スマートキッチン・サミット・ジャパン 2018開催――デモスペースは大混雑、飛び入りプレゼンも

デジタル事業のコンサルティング企業、シグマクシスと食産業のスペシャリスト、シアトルのNextMarket Insightsがミッドタウン日比谷でスマートキッチン・サミット・ジャパン 2018を開催した。8月9日の2日目に参加できたので簡単にご紹介したい。昨年のスマートキッチン・サミットに比べ講演者、参加者、デモ、いずれも倍以上に増え、食のデジタル化、スマート化がメインストリームになりつつあると実感した。

クックパッドはAWS、SHARP、LIXILなどパートナー企業10社を発表しOiCy事業を本格化させることを発表した。OiCyはクックパッドに集まった膨大なレシピをアルゴリズムによって標準化し、スマートキッチン家電と連携させていく試みだという。パナソニックも社内ベンチャー、「ゲームチェンジャー・カタパルト」がさらに前進していることを発表した。

このカンファレンスはNextMarket Insightsがスタートさせたもので、アメリカ発のカンファレンスらしくグローバルな視点が特長だ。今年も機械学習を利用した生鮮食品トラッキングサービスのChefling、オンライン・レシピ・アシスタントのSideChefのファウンダーとクックパッドの吉岡忠佑氏によるパネルではNext MarketのCEO、Mechael Wolf氏がモデレーターとなってさまざまな意見を聞き出していた。SideChefのKevin Yu氏が「データ処理はもちろん重要だがさらに重要なのはユーザーのエンゲージメント」だとして吉岡氏らも賛同した。

Yu氏によればEU市場は日米市場よりセグメントが細かく、いっそうきめ細かいローカライズが必要だという。われわれ日本人はヨーロッパが言語、文化とも非常に多様であることを忘れがちだが、現実にビジネスをする上では重要なポイントになるはず。

しかし今年のSKSでは日本の大企業、ベンチャーのスマートキッチン事業が大きく勢いを増していると感じた。ランチブレークのデモスペースは朝の電車なみに混み合っていて、デモの手元を見るには頭上に流されたライブ映像を見るしかないほどだった。デモではパナソニックの社内ベンチャーで開発された「おにぎりロボット」が面白い。パナソニックで「ごはんひとすじ」で来たという担当者の説明によれば「外はしっかり、中がふわり」というおむすびの理想形を作れる装置だという。

 

ちなみにライブストリーミング用のデジタル一眼のプラットフォームにTechCrunch Japanでも最近紹介したDJI Roninジンバルが使われていた。

セッションの合間に飛び入りのプレゼンを募ったところ、主催者の予想を超えてたちまち5、6チームが登場した。「ひっこみ思案で黙り込んでいる」という日本人のステレオタイプはスマートキッチンに関しては過去のもののようだ。とかく後向きといわれがちな行政からも農水省、経産省、総務省から若手官僚が登壇した。総務省の岸氏が「数字だけみていくのではダメ。まず明るい未来のビジョンを作り、そこに到達するためにどういう具体的な方策があり得るか考えるのでなければ」と力説していたのが印象に残った。

 

最後に昨年に続いて、外村仁氏が登壇。外村氏は元Apple Japan、元Evernote Japan会長などを歴任したシリコンバレーの連続起業家であるだけでなく食のエバンジェリストでもあるというスーパーマン。外村氏はAnovaの低温調理ヒーターの最新版を会場で紹介しながら、食がますますスマート化、サイエンス化しているグローバルなトレンドに日本が遅れかけていることに注意を促し、「これはやっていけないコトなのかもしれないと、自己規制してしまうのが一番いけない。最初から明示的に禁止されたこと以外は全部やっていいんです。どんどんやりましょう」とベンチャー・スピリットを力強く応援した。

 

カンファレンスの詳しい内容についてはシグマクシスのサイトFacebookページに詳しく紹介されている。Facebookページにはスピーカー、参加者全員の写真も掲載されている。

“今ヒマな時間”ですぐ働けるワークシェアアプリ「タイミー」が5600万円調達

ワークシェアサービス「タイミー」を提供するタイミーは8月10日、ジェネシア・ベンチャーズ、サイバーエージェント・ベンチャーズ、コロプラネクスト3号ファンド、F Ventures、複数の個人投資家らから総額5600万円を調達したと発表した。

8月2日にリリースしたばかりのタイミーは、人手が足りない飲食店などのお店と、暇な時間を有効活用したい人たちをマッチングするサービスだ。個別のお店ごとの応募や採用面接は不要。アプリに空いた時間を入力するだけで、数多くの候補から「今ヒマな時間」に働けるお店を探すことができる。詳しい機能やUIについては、リリース時に掲載したこちらの記事も参考にしてほしい。

2017年8月に設立したタイミーにとって、今回が初の外部調達となる。同社は今回調達した資金を利用して、「開発体制のさらなる強化、マーケティング施策の充実により、新規クライアントの獲得と対応エリアの拡大を目指す」としている。

AnyPay、株式配当のように“収益を分配するトークン”の発行システムを開発中

割り勘アプリ「paymo」などを提供するAnyPayは8月10日、グループ会社でシンガポールに籍をおくAnyPay Pte.Ltd.にて収益分配型のトークン発行システムを開発中であることを発表した。2018年中にもシンガポールと日本でリリースされる予定だ。

株式ではなく、仮想通貨を発行することによって資金を調達するICOは、新しい資金調達手法として徐々に市民権を獲得しつつある。coindeskによる統計を見ると、2018年7月末時点におけるICOによる累計資金調達額は世界全体で200億ドル(約2兆2000億円)を超え、特に2017年から急速に普及してきたことが分かる。

写真: coindesk

しかし、その一方で、日本を含む各国ではこの新しい資金調達手法に適用する法律や規制が十分に整備されていないのも事実だ。そのために、ICOによる資金調達を断念する企業も多い。

そんななか、仮想通貨を利用した新しい資金調達手法として近年注目を浴びているのが、金融商品関連法令にもとづく金融商品としてトークンを発行して資金調達を行うSTO(Security Token Offering)だ。通常、ICOでは仮想通貨を発行する企業のサービスなどで利用できるトークンを発行することが一般的。これらのトークンは「ユーティリティトークン」と呼ばれる一方で、STOによって発行するトークンは、企業の所有権や配当など取引可能な資産によって裏付けられた「セキュリティトークン」と呼ばれる。

金融商品関連法令に則ったかたちでトークンを発行するためには、発行するトークンが金融商品であると認められなければならない。規制が不十分という環境のなか、仮想通貨による資金調達を実現するためには、株式などの金融商品に近い性質をもつセキュリティトークンはこの点で有利となる。

そのような背景もあり、STOによる資金調達を計画する企業が増えてきてはいるものの、実施に先立って調査すべき法的要件や必要書類は多岐に渡り、経験がない企業がイチからSTOを実施するのは非常に困難であることも事実だ。

そこでAnyPayは、これまで展開してきたICOコンサルティング事業で培った知見を利用し、企業がより簡単にSTOを実施できるようなシステムを開発中だ。AnyPayはコンサルティング事業を通して、これまでに「数社」の企業を相手にICO実施のサポートを行ってきた。そのなかには、STOによって合計約1800万ドルを調達した企業もあるという(ただし、この例はインド企業)。

開発中のトークン発行システムの詳細はまだ明らかにはなっていないものの、同システムでは「トークン発行機能、STOを実施したあとの配当配布やIRを円滑に進めるためのツール」が利用可能になるという。

なお、AnyPayは同システムの運営において、Gunosyやインキュベイトファンドなど事業会社やVCとの協業パートナーシップを交わしたことも併せて発表している。これらのパートナーが担う役割について、ICOコンサルティング事業の責任者である山田悠太郎氏は、「事業会社のパートナーとは、ブロックチェーンの仕組みを活かしていかにセキュアで透明性のある全体の仕組みを作っていくかなど(システムの開発面で)協業を進める。パートナーシップに参加する各ファンドとは、彼らの投資先企業のバリューアップをSTOによってお手伝いすることで、ファンドとAnyPayの両社にメリットのある協業ができると考えている」と話した。

気になる英語ニュースを使って英語力強化、「ポリグロッツ」が6500万円を調達

英語学習アプリ「POLYGLOTS(ポリグロッツ)」などを運営するポリグロッツは8月9日、QBキャピタル、PE&HR、パイプドHD、米国の個人投資家を引受先とした第三者割当増資により総額6500万円を調達したことを明らかにした。

ポリグロッツについてはこれまでも何度か紹介しているけれど、自分の興味があるジャンルの英文ニュースを軸に英語力を強化できるのが特徴。ビジネスやテクノロジー、ファッションなど各分野のニュースが配信されていて、情報収集をしつつ英語の勉強もできるというわけだ。テクノジーカテゴリではTechCrunchの記事も読むことができる。

わからない単語をタップすることで辞書を引けるほか、日本語訳がある記事で訳文を見ながら学習したり、音声が付いている記事でリスニング力を鍛えたりすることも可能。自習だけではなく、先生のオンラインレッスンを受けられる機能も搭載された。

2014年末のリリースから4年近くが経ち、現在のユーザー数は約100万人。今後は調達した資金も活用し、蓄積した学習者の学習履歴データ、学習コンテンツ、先生とのレッスンを融合することで「学習者一人一人に最適化されたカリキュラムを、AIで自動生成し、これまでにない学習効率と効果を実現する語学サービス」を目指すという。

なおポリグロッツは2014年5月の創業。これまで2015年にEast Venturesやエンジェル投資家らから資金調達を実施しているほか、2017年12月にも事業会社と個人投資家より600万円を調達している。

いよいよTechCrunch Tokyo 2018のチケット販売開始、今ならお得な「超早割チケット」が買えるぞ!

先日発表した通り、今年もスタートアップ・テクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」を11月15日(木)と16日(金)に渋谷ヒカリエで開催する。そして今日、今の時点でTC Tokyoに参加したいと思っているコアな読者のみなさんのために、「超早割チケット」を販売開始したのでお知らせしたい。

TechCrunch Tokyoは僕たちTechCrunch Japanが毎年開催している、日本最大級のスタートアップ・テクノロジーのイベントだ。今年で8回目の開催となり、昨年は約2500名が来場した。

ピッチバトルや展示ブースを通じて国内スタートアップのトレンドを知ることができるほか、国内外からの著名ゲストたちによる貴重な公演を見れる。多くの海外スピーカーによる登壇は、シリコンバレー発祥メディアの日本版が運営するTechCrunch Tokyoならではの特徴だ。

一般チケットの値段は4万円(税込)だが、本日発売の超早割チケットは半額以下の1万8000円(税込)だ。販売期間は9月18日までなので、このチャンスを逃さないでほしい。

TechCrunch Tokyoの最大の目玉は、何と言っても創業3年未満の新進気鋭のスタートアップがステージ上でピッチバトルを繰り広げる「スタートアップバトル」だ。例年100〜150社から応募が寄せられ、VCやTechCrunch編集部を中心としたメンバーが書類審査を行う。その書類審査をくぐり抜けたスタートアップだけが当日の本戦に進むことができ、11月の寒さを忘れるほどの熱いバトルをステージで繰り広げる。

また、TechCrunch Tokyoでは毎年、国内外のスタートアップ業界のコアにいるキーパーソンたちをお招きしている。昨年は海外からSlack共同創業者のCal Henderson氏やWeWorkのChris Hill氏、国内ではマネーフォーワードの辻庸介氏ソラコムの玉川憲氏らに登壇していただいた。かつてはUber共同創業者のTravis Kalanick氏メルカリ代表取締役会長兼CEO山田進太郎氏もお招きしている。

今年の登壇者も続々と決まっており、随時発表していくので期待して待っていてほしい。近日中に大きな発表がある、と一言だけ付け加えておこう。

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KDDIとエブリーがライブコマースアプリ「CHECK」公開

ライブコマースと言えば、2017年に日本国内のTechシーンでも注目を集めた領域のひとつといえるだろう。

TechCrunchでも昨年のTechCrunch Tokyoでライブコマースに関するパネルディスカッションを開催。個別の記事としてもCandeeの「Live Shop!」やFlattの「PinQul」といった新たなプロダクトのほか、「メルカリチャンネル」や「BASEライブ」など既存のコマース事業者がひとつのソリューションとしてライブ機能を取り入れた事例を紹介してきた。もちろん紹介しきれていないだけで、それ以外にも多くのサービスが立ち上がっている。

そんなライブコマース領域で、またひとつ新たなサービスが生まれた。本日8月9よりKDDIとエブリーが開始した「CHECK」だ。

両社は2018年3月に資本業務提携を締結。共同でライブコマース事業を提供することを発表していたけれど、それがついにスタートしたということだろう。

CHECKはアプリ内で配信されるライブ番組を通じて、出演者とインタラクティブにコミュニケーションをとりながら気に入った商品を購入できるアプリだ。

一例をあげると毎日の家事が少しでも楽になるような便利アイテムを紹介する「悩みすっきり ママラク」やママたちが実際にアイテムを試しながらレビューする「ママレビュー」、SNS映えするフォトジェニックなアイテムを紹介する「買えるジェニック」など、1回あたり30分程度の番組が毎日配信される。

冒頭で触れたサービスも含め、これまでのライブコマースサービスでは配信者を軸にしたものが多かったように思うが、現在アプリを見る限りCHECKは個人ではなく番組が中心。その辺りが既存のプロダクトとは違った特徴と言えそうだ。

今後はライブ動画中に行われるアンケートやクイズに回答することでクーポン・ポイントが付与される機能、同時視聴者数が多く集まるほどお得に買い物ができる企画などを予定しているとのこと。

また出店事業者を増やし商品のジャンルを広げるとともに、24時間365日のライブ動画配信を実現させ「これまでに無い新しいライブコマースプラットフォーム」を目指す方針。KDDIが運営する総合ショッピングモール「Wowma!」とも連携しながら、サービスの拡大を図っていくという。

Googleのデジタルホワイトボード「Jamboard」が日本上陸、本体価格は64万円

Googleのデジタルホワイトボード「Jamboard」がいよいよ本日(8月8日)、初めて日本に上陸した。これまでにもTechCrunch Japanでお伝えしているように、Google Jamboard2016年10月にお披露目され、米国では2017年5月に発売開始されている。米国の販売価格は5000ドルだったが、日本版の本体価格は64万円だ。

Jamboardの詳しい機能については発表時の記事で紹介しているので、そちらも参考にしていただきたい(その記事内で使用したJamboardの紹介動画も、もう一度掲載しておく)。でも、この記事で初めてJamboardのことを知った読者もいるだろうから、もう一度このデジタルホワイトボードの機能について簡単に紹介しておこう。

Jamboardは複数人でのブレインストーミングをより円滑にするために作られたデバイスだ。55インチのディスプレイ上に表示された真っ白なキャンバスの上に、手書きでアイデアを書き込んだり、スクリーンショットを挿入したり、Google Mapの地図を差し込んだりできる。また、編集内容はGoogleのクラウドサービスにアップロードされるので、チームメンバーへの共有もしやすい。僕は今だにやってるけど、ホワイトボードの写真をとってSlackで共有する行為とはこれでおさらばできる。

Jamboardが優れている点の1つが、機械学習による文字、図形、絵の自動認識技術だ。手書きで「おはようございます」と書けば、Jamboardがそれを自動的にデジタルな文字に変換してくれる。丸や四角といった図形も、手書きのものは自動的に変換され、オブジェクトとして自由に移動することも可能になる。僕がデモを見て一番驚いたのが、手で描いた“カメ“の絵を認識し、スタンプのようなオブジェクトに変換する機能だ(まあ、ブレストの現場でカメのスタンプが必要なのかは分からないけれど)。

Jamboardの類似デバイスとしてはMicrosoftの「Surface Hub」などが挙げられる。Google Cloudのストラテジック・アカウント・スペシャリストである武市憲司氏は、他社デバイスとの差別化要因として、Googleのクラウドサービスとの親和性、高いOCR技術、比較的安価な価格の3つをあげた。

冒頭でお伝えしたように、Jamboardの本体価格は64万円。そのほかに、Jamboardのソフトウェアライセンス費として年間7万7000円かかる。なお、Jamboardの利用にはG Suiteの契約が必須だ。カラーはカーマインレッドとグラファイトグレーの2種類。日本における販売パートナーはNTTドコモ、ソフトバンクなど計7社で、本日よりそれらのパートナーを通して購入することができる。

プロサッカー選手の本田圭佑氏が荷物預かりサービス「ecbo cloak」に出資

ecbo代表取締役社長 工藤慎一氏と本田圭佑氏

店舗の空きスペースを活用した荷物一時預かりサービス「ecbo cloak(エクボ クローク)」を運営するecboは8月8日、プロサッカー選手・本田圭佑氏の個人ファンドKSK Angel Fundから第三者割当増資による資金調達を実施したことを明らかにした。調達金額は非公開だが、関係者の話から千万円単位の規模のエンジェル投資とみられる。

ecbo cloakは荷物を預けたい人と遊休スペースを持つ店舗とをつなぐ、シェアリングサービス。2017年1月に東京都内でスタートした同サービスでは、コインロッカーの代わりに、カフェやレンタサイクル、着物レンタル店、郵便局、提携鉄道会社の駅構内など、さまざまなスペースをサイトから事前予約し、荷物を預けることができる。

現在、東京・京都・大阪・福岡・沖縄・北海道・愛媛などの都市でサービスを提供。旅行者による利用のほか、お祭りやイベント、日常の買い物などでも利用されているという。

ecboは2015年の創業。2017年3月にはANRIや個人投資家の渡瀬ひろみ氏、千葉功太郎氏から数千万円の調達、2018年2月にはJR東日本、JR西日本、メルカリなどから数億円規模の調達を行っている。

今回の資金調達について、ecbo代表取締役社長の工藤慎一氏は、JR東日本、JR西日本との連携などで国内市場への展開の道筋が見えてきたことから「今後、海外展開するにあたり、プロサッカー選手としてグローバルに活躍する本田氏の人脈を通じて、世界各地での連携に期待している」と述べている。

本田氏はKSK Angel Fundから、中高生向けプログラミング教育のライフイズテックに投資したのを皮切りに、クラウドファンディングのMakuakeや、人事評価管理クラウドのHRBrain、千葉功太郎氏が設立したドローンファンド2号など、国内外のスタートアップやファンドに投資を行っている。

工藤氏は「(先月本田氏が俳優のWill Smith氏と設立を発表した)Dreamers Fundもそうだが、本田氏はアメリカをはじめ海外のスタートアップとの接触も多く、提携先のグローバルな開拓でも連携していきたい」と話す。またパブリシティの面でも本田氏との連携を図っていく。

ecboでは「2025年までに世界500都市にecbo cloakのサービスを広げる」との目標を掲げて、海外展開を今後具体化していくという。

またecbo cloakの利用シーンの中には、スポーツ観戦中やプレー後の利用なども含まれる。ecboではサッカーをはじめとするスポーツのサポートも行っていくとしている。

月額500円のねこIoTトイレで愛猫のヘルスケアを変革、「toletta」が世界猫の日に一般販売スタート

ほんのつい最近知ったことなのだけど、今日8月8日は“世界猫の日”なのだそうだ。日本では猫の日といえば「ニャン・ニャン・ニャン」で2月22日のイメージが強いけれど、 International Cat Dayは8月8日。

試しにGoogleで「International Cat Day」と検索してみると、確かに8月8日と表示される。

ということで、今日はこんな日にぴったりのプロダクト「toletta(トレッタ)」を紹介したい。

tolettaはねこ専用のIoTトイレとスマホアプリによって愛猫の体調変化を見守ることができる、“ねこヘルスケア”サービス。開発元のハチたまでは世界猫の日に合わせて、本日より同プロダクトの一般販売をスタートした。

ねこが抱える課題(ねこの飼い主が抱える課題でもある)に、腎不全や尿結石、膀胱炎といった病気にかかりやすいということがある。中でも腎不全は特に高齢の猫がかかりやすく、死因のトップにもなっているもの。どのタイミングで発見できるかによってその後の寿命が変わってくるため、「いかに早い段階でその兆候に気づけるか」が重要になる。

ハチたまはこの課題にねこ専用のIoTトイレというアプローチで取り組むスタートアップだ。なぜトイレなのか、それはねこの場合、腎不全をはじめとする病気のサインが「おしっこ」や「体重」に表れるからなのだという(腎不全の場合は多尿・体重減少に目を光らせておく必要がある)。

つまり、愛猫の日々の体重や1回のおしっこの量、トータルのおしっこの回数の増減を日々観察しておくことがポイントになるというわけだ。

とはいえ人間が24時間ねこに張り付き、常に目を光らせておくというのは限界がある。動物病院で定期的にチェックしてもらうという手段もあるが、「血液検査などをするとだいたい1万円前後はかかってくる」(ハチたまの担当者)ことに加え、ねこに負担がかかる可能性もある。

そこでtolettaではトイレをIoT化することで、飼い主に変わって24時間365日ねこのトイレの様子を観察できる環境を構築した。

同サービスではねこがトイレに入るだけでおしっこや体重を自動で計測。そのデータは飼い主用のスマホアプリからいつでも閲覧することができる。ハチたまの担当者によると「中には愛猫のおしっこの記録をこまめにノートにつけている人もいる」そうだが、tolettaであればその作業もより正確に、より簡単になるはずだ。

またtolettaには画像認識技術(AI)を基にした「ねこ顔認識カメラ」が搭載。これによって「トイレに入ったのはどのねこか」を識別できるようになる。

ねこに関しては多頭飼いをしている飼い主が多く、ねこを見分ける技術として首輪にタグをぶら下げる方法が一般的に使われているそう。ただ当然ながら首輪を嫌がるねこもいるし、ずっと首輪をし続けるのは負担にもなりかねない。

そこでねこに余計なストレスを与えることなく識別する手段として、ねこ顔認識カメラという手段を採用したのだという。そのほか「ねこが24時間おしっこをしていない」など異常を検知し、アラートする機能なども備えている。

tolettaは初期費用が0円(ただし送料は2200円かかる)、月額サービス利用料が500円というサブスクリプション型の料金体系を採用。契約期間は2年となっていて、途中で解約する場合には違約金が発生する。

初期費用が0円ということもあり、これで利益がでるのか気になる人もいるだろう。ただその点は他のヘルスケアデバイスと共通するかもしれないが、tolettaのビジネスのキモになるのはIoTトイレを通じて蓄積されるねこの健康データだ。

たとえばハチたまではすでにペット保険最大手のアニコムグループと共同研究に取り組んでいる。ねこの詳細な健康データを活用すれば、個々に合った保険の開発・提供もできるはずだ。ハチたま担当者の話ではデータの展開の一例として「(データに基づいた)フードの開発」などもありうるということだった。

とはいえ、これらのビジネスを実現するには、まずはIoTトイレを普及させていくことが前提。ハチたまでは「まずは2018年中に2000台の提供」を目標に販売を促進していくそうだ。

同社では今回tolettaの一般販売開始と合わせて、エンジェル投資プラットフォームであるKEIRETSU FORUM JAPAN 、個人投資家、日本政策金融公庫より総額で7500万円を調達したことを発表。3月に調達した6000万円、2017年に調達した4000万円を加えると累計の調達額は1億7500万円となった。

今回調達した資金をtolettaの量産資金とし、「ねこが幸せになれば、人はもっと幸せになれる」というビジョンの実現に向け事業を進めていくという。

定型的なPC作業はロボットにお任せ、クラウドRPAのBizteXが4億円を調達

定型的・反復的な事務作業をロボットが代行するクラウドRPAサービス「BizteX cobit」。同プロダクトを運営するBizteXは8月7日、WiLとジェネシア・ベンチャーズを引受先とした第三者割当増資により総額約4億円を調達したことを明らかにした。

今回のラウンドは2017年7月にジェネシア・ベンチャーズから総額4000万円を調達したシードラウンドに続く、シリーズAという位置付け。BizteXでは近日中の公開を予定しているBizteX cobit APIにともなうシステム連携や企業間アライアンスの強化、開発体制・マーケティング体制の強化に調達した資金を用いるという。

近年RPA(Robotic Process Automation)というワードをTech系以外のメディアでも目にする機会が増えてきたように感じる。RPAはソフトウェアロボットを活用して定型的な作業を自動化する仕組みのこと。生産性向上や働き方改革を推進する手段のひとつとしても注目を集めている。

BizteXが展開するBizteX cobitは、この仕組みをクラウド上で提供するクラウド型のRPAサービスだ。プログラミングが不要で、Webブラウザからシンプルな操作でロボットを作成できることが特徴。インストールの必要がなく即日利用も可能なため、これまで一般的だったオンプレミス型と比べて導入のハードルが低い。

利用料金は初期費用にロボットの稼働ステップ数に応じた固定の月額費用が加わる(ステップとはロボットに覚えさせる動作ひとつひとつの単位のこと)。

2017年11月の正式版リリース以降、幅広い業種や規模の企業が導入。企業数は非公開であるもののアカウント数は1150、作成されたロボット数は4200、総実行ステップ数は1411万ステップを超えているという。

BizteX代表取締役の嶋田光敏氏によると、特に多いのがウェブ系の広告代理店、IT系の事業会社、人材系企業の3業種なのだそう。たとえばSEO業務で各キーワードの検索順位を調べてシートにまとめる作業をはじめ、与信審査や反社チェック時の反復作業、オファーメールの送信作業(タイマー予約)などが自動化される業務の典型例だ。

導入企業の規模も少人数の会社から、ソフトバンクグループの子会社やディップのような上場企業までさまざま。クラウド型の場合はセキュリティ面がひとつのネックとなりそうだが、嶋田氏の話では「金融系企業の子会社がグループ内で申請をしてまで使ってくれる事例も出てきている」とのこと。

BizteX cobitでは誰がいつ、どんなロボットを作ったかは全てログが残るような仕様で、“営業部”“マーケティング部”など組織ごとに分割して管理することが可能。管理者と一般ユーザーのような権限設定機能も備える。現在はセキュリティの要件レベルが高い企業にも徐々に採用してもらえはじめているという。

今回の資金調達も踏まえ、直近では近日公開予定のBizteX cobit APIにともなうシステム連携、コンサルティングパートナーなど企業間アライアンスの強化に取り組む方針。各種機能の拡張や使い勝手の改善にも引き続き力を入れる。

また将来的にはサービス上に蓄積された代行業務のデータを用いることで、ロボットの作成をさらに簡単にする仕組みも考えているようだ。

「たとえば過去のデータから顧客に向いていそうなロボットを提案したり、サイトのURLを入れたら類似する企業で活用されているようなロボットを提案したり。ロボットの代行業務データを活用しAIと連携することによって、ルールベースによるRPAから機械学習により進化するRPAを作っていきたい」(嶋田氏)

BizteXの経営陣および投資家陣。写真左から3人目が代表取締役の嶋田光敏氏

ソフトバンク孫社長、QRコード決済のメリット語る

eng-logo-2015ソフトバンクグループの孫正義社長は8月6日、2019年3月期 第1四半期決済説明会の場で「QRコード決済」のメリットについて語りました。

同グループ傘下のソフトバンク株式会社とヤフージャパンは、QRコード決済サービス「PayPay」(ペイペイ)を今秋開始予定。最初の3年間は一部決済方式の加盟店手数料を「0円」とすることで、日本でキャッシュレス化が進まない”要因”とされる中小店舗での導入を促進します。

なお「PayPay」はインドのモバイル決済企業「Paytm」と提携しており、同社にはソフトバンク・ビジョン・ファンドが出資する間柄でもあります。

「店舗側の投資がほとんどいらない」

このQRコード決済は、日本のキャッシュレス化を促進するとの期待が寄せられる一方、リーダーに「ピッ」とかざすだけのNFC(Felica)決済に比べて技術的な後進性を指摘する声もあり、「QRコードではなくNFC決済を日本で広めるべき」との意見も耳にします。

孫社長はQRコード決済の利点について、「店舗側の投資がほとんどいらない」点を挙げ、次のようにコメントしました。

「(店頭に)QRコードのシールを貼るだけで、(決済できる)お店の数がほぼ無限大に広がる。従来のように高額な専用端末を買って、インストールして、オペレーションコストを支払って、高額な手数料を支払う。こんな古いモデルではなくて、全く新しい、コストのかからない、そして素早く大きく広がるネットワークが今後作られる。そういった意味で、ソフトバンク株式会社とヤフージャパンが力を合わせて、これを実現させたい」(孫社長)

なおQRコード決済を巡っては、LINE Payも加盟店手数料「0円」のサービスを中小店舗向けに展開。楽天やNTTドコモなどのIT各社も続々参入しているほか、KDDIも参入を表明するなど、国内における競争は激しくなりつつあります。

Engadget 日本版からの転載。

グリーがVTuber専用ライブ配信サービス「REALITY」公開、ファン獲得と収益化サポートへ

昨日「バーチャルYoutuber(VTuber)が直近半年間で4000人以上増えた」ことを示す調査結果がユーザーローカルとCyberVより発表されたように、VTuber界隈が急激に盛り上がってきている。そんな背景もあって、TechCrunchでもVTuberを含めたバーチャルタレント関連の新サービスや新たな取り組みを紹介する機会が増えてきた。

これまでも大手IT系企業からスタートアップまで、さまざまな企業が各々のアプローチでこの市場に参入。中でもこの領域に特化した子会社を設立したり、「VTuberファンド」を立ち上げたりしているグリーはかなりアグレッシブだ。

そのグリーは8月7日、子会社のWright Flyer Live Entertainment(WFLE)を通じてVTuber専用のライブ配信プラットフォーム「REALITY」をリリースした。2018年秋にはスマホからオリジナルアバターを作成し、VTuberとしてライブ配信ができるアバタープラットフォームのα版「REALITY Avatar(仮称)」の公開も予定しているという。

本日公開されたREALITYはVTuberに特化したライブ配信サービス。ライブ配信サービス自体は決して真新しいものではないが、VTuberに限定している点が最大の特徴だろう。視聴者はコメントやギフトを通じてVTuberとの交流が可能で、3D着せ替えギフトにも対応する。

配信者は有償ギフトにより売り上げを獲得できる仕組み。REALITYでの配信に関する独占条項はなく、他の配信プラットフォームを利用することも可能だという。

冒頭でも触れた通り今は毎月続々と新たなVTuberがデビューしているものの、全てのVTuberがファンの獲得や収益化に成功しているわけではない。

WFLEによると「2018年7月26日時点で4300人以上のVTuberがデビューしているものの、2200人がチャンネル登録者数100人以下であり、2500人以上が1か月以上動画の更新がない状況」であることがユーザーローカルの調査でわかったようで、VTuberのファンとの交流と収益化を支援するべく、REALITYを提供するに至った。

REALITYではVTuber同士のコラボ配信を積極的に実施するなど、まずは月間で約60時間配信し順次拡大を目指す。また2018年秋にはスマホから誰でも簡単にVTuberになれるアバタープラットフォームのα版をリリースする計画だ。

同サービスではPCや専用機材は一切不要で簡単にカスタマーアバターを作成し、そのままREALITYでライブ配信ができる設計。アバターアイテムは毎月100個以上の新作を追加する予定のほか、すでに自作しているアバターをインポートすることも可能だという。

freeeが65億円の追加増資、LINE・三菱UFJ銀行と連携強化

右からfreee代表取締役CEOの佐々木大輔氏、取締役CFOの東後澄人氏

クラウド会計ソフト freee」などを提供するfreeeは8月7日、合計で約65億円の追加増資を発表した。第三者割当による資金調達で、引受先はLINE、三菱UFJ銀行、ライフカード、海外ファンドなど、合計で6社。今回の増資で累計資金調達額は約161億円となる。

freeeといえば7月2日に五反田にある同社オフィスで初となる戦略発表を開催し「スモールビジネスを世界の主役に」という新たなミッションを披露したばかりだ。今後はそのミッションを達成するため、LINEならびに三菱UFJ銀行とは連携も強化し、新サービスならびにプロダクト開発への投資を進める

創業者で代表取締役CEOの佐々木大輔氏ならびに取締役CFOの東後澄人氏はTechCrunch Japanの取材に対し、同社は今後も「開発を加速させていく」と語った。

「これまでは(バックオフィス業務などの)効率化を加速させるのがミッションだった。これはfreeeに期待されていることなのでやり続ける。それに加えて、これからはビジネスを伸ばす支援をしていく。その会社が本業で動いている部分においても価値が提供できるサービスをやっていきたい」(佐々木氏)

東後氏は「サービスとしてできることを拡充していくためには中長期的な開発への投資が必要だ」と説明。今回調達した資金は今まで過去7回行なった調達以上に開発に充てられるのだという。

大きく投資する開発対象は3つあり、その1つがこれまでやってきたバックオフィス業務の自動化ならびに経営の見える化を加速させること。最近だとfreeeは7月2日に財務データを活用する「予算・実績管理機能」を新たにリリースし、財務・経営データを自動分析・集約した上での可視化を実現しているが、更なる領域での自動化が期待できそうだ。

2つ目はスモールビジネスに対する資金調達の支援。freeeに蓄積されたデータをうまく活用することによって、最適なパートナーから最適な手段で最適な条件で資金を調達することが可能となるシステムの構築を目指している。

3つ目はフロント業務に近い部分の業務の効率化。freeeといえば会計・給与計算などバックオフィス業務の効率化のためのツールというイメージが強いが、今後は在庫管理やプロジェクト管理などといった、よりフロント業務に近い領域のオートパイロット化を目指していくという。

LINEとの業務提携に関して、「今後は共同でサービスを開発したり、共同のサービスを展開するなども考えていければと思っている」と東後氏は話した。freee は2018年5月、「freee 開業応援パック」に、LINEが提供する店舗・企業向けのLINEアカウント「LINE@」を新規特典として追加したと発表している。今後の業務提携に関して、「LINE@のユーザーに対しfreeeを提供、freeeユーザーに対しLINEのサービスを提供することが直近まずやれること」だと東後氏は語った。

また、freeeは2017年5月に三菱UFJ銀行とのAPI連携を発表したりこれまでも業務提携を行なってきたが、連携をさらに強化していく。詳しいサービス内容は不明だが、「決済面でよりオンラインで完結するようなスペースをお客様に提供していくことは双方にとって大きなメリットとなる」と東後氏は話した。

freeeはサービス提供開始から約5年で利用事業所数が100万を突破、「BCN RETAIL- 3強が戦うクラウド会計ソフト」によるとクラウド型会計ソフトおよび給与計算ソフトのシェアでNo.1。佐々木氏は「今回調達した額は日本の中ではかなり大きく、時価総額も結構な額になっている。上場をちゃんと選択肢としてとれるように、準備を進めている」と述べた。

CCCが共創コミュニティ「Blabo!」を子会社化、6700万人の生活者DB活用の新サービス提供へ

カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は8月7日、共創コミュニティ「Blabo!」を運営するBlaboの発行する株式を100%取得し、子会社化したことを明らかにした。取得価格については非公開だ。

Blaboは2011年の創業。企業が生活者からアイデアを募集できるサービスBlabo!を展開していて、これは“アイデア特化型のクラウドソーシング”のようなものと言えばイメージしやすいかもしれない。

同サービスに登録する2.5万人の生活者がお題に回答することを通じて企業にアイデアを提供。日本コカ・コーラ、キリンビール、ハウス食品、森永乳業といった大手企業に加え、経産省、神奈川県、鳥取県など行政機関での活用実績もある。

これまで合計で200社以上がBlaboを利用し、生活者のアイデアを基に150個以上の商品やサービスが実現されてきたという。

今後CCCでは自社で保有する6700万人の生活者データベースをBlaboの「共創コミュニティを活用した生活者インサイト発見システム」と掛け合わせ、顧客起点から商品開発を実現できる新たな共創マーケティングサービスを提供する。これによって生活者のライフスタイルが多様化する現代において、メーカーや小売店が顧客視点に立って価値ある商品・サービスを開発するサポートを行う計画のようだ。

ちなみにBlaboは2017年に開催されたCCCグループ主催のベンチャー企業向け協業プログラム第4期にて優秀賞を受賞。両社での取り組みを推進するべく、BlaboがCCCグループに参画することになったという。なおBlabo代表の坂田直樹氏は今後も引き続き同社の代表取締役CEOを務める。

オンライン商談ツールのベルフェイスが5億円調達、セールスビッグデータの活用目指す

ブラウザだけでオンライン商談ができるウェブ会議システム「bellFace」を提供するベルフェイスは8月7日、総額5億円の資金調達実施を発表した。引受先は、グロービス・キャピタル・パートナーズSMBCベンチャーキャピタルYJキャピタルキャナルベンチャーズが運用する各ファンド。

増資に伴い、既存株主のインキュベイトファンド代表パートナーの赤浦徹氏とグロービス・キャピタル・パートナーズ マネージング・パートナーの仮屋薗聡一氏が社外取締役に就任する。

セールスに役立つ機能をさらに強化したbellFace

2016年9月の記事でも紹介したが、bellFaceはブラウザさえあれば使えるウェブ会議システムだ。SkypeやGoogleハングアウトと異なり、相手にソフトウェアのインストールやアカウント登録を強いる必要がなく、離れたところにいる社外の顧客と商談するインサイドセールス用途に使いやすくできている。

ユーザーはベルフェイスのページで発行される“接続ナンバー”を顧客と電話でやり取りするだけで、ブラウザの種類やバージョンは問わず、プラグインも不要で使える。クラウド上に保存された資料を表示して、相手と確認しながら話をすることもできる。

2015年のリリース以降、プロダクトのアップデートも進んでいる。PCだけでなく、iPadやiPhoneのブラウザにも対応したほか、画面共有機能、セールスパーソンを美肌と細見え効果できれいに見せるビューティーモード、動画プレゼン機能や50MB以下のファイル共有機能、名刺プロフィールの表示など、さまざまな機能を搭載してきた。

ベルフェイス代表取締役の中島一明氏は「画面共有機能はSaaS系企業のデモにも最適で、利用が伸びている。相手側がPCであれば、双方で画面共有ができるため、テクニカルサポートでも活用してもらっている」と話す。

中島氏によれば「これらの機能強化が導入企業増につながった」とのこと。「2018年7月現在で有料での導入企業が700社、13000ユーザーを超えた。特にマーケティングをしていないが、月に350〜360件ほどの問い合わせがある」という。

「メールアドレスやFacebookのアカウントなどが分からなくても、やり取りができて、資料も共有できる。接続の簡単さが導入企業には喜ばれている。特に営業では身内よりも顧客との間のほうが、コミュニケーションする機会が多い。BtoB営業のためのツールとして機能を追求し、そこに2年間注力してきた成果が現れたと考えている」(中島氏)

同じような機能を持つブラウザベースのウェブ会議システムには、URLを発行するだけでビデオチャットが可能なAppear.inZOOMなどもある。これらと比較したときに、bellFaceが「オンライン商談、インサイドセールスに特化したツール」たるゆえんは、その「商談データの扱い方」にある。

bellFaceでは、どの資料をどのような順番で、どれくらいの時間見せたかを秒単位で取得して営業ログを記録する。また、共有メモに双方で書き込みを行うことができ、議事録を作りながら話せるので認識の齟齬も生じにくい。さらに双方のビデオ画像を録画し、変換したファイルがクラウド上に残る。商談の最後には、顧客へのアンケートも実施できる。

これらの情報をSalesforceなどのCRMツールに紐付けて保存することで、営業内容を成果と結び付けて確認することが可能。社員へのフィードバックに生かすことができるという。

日本でのインサイドセールス普及を目指す

ベルフェイスは2015年4月の創業。2016年8月にはインキュベイトファンドほか数社から1.6億円の資金調達を実施している。

中島氏は現在の状況について「既存ユーザーの継続率も高く、導入も増えている」と説明する。マーケターや広報の専任者はいないそうだが、問い合わせを月300件以上受けるまでに至ったのは、「カスタマーサクセスに力を入れたから」という。

bellFaceではユーザーが顧客に接続ナンバーを発行してもらうことから商談が始まるが、その時に顧客に必ず「ベルフェイス」と検索してもらうことになる。また、そのほとんどがBtoBの商談で利用されている。

「“お客さまのお客さま”が商談でbellFaceを利用し、『うちでも使えるのではないか?』と思ってもらうことができた。導入企業の顧客がユーザーになるケースが多く、サービスの利用頻度が高くなればなるほど、ユーザーが増えた。つまり、ユーザーを成功させればユーザーが増えるという状況。カスタマーサクセスに投資してよかった」(中島氏)

前回の資金調達から約2年。「大手から小規模までさまざまな企業に使ってもらって、今は実績・プロダクトともに充実したところ。土台ができたと考え、2度目の資金調達を行うことにした」と中島氏は述べる。

今回の調達資金について中島氏は「カスタマーサクセスに引き続き投資する」と話している。「きれいごとでなく、それが一番効率がよいから」だという。解約したくないと思われるようなプロダクト強化と実績づくり、Salesforceなどの外部CRMツールとの連携機能強化や、ユーザーコミュニティ醸成にも力を入れるそうだ。

「ユーザーコミュニティについては、現在月1度、ユーザー会を実施しているが、貸し会議室を利用している状態。スタートアップによくある『おしゃれなオフィスに引っ越して……』というよりは、ユーザーイベントを安定して開催するために、オフィスの移転を計画している」と中島氏は説明する。

米InsideSales.comの調査によれば、米国において2017年に営業利益ベースでフィールドセールスが占める割合は71.2%で、リモートまたはインサイドセールスの28.8%に比べれば依然として高い。だが2018年にはリモートおよびインサイドセールスの比率は30.2%に伸びると予測されている。

また米国の小売業を除いたセールスパーソン570万人のうち、43.5%はインサイドセールス専任、56.5%がフィールドセールス担当で、その差は縮まってきている。しかもフィールドセールスの担当者もいまや約半分の時間をリモートセールスに充てているという。その割合は2013年時点に比べて89.2%増加している。

日本でも働き方改革が進む中、効率のよい時間の使い方、生産性向上が求められることもあって、訪問営業で費やされる移動時間やコストに目が向けられ、インサイドセールスへの注目が集まっている。

「日本ではまだ普及しきっていないインサイドセールスという新しい営業スタイルを、マーケットに浸透させるため、広告などのマーケティングにも投資していく」と中島氏は話している。

さらにベルフェイスでは、蓄積される商談データを「セールスビッグデータ」として活用することも検討している。中島氏は「大量のセールスログとアンケートの分析を人が行い続けるのは非効率。人工知能を活用することで、例えば画像解析による“笑顔率”とCRMで見える成約率との関連性を分析するなど、非言語コミュニケーションの解析を行い、数字で分析可能にしたい」と述べる。

「今までは企業と顧客の間で、マーケティングやCRM、MAなど企業に近い部分にはデータがあってツールがあり、デジタル化が進んでいたが、顧客との接点であるセールスの効果については、ブラックボックスで分析が進んでいなかった。既存のツールに加えて、セールスもデジタル化し、蓄積されたデータをマネジャーが使えるようにすることで、営業に必要なサジェストを出せるようにしていきたい」(中島氏)

笑顔率の分析やセールスパーソンへのフィードバックについては、社内で実際にbellFaceを使って実施してみているそうだ。「営業担当によっては『笑っていないほうが数字が取れる』ということもあるはず。それぞれの適性に合わせた提案ができるようになれば。また自部署では不要と顧みられなかった営業情報が、実は隣の部署では必要だった、というケースも企業ではよくあること。そうしたデータを拾い上げて、適切な部門にサジェストするような機能も用意したい」(中島氏)

TechCrunch Japan新体制のお知らせ

20180806_0036348月6日、テクノロジーとスタートアップの情報をお届けするメディア、TechCrunch Japanの新体制がスタートしました。前任の西村賢編集長、岩本有平副編集長を引き継ぎ、ワタクシ吉田ヒロ(吉田博英)がジョインします。

ご存じない方もいらっしゃるかと思うのでまずは自己紹介を。ワタクシは大学卒業後、アスキー(現・KADOKAWA)に入社し、Apple系専門誌のMACPOWER、デベロッパー向け専門誌のMacTech Japanでは編集記者として、Apple系情報誌のMac PeopleとPC/ICT系総合誌の週刊アスキーではデスク、副編集長、編集長を歴任してきました。

編集記者としては、主にApple系のデベロッパーとテクノロジーの記事を専門としてきました。週刊アスキーへの異動後は、Apple系はもちろん、スタートアップやスマートフォン、そしてグルメまで幅広いジャンルの記事を手がけてきました。編集長としては、月刊誌(Mac People)と週刊誌(週刊アスキー電子版)の制作全般を統括してきました。

この度、週刊アスキー電子版編集長からTechCrunch Japanへ転身したのは、世界的に非常に強いブランド力のあるメディアの日本語版に関われることはもちろん、次世代を担う若手編集記者に巡り会えたのが大きな理由です。

その一人は、編集記者兼翻訳チーム統括の木村拓哉(写真右)。証券会社に約3年間勤務したあとカナダへ渡り、現地で通訳・翻訳業を行いつつ、フリーランスの翻訳家、ライターとしての活動を経てTechCrunch Japanにジョインしました。

もう一人は、東京生まれで米国カリフォルニア州サンディエゴ育ちの菊池大介(写真左)。TechCrunch Japanにジョインする以前は、英字新聞The Japan Timesで政治・社会を担当していました。

二人とも20代で、編集記者としては伸びしろしかありません。ネイティブレベルで英語が話せることもあり、国内外の取材に臨機応変に対応できるのが強みです。今後、さまざまな会見や取材先で見かけることも多くなるはずです。

8月からのTechCrunch Japanは、この二人の編集記者、そして盤石の翻訳チームと安定のライター陣とともにスタートアップ業界をさらに盛り上げていきます。そして本家TechCrunchと同様に、テクノロジー系の記事についても力を入れていく予定です。引き続き、タレコミやプレスリリース送付、取材依頼などはtips@techcrunch.jpまでお送りください。

また、11月15日、16日には国内最大級のスタートアップイベント「TechCrunch Tokyo」が東京・渋谷ヒカリエで開催されます。現在、TechCrunch Tokyoを成功に導くため編集部一丸となって取り組んでいます。近いうちに、チケット販売や登壇者などの具体的な内容をお伝えする予定です。

読者のみなさま、スタートアップ企業のみなさま、そしてテクノロジーを愛するすべてのみなさま、今後ともTechCrunch Japanをよろしくお願いいたします。

なお、本日8月6日18時より生配信される兄弟メディアであるEngadget日本版のYouTube Liveにも出演します。こちらもぜひご覧ください。

月定額カーレンタル事業など展開するSmartDriveが17億円調達、高齢者の運転見守りサービスも開始へ

自動車の走行データ解析サービスを提供するスマートドライブは8月6日、産業革新機構、ゴールドマン・サックス、モノフル、2020(鴻海グループのファンド)を引受先とする第三者割当増資により総額17億円を調達した。

スマートドライブは、自動車に取り付ける専用デバイスから50〜60項目にわたるデータを取得・解析し、それをもとに自動車保険の開発や走行データ可視化サービスなどを展開するスタートアップ。その解析技術を軸に、法人向け車両管理サービスの「SmartDrive Fleet(旧DriveOps)」や、運転の安全度によって掛け金が変動するテレマティクス保険をアクサ損害保険と共同で提供するなどしている。

走行データの解析技術をもとにさまざまな事業を展開するスマートドライブだが、なかでも特に注目を集めたのが、運転の安全度によってポイントを付与する機能などが特徴の月定額カーレンタルサービス「SmartDrive Cars(以下、Cars)」だ。スマートドライブ代表取締役の北川烈氏は、2018年2月よりスタートしたCarsについて具体的な数字を明かさなかったものの、初動は順調で「年内には全国展開をはじめる」とした。

また、このサービスは本来、スマートドライブのパートナー企業が保有する車両を貸し出すというモデルだが、中古車や新車を販売するディーラー各社からの引き合いも多くなっているという。Carsが提供するデータ解析機能(安全運転によりポイントがもらえるなど)を切り出し、自動車を販売する際にセットサービスして提供できないかというものだ。そのため、スマートドライブは今後、プラットフォーマーとしてこれらの機能をディーラーに提供する役割を担うことも検討しているという。

スマートドライブは今回の資金調達を期に、Carsなど自社のC向け事業の拡大を目指す。調達した17億円はCarsのさらなる開発費用とプロモーションに使用するほか、2018年10月に正式リリース予定の新サービス「SmartDrive Families(以下、Families)」の開発費にも充てる。Familiesは、自動車の走行データを利用して離れて住む高齢の家族を見守ることができるサービスだ。

高齢化が進む日本では、高齢ドライバーによる運転事故は社会課題の1つ。そういった事故が増えるにつれ、「〇〇歳以上のドライバーからは免許を取り上げる」などの議論も出てきた。しかし、そもそも安全運転の度合いは個人によって異なるし、クルマが日々の生活に欠かせないものとなる僻地に住む人は、できるだけ長く免許を保持したいというのが正直なところだ。

Familiesでは、専用デバイスを家族のクルマに取り付けるだけで運転の安全度を計測することができ、より実態に即した形で、彼らが保有する免許を返上させるべきかどうか判断できるようになる。同様のサービスを提供する競合他社は存在するものの、Familiesの強みとしては、シガーソケットに取り付けるだけという導入の容易さ、費用の安さなどがあると北川氏は話す。

走行データの解析という技術を軸に、さまざまな領域へのビジネス展開を模索するスマートドライブ。今回の資金調達では、今述べたC向け事業の強化のほか、物流のモノフルとの連携によりロジスティクス領域でのビジネスを強化するほか、研究開発部門の「SmartDrive Lab」を中国・深センに設立するなどしている。

リファラル採用のMyRefer、パーソル独立後3.6億円の調達ーー「つながりで日本のはたらくをアップデートする」

左から、MyRefer代表取締役社長CEOの鈴木貴史氏、USEN-NEXT HOLDINGS代表取締役社長CEOの宇野康秀氏

リファラル採用に特化したHRテックサービス「MyRefer」を提供するMyReferは8月6日、グリーベンチャーズ、パーソルホールディングス、宇野康秀氏などを引受先とする総額3億6000万円の第三者割当増資を実施したと発表した。

同社はパーソルグループの新規事業創出プログラム「0to1」発の事業。成長をより一層加速化させること、そしてパーソル全体のオープンイノベーションを更に強化していく試みとして8月1日に法人化した。同プログラム初の独立法人化案件だというだけでなく、1998年設立のサイバージェント以来のインテリジェンス(現パーソル)発のスピンアウトベンチャーとなった。インテリジェンス創業者で現在はUSEN-NEXT HOLDINGSの代表取締役社長CEOを務める宇野氏はこの動きを「非常に嬉しく感じている」とコメントしている。

「創業の頃から人と組織を元気にするインフラサービスとしてやっていた。個人的にやりたいことは、ベンチャーがチャンスを得て巣立っていくこと。大企業を脅かすような存在に進化していくことを支援したい」(宇野氏)

また、同氏は「(独立元企業にとっては)自社で抱えきれない事業もある」「独立したからと言って1が0になるわけではない」とも話している。

「自社で育てたサービスが独立してしまうと損失が多く見えるが、自社内で成長した上で独立を目指す優秀な人が増えることはメリットだと思う。逆に、サイバーはインテの中にいたら今のようにはなっていない可能性もある。独立したことでブランディング形成できるという面もある」(宇野氏)

一方、パーソルホールディングス取締役副社長COO高橋広敏氏は「パーソルグループにおいてもオープンイノベーションやインキュベーションを積極推進しており、MyReferのさらなる事業成長を支援していく」とコメントしている。

MyReferはリファラル採用を中途採用のみならず新卒、アルバイト採用でも利用が可能にするクラウドサービスだ。リファラル採用とは社員に人材を紹介・推薦してもらう採用手法のこと。社員の個人的な繋がりを活用し、より企業にマッチした人材を獲得することが可能となる。

人事担当者はMyReferを導入後、社員にマイページを配布。社員はマイページで求人情報を確認し、SNS上の友人にシェア。推薦コメントを人事担当者に送信。お誘いが届いた友人は興味があればMyReferに登録して応募する。社員の活動状況を全て可視化するアナリティクス機能により、人事担当者は社員の紹介活動や候補者応募状況、求人別の紹介状況を確認することができる。

iPhoneとAndroidに対応したアプリを使うことで社員はワンクリックで求人を紹介することが可能。同アプリでは「社内の活動状況がランキングで可視化されるのでログインしたくなる」との声もあり、社員が楽しく自発的に自社の紹介活動を行える。また、社員は活動状況によってはギフトを受け取ることも可能だ。

「エージェントとか求人広告のような職務経歴書などを用いたハード面でのマッチングではなく、人と人との繋がりによるレファランスを活用する。新卒、中途とアルバイト領域の全ての採用を人と人との繋がりによる就職・転職でディスラプトしていきたい」とMyRefer代表取締役社長CEOの鈴木貴史氏は語った。従来の履歴書や経歴書をベースとしたマッチング手法では、個人のポテンシャルを最大限活かせず、企業も外部エージェントに依存した採用に終始しがちだという。一方、MyReferは企業に対して社員の繋がりを活用したインフラを提供するので、持続可能な採用力強化を可能としている。

MyReferは日本で最も利用されているリファラル採用サービスで、2015年9月のサービス正式リリースから30カ月で370社が利用、利用社員数は10万にもおよぶ。利用企業には2018年1月の段階でUSEN-NEXT HOLDINGSやファーストリテイリング、日産自動車などが挙げられていた。

鈴木氏は調達した資金で新機能の開発や採用、マーケティングを強化していくという。退職した社員の再雇用やアルバイトからの正社員登用も含めた社内移動を可能にし、採用側が自社のニュースなどを求職者に発信できるような仕組みを構築したいと意気込んでいた。

元サイバーエージェント西條晋一氏によるXTech Venturesが1号ファンドを組成、「ミドル層の起業をサポート」

元サイバーエージェント役員で多くの新規事業立上げを経験した西條晋一氏が代表取締役を務める独立系ベンチャーキャピタル「XTech(クロステック)Ventures」は8月6日、50億円規模の1号ファンド(XTech1号投資事業有限責任組合)を組成したと発表した。

主なLPはみずほフィナンシャルグループ、東京建物、グリー、あらた。投資ステージはシード・アーリーで、平均投資予定額は約1億円としている。同ファンドは8月3日にファーストクローズを実施、8月中にも投資を開始する予定だ。ファイナルクローズは年内を予定している。

XTech Venturesは「既存産業やIT業界のミドル層の起業をサポートし、多面的な経営支援・IPO支援を行うことで投資先企業の飛躍的成長を目指す」ことをミッションとしている。

起業というと大学生など20代の若い世代を想像しがちだが、なぜ、あえて30代後半から40代のミドル層に特化したサポートにコミットするのか。同社設立時点の2018年1月、西條氏も44歳だが、同氏はは取材に対し「30代~40代の起業家がネット業界で、あまり出てきていないから」だと答えた。

「インターネット業界が出来た2000年前後であればともかく、今は業界ができてから20年近く経っているので、それなりに経験者が育ってきていると思う。業界に5年~10年いた人の中には“自分でできる”層はかなりいると思うが、起業家が出てこない。そういう層をサポートしたいと思い、XTech Venturesを作った」(西條氏)

西條氏によれば投資家になったり、大きな会社にまた転職する人は多いが「絶対数がもっと欲しいのは“自分でやる”という人」だという。

XTech Ventures代表取締役の西條晋一氏

なぜミドル層は起業に消極的なのか。同社は「会社で出世しているからやめる機会がない」「昔のイメージだと起業はハイリスクだと思われがち」「家庭などある中で挑戦しにくい」などと分析している。そのようなイメージを払拭するために動いたのがXTech Venturesだ。

起業というと大学生など20代の若い世代を想像しがちだが、2015年に米国の時価総額1000億円以上のスタートアップを分析したTechCrunch記事によると、創業時の創業者の平均年齢は34歳。B2Cは30歳と若いが、SaaSだと35歳、コンシューマ製品/IoTは36歳、法人向けソフトは38歳となっている。

傾向として「スマホでB2Cの新しいサービスを立ち上げるのは30代。SaaSや法人向けのものはその業界にいた人たちがテックをマスターして始める」のでは、と西條氏は分析。

加えて、米国のthe National Bureau of Economic Researchが2018年4月に発表した調査によると、創業時にミドル層であった起業家のほうが若年層よりも成功を収めている傾向にあるという。西條氏はミドル層には「新規事業等経験していて経験豊富であるため、起業しても成功率が高い」「経験と人脈で大企業とのコラボがしやすい」などの強みがあると話した。

西條氏はVCのXTech Venturesと同時に兄弟会社「XTech」も設立。これは“既存産業×テクノロジー”で新規事業を創出するというコンセプトを持つ会社だ。「Startup Studio」という事業を行なっており、様々なフィールドの知識・ノウハウを持つ新規事業成功の経験者たちが、スタートアップを創出したり、成長を支援する。ミドル層にとって“アイディアの創出”も一つのハードルになっているが、そこはStartup Studioでサポートが行えると同氏は話した。

同氏は“既存産業×テクノロジー”の分野でもミドル層はその能力を大いに発揮できると語っていた。今後、日本でも勇気を持った30代~40代の起業家たちが多く出てくることを期待したい。

手書き文字認識率99.91%のAI-OCRで紙業務を効率化するAI insideが5.3億円を調達

AIを活用したOCRツールによって書類のデータ化の効率をあげるAI inside。同社は8月3日、東京大学エッジキャピタル、日本郵政キャピタル、三菱UFJキャピタルを引受先とした第三者割当増資により総額約5.3億円を調達したことを明らかにした。

今回調達した資金を基に組織体制を強化し、コアとなるテクノロジーの研究開発を進めるほか、OCRサービス以外のAIを活用したプロダクトも含め事業拡大を目指していくという。

金融法人など約120社が使うAI OCRサービス

AI insideは設立当初から文字認識のAIの開発に着手し、手書き帳票のAI OCRサービスを展開してきた。2017年リリースの「DX Suite」では、高精度かつセキュアに書類のデータ化を遂行する3つのアプリケーションを提供。これによって企業がこれまで手作業で行なっていた紙業務の大幅な効率化を支援している。

7月末時点で銀行や保険会社などの金融法人を中心に、大日本印刷やパソナ、レオパレス21など121社がアクティブユーザーとしてDX Suiteを活用。AI inside代表取締役社長CEOの渡久地択氏の話では、この半年ほどでユーザー企業数が約6倍に増えたそうだ。

利用シーンの一例をあげると金融機関での住宅ローンや口座振替依頼書のほか、注文書を含む申込書系の書類のデータ化など。従来3人でやっていた業務にDX Suiteを取り入れることで2人体制でカバーできるようになった、といったものが典型的な効果だが、一部導入企業では受発注業務を完全にオートメーションしている例もある。

渡久地氏によるとDX Suiteの特徴は軸となる文字認識AIの精度と、実際に業務に組み込む際の使い勝手の良さにあるという。

同社の文字認識AIでは漢字第一、第二水準にひらがな、カタカナを加えた約6300文字を平均99.91%の認識率で読み取る。この認識率の高さを支えているのが、同社が研究開発を進めてきた「推論アルゴリズム」「学習アルゴリズム」「データ生成アルゴリズム」という3つのアルゴリズムだ。

推論アルゴリズムにおいては通常の文字認識技術と言われるようなゾーンだけでなく、一般物体認識や音声認識で使われるアルゴリズムを応用。たとえば「自動運転でどこに人がいるのかを見分ける技術」を用いて「帳票のどこに文字が書いているか」を認識したり、長文を読み取る際に音声認識のアルゴリズムを活用したりしているのだという。

渡久地氏がポイントにあげるのが「教師データ自体をAIが作り出すデータ生成アルゴリズム」だ。普通にやっていては手書きの学習データを集めるのが大変だが、AI insideでは手書き風の画像をAIが生成する仕組みを構築。これによって膨大な教師データを用意することができ、高い文字認識率の実現にも繋がった。

これらの技術によって単に手書き文字を読めるというだけでなく、本来は読み取る必要がない文字や点線を対象外にするなど、ちょっとした機転が利くのもDX Suiteのウリだ。

業務フローに取り入れやすい仕組みを構築

また渡久地氏が「業務フローに取り入れることができなければ、実際に使ってもらえない」と話すように、DX Suiteでは認識率以外の点にもこだわっている。

OCRサービスでは誰でも使えるように、クリックだけでOCRの設定からワークフローの設定までが完結。読み取ったデータのチェックもボタンひとつでサクサク進む。

業務で使うことを考えると欠かせないセキュリティについても、すでに3つの技術特許を取得(同社では文字認識技術など現在6つの特許を取得済み)。大手金融機関が導入を検討する際にはここがひとつのポイントになるそうだ。

合わせて複数種類の帳票がある場合に、ごちゃ混ぜの状態でスキャンしても機械的に仕分けてくれるツールや、アクセス権限を管理できるツールも開発。これらを従量課金制で月額10万円から利用できるクラウド版、金融法人の導入が多いセキュリティ面に強みを持つハイブリッド版、オンプレミス版という複数の方式で提供している。

OCRツールを軸にAIで企業の課題解決を

AI insideは2015年8月の設立。代表の渡久地氏は過去にグルメサイトの売却経験や事業譲渡の経験を持つ起業家。AIにはかつてから関心を持っていたそうで、10年以上に渡って継続的に研究開発に取り組んできたという。

「生産年齢人口が今後減っていく中で、AIを活用することによって生産性を向上できる領域、特に社会に大きなインパクトをもたらす領域について検討した結果、文字認識という所に行き当たった。OCRツール自体はずっと前からあるものだが、精度や業務フローとの兼ね合いがネックになり、なかなか導入が進んでこなかった領域。規模問わず困っている企業も多く、効率化できれば嬉しい部分でもある」(渡久地氏)

AI insideにとってVCから本格的に資金調達をするのは今回が初めてとなるが、これまでもアクサ生命保険や第一生命保険、大日本印刷、レオパレス21などと資本業務提携を締結。大日本印刷とはBPO分野へのAIの導入、レオパレス21とはAI活用の賃料査定システムの開発など、OCRツールを皮切りにその他の分野でもAIを用いた取り組みを強化してきた。

今後も当面はDX Suiteを事業の軸に据え、非定型の書類への対応(現在一部のみ対応している)などさらなる機能改善を進める方針。事業の横展開についても「あまり脇道にはそれず、OCRに対してフィードバックが得られるような分野や、OCRによって取得したデータの活用がスムーズにいくような分野などが中心になる」(渡久地氏)という。