EC商品のリモート写真・動画撮影を容易にするSoonaがシリーズAで約11.1億円を調達

eコマースのエコシステムでますます高まるコンテンツのニーズを満たすことを目指すスタートアップSoonaは、Union Square Venturesが主導するシリーズAラウンドで1020万ドル(約11億1000万円)を調達したと発表した。

2019年にSoonaについての記事を書いたとき、同社のモデルは、24時間以内に動画や写真を提供できる撮影の演出に焦点を当てていた。このスタートアップは現在もオースティン、デンバー、ミネアポリスで撮影スタジオを運営しているが、共同創業者兼CEOのLiz Giorgi(リズ・ジョルジ)氏によると、パンデミックの間に、Soonaは完全なバーチャル / リモートモデルにシフトしたという。顧客はSoonaに商品を郵送し、その後、リモートで撮影の様子を見てすぐにフィードバックを提供し、実際に欲しい写真(各39ドル、約4200円)やビデオクリップ(各93ドル、約1万円)に対してのみ料金を支払うというものだ。

場合によっては、スタジオが必要ないこともある。ジョルジ氏によると、Soonaのフォトグラファーと撮影クルーの30%は自宅で仕事をしているという。

Soonaは現在、Lola Tampons、The Sill、Wild Earthなど、4000社以上の顧客と取引しており、2020年の収益は400%増加した。ジョルジ氏は、より大規模な対面での撮影が可能になったとしても、多くの顧客にとってこのアプローチは理に適っている、と語る。

「オンラインで販売する商品でビジュアルを必要としないものはありませんが、すべてのビジュアルが1日がかりの大規模な撮影を必要とするわけではありません」と同氏はいう。

画像クレジット:Soona

ジョルジ氏は、Soonaのアプローチが「新しいレベルのスケーラビリティ」をもたらしたと考えている。彼女は次のように付け加えた。「Soonaのスタッフはみな、リモート撮影は効果的だと信じています。効率的なだけでなく、ブランドマネージャーをマイアミから飛行機に乗せて、ニューヨークの倉庫で1日過ごさせる必要がなくなり、よほど楽ですからね。(従来の方式は)コストが高いだけでなく、参加者全員にとって時間がかかり、疲れるプロセスでした」。

今回の資金調達は、120万ドル(約1億3000万円)のシードラウンドに続くものだ。ジョルジ氏は、今回のシリーズAによって、Soonaはより多くのコラボレーションツールを備えたサブスクリプション製品を開発し、どのような種類のビジュアルコンテンツが最も効果的かについてのデータを増やすことができるという。

「eコマースのビジュアル・エコシステムを初めから終わりまで支配するチャンスがあります」と同氏は語る。

またジョルジ氏は、投資家にセクシャルハラスメントや差別の苦情に直面したことがあるかどうか開示することを義務づける「candor clause(率直条項)」をSoonaが引き続き採用していることも指摘した。この条項は現在、人種差別、身障者差別、反LGBTQ差別をめぐる苦情にも拡大されている。

「これはある意味、トラブルメーカーの関与を防ぐためのゲートですが【略】投資家と創業者とのより深い結びつきを促すものです」とジョルジ氏は語った。「これにより私たちは、自分たちの価値観や、世界の見方について話し合うことができます。資本やキャップテーブルについて多くのことを語るのと同時に、平等や正義についても話し合えるわけです」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Soonaeコマース資金調達写真写真編集動画撮影

画像クレジット:Soona

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(文:Anthony Ha、翻訳:Aya Nakazato)

マニュアル作成プラットフォームのスタディストが総額18億円超を調達

チームメンバーに意図がうまく伝わらない、という経験をしたことはないだろうか。「伝えることを、もっと簡単に」というミッションの下、ビジュアルマニュアル作成ツール「Teachme Biz」と、小売業者向け販売PDCAマネジメントツール「Hansoku Cloud」を提供するスタディストは、三井不動産とグローバル・ブレインが運営する31VENTURES、シンガポール政府が所有する投資会社テマセク・ホールディングス傘下のプライベートエクイティファンドであるPavilion Capital、博報堂DYベンチャーズを新たな引受先として、総額18億5000万円の資金調達を実施した。

同社は12期目となり、従業員数は現在116名、顧客アカウント数は32万。Forbes JAPANの「Japan’s Cloud Top10」や、週刊東洋経済の「すごいベンチャー100」などにも採り上げられている。

マルチデバイスでマニュアルの作成や閲覧が可能なTeachme Biz

Teachme Bizは、PowerpointやWordなどを使わずに、マルチデバイスで簡単に手順書が作成できるツールだ。画像を追加してテキストを付与、項目を並び替えて手順書が完成すれば、あとは共有するだけだ。

従来の属人的なOJTでは、教える側の意図がうまく伝わらない、教えられる側が同じことをもう一度聞きにくい、管理者が各自の習得度を把握しにくいといった課題があった。同社はこの問題を改善しようとサービス開発を行なっていたが、新型コロナウイルスの影響で遠隔研修のニーズが拡大し、導入社数が増加。特に小売業、飲食、宿泊、医療、金融といった、同じことを多拠点で多くの人に習得してもらう必要がある労働集約型事業での需要が高いという。

またスタディストは、Teachme Bizなどが動画や画像メインのサービスであることから、言語の壁がある海外での展開を目指して、アジア諸国に進出している日系企業へもアプローチを開始。2018年にはタイに現地法人を設立、現地の従業員教育をすばやく簡単に行えることが評価された。飲食事業を営む顧客の中には、新メニューを思いついたらすぐにTeachme Bizでそのレシピや調理手順を他店舗へ共有し、12時間で全店舗での新メニュー提供まで行えているところもあるという。

タイでも2020年にロックダウンがあったが、現地法人の2020年度売上は、前年度比70%で成長。スタディストはタイを中心にマレーシア、ベトナム、シンガポール、ミャンマー、香港のASEAN6カ国で事業を拡大し、その実績が今回の調達にもつながった。現在、Teachme Bizは日本語、英語、タイ語に対応しており、今後も東南アジアを中心とした展開を検討している。

Teachme Bizの顧客の課題から誕生したHansoku Cloud

「Hansoku Cloud」は、Teachme Bizの導入率が高い小売業者向けに、クロスセルで売れる商品を作ろうと考案したサービスだ。小売業のラストワンマイルと呼ばれる「店頭実現率(店頭在庫率)」を商品別にわかりやすく表示し、販売機会の損失を防ぐ。店頭在庫の確認や補充は、通常、店頭スタッフが対応するが、本部から受け取った文字だらけの店舗指示書は、理解するまで時間がかかることが多い。Hansoku CloudはTeachme Bizの機能が含まれており、本部からの店舗指示がビジュアルで確認できる他、各店舗の実行率が本部ですぐ確認できるため、直接指導をすべき先に対して早期に対応できる。ドラッグストアにおける胃腸薬店頭実現率を改善できるかPoCを実施したところ、1.5〜2倍の売上向上効果が出た。

Teachme Bizの顧客のペインから、それを解決するソリューションを増やしていく

今回の調達では、投資元のクライアントや投資先との提携を前提とした事業シナジー期待を主眼に置いた。Pavilion Capitalとの連携を活用して海外事業の拡大を図り、2025年2月期の全社売上において3億円を目指す。

同社は、労働生産性の向上により新しいものが次々登場する社会の創造を目指しており、必要な効率化手段を増強していく方針だ。代表取締役CEOの鈴木悟史氏はコンサルティングファーム出身で、過去の経験を活かしてPoCスキームのコンサルティング事業も育成検討をしており、今回の調達はコンサルタントの採用にも活かす考えだという。鈴木氏は今回グローバル調達に成功したことも踏まえ「これからはグローバルの時代。日本の起業家は語学の壁に怯まず、ぜひ果敢に海外に飛び出して欲しい」と語った。

カテゴリー:HRテック
タグ:スタディスト資金調達日本マニュアル

数百億円台のAIラウンドがあってもおかしくない理由

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

準備OK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

先週、Scale AI(スケールAI)が3億2500万ドル(約353億5000万円)のシリーズE調達を行った。TechCrunchも書いたように、この会社はデータラベリングの分野で活躍している。そして、ここ数年は資金調達にも大いに力を入れてきた。2019年にTechCrunchは、同社の当時22歳のCEOが1億ドル(約109億円)のラウンドを組んだことを記事にしている。そして2020年12月には約35億ドル(約3807億3000万円)の評価額で1億5500万ドル(約168億6000万円)を調達した。今では70億ドル(約7兆6000億円)以上の価値がある。

すごい話だよね?さて、先週初めにわかったのだが、どうやら2021年は、AIスタートアップにとって、全般的にとんでもない年になっているようだ。PitchBookのデータによれば、2021年の初めから4月12日までに、米国でのAIスタートアップの取引は442件、金額にして116億5000万ドル(約1兆2672億9000万円)に達している。そして、最近発表されたMicrosoftによるNuance AI(ニュアンスAI)の買収は、さらにこうした事象を加速させるかもしれない。

Sapphire VenturesのJai Das(ジェイ・ダス)氏に、AIベンチャー市場についての意見を、The Exchangeに寄せてもらった。同氏は、この分野の第1四半期における競争状況に対する、私たちからの質問に対し、第1四半期における「AI/MLスタートアップへの投資活動は、絶対にトチ狂っていますね」と答えた。

ダス氏によれば「AI / MLスタートアップは、日常的に一流のVCファームから5、6通の条件規定書を受け取っていますし、ARR(年間経常収益)の150~250倍の資金調達ができています」とのことだ。

このことを少し考えて欲しい。2020年私たちは、公開ソフトウェア企業が新たな高みに達したのを目にしてきたが、たとえ積極的なスタートアップのラウンドであったとしても、上の数字は非常に大きなものだ。経常収益が100万ドル(約1億1000万円)に過ぎないAIに特化したスタートアップが、25億ドル(約2719億5000万円)の評価を受けることを想像してみて欲しい。なんてこった。

しかし、AI投資のペースはどうだろうか?聞くところでは、多くのスタートアップで、ラウンド開始から終了までの時間に対する短縮に次ぐ短縮が行われているという。ダス氏は、この状況を説明するために「ほとんどの企業は、投資が実際に行われるはるか前にデューデリジェンスを完了しています」とメールで述べている。つまり「投資を行う時点ではもはやデューデリジェンスを行う必要がない」ということだ。

それって本当に意味があるのだろうか?もしラウンドが先制的なものならば、事前に徹底調査をしなければならない(これはダス氏が後ほどコメントで強調したことだ)。そうでなければ、盲目的に投資したり、動きの速い他の企業に取引を先取りされてしまうことになる。

今週のThe Exchangeでは、国内のベンチャーキャピタル市場についても、シード案件やニュースで話題になるような超レイトステージ投資に焦点を当てつつ掘り下げてみた。アーリーステージのベンチャー投資に関するコメントとして、EYの米国Venture Capital責任者であるJeff Grabow(ジェフ・グラボウ)氏からのコメントが寄せられた。

そのプレシード、シード、ポストシードについてのコメントの中で、私たちの注意を特に引くものがあった。予測に関するものだ。グラボウ氏は次のように語る。

2021年第1四半期のプレシード資金調達は、例年と比較すると好調でした。現在利用可能な資金が豊富で、技術的なソリューションで新市場を開拓できる、投資可能なテーマが数多くあることから、全体的な環境は引き続き堅調に推移すると考えています。このことから新型コロイナウイルス後の環境は、バラ色に描かれています。

これは私たちの社内での予測と同じだ。2021年第1四半期は、少なくとも米国のベンチャーキャピタル活動は非常に活発だったため(近々、海外事情も伝わってくるだろう)、2021年は多くの点で記録的な年になると思われる。大きく減速する傾向もみられないので、記録は更新されることだろう。そしてグラボウ氏もこうして新型コロナウイルスの流行が終了した後のベンチャー環境が、かなり魅力的なものになることを、はっきりと予想している。

ということで、記録は更新されるだろう。問題はその大きさがどれくらいになるのかということだ。

Coinbaseの直接上場に関するその他の情報

終わった話をあれこれいうつもりはないが、Coinbase(コインベース)の直接上場について、いくつか情報を追加しておこう。

消費者向け取引アプリRobinhood(ロビンフッド)の、ライバルであるPublic.com(パブリックコム)が、The Exchangeに対して、Coinbaseの株式に対する小口取引の関心がどれほどのものだったかを教えてくれた。いつもの広報担当者であるMo(モー)氏によれば、米国時間4月14日、Coinbaseは取引数で「公開されている全銘柄の中で最も人気があった」という。そしてさらに特筆すべきは、同じ日に「(投稿数で計測した)ソーシャルアクティビティが前日に比べて70%増加した」ことだ。

消費者トレーディングのブームがいつまで続くかはわからないが、これはかなりすばらしい指標値だ。

また、Similarweb(シミラーウェブ)は、2021年1月のcoinbase.comへのアクセス数が8640万件に達したことなどの、いくつかのデータを紹介している。いやあ、こいつはすごい。また、この月は新規訪問者数が再訪問者数を上回っている。このデータは、Coinbaseが第1四半期に大きな結果を出した理由を説明している。ということで現在の疑問は、こうした強気の動きを維持できるのかどうか、あるいは率直に言って、特に暗号資産の取引に対する消費者の関心が、株式取引のブームよりも長持ちするかどうかという点だ。

先週ポッドキャストなどでも何度か話題に出た、CoinbaseのシリーズDを主導した投資家のTom Loverro(トム・ラベロ)氏は「私たちはまだ暗号資産の第2ラウンドに立ったに過ぎません」と語っている。ということで、これらの話題は何度も何度も繰り返し出てくるだろう。ということでもう1度。

その他のことなど

さて記事の文字数の目標に達することができるように、先週のIPO市場に関するメモをいくつか。

まず、AppLovin(アプラビン)のIPOは計画どおりには進まなかった。モバイルアプリケーションに特化したハイテク企業の同社は、範囲の中央値である1株あたり80ドル(約8702円)という控えめな価格がついた後、最初の2日間の取引で価値が下落した。金曜(米国時間4月16日)終了時点では、1株あたり61ドル(約6636円)になった。

The Exchangeは、AppLovin社のCFOであるHerald Chen(ヘラルド・チェン)氏に、IPO当日にインタビューを行った。チェン氏との会話からは、上場したことで買収をより加速できるのではないかと感じることができた。流動性のある株式を所有しているということは、これまで以上に買収されやすくなったということだ。またS-1ファイリングによれば、AppLovin社は、他の企業を買収し、そのビジネスプロセスを実行して、収益を得ることができると主張している。

もしそれが実現できるなら、公開市場から同社に対する見方は少し厳し過ぎるかもしれない。現在の状況下で、ソフトウェア会社がIPO後に苦労しているのを見るのは少し奇妙なことだ。

また、チェン氏はThe Exchangeに対し、公開に先立つ会社説明会の際にマルチクラスの株式構造(株式に議決権などの差をつけること)についての反発は見られなかったと語っている。マルチクラス株式の悪影響については、同僚のRon Millerと一緒に書いたことがある。チェン氏は、たとえ議決権の異なる複数クラスの株式を保有していても、1人の人間が会社を完全にコントロールすることはできないと述べている。率直に言って、それが問題なのだが。

AppLovinの取引には注目して行くつもりだ(その数字に関する以前の記事はこちら)。

最後に。自動運転トラック会社のTuSimple(トゥーシンプル)が先週上場し、Similarwebが上場を申請した。また、UiPath(ユーアイパス)が価格帯を引き上げるか否かといった、幅広いIPO市場の動向にも注目している。私たちはその点について予測を行っている

そして週の終わりになって、Squarespace(スクエアスペース)がS-1(上場目論見書)を公開した。記事はこちら、続報も予定している。

ではまた。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:The TechCrunch ExchangeAI機械学習Coinbase新規上場資金調達

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

従業員2人の企業から2万人の企業まで柔軟な福利厚生の実現を支援するLevelが約29億円調達

従業員への福利厚生に関するより柔軟な方法を企業に提供することを目指しているスタートアップLevel(レベル)は、Khosla VenturesとLightspeed Venture PartnersがリードしたシリーズAラウンドで2700万ドル(約29億円)を調達した。

既存投資家のFirst Round Capital、HomebrewとともにOperator Collectiveと一流のエンジェル投資家も参加した。本ラウンドでLevelのバリュエーションは「9桁」となったと報じられたが、同社は具体的に明らかにしなかった。

2018年に創業され、ニューヨークに拠点を置くLevelは、雇用者と被雇用者が福利厚生を最大限に活用するのをサポートすべく、フレキシブルなネットワークとリアルタイムの請求を通じて「ゼロから保険を再構築」していると話す。

雇用者は、あらゆる治療の費用を100%カバーするオファーなどのように保険プランをカスタマイズできる。同社はまた、保険請求を4時間で処理することができるとうたう。

「従来の保険会社が請求を処理するのにかかる30〜60日に比べると、かなりのスピードです」と創業者でCEOのPaul Aaron(ポール・アーロン)氏は話した。同氏はSquareの最初の従業員の1人であり、Oscar Healthでネットワークチームを率いた経験がある。そして決済業界におけるいくつかの特許を持つ発案者でもある。

Levelはまず雇用者が保障する歯科治療のプランを2019年夏に立ち上げ、その年の秋にベータ版の顧客に提供を開始した。そして現在は眼科のプランも提供している。同社はIntercom、Udemy、KeepTruckin、Thistleなどを含む企業1万社超を顧客に抱え、顧客企業はLevelのプラットフォームを通じて治療の費用を払ってきた。

「保険はわかりにくく、不平等だと感じることが多いものです。ネットワークによって利用できる医療機関が限定され、請求には数週間かかり、思う以上に手間がかかります」とアーロン氏は話した。「保険での支払いは他の商品の購入と同じくらい簡単であるべきだと思います」。

Levelはフルスタックアプローチを取っていて、自動化された査定からリアルタイムの福利厚生分析までエンド・ツー・エンドのツールを構築している、と同社は話す。

「中小企業が充実した福利厚生を提供するのをサポートする」ことを目的に、同社は新しい保険プロダクトを立ち上げる計画だ。充実した福利厚生は通常、大企業だけが提供できる。Levelはまた、雇用者が毎月決まった額を払った後、使っていない福利厚生のお金を取り戻すのをサポートすることも目指している。究極的には、従業員2人という企業から2万人という企業まで、あらゆるサイズの企業がより良い福利厚生を自社の従業員に提供できるようにする一連のプロダクトを展開できるようになるのが最終目標だ。

Levelは、歯科と眼科の自家保険プロダクトでは企業が従業員により広範なカバーを提供できる一方で、企業は福利厚生予算を20%減らせる、と主張する。

「雇用者は福利厚生にかなりの金を使い、雇用者も被雇用者も十分に恩恵を受けていません」とLightspeed Venture PartnersのJana Messerschmidt(ヤナ・メッサーシュミット)氏は声明で述べた。「あらゆる規模の事業者は、人々が給料をその他のことに使えるようにする革新的な福利厚生で人材を獲得する必要があります。Levelははるかに優れた雇用体験を提供し、払うだけの価値があります」。

一方、 KhoslaのSamir Kaul(サミル・カウル)氏は「Square Cashが個人間の決済のためにしていること」をLevelは保険と福利厚生でできると確信している、と述べた。

投資家のFirst Round Capitalは完全保険からLevelに切り替えることで47%節約できたと主張する。そしてThistleはLevelへの切り替えで41%節約できたと話している

カテゴリー:その他
タグ:Level資金調達福利厚生保険

画像クレジット:Level early team:Vikas Unnava, founder & CEO Paul Aaron, Ashley Koh / Level

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

よりパーソナルな感覚のフランス発ひと味違う新デートアプリ「Feels」

Feels(フィールス)をご紹介しよう。これはデートアプリの仕組みを変えようとしているフランスの新しいスタートアップだ。同社は、写真をスクロールしたり、説明文を読んだりするのは退屈になりがちだと主張する。Feelsは、プロフィール部分を改善して、TikTok(ティックトック)のビデオを見たり、ストーリーを閲覧するような感覚でアプリを操作できるようにしている。

共同創業者でCEOのDaniel Cheaib(ダニエル・チーブ)氏は「この10年、この業界にはほとんどイノベーションがありませんでした」と語る。「デートアプリをアンインストールする人が多い理由は『つまらないから』です。プロフィールがどれも同じように見えて、まるでカタログを眺めているような気分になります」。

ここでチーブ氏がまず念頭に置いているのはTinder(ティンダー)だが、同時にBumble(バンブル)やHappn(ハプン)など、Tinderに似ているけれどTinderとはまったく同じとはいえない他のデートアプリのことも語っている。

Feelsの創業チームは、何がうまくいき、何がうまくいかないかを見つけるために、2年間かけてアプリを繰り返し開発してきた。やっと利用継続指標が想定どおりになったことで、より広く展開することになったのだ。

画像クレジット:Feels

もしデートアプリでユーザーにおもしろいコンテンツを見せようと思ったら、プロフィール部分を見直さなければならない。開発段階で最も苦労したのは、間違いなくこの部分だ。このアプリをインストールしたときに、プロフィールの作成には約15分必要だ。

初期バージョンでは、この初期登録プロセスを終えた新規ユーザーは30%しかいなかった。現行のバージョンでは、新規ユーザーの約75%が登録フローを最後まで終わらせる。

では、Feelsのプロフィール表示は何が違うのだろう?多くの点で、このプロフィールは、ストーリーやTikTokの投稿に似ている。ユーザーは、ビデオの録画、テキストやスタンプの追加、写真の共有、質問への回答などをプロフィールに追加できる。

チーブ氏は「初期登録プロセスが完了すると、他のひとにコンテンツを公開できる一貫したプロフィールができあがります」という。

他のデートアプリと同様に、性自認に関して、女性か男性かに限られることなく、さまざまな選択肢が提供される。ユーザーは、全員のプロフィールを見たいのか、さまざまな条件に基づいて一部の人のプロフィールだけを見たいのかを指定できる。

そうした初期登録プロセスを終わらせたら、他の人たちのプロフィールを見ることができるようになる。繰り返しになるが、Feelsはデートアプリの基本的なインタラクションを変えようとしている。ほとんどのデートアプリでは、左右のスワイプや、親指の上げ下げで選択を行う必要がある。考えてみれば、それは膨大な数の細かい判断を必要とする二者択一の選択だ。

誰かに対して強い思い入れがない場合もあるし、あるいは、単に次のプロフィールに進みたいだけの場合もある。そして、このようにプロフィールを格付けしなければならないことによって、意識的であれ、無意識的であれ、多くのネガティブな感情がもたらされることになる。その結果人を拒絶し続けることになってしまう。

Feelsでは誰かのプロフィールを見ると、画面いっぱいにそのプロフィールが表示される。動画が再生され、そのことでその人が好きなものや、カメラの前にいる人の様子がわかる。コンテンツに反応することもできるし、上にスワイプして先に進むこともできる。ハートボタンやいいね!ボタンはない。

アプリがある程度完成してきたと考えたスタートアップは、110万ユーロ(約1億4000万円)の調達を行った。投資したのはBlaise Matuidi(ブレーズ・マテュディ)氏、Eric Besson(エリック・ベッソン)氏、René Ricol(ルネ・リコル)氏、Ricardo Pereira(リカルド・ペレイラ)氏、Yohan Benalouane(ヨアン・ベナルアン)氏、Nampalys Mendy(ナンパリス・メンディ)氏、Julien Radic(ジュリアン・ラディック)氏、Jean Michel Chami(ジャン・ミシェル・チャミ)氏といった、Atomicoのビジネスエンジェルプログラムに参加している人たちや、その他多くのビジエスエンジェルたちだ。

現在Feelsは、TikTokへの組織的な投稿やテレビ広告をすることによる、新規ユーザーの獲得を計画している。同社は、年内に100万人のユーザーを獲得したいと考えており、当面はフランス国内に重点を置いている。現在のユーザー数は10万人だ。

収益化に関しては、Feelsはより多くの機能を使えるプレミアムサブスクリプションの提供を開始した。その部分については、まだ繰り返し試行している途中だ。

Feelsは、競合が多く競争の激しい業界の中で、まだ始まったばかりだ。他社とは異なり、Feelsはユーザー獲得や有料化に取り組む前に、自社製品に多額の投資を行ってきた。それは野心的な戦略だが、真の意味で他とは違うデートアプリになる可能性を秘めている。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Feelsデートアプリフランス資金調達
画像クレジット:Feels

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(文:Romain Dillet、翻訳:sako)

英ネットスーパーOcadoが自動走行システム開発Oxboticaに約15億円投資、他社配達事業展開支援を目指す

英国のネットスーパーOcado(オカド)は、他のグローサリー企業がオンライン注文と配達の事業を展開するのを手伝おうと、自社のテクノロジーの再販に向けて順調に進めている。同社は現地時間4月16日、事業成長において次の章になると確信しているものに投資する。自動走行システムを開発している英国のスタートアップOxbotica(オックスボティカ)の1000万ポンド(約15億円)分の株式を取得する

Ocadoはこの株式取得について、車両そのもので、そして梱包倉庫の内外からグローサリー注文を家庭に届けるラストマイルの車両に至るまでのオペレーション全般で使えるAI駆動の自動走行システムを開発するための戦略的投資ととらえている。今回の取引による初のプロダクトが、構造がはっきりしていない道ではなく倉庫のような閉環境で、おそらく2年以内に使えるようになると予想している、と同社は話す。

「1つのユースケースの取り組みに自らを縛ろうとはしていません」とOcadoの高度テクノロジー最高責任者Alex Harvey(アレックス・ハービー)氏はインタビューで述べた。しかし自動システムをあらゆるところで展開するために、さまざまな要素の中でも「規制対応する必要があるエリアがあることに気づきました」とハービー氏は付け加えた。株式取得の取引は非独占で、両社とも他のパートナーと協業できることを互いに確認した。

投資は、2021年1月に発表されたOxboticaのシリーズBの延長として実施される。石油・ガス大手bpの投資部門bpベンチャーズがリードし、BGF、安全装備メーカーHalma、,年金基金HostPlus、IP Group、Tencent、Venture Science、Doxa Partnersのアドバイスを受けた複数のファンドなどが参加したシリーズBの総規模は6000万ドル(約65億円)超となった。Oxboticaはバリュエーションを公開しなかったが、同社の共同創業者でCTOのPaul Newman(ポール・ニューマン)氏はインタビューの中で、最新の投資によりバリュエーションがアップしたことを認めた。

関連記事:自動運転車用ソフトウェアを産業アプリケーションへ展開するためにOxboticaが48.3億円を調達

今回のニュースのタイミングは非常に興味深い。米国のWalmart(ウォルマート)が、自動走行テック企業Cruise(クルーズ)の27億5000万ドル(約2991億円)という巨額ラウンドの一環として株式を取得したというニュースがあった翌日のことだ(実際24時間も経っていない)。

2021年2月までWalmartは、Ocadoの英国における大きな競合相手の1社であるASDAを所有していた。そしてOcadoは今週から運用が始まるKrogerのオンライングローサリー事業をサポートする取引で米国進出を果たした。ゆえに、この2社が繰り広げる競争は熾烈なものになりつつある。

関連記事:米スーパーKrogerが初の大規模ロボット化フルフィルメントセンターをオハイオに開設

一般的に、2020年オンライングローサリーと配達サービスは大きく成長した。オンラインサービスのみを提供している先駆け的な存在のOcado、英国のTesco(実在店舗とオンラインネットワークを持つ)、米国のInstacartは記録的な需要を目の当たりにしたが、資金豊富でチャンスをつかむのに熱心、そして異なるアプローチ(1時間以内の配達、少量販売、特定のプロダクトなど)を持ち込む数多くの新規参入者との競争にも直面した。

Ocadoのホーム英国へは、他国のビッグネーム企業も進出を狙っている。そうした企業にはOda(元Kolonial)、チェコのRohlik(2021年3月に約250億円を調達した)、イタリアのEverli(以前はSupermercato24という社名で、約108億円を調達した)、オランダのPicnic(このところ資金調達を発表していないが、海外展開の野心を公にしたことを踏まえると、時間の問題のようだ)などがある。Ocadoもグローバル展開の野心を追求するために巨額を調達した。そしてそれは数十もの即配の小規模グローサリー配達事業者が出てくる前のことだった。

関連記事:地元スーパーと連携するヨーロッパの買い物代行サービスEverliがシリーズCで約110億円調達

そうした小規模事業者の多くにとって2020年は当たり年だった。少なからずそれはパンデミックのおかげだ。パンデミックでは多くの人が家にこもり、新型コロナウイルスに感染したりウイルスを広めたりしそうな場所を避けるようになった。

しかしいま、人々が「ノーマル」な暮らしに戻るとき、そうしたオンライングローサリーマーケットが将来どのようなものになるのかというのは大きな疑問だ。

先にTechCrunchが指摘したように、Ocadoはすでに需要が縮小する見通しを立てたが、それでもパンデミック前より需要は大きい。実際、ニューノーマルではおそらく競争がさらに激化するだろう。

それは、Ocadoなどの企業がさらに多くの資金を次世代のサービスとなりそうなもの、つまり効率的で純粋にテクノロジーで動くものへの取り組みに注ぐ理由の1つかもしれない。

コストを節約するために、まだほとんどテストされていない非常に高価な自動走行テックに大金を支払う理論的根拠は、長期的な視点に基づいている。ロジスティックはグローサリー配達オペレーションのコストの10%ほどを占める。しかし需要のピーク時、あるいは定期サービスが崩壊したとき、この数字はさらに大きくなる。

筆者が予想するに、新規事業を推進するための配達料無料サービスやグローサリーの割引など、費用を助成しているサービスが現在あちこちで展開されている(マーケットの競争が激しくなっている結果だ)ために、ロジスティックはさらに大きなコストとなっている。

そのため、この業界の大手が効果は数週間ではなく数年内に出てくるということであっても、そうしたコストを抑制し、オペレーションを迅速化するためにテクノロジー面での強みを生かす方法に目を向けるのは驚きではない。もちろん、投資家はそれが軌道に乗らないということでなければ目にするだろう。

Oxboticaとのコラボレーションに加えて、Ocadoは自動走行車両の能力を発展させながら、提携にさらに投資することを視野に入れていると話した。今回は初のOxboticaへの投資だが、他の多くのスタートアップにも投資し、次のステージのテクノロジーにともに取り組んだ。ここには、間もなく導入される物をつかむためのロボットアームを構築する研究、最近のロボット企業2社(KindredとHaddington)の2億6200万ドル(約285億円)での買収、ロボットスタートアップKarakuriMyrmexへの投資などが含まれる。

特筆すべきは、OxboticaとOcadoが互いを知らないわけではないということだ。両社は2017年にデリバリー試験事業で協業を始めた。デリバリーサービスがどのようなものか、以下の動画で確認できる。

「OxboticaとOcadoにとって、これは自動走行の未来に向けたビジョンを共有しながら提携を強化するすばらしい機会です」とニューマン氏は声明で述べた。「両社の最先端の知識とリソースを組み合わせることで、我々のユニバーサルな自動化ビジョンを暮らしにもたらし、引き続き世界で最も複雑な自動化の問題を解決することを願っています」。

しかし自動走行テクノロジーはおそろしく複雑で、規制や安全面でのハードルがあることから、一連のオペレーションから人をほぼ排除する完全商業システムからはまだ程遠い。

「規制と複雑さのため、Ocadoは都市部、あるいはCFCビルやCFCヤード内のようなアクセスが制限されたエリアを低速で走行する車両の開発は、消費者の家庭への完全自動走行デリバリーよりもずっと早く現実のものとなると予想しています」とOcadoは今回の取引についての声明文に書いている。「しかしながら、自動走行車両開発のすべての要素はコラボレーションのスコープに含まれます。Ocadoは2年以内に自動走行車両の初期ユースケースの初プロトタイプを披露することを想定しています」。

ニューマン氏は、道での自動走行はまだ数年は先のことである一方で、かつてほどにムーンショットコンセプトではなく、Oxboticaがすでにそれに向けて取り組んでいると指摘した。「少しずつ月に近づくことができます」と同氏は述べた。

カテゴリー:モビリティ
タグ:OxboticaOcadoイギリス自動運転資金調達

画像クレジット:Ocado

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

パソコンやスマホ、スクーターなどの電子機器サブスク事業成長に向けて独Groverが約79億円調達

商品を自分で所有するのではなく、一時的に利用するために少額の支払いをするという循環型経済のコンセプトを取り入れたスタートアップ企業Grover(グローバー)が、ヨーロッパにおける事業、さらにその先を見据えた規模拡大のために6000万ユーロ(約79億円)の資金調達を行った。同社はベルリンを拠点とし、パソコンやスマートフォン、ゲーム機やスクーターなどの電子機器を一定の料金で貸し出すサブスクリプションモデルを展開している。

調達の内訳は、株式で4500万ユーロ(約59億円)、ベンチャー融資で1500万ユーロ(約20億円)である。

Groverの登録者数は2020年9月時点で10万人。現在は15万人で、2021年中に3倍の45万人の登録を目指すとしている。市場拡大を目的に資金を活用し、ドイツやオーストリア、オランダ(すでに事業は稼働中)における事業成長や、スペインや米国におけるローンチも予定されていて、さらに健康やフィットネスデバイス、消費者向けロボットやスマート家電などの製品も新たに取り扱っていく。

また、そのレンタルサービスにおけるイノベーションに投資していく計画もある。2020年のコロナ禍によって多くの人が金銭面の余裕がなくなり、この先どのような機器が必要になるかなど、将来のことを計画することが難しくなったことで、多くの人が消費を少なくして自身や他の人が持つものを有効活用することに関心を持ち始めた。

「消費者は製品購入時に、使いやすさや柔軟性、長く使えるかどうか、という点を評価するようになりました。テクノロジーが実現する生産性や娯楽、大切な人とつながる機能などを考える際に特に顕著です」とGroverのCEOであるMichael Cassau(マイケル・カサウ)は話す。「新たな調達資金により、私たちは世界中のより多くの人々にこうした可能性を届けられるようになりました。これにより弊社にご登録頂いているみなさまに比類ない顧客体験を提供し、人々や事業がテクノロジーを使ってその恩恵を享受できるさらに革新的な方法を提供できるようになります。投資家のみなさまからの心強いサポートによって、当社のサービスがみなさまにお届けする大切な価値のみならず、Groverの大いなる成長可能性も確かなものとなりました。私たちはまだ、1兆ユーロ(約130兆円)のグローバル市場の入り口にいるに過ぎません」。

JMS Capital-Everglen(JMSキャピタルエバーグレン)はシリーズBの株式ラウンドを主導し、Viola Fintech(ビオラフィンテック)やAssurant Growth(アシュアレントグロース)、既存の投資元であるcoparion(コパリオン)、Augmentum Fintech(アグメンタルフィンテック)、Circularity Capital(サキュラリティキャピタル)、Seedcamp(シードキャンプ)、Samsung Next(サムスンネクスト)といった企業が参加、また名前が明かされていない企業創業者やエンジェル投資家もヨーロッパや北米などから参加。Kreos Capital(クレオスキャピタル)が融資を行った。

Samsungは戦略的投資家だ。Goverとともに2020年12月にサブスクリプションサービスをローンチしているが、同社のS21シリーズが選択可能なモデルとなっており、それ以外にもTab S7やGalaxy Aモデル、またプランによってはウェアラブルデバイスやスマートホームデバイス、テレビ、ノートブックなども利用できる。ドイツで開始されたSamsung Powered by Groverというサービスは、今回の投資の一部を利用して他の市場に展開していく計画もある。

この資金は、Groverが2.5倍(150%)の成長をした年の翌年に得られる。最も直近の年次レポートによれば2020年の9月の時点で10万人ものアクティブユーザーが存在し、同時期に1万8000台のスマートフォン、6,000ものAirPods、1300もの電子スクーターをレンタルしているとされている。また、最も直近の事業年度で、純収入は約4300万ドル(約47億円)、経常収益は年間7100万ドル(約77億円)で、EBITDAベースで黒字に転じている。

パンデミックの直前に250万ユーロ(約3億円)の融資を受け、2018年に4400万ドル(約48億円)をシリーズA調達、2019年には4800万ドル(約52億円)を株式と負債を合わせたプレシリーズBで調達した。評価額は開示されていない。

同社のサービスは、サブスクリプション経済モデルを中心とするサービスを形成するスタートアップ企業の広いカテゴリーに属する。サブスクリプション経済モデルは、クルマなどの資本を多く必要とするカテゴリーを扱うが、より手頃でインターネットで完結する音楽や動画配信といった消費可能商品も対象としている。

実際、物理的なDVDを届け、見終わったら次の映画を観るために返却してもらうというサブスクリプションモデルから始まったNetflixの歴史をなぞらえ、Groverは「ガジェットのNetflix」と呼ばれている。

クルマや映画と同じく、サブスクリプションでガジェットを所有することについては議論の余地がある。消費者は、手にするものが高額になればなるほど、購買余力に対して多くの割合を占めるようになればなるほど、自分のものとして所有するためにお金を出すことについて消極的になると考えられる。ガジェットの価値は消費者が購入した直後から下がっていくのだから尚更だ。

一方、現在では多くの消費者がサブスクリプションに登録し、普段利用しているサービスに電子的に支払いを行っている。Amazon PrimeやSpotifyと同様に、Groverを含め、物理的なものを扱うその他のサブスクリプションは、簡単にサービスを受けられるというモデルを物理的な商品に適用しようとしている。

小売業者にとっては、消費者に製品を提供する別の選択肢が生まれることになる。直接購入だけでなく、クレジットや後払いなどのオプションを提供することによって契約を成立させることが可能となる。ショッピングカートに入れたまま放置されたり、オンラインの競合他社に競り負けたりすることも現実ではよく見られるので、少しでも収益を上げることができればそれは勝利である。そして、商品のメンテナンスをGroverのようなサードパーティに任せ、ガジェットを実際に所有したいとする顧客に対しての割増金を設定したり、ビジネスの安全性を充分に高めたりすることができれば、直接販売よりもずっと利益率が高くなる可能性もある。

中古商品を使うことに懸念する人もいるが、状況は変わりつつある。消費者が自分の持っているものを再販売することを手助けすることで大きな成長を遂げた企業が数多く存在する。このトレンドの影には、購入者が支出を抑えたいと考える(そして販売者は多少なりとも支払いを受けることができる)ようになったことがあるが、すでに経済の中で用いられたものを使うことで、環境負荷を減らしたいと考える人が増えたことも関連している。ヨーロッパだけでも、4月第1週にはブライトンに拠点を置くMPBが約7000万ドル(約76億円)を中古カメラ設備マーケットプレイスのために調達した。その他最近の取引としては、中古マーケットプレイスであるスペインのWallapop(ワラポップ)が1億9100万ドル(約208億円)を調達し、衣料系に特化したVestiaire Collective(バスティエールコレクティブ)が2億1600万ドル(約235億円)を調達している

ここで興味深いのは、時流なのか、Groverがガジェットのサブスクリプションモデルに風穴を開けたからなのか、同社はこれまで紆余曲折のあった分野で躍進を遂げているように見えることだ。

米国のLumoid(ルモイド)も、ガジェットのレンタルに注目しており、大手小売業のBest Buy(ベストバイ)との契約を結び注目されながらも、サービスを行うのに必要な資金の調達に失敗し、最終的には閉業した。この市場に挑戦しているのはGroverだけではない。たとえばTryatec(トライアテック)Wonder(ワンダー)なども、スタートアップからの技術の挑戦に注目しているようである。

大きな問題は、Groverがそのレンタル、サブスクリプションモデルの市場をこれから見つけられるかどうかではなく、サプライチェーン管理、商品の発送と受け取り、必要に応じた調整や修復、それらにおける強力な顧客サービスを維持できるかどうかの経済性を解消できているかということだ。これまでに何度も見られていたように、あるレベルにおいて良いアイデアと考えられても、実際に実行するとなると非常に難しいということは珍しくない。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Groverサブスクリプションドイツベルリン資金調達レンタル循環型経済

画像クレジット:Grover

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

ブロードバンドを欠く中南米で遠隔医療を実現するコロンビアの「1Doc3」が約3.3億円調達

パンデミックの影響で米国ではビデオ診察による遠隔医療がほぼ当たり前になっているが、ブロードバンドが普及していないラテンアメリカでは、1Doc3がテキストとチャットを使って医療サービスを提供している。現地時間4月16日、コロンビアを拠点とする同社は、MatterScale VenturesとKayyak Venturesが主導する300万ドル(約3億3000万円)のプレシリーズAラウンドを発表した。

1Doc3の共同創業者兼CEOであるJavier Cardona(ハビエル・カルドナ)氏はこう語る。「私はこのインタビューのためにいいMacBookを使っていますが、中南米のほとんどの人はこうはいきません」。1Doc3という社名は、スペイン語の1、2、3の発音をもじったものだ。

体調が悪いときにかかりつけ医と連絡を取るのは、今日ますます難しくなっている。1Doc3はAIを搭載した遠隔医療プラットフォームを提供し、患者を医師に取り次ぐ前に症状評価、トリアージ、事前診断を行うことで、ラテンアメリカにおけるこの問題の解決を目指している。

「当社が受ける相談の97%は、数分で医師につながります」とカルドナ氏。

患者は医師の診察を受けた後、1Doc3を通じて自宅に処方箋を届けてもらうこともできる。同スタートアップは、この分野の他の企業と同様に、患者が家から出ることなく迅速に治療を受けられるよう、ループを閉じようとしている。

コロンビアに加えてすでにメキシコでも事業を展開している同社は、今回の資金調達の一部を同地域でのさらなる事業拡大と、これまでなかったマーケティング・営業チームの構築に充てる予定だ。

1Doc3はコンシューマーに直接リーチする他、企業とのパートナーシップを構築し、それらの企業が従業員の医療費を同社を通じて支払うことで顧客を獲得している。カルドナ氏の目標の1つは、単価を下げて、中小企業でも1Doc3を利用できるようにすることだ。現在は企業の場合、従業員1人あたり月額3〜4ドル(約330〜440円)を請求している。

「大企業にとってお金は問題ではありませんが、この地域は中小企業により成り立っています」とカルドナ氏。

2013年に設立され、2018年にはTechCrunchの「Latin American Battlefield」でファイナリストに選ばれた同社は、2020年に急成長を遂げ、2020年2月から12月までの間に月に2500件だった相談件数が3万5000件に増え、2020年はキャッシュフローが黒字になった。2021年3月には、MRR(月間経常収益)が12万ドル(約1300万円)になっている。

多くのスタートアップ企業がそうであるように、1Doc3を設立したきっかけは、創業者が直面した個人的な経験だった。

「タンザニアに滞在していたときに治療が必要になったのですが、タンザニアの医師に行く気はありませんでしたし、米国も含めオンラインで医師と連絡を取ることができず、それからこの問題を解決することにとらわれていました」と、当時、中東・アフリカで活動していたカルドナ氏は語った。

今回のラウンドにより、1Doc3の調達額は合計500万ドル(約5億4000万円)に達した。このラウンドに参加した他の投資家には、Swanhill Capital、Simma Capital、そして既存投資家であるThe Venture City、EWA capital(旧Mountain Nazca Colombia)、Startup Healthが含まれる。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:1Doc3コロンビア遠隔医療資金調達ラテンアメリカ

画像クレジット:Luis Alvarez / Getty Images

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(文:Marcella McCarthy、翻訳:Aya Nakazato)

自動操縦フライトスタートアップのXwingが約43.5億円の資金を調達

Xwingのデモ飛行中、安全パイロットは操縦桿から手を離している(画像クレジット:Xwing)

Xwing(エックスウイング)は、商用貨物輸送機によるゲート・ツー・ゲートの自動操縦デモンストレーション飛行を初めて成功させてから2カ月後、もう1つの成功を収めた。同社は米国時間4月15日、4000万ドル(約43億5000万円)の資金を調達したと発表した。

同社はこの資金を使って、エンジニアリングチームを3倍に増やすだけでなく、最終的には完全に無人の商用貨物輸送機を定期的に飛行させることも視野に入れ、事業の拡大を目指している。

Xwingは、広く使われているCessna(セスナ)の「Grand Caravan 208B(グランドキャラバン208B)」などの航空機を、自動操縦で飛ばすための技術を開発してきた。しかし、それにはまず「知覚の問題、計画の問題、制御の問題」といういくつかの問題を解決しなければならなかったと、創業者のMarc Piette(マーク・ピエット)氏は説明する。これらの問題を解決するために、同社は一連のソリューションを考え出した。LiDAR、レーダー、カメラを飛行機に搭載し、舵やブレーキなどを制御するサーボモーターに改造を加え、これらすべてを適切に連携させることで、飛行機が空間内で自分の位置を理解し、自律的に飛行することを可能にした。

同社のAutoFlight(オートフライト)システムは、すでに200回近くのミッションをこなしているが、これらのフライトでは、安全のために人間のパイロットも同乗している。また、コントロールセンターには地上管制官が常駐し、自律飛行する航空機と人間の航空管制官との間を取り持つ役割を担う。

関連記事:無人飛行ソフトのXwingは短距離の地域型航空貨物輸送を目指す

「私たちは、自然言語処理を行ってコンピューターが管制官に応答するというような、(管制官との通信を)自動化することは想定していません」と、ピエット氏はいう。「安全性が最重要視されるアプリケーションでは、そのような方法は有用ではないと考えています。私たちが取っている方法は、航空機に代わって航空管制官と会話できる地上オペレーターを管制室に配置することです。これなら航空管制官にとってなんの障害もありません。管制官にしてみれば、航空機に乗っているパイロットと話すのと変わりませんから」。

画像クレジット:Xwing

自動操縦飛行に関しては、Xwingは米連邦航空局から研究開発用の実験的耐空証明書を取得しており、2020年8月にはOPA(optionally piloted aircraft、操縦士による操縦をオプションで可能とする航空機)用の特別飛行許可も取得している。

同社では、最終的には人間のパイロットを乗せずに飛行することも検討しているが、それは完全な安全の冗長性が確保されてからでなければならないと、ピエット氏は付け加えた。そのためには、すべてのセンサーやコンピューターシステムの冗長性を確保する必要がある。飛行機に乗る私たちにとって幸いなことに、商業航空の安全レベルは非常に高い。それは、航空スタートアップに求められる耐空性基準が高いことを意味する。XwingがターゲットとしているようなクラスIIIの小型航空機は、致命的な故障のリスクが1億飛行時間あたり1回以下であることを証明しなければならない。

Xwingの活動は、投資家からの注目も集めている。今回の資金調達ラウンドは、Blackhorn Ventures(ブラックホーン・ベンチャーズ)が主導し、ACME Capital(アクム・キャピタル)、Loup Ventures(ループ・ベンチャーズ)、R7 Partners(アールセブン・パートナーズ)、Eniac Ventures(エニアック・ベンチャーズ)、Alven Capital(アルブン・キャピタル)、Array Ventures(アレイ・ベンチャーズ)が参加。今回のラウンドを含め、同社はこれまでに総額5500万ドル(約60億円)の資金を調達している。

自動操縦飛行はXwingの事業活動の一部に過ぎない。同社は2020年12月1日に締結された大手物流会社との契約に基づき、有人による商業貨物輸送機の運航も行っている。

「私たちは、事実上の航空会社を設立したのです」と、ピエット氏はいう。Xwingは航空機にセンサーを取り付けてデータを収集することで、貴重な飛行時間を訓練アルゴリズムに反映させたり、パイロットが管制官と交信する頻度や航空機が受ける指示の種類などの有用なデータを収集している。

Xwingは事業の拡大と並行して、今後12カ月の間に従業員の大幅増員も予定している。技術面では、米連邦航空局から実験的な許可と免除を受け、人間の安全パイロットを同乗させた自動操縦による商業貨物便の運行を目指している。このマイルストーンも、今後12カ月以内に達成できるだろうと、ピエット氏は述べている。その後は人間のパイロットを外すことも検討しているが、その場合も空域における移動の制限を完全になくすためには、システムが認証を受ける必要がある。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Xwing自動運転資金調達FAA

画像クレジット:Xwing

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

営業のスケジューリングを合理化してインバウンドの成約率を高めるChili Piperが35.9億円調達

Chili Piperの創業者ニコラス・ヴァンデンベルグ氏とアリーナ・ヴァンデンベルグ氏

営業チームがアポイントのスケジューリングを行うための高度なSaaSプラットフォームChili Piperが、Tiger GlobalがリードするシリーズBで3300万ドル(約35億9000万円)を調達した。これまでの投資家であるBase10 PartnersとGradient Ventures(GoogleのAI専門のVC)も参加している。これで同社の総調達額は5400万ドル(約58億8000万円)になる。今回得られた資金は製品開発の加速に使われる。この前の1800万ドル(約19億6000万円)のシリーズAは、9カ月前にBase10とGoogleのGradient Venturesがリードした。

競合するCalendlyは2年半前に創業し、最近30億ドル(約3264億5000万円)の評価額を達成した

関連記事:悪夢のようなビデオ会議の日程調整を評価額約3165億円のスタートアップCalendlyに変えた方法

Chili Piperは2016年にローンチした。同社のB2B営業チームのためのソフトウェアは、リード(新規見込み客)にミーティングに来てもらう。営業チームはこのソフトウェアを使ってデモを予約したり、インバウンドのコンバージョンレートを上げたり、手作業によるリードルーティングを避けたり、ミーティング関連の重要なプロセスを合理化したりできる。現在、IntuitやTwilio、Forrester、Spotify、GongなどがChili Piperを使っている。

Chili Piperには、企業がスケジュールや日程配分をするためのさまざまなツールがあるが、メインのポイントはそれをインバウンドの営業開発部門が利用するところにある。インバウンドの営業リードを評価判断するのは彼らだ。それは、顧客がウェブサイトを訪ねて営業に折り返しの連絡を求めた場合の、連絡のスケジューリングで特に便利だ。

Chili PiperのCEOで共同創業者のNicolas Vandenberghe(ニコラス・ヴァンデンベルグ)氏は「最初は家を売って会社を作り、自分たちの手で大きくしようと決めました。だから、2019年までは自己資金オンリーです。Tigerが下したその年末の評価額は、私達の予測とほぼ合致したので、これならもっとはやく加速できると判断して、投資の打診に応じました」と述べている。

CPOで共同創業者のAlina Vandenberghe(アリーナ・ヴァンデンベルグ)氏は「とてもたくさんの企業がミーティングのスケジューリングやカレンダーの最適化にChili PiperのInstant Bookerを使っていることを誇りに思います」という。

夫婦で立ち上げた同社は当初から完全にリモートで、現在は93名の従業員が21カ国81都市にいる。パンデミックのずっと前からだ。

Tiger GlobalのパートナーであるJohn Curtius(ジョン・クルティウス)氏は「ニコラスとアリーナに会ったときは、彼らのプロダクトのビジョンと、顧客の幸福へのフォーカスに感激した」と述べている。

Base10 PartnersのマネージングパートナーであるTJ Nahigian(T・J・ナヒジアン)氏は、次のように付け加えた。「私達が最初にChili Piperに投資したのは、顧客がインバウンドリードとの商談にもっと活気を持たせる方法を求めていることを知っていたからです。2020年1年間の進歩は驚異的です。企業の多くがリモート化してから、同社にとって2020年は大きな飛躍の年でした」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Chili Piper資金調達営業

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hiroshi Iwatani)

データ品質の監視を自動化するBigeye(旧Toro)がシリーズAで約18.5億円調達

企業が機械学習モデルを作る際、オペレーションチームはモデルの作成に使うデータの品質に問題がないことを確認しなくてはならない。このプロセスには往々にして時間がかかる。Bigeye(旧社名Toro)はデータ品質の監視を自動化するアーリーステージのスタートアップだ。

米国時間4月15日、同社はSequoia Capitalが主導するシリーズAで1700万ドル(約18億5000万円)を調達したと発表した。このラウンドには以前に投資していたCostanoa Venturesも参加した。Bigeyeは2020年5月にシードラウンドで400万ドル(約4億3500万円)を調達しており、今回のラウンドでこれまでの調達金額の合計は2100万ドル(約22億8500万円)となった。

2020年5月、BigeyeのCEOで共同創業者のKyle Kirwan(カイル・カーワン)氏は、シードラウンドでは人材の雇用と自動化機能の追加に集中すると述べていた。現在、同社のスタッフは11人となり、同氏はシードラウンドのゴールは達成したとしている。

カーワン氏は「我々の製品でデータ品質のメトリクスとして何を収集する必要があるかを自動で示せるようになったため、SnowflakeやAmazon Redshiftなどのテーブルを指定すれば、そのテーブルを分析しデータ品質を監視するために収集するメトリクスを提案できます。また、アラートも自動化しました」と説明する。

Bigeyeはモデルに入力するデータオペレーションの問題に特化しているとカーワン氏はいう。例えばテーブルが想定通りに更新されていない、行が足りない、重複するエントリーがあるといった問題だ。同社の製品は、こうした問題に対するアラートを自動化し、トレーニングや本番環境で使えるデータを準備するプロセスをスピードアップする。

Sequoiaのパートナーで今回の投資をリードしたBogomil Balkansky(ボゴミル・バルカンスキー)氏は、Bigeyeは機械学習のパイプラインにおける重要な部分に取り組んでいると見ている。同氏は発表の中で「Uberでデータ品質チームを率いてきたカイルとエゴール【訳者注:CTOのEgor Gryaznov(エゴール・グリャズノフ)氏】は、すべての企業にデータ品質のインサイトを常に提供するという明確なビジョンを持っています」。と述べた。

創業者チームがBigeyeを始めるにあたり、多様性のあるチームにすることを重要なゴールとして掲げ、このことを強く意識しているとカーワン氏は話す。

同氏は「ある1つの型に合う人を大勢雇うのは簡単なことです。自分たちのネットワークの中で人を見つけるのは簡単ですが、さまざまなバックグラウンド、さまざまな視点、さまざまなタイプの人物を雇用していく必要があり、(このことをよく理解して)細心の注意を払って努力したいと思っています。これが最強のチームづくりにつながるからです」と述べた。

BigeyeにはオンプレミスとSaasのソリューションがあり、Instacart、Crux Informatics、Lambda Schoolなどに有料で提供しているが、一般に公開されるのは2021年後半の予定だ。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Bigeye機械学習資金調達

画像クレジット:GelatoPlus / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Kaori Koyama)

今週のロボットニュースまとめ:ピザとピックアップと泳ぐヘビ、医療と食品に大きな資金提供

ロボット関連のおもしろい記事が少ない週もある。だが今週は明らかに豊作だった。実際、この7日間、ロボット関連の情報の洪水についていくのが少し大変だった。サンプル数は少ないものの、このカテゴリーへの投資意欲がまだ白熱していると雰囲気を伝えるものとして、受け取っておきたいと思う。

今週は、投資活動がロボットの全領域に及んだ週となった。外科手術、フルフィルメント、農業関連の企業が並んで出資を受け、食料品やフードデリバリーの分野では重要なパートナーシップが結ばれている。それに加えて、水中ヘビロボットもいる!興味深いものだらけだ。

画像クレジット:Memic

まずは、このMemic(メミック)の大型だったシリーズDの紹介から始めよう。Memicは、医療用ロボット企業にとって大きな一歩となるFDA(米国食品医薬品局)の認可を取得した後、Peregrine VenturesとCerosが主導する9600万ドル(約104億5000万円)の資金調達を発表した。今回のラウンドは、同社のこれまでの資金調達額である3180万ドル(約34億6000万円)の3倍以上となる。そのHominis(ホミニス)プラットフォームは現在、経膣処置用にデザインされているが、同社は他の手術にも拡大することを検討している。

関連記事:手術支援ロボットを手がけるMemicが約105億円の資金を調達

それよりもずっと新しい企業のはるかに小規模なラウンドとして、Moray Media(モレイ・メディア)が、2021年初めに発表したものよりも300万ドル(約3億3000万円)多い570万ドル(約6億2000万円)の資金調達を発表した。同社が提供するCoral(コーラル)システムは、経カテーテルによる僧帽弁修復用にデザインされている。類似の多くのシステムと同様に、最終的な目標は、さまざまなスキルをもつ施術者による手術の有効性を高めることだ。

共同創業者でCEOのMark Barrish(マーク・バリッシュ)氏はこう語る。

私たちのCoralプラットフォームは、あらゆるスキルレベルのインターベンショニスト(低侵襲治療医)が、単に処置を行えるだけでなく、コストパフォーマンス高い方法で行えるようにデザインされています。これによって現在治療を受けられない何百万人もの患者の方が、必要な救命処置を受けられるようにすることを目標としているのです。

画像クレジット:Pickle

倉庫、フルフィルメントの分野では、MITのスタートアップPickle(ピックル)が今週ステルス状態から脱して、575万ドル(約6億2600万円)を調達したことをTechCrunchに伝えてきた。ダジャレ系の名前はさておき(他に「Dill(ディル)」というロボットもある)、同社の技術は1時間に1600個の箱をピックアップすることが可能で、同社はそれを「競合他社の2倍のスピード」だと主張している。

関連記事:荷降ろしロボットを手がけるMITのスピンオフPickleが約6200万円の資金を調達

シードラウンドであることからわかるように、まだほんの初期段階だ。しかし、同社にしてみれば、すべてがあっという間にまとまってきたようだ。6月にはピッキングシステムの予約受付を開始し、2022年初頭での出荷を予定している。

ピッキングシステムといえば、RightHand Robotics(ライトハンド・ロボティクス)が同社にとって第3世代となるロボットを発表した。この自律型システムは、従来のシステムよりも高速で、より幅広い対象をピックアップできるように設計されている。前者の高速動作は確かにハードルが高い。動作スピードは、以前から同社の特徴の1つだったが、今回の高速化は、部分的には、6倍の速度でデータを処理できる高速なGPUのおかげでもある。

画像クレジット:Nuro

サービスパートナーシップを通じて、ロボットがより多くの人々に関係できることに関する、今週の注目すべき2つの記事を紹介しよう。米国時間4月12日、ピザ大手のDomino’s(ドミノ)は、Nuro(ニューロ)との提携による、ロボットデリバリーの展開を発表した。ヒューストン在住の顧客は、同社のロボット「R2」によるピザの配達を受けることができる。ウッドランドハイツ店へピザを注文する際には、実際に「ボット」をリクエストすることができる。

関連記事:ドミノ・ピザがヒューストンで無人のピザ配達を開始、自律配達車両スタートアップNuroと提携

画像クレジット :Kroger

一方、スーパーマーケットチェーンのKroger(クローガー)は、Ocado(オカド)との契約がようやく締結され、シンシナティ郊外に巨大な倉庫を開設した。同社によると、37万5000平方フィート(約3万5000平方メートル)のスペースに、1000台のロボットと400人の人間の労働者を採用する予定だ。この倉庫は、同地域の約20の実店舗にサービスを提供する。

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買収の話題としては、インドア農業を手がけるAppHarvest(アップハーベスト)ががRoot AI(ルートAI)を買収する意向を表明した。AppHarvestは6000万ドル(約65億3000万円)で、ボストンを拠点とするロボット企業を買収する、その目的はRoot AIの持つ作物収穫技術中のデータ収集機能を手に入れることだ。

関連記事:屋内農業のAppHarvestが農業ロボット企業Root AIを買収

AppHarvestの創業者でCEOのJonathan Webb(ジョナサン・ウェブ)氏は「異常気象、干ばつ、火災、動物による汚染など、食糧システムを不安定にする要因が増えているために、これまでの農業は崩壊しています。インドア農業は、そのような課題の多くを解決し、集められたデータは、作物の品質と収穫量の予測と管理に役立つ、より多くの洞察を大量に提供することができるのです」。

シアトルに本社を置くCarbon Robotics(カーボン・ロボティクス)は、今週、巨大な除草ロボットを発表した。同社のAutonomous Weeder(自動除草機)は、コンピュータビジョンとレーザーを使って、1時間に約10万本の雑草を取り除く。これは間違いなく「地味」な話題だが、除草剤を使わずに雑草を取り除きたいと考えている農家のにはうれしい話だろう。

研究の世界に目を向けると、CMUが長年使用してきたヘビ型ロボットに、またまた楽しい新たな用途を提案してきた。私がキャンパスを訪れるたびに、何か新しいものが作られているようだが、このプロジェクトの最新式水泳能力を実際に目にすることができなかったのは、少し残念だ。研究チームは、この技術を潜水艦や船の底のような、手の届きにくい水中での表面検査に応用することを考えている。

関連記事:カーネギーメロン大学のヘビ型ロボが泳ぎをマスター

カテゴリー:ロボティクス
タグ:ロボット資金調達

画像クレジット:CMU

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(文:Brian Heater、翻訳:sako)

モバイルバッテリーシェアリング「ChargeSPOT」を手がけるINFORICHが23億円調達

モバイルバッテリーシェアリング「ChargeSPOT」を手がけるINFORICHが23億円調達

モバイルバッテリーシェアリング「ChargeSPOT」(チャージスポット)を手がけるINFORICHは4月16日、23億円の資金調達を発表した。引受先は、南都銀行の投資専門子会社南都キャピタルパートナーズと、ベンチャーラボインベストメント運営のナントCVC2号投資事業有限責任組合、ひろぎんホールディングスの投資専門子会社ひろぎんキャピタルパートナーズが運営するHiCAP3号投資事業有限責任組合、日本国際経済開発機構、ピー・アンド・イー・ディレクションズなど。

調達した資金により、さらなる設置台数の拡大をはじめ、グローバルへの展開も拡大する。また、新型コロナウイルス感染拡大を受け、ChargeSPOTバッテリーの抗菌抗ウイルス対応を行うことで、安心・安全なサービスを提供する。

またChargeSPOTは、年内5万台、2022年に8万台、2023年に10万台と設置を拡大し、日常生活には必要不可欠な生活インフラ化を目指す。専用アプリを専用ダウンロードしなくても「ChargeSPOT」を手軽に利用できるよう、キャリア系決済アプリとのミニプログラム連携なども行う。

2015年9月設立のINFORICHは、ChargeSPOTを2018年4月から提供。現在では、日本全国約2万6000台、香港約3000台、台湾約3000台、タイ約1000台(2021年3月時点)の設置が完了しているという。

サービスの利用は、専用アプリのほかに、LINE公式アカウント内からも行える。事前に専用アプリをダウンロードしていなかった場合もその場で利用可能。

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カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:INFORICH資金調達(用語)ChargeSPOT日本(国・地域)

複業マッチングプラットフォーム「Another works」が1.6億円調達、AI技術活用しプロダクトの機能拡充

複業マッチングプラットフォーム「Another works」が1.6億円調達、AI技術活用しプロダクトの機能拡充

複業マッチングプラットフォーム「Another works」(Android版iOS版)を展開するAnother worksは4月16日、第三者割当増資による総額1億6000万円の資金調達を発表した。引受先は、ベクトル、個人投資家の梅田裕真氏(メディカルノート代表取締役CEO)、複数の個人投資家など。シードラウンドを含めた累計調達額は約2億円となった。

調達した資金は、主にAI技術を活用したプロダクトの機能拡充、プロモーション、新規事業開発、および質の高いサービス提供のための人材採用に充てる予定。

同社はすでに単月黒字化を実現しており、ビジネスモデルが成立していることから、さらなる事業成長と技術投資を企図して資金調達に至ったという。無料トライアル期間の利用も含めると累計500社以上がAnother worksを導入しており、地方自治体との連携も推進するとしている。

複業マッチングプラットフォーム「Another works」が1.6億円調達、AI技術活用しプロダクトの機能拡充

Another worksは、複業したい人と企業をつなぐSaaS型の複業マッチングプラットフォーム。企業は毎月定額料金で、登録している全タレントから求める人材を探し、無制限にアプローチできる。採用が実現しても成約手数料は一切かからないため、採用コストが削減できる今までにないサービスとしている。

またタレントは登録・利用が一切無料で、求人へ直接エントリーが可能。企業からのスカウトが届くこともあるので、複業の機会を最大化させられるという。

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カテゴリー:HRテック
タグ:Another works(企業・サービス)資金調達(用語)副業(用語)マッチングサービス(用語)日本(国・地域)

収益化ツールを統合したクリエイター向けCRMのPicoが7.1億円調達

ニューヨークのPicoは、オンラインのクリエイターやメディア企業がお金を稼げて顧客データを管理できるようにする。米国時間4月14日、同社はそのプラットフォームのアップグレードと、新たに650万ドル(約7億1000万円)を調達したことを発表した

共同創業者でCEOのNick Chen(ニック・チェン)氏は声明文の中で、Picoはクリエイターたちの2つの大きな問題、「どうすればもっと簡単にお金を稼ぐことができるか、どうすればオーディエンスをもっとよく知ることができるか」という問題を解決する手助けをすると同時に、彼らの最も重要な資産である「ブランドとオーディエンスとの関係」をコントロールできると述べている。

同社はランディングページ、メールアドレスを収集するためのポップアップ、有料ニュースレター、定期購読のペイウォール、階層型メンバーシッププログラム、定期的および1回限りの寄付、動画収益ツールなど、さまざまなツールを提供している。バージョン2.0では、これらすべての機能を統一されたデータ構造に統合し、ユーザーが「誰がどのコンテンツにお金を払っているのか、どこから来たのか」を1つのダッシュボードで確認できるようになったと同社は述べている。

共同創業者で社長のJason Bade(ジェイソン・ベード)氏(上の写真はチェン氏といっしょに写っているはメールで、最も重要なアップグレードは「私たちのCRMの力でクリエイターたちが、彼らのオーディエンスを理解できるようにすること」だと述べ、「Picoをクリエーター経済のオペレーティングシステムにすること」を示唆した。

画像クレジット:Pico

さらにベード氏は「クリエーターは適切なツールなしにビジネスを拡大することはできません。電子メールのキャプチャーは、オーディエンス開発の最初のステップです。その次は何でしょうか。それはデータとそれを処理するCRMが必要です。バージョン2.0は、Picoのすべての部分をアップグレードして、クリエーターエコノミーが求めるスケーラビリティと拡張性に合わせて再構築しました」という。

Picoはまた、プラットフォームのさまざまな部分との統合をサポートするAPIを近々公開する予定だと述べた。

The Colorado Sun、Defector Media、The Generalistなどの顧客により、同社の顧客数はこの1年間で5倍近く増加したようだ。そして最近、同社はYouTubeでパートナーセールス部門のグローバル責任者をはじめ、さまざまな役職を務めたRodolpheKödderitzsch(ロドルフ・ケドレツシュ)氏を最高収益責任者(chief revenue officer、CRO)に招いた。

今回の投資をリードしたのはBullpen CapitalのAnn Lai(アン・ライ)氏で、Picoの総調達額はこれで1000万ドル(約10億9000万円)になった。その他の投資家にはPrecursor VenturesやStripe、BloombergBeta、そしてVillage Globalなどがいる。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:PicoCRMクリエイター資金調達

画像クレジット:Pico

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hiroshi Iwatani)

市場成長を受け電気自動車メーカーPolestarが初の外部資金調達ラウンドで約597億円調達

Volvo Car Group(ボルボカーグループ)の独立した電気自動車ブランドPolestar(ポールスター)は、Chongqing Chengxing Equity Investment Fund Partnership、Zibo Financial Holding、Zibo Hightech Industrial Investmentがリードする初の外部資金調達ラウンドで5億5000万ドル(約597億円)を調達した。

韓国のグローバルコングロマリットSK Inc.や数多くの投資家も本ラウンドに参加している。

Polestarにとって初の外部資金調達ラウンドである一方で、これが今回限りではないことを同社のコメントはうかがわせている。同社は米国時間4月15日、電気自動車(EV)をより経済的なものにするテクノロジーの進化、そして成長しているEVマーケットが投資家を引きつけた、と述べた。同社は潜在的な追加の資金調達について世界の投資家と協議中だとも付け加えた。

「当社の新たな投資家は、世界の自動車産業が電動化へと向かう中での最高の成長ポテンシャル、そしてPolestarが確立された産業能力と技術力という魅力的な組み合わせを提供していることを認識しました」と同社CEOのThomas Ingenlath(トーマス・インゲンラート)氏は声明で述べた。

新たな資金はPolestarの資金調達構造を多様化し「今後数年内に画期的な車を発売するのに先立ち、製品開発と技術力を加速させるのに使えるリソースを強化します」と同社は発表文で述べた。

PolestarはかつてVolvo Car傘下の高パフォーマンスのブランドだった。2017年に同社は、刺激的で乗るのが楽しい電気自動車の生産を目的とする電動パフォーマンスブランドに生まれ変わった。このニッチな部門は最初にTesla(テスラ)が切り開き、以降独占してきた。PolestarはVolvo Car Groupと中国のZhejiang Geely Holding(浙江吉利控股集団)が共同で所有している。Volvoは2010年にGeelyに買収された。

立ち上げ後、Polestarは中国に製造施設を開所し、グローバルの販売・流通オペレーションを構築し、Polestar 1と全電動のPolestar 2の2種を発表した。

同社はラインナップを増やしており、今週、Polestar 2のベース価格が安い2つのバージョンを製造すると発表している。

1つのバージョンはモーターが1つのタイプで、デュアルモーターモデルの78kWhバッテリーを搭載し、推定航続距離は260マイル(約418km)だ。そしてレンジが10%アップするPlus Packも提供する。シングルモーターのPolestar 2は2021年末に北米デビューする。

そしてデュアルモーターのバージョンもより簡素化する。デュアルモーターのPolestar 2の推定航続距離は240マイル(約386km)で、新しいPlus Packを加えればレンジはさらに伸びる。

同社はまた、2030年までに初のクライメート・ニュートラル(温室効果ガスの正味排出量がゼロ)のクルマを生産するという、さらに大きな野心も発表した。クライメート・ニュートラルとするのにカーボンオフセットを使うのではなく、新しいEVの製造方法を根本的に変更することで達成する、と同社は話した。ここには、材料の調達から製造に至るまでサプライチェーンの再考、そしてよりエネルギー効率のいい車両製造が含まれる。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Polestar資金調達電気自動車

画像クレジット:Polestar

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

炭素会計プラットフォームのPersefoniが10.6億円調達

炭素会計と管理のプラットフォームを開発するPersefoniは、国際的な事業展開や製品開発、採用活動を支援するために970万ドル(約10億6000万円)の資金を追加調達した。

このラウンドをリードしたのはRice Investment Groupで、NGP ETPが参加している。NGPは石油・ガス・電力にフォーカスした投資ファンドの、電力、再生可能エネルギー、持続可能性に特化した投資部門で、8月にローンチしてからわずか6カ月後での調達となった。

2020年1月に設立されたばかりのPersefoniは、組織の二酸化炭素排出量を収集し、計算し、管理し、報告するツールを提供している。

Persefoniのソフトウェアはスコープ1から3の排出量(企業の直接操業、電力の購入、およびサプライヤーの排出によって発生する排出量)をリアルタイムで報告することができる。

「世界中の政府、資産運用会社、および組織からのネット・ゼロを宣言したこの年に、私たちはベンチャーおよびソフトウェア投資家のコミュニティがSarbanes Oxley(サーベインス・オクスレー)法の導入以来、最大の規制コンプライアンス・ソフトウェア市場の形成に目覚めたのを目の当たりにしました」と、PersefoniのCEO兼共同創業者のKentaro Kawamori(ケンタロウ・カワモリ)氏は声明で述べている。「私達は炭素および気候に関する開示要件を導入している世界中の金融規制当局の努力を賞賛します。このような規制は、企業が二酸化炭素排出量を算定し、削減するための最も効果的な方法の1つです」。

PersefoniのサービスにはTPGのようなプライベート・エクイティ・ファームが参加しており、NGPのプリンシパルであるGreg Lyons(グレッグ・ライオンズ)氏はが同社の取締役会に就任する。

他の投資家には、Carnrite GroupとSallyport Investmentsが含まれる。

Sallyport Investmentsの創業者かつオーナーのDoug Foshee(ダグ・フォシー)氏は「Sallyportは業界に大きなインパクトを与えるために、成長著しい企業との提携を目指しています」と声明で述べている。

Persefoniの顧問にはSustainability Accounting Standards Boardの創設者であるRobert G. Eccles(ロバート・G・エクルズ)氏が就任し、同社の環境・社会・コーポレート・ガバナンスへの貢献が期待されている。

関連記事:財務の収支報告に加えて未来の企業は炭素収支をと訴えるPersefoniが4億円相当を調達

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Persefoni資金調達炭素

画像クレジット:Luke Sharrett/Bloomberg / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:塚本直樹 / Twitter

荷降ろしロボットを手がけるMITのスピンオフPickleが約6200万円の資金を調達

この1年間がロボティクス業界にとって大きな分岐点となったことは間違いない。在宅勤務などの労働力不足が続く中、企業は事業を継続させる手段として、特に倉庫や物流の自動化を推し進めてきた。

MITのスピンオフ企業であるPickle(ピックル)は、新たにこの分野に参入したスタートアップ企業の1つだ。同社は限られた資金と小規模なチームで創業したが、最近はその片方を大きく変えた。ホットな投資のニュースが続く今週、同社は57万ドル(約6200万円)の資金を調達したと、TechCrunchに明かした。このシードラウンドは、Hyperplane(ハイパープレーン)が主導し、Third Kind Venture Capital(サード・カインド・ベンチャー・キャピタル)、Box Group(ボックス・グループ)、Version One Ventures(バージョン・ワン・ベンチャーズ)などの投資会社が参加した。

Pickleは、その「Dill」と名づけられた最初のロボット(明らかに狙ったネーミングに違いない)の性能について、かなり大きな主張をしている。同社によれば、このロボットは、トレーラーの荷台から1時間に1600個の荷物を拾い上げることができるという。この数字は「競合他社の2倍のスピード」にあたると、同社は謳っている。

CEOのAndrew Meyer(アンドリュー・マイヤー)氏によると、その鍵はロボットと人間の協業にあるという。「私たちは最初から人をシステムに組み込んで、特定の問題に焦点を当てました。それは、搬入口での荷物の処理です。私たちは、完全に無人で動作するシステムや、世の中にあるすべてのロボットの問題を解決できるシステムを作ろうという愚行には手を染めませんでした」。

トレーラーの荷降ろしを対象としたPickle最初の製品は、2021年6月に受注を開始し、2022年初頭の出荷を予定している。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:Pickle資金調達MIT物流ロボット

画像クレジット:Pickle

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ソフトバンクがインドのフードデリバリーSwiggyに最大543億円投資か

SoftBank Vision Fund 2(ソフトバンク・ビジョン・ファンド2)が最大5億ドル(約543億円)をインドのフードデリバリーのスタートアップSwiggy(スウィギー)に出資することで交渉がかなり進んでいる。この件に詳しい2人の情報筋がTechCrunchに明らかにした。新たな投資はSwiggyを55億ドル(約5975億円)で評価しているとのことだ。

新規の投資は、Swiggyが2021年4月初めに発表した8億ドル(約869億円)の資金調達に追加される。ソフトバンクは2021年初めにインドのフードデリバリーへの投資拡大を模索しはじめ、SwiggyのライバルZomato(ゾマト)にも目を向けた。しかし今週初め、ソフトバンクはSwiggyを選んだ、と情報筋は話した。

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Swiggyとソフトバンクはコメントを控えた。この件の詳細はまだ公になっていないため、情報筋は匿名を希望した。

新たな投資の交渉は、Zomatoがここ数カ月で9億1000万ドル(約988億円)を調達している中でのものだ。グルガオン拠点のZomatoは2021年のIPOに向け準備を進めている。最後の取引でのZomatoの評価額は54億ドル(約5866億円)だった。資金調達の間、Zomatoは「当社の事業のさまざまな分野における競合相手からの攻撃や価格競争」と戦うために資金を調達している、と話した。

サードプレイヤーであるAmazon(アマゾン)もまた、2020年インドのフードデリバリーマーケットに参入したが、事業展開はまだバンガロールの一部に限定している。

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Bernsteinのアナリストは、インドのフードデリバリーマーケットが2022年までに120億ドル(約1兆3036億円)に成長することが見込まれる、と2021年初めのクライアント向けのレポートに書いた。

8億ドル調達後、Swiggyの共同創業者でCEOのSriharsha Majety(シュリハルシャ・マジェティ)氏は従業員へのメモで「新たな資金は現在のビジネスラインのために計画していた投資よりも多くのパワーを与えてくれます。我々の野心は果てしなく、後に投資の準備が整うかもしれない将来のために引き続き新たなサービスの種を撒いたり実験などをします。我々は今、インドから永続するアイコン的企業を生み出すために、今後数年にわたって絶えず考案して実行する必要があります」と伝えていた。

同氏はまたメモの中で、同社の長期的な目標は今後10〜15年でユーザー5億人にサービスを提供することだと述べ、評価額が1000億ドル(約10兆8600億円)を超えた中国のフード大手Meituan(美団)を引き合いに出した。

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「2020年の新型コロナウイルスによる非常に厳しい局面から我々は脱しつつあり、嵐は乗り越えました。しかしここから取り組むすべてのことは長期的に成功するチャンスを最大化する必要があります」とも書いた。

Prosus Venturesを最大の投資家の1つに持つSwiggyは2020年一部の従業員を解雇し(Zomatoも同様だ)、インド政府が数カ月にわたるロックダウンを命令することになったパンデミックをしのごうとクラウドキッチン事業を縮小した

ソフトバンクの出資を確認したインドのニュースメディアCapTableは交渉についてより詳細に報じている。

TechCrunchは4月14日にソフトバンク・ビジョン・ファンド2がZetaへの出資についても交渉していると報じた。eコマース大手Flipkart、配車サービスOla、格安ホテルスタートアップのOyoにも出資している同ファンドは2021年4月初め、ソーシャルコマースのMeeshoにも出資した。

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カテゴリー:フードテック
タグ:SwiggySoftBank Vision Fund投資インド資金調達フードデリバリー

画像クレジット:Indranil Aditya / NurPhoto / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

侵害されたネットワークを徹底して厳密な調査するプラットフォーム開発のCado Securityが10.9億円調達

コンピュータシステムがますます大きく、複雑になるにつれて、組織がシステムをより安全に保護するために、フォレンジック(徹底して厳密な調査)が重要な要素となってきている。最近起きたSolarWinds(ソーラーウィンズ)の情報漏洩事件でも明らかになったように、データ流失を特定したり、ハッカーの侵入を防いだりすることだけが大切なのではない。ネットワークがすでに侵害されている場合、何が起こったのか、侵害がまだ続いているのか、悪意のあるハッカーが再び攻撃できるのかなどを特定するためには、徹底した調査を行うことが唯一の方法であることがしばしばだ。

そうした優先順位の高まりを示す兆候として、徹底した調査を行うための、クラウドネイティブなフォレンジック技術を構築してきたスタートアップのCado Security(カド・セキュリティ)が、事業拡大のために1000万ドル(約10億9000万円)の資金調達を発表した。

現在、Cadoのツールは、企業が直接使用するだけでなく、Redacted(リダクテッド)のようなセキュリティ企業にも使用されている。Redactedは、Facebookの元チーフセキュリティオフィサーであるMax Kelly(マックス・ケリー)氏とLookout(ルックアウト)の共同創業者であるJohn Hering(ジョン・ヘリング)氏が一緒に創業したサンフランシスコを拠点とする、まだあまり注目されていないセキュリティスタートアップだ。Redactedはフォレンジックの部分にCadoを採用している。

ロンドンを拠点とするCadoへの今回の資金提供は、Blossom Capitalが主導し、既存の投資家であるTen Eleven Venturesなども参加している。今回のシリーズAは、Cadoがシードラウンドで資金を調達してからわずか6カ月後のことで、このこともこの分野の需要があることを示している。

デジタルネットワーク上のデータを保護する仕事は、年々複雑になってきている。単にデバイスの数やデータの量が増えて、その構成や使用方法が多岐にわたっているだけでなく、ネットワークの内部に侵入して汚れ仕事をする、悪意あるハッカーたちのアプローチもますます巧妙になってきているからだ。

また、クラウドへの移行も複雑さの増加する大きな要因となっている。クラウドの移行によって、多くの組織が次々に事業を拡大し、業務の一環としてより大規模なコンピューティングプロセスを実行できるようになった一方で、いわゆる攻撃界面が拡大し、調査が非常に複雑になっている。特に多くの組織が能力を増減させる弾力的なプロセスを実行していることで、何かがスケールダウンされた際に、それ以前のログが消去されてしまうことが多い。

CadoのプロダクトであるResponse(レスポンス)は、インストールされるとネットワークとそのすべてのアクティビティを積極的に調査するがクラウド、オンプレミス、ハイブリッドなどの環境を問わず動作するようになっている。現在は、AWS EC2、Docker(ドッカー)、Kubernetes(クバネティス)、OpenShift(オープンシフト)、AWS Fargate(AWSファーゲイト)などのコンテナシステムに対応しており、まもなくAzure(アジュール)にも拡大する予定だ(なお、Google Cloud Platform(グーグル・クラウド・プラットフォーム)は、現在の顧客や見込み顧客の間ではほとんど話題に上らないため、現時点では優先度が低いとCEOのJames Campbell(ジェームズ・キャンベル)氏は述べている)。

キャンベル氏は、2020年4月に現CTOのChristopher Doman(クリストファー・ドーマン)氏と共同でCadoを創業した。この会社のコンセプトは、PwCでともにセキュリティサービスに取り組んだ経験から生まれたもので、それぞれ政府機関(オーストラリアのキャンベル地区)とAlienVault(エイリアン・ボルト。AT&Tが買収したセキュリティ会社)のために働いていた。その中で、2人がずっと直面していた問題は、最も複雑な侵害を追跡するために不可欠な、適切なフォレンジックデータの取得だった。

従来のフォレンジックツールの多く、特にクラウド上の大量のデータに対処するものは「オープンソースツールでデータを処理し、スプレッドシート上で分析をまとめていました」とキャンベル氏はいう。「クラウド時代に向けて、この状況を近代化する必要があります」。

一般的な侵害事件では、何が起こっているのかを解明するための徹底的な調査に1カ月ほどかかることがある。これは、ドーマン氏が説明するように、フォレンジックが「ディスクのあらゆる部分、バイナリシステムのファイルを調査する」からだ。ドーマン氏は重ねて「そうしたレベル、そうしたログに行かずに、必要なものを見つけることはできないのです。すべてを精査することになります」という。

しかし、それには大きな問題があった。キャンベル氏は「とはいえ何か手を打てるまでに、ハッカーを1カ月間野放しにしておくことは、到底許されません」と付け加えた。その結果、他のフォレンジックツールでは、組織のデータの5%程度しか調査できないというのが一般的なのだ。

2人によれば、特許出願済のCadoのソリューションは、基本的には、すべての活動ログのバイナリデータの中から、異常に見えるものを見分けて、パターンを見つけるという、非常に手間のかかるプロセスを、自動化して高速化するビッグデータツールの開発を含むという。

キャンベル氏は「これにより、セキュリティチームには、ハッカーが何をしようとしているのかに集中して、修復の側面に注力する余裕が生まれます」と説明する。

おそらくSolarWindsのような事態は、もしより優れていて迅速な追跡・調査技術を持っていたなら、もっと良いレベルで緩和されたはずだ。

今後は、より多くの種類のシステムをカバーするために統合を進め、一般的にIaaS(Infrastructure as a Service)に分類されるようなものへと展開していく予定だ。

Blossom CapitalのパートナーであるImran Ghory(イムラン・ゴリー)氏は次のように語る。「過去1年間に、多くの企業がリモートワークを可能にするアプリケーションを保護しながら、クラウド導入スケジュールを短縮してきました。それでも、SolarWindsのような有名な侵害事件が示すように、一般的にセキュリティアナリストはクラウドの専門家としてのトレーニングを受けていないために、クラウド環境の複雑さが迅速な調査と対応を困難にしているのです。Cado Securityは、セキュリティチームがより速くより効率的に動けるようにするために、フォレンジックのためのクラウドデータの取得などの、時間のかかる作業を自動化するエレガントなソリューションで、この問題を解決します。Blossom Capitalにとって、Cado Securityの迅速な拡大を支援する機会を得られたことはすばらしいことです」。

カテゴリー:セキュリティ
タグ:Cado Security資金調達ロンドンデータ漏洩ハッキング

画像クレジット:MR.Cole_Photographer / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:sako)