次期macOSがApertureにとどめを刺す

Apertureは、かつて写真を編集するすばらしいアプリケーションだった。しかし、Apple(アップル)がサポートしなくなってから、もう何年も経つ。それでも、もし必要なら、まだ最新のMac上で動かすことができる。しかし、それももう長くは続かないと、Appleは発表した。

MacRumorsが指摘したところによれば、Apertureのサポートページ(英語版)でAppleは、「技術的な理由により、ApertureはMojaveより後のmacOSの将来のバージョンでは動作しません」と説明している。

この「技術的な理由」が正確に何を指すかは、Appleのみが知るところだが、想像する範囲では、さまざまなファイル構造、アーキテクチャ、ライブラリなど、Apertureが依存している部分が、Appleが次期OSに加える変更によって、もはや互換性を保てなくなるのだろう。確かに、Apertureが2014年以降放置されてから、macOSはかなり進化してきている。それでもいまだに動作することの方が驚きなのだ。

何らかの理由で、どうしてもApertureを使わなければならないのなら、Mojaveの動くマシンを確保しておけばいい。しかし正直なところ、もはやそうする理由はまずないだろう。Apertureは、もうずっと前から、LightroomやCapture Oneといったアプリに遅れを取ってきた。そしてもちろん、スマホ用の写真撮影アプリにさえ見劣りすることもある。Apple純正の「写真」アプリは、Apertureに比ぶべくもないが、部分的には共通の機能もある。

そこでAppleは、Apertureの写真ライブラリを、Lightroom Classic、または「写真」に移行させるように勧めている。前者は、それ専用のインポートツールを備えているし、後者は最初に起動する際に古い写真ライブラリを自動的にインポートするようになっている。もしまだインポートできていないなら、「写真」を起動する際に「option」キーを押したままにしていれば、読み込むライブラリを手動で追加できるはずだ。

ただし注意すべきことがある。Apertureで加えた調整や、その他の設定は、インポートする際に引き継がれなかったり、インポート後には固定されてしまうかもしれない。もしずっと昔に撮った写真に加えた編集で、もとに戻しておきたいものがあれば、インポートする前にやっておいた方がいい。

優れた製品が、ついに完全に消えてしまうのを見るのは悲しいものだ。しかしその涙はとっくに流し終えている。私自身はLightroomに移行して、後を振り返ることはしなかった。個人的には、Appleがプロ、あるいはプロ級のユーザーをもっと大事にしてくれても良いと思うのだが、私がそう思っても無駄。Appleにはその気はなさそうだから。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

令和元年5月1日現在の各OS、主要アプリの新元号対応まとめ

2019年5月1日、新天皇が即位し、日本の元号が平成から令和に変わった。これに伴い、PCやスマートフォンのOSやアプリで新元号への対応が始まっている。2019年5月1日(令和元年5月1日)現在の対応状況を以下にまとめた。

    • Windows
      直近のアップデートで対応済み。
    • macOS
      現時点は未対応だが、一般ユーザーも登録すれば利用可能なパブリックベータや開発者向けのデベロッパー版はすでに令和対応になっているようだ。近い将来のアップデートで対応するものと考えられる。
    • iOS
      macOSと同様に現時点は未対応だが、一般ユーザーも登録すれば利用可能なパブリックベータや開発者向けのデベロッパー版はすでに令和対応になっているようだ。こちらも近い将来のアップデートで対応するものと考えられる。
    • Android
      OS自体にそもそも日本の元号を表示する機能がない。サードパーティーのアプリで令和の表示に対応済みのものがある。
    • Office 365
      Windows版、macOS版、iOS版、Android版とも、直近のアップデートで対応済み。

      左がiOS版、右がAndroid版

      ただし、「令和元年」とはならず「令和1年」と表示されてしまうが、令和元年に変更する方法もある。具体的には、セルの表示形式を「ユーザー定義」に変更して、新たに「[<=43585][$-ja-JP]ggge”年”m”月”d”日”;[>=43831]ggge”年”m”月”d”日”;ggg”元年”m”月”d”日”」という定義文を入力・設定すればいい。

    • Gmail
      そもそも日本の元号を表示する機能はない。
    • Googleカレンダー
      そもそも日本の元号を表示する機能はないが、Googleが配布している日本の祝日カレンダーでは、5月1日は「天皇即位の日」、10月22日は「即位礼正殿の儀の行われる日」、令和2年の2月23日の「天皇誕生日」も登録済みだ。
    • カレンダー(macOS、iOS)
      和暦表示はシステムの設定を反映するため、現時点では平成31年5月1日と表示されるが、アップルが配布している日本の祝日カレンダーはGoogleカレンダーと同様に特別に祝日になる5月1日、10月22日、新しく祝日になる2月23日などが登録済みだ。

MirantisのModel Designerツールでオンプレミスクラウドの構成を楽に

OpenStackの初期を担った主要企業として記憶に残るMirantisは米国時間4月29日、企業がオンプレミスのクラウドの構築とデプロイを容易にできるためのサービスを立ち上げた。

そのMirantis Model Designerと呼ばれるサービスによりITのオペレーターたちは、自分たちのクラウドを容易にカスタマイズできる。来月はOpenStackのクラウド、その後はKubernetesのクラスターに関し、それらのデプロイのための構成の作成を支援する。

従来の構成作業は、大量のYAMLファイルを手書きすることを要し、間違いも起きやすいので、それが好きだというデベロッパーはまずいない。

でもそれがまさに、Infrastructure as Codeモデルの中核だ。しかしModel Designerは、MirantisがOpenStack用の人気の高いインストーラーFuelから学んだことを拡張している。Mirantisの協同ファウンダーでCMOのBoris Renskiが今日の発表の前にデモしてくれたところによると、Model Designerはユーザーに提示するGUIで構成を一歩々々進めていく。

うまいな、と思ったのは、その各ステップに難度のレベルがあって、設定をどれだけカスタマイズしたいかによってユーザーが選ぶ。レベルはDoomを参考にしたとあって、「I’m too young to die」とか「Ultraviolence」などがあるが、なぜか「Nightmare!」はない(Infrastructure as Code参考記事)。

Model Designerはクセの強いツールだが、ユーザーの自由度もかなりある。構成の段階が終わったらMirantisはその設定を実際にJenkinsのオートメーションサーバーで動かして、その構成を検証する。

Renskiによると、その段階では各プラットホームの特異性に十分対応していないが、ファイルが正しいことは確証される。そのあと、このツールはユーザーに構成ファイルを提供し、OpenStackのクラウドの実際のデプロイは、それらのファイルとMirantisからダウンロードできる中核的なバイナリを一緒にしてオンプレミスのクラウドに持って行き、コマンドラインのスクリプトを実行するだけだ。それが、この工程のすべてである。

そこからはMirantisのDrive Trainツールにバトンが渡ってクラウドをプロビジョニングする。アップグレードは、以上のプロセスを繰り返すだけだ。

Mirantisの収益源はサポートで、それにはベーシックから顧客のクラウドの完全管理まで何段階かある。Model Designerは多くの企業に同社の存在を知ってもらうための方法の一環であり、そうやって同社のツールを使ってもらえるようになれば、次はそのサポートという算段だ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

3Dモデリングカーネルのスタートアップが11億円超を調達、Autodeskの元CEOも支援

私たちのほとんどは、幾何学的モデリングカーネル(またはソリッドモデリングカーネル)が、どのようなものかを知らないが、どんなCADもしくはデザインアプリケーションも、形状を作るためにそれを内部で用いている。それは、CADデザインの数学を行ってくれる、基底にあるインフラストラクチャなのだ。対象に穴を開けたり、線を組み合わせたり、角を削るためには新しい対象の縁の曲線を計算しなければならないが、こうした計算は洗練されたアルゴリズムの支援なしには行いたくないものだ。モデリングカーネルとは、製品モデリングを生み出すための3Dソリッドオブジェクトを定義したり保存したりするための、コアとなる数学関数を集めたライブラリであり、それを使うことで製品モデリングが比較的円滑なものとなる。

興味深いことに、1つのカーネルを構築するためには多大な時間を必要とする(数学者や博士、およびコンピュータ科学者の育成に時間がかかるのはもちろんだが)ために、最後に構築された市販の幾何学カーネルたちは、主に80年代の終わりから90年代の始めにかけて登場したものだ。中でも最も人気があるのは、3D ACISモデラー(ACIS)である。これはSpatial Corporationによって開発され、現在はフランスの3D設計およびエンジニアリングソフトウェア大手DassaultSystèmesが所有している、幾何学的モデリングカーネルである。このカーネルは、CADから3Dアニメーション、そして造船まで、あらゆる業界で使用されている。

もう1つはParasolidだ。これはもともとShape Data Limitedという会社によって開発され、現在はSiemensによって所有されている幾何学的モデリングカーネルだが、3D CGソフトウェア製品に組み込むために、他社にライセンスが行われている。

2002年にAutodeskがACISから枝分かれする形でShapeManagerというカーネルを作り始めたものの(同時期にはPTCのGraniteやDassaultのCGMなどもあった)、何年にもわたってACISとParasolidの2つが実質的に市場を支配していた。このことでDassaultとSiemensは500億ドルにも達する市場を両者で分け合い、そのライセンスを使い手には厄介な条件の下で高価に提供してきた。

だが現在、創業以来独自カーネルの開発に取り組んできた、シアトルに本拠を置く創業4年のDyndriteという会社が、その状況を変えようとしている。同社は、いまや製造用ハードウェアの能力がソフトウェアの能力を追い越していることを指摘しつつ、世界が同社のソフトウェアを必要としているのだと主張している。それは最新の製造、最新のコンピューターアーキテクチャ、そして最新のデザインニーズを意識したカーネルである。

「(他のスタートアップが頭を悩ませてきたものの)大部分は、(巨大な2社の)後追いを追求したことから始まっています。しかし30年の歴史をもつ製品と同じ機能を全て持つものをスタートアップが構築するのはとても難しいことです」と語るのはDyndriteの26歳の創業者兼CEOのハーシ・ギョール(Harshil Goel)氏だ(彼はUCバークレイから1つの数学、2つの機械工学に関連する学位を取得している)。

Dyndriteは「別の方針をとりました」と彼は付け加えた。そのカーネルは3Dプリンティングの新しい世界のために構築されてる。より具体的には、高次ジオメトリを含む、現在あるすべてのジオメトリタイプを表現することが可能だという。またラティス、サポート、スライス生成などの特定の加法的な計算も扱うことができる。ギョール氏によれば、このカーネルを用いることで、数日もしくは数時間かかっていた処理時間を数分に、場合によっては数秒までに削減することができるのだという。

Dyndriteが突破口を開けるかどうかはまだわからない。しかし初期の成果はとても有望なもののように見える。この15人の会社は、GoogleのAI重視の投資ファンドであるGradient Venturesが主導したシリーズAラウンドで、1000万ドル強の資金を調達した(同ファンドはシードファンドでも資金提供を行っている)。このラウンドに参加した他の投資家には、Cota Capitalや、Amplify Ventures、The House Fund、FlexportのCEOであるライアン・ピーターセン(Ryan Petersen)氏、Autodeskの元CEOであるカール・バス(Carl Bass)氏などの初期からの投資家たちも含まれている。バス氏とギョール氏の関係は9年前に遡る古くからのものだ。

彼らが出会ったのはギョール氏がバークレー校の新入生で、バス氏が同大学の学生だったときだが、Engineers Without Borders(国境なき技術者会議)という集まりで他の学生たちと話したのが始まりだった。バス氏に専攻が何かと尋ねられて、ギョール氏は自分が純粋数学を専攻していて、いつもマシン室に入り浸っていると答えた。数年後、ギョール氏はバス氏に作っているもののデモを行った。そのときのバス氏の言葉が「投資したほうがいいよね?」だった。それ以来、彼は自分のメンターなのだと、ギョール氏は語る。ギョール氏は彼と似たようなキャリアを辿ることを熱望し、同じくらい楽しんで過ごしたいと熱望しているのだと言う。「カールは、全てをぶち壊すことで、最悪のエンドユーザーの役割を果たしたいと思っているのです」とギョール氏は笑いながら語った。

現在目指している方向に関しては、Dyndriteは今月初めに業界イベントで、その技術を披露したばかりだ。また同社は、「 開発者協議会 」もローンチした。これはOEMたちがDyndriteのカーネルと加算ツールキットを活用する際に必要となる、ツール、リソース、その他のものを提供するプログラムだ。その開始時のメンバーに含まれているのは、HP、Nvidia、EOS、およびAconity3Dなどだ。

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(翻訳:sako)

アップルがスクリーンタイム監視アプリ削除の正当性を主張

Apple(アップル)は、App Storeから一部のペアレンタルコントロールアプリを削除したことに関して新たな声明を発表し、正当性を主張した。

同社は、親が子供のスクリーンタイムをより強くコントロールすることを謳った一部のアプリを削除したとして、非難を浴びているが、Appleはそれらのアプリがプライバシーに立ち入りすぎるテクノロジーを利用しているためだと説明した。

「最近当社はいくつかのペアレンタルコントロールアプリをApp Storeから削除したが、理由は単純であり、それらのアプリユーザーのプライバシーとセキュリティーを危険に曝すからだ。なぜ、どうやってこれが起きたのかを理解することが重要だ」と同社は声明で述べた。

問題の核心は、同社がApp Storeから削除したペアレンタルコントロールアプリが使用していたモバイルデバイス管理(MDM)技術にある、と同社は言った。

このデバイス管理ツールは、端末ユーザーの位置情報、利用しているアプリ、メールアカウント、カメラの許可状況、閲覧履歴などの制御とアクセスをサードパーティーに与える。

「当社は非エンタープライズ・デベロッパーによるMDMの利用について2017年に調査を始め、2017年中頃にその結果に沿ってガイドラインを改定した」と同社は言った。

Appleは、企業が社有デバイスや内部データを監視する目的でこの技術を使うことは正当な利用方法であることを認めているが、パーソナルな消費者向けアプリがユーザーの端末にMDMをインストールすることは、明確なApp Storeポリシー違反であると言った。

Appleは該当するアプリデベロッパーに対してApp Storeガイドラインに違反している旨を知らせ、App Storeから削除されないために30日以内にアップデートを提出するように伝えた。

Appleがスクリーンタイムアプリに関してデベロッパーに警告していたことは昨年12月にTCが報じている

「何社かのデベロッパーはポリシーに沿うようアプリを改訂するアップデートを発行した」とAppleは声明で言った。「それ以外のアプリはApp Storeから削除された」

Appleが目を光らせるサードパーティ製スクリーンタイムアプリ

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

AdobeがIllustratorの新しいカラーパレットを実験中

米国時間4月26日、Adobeはバルセロナで行われたOFFFフェスティバルで、ベクター描画アプリケーションIllustratorの実験的機能を披露した。基本的な狙いは、Illustratorユーザーが写真などの画像をベースにしたカラーパレットを簡単に試せるようにすることだ。画像から作られたリアル世界のカラーパレットを使うことで、既存の描画作品を使って驚くほど簡単に新たなバリエーションを加えることができる。

ただし現時点では、これはAdobeがいうところの「チラ見せ」段階にありで、製品化にはまだ至っていない機能だ。

各機能は、最終的に対応するCreative Cloudアプリの一部になったりならなかったりする。しかしこの実験はかなりわかりやすいので、次期バージョンのIllustratorに入らなければむしろ驚くだろう。カラーパレットの抽出自体はさほど難しいものではない。実際同社は、Adobe Colorというこれを行うためだけのスタンドアロン・ツールをすでに提供している。ポイントはそのパレットを既存の作品にどう当てはめるかだ。現在どの程度うまくいっているかを説明するのは難しいが、少なくともAdobeのデモを見る限り、かなりシームレスな体験だった。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

フィットネストラッキングアプリGoogle FitがiOSにやってきた

米国時間4月24日、Googleは2014年からリリースされているフィットネストラッキングアプリ「Google Fit」が、iOSプラットフォームへと進出したと発表した。

かなりの時間をおいてのiOSへの移植となったGoogle Fit。これまで同アプリのデータをiPhoneで取得するには、Wear OSアプリの特別なセクションを利用する必要があった。またWear OSデバイスなしには、このセクションは利用できなかったのだ。

もしAndroid版のGoogle Fitを利用したことがあれば、iOS版もかなり類似していることに気づくだろう。アプリではMove Minutes(通常の運動)とHeart Point(ハードな運動)がフォーカスされており、また運動に応じた異なるアクティビティをピックアップすることもできる。さらに、アプリはSleep CycleやNike Run Club、HeadspaceなどのApple Healthと連係したアプリと同期させることもできる。

Gooleのスポークスマンによれば、実際のところすべての運動のデータはApple(アップル)の「ヘルスケア」アプリか、Wear OS搭載スマートウォッチから取得されるそうだ。

Apple Health自体で運動のデータは取得できるので、どれだけのiOSユーザーがGoogle Fitに乗り換えるのかは不明だ。それでも、Googleの競合プラットフォームにもサービスを展開する方針には好感が持てる。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

誰でも簡単に音声アプリが作れるVoiceflowが約4億円を調達

音声アプリの市場がオープンになった。AmazonのAlexaだけでも、今年の初めの時点で8万種類のスキルが登場している。それでも、米国内のスマートスピーカーの普及率がクリティカルマスに達した今、成長が鈍化する兆候はほとんど見られない。この流れに乗って、AlexaとGoogleアシスタント用音声アプリの開発を楽にするスタートアップVoiceflowは300万ドル(約3億3550万円)のシードラウンド投資を獲得した。

このラウンドは、True Venturesが主導し、Product Huntの創設者Ryan Hoover氏、Eventbriteの創設者Kevin Hartz氏、InVisionの創設者Clark Valberg氏などが参加している。同社は、プレシードですでに50万ドル(約3355万円)を調達している。

音声アプリ開発のためのこの協働プラットフォームのアイデアは、音声アプリを開発していた体験から直接得られたものだと、VoiceflowのCEOで共同創設者のBraden Ream氏は説明している。

Ream氏の他、Tyler Han氏、Michael Hood氏、Andrew Lawrence氏からなるこのチームは、まずAlexa用に、子ども向けのインタラクティブなお話アプリ『Storyflow』を開発していた。

ところが、この自分で冒険の筋書きを選ぶゲームアプリのための話のライブラリーを構築しようとしたところ、ユーザーベースに対応できる十分な速度でプロセスを拡大できないことが判明した。つまり、すべての枝道を含むストーリーボードを作るのに時間がかかりすぎるのだ。

「ある時点で、ドラッグ・アンド・ドロップで作るというアイデアが浮かびました」とReam氏は話す。「フローチャートとスクリプトと実際のコードが書けたら有り難い。さらにそのすべてをワンステップで行えたらと、私は考えました。そうして、今ではVoiceflowとして知られているものの初期の形が、試行錯誤によって作られていったのです。それは部内用のツールでした」とのこと。「なにせ私たちはナードなもので、そのプラットフォームをもっといいものにしたいと、論理演算や変数を追加し、モジュラー化していきました」

Storyflowのもともとの計画は、誰でも物語が簡単に作れるようになる「声のYouTube」を作ることだった。

しかし、彼らが開発したものをStoryflowを愛するユーザーたちが知ると、それを使って、インタラクティブストーリーだけでなく、その他の音声アプリも自分で作りたいという要望が彼らから湧き上がった。

「そのとき、私たちは閃きました」とReam氏は振り返る。「これは音声アプリ開発の中心的なプラットフォームになれる。子ども向けのインタラクティブ・ストーリーだけのものではないと。方向転換はじつに簡単でした」と彼は言う。「私たちがやったのは、名前をStoryflowからVoiceflowに変えるだけでした」

このプラットフォームが正式に公開されたのは12月だが、すでに7500件あまりの利用者が、このツールで開発した音声アプリを250本ほど発表している。

Voiceflowは、コーディングの知識がない人でも使えるよう、技術的なものを感じさせないデザインになっている。たとえば、基本のブロックのタイプは「speak」(話す)と「choice」(選ぶ)という2つだけだ。画面上でブロックをドラッグ&ドロップでつなぎ合わせれば、アプリの流れが出来上がる。技術に詳しいユーザーなら、高度な開発画面に切り替えれば論理演算や変数を使うこともできる。それでも、完全に視覚化されている。

企業ユーザー向けに、Voiceflowの中にAPIブロックも用意されているため、その企業の独自のAPIを組み込んだ音声アプリの開発も可能だ。

さらに、この製品の面白いところはもうひとつある。協働機能だ。Voiceflowには無料の個人向けモデルと、チームによる音声アプリの開発に重点を置いた商用モデルがある。月額29ドルで利用でき、たとえば言語学者や音声ユーザーインターフェイスのデザイナーと開発者など、多くのスタッフを抱えて音声を使った仕事をしている職場に、みんながひとつのボードで作業でき、プロジェクトが共有でき、アセットのやりとりが簡単に行える環境が提供される。

Voiceflowは、今回のシード投資を使って技術者を増やし、プラットフォームの開発を続ける予定だ。より優れた、より人間的な音声アプリを、このプラットフォームで利用者に開発してもらうことが、彼らの長期的な目標だ。

「当面の問題は、Googleから資料や最良の利用方法が提示されていて、Alexaの側にも同様に用意されているのに、明確な業界標準がないことです。しかも、手に取れる具体的な実例がひとつもありません。または、それを開発に応用する簡単な手段がないのです」とReam氏は説明する。「もし私たちが、新たに1万人の音声ユーザーインターフェイスのデザイナーを生み出すことができれば、彼らをトレーニングしたり、簡単にアクセスできて、みんなで協働できるプラットフォームを提供することができます。会話の質が飛躍的に向上するはずです」。

その観点に立って、Voiceflowでは、Voiceflow Universityというプログラムを立ち上げた。現在はそこでチュートリアル動画を公開しているが、将来は標準化したトレーニングコースを提供する予定だ。

動画の他にVoiceflowには、Facebookを通じたユーザーコミュニティのネットワークがある。そこでは、2500名以上の開発者、言語学者、教育者、デザイナー、起業家などが、音声アプリのデザインや開発方法について活発に論議を交わしている。

こうしたVoiceflowとユーザーベースとの相互関係は、True VenturesのTony Conradに対して重要なセールスポイントとなった。

「ミーティング(ピッチ)に出席した後、私は少しばかり探ってみました。そして大変に感銘を受けたのは、開発者コミュニティの関わりの深さでした。他では見られないことです。このプラットフォームの最大にして唯一の差別化要素は、Bradenのチームと、コミュニティとのエンゲージメントの強さです」とConradは言う。「初期のWordPressを思い起こしました」。

Voiceflowは、最近までもうひとつの視覚化デザインツールInvocableと連携していたが、Voiceflowのプラットフォームへのユーザーの統合を助ける目的で、Invocableはサービスをシャットダウンした。

ここには教訓が含まれているようだ。Invocabeは、ユーザーに別れを告げたブログ記事で、人々はスマートスピーカーを、いつまでも音楽やニュースやリマインダーや単純なコマンドを中心に使い続けていると指摘している。また、自然言語処理と自然言語理解は、高品質な音声アプリを支えるまでには進歩していないとも書いている。その日はいずれやって来るに違いない。だがそれまでの間、一般消費者に広く受容される時期に先んじて、音声アプリ開発市場を支える最適なプラットフォームで勝負に出ようとすれば、そのタイミングを見極める必要がある。

トロントに拠点を置くVoiceflowは、現在12人のチームで運営されている。彼らは拡大を目指している。

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(翻訳:金井哲夫)

子供にスマホの使い過ぎを諭すセサミストリートの公共広告

デバイス依存からは誰も逃れられない。アップルのCEOであるティム・クック氏でさえ例外ではないのだ。とりわけ、スマホやタブレットを使っている子供たちは、アプリやゲームの誘惑に対する抵抗力が弱い。常にログインし続けて、すぐに返事を返さなければならないという強迫観念を抱いている子も多い。Sesame Workshopと、非営利の児童擁護団体のCommon Senseによる公共広告は、子供によるモバイルデバイスの不健全な使い方に対処することを目指している。夕食のテーブルにデバイスを持ち込む、という典型的な問題に焦点を当てたものだ。

この、#DeviceFreeDinnerキャンペーンが実施されたのは今回が初めてではない。去年までは「気もそぞろなお父さん」としてWill Ferrell氏が登場し、スマホを食卓に持ち込んで家族の会話を無視する様を演じていた。

今年、Common SenseはSesame Workshopと提携して、そのキャラクタを新しい公共広告に登場させている。そう、「セサミストリート」のマペットが、デバイスを片付けて健全なスマホの使い方の手本を示そうというのだ。

スマホは引き出しの中にしまい、タブレットは棚に置き、他のデバイスはハンドバッグに入れる。それから、そう、マペットによってはゴミ箱に投げ込んだり、カボチャの中に隠したりもする。

その後、マペットたちはテーブルを囲んで集まり、楽しそうに会話を始める。しかし、クッキーモンスターだけは、まだスマホでメッセージを打っていた。最後にはみんなの非難を受けて、スマホを食べてしまうことになる。

Common Senseの説明によれば、これによって、メディアのバランスに関する意識を高め、家族が多くの時間を一緒に過ごすことを奨励する。

また現状では、0〜8歳の子供の3分の1が「頻繁に」モバイルデバイスを使用しているという。しかし、デバイスを使うのをやめる時間を作れば、家庭が生活の中心となって栄養状態が改善され、学校での問題も少なくなると、Common Senseは主張する。

その際、電話から手を放して置くだけではだめだという。食卓の上にスマホを置かないようにする必要がある。ある研究によれば、テーブルの上にスマホが乗っているだけでも会話の質が損なわれることが分かっている。

このようにCommon Senseは、子供たちと家族のために多くの情報を提供しているが、それより興味を惹かれるのは、Sesame Workshopがこの新しい公共広告に関わっていることだ。特に、最近の同社とアップルとの関係を考えればなおさらだ。

Sesame Workshopがプロデュースした新しいショーも、間もなく開始されるアップルのストリーミングサービスで放送される。こちらは子供たちにプログラミングの基本を教えるもの。アップルが、自社のプログラミング言語Swiftを、次の世代のプログラマーの手に渡そうという計画の一環だ。

公共広告では子供たちにスマホを片付けようと言っているのと同じ「セサミストリート」のキャラクタが、こちらのショーでは就学前の児童にコーディングの楽しさを売り込もうとするわけだ。

プログラミングに注力したアップルの子供向けのショーと、今回の公共広告が、同じキャラクタを共有しているのは、デバイスを使う子どもたちを取りまく複雑な問題を、みごとに象徴している。親たちは、一方で子供たちにSTEM、つまり理系の科目に強くなってもらいたいと考えている。そのためには、子どもたちは日常的にコンピュータや、その他のデバイスを使って、新しいスキルを学習する必要がある。たとえば、MITが開発したScratchでのコーディングや、Minecraft上での開発などだ。また一方では、子どもたちにデバイスを与えると、あっという間に中毒になってしまうのも目にしている。

親たちにとっての本当の問題は、おそらく、子どもたちにデバイスを与えるべきか否か、ということだろう。つまり、かつて砂糖をたっぷりまぶしたコーンフレークが避けられるようになったのと同様、自分の子供からはデバイスを取り上げるハイテク企業の億万長者シリコンバレーに住む親たちの真似をすべきかどうか、ということになる。

Sesame Workshopは、この問題について、どちらの側につくのか、態度をはっきりさせるべきではないだろうか。片や、デバイス依存の問題に関する責任を放棄しようとしている億万長者の企業と手を組みながら、もう片方では子供たちのデバイス依存の問題を取り上げる公共広告を放映するという、どっちつかずの態度はいかがなものか。

もしかすると、Sesame Workshop自身も、われわれと同じように、どこに線を引くべきかについて混乱しているのかもしれない。

米国時間の4月23日から、この「セサミストリート」をテーマにした新しい公共広告が、NBC、Fox、Xfinity、Comcast、Charter、Cox、National Geographic、NCM、PBS、Univision、Telemundo、HITN、それからXfinity Latinoといったネットワークとプラットフォームに配信される。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

自動車データ活用のSmartcarがライバルのOtonomoをAPIの盗用で提訴

手段を選ばないコピーは、テック業界ではありふれている。Snapchatに聞いてみるといいだろう。とはいえ通常は文字通りのコピーではなく、より概念的なものである。しかし自動車のAPIスタートアップであるSmartcarは、ライバルのOtonomoがSmartcarのAPI文書を、コピー&ペーストでパクったと主張している。申し立てによれば元の文書のタイポ(ミススペル)やコード中でランダムに生成された文字列などが一致するほど広範囲に盗用が行われているという。その知的財産に対する盗用を詳細に述べた、一連のスクリーンショットが公開されている

SmartcarのCEOであるサハス・カッタ(Sahas Katta)氏は、「彼らの従業員の何人かが、私たちの製品を、体系的に使用しているという証拠を握っています。それによれば私たちの製品をフォーマットと機能の両面からコピーしようとしているようです」。スタートアップの広報担当車は筆者に対してこのように述べた「知的財産侵害行為停止通知書を、今朝Otonomoに対して送付したばかりです。その中にはさまざまな違反行為や違法行為に関する点が明記されています」。

Otonomoが取るに足らないスタートアップではないことを考えると、この告発は厄介なものだ。イスラエルを本拠地とするOtonomoは、2015年の創業以来5000万ドル以上を調達しており、その投資家には自動車部品大手のAptiv(以前のDelphi)や一流のVC企業Bessemer Ventures Partnersなどが含まれている。OtonomoのCMOであるリサ・ジョイ(Lisa Joy)氏は、この申し立てに応えて、調査は行うがやましい行動はとっていないことを確信しているという、以下のような声明を発表した。

Otonomoは、自身の知的財産と特許に裏打ちされた、完全にユニークな製品を提供していることに誇りを持っています。私たちはSmartcarからの質問を真剣に受け止め調査を行っていますが、私たちは現時点では厳格で誠実な、私たちの行動基準が破られていないことを確信しています。調査により問題が明らかになった場合には、直ちにそれに対処するための必要な措置を講じます。

どちらのスタートアップも、車のデータをアプリ開発者と結び付けるAPIレイヤーを開発しようとしているため、両社とも車のデータを検索、アンロック、または利用するための製品を開発することができる。マウンテンビューを拠点とする従業員20人のSmartcarは、Andreessen HorowitzNEAから1200万ドルを調達している。誰がこの市場を勝ち取るかを決定する主な要因は、どちらのプラットフォームが、開発者がAPIを統合するのを最も簡単にする最高のドキュメンテーションを提供できるかというものだ。

「数日前、私たちはOtonomoの公に入手可能なAPIドキュメントに、たまたま出会いました。それを読み進めるにつれて、私たちはすぐに何かがおかしいことに気が付きました。見慣れたもののような気がしたのです。それは奇妙な感覚でした。それもその筈、私たちが書いたものだったからです」とSmartcarはそのブログポストの中で説明している。「Smartcarのドキュメントと、何となく似ている点がいくつか見つかっただけではありません。Otonomoのドキュメントは私たちのものを体系的に書き写したものなのです、全体構造からコードサンプル、そしてタイポに至るまで」。

上の方の図では、比較のために、左にSmartcar、右にOtonomoのAPIドキュメントが示されている。これを見るとOtonomoはほぼ同様のフォーマットを使い、サンプルの中でランダムに生成されたID(ハイライト済み)もSmartcarと全く同じものである。その他の例では、見かけ上同一のコード文字列やスニペットが示されている。

Smartcarの創業者兼CEOのサハス・カッタ氏

Otonomoは、彼らのドキュメントのウェブサイト(docs.otonomo.io)を閉鎖したが、TechCrunchがArchive.orgWayback Machineを使って参照したところ、2019年4月5日におけるOtonomoサイトの該当部分の内容は、20188Smartcarが公開したドキュメントとまったく同じものだった。

ここにはSmartcarの「it will returned here」というタイポと、ランダムに生成されたサンプルコードのプレースホルダー「4a1b01e5-0497-417c-a30e-6df6ba33ba46」が含まれているが、どちらもOtonomoのドキュメントのWayback Machineから引き出したコピーの中に含まれていた。このタイポは、今でも公開されているこのバージョンのOtonomoのドキュメントでは修正されているが、コード中の文字列は残されたままである。

「彼らが偶然にランダムに生成された同じ文字列に到達するのは、おそらく100京分の1位の確率でしょう」とSmartcarのカッタ氏はTechCrunchに語る。

にもかかわららず奇妙なことに、OtonomoのCMOはTechCrunchに対して「Smartcarがブログに投稿した資料はすべて公にアクセス可能な文書なので、すべてパブリックドメインの内容なのです」と述べている。だがそれは真実ではない、とカッタ氏は主張する。世に言う「パブリックドメイン」の定義とは、著作権対象外の公開されたコンテンツのことである。「もちろん私たちはそれをパブリックドメインのものとは考えていません…一番下には正しい著作権表示が行われています。私たちの製品は私たちの知的財産です。TwilioやStripeのAPIドキュメントのように、それは公開されていて誰でもアクセス可能ですが、それは権利保護されているのです」。

Otonomoのリサ・ジョイ氏は、彼女のスタートアップが現在シリーズCの資金調達中であると述べている。伝えられるところでは、既に韓国のエネルギーならびにテレコムホールディングスの巨人SKから1000万ドルを調達しているらしい。「私たちは現在資金調達ラウンドの最中です。ラウンドはまだ終了していません」と彼女は私に語った。だがもし、OtonomoがどうやらそのAPIドキュメントをコピーしたらしいということになった場合には、それは開発者に対する名声を傷付け、おそらく資金調達ラウンドを危険に晒しかねないことになるだろう。

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(翻訳:sako)

FacebookがChromeブラウザのAPIに初めて貢献

Facebookは米国時間4月22日、GoogleのChromeブラウザのAPIに対して、初めて大きな貢献を果たしたことを発表した。

Facebookのチームは、Googleと共同で、ブラウザにコードを提供するためのAPIプロポーザルを作成した。これはFacebookとしては初めてのこと。このコードは、ウェブ上のツールや標準に関するFacebookの他の多くの仕事と同様に、ユーザー体験をスムーズかつ高速にすることを目指したもの。このAPIの場合、ユーザーがクリック、またはキーを操作してから、ブラウザが応答するまでの時間を短縮する。

この新しいシステムの最初の試験的な実装はChrome 74とともにリリースされる予定だ。

一般的に、ブラウザのJavaScriptエンジンは、コードの実行を制御している。そして、応答しなければならない入力が保留になっていないかどうかを確認するため、一瞬コードの実行を停止することもある。マルチコアのマシンで動作する最新のJavaScriptエンジンも、基本的にはシングルスレッドで動作する。そのため、実際にはエンジンは1度に1つのことしか実行できない。そこで、入力イベントを確認しつつ、コードの実行をどのように組み合わせるかということがカギとなる。

「他の多くのサイトと同様に、私たちもJavaScriptを小さなブロックに分割することでこの問題に対処しています。ページがロードされている間も、若干のJavaScriptを実行し、その後にブラウザに制御を戻すのです」と、Facebookチームは発表の中で説明している。「ブラウザは、そこで入力イベントのキューをチェックして、ページに通知する必要のあるものがあるかどうかを確認できます。その後ブラウザは、JavaScriptのブロックが読み込まれる都度、それらを実行する動作に戻ります」。

ブラウザがこのようなサイクルで動作している際に、新しいイベントをチェックして、その処理に入ると、わずかながら余計な時間がかかる。それが何度も積み重なると、ページのロードが遅くなる。とはいえ、入力のチェックのインターバルを長くすると、こんどはブラウザの応答が鈍くなるので、ユーザー体験が劣化してしまう。

これを解決するため、FacebookのエンジニアはisInputPendingというAPIを作成した。これにより、上のようなトレードオフをする必要がなくなる。Facebookは、このAPIを、W3Cのウェブパフォーマンスのワーキンググループにも提案した。これを利用すれば、デベロッパーは保留中の入力があるかどうかを、コードの実行中に確認できる。

これにより、コードは応答すべきものがあるかどうかを自分でチェックできるようになる。ブラウザに完全に制御を戻さなくてもよく、さらにそこからJavaScriptエンジンに入力を引き渡す必要もない。

現時点ではこれはまだ試験的なもの。デベロッパーは、このAPIを自分のコードに組み込む必要があるため、Chrome 74のリリース後に、自動的にブラウザの動作が速くなるというわけではない。この試行が成功すれば、もちろんデベロッパーはこのAPIを利用するようになるだろうし(もちろんFacebookは自ら利用するだろう)、他のブラウザベンダーもそれぞれのエンジンにこのAPIを実装するようになるはずだ。

「ChromeにisInputPendingを導入するプロセスは、Facebookにおいてウェブ標準を開発する新しい方法を象徴するものです」とチームは言う。「私たちは今後も新しいAPIに取り組み続け、オープンソースのウェブブラウザへの貢献を増強したいと考えています。将来的には、このAPIをReactのコンカレントモードに直接組み込むことも可能となるでしょう。そうすれば、デベロッパーはこのAPIのメリットを、自動的に享受できるようになります。さらに、isInputPendingは、スケジューリングに関するプリミティブをウェブに導入するという大きな流れの一環なのです」。

画像クレジット:Getty Images上のAlexander Koerner/Getty Images

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

評価の高い速成コースのLe Wagon、定時制コースで多くの学習希望者の便宜を図る

コーディング・ブートキャンプ(プログラマー速成コース)のLe Wagonはこのところ好調だ。自己資本だけでやってきたこのフランスの企業は今では22の国に34拠点のキャンパスがある。そして今回Le Wagonは、定時制のコースによってさらに学生数を増やそうとしている。

定時制の授業はロンドンで試してきたが、これからはすべてのキャンパスで展開する。コースは火曜夜、木曜夜、そして土曜日の週3日で、これなら会社などに努めている労働者でも勉強できる。

Le Wagonの主力はこれからも、その評判良い全日制のコースだ。2013年の創業から今日までおよそ5000名の学習者が同社の9週間の全日制ブートキャンプを受講した。学習内容は、フロントエンドとバックエンドの開発、そしてコースが終わると自分のプロジェクトを最初から最後まで自力で作れるようになる。

ということは、およそ2か月で、スタートアップを始められるし、既存のスタートアップにソフトウェアエンジニアとして加われる。Le Wagonは今でも規模を拡大中で、今年は2000名から3000名の学習者を受け入れる。

定時制のコースも学習内容と費用は全日制と同じだ。全日制の学費はパリの場合で6900ユーロだ(およそ87万円)。定時制のコースはパリで8月に始めるが、2020年1月までにはほとんどのキャンパスでやりたい。同社は、定時制のコースによっていろんな可能性が開けると期待している。

家族のある人は、仕事を辞めたり長期休暇を取るのは難しいだろう。今の会社で役員にまでなってるような人は、辞めたあとの確実な成功がほしい。今度の定時制は、そんな人たちでも勉強できるし、またすごい顔ぶれが同社の同窓生の中にいるようになる。

学習者の多くが卒業後自分のスタートアップを立ち上げている。Le Wagonの卒業生が立ち上げたフランスのスタートアップはこれまで、計4800万ドル(およそ50億円)の資金を調達した。

ただし、めでたく卒業するためには、最後までモチベーションを高く維持することが重要だ。今のフルタイムの仕事に加えて、パートタイムの仕事を新たに引き受けた、と考えた方がよい。この人は最後まで高いモチベーションを維持できるか、同社は最初に入学希望者をふるいにかけている。

今は企業も、社員が2か月もいなくなるのはいやだから、Le Wagonの全日制を受講することを渋る。でも、定時制なら社員たちを心から支援できるだろう。

Le Wagonには、チームリーダーを育てる管理者/役員コースがあり、定時制はこのコースを一層充実させる。新しいコースだが今すでに大企業の多くの社員たちが関心を示しており、とくに彼らは、短時間で新しいスキルを習得することを求めている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

クラウド型マニュアル作成ツール開発のスタディストがDNX Venturesなどから8億円超を調達

クラウド型マニュアル作成ツール「Teachme Biz」(ティーチミー・ビズ)を開発・提供しているスタディストは4月22日、米国のDNX Venturesおよび、既存株主である日本ベンチャーキャピタル、セールスフォース・ドットコムの投資部門であるSalesforce Ventures、三井住友海上キャピタル、三菱UFJキャピタルの計5社を引受先とする第三者割当増資により、総額8億2500万円の資金調達を発表した。

Teachme Bizは、国内外の約2500社の有償法人ユーザーを擁するマニュアル作成ツール。ちょっとした社内マニュアルから標準業務手順書(Standard Operating Procedure)までをスマホやタブレット端末で簡単に作成・修正・閲覧できるのが特徴。製造業や小売業、飲食業を中心に導入が進んでいるとのこと。作業手順の可視化や現場浸透を図るための業務基盤として活用している企業もあり、人材育成時間の大幅削減に貢献するほか、単なるマニュアルではなく「正しい手順」であることを保証することが要求されるケースにも役立つという。

今回の資金調達により、サービス提供から5年半が経過したTeachme Bizのマーケティング強化を進め、2020年2月までに大手企業を中心に1000社への新規導入を目指すとのことだ。

GMベンチャーズ投資のスタートアップ、視覚認識システムの開発プラットフォームを発表

2015年に創業したAlgoluxは、既に多くのプレイヤーがいる自動車用コンピュータービジョンの世界では、あまり知られた名前ではない。だがケベックを拠点とするこのスタートアップに、関心を示す投資家が増えている。例えば、昨年5月にはゼネラルモーターズベンチャーズが率いる1000万ドル(約11億円)のシリーズAの調達に成功し、現段階での調達額は1340万ドル(約15億円)に達している。ここまで同社がほぼ無名だったことを考えると悪くない数字だ。

米国時間3月11日にAlgoluxはIonを発表した。これは企業が自力で認識システムを開発する際に用いることのできる、一連のツールならびに組込みソフトウェア一式である。これは本質的にプラグアンドプレイのソリューションを提供する。現在よく見られるような、利用する企業が他のシステムと容易に統合できないような場所に閉じ込められてしまうようなアプローチとは反対のアプローチだ。

Algoluxは、政府機関からのさまざまな規制や、複雑な環境でのシステム運用を行うために設計された安全機能を組み込んで、エンドツーエンドのソリューションを構築しようとするユーザーに、同社の機械学習およびコンピュータビジョン技術を提供する。

Algoluxは、Ionは従来型のシステムに使うこともできるが「根本的に新しいデザイン」に用いることも可能だと言う。この機能は、あらゆる種類のセンサー、プロセッサ、そして認識タスクに適用することができる。Ionは、カメラのチューニング用に設計されたたくさんのモジュールの集合体のディープニューラルネットワークのEosと、ツール群のAtlasに依存している。それは開発者たちに、彼らの個別のニーズに基づいた取捨選択アプローチを提供する。

TechCrunchへの手紙の中で、VPのデイブ・トキック氏は、同社と競合相手たちとの間の根本的な差別化要因は、 各企業が異なるニーズに対応して異なるプロダクトを利用しコストをカットすることを可能にする、一種のブランド非依存主義だと述べている。

「当社のIonプラットフォームは、ツール(Atlas)と組み込みソフトウェアスタック(Eos)で構成されています。これらを使うことで認識システムを開発しようとする開発チームに対してユニークなエンドツーエンドアプローチを提供します」と彼は言う。「これにより、開発チームはセンシングと知覚の両方にまたがって(さらに計画と制御までも含み)最適化と深層学習を行い、より良い性能を実現することが可能になります。また現状の閉鎖的なデザインプロセスをよりオープンなものにすることができます。この機能は、あらゆる種類のセンサー、プロセッサ、そして認識タスクに適用することができます」。

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(翻訳:sako)

存在教育エラー:学生のソフトウエア教育に失敗しました

[著者:Ryan Craig]
University Venturesのマネージング・ディレクター。

ほとんどのデジタル革命のきっかけとなった画期的な発明は、ゼウスの額からアテナが生まれたように、アメリカの大学の研究室から、直接、飛び出してきたものだが、学校の側からすると、アメリカの高等教育は、これまでずっとのんびりした態度でやってきた。もちろん、コンピューター・サイエンスの講義はたくさんあり、何百万人という学生がインターネットを通じて受講している。MITなどは、AIのための新しい単科大学を10億ドル(約1125億5000万円)をかけて設立した。しかし、25年から50年ほど前の人間がタイムトラベルして今の大学を訪れたとしたら、環境はあまり変わっていないように感じるだろう。ただ学生が、人と目を合わせたがらず、デジタルデバイスの画面を見つめている点が違うぐらいだ。

こうした昔ながらの大学の姿は、変革を経験した職場から訪れた人には、さらに驚きだろう。10年前まではデジタルデバイスをまったく、あるいはほとんど使わなかった職場も、学生がスマートフォンの画面を食い入るように見つめるように、コンピューターの操作ができる人間を血眼で探している。紙の書類で行われていた仕事は、今は完全にデジタル化されている。仕事に関わる機能を持つ業界固有のビジネス・ソフトウエアの使用経験は、簡単な職種であっても、今や業務経歴書には必須項目だ。

このことは、数週間前に250名の大学関係者の前で講演を行った際に、彼らの急所を突いた。私は、アメリカのビジネス業界でナンバーワンのSaaSプラットフォームSalesforceの使い方を授業で教えている大学はどれほどあるか尋ねてみた。

誰も手を挙げなかった。

理由はいくつかある。学生が最初に就いた仕事で、しっかりと働き成功できるように必要な技術を身に着けさせることに全力を傾けている(または少しでも真剣になっている)教師が、まったくとは言わないが、ごく僅かしかいないことも考えられる。学生が就職できなくとも、彼らはクビにはならない(今のところは)。もうひとつは、コストの問題だ。そうしたスキルを持つ学生を強く望む声が企業から伝えられていても、それを教える能力を持つ教師を探して雇うぐらいなら、役に立たない科目を教えていたほうが安上がりなのだ。さらに、技術の変化が激しいという理由もある。どんなに一生懸命に教えても、数年後には時代遅れになっているという観念がある(もちろん、現実のビジネス・ソフトウエアの世界はまったく違う。Salesforceのような基本的なプラットフォームの寿命は長く、10年を超えてもいまだ現役だ。なかには一世代続くと予想されるプラットフォームもある)。

しかし、大学が学生たちに、就職に必要なソフトウエアの使い方を教えたがらないいちばんの理由は、ミレニアル世代(Z世代)は「デジタル・ネイティブ」(生来のデジタル人間)なので教える必要がないと、彼らが思い込んでいることだ。

デジタル・ネイティブという考え方は、今に始まったものではない。何十年もの間、デジタル技術と共に育った子どもたちは、あらゆるデジタル製品を受け入れることができると思われてきた。たしかに、大学生たちはNetflixやSpotifyやスマートフォンを使いこなしているのは事実だ。しかし、彼らが子どものころから親しんできたスマートフォンは、会社の電話のとり方や、就職に欠かせないビジネス・ソフトウエアの使い方は、これっぽっちも教えてくれていないことも事実だ。

デジタル・ネイティブにとっても
ビジネス・ソフトウエアは
非常に厄介な代物だ

高等教育機関と連携してビジネス・ソフトウエアのトレーニングを提供するスタートアップPathstreamの共同創設者Eleanor Cooperは、こう話している。ミレニアル世代とZ世代は「直感的に操作できて、すぐに満足できる結果を与えてくれるInstagramのようなプラットフォームは使い慣れていますが、ビジネス・ソフトウエアを習得するといいう体験は、例外なく、まったく逆です。たちまちイライラして、満足できる結果はなかなか得られません。まずは何時間もかけて技術的なステップを踏み、ソフトウエアのセットアップを行います。その後でようやく、悪夢のようにボタンを押しまくる操作の段階に入ります。今時のソフトウエアからすれば、よくて退屈、悪くすれば時代遅れで不確かな代物です」

先月のThe New Yorkerの記事『Why Doctors Hate Their Computers』(なぜ医師はコンピューターを嫌うのか)で、Atul Gawande博士は、患者のケア、つまり「診察所見の記録や閲覧、処方箋の薬局への送付、検査とスキャンの予約、結果の評価、手術の予定、保険請求書の送付」などを行うためのSaaSプラットフォームEpicの導入を試みたときの話をしている。

最初に16時間のトレーニングを受ける必要があった。Gawandeは「患者の氏名を探したり、緊急連絡をしたりといった最初の練習ではよくできました。しかし、検査の結果を評価する段になると、頭が混乱してきました。画面の左側には13個のタブの欄があり、ほとんど同じ言葉が書かれていました。チャート評価、結果評価、評価フローシートなどです。どうやって情報を入力するか、まだ何も教わっていません。しかも、それぞれのタブで開くフィールドには固有のツールがあり、微妙に雰囲気も違います」

デジタル・ネイティブにとっても、ビジネス・ソフトウエアは非常に厄介な代物だ。今の学生たちはシンプルなインターフェイスに慣れている。しかし、シンプルなインターフェイスが使えるのは、メッセージや動画を選ぶといった、シンプルな機能しかない場合のみだ。現在主流のビジネス・ソフトウエア・プラットフォームは、単機能ではない。何千とまでは行かなくても、何百もの機能がある。

Gawandeは、IBMのエンジニアFrederick Brooksの著書『The Mythical Man-Month』(邦題『人月の神話』丸善出版)を引き合いに出している。この本には、ダーウィンの進化論になぞらえて、クールで簡単に使える(「数人のナードが友人のナードのために」作った限られた機能を持つ)プログラムから、より多くの機能をより多くの人に提供する大きな「製品」としてのプログラムへ、そして「まったくクールじゃないプログラム・システム」に進化する様子が説明されている。Gawandeは、大学院の学生が小さなスケールの流体力学をシミュレーションするためのプログラムFluidityの例をあげていた。研究者たちはそれを大変に気に入った。そしてすぐに新機能のためのコードを追加した。するとそのソフトウエアは複雑になり、使いづらくなり、制約の多いものになってしまった。

煩雑なインターフェイスの他に、ビジネス・ソフトウエアが本当に難しいもうひとつの理由は、ビジネスの商習慣に固められて、がんじがらめになってしまった点だ。Salesforceのコンサルタントはこう言うだろう。Salesforceのカスタマイズを試みる(または設定を変える)ぐらいなら、会社の商習慣をSalesforceに合わせたほうがずっと簡単ですよと。それは、すべてのビジネス・ソフトウエアに言えることだ。Gawandeが指摘するように、「多くの人に適応し、多くの機能を提供しようとするほど、プログラムは自然に制限が多くなります。ソフトウエア・システムは、私たちがグループとして使うことを想定しており、そのために否応なく、官僚的な性質になるのです」

デジタル・ネイティブの伝説は
大学にとっては便利なものだ
それが学生が本当に
必要としているものではなく
学校が教えたいことだけ
教えていればよいとするための
言い訳になるからだ

ソフトウエアに規定された商習慣は、職務全体、業界全体にわたり標準化されつつあり、非常によく知られるようになっている。よく知られるようになったので、人事担当は、それを知っている人材を欲しがる。そうなると、大学はソフトウエア教育だけの話ではなくなる。学生にビジネス・ソフトウエアを教えるということは、当然のこととして、業界および職務の専門性も備えさせることになる。それには、16時間の訓練などでは、まったくおぼつかない。

「仕事用のシステムが、なぜスマートフォンのように、柔軟で、簡単で、カスタマイズができるようにならないのでしょうか? その答は、これらのシステムの目的が異なるからです」とGawandeは話す。「一般消費者向けの技術は、自分のためだけのものです。複雑な企業向けの技術は、自分一人では難しい仕事をグループで行うことを支援するもの、つまり、連携のためのものです」

デジタル・ネイティブの伝説は、大学にとっては便利なものだ。それが、学生が本当に必要としているものではなく、学校が教えたいことだけ教えていればよいとするための言い訳になるからだ。しかし、それは自己中心的で、浅はかで、愚かなことだ。Netflixやスマートフォンがテクノロジーなのだと思ってしまわずに、外の世界に出て、自分の大学の入学審査や財務や人事といった職務に使われているソフトウエアを見て欲しい。大学卒業生の95パーセントは、そうした職場からキャリアを積むことになる。教職員ラウンジのような場所ではない。それも、幸運な学生の話だ。それ以外の卒業生は、スターバックスのような場所からスタートすることになる。

Gawandeは、その記事の中で、ビジネス・ソフトウエア・プラットフォームに順応して働く(そして生きる)には大変な苦労を重ねる必要があるが、ソフトウエアは、世界を食い尽くそうとしていると書いている。それが消費者にとって、よい結果をもたらすという。Epicを導入すれば、病院は、3カ月以上オピオイドを使用している患者を探し出して、その人の過量摂取の危険性を減らすことができる。または、ホームレスの患者の結核の検査が3回続けて陰性だったとき、隔離の必要はないと伝えることができる。「私たちはこれを、私たちのためのシステムであり、またそうではないと考えています」と話すのは、医療システムの最高医療責任者だ。「これは患者のためなのです」

この恩恵は、大学が新しい教育プログラムができたと大喜びして入学者数を増やすことになったデータ解析革命がもたらした恩恵と同質のものだ。しかし、よりよい成果を得るために追加されるデータは、まずキャプチャーしなければならない。それを行うのが、複雑なビジネス・ソフトウエアだ。だから、自分で種を撒かずにビッグデータの果実だけを収穫しようとする大学の考え方はズルくて、少くとも偽善的だ。種を撒くためには、ビッグデータを活用できるソフトウエアの扱いに欠かせない技術とビジネスの実践的知識を学生たちに植え付けることが肝心であり、それには、大胆な投資が自ずと必要になる。

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(翻訳:金井哲夫)

Appleのプログレードのビデオ編集ツール=Final Cut Pro X(FCPX)の大きなアップデート

今回のリリースでは、FCPXの多くの部分がより洗練されたものとなっている。中でも最も大きな変更は、さらなる進化を可能にした「ワークフロー機能拡張」だ。これらの機能拡張は、サードパーティのアプリやサービスが、直接FCPXに接続して、ネイティブなインターフェイスと機能を追加できるようにする。

Appleは、以下の3社と協力し、今回のアップデートに合わせて機能拡張を利用可能とした。

  • Frame.io:Frame.ioを使用すると、複数のビデオ制作者の間で、進行中の編集を共有できる。共同作業者は、まとまっていくプロジェクトを見ながら、コメントや、フレーム単位での注釈、思い付いたことを、関連するタイムラインの同期したセクションに書き込むことができる。Frame.ioは、かなり前から、このような機能を独自のアプリで実現していた。この新たなワークフロー機能拡張によって、そうした機能がFCPXに直接組み込まれるので、頻繁にアプリを切り替える必要がなくなる。

  • Shutterstock:撮影するつもりのなかったBロールが必要になった? Shutterstockの機能拡張機能を使えば、ウォーターマークの入った写真/ビデオ/音楽をプロジェクトにドラッグして、仮のものとして使用できる。後でそれらを、ライセンスを受けたウォーターマークのないものに入れ替えるところまで処理してくれる。
  • CatDV:チームとしてCatDVを利用してアセットを扱い、タグ付けしているなら、新しい拡張機能によって、コンテンツカタログに接続し、タグでコンテンツを検索し、プロジェクトに直接取り込むことが可能となる。

FCPXには、以前からプラグイン機能があったが、今回のワークフロー機能拡張は、アプリに組み込まれたインターフェイスと、より密接に結合できるようになっている。サードパーティの拡張機能も、Mac App Storeから直接入手できる。Appleは、新しく用意されたSDKを利用して、誰でもFCPXのワークフロー機能拡張を開発することができるとしている。ただし、今のところは関心のある開発者は直接Appleに連絡するよう求めている。

一方、FCPXには他にも以下のような変更が加えられた

  • 比較ビューアを使用すると、複数のクリップを横に並べて(またはウェブからの参照をドラッグして)色補正やグレーディングの作業が確実にできる。
  • バッチ書き出し機能を使えば、複数のクリップを(あるいは1つのクリップを複数のフォーマットで)同時に書き出すことができる。
  • 新たに開発されたビデオのノイズリダクションエフェクトは、シャープネスを維持したまま粒状感を低減することができる。
  • 想像的なタイニープラネット機能は、360°のビデオを幻想的な球状のビューに変換できる。

Appleはまた、FCPXとは別にApp Storeで販売する2つのアプリ、MotionとCompressorにも同時にアップデートを施した。Motionは、タイトルとトランジションを構築するためのApple製のツールだ。より高度なカラーマネージメントツールを備え、あらゆるグレーディングを適切に調整できるようになった。また、新たなコミックブック調のフィルタや、Final Cutに組み込まれたのと同様のタイニープラネット機能も装備した。Compressorは、ビデオをエンコードして配信するための準備を整えるためのツールとして、Appleが専用に開発したものだ。新しい64ビットエンジンに移行したものの、今のところ32ビットのファイルフォーマットでも動作するようになってる。字幕をビデオに直接焼き込む機能も搭載し、ついにSRTフォーマットの字幕ファイルもサポートした。これは、SRTしか受け付けないFacebookに、FCPXから直接アップロードしたいという人には特に便利だ。

すべてのアップデートは、既存のユーザーには無料で提供される。新規のユーザーには、Final Cut Pro Xは300ドル(訳注:日本のMac App Storeでは3万4800円)、MotionとCompressorはそれぞれ50ドル(同6000円)で販売される。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

APIの台頭

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編集部注:本稿はMatt MurphyとSteve Sloaneにより執筆された。Steve SloaneはMenlo Venturesに勤務する。

ソフトウェアが世界を支配する」と耳にするようになってから5年ほど経った。SaaSアプリケーションの数が爆発的に伸び、ソフトウェアに重要な結合組織と機能を提供するAPIの分野にイノベーションの波が押し寄せている。サードパーティAPI企業の数も急増し、それらの企業がソフトウェアの作成および流通のあり方を根本から変えつつある。

マイクロソフトのWindowsのような特定のプラットフォーム向けのソフトウェアを開発する方法として、アプリケーション・プログラミング・インターフェイス(API)は何十年間も重要な役割を担ってきた。最近では、SalesforceやFacebook、Googleといった新しいプラットフォーム・プロバイダーたちがAPIをソフトウェア開発者に提供するようになった。そうすることにより、彼らのプラットフォームへの依存性をつくり出すことに成功したのだ。

そして今、新種のサードパーティAPI企業がソフトウェア開発者たちに特定のプラットフォームへの依存から脱却する方法を提供し、彼らはアプリケーションをより効果的に流通させることが可能となったのだ。

過去数十年間においてビジネスの世界で活躍してきたのは、全体が1つのアプリケーションで構成されたインフラストラクチャーやアプリケーションだった。しかし、それらに代わって台頭しはじめたのがモジュール型のアプリケーションだ。モジュール型のアプリケーションは、小型かつ独立した再利用可能のマイクロ・サービスによって構成されており、それらのマイクロ・サービスを組み合わせることで、より複雑なアプリケーションを作成することができる。結果として、ソフトウェア開発者はユニークな機能の開発に専念し、外部のスペシャリストが開発したプログラムでその周りを補強すればよい。そして、そのプログラムにアクセスする方法がAPIなのだ。

速い、安い、スマート

アプリケーションに必要な機能のほとんどは、既に他の企業が苦労して開発したものと同じものだ。そのことに気づいた開発者たちは、車輪の再発明に貴重な資源を投入することを避け、より大きなプラットフォームが提供するAPIを活用することにした。SalesforceやAmazonがそのプラットフォームの例であり、最近ではAPIに特化した企業も現れた。サードパーティAPIの時代は始まったばかりだ。だが、これまでに開発されたソフトウェアを見れば、StripePlaidの支払いシステムや、Twilioの通話システム、Factualの位置情報データ、Algoliaのサイト検索機能などを、開発者たちがどのように活用できるのかが一目瞭然だ。

まさしく、この分野はブームとなりつつある。私が調べた限りでは、ProgrammableWebは約1万5000ものAPIを提供しており、その数は毎日増え続けている。これらのAPIをソフトウェアに組み込めば、単体で開発した場合より遥かに素早く完成させることが可能だ。

ソフトウェアを低コストかつ素早くマーケットに流通させることは大きなアドバンテージとなる。その一方で、もっと重要な利点もある。コア能力に特化する企業は、他者と差別化する機能、すなわち「秘密のソース」をより早い速度で開発できるのだ。

APIがソフトウェア開発のエコシステムに与える恩恵はとてつもなく大きいのだ。

もう一つの利点は、サードパーティAPIを利用することは総じて優れた方法だということだ。サードパーティAPIは、独自に開発されたAPIよりも柔軟性を持つ。ある機能を構築し、それを維持するには多大な労力を必要とするが、企業はその労力を過小評価する傾向にある。しかもそれらの機能はサードパーティAPIによって代用可能なのにも関わらずだ。そして最後のアドバンテージは、サードパーティAPIの開発者の方がより大きなデータにアクセスすることが可能であり、そのデータがネットワーク・エフェクトを創り出すという点だ。

そのネットワーク・エフェクトは優れた価格やサービス品質に見て取ることができ、AIを使ってそのデータの中から最も良いパターンを抽出することができる。例えば、Menlo傘下の企業であるSignifydは不正アクセスを見つけ出すサービスをAPIとして提供している。同社は100以上の企業から取引データを集めており、個々の企業による独自分析よりも高い精度で不正アクセスを見つけ出すことができる。

新種のソフトウェア企業

APIとしてソフトウェアをリリースすることで、そのソフトウェアが採用される可能性を高めることができる。多くの場合、ソフトウェアを利用する顧客はディベロッパーなのであり、ソフトウェアを特定の業界に対して垂直に売り込んだり、パッケージとして売り出すよりも販売プロセスがスムーズになる。収益モデルは常に反復的であり、利用される頻度が高まれば収益も増えるという、本質的にスケーラブルなビジネスモデルだ。APIベースの企業がもつエコシステムはまだ進化の途中ではあるが、そのような企業の特性が組み合わさることで、最終的にはより資本効率的で利益率の高いビジネスモデルが創り出されると私たちは考えている。

このチャンスは新参者の企業だけに与えられたものではない。既存の開発企業にとっても、独自の機能をAPIとして提供し、製品をアプリケーションからプラットフォームへと進化させる機会となるだろう。傑出した企業の中には、目標以上の成果を生み出すAPIビジネスを構築した者もいる。伝えられるところによれば、Salesforceは収益の50%をAPIから生み出しており、eBayは60%近く、Expediaではなんと90%だ。

このビジネスモデルは起業家や投資家たちを惹きつけている。次なる大流行アプリをゼロから創り出そうとしたり、需要があるのか分からない状態でマーケティングや流通のために多額の資金を投入したりするよりも、特定領域の機能を構築し、他のディベロッパーの武器商人となる方が理にかなっているのかもしれない。

APIモデルは、成功すれば資金効率性を得られ、時間が経つにつれてネットワーク・エフェクトが生まれるという強力な流通方法である。現在、900万人の開発者がプライベートなAPIの開発に取り組んでいる。これらの人材が、「企業より機能」というチャンスに目を向けることがあれば、パブリックなAPI開発にも大きな変化が生まれる可能性がある(パブリックAPI開発者は120万人に留まっている)。

バリュー・チェーンを見直す

これまではデータに最も近い企業や(例:システム・オブ・レコード、SoR)、ソフトウェアを自社のプラットフォームに依存させることが可能な企業こそが「ビックな企業」だった。APIの世界では、ビックな企業とはスマートな方法でデータを集め、それを他者に公開する企業なのかもしれない。

これにより新しいタイプの参入障壁が生まれる。Twilioは圧倒的な通信ボリュームをもつことから、個々の開発者では得られられないような割引を通信キャリアから得たり、多くの開発者が利用する支払いシステムをもつStripesが獲得している大口割引などがその例だ。Usermind(Menlo Venturesの投資先企業の一つ)などの企業は、既存のSaaSアプリケーション間のAPIによるコネクションを単純化するワークフローを創り出すことによって、複数のアプリケーションの運用を可能にしている。

今現在においてもAPIスタートアップのエコシステムは魅力的であるが、私たちはその魅力は増す一方だと考える。これまでの5年間、SaaSやビックデータ、マイクロサービス、AIといった企業志向のテクノロジーに対する世間の関心はとても高かった。この4つの分野が結合した存在こそ、APIなのだ。

企業向けソフトウェア開発の現場においてサードパーティAPIへの注目がさらに高まることで、これから数々の大物企業が生まれるだろう。プロセス間の人手を減らした販売モデル、循環する収益、分散化された顧客基盤をもつAPIのビジネスモデルはとても魅力的だ。それに加えて、アプリの開発者はユニークな機能の開発に専念することができ、特に重要なイニシャル・プロダクトを低コストかつ素早く流通することが可能となる。APIがソフトウェア開発のエコシステムに与える恩恵はとてつもなく大きいのだ。

menloapi

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Twitter /Facebook