ハンバーガー調理ロボットに続き、Miso Roboticsからトルティーヤチップスを調理するロボットが登場

ハンバーガーを調理するロボットアーム「Flippy(フリッピー)」を開発した会社から、トルティーヤチップスを調理するロボットアーム「Chippy(チッピー)」が登場した。Miso Robotics(ミソ・ロボティクス)は米国時間3月16日、ファストフードのメキシコ料理レストランチェーン「Chipotle(チポトレ)」と提携し、トルティーヤチップスを揚げて味付けするシステムを開発すると発表した。もっとも、同社の「Flippy 2(フリッピー2)」が2021年、ファストフードチェーン「White Castle(ホワイト・キャッスル)」のフライドポテトを調理する方法を発見したことを考えれば、それほど大層なこととは思わないが。

この新しいロボット / AIシステムは現在、オレンジ郡にある同チェーンの食品研究所「Cultivate Center(カルティベイト・センター)」でテストされている。2022年後半には、南カリフォルニアのレストランで試験運用を開始する予定だ。その前に展開されたFlippyの時と同様に、Chippyのメーカーはこの試験期間中に、従業員や顧客にとって何が有効で、何が有効でないかを見極めることになるだろう。

このシステムは、バスケットを高温の油槽に浸すだけでなく、塩とライム汁でチップスに味付けもできるように設計されている。Chipotleは、ちょっとしたカオスが、調理に人間らしさを取り戻す鍵になるという。

「誰もがチップスに、ほんの少し塩味が濃い方がいいとか、もう少しライムを効かせて欲しいとか、注文を付けたくなるものです」と、Chipotleの料理担当バイスプレジデントであるNevielle Panthaky(ネヴィール・パンタキー)氏は語る。「当社の料理体験の背後にある人間性を失わないように、私たちはChippyを広範囲に訓練し、当社の現在の製品を反映した、お客様が期待する味の微妙なバリエーションを提供できるようにしています」。

Miso RoboticsのChippyは、ハンバーガー調理ロボットのFlippyと、ソフトドリンクディスペンサーの「Sippy(シッピー)」に加わることになる。この先、給仕ロボットの「Tippy(ティッピー)」や、マリファナ調合ロボット「Trippy(トリッピー)」なども登場するのだろうか?

画像クレジット:Miso Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

外食産業の労働力不足を狙い配膳ロボットを手がけるBear Roboticsが約96億円調達

数年前からフードロボットのスタートアップ企業を追いかけていて最も興味深いことの1つは、下ごしらえから配達まで、各社が自動化を目指しているさまざまな作業を見ることだ。ベイエリアに拠点を置くBear Robotics(ベア・ロボティクス)は、ロボットをカウンターの前に連れ出そうとしている唯一の企業というわけではないが、近年、最も注目を浴びる企業の1つとなっている。

Bearは、日本でより多くのレストランに同社のシステムを導入しようとするなど、最近の展開で成功を収めている。これには、同社に出資しているSoftBank(ソフトバンク)の後援や、日本では労働力不足が続いているという事情がある。日本は以前から、高齢化社会の中で事業を継続させるための方法としてロボットに注目しており、近年の新型コロナウイルス感染流行がそのニーズを加速させた。一方、米国では、同社はChili’s(チリズ)、Compass Group(コンパス・グループ)、Denny’s(デニーズ)、Marriott(マリオット)、Pepsi(ペプシ)と提携している。

同社のビジネスモデルが、ソフトバンクから多大な信頼を得ていることは間違いない。ソフトバンクは最近、ロボットに対してさらに強気になっており、2020年にはBearのシリーズAを主導した。そして米国時間3月15日、新たな投資家としてIMMが、Cleveland Avenue(クリーブランド・アベニュー)などの既存投資家とともに、同社の8100万ドル(約96億円)のシリーズBを主導するために参入した。この最新のラウンドにより、Bearの資金調達総額は、これまでに約1億1700万ドル(約139億円)に達している。

Bearは、全自動化にははっきりと慎重な姿勢を示している。同社はこれまで、レストランが人間の給仕スタッフに取って代わるのではなく、それを補うための手段として自社を位置づけてきた。これは、同社の機械がロボット・ウェイターというよりも自走型テーブルに近いものであり、A地点からB地点まで注文を載せて運ぶだけという事実が一因であることは間違いないだろう。

「数年前に自分のレストランを始めたことで、私はその難しさを身をもって知りました」と、創業者兼CEOのJohn Ha(ジョン・ハー)氏はリリースで語っている。「そこで私は、レストランの良さを失うことなく、繰り返しの作業を自動化する方法はないものかと考えました。だから私たちはServi(サーヴィ)を作ったのです。これは、お客様、従業員、そして経営者の体験を向上させることを目的としたソリューションです。他の企業が仕事を完全に自動化しようとしている一方で、私たちは毎日この業界を支えている利害関係者のために、仕事の未来を向上させようとしているのです」。

Bearによると、同社のServiロボットは、これまでに総計33万5000マイル(53万9100キロメートル)を移動して、2800万食を配膳してきたとのことだ。

画像クレジット:Bear Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

レストランなどの食品調理業向け在庫管理マーケットプレイスを提供するブラジルのCayena

ラテンアメリカでは、商店の品揃えは楽な仕事ではない。発注は今でも、紙の伝票や電話で行われることが多く、お店の主人が卸屋まで車を運転して品物を手に入れることもある。

Cayenaを創業したGabriel Sendacz(ガブリエル・センダツ)氏とPedro Carvalho(ペドロ・カルヴァーリョ)氏、そしてRaymond Shayo(レイモンド・シャヨ)氏は、材料の確保にテクノロジーを利用すれば、彼らの母国であるブラジルやその他の地域で、レストランやバー、ベーカリー、ホテル、そしてダークキッチンなどの食品調理調製業がもっと楽になると考えた。

「ラテンアメリカのB2Bは巨大な市場ですが、その需要と供給は細分化しています。私たちの顧客も、約90%が中小の家族経営の独立店です。供給の側も、何千もの流通業者が、それぞれいろいろな品物を扱っていますが、マーケットシェアが1%に満たないところばかりです」とシャヨ氏はいう。

対照的に米国には、SyscoやU.S. Foods、Gordon Food Serviceのような大きなフードサービス企業がそれぞれおよそ10%のマーケットシェアを握り、食品から洗剤に至るまでのあらゆるもののワンストップショップを提供している。

Cayenaの共同創業者。左からペドロ・カルヴァーリョ氏、ガブリエル・センダツ氏、レイモンド・シャヨ氏(画像クレジット:Cayena)

そこで、シャヨ氏によれば、いくつかの問題が生じる。まず、ベンダー20社ぐらいで同じ品目の価格が最大で40〜50%も違う。クレジットカードがレストランに払うために30日かかることもあるが、一方レストランは自分の原料等の注文に前金を支払うため、運転資本の問題が生じ、特にレストランは材料費が最大のコストなので資金繰りが苦しくなる。

つまり、ラテンアメリカではレストランが慢性的に経営難を抱えることになる。そこで同社はB2Bのマーケットプレイスを構築し、年商1000億ドル(約11兆5400億円)といわれるラテンアメリカの食品卸業界を狙った。それによりユーザーは原材料などを一度に複数のサプライヤーからまとめて仕入れることができ、翌日に配達してもらえる。また、後払い販売(BNPL)といった新たな金融サービスを提供することもできる。

ユーザーは必要な品目の卸価格を複数の卸店にわたって比較でき、その品目の現在の相場を知ることができる。Cayenaのアルゴリズムは、サプライヤーの在庫品目と価格、ユーザーの予算を比較対照して、ベストマッチをユーザーにアナウンスする。配達には直送方式を利用して、注文が成立したら、そのオーダーを顧客に配達するようサプライヤーに通知が届く。

このマーケットプレイスを立ち上げた2020年以降は、顧客数が1年で10倍に増え、レストランの原材料の調達が困難になるにともない1回の購入単位額は4倍になり、Cayenaでの顧客の平均購入回数は1カ月で5回になった。

この急速な成長で資金が必要になった同社は、2021年後期にPicus Capitalがリードする350万ドル(約4億円)のラウンドを調達し、それが、その前にCanaryのリードで調達した55万ドル(約6300万円)に追加されることになった。

事業は順調で9月のシードラウンドのすぐ後にCayenaはそれまでの倍に成長し、2カ月で倍増というペースが続いたため、年商1億レアル(約22億6000万円)のマイルストーンに達した。同社の現在の商圏は、サンパウロ州の50都市となる。

こうした加速度的な成長が投資家の関心を集め、同社はVine Venturesが主導し、MSA Capital、Picus Capital、Canaan Partners、Clocktower Ventures、FJ Labs、Femsa Ventures、Gilgamesh、Astella、EndeavorおよびGraoVCの参加も得て、1750万ドル(約22億2000万円)のシリーズA投資を先取りすることになった。これにより、Cayenaは総額2100万ドル(約24億2000万円)強の資金を調達したことになる。

「今のところ極めてホットな市場ですが、世界中の投資家が成長企業を探している現状ではそれは良いことです。数年前、私たちは比較の対象にもなりませんでしたが、今ではどこが新しいアプローチと戦略で成長しているのか、誰の目にも明らかです」とシャヨ氏はいう。

Cayenaのビジネスモデルでは、倉庫やトラックや流通への投資はなくテクノロジーのみであるため、資金の多くが雇用に使われる。シャヨ氏の予想では年内に社員数は倍増して60名になるという。また、プロダクトとテクノロジーにもフォーカスしており、新たな金融プロダクトを作り、サプライヤーの地理的範囲も広げたいとのこと。

また、創業者たちはラテンアメリカ全体が商機だと捉えており、トラックなど1台も所有することなく次のステップでまず1〜3年後にブラジルで最大のフードサービスサプライヤーに、その次のステップでラテンアメリカ全体への拡張を考えているという。

画像クレジット:Cayena

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

コンピュータービジョンでレストランのオーダーエラーを解消するAgot AI

Agot AIの共同創業者エヴァン・デサントラ氏とアレックス・リッツエンバーガー氏(画像クレジット:Agot AI)

人工知能はいろいろな業界に浸透してきたが、レストランはその中でも後発となり、その主な導入動機はパンデミックとオンラインオーダーの導入となる。

レストランのAI導入は今後も増えるだろう。2021年には米国人の60%が週に1度以上テイクアウトまたはデリバリーを注文し、31%がデリバリーサービスを利用したMarket Study Reportの予想によると、世界のレストラン管理ソフトウェアの市場は年率25%で伸び、2025年には69億5000万ドル(約8034億円)に達する

しかしながら私たちはみな、フードデリバリーが持ってきたものが注文と違うという経験をしている。そこでAgot AIは、機械学習を利用するコンピュータービジョンの技術を開発し、最初はファストフード業界を対象にして、そのようなエラーが起きないようにした。

同社は3年前にEvan DeSantola(エヴァン・デサントラ)氏とAlex Litzenberger(アレックス・リッツエンバーガー)氏が創業し、レストランテクノロジーのオペレーションの側面や、従業員の成功報酬、レストランの顧客満足度の向上などの問題解決を目指した。

画像クレジット:Agot AI

同社のプロダクトは、オンラインからのオーダーに対する正しさをリアルタイムで確認し、修正が必要なら従業員に告げる。たとえば彼らは、チーズとケチャップを加えるのを忘れていたかもしれない。

同社はその技術を発表して以来、Yum! Brandsなどの大手サービスの協力のもとに、展開を進めてきた。Yumの場合、Agotは同社とのパートナーシップにより、その20のレストランでパイロット事業を行った。パイロットの結果が良ければ、Yumの100のレストランで実装する、とAgotのCEOデサントラ氏はいう。

Yum! BrandsのチーフストラテジーオフィサーであるGavin Felder(ギャビン・フェルダー)氏は声明で次のように述べている。「同社は常に、テクノロジーを利用する革新的な方法でチームのメンバーの能力を高め、私たちのレストランにおいて彼らと顧客の両方の体験を向上させようとしてきた」。そしてパイロット事業の初期的な結果は「私たちが料理を届けているすべてのチャンネルで、顧客にオーダーに忠実で正確なメニューを届けることができるという将来的に有望な可能性を示唆している」。

Yum! Brandsは、Agotの顧客であるだけでなく投資家でもある。以前の1200万ドル(約13億9000万円)のラウンドでは、Continental Grain Co.の戦略的投資部門であるConti VenturesやKitchen Fund、そしてGrit Venturesらとともに投資に参加した。これでAgotの総調達額は1600万ドル(約18億5000万円)に達した。

Agotは新たな資金を、技術チームの拡大と、その他のファストフードブランドとのパイロット事業、およびプロダクトの機能拡張に充てたいとしている。また、機能拡張により、デリバリーだけでなく、ドライブスルーや店内での顧客体験も改善していきたい。

同社は、小規模な概念実証レベルの展開で、オペレーションの能力を示してきたため、今後はより大きな市場とオーディエンスにその技術をスケールしたいという。

Agotは成長率などを明かさないが、同社のチーフビジネスオフィサーのMike Regan(マイク・リーガン)氏によると、彼がデサントラ氏と出会ったとき、彼自身は投資家だったが、オーダーの正確さチェックが今後大きなビジネスになることをすぐに理解し、またAgotがそれに対して総合的な視野で臨んでいることを知った。「それはまさにデジタルトランスフォーメーションそのものだった」とリーガン氏は言っている。

Toastのようなレストラン管理のパイオニアや、その他のスタートアップも、2年前ほど前からこのニーズに対応するようになり、それぞれ独自のアプローチを採っているだけでなく、ベンチャー資本も獲得している。

たとえば最近の数カ月ではLunchboxDeliverectOrdaZakSunday、そしてMargin Edgeなどが新たなラウンドを発表し、レストランを新しいオーダー方式に適応させていくことに向けて大金が流れ始めたことを示唆している。

リーガン氏によると、レストラン業界の現状は「厳しい」けれども、Agotは「社歴3年のスタートアップよりもずっと先を行っている」やめ、事業の成功という点でも、また今後の2年間で大多数のファストフード企業を顧客にしていける能力でも傑出しているという。

そしてデサントラ氏は「新たな資本がAgotを次のレベルのビジネスに押し上げる」と感じている。

「初期のパイロットでは成功を証明したし、現在および将来のパートナーを相手にスケールしていけることにもエキサイトしています。新たな資金はプロダクトの機能拡張と、顧客とそのオペレーションの分析、そしてドライブスルー向けの技術開発に充てたい」とデサントラ氏はいう。

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

レストランでQRコードとスマホを使った会計できるシンプルな決済ソリューションを提供するQlub

我々のレストランやイベント会場における行動は、新型コロナウイルスの影響からこの2年間で大きく変わったが、テーブルからスマートフォンで注文できたり、クレジットカードを出さずとも支払いさえできるようになったことの大きなメリットに気づいた人も多いだろう。2020年には存在すらしていなかったフランスのスタートアップ企業であるSunday(サンデイ)は、多額の資金を調達して、人々が簡単に支払いを済ませたり会計を共有できるようにすることで、店員を解放し、レストランの回転率を高めた。

この種のトレンドには、Toast(トースト)やGoodEats(グッドイーツ)など、他にも多くのスタートアップが飛びついている。

今回、ステルスを脱したQlub(クラブ)も、同様の分野に取り組んでいるが、しかし同社は米国以外の市場に目を向けている。この消費者向けレストラン決済ソリューションを提供する会社は、ベルリンのCherry Ventures(チェリー・ベンチャーズ)とドイツのPoint Nine Capital(ポイント・ナイン・キャピタル)が共同で主導したラウンドで、1700万ドル(約19億5000万円)のシード資金を調達した。このラウンドには、STV、Raed Ventures(レード・ベンチャーズ)、Heartcore(ヒートコア)、Shorooq Partners(ショルーク・パートナーズ)、FinTech Collective(フィンテック・コレクティブ)などの他のVCや、多くの起業家から転身したエンジェル投資家たちも参加した。

Qlubは、Sundayと同様に、携帯電話でQRコードをスキャンすることによって、レストランですばやく会計を済ませることができる。アプリや登録は不要だ。顧客は友人と一緒に請求額を割り勘にして、Apple Pay、クレジットカード、あるいはBNPLと同様に分割払いで支払うこともできる。

レストランにとってのメリットは、テーブルの潜在的な回転率が上がること、店員に対するチップの可能性が高まること、そしてシンプルな支払い体験を気に入ったリピーター客が増えることだ。また、Qlubによれば、その使い勝手の良さから、Qlubを導入したレストランが、口コミサイトで高い評価を受ける傾向もあるという。もちろん、店員との接触が減るので、ウイルスの感染予防や一般公衆衛生にも有効だ。

共同創業者のEyad Alkassar(アイアド・アルカッサー)氏は、次のように述べている。「複数のフードデリバリー企業を立ち上げた経験から、私は過去20年の間に、テクノロジーの進歩によって、外食体験がいかに改善されていなかったかということに当惑しました。クレジットカードが登場してから、ほとんど何も変わっていません。新型コロナウイルス感染流行がもたらした2つのメガトレンド、すなわちレストランのQRコードとキャッシュレス決済を組み合わせ、私たちは未来の決済機能を作り上げます」。アルカッサー氏は現在、Rocket Internet Middle East(ロケット・インターネット・ミドル・イースト)の共同創業者兼マネージングディレクターを務めているが、関与を段階的に減らしている最中である。

Qlubの創業チームは、アルカッサー氏の他、Arun Sharma(アルン・シャルマ)氏、Filiberto Pavan(フィリベルト・パヴァン)氏、Gizem Bodur(ギゼム・ボドゥル)氏、Jeff Matsuda(ジェフ・マツダ)氏、Jianggan Li(ジャンガン・リー)氏、John Mady(ジョン・マディ)氏、Mahmoud Fouz(マフムード。フーズ)氏、Oscar Bedoya(オスカー・ベドヤ)氏、Ramy Omar(ラミー・オマー)氏で構成されている。このチームは、Lazadaa(ラザダ)、Namshi(ナムシ)、Snapp(スナップ)など、さまざまな企業を設立し、規模を拡大してきた。

Cherry Venturesの創業パートナーであるFilip Dames(フィリップ・デイムス)氏は、次のように述べている。「オフラインでの支払いが回転率の障害となっているレストランにとって、セルフチェックアウト・ソリューションの採用は考えるまでもないことです」。

Point NineのパートナーであるRicardo Sequerra Amram(リカルド・セクエラ・アムラン)氏は、次のように述べている。「Qlubは、キャッシュレス決済の自由度とセルフチェックアウトの利便性を求める消費者と、新型コロナウイルス流行後の世界で、固定費を圧縮し、収益を生み出す仕事にスタッフを割り当てることを一層心掛けているレストランのオーナーの双方にとって、ウィンウィンのサービスを構築しています」。

QlubはこれまでにUAE、KSA、インドでサービスを開始しているが、今後数週間から数カ月の間に他の国際市場にも拡大していく予定だ。

画像クレジット:Eyad Alkassar

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

レシピやメニューコスト計算機などのツールを一元管理、キッチンのDXを進めるMeez

プロ向けレシピソフトウェアと料理オペレーティングシステムを作成しているMeez(ミーズ)は、引き続きシェフのレシピ管理を支援するツールを開発するために、初のラウンドで650万ドル(約7億5000万円)を調達した。

MeezのCEOジョシュ・シャーキー氏(画像クレジット:エヴァン・ソン)

CEOのJosh Sharkey(ジョシュ・シャーキー)氏は、自身もキャリアの大半をシェフとして過ごし、2015年にニューヨークを拠点とするテクノロジー会社を法人化した。しかし、自身のレシピや調理工程を保存する場所を探すきっかけとなったのは、15年以上前にレシピや料理の作り方を記録していたノートを紛失したことだった。同僚たちは、標準的なGoogleやWord文書、スプレッドシートなどを使っていたが、シャーキー氏はさらにデジタルなアプローチを望んでいた。

「すべてをデジタル化するにはどうしたらいいのか、というアイデアがひっかかりました」とシャーキー氏はTechCrunchに語った。「在庫管理のためのツールや財務ソフトのようなものはありますが、キッチンで使うために作られたものや、私たちが実際に行っていることに関連したものはありませんでした」。

シャーキー氏とそのチームは、コラボレーションツール、レシピキーパー、進行、トレーニング、下ごしらえツールを1つにまとめたMeezを構築した。同氏はそれを「シェフのためのGoogle Drive」と呼んだ。

この技術には2つの構成要素がある。1つはユーザーがレシピをシステムに入れること、そしてユーザーと厨房の同僚の両方がレシピを拡張して使えるようにすることだ。また、成分量や単位換算、メニューコスト計算機、アレルゲンの自動タグ付けや栄養分析など、シェフが日々活用するリソースも備える。

このソフトウェアは2020年に発売され、MeezはすでにJose Andres(ホセ・アンドレス)氏やJean-Georges Vongerichten(ジャン-ジョルジュ・ヴォンゲリヒテン)氏といった大手レストラン経営者や、Institute of Culinary Educationなどの料理学校を顧客に抱える。

今回の資金調達はStruck Capitalがリードし、Craft Ventures、Relish Works、Aurify Brands、Food Tech Angels、Branded Strategic Venturesが参加した。エンジェル投資家には、Snapの元製品責任者Bobby Lo(ボビー・ロー)氏、Shefの創業者でBento Boxの創業者兼CEOのKrystle Mobayeni(クリステル・モバイェニ)氏が含まれる。

Meezのソフトウェア(画像クレジット:Meez)

Meezは2020年12月に20の有料顧客からスタートし、今では高級レストランからファストカジュアル、料理学校まで多様なレストラン750以上に増えていて、シャーキー氏は2023年にこの分野を掘り下げる予定だ。また、この間、同社の売上高は前年同月比22%増と順調に伸びていて、これは同社独自のアプローチとデジタルの導入が厨房に浸透してきたことが要因だとシャーキー氏は話す。

「食の世界で普及曲線が初期段階に達しました」とも同氏は語る。「料理のプロは、より少ない労力でより多くのことを行う方法を認識し始めており、常に労働力に頼ることはできません。パンデミック以前はうまくいっていたことが、今はうまくいかないのです。レシピに頼るだけではもうだめで、コンテンツを運用できるようにするために、他にやらなければならないことがあります。以前はそれをする場所がなかったので、これは役に立つツールであり、必要なものです」。

シャーキー氏は、新しい資本をiOSアプリの開発や、メニュー計画、セルフオンボーディングの自動化などの技術開発に投入し、消費者への直接のレシピ提供の立ち上げとテストなどをするつもりだ。

さらに同社は2022年中に新しいレストランを引きつけ、チームを拡大する。Meezの従業員数は現在17人だが、2022年中に10人増やす予定だ。

「料理のプロは、地球上で最もクリエイティブで独創的な人たちに含まれます。しかし、彼らの仕事は物理的なものであるため、デジタル技術を活用してワークフローや共同作業のためのシステムを改善する方法には、ほとんど注意が払われていません」とStruck CapitalのCEOであるAdam Struck(アダム・スタック)氏は声明文で述べた。「ジョシュはプロのシェフであり、レストラン業界のオペレーターであり、テクノロジーの専門家であるという点で、ユニークな創業者です。彼は、ほぼすべての厨房を悩ませている問題点を、直感的で美しいデザインのプラットフォームに統合し、世界最大かつ最古の産業の1つである厨房の大きな問題点を解決することができました」。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

夕食はロボットにお任せ、レストランロボットと風変わりなドロイド

私は2022年初めのCESに向けて計画を進めてきたが、おそらく今週中には白紙に戻りそうだ。呆れるほど多数の紫外線消毒ロボットの売り込みがなくなることに奇妙な寂しさも感じるものの、一方では最新変異株(オミクロン)の急増の中で、ショーに直接参加することの是非を検討していたのだ。最終的には、今回はラスベガスに参加しないことにしたが、数週間以内にはお伝えすることがたくさん出てくると思う。

ほぼ2年前のCESとそれに続く私たちのロボットセッションが、私が直接参加した最後のイベントであったことに気づいて、とても奇妙な心持ちがしている。ロボットセッションをオーガナイズして、TechCrunchのCESへの取り組みを主導する役割を果たしてきた私は、これらの決定を軽く考えることはとてもできない。

そして、特にロボットの評価に関しては、直接会議に参加することにはまだ個人的なメリットがあると感じている。Zoom(ズーム)を通してロボットの見栄えを良くしようとしても限界があるからだ。

どちらかといえば、こうしたことすべてが、ロボットシステムの本格的な採用が、非常に近くて同時にまだ遠いものだということを痛感させる。ちなみに私は、来年のCESに向けて、本当に多数のロボットの売り込みを受けたと言っても構わない。今回のショーは、来年の動き全体を占うものになるようにデザインされている。それらは、消費者向けから産業用途まで、そしてその間のすべてのものをも幅広く含んでいる。

パンデミックが業界の興奮と投資を加速させたことは間違いないが、実際の導入スピードはカテゴリーによって大きく異なる。年末の他の記事でこれまで見てきた2つの例は、かなり進んでいる。これまでの製品と同様に、倉庫ならびにフルフィルメントのロボットは現在とても現実的なものだ。最近オンラインで何かを購入したのなら、ロボットがラインのどこかの時点で製品の入手を手伝ってくれた可能性がかなり大きい。

配達ロボットはさらに難しい。たくさんのパイロットプロジェクトが存在しているが、住んでいる地域によっては(特に大学キャンパスの近くにいる場合には)、そのうちの1台が自分向けの出前でなくても近くを走っているのを見たことがあるかもしれない。一般に、歩道は倉庫よりも管理されていない場所であり、規制上の煩雑な手続きを経て世に出す必要があるため、資金調達の成否にかかわらず、明日の朝ロボットで歩道が溢れかえっているようなことはないだろう。

今週は、そうしたロボットが配達しているかどうかはともかく、対象となる食べ物を、実際に作っているのは誰なのか、あるいは「何」なのかについて話したいと思う。

画像クレジット:Paul Marotta / Getty Images for TechCrunch

細かい話に入る前に、iRobot(アイロボット)の共同創業者でCEOのColin Angle(コリン・アングル)に、過去1年間のロボット業界を振り返り、来年の予測をしてもらえるようお願いした。

2021年のロボット / AI / 自動化のトレンドを定義したのは何でしたか?2021年には、倉庫の自動化、自動運転技術、そしてもちろん排泄物検出がブレークスルーをもたらしました。2021年は、自動化への大規模な投資が功を奏し、2020年をほぼ超えたオンラインショッピングの驚異的な増加が、目覚ましい年となりました。中米をターゲットにした自動運転トラックのテレビコマーシャルを実際に見ました。これは本当に起こっていることなのでしょうか?そして私は、ロボットの真空掃除機にまつわる汚くてめったに議論されない課題の1つが、手頃な価格で信頼性の高い視覚的物体認識の出現によって、過去のものになったと言えることを誇りに思っています。2021年はロボットにとって変革の年だったといっても過言ではないでしょう。

2022年はこれらのカテゴリーで何が起きるのでしょう?2022年に入ってからは、人々が待ち望んでいたスマートホームの本当の進歩を目にできたらと思います。現在のバージョンのスマートホームでは、複雑過ぎますし、使いやすさが貧弱過ぎます。しかし、経験を最優先するエコシステムを生み出し、能力とシステムのシンプルさにも優れ、成長を始めることができるツールが登場しつつあります。そこで私は、2022年が、一般の人々の間で業界が加速し続ける年になるだけでなく、私たちの日常生活へのロボットの思慮深い統合に重要な前進が見られる年になることを期待しています。非常に多くの面で勢いが増しているのを見られるのはエキサイティングです!

さて、私の長年の輝かしいキャリアの中では最も不快な話題転換ではあるが、排泄物の検出から食事の準備に話題を移すことにしよう(会社が「読者が減ったのは何故だ」と聞いてきたときのためにここにメモとして残しておく)。

Los Angeles Timesのテストキッチンで2009年3月11日に撮影された、レンガのオーブンから取り出されたマルゲリータピザの画像(写真クレジット:Anne Cusack/Los Angeles Times via Getty Images)

この1年はロボットによる食品調理にとって大きな年だった。パンデミックが発生する前は、この分野に関与した著名なスタートアップは極めて稀だった。特にZume Robotics(ズームロボティックス)などを含む一部の企業は、業界から去っていった。しかし、ロボット分野対するベンチャーキャピタルの大規模な流入に伴って、レストランビジネスの自動化が進んでいる。その主な2つ理由は、この2年で骨身に沁みて理解できているはずだ。第一に、米国では人材が大幅に不足しているということ。第二に、ロボットは病気になることはなく、人びとを病気にすることもないということだ。

もし私が、食品ロボットの現状を4ワードで要約しなければならないとすると、次のようになる。

  • ピザ
  • ボウル(日本でいうどんぶり物)
  • ファーストフード(1ワードにまとめてズルをした)
  • キオスク(売店)

画像クレジット:Picnic

最初の2つがリストの一番上にあるのは同じ理由だ。食品を自動化する場合には、人気があって、比較的均一なものである必要がある。もちろん、さまざまなトッピングはあるものの、ロボットにとっては、ピザを作ることは、生地、ソース、チーズ、トッピング、調理、繰り返しといった、かなり簡単な経験なのだ。Picnic(ピクニック)やXRobotics(エックスロボティックス)のような企業は、Zumeが中断したものを引き継ごうとしている。

関連記事:XRoboticsはピザロボットの夢を諦めず正式発表に漕ぎ着ける、1時間で最大150枚、20種類以上のトッピングに対応

画像クレジット:Spyce

ボウルはピザ同様の領域を埋める。それらは近年人気が高まっていて、かなり基本的なテンプレートが確立している。サラダやキノア(食用の実)などのトッピングやベースのバリエーションがあるとしても原理はかなり単純だ。したがって、カリフォルニアを拠点とするファストカジュアルサラダチェーンのSweetgreens(スイートグリーンス)が、MITのスピンアウトであるSpyce(スパイス)を買収して、先の8月に登場したことはおそらく驚くようなことではない。この動きは、2月にサラダ製造ロボット会社Chowbotics(チャウボティックス)を買収したDoorDash(ドアダッシュ)による類似の買収に続いたものだ。

Miso(ミソ)は現在ファーストフードレースをリードしていて、数多くの大きなパートナーシップが発表されている。同社のハンバーガーフリッピング(パテ焼)ならびにフライクッキング(揚げ物)ロボットは、まだ人間のキッチンスタッフを完全に置き換えることはできないものの、世代を重ねるにつれて、ますます能力を高めている。

画像クレジット: Nommi

一方、キオスクは、主に人間を作業工程から外すように設計されている。この解決策は、前述の労働力不足のおかげで、ますます勢いを増している。システムと人間の相互作用は、主に材料投入、メンテナンス、および注文に限定されている。しかし、適切な技術があれば、Nommi(ノミー)のようにボタンを押すだけで簡単に新鮮な食材を調理することができる。たとえば最近行われたNommiとC3との提携では、Iron Chef(料理の鉄人)の森本正治氏の料理が、24時間年中無休の調理マシンに採用されている。

関連記事:ハンバーガーをひっくり返すロボット「Flippy」の能力が向上、調理前後の作業を追加

今週は、クリスマスということもあり、ニュースの流れは多少ゆっくりとしている。とはいえ私たちは、Hyundai(ヒョンデ、現代自動車)がCESのために何を準備しているのかを垣間見ることができた。Hyundaiは、Boston Dynamics(ボストンダイナミクス)の買収を含め、ロボットへの取り組みを実際に倍増させている。新しいMobile Eccentric Droid(MobED、モバイルエキセントリックドロイド)は、あらゆる意味でプラットフォームだ。それは文字通りのもので、中央に台になる部分を備えた四輪移動装置だ。また、電話会議から荷物の配達、スマートな乳母車まで、さまざまな機能を収容することができる。

画像クレジット:Hyundai

その安定化技術について、Hyundaiは次のようにいう。

偏心機構による姿勢制御システムは、地表状態に応じて各車輪の高さを調整することで、体の姿勢も安定させます。MobEDの12インチ空気タイヤは、さらに衝撃や振動を吸収するのに役立ちます。

一方、Tiger Globalはその派手な支出を続けている。今週同社は、カリフォルニア州パサデナを拠点とするElementary(エレメンタリー)のために3000万ドル(約34億3000万円)のシリーズBを主導した。Fika Ventures、Fathom Capital、Riot VC、Toyota Venturesも参加したこのラウンドによって、このマシンビジョンスタートアップの総資本は4750万ドル(約54億3000万円)になった。創業者のArye Barnehama(アーリエ・バーナハマ)CEOはTechCrunchに次のように語った。

製造業と物流は、パンデミックの前にすでに始まっていて、パンデミックの最中に大幅に増加した大規模な人手不足を経験しています。企業が、高価で見つけるのが難しいエンジニアリング人材に頼らずに、自動化を続けようとする中で、ノーコードAIソリューションを提供できる私たちのビジネスは拡大してきました。

インドを拠点とするロジスティクスロボティクス企業Unbox Roboticsの700万ドルのシリーズAラウンドは、3one4 Capitalによって主導された。Sixth Sense VenturesとRedstart Labsもラウンドに参加し、SOSVを含む多くの既存の投資家も参加した。同社によれば、調達した資金は採用、技術開発、そして新しい領域への拡大に向けられるとのことだ。

画像クレジット:Getty Images

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(文: Brian Heater、翻訳:sako)

TikTokが動画でバズった料理をユーザーに届ける宅配レストランを全米展開、3月に約300店舗オープン

TikTok(ティックトック)は、アプリで見たバイラルな食べ物動画を実際に食事としてオーダーし味わえるようにする新サービスの開始を準備している。同ソーシャルアプリはVirtual Dining Conceptsと提携し、「TikTok Kitchen(ティックトック・キッチン)」ブランドのデリバリー専用レストランを2022年、米国各地で立ち上げる予定だとBloombergが最初に報じた。レストランのメニューはTikTokで最も人気のあるバイラルフードを参考にしており、ユーザーはそれらを自宅に届くよう注文できる。両社は、3月に約300店舗をオープンしてデリバリーを開始し、2022年末までに1000店舗以上の出店を予定しているという。

当初のメニューには、ベイクドフェタパスタ、スマッシュバーガー、コーンリブ、パスタチップスなど、TikTokでバイラルレシピとなった料理が含まれる。特にベイクドフェタパスタはこの1年TikTokで絶大な人気を博し、Google(グーグル)が2021年に最も検索された料理として報告している。今後、各店舗のメニューは四半期ごとに、人気の出始めた新しい料理を取り入れて変更される予定だという。なお、TikTokがベイクドフェタパスタのような人気メニューを常設メニューにするかどうかはまだ不明だ。

TikTokはTechCrunchに、クリエイターがメニューの中の料理に対してクレジットを受け取り、パートナーシップの中で目立つように紹介されることを確認した。

「TikTok Kitchenの売上は、メニューのきっかけとなったクリエイターを支援するとともに、ユーザーの創造性を刺激し、喜びをもたらすというTikTokのミッションに沿って、他のクリエイターがプラットフォーム上で自己表現することを奨励・支援するために使用されます」とTikTokは述べている。

しかし同社は、これはTikTokの料理をファンに届けるためのキャンペーンであり、TikTokがレストラン事業に進出するわけではないと説明している。つまり、同社はこれを長期的なビジネスというよりも、マーケティング活動の一環として捉えているようだ。TikTokは、この「キャンペーン」がどのくらいの期間行われるのか、また注文方法やメニューアイテムの選択・更新方法などの詳細については言及していない。

2018年に設立されたVirtual Dining Conceptsは、複数のデリバリー専用ゴーストレストランを運営しており、YouTubeセレブのMrBeast(自身のバーチャルレストラン事業MrBeast Burger」を運営)、Guy Fieri(ガイ・フィエリ)氏、Steve Harvey(スティーブ・ハーベイ)氏、Mariah Carey(マライア・キャリー)氏、ラッパーのTyga(タイガ)氏など、多くの著名人と提携している。また、同社はデジタルメディア企業Barstool Sportsとも提携している。Virtual Dining Conceptsは、10月にシリーズAで2000万ドル(約22億7000万円)の資金を調達し、この投資を、新しい技術の導入、企業インフラの強化、マーケティングやカスタマーサポートの追加に充てる予定だと述べていた。

TikTokは、食のトレンドを作り出すことで広く知られており、同アプリに投稿された多くのバイラルレシピがTwitter(ツイッター)、Instagram(インスタグラム)、Facebook(フェイスブック)などの他のSNSプラットフォームで再共有されている。今回の提携は、この人気を利用して、TikTokブランドと、アプリ上で料理コンテンツを提供しているクリエイターたちの認知度をさらに高めようとする動きだ。

画像クレジット:Virtual Dining Concepts

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(文:Aisha Malik、翻訳:Aya Nakazato)

レストランやフードデリバリーの容器再利用を進めるDispatch Goodsが4.2億円を調達

プラスチック容器は、リサイクル品の受け入れを停止した国が増えているため、世界中の埋め立て地や海に捨てられている。これはとても深刻な問題だ。平均的な米国人は、毎年110ポンド(約50kg)の使い捨てプラスチックを使用・廃棄しているが、米国でリサイクルされているプラスチックはわずか8%だ。

レストランやフードデリバリーサービス、食料品店でもらうクラムシェル型のプラスチック容器はすべてリサイクル可能だと思うかもしれないが、現実としてはすべてのリサイクルセンターでそれらを受け入れられるわけではない。

Dispatch Goodsの再利用可能な容器のコレクション(画像クレジット:Maude Ballinger)

Dispatch Goodsの共同創業者でCEOのLindsey Hoell(リンジー・ホーエル)氏は、プラスチック容器やフリーザーパック、パッケージを回収するという重労働を引き受けるインフラを構築するために、2019年に同社を立ち上げた。容器類ははすべて同社の施設に運び込まれ、洗浄・消毒され、再利用のために再び販売される。レストランやフードデリバリーの顧客も、容器に記載されている番号をテキストで送信して、Dispatch Goodsによる回収を予約したり、容器を返却箱に入れたりすることができる。

会社を設立する前、ホーエル氏は医療関係の仕事をしていたが、カリフォルニアに移住してサーファーになることを夢見ていた。同氏は結局、カリフォルニアに移住し、そこでプラスチック危機を知ることになった。共同創業者のMaia Tekle(マイア・テクル)氏とは、Dispatch Goodsの立ち上げ時にSustainable Ocean Alliance(持続可能な海洋連合)を通じて出会った。当時、テクル氏はCaviarで西海岸のパートナーシップを担当していた。

ホーエル氏はTechCrunchに次のように語った。「リサイクルは人々に良いことをしているように思わせますが、もっと深く掘り下げてみると、流通市場での需要がなければ、必ずしも良いことをしているとは言えません。容器はダウンサイクルしかできませんが、容器を回収して処理する良いインフラがありません」。

Dispatch Goodsはそのインフラの構築に着手し、現在では週に1万〜1万5000個の食品パッケージを回収・処理している。また、DoorDashやImperfect Foodsなどの50社以上の顧客や、Bomberaをはじめとするベイエリアの50のレストランと提携している。ホーエル氏によると、Bomberaは夏にDispatch Goodsを利用し始めてから4000個の容器を交換した。

2021年に合計で約25万個の使い捨てプラスチックを交換したDispatch Goodsは12月6日、370万ドル(約4億2000万円)のシード資金調達を発表した。このラウンドはCongruent Venturesがリードし、Bread and Butter Ventures、Precursor Ventures、Incite Ventures、MCJ、Berkeley SkyDeckが参加した。今回のラウンドによりDispatch Goodsの資金調達総額は470万ドル(約5億3000万円)弱となった、とホーエル氏はTechCrunchに語った。

ホーエル氏とテクル氏は、トラックやフォークリフトの運転を学ぶほどの実践的な創業者だが、2020年9月に700ドル(約8万円)だった月間売上高が5月には2万ドル(約226万円)にまで成長したことを受けて、Dispatch Goodsは後押しを必要としていた。

2人は、チームを成長させ、サンフランシスコのマイクロハブを含む現在の施設を、その地域外で起きている成長やボルチモアの新施設に対応できるようにするために資本を探し求めた。

「このユースケースは以前には存在しなかったので、再利用のための施設をどのようなものにするか戦略化するまでの間、これを最大限活用します」とホーエル氏は話す。「私たちは今、戦略を構築している最中です」。

新たな資金は、地理的拡大、レストランとの提携拡大、新しいパッケージングの可能性の追求などに投資する予定だ。また、現在スタッフは9人だが、年内に3人加える。

Dispatch Goodsは、主にレストランとの提携を進めているが、先月、一般消費者を対象としたパイロットプログラムを開始した。一般消費者からの関心は寄せられたが、最終的な参入障壁を低くするために、企業への販売に徹するとホーエル氏は話す。

ホーエル氏は、成長の指標については具体的に説明しなかったが、収集したアイテムの数と立ち寄った回数を記録していると述べた。事業開始当初は、1回の立ち寄りで約4点のアイテムを回収していたが、現在では平均12点を回収し、立ち寄り回数も3回から9回程度に増加している。

一方、ホーエル氏とテクル氏は、Congruent Venturesの副社長であるChristina O’Conor(クリスティーナ・オコナー)氏を新しい役員会メンバーの1人として迎え入れることを楽しみにしている。

オコナー氏は「ゼロ・ウェイスト(ごみゼロ)運動は急速に拡大しており、持続可能な未来のためには、循環型パッケージングは避けて通れないものだと考えています」と声明で述べた。「リンジーとマイアは、再利用のために設計されたインフラを支える新しいシステムを構築するための熱意、戦略的洞察力、そして情熱を持っていることを証明しました」。

Dispatch Goodsのアドバイザリーチームには、DuContra Venturesの共同創業者で俳優のAdrian Grenier(エイドリアン・グレニアー)氏というスターパワーもある。グレニアー氏は、Dispatch Goodsの活動について「ずっと気になっていました」と語った。実際、同氏はプラスチック容器に反感を持っており、テイクアウトを極力避け、自分で再利用可能な容器を持ち込んだりさえする。

「私たちは、世界を再構築することがいかに困難であるかを知っています。テクノロジーが与えてくれたオンデマンドのライフスタイルに誰もが興奮していますが、どれほどの犠牲を払っているのでしょうか。Dispatch Goodsは、企業の利便性を高め、ビジネスモデルにおけるこの種の転換を可能にする機会を提供します」と同氏は述べた。

画像クレジット:Maude Ballinger / Dispatch Goods co-founders Maia Tekle and Lindsey Hoell

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

Nommiがフードボウルを作るキッチンロボットを展開、「料理の鉄人」森本氏と提携も

レストラン業界で人手不足が続く中、オーナーらは今後、自動化への期待をますます募らせるはずだ。また、世界的なパンデミックの影響で食品の取り扱いが厳しくなっていることもあり、食品ロボットの会社を経営するには間違いなく最高のタイミングだと言える。

LAに拠点を置くNommi(ノミ)は、レストランブランドのC3(Creating Culinary Communities)との提携を発表し、世界中の不動産や大学キャンパスのパートナーに、最大1000台のロボットキオスクを展開する予定だ。

自動化が可能な食品の種類は、まだ比較的少ない。Nommiが注目しているのは、ピザのように比較的均一で自己完結型の食品配送システムであるフードボウルで、ロボットに最適なものだ。同社を代表する製品は、基本的に細長いキオスクで、客が自分の食事をカスタマイズできるタッチスクリーンがビルトインされている。

このマシンは、麺類、穀物、サラダなどのボウルを最短3分で作ることができる。最大330個のボウルと蓋を収納でき、一度に複数のボウルを作ることが可能だ。完成したボウルを最大21個「ロッカー」にキープし、料理を取り出すにはQRコードを使う。C3との契約には、料理の鉄人である森本正治氏とのパートナーシップも含まれており、森本氏の「Sa’Moto」ブランドのプロダクトがマシンに導入され、24時間365日稼働することになる。

「Nommiの秘密のソースは、ブランドと消費者の両方の視点から見て、比類のない汎用性にあることは間違いありません」と、社長で共同創業者のBuck Jordan(バック・ジョーダン)氏はリリースで述べている。「C3のような革新的なプラットフォームと提携することで、多くの収入源とユニークな顧客へのアクセスが可能になります。両社とも食品業界に変革をもたらしており、我々のパートナーシップは最高のタイミングで実現しました」と話した。

Nommiは、MisoやFuture Acresといったロボット企業のインキュベーターであるWavemaker Labsの支援を受け、最大2000万ドル(約23億円)の資金調達に取り組んでいる。

画像クレジット:Nommi

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

ハンバーガーをひっくり返すロボット「Flippy」の能力が向上、調理前後の作業を追加

Miso Roboticsは米国時間11月2日、ファストフードチェーンWhite Castle(ホワイト・キャッスル)の一部店舗でのパイロット運用に続き、ハンバーガー調理ロボット「Flippy」の新バージョンを発表した。新バージョンのロボットは「Flippy 2」と名づけられ、ファストフード店での簡単な調理作業をさらに自動化することを目的としている。

Misoのプレスリリースによると、オリジナルバージョンに対するスタッフからのフィードバックは、Flippyの主な調理作業の前後に人間の助けが必要すぎるというものだった。それには、調理されていない食材を最初に扱うことと、調理された食材をホールディングエリアに置くことが含まれる。基本的にFlippyは、調理中の食材を常に監視し、調整する必要がある部分の作業を置き換えていたが、その前や後の段階ではあまり助けになっていなかった。

画像クレジット:Miso Robotics

MisoのMike Bell(マイク・ベル)CEOはこう述べている。

すべてのテクノロジーがそうであるように、Flippy 2は前作から大幅に進化しています。実際のレストラン環境で開発を推進するために、White Castleから得た知見に非常に感謝しています。Flippy 2は前ほどキッチンのスペースを取らず、新しいバスケットを充填し、空け、戻す機能により、生産量を飛躍的に向上させます。Flippyが誕生して以来、当社の目標は、どんな厨房にも調和し、混乱なく機能するカスタマイズ可能なソリューションを提供することでした。

Misoは、よりコンパクトになったFlippyは、従来のロボットに比べてスループットを3割近く向上させることができ、人間の手を煩わせることが大幅に減ったと述べている。2代目のFlippyは、パンデミックの影響でレストラン業界が深刻な人手不足に直面している中で発表された。

画像クレジット:Miso Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

スタンフォード大学エンジニアがミシュランシェフが作ったロボットレストラン、グレインボウルなどを提供

スタンフォード大学でエンジニアリングを専攻していたAlex Kolchinski(アレックス・コルチンスキー)氏、Alex Gruebele(アレックス・グルーベレ)氏、Max Perham(マックス・パーハム)氏の3人は、キャンパス内の食事の選択肢の少なさと高コストに対する不満で意見が一致した。

コルチンスキー氏はTechCrunchの取材に対し「補助金付きの食事プランでも、昼食は10ドル(約1140円)、夕食はそれ以上かかりました」と語った。「私は、昼食を2回食べるために、食堂で座って仕事をしていました。アレックス(グルーベレ)はChipotleに行って、そこで奨学金を使っていました」。

美味しい食事をより安い価格で提供するにはどうしたらいいかを考えているうちに、ロボット工学の博士号を取得していたコルチンスキー氏とグルーベレ氏は、食事の準備などの作業をロボットが手助けできるのではないかと考えるようになった。

コルチンスキー氏は「10ドルのブリトーボウルにかかる食費は3ドル(約340円)で、残りは人件費、諸経費、不動産などに使われていることがわかりました。もし私たちが自己完結型のレストランを作れば、本当においしい食べ物の価格を下げることができ、しかもそれが近くにあるのです」。

Mezliのボウルができ上がる過程のアニメーション(画像クレジット:Mezli)

3人は、ミシュランの星を獲得しているシェフ、Eric Minnich(エリック・ミニッヒ)氏の協力を仰ぎ、完全自律型のモジュール式レストランを建設する会社Mezli(メズリ)を立ち上げた。ミニッヒ氏はサンフランシスコのスペイン料理レストラン「The Commissary」の創業時の料理チームの一員で、エグゼクティブシェフでもある。会社設立の計画の大部分は2020年練られ、2021年1月にY Combinatorでスタートした。

Mezliが開発したロボットレストランのプロトタイプは、現在、サンマテオにある同社のKitchenTown店舗で稼働しており、顧客にサービスを提供している。マシーンは、10×20フィート(3×6メートル)のスペースを取り、自立型だ。手始めに、地中海スタイルのグレインボウル(穀物や豆、野菜などを使ったサラダ)、副菜、飲み物を提供している。

ボウルの価格は4.99ドル(約570円)からだ。客はレストランで直接注文することも、オンラインで注文してスマートロッカーで受け取ることもでき、あるいは配達してもらうこともできる。テスト店舗ではすでに有望な成果があがっており、ロボットレストランの料理を食べた客の44%がリピーターになっている、とコルチンスキー氏は話す。

同社は現在、2022年の一般提供に向けて、試作品の第3バージョンの開発を進めている。この勢いは、Metaplanet、ロボット工学者のPieter Abbeel(ピーター・アビール)氏、レストラン経営者のZaid Ayoub(ザイド・アユーブ)氏、Y Combinatorなどの投資家からの300万ドル(約3億4000万円)のシードラウンド資金によって支えられている。この新たな資金調達でMezliは人材、部品、食料、運営費をまかなうことができる。

会社の規模が大きくなれば、Mezliは何千ものモジュール式レストランを3Dプリントでき、従来のレストランが営業開始するまでにかかる時間と費用の何分の1かで展開できるようになる、とコルチンスキーは付け加えた。

また「私たちは、店舗を数カ所に増やした後、大量生産する予定です。大量生産により、他のレストランよりも早く1000店舗に到達すると見込んでいます」とも同氏は話した。

Mezliの出資者の1人であるピーター・アビール氏は、カリフォルニア大学バークレー校の教授であり、GradescopeとCovariantの創業チームに参加している起業家でもある。同氏は、創業チームのクラスメートからMezliのことを聞き、ぜひ関わりたいと考えた。

同氏は、健康的な食品をより手頃な価格で提供するという会社のビジョンにひかれた。また、自身、科学者として、ビジネスとエンジニアリングを駆使して、食べ物が人々の手に渡るまでや、食べ物の提供方法でのボトルネックを減らすという「第一原理」のアプローチにも好感を持った。

「これは、私の心に響くものでした。物理的なことは何でも思った以上に難しいものです。なので、第一原理で解決する方法を思いつかなければ、難しいのです。加えて、初日から料理が提供されたのは説得力があります」と同氏は述べた。

画像クレジット:Mezli

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

Beyond Meatの植物由来「チキン」テンダーが食料品店に登場

Beyond Meat(ビヨンド・ミート)はこの夏、植物由来の「チキン」テンダーをレストランで提供し始めたが、小売店での販売も開始したことで、まもなく家庭でも「チキン」テンダーを楽しめるようになる。この5ドル(約550円)のテンダーは、10月から一部の市場に限られるが、Walmartをはじめとする主要な食料品店で販売される。Beyond Meatsは、2021年後半には販売を拡大する予定だ。

Beyond Meatsによると、このテンダーは、実際の鶏肉を使ったものよりも飽和脂肪が50%少なく、遺伝子組み換え作物、抗生物質、ホルモン、コレステロールも含まれていない。同社では、チキンテンダーの味と食感を再現するために、大豆ベースのレシピではなく、ソラマメを使用している。調理済みのチキンテンダーは、10分以内に温めることができるという。

Beyond Meatのチキンテンダーは、Walmartの他、Jewel-Osco、Safeway NorCal、Harris Teeter、Giant Foods、ShopRiteの一部の店舗でも販売を開始する。一方で、同社は、ウォルマートでの販売もさらに強化するとしている。1300以上の店舗でBreakfast Sausage Pattiesが販売さる他、さらに多くの店舗でBeyond MeatballsとBeyond Beef Crumblesが販売される予定だ。

植物性代替肉のエコシステムにおいて、2021年9月は忙しい月だった。Beyond Meatの競合であるImpossible(インポッシブル)社は、数週間前から「チキン」ナゲットのレストランでの販売を開始した。また、Impossible社は、今秋、同社の豚挽き肉をレストランで提供することを発表した。

編集部注:本稿の初出はEngadget

画像クレジット:Beyond Meat

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(文:Kris Holt、翻訳:Yuta Kaminishi)

Uber Eats、Grubhub、DoorDashが配達手数料制限を法制化したNY市を提訴

アプリがレストランのサービス利用に対して請求できる手数料の金額を恒久的に制限する法律をめぐり、フード注文・デリバリープラットフォームのDoorDash(ドアダッシュ)、Caviar(キャビア)、Grubhub(グラブハブ)、Seamless(シームレス)、Postmates(ポストメイツ)、Uber Eats(ウーバーイーツ)がニューヨーク市提訴で結束した。

これらの企業が米国9月9日夜に連邦裁判所に訴訟を起こし、NY市の法律の施行、不特定の金銭的損害、陪審員による裁判を回避する差止命令を模索している、とウォールストリートジャーナル紙が最初に報じた。

ニューヨーク市議会は2020年、パンデミックによるロックダウンで苦境に陥ったレストラン業界の負担を軽減しようと、サードパーティのフードデリバリーサービスがレストランにデリバリー注文1回につき15%超を、マーケティングと他のデリバリー以外のサービスに対して5%超を課金するのを禁じる時限立法を導入した。NY市を提訴した企業は、クイーンズ区選出の市議会議員Francisco Moya(フランシスコ・モヤ)氏が6月に提出した法案のもとで8月に恒久化された手数料の制限が、すでに数億ドルの損害を生じさせた、と主張している。

「新型コロナウイルス感染症のパンデミックでは、原告のようなサードパーティのプラットフォームはレストランの経営や食産業労働者の雇用の継続の助けになりました。ここには地域のレストラン向けのコロナ救済活動への何百万ドルという資金提供も含まれます」と訴状にはある。「にもかかわらずニューヨーク市は、民間の極めて競争が激しい産業、つまりサードパーティのラットフォームを通じたフード注文・デリバリーの促進に恒久的な価格統制を課すという異常な手段を取りました。そうした恒久的な価格統制は原告に対してだけでなく、市が奉仕を約束している地域密着のレストランの活性化にもに害を及ぼします」。

他の自治体もまたパンデミックの間に似たような手数料上限を設けたが、パンデミックが落ち着き、レストランが店内営業を始められるようになったのにともない、大半はそうした措置をなくした。サンフランシスコ市は、恒久的な15%上限を導入することを決めたひと握りの自治体の1つで、アプリベースの企業はサンフランシスコでも訴訟を起こしている。高ければ注文1件あたり30%にもなる手数料の制限の延長は「公衆衛生の非常事態とまったく関係がなく」、随意契約に干渉し、また「ダイナミックな産業の運営に経済的条件」を指示しているため、違憲だと主張している。

暫定法では、上限を破った場合、レストラン1軒につき1日あたり最大1000ドル(約11万円)の罰金が科される。新しい法律によりレストランと契約を結び直す必要に迫られるばかりか、消費者への価格をあげて配達員の稼ぐ力を損なうことになる、と原告企業は述べた。

また、NY市が地域のレストランの収益性を改善したければ、配達サービスの手数料を抑制する代わりに、減税したり市の懐から助成金を出したりすることができるはずだ、とも主張している。

「しかしそうした合法的なオプションの1つを取るのではなく、NY市はサードパーティプラットフォームに対して敵意丸出しの不合理な法律を導入しました」と原告企業は述べた。その際、マヨ氏が配達料金にかかる手数料を10%を上限とする法案を提出した後の同氏のツイート「NYCの地域のレストランは新型コロナが直撃するずっと前から、GrubHubのようなサードパーティサービスの配達料金に10%の上限を必要としていました。レストランは今そうした上限を心底求めています」を引用した。

今回の法制化は、消費者のためにコストを安く抑えようとしてレストランとギグワーカーの両方に負担を強いていると批判されているアプリベースの配達企業に対してますます厳しい目が向けられている中でのものでもる。直近では、カリフォリニアの上位裁判所が、そうした企業が引き続き労働者を従業員ではなく独立請負人として分類できるようにするProposition 22は違憲とする判決を下した。この判決を受けて、DoorDashの労働者は先に、賃金アップとチップに関するさらなる透明性を求めてDoorDashのCEO、Tony Xu(トニー・シュー)氏の自宅の外で抗議活動を行った。一方、マサチューセッツ州ではProp 22同様の法律について、2022年11月に投票が行われることになった。

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「レストランは手数料を通じて配達などさまざまなサービスの代金をアプリベースの配達会社に払っています」とNY市を相手取った訴訟で匿名の配達員は述べた。「こうした手数料に上限を設けることは私のような人の収入が少なくなることを意味します。手数料の上限はまた、私が届ける顧客にとって配達サービスがより高価なものになり、ひいては私への配達依頼が少なくなることにつながるかもしれません」。

画像クレジット:Tomohiro Ohsumi/Getty Images / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

友達が食べているものがわかったり注文もできるソーシャルフードオーダープラットフォームSnackpass

あらゆる食品デリバリー企業が、割引コードやより迅速なサービス、さらにはゴーストキッチンやダークストアといった領域への進出などでライバルに差をつけようとしている一方で、友人が何を食べているかを見たり、食べ物や飲み物を注文し合ったり、グループオーダーをして購入者が自分で受け取りに行くといった、よりライトでソーシャルなコンセプトで作られたスタートアップ企業が、多額のシリーズBを調達したばかりで、すでに多くの市場で利益を上げているという。

Snackpassは、自らを「food meets friends(食で友達とつながる)」と表現し、本質的にはレストランでの注文のためのソーシャルコマースプラットフォームであるとしている。CEOによれば「snack」には「食べる」という意味と「かわいい人」を意味する媚びた意味があるとのことだが、当社は7000万ドル(約77億4100万円)という超大型のシリーズBを獲得し、資金は米国内のより多くの市場への拡大を継続するために使用される。

Snackpassは、4年前、Jamie Marshall(ジェイミー・マーシャル)と共同で会社を設立したCEOのKevin Tan(ケビン・タン)がまだイェール大学で物理学を専攻していた頃に構想され、高等教育機関というルーツに忠実であり続けることで成長してきた。現在、同社は13の大学都市に50万人のユーザーを抱え、前年比7倍の爆発的な成長を遂げている。今回のラウンドで、同社の企業価値は4億ドル(約442億2000万円)以上になる。

今回の資金調達には、興味深い投資家グループが参加している。Craft Ventures(クラフト・ベンチャーズ)を筆頭に、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、2100万ドル(約23億1900万円)のシリーズAを主導)、General Catalyst(ゼネラル・カタリスト)、Yコンビネータ、Pioneer Fund(パイオニア・ファンド、YCの卒業生によるファンド)、そして個人の出資者が多数参加しており、Snackpassが注目されていること、そしてミレニアル世代や若いユーザーが利用するフードプラットフォームとしての地位を確立しつつあることを物語っている。

このリストには、Airbnbの卒業生による投資家のシンジケートであるAirAngels、Uberに買収された配送大手Postmates(Bastian、お前もか)、ホスピタリティ起業家のDavid Grutman(デイビット・グラットマン)、ゴールデンステート・ウォリアーズのDraymond Green(ドレイモンド・グリーン)、Gaingels、Kevin Hart(ケヴィン・ハート)のベンチャーファンドであるHartBeat Ventures、ミュージシャンのJonas Brothers(ジョナス・ブラザーズ)、Shrug Capital(「非技術系」の消費者向けスタートアップに興味があるというベンチャーキャピタル)、Boston Celtics(ボストン・セルティックス)の共同オーナーであるStephen Pagliuca(スティーブン・パリウカ)のファミリーオフィスであるPags Group、ヒップホップDJのスティーブ・アオキ、Banana CapitalのTurner Novak(ターナー・ノヴァック)、Moving CapitalのWilliam Barnes(ウィリアム・バーンズ)、そしてUberの卒業生による投資家シンジケートなどが含まれている。

最近の食品注文プラットフォームの多くはデリバリーに焦点を当てており、多くの場合、その実行方法において他のプラットフォームよりも優位に立つ方法を模索しているが、それらのコスト差は往々にして非常に小さい。Snackpassの大きな突破口は、単純にそのような出し抜き作戦から撤退し、そうした前提から離れて、もっと平凡なもの、つまり行列をなくすことを目指したことだ。

タンは、Snackpassがユーザーにもしアプリを使っていなかったらどうするかを尋ねたところ「ああ、列に並んで注文するだけですよ」と答えたとインタビューで語っている。

「現在のマーケットシェアは、レジに並んで注文する人が占めています。私たちのビジョンは、5年後にはそのような光景はなくなっている、例えばレジがなくなっていることです。そうした行為は意味のないことだと思っています」。

彼は、どうしても配達を希望する人には、配達を選択することもできると付け加える。SnackpassはUberEatsのようなデリバリーサービスと統合しているが、Snackpassでの注文の90%は店頭受取だ。つまり、自社で配達員やそのインフラを用意する必要がないだけでなく、そのための運営コストもかからないということだ。

実際には、多くの若者が何かおいしいものを食べに行くことを喜んでいるようだ。つまり、社交的になり、食べ物や飲み物(タピオカティーが多い)を買った場所で自撮りをする。それが1つの経験になるのだ。

これは、別の意味で市場が存在する場所でもある。

タンは「デリバリー市場は、レストラン業界の8%に過ぎないということを人々は知らないのです。デリバリーは大手企業が競って参入しており、巨大な市場ですが、レストラン業界はそれよりもはるかに大きく、8000億ドル(約88兆3816億円)もの規模があります。そして、その購買の90%は未だにオフラインで行われています」と、行列に並び、注文し、購入して帰る多くの人々のことを指していう。「この購買方法は匿名性が高く、今まさに崩壊の危機に瀕しています。私たちは、その大きなブルーオーシャンに注目しています」。

そのやり方は、ターゲットとなるユーザーに効果を発揮しているようだ。タンは、このサービスを開始した市場では、学生への浸透率が80%に達しているという。平均的な顧客は月に4.5回注文し、中には毎日注文する顧客もいるという。「UberEatsのようなデリバリープラットフォームの5倍から10倍のエンゲージメントがあることが実際にわかります」。

同社のコミッションは7%からとなっており、現在はオンライン注文、セルフサービスキオスク、デジタルメニュー、マーケティングサービス、顧客紹介プログラムなどを提供している。すでに(特定の市場で)利益を上げているが、今後の成長に合わせて(他の購買層にも拡大するかもしれない)、これらすべてを追加・拡張していくことが考えられる。

Snackpassには、Snapchatを彷彿とさせる何かがある。それは、名前の響きが似ているということだけではなく、どちらも大学生のユーザーに支持されているということだけでもない(そして、どちらも彼らを正面切ってターゲットにしているということだけでもない)。それは、このアプリの少し変わっている点であり、そして他の方法では面倒だと感じたり、平凡だと感じたり、基本的には年配の人がすることだと思われることを、いかに軽いタッチで行うかということなのだ。

今のところ、SnackpassにはSNSとしての「ユーザー数グラフ」それ自体はなく、特定のSNSアプリとも深く連携していないが、SnapやFacebookのような企業が商売に大きく関与していることを考えれば、将来的にはパートナーシップを結ぶことも考えられる。

クラフトベンチャーズのパートナーであるBryan Rosenblatt(ブライアン・ローゼンブラット)はこう語る。「Snackpassは、共有された報酬、プレゼント、SNSのアクティビティフィードを通じて食を中心としたソーシャルな体験を構築することで、ダイナミックで魅力的なレストラン注文システムを作り上げました。その市場の成長と製品の口コミによる人気は、Snackpassの優れたチームとビジョンと相まって、消費者と企業の両方にとって究極のソリューションとなっています。今回の資金調達により、Snackpassを次のレベルに引き上げるお手伝いができることをうれしく思います」。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

サラダのチェーン店SweetgreenがキッチンロボットのSpyceを買収

パンデミックでロボットの世界にも多くの変化が訪れたが、キッチンの自動化への関心が加速したこともその1つだ。結局のところ、食品とレストランの業界は、店舗などの閉鎖が相次ぐ中でもエッセンシャル(必要不可欠)と見なされたが、キッチンスタッフの確保が難しくなり、ウイルスの感染に関する疑問が多かった初期には、求職者を見つけるのも困難だった。

カリフォルニアのサラダのファストフード店Sweetgreenが、Spyceを買収して本格的に自動化を進めると発表した。2015年にボストンに登場したSpyceは当時、MITの機械工学の学生たちのスピンアウトとして話題になった。最初は学生食堂で配膳の自動化を手がけたが、その後、ボストンで自動化レストランを2店開いた。買収が決まってもSpyceのレストランは営業を続けると告知している。

最終的にSweetgreenは、Spyceの技術をレストランに取り入れるつもりだ。ただしチェーン店は全米に120以上あるため、行き渡るまでには時間がかかるだろう。

画像クレジット:Spyce

SweetgreenのCEOで共同創業者のJonathan Neman(ジョナサン・ネマン)氏は、声明で次のように述べている。「多くの人たちに本物の食べ物を提供して、健康的なファストフードの大型チェーン店を次世代のために作りたいと考えています。Spyceには、そのビジョンにぴったりの最新技術があります。両社の、各分野最高のチームが力を合わせれば、チームのメンバーの仕事の内容を高めることができ、顧客にはもっと均質な体験を提供して、本物の食べ物を多くのコミュニティに広げていけるでしょう」。

ピザと同様に、サラダも初期の食品自動化の明確なターゲットだ。人気があり、比較的簡単に自動化できる。基本的には、さまざまなシュートの材料をボウルに混ぜ合わせるだけだからだ。

Sweetgreenは、従業員がすぐにクビになることはないと声明の最後に付け加えている:

「高度なテクノロジーと一緒に仕事をすることによって、チームのメンバーは料理の調整準備やホスピタリティにより集中できるようになります。教育訓練と人材開発への投資を増やし、チームのメンバーをサポートしてヘッドコーチになってもらいます。テクノロジーに関心のあるチームメンバーは自らスキルを磨いて、Spyceの技術の運用やメンテナンスを担当してもらいます」。

買収の完了は、第3四半期を予定している。価額などの条件は公表されていない。

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画像クレジット:Spyce

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ワクチン接種証明が必要なレストランのためにデジタルワクチンカードを米OpenTableが作成

ニューヨーク、サンフランシスコ、ニューオーリンズなどの都市では、屋内で食事する人に新型コロナウイルスのワクチン接種義務を制定する動きがある。そこで、オンラインレストラン予約サービスのOpenTable(オープンテーブル)は、レストランがワクチン接種のチェックを効率化できる機能の展開を開始する。同社は米国時間8月23日、生体認証セキュリティ企業であるCLEAR(クリア)との提携を発表し、ユーザーがデジタルワクチン接種証明カードを作成できるようにした。

CLEARは、ユーザーが目と顔をスキャンして本人確認を行うことで、空港のセキュリティを迅速化するサブスクリプションサービスで会社を築いてきた。しかし、新型コロナウイルスの感染流行が始まって以来、同社はユーザーにワクチン接種の証明を提供する無料サービス「Health Pass」を開始した。OpenTableは9月から、CLEARのデジタルワクチン接種証明カードとの連携を、iOSおよびAndroid向けアプリで展開する。

OpenTableのアプリで、ワクチン接種が必要なレストランを予約すると、確認画面の上部にCLEARのバナーが表示される。このバナーをクリックすると、CLEARのデジタルワクチン接種証明カードを作成できる。そして食事の際には、予約確認ページの「CLEAR」ボタンをクリックして、デジタルワクチン接種証明カードを呼び出すことができる。OpenTableによれば、同社が個人の健康情報やワクチン接種証明カードのデータを保存することはないとのこと。

CLEARは、ユーザーのワクチン接種情報を照合できる、ワクチンプロバイダーや薬局のネットワークを持っている。あるいはユーザーが、ニューヨークやカリフォルニア、またはWalmart(ウォルマート)でワクチンを接種した人に提供されるSmart-QRコードをスキャンしてもよい。これら2つの方法ではデジタルで検証される一方で、CLEARはユーザーが米国疾病予防管理センター(CDC)の物理的なワクチン接種記録カードから情報をアップロードすることも受け付けているが、この方法では検証レイヤーが追加されていないため、確実性は高くない。

「CLEARは、画像認識を用いてCDCのワクチン接種記録カードの写真であることを認識し、不正行為に対するセキュリティレイヤーを設けています。このプロセスを通すことで、CLEARのデジタルワクチン接種証明カードはユーザーの認証済みIDと直接結びつくことになり、不正行為の抑止に役立ちます」と、CLEARの担当者は、TechCrunchの取材に語った。このアプリを利用するには、政府が発行した身分証明書をアップロードし、自撮りした写真を送信して本人確認を行う必要がある。

これらのデジタル認証は、偽のワクチン証明カードや他人のカードの写真を使おうとする人たちの不正を防ぐ効果があるだろう。特に、レストランの中には、ワクチンカードと身分証を照合しない店もあるからだ。ニューヨークでは「Excelsior Pass(エクセルシオール・パス)」というアプリを使って、健康記録をもとにワクチン接種の有無を確認しているが、他に同様の技術を導入している州はハワイだけだ。このようにワクチン接種証明の提示を強制することは、多くの州で禁止されている。

今月初め、OpenTableはレストランのプロフィールページに、安全対策として「ワクチン接種の証明」を追加できる機能を導入した。そして個々の食堂は、客が各レストランやレストラングループの入店条件を満たしていることを「認証」することができる。つまり、お気に入りのタコス屋でワクチン接種の証明をしておけば、次回からワクチン接種証明カードを提示する必要がなくなる。これは個人の客にのみ適用されるもので、団体客には適用されない。なお、OpenTableには最近、ダイレクトメッセージ機能が追加され、食事制限の変更をレストランに伝えることもできるようになった。

関連記事:米国のワクチン接種証明アプリ、倫理面でのリスクが潜む中で企業による開発が進む

画像クレジット:OpenTable

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

サンフランシスコ名物フードトラックフェス「Off the Grid」、山火事、パンデミックを乗り越えて地元の食文化維持にも貢献

サンフランシスコでグルメといえば「Off the Grid(オフ・ザ・グリッド)」だ。2010年にMatt Cohen(マット・コーエン)氏が設立した同名のイベント会社は、起業を夢見るベンダーのフードトラックを中心に、身近で楽しめるポップアップフェスティバルを計画。食と食を楽しむ人々について独創的なアイデアを持つ、野心的で多様な未来のシェフに道を開くためのこのイベントは、フードトラックムーブメントの先駆けとなった。

サンフランシスコのフォートメイソンで開催される「Off the Grid」のフードフェスティバル(画像クレジット:Off the Grid)

フェスティバルは年々人気が高まり(筆者も何度か立ち寄ったが、長蛇の列ができていた)、Off the Grid自体もイベント向けのケータリングサービスをますます拡大してきた。コーエン氏は「食べ物はどんな時でも心の支えになるという信念に基づいてキャリアを築いてきた」と話す。

古き良き時代の話だろうか?

同社に変化の兆しが見え始めたのは、ソノマやナパで発生したような山火事がカリフォルニアを襲った2017年のことだった。第一線で活躍する消防士たちは、時には署から離れたところでの消火活動も余儀なくされ、MRE(米軍が採用している配給品)のようなものしか口にできないことも多かった。

コーエン氏とチームは、ここにチャンスを見出した。「長年にわたり、緊急時の配給品は、カロリーを採るためだけのものと考えられ、必ずしも地元の食品事業者にとって利益の出るものではありませんでした」とコーエン氏。配給品は総じて当たり障りのない味で、通常は大量に州外に注文される。点と点をつなげるように、Off the Gridが物流を提供して、地元のレストラン経営者が作った料理を最前線に届けることはできないだろうか?

Off the Gridは2017年の山火事をきっかけに、消防隊や被災者の支援に乗り出す。同年、Off the Gridはレストラン経営者と協力して推定2万人に食事を提供した。「緊急対応における市場の状況を知ることができた」とコーエン氏は話す。

2020年に新型コロナウイルス感染症によるパンデミックがカリフォルニアをはじめとする世界各地で発生したことにより、Off the Gridの試みは劇的に加速する。突如として、レストランと地域社会をつなげる手段がデリバリーだけになり、もはや火災が発生している山麓だけではなく、常にあらゆる場所が最前線となったのだ。

2020年のパンデミックや山火事のピーク時に、パートナーのレストランと協力して、最前線の労働者や被災者に食事を届ける事業を拡大したOff the Grid(画像クレジット:Off the Grid)

Off the Gridは、悲惨な状況にある人々に心の安らぎを提供する機会を得て、事業を方向転換する。コーエン氏は次のように話す。「食べられるものさえあればラッキーであり、非常時の食事は美味しくないと考えられているかもしれません」「でも、つらい状況であればあるほど、美味しい食事が心の支えになるのです」。パンデミックの期間中、Off the Gridは、一時収容施設に滞在する人から自宅待機の免疫力の低い人まで、130万食の食事を提供し「常に喜んでもらえるように、選択肢を増やす」ことにも成功した。

このモデルは、美味しい食事を提供するだけでなく、Off the Gridが長年のプログラムで育ててきた地元の食文化の維持にも貢献している。コーエン氏は、カリフォルニアのみならず世界各地で気候変動が深刻化する中、こうした地域とのつながりは、レジリエンス(回復力)の高いコミュニティを構築するための重要なツールであると考えている。

2020年の急激な成長により、同社は迅速な事業拡大を余儀なくされた。食品の安全性や健康に関する規制は郡によって異なるので、Off the Gridはベイエリアをはじめとするカリフォルニア州全域に食事を届けるにあたり、事務や物流を処理するためのスケーラブルなプロセスを開発する必要があった。この技術は、設立から11年目を迎えたOff the Gridの次のビジネスの基盤となっている。

「フードビジネスにはフードビジネスだけのユニークな側面がたくさんあります。ライセンスや許可、保険といったあまりおもしろくないものも、運営には必要です」とコーエン氏は話す。同社のロジスティックスはますます体系化され、2021年は同社にとってさらに成長できる年になるだろう。

Off the GridのCEOかつ設立者マット・コーエン氏(画像クレジット:Off the Grid)

コーエン氏は次のように話す。「州と赤十字社と協力してカリフォルニア州の中でも比較的火災の危険性が高い39の郡を特定し、200店のレストランをリスト化しました。火災が発生した場合にはこれらのレストランにアクセスして活動を開始します」。現在、同社の約半分はこの緊急対応プログラムに特化している。

とはいえ、フードフェスティバルがなくなるわけではない。ノースビーチのコイトタワーの近くにあるLevi’s Plaza(リーバイス・プラザ)など、小規模な会場ではすでに再開され、十分に安全になれば大規模なフェスティバルも再開するという。しかし、緊急事態への対応は、ミッションを重視するこの会社にとって、新たな、かつ永続的な使命である。「ニーズがある限り、確実に継続していきます」。

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カテゴリー:その他
タグ:サンフランシスコ自然災害レストラン

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(文:Danny Crichton、翻訳:Dragonfly)

出張シェフが1食600円台で作り置き、シェアダインが急拡大で「年内に全国展開も視野」

出張シェフがユーザーの自宅に訪問し、家族の食事を作り置きしてくれるサービス「シェアダイン」が人気だ。シェアダインは、さまざまな料理に対応できる管理栄養士や栄養士、調理師、レストランシェフなどの「食の専門家」と、食の悩みを持つユーザーをマッチングするプラットフォームサービスとなる。

1度の訪問における合計の出費は、税込み7480円の「フリープラン(シェフの指名なし)」であれば、平均的な食材費3500円を加えて約1万980円で、12品(16食分)の料理ができ、1食当たり税込み686円で利用できる。4人家族であれば4日分、単身世帯であれば2週間ほどの食事量に相当する。

厚生労働省の調査によると、2020年における月間の平均食料消費支出は、2人以上の世帯で約8万円となっている。フリープランであれば、1回の食糧費3500円を加えても、月4回利用で約4万3920円。平均よりも安く消費支出を抑えながら「食の専門家」が作る料理を楽しむことができるのだ。

同サービスを提供するシェアダインは2017年5月に設立し、18年からサービスを始めた。子育てをする中で家庭の食卓に悩みを持っていた井出有希氏と飯田陽狩氏が共同代表を務めている。現在は毎月100人前後が出張シェフとして登録しているなど、急拡大するサービスについて、井出氏に話を聞いた。

出張シェフが無料の買い物代行も

会員登録は無料で、利用方法はシンプルだ。シェアダインのページで、最寄り駅やプランから出張シェフを選ぶことができる。幅広いプランが用意されており、妊活・産前産後や離乳食、生活習慣病、食育、筋トレ、ダイエット、介護、偏食、お弁当など、ユーザーは自身に合った料理を選べる。選ぶだけでなく、アレルギー対応や具体的な食の悩みについても事前にシェフに相談できる。

シェフは食材の買い出し代行も無料で行う。また、訪問した3時間の中で、調理した12品前後の料理について保存方法やアレンジ方法の説明、キッチン周りの片づけまでする。訪問後は、ユーザーからの料理に関する質問に答える他、簡単なレシピの共有にも応じる。

2019年4月からはサブスク型の提供も始め、月2(隔週)のプランで税込み1万4960円からとなる。料金設定はシェフが行っており、シェアダインは20%の手数料を取っている。サブスクは月2回、月3回、月4回とあるが、利用回数とシェフの設定料金を掛け合わせた金額が、月額の費用になる。

なお、どのプランでも食材費は別途かかるものの、買い物代行費や交通費などは表示価格に初めから組み込まれ、プラスされることはない。この他、単発での申込みやお試しプランなども用意している。

コロナ禍におけるシェフを支援

コロナ禍でいわゆる「おうち時間」が増える中、ユーザーとシェフの獲得に弾みがついた。2021年6月時点で、コロナ禍以前(2019年12月)と比べてユーザーは4倍に増えた。ローンチ当初は子育て世帯の利用がほとんどだったが、最近では単身世帯やシニアの利用も増加。単身世帯には家飲みのおつまみプランなどを打ち出した他、オンラインに手を出しづらいシニア向けには電話予約窓口を新たに開設し、新たなニーズの取り込みには力を入れてきた。

一方、シェフの獲得にも尽力してきた。2020年から複数回にわたり「飲食店料理人応援プログラム」を実施。コロナ禍で深刻な打撃を受けた飲食業の料理人が「出張シェフ」としてデビューできるように支援するプログラムを打ち出してきた。

「シェアダインに登録する食の専門家(料理人)は現在1600人に上り、2021年1月からは毎月100人前後が登録しています」と井出氏は語る。シェフ登録時には面談や実技試験、衛生研修などを行う。出張シェフ候補者は実際にシェアダインスタッフの自宅に訪問し、時間内に決められた品数を調理できるかなどを試験するという。

「我われが定めるガイドラインに則った衛生管理項目をクリアしているかなどの他、訪問前のチャットのやり取りも見ています。チャットについても、マニュアルを用意しています」と井出氏はシェフの質の担保には特に気を配っている。

また、サービス提供エリアも拡がっている。2021年6月時点で青森、新潟、東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、群馬、山梨、愛知、岐阜、三重、大阪、京都、奈良、兵庫、滋賀で利用可能。「チャレンジングではありますが、年内には全国47都道府県の展開も視野に入っています」と井出氏は自信をみせる。

「理解してもらえなかった」創業当初の悩み

シェアダインは法人向けサービスの展開も進めている。2019年10月から、従業員向けの食事セミナーや出張料理サービスを合わせた「シェアダインウェルネス」を始め、大企業から医療法人まで導入が進んでいるという。

また、コロナ禍で在宅勤務が増えている中、社員同士のコミュニケーション不足を課題に感じている企業向けに、オンラインクッキングを通じた新たなサービスも始めた。

井出氏は「直近では新しい社内懇親会のカタチとして、300人規模でオンラインのクッキングイベントをプロデュースしました。イベント前に300人の各家庭に当日に使用する食材をお送りし、オンラインでシェフと一緒に料理を作るという仕組みです。まず1つ事例ができたので、これからパッケージとしてどんどん売り出していく考えです」と説明した。

今後の展開について、井出氏はこう語る。「私と共同代表の飯田のように、家庭の食卓に悩みを抱える人は多いと思います。ですが、設立直後、シェアダインのサービスは理解してもらえませんでした。家庭の食卓はまだまだ『女性が考えるべき』といった風潮があり、そもそも話を聞いてもらえないということもありました。だからこそ、そのような悩みを解決策として『出張シェフ』というサービスを当たり前にしていきたい。社会課題として認知が進むようにしっかりと啓発活動も行っていきたいと考えています」。

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カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:シェアダイン食事レストラン

Beyond Meatが植物ベースのチキンテンダーを米国のレストラン400店で展開

Beyond Meat(ビヨンドミート)は米国時間7月8日、新しい植物ベースのChicken Tenders(チキンテンダー)を米国のレストラン400店で展開すると発表した。この新商品のニュースは人工肉大手であるカリフォルニア州拠点の同社が引き続き成長している中でのものだ。同社はすでにWalmartの店舗やTaco Bellの店舗へ進出し、2020年は中国でも積極的に展開した。

似ている名前を冠しているにもかかわらず、Chicken TendersはこれまでのChicken Stripsとは異なる、とBeyond Meatは話す。Chicken TendersはBeyond Meatの広く人気を博しているBeyond Burgerパティよりも前に登場したが、他の商品に比べて人気がなかったために2019年に打ち切りになっていた。

新しいChicken Tendersは主にソラマメとエンドウマメからできていて、1食分あたり14グラムのタンパク質が含まれ、飽和脂肪酸は普通のチキンテンダーより40%少ない。Beyond Meatは、コレステロール、抗生物質、ホルモンを含んでいないと話し、これは大手鶏肉生産社の多くが口にできないことだ。

「当社のすべてのプロダクトと同様、当社のChicken Tendersはすばらしい味と卓越した食体験、そして豊かな栄養を提供します」とCIOのDariush Ajami(ダリウシュ・アジャミ)氏はプレスリリースで述べた。「イノベーションがBeyond Meatの真髄です。Beyond Chicken Tendersは人々と地球にとってより良い、画期的で美味しい選択肢を創造するという当社のミッションの最新例です」。

発表されたBeyond Chicken Tenders取扱店舗に全国展開チェーンは含まれていない。提供は7月8日から始まり、取扱店舗の一部リストは以下の通りだ。

  • Bad Mutha Clucka
  • Bird Bird Biscuit
  • Blissful Burgers
  • Burger Patch
  • Detroit Wing Company
  • Dog Haus
  • Duke’s on 7
  • Epic Burger
  • Fire Wings
  • Flyrite Chicken
  • JAILBIRD
  • Melt Bar and Grilled
  • Milwaukee Burger Company
  • Next Level Burger / Next Level Clucker
  • Nuno’s Tacos & Vegmex Grill
  • Plant-Based Pizzeria
  • Plow Burger
  • Pub 819
  • Romeo’s Pizza
  • Sarpino’s Pizza
  • Stanley’s Northeast Bar Room
  • Syberg’s
  • The Bar Draft House
  • The Block Food & Drink
  • The Howe Daily Kitchen & Bar
  • Toppers Pizza
  • Verdine

変わった名前のチキン料理提供レストランが多いものだ。

人工鶏肉マーケットでは競争が激しくなっている。ナゲット製造業社のSimulateは6月、競合相手に追いつくために5000万ドル(約55億円)のシリーズBラウンドを発表している

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カテゴリー:フードテック
タグ:Beyond Meat植物由来肉レストランアメリカ

画像クレジット:Beyond

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi