セールスパーソンへの報酬を自動化するSpiffが約11億円の資金調達を実施

ソルトレイクシティのSpiffは、セールスパーソンへのコミッションの支払いを自動化するサービスの販売とマーケティングを拡大するために、1000万ドル(約11億円)の資金調達ラウンドを発表した。

Brex、Workfront、Algoliaそして上場スタートアップのQualysなど、テクノロジー業界のスタートアッ大手がこのサービスを利用し、セールスパーソンにコミッションの支払いを行なっている。

Spiffの狙いは、営業報酬管理を中心とした新しいソフトウェアカテゴリーを作ることにあり、Norwest Venture PartnersやNext World Ventures、Epic Venturesなどの投資家からの賛同を得た。シード投資家の中にはKickstart Album VenturesやPipeline Capital、Peterson Venturesも含まれている。

「コミッションは自分たちのインセンティブプランを理解していない、あるいは信頼していないチームにとって大きな不安の原因であり、多くのチームが毎月のミスの修正や財務との議論に何時間も無駄にしており、それが収益に影響している」と、SpiffのCEOであるJeron Paul(ジェロン・ポール)氏は述べている。「Norwestの投資により、コミッションの計算を自動化するのに役立ち、営業チームの心配が1つ少なくなる」。

ポール氏はシリアルアントレプレナーで、2017年に最新事業であるCapshareをSoliumに売却しており(未訳記事)、キャリアの大半を企業向けサービス事業の開発に費やしてきた。

Norwest Venture PartnersのパートナーであるSean Jacobsohn(ショーン・ジェイコブソン)氏は声明で「販売コミッションソフトウェアの世界では長い間、大幅な改良が待ち望まれていた」と述べた。「85%の企業がいまだにGoogle SheetsやExcelを使い手作業で販売報酬を計算しているため、Spiffと提携することで販売コミッションについて考える方法を変え、より深く販売チームへ可視化できるようになることに興奮している」。

画像クレジット:RapidEye / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹 Twitter

エンジニアなど技術系の給与はリモートワークの普及でどう変わるか

採用プラットフォームのHired(ハイヤード)は毎年、何十万件もの面接依頼やジョブオファーからのデータに基づいて技術系の給与を調査している。今年も過去と同様に、世界中のソフトウェアエンジニア、プロダクトマネージャー、DevOpsエンジニア、デザイナー、データサイエンティストの給与が同社によって調査された。

言うまでもなく今年は特殊な年である。パンデミックが起きたことでリモートワークへのシフトが加速していることもあり、Hiredは今年、新型コロナウイルスの前後で調査結果を2つのパーツに分割して調査を実施することにした。2019年に誰に幾らの給与が支払われたかに関するデータが公開されると共に、Facebookが同社の従業員に対して行うと述べているように、より多くの企業が地域ごとにローカライズされた給与を採用した場合、この数字が今後どう変化していくのかについても公開された。

初めに、新型コロナウイルスが世界に強烈な影響を与える前の数字を見ていただきたい。

Hiredによると、サンフランシスコからロンドンに至るまで、テクノロジーに携わるすべての人々の給与は2020年に向けて着実な増加傾向にあった。サンフランシスコの給与は昨年7%上昇し、平均的な技術系労働者の年収は15万5000ドル(約1650万円)となっていた。その後に僅差で続くニューヨークの平均的な技術系労働者の給与は14万3000ドル(約1520万円)となる(2018年から8%増加)。シアトルは3%増で14万2000ドル(約1510万円)、ロサンゼルスとオースティンの平均は13万7000ドル(約1460万円)となっている(ロサンゼルスは2018年から8%増、オースティンは10%増)。

米国ではプロジェクトマネージャーに最も高額の給与が支払われており、平均して15万4000ドル(約1640万円)となっている。一方でソフトウェアエンジニアの給与は平均14万6000ドル(約1560万円)、データサイエンティストの給与は13万9000ドル(約1480万円)、デザイナーの給与は13万4000ドル(約1430万円)となっている。

2020年にますます問われるようになった質問としては、こういった労働者がサンフランシスコのような物価が高い都市から、より物価の安い地域に移住した場合、前述の数字はどのように変化していくかである。Hiredはベイエリア特有のこの質問に答えることができたようだ。そして驚くことではないが、現地で稼いでいた賃金が移住後もそのまま変わらないと仮定すると、他の地域ではその金額は全く違う意味を持つことになると言う事実も発覚した。

例えばベイエリアでの年収15万5000ドル(約1430万円)は、物価の安さが幸いしオースティンでは22万4000ドル(約2400万円)、デンバーでは20万2000ドル(約2150万円)の年収に相当に値する。

しかし優秀な人材を求めている企業にとって計算は単純なものではない。Hiredが2300人の技術系労働者を対象に実施したアンケートによると、回答者のほぼ3分の1が、リモートワークが恒久的になった場合、給与の減額を受け入れることをいとわないと述べている(一方で半数以上は受け入れないと述べている)おり、リモートワークが恒久的になった場合、53%が「高確率で」または「ほぼ確実に」物価の安い地域に移住すると述べている。また半数が最低でもコロナ後も週に1度はオフィスに戻りたいと述べている。

悩ましい問題である。唯一明確になったことと言えば、月曜日から金曜日まで毎日出勤する日常には、ほとんど誰も戻りたいと思っていないということだ。具体的には、毎日仕事に行きたいと答えているのは全回答者のわずか7%である。

当然のことながら、技術系労働者が住む場所や給与に関して実際にどの程度柔軟でいられるかは、仕事の安定性やそれをどう認識するかによって大きく異なる。おそらく時代の動向もあり、Hiredのアンケートによると意見の一致はほとんど見られない。

調査した数千人の技術系労働者のうち、42%が今後6か月間の解雇を懸念していると述べ、39%が「現在の仕事を辞めたいと思っているが、仕事が見つかるか不安なため辞められずにいる」という発言に同意している。

どちらのケースにしても、解雇されることや他の仕事を見つけることに不安を感じていないという人の割合の方が多くなっている。

HiredのCEOであるMehul Patel(メフール・パテル)氏は今後、リモートワークの増加が給与などに関する全体的な期待値にどのように影響するかを綿密に追跡していくと我々に語ってくれた。

現時点では、ローカライズされた給与の計算方法に関するメトリックを公開することにより、このような混乱した時期において求職者や雇用側が少しでも安心できるようになればと同氏は言う。「それこそが、こういった研究を行いレポートを公開する大きな理由だからです」。

関連記事:Facebookが社員半数をリモートワークに、シリコンバレー外に複数の拠点開設へ

カテゴリー:その他

タグ:リモートワーク   コラム エンジニア

Image Credits: PayPau / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

ソフトバンクがTモバイルUS株の一部売却を検討、3月発表の負債を減らし手元資金を増やす計画の一環

ソフトバンクグループは日本時間6月16日、T-Mobile U.S.(TモバイルUS)の株式の売却を検討していると認めた(ソフトバンクグループリリース)。

2020年5月に、ソフトバンクがTモバイルUS株の約200億ドル(約2兆1500億円)を、Tモバイルの支配株主であるDeutsche Telekom(ドイツテレコム)などの投資家に売却し、Vision Fund(ビジョンファンド)などの投資事業からの大規模な損失を相殺するための合意に近づいているとBloombergは報じていた

TモバイルUSの株式の約25%を保有するソフトバンクグループは本日の通知で、TモバイルやドイツテレコムAGを含む株主、あるいは第三者との私募や公募、取引を含む取引を検討していると述べている。

今回の売却は、ソフトバンクグループが2020年3月に発表した負債を減らし、手元資金を増やすために最大410億ドル(約4兆4000億円)の資産を売却、または収益化する計画の一環となる。ただし同社は、TモバイルUSの株式を含む取引が完了するかどうかは保証できないとしている。

関連記事:SoftBank reportedly plans to sell about $20 billion of its T-Mobile shares(未訳記事)

原文へ
(翻訳:塚本直樹 Twitter

ベイエリアの黒人テックリーダーが人種差別的不公正に向けた行動を呼び掛け

人種差別主義者の警官による暴力という、米国の塞がらない傷口に多くの注目を集めた抗議の1週間が嵐のように過ぎた。そして、企業の創業者、人権活動家、投資家などを含む黒人リーダーの連合が、テック業界の黒人に、黒人の生活を脅かし続けている組織的な圧力に対抗する行動を起こそうと呼び掛けた。

Black Tech for Black Lives」(黒人の命のための黒人のテクノロジー)と名付けられたこの運動は、「より公正な世界築くために最前線で働いているリーダーたちの支援」を目指した、具体的で実行可能な行動を集約するものだ。サンフランシスコ湾岸地区(ベイエリア)のテクノロジー産業の中心地で、警察改革、地方選挙、テック業界により多くの有能な黒人を採用し支持するといった具体的な指針と目標を掲げて活動するコミュニティーリーダーたちの地位を高めることを誓約している。

またその誓約には、警官の過剰な暴行により8分間以上にわたり首を押さえ付けられ死亡した一般市民、George Floyd(ジョージ・フロイド)氏の名誉(NewYork Times記事)についても訴えている。この事件は全国的な運動の引き金となり、50のすべての州での警察の蛮行に抗議する歴史的なデモ行動に結びついた。

この誓約に署名した主要人物には、ReadySetのCEOであるY-Vonne Hutchinson(イボンヌ・ハッチソン)氏(未訳記事)、Black and Brown FoundersZebras UniteのAniyia Williams(アニヤ・ウィリアムズ)氏、FastlyのMaurice Wilkins(モーリス・ウィルキンス)氏(未訳記事)、 Just CitiesTechEquity CollaborativeのDarrell Jones III(ダレル・ジョーンズ3世)氏などが含まれている。 発表では、悲嘆に暮れるこの時期の、テック業界に対する、そして今回の事件につながる人種差別主義者による暴力という長い歴史に対する、彼らに共通する特有の観点が示された。

テック業界は共犯者です。テック業界の黒人として私たちは、黒人への身体的暴力に対抗できる特別な立場と条件を有しています。私たちは、この苦痛を身近に感じられる立場にありながら、最悪の身体的暴力をほとんど回避してきました。しかし、私たちも衝撃を受けています。職場や外の社会で、私たちの訴えはほとんど聞き入れられず、精神と心に傷を負っています。

彼らは、すべての人に対して、次の5つの目標のうちひとつでも協力してほしいと訴えている。

  1. 警察の公正化を求める研究所であるCenter for Policing Equityや公民擁護団体Color of Changeなどの団体を支持して、ジョージ・フロイド氏、Ahmaud Arbery(アーマド・アーベリー)氏、Breonna Taylor(ブレノア・テイラー)氏、Tony McDade(トニー・マクデール)氏を殺害した人物の速やかな起訴に向けて行動する。
  2. メッセージの発信、または人権団体のElla Baker Center for Human Rights、オークランドの警察の説明責任を求める連合Coalition for Police Accountability、ソーシャルメディアや公共の場での人種の特定に反対する団体SF Interrupting Racial Profilingなどへのボランティアや寄付を通じて、警察の改革と説明責任を求める。
  3. ベイエリアの警察署長や警察組合のリーダーたちに圧力をかける。
  4. 黒人従業員の雇用、黒人企業創設者への投資を行い、黒人の昇進、指導、金銭的援助によって成功への支援を約束する。
  5. さまざまな人種を支援し、人種的および社会的公正化に尽力した人権擁護の実績を持つ人たちを、市長、市議会議員、地方検事などの市の要職に選挙で送り込む。
  6. 行動の呼びかけの全文と支援団体へのリンクは、Black Tech for Black Livesのサイトにある。

この誓約の署名者は150人を超えて増加している。Y CombinatorのMichael Seibel(マイケル・シーベル)氏、Backstage CapitalのArlan Hamilton(アーラン・ハミルトン)氏、Erica Joy(エリカ・ジョイ)氏、Bärí A. Williams(バリ・A・ウィリアムズ)氏、元オバマ財団のCTO、Leslie Miley(レスリー・マイリー)氏、Kapor Capitalのパートナー、 Ulili Onovakpuri(ウルイ・オノバクプリ)氏、We Read TooのKaya Thomas(ケイヤ・トーマス)氏、Wayne Sutton(ウェイン・サットン)氏、PitchBlackの創設者Stephen Green(スティーブン・グリーン)氏、The Human Utilityの創設者Tiffani Ashley Bell(ティファニー・アシュレ−・ベル)氏、TechEquity Collaborativeの共同創設者Catherine Bracy(キャサリン・ブレイシー)氏、そしてTechCrunchからはMegan Rose Dickey(ミーガン・ローズ・ディッキー)も署名した。

「今回の事件で明らかになったのは、もう元には戻れないということです。黒人の命も、黒人の将来も、どちらも重要であることを団結して確認しましょう」と団体は書いている。

この運動では、抑圧された人たちの擁護に消極的な立場を取り「共犯者」になってしまわないよう(Indigenousactio記事)、白人にも行動を促した。たとえそれが、法律を超えて組織的な黒人差別に立ち向かうことを意味するとしても、平等と公正のための積極的なアプローチを呼び起こす活動の枠組みに参加を呼び掛けている。

TechCrunchの取材に対して、ジョーンズ氏は誓約の背景について、そして今の警察の不公正な行動と組織的黒人差別に対する抗議の波が本物であり、過去の全国的運動に比べても、国家的な苦痛を恒久的な変革へつなげる可能性があると信じる理由を聞かせてくれた。

「今のアメリカの黒人運動の状況は、ファーガソン氏のときの黒人運動の状況に比べて、明らかに切実です。それは新型コロナウイルスと時期的に重なったことが大きい」とジョーンズ氏はTechCrunchに話した。

「失業率のレベルを見ても、コミュニティーでの新型コロナウイルスによる健康被害の程度が不均衡な状況(NPR記事)を見ても、事業の損失の大きさの違い(PBS記事)を見ても、さらには官民パートナーシップやその他同様の取り組みから資金を供給される事業の配分の差を見ても、すべての分野において、いまだに私たちは、不当に不利な立場にあります」。

パンデミックにより数百万人の米国人が経済的な打撃を被るや、突如として無条件のベーシックインカムが大きな話題になったように、新型コロナ禍は組織的差別によってアメリカ黒人の健康転帰に重大な影響が出ているという議論(NewYork Times記事)も加速させているとジョーンズ氏は考えている。

こうした議論が進めば、連邦政府の「ある程度信頼できる、理性的で慈悲深いリーダーの不在」が、地方で起きている変化(本当の改革が起きている)に大きな注目が集まるようになるとジョーンズ氏は言う。

「全国の人々がこぞって議論に参加するようになれば、全国的なリーダーの不在は埋められるでしょう。しかし、この状況を変える上でみんなができる最大のことは、まさに今、自分が住んでいるその場所を変えることなのだと、みんなに理解して欲しい。少なくとも、意識して欲しいのです」とジョーンズ氏は話していた。

関連記事:ベンチャー企業が黒人の企業創設者や投資家への支援に殺到(未訳記事)

画像クレジット:Photo by Mark Makela/Getty Images / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

ジョージ・フロイド氏殺害事件への拡大する抗議活動と組織的差別に対するハイテク業界の対応

5月25日、ミネアポリス警察によってGeorge Floyd(ジョージ・フロイド)氏が殺害されたのを機に米国全土で抗議行動が始まってから5月31日で4日目を迎えた。この運動は、同様の運命にさらされている信じられないほどの数の米国の黒人が直面してきた広範におよぶ、また組織的な不平等への反応だ。「息ができない」という必死のあえぎ声は、6年前のEric Garner(エリック・ガーナー)氏の死を思い起こさせる。

この週末は暴力が吹き荒れ、写真や動画には、血まみれの抗議者、傍観者、この状況を伝えようと使命感に駆られたジャナーリストの姿が映し出された。ひとつの事件が人々の最大の関心事になるのは、新型コロナウイルス(COVID-19)による死者数が世界最大という遙かに深刻な状況に置かれた今の米国では難しいことだが、ミネアポリス、ニューヨーク、ワシントンD.C.、ロサンゼルス、シカゴ、さらにその他に地域に大きく広がったこの抗議活動は、すでに深い溝で分断されたこの国の最大の関心事として扱われる運命にある。

こうした社会問題に対する態度に波風を立てることに慣れていないハイテク企業とそのCEOは、腫れ物に触るようなこの話題を、どこまで重大に捉えるかを秤にかけ始めている。社会問題への取り組みを公にした経験を持つApple(アップル)のCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏は、彼の会社は多様性から力を得ていると話していた。彼はまた従業員に対して、今こそ耳を傾けるときだと伝えている。

今は多くの人が、何よりも平常に戻ることを、つまり不公正から目を背けていさえすれば快適な現状維持への回帰を願っています。認めたくはないでしょうが、その願望自体が特権意識の表れです。ジョージ・フロイド氏の死は、「平常」な未来よりもさらにずっと上を目指さなければならないことを、そして、平等と公正の最上級の理想に従って生きてゆく未来を構築しなければならないことを、衝撃的で悲惨な形で私たちに示しています。

クック氏は、Equal Justice Initiative(イコール・ジャスティス・イニシアティブ)を始めとする非営利団体への不特定の寄付を行う予定だと話している。さらに6月には、従業員からの寄付金は、すべて倍額にして収めるという。

一方、Twitter(ツイッター)は、企業のロゴを黒と白のバージョンに切り替え、「Black lives Matter」(黒人の命も大切)というハッシュタグをプロフィールに追加した。多様性を訴えるTwitterアカウント「Twitter Together」は、以下の声明を発表した(もちろんTwitterで)。

差別は社会的距離とは違う。パンデミックで恐れと不安が増大している最中ですが、今週は、おそらくそれよりも大きな話題が、またしても注目を集めました。非白人が日常的に直面している根深い人種差別と不平等の問題です。

Amazon(アマゾン)もまたTwitterを通じて次の声明を出した。

私たちの国の、黒人に対する不平等と野蛮な扱いは止めなければなりません。私たちは黒人コミュニティー(私たちの従業員、顧客、パートナー)と連携して、組織的な人種差別と不平等に立ち向かいます。

Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)のCEOであるAndy Jassy(アンディ・ジャシー)氏は自身のアカウントでこうツイートした。

こうした黒人の不当な殺害の容認を止めるには、「何が」必要なのでしょう。どれだけの人が死ねば、どれだけの世代が耐えれば、どれだけの目撃動画があれば事足りるのか? 裁判所や政治家の対応よりも優れたものが私たちには必要です。

アマゾンには、偽善だとする多くの非難がすぐさま寄せられた。数々の問題の中には、長年にわたる従業員の扱いに対する苦情や、警察で使用されているAWSの顔認証などの技術がある。

ACLU(アメリカ自由人権協会)の反応は露骨だ。

結構なツイートだ。警察の横暴を強力に後押ししている顔認証監視技術の販売を止めるか?

アマゾンは、同協会からのこの最新の質問は取り合わない構えのようだ。

マーク・ザッカーバーグ:先週の悲劇は、この国が、尊厳ある生活を送る自由をすべての人に与えられるようになるのは、まだ遠い先のことだと私たちに再認識させた。

Facebook(フェイスブック)の反応も複雑なものだった。従業員は、「略奪が始まれば銃撃が始まる」というトランプ大統領のツイートを残しTwitterと袂を分かつ決断をしたCEOのマーク・ザッカーバーグ氏の判断に怒りの声を露わにしている(CNBC記事)。しかし最近になってザッカーバーグCEOは、1000万ドル(約10億7000万円)を関連非営利団体に寄付し、投稿で次のように述べた。

この戦いを支援するために、Facebookはそのプラットフォームを通じて黒人コミュニティーの平等と安全をもたらすために、さらに努力すべきだと考えています。見るに忍びないものでしたが、ジョージ・フロイドさん殺害の動画Facebookに投稿してくれたDarnella Frazier(ダーネラ・フレイザー)さんに感謝します。これは、すべての人が見るべきものだからです。ジョージ・フロイドの名前を私たちは記憶しなければなりません。同時に、人々の安全を保ち、私たちのシステムが偏見を助長しないよう努力を重ねることもFacebookの勤めであることを明確にしておきます。

Microsoft(マイクロソフト)のCEO、Satya Nadella(サティア・ナデラ)氏は、LinkedIn(リンクトイン)への投稿で、ミネアポリスの事件と、バードウォッチャーのChristian Cooper(クリスチャン・クーパー)氏と警察がセントラルパークで揉めた先日の事件について簡単に触れている。

私たちのアイデンティティーが、私たちの存在そのものが、この星のすべての人の力の源になっています。そのため私たちには、私たちのプラットフォーム、私たちのリソースを使って組織的な変化を推進させる義務があると思いませんか? これは本当に難しい課題です。ひとつの事件に留まる話ではありません。絶対的に変えなければならない問題に通じる、あらゆる物事が対象です。

また、Snap(スナップ)のCEOであるEvan Spiegel(エバン・スピーゲル)氏は5月31日、従業員に向けた長い書簡(The Information記事)を発表した。そこにはこう書かれている。

もちろん、あらゆる人の自由、平等、公正を支持した建国の父たちは、ほとんどが奴隷を使っていました。その強化版として、人民により人民のために作られた国は、偏見と不公正と人種差別に立脚しています。この腐った基礎を立て直そうとせず、またすべての人に機会を与えられずにいる問題への対処も怠っている私たちは、人類が進歩する本当の可能性を封じ込めています。そしていつも、すべての人の自由と平等と公正をもたらすという大胆な展望に追いつけずにいるのです。

スピーゲル氏の書簡は、「実に大変に恵まれた若い白人の教育のある男性」である自身との葛藤と、不平等への金銭的な対処法の提案に焦点を当てている。特に彼は、超党派の「Commission on Truth, Reconciliation and Reparations」(真実、和解、償い委員会)の設立と、住居、医療、教育への投資を呼び掛けている。

画像クレジット:Jason Whitman/NurPhoto / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

リモートワークは「自宅監禁」から柔軟性のある「どこでも勤務」に変わっていくべき

私は先週の金曜日(5月15日)、同僚とともに「在宅勤務」とリモートワークの未来に関する見解を記事にまとめたが、その分析情報を信じるならば、かなりの人たちの共感を得たようだ。

「オフィス」で知的作業に専念することが中心のハイテク業界においては、特に珍しくもないことだが、ミニキッチンに置かれているアイスクリームのサイズが小さくなったことなどの「ちょっとした頭痛の種」から、オープンオフィスで難解なMLアルゴリズムについて頭を絞っている側で、同僚たちがオモチャの銃を撃ち合って遊んでいることなどの「もっと大きな不満」までが、オフィス環境で過ごす時間が長くなるほど、過大に深刻化していく気がしてしまう。

多くの人が強要されている「在宅勤務」の状況が理想的でないことははっきりしている。学校は閉鎖され、子どもたちが家にいる。みんな家にいるからインターネットが重い。犬の世話を頼んだ人は来ないし、避難できるカフェもやってない。だから、例えTwitterのような巨大ハイテク企業が在宅勤務のオプションを恒久化するなどと宣言したところで、在宅勤務というヤツにみんなが同様の嫌悪感と反発を抱いていることは容易に想像がつく。

関連記事:Twtterが社員の在宅勤務を期限なしに認める措置を発表

だがそれは、これから現実に起きることの空売りだ。「在宅勤務」というネーミングが悪い。なぜなら、その新たな方針から得られる基本的な自由がそこに謳われていないからだ。その目的は自宅監禁ではないはずだ。みんながそれぞれ、最も生産的になれる場所で考えたり働いたりできるようにすることだろう。

もちろん、新型コロナウイルス(COVID-19)のお陰で、ほとんどの人たちが小さな家の中に隔離されていることは理解している。しかし長い目で見れば、「在宅勤務」はどこからでも仕事ができる柔軟性を提供することが最も重要だ。それは自宅かもしれないし、カフェでも、家族が入院している病院でも、ビーチでも、友だちの家でも、ホテルでも構わない。ここでいう柔軟性の要点は、スケジュールとそこから受けるストレスから解放され、好きなところで仕事ができる状態にすることだ。

家で仕事をすることを選ぶ人は多い。また私たちには自宅以外でも、毎日同じ仕事環境に行って仕事をしたがる習性がある。それは結構なことだ。柔軟性とは、常に場所を変えろという意味ではない。場所を変えたくなったときや、変える必要が出たときに変えられるのが柔軟性だ。

「在宅勤務」の方針には、ひとつ大きな疑問が浮かび上がる。オフィスが好きで、同僚と会議をするなどの社会生活が好きな人はどうするかだ。ここにまた、言葉の定義の幅を狭めてしまう問題がある。「どこでも勤務」とは、文字どおり「どこでも」だ。普段通勤しているオフィスもそこに含まれる。

柔軟性とは、スケジュールと場所を自分が行いたい知的作業に適応させることだ。いくつものプロジェクトを調整する会議に追われる日もある。社会から自らを隔絶して小説の執筆や新しいアルゴリズムの開発に没頭したり、来週の全体会議のための大きなプレゼンテーションの準備をしたい日もある。それらをまとめてやりたい日もある。家でくつろいだり、同僚に癒してほしい日もある。

端的にいえば「どこでも勤務」とは、スケジュールが許す限りの自由とダイナミズムをカプセル化したものだ。企業にとっては、本当の「どこでも勤務」の文化をどのように実現するか課題となる。それは、オフィスか家かの2択を超えるものだ。従業員が家で仕事ができるよう必要な機材(モニターや持ち帰り用のコンピューターなど)に予算を付けたり、自宅のインターネット環境を整えるための補助金を出す企業はすでに増えている。

だが「どこでも勤務」の場合、従業員がカフェで飲んだコーヒー代やWi-Fiの接続料を会社が負担するべきなのか?コワーキングスペースでのWi-Fiの利用料はどうか?従業員が気分転換のために別の街やいろいろな場所に移動する費用を企業は負うべきなのか?遠く離れた従業員に、直接会うための制度を提供するべきなのか?

残念ながら、今のところ企業幹部たちが気にしているのはコストだ(これは驚きだ!)。オフィスには金がかかる。この5年間で1人あたりのオフィス面積は、コスト削減のために小さくなっている。ドア付きの個室オフィスの代わりにオープンオフィスの使用が強要される原因はそこにもある。これなら協力体制が強化されて同時に経費も削減できる。「在宅勤務」が人気になったのは、ブロードバンドのインターネットが普及したことと、企業がさらなる経費削減の方策を模索するようになってからのことだ。

「どこでも勤務」は、企業の経費削減にはまったくつながらない。かつては大きなオフィスビルを使っていた企業は、小さなスペースで済むようになるかもしれないが、家賃で節約できた分以上の経費が、旅費や食費で消える。この新しい職場環境の柔軟化は、経費を削るためのものではない。長期にわたる社会的距離の確保のためでもない。結果的にこれは、従業員の福利と生産性、そして究極的には収益性への投資なのだ。

画像クレジット:Maskot / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

電子タバコのJuulが全労働力の約3分の1にあたる800〜950人の従業員を解雇か

The Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)の新しい報告によれば、電子タバコ大手のJuulは800〜950個のポストを削減する予定だ。この大規模な削減は、ベイエリアを本拠と同社のの全労働力の約3分の1に相当する。

レイオフの報告が各社から頻発している最中のニュースではあるが、Juulの問題は新型コロナウイルス(COVID-19)の大流行の直接の結果ではないと言われている。むしろ、それらは別途進行中のより大きな問題から生じているのだ。実のところ、同社がスタッフの大幅な削減を行ったのはこれが初めてではない、昨年10月にも約650人を解雇している。

Juulはニュースの詳細については回答していないが、同社は困難の後の再構築を進めているため、いくつかの大きな変化が進行中であることを認めてはいるようだ。「現在進行中の新規巻き直しの一環として、当社は常に、業務そのものと長期的に当社を位置づけるための最善の方法を評価し続けています」と同社は声明の中で述べている。「私たちは、未成年者の利用問題と闘いながら、成人喫煙者に対する害軽減の可能性を押し進めるために、利害関係各位の信頼を獲得することに引き続き焦点を当てています」。先の報告によれば、その「評価」の一部は、どれだけの職を削減するかの計算式というかたちで示されているという。数字は、そのスタッフの25%から40%の間のどこかになるようだ。最終決定は「今後数週間のうちに」届く予定だ。

CEOのK.C. Crosthwaite(K.C.クロスウェイト)氏からのものとして、プレスに漏れたメモには以下のように書かれている。

私たちは、当社の事業と、長期的に当社を位置付ける最良の方法を評価し続けています。過去6か月の間、厳しい決断を下してきましたが、それでもなお難しい決断を迫られています。私たちが最終的な決定と詳細を発表するときには、皆さんの前でお話しすることを約束します

最近では、進行中の規制問題が同社にとって大きな障害となっており、販売面でも大きな打撃を受けている。同社は昨年、急上昇後の急激な落ち込みによって10億ドル(約1065億円)の損失を被った。

同社に対しては、追加のコメントを要求している最中だ。

画像クレジット Scott Olson / Getty Images under a license.

原文へ

(翻訳:sako)

シリコンバレーが今必要とする、倫理を学ぶための新たな取り組み

編集部注:本稿はLisa Wehden氏による寄稿記事だ。同氏は、仕事の未来に焦点をあてたベンチャーキャピタルファンドBloomberg Betaの投資家。ベルリンでEntrepreneur Firstを立ち上げた経験がある。

アップルとグーグルは来月、iOSとAndroidで新型コロナウイルス検査で陽性となった人と接触のあった個人を分かるようにする追跡機能を発表する予定だ。

セキュリティの専門家は早くも、COVID-19の陽性となったユーザーの個人情報が晒されたり、広告業者に追跡されやすくなったり、誤検出の餌食になるなどのプライバシーリスクの危険性を指摘している。

これらはテック産業の倫理に関するおなじみの議論に新しく生じた懸念だ。公衆衛生の監視と個人のプライバシーの間のトレードオフを、テクノロジーはどう考えるべきなのか?誤情報と言論の自由への取り組み方は?フェイスブックやその他のプラットフォームは今までにないほど情報の質を評価する上で重要な立場にあり、公式情報源を強く推進したり、社会的距離対策を否定するユーザーのポストを削除したりしている。

パンデミックの拡大とともに新たなテクノロジーの開発競争が加速する中で、テクノロジーがこれらの課題に対する検証方法を見つける事がこれまで以上に重要になっている。現在のテクノロジーはこの課題に対して十分な準備ができていない。プライバシーと安全性の相容れない問題において健全なバランスを取り、同時にその取り組みを公衆に説明する必要があるにも関わらずだ。

ここ数年間、学業の世界ではテクノロジーがもたらす倫理的ジレンマに対処する方法を学生たちが学べるよう取り組んできた。昨年スタンフォード大学は、哲学、政治学、コンピューターサイエンスの教授陣が指導する「倫理、公共政策、および技術的変化」についての新しい学部課程コースを開設すると発表。現在は人気コースとなっている。ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、テキサス大学オースティン校などが同じようなコースを開設している。

しかし、未来のテクノロジストが学生だけでは、問題解決はまだまだ先だろう。現在のテック産業にもっと豊富な倫理的知見を持ってほしいと願うなら、学生だけではなくテック業界の実務者向けの倫理教育が必要だ。

この指導をテック業界の実務者へと拡大するために、ベンチャーファンドである当社Bloomberg Betaは、同じスタンフォード大学の教授陣を実験的に招聘することに合意した。この学部課程コースを基に、私たちはテクノロジーセクターで働く上位者向けの教育的体験をデザインできるだろうか。私たちは内容(実世界のジレンマを取り入れたもの)、授業の構成と場所を調整し、6週間の夜間コースをサンフランシスコに開設した。コースの告知から1週間で、定員数の2倍の申し込みがあった。

できる限りの方法で多様な受講者グループを選び出した。皆テック業界で責任ある立場を占めている人々だ。彼らによると、仕事で倫理的なジレンマに直面したときに相談するコミュニティが存在しないと言う。友人や家族に打ち明けると言う人や、インターネットで答えを探したと告白した人もいた。多くは社内で率直に口に出すことを恐れていた。最高倫理責任者の任命や、マイクロソフトやIBMによる倫理的AIのための原則の設定など価値あるものを含め企業が主導する倫理的な取り組みはいくつかあるものの、クラス受講者らはテック業界の行動についてオープンで正直な会話をする場がないと打ち明けた。

学部学生と同じように、同コースの受講者も学者と業界のリーダーたちの両方から学びたいと希望していた。毎週、オランダの元欧州議会メンバーのMarietje Schaake氏のようなエキスパートを招いて、データプライバシーから政治広告に至るまで、現実の問題について討論した。教授陣が議論の進行役となり、受講者たちが複数のしばしば対立する視点でゲストの専門家とともに議論するよう促した。

受講者の半数以上が科学、技術、工学、数学分野の出身で、しっかりした倫理フレームワークの教育をほとんど受けたことがない。同クラスでは、医師が指針とする行動原則(「まず、害を与えてはならない」)を含め、医療倫理などの他の分野の原則について、新しいアルゴリズムの設計という文脈で議論した。Ursula K. Le Guin氏の著書「The Ones Who Walk Away from Omelas(オメラスから歩み去る人々)」のようなSF作品の文章からも問題への向き合い方を問いかけ、責任を持ってデータを収集し使用する方法を受講生らが評価した。

そこで掘り下げた価値観に基づく質問に対する答え(誤情報と言論の自由の間のトレードオフなど)は、「正しい」「間違っている」というはっきりとした答えの範疇に収まらなかった。むしろ、より効果的なやり方で自分自身のバイアスをチェックし、情報に基づく意思決定を行うスキルを高めるため、今回の議論は非常に重要だったと受講者らは言う。ある受講者は次のように語っている。

質問、思考実験、教授との議論のトピックを一巡し、さらにそこに内在する課題について深く考えてみた後では、自分が始めに思ったのとは逆の立場になっていることがしばしばあった。

自宅隔離のためクラスがもう集まれないことになったとき、受講者らから1週間もしないうちにバーチャルセッションの要望があった。今まさに起きている出来事について、構造化された環境でクラスメートと議論できるフォーラムを皆が渇望していたのだ。政府、テック業界、個人がCOVID-19へどう反応したかを検証した第1回のバーチャルセッションの後、ある受講者は次のように述べている。「この問いかけに関してもっと有意義な会話ができるような気がする。私たちに何ができるか、何をしたら良いか、何をすべきか」。

テック業界のプロフェッショナルたちは、倫理に関して学びたいと望んでいるように見える。そうとなれば、やるべきことはもっと機会を提供することだ。私たちは年内にもう1つのコースを開講し、オンラインバージョンを提供したり、教材を公開したりする方法を模索しているところだ。

私たちがテクノロジーに解決を委ねる危機はCOVID-19が最後ではないだろう。そして解決策は今すぐ必要とされている。テック業界の行動において情報に基づく意思決定を望み、この危機に立ち向かう人たちにより倫理的な考えを持って取り組むよう願うなら、テック業界で働く人々に向けて倫理的に考えるための訓練を行う必要があるだろう。

受講者が反対意見や違和感のある視点も掘り下げられるよう、また個人的な経験を共有できるように、クラスで行われた議論の内容については非公開とさせていただく。本文に登場する受講生からは、見解を公開するにあたり明示的な許可を得ている。

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

“新型コロナウイルス

米国で大麻関連企業を新型コロナ支援の対象とする法案が提出

新型コロナウイルス(COVID-19)への米政府による大規模な資金援助が間近に迫っている中、以前に大麻ビジネスが急成長していた州の2人の議員が、政府に大麻産業への保護を要請している。

Earl Blumenauer(アール・ブルメナウアー)下院議員とEd Perlmutter(エド・パールマター)下院議員が提出したこの法案は、大麻企業に給与保護プログラム、経済傷害災害融資、災害融資プログラムを通じた緊急融資の資格を与えるものだ。

大麻関連企業は必要な事業認可を与えられており、大麻が医療やレクリエーション目的の販売で合法化されているほとんどの州で、事業を継続することができる。それでもこれらの企業は、例えプログラムの要件を満たしていたとしても、米中小企業庁を通じた融資や、その他の新型コロナウイルスによる危機に対する援助を申請することができない。これに、前回の大規模な新型コロナウイルス支援パッケージの後に導入された、PPPと呼ばれる融資免除プログラムも含まれている。

多くの中小企業経営者が労働者の雇用維持のためにPPPローンによる助成金を申請したが、資金を確保できた企業はほとんどなかった。さらに悪いことに、融資の一部は大手レストランチェーンヘッジファンドなど、中小企業の定義外の企業に与えられた。

「大麻ビジネスはコロラド州および全国の地域経済における主要な雇用者であり、また重要な貢献者でもある」と、パールマター議員は述べている。「大麻関連企業は他の合法的なビジネスと同レベルの支援を受けるべきであり、今回の新型コロナウイルスの危機の間、米中小企業向け貸付(SBA)の救済基金の対象となるべきだ」。

新型コロナウイルス 関連アップデート

原文へ

(翻訳:塚本直樹 Twitter

中南米のテックニュースまとめ読み

【編集部注】本稿はSophia Wood(ソフィアウッド)氏による寄稿記事だ。同氏はMagma Partnersのベンチャーパートナーで、英語でラテンアメリカのテックニュースを配信するLatAm Listの共同創設者でもある。

コロナウィルスの影響に備え、世界中で都市と資本の動きがロックダウンされる中、ブラジルのスタートアップたちは今も変わらず国際的な注目を集めている。今月、3件の大型買収がラテンアメリカのテックニュースに大きく取り上げられた。いずれもこの地域で最大の国に起きたことだ。投資が徐々に衰えを見せる中、これらの買収によって、ラテンアメリカにおけるスタートアップのエコシステムの流動性がいくらか高まるのではという期待が生まれている。

今月の初め、ブラジルの不動産リーダーであるGrupo ZAPが、クラシファイド広告プラットフォームとして現地の不動産マーケットでの地位確立を目指すOLXブラジルに6億4000万ドル(688億3000万円)で買収された。この買収によってOLXは、4万件の代理店と個人から集まる1200万件以上のリスティング広告を同社の顧客に提供できる。

Grupo Zapは2017年12月、不動産レンタルプラットフォームのVivaRealと合併し、事実上国内最大の不動産ポータルとなった。それぞれのブランドは個別に運営されてきたが、合計で月間4000万件を超えるアクセス数があり、ブラジルの人々の賃貸物件や購入用不動産探しに利用されてきた。買収は現在ブラジルの独占禁止法当局(CADE)による調査中で、契約は年内に完了する見通しだ。

一方、Peixe Urbanoは、メキシコのGrinとブラジルのYellowが合併してできた代替モビリティ企業のGrow Mobilityを買収する意思を表明した。Peixeは、近年利益が伸び悩んでいたこの電動キックボードとバイクシェアのスタートアップ企業で株式の過半数を保有する予定だ。Grin Mobilityは2019年にRappiと有望なパートナーシップ契約を結んだものの、昨年2月に14都市から撤退した後、現在はブラジルの3大都市とラテンアメリカのいくつかの都市でのみ営業している。Grow Mobilityは2019年1月のGrinとYellowの合併時に1億5000万ドル(161億3000万円)の資金調達を行い、その時点では最も成長の速いスタートアップと目されていたが、今回の取引はスタートアップ投資家から見れば全くの回収不能案件であると噂されている。

また、スウェーデンのクラウド通信プラットフォームのSinch ABは、Movileの戦略的通信企業であるWavyを6830万ドル(3億5400万ブラジルレアル、73億5000万円)と同社の150万株以上の上場株式により買収すると発表した。Movileはブラジル最大のテック企業のひとつで、この地域のTencentを目指す通信企業である。Wavyはブラジル第2のメッセージングプロバイダーで、メキシコ、コロンビア、ペルー、チリ、アルゼンチン、パラグアイにも事業を展開し、年間130億件以上のメッセージを中継している。Wavyは現在この地域の9つの拠点で260人以上を雇用しており、Sinchはこの買収でラテンアメリカ市場への参入を果たす。買収時点でWavyは年間200%の成長を示しており、今後数年にわたり新規事業で力強い成長を見せることを伺わせていた。

また、Movileは3月の最終週、新たにPatrick Hruby氏をCEOに迎えると発表した。Hruby氏の前任者であり1998年から共同創設者兼CEOを務めたFabricio Bloisi氏は取締役社長に就任し、引き続きiFoodのCEOを務める。Hruby氏はかつてMovileに客員起業家として招聘された5か月間の間にiFood、MovilePay、PlayKids、Sympla、Wavy、ZoopといったMovile傘下の企業と協力して事業を行ったことがある。Movileはブラジルでも知名度の低いユニコーン企業のひとつだが、10億人を超える人々にインパクトを与えることを目標に、この地域にモバイル帝国を着々と築いている。

Credijustoが1億ドルを調達し困窮するSMEを支援

メキシコの信用供与サービスプロバイダーのCredijustoは3月中旬、新型コロナウイルスにより経済的な影響を受けた中小企業向けの融資を行いスタートアップを支援するために、クレディ・スイスから1億ドル(107億6000万円)の借り入れを行ったと発表した。メキシコの中小企業はすでに銀行からの資金調達にアクセスできず苦しんでおり、また目下の経済見通しから金融機関が当面の間は高リスクの投資を見合わせる可能性がある。

一方で、この貸し渋りがCredijustoの商品である中小企業向けオンラインローンへの興味を湧き上がらせた。このスタートアップはリスクと金利を迅速に計算するアルゴリズムを使い、金融不安に直面している中小企業にとって極めて重要な流動性を提供する。また、Credijustoは近頃、2019年9月のシリーズBラウンドでゴールドマン・サックスとPoint72 Venturesから調達した4200万ドル(45億2000万円)以外にも、ゴールドマンから1億ドルの資金調達を行っている。

CornershopとiFoodが新型コロナウイルスの影響によるデリバリー需要に対応

アメリカでは、InstacartとAmazonが急増するデリバリー注文の需要に必死に応える一方で、ラテンアメリカではデリバリー大手のCornershopとiFoodが同様の課題に直面している。メキシコとチリでデリバリーアプリを運営するCornershopは昨年4億5000万ドル(484億円)でUberに買収されたが、前例のないオーダー量に直面しながらも運転資金が残すところ9か月であることを明らかにした。

大規模な買収であるものの、Cornershopのケースは現在もメキシコの独占禁止法当局(COFECE)による調査中だ。COFECEは以前WalmartがCornershopに提示した2億2500万ドル(242億円)の買収オファーを阻止したことがある。Cornershopの共同創設者でCEOのOskar Hjertonsson氏は、コロナウイルスの懸念から食料品デリバリー需要が急増する中で同社が直面している課題をTwitterでシェアした。同氏によれば、食料品デリバリーは厳しい隔離措置が取られている多数の地域で今や不可欠なサービスになったものの、買収の行方が不透明なままで、Cornershopは現在の需要に応えるだけの資力がないとのことだ。

メキシコの2つの規制当局がこのケースの管轄権を争っており、6か月が経過したが未だ解決していない。Cornershopは2018年6月のWalmartによる最初の買収話以来、メキシコ当局に翻弄されている。ヤトンソン氏はTwitterで、資金化の機会を得てロックダウン中の数百万人にのぼるラテンアメリカの人々を支援するため、またデリバリースタッフを守るのに必要な資金を招き入れるために、至急判断を進めるようメキシコ当局に対し強く求めた。

時を同じくして、ブラジルの食品デリバリーの最大手企業であるiFoodは、小規模のレストランが新型コロナウイルスによる経済の混乱を生き延びられるよう支援を行うファンドを立ち上げると発表した。多くのレストランはわずかな利益率で日々をしのいでいるため、食品業界はこのパンデミックで最も大きな打撃を受けている業界のひとつである。この状況に立ち向かうべく、iFoodは980万ドル(10億5000万円)のファンドを設立してiFoodネットワークの小規模レストランをサポートする。

また、同社は小規模業者が追加の費用負担なしで7日以内に支払を受けられるよう、4月と5月の支払処理を急ぐと発表した。この方法でさらに1億1700万ドル(125億8000万円)がブラジルのレストラン市場に投入される。最終的にiFoodは同社のレストランパートナーに対し、コロナウイルスが流行した期間中のデリバリー料金を全額返金することで支援しようとしている。この期間を生き抜くためにレストランはデリバリー注文に依存する必要があるという事実を踏まえ、iFoodはこれらの措置をブラジルの1000都市にある12万店以上のレストランパートナーに拡大した。

ニュースとメモ:Vai.Car、ClassPass、Superlogica、NotCo

COVID-19にまつわる公衆衛生と経済の懸念にも関わらず、ラテンアメリカのスタートアップエコシステムは今月も活況で、国内や海外の企業から同じように大規模ラウンドを実施するスタートアップがある。ブラジルの自動車レンタルスタートアップのVai.carは、2019年にIPOを達成したブラジルの投資プラットフォームのXP Investimentosから8500万ドル(91億4000万円)を調達した。このスタートアップは若者市場をターゲットに中期の自動車レンタルを行う。自動車はユーザーの自宅に届き、ロック解除には顔認証テクノロジーが使われている。また、Vai.carはUberと99ともパートナーシップを締結し、保有する2万5000台以上の自動車にドライバーがアクセスできるようにする

アメリカのジムシェアリングプラットフォームのClasspassは今月、チリのMuvpassとアルゼンチンのClickypassを買収し、ラテンアメリカへの積極的な事業展開を見せた。これらのプラットフォームはClasspassと同じように機能し、ユーザーは国内のジムやフィットネス教室のネットワークにアクセスできる。Classpassは2019年12月にブラジルにローンチし、2020年の初めのシリーズEで2億8500万ドル(306億5000万円)を調達して2020年代最初のユニコーンとなった。

ブラジルの支払管理プラットフォームのSuperlogicaは、3月中旬にWarburg Pincusから6350万ドル(68億3000万円)の資金調達ラウンドを行った。Superlogicaは人工知能によるサブスクリプションモデルで企業の定期的な支払いの管理を支援する。このスタートアップは現在、同国の4万5000件を超える賃貸物件の顧客にサービスを提供している。

チリのプラントベースフードテックのスタートアップ企業であるThe Not CompanyはBurger Kingとのパートナーシップ契約を締結し、アメリカ国内でビーガン向け食品の開発を行うと発表した。「RebelWhopper」は植物由来の肉と、チリでは瞬く間にどの家庭でもおなじみの商品になったNotCoの代表作で動物性製品不使用のマヨネーズ「NotMayo」を使用している。The Not Companyは、2019年にBezos Venturesと他の投資家から3000万ドル(32億3000万円)を調達し、昨年はアルゼンチンとブラジルに迅速に事業展開した。

新型コロナウイルスが世界中のあらゆる国で流行し、この6週間は経済と国際関係についての世界的な不確実性が際立っていた。しかしながら、ラテンアメリカへの取引の流れは3月も引き続き力強く、特にブラジルでは、パンデミックの拡大防止に向けたロックダウンを拒否している中にあっても大規模な取引といくつかの買収があった。特筆すべきことだが、移動制限が課されるなか、今月の多くの取引は外国のVC主導で行われ、投資家が移動することなく資金を支出している。このことから、この地域のフィードバックループの迅速さが伺われる。

この先、世界的にも何がニューノーマルになるかを現時点で予想するのは難しい。特にラテンアメリカのベンチャーとテック企業に関してはなおのことだ。ほとんどすべての国が国境を閉ざし、ある国々では他の国々よりもいっそう強権的な手段を使い、多くの国々が何らかのレベルの隔離措置を取りながらパンデミックが過ぎ去るのを待っている。近隣諸国がビジネスを停止させる中で、この地域で最大の経済規模を持つメキシコとブラジルだけは頑なに自国の都市を普段どおり機能させ、市民にバーやレストランや美術館に行くようにさえ勧めている。この判断が将来、この地域のスタートアップ企業と投資に、また市民生活と政治の安定にどのように影響するかは、いずれ時間が経てば明らかになるだろう。

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

著名自動運転車エンジニアがUberに仲裁を強制する申立てを提出

Levandowski

営業秘密訴訟の渦中にいた、著名な自動運転車エンジニアであるAnthony Levandowski(アンソニー・レヴァンドウスキ)氏は、彼の元従業員が彼に科された1億7900万ドル(約190億円)の判決の少なくとも一部の費用を負担しなければならないと要求して、Uberに強制仲裁を申し立てた。

3月末に提出された強制仲裁の申し立ては、レヴァンドフスキ氏の破産手続きの一部である。これはUberと、前Google、現在Alphabetの傘下にある自動運転プロジェクトのWaymoを巻き込み、紆余曲折を経た長い法的な物語の最新章である。

この申し立ては、Uberにレヴァンドフスキ氏との補償契約を遵守するよう強制する最初の法的措置である。Uberは、2016年にレヴァンドフスキ氏の自動運転トラックのスタートアップ企業であるOttoを買収したときに補償契約を締結している。この契約でUberは、レヴァンドフスキ氏の元雇用主であるGoogleからの請求に対してレヴァンドフスキ氏を補償するとしている。

Uberは、米国証券取引委員会に提出された配車会社の年次報告によると、利害が少なくとも6400万ドル(約69億円)になると見ている。一方で2020年3月にGoogleに1億7900万ドルを支払うように命令されたレヴァンドフスキ氏は、明らかにそれ以上を狙っている。

関連記事:米裁判所が自動運転技術の元エンジニアにGoogleへ約192億円を支払うよう命じる

「Uberは彼に対する補償義務の一部として、弁護の掌握を主張したため、アンソニーは過去3年間、彼の個人的弁護をUberに委譲していました。その後、Uberは結果が気に入らず、突然態度を変え、彼を補償しないと言ったのです。Uberの行為は間違っており、アンソニーは自身の権利を守る必要があります」と、レヴァンドフスキ氏の弁護士であるGoodwin ProcterのNeel Chatterjee(ニール・チャテルジ)氏はTechCrunchに電子メールで送った声明で述べている。

背景

レヴァンドフスキ氏は、2009年のGoogle自動運転プロジェクトのエンジニアおよび創設メンバーの1人だった。このプロジェクトは社内でプロジェクトChauffeur(ショーファー)と呼ばれていた。このGoogleの自動運転プロジェクトは後にスピンアウトしてAlphabet傘下事業のWaymoとなった。今週提出された裁判所の文書によると、レヴァンドフスキ氏はChauffeurプロジェクトに関する仕事に対してGoogleから約1億2700万ドル(約137億円)を受け取っている。

レヴァンドフスキ氏は2016年1月にGoogleを去り、他3人のGoogle出身者、Lior Ron(リオ・ロン)氏、Claire Delaunay(クレア・ドロネー)氏、Don Burnette(ドン・バーネット)氏とともに、自動運転トラックの会社であるOttoを立ち上げた。UberはOttoの創業から8カ月も経たないうちに買収した。

最近の申し立てによると、Uberは買収が完了する前に外部のフォレンジック調査会社であるStroz Friedbergを雇い、レヴァンドフスキ氏と他のOtto従業員の電子機器を確認するなどのデューデリジェンスを実施した。調査の結果、レヴァンドフスキ氏が自分のデバイスにGoogleに属するファイルを所有していたこと、および証拠が破壊された可能性があることが判明した。

Uberは法科学的な証拠にも関わらず、以前の雇用に関連してGoogleから提起される訴訟からレヴァンドフスキ氏を保護する広範な補償契約に同意している。レヴァンドフスキ氏は受け取った補償金1億2700万ドル(約130億円)の一部または全部をGoogleが取り返そうとするのではないかと危惧していた。

その予想が実現するのにそれほど時間はかからなかった。買収の2カ月後、Googleはレヴァンドフスキ氏とロン氏に対して2件の仲裁要求をした。Uberはどちらの仲裁の当事者でもなかった。しかし、レヴァンドフスキ氏を擁護する補償契約に基づき、巻き込まれることになった。

Uberはその義務を受け入れ、レヴァンドフスキ氏を弁護した。仲裁が行われている間、Waymoは営業秘密の盗難を理由に2017年2月にUberに対して個別に訴訟を提起した。裁判となり和解に至ったこの訴訟でWaymoは、レヴァンドフスキ氏が企業秘密を盗み、それをUberが使用したと主張した。この和解でUberは、Waymoの秘密情報をUberのハードウェアとソフトウェアに組み込まないことに同意した。また、UberはシリーズG-1ラウンド720億ドル(約7兆7600億円)の評価ごとに、Uber株式の0.34%を含む和解金を支払うことにも同意した。当時の計算で、これはUberの株式で約2億4480万ドル(約264億円)に相当した。

一方、仲裁委員会は2019年3月にGoogleの元従業員それぞれに対して仮仲裁裁定を下し、レヴァンドフスキ氏に対する判決は1億2700万ドル(約136億円)となった。この判決にはレヴァンドフスキ氏とロン氏が共同で責任を負う100万ドル(約1億780万)も別途含まれている。Googleは、利息、弁護士費用、その他費用の要求を提出し、12月に最終的裁定が下された。

ロン氏は2月に970万ドル(約10億4500万円)でGoogleと和解したが、レヴァンドフスキ氏は判決に異議を唱えた。サンフランシスコ郡高等裁判所は3月に彼の申し立てを棄却し、レヴァンドフスキ氏が責任を負う仲裁合意を彼が遵守することを求めるGoogleの申し立てを認めた。

Googleとレヴァンドフスキ氏、Uber間の法廷争いが進められ、レヴァンドフスキ氏は刑事起訴された。2019年8月、彼はGoogleで働いていた間の33件の営業秘密の窃盗および窃盗未遂について連邦大陪審により起訴された。先月、レヴァンドフスキ氏は米国地方検察官と法的合意に達し、営業秘密の窃盗1件の罪を認めた。

これから

レヴァンドフスキ氏の弁護士は、最終判決が彼に対して下されたとき、Uberはその補償契約を果たさなかったと主張している。レヴァンドフスキ氏はUberが支払いを拒否したため、連邦破産法第11条を申請せざるを得なかったと語った。

「Uberとレヴァンドフスキ氏は補償契約を締結していますが、Uberが最終的にそのような補償に責任があるかどうかは、同社とレヴァンドフスキ氏間で係争になる可能性があります」とUberは述べており、SECに提出された年次報告書でも同様の表現を使用している。

レヴァンドフスキ氏の法務チームがUberに仲裁を強制するよう裁判官を説得できたとしても、結果が肯定的であるとは限らない。仲裁には数カ月かかることがある。最終的に、レヴァンドフスキ氏が敗訴する可能性もある。しかしこの申し立てにより、レヴァンドフスキ氏は、法律用語を利用してではあるが、発言することでGoogleとUberでの彼の雇用の詳細を共有することができる。それらの中には、Googleの従業員を採用するレヴァンドフスキ氏の活動についてUberが何を(そしていつ)知っていたか、およびレヴァンドフスキ氏が彼のノートパソコンにダウンロードしてフォレンジック調査中に発見された情報に関する詳細が含まれる。

Uberとレヴァンドフスキ氏の間の最初の亀裂は、裁判所文書の時系列によると、2018年4月に発生している。申し立てで示された主張によると、このときUberはレヴァンドフスキ氏に対し、仲裁で彼を弁護するためにかかった費用の返還を要求する意思があると伝えている。当時Uberはレヴァンドフスキ氏に対し、返還要求の理由の1つはレヴァンドフスキ氏が「黙秘権の不当に広範囲な行使を通じて自身の供述で証言を拒否した」ためであると述べている。レヴァンドフスキ氏はGoogleとの仲裁中、黙秘権を供述に使用している。

裁判所文書によると、Uberはレヴァンドフスキ氏に黙秘権を放棄して仲裁中に証言することを要求したことはない。レヴァンドフスキ氏は、Googleと仲裁委員会に対して、彼が証言する意思があることを直ちに通知し、仲裁審問の前に供述することを申し出たと語った。

■Uberに仲裁を強制するために米国破産裁判所に提出されたアンソニー・レヴァンドフスキ氏の申し立て)
Levandowski-Uber Motion to Compel by TechCrunch on Scribd

画像クレジット:Justin Sullivan / Getty Images

原文へ

(翻訳: Dragonfly)

アフリカのテック企業の新型コロナウイルス対応まとめ

世界の関心を集めている新型コロナウイルス(COVID-19)がアフリカでも蔓延を見せ始めた3月、アフリカ大陸のテクノロジーエコシステムに参加する企業は、すぐさまその蔓延を食い止めるための取り組みを開始した。

新型コロナウイルスのアフリカの国別感染者数は、3月初旬には1桁台だったが、中旬になると急増し、世界保健機関(WHO)が警告を出すまでになった。

WHO地域事務局長Matshidiso Moeti(マシディソ・モエティ)博士は3月19日の記者会見で「10日ほど前は、新型コロナウイルスの感染者が確認された国は5か国だったが、現在は30か国にその影響が及んでいる。新型コロナウイルスの進行は極めて速かった」と述べた。

WHOの統計によると、3月31日の時点で、サハラ以南のアフリカにおける新型コロナウイルスの感染者数は3671人、新型コロナウイルスに関連する死者数は87人になり、3月18日の感染者数463人、死者数8人から増加している。

新型コロナウイルスが主要経済国で流行を見せるなか、アフリカの政府やスタートアップ企業は取引の多くを現金決済からデジタル決済に移行するための対策を取り始めた。現金が新型コロナウイルスの感染経路になるとWHOが警告したためである。

デジタル決済の導入でアフリカをリードするケニアは、公衆衛生ツールとしてモバイルマネーに取り組んだ。

ケニア最大の電気通信会社であるSafaricom(サファリコム)は、中央銀行とUhuru Kenyatta(ウフル・ケニヤッタ)大統領の後押しを受け、東アフリカの主要なモバイルマネー製品M-Pesa(Mペサ)の手数料を免除し、物理的な貨幣交換を削減した。

同社は1000ケニアシリング(約1000円)以下の個人間(P2P)取引すべてにおいて、手数料を3カ月間無料にすると発表した。

ケニアはデジタルファイナンスの採用率が世界で最も高い国の1つであり、その主な要因はM-Pesaが幅広く普及していることである。ケニアの通信当局によると、5300万人の人口のうち3200万人がモバイルマネーのアカウントに登録している。

ガーナの中央銀行は、3月20日、モバイルウォレットから現金を引き出す取引に制限を課し、100セディ(約1800円)の取引に対する手数料を免除するよう、モバイルマネープロバイダー各社に指示した。

3月18日のガーナ銀行のリリースによると、ガーナの通貨機関はモバイルマネーのKYC要件を緩和することで、市民が既存の携帯電話の登録情報を使用して、主要なデジタル決済プロバイダーで口座を開設できるようにした。

南アフリカでは、小規模事業者の支払い決済を手がけるスタートアップ企業のYocoが、POS端末で非接触型支払オプションを使用するよう顧客に促すことをクライアントに指示した。同社は、クライアントのネットワーク上でウェブリンクを介して送金を可能にするリモート決済製品の開発も加速させている。

アフリカで最も多い2億人の人口を抱えるナイジェリアでは、新型コロナウイルスの感染者数の増加をうけ、デジタル決済を手がける同国最大のスタートアップ企業の1つがその対応に乗り出した。

ラゴスに本社を置くベンチャー企業のPaga(パガ)は手数料を変更して業者が手数料なしでPagaユーザーから支払を受けられるようにしている。同社のリリースによると「狙いは現金の取り扱いを減らし、新型コロナウイルスの拡大ペースを落とすこと」である。

Paga Message

画像クレジット: Paga

PagaのCEOであるTayo Oviousu(タヨ・オヴィオス)氏は、ナイジェリアの都市がロックダウンから頻繁な手洗いまで今や世界中でおなじみとなった予防措置をどのように始めたか、またナイジェリア最大の商業中核地の企業がどのように現金決済を避け、デジタル決済に切り替えているかについて、ラゴスから電話で話してくれた。

アフリカは新型コロナウイルスを封じ込めるツールとしてモバイル決済に取り組む

アフリカは新型コロナウイルスの流行を食い止める手段として、デジタルファイナンスを利用している。アフリカ大陸の政府やスタートアップ企業は支払取引の多くを現金からモバイルマネーに切り替えるための対策を実施している。これは現金が新型コロナウイルスの感染経路になるとWHOが警告したためである。…

アフリカ最大のイノベーションインキュベーターであるCcHub(シーシーハブ)は、3月、新型コロナウイルスとその社会的影響および経済的影響を抑制することを目的としたテクノロジープロジェクトに対し、資金面とエンジニアリングの支援を行うことを発表した。

ラゴスとナイロビを拠点とする同社は、新型コロナウイルス関連プロジェクトに取り組む企業に約55万円から1090万円の資金提供を行う募集案内を、自社のウェブサイトに投稿した。

CcHubのCEOであるBosun Tijani(ボスン・ティジャニ)氏は、コロナウイルスの大流行と闘うアフリカの能力について懸念を示し、「アフリカの多数の国がイタリアや英国のようになれば、そのような状況に支援を提供できるだけの強靭さがアフリカの制度にあるとは思えない」と述べた。

CcHubはアフリカでの大流行を懸念し、新型コロナウイルスを封じ込めるテクノロジーに資金を提供

アフリカ最大のイノベーションインキュベーターであるCcHubは、新型コロナウイルスとその社会的影響および経済的影響を抑制することを目的としたテクノロジープロジェクトに対して、資金面とエンジニアリングの支援を行う。ラゴスとナイロビを拠点とする同社は今週、自社のWebサイトに募集案内を投稿した。TechCrunchからの電話にそう話すのは、CcHubのCEOであるボスン・ティジャニ氏である。CcHubは5000ドルから10万ドルの資金提供を…

ケープタウンを拠点とし、AIと機械学習を使って複雑な問題を解決するクラウドソルビングのスタートアップ企業Zindi(ジンディ)は、プラットフォームに登録されている1万2000人のエンジニアに対してある課題を公開した。

関連記事: Zindiが新型コロナ対策に向け1.2万人のアフリカ人データサイエンティストを活用

AI4Dが主催するこのコンペでは、データを使用して新型コロナウイルスの世界的な広がりを予測できるモデルを今後3か月で作成するという課題を科学者に提示している。この課題は4月19日まで公開されており、ソリューションは今後の数値で評価され、優勝者は5000ドルを獲得できる。

Zindiは4月、新型コロナウイルス関連の問題のソリューションを見つけるためのハッカソンも開催する。

画像クレジット:Sam Masikini via Zindi

デジタル小売業界では、アフリカ全土に進出するeコマース企業であるJumiaが、同社のネットワークを使って新型コロナウイルスを封じ込める対策を発表した。

ナイジェリアを拠点とし、アフリカの11か国で商品やサービスをオンラインで提供するJumia(ジュミア)は、アフリカ国外の供給ネットワークを活用して、ケニヤ、コートジボアール、モロッコ、ナイジェリア、ウガンダの保健省に認定フェイスマスクを寄付すると述べた。

Jumiaは、アフリカ諸国政府に対し、医療施設や医療従事者への物資を配送するために、同社のラストワンマイルネットワークを提供することも申し出た。

同社は公共部門に提供できるものが他にないか検討中である。「政府の役に立つことであれば、私たちは喜んで実行するつもりだ」とCEOのSacha Poignonnec(サシャ・ポワニョネック)氏はTechCrunchに話した。

Jumiaはアフリカ全土に進出するeコマースネットワークを活用して新型コロナウイルスに対応

アフリカ全土に進出するeコマース企業であるJumiaは、デジタル小売ネットワークを採用して新型コロナウイルスの蔓延を抑制しようとしている。ナイジェリアを拠点とし、アフリカの11か国で商品やサービスをオンラインで提供しているJumiaは、金曜日に一連の対策を発表した。 同社はケニヤ、コートジボアール、モロッコ、ナイジェリア、ウガンダの保健省に認定フェイスマスクを寄付する…続きを読む Jumiaはアフリカ全土に進出するeコマースネットワークを活用して新型コロナウイルスに対応…

その他のアフリカ関連記事

インターネット関連のアフリカのテックニュース(外部サイト)

画像クレジット:ジョンズ・ホプキンス大学の新型コロナウイルスマップ

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳: Dragonfly)

新型コロナ対策ではハイテク業界の慈善家を好意的に受け止めよう

米国時間4月9日の午後、ハイテク産業から新型コロナウイルス(COVID-19)との戦いに関連して2つの大きな発表があった。

ひとつは、TwitterとSquareのCEOであるJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏が新型コロナウイルス対応事業に10億ドル(約1080億円)を拠出すると発表したことだ。その数時間後、LinkedInの創設者であるReid Hoffman(レイド・ホフマン)氏、StripeのCollison(コリソン)兄弟、Y CombinatorのPaul Graham(ポール・グラハム)氏、ベンチャー投資家のChris Sacca(クリス・サッカ)氏ら、ハイテク業界の億万長者たちが、新型コロナウイルスと格闘する研究者のための緊急助成金プログラムを発表した。この2つの発表は、最も有望な新型コロナウイルスワクチンのための工場建設計画を打ち出したBill Gates(ビル・ゲイツ)氏の自発的活動や、個人用防護具(PPE)の輸入や寄付、人工呼吸器の製造、地方企業の支援など細かい活動を主導するハイテク業界のリーダーたちに続くものだ。

だが、ハイテク業界の慈善家たちによる新型コロナウイルスのパンデミック対策が急増したところで、本来なら政府が行うべきことを慈善家が代行している現状を、慈善活動に詳しい批評家たちは嘆いている。またその他の評論家たちは、これは権力闘争だと批判している。Theodore Schleifer(セオドア・シュライファー)氏は、今週、Recordに以下のように書いた

それでも、億万長者の慈善活動を批判する人たちは、彼らの寄付は個人の力を誇示するためのものだという考え方を捨てられずにいる。実際のところ、Moskovitz(モスコビッツ)氏などの慈善家は、前例のない危機に際して米国の対応を形作る上でもっとも重要な人物となっている。だが彼らには、無責任で、不透明で、非民主的な支配力が染みついている。権力闘争になっても不思議ではない。寄付をすることで慈善家たちはヒーローとして承認され、彼らの事業を厳しく監視しようという人々の気持が削がれてしまう。

だが、それは誤った前提だ。たとえ政府が十分にパンデミック対策に資金を投入したとしても、またハイテク業界のリーダーたちによる新型コロナウイルス対策が権力闘争だったとしても(その証拠はないが)、ハイテク業界には、そしてハイテク慈善家には、果たすべき役割がある。

私たちが注視すべきは、彼らの取り組みが、テクノロジー固有の能力や資源を適切に活用しているか否かだ。もしTesla(テスラ)、あるいはGMが人工呼吸器を作れるなら、ソフトウェア企業が公衆衛生当局者を支援できるなら、プログラマーが各州の労働局と協力して時代遅れの失業者対策を刷新できるなら、慈善家が政府よりも早く研究者たちに資金を注ぎ込むことができるなら、そうするべきだ。ホテルがこの悲惨な状況の中、ファーストレスポンダーやホームレスに空室を提供するのとなんら変わらない。

国防生産法を発動して、製造業者にマスクや人工呼吸器の生産を命令することには、その能力が民間企業にしかないことをみんなが知っているため、まったく議論の余地はなかった。ハイテク業界にも、この国難に際して同様の貢献を求めるのは当然ではないか?また、国の医療研究施設に十分な予算がないなら、迅速に資金を投入してワクチンを開発させるべきだろう。資金は多ければ多いほうがいい。

関連記事:トランプ大統領が新型コロナ対策に国防生産法を発動、マスクと人工呼吸器の増産を約束

これは、TechCrunchのインタビューの間ずっと、私が考えをまとめようとしていた、よく引き合いに出され、さまざまに定義が変化する「インパクト」の概念につながる。慈善としての寄付に違いがあるなら、どこでわかるのか? 宣伝のためのパフォーマンスと、周到に練られた計画との違いをどう見抜けばよいのか? 適切な問題が果たして解決可能なのか否かは、どうしたらわかるのか?

データ駆動の慈善家でさえも、常に適切な問題を提示できるわけではないことに、私はずっと以前から気がついていた。大きな成果が得られたからと言って、それを成功とは断言できない。企業や財団が何か良いことをしたからと言って、それらの団体の社会的インパクトが最大化されたことにはならない。

やはり、社会的インパクトの最大化とは、単に、企業がその中核となる能力を発揮することだ。もしハイテク企業が(そしてそこから誕生した億万長者の慈善家が)公共の緊急事態に役に立つスキルセットを持っていたなら、彼らの責務はそれを使うこと、それをうまくやることだ。

現実世界の問題に目を向けるよう、我々はずっとハイテク企業に訴え続けてきた。だから、今それをしている彼らに、文句を言うのは止めよう。

だが、ハイテク企業が期待を裏切っても批判するなと言っているわけではもちろんない。人々は、Amazon(Whole Foodsを含む)、Instacart、Seamless、DoorDashが最前線の従業員の保護を怠ったとして、適切は批判を下した。ハイテク企業は、その主要な機能を完全に果たしたときも、負うべき責任は負わなければならない。

テクノロジーはサプライチェーンを動かし続ける以外にも、新型コロナウイルスのパンデミックに打ち勝つための戦略を実行する際には、必ず中心的な役割を果たすことになる。世界中にPPEを配布する場合には、FlexportやApple(アップル)といった企業が獲得した物流の専門知識が必要になる。大規模テストを行うには、Gilead Sciencesなどのバイオテクノロジー企業の新製品を素早く展開しなければならない。管理体制の監視には、VerilyやPalantirが行っているような大量のデータ収集と分析が必要になる。そしてもちろん我々は、ワクチンや治療薬を大量に製造して配布しなければならない。Amazonなどが、その役割を果たせると私は期待している。

そこでビル・ゲイツ氏が思い浮かぶ。彼は、有望なワクチンの製造工場を今すぐ建設すると発表したことで、新型コロナウイルス対策のハイテク分野における最も中心的な人物となった。ゲイツ氏は、単なるハイテク系慈善家ではない。長年の勉強の末、彼は世界でも屈指のパンデミック対応の専門家になっていたのだ。彼に指針を求めることは、一人のハイテク億万長者の力に頼ることではない。その工学とプロジェクト管理のスキルを、この数十年間に発生した厄介な公衆衛生上の問題の対策に活かてきた実績を持つ人物のリーダーシップを受け入れるということだ。

もちろん、理想的な世界では、ゲイツ氏が埋めている穴を、とっくに政府が埋めているはずだ。そうなっていないことは許しがたい。だが、健全な民主主義とは、社会全体に貢献を求めることができることでもある。そして優れた公共政策とは、解決策が見つかるごとに、そこから最良のものを選び出すことだ。

それは、ときにはワシントンD.C.の郊外にいる名も無い官僚であったり、またときには、公衆衛生オタクのハイテク業界の大御所だったりもする。

【編集部注】筆者のScott Badeは、マイク・ブルームバーグ氏の元スピーチライターであり、「More Human: Designing a World Where People Come First」の共同著者。

画像クレジット:Cole Burston/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

「カップル創業」はスタートアップの秘密兵器

「1人でClearbanc(クリアバンクを経営していたら、これまでに8回は失敗していただろう」と話すのは、Clearbanc共同創業者のAndrew D’Souza(アンドリュー・ドゥーザ)氏だ。

そしてもう1人の共同創業者であるMichele Romanow(ミケーレ・ロマノウ)氏は「1人でClearbancを経営していたら、今の半分の規模だったでしょう」とドスーザ氏のコメントに補足する。

そのドゥーザ氏とロマノウ氏の2人は、4億2000万ドル(約452億円)もの出資を受けたフィンテック企業を共同創業した仕事上のパートナーであるだけでなく、恋愛関係上のパートナーでもある。

2人が出会ったのはサンフランシスコで開催したイベントでのこと。その後、意気投合した2人は、情報交換も兼ねてメキシコ料理のレストランで食事をすることになる。当時のドゥーザ氏は、すでに資金調達ラウンドも経験したことのある起業家で、一方のロマノウ氏は自身のスタートアップのための資金調達方法を模索していた最中だったこともあり、彼の話を熱心に聞き入れた。結局、ロマノウ氏は自身の会社をGrouponに売却することになるのだが、この時のドゥーザ氏との会話が売却時の評価額を高く保つのに役立ったという。そして、これが彼らの恋の始まりでもあった。

2014年に付き合い始めた当時、彼らはそれぞれの武勇伝を語り合った。ドゥーザ氏はこれまで立ち上げたすべての事業で資金調達を受けてきたが、一方のロマノウ氏が起業した会社は自己資金でまかなっていた。その対照的な2人の対話から生まれたのがClearbancだ。同社は一般的なエクイティ投資ではなく、スタートアップとレベニューシェア契約を結ぶことによって、起業家の持ち分を減らすことなく企業に資金を供給することを専門としたカナダのベンチャーキャピタルとして成長中だ。

Clearbancのほかにも、共同創業者カップルが指揮をとるスタートアップが、大規模な資金調達やイグジットを達成している。Julia Hartz(ジュリア・ハーツ)氏とKevin Hartz(ケビン・ハーツ)氏は、2018年にニューヨーク証券取引所に上場したEventbrite(イベントブライトの共同創業者だ。Diane Greene(ダイアン・グリーン)とMendel Rosenblum(メンデル・ローゼンブラム)夫妻は、2015年にDellが買収したVMware(ヴイエムウェア)を創業した。仕事上と恋愛上のパートナーを兼ねるという異色の関係は、もしかするとテック系スタートアップにとっての秘密兵器なのかもしれない。でも、それには共同創業者間の意見の食い違い、極端に不均衡な持分、果ては離婚というリスクも伴う。

Andrew D’Souza氏とMichele Romanow氏

Clearbanc共同創業者のアンドリュー・ ドゥーザ氏とミケーレ・ロマノウ氏

「とりあえず電話は置いて」

スタートアップの共同創業者の誰かと話せばわかると思うが、彼らの自由時間は皆無に等しい。ビジネスを共同経営しているカップルにとって、同じ就業サイクルで仕事をすることは利点だという。「同じ日に働いていれば、何か問題が起こっても同じリズムで対処できる」と話すのはロマノウ氏。「だから、なぜロマノウがトラブル処理のために電話に出るのかははっきりとわかっています。彼がやらなければ、その役は私に回ってくるのですから」。

NEXT Trucking(ネクスト・トラッキング)共同創業者のLidia Yan(リディア・ヤン)氏とElton Chung(エルトン・チョン)氏は、シリーズCラウンドでBrookfield(ブルックフィールド)とSequoia(セコイア)から調達した9700万ドル(約104億円)を含め、合計1億2500万ドル(約134億円)の資金を調達した起業家だ。この会社は彼らの生活に組み込まれているようなものだ、と2人は言う。しかしそれはビジネスにとっては最高かもしれないが、夫婦関係にとっては常にそうだとは限らない。「いつもすごい勢いで仕事について話している。オフィスだけじゃなくて、家でも」と言うのはヤン氏。解決方法はiPhoneのアラームを使った簡単なルールだ。仕事に関する話は、毎晩20時にアラームが鳴るまで。週末の自由な時間には、2人とも大好きな食べ歩きをLAですることもある。

Lidia Yan氏とElton Chung氏

NEXT Trucking共同創業者のリディア・ヤン氏とエルトン・チョン氏

また、会社の成長期にはハネムーンや子供の世話など、他の大切なことを保留にする決意が必要だと共同創業者カップルは言う。

Leslie Voorhees(レスリー・ボーヒーズ)氏とCalley Means(キャリー・ミーンズ)氏は2016年に結婚したが、ハネムーンにはまだ行っていない。この2人は、カスタムメイドのウェディングドレスを展開するスタートアップ、Anomalie(アノマリー)の共同創業者だ。同社はこれまでに1810万ドル(約19億円)を調達している。結婚式の翌日、新婚の2人はボラボラ島へハネムーンに出かける代わりに、中国行きの飛行機に乗った。レスリーはここに数カ月滞在し、Anomalieのサプライチェーンを構築したのだ。2人は今でもプライベートの時間を持てていないことを認めている。

「結婚してから、ウェディングドレス以外の話をした時間は1時間もない。健全なことではないかもしれないけれど、毎日ウェディングドレスに夢中になってることが楽しい」とレスリーは言う。

2人にはそれぞれを補い合うスキルがある。キャリーのすばらしい才能は迅速な決断力で、レスリーはより体系的に物事を整理することができる。彼らは、共同創業者という関係は2人の絆を強めたと言う一方で、今は生活の線引きを決めているところだとも話す。起業家であるためには、会社のために人生の他の部分を犠牲にする必要があるのだ。

「シリーズDの資金調達が終わったら、子供を作ることを考え始めるよ」と言うキャリーのジョークは、実はジョークではないかもしれない。

Leslie Voorhees氏とCalley Means氏

Anomalie共同創業者、レスリー・ボーヒーズ氏とキャリー・ミーンズ氏

夫婦の共同創業者への出資に積極的な投資家

Clearbancは、スタートアップが簡単かつ素早く成長のための資金を調達する手段を提供している。同社の20分タームシートという商品は、創業者が資金を調達する際に通常では3~6カ月かかる処理を20分間でできるようにするものだ。しかし、Clearbancに出資する投資家は同社の共同創業者の関係をどのように思っているのだろうか。最初の印象は好意的ではなかった。

初期のラウンドを見送ったClearbancの投資家の1人は、それぞれ個別になら投資する用意はあるが、付き合い出して1年しかたっていないカップルへの投資には懸念があるとドゥーザ氏とロマノウ氏に説明したそうだ。

「結局、この投資家は100倍の投資額で2ラウンドも投資してくれた」とドゥーザ氏は言う。これによって、カップルへの投資にはリスクが大きいというのが錯覚であることの証明になると2人は思っている。

現在、投資家もこれに同意しているようだ。メキシコを拠点とするオンデマンド求人サイト、Apli(アプリ)の共同創業者夫婦がALLVP(ラテンアメリカのVC)のオフィスを訪問した際、このファンドは夫婦が経営する会社に投資することに確信がなかった。

Apli創業者のVera(ベラ)とJose(ホセ)はハーバード・ビジネス・スクールで出会い、それぞれRocket Internetメキシコ支社の別部門で働いた後、Apliを設立した。一般的にはビジネスモデル、製品の市場への適合性、出資金が同社に与えるインパクトなどが投資を決定する際にファンドが検討する要素だが、今回のケースでは創業者の婚姻状況も考慮された。

「話し合いの結果、通常のファンドチーム同様にチームを分析することに決めた」と言うのはALLVPのパートナー、Federico Antoni(フェデリコ・アントニ)氏。明らかな個人的な結び付き以外に、ベラとホセには職業上の特別な関係があった。「離婚の危険性を考慮した上で、投資することに決定した。プライベートとスタートアップの仕事のバランスが取れる会社に完全な投資をするチームをセットアップした」とアントニ氏は言う。

創業者の持分も、もう1つの危険要素になる。共同創業者がカップルの場合、投資家は資本構成についても懸念する。2人が結婚していて財布が共同になっている場合、創業者カップルは会社の持分の圧倒的多数を所有することができる。結婚していない2人の創業者が会社の20%ずつを所有している場合に対して、結婚している創業者カップルは40%を所有することになる。この論理でいうと、結婚している共同創業者はベンチャーキャピタルとの交渉が優勢になる可能性がある。

しかし、インタビューしたキャピタリストの中にはこの論理に同意しない者もあった。

「私にとってエクイティについて唯一重要なことは、創業者が十分な数を所有しているかどうか。ベンチャーキャピタルの投資は本質的には少額投資なので、創業者のやる気が持続し、持続性のある事業の構築に報酬を提供することが重要」と言うのはAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)のゼネラルパートナー、David Ulevitch(デビッド・ウルビッチ)氏だ。

しかし、共同創業者の2人の関係がうまくいかない場合はどうなるか?

離婚はスタートアップの終焉とは限らない

Sara Margulis(サラ・マルグリス)氏とJosh Margulis(ジョシュ・マルグリス)氏は、2006年にハネムーン登録サイトのHoneyfund(ハニーファンド)を創業した。当時結婚していた2人は2015年にテレビ番組Shark Tank(シャーク・タンク)に出演し、Kevin O’Leary(ケビン・オリアリー)から40万ドル(約4300万円)の投資を勝ち取った。HoneyfundはZolaやThe Knotのような人気のあるウェディング系のスタートアップとは異なり、クラウドファンディングプラットフォームをコア製品として、婚約したばかりのカップルの結婚式やハネムーンの資金調達を助けるものだとサラは言う。

2019年にサラとジョシュが離婚したとき、直感的に思ったことは会社の売却だった。しかし「2人の職業上の方向性が離れていくほど、私がやりたい方法でチームを編成して、自分の優先順位で事業を進めていくチャンスが見えてきた」とサラは言う。結局、サラは元夫の会社の所有分を買い取り、CEOとして新しい方向で会社を継続した。

Sara Margulis氏

Honeyfund共同創業者兼CEO、サラ・マルグリス氏

「一緒に仕事をしていなかったら、離婚のプロセスは違っていたでしょう。私たちの関係について、辛いけど話さなければならないことがあったが、それをTargetとのパートナーシップ提携の大規模な立ち上げの最中にジョシュに言いたくなかった」とサラは言う。

彼、彼女らのビジネスの原点は、夫婦としての実際の経験に根付いている。Shark Tankの投資家から共感を得て、かつ総額720億ドル(約7兆7500億円)もの市場規模がある彼らのビジネスは、愛と婚姻の継続を商品化するものだった。しかし新婚時代は永遠には続かない。アメリカ心理学会によると、アメリカでは結婚した夫婦の50%ほどが離婚するという。

現在、マルグリス氏の共同創業者との離婚の経験は、同社の商品開発とマーケティング戦略に役立っている。

離婚後、マルグリス氏はHoneyfundでコンテンツに特化した戦略に取り組んでいる。夫婦が結婚生活をうまく続けていく方法に関する書籍の出版やポッドキャストの配信などがその例だ。彼女は心理学者や婚姻の専門家による研究に基づき、14年間にHoneyfundを利用した夫婦をインタビューし、自身が経験した結婚生活の破綻を回避するのを支援している。

秘密兵器

共同創業者カップルたちは、その関係性のメリットを熱く語る。共通する情熱とやる気、補い合うスキルセット、業界での経験が既婚、未婚に関わらずあらゆる共同創業者カップルのベースラインとなる。しかし、共同創業者同士の結婚には時間管理や、仕事とプライベートの区別などの特有の課題がある。

Initialized Capitalのマネージング・パートナーで、過去にはY Combinatorパートナーも務めたGarry Tan(ガリー・タン)氏は「共同創業者間の衝突は、初期のスタートアップをダメにする一番の原因だが、これを回避する方法もある」と自身の記事で述べている

共同創業者は、会社の大きな決定についていつも同じ考えを持っているわけではない。テレワークを許可するか、誰から資金を受け入れ、どのように資本を投じるか、主要幹部に誰を雇用するのか。

その決定に伴うリスクが高く、従業員のキャリアを危険にさらす可能性がある場合、それはいくらでも喧嘩の原因になり得る。共同創業者間の不和は、多くの苦戦しているスタートアップの主な理由だ。対立を回避するのではなく、積極的にそれに対処すること、つまりエグゼクティブコーチングやセラピストなどの専門家の助けを求めるタイミングを見極めることが重要だ。これによって不和の初期段階でトラブルを回避し、足並みをそろえることができるかもしれない。

この理論が当てはまるなら、共同創業者のカップルは2人の間にコミュニケーションツールをすでに持っているため、有利になる。

ウルビッチ氏は、共同創業者がカップルであることが投資意欲をそぐことはないと言う。

「多くの共同創業者たちが仲違いしてしまうとき、特に困難な状況ではお互いをよく理解していないことが多い。カップルはこの面をうまく解決できる」とウルビッチ氏は語る。この主張は創業者たちによって証明されている。

「会社の価値の1つは、反対することとコミットすること」と言うのはNEXT Truckingのリディア・ヤン氏だ。彼女によれば、同社では重要な決定事項について幹部の意見が一致しない状況では、投票が行われ、その後チーム全員が最終決定に全力で協力するという決まりがある。リスクを軽減するため、仕事の内容を明確に定義することが重要であると言う。自分の持ち場を守り、パートナー同士であれば互いの専門能力を理解し、信頼し合うことができているはずである。

Helena Price Hambrecht(ヘレナ・プライス・ハンブレヒト)氏とWoody Hambrecht(ウッディ・ハンブレヒト)氏は、共同創業者が夫婦であることはスタートアップの秘密兵器だと主張する。

Helena Price Hambrecht氏とWoody Hambrecht氏

Hausの共同創業者、ヘレナ・プライス・ハンブレヒト氏とウッディ・ハンブレヒト氏

ヘレナとウッディは、2012年、スワイプでデート相手を探す以前の時代にOkCupidで出会った。「オンラインデートサイトを使い出したところで、このかっこいい農夫を見つけたの。私たちは96%マッチだったから私からメッセージした」とヘレナは未来の夫との出会いを話した。

ウッディはヘレナのメッセージを「なりすましかと疑った」と言う。「こんな人が僕にメッセージしてくるわけがない。この人が実在する人物なのかどうかわからなくて、返信するまでに3〜4時間かかった」

何度かメッセージでやり取りした後、2人はサンフランシスコのリッチモンド近辺にある安いバーで会い、その後一緒に40オンスのビールを飲んだり、公園でラップのビデオをスマホで観たりするようになった。「うまく説明できないけど、すごく自然だった。この後の人生すべてで付き合っていく人だと思ったんだ。友達かそれ以上かはわからなかったけど」。2人は4年間の交友関係を経て、2018年に結婚した。

Haus(ハウズ)の起源は創業者の経歴の組み合わせにあり、このD2Cの食前酒ブランドは450万ドル(約4億8000万円)のシード資金を先日獲得したばかりだ。ウッディはワインと食前酒のブランドを所有していたが、十分な事業ができていないと感じていた。シリコンバレーでのブランディングと製造に豊富な経験を持つヘレナは、Z世代の人々は酔っぱらうことには関心がなく、ミレニアル世代は強制的で高くつくハッピーアワーに飽き飽きしていることを感じていた。何にお金を使うかを決めるとき、若い世代の消費者は健康、ブランドイメージ、透明性、持続可能性、信頼性を考慮する。

ヘレナは、なぜ同じ基準がアルコールほどの規模の業界に適用されないのかと疑問に思っていた。なぜアルコール業界にはGlossierやEverlaneのようなブランドがないのか? このコンシューマートレンドの推移には大きなチャンスがあるにもかかわらず、アルコールブランドのD2Cはできないと彼女は感じていた。Hausは「テクノロジー技術者がワイン職人と結婚した」魔法の瞬間から誕生したという。ウッディは、アルコール界のGlossierを作るための法的な抜け穴を知っていた。

「飲み物の原料の大部分がブドウでアルコール度数が24%未満であれば、ワインとして分類され直販できるわずかな食前酒の領域がある」とヘレナは説明する。このアイデアは2人の子供が3カ月のときに生まれた。「時間はないけれど、やらないといけなかった。人生でこれまでにない最高のアイデアだったから」。

「私たちにはツールキットがある。私たちは結婚している。何かに賛成できなくても、夫婦なら解決することができる。私たちのスキルセットは明確に定義されているので、衝突は少ない。互いに完全に異なる専門領域を持っているのでちょうどいいバランスになっている」とヘレナは言う。

ウッディとヘレナにはもう1つの秘密兵器がある。心理療法の経歴を持つビジネスコーチだ。すべての共同創業者はビジネス以上のかかわりが必要になるので、一緒にセラピーを受ける必要があると彼らは信じているという。

Roni Frank氏とOren Frank氏

Talkspace創業者のロニー・フランク氏とオレン・フランク氏

Talkspace(トークスペースのRoni Frank(ロニー・フランク)氏とOren Frank(オレン・フランク)氏もこの意見に同意する。彼らがメンタルヘルスの世界に興味を持つようになったのは、2人の関係が崩壊しかけたことがきっかけだった。

「私たちの結婚は崩壊寸前で、最後のチャンスにカップルセラピーを受けることを決めた」。セラピーを受けるのは、どちらにとっても初めての経験だった。コミュニケーションを改善し、お互いを思いやり、サポートする方法を学んだ。お互いの意見の衝突をコントロールする術を手に入れたのだ。

ロニーはこのセラピーの経験から、ソフトウェア開発者としてのキャリアを離れ、心理学を学ぶために大学院に戻った。これを学ぶ中で、米国のメンタルヘルスシステムがいかに破綻しているかを目の当たりにしたという。

米国人の25%が複数のメンタルヘルス疾病を患っているにもかかわらず、その3分の2はメンタルヘルスケアの治療を受けてけていないことが調査で示されているとロニーは言う。自分たちの関係修復にセラピーが役立った経験に基づき、創業者の2人はこの問題の解決に強い熱意を持った。そこで、患者とセラピストがオンラインで通信できるプラットフォームを立ち上げることを決めた。

メンタルヘルスケアへのアクセスを可能にするためのTalkspaceは、直近のシリーズDの5000万ドル(約53億7000万円)を含め、これまでに1憶1000万ドル(約118億円)を調達している。このプロダクトへの思いが2人の関係をより強固にし、現在の従業員は100人を超える。しかし従業員が10人しかいなかった黎明期のTalkspaceでは、物事は今よりずっと困難だった。自分たちの関係が非常に大きな不安を引き起こしていることにロニーは気付いた。

「寝られず、食欲は減り、極度の疲労を感じていた」。仕事に自身のすべてを使い果たし、自分で境界を設けるしかなかったとロニーは言う。しかしこの危機のおかげで、夫婦であり共同創業者である2人の間で使命と目標を共有し、結婚生活を元の健全な姿に戻すという貴重な経験ができたのも確かだ。

彼らのような共同創業者カップルは、配偶者と一緒にビジネスをすることを強く勧める。そのような企業が独自の製品を開発し、成功するマーケティング戦略を実行し、大規模なラウンドとイグジットを生み出しているのは事実だ。

夫婦でかつ共同創業者であるという特異な関係は、ビジネスにポジティブな影響をもたらしているように感じる。それが結婚生活にもうまく作用するのかどうかは、時間が証明してくれるだろう。

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

有給休暇の要求で団結したAmazonの倉庫従業員を新型コロナが後押し

Amazonは、その倉庫での労働条件がいかにすばらしいかを公言してやまないが、世の常として、当の従業員の話は少し違っている。シカゴの倉庫に勤める従業員たちは、非正規従業員に約束していた有給休暇や休みの提供を渋りつづけるAmazonに業を煮やしていた。彼らは団結したがAmazonは反発。ところが、新型コロナウイルスがその均衡を破ることになった。

これは、企業に搾取され待遇を変えさせたいと奮闘する従業員から直接聞いた話として、とても興味深い。搾取とは、仕事が辛く給与が安いという意味ではない。それも事実なのだが、従業員の健康と幸福を大切にすると主張している企業から当たり前の配慮と待遇を得るために戦わなければならない状況を意味している。

関連記事:Report alleges Amazon worked with Indiana to downplay warehouse worker’s death and safety concerns

この従業員グループは組合ではないが、ずっと昔に労働組合が巻いた種ではある。共通の不満を持つ従業員が団結して、雇用主側を交渉のテーブルに引きずり出すというものだ。そもそもこのグループは、きれいな飲料水を要求するために組織されたものだ。そう、読んで字のごとし。個人的に訴えても聞き入れられなかったため、150人が嘆願書に署名し提出したところ、すぐにボトル入りの飲み水が大量に届けられ、新しいウォーターサーバーも設置された。

このことから、改善が必要な場合には、みんなで組織的に行動を起こすことが大切だと学びました。その後も、解決すべきばからしい問題は山ほどあるため、私たちは再び集まり、何度かブレインストーミングを行い、自らをDCH1 Amazonians United(DCH1アマゾニアンズ・ユナイテッド)と名乗ることに決めました。組合や非営利団体のバックアップもない、ただの従業員の集まりですが、威厳を忘れず、なんとか生活を保とうと努力しています。私たちは、使えるはずの有給休暇をAmazonが使わせないことを知ったとき、それに対処する態勢が整っていました。

Amazonは、週20時間以上勤務している従業員には有給休暇と休みをとる権利があると書面で伝えているが、そのとおりになっていない。なぜか倉庫の従業員は特別扱いで、週20時間以上働いても有給休暇や休みを取る権利が与えられていないのだ。どうにかして改善されるべき問題だ。

有給休暇を求める嘆願書に251名の署名を集めた彼らは、地区担当のマネージャーと交渉の席を設けた。それは、各シフトが管理者側の説明が聞けるよう、個別に3回行われた。その結果、1人のマネージャーは嘆願書を受理し、後の2人は拒絶した。管理者側は従業員の孤立化を図るようになった。グループでは会わず、個人面談なら受け付けるというのだ。ちなみにこれは、労働者の組織化を潰す初歩的な手法だ。

彼らは、サクラメントの倉庫で同様のグループがストライキを決行したことを聞いた。組織的な活動に神経質になった管理者側が、組織潰しに出たのは明らかだ。Amazonの従業員による国際会議も開かれ、情報や活動方法などが交換された。

関連記事:ニューヨークの倉庫で働くAmazon従業員が新型コロナ陽性

そこへ新型コロナウイルスが襲ってきた。いくつものAmazonの従業員グループから感染予防対策、危険手当と育児補助金の増額を求める嘆願書が提出され、Amazonは病欠を有給扱いに切り替えた。

こうした取り組みの高まりを受け、Amazonは週20時間以上勤務する者全員に有給休暇を与える決断を下した。

画像クレジット:DHC1 Amazonians United

TechCrunchに送られた声明には、Amazonは「前例のないパンデミックに対応し、私たちの業務と物流ネットワークに携わる従業員のための福利厚生を、新しく大幅に改善しました」と述べられていた。またこの決定は、アマゾニアンズ・ユナイテッドまたはいかなるグループからの圧力によるものではないという。だがこれはAmazonを説得するには、世界中のグループが団結して会社の方針に抗議しなければならないと言っているようにも聞こえる。そもそもなぜ有給休暇が与えられなかったのか、私はその理由を尋ねたが、まだ返事が来ない。

シカゴのグループは、窮地に際して決して孤独ではなかったが、必要な改善を勝ち取るための勇気と手段を手にするには、組織とコミュニケーションが必要だった。Amazonは新たに10万人を雇用する予定だが、このグループが勝ち取った恩恵を彼らも同様に受けられることを願う。

関連記事:在宅人口の急増で宅配の需要が増えAmazonは10万名の倉庫労働者を緊急雇用

画像クレジット:Johannes EISELE / AFP / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

世界最大の大麻薬局「Planet 13」の内部

Planet 13(プラネット13)はラスベガス・ストリップから数ブロック離れた場所に位置し、世界最大の大麻薬局の称号を持っている。しかし、それは単なる店舗ではない。11万5000平方フィートの施設には、エンターテインメント、レストラン、そして同社がドリンクを作る大麻処理装置など、多くの施設が存在する。これは、ラスベガススタイルの到達点なのだ。

この動画では、この大麻スーパーの舞台裏を紹介している。

[原文へ]
(翻訳:塚本直樹Twitter

Apple Cardの3月分支払いを無利息で先送りできると利用者へ通達

AppleとGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)は、Apple Cardの所有者に対して、Customer Assistance Program(顧客支援措置)に登録することで2020年3月分の支払いを無利息で先送りにできると通達した。現在、Apple Cardを所有している人たちへは、先週末にこのオプションが電子メールで伝えられている。そこでは、COVID-19により引き起こされた困難な状況に際して、通常の支払いができなくなる利用者もいるからだと説明されている。

「Apple Cardは、あなたが経済的に健全な生活が送れるようにお手伝いすることを確約します」とメールには書かれている。

顧客支援措置に登録するには、Apple Card利用者は電子メールのリンク(こちら)をクリックするか、Apple WalletアプリからAppleのサポート係に直接メッセージまたは電話をする。

「メッセージ」で手続きするのがいちばん簡単だ。リンクをクリックすると自動的に次のメッセージが表示される。「あなたのご苦労をお察しし、お手伝いいたしたく存じます」

そして、ゴールドマン・サックスへ転送されて手続きを進めることになる。

送られてきたリンクをクリックすると、2つめの自動応答メッセージが届く。これは顧客支援措置が提供する内容の説明だが、特に重要なのは、無利息で支払いを遅らせる件だ。その後、登録するか否かをたずねられる。

登録を申請すると、数日内に確認書類が電子メールで送られ、そこで登録が完了する、とAppleから伝えられる。これで終了だ。

登録手続きはわかりやすく、電話を掛けるよりもメッセージを使えばさらに楽に行える。だが、メッセージでこの措置に関する質問をして答えを得るのは、少し難しい。実験として、私たちはAppleのチャットボットに質問してみたが、「Appleのスペシャリストとゴールドマン・サックスにおつなぎします」と返ってきた。それが1時間前だが、今これを書いている時点ではまだサポート係からの応答はない。

提示されている電話番号(1-877-255-5923)での人によるサポートのほうが簡単だったが、あるサポート担当者によると電話の量が「激増」しているとのことだった。電話の自動応答システムで登録に関する説明を聞かされた後、2を押すとサポート担当者と直接話せるようになる。その日の午後は、意外に早くつながり、担当者がすぐに出てくれた。

支払いの先延ばしを申請した時点におけるカード口座の残高で、何らかの制限を受けることはないと私たちは知った。だが、この申請が自分の信用情報や信用スコアに影響するかについては、担当者は答えられなかった。自然災害の場合は、被災した利用者を特定して、支払いが滞っても信用情報に不利な影響がないように貸し手側が配慮する制度がある(Appleは利用者の口座は流動負債として報告されると認めている)。

この措置が4月まで続くかどうかについては、未確定事項のため、担当者は明言できなかった。

支払いの先延ばしを決めたカードはApple Cardだけではない。

Citi(シティ)は、3月早々に利用者のための支援措置を講じた。これには、信用枠の引き上げと支払猶予が含まれる。最近では、PNC Bank(PNCバンク)、Capital One(キャピタル・ワン)、Bank of America(バンク・オブ・アメリカ)、Chase(チェイス)、Discover(ディスカバー)、U.S. Bank(USバンク)、Wells Fargo(ウェルズ・ファーゴ)、Fifth Third(フィフス・サード)他のカードも、新型コロナウイルスが流行している間、それぞれの支援措置を提供する旨を利用者に伝えている。

American Express(アメリカン・エキスプレス)も、利用者からの要請があれば対応するとTechCrunchに語っている。

「アメリカン・エキスプレスは、COVID-19の影響で経済的な困難に陥っている利用者を救済する準備ができています。カードの裏面に記されているカスタマー・ケア・プロフェッショナルに電話をするか、デジタル・サービス・チャンネル(オンライン・チャットまたはAmexアプリ)を通じていつでも対応します」と広報担当者は話している。支払いの先延ばし、戻り小切手手数料、利子などについて、利用者との個別の相談に応じるとのことだ。

「私たちには、経済的困難に対処する短期から長期にわたる数々の支援措置があります」と彼らは話す。

新型コロナウイルス流行時に家計を守るためのNerdWalletのガイドには、金融業者やクレジットカード発行会社は、その他の問題についても個人ベースで対応してもらえるケースがあると書かれている。

「利用者と1対1で対応する他に、銀行の中には一部の手数料を一律に変更するところもあります。たとえばシティカードは、3月9日から(30日間)数々の手数料を免除します。銀行口座の月間利用料や現金自動支払機での期限前払い戻しの違反金などです」とNerdWalletの広報担当者は言う。「助けが必要なときは、こうした提案を利用してください。あなたの負担が軽くなり、態勢を立て直して、先へ進むための計画を立てる時間が得られます」と彼らは話している。

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

ウォール街の悲惨な1日はNYダウ2000ドル超安で終わる

少なくとも、市場は引けた。ダウ平均株価が2000ドル超、7.79%下落し2万3850.79ドルで引け、市場は年初の最悪の取引に耐えた。ナスダック総合指数は624.94ドル安の7950.68ドルで取引を終え、S&P 500の下落を受け、朝方の取引は一時停止した。S&P自身は225.81ドル安の2,746.56ドルで引け、7.6%の下落だった。

主要な金融指標が軒並み悪化したことから、株式市場は米国時間3月9日の月曜日に下落することが予想されていた。さらに石油輸出国機構(OPEC)の合意が破棄され、ロシアとサウジアラビアが世界の石油市場に安価な原油を供給することになったため原油価格は下落した。価格競争の結果、原油価格はバレル当たり約30ドル(約3100円)まで下落した。

一方、米国では新型コロナウイルス(COVID-19) の感染拡大をめぐる最新の報道を、市場が吸収しようとしている。ジョンズホプキンス大学がまとめたデータによると感染者数は607人で、米国では感染拡大が続いている。学校は閉鎖され、企業は可能であれば従業員に在宅勤務を奨励しており、ほとんどの人が不必要な出張をキャンセルしている。

石油・ガス会社や航空機メーカーへの打撃は、常にダウに大きな影響を与えてきた。そして今、米国政府では業界救済の可能性についての公開議論が行われている。

この種の話題は米国経済の健全性にとって良い前兆ではないし、一方で同国のサービス産業に大打撃を与えるような恐れでもない。

米連邦準備制度理事会(FRB)は基本的に、米国経済を活気づけるために可能なすべての政策を変更し、株式市場への投資を促すために金利をほぼゼロに引き下げた。

しかしこれらの施策は、いずれもまだ役に立っていないようだ。そしてスタートアップは、世界の他の国々と同じくらい、市場の縮小を恐れる必要がある。金融市場での資金の流れが減っているということは、現実世界での資金調達が減少し、企業が保有する資金の使い方について慎重な意思決定が行われることを反映するからだ。

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹Twitter

スタンフォード大学が新型コロナ懸念で教室での授業を中止

オースティンで開催されるはずだったSXSWカンファレンスSaaStrといったこの数日間における大型イベントのキャンセルに続き、カリフォルニア州パロアルトのシリコンバレー中心部に位置するスタンフォード大学は、米国時間3月6日の金曜日遅くに、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が拡大していることをうけて、冬学期最後の2週間、対面での授業を中止すると発表した。

スタンフォード大学 の声明の中で、同大学の教務副教授であるPersis Drell(ペルシス・ドレル)氏は、スタンフォード大学は冬の学期試験に向けた2週間の授業を中止し、「実行可能な範囲で」オンライン形式の授業に移行すると発表した。

また、大学教授たちには政府から従来と同等のオンライン形式の教材を提供する方法の考えるように促されており、冬学期に行われるすべての試験はリモートで提供される予定だ。この方針は、3月9日月曜日の授業から直ちに実施される。

さらにスタンフォード大学は、毎年開催されていたAdmit Weekendを中止する。Admit Weekendでは、入学希望者が学部課程への進学先を最終的に決める前に、週末にヤシの木で囲まれたキャンパスを訪れて、学校についてさらに詳しく学ぶはずだった。また、キャンパスツアーも中止になっている。

スタオンフォード大学はまた別のメモで、2人の学生が新型コロナウイルスの「汚染環境に滞在した」ため、隔離されていることを認めた。同大学は、現時点においてどちらの学生も同ウイルス感染に対して陽性反応を示していないと強調した。

サンフランシスコのベイエリアでは、新型コロナウイルスにさらされる可能性のある人数が増えている。スタンフォード大学は世界的に大流行している新型コロナウイルス対応の先頭に立っており、今週にはこの感染症を検出する独自の検査法を開発したことを発表していた。

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹 Twitter

米国株式市場で前週下げた株価が早朝取引で一部反転

ダウ平均株価とNasdaq(ナスダック)の指数はともに、1週間の下落を経て反転した。ダウは570.50ポイント高の25,979.86ポイント、ナスダックは112.96ポイント高の8680.33ポイントで取引を終えた。

先週は新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大と、それがサプライチェーンや企業収益の削減につながるとする各国政府の反応が、投資家心理に大きく影響した。しかし先週末、アメリカではこの病気に関するニュースはあまり多くなかったため、市場の動きは強気に転じている。

Microsoftは、中国メーカーの閉鎖が業績に影響を与えるとのガイダンスを発表した数社のうちの1社だ。実際、医薬品からテック業界に至るまでの産業のサプライチェーンでは、基本的な部品が不足しているために生産量が減少している。

マーケットにおける同様の懸念は、ウイルスが中国以外のほぼすべての大陸に広がったことである。ブラジル、イタリア、ナイジェリア、米国では先週、新たな症例が報告され、米国では初めて2例の死亡が報告された。

ダウ指数が1日で史上最悪の下げ幅を記録してから1週間もたたないうちに、両市場とも上昇に転じた。これにより、現在傍観しているIPO(DoorDash、Airbnb、Asana、Procore、その他)の空気が変わり、さらに他の企業がデビューを準備する余地が広がるかもしれない。

しかし、1日に満たない時間での上昇は回復よりも、安定化という意味が大きい。最悪の1週間からひと段落するのは良いことだが、確信を高めるまでには至っていない。より多くのCOVID-19の検査キットが米国内に出回るようにはなったが、同国が窮地を脱したわけでは決してない。しかし、下落からひと段落したので、次は回復についての話をしたいものだ。

Bitcoinでさえ過去24時間で3%上昇している。

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹 Twitter