Microsoft AzureがPyson向け機械学習プラットフォーム「PyTorch」のエンタープライズサポートを提供

Microsoft(マイクロソフト)は米国時間5月26日、PyTorch Enterprise(パイトーチ・エンタープライズ)を発表した。Azure(アジュール)上でPyTorchを使うための新たなサポートをデベロッパーに提供する新サービスだ。

PyTorchはPython(パイソン)向けのオープンソース機械学習プラットフォームで、コンピュータビジョンと自然言語処理に焦点を当てている。当初開発したのはFacebookで、Google(グーグル)の人気フレームワークであるTensorFlow(テンサーフロー)と似ている部分もある。

Microsoftのコミュニケーション担当コーポレートVPであるFrank X. Shaw(フランク・X・ショー)氏は、新サービスPyTorch Enterpriseについて「データサイエンス業務にPyTorchを使っている組織のデベロッパーに、より信頼性の高い生産体験を提供する」ものであると説明した。

PyTorch Enterpriseは、MicrosoftのPremier(プレミア)およびUnified(ユニファイド)のサポートプログラム・メンバーに、ホットフィックス、バグ、セキュリティ・パッチなどの優先リクエスト、直接サポート、ソリューションなどを提供する、とショー氏は説明した。Microsoftは毎年、長期的なサポートを行うPyTorchのバージョンを1つ選んでいる。

AzureはすでにPyTorchを比較的容易に使用できるように作られていて、Microsoftは2020年、PyTorch for Windowsの開発を引き継ぐなど、長年このライブラリに投資してきた。この日の発表でMicrosoftは、最新リリースのPyTorchはAzure Machine Learningに統合され、デベロッパーから入手したPyTorchコードを公開PyTorchディストリビューションにフィードバックすることを約束した。

PyTorch Enterprizeは、Windows 10およびいくつかのLinuxディストリビューションで動作しているPyTorch バージョン1.8.1以上で利用できる。

「Microsoftが提供するこの新しいエンタープライズレベル製品は、重要なギャップを埋めるものです。PyTorchは私たちの研究者がモデルをデザインしたり実験を行う上で、これまでにない柔軟性を与えてくれます」とNuance(ニュアンス)の上級主任研究員Jeremy Jancsary(ジェレミー・ジャンクサリー)氏はいう。「しかしこれらのモデルを製品化するのはチャレンジです。Microsoftが直接関わることで、私たちはAzure上に新しいバージョンのPyTorchを安心して展開できます」。

この新サービスの提供でMicrosoftは、オープンソースプロジェクトの上に追加サービスを提供することによって、スタートアップにオープンソース収益化戦略の見本を示している。PyTorchはスタートアップが開発したものではないため、メジャーなクラウドサービスがオープンソースコードの上に自社の商品バージョンを載せることも、問題なく受け入れられるだろう。

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カテゴリー:ソフトウェア
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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nob Takahashi / facebook

必要な場所にデータを移動させるオープンソースのデータコネクタープラットフォームAirbyteが28.3億円調達

現在、企業が直面している大きな課題の1つは、関連するデータを見つけることではなく、必要な場所にデータを移動させることだ。この課題を解決するために、オープンソースのデータ統合プラットフォームを構築しているアーリーステージのスタートアップがAirbyte(エアバイト)である。同社は、先の520万ドル(約5億7000万円)のシードラウンドを発表してからわずか2カ月後である米国時間5月25日に、2600万ドル(約28億3000万円)のシリーズAを発表した。

このラウンドを主導したのはBenchmarkで、8VC、Accel、SV Angel、Y Combinator、および複数の技術業界の著名人が投資に参加した。同社はこれまでに3100万ドル(約33億7000万円)以上を調達しているが、そのすべてが2021年に入ってからのものだ。

共同創業者でCEOのMichel Tricot(マイケル・トリコット)氏は、TechCrunchの取材に対して「当社が開発しているのはデータベース、ファイル、APIなどのどこに置かれたデータでも、データウェアハウスやデータレイクなどのお好みの場所に移動させるための、オープンソースのデータ統合プラットフォームです」と語る。このために、さまざまなデータタイプへのコネクターの開発が行われている。同社は、コネクターを開発するためのオープンソースのプラットフォームとSDKを提供し、自身でもコネクターを開発しつつ、コミュニティに対して独自のコネクタの追加を呼びかけている。

スタートアップを取り巻く状況は急速に変化している。今回の資金調達に加えて、2021年5月初めには「Connected Development Kit」(CDK、コネクター開発キット)をリリースした。共同創業者であるJohn Lafleur(ジョン・ラフルール)氏は「このフレームワークを使うことで、カスタムコネクターを2〜3日ではなく、2時間で開発することができます」という。現時点で、プラットフォームの70個のコネクターのうちの約20%がコミュニティから提供されたものだが、CDKがコミュニティに普及するにつれて、その割合は増加するだろうと2人の創業者は期待している。

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Airbyteは2020年創業されたばかりだが、同社は2021年を、急速に成長しているコミュニティを拡大するために費やす予定だ。現時点でコミュニティメンバーは1200人、アクティブユーザーは500人に達している。当面はオープンソースのプロジェクトを継続しながら、将来はホステッドバージョンを開発しそこから収益を得る予定である。

今回の投資を主導しているBenchmarkのゼネラルパートナーであるChetan Puttagunta(チェタン・プッタグンタ)氏は、BenchmarkにはこれまでRed Hat(レッドハット)をはじめ、Elastic(エラスティック)、MongoDB(モンゴDB)、Acquia(アクイア)などのオープンソースのスタートアップへ、初期の投資家として投資を行ってきた歴史があると語った。

プッタグンタ氏がAirbyteにアプローチしたのは、コミュニティで多くの開発者が短期間に活躍しているのを見たからだという。「開発者コミュニティへの関わり合いという観点から、私たちは彼らに声をかけました。Airbyteがあちこちで見られるようになり、データを統合するためのデファクトスタンダードとして急速に普及していくのを目にしたのです。設立からわずか数カ月の会社としては、驚くべき成果でした」。

急激な成長によって、社員数は短期間で2倍の14名となった。ダイバーシティとインクルージョンに関しては、創業者が自ら会社のハンドブックを書き起こしており、その中には詳細な定義や目標などが含まれているが、これは初期段階の会社ではあまり見られることはない。

トリコット氏は「私たちは、ダイバーシティ、インクルージョン、帰属意識を継続的に向上させようとしています。決してこれで終わりと考えることはありません。常に改善の余地があるのです」と語る。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Airbyte資金調達オープンソースオープンデータデータウェアハウス

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(文:Ron Miller、翻訳:sako)

コード・フォー・ジャパンが日本初のシビックテック領域アクセラレータープログラム開始、Oktaが資金提供

コード・フォー・ジャパンが日本初のシビックテック領域アクセラレータープログラム開始、Oktaが資金提供コード・フォー・ジャパン(Code for Japan)は4月26日、日本初となるシビックテックの社会実装を支援する「Civictech Accelerator Program」(CAP。シビックテックアクセラレータープログラム)の開始を発表した。

また、同プログラム1社目のパートナー企業として、アイデンティティ管理サービスを手がけるOktaから3年間で24万ドル(約2600万円)の寄付が行われることが決定した。Oktaが米国時間4月8日、年次カンファレンス「Oktane21」においてアジア初のパートナーとして発表しており、地域社会への活動の一環とする非営利組織支援の取り組み「Okta for Good」から資金提供が行われる。

CAP第1期の応募は5月末まで行う。また、約6カ月を1タームとして定期的なメンタリングを中心とし、開発やサービスデザインに対するフィードバック、法務・財務などを含めた専門家とのミーティングセットなどで参加チームの社会実装・事業展開をバックアップする。

Code for Japanは、シビックテック(市民が主体となって自分たちの街の課題を技術で解決する)コミュニティ作り支援や、自治体への民間人材派遣などの事業に取り組む非営利団体。より良い未来に向けて、立場を超えてさまざまな人たちと「ともに考え、ともにつくる」ための活動を行っている。

Code for Japanは、今後も国内外の企業や公益財団などをパートナーとして迎え、シビックテック・アプローチで社会課題に取り組んでいるチームを支援し、より多様な社会課題に幅広い世代の仲間とともにより一層シビックテックコミュニティを拡げ、活動を続ける。また、CAPやシビックテックにおける各種取り組みについてパートナーシップを検討している企業・財団からの問い合わせを受け付けているという。

シビックテックアクセラレータープログラム(Civictech Accelerator Program)

Code for Japanによると、シビックテック領域の取り組みにおいて、これまで以下の活動を行いインキュベート機能(設立して間もないチームに技術・人材などを提供し、育成すること)をになってきたという。

コード・フォー・ジャパンが日本初のシビックテック領域アクセラレータープログラム開始、Oktaが資金提供

  • プロトタイプ開発を進めていく毎月開催の継続型ハッカソン「Social Hackday」(ソーシャルハックデー)
  • 技術系人材をコーディネートすることで非営利団体の取り組みにおいてIT活用を進める「Social Technology Officer」(ソーシャルテクノロジーオフィサー)
  • 学生のチーム開発支援プログラム「Civictech Challenge Cup U-22」(CCC U-22。シビックテックチャレンジカップ U-22)

ただ、これらで育ったプロトタイプやプロジェクトのアクセラレート機能(社会実装、持続可能なビジネスモデルの構築などの支援)がなかったため、サービスとして成立する開発や継続可能なプロジェクトが限られていたそうだ。そこで、アクセラレート部分が必要であると判断し、CAPを新たに設置した。

CAPでは、シビックテック活動やオープンソース・オープンデータの関連コミュニティから出てきたプロトタイプやプロジェクトの中で、以下3点に該当するチームに着目しているという。

  • 継続開発、プロダクトをブラッシュアップしていく意志がある
  • アクセラレーションプログラムに一定期間継続して参加できる
  • 社会実装や持続可能な開発、経済市場でのサービス展開を軌道に載せていくことを目指す

さらにこの中から、以下に該当する開発を行っているチームを選出し、専門知識・資金・人材のバックアップを行うとしている。

  • 時事問題を取り上げているもの
  • 地域間連携の可能性があるもの、他の地域にも展開することで利益享受者が増えるもの
  • 多言語対応などで他国のシビックテックコミュニティと協働できたり、他国に対しても利益を享受してもらえるよう展開可能なもの

Oktaと「Okta for Good」

Oktaは、あらゆる人のアイデンティティとアクセスを安全に管理するベンダーニュートラルなサービスプロバイダー。Oktaが提供するプラットフォーム「Okta Identity Cloud」により、クラウド、オンプレミスを問わず、適切な人に適切なテクノロジーを適切なタイミングで安全に利用できるようにするという。7000以上のアプリケーションとの事前連携が完了している「Okta Integration Network」を活用して、あらゆる人や組織にシンプルかつ安全なアクセスを提供し、顧客の潜在能力を発揮できるように支援するとしている。現在1万以上の顧客がOktaを活用しており、職場や顧客のアイデンティティを保護している。

Okta for Goodは、Oktaが製品・時間・資本の1%をソーシャルインパクトのために使うとした2016年から続く取り組み。より良いエコシステムを生み出すためのテクノロジーを開発し、従業員がチェンジメーカーとなっていくための支援、重要な課題に答える非営利組織の支援などに取り組んでいるという。今回、Okta for Goodが非営利組織を資金的に支援する取り組み「Nonprofit Technology Initiative」において、Code for Japanの取り組みがそのひとつとして採択された。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:アクセラレータープログラム(用語)Okta(企業)オープンソース / Open Source(用語)Code for Japan(組織)オープンデータ(用語)シビックテック / Civic Tech(用語)日本(国・地域)

マイクロソフトの「Edge」ブラウザーがGoogleの広告技術「FloC」を無効化、事実上の「NO」か

マイクロソフトの「Edge」ブラウザーがGoogleの広告技術「FloC」を無効化、事実上の「NO」か

Ben Gabbe via Getty Images

GoogleはChromeブラウザにおけるサードパーティCookieを段階的に廃止していく一方で、新たな広告技術「FloC(Federated Learning of Cohorts)」の導入を計画しています。これは似たブラウジング行動をした人々をグループにまとめることで(個々人のブラウジング履歴はGoogleと共有しない)関連広告を表示する技術とされています。

これはGoogleのブラウザChromeにも実装される技術であり、同じくGoogleが管理するオープンソースのエンジン「Chromium」を使う他社のブラウザにも導入される可能性があります。その1つであるマイクロソフトのEdgeがFloCを無効化しており、事実上GoogleにNOと表明していることが明らかとなりました。

Chromiumのソースコードを確認すると、FloCはデフォルトでは有効とされています。つまりMicrosoft EdgeなどChromiumベースの他社ブラウザにも、コンポーネントを明示的に無効としない限り自動的にインストールされることになります。

しかし大手コンピュータヘルプサイトBleepingComputerによると、Edgeではコマンドライン引数を使ってFloCを有効にしてもブラウザ上で使用できないとのこと。つまりMSが意図的にFloCを無効にしていると解釈できるわけです。

マイクロソフトの「Edge」ブラウザーがGoogleの広告技術「FloC」を無効化、事実上の「NO」か

そこでMSに意図を問い合わせたところ、明確な回答は得られず、代わりに自社の広告提案PARAKEETが紹介されるに留まっています。

GoogleのFLoCに関しては「正しく実装される保証がない」として、ユーザーのプライバシーにとって重大な脅威になるとの批判が相次いでいます。Chromiumベースのブラウザ「Brave」は、「Why Brave Disables FLoC | Brave Browser」にてFloCがプライバシー保護を装いつつ、プライバシーに重大な損害を与えると指摘。また同じくChromiumベースの「Vivaldi」も「No, Google! Vivaldi users will not get FloC’ed. | Vivaldi Browser」を表明し、今まで以上にプライバシーを損なう危険なステップだと痛烈に批判しており、両社ともFloCは採用しないと明言しています。

Googleは現在、何千万人ものChromeユーザーを対象にFloCをテストしており、最終的には数十億人のChromeユーザーに展開する予定です。それに対して、Chromeには及ばないものの大きなシェアを持つMSのEdgeが実質的にNoを突きつけたことで、今後の動向に影響が及ぶのかもしれません。

(Source:BleepingComputer、Via:MSPoweruserEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:ウェブブラウザー(用語)オープンソース / Open Source(用語)Chromium(製品)Google Chrome(製品・サービス)広告 / アドテック(用語)FLoC(製品・サービス)Brave(企業・サービス)プライバシー(用語)Microsoft / マイクロソフト(企業)Microsoft Edge(製品・サービス)

NVIDIAとMediaTekがChromium・Linux対応リファレンスプラットフォーム開発で連携、RTX GPUとArm採用ノートPCを示唆

NVIDIAとMediaTekがRTX GPUとArm組み合わせたノートPCを示唆、Chromium・Linux対応リファレンスプラットフォーム作成で連携

米NVIDIAと台湾MediaTekは、リファレンスラップトップのプラットフォームを共同開発すると発表しました。

今回の提携で、両社はChromium、Linux、NVIDIA SDK(ソフトウェア開発キット)をサポートするラップトップ(Chromebookかどうかはわかりません)を開発します。現時点では具体的な製品仕様や投入時期などは明らかになっていませんが、NVIDIAによれば「RTX GPUとARMアーキテクチャの組み合わせにより、リアルなレイトレースグラフィックと最先端のAI(人工知能)をラップトップに導入する」ことを目標としています。

Nintendo Switchや車載インフォテイメントシステムに採用されている「Tegra」シリーズなど、NVIDIAはすでにARMベースのプロセッサを多数市場へ投入しています。さらに同社は12日に開催した年次カンファレンス「GTC 2021」にて、ARMベースのデータセンター向けプロセッサ「Grace」を発表しました。こちらはAIスーパーコンピューティングや自然言語処理など、大規模なデータ処理を対象とした製品。

MediaTekのプロセッサはハイエンドスマートフォンではあまり見かけないものの、2020年第3四半期にはシェアで米クアルコムを追い抜くなど、着実にその勢力を伸ばしています。またローエンドからミッドレンジ向け製品が中心のMediaTek製プロセッサですが、RTX GPUの技術が加わることにより、一挙にハイエンド級のパフォーマンスを達成することも期待できそうです。

PC向けプロセッサメーカーの話題としては、韓国サムスンとAMDが協力しAMD製GPUを搭載したラップトップ向けプロセッサを投入するとの観測も登場しています。NVIDIAは2020年にソフトバンクグループからARMを買収しており、今後もARMアーキテクチャへさらなる経営資源の投入を進める可能性があります。

(Source:NVIDIAEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Arm(企業)NVIDIA(企業)オープンソース / Open Source(用語)Chromium(製品)Chromebook(製品・サービス)GTC / GPU Technology ConferenceGPU(用語)MediaTek(企業)Linux(製品・サービス)

6月公開予定のLinuxカーネル5.1.3がAppleシリコン「M1」搭載Macをサポート開始の可能性

6月公開予定のLinuxカーネル5.1.3がAppleシリコン「M1」搭載Macをサポート開始の可能性

Apple

これまでAppleシリコン「M1」チップ搭載MacにLinuxを移植する様々な取り組みがありましたが、6月に公開予定の安定版Linux 5.13カーネルで予備的なサポートが追加される可能性があると報じられています。

Asahi Linux公式アカウントは、M1対応のプルリクエスト(コードなどを追加・修正した際に、本体への反映を他の開発者に依頼する機能)がSoC向けLinuxにマージされ、Linux 5.13に反映されるだろうと報告しています。

このAsahi LinuxはM1へのLinux移植プロジェクトの1つであり、主催者のHector Martin氏が独特すぎるM1の仕組みに苦戦していることが語られていました

Linux関連情報サイトPhoronixによると、M1 MacでのLinux動作状況はまだ道半ばではあるものの、Linux 5.13カーネルにてサポート追加できる程度には「よい状態」になっているとのことです

今年の初めからM1チップを搭載したMac mini、MacBook Pro、MacBook AirでLinuxカーネルを起動するために何度かカーネルパッチが適用され、起動に必要なドライバが導入されていると説明されています。つまり、ひとまず起動はできる見込みは高い、というわけです。

この最初期となるM1 Linux移植では、UART、割り込み、SMP、DeviceTreeビットといった基本的な機能を備えているとのことです。またSimpleFBベースのフレームバッファ(画面表示まわり)も搭載されていますが、3D/ビデオアクセラレーションの動作はかなり難航しているもようです。

M1 Mac上でLinuxを動作させる試みとしては、他にも新興企業Corelliumが「完全に使用可能な」ものを移植したと発表していました。ただし、そちらもGPUアクセラレーションはサポートされず、描画はソフトウェアレンダリングに依存しており、M1 Macの持てる機能すべてを引き出せているとは言い難い状況です。

アップルが自社開発のM1チップにつき仕様を完全公開したり、GPUへのアクセス方法を教えるとは考えがたいことです。まだまだ実用にはほど遠く、注ぎ込まれた莫大な努力に見合う価値があるかどうかも不明ですが、その過程で「Appleシリコンはなぜ、これほど(価格の割に)パフォーマンスが高いのか」の謎が解き明かされていくのかもしれません。

(Source:PhoronixAsahi Linux(Twitter)、via:9to5MacEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Asahi LinuxApple M1(製品・サービス)Appleシリコン / Apple Silicon(製品・サービス)OS / オペレーティングシステム(用語)Linux(製品・サービス)オープンソース / Open Source(用語)Vulkan(製品・サービス)

ウェブのオープンソースインフラストラクチャの公平化に1.4億円の助成金

オープンソースのソフトウェアは、事実上すべてのオンラインの中核をなしていると言えるだろう。しかし、その大部分は何らかの方法で注意深く維持されている一方で、基礎的な要素が必要とするような精査を受けていないものもある。こうした状況を背景に、米国時間3月3日、130万ドル(約1億4130万円)相当の助成金が発表され、オープンソースのソフトウェアと開発がより公正に、持続可能的に、そして責任を持って行われるようにすることを目指す13のプロジェクトに配分された。

これらの研究プロジェクトでは、オープンソースのデジタルインフラストラクチャーがどのように利用され、維持されているか、あるいはどういった影響を受けているかについて、いくつかの問題を調査する。例えば多くの自治体では、政府のソフトウェアソリューションのニーズの高まりを受けてこの種のインフラに依存しその構築を進めているが、そのプロセスはどうなっているか。どういうアプローチやフレームワークが成功するのか、そしてその根拠は何か、といったことである。

また、大規模なオープンソースプロジェクトに貢献している民間企業が互いに協議することは往々にして少ないものだが、どのように意思疎通して優先順位や依存関係を共有するのか。その状況を改善できる方法はないか、また費用や給付金の面で対処し得ることはあるだろうか。

こうした諸問題は、単一の機関や地方自治体が自発的に取り組むようなものではなく、もちろんその研究にかかる費用はささいなものではない。しかし、専門家チームは2020年、約250のアプリケーションを分類した結果、十分に興味深い(そして新しいアプローチや製品を生み出す可能性が高い)と判断した。

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この助成事業は、Ford Foundation(フォード財団)、Alfred P.Sloan Foundation(アルフレッド・P・スローン財団)、Open Society Foundations(オープン・ソサエティ財団)、Omidyar Network(オミダイア・ネットワーク)、Mozilla Open Source Support Program(モジラ・オープンソース・サポートプログラム)がOpen Collective Foundationと協力して資金を提供し、組織している。

「フリーでオープンソースのインフラストラクチャーのニーズと潜在的なアプリケーションを調査するための資金が不足しています。オープンソースの背景にある公益の問題は見逃されている部分です」とフォード財団で補助金プログラムを率いているMichael Brennan(マイケル・ブレナン)氏はいう。

「財団の理事長であるDarren Walker(ダレン・ウォーカー)氏はかつて『公正な社会は公正なインターネットに依存している』と語っていました。私たちの課題はどうすればそのようなインターネットを構築できるのか、誰もが平等に利用できる公正なインターネットを創造し維持できるのか、ということです。私たちは実際には答えよりも多くの懸案を抱えていますが、そうした懸案事項に対する研究に資金を提供している人はほとんどいません」

適切な懸案事項を見つけることでさえ課題であり、基礎研究においてはこれが期待されている。フィールドでの初期の作業は、実際の行動指針を示唆するべく作業の範囲と一般的な方向性を確立することを目的としており、もどかしいほど汎用的であるか、決定的でないように思われることがある。

「最終的なポートフォリオは、 『客観的に最良』なだけのものではなく、いかにして多様なアプローチやアイデアを模索し、プロジェクトのさまざまな側面に取り組むか、そしてプロジェクトの多岐にわたるグローバルな性質を象徴するかということに帰結しました」とブレナン氏は語った。「2021年は研究と実装の両方の提案を採用しました。この研究が、公平で持続可能なインフラストラクチャの構築につながることを期待しています」

研究概要の全文はこちらから。概略と提案者の名前は以下のとおり。

  • How are COVID data infrastructures created and transformed by builders and maintainers from the open source community?(オープンソースコミュニティのビルダーやメンテナーは、COVIDデータインフラストラクチャをどのように作成し、変革しているか? )– Megan Finn(メーガン・フィン)氏(ワシントン大学、テキサス大学、ノースイースタン大学)
  • How is digital infrastructure a critical response to fight climate change?(気候変動対策において、デジタルインフラストラクチャはどのように重要な役割を果たしているか?) – Narrira Lemos de Souza(ナリラ・レモス・デ・スーザ)氏
  • How do perceptions of unfairness when contributing to an open source project affect the sustainability of critical open source digital infrastructure projects?(オープンソースプロジェクトに貢献する際の不公正の認識は、重要なオープンソースデジタルインフラストラクチャプロジェクトの持続可能性にどのような影響を与えるか?) – Atul Pokharel(アトゥル・ポカレル)氏(ニューヨーク大学)
  • Supporting projects to implement research-informed best practices at the time of need on governance, sustainability, and inclusion.(ガバナンス、持続可能性、包括性に関するニーズが発生した際に研究に基づいたベストプラクティスを実施するプロジェクトの支援。)– Danielle Robinson(ダニエル・ロビンソン)氏(Code for Science & Society)
  • Assessing Partnerships for Municipal Digital Infrastructure.(自治体のデジタルインフラストラクチャのためのパートナーシップの評価。) – Anthony Townsend(アンソニー・タウンゼント)氏(コーネル・テック)
  • Implement recommendations for funders of open source infrastructure with guides, programming, and models.(ガイド、プログラミング、およびモデルを使用した、オープンソースインフラストラクチャの出資者に対する推奨事項の実装。) – Eileen Wagner(アイリーン・ワグナー)氏、Molly Wilson(モリー・ウィルソン)氏、Julia Kloiber(ジュリア・クロイバー)氏、Elisa Lindinger(エリサ・リンディンガー)氏、Georgia Bullen(ジョージア・ブレン)氏(Simply Secure & Superrr)
  • How we can build a “Creative Commons” for API terms of Service, as a contract to automatically read, control and enforce APIs Terms of service between infrastructure and applications?(インフラストラクチャとアプリケーション間のAPI利用規約を自動的に読み込み、制御、施行するための契約として、API利用規約のための「クリエイティブ・コモンズ」をどのように構築するか?) – Mehdi Medjaoui(メフディ・メジャウイ)氏(APIdays、LesMainteneurs、Inno3)
  • Indian case study of governance, implementation, and private sector role of open source infrastructure projects.(オープンソースインフラストラクチャプロジェクトのガバナンス、実装、および民間セクターの役割に関するインドの事例研究。) – Digital Asia Hub
  • Will cross-company visibility into shared free and open source dependencies lead to cross-company collaboration and efforts to sustain shared dependencies?(共有のフリーおよびオープンソースの依存関係を企業間で可視化することは、共有された依存関係を維持するための企業間のコラボレーションと努力につながるだろうか?) – Duane O’Brien(ドウェイン・オブライエン)氏
  • How do open source tools contribute towards creating a multilingual internet?(オープンソースツールは多言語インターネットの構築にどのように貢献するか?) – Anushah Hossain(アヌーシャ・ホセイン )氏(UCバークレー)
  • How digital infrastructure projects could embrace cooperatives as a sustainable model for working.(デジタルインフラストラクチャプロジェクトは協同組合を持続可能な労働モデルとしてどのように取り込むことができるか。) – Jorge Benet(ジョージ・ベネット)氏(Cooperativa Tierra Común)
  • How do technical decision-makers assess the security ramifications of open source software components before adopting them in their projects and where can systemic interventions to the FOSS ecosystem be targeted to collectively improve its security?(技術的な意思決定者は、オープンソースソフトウェアコンポーネントをプロジェクトに導入する前に、そのセキュリティの影響をどのように評価し、FOSSエコシステムへの組織的な介入はそのセキュリティを集合的に改善するためのターゲットとなり得るか?) – Divyank Katira(ディヴィヤンク・カティラ)氏(Centre for Internet & Society in Bangalore)
  • How can African participation in the development, maintenance, and application of the global open source digital infrastructure be enhanced?(グローバルなオープンソースデジタルインフラストラクチャの開発、維持、および適用へのアフリカの参加をどのように強化することができるか?) – Alex Comninos(アレックス・コムニノス)氏(ICTアフリカ、RIAとケープタウン大学の研究)

プロジェクトにはまもなく助成金が支給され、2021年の後半(または準備ができ次第)には主催者が成果を発表できるようなイベントを企画する。ブレナン氏は、資金提供者はプロジェクトに関与せず、研究を自ら保有したり発表したりしないことを言明した。理に合致するところで調整し、サポートを提供するということだ。

また、130万ドルというのも興味深い数字だ。場合によってはそれは微々たるものかもしれない。スタートアップは1、2カ月でその金額を使い果たすこともある。しかし学術的な観点から言えば、10万ドル(約1084万円)というのは、仕事をやり遂げるか、断念するかの違いになり得る。フォード財団をはじめとする支援団体の慈善活動や無償援助活動の一環として、基層への小規模な注入がより良い環境を作り出すことを期待したい。

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カテゴリー:その他
タグ:オープンソース助成金

画像クレジット:MicroStockHub / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

ジェフリー・エプスタイン関連失言で辞任したリチャード・ストールマンがFSF理事会復帰、Red HatやSUSE反発

ジェフリー・エプスタイン関連の失言で辞任したリチャード・ストールマンがFSF理事会復帰、Red HatやSUSEが反発

3月22日、フリーソフトウェア財団(Free Software Foundation:FSF)は、2019年にFSF会長および理事会を離れたリチャード・M・ストールマン氏を復帰させたとする動画を公開しました。ストールマン氏と言えばEmacsやGCCの開発、GNU Public License(GPL)の策定などフリーソフトウェア界に多大な貢献をしてきたものの、思想の面では他に相容れない偏固なところがあり、時おり論争を巻き起こすこともあった人物。

2019年のFSF離脱も、当時MeToo運動で女性への差別的発言や行動が大きく批判されているなか、MIT CSAIL設立者のマービン・ミンスキー氏が資金提供者だった性犯罪者ジェフリー・エプスタインの斡旋で未成年者と性的関係を持ったと報道されていることに対し、ミンスキー氏を擁護する考えを表明したことが原因でした。

ストールマン氏はFSFのオンラインイベントにおけるライブ配信でFSFへの復帰を自らアナウンスしました。現在に至るまでFSFは正式にストールマン氏の復帰を発表していませんが、理事会のメンバー紹介ページにはすでにストールマン氏の名が掲載されています。

これに対し不信感をあらわにしたのが、オープンソースソフトウェア界のリーダー的企業Red Hat。Red Hatは「ストールマンのFSFへの復帰を知って愕然とした」と述べ、直ちにFSF関連の一切の資金提供をとりやめることを決定しました。FSFは同日、理事会メンバー選出プロセスの透明化やFSFスタッフからの選出による代表を理事会の一因に加えることなどの改善策を提示したものの、ストールマン氏の復帰には変わりなく、これが前向きで有意義なコミットメントとは信じることができないとしています。

Red Hatと同じく主要LinuxディストリビューションのSUSEのCEOも「世界はもっと良くなるべきだ。リーダーとして、忌まわしい決定がなされたときには、声を上げ、身を挺して行動する必要がある。いまがその時だ。われわれはFSFの決定に失望し、あらゆる女性蔑視や偏見に断固として反対する」とメリッサ・ディ・ドナート氏はツイートしました

さらにオープンソースのOfficeスイートLibreOfficeを手がけるDocument Foundationは、FSFの諮問委員会への参加およびFSFと関わる活動を停止すると表明、Debianも最新の理事会メンバーからストールマン氏の名前を取り除くことを求める書簡への署名の是非について投票による決定を行うとしています。

フリーソフトウェア界隈でも、ストールマン氏の復帰を望まない人々が多くいるようです。たとえば上級のGCC開発者ネイザン・シドウェル氏はストールマン氏の存在を最も意識する立場と言えますが、今回の騒動に対してストールマン氏をGCC運営委員会から除くよう求めました。シドウェル氏は「以前はストールマン氏が巻き起こす”真の毒性”に目をつぶっていたし、皆もそうしていたことでしょう。それによって私は影響を受けずに済んだ。彼と交流する必要がなかったからです。私は女性ではありません。しかしそれを無視することは、私たち全員の価値を下げることになります」と述べ、さらにストールマン氏の最後の貢献は2003年に勃発したSCOとLinuxのソースコードコピー論争のときが最後だとして、すでにストールマン氏はGCC開発メンバーでは無いとの見解を示しました。

FSFの内部メンバーにも、ストールマンの復帰を望まない人は多く、すでにそのひとりCat Walsh氏は辞任を表明。FSFのエグゼクティブ・ディレクターを務めていたジョン・サリバン氏もやはり辞任しました。

ストールマン氏は、事の発端となったストリーミングでの復帰表明で「私の復帰を喜ぶ人もいれば、がっかりする人もいるでしょう。まあそれはともかくもはや決まったことなので、私は二度と辞める気はありません」と述べています。

ただでさえクセの強いストールマン氏の復帰は、フリーソフトウェア界隈だけにとどまらない議論を呼びそうな気配です。

フリーソフトウェア運動開祖ストールマン、MIT職とFSF代表を辞任。エプスタイン献金関連で失言

(Source:Free Software Foundation、Via:mixCraft(Twitter)Ars TechnicaZDNetEngadget日本版より転載)

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Appleシリコン「M1」MacでLinux直接起動を目指す「Asahi Linux」、独自ブートローダーm1n1開発

Appleシリコン「M1」MacでLinux直接起動を目指す「Asahi Linux」、独自ブートローダーm1n1開発

Kim Kulish/Corbis via Getty Images

アップル独自開発のM1チップ搭載Macは優れたパフォーマンスが開発者やユーザーから高評価を得ているものの、macOS以外のOSは公式にサポートされていません。そこでLinuxを移植して動かそうというプロジェクトの1つが「Asahi Linux」(Asahiはリンゴの品種名であるMacintoshの和名「旭」から)であり、クラウドファンディング等から資金を募って活動中です(Github)。

その主催者である個人開発者のHector Martin “marcanがブログで初めて進捗報告し、独特すぎるM1のしくみがプロジェクトをどれほど難しくしているかを説明しています。

まずAppleシリコン(M1をはじめアップル独自設計のプロセッサ)搭載Macの起動プロセスは、一般的なPCとは全く違うとのこと。どちらかというとAndroid携帯やiOS端末のような組み込みOSに近く、独自のしくみがいくつも織り込まれていると述べられています。

しかしアップルは起動プロセスを従来のインテル版Macに近づけようと色々な手段を講じており、そのために実際の動作はより複雑になっている模様です。

そのためAsahi Linuxプロジェクトは、「m1n1」なる特注ブートローダーの開発を余儀なくされました。その元になったのはニンテンドーWiiの脱獄研究の一環として作成された「mini」にあり、サードパーティ製コードを起動したり、あるいは開発用コンピュータからリアルタイムでマシンを制御できるしくみも継承されている趣旨が語られています。

そうしてm1n1を通じてアップル独自のシステムレジスタや割り込みコントローラなどハードウェアの文書化に懸命に取り組んできたとのこと。M1チップはArm64アーキテクチャではありますが、独自のシステム周りに関するドキュメントがほとんどなく、自前で分析して資料作りをすることを迫られたわけです。

興味深いのは、Appleシリコンプラットフォームに使われた技術が、どれほど古い製品に由来しているか解き明かされていることです。上記のように起動プロセスはiOS、シリアル通信に使われているUARTチップはサムスン製品、PWRficicentチップに基づくデザインはAmigaOne X1000(2010年に発売されたAmigaクローン。元々のAmigaは1985年発売)でも使われていたというぐあいです。

今後m1n1は強力な研究ツールとなるよう、機能が追加されていく予定と語られています。特に野心的な目標の1つは、その上でmacOSを起動できる非常に軽量なVM hypervisor(仮想マシンを動かすための制御プログラム)に変えて、ハードウェアへのアクセスをすべて傍受すること。これによりアップルのドライバーがどのように動作するか、1つずつ分解せずに調査できて分析が捗ると示唆されています。

このプロジェクトに先行するものとして、すでにM1 Mac上で仮想化なしに「完全に使える」CorelliumによるLinux移植もあります。が、こちらもGPUアクセラレーションは使えず、ネットワーク機能もUSB-Cドングルが必要など、まだまだ実用の域からは遠い感があります。

ほかM1 Mac向け非アップルOSとしては、Arm版Windows 10が挙げられるでしょう。仮想化アプリ上では一歩ずつ実用化に近づいている様子ですが、直接に起動できるBootCampは実現するのか、今後の展開を待ちたいところです。

(Source:Asahi Linux。via:The Register9to5MacEngadget日本版より転載)

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自然言語処理ライブラリをオープンソースで提供するHugging Faceが43.6億円調達

Hugging FaceがシリーズBで4000万ドル(約43億6000万円)を調達した。Additionがラウンドをリードしている。同社は、オープンソースの自然言語処理(NLP)ライブラリを開発してきた。GitHubにそのTransformersライブラリはあり、4万2000のスターと1万のフォークがある。

米国時間3月11日に行われた投資にはLux CapitalやA.Capital、Betaworksなど、これまでの投資家も参加。さらにDev Ittycheria(デヴ・イッティケリア)氏、Olivier Pomel(オリヴィエ・ポメル)氏、Alex Wang(アレキサンダー・ワン)氏、Aghi Marietti(アギ・マリエッティ)氏、Florian Douetteau(フロリアン・ドゥエトー)氏、Richard Socher(リチャード・ソーチャー)氏、Paul St. John(ポール・セント・ジョン)氏、Kevin Durant(ケビン・デュラント)氏そしてRich Kleiman(リッチ・クレイマン)氏らも参加した。

TransformersではBERT、GPT、XLNet、T5、DistilBERTなどの、よく使われているNLPのモデルを利用でき、これらのモデルを使ってテキストを、テキストの分類、質問への自動回答、テキストの生成などの処理といったいろいろなやり方で操作できる。

NLPのユースケースは極めて多い。現在多いのは、チャットボットのサポートだ。たとえばチャレンジャーバンクのMonzoは、Hugging Faceを楽屋裏で使って顧客からの質問に答えている。Hugging Faceを使っている企業はおよそ5000社あり、用途はさまざまだ。Microsoftは同社の検索エンジンBingに使っている。

ビジネスモデルとしては、同社は最近、優先順つきのサポートを立ち上げ、プライベートなモデルを管理したり、推論APIを提供したりしている。BloombergやTypeformも顧客となっている。

同社は今回新たに得た資金で、ニューヨークとパリの従業員数を3倍にする。その中にはリモートで仕事をする従業員もいる。同社が以下のように、銀行口座の詳細の一部を共有していることは少々興味深い。

Hugging Faceは、2021年1月と2月のキャッシュフローがポジティブだった。同社は1年あまり前に1500万ドル(約16億3000万円)のラウンドを実施したが、そのとき得た資金の90%は現在も同社の銀行口座にある。それ以降、同社の評価額は5倍になった。実際に調達の必要がないときは、そのことが交渉で好条件になるため、意外なことでもない。

同社はNLPデベロッパーの活気に満ちたコミュニティの世話をしているため、正しい路線上にあるといえる。モデルデータセットを閲覧でき、デベロッパーはそれらを利用したり寄与貢献したりして、Hugging FaceはNLP愛好家の要となる。

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画像クレジット:Hugging Face

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hiroshi Iwatani)

グーグルがFlutterツールキットをバージョン2に、デストップとウェブアプリをサポート

Googleはオンラインイベントでモバイルアプリ構築のためオープンソースUIツールキットのリニューアルを発表した。Flutterは2年前にモバイル分野をターゲットとしてスタートしたが、今回のバージョン2ではウェブとデスクトップのアプリをサポートするようになった。これにより、FlutterのユーザーはiOS、Android、Windows、MacOS、Linuxに加えてウェブでも同じコードベースでアプリを構築できることとなった。

Flutterの開発責任者であるTim Sneath(ティム・スニース)氏は私のインタビューに対してこう述べている。

バージョン番号が2にアップしたわけですが、これはウェブとデスクトップがサポートされるというピボットに対応したものです。1つのジャンルで確立しているプロダクトがこのように大きな機能追加をすることは滅多にありません。

 

画像クレジット:Google

スニース氏は「オープンソースであるということから、Flutterはコミュニティによってしばらく前からウェブとデスクトップのサポートが開発されていたので、こうしたエンドポイントが今回正式に追加されたことは驚くべきものではありません」と述べている。2.0のリリースでは新しいプラットフォームにおけるパフォーマンスを従来のものと同等にするためには困難な作業が多数あった。

しかしFlutterのデスクトップサポートで注意すべきなのは、これがまだ安定版ではないという点だ。公式リリースチャンネルではデスクトップサポートにはアーリーリリースのフラグが立っている。Googleのエンジニアは「ベータ版のスナップショット」的機能と考えてもらいたいとしている。一方、ウェブサポートはベータ版から安定版に移行しており、Flutterを使ってアプリを構築するための正式なターゲットになっている。

画像クレジット:Google

スニース氏はウェブプラットフォームについて「チームは標準化を強く意識して伝統的なDOMベースのアプローチで開発を始めました」と述べた。それは正常に作動したがパフォーマンス、特に高度な機能のパフォーマンスが大きく低下した。そこでの1年ほど前からチームはCanvas Kitの開発を始めた。これはバイナリにコンパイル可能なWebAssemblyをベースにしたプロジェクトで、AndroidやChrome自体を動かすのと同じSkiaグラフィックエンジンを採用し、ウェブアプリから利用できるようにした。スニース氏はこういう。

簡単にいえばウェブアプリがHTMLをバイパスできるようになったということです。HTMLはウェブアプリの中でテキスト処理を中心とする部分です。WebAssemblyを利用してさまざまなテキスト処理、入力の自動補完、パスワード、認証などインターネット独特のさまざまな作業が従来どおりできます。

画像クレジット:Google

デスクトップでは、GoogleはCanonicalがFlutterを全面的に支持し、今後のデスクトップおよびモバイルアプリのデフォルトの選択肢としてFlutterを採用することを発表した。

MicrosoftもFlutterのサポートを拡大し、Googleと協力してWindowsの Flutterサポートを進めていいる。MicrosoftがAndroidに強い関心を寄せていることを考えればこれは驚きではない。実際、MicrosoftはAndroidが折りたたみ可能なデバイスをサポートするためのFlutterエンジンへの貢献を発表している。

GoogleによればAmazon、Microsoft、Adobe、Huawei、Alibaba、eBay、Squareなどの主要テクノロジー企業からFlutterとDart用のパッケージが1万5000以上提供されているという。

通常どおり、2.0へのアップデートにはマイナーな修正や改良が多数加えられている。

スニース氏は、Flutterチームは組み込みデバイスやその他のやや伝統的ではないプラットフォームのフレームワークとして、Flutterにもっと多くの時間を割く予定だと述べている。また、Flutterがアンビエントコンピューティング体験の強化にどのように役立つかにも興味を持っていると述べた。

将来の展望についてスニース氏は「Flutterチームは、組込みデバイスその他の主流からやや外れるプラットフォームのフレームワークとしてFlutterを拡張するために時間を割く予定です」と述べている。またFlutterがユーザーが操作を意識することなく実行できるアンビエントコンピューティングの強化にFlutterが役立つかのではないかとしている。

スニース氏はこう説明している。

アンビエントコンピューティングの世界の背景にはいくつなの条件があると思います。アプリは簡単に検索できるか?作ったアプリで金を稼げるか、それらが責任ある方法でできるかなどです。我々は、アンビエントサービスへのサポートも構築しています。アナリティクス、広告のフレームワーク、FirebaseやGoogle Cloudなどへの接続性なども改良し、Flutterの機能を利用するだけでなく、Googleが提供する幅広いエコシステム全体が利用できるようにしていきたいと考えています。

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タグ:GoogleオープンソースFlutter

画像クレジット:Google

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:滑川海彦@Facebook

オープンソースのデータ統合プラットフォームのAirbyteが5.6億円を調達

オープンソースのデータ統合プラットフォームを提供するAirbyte(エアバイト)は、米国時間3月2日、Accelが主導するシードラウンドで520万ドル(約5億6000万円)を調達したことを発表した。他に投資家として参加したのはY Combinator、8VC、Segmentの共同創業者のCalvin French-Owen(カルビン・フレンチ=オウエン)氏、Clouderaの元GMであるCharles Zedlewski(チャールズ・ゼドレウスキー)氏、LiveRamp(ライブランプ)とSafegraph(セイフグラフ)CEOのAuren Hoffman(オーレン・ホフマン)氏、Datavant(データバント)CEOのTravis May(トラビス・メイ)氏、Machinify(マシニファイ)社長のAlain Rossmann(アラン・ロスマン)氏などだ。

Airbyteは、LiverRampやRideOSの元エンジニアリングディレクターで統合責任者だったMichel Tricot(マイケル・トリコット)氏と、開発者ツールやB2Bサービスを中心とした連続起業家John Lafleur(ジョン・ラフラー)氏が共同で創業した会社だ。ラフラー氏が最後に共同創業したスタートアップはAnaxi(アナクシー)だ。

画像クレジット:Airbyte

実は創業当初は、チームは今とは多少違う、マーケティング企業向けのデータ接続に焦点を当てたプロジェクトに取り組んでいた。創業者たちはY Combinatorに採用され、アプリケーションを開発したが、新型コロナウイルスのパンデミックが発生したために、Airbyteのオリジナルプロジェクトの初期顧客だった多くの企業が、予算凍結やレイオフに直面してしまった。

「その時点で、私たちはより深いデータ統合領域に踏み込もうと決めました、それが現在のAirbyteプロジェクトと製品の始まりなのです」とトリコット氏は説明する。

現在のAirbyte は、初期のような特定の業界に焦点を当てたものではなく、データエンジニアリングそのものに向けられているが、コネクタを構築するためのグラフィカルな UI と、開発者が取り込むためのAPIの両方を提供している。

トリコット氏が指摘するように、多くの企業が独自のデータコネクタを開発し始めており、最初はなんとなく上手くいくことが多い。しかし、本当の複雑さは、それらを保守し続ける際に現れる。「それがどのように振る舞うかが、手に負えなくなるのです」と彼はいう。「その結果、失敗するか、何かを変えるかのどちらかになるわけです。データ統合のコストはメンテナンス部分にかかっているのです」。

コネクタの構築を専門とする企業であっても、その複雑さはすぐに手にあまるようになるため、チームはAirbyteをオープンソース企業として構築することにした。またAirbyteによれば、Fivetran(ファイブトラン)のようにデータ統合に力を入れている企業はあるものの、多くの顧客は、クローズドソースの競合他社がサポートしていないユースケースが必要になることが多く、その場合は結局顧客自らがゼロから開発しなければならなかったと主張している。

「Airbyteにおける私たちの使命は、データを複製するための標準になることです」とラフラー氏は語る。「そのために、個々のコントリビューターの方々のニーズに対応したすべての機能をオープンソース化するのです、つまりすべてのコネクタをそうします」。彼はまた、Airbyteは2022年早々に行う予定のシリーズAラウンドを完結するまでは、オープンソースのツールに注力すると述べている。

Airbyteは、そのサービスを収益化するために、企業のニーズに対応した機能(データ品質、プライバシー、ユーザー管理などのエンタープライズ機能などを想像して欲しい)をすべてライセンスする、オープンコアモデルを採用する予定だ。また、コンテナ化されたコネクタのホワイトラベル化(OEM提供)も検討している。

現在、約600社の企業がAirbyteのコネクタを使用しているが、わずか1カ月前には250社だった。そのユーザーにはSafegraph、Dribbble(ドリブル)、Mercato(メルカート)、GraniteRock(グラナイトロック)、Agridigital(アグリデジタル)、Cart.com(カート・ドットコム)などが含まれている。

同社は新たな資金を使い、2021年末までにチームを約12人から25人に倍増させる計画だ。現在、同社はユーザーベースの確立に注力しており、2022年にはマネタイズを開始し、より多くの資金調達を行う予定だ。

関連記事:オープンソースのデータパイプラインプラットフォーム「Airbyte」

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画像クレジット:Bruce Leighty / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)

マイクロソフトがExcelの数式からヒントを得たオープンソースの新ローコード言語「Power Fx」発表

米国時間3月2日、Microsoft(マイクロソフト)が、Excel(エクセル)の数式からヒントを得た新しいローコード言語、Power Fx(パワーFx)を発表した。Power Fxは、Microsoft自身のローコード環境であるPower Platform(パワー・プラットフォーム)上でカスタムロジックを書くための標準手段となる。一方同社はこの言語をオープンソース化して、他者も同様に実装を行うことで、この種のユースケースのためのデファクトスタンダードになることも期待している。

Power Platform自体はプロの開発者よりもビジネスユーザーをターゲットにしているため、始めるに際してビジネスユーザー層のExcelの既存の知識とExcelの数式への親和度を活用することは、賢いやり方のように思える。

「私たちはこの15年ほどの間に、長いプログラミング言語の歴史と、真に興味深い出来事を目の当たりにしてきました。それは、プログラミング言語が無償となり、オープンソースとなり、コミュニティ主導型になったということです」と私に語ったのは、MicrosoftのPower Platformエンジニアリング担当CVPであるCharles Lamanna(チャールズ・ラマンナ)氏だ。彼はまた、C#(シーシャープ)やTypeScript(タイプスクリプト)、あるいはGoogle(グーグル)のGo(ゴー)のような内部言語でさえも、そうしたものの良い例となっていることを指摘した。

「それは現在進行形のトレンドなのです。そして興味深い点は、それらはすべてプロの開発者やコーダーのためのものだということです。振り返って、ローコード / ノーコード空間を眺めてみた場合にも、プログラミング言語が存在しています。例えばExcelのプログラミング言語のようなものがありますし、すべてのローコード / ノーコードプラットフォームもそれぞれ独自のプログラミング言語を持っています。しかし、それはオープンではありませんし、ポータブルでもなく、それぞれのコミュニティに閉じたものです」とラマンナ氏は説明する。

Microsoftによると、今回発表された言語はVijay Mital(ビジャイ・ミタル)氏、Robin Abraham(ロビン・アブラハム)氏、Shon Katzenberger(ショーン・カッツェンバーガー)氏、Darryl Rubin(ダリル・ルービン)氏らが率いるチームによって開発されたのだという。チームはExcel以外にも,Pascal(パスカル)、Mathematica(マセマティカ),1980年代に開発された関数型プログラミング言語であるMiranda(ミランダ)などの言語やツールからもインスピレーションを得ている。

Microsoftは、Power Fxを自身のローコードプラットフォームのすべてに導入する計画だが、コミュニティに焦点を当てていることから、Power Automate(パワー・オートメイト)やPower Virtual Agents(パワー・バーチャル・エージェント)などへの搭載がまず行われる予定だ。

しかし、チームは明らかにこの言語を他の場所でも採用して欲しいと考えている。ローコード開発者は、Power Apps Studio(パワー・アップス・スタジオ) のような製品の数式入力中にポップアップで表示されるのを目にすることになるだろう。しかし、より高度なユーザーは、Visual Studio Code(ビジュアル・スタジオ・コード)に移動して、より複雑なアプリケーションを構築するために使用することもできるようになる。

開発チームが指摘しているように、彼らは言語をただExcelのものに似せるだけではではなく、Excelのような振る舞いをさせることにも力を入れてきた、プログラム専門家ならREPLのようなものと言えば理解できるだろう。つまり数式は宣言的に書かれ、開発者がコードを更新すると同時に再計算が行われる。

最近のローコード / ノーコードツールの多くは、ユーザーがより洗練されたコードでアプリを拡張したり、ツールにコードベース全体をエクスポートさせたりするための脱出口を提供している。なぜなら結局のところ、こうしたツールたちには限界があるからだ。そうしたツールたちはデフォルトで幅広いシナリオをサポートするようになってはいるものの、どの企業も独自のやり方を持っているため、すべてのユースケースをカバーすることはできない。

「私たちは、おそらく開発者の大多数──私は『開発者』という言葉をPower Platformを使うコーダーとしてのビジネスユーザーを指しています──が、最後は何らかのかたちでこうした数式を書くことになると想像しています。基本的な想定として、Power Platformを使い始めた最初の日には、数式は書きませんよね?【略】そこで使われるのはマクロレコーダーだったりテンプレートです。Power Appsも同じです。純粋にビジュアルで、ドラッグ&ドロップを使い、数式は1つも書きません。でもPower Platformのすばらしい点は、これを使っていると2週目には、少しだけ洗練されたものを学んでいくことになるのです。そして少しずつ洗練された機能を使い始めることになります。そして、知らず知らずのうちに、さまざまな能力を身につけたPower Platformやローコード開発者のプロたちが手に入ることになるのです」。

Microsoft Ignite 2021

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画像クレジット:Stephen D Harper / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)

クラウドネイティブアプリ構築を支援するマイクロソフトのオープンソースプロジェクト「Dapr」が1.0に

Microsoft(マイクロソフト)が進めるオープンソースプロジェクトのDaprは、開発者がイベントドリブンのクラウドネイティブな分散アプリケーションを簡単に構築できるようにすることを目的としている。Daprは米国時間2月17日に、本番のユースケースに使用できることを意味する1.0のマイルストーンとなった。Microsoftは2019年10月にDistributed Application Runtimeをローンチした(Daprはこの頭文字を取ったものだ)。それ以降14のアップデートがあり、AzureのほかAWS、Alibaba、Google Cloudなどほぼすべての大手クラウドプロバイダとの統合がローンチされた。

Microsoft AzureのCTOであるMark Russinovich(マーク・ルシノビッチ)氏は筆者に対し、Daprの目標は企業の開発者に対してクラウドネイティブの開発を民主化することだと語った。

同氏はこう説明する。「企業の開発者に求められているのは、これまではクライアント、サーバー、ウェブ、そしてデータベースタイプのアプリケーションでした。しかし現在ではコンテナ化して、スケールアウトしダウンタイムなしでアップデートできるマイクロサービスを作ることが求められています。しかもクラウドサービスと統合する必要があります。その上、多くの企業はオンプレミス環境やクラウド環境で移植でき、さらにクラウド間でも移行できるアプリの作成を求めています。このように、解決に取り組んでいるビジネス上の問題に固有のものではない、あるいは関連していない複雑な問題が山ほど開発者に投げかけられています」。

開発の多くの部分が、アプリケーションが他のさまざまなサービスと信頼性の高い通信をするための仕組みの刷新に関わっている。Daprの背景となっている考え方は、イベントドリブンのマイクロサービスを構築するために必要なツールとなる、これまでになかった単一のランタイムを開発者に提供することだ。とりわけDaprはサービス間通信、状態管理、pub/sub、シークレット管理などに関する多様なビルディングブロックを提供している。

画像クレジット:Dapr

ルシノビッチ氏は「Daprが目指しているのは、クラウドネイティブの分散型で、可用性が高く、スケーラブルで、セキュアなクラウドサービスを日常的に書く作業はすべてDaprが面倒を見て、開発者が自分のコードに集中できるようにしようということです。我々はサーバーレスや、たとえばAzure FunctionsのようなイベントドリブンなFunctions-as-a-Serviceから学びました。開発者はビジネスロジックに集中し、その後はAzure Functionsのバインディングのようなものが他のサービスとの接続を処理します」と述べた。

同氏は、Daprのもう1つの目標は言語固有のモデルから離れてどの言語からでも利用できるプログラミングモデルをつくることだとも述べた。企業の既存のコードには複数の言語が使われている傾向があり、多くの企業が現在のコードを残して既存のアプリケーションをモダナイズする最適な方法を探っている。

ルシノビッチ氏によれば、現在このプロジェクトにはMicrosoft社外に700人以上のコントリビューターがいて(ただし中心メンバーの多くはMicrosoft社員)、1.0のリリースよりも前に本番環境で使い始めた企業も多いという。Daprをすでに利用している大手クラウドプロバイダの1つがAlibabaだ。ルシノビッチ氏は「Alibaba CloudはDaprを本当に気に入って、大いに活用しています」という。他にはHashiCorpや、初期ユーザーであるZEISS、Ignition Group、New RelicなどがDaprにコントリビュートしている。

クラウドプロバイダであるMicrosoftが自社のイノベーションを競合他社がすでに使っていることを喜んでいるとはちょっと奇妙に思えるが、ルシノビッチ氏はこれはまさに計画どおりでDaprを近々ファンデーションの一部にすることを望んでいると述べた。

「我々は数カ月前からオープンガバナンスに向けた取り組みをしており、Daprをファンデーションの一部にすることを目指しています。【略】ゴールはオープンにすることです。これはMicrosoftのものではありません。業界のものです」と同氏はいう。しかしどのファンデーションを指しているかはまだ公表できる段階ではないようだ。

カテゴリー:ソフトウェア
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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Kaori Koyama)

オンラインチケット販売TIGET運営のgrabssが2.3億円調達、音声通話サービスTHISIS新開発

オンラインチケット販売「TIGET」運営のgrabssが2.3億円調達、音声通話サービス「THISIS」開発

grabss(グラブス)は、岩崎通信機を引受先とした第三者割当増資および既存株主数名への株主割当増資などによる2億3000万円の資金調達を発表した。

調達した資金は、経営基盤の強化、また岩崎通信機との共同開発事業、grabssの得意分野であるWebRTC技術を活用した新音声通話サービス「THISIS」(ディスイズ)の立ち上げ、オンラインチケットサービス「TIGET」(チゲット)のマーケティング施策のほか、開発、販売体制の充実など事業強化にあてる。

grabssと岩崎通信機は、2019年12月より、岩崎通信機のアプリ不要の国産ウェブ会議システム「Waaarp」をはじめとするWebRTC関連製品の共同開発を実施しているという。

今後はさらに両社の強みを融合させ、アフターコロナを見据えた様々なサービス展開により、日本企業のDX推進に貢献していくとしている。

音声通話サービス「THISIS」

THISISは、WebRTC技術を使った高品質な音声通話サービス。利用者は、電話番号の代わりに専用URL(THISIS ID)を取得することで、ウェブブラウザー経由で通話を受けられる。

また発信者は、スマートフォンやPCのウェブブラウザーにTHISIS IDを入力するだけで通話の発信が行える。THISISを使えば、プライベートの携帯番号やLINE IDを知られることなく、自分のスマートフォンで通話が行える。発信者は、電話などの回線契約、会員登録、友達申請、専用アプリなどは一切必要ない。

オンラインチケット販売「TIGET」運営のgrabssが2.3億円調達、音声通話サービス「THISIS」開発

THISISアプリでTHISIS IDを公開しておくと、誰でもこのIDに対して通話の発信を行える。インターネットを介した通話により、通信料以外の料金も発生しない。カスタマーセンターや飲食店、各種予約窓口として、THISIS IDをウエブサイトや名刺などに掲載すれば顧客と通話可能としている。

営業時間や休業日に合わせた着信可能日時の設定や、通話に出られない場合のメッセージ表示機能も実装している。

THISISアプリ同士の通話のほか、転送も可能。内線通話のように使うことができ、ニーズに合わせた連絡網の構築も行えるとしている。

grabssは、今後、グループ着信やチャットなど、コミュニケーションツールとしてのさらなる機能充実を図り、フリーランス、個人事業主、中小企業を中心に利用者獲得を進めていく。

オンラインチケット販売サービス「TIGET」

grabssは、オンラインチケット販売プラットフォームサービス「TIGET」を2013年より展開。ライブアイドルや、芸能人、アーティストのライブイベントのチケット販売をオンライン化することにより、多くのファンにイベント情報を提供してきたそうだ。

grabssは、オンラインライブイベントの強化を新たな目標と定め、オンラインイベント独自の魅力的な機能の開発や大規模配信イベントの安定的な開催の実現への投資を進めるという。

オンラインチケット販売「TIGET」運営のgrabssが2.3億円調達、音声通話サービス「THISIS」開発

2012年10月設立のgrabssは、TIGETのほか、WebRTCで構築した少人数向け無料ビデオ会議サービス「BIZMEE」(ビズミー)などを提供。

BIZMEEは、サーバーを経由せず、ユーザー同士が直接接続しビデオ会議を行える。顧客から「自社専用のカスタマイズをし、自社のドメインでビデオ会議として利用したい」といった要望があり、法人向けカスタマイズによる専用会議室の導入をこれまで以上に進めていくとしている。

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カテゴリー:ネットサービス
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「日本から世界で勝負する」国産ブロックチェーンPlasm NetworkがBinanceらから2.5億円調達

「日本から世界で勝負する」国産ブロックチェーンPlasm NetworkがBinanceらから2.5億円調達

日本発のパブリックブロックチェーン「Plasm Network」(プラズムネットワーク)はじめブロックチェーン技術によるインフラ開発事業を展開するStake Technoloiges(ステイクテクノロジーズ)は2月9日、総額2億5000万円相当の資金調達を発表した

引受先は、暗号資産(仮想通貨)取引所大手Binance(バイナンス)が組成したファンドBinance Labsをリード投資家とする、HashKey、PAKA Ventures、LongHash Ventures、Digital Finance Group。

Stake Technoloigesは、2019年1月設立のスタートアップ。代表取締役の渡辺創太氏は、「我々はパブリックブロックチェーンが次世代の産業基盤になると考えています。日本のパブリックブロックチェーン業界が世界に比べ数周遅れている中で、日本から世界で勝負するプロダクトを開発し挑戦することは価値のあることだと信じています。現在、やっとスタートラインに立つチケットをもらった段階だと認識しているので、日本発のパブリックブロックチェーンが世界のパブリックブロックチェーンになれるように頑張っていきます」とコメントしている。

同社が開発を手がけるPlasm Networkは、Ethereum(イーサリアム)やBitcoin(ビットコイン)同様のパブリックブロックチェーンにあたり、ブロックチェーンにおける相互運用性(インターオペラビリティ)と処理性能(スケーラビリティ)の解決を目指している(日本語版ホワイトペーパー日本語ドキュメント)。

またWeb3財団(Web3 Foundation)が展開する主要オープンソースプロジェクト「Polkadot」(ポルカドット)に接続可能なことを前提とし、ブロックチェーン開発フレームワーク「Substrate」(サブストレート)により開発している点が特徴だ。

Ethereum共同創設者ギャビン・ウッド氏が率いる「Polkadot」

Polkadotは、Ethereum(イーサリアム)共同創設者およびEthereum Foundation(イーサリアム財団)の元CTOのGavin Wood(ギャビン・ウッド)氏が立ち上げたプロジェクトから誕生(ホワイトペーパーライトペーパー関連Wiki)。2020年5月にローンチしており、最先端技術として注目を集めている存在だ。

複数の異なるブロックチェーンを相互接続・相互運用するためのブロックチェーン(プロトコル)として設計されており、Polkadot本体にあたるブロックチェーン「リレーチェーン」(RelayChain)、またこれにつながる複数のブロックチェーン「パラチェーン‌」(Parachain)、EthereumやBitcoinなど(Polkadotとの接続を前提としない)独自ブロックチェーンをつなぐための「ブリッジ」(Bridge)によって構成されている。Plasm Networkは、このPolkadotのパラチェーン‌として実装されており、接続が可能だ。

またPolkadotは、IoT用途や金融用途など、特定領域・ニーズに合わせたブロックチェーンを新規構築することが可能としている。

Stake Technoloigesは2021年1月、世界で初めてPolkadotテストネットへの接続に成功した企業として実績を残していることでも知られている。

「Plasm Network」とは?

Plasm Networkは、先に触れたように、他主要ブロックチェーンと同じオープンソースのパブリックブロックチェーンだ(Github)。

日本語版ホワイトペーパーなどを読むと、後述のPlasmaによる処理性能(スケーラビリティ)向上のため、開発フレームワークのSubstrateを活用し、Plasm Networkを開発したととれる。またPolkadotにより、相互運用性と高いセキュリティを担保した形だ。

大雑把に説明すると、目的のコンテンツ(Plasma)実現のため、すべてを新規開発するのではなく、優れた動作基盤や開発環境(Polkadot、Substrate)を利用し独自サービス(Plasm Network)を開発したといったイメージだ。

Plasm Networkの開発に利用されているSubstrateとは、Polkadotの安全性や互換性を保ちながら自由にブロックチェーンを開発できるというフレームワークだ。これによりPolkadotとの相互接続を可能とすると同時に、Polkadotのセキュリティ関連機能と連携することで、異なるパラチェーン‌上に存在する第三者との取引などを安全に行えるというメリットも得ている。

処理性能を解決するものとしては、レイヤー2アプリの動作環境OVM(Optimistic Virtual Machine)モジュールを基盤とする、レイヤー2技術「Plasma」を採用している。例えば、Plasm Networkを親チェーン(レイヤー1)として見立て、子チェーン(レイヤー2)上でスマートコントラクトやブロックチェーンアプリ(Plapps)などの処理を別途行えるようにしている。アプリ開発者は、Plappsを構築することで、親チェーン(レイヤー1)に高い負荷をかけてしまうなどの悪影響を与えずに済む。

また「Plasma Defauct Standard Chain」という仕組みを利用し、Plapps自体をPolkadotのパラチェーンとしても機能させられるとしている。

さらにPlasm Networkでは、人気があるアプリの開発者に対し、Plasm Networkコミュニティに貢献したとして報酬が配布される仕組みなどを採用している。Ethereumのアプリ動作環境EVM(Ethereum Virtual Machine)をサポートしており、Ethereum用スマートコントラクトやブロックチェーンアプリを動作させられることから、この点でも魅力に感じるアプリ開発はいるだろう。

ウェブブラウザー上のアプリを高速動作させるWebAssembly(WASM)対応のプログラミング言語も利用可能だ。記事執筆時点では、Rust由来の「ink!」、Ethereumでアプリ開発に使用されているSolidityをサポートしている。Solidityは、Solangでコンパイルを行う。

Stake Technoloigesの技術力と実績が評価

Stake Technoloigesの特徴は、Web3財団からすでに複数回助成金を獲得済み(2021年1月時点で6回で、世界最多)という実績とともに、Polkadotコミュニティから高く認知されている点にもある。

そのほかにも、米国カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)のブロックチェーンアクセラレーションプログラム「Xcelerator」に採択され、卒業するなどの成果を確実に上げてきた。Xceleratorは、UC Berkeleyの工学部、Haas School(MBA)、Blockchain at Berkeleyによって提供される6カ月間の事業支援プログラムだ。

今回の調達は、これらStake Technoloigesの技術力と実績に対して、Binance Labsなどが評価したことを示したものといえるだろう。Binance Labsは、暗号資産取引所大手として著名なBinanceが組成したファンドで、ブロックチェーンおよび暗号資産にまつわる起業家やプロジェクト・コミュニティの支援を行っている。BinanceがPolkadotエコシステムのプロジェクトに投資するのはPlasm Networkが初となる。

Binance Labs投資責任者のWei Zhou(ウェイ・ジョウ)氏は「私たちはPlasm Networkのローンチからこれまでの成長をみて非常に感心をしています。PlasmはPolkadotのテストネットに最初に接続したブロックチェーンであり、Polkdotのエコシステムにおける最も有望なプロジェクトのひとつです」と評価。「Plasmに投資を行い、サポートをしていくことでPolkadotエコシステムをサポートしコミットメントを行うことを示していきます」とコメントしている。

Binance Labsのほかに今回投資を決定したHashKeyは、中国最大のブロックチェーン投資ファンドであり、2020年には暗号資産メディアThe Blockにより最もアクティブな世界のブロックチェーン投資家トップ10に選出されている。PAKA Venturesは、PolkadotプロジェクトであるStafi、Phala、Bifrost、Crust、Litentryの創業者が共同で設立したDAOファンド。ハードコアな技術チームのインキュベーションと投資に焦点をあてている。

LongHash Venturesは、Web3.0ブロックチェーンエコノミーを構築するブロックチェーンアクセラレーターかつ投資家。シンガポール、上海、香港などの主要な技術拠点にグローバルネットワークを構築し、次世代のブロックチェーンスタートアップの成長促進に尽力している。またDigital Finance Group(DFG)は、世界的に有名なブロックチェーン投資会社だ。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:Ethereum(製品・サービス)WebAssembly / WASMオープンソース / Open Source(用語)SubstrateStake TechnoloigesPlasmaPlasm NetworkPolkadotRust(製品・サービス)日本(国・地域)

フィックスターズ独自開発の視差計算ソフトがOpenCVに正式実装、自動運転などへの活用に期待

フィックスターズ独自開発の視差計算ソフトがOpenCVに正式実装、自動運転などへの活用に期待

マルチコアCPU・GPU・FPGAを用いた高速化技術を手がけるフィックスターズは2月8日、同社が開発した視差計算のオープンソースソフトウェア(OSS)「libSGM」が、コンピュータビジョン向けOSSライブラリー「OpenCV」に正式実装されたと発表した。ライセンスは、Apache License 2.0を採用している。

ステレオカメラの画像から視差計算をするlibSGMは、複雑化・高度化する自動運転システムの前方注視能力の向上など様々な用途に活用が期待されているという。推定1800万ダウンロードを超えるOpenCVに採用されたことで、コミュニティを通じて世界中のデベロッパーがlibSGMを活用しやすくなったとしている。

libSGMは、Semi-Global Matchingというアルゴリズムを用いて、ステレオカメラの画像から被写体までの距離を計算するソフトウェア。

同ライブラリーは、フィックスターズの高速化技術を基に開発を行い、NVIDIA製GPUで高速に視差計算ができるように最適化しているという。GeForce RTX 3080を使ったベンチマークでは650fpsを超え、Jetson AGX Xavierでもクロック最大時で110.7fps、省電力モードでも57.7fpsの計算スピードを記録したそうだ。

OpenCV(Open Source Computer Vision Library)は4万7000人以上が使うコンピュータビジョン用ライブラリ。「New Year’s update」と銘打たれたバージョン4.5.1のリリースで、libSGMの実装が報告された。同バージョン以降のOpenCVを導入するユーザーは、libSGMも使えるようになる。

2002年8月設立のフィックスターズは、「Speed up your Business」をコーポレートメッセージとして掲げるソフトウェアカンパニー。マルチコアプロセッサーを効率的に利用するためのソフトウェアの並列化・最適化と、省電力かつ高速I/Oを実現する新メモリー技術を活用したアプリケーションの高速化を通じて、医療・製造・金融・エンターテインメントなど、様々な分野の企業のビジネスを加速し、グリーンITを実現している。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:NVIDIA(企業)NVIDIA JetsonOpenCV(製品・サービス)オープンソース / Open Source(用語)カメラ(用語)GeForce RTX 3080自動運転(用語)フィックスターズ(企業)日本(国・地域)

アクセシビリティを重視したオープンソースの新デザインシステムをOktaがローンチ

アイデンティティとアクセス管理サービスを提供するOkta(オクタ)は米国時間2月4日、新しいデザインシステムをローンチした。これは社内と自社ブランドで使用するためのシステムだが、Apache 2.0ライセンスの下でオープンソース化されている。同社がOdyssey Design Systemと呼ぶこのシステムは、Google(グーグル)のマテリアルデザインやMicrosoft(マイクロソフト)のフルーエント・デザインなどと同類のものだ。機能の数ではおよばないものの、アクセシビリティを重視している点で市場では際立っている。このデザインシステムのあらゆる要素が、W3CのWeb Content Accessibility Guidelines(ウェブコンテンツ・アクセシビリティー・ガイドライン)に準拠している。

Oktaのデザイン担当上級副社長Brian Hansen(ブライアン・ハンセン)氏は、これまで同社には統一されたデザインシステムがなかったと私に話してくれた。だがその代わりに「栄光のパターンライブラリー」がある。エンジニアたちは新しいUIがすばやく作れるためとても気に入っていたのだが、新しいパターンの追加が難しかった。「そのため、できることに制限があったのです」とハンセン氏。「そのため最後には、特にデザイナーですが、丸い穴に四角いものを無理矢理入れ込むような妥協を強いられることもあります」。

画像クレジット:Okta

すでにOktaは若いスタートアップの段階から脱却しているが、今こそ社内用に機能を完備したデザインシステムを原点に戻って構築するときだと彼らは考えた。それはまもなく、ほとんどのユーザーが目にするOktaのサインインウィジェットに現れるはずだ。さらに注目すべきは、Oktaのプラットフォームが、ほとんどのユーザーは決して見ることがなかった管理者用のバックエンドツールを大量に公開したことだ。管理者たちは、情報の濃いユーザーエクスペリエンスと、仕事がよりはかどるデザインを求めるものだ。Oktaのサードユーザーは開発者であることを、ハンセン氏は強調する。開発者が最も気にかけるのは、細部の技術的なできもさることながら、説明資料だ。それは(あくまでデザイナーにとって)読みやすいものでなければならない。

ハンセン氏も認めているが、すべてのインターフェイスを一気にOdysseyに切り替えるのは現実的ではない。「デザイナーとしては、すべてを完ぺきに揃えてほしいと思います。しかし同時に現実的な態度として、完ぺきでないものと共存していく必要もあります」と彼は話す。そのため、Oktaブランドでは現在その更新を進めている最中であり、一部のユーザー向けインターフェイスも移行中だが、すべてのOktaサービスが移行を終えるまでには時間がかかる。

たとえば管理者用のコンソールに関しては、ハンセン氏のチームはUIの移行を数年かけて行うことに決めた。そこで中継戦略を立て、Odesseyの基本デザインを真似たスタイルシートを制作した。「そこから、私たちはOdysseyネイティブのコンポーネントへの切り替えが可能になり、徐々に組み込んでいけるようになります。アプリの切り貼りはできません。2つの異なるUIを共存させることもできません。それをすれば信頼を失うと私は考えています。そんなことで満足してくれる人はいません」とハンセン氏は語る。

開発者は、自身のプロジェクトでOdysseyを試すことができる。また提供されているさまざまなコンポーネントを見ることもできる。デザイナーはFigmaでの試用が可能だ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Oktaデザインアクセシビリティオープンソース

画像クレジット:Okta

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:金井哲夫)

ブロックチェーン活用のテレビ番組向けファン育成プラットフォームLiveTV-Showがライブ配信対応

ブロックチェーン活用のテレビ番組向けファン育成プラットフォームLiveTV-Showがライブ配信対応

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、過去1週間分について重要かつこれはという話題をピックアップしていく。今回は2021年1月24日~1月30日の情報から。

博報堂が発足したHAKUHODO Blockchain Initiative(HBI。博報堂ブロックチェーン・イニシアティブ)と博報堂DYメディアパートナーズは1月26日、SingulaNetと共同構築したテレビ番組向けファン育成プラットフォーム「LiveTV-Show」(ライブ・ティービー・ショー)について、3社で開発した独自のライブ配信(WebRTC)機能を新たに搭載したと発表した

LiveTV-Showは、デジタルアセットの所有権を安全・迅速に移転できるブロックチェーン技術を応用した、生活者参加型テレビ番組制作を支援するファン育成プラットフォーム。番組視聴者に向けて、出演タレントのデジタルフォトやライブ映像などを数量限定で提供したり、ファンからのギフティング(投げ銭)を通じて番組を応援してもらうことができるという。Paypal、クレジットカード、デビットカードによる課金に対応している。

今回3社は、テレビ静岡の新番組に出演中のアイドルグループ「fishbowl」(フィッシュボウル)のファン向けに、ライブ配信機能を搭載したLiveTV-Showの提供を開始した。

同ライブ配信機能は、専用ツール・アプリを要することなくウェブブラウザー上で配信・視聴可能で、個別の番組向けカスタマイズほか、無料・有料の配信に対応できる。視聴データはテレビ局が管理・蓄積できるため、データを分析した結果を番組制作に反映可能という。

またテレビ局側は、ライブ配信機能と販売機能やギフティング機能とを連携させることで、双方向の番組制作、番組・出演タレントのファン育成が可能となるとしている。LiveTV-Showの販売機能はブロックチェーン技術を採用しており、複製防止や数量限定の販売にも対応する。

fishbowlは、しずおかアイドルプロジェクトのオーディションを経て結成。テレビ静岡の「アイドル観察バラエティ fishbowlのデビューしちゃってもいいですか?」出演と並行して、LiveTV-Showを活用したライブ配信などの企画を通じ、ファンと交流していくという。LiveTV-Showによる双方向のコミュニケーションを通して、テレビ番組との相乗効果を生み出し、ファンの育成を目指す。

SingulaNetは、分散台帳技術にEthereum(イーサリアム)を採用しエンタープライズ向けBaaS(Blockchain as a Service)を提供するブロックチェーン企業。ハイセキュリティ・高性能な企業向けブロックチェーンインフラの研究開発、次世代のデジタルコンテンツの管理に関する特許などの知財開発を基にして、ブロックチェーン×ウェブメディアビジネスの拡張に貢献していくという。

ブロックチェーン活用のテレビ番組向けファン育成プラットフォームLiveTV-Showがライブ配信対応

博報堂と博報堂DYメディアパートナーズは、ブロックチェーンなどの先端技術を活用したメディア領域のソリューション開発を進めている。多様な知見や技術を有するSingulaNetのような社外パートナーとともに、メディア業界のDX支援を目指している。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:Ethereum(製品・サービス)WebRTCオープンソース / Open Source(用語)SingulaNet博報堂博報堂DYメディアパートナーズHAKUHODO Blockchain Initiative日本(国・地域)

GitLabが有料サブスクリプションプランの構成を変更、Bronze / Starterを廃止

ますます人気のあるDevOpsプラットフォームであるGitLabは米国時間1月26日、サブスクリプションモデルのメジャーアップデートを行った。同社はまず、月額4ドル(約420円)のBronze / Starterパッケージを廃止する。ユーザーは現在の料金でもう一度更新するか、または上位のティアへ移動することになる(移行後、最初の3年は大幅な割引がある)。

なお、同社の無料ティアはなくならない。GitLabによると「Bronze / Starterにあった機能の89%が無料ティアにある」という。

GitLabの創業者でCEOのSid Sijbrandij(シド・シジブランダイ)氏によると、これはチームにとって難しい決断だったという。特にBronzeプランの人たちにとって大きな変更であることを、彼も認めている。「私たちにとって以前からの宿題だったことを、ご理解いただきたい。それに、すばらしいレガシーの料金体系は現在でも残っている」とシジブランダイ氏はいう。ユーザーからのフィードバックは大歓迎だそうだ。

ショックを和らげるためにBronzeのユーザーは2022年1月26日までこれまでのサブスクリプションプランを更新し、さらに1年間利用できるようになる。また、今後3年間はPremiumプランに割引価格で移行することも可能で、最初は1年目にはユーザーあたり月額6ドル(約630円)から始まり、2年目にはユーザーあたり月額9ドル(約940円)、3年目にはユーザーあたり月額15ドル(約1570円)になる。新規ユーザーの場合、Bronzeパッケージは現在提供されていない。

画像クレジット:GitLab

結局のところ、今回の値上げはGitLabにとって純粋に財務的な意思決定だ。シジブランダイ氏によると、Bronzeの顧客は一人ひとりがGitLabにとって赤字になっている。「Bronzeでは損をして販売しています。売れるたびに、私たちはお金を失っています。ホスティングとサポートの費用も出ない。持続可能なビジネスであるためには、今回の措置が必要でした。顧客にとって大きな変化ですが、弊社を持続可能な企業にし、今後の投資も続けたいと考えています」とシジブランダイ氏はいう。

同氏によると、チームはBronzeの料金を上げる方に傾いていたという。しかし「あらゆるオプションを検討した結果、値上げすればPremiumと変わらないようなものになってしまう。この2つがあまりにも重複していても意味がない」とシジブランダイ氏は説明した。

今回の変更でGitLabが提供するティアは3つになる。それらはFree、PremiumそしてUltimateだ。なお「Silver / Premium」と「Gold/ Ultimate」も廃止になる。

Freeは、ユーザー数が最も多い人気プランでありそのまま残される。GitLabにとって最も損をしているティアであることは確かだが、CI / CDのクレジットは限られているしサポートのオプションもない。だからロスだとしてもGitLabにとって価値のあるロスだ。シジブランダイ氏によると、同社は本来オープンソース企業であるため、無料でオープンなサービスがあることはいわば義務だという。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:GitLabオープンソースDevOps

画像クレジット:GitLab

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa