レジ袋禁止は裏目に?研究で判明した規制実施後の意図せぬ結果

プラスチック製レジ袋は悪だ。スーパーマーケットでの利用を禁止すれば、問題は解決する、そうではないのか?そうだろう?違うの?よくあることだが、この話にはもう少し続きがあるようだ。ジョージア大学の研究者たちは、レジ袋の提供を禁止することは、意図しなかった結果をもたらす可能性があると指摘している。

新しい分析によると、レジ袋禁止政策は、善意から始まったとしても、結局は逆効果になる可能性があるそうだ。その問題とは、食料品店のレジ袋は使い捨て製品だと思われているが、小さなゴミ箱のライナーとして(短い)第二の人生を歩むことが多いということである。レジ袋がないと、人々は代わりのものを探す。つまりそれは、小さなプラスチック製のゴミ袋を買うことを意味する、と研究者たちは指摘している。

ジョージア大学Warnell School of Forestry and Natural Resources(森林天然資源学部)のポスドク研究員であるYu-Kai Huang(ホァン・ユカイ)博士はこう述べている。「研究から、レジ袋の使用に対する需要があることはわかっており、これらの政策が実施されれば、一部の袋がなくなったり、入手がより高価になることもわかっています。そこで、こうした政策が全体的にポリ袋の使用量を減らす効果があるのか確かめたかったのです」。

これまでの研究では、袋の使用禁止がプラスチックの消費に与える影響については調べられていたが、有料化とレジ袋の使用禁止の複合的な効果については調べられていなかった。環境エコノミストであるホァン氏は、住民の所得水準や地域の人口密度など、地域社会で発生するゴミの量に影響を与える変数も考慮しながら、どちらの政策の効果も算出する新しい方法を用いた。

研究チームは、スーパーのレジ袋が多くの家庭で二次利用されていることに着目し、レジ袋の禁止や有料化が実施されている郡と、そのような政策がない郡でレジ袋の売り上げを測定し、比較した。調査の結果、レジ袋に関する政策を実施しているカリフォルニア州のコミュニティでは、4ガロンのゴミ袋の売り上げが55%増の75%、8ガロンのゴミ袋の売り上げが87%増の110%になったことが判明した。これらの結果は、より小さなプラスチック製ゴミ袋の売り上げが増加したという以前の調査結果とも一致している。政策が実施された後、小さいサイズのゴミ袋の売上は急増したが、13ガロンのより大きいゴミ袋(米国では台所のゴミ箱によくあるサイズ)の売上はほぼ横ばいで推移している。

研究者たちは論文の中で「規制実施前は、持ち帰り用のレジ袋が、同じようなサイズのゴミ袋の代わりに使われていた」と書いている。「規制が施行された後、消費者のプラスチック製ゴミ袋の需要は、規制されたレジ袋から規制されていないゴミ袋に切り替わったのである」。

ポリ袋を入れてある平均的な引き出しから判断できるとすれば、ほとんどの家庭はゴミ袋の必要性よりもはるかに多くの使い捨て袋を使用しているので、 レジ袋の有料化や使用禁止は、最終的にはプラスだといえるのではないだろうか。しかしこの研究は、どんなに良い計画を立てても、意図しない結果を招くことがあるということを思い出させてくれる興味深いものだ。これは他の分野でもそうだが、気候変動政策においても真理であるように思われる。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Den Nakano)

酵素ベースの独自技術でプラスチック汚染の終結を目指す豪Samsara Eco

世界中で使用されるプラスチックの量は、2040年までに倍増すると予想されている。そのほとんどが廃棄される際には埋立地に送られ、リサイクルされるのはわずか13%に過ぎない。CIEL(国際環境法センター)によると、プラスチックの生産と焼却は、2050年まで毎年2.8ギガトンの二酸化炭素を発生させる可能性があるという。

世界的なプラスチック汚染をなくすために、オーストラリアの環境技術スタートアップ企業であるSamsara Eco(サムサラ・エコ)は、プラスチック(ポリマー)を分解して、その分子構成要素(モノマー)に分解する酵素ベースの技術を開発した。この技術を活用すれば、再び(何度も)新品のプラスチックに作り直したり、より価値のある商品にアップサイクルすることが可能になるとSamsara Ecoの創業者でCEOのPaul Riley(ポール・ライリー)氏は語る。

Samsaraの技術によって、プラスチックはもはや化石燃料や植物(どちらも環境に大きな影響を与える)から作られる必要はなくなり、埋立地や海に行き着くこともなくなると、ライリー氏はいう。

「この研究の動機となったのは、環境、特に炭素排出とプラスチック廃棄物に関する懸念と、我々の酵素工学に対する愛着です。これを製造技術に適用することで、地球規模の問題を解決し、システムを変え、真の循環経済を生み出すことができます」と、ライリー氏はインタビューで語っている。

今回、600万ドル(約7億3000万円)の資金を調達したSamsaraは、2022年末に最初のリサイクル工場を建設し、2023年に本格的な生産を開始する予定だ。

同社の投資家には、Clean Energy Finance Corporation(クリーン・エナジー・ファイナンス・コーポレーション)や、シドニーに拠点を置くスーパーマーケット大手Woolworths(ウールワース)のベンチャーキャピタルファンドで以前から出資していたW23、そしてMain Sequence(メイン・シーケンス)が含まれる。

「このプロセスでプラスチック1トンをリサイクルするごとに、推定3トンの二酸化炭素排出量が削減されることになります」と、ライリー氏は語っている。

酵素を使ってプラスチックを分解する企業は他にも世界中にあるが、Samsaraは異なるプロセスと酵素を使っていると主張する。ライリー氏の説明によると、他のほとんどの酵素プロセスは12時間以上かかるのに対し、同社は1時間でプラスチックの完全な解重合を行うことができるという。

「現在のリサイクルの方法は、単純に非効率的で、私たちが現在直面しているプラスチック汚染の危機に対応するには不十分です」と、ライリー氏は声明で述べている。「新しいプラスチックを作るために化石燃料を採掘したり、実際にリサイクルされるのは9%だけという現在のリサイクル方法に頼るのではなく、私たちはすでに存在するプラスチックを、無限にリサイクルすることができるのです」。

他の代替リサイクルソリューションとは異なり、Samsaraのプロセスは室温で行われ、真にカーボンニュートラルで、持続可能な方法で運用されていると、ライリー氏は同社の声明で述べている。

ライリー氏がTechCrunchに語ったところによると、Samsaraはさらなる資金調達も視野に入れており、年間2万トンの廃棄プラスチックをリサイクルする最初の商業規模の生産を行うために、2022年後半にはオーストラリアや海外の投資家から約5000万ドル(約6億1000万円)の資金を調達することを目指しているという。

Samsaraの潜在的な顧客は、小売業者、FMCG(Fast-Moving Consumer、日用消費財)ブランド、リサイクル業者など、基本的にプラスチックに関わるすべての人であると、ライリー氏は述べている。

同社はWoolworthsグループと提携しており、Samsaraが最初にリサイクルする5000トンの再生プラスチックを、Woolworthsは自社ブランド商品のパッケージに使用すると約束し、2022年末までにその在庫を確保することを目指している。さらにSamsaraは、Tennis Australia(テニス・オーストラリア)とも提携し、全豪オープンで使用されたペットボトル5000本をリサイクルすることになっている。

2021年に設立されたこのスタートアップ企業は、科学者やエンジニア、そしてキャンベラにあるオーストラリア国立大学の研究者を中心に、13人のチームで構成されている。

「私たちの長期的なビジョンは、当社の技術力を拡張して、ポリエステルやナイロンでできた衣服のような他の石油由来のプラスチック製品を無限にリサイクルし、二度と化石燃料を使用して新しいプラスチックを作らないようにすることです」とライリー氏は語る。

画像クレジット:Samsara Eco

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(文:Kate Park、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

タブレット洗剤のBlueland、使い捨てプラスチック削減促進へ約23億円調達

あなたが家で使っている掃除用洗剤の99%は水だ。そう、家の蛇口から出てくるのと同じものだ。水を運ぶなら自治体の水道システムの方が良いだろうという過激な発想で、Blueland(ブルーランド)は、使い捨てプラスチックを減らし、工場から小売店へ、そして小売店から自宅へと水を輸送する愚かさに歯止めをかけるべく、成功したタブレット型掃除用製品のライン拡大のため、2000万ドル(約23億円)を調達した。

2019年に立ち上げられたこのブランドは、さまざまな掃除用洗剤の市場にタブレット(錠剤)という形態を初めて持ち込んだ。同社の製品は、使い捨てプラスチックを永遠に排除することを約束する。創業以来40件の特許(および出願中の特許)を積み上げ、急速な成長を続けるために品揃えを増やしている。同社は2021年1年間で400%以上成長し、顧客生涯価値(LTV)が80%増加した。これは主に、製品ラインの拡大によるものだ。

今回の2000万ドルの資金調達は、消費者ブランドに特化したベンチャーキャピタルPrelude Growth Partnersがリードした。Bluelandはこれまでに、Justin Timberlake(ジャスティン・ティンバーレイク)氏、Adrian Grenier(エイドリアン・グレニアー)氏、Rent the RunwayのJennifer Fleiss (ジェニファー・フライス)氏、SweetgreenのNicolas Jammet(ニコラス・ジャメット)氏、Thrive MarketのNick Green(ニック・グリーン)氏など、業界関係者や著名人から3500万ドル(約39億円)を調達した。

「事業を始めた頃を振り返ると、共同創業者のジョンと私は、使い捨てのプラスチックパッケージをなくすというミッションに取り組んでいました。実は、それは決して掃除用洗剤に関するものではありませんでした。私たちは、自分たちが始められる可能性のあるカテゴリーや形態を幅広く検討しました。当時は懐疑的な意見が多かったですね」とBluelandの共同創業者でCEOのSarah Paiji Yoo(サラ・パイジ・ユー)は笑う。「20人くらいの投資家に、誰もエコに関心なんてない、人々が地球のために行動を変えることはない、と言われ続けた気がします」。

同社はエコを声高にアピールしている。Bコーポレーション(環境や社会に配慮した事業を行う会社)として認定され、クライメート・ニュートラル認証も受けた。1000万個以上の製品を出荷し、顧客ベースを100万人以上に拡大した企業としては、驚くべき偉業だ。その過程で、すでに10億本のペットボトルが埋め立てられるのを防いだと同社は見積もっている。

「Bluelandの高性能な製品と使い捨てプラスチックの廃止という使命は、掃除用品のカテゴリーで消費者の比類ない支持を得る結果となりました。同社は、この分野で最も急成長しているブランドの1つで、並外れた需要と極めて強いロイヤリティを有しています」とPrelude Growth Partnersの共同創業者でマネージング・パートナーのAlicia Sontag(アリシア・ソンタグ)氏は話す。「サラとジョンがBluelandを象徴的で強力なブランドへと成長させるために協力できることをうれしく思います」。

Bluelandの共同創業者サラ・パイジ・ユー氏とジョン・マスカリ氏(画像クレジット:Blueland)

ここに至るまでに、同社は技術面で大きな投資をしなければならなかった。一般的なCPG(消費者向けパッケージ商品)メーカーは製造委託先を利用し、配合も委託者任せになる。Bluelandは別の道を歩まなければならなかった。自社の仕様に合う製造委託先を見つけることができなかったからだ。

「当初、すべてを自分たちで配合しようと思っていたわけではありませんでしたが、受託製造業者を利用できるほどの余裕はありませんでした。洗浄スプレーの90%は水であることを知り、従来のやり方では意味がないと判断しました。十数社の洗剤メーカーを回りましたが、どこも私たちに頭が3つあるような、バカにしたような目で見ていました」とユー氏は振り返る。「彼らは、タブレットを作る機械を持たず、ほとんどの原料を液体で仕入れるため、私たちが必要とするものを作ることができなかったのです。それがきっかけで、奔走することになりました。製菓メーカーからビタミン剤メーカーまで、あらゆるメーカーと連絡を取り合いました。乾燥した形態で製造するメーカーなら私たちを助けてくれるのではないかと考えたのです。分かったことは、自分たちの手で製品を作らなければならないということでした。共同創業者も私も化学者ではありませんが、世界最大のナチュラルクリーニングブランドの1つであるMethod(メソッド)の配合担当ディレクターを招聘することができました。私たちは、ハンドソープからスプレー式クリーナー、洗濯用洗剤、食器用洗剤まで、さまざまな洗剤にタブレット型をいち早く市場に導入したのです。その結果、すべての製品で使い捨てのプラスチックを使用しない洗剤のトップブランドとなることができました」。

画像クレジット:Blueland

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nariko Mizoguchi

米Novoloop、プラスチック廃棄物から高価値の化学製品を生み出すリサイクル方法を開発

ポリエチレン(私たちがよく知っている一般的なプラスチック)を「バージン」プラスチック(石油化学から直接作られたプラスチックのこと)に対抗できる高価値のプラスチックにアップサイクリングすることは、極めて困難な問題だ。それが非常に難しかったため、何十億トンものプラスチックがリサイクルされず、地球や海を汚染している。しかし、米国に拠点を置く新しいスタートアップ企業のNovoloop(ノヴォループ)は、その答えを出したと主張する。

同社の創業者であるJeanny Yao(ジェニー・ヤオ)氏とMiranda Wang(ミランダ・ワン)氏の2人の女性科学者は、5年以上にわたってこの問題に取り組んできた。

米国時間2月15日、Novoloopは1100万ドル(約12億7000万円)のシリーズA資金を調達したことを発表。このラウンドはEnvisioning Partners(エンヴィジョニング・パートナーズ)が主導し、Valo Ventures(ヴァロ・ベンチャーズ)とBemis Associates(ビーマス・アソシエイツ)に加え、SOSV、Mistletoe(ミスルトー)、TIME Ventures(タイム・ベンチャーズ)を含む以前の投資家も参加した。Novoloopは、高機能アウターウェアに見られるシームテープなど、アパレル向けボンディングソリューションを製造しているBemis Associatesと新たに提携を結んだことも発表した。

Novoloopは、プラスチック廃棄物を高性能の化学製品や材料に変えることを目指しており、ATOD(Accelerated Thermal Oxidative Decomposition、熱酸化分解促進)と呼ばれる独自のプロセス技術を開発した。ATODは、ポリエチレン(現在最も広く使用されているプラスチック)を、高価値の製品に合成可能な化学的構成要素に分解するという。

その最初の製品は靴、アパレル、スポーツ用品、自動車、電子機器などに使用される熱可塑性ポリウレタン(TPU)のOistreになる。この製品のカーボンフットプリントは、従来のTPUに比べて最大で46%も小さいと、Novoloopは主張している。

Novoloopの共同設立者でCEOを務めるミランダ・ワン氏は、声明の中で次のように述べている。「プラスチックがすぐにはなくなることはないでしょう。そのため、生産されるものと再利用されるものとの間のギャップを埋めるためのイノベーションが必要です。何年もかけて技術開発を行ってきた私たちは、この必要性の高い技術を商業化するために、すばらしい投資家やパートナーから支援を得られたことを発表でき、大変うれしく思います」。

「我々が今回の投資ラウンドを主導することになったのは、Novoloopがプロダクトマーケットフィットを見つけたからです」と、Envisioning PartnersのパートナーであるJune Cha(ジューン・チャ)氏は述べている。「Novoloopは、Oistreが初期段階でも市場で幅広い用途に使えることを証明しました」。

ワン氏は電話で筆者に次のように語った。「ポリエチレンプラスチックは、包装材として最も一般的に使用されているものですが、化学的に変化させたり、分解して有用なものに変えることが非常に困難です。私たちは、このポリエチレンを酸化させるために、根本的に新しい化学的アプローチを採用することで、これを解決しました」。

「他の誰もが、廃プラスチックであるポリエチレンを化石燃料の原料にしています。しかし、私たちのアプローチは、直接ポリエチレンの廃棄物を採取し、ワンステップで変換するというものです。(中略)ですから、石油やガスに戻す場合に発生する多くのステップや化学反応を根本的に回避することができます」と、ワン氏は語る。

Novoloopの競合企業には、BASF(ビーエーエスエフ)、Covestro(コベストロ)、Lubrizol(ルーブリゾール)、Huntsman(ハンツマン)などがある。これらは化石燃料からバージン材のTPUを製造している企業だ。現在、TPUの約99%はバージン材である。言い換えれば、これは崩壊の準備を整えた巨大な産業なのだ。

画像クレジット:Novoloop / Novoloop founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

サムスン、廃棄漁網由来のスマホで持続可能性への取り組みを強化

韓国のエレクトロニクスの巨人、Samsung(サムスン)は、ここ数年サステナビリティ(持続可能性)を派手に宣伝し、同社のエコシステムに影響をあたえている。「コーポレートシチズンシップ」などのスローガンや、環境に優しいサプライチェーンや材料、製造の強い推進など、今まで以上にグリーンな世界を強調している。Galaxy for the Planet(地球のためのGalaxy)プロジェクトの一環として、アップサイクルプログラムプラスチック包装の廃止など数多くの取り組みに続いて同社が繰り出す最新の妙技は、捨てられた漁網の再利用による環境保護だ。

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米国時間2月9日のGalaxy新機種発表を前に、同社は新しい材料が製品ラインナップのどこに居場所を見つけるかを垣間見せた。強調したのは、プラスチックの使い捨てをやめることによる効率向上と、再利用材料(特に、消費財再利用材料)や再生紙などの環境に優しい材料の使用をさらに強化することだった。

実際に意味のある影響を与えることを確かめるべく、同社は毎年64万トン廃棄されている漁網に注目した。少なくともこの一部を収集し、再利用することで少しでも海洋をきれいにする取り組みを、会社は誓約した。その結果、捨てられた漁網に絡みつかれていた海洋生物にとって、水辺の環境は少しでも改善されるだろう。

廃棄された網を海に残さないことがどの程度の環境的効果を生むのかは不明だが、マスコミに取り上げられる効果は多少なりともあるだろう(画像クレジット:Samsung)

Samsungは2021年の報告書でこれまでに数多くの善行をなし、一部のパッケージをデザイン変更したことでプラスチック使用を20%削減し、製品に省エネ機構を加え、500万トン近くの「電子廃棄物」を収集し、製造工程廃棄物の95%の再利用を確保していることを主張している。同社は、米国、ヨーロッパ、および中国で100%再生可能エネルギーも実現している。さらに、Carbon Trust Standard(カーボントラスト標準)による、二酸化炭素、水、および非リサイクル材への依存削減などの認証取得も進めている。

海洋プラスチック汚染に対し、環境および「全Galaxyユーザーの生活」に良い影響を与える方法で取り組むことを誓約する、と同社はいう。ということは、Galaxy以外の携帯電話を持っている人の生活は過去とまったく変わらないということか、それは、どうもありがとう。

冗談はさておき、そして岩礁から漁網などのごみを片付けるために数日間潜水服で過ごしたことのある1人として、これはエレクトロニクス巨人による前向きな行動だと私は思う。果たしてこれが、目に見える影響を環境にあたえるかどうかはまだわからない。Samsungは、年間64万トンの漁網のうちどれだけを海洋から取り除こうとしているのかを明らかにしていないが、コミュニケーションと測定が続いていることには希望がもてる。Samsungや他の大手メーカーが互いにグリーン化を競い合い、気候変動に対する理想的な解決策ができるまでに地球を焼け焦げにしないための役割を果たして続けてくれること願うばかりだ。

Samsungの努力に拍手を送る。そして、もしみんなが携帯電話を1年半ではなく3年毎に買い換えるようにすれば、もっと目に見える影響があるはずだ。

画像クレジット:Samsung

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nob Takahashi / facebook

不必要なプラスチックを排除したより環境に優しい食料品配送を目指すZero Grocery

Zero Grocery(ゼロ・グロッサリー)は、食料品を2時間以内に、地球を傷つけない方法で届けることを使命としている。

プラスチックを使わない食料品、家庭用品、パーソナルケア用品の配送を行うこのスタートアップ企業は、2年前、廃棄物の削減に焦点を当てたビジネスに対するベンチャーキャピタルの関心について取り上げた企業の1つだ。当時、2019年に起業した創業者兼CEOのZuleyka Strasner(ズレイカ・ストラスナー)氏は、470万ドル(約5億3900万円)の資金を調達したばかりだった。

米国時間2月3日、同社はSway Ventures(スウェイ・ベンチャーズ)が主導する新たなシード資金としてさらに1180万ドル(約13億5500万円)を調達し、Zero Groceryがこれまでに1650万ドル(約18億9400万円)を調達したことを発表した。これは、同社が環境に優しい無料配達を2時間以内に提供する持続可能なオンライン食料品店を立ち上げたことにともなうものだ。

ストラスナー氏はTechCrunchにメールで、前回の資金注入以来、Zero Groceryは「信じられないような旅をしてきました」と、語った。同社はチームの規模を倍増し、ロサンゼルスやベイエリア市場など、サービスを提供する市場の数も倍増させた。

さらに、顧客数も2倍以上に増え、平均注文額と継続率も伸びた。その結果、顧客生涯価値の向上につながり、2021年にはペットボトル3万5000本分、食料品のビニール袋6万枚分が埋立地に捨てられるのを防いだという。

「2022年1月からは、サービスを全面的に刷新し、手数料や会員登録なしで当日2時間以内の配達を実現し、顧客獲得が完全に軌道に乗りました」と、ストラスナー氏は付け加えた。「2022年に成長に投資したドルの回収率は、2021年の平均の3倍になっています」。

画像クレジット:Zero Grocery

資金調達の面ではすばやい成功を収めたが、同社の焦点はより全体的で持続可能なモデルであるとストラスナー氏はいう。これは、コンセプトをすばやく実証し、その後、規模を拡大することで、より少ない労力でより多くのことを可能にするというアプローチによるものだ。

新資本は、Zero Groceryがより多くの地域でサービスを提供するために、新しいハブを開設できるよう、地理的拡大に充てられる予定だ。さらに、規模を拡大するために、新規顧客の獲得にも投資する。会社が大きくなればなるほど、運営上の効率は上がり、ベンダーとの関係も強化され、持続可能な社会の実現に貢献できるとストラスナー氏は言った。

ストラスナー氏は、同社の成功の多くは、市場機会に起因すると考えている。2020年、2021年は、デリバリーサービスが大きく伸びた。実際、それ以前は、米国の食料品販売に占めるデリバリーの割合は10%弱だった。その時、世界的なパンデミックによってニーズが急増したが、その多くは満たされていなかったとストラスナーはいう。

「速く、便利で、手頃な価格で、高品質で、持続可能な、ゲームチェンジャー的なサービスは、より多くの次元でお客様に価値を提供し、同時に複数のニーズを満たします」と、彼女は付け加えた。「このことは、競合他社から多くの顧客を獲得することに容易につながりました」。

オンライン食料品専門店Mercatus(メルカタス)によると、需要により、2022年の食料品売上高1兆1240億ドル(約129兆円840億円)のうちオンライン比率は11.1%に成長し、2026年には1兆2500億ドル(約143兆円5887億円)の20.5%となる見込みと予測されている。

現在、プラスチックはわずか9%しかリサイクルされておらず、その多くが埋め立て地や海へと流れている。つまり、プラスチックのゴミを減らすために個人が行う小さな変化でも、積み重なれば環境に大きなプラスの影響を与えることができる、とストラスナー氏はいう。

「このパンデミックを通して、人々がどのような生活を送りたいか、そして今日の決断が明日にどのように影響するかをより意識するようになったことが大きな特徴です」と彼女は付け加えた。「つまり、オーガニックで、クリーンで、環境にやさしい製品を求めているということであり、Zero Groceryはそれを提供することができるのです」。

画像クレジット:Zero Grocery / Zuleyka Strasner, Zero Grocery founder and CEO

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(文:Christine Hall、翻訳:Yuta Kaminishi)

ごみ拾いSNSアプリ「ピリカ」を使い、プラごみの総量算定に取り組む参加型プロジェクトが開始

九州大学らがごみ拾いSNSアプリ「ピリカ」を使いプラごみの総量算定に取り組む参加型プロジェクトを開始

九州大学は1月28日、街や海岸のプラスチックごみの散乱状況を分析するための参加型プロジェクトを開始すると発表した。ごみ拾いを目的とするSNSアプリ「ピリカ」(Android版iOS版)を利用し、プラスチックごみの画像を収集して、総量・分布・時間変化の追跡などを行う。2022年1月から2025年3月末まで実施される予定だ。

これは、九州大学応用力学研究所の磯辺篤彦教授、鹿児島大学学術研究院の加古真一郎准教授、海洋研究開発機構(JAMSTEC)付加価値情報創生部門の松岡大祐副主任研究員らからなる研究グループと、ピリカとの共同による研究。参加者は、「ピリカ」のアプリをスマートフォンにインストールし、街や海岸で見つけたプラスチックごみを撮影する。すると、その画像が日時や位置の情報とともに鹿児島大学やJAMSTECに送られ、深層学習を用いて分析される。そこでは、ごみの抽出、ごみの種類(ペットボトル、レジ袋など)や面積が自動判別される。

海に漂流したり海岸に漂着するプラスチックごみの80%は、陸から流出したものだとされているが、どれだけのプラスチックごみが陸から海に移動しているかを知るのは難しい。そこで研究グループは、このプロジェクトを通してプラスチックごみの総量や時間変化による移動の様子を推測しようしている。研究グループは、「地域社会の皆さん一人ひとりが、お手持ちのスマホを利用することで、海洋プラスチック研究に参加するプロジェクト」であり、「参加型で作成したビッグデータによって、研究の大きく前進することを期待しています」と話している。

ゴミの山からプラスチックに代わる素材を作るUBQ Materialsがインパクト投資家TPG Rise主導で約193億円調達

100%分別されていない家庭ゴミだけで作られた、プラスチックのような素材を開発したとするイスラエルのスタートアップUBQ Materials(UBQマテリアルズ)は、TPGのグローバルインパクト投資プラットフォームであるTPG Riseが主導し、同社の気候変動投資専用ファンドであるTPG Rise Climateと、マルチセクター・インパクト投資ファンドであるThe Rise Fundsを通じて、1億7000万ドル(約193億2000万円)の資金を調達した。

今回の資金調達ラウンドには、既存の投資家であるBattery Venturesをはじめ、英国を拠点とするM&GのCatalyst Strategyなどが参加した。

UBQ Materialsは、通常なら埋め立て地に送られる有機物を含む都市固形廃棄物を、石油由来のプラスチックに代わる持続可能で、かつリサイクル可能な素材に変えることができるとしている。「UBQ」の名を冠した同社の製品は、建設、自動車、物流、小売、さらには3Dプリントなどの分野で、単独または従来の石油系樹脂と組み合わせても使用することができるという。

The Rise Fundsの共同代表パートナーであるSteve Ellis(スティーブ・エリス)氏は次のように述べている。

UBQの素材ソリューションは、都市ゴミを機能的な熱可塑性プラスチックに変換するだけでなく、エネルギー効率が高く、加工過程で水を使わず排水も出さないため、産業およびコンシューマアプリケーションにおいて、幅広い用途に利用することが可能です。

UBQがどのようにこれらを実現しているかについては曖昧だが、同社の主張を興味深く見守っていきたいと思う。

画像クレジット:UBQ Materials

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

レストランやフードデリバリーの容器再利用を進めるDispatch Goodsが4.2億円を調達

プラスチック容器は、リサイクル品の受け入れを停止した国が増えているため、世界中の埋め立て地や海に捨てられている。これはとても深刻な問題だ。平均的な米国人は、毎年110ポンド(約50kg)の使い捨てプラスチックを使用・廃棄しているが、米国でリサイクルされているプラスチックはわずか8%だ。

レストランやフードデリバリーサービス、食料品店でもらうクラムシェル型のプラスチック容器はすべてリサイクル可能だと思うかもしれないが、現実としてはすべてのリサイクルセンターでそれらを受け入れられるわけではない。

Dispatch Goodsの再利用可能な容器のコレクション(画像クレジット:Maude Ballinger)

Dispatch Goodsの共同創業者でCEOのLindsey Hoell(リンジー・ホーエル)氏は、プラスチック容器やフリーザーパック、パッケージを回収するという重労働を引き受けるインフラを構築するために、2019年に同社を立ち上げた。容器類ははすべて同社の施設に運び込まれ、洗浄・消毒され、再利用のために再び販売される。レストランやフードデリバリーの顧客も、容器に記載されている番号をテキストで送信して、Dispatch Goodsによる回収を予約したり、容器を返却箱に入れたりすることができる。

会社を設立する前、ホーエル氏は医療関係の仕事をしていたが、カリフォルニアに移住してサーファーになることを夢見ていた。同氏は結局、カリフォルニアに移住し、そこでプラスチック危機を知ることになった。共同創業者のMaia Tekle(マイア・テクル)氏とは、Dispatch Goodsの立ち上げ時にSustainable Ocean Alliance(持続可能な海洋連合)を通じて出会った。当時、テクル氏はCaviarで西海岸のパートナーシップを担当していた。

ホーエル氏はTechCrunchに次のように語った。「リサイクルは人々に良いことをしているように思わせますが、もっと深く掘り下げてみると、流通市場での需要がなければ、必ずしも良いことをしているとは言えません。容器はダウンサイクルしかできませんが、容器を回収して処理する良いインフラがありません」。

Dispatch Goodsはそのインフラの構築に着手し、現在では週に1万〜1万5000個の食品パッケージを回収・処理している。また、DoorDashやImperfect Foodsなどの50社以上の顧客や、Bomberaをはじめとするベイエリアの50のレストランと提携している。ホーエル氏によると、Bomberaは夏にDispatch Goodsを利用し始めてから4000個の容器を交換した。

2021年に合計で約25万個の使い捨てプラスチックを交換したDispatch Goodsは12月6日、370万ドル(約4億2000万円)のシード資金調達を発表した。このラウンドはCongruent Venturesがリードし、Bread and Butter Ventures、Precursor Ventures、Incite Ventures、MCJ、Berkeley SkyDeckが参加した。今回のラウンドによりDispatch Goodsの資金調達総額は470万ドル(約5億3000万円)弱となった、とホーエル氏はTechCrunchに語った。

ホーエル氏とテクル氏は、トラックやフォークリフトの運転を学ぶほどの実践的な創業者だが、2020年9月に700ドル(約8万円)だった月間売上高が5月には2万ドル(約226万円)にまで成長したことを受けて、Dispatch Goodsは後押しを必要としていた。

2人は、チームを成長させ、サンフランシスコのマイクロハブを含む現在の施設を、その地域外で起きている成長やボルチモアの新施設に対応できるようにするために資本を探し求めた。

「このユースケースは以前には存在しなかったので、再利用のための施設をどのようなものにするか戦略化するまでの間、これを最大限活用します」とホーエル氏は話す。「私たちは今、戦略を構築している最中です」。

新たな資金は、地理的拡大、レストランとの提携拡大、新しいパッケージングの可能性の追求などに投資する予定だ。また、現在スタッフは9人だが、年内に3人加える。

Dispatch Goodsは、主にレストランとの提携を進めているが、先月、一般消費者を対象としたパイロットプログラムを開始した。一般消費者からの関心は寄せられたが、最終的な参入障壁を低くするために、企業への販売に徹するとホーエル氏は話す。

ホーエル氏は、成長の指標については具体的に説明しなかったが、収集したアイテムの数と立ち寄った回数を記録していると述べた。事業開始当初は、1回の立ち寄りで約4点のアイテムを回収していたが、現在では平均12点を回収し、立ち寄り回数も3回から9回程度に増加している。

一方、ホーエル氏とテクル氏は、Congruent Venturesの副社長であるChristina O’Conor(クリスティーナ・オコナー)氏を新しい役員会メンバーの1人として迎え入れることを楽しみにしている。

オコナー氏は「ゼロ・ウェイスト(ごみゼロ)運動は急速に拡大しており、持続可能な未来のためには、循環型パッケージングは避けて通れないものだと考えています」と声明で述べた。「リンジーとマイアは、再利用のために設計されたインフラを支える新しいシステムを構築するための熱意、戦略的洞察力、そして情熱を持っていることを証明しました」。

Dispatch Goodsのアドバイザリーチームには、DuContra Venturesの共同創業者で俳優のAdrian Grenier(エイドリアン・グレニアー)氏というスターパワーもある。グレニアー氏は、Dispatch Goodsの活動について「ずっと気になっていました」と語った。実際、同氏はプラスチック容器に反感を持っており、テイクアウトを極力避け、自分で再利用可能な容器を持ち込んだりさえする。

「私たちは、世界を再構築することがいかに困難であるかを知っています。テクノロジーが与えてくれたオンデマンドのライフスタイルに誰もが興奮していますが、どれほどの犠牲を払っているのでしょうか。Dispatch Goodsは、企業の利便性を高め、ビジネスモデルにおけるこの種の転換を可能にする機会を提供します」と同氏は述べた。

画像クレジット:Maude Ballinger / Dispatch Goods co-founders Maia Tekle and Lindsey Hoell

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

再利用可能なプラスチック容器エコシステムの構築を目指すAlgramo、シリーズAラウンドで9.3億円調達

世界の廃棄物の中で大きな割合を占める使い捨てのプラスチック容器。しかし、消費者にとって使いやすく、費用対効果の高い容器の代替手段は、今のところ見当たらない。再利用可能なプラスチック容器と販売拠点を組み合わせることで、コスト削減と収益アップを目指すAlgramo(アルグラモ)は、新規の850万ドル(約9億3000万円)の資金調達ラウンドで、その存在感を大幅に拡大しようとしている。

さまざまな業界で企業が環境に配慮することを強く求められている現在、約10年前にチリで設立されたAlgramoはその地位を確立しつつある。

プラスチック廃棄物を減らすための有力な方法の1つは、使い捨てのプラスチックを減らすことだ。ここで難しいのは、消費者にコストを転嫁しないで、具体的にどのような方法で削減するか、である。環境にやさしい製品でも、2倍の値段だったら金銭に余裕がある人しか買わないし、そうでない人は良心に反して、安くて環境に良くない方の選択肢を選ばざるを得ない。

「自分の財布か、地球か、という選択肢です」とCEOのJosé Manuel Moller(ホセ・マヌエル・モラー)氏。「だからこそ、より安く、より良いものが必要なのです。私たちは、物事をさらに複雑にするのではなく、もっとシンプルにしようとしています」。

画像クレジット:Algramo

何年にもわたるテストの結果、Algramoがたどり着いた解決策は、洗剤やシャンプーなどの既存製品のラベルを変更し、ICタグを付けて、消費者がディスペンサーで簡単にボトルを補充できるようにするというものだ。モラー氏が製品コストの30%を占めると推定するパッケージのコストを取り除き、詰め替えを販売することで安価になる。これは店舗に行くだけで購入できる。

画期的だったのはこのアイデアではなく、大手ブランドとの関係だ。食器用洗剤を補充するために、遠くのスーパーまで行かなければならないとしたら、補充するのではなく、新しい洗剤を買ってしまう可能性が高くなる。詰め替え用の商品が適当なノーブランドのものばかりだとしても同様である。そこでAlgramoは、世界中のウォルマートやユニリーバに訴えてきたが、ごく最近、彼らは少なくとも地域レベルで耳を傾けてくれるようになった。

モラー氏は次のように話す。「Algramoの存在がなくても、起こるべくして起こったことです」「しかし、私たちは彼らのサプライチェーンに参加し、既存の関係を壊さないように小売店やブランドと協力しています。実際、詰め替え用の商品では約60%のスペースを節約することができます」。

同社は現在、Unilever(ユニリーバ)、Nestlé(ネスレ)、Colgate-Palmolive(コルゲート・パーモリーブ)、Walmart Chile(ウォルマートチリ)と提携している。大手ブランドと大手小売企業を結びつけ、消費者がすぐに実践できる、少しでも節約できるようなソリューションを提供することで、誰もがハッピーになれるのだ。Algramoは当初、ディスペンサーを搭載した小型車両を使って事業を展開していたが、最終的には小売業との連携の方が成功した。

写真でわかるように、小型車両はまだ存在している

現在、チリ全土にAlgramoのステーションがあり、約5万人のユーザーが詰め替えの商品を購入している。取り扱う商品は、収益性ではなく、環境負荷が大きいものを選んで決定されたのだが、モラー氏によると、最も環境汚染につながるのは飲料だという。同社は意欲的に取り組んでいるものの、これには別の課題があり、まだ商品化には至っていない。

その代わりに、洗濯用洗剤やシャンプー、コンディショナーなどの使用頻度の高い製品、さらにはドライタイプのドッグフードの利用率は高い。また、同社は余裕のない人でも利用しやすいように、ユーザーが必要な分だけを詰め替えの料金で購入できるように配慮している。

チリでの実績により大規模にこのアイデアが実証されたので、Algramoは、世界各地での試験運用に向けて資金調達を行っている。現在、ジャカルタ、ニューヨーク、メキシコ、ロンドンでプロジェクトが進行中だが、いずれも確実に現地での作業が必要になる。というのも、規制や委託企業、流通ネットワークが異なるため、進出先ではどこでも新たな契約や合意が必要になるからだ。

今回のシリーズAラウンドによる850万ドルの資金は、このようなグローバル展開を目的としている。ラウンドはメキシコのDalus Capital(ダラスキャピタル)が主導し、Angel Ventures(エンジェルベンチャーズ)、FEMSA Ventures(フェムサベンチャーズ)、Volta Ventures(ボルタベンチャーズ)、Impact Assets(インパクトアセッツ)、University Venture Fund(ユニバーシティベンチャーファンド)、Century Oak Capital(センチュリーオークキャピタル)、Closed Loop Partners(クローズドループパートナーズ)のVentures Group(ベンチャーズグループ)(Closed Loop Partnersは2019年のシードラウンドも主導)が参加した。

モラー氏は、Algramoのような取り組みは他社も行っていて、最終的には同社のプラットフォームは競合他社のプラットフォームと連携するかもしれない、と話す。このビジネスで最も重要なのは、小売店およびブランドの両方と関係を構築することで、次に顧客との関係であるが、その後のステップはさまざまな状況に合わせることができる。例えばインドで一般的な再利用可能な食品容器などのリバースロジスティクスシステムが成功しているケースがあれば、それがソリューションの一部になるかもしれない。食料品チェーンなどが独自のリサイクルソリューションを構築する場合は、Algramoは役割の一部を担い、裏方に徹したいと考えている(Algramoは特許もいくつか所有している)。

今のところ、これらはすべて計画に過ぎず、Algramoはさまざまな大きな市場における自社の存在感を高めることに集中している。もしこれを読んだあなたが上に挙げた地域にお住まいなら、近所の大規模小売店や食料品店でAlgramoのステーションを探してみるか、ウェブサイトの下部にある地図を確認してみてはどうだろうか。

画像クレジット:Algramo

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

現在も成長する石油化学分野でバイオベースの代替品を創造するFabricNanoが13.7億円を調達

DNAを「ウェハー」と表現するのを耳にすることはあまりないが、セルフリーのバイオ製造企業FabricNanoの創業者であるGrant Aarons(グラント・アーロンズ)氏は、自社の主要製品を説明する際にアナロジー的な表現としてこれを使用している。このDNAが、化石燃料とその副産物に目下依存しながら成長を続ける世界の石油化学産業に資することを、同社は期待している。

FabricNanoはロンドンを拠点とする会社で、2018年にテクノロジースタートアップアクセラレーターのEntrepreneur Firstによって設立された。FabricNanoは、セルフリーのバイオ製造における創案に注力している。バイオ製造は、単純に、細胞または微生物内の酵素を使用して最終産物を産生する。FabricNanoのアプローチは、その酵素をDNAウェハー上に置くことだ(このプロセスは「酵素固定化」と呼ばれる)。

アーロンズ氏によると、これらの酵素は、薬品やプラスチックの製造に使用されるような化学物質を、細胞ベースのシステムに比べて高効率で生成できるという。化学物質の大量生産に現在使用されている化石燃料に依存することはない。同社の核となるのはDNAの骨格で、反応をスケールアップするのに十分な酵素を収容できる。

FabricNanoは先にシリーズAで1250万ドル(13億7000万円)を調達したことを発表した。このラウンドはAtomicoが主導し、Twitterの共同創業者であるBiz Stone(ビズ・ストーン)氏、女優で国連のSustainability Ambassadorを務めるEmma Watson(エマ・ワトソン)氏、そしてBayerの元CEOであるAlexander Moscho(アレクサンダー・モショー)氏が出資した。

「会社に適したエンジェル投資家を積極的に獲得しようと努めました」とアーロンズ氏。「また、テクノロジー界のエンジェル投資家にも目を向けました。つまるところ、私たちが作っているものは、製造業者にとって有効なテクノロジーとなるからです」。

「バイオマスプラスチックやバイオマスモノマーを十分な規模で製造することを意図してはいません」と同氏は続ける。「(製造業者が)十分な低コストで大量生産できるテクノロジーを提供することを私たちは目指しています。それは、バイオプラスチックのような低価額の分子を生産するための、スケーラブルで持続可能な方法です」。

FabricNanoのアイデンティティの一端は、成長する石油化学分野において、バイオベースの代替品を創造することにかかっている。

現在、世界の石油需要の約14%がプラスチックの製造に向けられている。国際エネルギー機関(International Energy Agency)による2018年の予測では、プラスチックやその他の材料の製造に利用し得る石油化学製品、すなわち石油とガスから得られる化学物質は、2050年までに世界の石油需要の約半分を占めると推定されている。

石油化学産業の主要な最終製品であるプラスチックは、石油やエタンを加熱して製造されることや、廃棄物として焼却されることなどにより、ライフサイクルのほぼすべての段階で気候変動に影響を及ぼしている。プラスチックの生産と利用が現在のペースで続けば、2030年までに排出量は1.34ギガトン(石炭火力発電所295基分)に達すると、国際環境法センター(Center for International Environmental Law)は予測している。

もちろん、プラスチックの生産量を増やせば、それがどのように生産されたものであっても、それ自体が生態系の破壊につながる(科学者たちは、2040年までに「未使用」プラスチックの生産を段階的に廃止するよう求めている)。

また「バイオプラスチック」という漠然とした用語は、生分解性プラスチックから、化石燃料を使わずに作られたプラスチック(生分解性でないものも含む)まで、あらゆるものを指すことができる。それゆえ「環境に優しいプラスチックの世界」をグリーンウォッシュに向かいやすくしている。

残された問いは、バイオ製造が石油化学による気候変動への影響をどの程度減らすことができるかということである。現時点ではそれは明らかではない。アーロンズ氏は、セルフリー製造が持つ強みの一端が、プラスチックなどの汎用化学品の製造に石油(あるいは米国ではエタノール)を使うことから業界を遠ざける可能性があると主張する。

「私たちが真に検討しているのは、コモディティセクターの大部分を掌握し、石油ベースの製品の多くを石油から切り離してバイオの領域に引き込むことにつながる、新しいテクノロジーです」とアーロンズ氏は語る。

とはいえ、プラスチック生産の現状には明らかな懸案事項も存在している。既存の石油化学産業に取って代わるだけの拡張性とコスト効率を実証できるなら、代替品を生み出す余地は残されるだろう。

セルフリー製造がすでに順調に拡大している証拠がいくつかある。例えば、高果糖コーンシロップはコーンスターチが酵素によってブドウ糖に分解されるときに生成される。最終段階にはグルコースイソメラーゼという酵素が必要である。アーロンズ氏は、高果糖コーンシロップ製造を「世界最大のセルフリー化」と評している。

そのコンセプトを踏まえて、FabricNanoはより多くの化学物質を提供しようとしている。Fabric Nanoは現時点ですでに「1,3-プロパンジオール」のような化学物質を作ることができる。1,3-プロパンジオールは、歯磨きやシャンプーに含まれるポリエチレングリコールの代わりに使用できる成分だ。この製品を作るのに必要な材料は、バイオディーゼル製造の主要な廃棄物であるグリセリンであり、コストの抑制、そして化石燃料の代替原料の提供に寄与する可能性がある。

アーロンズ氏によると、FabricNanoはさらに4つの製品を製造できることを実証済みだが、その種類は明らかにしていない。FabricNanoは「医薬品分野」と汎用化学品に注目していると同氏は述べている。「私たちが製造できる汎用化学品は数多くあります。1,3-プロパンジオールは氷山の一角にすぎません」。

それでも、FabricNanoの際立ったアプローチは、おそらく今までに開発した汎用化学品ではなく、実在するDNAの骨格であろう。DNAウェハーに付着して化学物質の生成を助ける酵素がソフトウェアなら、DNAの骨格はFabricNanoのハードウェアだ。

このハードウェアは、同社が汎用化学品の世界にセルフリーをもたらすための主要な道筋を形成するだろう。

「実際に欠けている部分、そして(セルフリー製造が)長い間ニッチなテクノロジーであった理由は、こうしたタンパク質をすべて固定化する一般化可能な技術が存在しなかったことにあります」とアーロンズ氏は語っている。

今回の資金調達で、FabricNanoは従業員を12人から30人に増員し、ロンドンの新しいオフィスに移る計画だ。同社への投資総額は1600万ドル(約17億6000万円)になる。

画像クレジット:chabybucko / Getty Images

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(文:Emma Betuel、翻訳:Dragonfly)

プラスチックを使用しない食料品宅配スタートアップZeroがLAで始動

プラスチックを使わない食料品宅配スタートアップZero(ゼロ)は、サンフランシスコのベイエリアでのみ営業を行っていたが、米国時間2月10日に予定しているロサンゼルスでの事業開始に向けて加速している。Zeroは、サプライヤーから直接買いつけた食料品や日用雑貨を、ビンや箱やその他の持続可能な容器に入れて翌日配達している。

Zeroは、Sightglass Coffee(サイトグラス・コーヒー)、Annie’s(アニーズ)、Newman’s Own(ニューマンズ・オウン)といったビッグネームのブランドと、Zume(ズーム)の共同創設者Julia Collins(ジュリア・コリンズ)氏が立ち上げたPlanet FWD(プラネット・フォワード)などの持続可能性に焦点を当てた新興ベンダーの両方と提携している。

Zeroの会員は、月25ドル(約2600円)で食料品を割り引き価格で購入でき、送料は無料となる。サブスクリプション登録をしなくても利用できるが、個々の商品の価格は少し高くなり、送料7.99ドル(約830)がかかる。

私はZeroを何度か利用したことがあるが、いずれも全体的に満足のいく体験だった。食料品の品揃えはとても良いが、トルティーヤチップスやミカンなどの特定種類の品物は置かれていなかった。しかし、大好きなキャンディのTony’s Chocolonely(トニーズチョコロンリー)はいつも購入できる。

Zeroの創設者でCEOのZuleyka Strasner(スレイカ・ストラスナー)氏によれば、品揃えはトータルで1100点を少し超える程度しかないという。

それは、食料品メーカーがZeroのパッケージに関する内部基準に合致するかどうかを確認するという地道な作業も影響している。鶏肉の場合、Zeroは精肉業者と直接協力して、堆肥になる紙を使った包装を実現させた。そこからジッパーつきの堆肥にできる袋に発展したとストラスナー氏は話す。それには大変な時間と労力とエネルギーと技術が必要だったという。

Zeroは、サプライチェーンの段階ではプラスチック容器の利用を容認しているが、決してそのまま消費者の手に渡らないようにしている。再び鶏肉を例に挙げるが、養鶏場から出荷されたニワトリは、Zeroの精肉ネットワーク内の業者に渡り、さらにパッケージ業者に引き継がれて加工される。

「そのため、養鶏場と輸送段階の一部においてプラスチックが使われることが多いのです」とストラスナー氏。「会社が大きくなるにつれて、その工程をもっともっと変えて、新しく加わる個々の製造流通業者が、もっともっと多くのプラスチックを排除できるよう、もっともっともっと関与するようになりました。利用者にプラスチックを使わずに届けられる製品の開発を養鶏場ごとに行うことから始まり、どんどん遡り、もっともっと多くのプラスチックを排除するという長い道のりに挑んでいます」。

Zeroの提携業者にすれば完全にプラスチックを使わずに事業が行えるの理想だが、「ニワトリがと畜された瞬間から利用者に届くまでの全工程がプラスチック不使用でなけばならないというルールや規制を設ける」のではなく、養鶏場にも流通業者にも、その他この事業に参加する関係者にも、できるだけ簡単に対応できるようにすることが重要だと彼女はいう。

「そのため、私たちが築こうと目指している業界にズレが生じることはありません」。

ストラスナー氏の中でZeroのアイデアが固まり始めたのは、ニカラグアのコーン島へ新婚旅行に出かけたときだった。旅行中、海岸に大量の使い捨てのプラスチックが打ち上げられているの見てショックを受けたと、彼女はTechCrunchに話した。その一方で、彼女はゼロウェイストの反プラスチック運動が育ち始めていることを知り、プラスチックを使わない方針をとった場合に何が起きるのかを想像した。プラスチックを使わない方向性を決めた彼女は、サプライチェーンや国内での食料品の包装方法について、以前よりも深く考えるようになった。

技術畑出身の彼女は、プラスチックゴミの問題にテクノロジーを役立てられないかを模索した。「今後7年から10年のうちに解決しなければならない問題です」と彼女はいう。「もう時間は限られています。それが私が取り組むべき使命なのです」。

Zeroは2018年に試験運用を開始し、2019年に公式ローンチした。Zeroの利用者は大半が登録会員となっている。全体で「何千人もの利用者」があるとストラスナー氏は話していた。

現在、ZeroがPrecursor Ventures、Backstage Capital、1984などの投資家から調達した資金の総額は470万ドル(約4億8700万円)に上る。

「私たちは、米国最大の持続可能プラットフォームを目指しており、そうなる予定です」とストラスナー氏。「なので、食料品から家庭雑貨から何でも、プラスチック不使用の製品がどうしてもほしいという方、またとにかく持続可能な製品を求める方は、Zeroを尋ねてみてください。Zeroは、単なる食料品店を超えた運動なのです」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Zero持続可能性プラスチックデリバリー

画像クレジット:Zero Grocery

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(翻訳:金井哲夫)