名古屋大学発AIスタートアップのトライエッティングが3.5億円を調達、東急不動産HDと業務提携

名古屋大学発AIスタートアップのトライエッティングが3.5億円を調達、東急不動産HDと業務提携

名古屋大学発AIスタートアップのトライエッティング(TRYETING)は3月30日、第三者割当増資およびデットファイナンス(借入金)による総額約3億5000万円の資金調達を発表した。引受先は、東急不動産ホールディングス(東急不動産HD)が取り組むTFHD Open Innovation Program、エンジェル投資家。デットファイナンスは三菱UFJ銀行から。

また、東急不動産HDグループのDX推進および新規事業創出を目的に、東急不動産HDと業務提携を行ったと発表した。

2016年6月設立のトライエッティングは、多種多様なアルゴリズムを搭載するノーコードAIクラウド「UMWELT」を主とした「知能作業」を自動化する名古屋大学発AIスタートアップ。また自動シフト作成AIクラウド「HRBEST」はじめ、AIを活用した需要予測、在庫生産管理、マテリアルズインフォマティクスなどでも実績を持つという。

東急不動産HDとの業務提携については、UMWELTを活用することで、同グループの様々な業務のDX化およびグループの幅広い事業領域へのAI活用による新規事業創出を目指す。

TFHD Open Innovation Programは、東急不動産HDがベンチャー企業やスタートアップへの支援や協業の体制を充実させ、新たなグループシナジーの創出と渋谷を中心とした街の活性化を加速するために2017年に設立したプログラム。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:資金調達(用語)トライエッティング(企業)名古屋大学(組織)ノーコード(用語)日本(国・地域)

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

創薬および再生医療高品質化の研究開発を行うナレッジパレットは3月29日、シリーズAにおいて、第三者割当増資による総額約5億円の資金調達を発表した。引受先は、リード投資家の未来創生2号ファンド(スパークス・グループ)、きぼう投資事業有限責任組合(横浜キャピタル)、既存株主のANRI。創業以来の累計調達額は約7億円となった。

ナレッジパレットのミッションは、遺伝子の活性化パターン(遺伝子発現プロファイル)からなる細胞ビッグデータを「正確に・速く」取得する技術で細胞を診断し、製薬・再生医療業界の課題「開発・製造の困難さ」を解決するというもの。

人体を構成する基本要素である「ヒトの細胞」の状態について、同社の技術を基にした遺伝子発現プロファイルにより取得・診断し、「病因は何か」「薬の効果はあるか」「製造された細胞の品質」を特定。AI創薬により「開発効率の低さ」の解決、またAI再生医療による「製造の困難さ」の解決を目指している。

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

調達した資金は、研究開発および人材採用にあて、さらなる技術開発と各領域における共同研究を加速し、より多くの難病に対処できる創薬・再生医療プラットフォームを構築する。

また今後2年間は、シリーズAで調達した資金をベースに業容を拡大。2023年にシリーズB調達の実施を目指しており、2025年にIPOを計画している。中長期的には、他社との協業のほかに、AI創薬事業、AI再生医療事業において自社での研究開発を進め、最終的には構築したデータベースを基とした新薬や再生医療プロダクトを他社にライセンスするなども目指すとした。

遺伝子の活性化パターン(遺伝子発現プロファイル)というビッグデータ

ヒトは約37兆個の細胞で構成されており、細胞1個は30億文字に相当するDNAを持つ。さらにその中に3万カ所の「遺伝子領域」があり「RNA」として転写され、細胞の構成物質であるタンパク質を作るもととなる。

一口に「細胞」といっても心臓や肝臓など臓器の違いが生まれる理由は、この遺伝子の種類・状態により3万種類の遺伝子の活性化パターン(遺伝子発現プロファイル)が存在していることによる。同様に、病気による違い、化合物(薬)の効果の違いなども遺伝子発現プロファイルとして現れるという。

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

ナレッジパレットは、この遺伝子発現プロファイルを正確・高速・大量にとらえる技術を有しており、これを基にビッグデータとして分析・診断結果を蓄積し創薬・再生医療に活用するという。

国際ベンチマーキングの精度指標と総合スコアで1位を獲得したコア技術

同社のコア技術は、共同創業者兼代表取締役CEO 團野宏樹氏が理化学研究所在籍時に開発した「シングルセル・トランスクリプトーム解析技術」だ。このコア技術は、国際ベンチマーキングの精度指標(遺伝子検出性能・マーカー遺伝子同定性能)と総合スコアにおいて1位を獲得しており、トップ学術誌Nature Biotechnologyに掲載されている(2020年4月)。

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

同技術は、精密な分子生物学実験術とAI技術を組み合わせて、1細胞レベルで全遺伝子発現プロファイルを取得するというもので、実験室で行う精密実験プロセス「精密分子生物学実験」と、コンピューター上で行う計算科学技術「AIによる大規模バイオインフォマティクス」により構成されている。

精密分子生物学実験では、解析対象となる細胞から多段階の分子生物学実験によりRNAを抽出し、次世代シーケンス技術により全遺伝子発現プロファイルを取得する。さらにAI科学計算・二次元マッピングといったバイオインフォマティクスを介し、どのような細胞がどの程度含まれているのか、また細胞に含まれる希少かつ重要な細胞(間葉系幹細胞など)も含めて、網羅的・高精度に細胞の状態を診断するという。

製薬会社と協業が進むAI創薬事業

近年、医薬品の開発現場では、薬のターゲットとなる体内物質(創薬標的)が枯渇しており(開発が容易な新薬・疾病はあらかた手が付けられている)、難病になるほど新薬開発の難易度が上昇、開発コストが急速に肥大化しているという。このため、新薬の開発効率を高める新たな創薬技術が必要となっている。

そこでナレッジパレットは、製薬会社との連携・協業の下、様々な病気の細胞や薬剤を投与した細胞の遺伝子発現データベースを構築し、これを活用したAI解析により新薬の開発を進めている。

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

同社コア技術では、数多くの「微量な細胞サンプル」に対して、従来技術と比較して10~100倍のスループットで、どの化合物(薬品)が特定の細胞に効果が高く毒性が低いのかを選び出す「全遺伝子表現型スクリーニング」が可能という。

製薬会社では、薬剤の基となる数多くの化合物をまとめたライブラリーを持っており、対象の(かつ微量の)培養細胞などに対してそれぞれ処理を行い解析を行うことで、実際にどういった病気や細胞に効果があるのか特定する。ナレッジパレットは、これら大量の化合物サンプルと微量の細胞サンプルといった組み合わせでも、高精度・高速に遺伝子発現プロファイルの変化を捉えられる。これにより、従来技術と比べ1/10から数十分の1のコストで、大規模な全遺伝子表現型スクリーニングを可能としているという。

再生医療に関する3つの課題

現在の医薬品は、化合物合成で低分子化合物の製造を行う「低分子医薬品」、細胞の中でタンパク質を合成・製造する「バイオ医薬品」、ヒト由来の細胞を細胞培養により利用し機能の修復を行う「再生医療」に大別される。

再生医療では、「生きた細胞」をどう制御するかが医薬品として製造する上で大きなカギとなっているという。細胞のコントロールでは、大きく分けて「品質にバラツキが生じる」「培養液の未確立」「高い製造コスト」という3点の課題が存在しているそうだ。

品質のバラツキという点では、そもそも生きた細胞であることから個性が現れ、性質の制御が難しい。例えば同じ条件で培養した細胞、また違う研究機関が再現しようとしたところ別の細胞ができてしまったなどが起こりうるという。患者に移植予定の細胞シートが離職試験で剥がせず、移植に失敗するということもあるそうだ。

また、細胞を育てる培養液(培地)については、細胞の性質や増殖の機能を決定する生育環境にあたるものの、どのような化合物をどの程度の濃度で組み合わせると、特定の細胞に最適なのか、グローバルスタンダードが存在していない状況を挙げた。その理由として、細胞ごとに最適な生育環境を生み出すための培地調液は、高度なノウハウと手作業、多段階の実験プロセスが必要なため、試作可能なパターンが1年あたり約200種類と少なく、最適な培養液にたどり着けていないという。

これら品質のバラツキや培養液の課題が製造コストの高騰に結びついており、採算が取れない状況になっているそうだ。

同社は3つの課題の原因として、細胞がどのような性質を持っているのかという「細胞の診断技術」がなかった点を指摘。培養・製造の評価指標が不十分で、製造コストを下げられていないとした。

コア技術活用の「培養最適化」に基づく再生医療

ナレッジパレットは、コア技術(シングルセル・トランスクリプトーム解析技術)を用いることで、非常に多くの種類の培養条件で培養された細胞について、高速に全遺伝子レベルで診断することで、最適化された培養液を開発できる(培養最適化)という。

製造改善が必要な再生医療用細胞に対して、CTOの福田氏による独自のチューンナップを施した自動分注機・ロボットで多種類の培養液を作成。コア技術である遺伝子発現解析・分析により、どのような条件で培養された細胞がどのような性質を持つのか網羅的・高速に培養性能を評価しその情報を蓄積する。このデータベースとAIにより、最適な培養条件を選択できるようにするという。

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

この取り組みにより、バラツキのない再現性の高い細胞製造をはじめ、さらに従来増殖が難しかった細胞についても10~100倍の収量を実現するといった生産性向上、製造コストの削減が可能になるという。再生医療を「製品」として確立させ、難病の治療に役立つものにするとした。

再生医療・細胞治療に関し、日本は国際的なトップランナー

創薬・再生医療領域において日本で起業したスタートアップというと、残念ながら耳にする機会はあまりない。TechCrunch Japanでも資金調達などの掲載例は数少ない状況にある。

国際ベンチマーキングの精度指標と総合スコアで1位を獲得(後述)という同社の技術力を考えると、海外での起業もあり得たのではないか。そう尋ねたところ、CEOの團野氏は、国内の製薬業界自体がそもそもグローバルに通じている点を挙げた。また同氏が理化学研究所においてバイオテクノロジーとAIの融合研究に従事したという経歴・人脈が、優れた人材をスピーディに採用する際に強みになると考えているそうだ。

また再生医療領域は、日本が力を入れている分野でもある。京都大学iPS細胞研究所所長・教授の山中伸弥氏が2012年のノーベル医学生理学賞を共同受賞したことから国として推している点が追い風となっており、民間企業やアカデミアが取り組むなか日本で起業する価値は高いという。

共同創業者兼代表取締役CTO 福田雅和氏は、日本では再生医療に関する新法が制定され、規制改革が大胆に行われた点を挙げた。法整備面では日本は進んでおり、海外から日本に参入する傾向も見受けられるという。再生医療・細胞治療に関しては日本は国際的なトップランナーといえるとした。

ナレッジパレットの技術、ナレッジパレットの事業で停滞を吹き飛ばし前進する

一方で團野氏は、「製薬の開発がすごく大変だという点は痛感しています。同時に、この領域が加速すると多くの方の幸せにつながると信じています。再生医療も同様です。再生医療だからこそ治る病気が多くあると期待されているにもかかわらず、日本では追い風があるにもかかわらず、承認された製品がまだまだ少ない状況です」と指摘。「私達の技術、私達の事業であれば、この停滞を吹き飛ばして前に進むことができると、強い気持ちで運営しています」と明かした。

福田氏は、「身近な人を治せるように、再生医療がそれが実現できるように、この領域でトップになることを決意して起業し、がんばっています」と続けていた。


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カテゴリー:バイオテック
タグ:医療(用語)AI / 人工知能(用語)再生医学・再生医療資金調達(用語)創薬(用語)ナレッジパレット(企業)日本(国・地域)

リーダーシップ能力を高める学習アプリ「Bunch」が1.1億円を追加してシード資金4.8億円を調達

Bunchは米国3月29日朝、今週新たに調達した100万ドル(約1億1000万円)を含め、合計440万ドル(約4億8000万円)のシードキャピタルをクローズしたと発表した。Bunchの製品であるモバイルアプリは、外出先でも小まめに学習することに慣れている若い世代に、リーダーシップスキルを教えることに重点を置いている。

ビジネススクールに通っていたみなさん、ここですぐに見限ってはいけない。このコンセプトには牽引力がある。

2021年3月初めにTechCrunchは、テキストを使ってエンドユーザーに企業研修を提供するスタートアップ、Aristを取り上げた。そちらの会社は前回の調達額に200万ドル(約2億2000万円)を追加して、合計390万ドル(約4億3000万円)を調達した。ゆえにBunchが追加資金を獲得したことは、それほど驚くことではない。

TechCrunchは、Bunchの共同創業者兼CEOであるDarja Gutnick(ダーヤ・グットニック)氏と、M13のパートナーでBunchの出資者であるKarl Alomar(カール・アロマー)氏にインタビューし、今回のラウンドとスタートアップの近況について話を聞いた。

Bunchは、よりよいリーダーになるためのヒントやコツを毎日、短い文章でユーザーに提供する「AIコーチ」だという。私たちの誰もが、もっとトレーニングが必要なマネージャーの下で働いたことがあるか、もしくは自分自身がそのようなマネージャーだったことを考えると、このアイデアは悪いものではない。

ご想像のとおり、Bunchは個々のユーザーに合わせてカスタマイズされる。グットニック氏はTechCrunchの取材に対し、同社がその基盤の一部として、さまざまなリーダーシップスタイルの「アーキタイプ」を詳述するために、研究者らと提携したと語った。Bunchのシステムはまた、ユーザーのスタイルやリーダーシップ目標に合わせてアウトプットをカスタマイズすることができる。

注目すべきは、TechCrunchが前回Bunchを取り上げたとき、同社は少し異なることに取り組んでいた点だ。2017年当時、同社は我々が「企業文化のためのGoogle Analytics」と表現したものを構築していた。それ以来このスタートアップは、企業ではなく個人に焦点を移した。

Bunchのサービスは2020年11月に開始され、年明けまでに約1万3000人のサインアップにつながった。同社によれば、現在では2万人近くが登録しているという。また、Bunchは今後数カ月の間に大きな製品計画を立てている。そのためにより多くの資金を調達し、アロマー氏と彼の会社もこのスタートアップにさらなる資本を投入することになったのである。

M13が十分に興奮してBunchに資本を投入した先にあるものとは?アロマー氏は、コミュニティやピアレビューの機能が搭載される予定だと語った。グットニック氏の会社がビジネスを構築し、もう少し仕事をしてからまた資金を調達するために、同社に資金投入するには良いタイミングだったと彼は説明する。

同社はフリーミアムによって収益を上げることを計画している。グットニック氏はTechCrunchに、同じカテゴリーの関連アプリはリテンションに苦労する傾向があり、前もって課金しておいて、後で使用量が落ちても気にしないようにしていると語った。同氏はそれを覆したいと考えている。

さらにBunchは、他のカテゴリーのコンテンツへの拡大も検討している。しかしこのスタートアップは、集中して最初のニッチを成功させたいと考えている。そして初期の牽引力が単にそれだけではなかったと証明するために、今はさらに100万ドル(約1億1000万円)の軍資金を持っている。

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カテゴリー:EdTech
タグ:Bunch資金調達

画像クレジット:Westend61 / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Aya Nakazato)

製品チームが簡単にユーザーインタビューを行い仮説を検証できるプラットフォームを英国Ribbonが開発

誰もが「ユーザー中心の企業や製品を作りたい」というが、具体的にそれをどうやって実現するのだろうか?もちろん、何よりもユーザーとの対話が大事……なのだが、それは無駄に時間がかかり組織化するのも面倒な作業であると、Axel Thomson(アクセル・トムソン)氏はいう。同氏は、英国のレシピ食材ボックス宅配サービスのユニコーン企業であるGousto(グスト)でプロダクトマネージャーを務めていた人物だ。

彼が起業したRibbon(リボン)という急成長中のスタートアップは、製品チームがユーザーを募集してインタビューを行い「継続的に仮説をテストして検証する」ことを容易にしたいと考えている。これによって、ユーザーにとってより良い製品になることが、期待できるというわけだ。このアイデアは、トムソン氏がGoustoでユーザーエクスペリエンスを専門とする製品チームを率いていたときに経験したニーズから生まれたものだという。

「私は当初、Goustoのグロースチームに所属し、ユーザーエクスペリエンスの向上とリテンションの増加に注力した製品とマーケティングの実験を行っていました。その後はプロダクトチームに移り、より総合的なユーザーエクスペリエンスの向上に取り組みました」と、トムソン氏は筆者に語った。

「これらの2つのチームでは、どのような機能や試みに賭けるかを常に決定しなければなりませんでしたが、それはつまり、ユーザーが何を求めているかを知るということです。そのための最善の方法は、ユーザーと実際に会話し、さまざまなコンセプトを試してもらうのが一番だということにすぐに気づきました。どの製品や機能がテストする価値があり、どの製品や機能が失敗する運命にあるのかについて、十分な情報に基づいた適切な判断を一貫して行うことがいかに難しいか、それは目から鱗が落ちる思いでした」。

トムソン氏によると、経営陣の間では、製品チームはユーザー中心であるべきで、製品はユーザーが「本当の問題」を解決するのに役立つように設計されるべきだというのが定説になっているという。しかし実際には、ユーザーが何を考え、何を求めているのかを知ることは困難であり、またユーザー調査やインタビューを継続的に行うことは非常に時間がかかる。

「製品チームは、インタビューの設定に何日もかかることが多く、結果的にフィードバックのループが遅くなり、製品の開発や実験が遅れることになります」と、同氏はいう。「あるいは、チームはAmplitude(アンプリチュード)やMixpanel(ミックスパネル)などの分析プラットフォームから得られる定量的なデータに頼ろうとしますが、これらは製品が出荷された後にユーザーがどのように使用したかを知ることができるだけです」。

Ribbonを使えば、創業者によれば「Uberで配車を頼むのと同じくらいの時間」でユーザーインタビューを始めることができるという。製品チームは、Ribbonのウィジェットを自社のウェブサイトにインストールするだけで、ユーザージャーニーにおけるどの段階でも、ユーザーを募集してビデオインタビューを行うことができる。

「私たちは、製品チームがユーザーインタビューや、最終的にはあらゆる種類の定性的なユーザーリサーチを、迅速かつ継続的に行えるようにしたいと考えています」と、トムソン氏は説明する。

Ribbonは、プロダクトマネージャー、デザイナー、ユーザーリサーチャーなど、ユーザーとの会話を通じて自分のアイデアを検証することがメリットになる人たちを対象にしている。しかし、トムソン氏によれば、ユーザーリサーチによるメリットは、これらの役割の人々だけに限るものではないという。企業にはユーザーインタビューの結果を「保有」する専門チームや担当者がいることも多いが「リサーチ結果をソーシャル化し、企業全体でユーザーリサーチに参加する」ことへの関心が高まっていると、同氏は主張している。

「ユーザーリサーチプラットフォームとしての私たちの目標は、私達のプラットフォームのユーザーが、すばらしいリサーチを行い、それをチームで共有することを容易にすることで、自分のチームや組織の中でリサーチの伝道師となることです」と、トムソン氏は付け加えた。

もちろん、その活動はまだ始まったばかりだ。Ribbonは2020年10月末にMVP(Minimum Viable Product、実用最小限の製品)をProduct Hunt(プロダクトハント)のコミュニティに公開した。ロンドンを拠点とするこのスタートアップは、これまで自力での開発を行ってきたが、MMC Ventures(MMCベンチャーズ)、RLC Ventures(RLCベンチャーズ)、およびロンドンのエンジェルグループから、プレシード資金として20万ポンド(約3020万円)を調達したことを、現地時間3月25日に発表した。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Ribbonイギリス資金調達

画像クレジット:Ribbon

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(文:Steve O’Hear、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

インドネシアのミレニアル世代を対象にする投資アプリAjaibがシリーズAで約71億円を調達

インドネシアの投資アプリAjaibはシリーズAのラウンドに6500万ドル(約71億円)を追加し、総額9000万ドル(約99億円)を新規調達した。この資金拡張は2021年2月にRobinhoodの34億ドル(約3700億円)の資金調達を主導した、フィンテック投資家であるRibbit Capitalが主導した。なお、AjaibはRibbit Capitalにとって東南アジアにおける最初の投資先だ。

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今回の拡張は、Ajaibの製品開発およびエンジニアリング能力の拡大に使用される。取引件数でインドネシア第4位の証券会社を運営しているという同スタートアップは、2021年1月の2500万ドル(約27億円)でシリーズAを完了したと発表した。他の参加者はY Combinator Continuity、ICONIQ Capital、Bangkok Bank PLC、そして以前からの投資家であるHorizons Ventures、SoftBank Ventures Asia、Alpha JWC、Insignia Venturesなどだ。またフィンテックのスタートアップであるNubankとTossの創業者であるDavid Velez(ダビド・ベレス)氏とSG Lee(SG・リー)氏もそれぞれ投資している。

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Ajaibは2019年にAnderson Sumarli(アンダーソン・スマーリ)CEOとYada Piyajomkwan(ヤダ・ピヤジョムクワン)COO氏によって設立された。同社は初めての株式投資を投資家にとってより身近なものにすることに注力している、フィンテック新興企業の1つだ。インドネシアでは人口の1%以下しか株式を所有していないが、その数は特にミレニアル世代の間で増加している。

インドネシアで最近資金を調達した他の投資アプリにはPluang、Bibit、Bareksaなどがある。Ajaibの創業者たちは1月に米TechCrunchに対して、低手数料の株式取引プラットフォームとして分散投資のための投資信託も提供することで、差別化を図っていると述べた。

Ribbit CapitalのマネージングパートナーであるMicky Malka(ミッキー・マルカ)氏はプレスリリースで「私たちは世界中で個人投資における前例のない革命を目の当たりにしています。Ajaibはこの革命の最前線にあり、市場で最も信頼されるブランドを構築しようとしています。透明性をもたらし、インドネシアのミレニアル世代の投資家に最高の製品を提供するという彼らの取り組みは、世界中の最高の企業と肩を並べるものです」と述べている。

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カテゴリー:フィンテック
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(文:Catherine Shu、翻訳:塚本直樹 / Twitter

インドネシアのミレニアル世代を対象にする投資アプリAjaibがシリーズAで約71億円を調達

インドネシアの投資アプリAjaibはシリーズAのラウンドに6500万ドル(約71億円)を追加し、総額9000万ドル(約99億円)を新規調達した。この資金拡張は2021年2月にRobinhoodの34億ドル(約3700億円)の資金調達を主導した、フィンテック投資家であるRibbit Capitalが主導した。なお、AjaibはRibbit Capitalにとって東南アジアにおける最初の投資先だ。

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今回の拡張は、Ajaibの製品開発およびエンジニアリング能力の拡大に使用される。取引件数でインドネシア第4位の証券会社を運営しているという同スタートアップは、2021年1月の2500万ドル(約27億円)でシリーズAを完了したと発表した。他の参加者はY Combinator Continuity、ICONIQ Capital、Bangkok Bank PLC、そして以前からの投資家であるHorizons Ventures、SoftBank Ventures Asia、Alpha JWC、Insignia Venturesなどだ。またフィンテックのスタートアップであるNubankとTossの創業者であるDavid Velez(ダビド・ベレス)氏とSG Lee(SG・リー)氏もそれぞれ投資している。

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Ajaibは2019年にAnderson Sumarli(アンダーソン・スマーリ)CEOとYada Piyajomkwan(ヤダ・ピヤジョムクワン)COO氏によって設立された。同社は初めての株式投資を投資家にとってより身近なものにすることに注力している、フィンテック新興企業の1つだ。インドネシアでは人口の1%以下しか株式を所有していないが、その数は特にミレニアル世代の間で増加している。

インドネシアで最近資金を調達した他の投資アプリにはPluang、Bibit、Bareksaなどがある。Ajaibの創業者たちは1月に米TechCrunchに対して、低手数料の株式取引プラットフォームとして分散投資のための投資信託も提供することで、差別化を図っていると述べた。

Ribbit CapitalのマネージングパートナーであるMicky Malka(ミッキー・マルカ)氏はプレスリリースで「私たちは世界中で個人投資における前例のない革命を目の当たりにしています。Ajaibはこの革命の最前線にあり、市場で最も信頼されるブランドを構築しようとしています。透明性をもたらし、インドネシアのミレニアル世代の投資家に最高の製品を提供するという彼らの取り組みは、世界中の最高の企業と肩を並べるものです」と述べている。

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(文:Catherine Shu、翻訳:塚本直樹 / Twitter

プログラミング教育のHolbertonが波乱の年を経て「教育のOS」になるべくEdTCH SaaSに転身、約22億円調達

サンフランシスコでスタートしたHolbertonはパートナーと協力して米国、ヨーロッパ、中南米、ヨーロッパでコンピュータのコーディング教育を提供している。同社は米国時間3月28日、Redpoint evnturesがリードしたシリーズBラウンドで2000万ドル(約22億円)の資金調達を調達したと発表した。現在の投資家であるDaphniImaginable FuturesPearson VenturesReach CapitalTrinity Venturesも参加しており、Holbertonの資金調達総額は3300万ドル(約36億1000万円)となった。

Holbertonの発表は2020年が同社にとって相当な苦難の年だったことが影響している。原因はパンデミックによって対面式のスクールの運営ができなくなったことだけではない。

Holbertonの当初のシステムは個人情報を隠したプロセスによって選別された学生に、大学レベルの充実したソフトウェア開発教育を当初の支払いなしで提供するというものだった。Holbertonは「所得シェアリング」を採用しており、学生はコース終了後数年間の給与のうちから最高8万5000ドル(約930万円)を後払いの授業料として支払うことになっていた

しかし2020年初めにカリフォルニア州私立高等教育局(BPPE)は、Holbertonが認可されていない新しいプログラムを提供し始めたとして直ちに運営停止を命じた。問題のプログラムは9カ月間のトレーニングプログラムで6カ月間の雇用をともなった。この場合、学生は当初認可されたプログラムの授業料8万5000ドルを全額支払う必要があった。BPPEはヒアリングの結果、Holbertonがこれ以外のプログラムの運営を継続することを認めるた。しかし多くの学生が当初約束されたような教育を受けられなかったとして同校を訴えた

しかしこの波乱の時期にもHolbertonは成長を続けて、メキシコやペルーにキャンパスを開設していた。2020年にはキャンパスの数が9校から18校に倍増した。

しかし2020年12月17日にHolbertonはカリフォルニア州で受けていた学校教育の運営許可を自主的に返上した。その前日、Holbertonは、パンデミックのために2020年3月から閉鎖していたサンフランシスコのキャンパスを再開しないことを発表している。Holbertonの共同ファウンダーであるSylvain Kalache (シルヴァン・カラシュ)氏は「我々が描くミッションを達成するためには、市場の独自のニーズを深く理解しているすばらしい現地のパートナーと協力することが最も適している」と述べ、自社でキャンパスを運営することはしないとした。

現在、Holbertonは自らを「フランチャイズキャンパスや教育ツールを提供する教育のOS」と考えている。

2021年1月には、カリフォルニア州の司法長官は同校に不正行為があるという主張を取り下げた。カラシュ氏は同社として訴訟について始めて公にした文書で「カリフォルニア州はHolbertonが規制上の問題に直面した唯一のマーケットだった。この問題が解決したことで、我々は世界中のソフトウェアエンジニア志望者に手頃な料金でアクセスできる教育を提供するという本来の使命に立ち返ることができる」と書いてる。

新たな投資ラウンドの成功をみれば、投資家も同感だったに違いない。Redpoint eventuresのマネージングパートナーであるManoel Lemos(マノエル・レモス)氏はこう述べている。

Holbertonは世界レベルのカリキュラムを提供しながら高いコストやアクセスの困難といった高等教育のハードルを取り払うことに成功しています。Holbertonは「教育のOSをサービスとして提供する」というコンセプトのもとにユーザーがキャリヤで成功を収めるするために必要なすべてのツールを提供しています。投資家には地域経済の発展を目指す非営利投資家、新型コロナ後の学習環境における教え方のギャップを埋めたい教育機関に加えて、自らが教育機関となりまたは社員の研修育成プログラムとして高度なトレーニングを提供したい企業などさまざまです。

HolbertonのファウンダーであるCEOのJulien Barbier(ジュリアン・バルビエ)氏は私のインタビューに「スタートして以来、初めて我々は大学との協力を始めています。従来の手法に加えてさらに優れた学習体験と実践的な教育を提供し始めました。教育機関も学生、教員も教育方法の開発、修正に多大な時間を費やすことなく教育に専念できるので満足しています」と述べた。

バルビエ氏は、2019年に500人だった生徒が2021年は5000人に増え、米国、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、アフリカに新しいキャンパスができてネットワークが拡大すものと期待している。また各種の教育プロジェクトを自動で評価する「教育のOS」ツールや、オンライン教育プログラムにをすでに採用している顧客がいる点も指摘した。今週、タルサ市のHolbertyonは同市の物理的なキャンパスを2倍以上に増やす計画を発表したばかりだ。バルビエ氏は次のように述べた。

新たな資金調達は「教育のOS」を作るというビジョンを支え、加速させるのに役立っています。多くの教育機関が生徒やスタッフを支援するためのより良いツールを必要としています。今こそ私たちの助けが役立つときだと考えています。繰り返しますが、新型コロナはデジタル化による社会の変容を加速させており、埋めねばならないギャップが多数あります。今、我々は企業や大学、非営利団体に私たちのツールやコンテンツを提供して使用料を得るSaaS企業となっています。これによりユーザーは教育の質を向上させ、優れた学習体験を得られる大規模な教育/トレーニングプログラムを運営することができるのです。

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カテゴリー:EdTech
タグ:Holberton資金調達プログラミング

画像クレジット:Holberton

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:滑川海彦@Facebook

ウェブアプリのUIテストを容易に自動化するUI-liciousがプレシリーズAで約1.6億円を調達

UI-liciousの共同設立者。最高技術責任者のユージーン・チア(左)と最高経営責任者のシー・リン・タイ氏(右)(画像クレジット:UI-licious)

シンガポールを拠点とするUI-licious(ユーアイリシャス)は、ウェブアプリケーションにおけるユーザーインターフェースのテストを容易に自動化するスタートアップ企業だ。同社はMonk’s Hill Ventures(モンクス・ヒル・ベンチャーズ)が主導するプレシリーズAラウンドで、150万ドル(約1億6000万円)の資金を調達したと、現地時間3月25日のブログで発表した。この新たな資金はUI-liciousの製品開発およびマーケティングチームの成長に使用されるという。

Shi Ling Tai(シー・リン・タイ)氏とEugene Cheah(ユージーン・チア)氏が2016年に設立したUI-liciousは、あらゆる規模の企業にサービスを提供しており、現在の顧客にはDaimler(ダイムラー)、Jones Lang LaSalle(ジョーンズ・ラング・ラサール)、技術者求人プラットフォームのGlints(グリンツ)などが含まれる。

UI-liciousの最高経営責任者であるタイ氏は、世界中のソフトウェアチームの約90%が手動テストに頼っており、時間もコストもかかっていると述べている。UI-liciousでは、ユーザーがテストスクリプトを擬似コード(平易な英語に近い言語)で書くことができるため、プログラミングの経験が少ない人でも利用できる。

UI-liciousのテストレポート機能のスクリーンショット(画像クレジット:UI-licious)

次にソフトウェアチームは、テストの実行頻度をスケジュールすることができる。UI-liciousが独自に開発したスマートターゲティングテストエンジンは、すべてのブラウザをサポートし、ウェブアプリケーションのユーザーインターフェースや根本的なコードに変更があっても、同じスクリプトを実行することが可能だ。詳細なエラーレポートも作成し、バグの発見と修正に必要な時間を短縮する。

他の自動化されたユーザーインターフェースのテストソリューションと比べて、UI-liciousはどこが違うのかと質問されたタイ氏は、次のように答えた。「コード化されたソリューションでは、訓練されたエンジニアがウェブサイトのコードを検査し、テストスクリプトを書く必要があります。問題は、ほとんどのソフトウェアテスト担当者は訓練を受けたプログラマーではなく、マーケティングチームやセールスチームの人間である場合も多いということです。プログラマーではない人がアクションを記録し、繰り返すことができるノーコードのソリューションは他にもありますが、そのようなテストはUIが変わるとすぐに使えなくなってしまう傾向にあります」。

UI-liciousのセールスポイントは「コードの書き方を知らなくても、誰もがUIテストの自動化やエラーアラートの設定にアクセスできるように設計されている」という点である。「UI-liciousでは、そのスマートターゲティングテストエンジンにより、UIコードの変更にともなうテストのメンテナンスにかかる手間も軽減します」。

Monk’s Hill VenturesのパートナーであるJustin Nguyen(ジャスティン・グエン)氏は、プレスリリースの中で次のように述べている。「共同設立者のシーリンとユージーンは、ソフトウェア自動化の業界で何十年も悩みのタネだった品質保証の問題を解決するための製品を開発しました。同チームのソフトウェアエンジニアとしての技能には、これまで手動でテストを行っていた担当者がテストを自動化し、ユーザーが利用する前にバグを検出できる、シンプルで堅牢なツールを構築するための技術的知識と洞察力が備わっています」。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:UI-licious資金調達

画像クレジット:UI-licious

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

仮想通貨批判の的であるエネルギー消費量を95%も削減する二相式液浸冷却式データセンターを展開するLiquidStack

データセンターとビットコイン採掘事業は、膨大なエネルギーを消費しており、この2つの事業が爆発的に成長すると、世界的な温室効果ガスの排出削減に向けた取り組みを帳消しにしてしまう恐れがある。これは仮想通貨事業に対する大きな批判の1つであり、業界の多くの人々がこの問題に対処しようとしている。

そこに新たに参入したLiquidStack(リキッドスタック)は、仮想通貨のハードウェア技術を開発するBitfury Group(ビットフューリー・グループ)から、1000万ドル(約11億円)の投資を受けてスピンアウトした会社だ。

以前はAllied Control Limited(アライド・コントロール・リミテッド)として知られていた同社は、オランダに本社を置き、米国で商業活動を行い、香港で研究開発を行う商業運営会社として再編されたと、声明で発表した。

この会社は、従来の空冷技術と比べてエネルギー消費量を95%削減するという二相式液浸冷却システムを採用した500kWのデータセンターを香港に建設した後、2015年にBitfuryに買収された。その後、両社は共同で160MWの二相液浸冷却型データセンターをいくつか展開してきた。

「Bitfuryは複数に渡る業界で革新を続けており、計算量の多いアプリケーションやインフラのためのLiquidStackによる革新的な冷却ソリューションに大きな成長の機会を見出しています」と、BitfuryのValery Vavilov(ヴァレリーヴァヴィロフ)CEOは述べている。「LiquidStackのリーダーシップチームは、我々の顧客やWiwynn(ウィイン)の戦略的サポートとともに、二相液浸冷却の世界的な採用と展開を急速に加速させると確信しています」。

今回の1000万ドルの資金調達は、台湾のコングロマリットであるWiwynnからのものだ。同社はデータセンターやインフラの開発を手がけており、2020年の売上高は63億ドル(約6900億円)に達している。

WiwynnのCEOであるEmily Hong(エミリー・ホン)氏は声明の中で「クラウドコンピューティング、AI、HPCの密度と消費電力が急速に増加しつつあるという問題に対処するため、Wiwynnは先進的な冷却ソリューションへの投資を続けています」と述べている。

LiquidStackの声明によると、同社の技術は空冷に比べてITラックあたりの排熱量を少なくとも21倍に向上させ、しかも水を必要としないとのこと。その結果、冷却に使用するエネルギーを41%削減し、データセンターのスペースを60%削減することができるという。

「Bitfuryは、組織のトップから草の根に至るまで、常に模範を示すことを重視しており、技術によって前進する企業です」と、LiquidStackの共同設立者でありCEOを務めるJoe Capes(ジョー・ケイプス)氏は述べている。「新たな資金調達を得てLiquidStackを起ち上げることで、我々は当社の強みと能力に集中することができます。クラウドサービス、AI、先進高性能コンピューティングの採用によって引き起こされる熱と持続可能性に関する困難な課題の解決に向けて、液冷技術、製品、サービスの開発を加速させていきます」。

カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:LiquidStack仮想通貨資金調達地球温暖化データセンター

画像クレジット:Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

動画、ポッドキャスト用BGMのマーケットプレイスEpidemic Soundが約490億円調達

動画やポッドキャストなどのストリーミングサービスの人気が猛烈な勢いで高まり続けている。米国時間3月12日、そういったサービスへのBGMの提供元となるマーケットプレイスを運営するEpidemic Sound(エピデミック・サウンド)というスタートアップが、需要の高まりに合わせて規模を拡大すべく大規模な資金調達を発表した。ストックホルムを拠点とするこのスタートアップは、同社の評価額を14億ドル(約1500億円)とするエクイティラウンドでBlackstone Group(ブラックストーン・グループ)とEQT Growth(EQTグロース)から4億5000万ドル(約490億円)を調達した。

同社は現在、約3万2000の楽曲と約6万の効果音を備えている。今回の資金により、プラットフォーム上のテクノロジーを強化し、コンテンツとサウンドの調和をより容易にするツールのクリエイターへの提供、カタログの拡充や顧客基盤の拡大、そしてよりローカライズされたサービスとそのグローバルな展開を目指している。

4億5000万ドル(約490億円)というと、そのコンテンツとは裏腹に静かに事業を進めてきた企業にしては、大金のように思えるかもしれない。しかし、この資金調達は、高い意欲と有意な評価基準によって裏打ちされている。

共同創業者兼CEOのOscar Höglund(オスカー・ホグランド)氏は、インタビューに対し「ビジョンの大きさの問題だ。当社は、インターネットのサウンドトラックになろうとしている。それに尽きる」と語る。

このスタートアップが、いかに成長しているかについては、前回、同社が資金調達を行った(評価額3億7000万ドル(約403億円)に対して2000万ドル(約22億円)と今回よりも控えめだった)2019年と比べるといいだろう。当時同社の楽曲は、YouTube(ユーチューブ)だけでも毎月平均2億5000万時間もの再生があった。

その後、再生時間は400%以上の伸びを記録し、現在では毎月10億時間を大きく上回っている。ホグランド氏によると、エピデミック・サウンドのアーティストの音楽を使用したYouTube動画は、ストリーミングについては、1日に15億回再生されているという。これは、TikTok(ティックトック)、Facebook(フェイスブック)、Instagram(インスタグラム)、Snapchat(スナップチャット)などのプラットフォームで使用される同社の音楽のアクセス量を考慮する前の話だ。

「マクロトレンドは爆発的な延びを示している」とホグランド氏はいう。作曲家やコンテンツクリエイターを含め、現在同社のプラットフォームのユーザーは500万人を超える。

しかも、YouTubeのチャンネル数が約3700万であることや、Twitch(ツイッチ)、TikTok、Instagram、Snapchatなど、他にもユーザーを取り込めるサービスが数多くあることを考えると、成長の余地はまだ十分にありそうだ。

「私たちは需要が尽きることのない広大な市場を探しているが、エピデミックは[その業界]のリーダーに成長しつつある」と、Blackstone Growth(ブラックストーン・グロース)のグローバル責任者として投資を主導したJon Korngold(ジョン・コーンゴールド)氏はインタビューに答えている。

双方向の音楽マーケットプレイス

エピデミック・サウンドは、自らをマーケットプレイスと位置づけている。ミュージシャンは録音した楽曲をアップロードし、それを利用したい人は、ジャンル、ムード、楽器、テンポ、トラックの長さ、人気度などで検索をかけ、自分のイメージにあった音楽を見つけることができる。その上で、聞く頻度ではなく、利用する用途に応じた価格で購入する。

また、個人利用を前提とした月額15ドル(約1600円)の使い放題のサブスクリプションや、ほとんどの人が利用する月額49ドル(約5300円)で無制限の商用利用も可能なサブスクリプションが用意されている。この方式により、同社は黒字に転じたが、現時点では成長に軸足を移しており、再び赤字になっている。

エピデミック・サウンドは、市場のある特定のギャップに目をつけたホグランド氏とJan Zachrisson(ヤン・ザクリソン)氏によって、2009年に設立された。両氏の目的は、デジタルメディアへの音楽の追加を、より簡単にし、法的リスクをより少なくすることだった。言われて見ればおもしろいことに、11年前のデジタル音楽市場はまだダウンロードが中心で、そのほとんど(95%)が違法だった。当時のIFPI(国際レコード・ビデオ製作者連盟)のこのレポートは、ストリーミングという概念にさえ触れていなかったようだ。

また、同社にとって好機となったのは、音楽を公開したり、簡単なライセンス条件で購入したりするための、明確で使いやすいマーケットプレイスが存在しなかったことだ。

「設立当時からエピデミックの中核を成すものは、クリエイターにとって制限のない環境を提供することだ」とEQT Partners(EQTパートナーズ)のパートナーであり、投資アドバイザーでもあるVictor Englesson(ビクター・エングレソン)氏は話し「これは、ユーザー生成コンテンツの大きな問題点の1つであり、今も昔も変わらない。エピデミック・サウンドは、そのライブラリの権利を100%コントロールしている」と続ける。

今となっては、常識となっている簡単なライセンシングを提供することよりも、巨大な需要に直接対応することの方がチャンスは大きい。

動画が消費者の間で大きな人気を博している状況の中、Cisco(シスコ)は、2020年にはインターネットトラフィックの約80%を動画が占めるようになると予測していた。これはパンデミック前の数字であるため、現在ではそれ以上になっていても不思議ではない。動画はクリエイターの表現の手段としても急増している。当然のことながら、クリエイターが動画コンテンツを制作し配信するためのツールを提供する企業が数多く登場しており、その中には音楽の提供も含まれている。

そのため、サウンドトラックプラットフォームの市場はかなり混雑している。同分野では、Artlist(アートリスト、静止画や動画のカタログも提供しており、2020年資金調達も行っている)、Upbeat(アップビート)、Comma(コンマ)、Shutterstock(シャッターストック)などがある。

プラットフォーム自体も、クリエーターに音楽ツールを提供しており、それはカジュアルなものからそうでないものまで、またYouTubeに留まらないものとなっている。

TikTokでは、楽曲そのものがバイラル化し、一夜にして耳から離れなくなる。また、Snap(スナップ、Snapchatの開発元)が2020年、音楽の制作・配信市場で同社が持つ優位性の活用に向けた動きを見せたことは興味深い。2020年11月、スナップはVoisy(ボイシー)というアプリを人知れず買収した。このアプリは、選択したビートの上に自分の曲やボーカルを重ねて編集し、それらの作品を共有することができる。

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しかし、こういった状況の中、エピデミック・サウンドは単なる交換のためのプラットフォームには留まらない。

同社は、独自のプラットフォームを運営するだけでなく、Adobe(アドビ)、Canva(キャンバ)、Getty(ゲッティー)、Lightricks(ライトリックス)など、人々がコンテンツを作成する他のプラットフォームと提携し、そういった企業はエピデミックの音楽ストリーミングを提供するワンストップショップの一部として機能している。

また、同社が構築してきたものを支える「頭脳」もある。どの音楽が最も使われているか、そしてその音楽が視聴者にどのように受け入れられているかを追跡し、世界市場の音楽の嗜好を徐々に把握してきた。いわば音楽の統計グラフだ。そういった情報をもとに音楽を分類し、より的確な検索結果につなげたり、作曲家が需要に応じた楽曲を作れるように支援したりしている。

ホグランド氏は「データを収集し音楽が残した履歴を解析すれば需要がわかる」と言い「例えば、メタル子守唄を求める声が大きいことがわかれば、そういった曲をもっと依頼することができ、それが採用されるだろう」と続ける。

Spotify(スポティファイ)の成長や、Apple(アップル)、Google(グーグル)、Facebookなどによる音楽ストリーミングへの大規模な投資は、物理的な音楽ビジネスが衰退しても、音楽を聴くこと自体の衰退を意味するものではないことを物語っている。この傾向は、コンサートが中止され、オンラインストリーミングがそれに取って代わった2020年、ますます強まった。

エピデミックは、これらの大手が、レーベルや世界的に有名なBillie(ビリー)やBeyonce(ビヨンセ)と契約するのとは対象的に、そういった契約を結んでいないロングテール効果が期待できるクリエイターたちに焦点を当てている点が興味深い。

Spotifyのような企業は、アーティストの収益化プラットフォームとしてのブランドの確立に重点を置いているが、エピデミックのスタート時には、それは諸要素の一部でしかなかった。

音楽クリエイターは、エピデミックが購入した楽曲ごとに前受金を受け取るが、支払い額は楽曲によって異なる。加えて、その楽曲が後に再生される可能性のあるストリーミングプラットフォームからの収益も分配される。

同社によると、クリエイターは平均して年間数万ドル(約数百万円)、一部のトップクリエイターは年間数十万ドル(約数千万円)の収入を得ることができるという。「大規模な配信と認知度による」とはホグランド氏の言葉だ。

また、動画クリエイターに楽曲を提供する匿名のパートナーとしてだけでなく、自分自身の能力で成長する者もいる。Ooyy(オゥイ)、Cospe(コスペ)、Loving Caliber(ラヴィン・キャリバー)の3人は、自身のブランドでスターダムに駆け上がった。そういう意味では、エピデミック・サウンドがミュージシャンのために行っていることは、SpotifyやYouTubeのようなプラットフォームと、思っているほど大きな違いはないのかもしれない(それは同時に、いくつかの名高い強力な競合企業、あるいは買収者やパートナーの傾向も示している)。

市場の大きさと拡大のおかげで、エピデミック・サウンドは、その非常に混雑した市場で成長することができた。

「結局のところ、これはデータビジネスなんだ」と、ブラックストーン・グロースのコーンゴールド氏は語った。

ユーザー数を更新し、ミュージシャンの1人のスペルを訂正した。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Epidemic Sound資金調達音楽

画像クレジット:alengo / Getty Images under a RF license.

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

中小企業の事務管理のすべてをサポートするPilotがベゾス氏の投資ファンドから資金を獲得

スタートアップにとって最大の弱点の1つは簿記や税金の管理のような事務管理業務だ。

QuickBooks(Intuit社の会計ソフトウェア)はそうした弱点を常に取り除くわけではないようだ。

共同創業者のWaseem Daher(ワシーム・ダヘーア)氏、Jeff Arnold(ジェフ・アーノルド)氏、Jessica McKellar(ジェシカ・マクケラー)氏は事務管理サービスを手頃な価格でスタートアップや中小企業に提供することを使命としてPilot(パイロット)を立ち上げた。1000社超の顧客を抱え、Pilotは長年かけて大きな牽引力を獲得した。そして同社は今、著名な投資家のお墨つきも得た。同社は米国時間3月26日、評価額をこれまでの2倍の12億ドル(約1315億円)とする1億ドル(約109億円)のシリーズCを発表した。

Amazon創業者であるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏の個人的な投資ファンドBezos ExpeditionsとWhale Rock Capital(100億ドル、約1兆960億円のヘッジファンド)が共同でシリーズCラウンドをリードし、Sequoia CapitalやIndex Ventures、Authentic Venturesも参加した。

2019年4月の4000万ドル(約43億8400万円)のシリーズBラウンドはStripeとIndex Venturesが共同でリードした。最新ラウンドにより、Pilotの2017年の最初の資金調達以来の累計調達額は1億5800万ドル(約173億1900万円)超となった。

創業チームはもちろんすばらしい実績を持っている。以前、会社2社を創業し、売却した。Oracleに売却したKspliceと、Dropboxに売却したZupliだ。

Pilotのセールスポイントは、ただのソフトウェア以上のものであることだ。同社はフルスタックの財務チームを持たない中小企業へ「CFOサービス」などを提供するために、ソフトウェアと会計士を組み合わせている。また、すべての簿記顧客のために月次の差異分析も提供しており、本質的にそうした企業にとってPilotはコントローラーとなるため、顧客は予算や支出に関してより良い決断を下すことができる。

Pilotはまた、企業がもしかすると知らないままだったかもしれない中小企業向けの税額控除へのアクセスもサポートする。

同社は2020年、売り上げが出る前の企業から年間売上高が3000万ドル(約32億8800万円)を超える比較的大きな企業に至るまで、顧客のために簿記取引30億ドル(約3288億4200万円)を完了させた。顧客にはBolt、r2c、Pathriseなどが含まれる。

PilotはまたAmerican Express、Bill.com、Brex、Carta、Gusto、Rippling、Stripe、SVB、Techstarsといった企業と共同マーケティングパートナーシップを締結した。

皮肉なことにPilotは「中小企業の事務管理のAWS」を目指すと話している(実際、共同創業者のダヘーア氏は自身のキャリアをAmazonでのインターンから始めた)。簡単に言えば、Pilotは企業が成長やビジネス獲得に一層注力できるよう、すべての事務管理を引き受けようとしている。

ダヘーア氏によると、Pilotは「格別の顧客体験」を提供しようと努力している。これは、同社のビジネスの80%超が顧客のクチコミとオーガニックな関心によるものという事実に表れている。

Whale RockのパートナーであるKristov Paulus(クリストフ・パウラス)氏は、最高のサービス体験とPilotの「慎重に設計された」ソフトウェアはパワフルな組み合わせだ、と話した。

「AWSがクラウドでそうであるように、事務管理サービスを使いやすく、スケーラブル、そしてユビキタスなものにするというPilotのビジョンをサポートするのを楽しみにしています」同氏は述べた。

Pilotのモデルは、サービスを停止する1年前に1億ドルを調達したオースティン拠点のスタートアップScaleFactorのモデルを思い出させる。しかしPilotは顧客を満足させているとみられる点で異なる。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Pilot資金調達事務

画像クレジット:Cattallina / Shutterstock

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

配送サービスの急増で混雑する道路の路肩スペース管理を請け負うスタートアップAutomotusに投資家も注目

荷物の積み下ろしをする商用車やギグ・エコノミー・ワーカーの配達業務によって、道路の路肩スペースはますます狭くなっている。この問題は、新型コロナウイルスの影響でオンデマンドの配送サービスが増えたことで、さらに深刻化している。

この需要と供給の問題を解決するため、近年はCoord(コード)やcurbflow(カーブフロー)などのスタートアップ企業が続々と登場している。3年前に創業したAutomotus(オートモータス)もその1つだ。同社はサンタモニカ、ピッツバーグ、ワシントン州ベルビュー、イタリアのトリノなどの都市で事業を展開し始めており、ロサンゼルスでもプロジェクトが進行中だ。

投資家もそれに注目している。都市の路肩を監視・管理するためのビデオ解析技術を開発したこの会社は、2021年2月にQuake Capital(クウェーク・キャピタル)、Techstars Ventures(テックスターズ・ベンチャーズ)、Passport(パスポート)に買収されたNuPark(ニューパーク)の共同創業者でCEOのKevin Uhlenhaker(ケビン・ウーレンヘイカー)氏、Baron Davis(バロン・デイビス)氏らが主導するシードラウンドで、120万ドル(約1億3000万円)を調達したと発表した。同社CEOのJordan Justus(ジョーダン・ジャスタス)氏は、総調達額が230万ドル(約2億5000万円)になったと、TechCrunchに語った。新たな投資家には、Ben Bear(ベン・ベア)氏、Derrick Ko(デリック・コー)氏、マイクロモビリティ企業Spin(スピン)のZaizhuang Cheng(ツァイツァン・チェン)氏などがいる。

このスタートアップはまだ小さく、フルタイムの従業員はわずか11人。しかし、ジャスタス氏は新たに調達した資金を、新しい市場への進出や従業員の増員に充てると述べている。

Automotusは、コンピュータビジョン技術を用いて、ゼロエミッション車や商業配送車専用に指定されている駐車スペースの映像を記録する。同社のソフトウェアは、リアルタイムで路肩の使用状況を分析したり、違反駐車している車両があれば取締担当者に通報するなど、さまざまな機能を備えている。都市の職員はウェブアプリケーションを使ってこれらの分析結果にアクセスできる。その一方で、事業者の商用車は、オープンAPIやモバイルアプリを利用して、駐車可能なスペースの情報を得ることができるという。

画像クレジット:Automotus

例えば、新たに発表されたサンタモニカ市とLos Angels Cleantech Incubator(ロサンゼルス・クリーンテック・インキュベーター)によるパイロットプロジェクトでは、同市の1平方マイル(約2.59平方キロメートル)のゼロエミッション配送区域を監視する。Automotusは、配送効率、安全性、混雑、排出量について、ゾーンの影響を評価するための匿名データを提供し、ゼロエミッション配送区域のドライバー全員がリアルタイムで駐車可能なスペースの空き状況データを利用できるようにする。

2017年末に設立され、Techstarsの卒業生でもあるこのスタートアップは、主にそのエンフォースメント機能の収入分配で収益を上げている。つまり、商用車が特定の区域に駐車する際に自動的に請求される支払いの一部や、駐車違反の罰金の一部を得ているわけだ。分析機能は、都市が政策を設定したり送迎ゾーンを指定する際には役立つかもしれないが、ジャスタス氏のいう「最大の機会」はエンフォースメント機能から提供される。

ロサンゼルスのLoyola Marymount University(ロヨラ・メリーマウント大学)は、Automotusの技術を使って、駐車場の取締りを完全に自動化した。Automotusによると、これによって取締りの効率と収益は500%以上向上し、さらに駐車場の回転率が24%向上、交通量は20%減少したという。

「商用車のオペレーターにとって、エンフォースメントの要素は非常に重要です。なぜなら、路肩の駐車可能なスペースが効率的にうまく管理されていればこそ、彼らの本来の目的である商業での利用が可能になるからです」と、ジャスタス氏は語っている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Automotus交通資金調達

画像クレジット:Automotus

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

その流行を裏づける仮想市場の投資家向け金融サービス「BlockFi」が381億円調達、評価額は3300億円

仮想通貨ブームに疑念があるとしたら、この分野における特定の企業の急成長に注目してみるのがいいだろう。

BlockFiはそうした会社の1つだ。同社は米国時間3月11日、シリーズDの3億5000万ドル(約381億円) の資金調達を完了し、評価額は30億ドル(約3300億円)に達したことを発表した。このニュース自体が注目を集めているのは確かだが、2020年8月にシリーズCで5000万ドル(約54億円)を調達し、評価額は4億5000万ドル(約490億円)だったことを考えるとさらに印象的だ。シードラウンドからシリーズCラウンドにかけての合計調達額は1億ドル(約109億円)となっており、今回の資金調達で同社の創業以来の総調達額は約4億5000万ドルに達したことになる。

BlockFiは、消費者金融出身のZac Prince(ザック・プリンス)氏がFlori Marquez(フロリ・マルケス)氏とともに2017年に設立したスタートアップだ。ニュージャージー州ジャージー市に拠点を置く同社は、2018年に完了したシードラウンドで160万ドル(約1億7400万円)を調達、このラウンドではConsenSys Venturesが主導し、SoFiの参加も得ている。

プリンス氏によると、BlockFiは仮想通貨市場の投資家向けに金融サービスを提供する会社で、小売や機関を対象とした一連の製品を提供しているという。同プラットフォームの小売側では、同社のモバイルアプリを利用して、保有する暗号の利回り(ビットコイン6%、ステーブルコイン8.6%)を得たり、暗号を売買したり、暗号ポートフォリオの価値によって担保される低コストのローンを受けたりできるため「売却せずに流動性を得ることができます」と同氏は述べた。具体的には、クライアントはデジタル資産(ビットコイン、イーサリアム、Linkをはじめ、ライトコイン、PaxG、および複数のステーブルコイン)をBlockFi上で直接売買することができる。

同スタートアップはまた、デジタル資産市場に参加している機関向けの取引執行サービスのレンダーおよびプロバイダーでもある。

このモデルはかなりうまく機能しているようだ。2019年末以降、BlockFiの顧客ベースは1万から22万5000以上に増加しており、現在までに資金提供を受けた小売顧客は26万5000社、機関顧客は200社を超えている。

小売、法人、機関投資家の顧客への融資額は100億ドル(約1兆円)を突破した。

過去1年間で、BlockFiは次のことも達成している。

  • プラットフォーム上の資産数が2020年3月の10億ドル(約1090億円)から150億ドル(約1兆6300億円)に拡大。貸出ポートフォリオ全体の損失率は当初から0%にとどまっている
  • 月間売上は5000万ドル(約54億4000万円)を超え、前年同期の150万ドル(約1億6300万円)から大幅に増加
  • 従業員数を2020年3月時の100人から約530人に増員

「シリーズCを完了して6カ月も経たないうちに、ビットコインや他のデジタル資産が多くの投資家のポートフォリオ、そしてより広範な金融市場において中心的な役割を担うようになっています」とプリンス氏は語る。「デジタル資産が金融の未来であるという私たちの信念は、2020年に前年比10倍に成長し、2020年末から倍以上になった顧客ベースによって証明されています」

シリーズDでは、新しい投資会社、Bain Capital Ventures、DST Globalのパートナー、Pomp Investments、TigerGlobalが共同で主導したが、ここには既存の投資会社Valar Ventures、Breyer Capital、Susquehanna Government Products、Jump Capital、Paradigmなど多数の企業も名を連ねている。1年以上勤務したBlockFiの従業員には、資金調達ラウンドの一環として、二次的な公開買い付けを通じて株式の一部の流動性を受け取る機会が与えられる。

BlockFiは、シリーズDラウンドへの投資家の熱意は、同社の力強い事業の成長と「資産クラスとしての仮想通貨への幅広い確信」の両方を反映していると考えている。

「個人投資家、機関投資家、企業の財務部門はいずれも、仮想通貨に投資する方法を模索しています」とBlockFiは述べた。

同社でオペレーション担当SVPを務めるマルケス氏は次のように語っている。「BlockFiの目標は一貫して、仮想通貨を主流化することでした。そして日々、そうした現象が今まさに起きているという証拠を提供し続けています」

Bain Capital Venturesのパートナー、Stefan Cohen(ステファン・コーエン)氏も同意見だ。同氏は、現在暗号保有者が利用できる銀行サービスは限られているため、BlockFiは有利な立場にあるとみている。

同氏はメールで「ビットコインはすでに時価総額で1兆ドル(約109兆円)を突破しており、価値の貯蔵を実現するべくさらに高値に向かう可能性があります。BTC保有者に富が蓄積されるにつれ、住宅や自動車、教育といった従来型の資産購入のために保有資産から利回りを得たり、借り入れたりする方法を模索する人が増えていくでしょう」 と述べた。「BlockFiは、仮想通貨保有者にシンプルで安全な日常的な金融サービスを提供するリーダーとしての地位を確立しています」。

この1年間の同スタートアップの大きな成長は「BlockFiのサービスには明らかに大きなニーズがあった」ことを証明している、とコーエン氏はいう。

「彼らのビジョンは、仮想通貨を主流にするための使いやすく信頼できるプラットフォームを構築することでした。そして、彼らは真の成功を収めました」と彼は付け加えた。

一方コーエン氏によると、Bain Capitalはビットコインが価値の貯蔵庫になるという長期的な考えを持っており、現在1兆ドルを超える市場を支える「ピックアンドショベル事業」に積極的に投資してきたという。

「信頼できる金融サービスはこの分野の重要な柱であり、私たちはそれを市場における極めて戦略的な要素だと考えています」 と同氏は続けた。

今後については、同社は第2四半期にビットコインのリワードクレジットカードをローンチする計画だ。これによりBlockFiの顧客は、取引ごとにビットコインのキャッシュバックを得ることができる。今回調達した資金は、同社の製品群の成長、新たなグローバル市場への進出、そして戦略的買収のために利用される。プリンス氏によると、同社は年末までに人員を倍増する計画だという。

BlockFiはすでに世界100カ国以上で小売事業者向けサービスを展開している。2020年、同社はロンドンとシンガポールに法人顧客サービスオフィスを開設した。2021年中にはヨーロッパ、アジアパシフィック、中南米でもサポート開始を予定している。

この1週間、BlockFiは別の理由でニュースになっていた。同社は、3月7日に攻撃者が偽のサインアップと暴言でプラットフォームにスパム攻撃を仕かけた「異常な攻撃」の被害者となったのだ。

最終的に同社は、3月7日に無許可の第三者がプラットフォーム上で一括サインアップを試み始めたことを認識したことを認めている。

「私たちはこれらの『サインアップ』に使われたメールアドレスの出所を把握していませんが、それらは私たちから発信されたものではなく、BlockFiクライアントのメールでもありません」と同社はTechCrunchに語った。「私たちはこのイベントを悪質なスパムと判断しています。影響を受けた有効メールの総数は1000件未満でした」

同社は、BlockFiのデータはアクセスされておらず、データは漏えいしていないと主張している。

「当社の顧客の資金とデータは、インシデントの間ずっと保護されていました」と同社は付け加えた。「それ以来、当社のエンジニアリングおよびセキュリティチームは、このようなできごとが今後発生しないように対策を講じてきました。さらに、有効なメール受信者全員に直接連絡を取り、この件について謝罪の意を伝えました」。

カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:BlockFi仮想通貨資金調達

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

「Link in Bio」を提供するLinktreeがソーシャルコマース機能で約49億円のシリーズB調達

Instagramを見ている人なら「Link in bio」という言葉を知っているだろう。投稿のキャプションにはリンクを貼ることができず、ユーザーのプロフィールには1つのURLしか許可されていないため、多くの人がフォロワーのために複数のリンクを持つシンプルなウェブサイトを作成している。Linktreeは1200万人以上のユーザーに利用されている最も人気のある「Link in bio」サービスの1つで、米国時間3月26日にシリーズB資金として4500万ドル(約49億円)を調達したと発表した。今回のラウンドはIndex VenturesとCoatueが共同で主導し、既存投資家であるAirTree VenturesとInsight Partnersがも再度参加した。

CoatueのDan Rose(ダン・ローズ)会長が、Linktreeの取締役に就任する。オーストラリアのシドニーを拠点とする同社の前回のラウンドは、2020年10月に発表された1070万ドル(約11億円)のシリーズAだった。Linktreeの今回の資金調達は、ソーシャルコマースを容易にするツールに使われる予定だ。

Linktreeによると、同社のユーザーの約3分の1にあたる400万人が過去3カ月以内に登録したという。これはパンデミックの間、人々がソーシャルメディアやeコマースでの買い物に多くの時間を費やしていたことが理由の1つだ。

2016年に設立されたLinktreeは現在、Shorby、Linkin.bio、そして最近ローンチされたBeaconsを含む一連のLink in bioサービスと競合している。

「Linktreeを立ち上げた時、私たちはまったく新しいカテゴリーを作りました。私たちは最初に市場に参入しましたが、世界中に1200万人以上のユーザーがおり、市場シェアの88%を占めています」と創業者でCEOのAlex Zaccaria(アレックス・ザッカリア)氏はTechCrunchに語った。「その結果として必然的に多くの競合他社が現れましたが、Linktreeのユニークさの一部は一見シンプルなデザインにあります」。

ザッカリア氏によればLinktreeの差別化要因の1つは、健康とウェルネス、不動産、スポーツ、音楽、政治、出版、食品を含む幅広いカテゴリーのユーザーに採用されていることだと付け加えた。Shopify、Facebook、TikTok、YSL、HBO、Major League Baseball、そしてJonathan Van Ness(ジョナサン・ヴァン・ネス)、Jamie Oliver(ジェイミー・オリバー)、Pharrell(ファレル)などの著名人のバイオリンクに使われている。

「私たちはLink-in-bioツールとしてスタートしたかもしれませんが、時とともにLinktreeは進化し、プラットフォームはインターネットのソーシャルアイデンティティレイヤーになりました。プラットフォームがどのようにデジタルな自己表現と行動の交差点に位置するかという私たちのビジョンは、ロードマップに関して大胆に考えていることを意味しています」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Linktree資金調達Link in bio

画像クレジット:Linktree

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(文:Catherine Shu、翻訳:塚本直樹 / Twitter

1000億円超を調達しながら失敗に終わったEVのバッテリー交換ビジネスを復活させるAmple

今をさかのぼること13年とわずか、当時世界で最も力のあるソフトウェア企業の1つだったSAPでCEOへの道を歩んでいたShai Agassi(シャイ・アガシ)氏は、それまで専門的なキャリアを積み重ねてきた会社を離れ、Better Place(ベター・プレイス)というビジネスを始めた。

そのスタートアップは、勃興期の電気自動車市場に革命を起こし、電気自動車のバッテリー切れという恐怖を過去のものにするはずだった。消耗したバッテリーを充電されたばかりのものに交換する、自動化された電池交換ステーションのネットワークというのが同社のうたい文句だった。

アガシ氏の会社は、世界でもトップレベルのベンチャーキャピタルやグロースエクイティファームから約10億ドル(現在約1080億円。当時としては相当な額)を調達することになっていた。だが、2013年に会社は清算され、クリーンテック投資が受けた最初の波による多数の犠牲者の1つとなった。

今になって、シリアルアントレプレナーであるJohn de Souza(ジョン・デ・ソウザ)氏とKhaled Hassounah(ハレド・ハッソウナ)氏が、Ample(アンプル)というスタートアップによってバッテリー交換のビジネスモデルを復活させようとしている。彼らの提唱するアプローチは、電気自動車の定着によってはるかに大きな市場が出現しつつある今、Better Placeでは決して対応できなかった問題のいくつかを解決するものだ。

Statista(スタティスタ)のデータによれば、2013年に22万台しかなかった電気自動車が、2019年には480万台を数えるまでに増加した。

Ampleはすでに、投資家から約7000万ドル(約76億1366万円)を実際に調達している。投資家には、Shell Ventures(シェル・ベンチャーズ)、スペインのエネルギー企業Repsol(レプソル)に加えて、Moore Strategic Ventures(ムーア・ストラテジック・ベンチャーズ)も名を連ねている。ムーア・ストラテジック・ベンチャーズは数十億ドル(数千億円)規模のヘッジファンドであるMoore Capital Management(ムーア・キャピタル・マネジメント)の創設者であるLouis M. Bacon(ルイ・M・ベーコン)が個人で所有するベンチャーファームだ。調達した額には、2018年に報告された3400万ドル(約36億5670万)の投資、および日本のエネルギー・金属企業であるENEOSホールディングスから最近調達した資金を含め、その後のラウンドでの投資も含まれる。

Better Placeのビジネスとの類似について、ソウザ氏は「Better Placeへの投資案件に関わったためトラウマになってしまった、という人がたくさんいましたよ」と話した。「関わっていなかった人も、その件について調べた後は決して近寄らないようにしていました」。

AmpleとBetter Placeの違いは、バッテリーパックのモジュール化と、Ampleの技術を利用する自動車メーカーとの関係がバッテリーパックのモジュール化によって変化することにある。

Ampleの共同創設者兼CEOであるハッソウナ氏は「私たちのアプローチは、バッテリーをモジュール化してからバッテリーの構造部品であるアダプタープレートを用意し、アダプタープレートとバッテリーの形状、ボルト仕様、ソフトウェアインターフェースを共通にすることです。Ampleが提供するのは、これまでと同様のバッテリーシステムですが、タイヤ交換と同じようにAmpleのバッテリーシステムは交換可能なのです」と述べた。「実質的に、私たちが提供するのはプレートであって、クルマなどには変更を加えません。今や、固定式のバッテリーシステムを搭載するか、Ampleの交換可能なバッテリープレートを搭載するかという選択肢があるのです。当社はOEMと提携し、重要なユースケースを実現するために交換可能なバッテリーな開発しています。車の側はまったく変更しなくてもAmpleのバッテリープレートは搭載できます」。

Ampleは現在、5社のOEMと共同開発を進めており、すでに9モデルの車を使ってバッテリー交換のアプローチを検証した。それらのOEM企業の1社には、Better Placeとのつながりもある。

AmpleがUber(ウーバー)とのパートナーシップについて発表したことから、同社が日産のリーフにも関わっていることは明白になっている。ただし、Ampleの創設者たちは、OEMとの関係についてコメントを控えている。

Ampleが日産とつながっていることは明らかだ。日産は2021年初めにUberとのゼロエミッション・モビリティに関する提携成立について発表している一方、AmpleによればUberはAmpleがベイエリアの数カ所に設けるロボット充電ステーションを利用する最初の企業でもある。日産との協力関係は、同社のもう1つの部門であるルノーとBetter Placeとのパートナーシップを彷彿とさせる。失敗に終わった以前のバッテリー交換スタートアップにとって、それは最大の取引になったのである。

Ampleによれば、ある施設に充電設備を設けるのに、わずか数週間しかかからないという。また、料金システムは1マイルあたりに供給されたエネルギーに対して料金を徴収するというものだ。「ガソリンより10~20%安くなる経済性を達成しています。営業初日から利益が上がります」とハッソウナ氏は述べた。

Ampleにとって、Uberが最初のステップになる。Ampleはまとまった数の車両を持つ組織を重視し、名前は非公表ながら複数の公共団体とも、車両群をAmpleのシステムに加入させるよう交渉中だ。ハッソウナ氏によれば、まだUberのドライバーだけだとはいえ、Ampleは現在までにすでに何千回ものバッテリー交換を実施しているという。

ハッソウナ氏によると、車両には従来の充電施設でも充電が可能だ。同社の請求システムでは、同社が提供したエネルギーと、他の充電口から供給されたエネルギーを区別できるのだという。

「これまでのユースケースの場合、ライドシェアでは個人ドライバーが料金を支払っていました」とソウザ氏はいう。Ampleでは、2021年これから配置される5つの車両群について、車両群の管理者や所有者が充電料金を払うようになることを期待している。

Ampleのインスピレーションの源の1つとなっているのが、ハッソウナ氏が以前One Laptop per Child(ワン・ラップトップ・パー・チャイルド)というNPOで働いていた頃の経験だ。そこでは、子どもたちの間でノートパソコンがどのように使われているのか思い込みを考え直さざるをえなかったという。

「最初はキーボードとディスプレイの問題に取り組んでいましたが、すぐに課題は子どもたちが置かれている環境にあるということを実感するようになり、インフラ構築の枠組みを開発するようになりました」とハッソウナ氏は述べた。

問題だったのは、当初ノートパソコンを供給する仕組みを設計した時点で、子どもたちの家にはノートパソコン用の電源がないことを考慮に入れていなかったことだった。そこで、バッテリー交換用の充電ユニットを開発したのだ。子どもたちはその日の授業でノートパソコンを使い、家に持ち帰り、充電が必要になればバッテリーを交換できるようになった。

「企業が所有する車両群にはこれと同じソリューションが必要です」とソウザ氏は述べた。とはいえ、個人でクルマを所有している人にもメリットがあるという。「自動車のバッテリーは徐々に劣化していくため、所有者はこのようなサービスがあれば、クルマにフレッシュなバッテリーを搭載できます。また、時がたつにつれて、バッテリーで走行可能な距離も伸びるでしょう」。

ハッソウナ氏によれば、現時点ではOEMからAmpleにバッテリー未搭載の自動車が届き、Ampleが自社の充電システムをそこに取り付けるかたちになっている。それでも、Ampleのシステムを利用する車両の数が1000台を超える中で同社が期待しているのは、Ampleから自動車メーカーにバッテリープレートを送り、メーカーサイドでAmpleが独自のバッテリーパックを取り付けるようになることだ。

Ampleが現時点で対応しているのはレベル1とレベル2の充電だけであり、同社と提携する自動車メーカーにも急速充電オプションを提供していない。おそらく、そうしたオプションを提供することは自社のビジネスの首を絞めることになり、Ampleのバッテリー交換技術の必要性を排除してしまう可能性すらあるからだろう。

現在問題となっているのは、車両への充電にかかる時間だ。高速充電でも満タンまで20~30分かかるが、この数字は技術の進歩とともに下がっていくだろう。Ampleの創設者たちは、たとえ自社のバッテリー交換技術よりも高速充電の方が優れた選択肢として進化することがあるとしても、自分たちのビジネスを電気自動車の普及を早めるための補足的な段階だとみなしている。

「10億台のクルマを動かそうとすれば、あらゆるものが必要になります。それだけたくさんのクルマを走らせる必要があるのです」とハッソウナ氏は述べた。「問題を解決するために、あらゆるソリューションが必要だと思います。バッテリー交換技術を車両群に応用する場合、必要なのは充電スピードではなく、料金面でガソリンに対抗することです。今のところ、高速充電を誰にでも利用できるようにすることは現実的ではありません。5分間でバッテリーに充電できるかどうかは問題ではないのです。それだけの電力を供給できる充電システムの構築コストが、割に合わないのです」。

Ampleの創設者2人は、充電にとどまらず、グリッド電力市場にもチャンスを見いだしている。

「電力のピークシフトは経済に組み込まれています。この点でも私たちが役に立てると思います」とソウザ氏は述べた。「これをグリッド蓄電池として使うのです。私たちは需要に応じた電気料金システムに対応できますし、グリッドに電力を供給するようにという連邦指令もありますから、エネルギーを戻すことでグリッド電力の安定に貢献できます。Ampleの充電ステーションの数はまだ大きな効果を上げられるほど多くはありませんが、2021年事業を拡大すれば、貢献できるようになるでしょう」。

ハッソウナ氏によると、同社の蓄電容量は1時間あたり数十メガワットで運用されている。

「このちょっとした蓄電池を使って、交換ステーションの発展を促進できるでしょう」とソウザ氏は述べた。「ステーションの設置に驚くほど巨額の投資は必要ありません。これまでとは別の資金調達方法も活用しながら、複数の方法でバッテリーの資金を調達できると思います」。

Ampleの共同創設者、ジョン・ソウザ氏とハレド・ハッソウナ氏(画像クレジット:Ample)

カテゴリー:モビリティ
タグ:Ample電気自動車バッテリー資金調達日産Uber

画像クレジット:Ample

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Dragonfly)

Amazon上のブランドの買収と成長を目指すBenitago Groupが債務と株式を合わせて約60億円調達

Benitago Groupは、Amazon(アマゾン)上のブランドの大きなポートフォリオを作ることを目指している。同社はこのほど、5500万ドル(約60億円)の資金を調達したことを発表した。そのほとんどが買収資金のためのクレジットラインで、さらに株式投資も行っている。

共同創業者のSantiago Nestares(サンティアゴ・ネスタレス)氏は「私たちはこれらのブランドを成長させ、より効率的に運営していきたい」と語っている。

スタートアップもAmazon FBA(Fulfillment by Amazon)ビジネスを立ち上げるために多額の資金を調達しているが、ネスタレス氏によるとBenitagoは「金融裁定」だけに焦点を当てているのではないため、他とは違っているという。むしろ同社は、これらのビジネスを成長させ続けるための詳細で反復性のある青写真を描いている。

ネスタレス氏と共同創業者のBenedict Dohmen(ベネディクト・ドーメン)氏は、ダートマス大学の学生だったときに、腰痛治療具のSupportibackでBenitagoを始めた。ちなみに社名は2人の名前を合わせたものだ。同社はその後、美容、マタニティ、栄養などのカテゴリーに拡大したが、Nestaresによると、これまでは外部からの資金調達はあまりなかったが、収益で成長を支えたという。

その結果、チームのメンバーは整形外科などのエキスパートではないにもかかわらず、主にAmazon上でブランドを成長させることに注力して成功し、ネスタレス氏が「Amazonネイティブ」と呼ぶものになっていった。

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ブランドを買収する過程はまず、その製品の市場の競争状況を見極めることから始まり、また顧客によるレビューを調べる。そして「足りない機能や余計な機能はないか、包装の色はこのままで良いか、パッケージはAmazonのボックスにちょうど収まるかなど、あらゆることをAmazon向けに最適化します。」とネスタレス氏はいう。

同社がブランドを買収するとき、そのプロセスはわずか数週間で終わり、前のオーナーもブランドの所有権の一部を保有して、ブランドの継続的成長から利益を得る。

「これは受け身の財務的処理ではなくて、成長へのインパクトを生み与えるやり方です」とネスタレス氏はいう。

Amazonがeコマースの支配を失うことは当分ないと思われるが、それでもネスタレス氏はBenitagoのビジネスをたった1つのプラットフォーム上に築いている現状は「最大のリスク」だと認めている。しかしながらそのリスクは、企業にとってGoogleの検索のアルゴリズムがいつどう変わるかわからない、というタイプのリスクといったものとは違う。

「Amazonは違うと思います。Amazonもあなたと同じ目標、『顧客にできるだけたくさん売る』という目標を持っています」と彼はいう。

Benitagoは現在、5つのブランドを経営し、製品数は100種以上ある。今回獲得した資金でその数を大きく増やすことができる。ネスタレス氏によると、現在、商談が進んでブランドは12あり、年内にはさらに25かそれ以上のブランドを買収したい、という。

CoVentureが株式投資をリードし、融資枠にも参加している。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Benitago GroupAmazon買収資金調達eコマース

画像クレジット:Benitago Group

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hiroshi Iwatani)

話題のヘッドレス通販の触媒を目指すY/Cが支援するVue Storefront

「ヘッドレスコマース」は最近よく使われる言葉だ。実は私自身、すでにヘッドレスコマースについて記事を書いているVue StorefrontのCEOであるPatrick Friday(パトリック・フライデー)氏は、このコンセプトを使ってコマースエコシステム全体の中での自社の位置づけを明確にしようとししている。

「Vue Storefrontは、ヘッドレスコマースに頭となるフロントエンドを提供します」とフライデー氏は説明する。

つまり通常のヘッドレスコマース企業は消費者から「頭」が見えない部分、つまりバックエンドのインフラ構築に注力する。これに対してVueは消費者が実際に接するフロントエンドを高度なウェブアプリとして提供する。同社は自らを「ヘッドレスコマースのための稲妻のように高速なフロントエンドプラットフォーム」だと表現している。

フライデー氏とCTOのFilip Rakowski(フィリップ・ラコウスキー)氏は、eコマース企業のDivanteで働いていたときにオープンソースプロジェクトとしてVue Storefrontテクノロジーを構築し、2020年に新しいスタートアップとしてスピンアウトしたという。同社はシリコンバレーのアクセラレーターのパイオニア、Y Combinatorの最新のクラスに参加しており、SMOK Ventures、Movens VCがリードしたラウンドでシード資金150万ドル(約1億6000万円)を調達している。

「我々が会社を立ち上げたのも、資金を調達したのも、エージェントを説得したのも新型コロナウイルスによるパンデミックの最中でした」とフライデー氏は述べている。2020年12月初旬のある朝に投資家との契約にサインし、その夜さっそくYCombinatorの面接に臨んだこという。

フライデー氏をはじめとするチームは、オープンソースのテクノロジーをコアとしてビジネスを立ち上げたとき単に新しいウェブアプリを構築する以上のことができることに気づいた。つまりVueを利用すればMagentoやShopifyなどのeコマースプラットフォームをContentstackやContentfulなどのヘッドレス・バックエンド・システムに接続し、さらにPayPal、Stripeなどの支払サービスを含むサードパーティのシステムとの統合することが可能だった。

画像クレジット:Vue Storefront

フライデー氏によれば、ユーザーから「Vue Storefrontは接着剤のような存在だ。ヘッドレスアプリは複雑で使うのが難しかったが、Vueが接着剤となって多様なサービスを統合してくれた」と感謝されたという。

Vueのプラットフォームを使用して解説されているオンライン店舗は世界中で300以上となる。フライデー氏によれば、パンデミックとロックダウンにともなうeコマースの急拡大により、企業が「4、5年前のフレームワークやテクノロジー使ったプラットフォームがすでにレガシーになっている」と気づいたため、Vueの採用が加速したという。一方、ラコウスキー氏はこう説明する。

レガシーシステムを新しいプラットフォームに更新しようとすとき、Vue Storefrontが乗り換えを容易にすると考えて我々のところに相談に来るユーザーが多数います。Vueのテクノロジーを使えばバックエンドと独立にユーザーと対話するフロントエンドのコードを書くことができるのでプラットフォームのアップデートが極めて容易、迅速になります。

投資家から資金を調達した直後だったため、Vue Storefrontのチームは前回のYCデモデーには参加していない。ただし次回のデモデーには参加するという。なおVue自身は米国時間4月20日にオンラインでVue Storefront Summitを開催する予定だ。

関連記事:新型コロナを追い風に米国のeコマース売上高は2022年までに109兆円超えか

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Vue StorefronteコマースヘッドレスコマースY Combinator資金調達

画像クレジット:Vue Storefront

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(文:Anthony Ha、翻訳:滑川海彦@Facebook

ヘッドレスコマースのSwellが約3.7億調達、柔軟性に富むバックエンドを目指す

ヘッドレスコマースの新しいプラットフォームが次々と登場しているが、SwellのCEOであるEric Ingram(エリック・イングラム)氏は「eコマースで何か新しいことをやるのは本当に難しい」という。

彼が具体的に挙げるのは、ヘッドレスのプラットフォームの多くが、フロントエンドのショッピング体験をその上に実装するためのバックエンドのインフラストラクチャーを提供して、企業がeコマースを迅速に構築できるようにしているが、実際のマーケットプレイスでは人々が従来からある製品カタログから検索、閲覧、購入している。そこに新顔のコマースが割り込むのが難しい。

「eコマースにおいて人の関心を惹く最もおもしろいアイデアは、新しいカタログを提供することではない」とイングラム氏はいう。

このほど340万ドル(約3億7000万円)のシード資金を調達したSwellは、同社プロダクトを利用するコマースのビジネスモデルの部分で、多くの柔軟性と自由度を提供することに努めている。イングラム氏はStefan Kende(ステファン・ケンデ)氏やDave Loneragan(デイブ・ロネラガン)氏、Joshua Voydik(ジョシュア・ボイディック)氏そしてMark Regal(マーク・リーガル)氏らとSwellを創業し、eコマース企業のための「未来に備えたバックエンド」の提供を目指した。ビジネスモデルの進化とともにコマースも成長し進化に適応するため、バックエンドにもその対応が求められる。

Swellのプラットフォーム上では通常のカタログも作るが、同時に同社は、独立のコーヒーロースターのマーケットプレイスであるSpinnや、B2Bの真空ポンプのマーケットプレイスNowvac、ダイヤモンドの倫理的なD2Cリテイラーを自称するGreat Heightsなどもサポートしている。

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ボイディック氏によれば、Swellには「無限の柔軟性」があるという。その一環として同社は、各コンポーネントへのAPIアクセスを提供している。また、各サイト自身が運営するネイティブのサブスクリプションをサポートし、製品の属性もその数を制限しない。

「Swellの上のすべてのストアに、独自のデータベースSaaSのプラットフォームがある」とイングラム氏はいう。

彼によると、Swellのプラットフォームは、普通ならオープンソースのアプローチからしか得られないような柔軟性を提供しつつも、そこには技術面での頭痛がないとのこと。「私たちの顧客には、自分のコードベースやデータベースを自分でメンテしたい人なんかいないからね」という。

「Swellを利用するための技術力は不要で、デベロッパーも必要ありません。実際のところデベロッパーの顧客は多いがも、普通のマーケターも多くOpsの人たちもいる。彼らは開発について多少は知っていて、システムを自分でコントロールしたいと思っている」とイングラム氏はいう。

今回の投資はBonfire VenturesのJim Andelman(ジム・アンデルマン)氏がリードし、Willow Growth PartnersとRemote First CapitalのAndreas Klinger(アンドレアス・クリンガー)氏、VercelのCEOであるGuillermo Rauch(ギレルモ・ローチ)氏、GitHubのCTOであるJason Warner(ジェイソン・ワーナー)氏、そしてSalesforce Commerce CloudのCEOだったMike Micucci(マイク・ミクッチ)氏が参加している。

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タグ:Swelleコマース資金調達ヘッドレスコマース

画像クレジット:dashu83/Getty Images

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hiroshi Iwatani)

高セキュリティのメッセージングアプリ「Signal」開発者氏が助言を行った仮想通貨「MobileCoin」がベンチャー資金調達

プライベートメッセージングアプリ「Signal」を開発したMoxie Marlinspike(モクシー・マーリンスパイク)氏から技術指導を受けた仮想通貨「MobileCoin」が、Future VenturesとGeneral Catalystから2ラウンドにわたって1135万ドル(約12億3000万円)の新たなベンチャー資金を調達した。

同社をよく知る関係者によれば、このラウンドにより、現在は利用できないSignalのプラットフォーム上でMobileCoinが利用できるようになる可能性が高まったのではないかという。

マーリンスパイク氏とは連絡が取れなかったが、彼の役割をよく知る人物によると、彼はほぼ完全に自身の事業に集中しているようだ。MobileCoinの創設者であり、LinkedInでMobileCoinの「門番」であると自称しているJoshua Goldbard(ジョシュア・ゴールドバード)氏には米国時間3月9日の午後Signalで連絡が取れたものの、質問への回答は拒否された。投資家らにMobileCoinが他の仮想通貨関連企業と比べてどうなのかという質問をしても、回答を得ることはできなかった。

WiredがMobileCoinを初めて紹介したのは2017年のことで、仮想通貨の大小さまざまな課題を克服する必要があると説明されている。多くの人や商売にとって複雑すぎて使えない、十分な拡張性がない、取引に時間がかかりすぎるなどの課題である。

例えば、CryptoKittiesやNBA Top Shotなどの事業を展開するDapper Labsは、Ethereumのスケーラビリティの問題があったことや、より「消費者志向」のプラットフォームの開発に興味を持ったことから、2020年に独自のブロックチェーンと「Flow」トークンを開発した。

当時Wiredは「世界はもうこれ以上多くの仮想通貨を必要としていないのではないか」としながらも(現在オンライン上では4000以上の仮想通貨が発行されている)「Signal」でのマーリンスパイク氏の実績を考えると「注目に値するプロジェクトである」と述べている。

MobileCoinのウェブサイトによると、同社は携帯電話での「ほぼ瞬時的な取引」による支払いに、確実なプライバシー保護を提供することを目指しているという。しかし、携帯電話に仮想通貨を保存する際のリスクとして、携帯電話のロックが解除されたまま放置されたり、携帯電話の無線がハッキングされたり、または例えばiOS自体がハッキングされたりすることもあり、こういった場合このプライバシー保護の価値が失われる可能性がある(iOSには、特定のサービスや情報へのアクセスをアプリに許可する際に強固な許可システムが採用されているが、それでもこのようなことは起こる)。

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同サイトによると、携帯電話を紛失した際には財布を「安全に復元」できるというのがMobileCoinの特徴だという。ただしこれは秘密鍵を託すプロバイダーを信用しないことには成り立たない(MobileCoinはその必要はないという)。これについては、近日中に詳細が発表されると思われる。

ゴールドバード氏とマーリンスパイク氏は、MobileCoinをSignalやWhatsAppなどのチャットアプリに組み込むことを想定しているとWiredに語っているが、もしMobileCoinがSignalでの事実上の取引方法の1つとなれば、その影響力は絶大なものになる可能性がある。

Signalはプラットフォームのユーザー数を公表していないが、現在、推定4000万人が同社の暗号化されたメッセージングアプリを利用しており、2021年初めのトランプ大統領の任期が終わりつつある時期にダウンロード数が急増した。モバイルアプリの分析を提供するSensor Towerによると、Signalの1日あたりのダウンロード数は通常5万件のところ、1月5日の週には1780万件のダウンロードがあったという。

Signalでの大量使用がMobileCoinの価値向上につながるのであれば、2020年12月初旬に仮想通貨取引所のFTXで購入できるようになったこの通貨は、上昇気流に乗っているように見える。

マーリンスパイク氏の早期段階からの関与は間違いなくプラスではあるものの、仮想通貨とメッセージングアプリの相性は、規制当局の影響もありこれまであまり良いものではなかった。2009年にウォータールー大学の学生グループによって設立されたモバイルメッセージングアプリのKik Messengerは、ユーザーがプラットフォーム内で使用できるKinというデジタル通貨を作成した。このプロジェクトは最終的に米国証券取引委員会との数年に及ぶ争いに発展し、同社はほぼ壊滅状態に陥ったが、現在は復帰を果たそうとしている。

(MobileCoinの擁護のためにいうと、ベンチャーキャピタルを頼ったMobileCoinとは対照的に、Kikはイニシャル・コイン・オファリング、ICOという、当時はまだ実績がなく規制もない資金調達方法でKinから資金を集めようとしていた)

Signalよりもはるかに大規模なメッセージングアプリであるTelegram(2020年4月時点でのユーザー数は推定4億人)も、SECと何年も争った後、スマートフォンを持っている人に独自の分散型仮想通貨を提供する計画を放棄した。Kikと同様、Telegramの一連の出来事の一部は、ICOによるトークンの早期販売に起因している。

Facebookでさえ、新しい仮想通貨に関する野心的な計画を縮小し、代わりにドルに裏づけられた単一のデジタルコインを発行することを決意したにもかかわらず、まだ何も公開していない(間もなく発表されると見込まれるが)。

もしかすると、MobileCoinは単に米国外での活動を計画しているのかもしれない。実際、2020年12月にMediumに掲載された公開記事によると、MobileCoin Foundationは、このプロジェクトを米国のユーザーや「他の禁止された管轄区域の人や団体」は利用できないと記している。

いずれにせよ、今回の新ラウンドはMobileCoinにとって初めての外部調達ラウンドではない。2018年5月には、投資家から2970万ドル(約32億2500万円)を調達したことをSEC提出書類で明らかにしている。報道によれば、仮想通貨取引所大手のBinanceのベンチャー部門であるBinance Labsがその資金調達を主導したという。

カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:MobileCoin仮想通貨資金調達Signal

画像クレジット:Signal

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

簡単にコラボができる画面共有サービスCoScreenが約5億円調達

米国時間3月25日、リアルタイムで画面を共有しチームがコラボレーションできるようにするスタートアップCoScreenが、そのプロダクトを公式に市場にローンチした。また、同日までの資金調達額が460万ドル(約5億円)であることも公表している。

CoScreenのシードラウンドをリードしたのはUnusual Venturesだ。同社の共同創業者でCEOのTill Pieper(ティル・ピーパー)氏がTechCrunchのインタビューで語ったところによると、資金の大半はパンデミックの前に調達しており、残りは2020年の間に少しずつ入ってきたという。多くのエンジェルが同社への投資に参加したが、その中にはGitHubのCTOであるJason Warner(ジェイソン・ワーナー)氏もいる

なぜ画面共有が何百万ドル(何億円)もの投資と、専属の開発チームを要するのか?良い質問だ。幸いにもCoScreenのチームは、あなたが現在、Zoomでミーティング時にチームと子犬の写真を共有するために使っているものよりもかなり良いと実証できるプロダクトを開発したのだ。

CoScreenって何だ?

CoScreenは画面共有機能を提供するが、その方法がシンプルですっきりしている。例えばあなたが自宅でMacを使っていて、私が自宅でPCを使っているとしよう。そして2人は、ある仕事でコラボレーションして、シェアをしなければならない。私のところにあるドキュメントの編集を、あなたは手伝いたい。あなたのところには画像があって、それをあなたは私に見てもらいたい。ピーパー氏によると、CoScreenを使えばワンクリックで2人は2つのアプリケーションをインターネットを介して共有できる。あなたの画像は私の画面に、あなたの画面上と同じように出現する。そして私のドキュメントも同様だ。2人はそれらを見ながらリアルタイムで話ができる。

ピーパー氏によると、リアルタイムに限りなく近づけるためには、レイテンシーがCoScreenにとって永久の課題になるという。それはもっともだが、同社は自分たちが開発したプロダクトは十分に市場に出せるものだと信じている。CoScreenはローンチまでに、WindowsとMacの両方の環境で長期に渡りβテストを行ってきた。

CoScreenは、音声とビデオのチャットもできる。それには制約があり、ビデオはウィンドウを大きくすることができない。そのため、かえってチャット時の精神的負担がない。毎日のようにZoom疲れに襲われている私には、好都合だ。

このスタートアップのプロダクトは、簡単に思えるが実はそうではないものの典型だ。瞬時に共同執筆が行えるGoogle Waveを覚えているだろうか?すばらしいものだったが、それは死んでしまった。その後継者らしきプロダクトがGoogle Docsとなるが、今でもまだ遅くて使いづらいし、未熟というよりも、ほぼ熟成されていない。リアルタイムの技術は、単純なものではないのだ。

CoScreenがスタートアップとして成功するためにできることは、現在、市場にたくさん存在するアプリにもできるのではないか?答えはどちらだろうか?Zoomはすでに成熟していたビデオチャット市場を、実際に使い物になるプロダクトで急襲した。私が使ったソフトウェアも、共有やコラボレーションはもちろんのこと、画面共有もよくできていた。だからこそ、CoScreenの技術が優れているのであれば、同社はもっと広く普及するよう努めるべきだ。

CoScreenのプロダクトは現在、数週間無料で提供されている。収益化の話はまだ早い、とピーパー氏はいう。現時点で収益化は、企業の燃えるような欲望のことではなく、プロダクトへの自信と資金力の問題だ。

最後に、同社はエンジニアやその他のアジャイルチームを狙っているようだが、私見ではこのプロダクトはいずれ、もっと広いマーケットからのニーズがありそうだ。

現時点では、CoScreenの将来を占うには数字が必要だ。同社はまだユーザー数などの数字を共有しないが、それはベータだから当然だ。次に同社を取り上げるときには、具体的な数字が欲しい。

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Hiroshi Iwatani)