功した。今後半年以内には女性と同程度の握力を実現できるという。

メルティンはこのロボットハンド技術で、例えば宇宙や深海、放射線・化学汚染環境など、人が入るには危険な場所に代わりに入って、修理やメンテナンスまでできるロボットを実現したい考えだ。

生体信号処理とロボットハンド技術を発展させ、彼らが最終的に目指しているのは、義体やサイボーグ技術の実現だ。そして、サイボーグの技術で「人の身体的な不自由をすべて取り払いたい」と粕谷氏は説明する。例えば、筋電や脳波の処理技術とロボットハンドで身体障害者が直感的に義手を扱えたり、健常者でも2本の腕に加えてロボットの腕を操作することで作業を分担できたりするような使い方ができる。さらには、アメリカにある義体に日本からログインして、現地のミーティング参加や作業ができるようになる。ゆくゆくはコミュニケーションに関しても、自分の考えを言語に変換して、声で伝えるのではなく、脳波から全ての情報を読み出して、相手の脳に認識として送信することまでできるようにしたい考えだ。

「自分の創造性に比べて、その創造性を実現できる体を持っていません。人間が持っている創造性というものを、何の不自由もなく発揮できる世界を作りたいと考えています」と粕谷氏はビジョンを語る。

メルティンは2013年7月、CEOの粕谷昌宏氏とCTOの關達也氏、他数名のメンバーで創業した会社だ。2016年1月にリアルテックファンド、グローカリンクより最初の資金調達を実施している。

左からリアルテックファンドの小正瑞季氏、メルティンCEO粕谷昌宏氏、同社CTO關達也氏、 同社取締役内田毅彦氏

植物と暮らしのメディア「LOVEGREEN」のストロボライトが3.5億円調達、新サービスは造園業の“代理店”

植物と暮らしをテーマにしたWebメディア「LOVEGREEN(ラブグリーン)」などを運営するストロボライトは12月25日、ニッセイ・キャピタルを引受先とした第三者割当増資を実施し、総額3億5000万円を調達したと発表した。

写真左より、ストロボライト取締役COOの川上睦夫氏、代表取締役の石塚秀彦氏、執行役員兼MIDORAS事業部長の上野真哉氏

ストロボライトが運営するLOVEGREENは、植物の育成方法や飾り方などの情報を配信するWebメディアだ。現在、同メディアのFacebookページの“いいね!”は約12万、MAUは200万人ほど。1日あたり約10本の記事が毎日掲載されている。

そして、同社が2017年2月に創刊したのが「Botapii(ボタピ)」だ。LOVEGREENと同じく植物をテーマにしたBotapiiは、全国の花屋や園芸店などに設置するフリーペーパーだ。創刊から10ヶ月が経過した現在、発行部数は8万部、設置店は1300店舗を超えた。

このBotapiiがかなりの人気を集めている。同紙の発行日には設置店が店内の商品ディスプレイと最新号を一緒に写した投稿を自主的にアップするなど、Botappiを販促に用いる例が多くあるという。でも、それだけじゃない。なんと、このフリーペーパーはメルカリで転売されていたりもするのだ。

1つだけ注意してほしいのが、これは取材の準備をしているときに僕が偶然に発見したことであり、もちろんストロボライトもこういった転売行為を奨励しているわけではない。それにしても、無料のフリーペーパーが有料で販売されている(しかも売れている)という事実には驚きだ。それだけ人気があるということなのだろう。

造園、園芸業の“代理店”を目指す

ストロボライトはLOVEGREENやBotappiといったメディアの他にも、 個人の庭づくりや植栽、法人のオフィスグリーンなどのプロデュース事業である「MIDOLAS」も展開している。

簡単に言えば、MIDORASは全国に散らばる造園・園芸事業者とユーザーをつなぐサービスだ。とは言っても同サービスはクラウドソーシングのように両者を直接つなぐわけではなく、ユーザーの要望や悩みを聞き取り、それをもとに提携パートナーへと発注するという“代理店”のような役割をもっている。造園業というものは特定の大きなプレイヤーが幅をきかせる業界ではなく、中小事業者や個人事業者が多く存在する業界だ。国土交通省が2017年5月に発表した「建設業許可業者数調査の結果について」によれば、日本全体の造園業者数は2万1000社だが、その約14%にあたる約3000社は個人によって運営されている。また、資本金が1億円以上の事業者は全体のわずか0.7%(159社)だ。

中小事業者はリソースが限られており、専門の営業部隊を持たないことも多い。それによる機会損失も少なくないだろう。MIDORASはそういった中小業者などと提携を結ぶことで、彼らが手を回せない営業やヒアリングといった上流業務を代わりに提供している。

また、MIDORASのような集約された相談窓口があることはユーザーにとっても便利だ。ひとくくりに「造園」といっても、実際には剪定業者や資材業者など様々な専門業者が関わることになる。新築で住宅を建てる場合には住宅施工業者がそれぞれの業者に発注してくれるから良いものの、既存の住宅の庭を手直ししたいと思うと消費者はどこに頼めば良いのか分かりづらかった。一方、MIDORASではストロボライトのスタッフが造園に関するニーズを汲み取り、それに沿って適切な提携パートナーに発注してくれるため、ユーザーは1つの窓口に相談するだけでいい。

2017年6月にサービス開始したMIDORASは現在、関東地区を中心に70の事業者と提携を結んでおり、これまでの受注件数は数十件の規模だという。ストロボライトは、今回調達した資金を利用してMIDORASのサービス強化やそれにともなう人材採用を行う予定だ。

“旅を仕事にする”サービス「SAGOJO」が数千万円を調達、企業や自治体とスキルのある旅人をつなぐ

副業やリモートワークなど働き方が多様化している今なら、スキルと熱量さえあれば“旅”を仕事にすることもできるかもしれない。旅人求人サイトの「SAGOJO」はまさにそれを実現しようとしているサービスだ。

同サービスを提供するSAGOJOは12月22日、エイベックス・ベンチャーズ、アプリ、複数の個人投資家を引受先とする第三者割当増資により資金調達を行ったことを明らかにした。関係者によると数千万規模の調達だという。

SAGOJOは課題を持った企業や自治体と、スキルのある旅人をマッチングする求人プラットフォームだ。記事執筆や写真撮影、営業代行やリサーチといった仕事を旅人に依頼することが可能。旅人が現地を実際に訪れるという点が大きな特徴で、熱量の高いユーザーが集まる。

「サービスのリリースから1年半でユーザー数は7500人、シゴト数は200を超えた。全国・世界を舞台に取材を伴うコンテンツ制作(記事、動画、写真)を中心に旅人の特性やスキルを活かして事業開発を行っている」(SAGOJO代表取締役の新拓也氏)

実際に掲載されている仕事を見てみると、高速バスの比較サイトや旅行メディアを運営するLCLが「高速バスに乗りたくなる記事企画をする旅人」を募集していたり、ecbo cloakが「旅をしながら自分の好きなお店の開拓をしてくれる旅人」を募集していたりとバラエティに富んでいる。

通常の報酬に加えて航空券や宿泊券、旅のアイテムがつくケースもあるなど旅人に対するリターンもユニーク。旅人の仕事管理はSAGOJOがおこなうことで、成果物のクオリティを担保する。

同社では今回の資金調達も踏まえて、今後は案件数の拡大、旅人が納品する成果物の管理体制の強化を進めるほか、新サービスにも取りかかる予定だ。「『旅×シゴト』を志す人たちの能力開発を支援する教育プログラムや、ユーザー特性を活かしたB向け新規サービスの提供に向けた準備を進めていく」(新氏)

また調達先のエイベックスとはグループ会社各社と共同で、旅行を含めた各種商品の企画やSAGOJOを活用した新しいアーティスト戦略、エイベックス社員のスキル活用などに取り組む。アプリとは、同社が運営するリゾートバイト求人サイト「はたらくどっとこむ」と連携した案件の拡充を行っていくという。

SAGOJOは代表取締役の新氏がWeb制作会社のLIGにて企業のオウンドメディア運営やコンテンツ制作を担当したのち、2015年12月に創業したスタートアップだ。