オーストラリア拠点の注目スタートアップ6社

オーストラリアではスタートアップのエコシステムが急速に発展しつつあり、TechCrunchもここ数年、オーストラリアのスタートアップシーンに注目するようになった。その最たる例として、2017年にはTechCrunch Battlefield Australiaを開催している。オーストラリアのスタートアップシーンが成長しているもうひとつの証拠として、先日メルボルンで開かれたPause Festがある。このイベントは近年ますます勢いをつけていて、国内外の注目を得たいオーストラリアのスタートアップにとって、たちまち参加マストな場所となった。

私は、そのスタートアップ・ピッチコンペを仮想的に訪れ、事業の売り込みを行ったいくつもの参加者にインタビューすることができた。中でも際立ったスタートアップ企業を上位から順番に紹介しよう。

Medinet Australia

第1位となったのは、Medinet Australia(メディネット・オーストラリア)。患者がアプリで医師の診察を受けられるようにして、オーストラリア人の医療の利用をもっと便利に手軽にすることを目指すハイテク系スタートアップだ。Babylon Healthなどのアプリにどこか似ているが、Medinetの「telehealth」アプリの場合は、遠く離れた総合診察医から臨床的なアドバイス、処方箋の取得、薬の配達、病理検査の結果の閲覧、雇用主への診断書の電子メール送付、専門医への紹介状(料金、待ち時間、患者の評判などの率直な事前情報を含む)といったサービスが受けられる。彼らはエンジェルからの支援で300万ドル(約3億3000万円)を調達し、いずれは機関投資家からの投資も期待している。オーストラリアは広大で、便利なtelehealthアプリへ人々が流れてゆくことを想像すれば、投資に相応しい分野と言える。

Everty

第2位は、Everty(エバーティー)。企業の電気自動車充電ステーションの管理、監視、収益化を簡単にしてくれる。だが、これはインフラではない。職場と会計システムをEV充電ネットワークとリンクさせるというもの。「EV充電版のSalesforce」といったところだ。これは、商用と自家用の両方の充電の監視ができる。エンジェルラウンドから資金を調達していて、さらなる資金調達の準備を進めている。

AI On Spectrum

第3位は、AI on Spectrum(AIオン・スペクトラム)。自閉症患者は統計的に長生きしないという悲しい事実がある。残念なことに、自閉症を患う人の自殺率が極めて高いのだ。AI on Spectrumは、自閉症児とその両親が生きる力を得られるよう、支援環境探しを身近なアプローチで手助けする。このゲームで、自閉症児が自分の感情面を探求できるようになり、辛いときに気を紛らわす手段が得られる。ユーザーをアシストするプロセスには、AIと機械学習が使われている。

HiveKeeper

Hacker Exchange特別賞を受賞したのはHiveKeeper(ハイブキーパー)。プロの養蜂家は、素早く、信頼性の高い、簡単に使える蜂の記録方法を求めている。それを叶えるのがHiveKeeperだ。さらに同社は、事故や問題をいち早く知らせるための、より正確な分析を可能にするソフトウェアとセンサーシステムの開発も行っている。将来この技術は、蜂の行動の変化から山火事の接近を警告するといった使い方もできるだろう

Relectrify

シンギュラリティ・ユニバーシティ特別賞を受賞したのは、Relectrify(リレクトリファイ)。自動車などの充電式バッテリーは再利用できるが、それを上手に使うための鍵は、どれだけ寿命を延ばすかだ。Relectrifyのバッテリー制御ソフトウェアは、すべてのセルの性能を最大限に引き出し、充電サイクルの回数を増やす。これはまた、新品でも再生品でも、バッテリーインバーターは使わず、コンセントの電源を使えるため、保管コストも削減する。その高度なバッテリー管理システムは、出力と電気のモニターを結びつけることで、どのセルが強く、どのセルが弱いかを迅速にチェックし、バッテリー寿命を30パーセントも向上させる。さらにバッテリーの二次利用も可能にする。これまでのところ、同社は日産とAmerican Electric PowerとのプロジェクトでシリーズA投資450万ドル(約5億円)を調達している。なお。シンギュラリティ・ユニバーシティは、米国シリコンバレーを拠点するスタートアップ企業を支援する企業だ。

Gabriel

悲しいことに、高齢者や入院患者は、長い間ベッドに寝ていると床ずれを起こす。床ずれが原因で命を落とす人もいる。しかも、床ずれが元で病院が訴えられることもある。求められるのは、床ずれを予防すると同時に、患者のどの部分に床ずれができやすいかを予測する技術だ。Gabriel(ガブリエル)はそれに取り組んでいる。マルチモーダルな技術を使い、ベッドからの転落や床ずれを予防する。家庭でも病院でも使えるパッシブなモニター装置で、センサーを内蔵した抵抗シートがベッド上の圧力を認識できるシステムに接続されている。米食品医薬品局の認可を得ていて、特許を出願中。すでにハワイの一部の病院で使われている。これまでにエンジェルから200万ドル(約2億2000万円)を調達し、現在も資金調達中だ。

Pause Featの雰囲気は以下の動画で確認してほしい。

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(翻訳:金井哲夫)

ピーター・ティール氏のFounders Fundが新ファンドで3000億円超を集める

ベストセラーとなった「ゼロ・トゥ・ワン」の著者としても知られるPeter Thiel(ピーター・ティール)氏が率いるベンチャーキャピタルのFounders Fundが2件、30億ドル(約3300億円)の出資を確保したことをTechCrunchは確認した。同ファンドのジェネラル・パートナーはティール氏に加えて、Keith Rabois(キース・ラボワ)氏、 Brian Singerman(ブライアン・シンガーマン)氏の3名だという。

今回のFounders Fundの資金調達についてx最初に報じたのはAxiosだった。Founders Fundでは2016年にFounders Fund VIで13億ドル(約1440億円)を確保した後、昨年12月に12億ドル(1330億円)のFounders Fund VIIをクローズさせた。 今週月曜に同社の最初のグロースファンド15億ドル(約1670億円)がクローズされたことを広報担当者が確認した。 同時に同社のパートナー陣からも3億ドルの出資確約があったので、今回の資金調達の合計は30億ドルとなった。

ラボア氏とティール氏という辣腕のPayPalマフィア(PayPalの元従業員と創業者のグループ)が再度協力することになってから新たなファンドが準備されていることは、昨年10月にWall Street Journalが報じていた

このファンドが次々に資金調達に成功しているのは、得た資金を素早く投資するする能力を証拠立てるものだと関係者は見ている。特に2019年にラボワ氏が参加してからFounders Fundの調達額は一挙に増えたという。

しかし資金調達の決め手は高い利益率だろう。2011年以来、Founders Fundは1ドルの投資を4.60ドルに増やしてきたとWall Street Journalは報じている(AirbnbとStripe Inc.への投資成功が大きく寄与している)。この運用成績はベンチャーキャピタル業界平均の2.11倍を大きく上回るのだ。一方、3回目のファンドの運用成績も3.80ドルとなり、平均を0.75ドル上回っている。

Founders Fundの投資決定プロセスは他のベンチャーキャピタルとはかなり異なっており、ケースバイケースで機動性が高い。昨年、TechchCrunchが行ったイベントでFoundes FundのパートナーであるCyan Banister(サイアン・バニスター)氏は以下のように説明している。

投資の意思決定の方法は投資額によって異なる。バニスター氏によれば「(スタートアップへの投資)ステージに応じて話し合う必要があるパートナーの人数は変わってくる。1人でいいこともあるし3、4人のこともある。ごく初期のステージで、投資額も小さければ大勢のパートナーに会う必要はない。投資額が大きくなればジェネラル・パートナー全員の審査が必要だ。Brian Singerman(ブライアン・シンガーマン)氏やKeith Rabois(キース・ラボア)氏のような投資業務のトップに会わねばならず、エンジェル投資の場合よりは手間がかかる」という。ピーター・ティール氏自身が投資の意思決定にどの程度関与しているかを尋ねると、バニスター氏は「ある額以上になると常に関与する」と述べた。正確な額については「多額といっておきましょう」と笑った。

AxiosのDan Primack(ダン・プリマック)氏の記事によれば、今回のグロースファンドの投資額は1件1億ドル以上だろうという。150万ドル以下の投資案件については2人のパートナーが合意すればすぐに可能、150万ドルを超える場合は最低一人のパートナーとジェネラル・パートナー、500万ドルを超える投資についてはパートナー1名、ジェネラル・パートナー2名の同意が必要だ。1000万ドルを超える投資では2人のパートナーとティール氏、シンガーマン氏、ラボワ氏すべての同意が必要だという。

ジェネラル・パートナーの同意が必要な投資案件ではスタートアップの創業者は1人以上のジェネラル・パートナーに直接あるいはリモートで投資すべき理由をプレゼンしなければならない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ソニー・ミュージックも利用中の字幕チェッカー開発のInVideoが約2.8億円調達

ビデオ編集アシスタントのスタートアップであるInVideoが新しいプロダクトと新しい資金調達ラウンドを発表した。米国サンフランシスコに本拠を置くInVideoは誰でもプロレベルのビデオを制作できるようにするサービスだ。 インターフェースはドラッグ&ドロップで誰でも直感的に操作できる。テンプレート、ストック写真、ストックビデオのライブラリも用意されている。製作されたビデオはFacebook、Instagram、YouTubeその他のプラットフォーム向けに最適化される。

InVideoの新しいアシスタントはさらに改良された。共同創業者でCEOのSanket Shah(サンケット・シャー)氏がビデオ制作のプロセスをデモしてくれたが、アプリは自動的に改善すべき点を発見してどうすべきか提案してくれる。シャー氏は「いわば文章作製における英文チェッカーのGrammarlyのビデオ版だ」と説明した。

同氏によれば、InVideoは現在テキストベースの2つの分野に力を入れているという。ひとつは文字の視覚的な可読性のチェックだ。たとえば明るい地色に白い文字がスーパーインポーズされていると非常に読みづらい。2番目の分野ではテキスト量を含めた可読性がをチェックする。一定時間内に表示される文字量が多すぎたり、移動、明滅が速すぎるなどの不適切な部分がないかを確認する。

同氏は私のインタビューに答えて、「InVideoの共同創業者は当初、ノンフィクションの書籍の内容を要約する10分間のビデオを制作するスタートアップを立ち上げた。このときビデオ制作は非常に手間がかかる難しい作業だと痛感した。最大の問題はスケールできないことだった」という。InVideoが目指すのはまさにこの点、ビデオ制作の手間を省き、スケールアップを容易にすることだという。

InVideoにはすでに世界150カ国に10万のユーザーがいる。これにはAT&T、ソニー・ミュージックに加えてReuters(ロイター)、CNN、CNBCといった大手ニュースメディアが含まれる。ソニー・ミュージックや大手メディアがInVideoのようなスタートアップのツールを使っているのは理由がある。同氏は「(こうした大企業は)ビデオ制作や編集が本来業務ではない。大統領選挙を報道するのはニュースメディアであってビデオ制作企業ではない。ニュースメディアの現場にはビデオ制作の経験が乏しいかほとんどないのが普通だ」と説明する。

料金は月額10ドルからで、動画に透かしが入る無料版もある。InVideoは250万ドル(約2億7800万円)の資金をSequoia Capitalのインド支社であるSurge、エンジェル投資家のAnand Chandrasekaran(アナンド・チャンドラセカラン)氏、Gokul Rajaram(ゴクル・ラジャラム)氏から得たことを発表した。これにより調達資金総額は320万ドル(約3億5600万円)になる。

ソフトウェアの発見と契約を手掛けるAppSumoのCEOでプレジデントのAyman Al-Abdullah(アイマン・アル・アブドラ)氏は「InVideoはユーザーフレンドリーで使いやすく、サポートも充実している。実際、AppSumoが扱った中で最高の仲介件数となっている」と高く評価した。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Sony Innovation Fundが日本、米国、EUに続きインド拠点強化、出資企業同士の連携も進める

ソニーグループでスタートアップなどへの投資業務を担当しているCVCであるSony Innovation Fundは2月17日、都内で発表会を開催。Sony Innovation Fund本体(1号ファンド)と大和証券グループの大和キャピタル・ホールディングスとの合弁会社であるInnovation Growth Ventures(2号ファンド)の現状と成果について説明した。

Sony Innovation Fundの投資・運営責任者およびInnovation Growth Ventures 代表取締役を務める土川元氏

発表会には、Sony Innovation Fundの投資・運営責任者およびInnovation Growth Ventures 代表取締役を務める土川元氏が登壇した。同氏は、日本興業銀行、メリルリンチを経てソニーに入社。ソニーではIR部門長やM&A部門長兼事業開発部門長を務めていた人物。Sony Innovation Fundの投資・運営責任者に就任する前の2014年〜2016年にはソニーモバイルのCSOとして社内の構造改革を担当していた。

Sony Innovation Fundではこれまで6000社のスクリーニングを実施し、2000社以上の候補企業と面談したうえで、約60社のスタートアップに出資している。出資の決定については、ソニー社内に投資委員会を設けており、土川氏のほか、ソニーコンピュータサイエンス研究所の北野宏明氏、AIロボティクスビジネス担当執行役員の川西 泉氏、知的財産。事業開発プラットフォーム担当常務の御供俊元氏、R&Dセンター研究開発担当の執行役員である服部雅之氏、R&Dセンター担当執行役戦略補佐の平山照峰氏の6名が名を連ねる。

2016年7月に設立されたSony Innovation Fundの1号ファンドは、ソニー本体のポートフォリオを利用したファンド。ファンド規模は100億円、1社あたりの最大投資額は3億円として、主にシードやシリーズAといったアーリーステージのスタートアップへ投資している。具体的には、自動運転技術を開発してるティアフォーや、世界各地の場所を3ワードで指し示すジオコーディング技術を擁する英国拠点のwhat3words、たこ焼きなどの調理ロボット開発を手掛けるコネクテッドロボティクス、ロボアドバイザーのウェルスナビなど、TechCrunch読者におなじみの企業も多い。

what3wordsのCEOであるChris Sheldrick(クリス・シェルドリック)氏は昨年のTechCrunch Tokyo 2019にも登壇した

ティアフォーの創業者でCTO、Autoware Foundationの理事長を務める加藤真平氏もTechCrunch Tokyo 2019に登壇

2号ファンド(Sony Innovation Fund by IGV)は、ソニーと大和証券グループが50%ずつ出資したInnovation Growth VenturesをGPとするファンド。ファンド規模は160億円、1社あたりの出資額は最大10億円で、主にミドル、レイターステージのスタートアップへ投資する。具体的には、医療系ドローン開発のMATTERNET(マターネット)、香りセンサーを開発するアロマビット、インドのバンガロール拠点で同国でのレンタカーサービスを展開するZoomcarなどへ出資している。なお、MATTERNETとアロマビットの2社は1号ファンドでも投資実績がある。土川氏よると、1号、2号ファンドの切り分けは企業価値50億円が分岐点とのこと。MATTERNETは、米宅配大手のUPSと連携して医療サンプルの空輸などを手掛けている。アロマビットは、匂いを解析するスタートアップで、同氏によるとこの分野をやりきっているスタートアップは少ないことから2号ファンドでの投資も決めたそうだ。

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Sony Innovation Fundでは注目する分野に対しては「面」での投資を進めており、モビリティー分野では自動運転、カーシェア・ライドシェア、新興国対応、物流、エッジコンピューティング、インフォテインメントなどに幅広く投資している。メディカルでは、有効な治療方法がない疾患に対する医療ニーズ(メディカルアンメットニーズ)、検査・先進治療、医療物流などのスタートアップを支援しているそうだ。

スタートアップとの協業事例としては、共同研究できる企業、ソニーの顧客になりそうな企業、バックオフィス業務を支援する企業と、ソニーのリソースを活用した事業を展開している。具体的には、ウェルスナビはソニー銀行と連携しているほか、LittlstarのVR動画ビューアーであるVR CinemaはPlayStaton 4に搭載されている。what3wordsはインドでレンタカーサービスを展開するZoomcarとの連携を深めている。

今年の注目分野としては土川氏は、ドローンとメディカル、スポーツの3分野を挙げた。ドローンは前述のMATTERNETなどの躍進、メディカルとスポーツはカバー範囲が重なることも多い点で注目しているとのこと。また、現在Sony Innovation Fundの拠点は、本社機能を有する東京のほか、シリコンバレーとニューヨークの北米、ロンドン、ドイツ、イタリアのEU、中東ではイスラエルにあるが。今後はインド拠点の強化を目指すとのこと。なお、東南アジアやアフリカへの投資についてはまた体制が整っていないとのこと。地域別の投資実績としては、件数では日本が41%、米国が37%、EUが18%、イスラエルが2%、その他2%。投資額では、日本が33%、米国が28%、EUが30%、イスラエルが2%、その他7%となっている。

Google for Startups Acceleratorが国内でスタート、空やRevcommが選出

Googleは2月17日、Google for Startups Acceleratorの参加企業9社を発表した。このアクセラレータープログラムは、AI技術を活用した有望なスタートアップ企業に、Googleによる技術・組織運営などの幅広い分野にまたがる専門サポート提供するというもの。具体的には、同社社員15名以上からなるチームによる支援、企業や製品に関する大枠な戦略策定のサポート、Google for Startups Campusの利用、資本投資なしのサポート、Googleのメンター(育成・指導)など。Google for Startups Campusは、同社が昨年に日本法人の拠点を六本木から渋谷に移した際に開設された。

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アクセラレータープログラムに参加するスタートアップは以下の9社。ホテルなどに向けてシーズンや曜日に応じた適切な価格設定を自動化する、いわゆるダイナミックプライジングサービスなどを開発・提供する空、AIとIP電話を活用して電話営業の効率化を図る「MiiTel」を開発・提供するRevCommなどが選ばれている。空はTechCrunch Tokyo 2017、RevCommはTechCrunch Tokyo 2019のスタートアップバトルで最優秀賞を獲得した企業だ。

  • エルピクセル : AI医療画像診断の支援技術を提供
  • カラクリ:顧客対応・カスタマーサポートのオートメーションサービスを提供
  • Singular Perturbations(シンギュラー パータベーションズ):最適なパトロール経路/安全な経路の策定・警備人員計画・犯罪要因分析などの犯罪リスクヘッジソリューションを提供
  • Selan(セラン):子どものお迎えと英語教育を同時に解決するサービスを提供
  • :ホテルの予約や市場データを元に料金設定業務を最適化し、収益創出の仕組み化を促進するサービスを提供
  • チャネルトーク:CX用のチャットツールと実店舗のアナリティクスサービスを提供
  • バオバブ:学習データ(アノテーション)作成サービスを提供
  • LeapMind(リープマインド):組み込みDeep Learning導入に向けたサービスを提供
  • RevComm(レブコム):電話営業・顧客対応を人工知能で可視化して、生産性向上を実現するクラウドIP電話を提供

LinkedIn創業者は著書「BLITZSCALING」で猛スピードこそ生き残りへの道と主張

LinkedInの共同創業者兼エグゼクティブ・チェアマンであり、Greyrock Partnersのパートナーとしてシリコンバレーを代表する投資家でもあるリード・ホフマン氏はTechCrunch読者にも名前をよく知られた人物だろう。

ホフマン氏が母校スタンフォードで続けていたスタートアップを成功させる方法の講義に加筆してまとめた本をTechCrunch Japanの同僚、高橋信夫氏と共訳した。興味深い内容と思ったので紹介してみたい。

ブリッツスケーリング 苦難を乗り越え、圧倒的な成果を出す武器を共有しよう」(日経BP)に詳しく述べられたホフマン氏の戦略は「直感と常識に反することをせよ!」というものなので、当然賛否はあるだろう。しかしスタートアップとベンチャー投資の最前線の体験から得たエピソードや観察が数多く披露されている。

本書はまず創立2年目のAirbnbが陥った深刻な危機から始まる。ホフマン氏はAirbnbの将来性をいち早く見抜いた一人で、最初期からの投資家だった。創業者たちとも親しかったため、このあたりは内側から見た手に汗握る企業ドラマだ。

Reid Hoffman

シリコンバレーで新しいアイデアが生まれるとそっくりコピーしてヨーロッパで事業化して繰り返し成功を収めてきたドイツの大企業がAirbnbにも同じ手法で攻撃をかけてきた。会社の権利のかなりの部分を譲渡するなどしてなんとか和解の道を探るべきだろうか?

しかし助言を求められたマーク・ザッカーバーグ氏らは「戦うべきだ」と言う。Y Combinatorのポール・グレアム氏の要約も面白い。「(ドイツの連中は)子供が欲しくもないのにカネ目当に赤ん坊を育ているようなものだ」とやはり一歩も引かないことを勧める。ブライアン・チェスキー氏(下の写真)らAirbnbの創業者たちも正面からの激突を選ぶ。

Brian Chesky

よろしい戦争だ。では、どうやって勝つのか?

相手は資金でも規模でも圧倒的に大きい実績ある企業グループで、Airbnbは無名のスタートアップだった。ここでAirbnbを成功させた戦略が「ブリッツスケーリング」だというのがホフマン氏の主張だ。

ブリッツスケーリングはブリッツクリークからのホフマン氏の造語だ(ブリッツはドイツ語で「稲妻」という意味で日本では「電撃戦」と訳されている)、要約すれば「いかにリスクが高くても成長スピードを最優先せよ」という戦略だ。ホフマン氏はテクノロジーのように変化が急速な世界では成長速度がすべてだと主張する。「資本効率より成長率に重点を置くのではない。資本効率などはうっちゃて急成長を追求せよ。誰にも先が見えない世界で安定成長などはありえない。そっちががむしろ幻想だ」という。

もちろんブリッツスケーリングは典型的なハイリスク・ハイリターンな戦略だ。ブリッツスケーリングのコンセプトの源となった電撃戦は第二次大戦の初戦でドイツに空前の大勝利をもたらした。しかし内情はきわどいもので、もしフランスがミューズ川、セダンなどの要衝で頑強に抵抗すればドイツは大敗していたという。しかし電撃戦を発案し指揮したグデーリアン大将は「予想していない速度で進撃し神経中枢を刺せば敵はマヒする」と確信して突進し、そのとおりとなった。ブリッツスケーリングにはこの二面性がある。

Airbnbの拡大戦略は社員わずか40人のスタートアップが世界各地に一挙にオフィスを開設するなどブリッツスケーリングというのにふさわしい猛烈なものだった。ホフマン氏はブリッツスケーリングに内在するリスクの要素を熟知しており、成功させるためには無数のハードルを日々乗り越えていく必要があると指摘する。自ら体験したLinkedInを始め、Google、Amazon、Facebookなどの実例で市場の選択、ビジネスモデル、プロダクト・マーケット・フィット、ディストリビューションなどの分野でどんな努力が払われたかを具体的に説明する。これがビジネス書として非常に面白い部分だろう。

もうひとつ興味深かったのはブリッツスケーリングは既存の大企業が生き延びるためにも必要だとした点だ。Apple(アップル)はMacとiPodのメーカーとして十分成功していたがスティーブ・ジョブズはスマートフォンというまったく新しい市場を切り開いて「大企業のブリッツスケーリング」の例となった。大企業といえども同じビジネスを永久に続けていくことはできない。日本の大企業にもこのところ気がかりなニュースが続いている。誰もがAppleになれるわけではないだろうが、どんな大企業であれブリッツスケーリングの考え方を取り入れなければ今後生き延びることは難しくなるのではないか。

今月下旬にバルセロナで予定されていたMWCの開催が中止された直接の原因は、コロナウィルス感染症に対する懸念で、テクノロジーに内在するものではない。しかし「何が起きるか予測できない世界」だということの一例ではあるだろうし、その背景にはモバイルネットワークの発達で情報拡散の速度と密度が格段に高まったことがあると思う。

本書にはLinkedInを買収したMicrosoft(マイクロソフト)のビル・ゲイツ氏が内容を的確にまとめた序文を寄せている。企画から編集作業まで担当した日経BPの中川ヒロミ部長はFactfulness(『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 』)を大ヒットさせているが、こちらも最近のノンフィクションでベストの1だ。

画像:TechCrunch

滑川海彦@Facebook

Equal Venturesは61億円のデビューファンドを決めてテーゼ型シードを推進

この数年間、ユニークでハイリターンな機会をスタートアップ界に求めファンドが上下する中で、ベンチャー投資会社が急増している。大きなファンドは、次第に小さなラウンドに投資するようになり、そのためシード投資家は、彼らがそこに存在するそもそもの意義を、より慎重に見極める必要に迫られている。

関連記事:大規模VCファンドが小粒のラウンドに参加するという2020

Richard Kerby(リチャード・カービー)とRick Zullo(リック・ズロ)が出した答は、慎重にテーゼを構築して、確固たる意志を持つ少数の投資家たちと綿密に協力し合うことで、シード投資家は今でも優位に立つことができるというものだ。

この2人の前途有望なベンチャー投資家は、今日、ニューヨーク市を本拠地とする彼らのEqual Ventures(イコール・ベンチャーズ)が初の投資を獲得したと発表した。彼らは、さまざまな機関投資家と選ばれたベンチャーGPとLPから5600万ドル(約61億5000万円)の資金を調達した。2人は、別々のベンチャー投資会社で経歴を積んだ後、昨年に合流した。カービー氏はサンフランシスコとニューヨークのVenrockで数年間働き、ズロ氏はシカゴに本社を置くLightbankに投資家として勤めていた。

2人は、シードのための中身の充実したテーゼに基づく投資モデルが、行き当たりばったりの数撃てば当たる的な投資家や、大きなステージのラウンドの資本政策表で有利な地位を得るためにシードに手を出す大企業に打ち勝つことができると信じている。

このラウンドは今週でクローズされるが、彼らはすでに、小売り、物流、人材などの5つ以上のスタートアップ向け投資を決めようと忙しく動き回っている。同社は平均して150万ドル(約1億6500万円)程度の投資を目指していて、できるだけ多くの資金を後の投資のために確保しておきたいと考えている。

Equalが他の企業と異なっている点は、2人の創設者に技術的経歴がないことだとカービー氏は私に話してくれた。彼とズロ氏は、現代のSaaSツールと、大幅に民主化された業務用プラットフォームがあれば、デジタルビジネスがこれまでになく簡単に立ち上げられると考えている。コンピューター科学や、AIやMLといった小難しいアルファベットスープの知識がなくても構わないという。

その代わりに彼らは、この20年間、ベンチャー投資家からの投資をほとんど受けられなかった市場や業界に挑む会社創設者たちに的を絞り、情報格差や「社会の変容」の緩和を目指す。ズロ氏によると、彼とカービー氏は常に「私たちの仕事をデジタルで本当に変革できるのか?」と問いかけているという。ファンドを支える枠組みはカーロータ・ペリッツの著書「Technological Revolutions and Financial Capital: The Dynamics of Bubbles and Golden Ages」の影響を受けたという。詰まるところ、次なる製品に注目するよりも、また市場経験が浅い技術系の投資家よりも、特定の市場の深い洞察力が最終的にはずっと大きなリターンをもたらすと彼らは信じている。

同社は現在、小売り、保険、サプライチェーン、ケアエコノミーの4つのテーゼを追求しているとカービー氏は話している。これらのテーゼは、彼とズロ氏と彼らの投資家仲間でありLightbank出身のAli Afridi(アリ・アフリディ)氏が別の題材を探る間も、ずっと変わらないか、変わるとしても3カ月ごとだ。この分析作業は、スタートアップが解決を望む問題の特定を助けるためのものだ。それにより、企業は、業務に必要な材料や部品の有望な調達先を見つけられるようになる。

Equalはまた、状況に応じて企業のインキュベートも行いたいと考えている。今のところ、ポートフォリオにある2つの企業を内部でインキュベートしてきた。カービー氏は、見通しの利く将来にかけては、この調子で続けていけると確信している。

Equalという社名は、ひとつには2人の創設者が社内で平等なパートナーであることと(彼らは、将来パートナーが加わっても同じ経済的扱いになると話している)、そして、どの起業家もみな平等な地盤からベンチャー投資にアクセスできる機会を与えたいという願いから付けられた。カービー氏は、数年かけてベンチャー投資の平等性の問題を調査してきたため(私の同僚であるMegan Rose Dickeyがその件について2年前に書いた分析記事を参照してほしい)、2人が新しい会社を立ち上げるとき、できるだけ多くのタイプの、さまざまな背景の起業家に手を差し伸べたいと考えた。

関連記事:ベンチャーキャピタルの多様性の悲劇(未訳)

平等に対するそうした意識と、スタートアップ設立に役立つソフトウェアツールの普及もあって、カービー氏とズロ氏は、ニューヨーク市の地元の市場だけに留まろうとはしていない。彼らは地理に関しては比較的無頓着だ。現に、彼らが支援している企業は、リモートワークの仕組みを利用していくつもの国に散らばっている。

最終的には、より多くのEqualモデルの投資が最も早いステージに適用され、彼ら自身だけでなく、新世代の起業家全体に機会が生み出されることを願っている。

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(翻訳:金井哲夫)

ソフトバンクが支援するBrandlessがついに完全廃業

短いジェットコースターのような話だった。

サンフランシスコに本社を置く電子商取引企業Brandless(ブランドレス)は、美容、パーソナルケア、日用品、ベビー、ペットといったカテゴリーの「クルエルティフリー」(動物を傷つけない)製品を製造販売していたが、20177に正式オープンした後、少なくとも3年間、休業していた。

ニュースサイトProtocolで発表された声明では、Brandlessは小売り市場の「猛烈な競争」が原因だとしている。休業の影響により、同社は70名の従業員を解雇し、残る10人で未処理の注文に対処し、可能ならば在庫の販売方法を考えるという。

この会社が短命だったことは、業界ウォッチャーにはそれほどの驚きではなかった。2018年7月、Brandlessは、ソフトバンクの1000億ドル(約10兆9000億円)規模のビジョン・ファンドから2億4000万ドル(約264億円)の投資を受けたことを発表したBrandlessの企業価値を5億ドル(約550億円)強と見積もっての契約だ。比較的幼い企業にしては、びっくりするような出来事だった。

Wagなど、さらに最近ではWeWorkのようにビジョン・ファンドが支援したいくつもの企業に共通して起きたことだが、それは経営幹部の再編を意味した。実際、昨年3月には、Ido Leffler(イド・レフラー)氏とこの会社を共同創設したCEOのTina Sharkey(ティナ・シャーキー)氏が、取締役会の共同会長となって「より集中した役割」を果たしたいと、CEOの座を降りている。

それにより、Brandlessの当時のCFOであったEvan Price(エバン・プライス)氏が暫定CEOに就任。5月には、元Walmart.comのCOO、John Rittenhouse(ジョン・リッテンハウス)氏がその座を引き継いだ。Protocolによると、彼は、もっとたくさんのBrandlessの製品を実店舗に並べる計画を立てていたが、昨年12月、密かに身を引き、Brandlessから去った(その一方で、昨年秋、シャーキー氏も取締役会から退いている)。

影響

たしかにこの展開は、すでに抜け目ない取り引きで評判が揺らいでいるソフトバンクには追い打ちとなった。だが公正を期して言うなら、Brandlessは、その多くが質の高い製品にまつわるいいストーリーを有する新規参入者で溢れるようになった業界に踏み込み、さらに、同じ価格帯のブランドに属する似たり寄ったりのテイストと品質の製品で激しい競争に捲き込まれたのだ。

2018年に発表されたソフトバンクの投資金2億4000万ドルについても言及しておくべきだろう。Brandlessに近い情報筋によると、同社に入った資金はその半分以下だったという。

昨年のThe Informationが伝えたところによれば、Brandlessが利益を生むことを熱望していたソフトバンクは、約束した資金の一部を分割で提供し、Brandlessが一定の財務目標を達成するまで資金の大半を出し惜しみしていた。

目標達成が叶わなかったため、ソフトバンクは1億ドル分の投資を取りやめた。そしてProtocolによると、プライス氏、レフラー氏、ソフトバンクの業務執行取締役Jeff Housenbold(ジェフ・ハウスンボールド)氏、ベンチャー投資会社RedpointのJeff Brody(ジェフ・ブロディー)氏、ベンチャー投資会社NEAのColin Bryant(コリン・ブライアント)氏らからなるBrandlessの取締役会は、退職金が支払える間に会社をたたむことに決めたのだという。

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

CartaがCVC設立、自社プラットフォームに取り込むスタートアップに投資

未公開企業のエクイティ管理を支援するスタートアップCarta(カルタ)は2月7日、投資ビークルとしてCarta Venturesを設立したと発表した。 資金豊富なユニコーンである同社は、若いスタートアップに投資して、未公開企業の世界でデータ主導の視点を改めて構築し、自社の中核製品とサービスを中心としたエコシステムの育成を促したいと考えている。

TechCrunchが報告したように、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の世界ではプレイヤーの数が大幅に増加しており、さまざまな規模のキャッシュ潤沢なCVCがベンチャーキャピタルマーケットやその周辺で情報収集の手段としてキャッシュを使い、おそらくはそのキャッシュから多少のリターンも狙っている。Slackのような企業も、未公開の時代に投資ビークルを立ち上げ、同社のプラットフォームにプラグインする企業に資金を投じた。

あまたのCVCの中で、なぜCarta Venturesに注目するのか? それは主に、Carta本体がその重要性を増している未公開企業の世界で存在感を高めており、同社が投資する具体的な対象も複数あるためだ。

なぜ未公開企業が重要なのか

Cartaは未公開企業の各種バリュエーション、キャップテーブル、レポート作成を支援している。ベンチャーキャピタル向けのツールやサービスも提供している。これらにより、同社は長く堅調を保つ未公開市場の中心に位置している。

未公開企業への投資は増加している公開企業の数は減少しており、未公開企業の公開には時間がかかる。未公開のまま留まる企業は全部で数千億ドル(数十兆円)の価値がある。The Economist(エコノミスト)でさえ、未公開企業のブームについて特集し、「機関投資家は、未公開市場、特にベンチャーキャピタル、プライベートエクイティ、私募債に殺到している」と指摘した。

また、Cartaはプレイヤー(スタートアップなどの未公開企業)とその燃料補給役(あらゆる種類の投資家)の両方に後方からプレイヤーと組織を提供する。これまで本業で支援してきた企業を、今度はベンチャーファンドを通じて支え、スタートアップの世界で影響力を拡大する。

Cartaは、自社のプラットフォームに加わるように企業を促し、誘い出したいと考えている。未公開市場への参入と投資がより透明でシンプルになるためだ。未公開資本市場の世界とその構成員に欠けていたのが、この透明性とシンプルさだ。

誰のための資金か

Cartaがどの企業にどういう理由で資金を提供したいのかを把握するために、TechCrunchは同社の戦略を統括するJames McGillicuddy(ジェイムズ・マギルカディ)氏に話を聞いた。まず基本的な点から始めると、Carta Venturesの投資資金にはCartaの自己資金を使う。マギルカディ氏は同社が「外部のビークルを使わずに、貸借対照表上の資金」を投資すると述べた。これは「ほぼCVCのセオリー通り」に組成することを意味する。

ここまでは標準的だ。次に、Carta Venturesが市場に参入する際に集めるゼネラルパートナーの数を聞いた。マギルカディ氏はその質問には直接答えずに、多くの既存の内部スタッフや「投資委員会を構成する古典的な意味ですばらしい人たち」について言及した。「彼らなら起業家を支援できるし、当社が市場へのアクセスを始めつつある今、世の中に存在すべきと当社が考える事業へ導くことができる」

TechCrunchに共有されたブログ投稿のプレリリース版によると、Carta Venturesはシード投資に小切手を切るつもりだ。マギルカディ氏は、Carta Venturesの「最優先事項は、当社には専門知識がないが、今世の中に存在してしかるべき何かを、どうすれば当社のプラットフォームを利用して構築できるのか考えてもらうことだ」という。

マギルカディ氏の最後の2つの答えからわかるように、Carta Venturesでは、構築したいものに関して意図が明確だ。

CartaのCEOであるHenry Ward(ヘンリー・ワード)氏によるブログ投稿では3種類の企業に言及している。現金と株式の両方を含む「総報酬」を従業員に対して公正で市場に合った形で提供する手助けをするスタートアップ。「アセットクラスの1つとしてのベンチャー投資のための分析ツール開発」を行うスタートアップ。そして未公開企業に関するリサーチを行うスタートアップだ。

筆者は、Cartaがそれらをなぜ自社で開発しないのか興味があった。なぜなら開発して欲しいものに対する予測が正確だと思ったからだ。マギルカディ氏は、Cartaが実現したいことに携わるような最高の人材が必ずしも社内にいるとは限らず、いたとしても、同社には「優先すべき事項が他にたくさんあるし、開発すべきものも多くある」と述べた。

それはそうだろう。だが、CartaがCVCを用意するのは単に取り込む企業を探し、資金を投入し、取り込んだ企業が食べていけるようにするためだけではない。資金を活用して企業の成長を支援するのは、Cartaのリーチを拡大するためでもある。

他には?

Cartaのベンチャーファンドは、同社がおもしろいと思えることに取り組んでいるアイデア段階の企業を取り込むために、資金を投じたいと考えている。それだけでなく、同社のオフィスで一緒に働いてもらいたい。求めに応じて支援の手も差し伸べるはずだ。

なぜCartaは、こうした動きができているのか。それは、Cartaは公開企業ではなく、おそらく利益も計上していないためだ。また、なぜ自社でベンチャー投資部門を持つ余裕があるのか。その理由は次のとおり

Cartaが17億ドル(約1900億円)のバリュエーションで3億ドル(約330億円)を調達したのは、2019年半ばのことだった。

未公開資本市場から巨額の資金を喜んで投入するといわれ、さらに自社の未公開企業のプラットフォームに取り込んだら利益が出そうな小規模企業があれば、その資金を提供しない手はないだろう 1.。

1.「未公開会社」と早口で4回言ったら、Carta Venturesからの小切手を受け取らなければならない。それがルールだ。

画像クレジット:Somyot Techapuwapat / EyeEm / Getty Images

参考:スタートアップの資本構成を管理するCartaが創業6年でシリーズD $80Mを調達

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(翻訳:Mizoguchi

転換社債で資金調達するスタートアップが増加した理由とJuulの場合

転換社債は今やアーリーステージのスタートアップに限られる資金調達方法ではなくなった。転換社債は借用証書の一種であり、企業が所定の金額を借り入れたこと、その負債は期日、株価などある条件で株式に転換可能であることを示す。最近、ベンチャーキャピタルから多額の投資を受けた会社が追加の資金を転換社債で調達することが増えている。

以前はスタートアップが転換社債を発行するのは創業者が会社表額を決定できないときに採用されることが多かった。まだ十分なユーザーを得ていないスタートアップがベンチャーキャピタルに対して投資と引き換えに固定したパーセンテージの株式を与えるなら、会社の持ち分の大きな部分を不当に低い金額で売却することになる可能性がある。こうした場合に適切な会社評価額を決定するまでの時間を稼ぐくために転換社債による資金借り入れが行われることがあった。

しかしこの数カ月、成長が後期の段階に達しているスタートアップが転換社債による借り入れを行う例が増えている。Wall Street Journalによれば米国の電子タバコのメーカーであるJuulが転換社債による7億ドルの借り入れを行っている。SEC(証券取引委員会)への申請書によれば、 創立9年目になるニューヨークのクリエーター向けオフィス賃貸のNeueHouseは1500万ドルの転換社債の発行を準備中だ。暗号通貨取引所のLedgerXは380万ドルをこうした借り入れによって調達したところだ。

なぜ創立後時間を経た企業が転換社債発行を好むようになったのだろうか?ごく簡単にいえば、スタートアップはいわゆる「ダウン・ラウンド」を避けようとするからだ。ダウン・ラウンドというのは前回のラウンドよりも会社評価額が下がることで、スタートアップのイメージを低下させる。

ベンチャーキャピタリストもダウン・ラウンドを嫌う。これはファンドの出資者向けの財務報告に会社評価額の減価として明記しなければならないからだ。市場はスタートアップの成長が減速していることを知るし、なによりベンチャーキャピタリストが前回のラウンドでスタートアップを買いかぶっていたと自認することになる。

転換社債はこうした傷の応急処置に便利なバンドエイドだ。スタートアップはプロダクトを修正・改良して再度成長を軌道に乗せる余裕ができる。また会社の売却先を探したり、場合によっては現在のプロダクトに見切りをつけて事業をピボットさせることもできる。

外から見たかぎり、波乱の電子タバコ業界にいるJuulには事業見直しの時間が必要と思われる。電子タバコに対する規制は急激に強まっており、カリフォルニア州のモデスト学校区、ペンシルバニア州のバックス郡など、学校区や自治体からの訴訟も多発している。資金調達もそれだけ困難さを増している。

Juulは一時は成長確実な投資先とみられ、フィリップ・モリス、クラフト、ナビスコなどの著名ブランドを持つAltriaが株式の35%を128億ドルで買ったほどだった。しかし現在は同社は予断を許さない状況に置かれている。今年1月30日にAltriaはJuulの会社評価額を120億ドルと修正し、持株の価値を41億ドルと68%減価した。

Wall Street Journalの報道によれば、7億ドルが株式に転換されるのは次回のラウンドでJuulが100億ドルから250億ドルの会社評価額を得たときに限られる。つまり100億ドル未満、あるいは250億ドルを超えた場合、7億ドルは負債のまま据え置かれる。

会社評価額が低かった場合、投資家は株式より債券を好むことはわかりやすいが高かったときも転換が行われない理由は、新しい投資家が不当に高い評価額で投資を行うことにより既存投資家の持株が希薄化されないようにするためだという。万事うまく運べば、既存の投資家は次回新しい投資家が得るよりも良い条件で株式を得ることができるわけだ。

一般論としては転換社債の発行は会社にとって良いサインだ。もし破綻確実ならどんな名目であろうと新たに資金を調達できるわけがない。しかしJuulは2018年には「市場で最も有望な企業」と見られていたのだから現在の状況はかなり深刻だ。

転換社債で資金を調達したことは、将来の見通しが不透明で株式でベンチャー資金を調達することが困難であることを意味する。株式の売却でラウンドを実施するためにはスタートアップ側は売上高、キャッシュフローなどの財務指標が予め定められた目標に達し、また所定の手元現金を保有していることも求められる。

画像:JUSTIN TALLIS/AFP / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Facebookの共同創業者が立ち上げた投資ファンドB Capitalが急成長

2015年にFacebookの共同創業者であるEduardo Saverin(エドゥアルド・サベリン)氏とラジ・ガングーリ氏が創業したB Capital Group(旧称Bain Capital)は、コンサルティング業界の巨人のBoston Consulting Group(BCG)の支援を受けつつ、クローズした3億6000万ドル(約395億円)の1号ファンド以来、静かにビジネスの拡大を続けている。

すでに50人を雇用し、4億1000万ドル(約450億円)の2号ファンドの投資を行っている同ファンドは、さらに大きな資金調達を行うと私たちは伝え聞いている。新たにジェネラルパートナーとして加わったのは、以前MicrosoftのコーポレートベンチャーグループであるM12のマネージングディレクターを務めていたRashmi Gopinath(ラシュミ・ゴピナ)氏だ。

エンタープライズテクノロジー、特にクラウドインフラストラクチャ、サイバーセキュリティ、そしてDevOpsを専門とするゴピナ氏は、サベリン氏、ガングーリ氏、Kabir Narang(カビル・ナラン)氏(Eight Roads Ventures Indiaからやって来たフィンテックを専門とする人物)、そしてKaren Page(カレン・ペイジ)氏(昨年B Capitalに参加する前は、10年近いBoxと1年間のAppleの経験を持つ)に続く5番目のジェネラル・パートナーとして参加した。

同社は他に、COO、CFO、およびロスアンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨーク、そしてシンガポールの4つのオフィスで世界中の取引を精査する15人の投資家も抱えている。実際、そちらのグループにも別の新規採用者がいる。Primary Venture Partnersから参加したばかりのプリンシパルであるCrissy Costa(クリッシー・コスタ)氏だ。

米国時間2月6日、私たちはガングーリ氏に会い、この成長を続ける組織について、現在注力している分野も含めて、より詳しい話を聞いた。彼は会社が現在資金調達を行っているか否かに関してのコメントは拒否したが、その他の活動に関しては、少しだけ内容をほのめかした。

私たちが知ったことの一部は、BCGがB Capitalにどれだけしっかりと織り込まれているかということだ。BCGは、最大の外部リミテッドパートナーであるだけでなく(パートナーたち自身は会社の最大の投資家だ)、両社は強力な戦略的パートナーシップを結んでいる。

ガングーリ氏が説明するように、「(B Capitalが投資する)企業はリソースとネットワークを提供してくれるBCGパートナーにアクセスできるようになる」ことで、見かけ上大きなパートナーシップやその他の取引へと結びつく。またB Capitalは、例えば大手製薬会社などのBCGの顧客が、何を欠いていて何を持っているかを内部的に把握することで、それに応じてスタートアップに投資することができる。

AIを使用して患者に対するより効果的な癌治療を予測するNotable Labsへの投資は、一部はこうした経緯から生まれたものだ (Notable Labsは、昨年B Capitalが共同で主導したシリーズBで、4000万ドル(約44億円)を調達した)。さらに広く見れば、デジタルヘルス領域は、B Capitalが業界について学んだ結果から、同社の主要な集中領域の1つになった。

それ以外の関心領域としては、B Capitalは現在フィンテックにも強い焦点を当てている。「大銀行が十分にサービスを提供していない領域だと私たちが考える、小規模なビジネスを中心にしています」とガングーリ氏は語る(彼の説明によれば、B Capitalは他のファンドに投資するのではなく、アメリカ、インド、そしてインドネシアの関連した領域で、彼らを助けることのできるテクノロジーに投資している)。

同社はまた、B Capitalのサンフランシスコオフィスを共同して統率しているゴピナ氏とペイジ氏が、ほとんどの時間を割いている水平展開できる企業向けソフトウェアもお気に入りだ。実際、同社は最初のサイバーセキュリティ投資のクロージングを行っている最中であり、ガングーリ氏はさらなるクロージングがあることも示唆した。

これは記しておく価値があるだろう:B Capitalの最初の2つのファンドは今日の基準から見ればそれほど大きくはないが、彼らはB、C、Dステージのスタートアップに1000万ドル(約10億円)から4500万ドル(約49億円)の小切手を渡す後期投資に焦点を当てている。こうした企業のほとんどは、B Capitalの候補になった時点での年間収益が1000万ドルから5000万ドルの間の企業であり、またほとんどが海外展開を行うビジネスであるか、そうなりたいと熱望する企業たちだ。

ガングーリ氏は、カリフォルニア州サンマテオにあり、健康アプリの医学的検証を提供している創業8年の会社Evidation Healthの名前を挙げ、そのBおよびCラウンドにB Capitalが関与していると語った。Evidation Healthは最近シンガポールへの進出を発表したが、その動きは裏でB Capitalによって支えられている。

ガングーリ氏によれば、同社は投資先を「テーマ優先で選定する」ために、「地理的には定まっていない」という。しかしチームは欧州、米国、インドに続き、南アメリカも、まだ実際の投資は行われてはいないものの、徐々に興味深い対象として見るようになっている。

同社は、LAを拠点とするスクーター会社のBirdを対象にしたり、より最近のケースではインドのスクーターと自転車の企業Bounceへ非常に大規模な投資を行ったりしたように、異なる地域での似通った企業を支援する。ガングーリ氏は、B Capitalはこの分野を愛しているのだと語る。「スクーター事業の利益性はカーシェアリング事業よりも優れていると考えています。そしてある意味投資家の意欲は減退気味なのですが、私たちは単体としての経済性は非常に良好な分野だと考えています」。

将来BirdとBounceの間に生じる可能性のある利益相反に関しては、ガングーリ氏は心配していないと言う。「カーシェアリングがどのように進化したかを眺めてみると、勝者はローカル市場をよく理解している者たちなのです」。彼は、インドにおけるスクーターのユースケースは、米国とは非常に異なっていると指摘する「利用者はスクーターをはるかに長い距離で利用しますが、それこそが、彼らがビジネスを遂行し運営するための主要なメカニズムなのです。彼らの仕事はこれらのスクーターなしでは上手くいきません。こうした事情は先進地域とは大きく異なっているのです」。

B Capitalのこれまでの最大の投資たちは、様々な場所に分散している、例えばシアトルを拠点とする創業11年の契約ライフサイクル管理ソフトウェア会社のIcertisから、カリフォルニアのEvidation、そしてシンガポールに拠点を置くeコマース企業向けの翌日配達を専門とする創業6年のNinja Vanなどだ。

「(私たちのすべてのポートフォリオ企業に対して)私たちが、本当に最大限注力していることは、初期の顧客との高い再契約率です」とガングーリ氏は語る。「多くの人は、総ユーザーベースを急速に成長させる会社の能力に集中していると思います。しかし、(特に)企業投資においては、ただ使い続けていただけるだけでなく、年々支出を増やしていただけるような顧客の方にお会いしたいのです」。

B Capitalは「常にエンタープライズとビジネス向けのテクノロジーに焦点を合わせてきました」と、彼は付け加えた。「そこがこれから20年で最大のチャンスが生まれる場所だと考えているのです」。

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(翻訳:sako)

資金調達が進まぬソフトバンクの第二ビジョンファンドの未来が見えない

複数のテクノロジー企業の複合体であるSoftBank(ソフトバンク)は、1000億ドル(約11兆円)のVision Fund(ビジョンファンド)でベンチャーキャピタル産業を変えた。しかしThe Wall Street Journalは、同社がそのパフォーマンスとテクノロジーに対する革命的な投資のアプローチを継続できないかもしれない、と危惧した記事を掲載している。

その記事によると、SoftBankは次のVision Fundで設定した目標である1080億ドル(約11兆8500億円)の半分しか調達できないのではないか、しかもその多くは日本企業それ自体から出るという。

大きな支援者であるサウジアラビアの政府系投資ファンドやアブダビのMubadala Investment Co.などは、Vision Fund IIを立ち上げようというソフトバンクの試みに尻込みしている。彼らは、それまでの投資から得られた利益を第2ファンドの原資とすべきだ、と主張している。なおサウジの政府系投資ファンドは、ジャーナリストを暗殺したとされる政権の財政安定を支えている。

その利益は、およそ100億ドル(約1兆1000億円)と言われている。

Vision Fundは鳴り物入りで派手に立ち上がり、少なからぬ投資家たちからの羨望と批判のつぶやきも受けたが、アナリストやメディアは、ソフトバンクの創業者で謎の人物である孫正義氏が調達できた資本の大きさに驚いた。しかし、Vision Fundは創業時の華々しい盛り上がりにふさわしい成果を得られていない。

コワーキング企業WeWorkへの悲惨な投資も、問題の1つだ。ソフトバンクは同社への44億ドル(約4800億円)の投資のうちほぼ35億ドル(約3800億円)を償却した。

しかし、WeWorkの災難はソフトバンクにとって氷山の一角かもしれない。同社は他のポートフォリ企業に対しても、その資本コミットメントを大幅に削減している。それらの企業は最近スタッフを減らし、そのほかの支出も減らして、テクノロジー業界全体に業界の低迷を憂える不安が広がった。

スタッフの削減は、ビジョンファンドの運営母体にも及んでいる。今週初めに同社は、最高位の管理職の1人Michael Ronen(マイケル・ローネン)氏を失った。彼はそれまでGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)にいてParkJockey、Nuro、GM Cruiseなどの企業へのソフトバンクによる投資の中心人物だった。

いなくなった大物は、ローネン氏だけではない。過去5カ月内に、同社の人事のトップMichelle Horn(ミシェル・ホーン)氏と、同じくアメリカのマネージングディレクターだったDavid Thevenon(デビッド・セブノン)氏が、やはり同社を去った。

関連記事: As a top manager leaves amid fundraising woes, SoftBank’s vision looks dimmer — and schadenfreude abounds…人材が去り続けるソフトバンクのビジョンファンドの未来が暗雲で人の不幸は蜜の味が広がる(未訳)

画像クレジット: Tomohiro Ohsumi/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

KKRがシスコの幹部を招聘しテクノロジー分野の投資活動を強化へ

数十億ドル(数千億円)規模のマルチストラテジー投資会社であるKKRは、Rob Salvagno(ロブ・サルバニョ)氏を米国のテクノロジーグロースエクイティ部門の共同責任者に任命し、テクノロジー分野の投資活動を強化する。同社がテクノロジー分野に真剣に取り組み、引き続き新しい買収と投資の機会を探しているサインだ。

ネットワーク大手であるCisco(シスコ)の事業開発副社長兼Cisco Investmentsのヘッドだったサルバニョ氏は、CiscoのすべてのM&Aとベンチャーキャピタル投資の責任者だった。同氏は20年以上のキャリアの中で、アーリーステージを対象とした数億ドル(数百億円)規模のCiscoの投資ファンド、Decibelの設立と立ち上げに関わった。

「我々のビジネスは、5年前に5人の小さなチームでテクノロジーグロースエクイティストラテジーを始め、以来大きく進化している。我々のビジネスの成長と世界中にある数々の魅力的な投資機会により、チームを拡大するだけでなく、テクノロジー分野の経験、ネットワーク、地理的範囲も拡大することができた」とKKRのパートナーでテクノロジーグロースエクイティの責任者であるDave Welsh(デイブ・ウェルシュ)氏は声明で述べた。「我々のチームにサルバニョ氏のようなテック業界のベテランが加わることで、我々は将来に向けて基盤を固め、多くの投資機会を捉えるために良いポジションを確保できる」。

KKRは2014年以降、27億ドル(約3000億円)をテック企業に投資した。19人の投資専門家を擁し、レイターステージのテック企業への投資プレーヤーとしての地位を確立した。今月初め、同社は北米、欧州、イスラエルへのグローステクノロジー投資に特化した22億ドル(約2400億円)のファンドの資金調達を完了した。

「サルバニョ氏が持つ、セキュリティ、インフラストラクチャソフトウェア、 AppDev(アプリ開発)やDevOps(ソフトウェア開発)といった幅広いバックグラウンドは、我々のチームのスキルセットをうまく補完すると考えている」とウェルシュ氏はメールで述べた。「今回のファンドの重点分野は、以前のファンドと同様、消費者インターネット、フィンテック、インシュアテック、テクノロジーを活用したサービスなどに関わるソフトウェアだ」。

同氏によると、アプリケーション開発ソフトウェアとセキュリティ技術も引き続き同社の重点分野となる。  「さらに、インフラストラクチャソフトウェア(最新のデータセンターやクラウド環境の運用に使用されるソフトウェア)、アプリケーション開発および開発オペレーション(AppDevvおよびdDevOpsソリューション)などのソフトウェアソリューションに費やす時間を増やす」と同氏はメールで述べた。

画像クレジット:Image Credits: Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi)

「必要最小限の製品」ではなく「必要最小限の要素を満たす」会社を目指そう

こんにちは、私はアン・ミウラ=コー。私は、Lyft、Refinery29およびXamarinの最初の投資家の1人だ。過去3年間はMidas Listに載っていたが、最近ニューヨークタイムズのトップ20ベンチャーキャピタリストのリストにも選ばれた。

2008年に、シリコンバレーで最初のシードステージVCファンドの1つであるFloodgateを共同創業した。ほとんどのファンドとは異なり、私たちはシードのみに投資してきた。このことによって私たちは、製品と市場の適合性を見つけ、必要最小限の要素を満たす会社(Minimum Viable Company、MVC)を立ち上げることを得意とする専門家となった。

シードはそれ以降の段階とは根本的に異なっているため、私たちはそれを特別のものとして取り組んでいる。それが私たちのやっていることすべてだ。各パートナーは毎年、何千もの企業と接触するが、投資対象として選ばれるのは上位の3社または4社だけだ。

過去11年間、私はスタートアップの最初の立ち上げ段階に投資してきた。そうした中で、Lyft、Refinery29、Twitch、Xamarinなどのようにスタートアップが大いにうまくいくところを見たこともあれば、おおいに間違っていくところも見てきた。その失敗を振り返ってみると、根本的な原因は必然的に、製品と市場の適合性(Product-Market Fit)に対する理解不足に起因している。

必要最小限の製品(Minimum Viable Product、MVP)を拡大する前に、まず必要最小限の要素を満たす企業(MVC)文化の育成に焦点を当てる必要がある。 世に問う価値を特定し、より広いエコシステムの中に自分の位置を見つけ、徐々に育成して行くことができるビジネスモデルを創出するのだ。言い換えるなら、真の「製品と市場の適合」とは、以下の3つの要素がかみ合う魔法の瞬間だ。

必要最小限の会社を立ち上げるには、これらの3つの要素が連携して機能する必要がある。

  • 人びとが、あなたの製品に喜んで支払いたくなるくらい、高く評価するようにならなければならない。この価値は、世界に向けて製品をどのようにパッケージングするかも決定する(フリーミアムか、課金か、企業向け販売か)。
  • ビジネスモデルとその価格設定は、エコシステムに適合している必要がある。また、ビジネスを維持するために十分な販売量と収益を生み出さなければならない。
  • 製品の価値は、エコシステムのニーズを満たす必要があり、エコシステムは製品を受け入れる必要がある。

多くの起業家たちは、製品と市場の適合性の概念を、対象としている顧客の一部(サブセット)が自分の製品の機能を気に入ってくれるポイントとして捉えている。だが、この捉え方は危険だ。 顧客が気に入っていた機能を持ちながら、失敗した企業は多い。そうした愛される機能を複数持っていた企業だってあるのだ!パズル全体の中で優れた機能が占めているのは、およそ半分から3分の1程度に過ぎない。必要最小限の要素を満たす企業を作り上げるためには、これら3つの要素すべて、世に問う価値ビジネスモデル、そして エコシステムが協調して機能する必要がある。

だから創業者たちは気をつけよう。これらの要素のいずれかを欠いたまま「成長モード」に移行すると、不健全な基盤の上に会社を構築することになる。

最近流行った「シリーズA資金調達の秘訣」といったツイートのサイクルに気を奪われることなく、自分たちのビジネスの複雑さに集中する起業家なら、製品と市場の適合が予測可能で達成可能なゴールであることに気付くだろう。その一方で、必要最小限の要素を満たす会社(MVC)のための基本要素を知らずに、成長に早すぎる焦点を当てる創業者たちは、しばしば、ビジネスの偽の成長を軸とした中毒的で破壊的なサイクルを促進し、会社の破壊につながる好ましくないユーザーを獲得してしまう。

Extra Crunch(英文有料記事)ではこの記事の拡張版を読むことができる。

関連記事:You need a minimum viable company, not a minimum viable product(未訳、有料)

【編集部注】著者のAnn Miura-Ko(アン・ミウラ=コー)氏は、シードステージVCFloodgateの共同創業パートナーである。Forbes Midas Listに連続掲載され、最近ニューヨーク・タイムズによる世界のトップ20ベンチャーキャピタリストにも選ばれた彼女は、スタンフォード大学でサイバーセキュリティの数学モデリングによって博士号を取得している。

トップ画像クレジット: Tom Werner (opens in a new window)/ Getty Images

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(翻訳:sako)

ソフトバンクは大赤字のポートフォリオ企業間の衝突に介入していた

ソフトバンクは、ポートフォリオ企業同志が競争して莫大な赤字を積み上げる現状にとうとう業を煮やし、合併の可能性を探ることも含めて密かに介入をしていた。

ともあれ、米国時間1月30日のFinancial Timesの記事によれば、同社は昨年、UberとDoorDashの合併を取りまとめるようと努力していたという。このときは合併交渉はまとまらなかった。両社ともソフトバンク(ソフトバンク・ビジョン・ファンド1号)から多額の投資を受けており、料理の宅配事業で激しく競い合っている。

Uber Eats2019年第3四半期期の純収入3億9200万ドル(約427億円)に対して、同期の調整済み赤字は3億1600万ドル(約344億円)にも上っている。この赤字の大海に比べるとDoorDashが予測している2019年の通年の赤字である4億5000万ドルでさえ穏当な額に見える。両社が合併すれば赤字幅が圧縮できることは間違いない。株式上場維持路線であろうと非公開化して現在の会社評価額を維持する路線であろうと、現在よりはるかに強い立場で臨めるだろう。

Uberが株式公開後、株価維持に苦しんできたことはよく知られている。現在の株価は公開直後の高値に比べて半額だ。DoorDashも人気を集めたものの最近大型資金調達に成功していない。がっぷり四つに組んだまま競争を続けているこの2社が合併することにはメリットがある。両社が同一の大株主を持っていることを考えればなおさらだ。

カオス状態は他にも

UberとDoorDashはSoftBankのVision Fundからのキャッシュを元手に互いにレンガを投げつけてあっている唯一の例ではない。本日のWall Street Journalの報道によれば、ラテンアメリカではいずれもソフトバンクが大株主である企業間の競争が激化しているという。

ラテンアメリカでUberはライバルのRappiや中国の滴滴出行(Didi Chuxing)などの挑戦を受け激しい値下げ競争に巻き込まれている。しかしここに奇妙な現象がある。この競争者グループの最大株主はいずれも同一の会社、日本のソフトバンクグループなのだ。ソフトバンクはトータルで200億ドル(約2兆1800億円)をこれら3社に投じている。

ユニコーン(評価額10億ドルのスタートアップ)が次々に生まれる前の時代には「1つのベンチャーキャピタルは競争関係になり得る複数のスタートアップに投資してはならない」という金言があった。1つの会社に投資して、同じく自分が投資している別の会社を叩くのを助けるのは道理に合わない。ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資はこのルールを無視した結果、南北アメリカ大陸でベンチャー投資の大失敗の見本のような状態に陥った。ちなみに、米国で有名なベンチャーキャピタルであるSequoia CapitalもUberと滴滴出行の双方に投資しているのだが。

これがソフトバンクがDoorDashがUberに統合される可能性を探った背景だ。実現すればすくなくとも頭痛のタネが1つ減るわけだ。しかし次に同社はUberと滴滴出行がライドシェアリングという本業でバッティングする現状をどうにかさばかねばならない。またラテンアメリカでUber EatsとRappiが繰り広げている破壊的競争を止めさせる方策を考える必要がある。

ライドシェアリングと料理宅配の各社をすべて合併させ単一の巨大企業とするのがソフトバンクの立場からの理想だろう。もちろんこんな合併はどこの国だろうと反トラスト法による規制にひっかかかる。それでも赤字と収入を一箇所にまとめれば財務書類を大幅にわかりやすくする効果はあるだろう。

画像:Tomohiro Ohsumi (opens in a new window)/ Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Spiral Ventures Japanは「Spiral Capital」に、新ファンドを2つ組成、オープンイノベーション支援の専門子会社を設立

Spiral Ventures Japanは1月27日、グループ名称をSpiral Capitalへと変更したことを発表。Spiral Ventures Japan Fund 1号投資事業有限責任組合も、Spiral Capital Japan Fund 1号投資事業有限責任組合へと名称を変更した。

Spiral Capital Japan Fund 1号は、これまで、シンガポール法人Spiral Ventures Pteとの合弁事業であるSpiral Ventures Japanが運営してきたが、同ファンドの投資組み入れが完了したため、次号ファンド以降はSpiral Capitalが単独で設立したSpiral Capital LLPによる運営へと移行、同社グループとSpiral Venturesとの資本関係は解消される。

そしてSpiral Capitalは同日、オープンイノベーション支援のための専門子会社であるSpiral Innovation Partnersの設立、そしてSpiral Capital Japan Fund 2号投資事業有限責任組合の設立を併せて発表した。

Spiral Innovation Partnersでは、物流やその周辺領域のスタートアップへの投資を行うLogistics Innovation Fund投資事業有限責任組合を組成。Logistics Innovation Fundの主なパートナー企業は、セイノーホールディングス。規模は70億円以上で、平均投資金額はアーリーでは1.5億円、ミドル・レイターでは2.5億円を目安とする。LPは現在はセイノーホールディングスのみだが、「今後は、金融機関を中心とする外部のパートナー企業に対して募集を継続する」。

Spiral Innovation Partnersでは、Corporate Venture Capital(CVC)の運営を含む、オープンイノベーションに向けた包括的なサポートプログラムを提供。Spiral Ventures Japan 、そしてその前身である IMJ Investment Partnersは、CCCの「T-Venture Program」、東急電鉄の「東急アクセラレートプログラム」といったアクセラレータープログラムの運営を支援してきたことから得た知見を活かす。

Spiral Capitalの代表取締役、奥野友和氏は「事業会社でCVCを作りたいという需要が、オープンイノベーション・ブームもあり、存在する。我々は『オープンイノベーションに強みを持ってやっている』と言っていたので、前々から、『CVCを作りたいのだが、受託してくれないか』という旨の話をいただいていた」と話す。

現在、SBIインベストメントやグローバル・ブレインなどのVCがCVCの受託運営を行なっているが、需要があるもののプレイヤーは少ない。Spiral Capitalは新たな受け皿となることを目指す。

そして、Spiral Innovation Partnersが運営するファンドは、「特定の企業が自社におけるシナジーの実現を目的として設計、運営する」従来のCVCとは異なり、「特定のセクターの変革を目的」として、Spiral Innovation Partnersが企業と共同で設計し、運営。同社はそのコンセプトを「Sector-focused Venture Capital(SVC)」と提唱している。

奥野氏は「通常のCVCの設立プロセスは、事業会社が起点となり、自社でCVCを作ろうと言った話を決め、コンセプトが決まった上で最後に委託先を決める。この考えをひっくり返した」と説明。

「(事業会社が)VCを最後に決めるのではなく、VCが起点となり、ドメインとパートナー企業を決めていく。単なる受託ファンドではない。我々がスクリーニングをかけた上で、アトラクティブなセクターにフォーカスしているファンドということで訴求する」(奥野氏)

規模が100億円以上のSpiral Capital Japan Fund 2号では、1号に引き続き、X-Techを重点テーマとして、投資を行う。1件あたりの投資金額は、アーリー・ミドルで1から5億円、レイターでは5から10億円を想定。奥野氏いわく、2号ファンドでは「レイターの比率を上げる」。Spiral Ventures Japanはこれまでに、理系学生のための採用プラットフォーム「LabBase」などを提供するPOL、宇宙用作業代替ロボットを開発するGITAIなどに投資を実行してきた。

Spiral Capitalの組織体制の変更に関しても発表があった。元マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長および元カーライル・グループ日本共同代表で、これまでシニアアドバイザーとしてSpiral Ventures Japanのファンド運営に関与した平野正雄氏はSpiral Capitalの取締役会長として経営全体により深く関与。そしてSpiral Innovation Partnersの代表パートナーを岡洋氏が務める。

SaaS 21社のIPOから得られた資本効率に関する教訓

安心してほしい、ほとんどのハイテク企業はWeWorkではない

Uber(ウーバー)とWeWork(ウィワーク)が最近盛んに取り上げられたために、メディアの注目は「ソフトウェア主体の」スタートアップの、高いコスト(ハイバーン)に集まっている。とはいえ、ここ数年のテック分野でのIPOのほとんどは、資本効率の高い「サービスとしてのソフトウェア」(SaaS)スタートアップとして行われているのだ。

SAN FRANCISCO, CA – MAY 10: Adam Neumann Founder of WeWork speaks on stage at the WeWork San Francisco Creator Awards at Palace of Fine Arts on May 10, 2018 in San Francisco, California. (Photo by Kelly Sullivan/Getty Images for the WeWork Creator Awards)

過去30か月間(2017年下半期以降)、米国拠点のVC支援SaaS企業21社がIPOを行った。その中にはZoom、Slack、そしてDatadogなど1が含まれている。私はその21社すべてを分析して、資金調達と収益創出の軌跡をたどった。なお個々の企業の軌跡はこのExtra Crunchの記事で深く掘り下げている。

以下は、そのデータセットからの要点をまとめたものだ。

1. IPOで、調達された資本総額2は、中央値の企業の年間収益予測値(ARR:annual run-rate revenue)3 をわずかに上回っていた

上に示したのは、各企業が上場した時点でのARRと、累積資本の散布図である。ほとんどの企業は、ARRと調達資金が一致することを表す対角線の近くに集まっている。調達された資本金は、しばしば線に接しているかARRよりわずかに高い。

たとえば、Zscaler1億4800万ドル(約162億円)を調達してIPO時点でのARRは1億4600万ドル(約160億円)に達していたし、Sprout Social は1億1200万ドル(約122億円)を調達して、1億600万ドル(約116億円)のARRを達成していた。

データセットとしての企業の収益の間に大きなばらつきがあることを考えると、総額を見る代わりの指標を取り入れると便利だ。なにしろARRを見たときに、SproutSocialは1億600万ドル(約116億円)、Dropboxは12億2200万ドル(約1335億円)と10倍以上の差があったのだ。ARRの倍数として表現された総資本額は、この差異を正規化する。下に示したのは、この指標による分布のヒストグラムである。

分布は約1.00倍から1.25倍に集中しており、中央値の企業はIPOの時点でARRの1.23倍の資本金を得ている。

両端に外れ値が出現している。Domoは、6億9000万ドル(約754億円)を調達して1億2800万ドル(約140億円)のARR、つまりARRの5.4倍という異常値で、これに迫る会社は存在しない。これに対してZoomとDatadogは効率的な方の外れ値だ。Zoomは1億6100万ドル(約176億円)を調達して4億2300万ドル(約462億円)のARRを達成し、Datadogは1億4800万ドル(約162億円)を調達して3億3300万ドル(約364億円)のARRを達成している。

2.キャッシュバーンは資本効率のより正確な尺度であり、調達した資本金額とは大きく異なる場合がある(会社によって異なる)

ある企業がどれくらいの資本金を調達したかは資本効率のストーリーの半分しか語っていない。なぜなら多くの企業が十分な預金残高を保有しているからだ。たとえば、PagerDutyは合計1億7400万ドル(約190億円)を調達したが、公開時には1億2800万ドル(約140億円)の現金が残されていた。また別の例として、Slackは公開前に合計13億9000万ドル(約1519億円)を調達していたが、8億4100万ドル(約919億円)の現金が残されていた。

一部のSaaS企業が、既存の株主への希薄化となるにもかかわらず、当座の現金需要を超えて資本金を過剰に調達しているように見えるのはなぜなのか?

理由の1つは、企業が日和見的であり、市場の状況が良好なときに、実際のニーズよりもはるかに早い段階で資本を調達しているからだ。

もう1つの理由は、目標を達成したいVCがより大きなラウンドを推進していることだろう。たとえば、4億ドル(約437億円)の事前評価を受けた企業が、5000万ドル(約55億円)の現金しか必要としないのにも関わらず、最終的に25%の所有権を持ちたいVCから1億ドル(約109億円)を調達する結果になる場合もある。

これらの諸要因により、調達された総資本から現金残高を差し引いて計算されるキャッシュバーン4の方が、総調達額よりも正確な資本効率指標となるのだ。以下に示したのが、ARRの倍数としての総キャッシュバーンの分布だ。

驚くべきことに、Zoomはマイナスのキャッシュバーンを達成した。つまりZoomは、調達したすべての資本金よりも多くの現金を貸借対照表に載せて公開したのだ。

IPOでの会社のキャッシュバーンの中央値はARRの0.77倍であり、ARRの1.23倍である調達された総資本よりもかなり少なかった。

3.「Rule of 40」の指標でみた最も健全なSaaS企業は、多くの場合最も資本効率が高い

Rule of 40は、SaaS企業のビジネスの健全性を評価するための一般的な経験的法則だ。それが主張しているのは、健全なSaaS企業の収益成長率と利益率の合計が40%以上になるということだ。以下に示したグラフは、21社が「Rule of 40」でどのように採点されるかを示したものである5

21社のうち、8社が40%のしきい値を超えている。Zoom(123%)、Crowdstrike(119%)、Datadog(76%)、Bill.com(56%)、Elastic(55%)、Slack(52%) 、Qualtrics(44%)、そしてSendGrid(41%)という数字になっている。

興味深いことに、キャッシュバーンで測定された資本効率の両端の外れ値は、「Rule of 40」でも同じく外れ値となっている。資本効率が最も高いZoomとDatadogは、「Rule of 40」で最高と3番目に高いスコアを獲得している。逆に、資本効率が最も低いDomoとMongoDBも、「Rule of 40」で最低スコアを獲得している。

実際に「Rule of 40」と資本効率は実際には同じコインの両面であるため、これは驚くようなことではない。企業が利益率をあまり犠牲にせずに高い成長を維持できる場合(つまり「Rule of 40」で高得点)には、同業他社と比べて当然ながら現金の消費量は少なくなる。

結論

これらすべてを、お気に入りのSaaSビジネスに当てはめるためには、いくつかの質問に答えなければならない。調達した総資本金額はARRの何倍だろう?総キャッシュバーンはARRの何倍だろうか?上記の21社と比較した場合、その会社はどの位置に入るだろう?Zoomに近いだろうか、それともDomoに近いだろうか?”Rule of 40″での評価はどのくらいだろうか?それは、その会社の資本効率の良さまたは悪さを説明するのに役立つだろうか?

この記事のドラフトをレビューしてくれたElad Gil(エラド・ギル)とDenton Xu(デントン・スー)に感謝したい。

脚注

1米国拠点のVC支援SaaS企業のみが含まれる。予定されたIPOの直前に買収されたため、公開されはしなかったが、Quatricsを含んでいる。

2IPOに先立つ機関投資を含む。創業者による個人的な資本投資は含まれていない。

3これは、年間経常収益(Annual Recurring Revenue、これもまたARRと略される)ではなく、公開会社の報告要件ではないことに注意してほしい。年間収益予測値は、四半期収益を年換算することで計算される(4倍にするということ)。SaaSの収益は主に定期的なソフトウェアサブスクリプションであるため、両者の指標はSaaSビジネスを厳密に追跡する。

4これは、創業者からの株式買戻しなど、営業とは関係のない現金の利用も含んでいるため、あくまでも単純化された定義である。

5収益成長率は、過去12か月間(LTM)の収益を、その前の12か月間の収益と比べた成長率として計算される。利益率は、非GAAP営業利益率のことで、営業利益に株式ベースの報酬費を加えたものを、過去12か月(LTM)の収益で割ったものだ。

関連記事:資本調達の適切なペースは?(未訳)

【編集部注】著者のShin Kim(シン・キム)は新しいSaaSスタートアップに取り組んでいる最中で、かつ起業家であるElad Gil(エラド・ギル)のスタッフのチーフでもある。以前は、Oak Hill Capitalと J.P. Morganに在籍し、カリフォルニア大学バークレー校でEECS(データサイエンス)の修士号を取得した。

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(翻訳:sako)

ニッセイ・キャピタルのアクセラレーター「50M」第2期デモデイが開催

日本生命グループでスタートアップ投資行うニッセイ・キャピタルは1月25日、同社のアクセラレータープログラム「50M」の第2期採択企業のデモデイを開催した。ステルスのため事業内容が非公開の企業もあるが、全体的には、toC領域に挑戦するスタートアップが多かった印象だ。

50Mは創業前、または創業間もないスタートアップ企業を発掘、育成する、約6ヵ月間の起業家支援プログラム。事業の立ち上げを支援し、「特に優秀な企業に対して業界最大となる5000万円の投資を行う」。ニッセイ・キャピタルは50Mの卒業生にたいしても追加投資する可能性を明言しており、同社いわく、1社あたり最大30億円程度の出資が可能だ。

第2期プログラムは、2018年7月にキックオフ。各期開催されるデモデイは、採択企業がプログラムによって成長した姿を披露する場だ。今回のプログラム採択企業と、各社のビジネス概要は以下のとおり。

各社、10分ほどのプレゼンテーションを行なった後に、審査員の質問に最大で20分ほど答えた。審査員賞で見事に最優秀賞を獲得したのはTrustHub。第2位はbetter、第3位はdripsと続いた。オーディエンス賞は1位をTrustHub、2位をANTWAY、3位をbetterが獲得した。TrustHubはステルスのため、事業内容は残念ながら非公開。ヒントが欲しい人はサイトをチェックしてみてほしい。

左がTrustHub共同創業者でCEOの大懸剛貴氏

50Mの1期生には、TechCrunch Japan主催の年次イベント「TechCrunch Tokyo 2017」ファイナリストでIoTけん玉「DENDAMA」を会社つするAXELLや、「TechCrunch Tokyo 2018」ファイナリストで置き配バッグ「OKIPPA」を展開するYper、そして「TechCrunch Tokyo 2019」ファイナリストで法人向けウォレットサービス「paild」開発のHandiiが含まれる。

大規模VCファンドが小粒のラウンドに参加するという2020年の逆説

1月17日に、最近、VCがどれほど疲弊しているかについて書いた。ディールの数が多すぎること、1ディールあたりにかける時間が少なすぎること、同じ出資案件を巡る他のVCとの果てしなく激しい競争などについて触れた。

友人の創業者は、昨晩、「過去1年間に90人以上の投資家から次のラウンドへの参加申し込みを受け取った」と筆者に打ち明けた。彼は資金調達なんて始めてもいない。「僕はいくつかメールを見逃したかもしれない」と表情を変えずに言った。そもそも見逃さない方がおかしい。

そうした熱狂的ともいえる動きが、2020年のベンチャーキャピタル業界の機軸となる次のパラドックスへと導く。すなわち、大規模ファンドがアーリーステージで少額の小切手を切る。

大規模ファンドは投資機会として大きなラウンドを必要とするから、これはパラドックスだといえる。10億ドル(約1100億円)のファンドが、マネジメントフィーを差し引いた残りを、100万ドル(約1億1000万円)の小切手800枚に換えてシード投資に充てる、といったことはできない(できないことはないが、煩雑な上、管理不能になる)。通常のパターンはそうではなく、ファンドの規模が大きくなると、マネージングパートナーらが資金を効率的に投資できるよう、レイターステージのラウンドにどんどんシフトする。2億ドル(約220億円)のファンドが1件800万ドル(約8億8000万円)の資金を複数のシリーズAラウンドに投資していたとする。これが10億ドル(約1100億円)のファンドになれば、複数のシリーズBやCラウンドに1件4000万ドル(約44億円)で投資するようになる。

これはこれで論理的だが、現実世界のロジックはもう少し複雑だ。ポイントは、どのファンドも巨額の資金を集めつつあるということだ。

全米ベンチャーキャピタル協会が先に発表したぶ厚いレポートが明らかにしたように、2019年は多くの点で大規模ファンドの年だったと言える(ソフトバンクのファンドが資金調達しなかったにも関わらず)。ただ「メガファンド」(5億ドル=約550億円以上の規模と定義)に関して言えば、2019年に立ち上げられたファンド数は2018年を下回った。

あらゆるレイターステージのファンドは、レイターステージのディールを求めているが、単純にそんなにたくさんのディールはない。確かに、すばらしい企業やリターンの機会はそこら中に転がっているが、キャップテーブルに載せてもらおうと画策しているファンドは数十とあるし、バリュエーションは投資家が競争から抜け出すアピールポイントの1つにすぎない。

これは、多くの点でPlaid(プレイド)の物語そのものだ。Plaidはフィンテック関連のAPI開発会社で、Crunchbaseによると、2018年後半にIndexとKleinerからシリーズCで2億5000万ドル(約275億円)を調達した。その後、Visaが53億ドル(約5800億円)で買収することを発表した。複数のVCの情報筋によると、「誰も」がシリーズCに注目していたという(その「誰も」が疲弊していたに違いない)。

シリーズCラウンドで「ノー」と言った1人のベンチャーキャピタリストが先日、「2019年のバリュエーションは信じ難いほど高かった」と筆者に打ち明けた。同社は2018年に数千万ドル台後半(数十億円台後半)の売上を計上していた。筆者もそう聞いていた。シリーズCのバリュエーションとして報じられた26億5000万ドル(約2920億円)と合わせると、売上高マルチプルは30〜50倍あたりになるということだ。同社が今後ユーザーの口座データへのアクセスを確保するために、銀行と戦っていかなければならないことを考えれば、これは非常に割高だ。

ForbesのJeff Kauflin(ジェフ・カウフリン)氏によると、2019年の売上高は今や数億ドル台前半(数百億円台前半)の数字になった。つまり、Visaも同様に高いマルチプルでPlaidを買収した可能性が高い。KleinerとIndexの投資は1年ほどで2倍になったが、だからといってIRR(内部収益率、投資の利回りの指標)に関してとやかく言われる筋合いはない(特にグロース投資においてはそうだ)。だが、相手がVisaでなければ、そしてイグジットのタイミングがこれほど良い結果をもたらす錬金術のようなものでなければ、すべては違った展開になっていたかもしれない。

高いバリュエーションよりもさらに悪いのは、こうしたレイターステージのラウンドが非常に独占的かつ排他的になる可能性があることだ。聞きおよぶ限り、PlaidのシリーズCラウンドは、かなりオープンなプロセスだったようだ。そのため、多くの企業がディールを検討でき、アーリーインベスターと創業者の希薄化を抑えながらバリュエーションを引き上げることができた。だが、プロセスがこう進むとは限らない。

早いラウンドで投資したファンドが、続くラウンドでも投資しようとする傾向がある。シリーズAで500万ドル(約5億5000万円)を投入した投資家が、5000万ドル(約55億円)をシリーズBで、さらに2億5000万ドル(約275億円)をシリーズCでも投入したいと考える。結局、彼らには資金があり、すでに会社を知っていてCEOとの関係も構築済みだから、資金調達のプロセスで時間を浪費するのを避けることができる。

そのため、最近、多くのディールで、レイターステージのキャップテーブルから新規投資家が実質的に締め出されている。なぜなら、キャップテーブルの周りにはすでに多くのファンドがよだれを垂らして座り込み、賭け金を増やそうと狙っているからだ。

ここにパラドックスが現れる。レイターラウンドに参加するには、すでにキャップテーブルに載っている必要がある。つまり、アーリーステージのより小規模ラウンドに参加しなければならない。突如、グロース投資家がスタートアップの資金調達での参加の選択肢を得るために、シードを含むアーリーステージのラウンドにまで参加することになるわけだ。

あるベンチャーキャピタリストが先週筆者にこう説明した(以下、言い換えしている)。「昨今、妙なのは、シードラウンドにSequoiaのようなファンドが登場しても、バリュエーションや契約条件などには見向きもしないことだ。すべてはレイターステージのラウンドのためだ」。明らかに少々誇張されているとは思う。ただ、大規模ファンドにとって100万ドル(約1億1000万円)の小切手というのは、四捨五入で生じる誤差くらいの金額でしかない。本当のリターンはその先のメガラウンドにある。

では、シードファンドは消滅してしまうのか。それは違う。しかし競合他社が文字通りどうでもいい投資であると考えたり、あるいは投資をマーケティング費用や次回以降のラウンドへの参加費として捉えるなら、バランスの取れた、リスクを加味したポートフォリオを構築することは難しい。一方、創業者にとっては、正しいベンチャーキャピタルを選べるならば、今も本当にすばらしい時代だと言える。

画像クレジットHalfdark / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

ベンチャーキャピタリストは疲弊している

筆者は先週サンフランシスコにいて、2日間で1ダース以上のベンチャーキャピタリストと会った。彼らは休暇から帰って来たところで、つまりタホ(米国カリフォルニア州とネバダ州の州境のシエラネヴァダ山中にある湖)のスキ​​ーシャレーやビーチのある島への旅行から帰ってきた時期で、ちょうど1年で最も重要な資金調達期間の1つに入ったところだった。第4四半期に仕込んだスタートアップが1月後半から4月にかけて今年の資金調達を始めるのだ。

筆者がベンチャーキャピタリストとの会話の中でひたすら聞いたのは「疲れている」という言葉だった。理由は完全に同じではないにしても似たようなものだった。最大の要因は、押し寄せる洪水のようなベンチャーマネーに対して、シリコンバレーのディールが少なすぎるということだ。コンシューマー関連の投資はイグジット先がなくなって色あせつつある一方で、モバイルのうねりが高まっている。最近記憶にある範囲で、昨年はB2B投資がコンシューマー関連の投資を上回った最初の年だった。誰もが同じようなSaaS企業を追いかけることを余儀なくされている。

彼らは、いわゆる最高のディールで、資金調達プロセスが開始から48〜72時間で終わってしまう様子について話してくれた。数十のベンチャーキャピタルファームが、自らは意識していないが幸運なスタートアップを狙ってタカのように下降し、タームシートに同意する。「キャップテーブルに載るチャンスのためなら、バリュエーションやその他の交渉論点は喜んで譲歩するのだ」と嘆くベンチャーキャピタリストもいる。アーリーインベスターは保有している株を持ち続けることに必死で、過去にみられたような誠実なブローカーの役割などはもはや果たしていない。

さらに「これを逃すことはできない」という感覚がこれまで以上に強くなっている。ベンチャーキャピタリストが数十という会社を見て回ったその日の終わりに、深夜になってもう1つ会社を紹介してもらう。その会社が自分のキャリアを左右するかもしれないと思い、今日最後の会議に参加する。そうやって「今日最後の会議」に参加し続ける。競争に有利に働くとんがった何かを見出したいのだ。

だから、ベンチャーキャピタリストはサウスパーク(サンフランシスコ市内のベンチャーキャピタルファーム集積地の1つ)を中心にをうろうろ走り回り、最近はいよいよ世界中を回って何とかアルファ(市場平均を超えるリターンの源)を探そうとしている。だが、アルファの発見はますます難しくなっているようだ。

ベンチャーキャピタルファームは自分にできることはしている。その「最後の未発掘会社」を見つけるべく、優れた人材をたくさん採っている。また、自らのポートフォリオやその創業者を精査し、競合他社が見逃しているかもしれないディールへの手がかりを見つけようとしている。ディナーの後にまたディナーを開くこともある。筆者もときどき遭遇する。まるで人間が同時に複数の場所に存在することができるかのように、筆者も一晩に複数のディナーに招待されたことがある。すべてはマジックが起こるのを期待してのことだ。

皮肉なのは、かつて「疲れた」というセリフは、シードインベスターからよく聞いたものだ。彼らは金脈を探し当てるために、何十もの気の毒なスタートアップを手当たり次第回っている。最近は、レイターステージのベンチャーキャピタリストからその言葉を耳にすることが多くなった。レイターステージでは、創業者との関係よりもExcelスプレッドシートがバリュエーションを左右し、誰もがSaaSメトリクスのグリッドを読むことができる。

こうしたことは、スタートアップの創業者やアーリーインベスターにとって良い面もある。マークアップ(前回ラウンドからの株価の上昇額)が高いほど、より少ない希薄化でより多くの資金が得られる。それは常に素晴らしい。問題は、極めて凝縮された資金調達プロセスで関係が構築されていくことだ。つまり、創業者はパートナーと仕事をする時間がほとんど取れないまま、取締役会の議席を用意しなければならない。そんな「るつぼ」のような混沌とした状況で人格を見極めるのは難しい。

数字についてもそうだ。タームシートが守られないことについてはEquityで少ししゃべったが、最近いろんな所でささやかれている1つのパターンだ。 タームシートが署名される前のデューデリジェンスが短くなるほど(これも激しい競争に勝つため)、買い手側であるベンチャーキャピタリストが(そしてしばしば創業者も)後悔するケースが増え、結局ラウンドが失敗に終わる可能性が高くなる。

限られた選択肢、目まぐるしいスピード、睡眠不足。これらがすべて、ベンチャーキャピタルのリターンに対する感応度を高めている。VCにメールするのが1時間前後するだけで、資金調達の結果が変わる可能性が十分にある。かつてベンチャーキャピタリストは、コツコツ働き、じっくり判断するとの定評があった。今やその古い常識は死に、代わって登場した現代のベンチャーキャピタリストは、カフェインと野心をジェット燃料にして数分で数百万ドル(数億円)の判断を下す。

最高の時代でもあるし、最低の時代でもある。2019年と2020年のヴィンテージイヤーの結果が、今から8〜10年後にどうなっているのか考えずにはいられない。

画像クレジット:Westend61 / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)