Starship Technologiesが自律型配送ロボットの拡充に向けEUの投資部門から約64.3億円獲得

Starship Technologies(スターシップ・テクノロジーズ)は、自律型配送ロボット(都市を自動運転する小さなカボチャのような箱型の配送車)の世界では大物の1社である。新型コロナウイルス(COVID-19)の間、消費者がウイルスの拡散を最小限に抑えるために自宅待機をしたり、あるいは外出が消極的だった時に、店舗やレストランと消費者の間で食品やその他の商品を配送するための(無人の)力を提供し、絶好調だった。現在、同社はさらなる成長のために、欧州の支持とともにいくつかの資金を手にしている。

このスタートアップは、欧州連合の資金調達部門である欧州投資銀行(EIB)から5000万ユーロ(約64億3900万円)の資金を受け取った。Starship Technologiesは、これを「準株式発行枠」と表現しており、ベンチャーローンが混じっていることを意味する。

今回の投資による評価額は公表していないが、Alastair Westgarth(アラステア・ウェストガース)氏は、これで投資家からさらに資金を調達することを否定するものではないとしている。Starshipは2019年にMorpheus Ventures(モーフィアス・ベンチャー)主導で4000万ドル(約45億6500万円)のシリーズAを調達し、Pitchbook(ピッチブック)のデータによると2021年1月にも、戦略的支援者で日本の大手電機メーカーの投資部門であるTDK Ventures(TDKベンチャーズ)とGoodyear Ventures(グッドイヤー・ベンチャーズ)を出資者に迎え、さらに1700万ドル(約19億4000万円)を調達している。現在、250万台以上の商用配送を行い(2021年10月の200万台から増加)、世界で300万マイル(約482万km)以上を走行している。ウェストガース氏によると、同社の車両は平均して1日に1万件の配送を行っているという。

サンフランシスコを拠点とする同社は当初、2017年に米国の配送会社であるDoordash(ドアダッシュ)とPostmates(ポストメイツ、現在はUberの一部)とパイロット運用を行い、その後、大学キャンパス環境内での導入を行って、その名を轟かせた。同じロボット配送のスタートアップであるMarble(マーブル)は、その頃、市の規制当局と対立し、皮肉にもその影響から、Starshipはまだホームの都市でローンチしていない。(Marbleは現在、Caterpillarの傘下に入っている)。

Marbleはヨーロッパでも大きな存在感を示しており、エストニアのタリンに主要な研究開発拠点を置き(そのためEUから財政的な支持を受けている)、英国のミルトン・キーンズにて初の本格的な都市展開を開始した。サービスの価格は都市や場所によって異なるが、例えばミルトン・キーンズにある食料品チェーン店Coop(コープ)に提供するサービスは、一律99ペンス(約150円)で設定されている。

この2年間、 Starshipの名前は、配達員の数が減り、人々が移動を控え、人との接触が少なくなった時代に、企業が注文した食品を顧客に届けるための配達パートナーとして、よく耳にするようになった。ミルトン・キーンズのサービスだけでも数十万件の配達があり、Starshipは重要なパートナーと契約を開始するようになった。英国では、食料品チェーンのTesco(テスコ)、Coop、Budgens(バドジェンヌ)がそのリストに含まれている。同社は主に、メガ食料品店ではなく、中心部に位置する小型店舗の配送手段として提携しており、Starshipが狭い範囲に配送する商品をストックする「ダークストア」の役割を担っている。配達は、iOSAndroidのアプリで依頼する。

現在、同社のビジネスの大部分(約70%)はキャンパス内での展開によるものだが、変調の兆しが見えてきているとウェストガース氏は述べている。

「1年~1年半後には、食料品の規模は大きくなっているでしょう」と彼はいう。Starshipのサービスを利用する可能性のあるキャンパスの市場規模は400〜500程度だが「食料品は数十億ドル(数千億円)規模になります。我々は、世界中のデリバリーサービスを追いかけています。自転車やスクーター、クルマに乗っている人と同じように配達できますが、私たちの方が安く、ロボットは年々安くなっています」と同氏はいう。ロボットの平均的なバッテリー寿命は18時間で、典型的なロボットは1日に約40km走行することができる。

現在、同社はレベル4の自律型システムとして車両を運用している。つまり、人間がオペレーションセンターで問題を監視し、車両が予期せぬトラブルに見舞われた場合には、必要であれば引き継ぐことができるということだ。だが、それはデフォルトではない。

「私たちのロボットは99%、誰も関与していません。私たちは多くの配達を、誰も関与することなく行っています」とウェストガース氏はいう。

EIBからの資金提供は、EUにとって2つの異なる条件を満たすものである。第1に、EUはより持続可能な輸送手段を推進し、排出量の削減と道路交通の低減を図ろうとしている。第2に、デジタル経済におけるEUの地位をさらに高めるために、テック系スタートアップ企業を支援するという長期的な目標がある。

EIBの副総裁 Thomas Östros(トーマス・エストロス)氏は「あらゆる形やサイズの電気自動車が、私たちの未来の一部となり、持続可能な輸送手段というパズルにおいて重要な役割を果たすことができます」と、声明の中で述べている。「Starshipの配送ロボットはすでにその価値を証明しており、同社が技術開発を続け、生産規模を拡大できるよう支援できることをうれしく思います」。と語っている。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Akihito Mizukoshi)

Starship Technologiesのフードデリバリーロボットをさらに米国の4大学が採用

自動運転によるデリバリーサービスStarship Technologiesが、これまでの20のキャンパスに加え、2021年秋よりさらに4つのカレッジのキャンパスにデリバリーサービスを開始する、と発表した。

このエストニア生まれの企業の、6輪でゼロエミッションの小さなデリバリーロボットの恩恵に今秋からあずかるのは、イリノイ大学シカゴ校(UIC)とケンタッキー大学(UK)、ネバダ大学リノ校(UNR)、そしてエンブリー・リドル航空大学フロリダ州デイトナビーチ校だ。

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この発表と同じ、米国時間8月10日に、同じく歩道デリバリーロボットのKiwibotが、ホスピタリティ大手Sodexoと提携して、カレッジのキャンパスにフードデリバリーを提供することになった。Kiwibotは主に大学の食堂や店舗から食べ物を配達するのに対し、Starshipは、キャンパスに店を出しているStarbucks(スターバックス)やPanda Express、Panera Breadなどと提携するようだ。しかしやり方は違っても結果は同じだ。デリバリー企業は学期や学年に対応するが、Deltaなどは行事など特定期間への対応を増やしている。このことは、StarshipやKiwibotタイプにとって良い点も悪い点もあるだろう。一方では「新型コロナのために学生は寮などに閉じこもり、他人を避けるようになる」が、他方「学校が閉鎖して暇なロボットが大量に増える」かもしれない。

UNRで学生たちの住生活や食生活の世話を担当しているDean Kennedy(ディーン・ケネディ)氏は、次のように声明している。「誰もがキャンパスに戻ってリアルのクラスを受けたいと願っているため、私たちにもその願いにしっかりと応える義務があります。ロボットには、いくつかの利点があります。ソーシャルディスタンスを維持しやすく、便利であり、学生たちも歓迎しています。しかも大学のキャンパスとイノベーションは、以前から相性がよい関係です」。

今秋さらに4つの大学を弊社のサービスに加えます。また既存の車隊には増車を行います。イリノイ大学シカゴ校(UIC)、ケンタッキー大学(UK)、ネバダ大学リノ校(UNR)、そしてエンブリー・リドル航空大学フロリダ州デイトナビーチ校が、Starshipの自動運転デリバリーの持続可能でエコフレンドリーな利便性を体験できるようになります。

UICでは25台、UNRとエンブリー・リドルでは20台のロボットが、Starshipの既存の1000台を超えるデリバリーロボットに加わることになる。同社によると、2014年に創業して以来今日までに150万回以上の配送サービスを完了している。これまでに調達した資金総額は1億200万ドル(約112億9000万円)、これには最近の1700万ドル(約18億8000万円)のラウンドも含まれる。

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StarshipのCEOであるAlastair Westgarth(アラステア・ウェストガース)氏は、次のように声明している。「大学というコミュニティの一員として信頼され溶け込めるために、私たちは身を粉にして働いてきました。これからも、これまでと同じく、新しい学期が始まるたびに新しい仲間を増やしていきたいと思います。今秋については、すでに発表したとおりです。学生はロボットが好きだし、学校もこのサービスに感謝しています。これらの学校の学生たちにお会いするのが楽しみであり、一緒に手伝っていただける学生さんには、実物のロボットやAIと一緒に仕事をする機会を楽しんでいただきたいと思います」。

学生と教員はStarship Food Deliveryアプリをダウンロードして食事を選び、届け場所にピンを刺す。ロボットが今どこまで来てるかわかるし、圏外に出るときは警報が鳴り、ロボットが到着したら、アプリでアンロックする。Starshipによると、同社は、チームへの参加と自律テクノロジーに関心のある学生を訓練して、今後雇用するつもりだという。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Starship Technologiesフードデリバリーアメリカ

画像クレジット:Starship Technologies

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Alphabet傘下で2021年初めに解散したLoon元トップがロボット配達Starship TechnologiesのCEOに

自律走行ロボティクス会社Starship Technologies(スターシップ・テクノロジーズ)が、新しいCEOを迎える。同社は米国時間6月1日、ロボティクス配達サービスの拡大を追求する中でAlphabet(アルファベット)傘下のLoon(ルーン)の元CEOであるAlastair Westgarth(アラステア・ウェストガース)氏がStarship Technologiesを率いると発表した。

ウェストガース氏はこの前に、高高度の気球経由でブロードバンドを提供するというAlphabetの実験のLoonを2017年から率いていた。同社は2021年初めに解散した。解散を発表した最後のブログの中で同社は「商業化の実現可能性への道が思った以上に長く、リスクをともなうものであることがわかりました」と述べた。Loonで働く前にウェストガース氏はワイヤレスアンテナ会社Quintel Solutionsを率い、そして通信会社Nortel で副社長を、 Bell Mobilityではエンジニアリングのディレクターを務めた。

同氏はStarship Technologiesが事業を急拡大する中で同社に加わる。2020年初め、Starshipはいくつかの地域と大学のキャンパスで自律走行ロボット数百台を運用していた。同社は2021年5月、パンデミック以来、配達件数は4倍に増え、グローバルで150万回のマイルストーンを達成した、と明らかにした。

「自律走行配達は知っての通りロジスティックを変えていて、世界中の何十億という人にインパクトを与えています」とウェストガース氏は声明文で述べた。「Starshipのチームは2014年にロボット配達部門を創出して以来、何年もの間、テクノロジーとオペレーションを開発・洗練してきました。今回の機会はうれしいものであり、この業界をリードする便利で安全、そして環境に優しい配達サービスにより多くの人がアクセスできるよう、Starshipがキャンパスと地域で事業を拡大するのをサポートすることを楽しみにしています」。

Starshipの前CEOであるLex Bayer(レックス・バイエル)氏は同社を3年間率いた後、2020年12月に密かに社を去った。暫定CEOを務めた共同創業者のAhti Heinla(アーティ・ヘインラ)氏はCTOとなる。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:AlphabetLoonStarship Technologies自律運転ロジスティクスロボット配達

画像クレジット:Starship Technologies under a license.

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

自動運転ロボのStarship Technologiesが17.7億円調達、今夏までに100の大学で事業展開へ

1年前、Starship Technologies(スターシップ・テクノロジーズ)は大学のキャンパスの学生やいくつかの住宅街の住人にブリトーやピザを届ける自動走行ロボットを数百台持っていた。

新たに1700万ドル(約17億7000万円)の資金を獲得した同社は、事業を展開する欧州や北米を新型コロナウイルス(COVID-19)が襲って以来、車両台数を5倍に増やした。新型コロナは同社にも苦痛とカオスをもたらした一方で、レストランがテイクアウトや配達のみのモデルに移行したため需要が増えた。同社は現在、自動走行ロボットを1000台所有している。

同社は2020年に、2021年夏までに100の大学に事業を拡大することを計画していると語った。この数字は現在の15という数字からはかなりの飛躍だ。それでも同社はロケーション、配達走行のボリューム、車両サイズ、従業員数などあらゆる点で成長している。同社の従業員は現在400人だ。事業を展開するキャンパスを毎月増やしていて、対面授業が再開したときに始動する。

米国時間1月26日に発表された同社の最新の資金調達には、TDK VenturesやGoodyear Venturesといった投資家が参加した。これにより累計の資金調達額は1億200万ドル(約106億円)になった。バリュエーションは非公開。また、同社はカリフォルニア大学ロサンゼルス校とマサチューセッツのブリッジウォーター州立大学に事業を拡大したことも発表した。

画像クレジット:Starship Technologies

Skype(スカイプ)の共同創業者Ahti Heinla(アーティ・ヘインラ)氏とJanus Friis(ヤヌス・フリス)氏によって2014年に創業されたStarship Technologiesは2017年に配達5000回を達成し、この数は2021年1月には100万回に成長した。また、同社は大学のキャンパスや英国ミルトン・キーンズのようなコミュニティ以外の町にも事業を拡大し、ここには5000世帯が暮らす英国ノースハンプトンエリアやカリフォルニアのマウンテンビュー、モデストなどが含まれる。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Starship Technologies資金調達フードデリバリー

画像クレジット:Starship/Copyright Don Liebig/ASUCLA

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(翻訳:Mizoguchi