新型コロナ禍でVCが尻込みする中、Clearbancはスタートアップ支援の新商品を発表

Clearbanc Runway

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によってベンチャー市場が鈍化し、スタートアップの資金調達はますます厳しいものになっている。パンデミックにより市場活動が減退した。これは投資家達にとって流動性の高い取引が減り、スタートアップに回す新規資本(ドライパウダー、待機資金)が減っていることを意味している。

その結果、投資家達は既に資金援助したスタートアップに対し、ディールフローのバブルが戻るまでランウェイを引き延ばす必要があると伝えている。これには数四半期を要する可能性があると投資家たちは話している。2008年度のデータを見ると、数年かかる場合も考えられる。

カナダのClearbanc(クリアバンク)は、Clearbanc Runway(クリアバンク・ランウェイ)という新しい金融商品を発表し、スタートアップの資金確保を支援する。

Clearbancのウェブサイトでは、スタートアップ創業者が現在のランウェイ額、現金残高、諸経費、収益、マージン、成長率などの条件を入力できるようになっている。同社はそのデータを分析し、起業家の持ち分を減らさない形で資金を提供する。創業者はレベニューシェア契約を通じて現金を返済できるようになっている。企業が対象資格を得るには、毎月最低1万ドル(約108万円)の収益と、最低6カ月間の一貫した収益履歴が必要になる。

Clearbancが金融会社のように聞こえるかもしれないが、実際のところ(ほとんど)その通りだ。Clearbancはスタートアップに融資し、返済計画に上乗せして利子を請求する。ただし同社は金融会社として規制されていないため、法的には金融会社にはならない。ローンには固定返済スケジュール、複利、返済日があるが、Clearbancにはそうした要素はない。その代わり売上に対する定率を取り分とし、スタートアップの業績が下がれば、返済されるまでしばらく待つことになる。同社がスタートアップ創業者にペナルティを課すことはないらしい。

レベニューシェア契約では一律6%の手数料が課され、その返済は既に資金調達プランの一部となっている。Clearbancからの投資を受けるスタートアップの売上が前月比で伸びている場合、企業が取得できる資金調達合計額はそれに反映される。

クリアバンク・ランウェイ グラフ

Clearbanc Runwayは同社のフラッグシップ商品「20分タームシート」に似ている。

Clearbancは、20分タームシートを作り、企業がGoogleやFacebookの広告に費やせるように、希薄化しない広告資金を取得できるようにした。株式資本が関わることから、スタートアップは貴重なベンチャー投資資金をその他の経費に使用することが前提とされた。Clearbanc Runwayはさまざまな目標を実現させている。

「我々は当初、主に広告費用に重点を置いていた。今では企業を維持するためのあらゆる経費に資金供給できる」とClearbanc共同創業者のAndrew D’Souza(アンドリュー・ドゥスーザ)氏は言及した。Clearbanc Runwayでは、将来エンタープライズ、ソフトウェアビジネス、eコマースビジネスにも資金供給する。

この2つの商品におけるわずかな違いは、新商品の方がやや保守的であるという点だ。Clearbancはこのパンデミックの状況下で、eコマースビジネスに多額の資金供給を行っているため、独自の位置にいる。そうしたインターネットビジネスは、新型コロナウイルスの大流行で実店舗が閉店する中、トラフィックを増やしている。

ただしそれは「不安定で、先行きは不透明だ」とドゥスーザ氏は言及している。「我々が6カ月前よりもさらに保守的になるのは明らかだ。おそらく、より少額をより頻繁に投資する感じになるだろう」。

Clearbancはベンチャーキャピタル企業とディールフローで競ってはいない。その代わりに、小規模事業に融資を行うフィンテック企業と競うことになるだろう。そしてその焦点は珍しくもなければ、新しくもない。

関連記事:Here’s why so many fintech startups are loaning to small businesses(未訳)

2020年3月、小規模事業が従来の融資資産の代わりにクレジットカードで経費を支払えるようにするPlastiq(プラスティック)は7500万ドル(約81億円)を調達した。決済処理大手のStripe(ストライプ)もStripe Capital(ストライプキャピタル)と呼ばれる融資商品を用意し、一律の利率でインターネットビジネスに融資している。

2020年1月、Lighter Capital(ライターキャピタル)は他のスタートアップに融資するために1億ドル(約108億円)を調達した。これはClearbancのレベニューシェア契約のフォーマットに似ている。これらすべては、融資を行う意思のある企業が多く存在することを示している。どの取引条件が最適かを決めるのは小規模事業の方だ。

ベンチャーキャピタル投資先スタートアップがすべての小規模事業ローンを利用できるわけではない。例えば米国政府が提供した2兆ドル(約215兆円)の景気刺激パッケージで用意された小規模事業への融資は3億4900万ドル(約375億円)だ。しかし新しいガイダンスでは、ほとんどのスタートアップが未だに金銭的支援から除外されている。だが先着順で配布されるため、ローンを申請する者も中にはいる。

Clearbancは、スピード感において競合するサービスと差別化できるという。

ドゥスーザ氏は「『SBA(米国中小企業局)ローン』に申請できるのはすばらしいことだが、時間がかかる可能性がある」と言及した。「莫大な未処理分があるし、取引銀行とそのシステムの設定にもよるだろう」。

ほぼ1年前に、Clearbancの共同創業者であるMichele Romanow(ミケーレ・ロマノウ)氏はIPOとユニコーンについて語っていた。会社の倒産や大量のレイオフを回避するための支援に関するドゥスーザ氏の話を聞くと、Clearbanc Runwayへの敷居は明らかに低くなっているようだ。

同社は2200の企業に対し10億ドル(約1075億円)の投資または金銭的取引を行った。

そもそもClearbancでは、従来の株式資本取引に含まれる所有権譲渡なしに、eコマース創業者がスタートアップを成長させる方法として同社を売り込んできた。現在では、世界中でベンチャーキャピタルが以前より活発ではなくなったことを受け、すべての創業者がビジネスを存続させる方法として売り込んでいる。

原文注:クリアバンクは、従来の金融会社とは異なる金融構造を有しているため、法的には金融会社とは言えないと言及している。記事はこの点を明確にするため更新されている。

画像クレジット: Malte Mueller / Getty Images

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(翻訳: Dragonfly)

「カップル創業」はスタートアップの秘密兵器

「1人でClearbanc(クリアバンクを経営していたら、これまでに8回は失敗していただろう」と話すのは、Clearbanc共同創業者のAndrew D’Souza(アンドリュー・ドゥーザ)氏だ。

そしてもう1人の共同創業者であるMichele Romanow(ミケーレ・ロマノウ)氏は「1人でClearbancを経営していたら、今の半分の規模だったでしょう」とドスーザ氏のコメントに補足する。

そのドゥーザ氏とロマノウ氏の2人は、4億2000万ドル(約452億円)もの出資を受けたフィンテック企業を共同創業した仕事上のパートナーであるだけでなく、恋愛関係上のパートナーでもある。

2人が出会ったのはサンフランシスコで開催したイベントでのこと。その後、意気投合した2人は、情報交換も兼ねてメキシコ料理のレストランで食事をすることになる。当時のドゥーザ氏は、すでに資金調達ラウンドも経験したことのある起業家で、一方のロマノウ氏は自身のスタートアップのための資金調達方法を模索していた最中だったこともあり、彼の話を熱心に聞き入れた。結局、ロマノウ氏は自身の会社をGrouponに売却することになるのだが、この時のドゥーザ氏との会話が売却時の評価額を高く保つのに役立ったという。そして、これが彼らの恋の始まりでもあった。

2014年に付き合い始めた当時、彼らはそれぞれの武勇伝を語り合った。ドゥーザ氏はこれまで立ち上げたすべての事業で資金調達を受けてきたが、一方のロマノウ氏が起業した会社は自己資金でまかなっていた。その対照的な2人の対話から生まれたのがClearbancだ。同社は一般的なエクイティ投資ではなく、スタートアップとレベニューシェア契約を結ぶことによって、起業家の持ち分を減らすことなく企業に資金を供給することを専門としたカナダのベンチャーキャピタルとして成長中だ。

Clearbancのほかにも、共同創業者カップルが指揮をとるスタートアップが、大規模な資金調達やイグジットを達成している。Julia Hartz(ジュリア・ハーツ)氏とKevin Hartz(ケビン・ハーツ)氏は、2018年にニューヨーク証券取引所に上場したEventbrite(イベントブライトの共同創業者だ。Diane Greene(ダイアン・グリーン)とMendel Rosenblum(メンデル・ローゼンブラム)夫妻は、2015年にDellが買収したVMware(ヴイエムウェア)を創業した。仕事上と恋愛上のパートナーを兼ねるという異色の関係は、もしかするとテック系スタートアップにとっての秘密兵器なのかもしれない。でも、それには共同創業者間の意見の食い違い、極端に不均衡な持分、果ては離婚というリスクも伴う。

Andrew D’Souza氏とMichele Romanow氏

Clearbanc共同創業者のアンドリュー・ ドゥーザ氏とミケーレ・ロマノウ氏

「とりあえず電話は置いて」

スタートアップの共同創業者の誰かと話せばわかると思うが、彼らの自由時間は皆無に等しい。ビジネスを共同経営しているカップルにとって、同じ就業サイクルで仕事をすることは利点だという。「同じ日に働いていれば、何か問題が起こっても同じリズムで対処できる」と話すのはロマノウ氏。「だから、なぜロマノウがトラブル処理のために電話に出るのかははっきりとわかっています。彼がやらなければ、その役は私に回ってくるのですから」。

NEXT Trucking(ネクスト・トラッキング)共同創業者のLidia Yan(リディア・ヤン)氏とElton Chung(エルトン・チョン)氏は、シリーズCラウンドでBrookfield(ブルックフィールド)とSequoia(セコイア)から調達した9700万ドル(約104億円)を含め、合計1億2500万ドル(約134億円)の資金を調達した起業家だ。この会社は彼らの生活に組み込まれているようなものだ、と2人は言う。しかしそれはビジネスにとっては最高かもしれないが、夫婦関係にとっては常にそうだとは限らない。「いつもすごい勢いで仕事について話している。オフィスだけじゃなくて、家でも」と言うのはヤン氏。解決方法はiPhoneのアラームを使った簡単なルールだ。仕事に関する話は、毎晩20時にアラームが鳴るまで。週末の自由な時間には、2人とも大好きな食べ歩きをLAですることもある。

Lidia Yan氏とElton Chung氏

NEXT Trucking共同創業者のリディア・ヤン氏とエルトン・チョン氏

また、会社の成長期にはハネムーンや子供の世話など、他の大切なことを保留にする決意が必要だと共同創業者カップルは言う。

Leslie Voorhees(レスリー・ボーヒーズ)氏とCalley Means(キャリー・ミーンズ)氏は2016年に結婚したが、ハネムーンにはまだ行っていない。この2人は、カスタムメイドのウェディングドレスを展開するスタートアップ、Anomalie(アノマリー)の共同創業者だ。同社はこれまでに1810万ドル(約19億円)を調達している。結婚式の翌日、新婚の2人はボラボラ島へハネムーンに出かける代わりに、中国行きの飛行機に乗った。レスリーはここに数カ月滞在し、Anomalieのサプライチェーンを構築したのだ。2人は今でもプライベートの時間を持てていないことを認めている。

「結婚してから、ウェディングドレス以外の話をした時間は1時間もない。健全なことではないかもしれないけれど、毎日ウェディングドレスに夢中になってることが楽しい」とレスリーは言う。

2人にはそれぞれを補い合うスキルがある。キャリーのすばらしい才能は迅速な決断力で、レスリーはより体系的に物事を整理することができる。彼らは、共同創業者という関係は2人の絆を強めたと言う一方で、今は生活の線引きを決めているところだとも話す。起業家であるためには、会社のために人生の他の部分を犠牲にする必要があるのだ。

「シリーズDの資金調達が終わったら、子供を作ることを考え始めるよ」と言うキャリーのジョークは、実はジョークではないかもしれない。

Leslie Voorhees氏とCalley Means氏

Anomalie共同創業者、レスリー・ボーヒーズ氏とキャリー・ミーンズ氏

夫婦の共同創業者への出資に積極的な投資家

Clearbancは、スタートアップが簡単かつ素早く成長のための資金を調達する手段を提供している。同社の20分タームシートという商品は、創業者が資金を調達する際に通常では3~6カ月かかる処理を20分間でできるようにするものだ。しかし、Clearbancに出資する投資家は同社の共同創業者の関係をどのように思っているのだろうか。最初の印象は好意的ではなかった。

初期のラウンドを見送ったClearbancの投資家の1人は、それぞれ個別になら投資する用意はあるが、付き合い出して1年しかたっていないカップルへの投資には懸念があるとドゥーザ氏とロマノウ氏に説明したそうだ。

「結局、この投資家は100倍の投資額で2ラウンドも投資してくれた」とドゥーザ氏は言う。これによって、カップルへの投資にはリスクが大きいというのが錯覚であることの証明になると2人は思っている。

現在、投資家もこれに同意しているようだ。メキシコを拠点とするオンデマンド求人サイト、Apli(アプリ)の共同創業者夫婦がALLVP(ラテンアメリカのVC)のオフィスを訪問した際、このファンドは夫婦が経営する会社に投資することに確信がなかった。

Apli創業者のVera(ベラ)とJose(ホセ)はハーバード・ビジネス・スクールで出会い、それぞれRocket Internetメキシコ支社の別部門で働いた後、Apliを設立した。一般的にはビジネスモデル、製品の市場への適合性、出資金が同社に与えるインパクトなどが投資を決定する際にファンドが検討する要素だが、今回のケースでは創業者の婚姻状況も考慮された。

「話し合いの結果、通常のファンドチーム同様にチームを分析することに決めた」と言うのはALLVPのパートナー、Federico Antoni(フェデリコ・アントニ)氏。明らかな個人的な結び付き以外に、ベラとホセには職業上の特別な関係があった。「離婚の危険性を考慮した上で、投資することに決定した。プライベートとスタートアップの仕事のバランスが取れる会社に完全な投資をするチームをセットアップした」とアントニ氏は言う。

創業者の持分も、もう1つの危険要素になる。共同創業者がカップルの場合、投資家は資本構成についても懸念する。2人が結婚していて財布が共同になっている場合、創業者カップルは会社の持分の圧倒的多数を所有することができる。結婚していない2人の創業者が会社の20%ずつを所有している場合に対して、結婚している創業者カップルは40%を所有することになる。この論理でいうと、結婚している共同創業者はベンチャーキャピタルとの交渉が優勢になる可能性がある。

しかし、インタビューしたキャピタリストの中にはこの論理に同意しない者もあった。

「私にとってエクイティについて唯一重要なことは、創業者が十分な数を所有しているかどうか。ベンチャーキャピタルの投資は本質的には少額投資なので、創業者のやる気が持続し、持続性のある事業の構築に報酬を提供することが重要」と言うのはAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)のゼネラルパートナー、David Ulevitch(デビッド・ウルビッチ)氏だ。

しかし、共同創業者の2人の関係がうまくいかない場合はどうなるか?

離婚はスタートアップの終焉とは限らない

Sara Margulis(サラ・マルグリス)氏とJosh Margulis(ジョシュ・マルグリス)氏は、2006年にハネムーン登録サイトのHoneyfund(ハニーファンド)を創業した。当時結婚していた2人は2015年にテレビ番組Shark Tank(シャーク・タンク)に出演し、Kevin O’Leary(ケビン・オリアリー)から40万ドル(約4300万円)の投資を勝ち取った。HoneyfundはZolaやThe Knotのような人気のあるウェディング系のスタートアップとは異なり、クラウドファンディングプラットフォームをコア製品として、婚約したばかりのカップルの結婚式やハネムーンの資金調達を助けるものだとサラは言う。

2019年にサラとジョシュが離婚したとき、直感的に思ったことは会社の売却だった。しかし「2人の職業上の方向性が離れていくほど、私がやりたい方法でチームを編成して、自分の優先順位で事業を進めていくチャンスが見えてきた」とサラは言う。結局、サラは元夫の会社の所有分を買い取り、CEOとして新しい方向で会社を継続した。

Sara Margulis氏

Honeyfund共同創業者兼CEO、サラ・マルグリス氏

「一緒に仕事をしていなかったら、離婚のプロセスは違っていたでしょう。私たちの関係について、辛いけど話さなければならないことがあったが、それをTargetとのパートナーシップ提携の大規模な立ち上げの最中にジョシュに言いたくなかった」とサラは言う。

彼、彼女らのビジネスの原点は、夫婦としての実際の経験に根付いている。Shark Tankの投資家から共感を得て、かつ総額720億ドル(約7兆7500億円)もの市場規模がある彼らのビジネスは、愛と婚姻の継続を商品化するものだった。しかし新婚時代は永遠には続かない。アメリカ心理学会によると、アメリカでは結婚した夫婦の50%ほどが離婚するという。

現在、マルグリス氏の共同創業者との離婚の経験は、同社の商品開発とマーケティング戦略に役立っている。

離婚後、マルグリス氏はHoneyfundでコンテンツに特化した戦略に取り組んでいる。夫婦が結婚生活をうまく続けていく方法に関する書籍の出版やポッドキャストの配信などがその例だ。彼女は心理学者や婚姻の専門家による研究に基づき、14年間にHoneyfundを利用した夫婦をインタビューし、自身が経験した結婚生活の破綻を回避するのを支援している。

秘密兵器

共同創業者カップルたちは、その関係性のメリットを熱く語る。共通する情熱とやる気、補い合うスキルセット、業界での経験が既婚、未婚に関わらずあらゆる共同創業者カップルのベースラインとなる。しかし、共同創業者同士の結婚には時間管理や、仕事とプライベートの区別などの特有の課題がある。

Initialized Capitalのマネージング・パートナーで、過去にはY Combinatorパートナーも務めたGarry Tan(ガリー・タン)氏は「共同創業者間の衝突は、初期のスタートアップをダメにする一番の原因だが、これを回避する方法もある」と自身の記事で述べている

共同創業者は、会社の大きな決定についていつも同じ考えを持っているわけではない。テレワークを許可するか、誰から資金を受け入れ、どのように資本を投じるか、主要幹部に誰を雇用するのか。

その決定に伴うリスクが高く、従業員のキャリアを危険にさらす可能性がある場合、それはいくらでも喧嘩の原因になり得る。共同創業者間の不和は、多くの苦戦しているスタートアップの主な理由だ。対立を回避するのではなく、積極的にそれに対処すること、つまりエグゼクティブコーチングやセラピストなどの専門家の助けを求めるタイミングを見極めることが重要だ。これによって不和の初期段階でトラブルを回避し、足並みをそろえることができるかもしれない。

この理論が当てはまるなら、共同創業者のカップルは2人の間にコミュニケーションツールをすでに持っているため、有利になる。

ウルビッチ氏は、共同創業者がカップルであることが投資意欲をそぐことはないと言う。

「多くの共同創業者たちが仲違いしてしまうとき、特に困難な状況ではお互いをよく理解していないことが多い。カップルはこの面をうまく解決できる」とウルビッチ氏は語る。この主張は創業者たちによって証明されている。

「会社の価値の1つは、反対することとコミットすること」と言うのはNEXT Truckingのリディア・ヤン氏だ。彼女によれば、同社では重要な決定事項について幹部の意見が一致しない状況では、投票が行われ、その後チーム全員が最終決定に全力で協力するという決まりがある。リスクを軽減するため、仕事の内容を明確に定義することが重要であると言う。自分の持ち場を守り、パートナー同士であれば互いの専門能力を理解し、信頼し合うことができているはずである。

Helena Price Hambrecht(ヘレナ・プライス・ハンブレヒト)氏とWoody Hambrecht(ウッディ・ハンブレヒト)氏は、共同創業者が夫婦であることはスタートアップの秘密兵器だと主張する。

Helena Price Hambrecht氏とWoody Hambrecht氏

Hausの共同創業者、ヘレナ・プライス・ハンブレヒト氏とウッディ・ハンブレヒト氏

ヘレナとウッディは、2012年、スワイプでデート相手を探す以前の時代にOkCupidで出会った。「オンラインデートサイトを使い出したところで、このかっこいい農夫を見つけたの。私たちは96%マッチだったから私からメッセージした」とヘレナは未来の夫との出会いを話した。

ウッディはヘレナのメッセージを「なりすましかと疑った」と言う。「こんな人が僕にメッセージしてくるわけがない。この人が実在する人物なのかどうかわからなくて、返信するまでに3〜4時間かかった」

何度かメッセージでやり取りした後、2人はサンフランシスコのリッチモンド近辺にある安いバーで会い、その後一緒に40オンスのビールを飲んだり、公園でラップのビデオをスマホで観たりするようになった。「うまく説明できないけど、すごく自然だった。この後の人生すべてで付き合っていく人だと思ったんだ。友達かそれ以上かはわからなかったけど」。2人は4年間の交友関係を経て、2018年に結婚した。

Haus(ハウズ)の起源は創業者の経歴の組み合わせにあり、このD2Cの食前酒ブランドは450万ドル(約4億8000万円)のシード資金を先日獲得したばかりだ。ウッディはワインと食前酒のブランドを所有していたが、十分な事業ができていないと感じていた。シリコンバレーでのブランディングと製造に豊富な経験を持つヘレナは、Z世代の人々は酔っぱらうことには関心がなく、ミレニアル世代は強制的で高くつくハッピーアワーに飽き飽きしていることを感じていた。何にお金を使うかを決めるとき、若い世代の消費者は健康、ブランドイメージ、透明性、持続可能性、信頼性を考慮する。

ヘレナは、なぜ同じ基準がアルコールほどの規模の業界に適用されないのかと疑問に思っていた。なぜアルコール業界にはGlossierやEverlaneのようなブランドがないのか? このコンシューマートレンドの推移には大きなチャンスがあるにもかかわらず、アルコールブランドのD2Cはできないと彼女は感じていた。Hausは「テクノロジー技術者がワイン職人と結婚した」魔法の瞬間から誕生したという。ウッディは、アルコール界のGlossierを作るための法的な抜け穴を知っていた。

「飲み物の原料の大部分がブドウでアルコール度数が24%未満であれば、ワインとして分類され直販できるわずかな食前酒の領域がある」とヘレナは説明する。このアイデアは2人の子供が3カ月のときに生まれた。「時間はないけれど、やらないといけなかった。人生でこれまでにない最高のアイデアだったから」。

「私たちにはツールキットがある。私たちは結婚している。何かに賛成できなくても、夫婦なら解決することができる。私たちのスキルセットは明確に定義されているので、衝突は少ない。互いに完全に異なる専門領域を持っているのでちょうどいいバランスになっている」とヘレナは言う。

ウッディとヘレナにはもう1つの秘密兵器がある。心理療法の経歴を持つビジネスコーチだ。すべての共同創業者はビジネス以上のかかわりが必要になるので、一緒にセラピーを受ける必要があると彼らは信じているという。

Roni Frank氏とOren Frank氏

Talkspace創業者のロニー・フランク氏とオレン・フランク氏

Talkspace(トークスペースのRoni Frank(ロニー・フランク)氏とOren Frank(オレン・フランク)氏もこの意見に同意する。彼らがメンタルヘルスの世界に興味を持つようになったのは、2人の関係が崩壊しかけたことがきっかけだった。

「私たちの結婚は崩壊寸前で、最後のチャンスにカップルセラピーを受けることを決めた」。セラピーを受けるのは、どちらにとっても初めての経験だった。コミュニケーションを改善し、お互いを思いやり、サポートする方法を学んだ。お互いの意見の衝突をコントロールする術を手に入れたのだ。

ロニーはこのセラピーの経験から、ソフトウェア開発者としてのキャリアを離れ、心理学を学ぶために大学院に戻った。これを学ぶ中で、米国のメンタルヘルスシステムがいかに破綻しているかを目の当たりにしたという。

米国人の25%が複数のメンタルヘルス疾病を患っているにもかかわらず、その3分の2はメンタルヘルスケアの治療を受けてけていないことが調査で示されているとロニーは言う。自分たちの関係修復にセラピーが役立った経験に基づき、創業者の2人はこの問題の解決に強い熱意を持った。そこで、患者とセラピストがオンラインで通信できるプラットフォームを立ち上げることを決めた。

メンタルヘルスケアへのアクセスを可能にするためのTalkspaceは、直近のシリーズDの5000万ドル(約53億7000万円)を含め、これまでに1憶1000万ドル(約118億円)を調達している。このプロダクトへの思いが2人の関係をより強固にし、現在の従業員は100人を超える。しかし従業員が10人しかいなかった黎明期のTalkspaceでは、物事は今よりずっと困難だった。自分たちの関係が非常に大きな不安を引き起こしていることにロニーは気付いた。

「寝られず、食欲は減り、極度の疲労を感じていた」。仕事に自身のすべてを使い果たし、自分で境界を設けるしかなかったとロニーは言う。しかしこの危機のおかげで、夫婦であり共同創業者である2人の間で使命と目標を共有し、結婚生活を元の健全な姿に戻すという貴重な経験ができたのも確かだ。

彼らのような共同創業者カップルは、配偶者と一緒にビジネスをすることを強く勧める。そのような企業が独自の製品を開発し、成功するマーケティング戦略を実行し、大規模なラウンドとイグジットを生み出しているのは事実だ。

夫婦でかつ共同創業者であるという特異な関係は、ビジネスにポジティブな影響をもたらしているように感じる。それが結婚生活にもうまく作用するのかどうかは、時間が証明してくれるだろう。

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(翻訳:Dragonfly)