経産省、ロボットを導入しやすい「ロボットフレンドリーな環境」実現を目指す取組みで惣菜盛り付けロボの実用化開始

経産省、ロボットを導入しやすい「ロボットフレンドリーな環境」実現を目指す取組みで惣菜盛り付けロボの実用化開始

RT Corporation

経済産業省は、官民一体の取り組みとしてロボットフレンドリーな環境の構築を目指し、惣菜工場への惣菜盛り付けロボットの配備を開始したと発表しました。

経産省のリリースによると「人手不足やコロナ禍の影響により、今後の日本社会における自動化、無人化、非接触へのニーズはますます高まって」いることを背景に、2019年より「ロボットを導入しやすい“ロボットフレンドリーな環境”の実現に向けた取組」を進めてきたとのこと。

とくに食品製造の分野ではいまだ人手のかかる作業が多くを占めており、なかでも惣菜の製造現場、特にパックなどへの盛り付けの工程における人手が多く必要とされているため、これをいかに自動化するかが課題となっています。

今回の発表ではロボット実装モデル構築推進タスクフォース(TF)のメンバーである一般社団法人日本惣菜協会が指揮をとり、マックスバリュ東海、イチビキ、ヒライ、藤本食品、グルメデリカ、デリカスイト、ニッセーデリカの7社に惣菜盛付ロボットやシフト計算最適化システムなどを開発導入したことが報告されました。

Japan Ready-made Meal Association
なかでも絵面的に興味が引かれるのは、イチビキ、ヒライ、藤本食品に導入された(株)アールティの惣菜盛り付けロボット「Foodly」で、本体ボックスの上に人の上半身が生えたような、まるでケンタウロスのような風体が非常にわかりやすい未来的デザイン。この形状は単にステレオタイプなロボットを作ったからではなく、比較的小柄な人型とすることで生身の従業員が立つ製造ラインに並んで配備することができ、人と人の間に配置すればソーシャルディスタンスの目安としても有効です。

さらに人用の作業着を着せられるため本体の汚れを最小限に抑えられ、清掃の手間を省略できます。両手は複数種類のトングを付け替えて使用でき、まるで人間のように惣菜をつまんではトレイに乗せていくことが可能。髪の毛もなく喋ることもないので、惣菜への異物混入の可能性も大きく減らせるとメーカーは説明しています。

その他の盛り付けロボットやシフト管理システムの導入も、惣菜製造現場の煩雑な作業の軽減、人手不足の解消に役立つことが期待されるもので、経済産業省はこのような成果を他のTF関係者にも共有し、中小企業を含めた多くの惣菜製造現場にも導入可能な低価格な盛付ロボットの開発を進めていくと述べています。

(Source:METI(経済産業省)Japan Ready-made Meal Association。Coverage:RT CorporationEngadget日本版より転載)

HarvestXが1.5億円調達、植物工場での実証実験に向け開発加速―実証結果踏まえた製品バージョンのベータリリースも計画

HarvestXが1.5億円調達、植物工場での実証実験に向け開発加速―実証結果踏まえた製品バージョンのベータリリースも計画

農業用ロボットを手がけるHarvestXは3月30日、総額1億5000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、ANRI 4号投資事業有限責任組合(ANRI)、オープンイノベーション推進 1号投資事業有限責任組合(東京大学協創プラットフォーム。東大IPC)、DEEPCORE TOKYO 2号投資事業有限責任組合(ディープコア)。

レタスなどの葉物類の植物工場が展開を広げる一方、イチゴのような果実類の生産にはハチ・ハエを媒介とした虫媒受粉または人の手による授粉が必要で、収量の不安定さ、高コスト、ハチの短いサイクルでの使い捨てが課題となっているという。そこでHarvestXは、ハチに代わるロボットを活用した授粉技術の開発に取り組み、世界で初めてロボットによるイチゴの授粉の実証に成功した。社内の研究施設「HarvestX Lab」内で実証試験機「XV-1」「XV-2」による授粉の実証実験を実施しており、ハチや人間を超える精度での授粉を行えるそうだ。

また現在は、HarvestX Labに植物工場と同等の栽培設備を導入し、植物工場事業会社での授粉ロボットおよびソフトウェアシステムの実証実験に向けたプロトタイプの開発を進めているという。

調達した資金により、パートナーである植物工場事業会社との実証実験に向けたハードウェア・ソフトウェアの開発、および実際の植物工場での実証実験を通じてオペレーションの検証やさらなる授粉精度の向上を進める。さらに、その実証実験の結果を踏まえた製品バージョンのベータリリースを計画している。

さらに、日本初の取り組みとして徳山工業高等専門学校提携。高専内に事業所を開設し、授粉・収穫用ロボットの共同研究を行う。

サシの入った和牛肉など培養肉の「3Dバイオプリント技術の社会実装」に向け大阪大学・島津製作所・シグマクシスが提携

3Dバイオプリントを応用したテーラーメイド培養肉自動生産装置のイメージ大阪大学大学院工学研究科島津製作所シグマクシスは3月28日、「3Dバイオプリント技術の社会実装」に向けた協業に関する契約を締結した。またこれに先立ち、大阪大学大学院工学研究科と島津製作所は、「3Dバイオプリントを応用したテーラーメイド培養肉の自動生産装置の開発」に関する共同研究契約も締結したと発表した。環境・食糧問題の解決、健康、創薬、医療の進化に貢献するという。

社会実装を目指す技術は、大阪大学大学院工学研究科の松崎典弥教授が開発した筋肉組織構造を自由自在に製作できるというものだ。食糧分野では「筋・脂肪・血管の配置が制御された培養肉」、医療分野では「ヒトの細胞による運動器や内臓モデル」の3Dプリントを可能にする。現在、世界で研究されている培養肉の多くは、筋繊維のみのミンチ構造のものだが、この3Dプリント技術を使えば、美しい「サシ」の入った和牛肉を再現したり、脂肪や筋肉の比率を調整したりもできるようになる。またこれを再生医療に応用することも可能だ。

3者が協業して行うのは、「3Dバイオプリント技術の開発推進に向けた他企業との共同研究」「周辺技術・ノウハウを有する企業・団体との連携」「食肉サプライチェーンを構成する企業・団体との連携」「3Dバイオプリント技術に関する社会への情報発信」となっている。

その中で大阪大学大学院工学研究科は、3Dバイオプリントを含む組織工学技術の開発を担当する。具体的には、より複雑な組織や臓器構造の再構築、血管を通じた栄養や酸素の循環による臓器モデルの長期培養のための基礎技術の開発としている。

島津製作所は、3Dバイオプリント技術による培養肉生産の自動化と、培養肉開発に関わる分析計測技術の提供を行う。具体的には、筋肉、脂肪、血管の繊維を「ステーキ様に束ねる工程を自動化する専用装置の開発」であり、培養肉の味や食感・風味・かみ応えなど「おいしさ」に関わる項目、栄養分などの含有量といった「機能性」の分析を行うソリューション開発する。

ビジネスコンサルティング企業のシグマクシスは、この事業のマネージメントを担当する。具体的には、この技術の活躍テーマごとの取り組み方針の策定、テーマ別に必要となる周辺技術やノウハウを有する企業や団体との連携、各取り組みにおける体制作り、進捗管理、課題管理などだ。

3Dバイオプリントを応用したテーラーメイド培養肉自動生産装置のイメージ

3Dバイオプリントを応用したテーラーメイド培養肉自動生産装置のイメージ

食糧問題、環境問題の解決に加え、ヒトの細胞を使った再生医療や創薬への応用が期待されるこの技術を、「多様な企業とともに活用することで社会への実装を加速」させると、3者は話している。

レストランなどの食品調理業向け在庫管理マーケットプレイスを提供するブラジルのCayena

ラテンアメリカでは、商店の品揃えは楽な仕事ではない。発注は今でも、紙の伝票や電話で行われることが多く、お店の主人が卸屋まで車を運転して品物を手に入れることもある。

Cayenaを創業したGabriel Sendacz(ガブリエル・センダツ)氏とPedro Carvalho(ペドロ・カルヴァーリョ)氏、そしてRaymond Shayo(レイモンド・シャヨ)氏は、材料の確保にテクノロジーを利用すれば、彼らの母国であるブラジルやその他の地域で、レストランやバー、ベーカリー、ホテル、そしてダークキッチンなどの食品調理調製業がもっと楽になると考えた。

「ラテンアメリカのB2Bは巨大な市場ですが、その需要と供給は細分化しています。私たちの顧客も、約90%が中小の家族経営の独立店です。供給の側も、何千もの流通業者が、それぞれいろいろな品物を扱っていますが、マーケットシェアが1%に満たないところばかりです」とシャヨ氏はいう。

対照的に米国には、SyscoやU.S. Foods、Gordon Food Serviceのような大きなフードサービス企業がそれぞれおよそ10%のマーケットシェアを握り、食品から洗剤に至るまでのあらゆるもののワンストップショップを提供している。

Cayenaの共同創業者。左からペドロ・カルヴァーリョ氏、ガブリエル・センダツ氏、レイモンド・シャヨ氏(画像クレジット:Cayena)

そこで、シャヨ氏によれば、いくつかの問題が生じる。まず、ベンダー20社ぐらいで同じ品目の価格が最大で40〜50%も違う。クレジットカードがレストランに払うために30日かかることもあるが、一方レストランは自分の原料等の注文に前金を支払うため、運転資本の問題が生じ、特にレストランは材料費が最大のコストなので資金繰りが苦しくなる。

つまり、ラテンアメリカではレストランが慢性的に経営難を抱えることになる。そこで同社はB2Bのマーケットプレイスを構築し、年商1000億ドル(約11兆5400億円)といわれるラテンアメリカの食品卸業界を狙った。それによりユーザーは原材料などを一度に複数のサプライヤーからまとめて仕入れることができ、翌日に配達してもらえる。また、後払い販売(BNPL)といった新たな金融サービスを提供することもできる。

ユーザーは必要な品目の卸価格を複数の卸店にわたって比較でき、その品目の現在の相場を知ることができる。Cayenaのアルゴリズムは、サプライヤーの在庫品目と価格、ユーザーの予算を比較対照して、ベストマッチをユーザーにアナウンスする。配達には直送方式を利用して、注文が成立したら、そのオーダーを顧客に配達するようサプライヤーに通知が届く。

このマーケットプレイスを立ち上げた2020年以降は、顧客数が1年で10倍に増え、レストランの原材料の調達が困難になるにともない1回の購入単位額は4倍になり、Cayenaでの顧客の平均購入回数は1カ月で5回になった。

この急速な成長で資金が必要になった同社は、2021年後期にPicus Capitalがリードする350万ドル(約4億円)のラウンドを調達し、それが、その前にCanaryのリードで調達した55万ドル(約6300万円)に追加されることになった。

事業は順調で9月のシードラウンドのすぐ後にCayenaはそれまでの倍に成長し、2カ月で倍増というペースが続いたため、年商1億レアル(約22億6000万円)のマイルストーンに達した。同社の現在の商圏は、サンパウロ州の50都市となる。

こうした加速度的な成長が投資家の関心を集め、同社はVine Venturesが主導し、MSA Capital、Picus Capital、Canaan Partners、Clocktower Ventures、FJ Labs、Femsa Ventures、Gilgamesh、Astella、EndeavorおよびGraoVCの参加も得て、1750万ドル(約22億2000万円)のシリーズA投資を先取りすることになった。これにより、Cayenaは総額2100万ドル(約24億2000万円)強の資金を調達したことになる。

「今のところ極めてホットな市場ですが、世界中の投資家が成長企業を探している現状ではそれは良いことです。数年前、私たちは比較の対象にもなりませんでしたが、今ではどこが新しいアプローチと戦略で成長しているのか、誰の目にも明らかです」とシャヨ氏はいう。

Cayenaのビジネスモデルでは、倉庫やトラックや流通への投資はなくテクノロジーのみであるため、資金の多くが雇用に使われる。シャヨ氏の予想では年内に社員数は倍増して60名になるという。また、プロダクトとテクノロジーにもフォーカスしており、新たな金融プロダクトを作り、サプライヤーの地理的範囲も広げたいとのこと。

また、創業者たちはラテンアメリカ全体が商機だと捉えており、トラックなど1台も所有することなく次のステップでまず1〜3年後にブラジルで最大のフードサービスサプライヤーに、その次のステップでラテンアメリカ全体への拡張を考えているという。

画像クレジット:Cayena

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

世界最大級の食品会社が新製品を開発するとき、まず相談するAIデータ分析「Tastewise」

Tastewiseの共同設立者アロン・チェン氏とエイエル・ガオン氏(画像クレジット:Hadar Berl)

食品を市場に出す適切な時期を調査することは、従来はアンケートやフォーカスグループを通じて行われてきたが、Tastewise(テイストワイズ)はこれをテクノロジーでより良く実現できると考えている。

イスラエルに拠点を置く同社は、人工知能(AI)によるデータ分析を開発し、食品ブランドが次のヘルシー、持続可能でおいしい製品について、製品開発、マーケティング、小売販売に関するよりスマートな意思決定を行えるよう支援している。また、世界中の100万以上のレストランをモニタリングし、食品ブランドとその食品を試したがっている人々を結びつけている。

Tastewiseは過去5年間で、Nestlé(ネスレ)、PepsiCo(ペプシコ)、Kraft Heinz(クラフトハインツ)、Campbell’s(キャンベル)、JustEgg(ジャストエッグ)など、トップクラスの食品・飲料メーカーや新進気鋭のフードテック系スタートアップからなる顧客ベースを持つまでに成長した。

そしてこのたび同社は、新たにシリーズAで1700万ドル(約19億6400万円)の資金を確保した。Disruptiveがこのラウンドをリードし、既存投資家であるPeakBridgeとPICO Venture Partnersに加わった。今回の資金調達により、Tastewiseの累計調達額は2150万ドル(約24億8400万円)に達した。

Tastewiseの共同創業者兼CEOであるAlon Chen(アロン・チェン)氏は、12歳のときから独学でコードを書き始めたエンジニアで、5年前に母親のシャバット(安息日)のディナーから会社のアイデアを得た後、Google(グーグル)でのキャリアを捨てたという。

「母はすばらしいシャバットディナーを作るのですが、私たち家族にその週の食事のニーズ(好みやアレルギー、栄養ニーズなど)を聞いてくるようになったのです」とチェン氏。「共同創業者のEyal Gaon(エイエル・ガオン)とともに、消費者の食生活のニーズが以前よりとても早く変化していることに気づかされました。21世紀になっても、毎年発売される3万個の新商品のうち、9割が失敗しているのです。画一的なアプローチは、もはや不可能なのです」。

同氏は、最も革新的なフードテック企業でさえ、いまだに時代遅れの小売データに頼って商品戦略を考えており、正しいデータから始めなければ、間違った答えが返ってくることを説明した。

そこでチェン氏とガオン氏は、食品・飲料企業がより健康的な食品、新しいフレーバー、植物由来のバリエーションなどで10兆ドル(約1155兆円)規模の業界をディスラプトし、新製品の販売と採用を加速させる方法でそれを実現できるよう、データ専用のプラットフォーム構築に乗り出した。

2017年にスタートして以来、2020年と2021年に増資を行ったTastewiseは無駄のない運営を行っているとチェン氏はいう。同社は2020年から2021年にかけて売上を3倍に拡大し、現在は米国やイギリスだけでなく、インド、オーストラリア、ドイツ、カナダ、フランスへとデータと人材の拡充を進めている。

米国とイスラエルではすでに従業員数を2倍に増やし、食品・飲料ブランド上位100社のうち15%近くと、数十社のフードテックスタートアップと協業しているという。

「Tastewiseを始めた当初、フードテックはまだ存在しておらず、食品・飲料の予測分析について投資家と話を始めたとき、これが未来だと話していました」とチェン氏は語る。「私たちは、世界がデータを取得し、食品業界を改善し、よりヘルシーでおいしいものを作る手助けをしなければなりません」。

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(文:Christine Hall、翻訳:Den Nakano)

環境に応じ植物の根の長さを変化させる遺伝子制御因子を特定、植物工場や都市型農業の生産性向上への貢献に期待

環境ストレスに応じ植物の根の長さを変化させる遺伝子制御因子を特定、植物工場や都市型農業の生産性向上への貢献に期待

根の伸長が阻害されたbz1728株とそれを回復したnobiro6株、野生株の表現型。転写因子bZIP17とbZIP28を同時に機能欠損させた変異株bz1728(中央)では著しく根の伸長が阻害されるが、bz1728株の変異株の1つnobiro6(右)は、根の伸長成長が回復している

理化学研究所(理研)は2月9日、環境ストレスに応じて根の長さを調節する植物の遺伝子制御因子を発見したと発表した。この成果は、根菜類の品種改良、植物工場や都市型農業に向けた作物の生産性向上への貢献が期待される。

地中に根を張る植物は、高温、乾燥、病害などの環境ストレスに対処する応答機構を発達させてきた。だがストレスへの耐性を高めると、植物の成長が抑制されてしまうという反面がある。その成長抑制の分子メカニズムは明らかにされていない。

そこで、理化学研究所(キム・ジュンシク氏、篠崎一雄氏)、大阪大学大学院理学研究科生物科学専攻(坂本勇貴助教)、東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻(松永幸大教授)、東京農業大学農生命科学研究所(篠崎和子教授)らによる共同研究グループは、植物の根の成長を抑制する現象を分子遺伝学的に解明する研究を行ってきた。研究グループが目を付けたのは、細胞の工場とも呼ばれる小胞体のストレスを受けたときの応答「小胞体ストレス応答」(UPR。Unfolded Protein Response)だった。これは、外部ストレスを細胞内シグナルに変えて、遺伝子発現抑制を伝える細胞内ストレスセンサーとして働いている。

研究グループは、分子遺伝学のモデル種であるシロイヌナズナの、UPRの制御に関わる3つの転写因子(遺伝子の発現を制御するDNAタンパク質)のうちの2つに機能欠損させた変異株「bz1728」では、野生種に比べて根の伸びが10%程度阻害されることを解明していたが、根の伸長阻害のある他の変異株との関連性が乏しいことなどから、このbz1728株の伸長阻害の原因は、新しい遺伝因子にあると考えた。

そこで、bz1728株のゲノム上にランダムな突然変異を誘導した集団を作り、そこから再び根が伸びるようになった変異株を選び出し「nobiro」(ノビロー)と名付けた。そして、そのうちの1つ「nobiro6」株の分子メカニズムを解明するための分子遺伝学解析を行った。そこから浮かび上がったのが、基本転写因子複合体の構成因子の1つである「TAF12b」という遺伝子だ。TAF12bを含む3つの遺伝子(bzip17、bzip28、taf12b)の機能をゲノム編集で欠損させた変異株を作ったところ、根の伸びがnobiro6と同程度に回復した。また、TAF12bのみを欠損させた変異株では、人為的誘導された小胞体ストレスによる根の伸長抑制応答が鈍くなり、UPRの活性も低下した。これらのことから、TAF12bがUPRによる根の伸長抑制に影響していることが明らかになった。

研究グループは「回復した遺伝子群の多くがストレス耐性獲得に機能することから、TAF12bは植物が感知した外部ストレスのシグナルを根の細胞の成長応答に結び付ける重要な遺伝子制御因子であると考えられます」という。また、SDGsの「2.飢餓をゼロに」や「13.気候変動に具体的な対策を」に貢献することが期待されるとも話している。

植物性由来のミールキットを配達するSplendid Spoonが約13.8億のシリーズB資金を獲得

消費者がより体に良い食品を求めるようになり、食事宅配サービス会社に多くのベンチャーキャピタルが流入している。

オンラインミールキットデリバリー市場は、2022年末までに70億ドル(約8000億円)、そして今後5年間で3倍の産業に成長するといわれている。そのため、ベンチャーキャピタルが注目し、最近、自宅料理用の食材を配達するShef(シェフ)WoodSpoon(ウッドスプーン)、ベビーフード分野のLittle Spoon(リトルスプーン)やSerenity Kids(セレニティ・キッズ)などの資金投入につながった。

このカテゴリーにいち早く飛び込んだ企業の1つが、植物性のスープやボウル、スムージーに特化した食事宅配サービスのSplendid Spoon(スプレンディッド・スプーン)である。Nicole Centeno(ニコル・センテノ)氏が同社を設立したのは2013年。当時、彼女は忙しい母親であり、厳しい仕事に就いていたため、思うように健康的な食生活を送ることができなかったという。

彼女は料理学校に通い始め、食事の準備や調理を必要としない、ヴィーガン、非遺伝子組み換え、グルテンフリーのオーガニックスープとスムージーのラインを作った。ブルックリンのマーケットで販売した後、彼女はFresh Direct(フレッシュ・ダイレクト)に製品を供給するために卸売り業者と提携し、2015年に全国展開した。

それ以来、センテノ氏と彼女のチームは消費者への直販型のサブスクリプションモデルを構築し、2018年には同社の初期の愛用者の1人であったElise Densborn(エリス・デンスボーン)を共同CEOとして採用した。

Splendid Spoonの共同CEOのNicole Centeno氏とElise Densborn氏(画像クレジット:Splendid Spoon)

「私たちはこの3年間、私たちが『筋肉』もしくは『フードテックビジネスの赤身肉』と呼ぶもの、つまり食品そのものに事業を集中してきました。そして、私たちの食品ができるだけすばらしい味になるために必要なものはすべて揃えるようにし、体にも良い新鮮な食品という約束を実現してきました」と、センテノ氏は付け加えた。

現在、同社は米国本土の全州に配送し、50以上の植物由来の食材を揃え、顧客がサブスクリプションに申し込まずにオンデマンドで買い物できる機能を備えている。同社は2020年から成長率を2倍に高め、現在までに2万人を超える登録者を抱えている。

そして最近、Splendid Spoonは1200万ドル(約13億8700万円)のシリーズB資金を確保した。このラウンドはNicoya(ニコヤ)が主導し、Danone Manifesto Ventures(ダノン・マニフェスト・ベンチャーズ)、Torch Capital(トーチ・キャピタル)、Reddit(レディット)共同創業者のAlexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏、Rent the Runway(レント・ザ・ランウェイ)共同創業者のJennifer Fleiss(ジェニファー・フライス)氏、Tasty Bite(テイスティ・バイト)の創業者Ashok(アショック・ヴァスデヴァン)氏とMeera Vasudevan(ミーラ・ヴァスデヴァン)氏が参加した。Torchとオハニアン氏は、以前のラウンドでも投資している。センテノ氏は、2018年の非公開のシリーズAを含む、同社の総資金額を明らかにしなかった。

自身の健康のコントロールを取り戻したいという消費者行動の変化と、そのための簡単な方法への需要が、Splendid Spoonの最新の資本注入の原動力の2つだった。

「健康は、私たち消費者の原動力です」とセンテノ氏はいう。「おそらくあなたも聞いたことがあるであろう、怖い統計結果が出ています。例えば、CDCの調査によると、米国人の10人に1人しか野菜を摂取していないことが明らかになりました。現在、85%の米国人がより健康的な食生活を送ろうと努力しています。パンデミックによって、ダイレクト・ツー・コンシューマーの試みが加速され、人々は、『あれ、この食事を家に届けるのはもっと簡単じゃないか』と思えるようになり、その答えはイエスだったのです」と述べる。

センテノ氏とデンスボーン氏は、今回の資金調達で、同社の主力製品群を拡大するとともに、新製品やカテゴリー、食事プログラムを追加する予定だ。Splendid Spoonは、創業以来、デンスボーン氏が「小さいけれども強力なチーム」と呼ぶチームで活動してきたため、採用も優先事項となるだろう。

現在34人で、2021年初頭の15人から増えている。小さなチームが実際にどれほど強大かを示すために、近年Splendid Spoonに投資した1ドル(約115円)に対して、同社は15ドル(約1730円)の収益を上げたと、デンスボーン氏は付け加えた。全体として、前年比平均100%の成長を続けているのだ。

同社が次に取り組むべきことは、チームの強化に加え、サプリメントや他の食品、消費者直販以外のさまざまなチャネルでの試用機会について、戦略策定と市場参入の戦略を検討することだ。

「私たちはまだ表層しか見ていないと思っています。今後12カ月の間に、多くの創造が起こるでしょう」とセンテノ氏は語る。

画像クレジット:Splendid Spoon

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

植物性由来のミールキットを配達するSplendid Spoonが約13.8億のシリーズB資金を獲得

消費者がより体に良い食品を求めるようになり、食事宅配サービス会社に多くのベンチャーキャピタルが流入している。

オンラインミールキットデリバリー市場は、2022年末までに70億ドル(約8000億円)、そして今後5年間で3倍の産業に成長するといわれている。そのため、ベンチャーキャピタルが注目し、最近、自宅料理用の食材を配達するShef(シェフ)WoodSpoon(ウッドスプーン)、ベビーフード分野のLittle Spoon(リトルスプーン)やSerenity Kids(セレニティ・キッズ)などの資金投入につながった。

このカテゴリーにいち早く飛び込んだ企業の1つが、植物性のスープやボウル、スムージーに特化した食事宅配サービスのSplendid Spoon(スプレンディッド・スプーン)である。Nicole Centeno(ニコル・センテノ)氏が同社を設立したのは2013年。当時、彼女は忙しい母親であり、厳しい仕事に就いていたため、思うように健康的な食生活を送ることができなかったという。

彼女は料理学校に通い始め、食事の準備や調理を必要としない、ヴィーガン、非遺伝子組み換え、グルテンフリーのオーガニックスープとスムージーのラインを作った。ブルックリンのマーケットで販売した後、彼女はFresh Direct(フレッシュ・ダイレクト)に製品を供給するために卸売り業者と提携し、2015年に全国展開した。

それ以来、センテノ氏と彼女のチームは消費者への直販型のサブスクリプションモデルを構築し、2018年には同社の初期の愛用者の1人であったElise Densborn(エリス・デンスボーン)を共同CEOとして採用した。

Splendid Spoonの共同CEOのNicole Centeno氏とElise Densborn氏(画像クレジット:Splendid Spoon)

「私たちはこの3年間、私たちが『筋肉』もしくは『フードテックビジネスの赤身肉』と呼ぶもの、つまり食品そのものに事業を集中してきました。そして、私たちの食品ができるだけすばらしい味になるために必要なものはすべて揃えるようにし、体にも良い新鮮な食品という約束を実現してきました」と、センテノ氏は付け加えた。

現在、同社は米国本土の全州に配送し、50以上の植物由来の食材を揃え、顧客がサブスクリプションに申し込まずにオンデマンドで買い物できる機能を備えている。同社は2020年から成長率を2倍に高め、現在までに2万人を超える登録者を抱えている。

そして最近、Splendid Spoonは1200万ドル(約13億8700万円)のシリーズB資金を確保した。このラウンドはNicoya(ニコヤ)が主導し、Danone Manifesto Ventures(ダノン・マニフェスト・ベンチャーズ)、Torch Capital(トーチ・キャピタル)、Reddit(レディット)共同創業者のAlexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏、Rent the Runway(レント・ザ・ランウェイ)共同創業者のJennifer Fleiss(ジェニファー・フライス)氏、Tasty Bite(テイスティ・バイト)の創業者Ashok(アショック・ヴァスデヴァン)氏とMeera Vasudevan(ミーラ・ヴァスデヴァン)氏が参加した。Torchとオハニアン氏は、以前のラウンドでも投資している。センテノ氏は、2018年の非公開のシリーズAを含む、同社の総資金額を明らかにしなかった。

自身の健康のコントロールを取り戻したいという消費者行動の変化と、そのための簡単な方法への需要が、Splendid Spoonの最新の資本注入の原動力の2つだった。

「健康は、私たち消費者の原動力です」とセンテノ氏はいう。「おそらくあなたも聞いたことがあるであろう、怖い統計結果が出ています。例えば、CDCの調査によると、米国人の10人に1人しか野菜を摂取していないことが明らかになりました。現在、85%の米国人がより健康的な食生活を送ろうと努力しています。パンデミックによって、ダイレクト・ツー・コンシューマーの試みが加速され、人々は、『あれ、この食事を家に届けるのはもっと簡単じゃないか』と思えるようになり、その答えはイエスだったのです」と述べる。

センテノ氏とデンスボーン氏は、今回の資金調達で、同社の主力製品群を拡大するとともに、新製品やカテゴリー、食事プログラムを追加する予定だ。Splendid Spoonは、創業以来、デンスボーン氏が「小さいけれども強力なチーム」と呼ぶチームで活動してきたため、採用も優先事項となるだろう。

現在34人で、2021年初頭の15人から増えている。小さなチームが実際にどれほど強大かを示すために、近年Splendid Spoonに投資した1ドル(約115円)に対して、同社は15ドル(約1730円)の収益を上げたと、デンスボーン氏は付け加えた。全体として、前年比平均100%の成長を続けているのだ。

同社が次に取り組むべきことは、チームの強化に加え、サプリメントや他の食品、消費者直販以外のさまざまなチャネルでの試用機会について、戦略策定と市場参入の戦略を検討することだ。

「私たちはまだ表層しか見ていないと思っています。今後12カ月の間に、多くの創造が起こるでしょう」とセンテノ氏は語る。

画像クレジット:Splendid Spoon

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

不必要なプラスチックを排除したより環境に優しい食料品配送を目指すZero Grocery

Zero Grocery(ゼロ・グロッサリー)は、食料品を2時間以内に、地球を傷つけない方法で届けることを使命としている。

プラスチックを使わない食料品、家庭用品、パーソナルケア用品の配送を行うこのスタートアップ企業は、2年前、廃棄物の削減に焦点を当てたビジネスに対するベンチャーキャピタルの関心について取り上げた企業の1つだ。当時、2019年に起業した創業者兼CEOのZuleyka Strasner(ズレイカ・ストラスナー)氏は、470万ドル(約5億3900万円)の資金を調達したばかりだった。

米国時間2月3日、同社はSway Ventures(スウェイ・ベンチャーズ)が主導する新たなシード資金としてさらに1180万ドル(約13億5500万円)を調達し、Zero Groceryがこれまでに1650万ドル(約18億9400万円)を調達したことを発表した。これは、同社が環境に優しい無料配達を2時間以内に提供する持続可能なオンライン食料品店を立ち上げたことにともなうものだ。

ストラスナー氏はTechCrunchにメールで、前回の資金注入以来、Zero Groceryは「信じられないような旅をしてきました」と、語った。同社はチームの規模を倍増し、ロサンゼルスやベイエリア市場など、サービスを提供する市場の数も倍増させた。

さらに、顧客数も2倍以上に増え、平均注文額と継続率も伸びた。その結果、顧客生涯価値の向上につながり、2021年にはペットボトル3万5000本分、食料品のビニール袋6万枚分が埋立地に捨てられるのを防いだという。

「2022年1月からは、サービスを全面的に刷新し、手数料や会員登録なしで当日2時間以内の配達を実現し、顧客獲得が完全に軌道に乗りました」と、ストラスナー氏は付け加えた。「2022年に成長に投資したドルの回収率は、2021年の平均の3倍になっています」。

画像クレジット:Zero Grocery

資金調達の面ではすばやい成功を収めたが、同社の焦点はより全体的で持続可能なモデルであるとストラスナー氏はいう。これは、コンセプトをすばやく実証し、その後、規模を拡大することで、より少ない労力でより多くのことを可能にするというアプローチによるものだ。

新資本は、Zero Groceryがより多くの地域でサービスを提供するために、新しいハブを開設できるよう、地理的拡大に充てられる予定だ。さらに、規模を拡大するために、新規顧客の獲得にも投資する。会社が大きくなればなるほど、運営上の効率は上がり、ベンダーとの関係も強化され、持続可能な社会の実現に貢献できるとストラスナー氏は言った。

ストラスナー氏は、同社の成功の多くは、市場機会に起因すると考えている。2020年、2021年は、デリバリーサービスが大きく伸びた。実際、それ以前は、米国の食料品販売に占めるデリバリーの割合は10%弱だった。その時、世界的なパンデミックによってニーズが急増したが、その多くは満たされていなかったとストラスナーはいう。

「速く、便利で、手頃な価格で、高品質で、持続可能な、ゲームチェンジャー的なサービスは、より多くの次元でお客様に価値を提供し、同時に複数のニーズを満たします」と、彼女は付け加えた。「このことは、競合他社から多くの顧客を獲得することに容易につながりました」。

オンライン食料品専門店Mercatus(メルカタス)によると、需要により、2022年の食料品売上高1兆1240億ドル(約129兆円840億円)のうちオンライン比率は11.1%に成長し、2026年には1兆2500億ドル(約143兆円5887億円)の20.5%となる見込みと予測されている。

現在、プラスチックはわずか9%しかリサイクルされておらず、その多くが埋め立て地や海へと流れている。つまり、プラスチックのゴミを減らすために個人が行う小さな変化でも、積み重なれば環境に大きなプラスの影響を与えることができる、とストラスナー氏はいう。

「このパンデミックを通して、人々がどのような生活を送りたいか、そして今日の決断が明日にどのように影響するかをより意識するようになったことが大きな特徴です」と彼女は付け加えた。「つまり、オーガニックで、クリーンで、環境にやさしい製品を求めているということであり、Zero Groceryはそれを提供することができるのです」。

画像クレジット:Zero Grocery / Zuleyka Strasner, Zero Grocery founder and CEO

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(文:Christine Hall、翻訳:Yuta Kaminishi)

おいしくてハードワークにも最適な次ぎの健康食品を開発、提供するPurely Elizabeth

Purely Elizabeth創設者兼CEOエリザベス・スタイン氏(画像クレジット:Purely Elizabeth)

Purely Elizabethの創業者Elizabeth Stein(エリザベス・スタイン)氏はこれまでの12年のキャリアを歩んできたが、同社の次の段階に進むための計画からするとそのキャリアはまだ始まったばかりのものだ。

ホリスティック栄養学のカウンセラーとしてキャリアをスタートさせたスタイン氏は、当時はまだ現在ほど普及していなかったスーパーフード食材や薬としての食品について学んだ後、2009年に会社を設立した。

「多くの人を助ける製品の市場にチャンスがあると感じました」と彼女はいう。「口に入れるものは、私たちにとって最も重要なものの1つです」。

CEOのスタイン氏は、顧客と仕事をするうちに、グルテンフリーなどの特殊な食品のニーズを感じ、サイドプロジェクトとして始めたブルーベリーマフィンミックスがPurely Elizabethのきっかけとなって、グラノーラに移行する前の最初の製品となり、現在に至っている。

その後、パンケーキ / ワッフルミックスやオートミールも加わり、同社は朝食カテゴリーのトップブランドの1つとなった。製品は非遺伝子組み換えで、古代穀物、ココナッツシュガー、プロバイオティクス(善玉菌を多く含む食品)、MCTオイルなどの原材料を含んでいる。

世界の健康食品の市場は2020年に7331億ドル(約84兆2820億円)ともいわれ、2026年には1兆ドル(約114兆9660億円)に達するという。同社も、ますます混雑してきたこの市場の一員だ。この分野に投資を惹きつける要素は、消費者の関心だ。先に報じたスムージーのKenckoはシリーズAで1000万ドル(約11億5000万円)を調達し、栄養ドリンクのAthletic Greensは12億ドル(約1380億円)の評価額で1億1500万ドル(約132億2000万円)の資金調達を発表した。

スタイン氏によると、市場は彼女がPurely Elizabethを立ち上げたころと比べて大きく変化している。彼女がトレードショーなどに初めて出た2010年には、原料のチアシードやココナッツシュガー、ココナッツオイルなどについて小売企業にいちいち説明しなければならなかった。しかし現在では、消費者の意識と知識が変化、増えたことで、そのような原料は一般の食料品店でも販売されるようになった。健康に良いという知識のためだけでなく、実際においしいからだ。

過去5年間同社は前年比成長率55%を維持し、2021年には1案5000社の小売業者に卸している。彼女によると、2018年には8000店だった。

同社の最初の資金調達は2016年の300万ドル(約3億4000万円)だったが、今回はSEMCAPの食品栄養部門がリードする5000万ドル(約57億5000万円)のシリーズBを完了した。実はこの部門は、この投資でもって立ち上がった部門だ。参加した投資家はSwander Pace CapitalとSEMCAPのパートナーであるFresh Del Monte(フレッシュ・デルモンテ)だ。同社の総調達額は、5300万ドル(約60億9000万円)となった。

スタイン氏は今回の資金で、社員数を現在の30名から2022年内に40名に増やす予定だ。また新製品によるイノベーションにも取り組み、特に2022年はオートミールを使った新しいカテゴリーを開発するという。また、デジタルマーケティングによりブランドイメージの向上にも取り組む。

「すばらしい成長を重ねてきましたが、現在、私たちは曲がり角にいると思います。次の成長の段階を探さなければなりません。それを加速するためには資本とパートナーが必要で、ブランドをさらに進化させて、より多くの消費者にとって楽しい要素を追加し、今後の進化を達成し、次のレベルに進まなければならなりません」とスタイン氏はいう。

以前はGeneral Millsに在籍し、現在はSEMCAPの食品栄養部門のマネージングパートナーであるJohn Haugen(ジョン・ホーゲン)氏は、General Millsのベンチャー部門301 Inc.の創業者でマネージングディレクターだったときにPurely Elizabethの取締役になり、同社への最初の投資をリードした。

そのホーゲン氏によると、スタイン氏の見解と同じく、現在の消費者はハードワークのための食料を求めているが、これからは、まずさを我慢してまで良質な原料を選ぶようなことはしない、という。

「Elizabethには、この新しい最先端のトレンド合わせて、どのような他社製品よりもおいしい健康食品を市場に導入するためのノウハウがあります」とホーゲン氏はいう。

画像クレジット:Purely Elizabeth/Elizabeth Stein, Purely Elizabethの創業者でCEO

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Starship Technologiesが自律型配送ロボットの拡充に向けEUの投資部門から約64.3億円獲得

Starship Technologies(スターシップ・テクノロジーズ)は、自律型配送ロボット(都市を自動運転する小さなカボチャのような箱型の配送車)の世界では大物の1社である。新型コロナウイルス(COVID-19)の間、消費者がウイルスの拡散を最小限に抑えるために自宅待機をしたり、あるいは外出が消極的だった時に、店舗やレストランと消費者の間で食品やその他の商品を配送するための(無人の)力を提供し、絶好調だった。現在、同社はさらなる成長のために、欧州の支持とともにいくつかの資金を手にしている。

このスタートアップは、欧州連合の資金調達部門である欧州投資銀行(EIB)から5000万ユーロ(約64億3900万円)の資金を受け取った。Starship Technologiesは、これを「準株式発行枠」と表現しており、ベンチャーローンが混じっていることを意味する。

今回の投資による評価額は公表していないが、Alastair Westgarth(アラステア・ウェストガース)氏は、これで投資家からさらに資金を調達することを否定するものではないとしている。Starshipは2019年にMorpheus Ventures(モーフィアス・ベンチャー)主導で4000万ドル(約45億6500万円)のシリーズAを調達し、Pitchbook(ピッチブック)のデータによると2021年1月にも、戦略的支援者で日本の大手電機メーカーの投資部門であるTDK Ventures(TDKベンチャーズ)とGoodyear Ventures(グッドイヤー・ベンチャーズ)を出資者に迎え、さらに1700万ドル(約19億4000万円)を調達している。現在、250万台以上の商用配送を行い(2021年10月の200万台から増加)、世界で300万マイル(約482万km)以上を走行している。ウェストガース氏によると、同社の車両は平均して1日に1万件の配送を行っているという。

サンフランシスコを拠点とする同社は当初、2017年に米国の配送会社であるDoordash(ドアダッシュ)とPostmates(ポストメイツ、現在はUberの一部)とパイロット運用を行い、その後、大学キャンパス環境内での導入を行って、その名を轟かせた。同じロボット配送のスタートアップであるMarble(マーブル)は、その頃、市の規制当局と対立し、皮肉にもその影響から、Starshipはまだホームの都市でローンチしていない。(Marbleは現在、Caterpillarの傘下に入っている)。

Marbleはヨーロッパでも大きな存在感を示しており、エストニアのタリンに主要な研究開発拠点を置き(そのためEUから財政的な支持を受けている)、英国のミルトン・キーンズにて初の本格的な都市展開を開始した。サービスの価格は都市や場所によって異なるが、例えばミルトン・キーンズにある食料品チェーン店Coop(コープ)に提供するサービスは、一律99ペンス(約150円)で設定されている。

この2年間、 Starshipの名前は、配達員の数が減り、人々が移動を控え、人との接触が少なくなった時代に、企業が注文した食品を顧客に届けるための配達パートナーとして、よく耳にするようになった。ミルトン・キーンズのサービスだけでも数十万件の配達があり、Starshipは重要なパートナーと契約を開始するようになった。英国では、食料品チェーンのTesco(テスコ)、Coop、Budgens(バドジェンヌ)がそのリストに含まれている。同社は主に、メガ食料品店ではなく、中心部に位置する小型店舗の配送手段として提携しており、Starshipが狭い範囲に配送する商品をストックする「ダークストア」の役割を担っている。配達は、iOSAndroidのアプリで依頼する。

現在、同社のビジネスの大部分(約70%)はキャンパス内での展開によるものだが、変調の兆しが見えてきているとウェストガース氏は述べている。

「1年~1年半後には、食料品の規模は大きくなっているでしょう」と彼はいう。Starshipのサービスを利用する可能性のあるキャンパスの市場規模は400〜500程度だが「食料品は数十億ドル(数千億円)規模になります。我々は、世界中のデリバリーサービスを追いかけています。自転車やスクーター、クルマに乗っている人と同じように配達できますが、私たちの方が安く、ロボットは年々安くなっています」と同氏はいう。ロボットの平均的なバッテリー寿命は18時間で、典型的なロボットは1日に約40km走行することができる。

現在、同社はレベル4の自律型システムとして車両を運用している。つまり、人間がオペレーションセンターで問題を監視し、車両が予期せぬトラブルに見舞われた場合には、必要であれば引き継ぐことができるということだ。だが、それはデフォルトではない。

「私たちのロボットは99%、誰も関与していません。私たちは多くの配達を、誰も関与することなく行っています」とウェストガース氏はいう。

EIBからの資金提供は、EUにとって2つの異なる条件を満たすものである。第1に、EUはより持続可能な輸送手段を推進し、排出量の削減と道路交通の低減を図ろうとしている。第2に、デジタル経済におけるEUの地位をさらに高めるために、テック系スタートアップ企業を支援するという長期的な目標がある。

EIBの副総裁 Thomas Östros(トーマス・エストロス)氏は「あらゆる形やサイズの電気自動車が、私たちの未来の一部となり、持続可能な輸送手段というパズルにおいて重要な役割を果たすことができます」と、声明の中で述べている。「Starshipの配送ロボットはすでにその価値を証明しており、同社が技術開発を続け、生産規模を拡大できるよう支援できることをうれしく思います」。と語っている。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Akihito Mizukoshi)

低コスト細胞培養技術CulNet Systemのインテグリカルチャーが7.8億円調達、2022年に世界初の培養フォアグラ上市を目指す

低コスト細胞培養技術CulNet Systemのインテグリカルチャーが7.8億円調達、2022年に世界初の培養フォアグラ上市を目指す

独自開発の低コスト細胞培養技術「CulNet System」(カルネット システム)の生産プラットフォーム化を目指すインテグリカルチャーは、シリーズA’ラウンドにおいて、第三者割当増資による総額7億8000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リアルテックファンドやFuture Food Fund1号投資事業有限責任組合をはじめとする複数のベンチャーキャピタル、および事業会社の計12社。累計資金調達額は約19億円となった。また、2022年後半以降には施設拡大を目的としたシリーズBを予定。

  • リアルテックファンド
  • Future Food Fund1号投資事業有限責任組合(新規)
  • Beyond Next Ventures
  • 食の未来ファンド(kemuri ventures。新規)
  • りそなキャピタル6号投資事業組合(新規)
  • Plan・Do・See(新規)
  • 山口キャピタル(新規)
  • SuMi TRUST イノベーションファンド(新規。三井住友信託銀行とSBIインベストメントが共同設立したプライベートファンド)
  • いよぎんキャピタル(新規)
  • AgFunder
  • VU Venture Partners
  • ほか1社

調達した資金は主に、CulNet Systemのスケールアップと、これを用いた細胞農業生産プラットフォーム構築に向けた研究開発、および培養フォアグラ製品上市や化粧品原料などの事業化資金にあてる。細胞農業プラットフォーム構築に向けた研究開発では、主に培養プロトコル開発の動物種を広げ、食品会社や細胞農業スタートアップを中心に、受託研究や共同研究パートナーを拡大する。低コスト細胞培養技術CulNet Systemのインテグリカルチャーが7.8億円調達、2022年に世界初の培養フォアグラ上市を目指す

同社は、2021年に細胞農業オープンイノベーションプラットフォーム「CulNetコンソーシアム」を12事業体で設立し、その後も加盟企業が増えているという。2021年4月にリリースした、細胞培養上清液を用いた化粧品原料「CELLAMENT」(セラメント)は、原料販売・OEM事業をスタートした。今後も、原料およびOEM製品として事業拡大を計画しているという。

食品事業では、2022年に培養フォアグラの世界初の上市を予定しており、月産8kg/機の安定生産を実現した上で、数年おきにスケールアップを達成、生産規模の拡大および低コスト化を目指し研究開発を進める。

同社代表取締役CEOの羽生雄毅氏は、「引き続き弊社ミッション『生物資源を技術で活かし、健やかな社会基盤を創る」に向けた技術開発を進め、2022年に培養肉をついに現実のものとします。色々な食文化が新たに生まれる世界が見えてきており、ワクワクしています」と話している。

Upward Farmsがペンシルバニア州に広大な垂直農場の開設を計画

ブルックリンに本拠を置くUpward Farms(アップワード・ファームズ)は今週、25万平方フィート(約2万3000平方メートル)の巨大な垂直農場を建設する計画を明らかにした。2023年初頭のオープンを目指しており、場所はペンシルバニア州北東部のルザーン郡に設けられる予定だ。限られた土地の有効活用を謳っているはずの垂直農場としては非常に大きな面積であり、競合他社の施設と比べると数倍の広さだ。この場所はUpwardにとって3番目の農場となる。

この農場では、特にマイクログリーン(若芽野菜)に注力することになっている。マイクログリーンは、他の作物に比べて柔軟性が高く、必要な空間が小さくて済むため、屋内栽培する作物としては人気が高い。競合他社の多くが採用しているハイドロポニック栽培やエアロポニック栽培ではなく、Upwardではアクアポニックスを採用する。これは魚を利用した循環型システムで、天然の肥料を生成して植物を育てるというものだ。

このシステムのおもしろい工夫点は、同社がそのアクアポニックスで育てた農作物だけでなく魚(バス)も販売するということだ。ニューヨークのWhole Foods(ホールフーズ)の一部店舗で農産物を販売するのに加えて、ブルックリンのGreenpoint Fish & Lobster(グリーンポイント・フィッシュ・アンド・ロブスター)で、ストライプバスの販売も始めるつもりであることを、同社は2021年12月に発表した。

画像クレジット:Upward Farms

「この新しい施設により、これまで西海岸から作物を受け取るまで1週間かかっていたのに対し、私たちは全米で最も人口の多い地域の1億人近い米国人に、1日で届けることができるようになります」と、共同創業者兼CEOのJason Green(ジェイソン・グリーン)氏は声明の中で述べている。「これは、食物をどこでどのように栽培するかということについて、世界的に大きな影響を与えるローカルなサクセスストーリーであり、また同時に、次世代の製造技術でもあります」。

Upwardは、2023年の初めにこの農場で穫れた作物の販売を開始する予定だ。2021年のシリーズBラウンドで1億2100万ドル(約138億円)の資金を調達した同社は、2023年にはさらなる市場への拡大も計画している。

画像クレジット:Upward Farms

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

宅配された食料品を低温に保つ「スマートボックス」を米HomeValetが発売、約5万7000円

HomeValetは、ワシントンD.C.市街地を拠点とするスタートアップで、食料品配達用の温度コントロール付きSmart Box(スマートボックス)を開発している。このほど同社は、同製品の一般販売を開始するとともに、Walmart(ウォルマート)との提携を拡大した。2021年には、Walmartのデリバリー利用者の生鮮品や冷凍食品を低温に保ち、受領するまでの安全を確保する手段として、Smart Boxのパイロットテストを行った。

HomeValetは、Walmartの食料品デリバリーサービス、InHome(インホーム)の一部のサブスクライバーに、2022年1月からSmart Boxを提供すると発表した。さらにInHome利用者以外の一般消費者も、前払金50ドル(約5700円)を払って予約すればSmart Boxを購入できる。InHomeサブスクライバーの購入価格は499ドル(約5万7200円)なので、ちょっとした投資ではある(Affirm経由のファイナンスが可能)。

それでもこのボックスは、オンラインで食料品を注文しても商品が配達される時刻に在宅できない人たちにとっては価値ある利便性だ。

画像クレジット:HomeValet

これは消費者が食料品配達を利用する上で、大きな壁の1つだ。生鮮品や冷凍食品は配達されたらすぐに冷蔵庫にしまわなくてはならないため、多くの人たちが食料品を路肩で受け取ったり、今まで通り店舗で購入している。買い物客は在宅時、例えば退勤後や週末に食料品を受け取りたいことから、配達の時間調整が複雑になるという問題もある。このため、要求される配達時刻は1日を通じても週を通じても波が大きくなり、店舗の都合で配達ルートや時刻を決めることができない。

Walmartのこの問題に対する現時点の解決方法は、InHomeデリバリーサービスだ。この食料品配達サブスクリプションは、2022年中に3000万世帯が利用可能になると同社は言っているサービスで、Walmartの配達員がスマートロックシステムを使って家に入り、顧客に代わって冷蔵庫や冷凍庫に食料品をしまう。配達の様子は安全確保のために配達員に装着されたカメラで記録される。

しかし、顧客は知らない人が自宅に入ることを心配しないでいられる人ばかりではない(あるいは、訪問者をよろこばない大型犬がいる、などの理由もあるだろう)。

そこへ登場したのがHomeValet Smart Boxシステムだ。Walmartの配達スタッフを家に入れる代わりに、スマートボックスを開けて食料品をしまってもらうことができる。

画像クレジット:HomeValet

Smart Box本体はインターネット接続されたボックスで、常温貯蔵品や食料品以外を格納する非冷蔵部分と、生鮮品と冷凍食品のための温度制御されたクーラー部分からなる(クーラーは利用者が設定可能)。

Smart Boxには専用モバイルアプリがあり、配達の通知を受けたり、ボックス内蔵のSony IMX322カメラが1080pが記録した配達員がボックスに商品を入れるところの動画を見ることができる。

画像クレジット:HomeValet

アプリを使って、ユーザーはボックスをロック / アンロックしたり、温度を遠隔制御することができる。WalmartのInHomeなどの対応した小売システムと連携していれば、配達時に自動的にアンロックすることもできる。

Smart Boxは110Vの標準電力で作動し、地面に固定することもできる。重さは120ポンド(約54.4 kg)、サイズは50.86×25.37×26.56インチ(約129x64x67cm)とかなり大きい(初期バージョンには殺菌用のUVランプが付いていたが、現行システムにこの機能への言及はない)。

HomeValetは2021年5月に、アーカンソー州北西部のWalmartでSmart Boxシステムのパイロットを行い、その後インディアナ州、ミネソタ州、およびワシントンD.C.市街地の一部地域で追加テストを実施した。現在同社はこのシステムをInHome利用者向けに優先的に提供している。

フロリダ州内(気候を考えると賢明なスタート地点)のWalmart店舗でInHomeを利用している顧客は、2022年2月にいち早くSmart Boxを受け取れる。InHomeユーザーは、導入価格499ドル(約5万7200円)と月額10ドル(1150円)のサブスクリプション料金(6カ月間は無料)でボックスを利用できる。

ボックスはその後、2022年8月以降にその他の予約購入者向けに個数限定で出荷され、2022年11月に追加で出荷される予定。これらの購入者向けの希望小売価格は上記とは異なり、後日発表される。

画像クレジット:HomeValet

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

規格外・余剰農産物の売却先をオンラインで農家とつなぎ食品ロスの削減を目指すFull Harvest

年間約40%の食料が廃棄されており、食料廃棄は世界で2兆6000億ドル(約294兆円)規模の問題になっている。Full Harvest(フルハーベスト)は、この問題は流通の問題であり、農産物のサプライチェーンをデジタル化することで解決できると考えている。

サンフランシスコに拠点を置く同社の農産物企業間取引市場は、農産物の買い手と売り手が、わずか数クリックで余剰または規格外の作物の取引を迅速に成立させる手段を提供する。農家にとっては新たな収入源となる。

創業者でCEOのChristine Moseley(クリスティン・モズレー)氏はTechCrunchに対し、生産者の大半はいまだにペンや紙、ファックスを使ってビジネスを行っていると語る。

「これは最も重要な産業の1つです。私たちはこの産業を自動化し、オンライン化することで、これまで解決されていなかったことを解決したかったのです」とモズレー氏は付け加えた。「例えば、売買には膨大な事務処理が必要ですが、オンボーディングプロセスを自動化することで、これまで数週間かかっていた作業が数分で済むようになります」。

そこでFull Harvestは、マッチングアルゴリズムや可視性を備えたスポットマーケットプレイスなど、バイヤーがサプライヤーの在庫を確認できる技術の開発に奔走した。また、第三者による監査・検証プロセスを構築し、一貫した仕様を提供することで、本来は救われるはずだが、廃棄されてしまう農産物の平均量を減らすことに成功した。拒否率は、業界平均10%に対し、同社は1〜2%だとモズレー氏はいう。

過去2年間で、Full Harvestの食品廃棄物削減効果は5倍になり、同社はこの勢いを維持するために追加資本を求めることになった。

同社は米国時間12月17日、シリーズBで2300万ドル(約26億円)の資金調達を発表した。Telus Venturesがこのラウンドをリードし、新規投資家からRethink Impact、Citi Impact、Doon Capital、Stardust Equity、Portfolia Food & AgTech Fund、および既存投資家からSpark Capital、Cultivian Sandbox、Astia Fund、Radicle Growthが参加した。今回の投資の一環として、Telusの投資ディレクターであるJay Crone(ジェイ・クローン)氏がFull Harvestの取締役に就任した。

Full Harvestを取材するのは久しぶりだ。TechCrunchは2016年、同社の旅が始まったときに紹介し、2017年に200万ドル(約2億2600万円)を調達した時に再び紹介した。2018年にはシリーズAで850万ドル(約9億6000万円)を追加で調達した。追加の資金調達をあわせると、現在の調達総額は3450万ドル(約39億円)だ。

同社は、Danone North America、SVZ、Tanimura & Antleなど、食品・飲料、加工業界や生産者業界のビッグネームと取引している。

「より持続可能なビジネスを構築することの重要性は、特に食品・飲料分野の企業にとって、かつてないほど明白になっています」とDanone North Americaのギリシャヨーグルト・機能性栄養食品担当副社長であるSurbhi Martin(スルビ・マーティン)氏は話した。「Full Harvestを通じてオンラインで農産物を調達し、通常であれば廃棄されてしまうような果物を当社の製品用に調達することで、より持続可能な食品を求める消費者の要望に応えています」。

Full Harvestのビジネスモデルは、同社のマーケットプレイスで行われるすべての取引の1%を取るというものだ。2020年から2021年にかけて、サプライチェーンに透明性を持たせた結果、売り上げは3倍になったとモズレー氏はいう。2018年当時、Full Harvestの従業員は約8人だったが、現在は35人にまで増えている。また、同社はカナダを含め地理的にも拡大した。

モズレー氏は、新しい資金で技術開発に投資する他、2022年には技術および製品チームの規模を3倍にし、北米での進出地域を引き続き拡大し、農産物の入手可能性、価格、仕様、持続可能性、品質、予測サポートなどのデータと市場インサイトの提供を進めるつもりだ。

食品廃棄物に取り組み、ベンチャーキャピタルから資金を調達しているのは、Full Harvestだけではない。2021年に限っても、企業から次のような発表があった。

このようにプロデュースの分野で技術革新を進めている企業もあるが、モズレー氏は、Full Harvestのユニークな点は、その専門性が持続可能な製品側にあることと、農産物サプライチェーンのデジタル化のリーダーとしての実績があることで、その両面で先行していると話す。

次は、物流技術に関する提携を確保し、さらなるスケールアップと提供可能なSKUの拡大を図る。

「これまで業界ではオフラインだったプロセスの自動化をある程度完了し、当社のテクノロジーとユーザーエクスペリエンスは大きく向上しました」とモズレー氏は付け加えた。

画像クレジット:Max / Unsplash

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

新興ブランドと小売業者を繋ぐPod Foodsが食料品のサプライチェーンを改革

Pod Foods(ポッドフーズ)は、消費者が求める新興の食品ブランドを小売店の棚に並べている企業間デジタル卸売市場だ。同社はそのサービスの開発を継続するため、シリーズAラウンドによる1000万ドル(約11億4000万円)と未発表のシードラウンドにおける300万ドル(約3億4000万円)、合わせて1300万ドル(約14億8000万円)の資金調達を行ったと、米国時間12月9日に発表した。

オースティンを拠点とする同社の創業者、Larissa Russell(ラリッサ・ラッセル)氏とFiona Lee(フィオナ・リー)氏については、2019年にMoment Ventures(モメント・ベンチャーズ)が主導し、M12も参加したラウンドで300万ドルを調達した際にTechCrunchでも紹介した。同社の技術は、データを活用したアプローチで、小売店がブランドから調達するプロセスを効率化するとともに、新進気鋭のブランドを含むより多様な商品と消費者を結びつけるものだ。

シードラウンド後、Pod Foodsはシカゴ、ニューヨーク、ロサンゼルスでサービスを開始。また、適切な商品を適切な小売店にマッチさせる在庫管理をより容易にするモバイルアプリも発表した。

その後、新型コロナウイルス感染流行が世界中を襲った。小売店では店頭の在庫を確保するために、Pod Foodsが注力しているニッチな新興ブランドの品が、有名ブランドに押されて店頭から消えていることに同社は気づいた。そこで同社は、ブランドの認知度を高めることに乗り出した。

「それは加速度を生み、私たちが変えようとしたすべてのことを増幅させました」と、ラッセル氏はTechCrunchの取材に語った。「私たちは2020年、ウイルス感染流行拡大の結果として生じた課題に取り組み、事業に邁進したのです」。

Industrious Ventures(インダストリアス・ベンチャーズ)が主導した今回のシリーズAでは、M12とMoment Venturesが再び参加した他、Unshackled Ventures(アンシャックルド・ベンチャーズ)、Barrel Ventures(バレル・ベンチャーズ)、Relish Works(レリッシュ・ワークス)、X Factor Ventures(Xファクター・ベンチャーズ)、XRC Labs(XRCラブズ)、K2 Global(K2グローバル)、Graphene Ventures(グラフェン・ベンチャーズ)などの投資家が参加。Pod Foodsが調達した資金の総額は1600万ドル(約18億2000万円)となった。

今回の投資は、Pod Foodsの成長軌道に沿ったものだとラッセル氏は述べている。同社はすでに7都市で展開しており、今後10都市に拡大する予定だ。ウイルス感染流行前のデータと比較すると、現在はブランドのリピート購入が20%増加しているという。

Pod FoodsはこのシリーズAで調達した資金を使って、2020年12月には33名だった従業員を58名に増員することができた。さらに同社は、Google(グーグル)、Amazon(アマゾン)、Walmart(ウォルマート)での経験を持つTimothy Wee(ティモシー・ウィー)氏という最高技術責任者も確保し、新しいサービスや製品を構築するためのデータにも投資していくと、リー氏は述べている。

デリバリーサービスは、より早く商品を届けて欲しいという消費者の期待を背景に、過去2年間で急速に成長し、小売業者が需要に追いつくのに苦労する原因となっている。その結果、Pod Foodsは2019年以降、売上高と顧客数の両方が前年比で3倍に増加したという。同社では、何が売れて何が売れないかというデータに基づき、小売業者がより早く商品をリセットできる状況が作れるように支援していると、ラッセル氏は述べている。

「私たちは適応する必要がありました」と、リー氏は付け加えた。「以前は買ったらそのまま食べられるような食品が売れていましたが、ウイルス感染流行の際には、冷凍食品や飲料などの商品が売れました。迅速に方向転換する必要がありましたが、私たちは小規模で機動力があるため、お客様の要望をすぐに伝え、ブランドを採用し、小売店の棚を確保することができました」。

Pod Foods 2021 from Blank Space Studio on Vimeo.

Pod Foodsは今後、太平洋岸北西部や、同社最大の市場であるニューヨークとシカゴの拠点周辺、さらにはフロリダでの事業拡大を計画している。

Industrious VenturesのパートナーであるChristian Gammill(クリスティアン・ガミル)氏は、Pod Foodsのアプローチについて「食料品のサプライチェーンを全面的に見直し、小売店とブランドの両方が繁栄できる真のエンド・ツー・エンドのシステムを構築するために必要な物流インフラを提供する初めての企業」であると述べている。

コマースがサプライチェーンの基調を決定づける中、Pod Foodsはデジタルを最優先し、データを活用したインテリジェントなオペレーションを構築することで、差し迫った変曲点を利用しようとしている。同社のような企業がデータプレーを正しく行うことができれば、顧客やブランドの助けになるだろうと、ガミル氏はいう。

「ラリッサとフィオナはすばらしい2人組で、互いに相性の良いスキルを持っています」と、ガミル氏は付け加えた。「この分野はあまり注目されていませんでしたが、他のサプライチェーンは多大な注目を集めています。だからこそ、私たちはこの分野に参入しようと思ったのです」。

画像クレジット:Pod Foods / Pod Foods co-founders Fiona Lee and Larissa Russell

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

新興ブランドと小売業者を繋ぐPod Foodsが食料品のサプライチェーンを改革

Pod Foods(ポッドフーズ)は、消費者が求める新興の食品ブランドを小売店の棚に並べている企業間デジタル卸売市場だ。同社はそのサービスの開発を継続するため、シリーズAラウンドによる1000万ドル(約11億4000万円)と未発表のシードラウンドにおける300万ドル(約3億4000万円)、合わせて1300万ドル(約14億8000万円)の資金調達を行ったと、米国時間12月9日に発表した。

オースティンを拠点とする同社の創業者、Larissa Russell(ラリッサ・ラッセル)氏とFiona Lee(フィオナ・リー)氏については、2019年にMoment Ventures(モメント・ベンチャーズ)が主導し、M12も参加したラウンドで300万ドルを調達した際にTechCrunchでも紹介した。同社の技術は、データを活用したアプローチで、小売店がブランドから調達するプロセスを効率化するとともに、新進気鋭のブランドを含むより多様な商品と消費者を結びつけるものだ。

シードラウンド後、Pod Foodsはシカゴ、ニューヨーク、ロサンゼルスでサービスを開始。また、適切な商品を適切な小売店にマッチさせる在庫管理をより容易にするモバイルアプリも発表した。

その後、新型コロナウイルス感染流行が世界中を襲った。小売店では店頭の在庫を確保するために、Pod Foodsが注力しているニッチな新興ブランドの品が、有名ブランドに押されて店頭から消えていることに同社は気づいた。そこで同社は、ブランドの認知度を高めることに乗り出した。

「それは加速度を生み、私たちが変えようとしたすべてのことを増幅させました」と、ラッセル氏はTechCrunchの取材に語った。「私たちは2020年、ウイルス感染流行拡大の結果として生じた課題に取り組み、事業に邁進したのです」。

Industrious Ventures(インダストリアス・ベンチャーズ)が主導した今回のシリーズAでは、M12とMoment Venturesが再び参加した他、Unshackled Ventures(アンシャックルド・ベンチャーズ)、Barrel Ventures(バレル・ベンチャーズ)、Relish Works(レリッシュ・ワークス)、X Factor Ventures(Xファクター・ベンチャーズ)、XRC Labs(XRCラブズ)、K2 Global(K2グローバル)、Graphene Ventures(グラフェン・ベンチャーズ)などの投資家が参加。Pod Foodsが調達した資金の総額は1600万ドル(約18億2000万円)となった。

今回の投資は、Pod Foodsの成長軌道に沿ったものだとラッセル氏は述べている。同社はすでに7都市で展開しており、今後10都市に拡大する予定だ。ウイルス感染流行前のデータと比較すると、現在はブランドのリピート購入が20%増加しているという。

Pod FoodsはこのシリーズAで調達した資金を使って、2020年12月には33名だった従業員を58名に増員することができた。さらに同社は、Google(グーグル)、Amazon(アマゾン)、Walmart(ウォルマート)での経験を持つTimothy Wee(ティモシー・ウィー)氏という最高技術責任者も確保し、新しいサービスや製品を構築するためのデータにも投資していくと、リー氏は述べている。

デリバリーサービスは、より早く商品を届けて欲しいという消費者の期待を背景に、過去2年間で急速に成長し、小売業者が需要に追いつくのに苦労する原因となっている。その結果、Pod Foodsは2019年以降、売上高と顧客数の両方が前年比で3倍に増加したという。同社では、何が売れて何が売れないかというデータに基づき、小売業者がより早く商品をリセットできる状況が作れるように支援していると、ラッセル氏は述べている。

「私たちは適応する必要がありました」と、リー氏は付け加えた。「以前は買ったらそのまま食べられるような食品が売れていましたが、ウイルス感染流行の際には、冷凍食品や飲料などの商品が売れました。迅速に方向転換する必要がありましたが、私たちは小規模で機動力があるため、お客様の要望をすぐに伝え、ブランドを採用し、小売店の棚を確保することができました」。

Pod Foods 2021 from Blank Space Studio on Vimeo.

Pod Foodsは今後、太平洋岸北西部や、同社最大の市場であるニューヨークとシカゴの拠点周辺、さらにはフロリダでの事業拡大を計画している。

Industrious VenturesのパートナーであるChristian Gammill(クリスティアン・ガミル)氏は、Pod Foodsのアプローチについて「食料品のサプライチェーンを全面的に見直し、小売店とブランドの両方が繁栄できる真のエンド・ツー・エンドのシステムを構築するために必要な物流インフラを提供する初めての企業」であると述べている。

コマースがサプライチェーンの基調を決定づける中、Pod Foodsはデジタルを最優先し、データを活用したインテリジェントなオペレーションを構築することで、差し迫った変曲点を利用しようとしている。同社のような企業がデータプレーを正しく行うことができれば、顧客やブランドの助けになるだろうと、ガミル氏はいう。

「ラリッサとフィオナはすばらしい2人組で、互いに相性の良いスキルを持っています」と、ガミル氏は付け加えた。「この分野はあまり注目されていませんでしたが、他のサプライチェーンは多大な注目を集めています。だからこそ、私たちはこの分野に参入しようと思ったのです」。

画像クレジット:Pod Foods / Pod Foods co-founders Fiona Lee and Larissa Russell

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

レシピ動画「クラシル」のdely、スーパーの店頭商品を最短30分でオンデマンド配送する「クラシルデリバリー」開始

レシピ動画「クラシル」のdely、生鮮食品・日用品などスーパーの店頭商品をオンデマンド配送する「クラシルデリバリー」開始

管理栄養士監修のレシピを動画で提供するサービス「kurashiru」 (クラシル) 運営のdelyは12月1日、スーパーマーケットから商品をピッキングして最短30分で配達する「クラシルデリバリー」(Android版iOS版)の提供開始を発表した。

クラシルデリバリーは、生鮮食品から日用品まで、普段スーパーで購入する商品をオンデマンドで配送するサービス。ウェブやモバイルアプリから注文すると、指定したスーパーにおいて配達員がピッキングを行ない、指定の配送先に最短30分で届ける。ユーザーが利用しているスーパーを対象とすることから、プライベート商品を含めた「いつも買う商品」が揃っていることになるため、店頭での買い物と同様の豊富なラインナップから商品を選べるとしている。「今日の晩ごはんで使う食材が買いたい」など、「今欲しい」タイミングで配送できるという。

専用アプリ上では、スーパーでの買い物状況を把握でき、商品に関して直接コミュニケーションを取ることも可能で、ユーザーニーズに沿った対応を配達員にリクエストできる。また配達員の配達状況が把握可能となっており、いつ届くか正確に分かるため配達時間のために長時間拘束されることもない(完全非接触の受け渡しも可能)。レシピ動画「クラシル」のdely、生鮮食品・日用品などスーパーの店頭商品をオンデマンド配送する「クラシルデリバリー」開始

利用料は、商品代金のほかに送料(税込330円)とサービス料(税込198円)。商品代金が6000円以上の場合は送料が無料になる。

スタート期の配達エリアは東京都内3区(港区・渋谷区・中央区。一部地域を除く)、対応店舗はピーコックストア5店(代官山店・恵比寿南店・芝浦アイランド店・三田伊皿子店・トルナーレ日本橋浜町店)。受付時間は10:30〜19:00(土日・祝日も含む)。配達エリアと対応店舗は首都圏を中心に順次拡大予定。レシピ動画「クラシル」のdely、生鮮食品・日用品などスーパーの店頭商品をオンデマンド配送する「クラシルデリバリー」開始

スーパーマーケットが「クラシルデリバリー」を導入する場合

スーパーマーケットがクラシルデリバリーに出店(導入)する場合については、初期費用および固定費無料。商品在庫の管理ツールを含むすべてのシステム開発、スーパーマーケットの商品の写真撮影はdelyが行なう。商品のピッキング、ユーザー対応、レジでの支払い代行、配送までをクラシルデリバリーが行ない、スーパー側に配送費用の負担は発生しない。レシピ動画「クラシル」のdely、生鮮食品・日用品などスーパーの店頭商品をオンデマンド配送する「クラシルデリバリー」開始レシピ動画「クラシル」のdely、生鮮食品・日用品などスーパーの店頭商品をオンデマンド配送する「クラシルデリバリー」開始

フードテックのAmaraが約13億円を調達、栄養価の高い乳児食事業を拡大

市販のベビーフードの一部に「危険なレベル」の有害金属が含まれていることが、2021年2月に米下院の監視改革委員会の報告書で判明し、親たちは衝撃を受けた。

これを受けて、その影響や、原材料のチェックといった親ができることなどの情報がにわかにメディアに溢れることになった。そうした栄養に対する意識の高まりは、乳幼児により栄養価の高い選択肢を提供することに注力している食品企業にも恩恵をもたらした。

Amara(アマラ)はこの分野で資金調達を行った最新のスタートアップで、米国時間11月19日、シリーズAラウンドで1200万ドル(約13億円)を調達したと発表した。7歳以下の子ども向けの栄養価の高い食品の製品ラインを拡大するためだ。今回の資金調達の1年半前に同社はシードラウンドで200万ドル(約2億2800万円)を調達し、この間、取扱店舗を100店から1000店に増やしてきた。

Amaraの創業者でCEOのジェシカ・シュトゥルツェンエガー氏(画像クレジット:Amara)

今回の資金調達ラウンドは、大きな提携を結んでいる植物由来の食品会社Eat Well Groupがリードした。経営陣は現在のままで、Amaraの企業価値を1億ドル(約114億円)と評価している、と創業者でCEOのJessica Sturzenegger(ジェシカ・シュトゥルツェンエガー)氏はTechCrunchに語った。シードラウンドからの既存投資家も参加し、ここにはPharmapacksが含まれる。

シュトゥルツェンエガー氏と同氏のチームは、技術開発に3年を費やした後、2017年にWhole Foodsで初の製品を発売した。Amaraは、保存可能な新鮮なベビーフード食のパウチに味、食感、栄養素を閉じ込める独自の技術を開発した。10のSKUと、母乳や粉ミルク、水を混ぜるためのベビーフード生産ラインを展開している。

現在、食料品店の棚に並んでいるパッケージ食品の大半が果物ベースで砂糖を多く含んでいる。1食あたり3〜7ドル(約340〜800円)の価格帯で販売されていて、冷蔵あるいは冷凍で保存しなければならない、とシュトゥルツェンエガー氏は指摘する。これに対し、Amaraの食事は1食あたり1.8ドル(約200円)〜と低価格で、幅広い家庭の予算に合わせた商品を提供するという同社の使命を果たしている。

2021年、Amaraは商品を拡大し「ヨーグルトスムージーメルト」を発売した。「砂糖を一切加えていない、乳幼児向けの唯一の口溶けの良いスナック」とシュトゥルツェンエガー氏はうたう。

「研究によると、0歳から7歳までに食べたものが、その後の人生での考え方や感じ方、パフォーマンスに影響を与えると言われています」とシュトゥルツェンエガー氏は話す。「『You are what you eat(人は食によって決まる)』は決まり文句かもしれませんが、研究によるとそれは真実でもあり、親たちは注目しています」。

シリーズAの資金を獲得する前、Amaraはすでに注文で利益を上げていた。実際、口コミで前年比3倍のオーガニック成長を遂げていたが、2月にベビーフードに関するレポートが発表された後、親とベンチャーキャピタル企業の両方からますます注目を集めるようになった、とシュトゥルツェンエガー氏は語る。

Eat Well Groupの社長であるMarc Aneed(マーク・アニード)氏は声明文の中で「Amaraは、小売店での販売と卓越したeコマースを通じて事業拡大するすばらしい能力を証明してきました。Eat Well Groupが提供する資金と業界専門知識は、2022年に向けてAmaraの成長を加速させるでしょう」と述べた。

今回の資金調達によりAmaraは雇用、商品開発、ブランド認知度向上に資金を投じながら、需要に応えるために急成長することができる。同社は自社ウェブサイト、Amazon、主にカリフォルニア州の食料品店で販売しているが、全米のSproutsでも販売している。今後1年でAmaraの製品をより多くの食料品店に置くことをシュトゥルツェンエガー氏は計画している。

一方、栄養へのシフトは、多くのスタートアップにとってベビー・子ども用食品市場をディスラプトするチャンスにつながっている。そのため、2019年に673億ドル(約7兆6740億円)だった世界のベビーフード市場は、2027年には963億ドル(約10兆9800億円)に成長すると予想されていて、現在の米国市場での売上は63億ドル(約7180億円)だ。

これに目をつけたベンチャーキャピタルは、乳幼児や子どもに特化した食品企業に新たな資本を投入している。例えば、Little Spoonは7月にシリーズBで4400万ドル(約50億円)を調達し、低糖のベビーフードを提供するSerenity Kidsは6月にシリーズAで700万ドル(約8億円)を調達した。

シュトゥルツェンエガー氏は「さまざまな親や価格帯をターゲットにしている企業にとって、市場開拓余地があります」と語る。「我々が目指すのは、すべての人に良い食べ物を提供することです。将来の世代の食生活を変えようとするなら、アクセス可能でなければならないのです」。

画像クレジット:Amara

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

ヒトタンパク質を使い母乳に最も近い乳児用ミルクを開発するHelainaが約22億円を調達

世界初となる乳児用ミルクを製造しているHelaina(ヘライナ)は、最初の製品の製造と商業化プロセスを開始して次の成長段階へ進むため、シリーズAで2000万ドル(約22億円)を調達したと発表した。

ニューヨーク大学で食品科学を教えている食品科学者のLaura Katz(ローラ・カッツ)氏は2019年に同社を設立した。「機能性ヒトタンパク質を食品用に製造する初の企業」とうたっている。

これを実現すべくHelainaは、母乳に含まれるものとほぼ同じタンパク質を開発するために酵母細胞をプログラムして製造のハブとなるように教える精密な発酵プロセスを活用している。

「私たちがHelainaを始めたとき、多くの産業に多くのテクノロジーが導入されていましたが、赤ちゃんへの栄養補給はあまり進展していませんでした」とカッツ氏はTechCrunchに語った。「どの人々の栄養と健康を向上させるかを考えたとき、乳幼児と親が真っ先に思い浮かびました」。

2026年には1030億ドル(約11兆7300億円)の市場になると言われている乳児用粉ミルク市場が成長する一方で、幼少期の子どもたちにどのような食事を与えるべきかについては、恥ずべき部分や偏見が残っている。Helainaは、誰もが手に入れやすい価格の食品を親に提供するだけでなく、親が自分の選択を検討するのをサポートすることを目指している。

Helainaは、最初にタンパク質を作り、現在は母乳のすべての成分を1つずつ作りたいと考えている。Helainaの製品はカロリーを供給するだけでなく、真菌、細菌、ウイルスなどの病気に対する免疫力を高めるのにも役立つ。

今回の資金調達はSpark CapitalとSiam Capitalが共同でリードし、Plum Alleyと Primary Venture Partnersも参加した。今回のラウンドにより、Helainaの資金調達総額は2460万ドル(約28億円)となり、その中には2019年と2020年に行われたプレシードとシードの合計460万ドル(約5億円)が含まれているとカッツ氏は話した。

シリーズAは計画的なラウンドだったが、カッツ氏が予想外だったと指摘したのは、投資家からの同社に対する「圧倒的な関心」だった。

「資金調達をしてわかったことは、私たちがやっていることに個人的なつながりがあるということです」とカッツ氏は付け加えた。「フードテックの分野では多くのことが起こっていますが、この技術を人々の心に近い製品に使うことができるのを目にするのはすごいことです。多くの人が私たちの取り組みに興味を持ってくれています」。

今回のシリーズAでは、商品化に向けて製造パートナーとの連携を強化する。その目的は、製造能力を高め、経営陣を充実させ、市場投入計画を最終決定することにある。

同社は、米国食品医薬品局から製品の承認を得ることを目指している。その後、臨床的に証明された多数の消費者向け製品に同社のタンパク質を使用する計画で、 これは本質的に栄養の定義を免疫にまで広げ、消費者部門に新たなカテゴリーを創出するものだ。

より栄養価が高く、母乳に最も近いミルクを作ろうとしているのは、Helainaだけではない。2021年初めには、ヨーロッパのブランドをモデルにしたミルク開発のためにBobbieがシリーズAで1500万ドル(約17億円)を調達した。ByHeartもミルクを開発中で、Biomilqは「世界で初めて母乳以外の細胞培養された母乳」を製造したとしている。

カッツ氏は、自社が行っているタンパク質の製造方法や、健康面でより優れた製品を作ることに注力している点が、競合他社との違いだと話す。

「Helainaは、ヒトのタンパク質を食品に導入した最初の会社です 」とカッツ氏は付け加えた。「これまで誰もやったことがありません。育ち盛りの子どもに食べさせるための技術を親に展開することで、消費者向けの免疫学のようなこの新しいカテゴリーを創出しているのです」。

一方、同社はSita Chantramonklasri(シタ・チャントラモンクラスリ)氏が新たに設立したファンドSiam Capitalの最初の投資先の1つだ。チャントラモンクラスリ氏によると、同ファンドは持続可能性と消費者のニーズが交差するビジネスに投資しているという。

チャントラモンクラスリ氏はフードテック分野に多くの時間を費やしており、カッツ氏とつながるずいぶん前にSpark Capitalのシードラウンドを担当したKevin Thau(ケビン・タウ)氏からHelainaのことを聞いた。

当時、チャントラモンクラスリ氏は母乳の分野を深く掘り下げ、Helainaの競合他社の斬新な技術に注目していた。同氏はカッツ氏と多くの時間を過ごし、カッツ氏の背景やHelainaがこの分野で何をしているのかを理解した。実験室で過ごし、同社の酵母工学の取り組みを見て、Helainaは科学的に優れた製品を提供していると感じた、とチャントラモンクラスリ氏は話した。

「ローラはすばらしい創業者で、年齢以上に賢く(29歳!)、Helainaのミッションを見届けたいと思っています」と付け加えた。「市場の競争はますます激しくなり、顧客のロイヤリティと同様にタイミングが勝負です。Helainaは、母親や家族の擁護者となるべき立場にあります。技術的な観点からは、何が起こるかを判断するのは時期尚早です。Biomilqのような他の細胞培養技術にも革新が見られますが、Helainaは進歩の面でこの分野のリーダーとなるでしょう」と述べた。

画像クレジット:Helaina / Helaina founder Laura Katz

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi