カスタマーサクセスを実現する管理ツール「HiCustomer」、クローズドベータ版の提供開始

HiCustomer代表取締役の鈴木大貴氏

この2、3年ほどで、国内のマーケティング界隈でもよく耳にするようになり、また職種としても増えつつある「カスタマーサクセス」というキーワード。この領域にチャレンジするスタートアップが新たに1社現れたようだ。HiCustomerは4月23日、カスタマーサクセス管理ツール「HiCustomer」のクローズドベータ版を事前登録者向けに提供開始したことを明らかにした。

能動的に顧客を成功に導く「カスタマーサクセス」

プロダクトを紹介する前に、そもそものカスタマーサクセスとは何かについて説明しておきたい。カスタマーサクセスとは、端的に言えばその言葉の通りで「顧客が自分たちの課題を解決し、成功に導く」ということ。具体的にはQ&Aやヘルプの提供、ツールチップの表示、ステップメール、問い合わせのサポートなどなど、プロダクトを改善していくための活動すべてを指すのだと、HiCustomer代表取締役の鈴木大貴氏は語る。

また、カスタマーサクセスとカスタマーサポートというのは同列で語られることが多い。だが従来のカスタマーサポートが顧客からの問い合わせなどがあってはじめて対応する受動的なアプローチであるのに対して、カスタマーサクセスはプロダクトの提供者から顧客に対して積極的に関わっていく能動的なアプローチであるという違いがあるという。

カスタマーサクセスは、サブスクリプションモデルのプロダクトが普及すればするほどに重要性を増しているのだと鈴木氏は続ける。SaaSの普及によってエンタープライズ向け製品の多くはサブスクリプションモデルを採るようになっただけでなく、音楽や動画、読書といった個人向けのネットサービスまでもが、いまではサブスクリプションモデルを採用するようになってきた。

これまでのようにプロダクトを作って売りきる、というモデルであればマーケティングや営業といった行動は、売上に直結する活動であり、売ったあとのカスタマーサポートは極力コストを抑えたいものだった。だがサブスクリプションモデルであれば、基本的に導入までは無料ないしほぼ無料であるケースがほとんど。マーケティングや営業といった行動はあくまで「受注に直結する活動」であり、継続的な利用があってはじめて売上が発生する(LTV:Life Time Valueの最大化が重要になる)。つまり、サブスクリプションモデルにおけるカスタマーサクセスの実現(≒プロダクトの継続利用)というのは「売上に直接繋がる活動」だと言えるのだ。「従来はものを売る、頑張る、売るでお金が入った。だがモノのサービス化が浸透してあらゆる材がサブスクリプションモデルになりつつある。そうなると、カスタマーサクセスはより大事になってくる」(鈴木氏)

カスタマーサクセスを実現するダッシュボードを提供

前段が長くなったが、HiCustomerのクローズドベータ版は、そんなカスタマーサクセスを実現するためのダッシュボード機能を提供するサービスとなる(僕は実際にデモを見たが、現時点でのスクリーンショットは非公開とのこと)。実際このカスタマーサクセスを実現しようにも、これまでであればCRMやBIツール、チャットのログなど様々なプロダクトを組み合わせて顧客の状態を把握し、施策の提案を行う必要があった。それを一元管理するのが狙いだ。

導入企業はまず、自社のプロダクト(もちろんサブスクリプションモデルの製品だ)に最適な顧客のルール設定を行い、HiCustomer上にデータを取り込む必要がある。例えばプロダクトの活動頻度や満足度、利用頻度などの度合を、プロダクトを利用するステージごとに見る、といった具合だ。設定をすれば、顧客ごとにプロダクトとの関係性が「Good」「Normal」「Bad」といったステータスで一覧表示することができる。

これによって、例えば、「サインアップしたばかりだが、利用頻度が低い」という顧客がいれば、導入を支援するメールや電話を送ることができるし、「継続利用しており、かつ滞在時間も長い」という顧客にはオプション機能を割引するオファーを出してアップセルを狙うことができる、といったことが可能になる。「(カスタマーサクセスの)メソッドについてもこれから開発していかないといけないが、ルール設定自体はユーザーが割と簡単にできるようになっている。大規模なデータを扱う場合など、将来的には導入のコンサルティングも考えている」(鈴木氏)。

HiCustomerは3月にティザーサイトを公開したが、現時点で数百社から問い合わせがあり、すでに約20社の導入が決定しているという。クローズドベータ版の料金は無料。今秋には有料の正式版をリリースする予定で、「定額+従量課金」での提供を検討しているという。今後の機能追加に関しては「プロダクトの方向性としては、『カスタマーサクセスマネジメント』から『カスタマーサクセスオートメーション』に取り組んでいきたい。サブスクリプションモデルのユーザーのリテンションやアップセルのためにメールやメッセージの自動化までを実現したい」(鈴木氏)としている。

代表は高専出身、スタートアップ支援やコンサルを経験

プロダクトを提供するHiCustomer社は2017年12月の設立。代表の鈴木氏は仙台電波高専(現・宮城高専)卒業後、医療機器メーカーや人材、SaaSのセールスを経て、スタートアップ投資や大企業の新規事業立ち上げ向けのコンサルティングなどを手がけるアーキタイプに入社(自身の書いているスタートアップの分析をテーマとしたブログに、同社代表取締役の中嶋淳氏が問い合わせたことがきっかけになったのだという)。アーキタイプの投資先スタートアップ支援やコンサルなどを4年経験して2017年12月に退職。同時にHiCustomerを立ち上げた。現在同社には外部資本は入ってない。

「前々職で新規事業立ち上げ責任者を経験したのが社会人になって一番楽しかったこともあって、起業自体はぼんやりと考えていた。そんな中でBtoB領域のSaaSを見てみると、ジャンルごとに国内外の差(プロダクトの種類や数)が激しいのが分かった。 海外の人達はSaaSで生産性が上がっているのに、日本はまだExcelでデータを管理しているといったことに課題を感じた。それがHiCustomer設立の理由だ」(鈴木氏)

ZuoraのIPOは企業向けSaaS黄金時代への新たなステップだ

Zuroaの創業者兼CEOであるTien Tzuoは、多くの人たちの意識に上るはるか前から、サブスクリプション経済のビジョンを持っていた。彼は、企業がサブスクリプションで成功するためには、課金状況を簡単に知るための簿記システムが必要であることを理解していたのだ。同社は4月12日株式の公開を果たした。これはSaaSの成熟を示す、新たな道標のひとつである。

TzuoはSalesforce初期の従業員であり、同社最初のCMO(最高マーケティング責任者)を務めた。彼が勤め始めたのは、SalesforceのMarc Benioffが会社を立ち上げるためにアパートを借りたことで知られる、会社黎明期の90年代後半のことである。TzuoはSalesforceに9年間在籍し、そのことが、Salesforceのようなサブスクリプションベースのビジネスの本質を理解するのに役立った。

「私たちは、ソフトウェアを開発し、マーケティングし、そして提供するための素晴らしい環境を作りました。私たちが書き換えたのは、開発方法、マーケティング、そして販売に至るまでの全てのルールです」とTzuoは2016年のインタビューで私に語った。

彼は、単体製品の販売と計上のためにデザインされている従来の会計手法が持つ、基本的な問題点を認識していた。サブスクリプションはまったく異なるモデルであり、収益を追跡し、顧客とコミュニケーションをとるためには新しい方法が必要だったのだ。Salesforceのような成長企業における確実な仕事を捨て去って、2007年の初めに会社を設立したTzuoは、既に長期的な視点を持っていたのだ。

彼がそれに踏み切ったのは、他の誰よりも早く、SaaS企業がサブスクリプション向けの簿記システムを必要とするという見通しを持っていたからだが、他の無関係な企業たちも、やがてそれを必要とするだろうということに、やはり早い段階から気がついていたのだ。

サブスクリプションシステムの構築

彼が2016年のインタビューで語ったように、もし顧客が毎年1ドルずつ10年間の支払を約束したなら、会社は確実に毎年その1ドルを手にすることができて、最終的に
10ドルを手にすることができることを知っていることになる。しかしその金は実際に手に入れるまで計上することはできない。その繰り返し発生する収入はそれでも価値を持っている、なぜなら投資家たちは、まだ帳簿にのっていなくとも、会社がこの先10年間収益を挙げることができることがわかるからだ。そこがZuoraの登場する場所だ。他の誰もがそれをできなかったときに、その定期収入を織り込んで報告することを可能にしたのだ。さらに、時間に沿って請求を追跡し、リマインダを送信し、企業が顧客との関わりを保ち続けることを助けることができる。

写真:Lukas Kurka/Getty Images

Constellation Researchの創業者兼主席アナリストのRay Wangが語るように、Zuroaがサブスクリプション経済のアイデアを切り拓いたのだ。そしてそれはSaaS企業だけを相手にしたものではない。ここ数年私たちは、企業たちが1回限りのアイテム販売ではなく、サービスとSLA(サービス水準合意)の販売について語るのを耳にしている。しかし少し前には、大部分の企業がそれについて考えることはなかったのだ。

「Zuroaは企業たちが収益化を考える方法を開拓したのです」とWangは語る。「例えばGEのような大企業は、風力タービンの売り切りから、サブスクリプションの販売へと移行することが可能です。例えばあるレベルのキロワット時のグリーンエネルギーを、午後1時から5時までのピークタイムに98%の可用率で提供するなどという形です」。Zuoraが登場する前には、これを支援する手段は存在していなかった。

SaaSスタートアップに投資するSaaStrの創業者Jason Lemkinは、Tzuoは本物のビジョナリーであり、SaaSサブスクリプションの基本システムを作り上げることに貢献していると語った。「Zuoraの最も興味深い点は、それがSaaSの盛衰に依存するものだということです。それが繁栄するためにはSaaSが主流になる必要がありますし、その他の定期収入ビジネスと一緒に伸びることしかできないのですから。Zuoraは、SaaS企業が課金を行うことを助けるニッチプレイヤーとしてスタートし、SaaSが『ソフトウェア』そのものになることで劇的に拡大し、繁栄したのです」。

市場がアイデアに追いついてきた

Tzuoが2007年に会社を設立したとき、おそらく彼は遠くの地平線の向こう側へ彼のアイデアが伸びていることを知っていた。彼は、この先SalesforceのようなSaaS企業たちが、自分が作ることを決意した会社が提供するようなサービスを必要とすることになる確信があったのだ。初期の投資家たちは、彼のビジョンがまだ尚早で、エグジットのためにはゆっくりと着実な道を登っていくことを理解していたに違いない。彼らがその報酬を手にするまでに、11年の年月と2億4200万ドルのVC資金が必要だった。11年後の収益は、1億6700万ドルと報告されている。成長のための余地は、まだ大きく残されている。

ともあれ、同社は12日にIPOを行い、それはいかなる意味においても大成功と呼べるものだった。TechCrunchのKatie Roofによれば、「14ドルでのIPOによって、1億5400万ドルが調達された、終値は20ドルで評価額は20億ドルとなった」ということだ。この記事を執筆している今日の時点(米国時間4月13日)では、もう少しアップしている。

Tzuoが以前勤めていた会社が200億ドル規模の会社になったことや、Box、Zendesk、Workday、Dropboxなどの企業がみな公開に踏み切ったこと、そしてDocuSignSmartsheetなどの企業がそれに続こうとしていること等を考慮すると、私たちがSaaSの黄金時代に突入したことは間違いないようだ ―― そしてそれが良くなる一方であることも。

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(翻訳:sako)

画像クレジット: Zuora

Atlassianの2年にわたるクラウドへの旅 ―― AWSへの大幅な移行

 数年前、Dropboxがパブリッククラウドの採用をほとんど止めて、独自のデータセンターを構築することに決めたことは、多くの人々に衝撃を与えた。だが最近、Atlassianはこれとは逆向きに、ほとんどのデータセンターを閉じてクラウドに移行した。企業たちは、さまざまな理由でこうした選択を行う。Atlassianの現在のCTOであるSri Viswanathが取締役会に加わったのは2016年だったが、彼は同社の最大のアプリケーションをAWSに移行する決定を下した。

これは部分的には、時間が経つにつれてアプリケーションたちが厄介なコードの層に邪魔されて、更新も保守も行うことが困難になる、技術的負債に関わる話である。2002年に設立されたAtlassianにとって、Viswanathが会社にやって来た2016年が、いわば先延ばしにしていた年貢の納め時だったということだ。

Atlassianは、未来に進むためには、コードを更新する必要があることには既に気がついていた。彼らがViswanathを取締役会に加えた理由の1つが、その仕事の指揮をとって貰うことを狙ってのことだが、そうした仕事の必要性そのものは、彼がやってくる前に十分に認識されていた。2015年には新しいクラウドベースのアプローチに向けたビジョンとアーキテクチャを検討する小さなチームが立ち上げられていたが、その成果を十二分に達成するために、最初のCTOを採用したいと考えたのだ。

マイクロサービスへの移行

彼は計画を実行に移し、内部コードネームVertigoを与えた。おそらく、彼らのソフトウェアスタックの大部分をパブリッククラウドに移行させるという考えは、エンジニアリングチームにとって、想像するだけでもめまいがするようなものだっただろう。このプロジェクトの目標は、その最大の製品であるJiraとConfluenceから始めて、ソフトウェアを再構築することだった、もちろん次の10年を大きな困難なしに支えてくれるような基礎とすることが狙いだ。

写真:WILLIAM WEST/AFP/Getty Images

彼らは2016年の大部分をソフトウェアの書き直しに費やし、それをAWS上に置くことにした。15年に渡って蓄積されてきたコードをマイクロサービスに転換することに注力した結果、最終的にはコードベースも小さなものにすることができた。彼は、技術的負債は大変な問題だったが、車輪の再発明をしないように注意深く行う必要があったと語った。いつでも、本当に変更する必要がある場所だけを変えるようにしていたのだ。

「コードベースは相当な大きさでしたので、作業に際して、私たちは2つのことをしなければなりませんでした。マルチテナントアーキテクチャのために構築したいと思っていましたし、マイクロサービスを提供したいと思っていたのです」と彼は語った。「もし引っ張り出して自己完結型にすることのできるサービスがあれば、そうしたことでしょう。でも私たちは新しいサービスを全体プロセスの一部にしたかったのです」。

運用しながらの顧客移行

移行が行われたのは昨年だった。そしてすべての顧客を残らず新システムに移行させるにはまるまる1年が必要だった。その移行は1月に始まり12月に終了したが、数万の顧客が移行の対象となった。

写真:KTSDesign/Science Photo Library

まず第一に、彼らは可能な限り自動化を行い、移行の順番についても非常に慎重に考慮し、難しく見える移行に関しても注意深く取り扱った。「どのような順番で移行を行うべきかに関しては非常に慎重に考えました。単に最初に簡単なものから始めて最後に難しいものをやろう、とは思っていませんでした。かといって困難なものばかりに取り組んで、進捗があまりないことも望む所ではなかったのです。私たちは(自分たちのアプローチ)を適宜ブレンドし、プロジェクト全体のバグと課題を解決して行かなければなりませんでした」と彼は語った。

Viswanathは、とにかく重要な目標は、顧客を重大な問題を起こすこと無く移行させることだったと述べた。「マイグレーションを行った人と話したことがあるなら、それは大変なことだとわかります。誰もがマイグレーションで多かれ少なかれ傷を負っているのです。これを本当に慎重に行うことを意識していました」。驚くべきことに、それは完璧ではなかったものの、大規模な停止を招くことなく彼らはこの仕事を乗り切ることができた。誇るべき仕事だと言えるだろう。もちろんだからといって、それがずっと順調で簡単だったというわけではない。

「『私たちは注意深く考え移行しました』と聞くと、まるで簡単なように響きますが、実際には毎日が戦争でした。移行する度に、壁にあたり思わぬ反応が起きました。一年を通して、それが私たちにとって日常的な事だったのです」と彼は説明した。エンジニアリング、プロダクト、サポートを含むチーム全体の努力が必要とされた。その努力の一環として、日々のスクラムミーティング(スクラムはアジャイル手法の1つ)にはカスタマーサポートの人間も参加してもらい、顧客が抱えるあらゆる問題に関する感覚を掴み、それを可能な限り迅速に解決できるようにしていた。

彼らが得たもの

どのようなクラウドプロジェクトでも、アプリケーションをクラウドに移行することには、柔軟性、敏捷性、資源弾力性といったものに関わる、一般的なメリットがあるものだが、今回のプロジェクトにはそれ以上のものがあった。

写真: Ade Akinrujomu/Getty Images

まず第一に、マイクロサービスがたっぷり使われているために、複数の配備を同時に迅速に展開することが可能になった。すなわち、新しい機能を格段に早く追加することができるようになったのだ。移行期間の年は、移行のためにできるだけものごとを静的に留めておきたいと考えていたために、ほとんどの新機能の追加は延期されていた。しかし新しいシステムを導入することで、新しい機能の追加をはるかに迅速に行うことができるようになったのだ。

パフォーマンスも大幅に向上した、そしてこの先もしパフォーマンスのボトルネックが発生しても、クラウドであるためリソースをただ追加することができるのだ。さらには、EU内で現地拠点を持つことができるようになり、エンドユーザーに近い場所にアプリケーションを配置することでパフォーマンスが向上した。

最後に、クラウドに移動したすべての企業に当てはまるわけではないが、彼らにとってはクラウドがより経済的な選択肢であることが本当に実証されたのだ。データセンターを閉鎖して、ハードウェアの購入費用や、それを維持するためのIT担当者を雇用することに伴うコストを削減することによって、全体のコストを削減することができた。

人間的側面の管理

これは長期にわたるプロジェクトだったが、彼らはそれと同様に、人間的側面も考える必要に迫られていた。彼らは、技術者が常に新鮮な気持ちでいられるように配置換えを行い、移行支援作業で技術者たちを疲弊させないようにした。

企業文化そのものも役立ったものの1つだ。Viswanathはそれを率直に、オープンなコミュニケーションと、問題を隠し立てしない文化によるものだと説明した。「わたしたちはオープンなコミュニケーションの維持を心がけています。たとえ物事がうまく進んでいないときでもそれは変わりません。もし自分の手に負えなくなったときには、エンジニアは手を挙げて助けを求めます。そうすることで私たちは支援を行うことができるのです」と彼は言う。

彼は同社の中にある種の不安があったことを認めた。彼個人にしてもこの規模のプロジェクトの実施に関しては不安を抱えていた。しかし彼らは組織の未来のためには、これを行う必要があることを理解していたのだ。「もしこのプロジェクトがうまくいかなければどうなるんだ、という緊張は確かにありました。でもその方向は正しいもののように見えましたし、私たちはそれをやらなければならなかったのです。真のリスクは、私たちが遂行に失敗して、あるべき利便性を実現しそこなうことでした」。

結局のところ、それは大変な作業だったが上手く行き、将来のためのシステムを手にすることができた。「次の10年を戦う準備が整いました」と彼は言った。

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(翻訳:sako)

画像: erhui1979 / Getty Images

ワークフローオートメーションのWorkatoが1000万ドルのシリーズAを公表

この日はスタートアップであるWorkatoにとって、記念すべき日となった。なにしろ1000万ドルのシリーズAを公表し、同時にワークフローオートメーションプラットフォームであるTuringの最新版の発表を行なうこともできたからだ。

このラウンドは、Storm Venturesの主導により進められ、戦略的投資家たちであるSalesforce VenturesとWorkday Venturesが参加した。設立4年の同社は、これで合計1600万ドルを調達した。

Workatoは、さまざまなSaaSアプリケーションとAPIの接続を可能な限り自動化することで、企業のワークフローの統合を簡単にするものだ。これでSalesforceとWorkdayがそのようなコンテキストの中で、同社を投資対象にふさわしいと判断した理由がわかるだろう。

SaaSアプリケーションの魅力の1つは、単体ですぐに使えることだが、アプリケーション間の連携やワークフローを構築しようとする場合には、事態はやや複雑になる。WorkatoのCEOであるVijay Tellaは、そうしたときには、たとえ単純なツール間連携だとしてもIT部門への依頼が発生するのだと語る。

しかし彼は、それは独立性を求めているエンドユーザーにはふさわしくないと言う。またIT部門も、マーケティング、セールス、ファイナンス、その他の部門のナレッジワーカーたちに、開発者スキルを必要とせずに、必要な統合を構築するためのツールを提供したいと考えている。

よって同社はWorkatoを開発して、可能な限り自動化を行い、ツール間の論理的なフローを提案することで、そうしたエンドユーザーたちが、ワークフローをより簡単に構築できるようにしたのだ。このソリューションでは、基礎となる機械学習アルゴリズムに基づいて、そうした提案を対話形式で行っていく。ユーザーがニーズに合わせてそれらのレシピを調整すると、システムは学習して、より完全なものを提供するようになる、とTellaは語る。

Turingのベータ期間中、Tellaは、レシピの55%が自動作成され、ユーザーに対して提案という形で提示されたと述べた。提案の形式はユーザーが諾否を与えるか、いくつかのオプションを与えることで調整されるようなものだった。

どのようなプロセスも、絶対確実というわけには行かないので、レシピがシステム連携の途中で何らかの理由で失敗した時には、機械学習を用いて自己修復(もしくは少なくとも可能な対応を提案する)を行う。こうした手段の一部には、レシピフローをコードではなく平易な言語で表示することも含まれている。このことにより、ユーザー自身による修正および再実行が可能になる。

Workatoによれば、最初の1週間で顧客の78%が製品を使えるようになると主張している。Workatoが、そのまま使えるたくさんの典型的な統合レシピを、SalesforceやWorkday向けだけでなく(それだけでも驚きだが)、ZendeskやSlack、その他沢山のサービスに対しても用意していることはとても便利だ。

同社は、その製品が、Box、IBM、Cisco、Ideo、Credoなどを含む、2万1000を超える組織で使用されていると報告している。

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(翻訳:Sako)

FEATURED IMAGE: ADE AKINRUJOMU/GETTY IMAGES

SaaS株好調の中、ついにDropboxがIPO準備中との噂――年内上場の可能性も

【編集部注】執筆者のAlex WilhelmはCrunchbase Newsの編集長で、VCに関するTechCrunchのポッドキャストEquityの共同司会者でもある。

設立からかなりの時間が経ち、その間にエンタープライズ向けサービスへのピボット、そして2つの新たな信用枠の獲得を果たし、これまでに大金を調達しながらも再度コスト削減に努めているDropboxが、ようやくIPOに向けて動き始めたかもしれない。

ロイターによれば、クラウドストレージサービス(恐らくDropboxは「エンタープライズ向けプロダクティビティソフト」という情報も追加してほしいと考えているのだろうが)を提供する同社は、「年内のIPOに向けて、引受人を探している」ようだ。

さらに同記事は、DropboxのIPOが「Snap Inc以来、アメリカのテック企業としては最大級」になる可能性があり、情報源については「本件に詳しい情報筋」としている。私たちはロイターの報道内容の中でも、特に引用した箇所に注目している。というのも、ここにはタイミングと規模という、IPOに関して私たちがもっとも気にかけている情報が含まれているのだ。

もっと簡単に言うと、私たちはいつ今年が終わるか知っているし、SnapのIPOについても知っているので、もし全てがロイターの記事通りだとすれば、DropboxのIPOのタイミングは実質的にどちらかに絞られたことになる。

だが、恐らく人々の関心は収益と評価額に向いているだろうから、まずはその話をしよう。

収益、キャッシュフロー、上辺の利益、本当の損失

TechCrunchでは、Dropboxが今年の春に発表した業績に関連して「Dropbox really wants us to know its finances are healthy(Dropboxは健全な経営状況をかなりアピールしたいようだ)」と題された記事を公開した。

会社が健全な状態にあるというのは素晴らしいことだし、特に何か言うべきこともない。ちょうどいいので、去年から今までに発表(自主的かどうかは別として)されたDropboxのマイルストーンを確認してみよう。

そして今月に入って、DropboxはIPOに向かって動き出したと言われている。

各マイルストーンを確認したのは、読者の皆さん(そしてこの記事を書いた私自身)を退屈させるためではなく、他の企業と比較する上で重要な点を洗い出すためだ。その結果、良くも悪くもBoxが上場企業の中ではDropboxのベンチマークとしてふさわしいことがわかった。次は収益や評価額を比較するため、収益の質について考えたい。

企業価値はどのくらいなのか?

Dropboxの10億ドルという収益額は直近12ヶ月のものではない。彼らの正式なコメントは次の通りだ。「Dropbox is proud to announce that our business has surpassed $1 billion in revenue run rate(Dropboxのランレートがこの度10億ドルを突破したことをお知らせします)」

同社のコメントには、通常SaaS企業が収益を表すときに使う言葉が入っていない。それは月間ランレート(MRR)と年間ランレート(ARR)だ。

しかしDropboxは、コメントを発表したブログポストの中で、自分たちの業績を数十億ドルのARRを誇るSalesforceなどのSaaS企業と直接比較していたため、この10億ドルという数字をARRと解釈しても問題ないだろう。

それでは、今年の第1四半期にDropboxが10億ドルのARRを達成したと仮定しよう。つまり、私の脳がきちんと動いていれば、第1四半期のランレートは2億5000ドルだったということになる(非公開企業の情報は限られているので、ここではかなり大雑把に計算している。しかし、少なくともDropboxは真実を伝えているとしよう)。

これでDropboxの指標が揃った。四半期収益が2億5000万ドルでフリーキャッシュフローはポジティブ、さらにEBITDAベースで黒字、というのが同社の現状だ。

次は直近の四半期(2017年4月30日締め)における、Boxの業績を見てみよう。

  • 収益:1億1700万ドル
  • 営業・フリーキャッシュフロー:共にポジティブ
  • EBITDA:ネガティブ

Dropboxよりも規模の小さなBoxだが、フリーキャッシュフローはDropboxよりも早いタイミングでポジティブになり、前年比での成長率は30%を記録している。Dropboxの成長率に関する情報は手元にないが、同社の数字の多くはBoxのものに近いため、成長率も同じくらいの水準と考えることにする。

では、Boxの収益の質はどうなのか? 直近12か月の収益をもとにした同社の株価売上高倍率は5.73だ。また、今年の第1四半期の収益を4倍にしたものを年間収益と仮定した場合、株価売上高倍率は5.2となる。将来的な収益を割り引いて現在価値を求めると、この数字はさらに下がるが、そこまではしないでおこう。

いずれにしろ、これでかなり比較しやすくなった。先述の通りDropboxの成長率はBoxとほぼ同じだと仮定し、Boxの株価売上高倍率である5.2と、Dropboxの10億ドルという(仮定上の)年間収益を使ってDropboxの評価額を算出すると……約52億ドルということになる。

さらに、DropboxはBoxと違ってEBITDAベースで黒字のため、Dropboxの評価額はここから上がる可能性がある。また、もしもDropboxがBoxを上回るスピードで成長すれば、投資家はさらにDropboxの評価額を吊り上げるだろう。そして最後に、Dropboxは長らくフリーキャッシュフローをポジティブに保ってきたため、バランスシート上もBoxを凌駕しているかもしれず、これはIPO時の時価総額に良い影響を与えるだろう。

実際どうなるかはこれからの様子を見守っていくしかないが、一部のテック株が史上最高額に近い値をつけている中でDropboxが上場を狙っているということは注目に値する。まさにブームといったところか。その一方で、結局直近のラウンドよりも低い評価額がつくという可能性ももちろんある。

ここで冒頭の問いをもう一度見てみよう。

さらに同記事は、DropboxのIPOが「Snap Inc以来、アメリカのテック企業としては最大級」になる可能性があり、情報源については「本件に詳しい情報筋」としている。私たちはロイターの報道内容の中でも、特に引用した箇所に注目している。というのも、ここにはタイミングと規模というIPOに関して私たちがもっとも気にする情報が含まれているのだ。

そしてSnapのIPOの規模については、Forbesが以下のように報じている。

Snap Inc.は売り出し価格17ドルで水曜日に上場し、時価総額は236億ドルに達した。人気メッセージングアプリSnapchatの開発元である同社は、2億株を発行し、2014年以来最高額となるIPOで34億ドルを調達したと言われている。

SnapのIPOは規模が大きすぎるため、Dropboxの上場のシグナルとなる評価額の上限値はハッキリと見えないが、現時点の情報でできることはこのくらいだ。情報量が増えてくれば、さらに細かな分析ができるようになるだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

SaaSは年平均10%で成長、API連携によるエコシステム構築が進む――スマートキャンプがレポート公開

クラウド会計のfreee、家計簿アプリのマネーフォワード、名刺管理のSansan、ビジネスSNSのWantedly、コミュニケーションツールのChatWorkなどに代表されるクラウドサービス。もはや、これらのサービス名を一度も聞いたことがない人など皆無だろう。TechCrunch Japan読者には、これらのサービスのヘビーユーザーだという人も多くいるはずだ。

また、2016年1月にChatWorkが15億円、2016年10月にマネーフォワードが11億円、2016年12月にはfreeeが33.5億円を調達するなど、近年クラウドサービスを提供するスタートアップの大型資金調達ニュースをよく耳にするようになり、業界内での存在感も年々増している。

そんな中、クラウドサービスの比較サイト「ボクシル」を運営するスマートキャンプは、SaaS業界の全体像やトレンドをまとめた「SaaS業界レポート 2016-2017」を公開した。

SaaS市場は年平均成長率10%のスピードで成長

本レポートによれば、クラウドサービスの普及率は毎年増加しており、2015年末には40%を超える企業がクラウドサービスを利用しているという。なかでも、SaaS市場は年平均成長率10%を超える勢いで成長。2015年はおよそ1兆円だった市場規模が、2020年には1.3兆円になる見通しだ。

特に、デジタルマーケティング、ビッグデータ、人工知能、働き方をテーマとしたサービスは今後大きく成長すると見られている。

導入の決め手はイニシャルコストの低さと運用の容易さ

企業がクラウドサービスを利用する理由を聞いたアンケート結果を見てみると、「保守体制を社内に持つ必要がない」、「どこでもサービスを利用できる」、「初期導入コストが安価」などの意見が多いことが分かる。クラウドサービスならではの、低いイニシャルコストや運用の容易さが導入の決め手となっているようだ。

ただ、逆にクラウドサービスを利用していない理由を見てみると、セキュリティへの不安の声をおさえて「必要がない」という意見が42.9%で一番多い。企業はすでに導入しているオンプレミス型のシステムで十分だと思っているか、もしくはクラウドサービスの魅力や必要性が伝わっていない可能性がある。

クラウドサービスの普及率は、業務の種類や領域によっても異なるようだ。ファイル保管や給与計算などの汎用業務ではクラウドサービスの普及が進んでいる。その一方で、生産管理や決済システムなど、カスタマイズ性が求められる業務では普及が進んでいない。このような領域では、高度なカスタマイズが可能なオンプレミス型に軍配が上がる。

SaaS業界を取り巻くトレンド

本レポートを公開したスマートキャンプは、いまのSaaS業界には6つのトレンドがあると主張する:

  1. エコシステムの構築
  2. プラットフォーム化
  3. Vertical SaaSの台頭
  4. UI/UXの最適化
  5. 人工知能の活用
  6. 新たな脅威・無駄対策(セキュリティなど)

本レポートではSaaSを2つの種類に分けて説明している。業界を問わず特定の部門や機能に特化した”Horizontal SaaS”と、特定の業界に特化した”Vertical SaaS”だ。

マネーフォワードやSansanなどのサービスはHorizontal SaaSに当てはまる。現在はこちらのタイプが業界の主流となっていて、数も多い。もう一方のVertical SaaSの例としては、飲食分野のユビレジや教育のCAMPUS4などがある。スマートキャンプが作成した以下のカオスマップを参考にしてほしい。

Vertical SaaSのカオスマップ

Horizontal SaaS業界はベンダー同士が連携してエコシステムを構築することで付加価値を高める”SaaS 3.0”の時代に突入したとスマートキャンプは主張する。その一方で、スマートキャンプが「台頭し始めている」と表現するVeritical SaaSは、ベンダーが1つのサービスをポイントソリューションとして提供する”SaaS 1.0”から、ベンダーが自社のサービス同士を連携させることで付加価値を高める”SaaS 2.0”へ移行する途中の段階だとしている。

実際、Horizontal SaaSに属するマネーフォワードは、他のHRサービスと連携できるようにAPIを公開しているし、メガバンクが公開する「更新系API」を活用した機能を実装している。

これが本レポートが言うところの「エコシステムの構築」と呼ばれるトレンドだ。つい先日の5月26日、更新APIの利用を促す内容が盛り込まれた改正銀行法(概要PDF)が成立したばかりということもあり、このトレンドが現在進行中でかつ一番大きなトレンドではないだろうか。

他の5つのトレンドの説明を含む本レポートの全文は、こちらのWebページからダウンロードできる(レポートの購読には無料の会員登録が必要だ)。

視覚的な共有ボードでプロジェクトを管理―、Milanoteの開発元が78万ドルを調達

アイディアの種を発見したり、インスピレーションを刺激したりするのに役立つソフトを探しているクリエイティブな職業の人たちが選択肢に困ることはあまりない。Pinterestのような主流の画像共有プラットフォームから、デザインに焦点をあてたムードボード作成ツールのNiiceまで、さまざまなツールがネット上には存在する。しかし、ライターごとに好みの作業環境が違うように、ビジュアルコンテンツを作成する人たちのニーズもさまざまだ。そこでMilanoteの開発元であるオーストラリアのスタートアップは、まだこの分野にはチャンスが残されていると考えた。

Milanoteのプラットフォームからは、EvernoteやPinterestの影響を垣間見ることができる。Milanoteのチームも同プラットフォームのことを「クリエイティブ向けのEvernote」と呼んでいるくらいだ。基本的には、「ボード」と呼ばれるスペース上に、ドラッグ・アンド・ドロップで画像や文字を配置することで、ユーザーはアイディアをグループ分けしたり、ムードボードを作ったりすることができる。さらに、画像や文字を別のボードに移動することで、ボードがフォルダ代わりになるので、各アセットの保管やリンク付けにも便利だ。

ボードは共有可能なので、関係者でひとつのボードを一緒に更新していくこともできる。さらにMilanoteにはToDo機能も搭載されている。こうして全体を見てみると、このプラットフォームはデザイナーが色々と試すためのものというより(もちろんそれも可能だが)は、多目的ツールのように感じられる。その一方で、例えば研究の進捗を管理したり、画像つきのチェックリストを作ったり、出来事を記録したりするためのツールとしても使えるだろう。

Milanoteはもともと、別のビジネス(UXデザイン会社)用の社内ツールとして開発されたのだが、その後彼らは独立したプロダクトとしてMilanoteを開発していくことに決めた。2月にローンチされたMilanoteのユーザー数は、これまでに3万5000人に増加したとCEOのOllie Campbellは言う。さらに彼によれば、現在Milanoteを利用しているユーザーの主な職業は、「デザイナー、ライター、マーケターなどクリエイティブなもの」で、勤務先にはFacebookやApple、Uber、Dropbox、Google、Adobe、Sony、Nikeなどが含まれているという。

Milanoteのチームは、Simon Martin(MYOBの前CFO)がリードインベスターを務めたシードラウンドで、78万ドルを調達したばかりだ。この資金は、「ウェブ上からインスピレーションを刺激しそうなものをかき集める機能など、クリエイティブなタスクに欠かせないもの」とCampbellが表現する機能(既に「Pinterestスタイルのウェブクリッパー」は導入済)の開発に充てられるほか、動画などさまざまなファイル形式をサポートするためにも利用される予定だ。

さらに彼らはコラボレーション機能も強化しようとしており、顧客からのフィードバックを受け取る機能やアップデート内容にコメントをつける機能などの追加を予定している。

コアユーザーについて尋ねたところ、Campbellは「Milanoteは(TrelloやEvernoteなどのように)とても”水平的”なツールなので、建設作業員や詩人、アーティスト、作家、ゲームデザイナーなど、ユーザーにはさまざまな分野や職種の人がいます。中にはMilanote上で小説を書いている人や、教会での説教の内容を考えたり、美術展の準備をしたりする人までいます。しかし、私たちの主要なターゲット層は、”ビジュアル・クリエイティブ・プロフェッショナル”と私たちが呼んでいる人たちです」と答えた。

「クリエイティブな仕事で重要なのは、既存のアイディアを上手く組み合わせたり、合成したりして何か新しいものを生み出すということです。しかし多くの人は、作業内容に応じて異なるツールやプラットフォームを利用しているので、一か所で全ての作業を行えないという問題を抱えています。例えば、画像はPinterestでノートはEvernote、タスク管理はTrello、ファイル管理はDropbox、メッセージのやりとりはSlackといった具合です。ツールが細分化すると全体像が見づらくなり、なかなかゴールにたどり着けなくなってしまいます」と彼は続ける。

「Milanoteの売りは、全ての作業が一か所でできるということです。さまざまな情報を一か所に集め、それぞれの関係性を見つけることで、新しいアイディアが生まれやすくなるのです」

Milanoteはフリーミアムモデルを採用しており、無料会員だと使えるノートや画像、リンクの数に限りがある。料金は1人で利用するのか、チームで利用するのかで異なるが、有料会員であれば無制限に各アイテムをボード上に配置できる。

Milanoteはユーザーにプロジェクトの関連情報をプラットフォーム上にまとめることを推奨しているため、今後膨大なストレージ容量が必要になり、それが料金プランにも反映される可能性がある。しかし、そもそも”空間的なコミュニケーション”と彼らが呼んでいるコンセプトを求める人たちと、既存のツールをそれぞれのタイミングで(コミュニケーションにSlack、ファイルの保管と共有にDropbox、ムードボードの作成と共有にPinterest、共同作業にGoogle Docsといった具合で)使う人たちのどちらが多いかというのはまだ分からない。

アイディアをこねくり回すことが要される職業では、”餅は餅屋”と考えている人が多そうだが、Milanoteのチームは、彼らのプラットフォームが少なくともある程度の収益をあげるだけのポテンシャルを秘めていると考えているようだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

IBMがクラウド上のブロックチェーンサービス、SaaSとしてのブロックチェーンプラットホームを立ち上げ

IBMが今日(米国時間3/20)、クラウド上の汎用ブロックチェーンプラットホーム、いわば“Blockchain as a Service”を、The Linux FoundationのオープンソースプロジェクトHyperledger Fabricバージョン1.0をベースに構築し、公開した。

IBMのBlockchainは一般公開されるクラウドサービスで、ユーザーはこれを利用して安全なブロックチェーンネットワークを構築できる。同社がその計画を発表したのは昨年だったが、このほど最初の実用実装の供用にこぎつけた。

ブロックチェーンは2008年ごろに、デジタル通貨Bitcoinの取引記録方法としてその名が知られ始めた。ブロックチェーンは本質的に、透明で改ざん不能なデジタル台帳だ。Bitcoinの取引を安全かつ透明に記録できることが示しているように、そのほかのタイプのデータもプライベートなブロックチェーンに安全に保存したり取り出したりできる。

民間企業や政府機関は、ブロックチェーンを使って信頼性の高いネットワークを構成できる。それによりメンバーは自由に情報を共有でき、それはメンバーだけが見ることができ、いったん入力された情報は書き換えられない。

IBMでブロックチェーンを担当しているVP Jerry Cuomoによると、顧客は同社のこのクラウドサービスを利用して、ブロックチェーンのネットワークを作成、展開、そして管理できる。これは、いろんな種類のクラウドサービスを顧客に提供していきたいとするIBMの基本戦略の、一環だ。

ブロックチェーンそのものはオープンソースのHyperledger Fabricプロジェクトがベースで、IBMもこのプロジェクトに参加しているが、これに独自のセキュリティサービスを加えることによって、エンタープライズの顧客でも安心して利用できるようにしている。また複雑な技術をシンプルなクラウドサービスでくるんでいるので、企業が自前でブロックチェーンを実装するよりもずっと楽である。

Cuomoはこう語る: “かなり前から、わが社を中心とするテクノロジー企業のグループが、企業のためにブロックチェーンとその関連技術(管理など)の一式を、サービスとして提供することを検討していた”。

そして2015年の終わりにHyperledger Fabricプロジェクトが登場して、それが可能になった。このプロジェクトには、State Street Bank, Accenture, Fujitsu, Intel などもメンバーとして参加している。

Hyperledger Fabricを利用すると、顧客側には安全なネットワークを構築するという外見があるだけで、ネットワークのセットアップやメンバーの招待、認証情報の暗号化などはすべて楽屋裏で行われる。またIBMのクラウドでは、IBM独自のセキュリティも盛り込まれるから、なお一層安全になる、と同社は考えている。

IBMのブロックチェーンサービスが絶対不可侵とまではCuomoも言わないが、独自の安全対策は施している、という。たとえば、その台帳はそのほかの一般的なクラウドコンピューティング環境からは隔離され、特製のセキュリティコンテナに台帳を収めることによって、無資格アクセスを防止している。また、セキュリティ耐性の強い、専用のハードウェアを使用している。たとえばそのハードウェアは、ハックを検出すると直ちに自分で自分をシャットダウンする。

同じくIBM独自のセキュリティ対策として、ネットワーク内で起きるあらゆるアクティビティを仔細に監査できるようにしている。アドミニストレーターは、異変時に監査記録をすぐに見ることができる。

IBMはこのブロックチェーンサービス本体に加えて、顧客のアイデンティティと属性を安全にシェアするブロックチェーンの実装SecureKey Technologiesを発表した。同社はこれまで、ブロックチェーンの応用技術として消費者のアイデンティティネットワークを、カナダの銀行でテストしてきたが、これはその派生システムでもある。

それがIBMの主張どおりなら、デジタル世界におけるアイデンティティのメンテナンスと共有が、大幅に単純化されると同時に、安全にもなるだろう。そして、毎回不必要な情報を入力することはなくなり、また共有化を途中で拒否することも、容易にできるようになるはずだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Node.jsインフラストラクチャの監視ツールKeymetricsが200万ドルを調達

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フランスのスタートアップKeymetricsは、Node.jsのインフラストラクチャのための最高の監視ツールを構築するために、Alven CapitalRuna Capitalから200万ドルを調達した。同スタートアップの創業者兼CEOのAlexandre Strzelewiczは、人気の高いオープンソースのNode.jsプロセスマネージャPM2を作成した人物だ。

どうすれば人気のあるオープンソースプロジェクトを、成功するスタートアップへと転換できるだろうか?この問には沢山の異なる回答があり得る。最初から正しい答を探すことは難しく、Keymetricsにとってもそれは例外ではなかった。

数年前のこと、当時上海に住んでいたStrzelewiczがPM2を開発したときには、彼はただ既存のソリューションに欠けている、Node.jsのためのより良いプロセスマネージャーを作ろうとしていただけだった。彼は、そのオープンソースリリースがHacker Newsで取り上げられて、Googleや、ブラジルや日本に住む人たちからの貢献を引きつけることになるとは予想していなかったのだ。

PM2を使えば、Node.jsサービスがいつでも運用されているようにすることができる、何故ならPM2はアプリのクラッシュを検知してそれを再起動することができるからだ。PM2はまたアプリケーションのリプリケーションを行い、大きなトラフィックピークがやってきたときには、これらのアプリケーションの間でクエリーのバランスをとる働きをする。

もし開発者でなければ、上で述べたことは少々複雑に聞こえるかもしれないが、既に何千人ものNode.js開発者がGithub上のリポジトリをフォローして、合計でPM2は2000万回以上もダウンロードされている。Node.js自身も、最近はますます人気を得るようになって来ている。Keymetricsは、PM2のダウンロードをリアルタイムに視覚化する綺麗なマップもローンチした。この記事のトップに埋め込まれたGIFのライブバージョンだ。

こうしてStrzelewiczは何かを掘り当てたことに気が付き、Keymetricsを開発した。もしインフラのためにPM2を利用しているいるのなら、Keymetricsは完璧な補完サービスだ。複数のサーバーに跨るアプリを、リアルタイムダッシュボードを使って、モニタし管理を行うことができる。ダッシュボード自身、セットアップの手間はほとんどかからない。

アプリケーション・デモ

「Keymetricsは、1つまたは複数のPM2インスタンスに直接接続するSaaS(サービスとしてのソフトウェア)ダッシュボードです」とStrzelewiczは私に語った。「PM2管理下のアプリケーションの、パフォーマンスメトリクスを収集することを可能にします。そして、アプリケーションがクラッシュしたり、コンピューター資源が枯渇したりした場合に通知が行われます」。

2015年の初め、KeymetricsはTechstars NYCに出展し、首尾は上々かと思われた。しかし、欠けている機能が1つあった。同社はまだ支払いオプションを提供していなかったのだ。このため、TechstarsのあとKeymetricsは資金を調達できず、Strzelewiczは全員を解雇せざるを得なかった。

ゆっくりと、しかし着実に、Strzelewiczはゼロから会社を再建した。彼はまず、支払いオプションを実装し、最初のクライアントを獲得した。パリの公式ウェブサイトだ。

既に、NewRelic、Appdynamics、そしてとDynatraceのような、多くのアプリケーションパフォーマンス管理ソリューションが存在している。しかし既にPM2を実行している場合には、Keymetricsは間違いなく最良の選択肢だ。

Keymetricsは毎秒メトリクスを追跡するので、まるでリアルタイムダッシュボードのように感じられる。そして、アラートを即時に受け取ることができる。そして、現在のコードベースとインフラストラクチャに関する、レポートと洞察を取り出すことができる。

これまでのところ、Keymetricsはおよそ100顧客を抱えているが、今回の資金調達を使って次のレベルへ進むことを計画している。顧客は平均で月額約90ドルを支払う。

資金調達の発表に目を眩まされるのは簡単だ。そしてもちろん、ハイテクジャーナリストも「資金調達チアリーディング問題」の一部である。しかし、騙されないで欲しい。

スタートアップを始めることは、信じられない位困難なことだ。何ヶ月も1人で、それが報われることを願いながら、働き続けなければならないこともある。この苦労は一夜の成功のようにセクシーではない。しかし、一夜の成功など神話に過ぎない。

ハイテク起業家が早期に苦労すると、次に来るものに素早く対応できるようになる傾向がある。Keymetricsもこのパターンに従っているかどうかを見守ろう。

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(翻訳:Sako)

知らない間に大量のSaaSの会員になって無駄金を払っている人/企業のためのSaaS管理サービスCardlife

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今や、まったく使わないSaaSの会費に数十億ドルが浪費されている、と言われる。そろそろ、そんな会員契約を管理するSaaSが必要ではないか? そこで登場したのがCardlife、SaaS管理というすばらしい世界の新人だ。

“SaaS管理なんて、有名大企業のためのものじゃないの?”、とあなたは言うかもしれない。でも、違う! 同社は毎月、470万ドル相当のSaaSプロダクトを管理し、大企業から零細企業まで、あらゆるサイズの企業のお世話をしている。今、対象国は32か国、扱い額は年間5600万ドルに達する〔470×12〕。

“90%の企業が、どれだけ多くの会員契約をしているか掌握していない。でも会費は毎月、確実に支払われている。SaaSはそうやって、忘れられるように設計されているんだ”、とファウンダーのTzachi Davidovichは皮肉たっぷりに言う。“うちは顧客のアカウントを自動的にスキャンして、すべての会員契約を見つける。そしてうち独自のインテリジェンスとアナリティクスで、無駄な支払いや重複支払いを見つけて警告する”。

今同社は、SaaSディレクトリ(目録)というものを制作中だ。そしてそのSaaS一覧をもとに、顧客に、今使ってるのよりも良くて安いサービスを推奨する。つまり同社は、無駄なSaaSを切り捨てることと、新しいモアベターなSaaSを推奨することの、二面作戦を収益源にしている。

読者の中に、そんなに大量のSaaSと契約して巨額の会費が毎月自動引き落としになっている人は、そんなに多くないと思うけど、あなたが万一、そんなセレブや有名大企業のITになってしまったら、Cardlifeというサービスがあることを、思い出そう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

インドのPractoが5500万ドルを調達、アジアの新興国でヘルスケアプラットフォームを展開

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インドに拠点を置き、医師検索・医療情報サービスを展開中のPractoが、この度シリーズDで5500万ドルを調達し、世界中の新興国へのさらなる進出を狙っている。

今回のラウンドでリードインベスターになった中国の大手ネット企業Tencentは、2015年にPractoが9000万ドルを調達したシリーズCでもリードインベスターを務めていた。またロシアのRu-Net、日本のリクルートが運営するRSI Fund、そしてニューヨークのThrive Capitalが新規の投資家として、さらに既存の投資家であるSequoia、Matrix、Capital G(旧Google Capital)、Altimeter Capital、Sofinaもラウンドに参加していた。なお今回の調達資金を合わせると、これまでにPractoが調達した資金の合計額は1億8000万ドルに達する。

Practoのビジネスにはいつも感銘を受けてきた。というのも、同社はヘルスケアという全ての人に影響を与える課題に取り組んでおり、その中でも特に問題が深刻な新興国をターゲットとしたサービスを提供しているのだ。プラットフォームの基本機能としてPractoのユーザーは、インドやその他の新興国では簡単にはいかない医師の検索や、医師から提供された医療情報の入手、さらにはQ&A機能を使って簡単な質問への回答やアドバイスを受けることができる。

新興国では医師不足が深刻な状況にあり、Practoのサービスは大きなインパクトを持っている。世界銀行のデータによれば、インドでは国民1000人に対して内科医が0.7人しかおらず、この割合は郊外だとさらに下がる。ちなみにアメリカとイギリスを例にとると、それぞれの国民1000人に対する内科医の数は2.8人と2.5人だった。

消費者側の問題解決以外にも、PractoはSaaSモデルを採用し、診療データ管理用のソフトウェアを医療施設に向けて販売している。これにより医療関係者は、Practoの消費者側のサービスを使って、自分たちのサービスを広範囲にスケールする前に、ビジネスやプロセスをデジタル化することができるのだ。

Practoによれば、同社のサービスを通じて年間4500万件のアポイントが成立しており、現在プラットフォームには20万人の”医療関係者”と1万軒の病院、そして5000軒の診療センターが登録されている。またPractoのプラットフォームは、インド以外にもフィリピン、インドネシア、シンガポール、ブラジルで利用されており、医療従事者向けのソフトウェアは世界中の15カ国で利用されている。

Practoは今回調達した資金をさらなる海外展開に利用する予定で、既存新興市場でのビジネス拡大、新規新興市場(東南アジア、南米、中東、アフリカ)への進出を狙っている。

「既存の市場でもさらに投資を加速させていきます」とPracto CEOのShashank N.Dはインタビュー中に語った。

「昨年私たちはエンタープライズ向けのビジネスを強化するために(インドで)複数の企業を買収し、インドの消費者向けサービスの拡充も進めてきました。今後は既存市場をさらに深掘りすると同時に、中東など新市場の調査も行っていきます。私たちのビジョンは、世界中の人がより健康に長く生きるためのサポートをするということです」と彼は付け加える。

Practoは海外での業績についてあまり情報を明かさなかったが、ほとんどの海外市場へ参入したのが昨年だったことを考えるとそれも理解できる。

「SaaSとマーケットプレイスを利用し、Practoはこれまでに確かな収益構造を築いてきました。現在海外からの売上は全体の20〜25%を占めており順調に成長していますが、インドでの売上の方が大きな伸びを見せています」とShashankは話す。

さらにPractoはTencentと密に協力しながら、今後医療保険の分野へ参入しようとしている。Tencentは数ある事業のひとつとしてWeChatを運営しており、これは中国で一番人気のメッセージアプリかつ驚異的なスティッキネスを誇るモバイルプラットフォームだ。WeChatのデイリーユーザー数は7億6800万人を記録しており、そのうち半分が1日あたり少なくとも90分間このアプリを使用している。

WeChatのようなプラットフォームをつくるノウハウこそ、PractoがTencentから学ぼうとしている点であり、ほかにも医療業界にいるTencentのパートナー企業を通して、中国でテクノロジーがどのようにヘルスケアに影響を与えているかについて情報を集めているとShashankは付け加える。

「昨年は一年を通して、Practoのプラットフォーム化に注力していました。ここで言うプラットフォームとは、消費者の医療に関するニーズをワンストップで満たせるような総合プラットフォームを指しています」と彼は話す。

TencentはPractoのこの動きを、実際のアクションをもって支援している。Practoへの投資は同社にとって初めての大規模投資案件であり、次回のラウンドでもTencentはリードインベスターを務めようとしているのだ。

「Practoはこれまでに素晴らしい成長を遂げ、同社がカバーする消費者と医療従事者のニーズの幅もだんだんと広がってきました。ヘルスケアの分野でフルスタックのモデルを確立することは大変難しいことですが、Practoは実際にプラットフォームを構築して急速にスケールしています。これは世界的にみても珍しい例です」とTencentの投資・M&A担当執行取締役であるHongwei Chenは声明の中で熱く語った。

2011年のシードラウンドからしばらくが経ってビジネスが成長し、海外での業況も上向いているが、ShashankはまだPractoのエグジットは考えていないと言う。

「今回のラウンドで資金に余裕が出たこともあり、特にIPOに向けた具体的な計画も立てていません。新興国のヘルスケア市場ははじまったばかりで、テクノロジーをヘルスケア分野で活用するというコンセプトも浸透していないので、まだまだ成長の余地はあると考えています」と彼は話す。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

BetterCloudが2年がかりの大規模改築工事でG Suite管理サービスから汎用SaaS管理へ変身

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5年前にG Suite(Google Apps for Work)ユーザーのための管理サービスとして立ち上がったBetterCloudが、もっと一般的なSaaS管理サービスへの全面的な変身を図り、今日(米国時間12/6)、その新しいプラットホームを披露した。

CEOのDavid Politisによると、同社はサービスの設計を完全に一新し、これまでの一枚岩的なアプリケーションから、コンテナとマイクロサービスをベースとするより現代的なアーキテクチャに変わった。同社のその新しいサービスには、さまざまなAPIを呼び出して外部サービスに接続する、という重要な機能がある。これにより、Googleのスイートだけでなく、APIを公開しているSaaSアプリケーションなら何でも管理できるようになった。

Politisによると、今回の変身には、2年という年月を要している。彼のその長期ビジョンは、投資家と社員と顧客の、忍耐を試す試金石となったが、しかし彼によると、その困難な改築工事を成し遂げたことによって、今の同社には新しいツールを迅速に加えることのできる能力が備わっている。同社のサービスの旧バージョン〔コンテナベースでない〕では、それは、不可能ではないまでも、きわめて困難だっただろう。

新しいSaaS管理サービスは集中管理的なダッシュボードを顧客に提供するが、そこから引き続いてG Suiteの管理もサポートされる。顧客はユーザーのアクティビティを非常に詳細なレベルで管理できるだけでなく、そこからそのほかのサービスにプラグインすることもできる。今のところそれらは、Slack, Zendesk, そしてDropboxだ。今後はSalesforceなど10あまりのサービスを統合していく予定だ。

BetterCloudの新製品の中心的なコンセプトは、顧客企業のITに、その企業が利用しているクラウドサービスを一元管理/制御できるためのツールを提供することだ。たとえばそれは、今どの社員が何のシステムを使っているか、どんな外部アプリケーションを動かしているか、その人のユーザー特権は何か、などを詳細に把握管理する必要がある。また、さまざまな状況に応じて、xxxが起きたらyyyをせよ、というタイプのワークフローの集合を定義しなければならない。たとえば、ふつうのユーザーに突然アドミン特権がある、という事態が生じたら、パスワードをリセットし、IT用の認証チケットを作り、Slackに注意報を送らなければならないだろう。

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写真提供: BetterCloud

Politisによれば、このような幅広いクラウド管理アプリケーションが実は最初から目標だったが、最初はあえてG Suite一本に絞った。彼は説明する: “BetterCloudを作ったとき、これをすべてのSaaSアプリケーションに対してできたら、どんなにすばらしいだろうか、と夢想した。しかしそうするとAPI呼び出しに依存する複雑な部分が増え、毎日何十億ものAPI呼び出しをすることになる、という高い壁が目の前にあった。その壁を、今日やっと、乗り越えることができた”。

取締役会や投資家たちとさんざん議論を重ねた挙句、彼は、プラットホームの完全なオーバーホールをやるべきだ、と決断した。それには、彼自身の計算によるギャンブル、という側面もあったが、でもその構想には現代的なプログラミングの原理原則の、堅固な基盤があり、また今後の大きな市場拡大の可能性もあった。G Suiteだけでなく、さまざまなSaaSアプリケーションを、単一のダッシュボードから管理制御できる新製品なら、今後の大きな需要を望める、と彼は考えた。

若いスタートアップが全面的な変身を図ることは決して容易ではない。しかしPolitisによれば、2年間、あれほどしんどい仕事をみんなでこなしてきたのだから、そのご褒美はきっとあるはずだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

オンラインプレゼンテーション作成・共有ツールのSlides

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ミーティングがなくなることは恐らく決してないだろう – それに伴いプレゼンテーションがなくなることも。しかし、プレゼンテーションを作るためのこれまでのやり方は、少々時代遅れなものになっている。PowerPointなどのツールは定期的なアップデートを繰り返しているが、それらはプレゼンテーションに対するある種の簡潔さに欠けている。

それこそが、Owen BossolaとHakim El Hattabの2人が、スライドショープレゼンテーションの作成、表示、コラボレーションのためのオンラインサービスであるSlidesを始めることに決めた理由である。Slidesの目標は、世の中に散在するPowerPointやSlideShareといったプレゼンテーション管理サービスの、最も優れた部分を取り入れて、1つのシームレスな使い勝手を提供することだ。

「ビジュアルストーリーの需要は常にあります、そしてSlidesのコアはビジュアルストーリーツールなのです」とEl Hattabは語った。「たぶん、Slackを使ったもっと効率的なコミュニケーションも可能でしょう、しかしセールスやマーケティングや教育の場には、プレゼンテーションソフトウェアを必要とするユースケースが存在しています。人々はそれぞれが異なるやり方でプレゼンテーションを行います。私たちはそれら全てに取り組みたいのです」。

スライド作成の使い勝手は、あなたが期待するやりかたにほぼ沿っている。他の多くの作成ツールの中にも存在する各種機能を見つけることができるだろう、そして作成後、ユーザーはプレゼンテーションへのリンクを共有することが可能で、ミーティングの最中にリアルタイムにそれらを広げて見せることが可能だ。また限定的なコメント機能もサービスには組み込まれているが、現段階ではまだ実験的なものだ。これはBossolaとEl Hattabが、機能を急激に膨らませることは避けたいと考えているためだ。

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スライドショーを行う者は、プレゼンテーション内に他のサービスからのコンテンツを埋め込むこともできる。すべてがオンラインで閲覧されていて、したがって、すべてのものがWeb上でレンダリングされているので、込み入ったPDFファイルや3Dビジュアルをダウンロードすることに比べて複雑なビジュアルのレンダリングも、よりシームレスなものになり得る。

オンラインですべてをレンダリングすることには別の利点もある:任意のデバイス上で閲覧することができるということだ。こうすれば、実際にその場にいなくても、電話やタブレットを使ったカンファレンスコールを通して、リアルタイムに遠隔からプレゼンテーションを見ることができるようになる。プレゼンターがスライドをめくれば、遠隔のデバイス上でも同じことが起きる。

こしたことがすべてSlidesの中で行うことができる、なぜならプレゼンテーションをより柔軟にすることに彼らはアプローチしているからだ。作成ツールの使い勝手は他の標準的なツールに比べて遜色ないものである(むしろ既存のものよりも幾分巧妙にも見える)、例えばカラースキームを変更する機能はテキストが暗い背景の中に沈んでしまわないようにしている。オブジェクトはグリッドに自動整列し、外部からのコンテンツの取り込みも容易で、事前に用意されたテンプレートにアクセスすることもできる ‐ それらが同社によって作られたものか、あるいは同社によって提供されるストックスライドであるかは問わない。

プレゼンターはまた、自分の携帯電話をクリックを行いノートを書き込むアプリケーションで使うことが可能で、スライドを先に進めたり、スライドのノートを参照したりすることができる。このツールは – 開発者にとってもとても柔軟なものだが ‐ 明らかにマーケティングを行うひとやプレゼンテーションをまとめ上げる必要のあるひとを狙っていて、その全てのプロセスを可能な限りシームレスなものにしようと努力している。当然のことながら、このための大きな市場が存在している(もしそれがなければPowerPointのような巨大なアプリケーションが定期的な更新を行うことはない)。

「私たちのフォーマットは、その終端は結局ウェブサイトなので、あなたはプレゼンテーションのためのウェブサイトを持っていることになります」とBossolaは言う。「そのウェブサイトの中で、あなたはウェブサイトに含めることができるものは何でも含めることができます。こうした特定の機能の中で、数式を書くのにテキストを使うひとたちが教育現場には沢山います。ウェブベースですので、私たちは即座に柔軟に対応することができるのです」。

明らかな適用シーンが存在している。大学でプレゼンテーションをする際に、この種のツールがあると素晴らしい。例えば、他のツールを求めてウェブをさまよったり、学校のPowerPointライセンスを扱ったりする必要がなくなるからだ。しかしこの先Slidesの主要な顧客は、常に魅力的なプレゼンテーションを作るために良いツールを必要としている、企業のより大きなマーケティング部門になるだろう。

Slidesは、実際にはEl Hattabが長い時間をかけて開発して来た、オープンソースソフトウェア技術の上に構築されている。開発者たちは、プレゼンテーションを作成するためにそのツールを使用していたものの、手作業でコードを書く必要があった。El HattabとBossolaはそこに会社設立の可能性があることに気付いた。同社はこれからも、そのオープンソース資源に貢献するだけでなく、バグやセキュリティ修正などのコミュニティから来る新しいツールコンポーネントを取り込んで、そのサービスを更新していく予定だ。オープンソースソフトウェアの上に会社を構築するリスクは常に存在するが、El Hattabによれば、それは同社のDNAの一部であって、Automatticのような成功例もたくさんあるということだ。

さて当然ながら競合もいる、例えばBunkrSwipeといった会社だ 。Slidesチームはコンテンツ開発という意味ではとても長い歴史を持っている、Bossolaは以前Thrillistで働いたことがあり、El Hattabはデジタル制作会社からやって来た。希望として、もし同社がそのツールをシンプルで、柔軟で、可能な限り広い範囲に適用できるもに保ち続けることができるなら、最終的にPowerPointキラーを彼ら自身の手に持つことになるだろう。

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(翻訳:Sako)

サーバーレスは新しいマルチテナンシーだ…高度なコンピューティングの低価格化を実現

Dataplace, Alblasserdam

[筆者: Anshu Sharma](Storm Venturesのパートナー)

マルチテナンシーは、SaaSにおける最大の技術的突破口だった。こんな状況を考えてみよう: 顧客が10万あまりいると、Salesforceのような企業は、彼らのニーズに奉仕するために、10万あまりのサーバーとデータベースを必要とし、利益は消えてしまう。

マルチテナンシーは、高い粗利率を可能にするだけでなく、高度なソフトウェアを中小企業に低料金でサーブしても利益を上げられるようになる。それは単に新しいアーキテクチャであっただけでなく、エンタープライズソフトウェアの費用に関するわれわれの考え方を変えた。CPUやサーバーの数ではなく、ソフトウェアのユーザーと使い方が費用計算のベースになる。同様にサーバーレスコンピュートも、アプリケーションの作り方と、その消費と支払い方法の、両方における新しいやり方だ。

サーバーレスは、マルチテナンシーのメリットを、より高いレベルに上げる。サーバーレスコンピュートは、プラットホームが起動しそして停止するとき、専用のサーバーやVMが動いていなくてもよい、という計算モデルで、スケーリングが必要に応じて自動的に行われる。課金は、必要とした処理時間に対して行われる〔下図: AWS Lambdaのケース〕。

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マルチテナンシーの一人勝ち — 他は全員敗者

SaaSの最初の10年は、SalesforceNetSuiteのような企業が熱心なマルチテナンシー賛成派で、レガシーのベンダーたちはそれを弱体化と呼び、複数の顧客データの混在は危険だ、とけなした。

エンタープライズアプリケーションソフトのトップ企業だったSAPは独自のアーキテクチャを発明してそれをメガテナンシーと呼び、データベースベンダーのトップOracleは、マルチテナンシーに代わるものとして仮想化プライベートデータベースなどのイノベーションを売り込もうとした。今日では、これらの企業もAribaConcur、NetSuiteなどの企業を数百億ドルを投じて買収し、勝者のアーキテクチャ、マルチテナンシーにコミットしている。

サーバーレスアーキテクチャ

サーバーレスアーキテクチャにより、まったく新しい種類のアプリケーションが生まれようとしている。とりわけこのアーキテクチャは、IoTやモバイルアプリ、リアルタイムビッグデータなどに大きなアドバンテージをもたらすだろう。

Amazon Lambdaは、この分野の明確なリーダーと見られる。またPubNub BlocksやAzure Functionsなども、同じアイデアがベースだ。数年後にはすべてのクラウドプラットホームが、何らかの形でサーバーレスアーキテクチャをサポートすることになるだろう。

マルチテナンシーへの移行の場合と同じく、既存のコードを簡単にサーバーレスにすることはできない。アプリケーションを根底から考えなおし、新しいフレームワークを使うためにリライトする必要がある。

不可能を可能にし、そして安価にする

マルチテナンシーにより中小企業が、CRMや会計経理、マーケティング、人事雇用などの分野で、エンタープライズ級のアプリケーションを、手頃な料金で利用できるようになる。それらのアプリケーションは今ならたとえば、Salesforce(CRM)、NetSuite(会計経理)、Marketo(マーケティング)、SmartRecruiters(人事雇用)などだ。

大量のデータを継続的にリアルタイムで処理して経営に生かすユースケースは、コストが膨大だから、とても手を出せない企業が多い。しかしサーバーレスのコンピューティングならファンクションを動かすわずかな時間に課金されるだけだから、それがずっと安上がりになる。

この新しいアーキテクチャとビジネスモデルによる新しいアプリケーションが、これからの10年でどんどん台頭してくるのが、私は待ち遠しい。SalesforceやNetSuiteぐらいのサイズの企業がこの新しいアーキテクチャを採用したら、一体どんなことが可能になるだろうか?

お断り: Anshu SharmaはPubNubの投資家で、元Salesforceの役員、そしてパブリッククラウドに対する絶対的な楽観主義者だ。彼の意見には、これらの立場による偏りがある。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Slackの単純な線形のメッセージ集合に文脈性と構造性を与えるSlackボットPingpad

Business people talking in office

昨年、消費者向けのモバイルアプリをローンチしたPingpadが、本日(米国時間8/9)方向転換をして、人気の高いエンタープライズコミュニケーションプラットホームであるSlackの機能を高めるコラボレーションツールを発表した。同社は、こちらに専念するために、消費者アプリを最近閉鎖した。

PingPadのファウンダーの一人であるRoss Mayfieldは、いわゆるEnterprise 2.0ブームの初期のころから活躍していて、2000年代の初めに登場してきたWebベースのツール、ブログやwikiを真似て、それらの機能を企業のコラボレーションツールにしよう、という趣旨のサービスSocialtextを立ち上げた。

Mayfieldは今回、そのときの経験をベースにして、Slackに欠けているものを提供しようとしている。それは総合的なコラボレーションツールで、彼が初期のころ参考にしたwikiのように、チームのメンバーにコンテキストと構造性を与える。言い換えると、Slackのあくまでも線形の会話から、話の脈絡を取り出す。

このSlackボットは、Slack上の会話を組織化して、検索やそのほかの利用が可能なドキュメントを作り出す。

このボットは、その後の会話からも情報を取り出して、リアルタイムでそれらのドキュメントに加える。またユーザー自身が、/noteなどのコマンドでコンテンツを加えることもできる。

Pingpad Slackbot organizing tasks by person and color coding them.

画像提供: Pingpad

Slackは、これまで多くの人が失敗したエンタープライズコラボレーションで成功し、その成功の鍵は、オープンなコミュニケーションプラットホームであり、またデベロッパーにとってもフレンドリーだったことにある。その成長に刺激されたPingpadは、方向転換を実験的なサイドプロジェクトとして開始したが、すぐに、Slackという馬に乗らない手はない、と悟った。

ビジネスモデルは、1チーム100ノートまでは無料、それ以降は、1ユーザー1か月あたり4ドルで、サポートは無制限だ。

Mayfieldは、彼が昔作ったマイクロブログツールSocialtext Signalsと、今のSlackがとてもよく似ている、と感じている。“SlackのメッセージボタンみたいなものはSocialtext Signalsにもあった。サードパーティアプリとの統合性も良かった。通知機能や、他のアプリとの対話機能、メッセージを送って記録されているデータを変えることもできた”、と彼は昔を振り返る。

2002年にローンチしたSocialtextは、その後2012年にPeoplefluentに買収されたが、今日のSlackほど大々的に、エンタープライズ市場を捉えることはできなかった。

Mayfieldは、今回のように、他のプラットホーム(Slack)に乗っかる形にはリスクがあることを認める。でも、Slackよりも前にコミュニケーション/コラボレーションツールを作ってきた彼は、Slackにある種の因縁を感じている。彼は、Slackに賭けてみたいのだ。この分野ですでに14年の経験がある彼は、今度はうまくいく、と感じている。

この、‘Slackのためのwiki’は、最初のステップにすぎない、と彼は言う。これが離陸したら、ほかのツールも作りたいし、スタンドアロンのモバイルアプリもいずれやりたい、という。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ひとつのソフトウェアのクラウドバージョンとオンプレミスバージョンを単一のコードベースから開発できるGravitationalのデベロッパサービス

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Y Combinatorを2015年に卒業した Gravitationalは、ソフトウェアのクラウドバージョンとオンプレミスバージョンを一つのコードベースで作る、という難しい問題に挑戦している。

今Gravaitionalが提供しているようなソリューションがなければ、当然ながらコードが二セット必要になり、開発費用が高騰する。顧客が提示する予算額によっては、それはできません、ということすらあるだろう。

GravitationalのファウンダーEv Kontsevoyは、実は2011年のYCのクラスで、自分の最初の企業(起業)Mailgunを立ち上げたことがある。それは120万ドルの資金を調達したが、その後2012年にRackspaceが買収した

買収に伴い、彼自身もRackspaceで数年間仕事をしたが、そのとき彼は、クラウドからSaaSを提供しているソフトウェア企業が抱えている難しい問題に気づいた。そしてそのことが、Gravitationalの起業へと導いた。

まず第一にSaaSの顧客は、そのデリバリ形式の単純さが気に入っている。顧客企業のIT部門に管理コストがあまり発生しない。しかし同時に、データのコントロールは自分でやりたい、と願う顧客企業もある。データを合衆国の外に保存することが法で禁止、または非推奨になっている業種では、なおさらそうだ。

企業のそういう実情を見ながらKontsevoyは同時に、クラウド市場におけるAmazon Web Servicesの隆盛にも気づかざるをえなかった。そして彼が知るオンプレミスソフトウェアのベンダたちの一部は、このパブリッククラウドの巨大な怪物との競合に悩んでいた。

Kontsevoyがこれらのトレンドに着目し始めたとき、それとほぼ同時に、 DockerやGoogle Kubernetesといった、ソフトウェア開発の新しいやり方を可能にする技術が登場してきた。

それを好機と見定めたKontsevoyは、Rackspaceを去りGravitationalを作った。彼はDockerとKubernetesを利用して、複数のコードベースをメンテしなくても好きなやり方でソフトウェアをデプロイできるための、ソリューションを作った。Gravitationalが提供する方法では、コードベースを単一の管理コンソールで管理しながら、クラウドとオンプレムなど、複数のやり方でソフトウェアを配布できる。しかも開発に要する費用や労力は、大きく増えない。

彼は最初の起業の成功経験から、Y Combinatorに参加することの意義を十分に理解していたが、でも、この高名なインキュベータが、彼が最初に参加した2011年に比べて、大きく進化したことも感じていた。

まず、2011年当時に比べるとネットワークのサイズが巨大になり、今ではたくさんのエンタープライズ企業も抱えている。2011年当時は消費者向け企業が圧倒的に多くて、エンタープライズ企業は適切なヘルプを得にくかった。

彼は曰く、“2015年には、YCの卒業生の多くがエンタープライズ企業を作って成功していたから、彼らの経験やコネから得るものが大きかった”。

Gravitationalはすでにある程度の資金を獲得し、初期のベータ顧客も数社抱えている。ただしその数は、公表されない。Kontsevoyによると、年内には10数社のエンタープライズ顧客を確保したい、という。そして、Gravitationalを使うようになって、売上などの業績が上がった、というサクセスストーリーも欲しい、と。

Gravitationalが究極的に目指すものは、ソフトウェア企業が顧客にとっていちばん理にかなったやり方で開発とデリバリとデプロイを行い、それによって、従来以上に売上を伸ばすことだ。それが、オンプレミスであれ、クラウドであれ、何であれ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

シリコンバレーで勝負できる条件がそろった、FlyData藤川氏が5年目につかんだマーケットフィット

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シリコンバレーで起業した日本人の1人から、ちょっと明るいニュースがTechCrunch Japanに届いた。

ビッグデータ解析関連スタートアップの「FlyData」を率いる創業者の藤川幸一氏が、総額約2億円の追加資金調達に成功して、成長軌道に乗り始めたという。今年2月に活動を開始したばかりのオプトベンチャーズが今回7月1日に情報公開されたラウンドで新規出資したのをはじめ、すでに以前のラウンドで投資しているニッセイ・キャピタルや個人投資家の西川潔氏、新規でドワンゴ取締役の夏野剛氏、クロスカンパニー代表取締役の石川康晴氏ら個人投資家数名やバリュー・フィールド(代表は市川貴弘氏)も今回のラウンドで出資している。

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シリコンバレーで戦うスタートアップとして2億円という金額は決して大きくない。だから、ぼくは今回の資金調達からは、どちらかと言えば次のシリーズAへ向けたブリッジ・ファイナンスというニュアンスを感じた。実際、藤川氏に話を聞けば、創業5年目にしてついに米国内でのビジネスを大きくスケールさせられる手応えを感じているというから、どこかでアクセルを踏み込むのかなと見ている。

photoこれまでのFlyDataは創業2年目の2012年にチームが空中分解してシリコンバレーで1人きりになったり、プロダクトが日本の限られた会社にしか売れなかったりと、何度か苦しい時期があって、「針の穴を通すような生き残り方」(藤川氏)をしてきたという。それがいま、初めて「グローバルマーケットでプロダクト・マーケットフィットをつかんだ」と、成長軌道に乗ったと感じているという。

まだFlyDataは「シリコンバレーで成功した」と言える段階ではないし、これからが本当の勝負というところ。だから藤川氏はTechCrunchのようなメディアで「語る」ことに積極的ではない面もあって、今回の資金調達についても特に何か情報発信しようとは思っていなかったそうだ。このインタビュー記事は、たまたま6月末の週末に東京で行われたSkyland Ventures Fest Tokyo 2015(SVFT)というイベントで、ぼくが藤川氏と立ち話したことがキッカケとなっている。現在進行形であるにしても、そのチャレンジを広くシェアさせてほしいということで改めて藤川氏にSkypeで話を聞かせてもらった形だ。

5年目でつかんだ「マーケット・プロダクトフィット」

FlyDataの創業から現在までを少し振り返ろう。

藤川氏はもともと2009年のIPAの未踏事業でHadoopのミドルウェアを作成するというプロジェクトで採択されたことがあり、それがFlyData創業のきっかけになっている(創業時の社名はHapyrus)。当時藤川氏は、後にヤフージャパンに買収されることになる携帯電話向け位置連動広告のシリウステクノロジーズでプロダクトマネージャーをしていた。昼はプロマネ、夜はIPAのプロジェクトを進める二重生活を送っていた。シリウステクノロジーズがヤフーに買収され、スタートアップのM&Aのダイナミックさを感じて、自らも起業。どうせやるならシリコンバレーでとの思いから、未踏でのプロジェクトを元に会社化した。

日本のVCやエンジェルから約5000万円を資金調達して渡米。著名アクセラレーターの500 Startupsに入ることができ、さらに追加資金調達もできたものの、苦戦した。苦戦の理由の1つは、シリコンバレーにはHadoop関連の競合が多数いたこと。有名投資家によるHadoop関連スタートアップなんかもあって顧客獲得に苦労したという。さらに、「英語ができない、スタートアップのことも分からないという状態でシリコンバレーに来ていた」ことから現地の日本人コンサルタントに入ってもらっていたが、そのアドバイスを巡って共同創業者と意見が対立してしまったという。当事を振り返って藤川氏は言う。

「たとえそれが経験豊富なコンサルタントや投資家であっても、自分が起業したことがない、さらにいうとその時にその事業をやっていない人のアドバイスは所詮アドバイスなんです。それを自分でどう考えて実行するのかは起業家自身が決めること。自分の意思でやっていくしかないんです。どんなにすごい人から意見をもらったりしても」

まだ意味のあるプロダクトが世に出ていない状態だったこともあって意見は割れた。結局、そのコンサルタントと共同創業者は会社を去り、藤川氏は1人だけになってしまったという。

「物を作れない人間だったら、そこで終わっていたと思います。実際、危機的な状況でした。知り合いにはもうダメじゃないか、事業たたむことを考えたほうがいいということも言われたりして。(マーケットフィットした)プロダクトもまだできていなかったんですよね」

「ただ、自分は何とかしてやるという気持ちもあったし、(DeNA共同創業者の)川田さんや、(VCのアーキタイプ)中嶋さんなど、投資家たちは支えてくれました。個人投資家の皆さんに支えられ、500 Startups創業者のデーブ・マクルーアも人に紹介してくれたりして。1人だったけど、1人じゃなかったんですよね」

最初のピボット、そもそもクラウドにデータが存在していないことが課題

Hadoopによるクラウドビッグデータ処理を軸に起業していたが、やがて別のニーズに気付いたという。「そもそもクラウド上にデータがない。これではクラウド上のビッグデータ分析ツールは、お客さん使わないな、と気付いたんです。まずオンプレミスからクラウドにデータを送らないといけないな、と」

この頃にWantedlyで募集をしたところ「グリーンカードを当てて、次週どうしようかというタイミングだった日本のエンジニアがいて応募してくれた」のだそうだ。「さらに未踏出身の貴重な人材で、ラッキーでした。スタートアップはラッキーが必要だなと思っています」。

2012年にオンプレミスからクラウドへデータを移すというプロダクトを作った。ログデータをAmazon S3に入れるプロダクトだ。ただ、これは「面白いけど使われなかった。ユーザーの大きなペインポイントではなかったということ」。ところがこのプロダクトが後への布石となる。

Amazon Redshift登場で走った激震と、再度のピボット

2012年末に突如として追い風が吹き始めた。この年の11月、AWSの年次イベントであるre:inventで大きな発表があったのだ。クラウド上でデータウェアハウス(DWH)を実現する「Amazon Redshift」が発表されたのだ。DWHは大規模データの分析を行う古くからあるエンタープライズ向けのソリューション。IBMのネティーザや、HPのバーティカといった専業ベンダーのソリューションが数千万円とか数億円するところ、AWSはクラウドに入れただけで年額1000ドルで使えるようにしてしまった。しかもサーバがクラウド化したときと同じで、規模拡張の対応が極めて短期間でできるようになった。

藤川氏は、このクラウドのデータウェアハウスの出現を「激震が走った」と振り返る。それまでHadoopがDWHをディスラプトするテクノロジーと見られていたが、DWHそのものが、いきなりクラウドで容易に利用可能になってしまったのだ。HadoopはDWHをディスラプトはしていたものの、MapReduceやHive、Pigといった独自言語の存在など使いづらい面もあった。一方、RedshiftはベースエンジンがPostgreSQLベースなので、基本的に通常のSQLでオッケーなのだそうだ。

まだリリースされていなかったRedshiftだが、FlyDataは再びピボット。500Startupsの助けもあり、数千倍の応募倍率をくぐり抜けて、Redshiftへのプレビューアクセスの権利を取得。翌年2月の一般公開のときには、4日間かけて取ったHadoopとRedshiftのベンチマークをHackerNewsに投稿してバズらせた。

ただ、これも思ったほど上手くいかない。最初はこのRedshift対応プロダクトはHerokuのアドオンとして提供した。手応えがあったものの、Herokuのアドオンは総じて課金が少額だし、さらにそこまで顧客数が増えない。だから、マーケットとしては小さかったという。Heroku利用者は、サービスが大きくなると別のプラットフォームを考え始めるという問題もあったそうだ。結局、国内でゲームやアドテク企業に利用されたものの、アメリカ市場でFlyDataの利用は広がらず。それは、アメリカではログデータをデータベースに直接入れるという文化がなかったことも背景にあるという。

ここでまた別の問題が出てくる。顧客データはMySQLなどのRDBに入っている。これは日米で変わらない。これを、Redshiftのようなカラムナーデータベースにスムーズに入れるのは実は難しい。

RDBとカラムナーの違いは、Excelの表の縦と横を無理やり入れ替えるような話だ。データベースといえばRDBを指すのが一般的だが、これは行指向。ユーザーのレコードを検索して引っ張ってくるようなことは極めて高速に行える。しかし、ユーザー数が増えてテーブル数もそれなりにあるアプリケーションだと、特定フィールドの集計を行うといった処理に時間がかかるようになる。カラムナーデータベースは、文字通りカラム(列)指向で、縦方向のデータ圧縮もしているため、RDBに比べてある種の集計処理が劇的に高速化する。初期ユーザーであるクラウドワークスやSansanなどで10時間かかるバッチ処理がFlyData+Redshift導入で1分程度になった例もあるという。

RDBのデータをカラムナーに移行するには、1度入れ替えをするだけならエイヤでやれば難しくない。ただ、リアルタイムに変更が加えられる巨大なRDBのデータについて、カラムナーのほうも最新にしつつ解析に利用しようとすると、これは自明で簡単な処理ではなくなる。なぜなら変換のバッチ処理に非常に時間がかかるからだ。これをリアルタイムでやるのが「FlyData Sync」だそうだ。

FlyData SyncはRDBの更新処理を監視して、データの変更差分をキャプチャ。このCDC(Change Data Capture)と呼ばれる処理に加えて、マイクロ・ストリーミング・バッチと呼ぶ小粒度のリアルタイム変換技術を組み合わせることで、RDBのデータ解析をリアルタイムに高速にRedshiftで行えるというシステムを実現できるのがFlyData Syncなのだという。

「昨年リリースしたFlyData Syncが大きく伸びていて、とくにアメリカで売れ出しています。すでに売上、顧客数ともにアメリカが大きくなっている。これが出るまで、売上は日本が主流で停滞していましたが、99designs(事例)やSidecarといった著名なテクノロジー企業が利用を開始しています」と、藤川氏はいう。

次のステージへ行くための条件がそろった

シリコンバレーで勝つために必要なことは、資金調達力と、それを成長に変えていく力だというのが藤川氏の見立てだ。このプロダクトはイケるとなったときにガツンと資金調達できるのがシリコンバレーのアドバンテージでもある。

今回の資金調達も、このFlyData Syncが現在MySQLだけに対応しているものを、PostgreSQLやOracle DBに対応するためのエンジニア採用の資金でもあるという。

では、シリコンバレーで大きな投資を受けるために必要なことは?

藤川氏はいくつか仮説を立てていて、FlyData Syncによって最後に残っていた1ピースがそろったように感じているという。

藤川氏が考える必要な条件の1つ目は、創業者の国籍がどうあろうとチームがアメリカ人中心のインターナショナルなチームであること。「アメリカではCEOを変えることも良くあります。そのとき日本人が率いる日本人チームだと立ちゆかなくなる」。米国VCから投資を受けるためには、アメリカの常識に合っていることが大事なので、仕事のやり方がアメリカ流であることも条件だという。メインのチーム、特に本社がシリコンバレーにあって、創業者が物理的にシリコンバレーにいることも大事という。法人登記も米国にあることも条件。なぜなら法律関係の書類が英語(それもデフォルトのデラウェア州設立)でないと、アメリカのVCには理解できないないからだ。日本語が読めないというより、不確定要素を入れたくないのだ。

シリコンバレーで大きな資金調達をするために必要な条件の最後の1ピースは、顧客ベースとお金の流れがアメリカにあること。FlyDataは長らく売上の中心がアメリカではなかったが、これがFlyData Syncが売れ始めたことで変わったという。いま10人いる社員のほとんどはエンジニアで、セールス専業のチームを持たないことも最近の、アメリカのSaaSスタートアップの流儀に従ったものだ。

シリコンバレーで勝てれば、世界で勝てる

なぜ、そこまでしてシリコンバレーにこだわるのか? それはグローバルで大きく勝つために必要なことだという。

「シリコンバレーと、その他の地域の違いは競争の激しさです。シリコンバレーだと1つの分野でも競合が多数で、ホットな分野だと100社くらい競合がいることもあります。日本だと競合がゼロということもある」

「日本のスタートアップで、まず日本で勝ち上がってからシリコンバレーに来るということがありますよね。でも日本で一番になってもシリコンバレーで勝てるかどうか。一方シリコンバレーで一番だと、その他の地域でもあまり例外はありません」

例えば、FlyData SyncのウリであるCDCやマイクロ・ストリーミング・バッチの両方を高いレベルで実装している会社というのはまだ存在していなくて、「いまのプロダクトはグローバルで競合にほぼ勝っている」という実感があるそうだ。しかし、マーケットフィットを探り当てたこのタイミングで一気にアクセルを踏み込まないと、シリコンバレーでは新しい競合が現れてひっくり返される可能性も十分にある。B向け市場では、そういうタイミングで大型資金調達をして走り抜けるという1つの道筋のようなものがあって、FlyDataは、今のところそのパスに乗りはじめたということのようだ。

日本市場で顧客をつかむのはディスアドバンテージ?

メルカリやスマートニュース、KAIZEN Platformなどは、日本国内で顧客をつかみ、大きめの資金調達をしてシリコンバレーに打って出ている。その動向を注目している人は多いだろう。いわゆる大リーグ理論だ。日本のスタートアップがメジャーリーグに行って通用するのかどうか、関係者が注目している。

このアプローチに藤川氏は懐疑的だ。

「日本で大型調達してアメリカに挑戦している人たちもいます。みんな友だちだし、成功してほしいとは思いますが、ぼくの仮説だとこれはなかなか難しいと思います。もちろん、シリコンバレーに来てから競争で勝つことができれば問題ないと思います。でも、それには日本のプロダクトが足かせになる可能性もあります。日本のお客さんからの要求とグローバルなそれとはかなり異なると思っていますので、日本にしっかりとしたお客さんがすでにいるのは、グローバルプロダクトとしてはディスアドバンテージになりかねず、かえって難しい。だから、シリコンバレーで勝ちたいなら最初からシリコンバレーから始めたほうがいい、というのがぼくの仮説なんです」

「そうはいっても日本をレバレッジするポイントはあると思います。FlyDataも日本の資金や人脈、日本の投資家に支えられてきました。それがなければ最初の1年か2年で死んでたはずです。FlyDataでも、日本でうまく行って、アメリカではあまりうまく行かなかったプロダクトもありますが、でもその結果として日本で資金調達ができたりもしています」

グローバルで活躍する日本人起業家のロールモデルに

世界で勝つために、法人もチームもビジネスもアメリカで作る。となれば、いくら創業者が日本人であっても、そもそも「シリコンバレーで勝つ」ことの意義とは何だったのかという話にならないだろうか? 起業家の成功が特定の国に紐付いているべきだなどと言うつもりはないが、藤川氏はどう考えているのだろうか?

「日本人が作った会社が世界的に大きくなることには価値があると思っています。まず1つは日本人起業家のロールモデルになれること。日本の起業家を増やすことになります。もし大きく成功できれば、日本の起業レベルを上げることができる。メジャーリーグが日本のプロ野球のレベルを上げたように、あるいはサッカーでも世界的に活躍する日本人選手のおかげで、日本のサッカーのレベルが上がったようにです。日本の起業環境を良くする底上げになると思います。確かに直接的には日本のGDPを上げるようなことにはなりませんが、日本人起業家であれば、日本でもビジネスをやるでしょうし、日本への投資や日本市場でレバレッジすることはやりやすいはず。シリコンバレーの人たちが日本市場にあまり投資していないのは、単に日本のビジネスが分からないからなんです。日本だけでも、市場は十分大きいはずなので」

「日本人起業家のレベルが上がらない限り、世界で成功したプロダクトが日本から出てくるということが減っていく。日本以外から出てきたプロダクトやサービス、それが日本に入ってくるばかりだと、日本の存在感は減っていくばかりですよね」

FlyData Syncによってプロダクト・マーケットフィットの手応えを感じていて、プロダクトや資金調達の面での不安が少し落ち着いた状態とはいえ、藤川氏はプレッシャーは大きくなっていると言う。「『以前よりはるかにマシな状態』というふうに常に言っています(笑)。でもいつも次のステージに向けてスケールしないと、というプレッシャーがあります」。

FlyDataがビジネスをスケールさせ、数十億円とか数百億円といったレベルでエグジットできるかどうかはまだ分からないが、TechCrunch Japanでは今後も同社の動向をお伝えしていければと思う。

クラウドはコンピューティングを驚くほどシンプルにした


この週末私はかなりの時間を割いて仕事場を片付け、何十年分か蓄積されていたソフトウェアを処分した。数十枚もの3.5インチフロッピーとCDを捨て、山ほどの箱とマニュアル ― 旧コンピュータ時代のがらくたども ― をリサイクルに出しながら、私は2015年のコンピューティングがいかにシンプルになったかを再認識した。

ついこの間まで、アプリストアというものはなくソフトウェアは紙の箱に入ってきた。アップグレードは自動あるいはクリックするだけではやってこなかった。その代わりに、人々は最新最高のコンピューティング環境を手に入れるために数年毎に多大な料金を払い、誰もが新しいソフトウェアを自分でインストールする痛みを経験していた。それは退屈極まりない作業だった。

嬉しいことに、ソフトウェアの使用、管理、保守、保管さえも複雑さは単純さに取って代わられた。今や、ソフトウェアの扱いは驚くほどシンプルだ。

私が日常使っているGoogle Docs、GMail、Evernote、Dropbox等多くのサービスは、すべてウェブまたはクラウドで生まれ、箱で売られたことはない。私のMacBook Airにいたっては、古い方法でインストールしようにも、ダウンロード以外にソフトウェアを追加する方法すら備えていない。今日ソフトウェアが欲しい時はアプリストアへ行くかオンラインで検索すれば、殆どの場合にまさしく探していた物が見つかり、多くの場合無料か極く低価格で手に入る。ソフトウェアに大枚をはたいていた時代とは全く対照的だ。

そしてもちろん、今や当然だと思っているクラウドサービスの美しいところは、必要な時、どのデバイスを使っている時でも、ソフトウェアがそこにあることだ。

初期のコンピューティングには、ソフトウェアのインストールという極めて慎重を要する作業が伴っていた。さらに事態を複雑化させていたのは、原本に何かあった時のために、バックアップを作らなくてはならなかったことだ。なぜなら、物理メディアの管理責任は使用者にあったからだ。しばらくすると、時間とお金を費してアップグレードのためにすべてをやり直さなくてはならなかった ― そしてその間ずっと棚にはソフトウェアの箱が積み上がり続けた。

今やクラウドが当たり前だと思っているが、30歳以上の人なら、かつてのソフトウェアはApp Storeへ行くほど簡単ではなかったことをご存じだろう。実際、大容量ディスクやグラフィカルユーザーインターフェース以前のパソコンを覚えている人なら、ソフトウェアを1~2枚の5.25インチフロッピーディスクで走らせることができたことを知っている。

そのうちソフトウェアは膨張を続け、Wordのような巨大アプリをインストールするためには、山ほどの3.5インチフロッピーが必要になった。そう、インストール作業とは面倒なディスクの交換を意味し、途中で何かが起きた時には(しょっちゅう起きた)大変だった。やがて数枚のCD、さらにはDVD1~2枚へと進化して、ずっと扱いやすくなったが、メディア効率が良くなっても、インストールの面倒がなくなることはなかった。

初期のソフトウェアには、詳しい使い方の書かれた紙のマニュアルが付いてきた。Macromdedia Directorのように複雑なソフトウェアともなると、何冊ものどでかい説明書を収納するために巨大な箱に入っていた(事務所の棚で相当のスペースを占めていた)。しかし時代が変わり、常に最新技術を求めるソフトウェア会社たちは、パッケージのサイズと中身を減らせば経費を節約できることに気付いた。紙のマニュアルは徐々にスタートガイドに置き代えられ、巨大な使用説明書はオンラインヘルプまたはPDFに形を変えていった。

時と共に、ウェブとクラウドサービスの進歩によって箱そのものが殆ど姿を消した。

ソフトウェアのインストールが安く簡単になったことで、個人ユーザーとしての私の生活は間違いなく楽になったが、職場では、古くさいエンタープライズソフトウェアと苦闘していた人々による、自宅と同じソフトウェアをオフィスでも使いたい、という極めて正当な要求に基づく一種の革命が起きた。何よりも、クラウドコンピューティングとモバイル端末があれば、我慢する必要すらない ― そしてこの力学によって職場のパワーバランスはシフトされた。誰もが簡単にソフトウェアをインストールできるようになると、IT部門が人々を支配することは難しい。

もはやソフトウェアは、IT部門だけが理解できる高価な魔法の産物ではなくなった。誰にとっても、殆どの機械オンチの人々にとっても、ソフトウェアは数クリック先にある。この使いやすさがコンピューティングを民主化した。われわれは、インストールに苦労したりアプリケーションの使い方を理解するために分厚いマニュアルを読んだりしていたあの時代から、大いなる発展を遂げたのである。

IT部門にとっても、組織内での役割は変わったものの悪いことばかりではない。彼らの生活もシンプルになった。私と同じように、彼らも社内でソフトウェアを管理することの頭痛から解放された。大企業内でのソフトウェア管理は以前より一段と複雑さを増した。

私のコンピューティングスタイルはデスクトップからモバイルとクラウドへとシフトしていったように、変化があまりにもゆっくりと起きると、ずっと前からそうだったように考えがちだ。しかし、仕事場を片付ける作業は私を原点に立ち返らせた。コンピューティングは大々的に変化を遂げ、今やはるかに単純明快になった。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


自社サイトのビジター履歴から見込み客を発掘するAzaleadはコールドコールに終わりを告げる

あなたの会社のWebサイトを、何人の人が訪れて、御社のB2B製品に関する情報を見ているだろうか? これらのビジターたちは、御社の営業にとって貴重な見込み客なのに、だれも彼らを知ろうとしない。そこでフランス生まれのAzaleadは、どこの会社の人が御社のWebサイトを訪れたかを、リアルタイムでアラートする。

CEOのNick Heysは言う、“前にいたソフトウェア会社では、見込み客を増やすことが至上命令だった。コンバージョンレート(成約率)は2%ぐらいで、その2%を得るために毎月3万〜4万ユーロの広告費を投じていた。残る98%については、それが誰であるかすら、調べようとしなかった”。

Heysによると、企業のB2B製品の購買態度はここ数年変わってきた。それまでは営業に直接電話をして、いろんな質問をしていた。でも今では、営業に電話をしてくる人はいない。みんな、自分で調べて決めている。

そこで現状では、多くの潜在顧客が、そのプロダクトについて正しく詳しく知ることなく、買う・買わないを決めている。そこでAzaleadは、営業により多くの見込み客情報を与え、もっと頻繁なウォームコールやメールによるコミュニケーションをさせる。

あなたの会社のWebサイトに統合したAzleadの動作は、Google Analyticsのようなアクセス分析サービスに似ている。統合は、小さなJavaScriptのコードを1行書くだけだ。コードを書くのが面倒な人には、WordPressやDrupalのプラグインも提供される。

Azleadは、ビジターのIPアドレスだけでなく、そのIPアドレスの保有者や関連情報も調べる。その会社の大きさ、売上、電話番号なども分かる。AzleadはSalesforceを統合しているので、ビジターのコンタクト履歴も分かり、営業がそこの誰に売り込むべきか、の見当がつく。

ただし現状では、社名や人名が分かるのはIPアドレスがわかったビジターの20%ぐらいだ。“この率を30%に上げたい”、とHeysは言っている。

今、130社がAzaleadを利用している。料金は営業1名あたり月額60ドルだが、今一社平均の売上(年額)が7500ドルぐらいだ。Azleadのチームは今13名で、資金は自己資金のみ、今後1年間でチームの人数は倍になる、と予想している。Heysは前に、Emailvisionのファウンダだった。フランスの企業なのに、彼自身はイギリス人だ。

そしてもちろん、Azalead自身もAzleadを営業のためにフル活用している。Azaleadは見込み客発掘サービスであり、とくにAzleadのようなSaaSプロダクトの営業にとって便利だ。これを使えば、見込み客からの電話を待つのではなく、営業が自力で見込み客を開拓できる(しかも単なる…手当たりしだいの…コールドコールではない)。“営業の主体性回復だ”、とHeysは言う。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


各企業のカスタムなモバイルアプリを作るTrackViaが高い成長率を維持; 今年はいよいよシリーズCか

【抄訳】

2013年には前年比50%の成長を遂げた、モバイルアプリケーションビルダーTrackViaが、今年2014年は100%の成長率を目指している。同社によると、今まさにそんな軌道の上を走っているそうだ。

企業はTrackViaを利用して、社員たちが使うモバイルアプリケーションを簡単迅速に作れる。自社でデベロッパのチームを雇わなくても、TrackViaが会社の情報ストリームに組み入れられるようなアプリを手早く作って展開してくれる。料金は、一人あたり月額25ドルだ。

本誌TechCrunchは同社を初期からずっと追ってきて、同社の資金調達はシリーズAシリーズBも報じた。

その同社が今度は、SaaSという大きな業態の中で、また新たな熟期を迎えたようだ。マーケットは、ソフトウェアサービスを企業に提供する企業に大金を投じてきたが、このところ小休止の感がある。でも余裕のあるTrackViaは平気だ。同社は、今年の終わり頃になったらシリーズCで150万ドルぐらいを調達しようかなぁ、と何度かのインタビューでほのめかしている。

大企業向けのSaaSはこぞって調達額が大きい中で、TrackViaはなぜそんなにささやかな額なのか? もっと多くてもよいのではないか? でも同社によると、同社の資金需要と評価額からすると、150万ドルが妥当な線なのだ。また当然ながら、同社の希薄化食欲もそのあたりだ。

その資金の60〜70%は、営業とマーケティングの強化に向かうだろう。つまり、成長のための資金だ。

TrackViaの対象企業は、社員数100から1000、それが同社のサービスにとって無理のない規模だ。これより小さいとアプリをなかなか内製しない。逆にこれより大きいと、自分のところでチームを作った方がTrackVistaの料金表より安上がりになる。今同社は、一社あたり平均3つのアプリを作っている。

同社はまだ利益が出ていない。同社は書面でこう言っている: “弊社は今、成長を優先している。業界のトップを走るSaaSとしては、まだまだ成長と拡大に資金を投じていく必要がある。誰かが言ったように、弊社は今、‘アクセルをペダルが床につくほど踏み込んでいる’”。それが今の同社の基本方針だ。成長を優先すれば、どの企業でも利益が犠牲になる。Egnyteのように、その長いトンネルの出口が見えてきた企業もある。Egnyteは、本年第四四半期には黒字転換になりそうだ、という。

プロダクトに関しては、今後のTrackViaは、いろんなデータソースを統合化して、より便利で有益なアプリケーションを企業に提供していきたい、と考えている。ただしプロ向けのサービスではなく、あくまでも末端の社員の役に立つアプリケーションを作っていきたい。

画像: FLICKR/Larry Johnson; CC BY 2.0のライセンスによる(画像はトリミングした)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))