サブスク型個人会計ソフトのCopilotは打倒Mint

10年以上前にIntuit(インテュイット)がMint(ミント)を買収した時、モバイルは今とは違う場所にあった。フィンテックも同様だ。一方、個人用会計アプリ分野にも大きな進歩は見られていない。Mintは統合問題と厄介なデータ分別間違いでつまづいた。多くの人にとって、ベストな代替手段はスプレッドシートを立ち上げることだった。

Copilot(コパイロット)は元Google社員が作った新しい個人向け会計アプリで、そのスリムなデザインと使いやすさで人気を呼びそうだ。サブスクリプション方式のiOSアプリで、ユーザーは個人の財務データを入力し、取引のカテゴリーを追加したり、予算を立てたりすることができる。過去数ヶ月は招待のみだったが、米国時間1月19日に一般公開された。

創業者のAndrés Ugarte(アンドレス・ウガルテ)氏はTechCrunchの取材に答えて、Googleに8年間務めた(最近では実験プロダクト部門Area 120)後、Mintの買収以降パーソナル会計分野の進歩が遅いのを見て、この取組みを始めたと語った。

「過去8年間パーソナル財務アプリを使おうとしてきたが、結局諦めた」とウガルテ氏は言う。「なんとか独自のカテゴリーを追加したりデータを修正ししたりて、すべての項目が正しく分類されるようにして使えるアプリにしたかった。しかし、アプリは同じ誤りを繰り返すだけで賢いとは感じられず、いつもがっかりしていた」。

私はCopilotをこの数時間いじってみて、これまでのところ気に入っている。デザインは他社と比べて親しみやすく、何よりの強みは、思い通りに自動分類されなかった項目のカテゴリーを簡単に変更できることだ。複数のアカウント間のやり取りを記録したり、1回限りの特別な買い物を予算から除外することもできる。こうした機能を提供しているアプリはほかにもあるが、Copilotは、特定の取引先の項目すべてをあるカテゴリーに分類するか、予算から完全に除外するかを選んでマークすることができるので、アプリはユーザーの行動を学習できる。

ある意味で、Copilotのキラー機能は、Plaidがいかによく出来ているかを示すものでもある。Copilotは、このVisaが買収した財務サービスAPIのスタートアップに強く依存しており、私にはなぜこのスタートアップが成功しているのかがよくわかる。他のサービスとのわかりやすい連携は、Copilotのスムーズな導入プロセスとあいまって、アプリのよく考えられたデザインをすぐにユーザーが感じられる。

関連記事:Visaが5800億円でPlaid買収、最終的な評価額は倍に

Copilotには限界もある。主な理由は現在チームにふたりしかいないことで、デスクトップとAndroid版を期待している人は少し待つことになる。月額2.99ドルのサブスクリプション料金にためらうを感じる人もいるかもしれないが、自分の財務情報を全部アクセスできる無料アプリを避けるべき理由はいくつもある。Copilotはユーザーの財務情報を売ったり第三者に渡すことはない。

ウガルテ氏は持っていたGoogle株を売ることで、ほぼ自己資金でここまでやってきたが、つい最近25万ドル(約2750万円)のエンジェルラウンドを済ませ、さらに追加の資金調達を考えている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

三井住友カードが30年ぶりにクレカ刷新、複数の決済情報を管理できるWalletアプリなども発表

三井住友カードは1月15日、30年ぶりに刷新されたクレジットカード、複数の決済手段を1つのアプリに集約できるWalletアプリ、家族間でシェアできる家計簿アプリを発表した。

表面にカード番号のない新クレカ

新クレジットカードは、パルテノン神殿のイラストが入った従来カードからデザインを刷新し、前面記載が基本のクレジットカード番号や有効期限などの情報を裏面に集約、表面に刻印される個人情報は契約者本人のローマ字氏名のみとなる。つまり裏面には、従来のセキュリティーコードと自筆サインのほか、クレジットカード番号や有効期限がまとめて記載されることになる。

これによりカード決済時に背後や側面からの番号の盗み見などを防げるほか、オンラインショッピング時にカード番号を入力したあとにカードを裏返してセキュリティコードを確認・入力という手間がなくなるというメリットもある。対応する国際カードブランドはVISAとMastercardで、VISAブランドの場合はタッチ決済が可能になる。Mastercardのタッチ決済(コンタクトレス決済)には現在のところ対応しておらず、Mastercardと検討中とのこと。

さて、VISAのタッチ決済はNFC-A/Bが使われているが、従来使われているiDやSuica、EdyなどのNFC-F(FeliCa)決済についても引き続き対応していくという。国内では交通系ICカードによって普及したFeliCa搭載カードがよく使われているが、グローバルでのタッチ決済はType A/Bが主流ということもあり、今後はFeliCaの機能を残しつつもグローバル標準のNFC-A/Bの導入を推進していくようだ。各社との提携カードへのVISAタッチ決済の導入については「提携先の意向次第」とのことだが、セキュリティー面や海外利用時の安全面を考えた場合、VISAの新デザインルールに沿ったタッチ対応対応カードの要望は提携各社からも増えていくだろう。

一方で、VISAタッチ決済が利用できる店舗はまだまだ少なく、三井住友カードが提携している大手チェーン店では、ローソン、マクドナルド、ゼンショーなどにしか一括導入されていない。また同社は中小の小売店向けに2019年度からNFC対応のSquare端末を提供しており、磁気ストライプを読み込む旧型のイヤフォンジャック接続タイプから、ICチップを読み込む新型の据え置き型へのリプレースを進めているという。

新デザインのカードは、2月3日から新規発行で受け付けるほか、2月にカードの切り替え時期を迎える利用者のカードも順次切り替わるこの新カードの導入伴って同社は、年会費1250円が永年無料になるキャンペーンを実施する。新規入会ユーザーは、後述するアプリにログインすることで、決済金額の20%をもれなく還元するキャンペーンも始まる。ただし、還元上限総額1万2000円。さらに新規入会ユーザーは、50分の1の確率で利用代金が無料になる特典もある。

既存ユーザーについては、3月からはVISAのタッチ決済対応カードへの切り替え手数料が無料になり、タッチ決済の初回利用時にもれなく最大1000円をプレゼントするキャンペーンが提供される予定だ。

なお3月からは、インターネット経由で三井住友カードを申し込んだユーザーは、物理カードが届く前にスマートフォン上でカード番号やセキュリティ番号を発行でき、Apple PayやGoogle Payへの登録、オンラインショッピングでの決済ができるサービスも始まる。

WalletアプリがMoneytree APIを利用した資産管理アプリに進化

Walletアプリについては2020年3月にアップデートされ、カード利用履歴の確認、支払い口座残高の確認、各種変更手続きといった既存機能のほか、他社を含む複数のカードや電子マネーの決済情報を一元管理可能になる。この決済情報を一元管理する機能は、マネーツリーが開発・提供している資産管理アプリ「Moneytree」の技術が使われている。具体的には、三井住友カードのWalletアプリがMoneytree APIを経由して、Moneytree側のデータベースにある決済情報などを参照する仕組みだ。つまり、三井住友カード自体はクレジットカードや金融機関の決済や残高の情報を管理しておらず、あくまでもMoneytreeのデータとなる。Moneytreeは、プライバシー認証機構であるTRUSTeの認証を定期的に受けており、セキュリティー面での安全は保証されているので安心だ。なお、対応する金融機関はMoneytreeに準じる。

そのほかWalletアプリは、使いすぎや不正利用を防ぐセキュリティー機能や口座残高不足アラート機能も新たに備えている。カードを使用するとすぐに通知が届くので、自分以外がカードを使ったかどうかがすぐにわかるわけだ。なお、注意したいのは決済情報を集約できるだけで、同社のWalletアプリから直接決済できるわけではない点。ただし、VISAブランドの三井住友カードやプリペイドカードについては、Walletアプリ自体が三井住友カードのデータベースを参照しているので、プリペイドカードへのチャージなどはアプリ上から可能だ。

6歳から持てるVISAプリカと専用アプリで家族間もキャッスレスに

同じく2020年3月にリリース予定の家族間で共有できる「かぞくのおさいふ」は、クレジットカードとVisaプリペイドカードを活用して、家族内の資金移動をキャッシュレス化・可視化できる家計簿アプリ。成人や社会人にはクレジットカード、6歳以上の未成年や学生などにはVisaプリペイドカードを持たせることで、家族間の資金の受け渡しから店頭での決済までがキャッシュレスになる。

もちろん、クレジットカードとVisaプリペイドカードでの利用明細は記録されており、かぞくのおさいふアプリに集約される。Visaプリペイドカードを利用する家族は、チャージした金額しか使えないので、使いすぎや高価な商品を親の許可を得ずに買ってしまうという事態を避けられる。家族それぞれが現在所持している資金については「個々のおさいふ」で管理可能だ。決済時の通知機能、利用制限、オートチャージ、家族内送金機能なども備わっている。1回あたりのチャージの上限額は30万円。1カ月の上限は100万円。

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個人的には今回の発表で、VISAを皮切りにNFC-A/Bでのタッチレス決済を推進していく同社の意気込みを感じた。今後、NFC-F(FeliCa)は朝夕のラッシュ時に通勤・通学しなければならないビジネスパーソンや小中高生に中心に一定数残ると考えられているが、働き方改革やテレワーク、時差通勤の推進で満員電車に乗る人口も今後は減るはずだ。また、人口減少が進む日本の独自規格が今後グローバルに広がる確率は低い。国内の小売り業者や公共交通機関の事業者もまずは、FeliCaとNFC-A/Bに両対応した決済端末の導入を積極的に進めていくべきだろう。

Visaが5800億円でPlaid買収、最終的な評価額は倍に

Visa(ビザ)は米国時間1月13日、金融サービスAPIスタートアップであるPlaid(プレイド)を53億ドル(約5800億円)で買収すると発表した。

Plaidは金融サービスAPIを開発している。Stripe(ストライプ)が支払いのために提供しているサービスと似ているが、こちらのサービスは支払いを容易にする代わりに、開発者が銀行やその他の金融情報をより簡単に共有できるようにする。Visaのような会社にとっては意味のあるサービスだ。

このスタートアップは、銀行業務だけでなくより広範な金融サービスと投資に移行するために、2年前にQuovoを買収している。もともとのアイデアは、金融サービスプロバイダーたちに対して、より包括的なプラットフォームを提供することだった。創業者たちは、その買収時にブログ記事に以下のように書いている。「これまで様々な金融アプリケーション群が、Plaidを主に当座預金口座と普通預金口座とのやり取りに使用してきました。Quovoを買収することにより、私たちはより幅広いクラスの資産に対して機能を拡張することになります」。

買収は規制当局の承認待ちで、今後3〜6ヵ月で完了する予定だ。

買収価格

今回のPlaidの出口価格は、これまで合計で3億1000万ドル(約341億円)を投じてきた投資家たちにとって大勝利となるものだった。これまでのラウンドで最も重要だったのは、2018年後半に行われた2億5000万ドル(約275億円)の投入だった。IndexKleinerがそのラウンドを主導し、Plaidを26億5000万ドル(約2920億円)、すなわち今回の最終買収価格の50%だと評価していた(この比率が偶然だとは思えない)。

後に明らかになったが、そのときにはMastercardとVisaもラウンドに参加していた。TechCrunchは2019年に、2つのペイメントの巨人たちが「ラウンドに静かに参加した」と報告している。

これらの投資が、Visaに十分な情報取得権を与えられるほど十分な金額だったのかは、はっきりしない。だがクレジットカードの巨人である両社は、投資を行う前に比べて、Plaidが何をしていたかについてより多くの情報を得ている。ともあれ、Plaidは未公開会社として上手くやっているのだと推測することはできる。なにしろ自らのコアビジネスと競合させないために、あるいは主要な競合他社から遠ざけるために買収する場合を除いて、ある企業に対して数十億ドルにも及ぶ評価額のさらに倍額を支払う者はいないからだ。

今回のPlaidは、その両方かもしれない。

Twilioとの比較

Plaidはしばしば、縁の下の力持ちとして活動し、他のプレーヤーのビジネスを支援するAPI提供企業であるTwilioと比較される。アーリーステージにいるNoyoは、ヘルスケア情報と保険のためのAPIで同様のことを行っている。前述のとおり、Stripeは似ているサービスを提供しているが、彼らがカバーするのはペイメントだ。こうしたモデルは、公開会社として急騰したTwilioにとって有利だ。Plaidの巨大なエグジットは、この種のスタートアップにさらなる輝きを与えることだろう。

ただし、Twilioとは異なり、Plaidはまだプライベートな状態で購入されたため、その数字を詳細に見ることができなかった。利益率の高い収益が、この先伸びて行くと予想される。それは公開、未公開を問わず、すべての企業が切望していることだ。

しかしながらVisaは、この取引に対してさらに何かを求めている可能性がある。つまり、現在Visaが事業を展開している世界を再発明しようとする成長率の高い非公開企業たちの視点を、同社は手に入れたということだ。Plaidの買収は、Visaの危機に対する保険であり、またどの企業を買収すれば良いかを知る方法でもある。

しかし現段階においては、この買収はPlaidの株主(や従業員)たちにとっての勝利だ。

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(翻訳:sako)

フィンテック企業のBuxが「ソーシャル」な暗号通貨投資プラットフォームBlockportを買収

アムステルダムに拠点を置き、投資をもっと身近にしたいと考えるフィンテック企業であるBux(バックス)は、ヨーロッパの「ソーシャル」な暗号通貨投資プラットフォームBlockport(ブロックポート)を買収した。

取り引きの内容は公開されていないが、Buxによれば、これにより独自ブランドの暗号通貨投資アプリ提供への道筋が固まったいう。BUXCrypto(バックス・クリプト)と名付けられたそのアプリは、Buxが事業展開している9つの国で、今年の第1四半期に運用が開始される。

さらに、Blockportの創設者と中核チームがBuxに合流し、Buxの暗号通貨が販売された際には「所有権が与えられる」と聞かされた。BUX Cryptoがローンチされると、ユーザーは、ビットコン、イーサリアム、XRPなど、さまざまな金融資産や市場にアクセスできるようになる。その際、Blockport Tokenは、BUX Tokenと名称が改められる。

「トークンはそのままプラットフォームに統合され、株取引手数料の割り引きがユーザーに提供される取引割引機能も保持されます。またユーザーは、将来利用可能になるプレミアムな機能にBUX Tokenを使えるようにもなります。例えば、高度ソーシャルコミュニティー機能です」(この機能が何なのかよくわからないが)。

この動きは、Robinhoodや、ある意味Freetradeとともに英国の公開市場における手数料なしの株取引の分野、そして間もなく暗号通貨でもBuxと競い合うRevolutとのようなライバル企業との関連性から見ても特に面白くなりそうだ。、もちろん、Robinhoodがヨーロッパでの展開を開始したらの話だが。

「Buxのユーザーは、以前から暗号通貨への投資に関心を示しており、私たちはBuxの使命と明確に一致する情熱と意欲に溢れるチームを招き入れる機会を得ました」とBuxのCEOで創設者のNick Bortot(ニック・ボートット)氏は声明の中で述べている。「ヨーロッパの若者たちが、もっと自分の資金を生かせるようにすることが私たちの使命です。BUX ZeroとBUX Xを、ヨーロッパにおける投資と株取引の拠点として根付かせ、豊富な実績のある暗号通貨のパートナーと手を組みBuxユーザーが期待するエクスペリエンスを提供する。私たちにとってそれは、自然の流れでした」。

その一方でBuxは、未来の金融エコシステムにおいて暗号通貨は「決定的な役割」を果たすことを確信していると話している。そして、暗号通貨資産クラスを手に入れることで、ヨーロッパのあらゆる投資需要に対して、Buxは自身を「360度のソリューション」として位置づけることが可能になるという。

BUX Cryptoは、暗号通貨取引業者としてオランダ中央銀行(DNB)に登録される予定だ。

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(翻訳:金井哲夫)

GrabとSingtelが提携しシンガポールでデジタルバンクのライセンスを申請

ライドシェアサービスやフードデリバリーなどの機能を搭載したスーパーアプリを提供しているGrabとシンガポール最大の通信会社の1つであるSingtelは米国時間12月30日、デジタルフルバンクのライセンスを共同で申請すると発表した。このライセンスが承認され、シンガポール金融管理局(MSA)の基準を満たしていれば、完全な銀行機能の運用の前に簡単なクレジットや投資商品を提供できるようになる。

コンソーシアムではGrabが60%、Singtelが残りの40%の株式を保有する。共同声明によると、両企業は「(中小企業を含む)シンガポールの消費者および企業セグメントの十分なサービスが提供されていないニーズに対応する、差別化されたサービスを提供することにより金融サービス分野への貢献に取り組む」という。運転資金の確保は東南アジア全域で大きな課題となっており、いくつかのスタートアップや金融機関が信用力を試算し、融資を管理するための新しいツールに取り組んでいる。

Grabは2012年に相乗りサービスとしてスタートしたが、現在は「東南アジアを代表するスーパーアプリ」を自称し、交通、物流、食品配達、チケット、ホテル予約、金融など幅広いサービスを1つのポータルで提供するアプリを提供している。

Grabは2016年にデジタルウォレットのGrabPay Walletを導入することで金融サービスに参入し、2019年にはGrab Financial Groupをローンチした。同社によると、Grab Financial Groupのサービスにはオンライン決済、融資、保険商品が含まれ、東南アジア全体で1億人のユーザーに利用されているという。

Grab Financial GroupのシニアマネージングディレクターのReuben Lai(ルーベン・ライ)氏はプレスリリースにて、同コンソーシアムの計画は「アクセスしやすく、透明性が高く、手頃な価格のさまざまな銀行および金融サービスを提供する、真に顧客中心のデジタル銀行を構築することだ」と述べた。

MASは6月にシンガポールの銀行部門の自由化の一環として、最大2行のデジタルフルバンクのライセンスと、3行のデジタルホールセール(大口向け)銀行のライセンスを発行すると発表した。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

深化したフィンテック、10年後はまったく違うものになっている

金融テクノロジーはここ10年の間に誕生し、大きく成長した。未来に目を向けて、次の10年には何が待ち受けているのか。初期的な変化のサインは見え始めていると思う。今後10年で、フィンテックが後方に回り、1カ所で集中管理され、そこで我々のお金が管理されるようになると、フィンテックはポータブル(サービス間を簡単に移動可能)でユビキタス(いつでもどこでも利用可能)になる。

2012年にフィンテックで働き始めたとき、他社に勝てる検索キーワードを探すのに苦労した。このセクターがそもそも何と呼ばれているのか誰も知らなかったからだ。この分野で最も有名な企業はPaypal(ペイパル)とMint(ミント)だった。

2000年から現在にかけての「フィンテック」のGoogle 検索ボリュームの推移

フィンテックはそれから認知度を上げ始めた。ベンチャーキャピタルからの投資が驚異的に増加したからだ。2010年の20億ドル(約2200億円)から2018年には500億ドル(約5兆5000億円)以上になった。今年は300億ドル以上(約3兆3000億円)になるペースだ。

さまざまな未来の姿が予想された。銀行は廃業していくか衰退する、テクノロジー大手が消費者金融に参入する、少数の企業がまとめて提供していたあらゆる消費者金融サービスがばらばらに提供される、銀行と大手フィンテック企業がスタートアップを飲み込んでセクターを統合する、スタートアップはそれぞれスタートアップのための銀行になる、フィンテック「バブル」が弾けるなどだ。

実際には次のようなことが起こった。フィンテックは非常に垂直化(同じ業界内で深化)した。現在も垂直化は進んでいる。金融サービスのオフライン支店がオンライン支店になり、効率化が進んだ。次の10年は全く違った景色が見えるはずだ。見落としがちな分野から初期的な変化のサインが現れ始めており、そこから得られる次の10年の金融サービスに関する示唆は以下のとおりだ。

  1. ポータブルで相互運用可能:携帯電話と同様に、顧客は「キャリア」間を簡単に移動できる。
  2. よりユビキタスでアクセスしやすくなる:基本的な金融商品はコモディティ(ありふれた商品)となり、銀行口座を持たない市場参加者に「オンライン」によるアクセスをもたらす。
  3. 後方への移行:金融ツールのユーザーは、ツールのプロバイダーと1対1の関係を築く必要がない。
  4. 限られた場所で集中管理され「自動操縦」で運営される

予想1:オープンデータレイヤー

仮説:データは自由に移動可能(ポータブル)になり、フィンテックにとって競争力を維持する堀ではなくなる。

個人データが2019年ほど注目を浴びたことはなかった。Cambridge Analytica(ケンブリッジアナリティカ)のスキャンダルとEquifax(エクイファクス)から1億4500万人に上る情報が漏洩したデータ侵害は、データセキュリティの重要性に関する世間一般の認識を新たにした。先月、下院のフィンテックタスクフォースが会合で金融データの基準について検討し、上院は消費者オンラインプライバシー権法を導入した。

最近のテクノロジー業界で聞き飽きた決まり文句は「データは新しい石油」。他の条件が同じなら、豊富なデータを利用して最高のフィンテックを構築するのは銀行だと考えるのは自然だ。ただ、データは必要だが、データだけでは競争力を維持する堀は十分に深くならない。優れたテック企業は、データの力を活かした顧客志向の製品を解釈、理解、開発する必要がある。

次の10年でそう変わるのはなぜか。金融サービスで利用される顧客データを取り巻く壁が崩れるためだ。これが今、新興のフィンテックイノベーターが数十億ドル(数千億円)規模の銀行と競争するチャンスを生んでいる。

欧州の比較的曖昧な法律であるPSD2(決済サービス指令)によるところは大きい。支払いデータのGDPR(EU一般データ保護規則)と考えてほしい。英国は2018年、オープンバンキング制度の下でPSD2ポリシーを実行に移した最初の国となった。このポリシーでは、すべての大手銀行が、消費者の承認を前提に、フィンテック企業に対し消費者データを解放する必要がある。したがって、銀行Aに預金を持ちつつ、その預金を活用してフィンテック企業Bから住宅ローンを借りたい場合など、消費者として自身のデータを活用してより多くの金融商品にアクセスできるようになる。

FDATA(金融データ・技術協会)のような団体は、オープンバンキングをグローバルに支援しようとする全く新しい動きを象徴している。米国では、5つの連邦金融規制当局が最近、オルタナティブデータ(投資や金融に関する非従来型のデータ)の利点に関する珍しい共同声明を発表した。オルタナティブデータは、ほとんどがオープンバンキングテクノロジーを通じてのみアクセス可能だ。

オルタナティブデータのようなデータレイヤーがオープンでユビキタスになると、データを豊富に持つ金融機関の競争上の優位性を損なう。最下層のフィンテック企業には民主化をもたらし、オープンにアクセスできるデータを利用して最高の製品を開発する企業に競争が開かれる。それでも、最高の製品を開発することは簡単なことではなく、それが予想2が重要になる理由だ。

予想2:オープンプロトコルレイヤー

仮説:基本的な金融サービスはシンプルなオープンソースプロトコルになり、企業が顧客に金融商品を提供する際の障壁が低くなる。

投資、資産管理、商品売買、銀行取引、貸出システムを想像してほしい。こういったサービスを提供する市場に参入するには、法律上および規制上のリスクを回避する観点から、サービスの核になる機能を厳密にテストする必要がある。次に、エッジケース(ユーザーによる例外的な利用状況)を除外し、コンプライアンスのためのインフラを構築し、サードパーティベンダーとの契約を利用して基本的な機能を提供し(例えば、Fintech Toolkit)、これらのシステムをすべて連携させる必要がある。

その結果、各々の金融サービスプロバイダーが開発する似たようなシステムが繰り返し複製され、開発した企業ごとにサイロ化(企業独自のシステムが並立)されてしまう。さらに悪いことに、旧来の勘定系システムプロバイダーが、COBOLなどの時代遅れの言語で書かれたモノリスシステム(単一のアプリケーションで構築されたシステム)で開発する。出来上がったサービスは相互運用されず、各銀行とフィンテック企業は、自身のコアサービスに必要な金融プロトコルを構築するエキスパートになることを余儀なくされている。

だが、次に述べる3つの傾向が、今日起きている変化の方向を示している。

第1に、StripeMarqeta、Apex、Plaidなどのプラットフォームのおかげで、構築するインフラとサービスのレイヤーが分離されつつある。そういった「Finance-as-a-Service」プロバイダーのおかげで、基本的な金融サービス機能は簡単に構築できる。インフラは現在、ホットな投資分野だ。もっと多くの企業が金融サービス市場に参入し、インフラ市場のリーダーがコモディティ化を回避して価格支配力を維持できるなら、将来もホットな投資分野であり続ける。

第2に、FINOS(フィンテック・オープンソース財団)のような業界団体が、オープンソースの金融ソリューションを推進している。フィンテックのさまざまなツールを支える基本機能のためのGitHubリポジトリ(ファイルやディレクトリの保管場所)を考えてほしい。開発者はツールのコードを継続的に改善できる。ソフトウェアは業界全体で標準化される。サービスプロバイダーが提供するソリューションが基盤となるインフラを共有していれば、相互運用性が向上する。

第3に、銀行と投資運用会社が、保有するテクノロジーの価値を認識し、ライセンス供与を始めている。 例えば、BlackRock(ブラックロック)の「Aladdin」リスクマネジメントシステムやGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)の「Alloy」データモデリングプログラムがある。これらのプログラムをクライアントに有償・無償で提供することで、銀行は新たな収益源を確保し、金融サービス業界内の連携が容易になり(業界内の言語がすべて標準化されると考えてほしい)、新たな顧客基盤を生む。獲得した顧客が有益なフィードバックを返し、バグを発見し、新しい便利な製品機能を求める。

Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)のパートナー、Angela Strange(アンジェラ・ストレンジ)氏は「銀行と提携したり、ライセンス供与や規制関連の手続き、必要とする決済ネットワークをパッケージ化したりするインフラ企業がいくつか存在する。もし金融会社を始めたいなら、何年もかかって何百万ドルも使って提携関係を構築する必要はない。すべてサービスとして利用できる」と指摘する。

フィンテックが発展する過程は、コンピューターとほぼ同じだ。最初、ソフトウェアとハ​​ードウェアは一体だった。その後、ハードウェアとオペレーティングシステム(OS)が分離し、OSを中心としたエコシステムが構築された。そして、インターネットがオープンソフトウェアの世界を「Service-as-a-Software」によって切り開いた。今後10年間のフィンテックも、過去20年間のインターネットに似た展開を見せる。

インフォグラフィック:Placeholder VCのご厚意による

予想3:組み込みフィンテック

仮説:フィンテックは、非金融製品の基本機能の一部になる。

組み込みフィンテックの概念は、金融サービスが独立した製品(プロダクト)として提供されるのではなく、他の製品のユーザーインターフェイスの一部として組み込まれることだ。

この予想は過去数カ月にわたって支持者を獲得した。理由は簡単だ。銀行との提携とインフラソフトウェアプロバイダーの存在が、消費者金融をコアビジネスとしない企業に「我々でもできるのではないか」と思わせ、フィンテックの分野に足を踏み入れるよう促したからだ。

Apple(アップル)はApple Cardをデビューさせた。Amazon(アマゾン)は、Amazon PayとAmazon Cashプロダクトを提供している。Facebook(フェイスブック)はLibraプロジェクトを発表し、その後まもなくFacebook Payを始めた。Shopify(スポティファイ)やTarget(ターゲット)など、さまざまな企業が支払いや買い物向け金融サービスを提供することに目を向け、フィンテックが世界を席巻し始めた。

これが将来を示唆するシグナルならば、次の10年間の金融サービスの姿は、消費者が新しいプロバイダーとの関係を構築しなければ使えない製品の提供ではなく、消費者がすでに直接的な関係を持っているプラ​​ットフォーム上の機能の提供になる。

Bain Capital Ventures(ベインキャピタルベンチャーズ)のMatt Harris(マット・ハリス)氏は、最近の一連の寄稿(12)で、フィンテックが組み込まれることの意味を要約しており、金融サービスがインターネット、クラウド、モバイルの上に構築される次のレイヤーになると述べている。現在、このレイヤーを介して常に接続・利用できる強力なツールがある。支払い、各種取引、クレジットなどの組み込みサービスにより、ユーザーは自身の財務をそのためだけに管理する必要がなくなり、より多くの価値を享受することができる。

フィンテックのビジョンを語るBrett King(ブレット・キング)氏はさらに簡潔に述べている。テック企業や大規模な消費者ブランドは、金融商品の門番となり、金融商品自体はユーザーエクスペリエンスの後方に移動する。そうした企業の多くは、顧客にとって粘着性や親和性の高い製品を販売する過程で貴重なデータを得ている。データがコスト削減や金融取引の機会を生み出し、独自の優位性につながる(例:新しいiPhoneの支払い計画)。一次サービス(例:iPhoneの製造)と二次組み込みファイナンス(例:小口融資)の組み合わせは、一方をロスリーダーとして採算度外視で顧客を集め、他方で利益を得ることを可能にする。例えばAppleが、IPhoneの価格を低く抑える一方で、アプリストアにおける取り分を増やすようなイメージだ。

これはフィンテックの消費者にとって朗報だ。支払い、投資、節約、支出の新しい方法を探す必要がなくなるからだ。消費者に直販するブランドにとっては変化であり、ブランド面以外での競争を余儀なくされ、顧客との関係をアグリゲーター(バリューチェーンを再構築・再統合して新しい価値を生み出すプレーヤー)に明け渡してしまう可能性がある。

それでも、従来のフィンテック企業は、巨大テック企業の利用者を活用してリーチを伸ばし、巨大テック企業のプラットフォームのコンテキストデータを再構築することで利益を得ている。Google Mapsから呼び出せるUber(ウーバー)を考えてみよう。目的地への道順を検討している顧客にリーチするために、利用可能な車をアグリゲーター(この場合はGoogle Maps)に載せるというUberの選択は、計算されたものであると言える。

予想4:すべてをまとめる

仮説:消費者は1つの中央ハブから金融サービスにアクセスする。

フロントエンドの消費者ブランドからバックエンドの金融サービスへの移行に合わせて、ほとんどの金融サービスはハブに一元化され、すべて1カ所で表示される。

消費者にとって、ハブはスマートフォンかもしれない。小規模ビジネスの場合、QuickbooksやGmail、現金レジかもしれない。

Facebook、Apple、Amazonのような企業はオペレーティングシステムをプラットフォーム間で分割しているため(Alexa + Amazon Prime + Amazonクレジットカードを考えてほしい)、1つのエコシステムを使うと決めているユーザーにはメリットがあり、どのプラットフォームでも個人の財務管理ができる。だが将来は、プロバイダーがプラットフォームを相互運用可能にし、例えばAlexaがAndroidユーザーに勝てるようにする。

フィンテックオタクとして、筆者はさまざまな金融商品を試すのが大好きだ。だが、ほとんどの人はフィンテックのオタクではなく、やり取りするサービスはできるだけ少ないほうが良い。複数のフィンテックとの個別のやり取りは、消費者にとっての価値を減らしてしまう。また、優れた製品は、顧客を中心に考えて、直感に基づいて設計されている。ストレンジ氏の投稿「Google Maps for Money」ではこれを「自律型ファイナンス」と呼んでいる。ユーザーが利用する金融サービス製品がユーザーの財政状態をユーザー自身よりも把握し、金融サービス製品がユーザーのお金に関し最良の選択を行い、それを表に出ず静かに実行するため、ユーザーが自分で判断・実行する必要がないといった姿だ。

つまりここで、サービスがもう一度ひとつにまとめられる動きが起こる。これはフィンテックの自然な帰結だろうか。金融サービスが他の製品の一部の機能としてごく自然に組み込まれた状態に慣れるにつれて、消費者はハブに入っているサービスとの関係を深め、ハブを通して自身の財務を管理するようになる。テック企業は、消費者が好きになるような製品のユーザーインターフェイスを設計するという点では当然に優位性を持っている。あなたが銀行のWebサイトやInstagramフィードにもっと時間を使うことは楽しい体験だろうか。今日、それらのハブになっているのはスマホとノートパソコンだ。将来的には、電子メール、車、電話、検索エンジンなど、他のモノになる可能性があるだろうか。

フィンテックの発展はコンピューターとインターネットの進化を反映し、相互運用性を増し、日常のサービスに組み込まれるようになる。個人の財務管理を行う主体についての考え方が根本的に変わるとともに、そもそもそれについて考えなくても良いようになる。1つ確かなことがある。2029年にこの手の記事を執筆する頃までには、フィンテックが今日の姿とは著しく異なっているということだ。

画像クレジット:martindm  / Getty Images

【編集部注】筆者Nik Milanovic(ニック・ミラノビッチ)氏は、フィンテックおよびファイナンシャルインクルージョン(あらゆる人に金融の知識・サービスへのアクセスを確保する考え方)の支持者であり、約10年間、モバイル決済、オンライン融資、クレジット、マイクロファイナンスなどの仕事に携わっている

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi)

街のクリスマスミュージックよりひどいBitcoinクリスマスミュージック

ホリデーシーズンは何でもあり。できればいい気分になるものが欲しいよね。でも、この記事にそれはない。なんとか聴きつづけることはできる、Bitcoinクリスマスミュージックというひどいパロディー作品をご紹介しよう。

エンジョイ!

このアカウントには、同じようなファン・フィクションの楽曲が山ほど投稿されている。これは、bitcoinのファンも他のトレーダーと同じような人たちであり、彼らにも友だちが少ないことを証明している。

お別れにもう1曲!

ではオフラインにして、愛する人との時間をお過ごしください。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

【中国ニュースまとめ】アリババ傘下のAnt Financialの新トップとテンセントの新アプリ

こんにちは。TechCrunchによるまとめ中国ニュースにようこそ。これは中国の技術情勢を伝える最新情報と、それが世界中の人々にとって何を意味するのかをお知らせするダイジェストだ。今週は、Ant Financial(アント・フィナンシャル)の経営層の交代がAkibaba(アリババ)の金融施策に与える影響と、なぜTencent(テンセント()がアプリを大量に発表したのかを見ていくことにする。

古いボスの帰還

今週、アリババが33%の株式を握り、Jack Ma(ジャック・マー)氏が経営している、オンライン金融サービス会社のAnt Finantialは、Hu Xiaoming(フー・シャオミン)氏を新しい最高経営責任者として発表した。アリババで経営の交代は珍しくない。アリババ自身も競争環境の中で、新鮮で機敏な状態を保つために、数カ月ごとに幹部を交代させることを誇りにしている。最新の交代は、世界で最も評価額の高い未公開フィンテック企業であるAntが、今後数年間でどこに向かうのかを示す手掛かりを提供している。

フー氏はこの先、Antの国内決済および金融サービス部門の成長を牽引し、前任者で現在会長を務めるEric Jing(エリック・ジン)氏が新技術の海外展開と開発を管理することになる。中国のいくつかの大手銀行で働いた経験を持つフー氏は、2005年にアリババの新しい金融サービスを拡大するために同社に入社し、それ以来Ant Financialがマネタイズへの道を切り拓く手助けをしたことで有名だ。

2009年頃、フー氏はアリババの電子商取引プラットフォーム上で中小の販売店を対象としたマイクロローンサービス を開始するという大胆な施策を行った。これは、銀行との取引履歴がなかったために従来の金融機関から借り入れを行うことができなかった何百万もの業者たちにとっては有り難い施策だった。アリババは、取引履歴の代わりにオンラインセールスや顧客評価などのデジタル記録に基づいて信用力を評価した。現在、小規模ローンは、拡大を続けるAnt金融帝国の多数の提供物の1つに過ぎない。この帝国は、10億ユーザーを誇るAlipay支払いアプリや、世界最大のマネーマーケットファンド、そして信用格付けシステムSesame Creditなどの運用も行っている。

2014年、同氏はアリババのクラウドビジネスをリードするように任命され、やがてそれを同社の最も急成長しているセグメントの1つとして成長させ、アマゾンウェブサービスに対する真の競争相手とすることに成功した。フー氏は当時、アリババクラウドとは無縁ではなかった。フィンテックユニットの既存の(中国語)IT環境にクラウドコンピューティングの導入に すでに取り組んでいたからだ。実際、アリババクラウドの初期のアプリケーションのほとんどはアリババ社内で開発されていた、これは同社が、大規模なほとんどの国際ベンダーが提供できるものよりも、スケーラブルでカスタマイズ可能なITシステムを開発する緊急性を感じていたためだ。

フー氏の指揮の下、クラウド部門は、中国東部のアリババの故郷である杭州政府と、データ分析とクラウドコンピューティングソリューションを利用して交通渋滞を緩和する大規模な契約を結んだ。政府との契約は、コストのかかる最新技術を開発する企業にとって重要な手段だ。イノベーションが実際に実証されればすぐに、民間の需要もやがて上向くことになる。

アリババの金融関連会社Ant Financialの新CEOフー・シャオミン氏

新しいテクノロジーの商業化と州機関との協力の経験をもつフー氏の経験は、彼を重要な時期にAntの理想的なリーダーの地位に押し上げた。伝えられるところでは、北京政府が民間企業があまりにも大きな影響力を持つことを心配したために、昨年期待されていたAnt FinancialのIPO計画が延期されたという。規制当局と大手銀行からの懸念を和らげるために同社は最近、金融サービスそのものではなく、テクノロジーソリューションの販売により重点を置くようになった。

ソーシャルネットワーキングへの不安

テンセントは、2019年の初めから、少なくとも7つの新しいソーシャルネットワーキングアプリをリリースしている。大学生をターゲットにしている場合でも、ビデオベースのチャットを専門にしている場合でも、それぞれの狙いはわずかに異なっている。業界のオブザーバーたちは、テンセントのこの動きは、挑戦者たち、特にTikTok、中国では抖音(Douyin)で世界を席巻したByteDance(バイトダンス)と戦うために行ったものだ述べている。(TikTokの)短い動画は、テンセントのメッセンジャーWeChatと直接競合することはないが、確実に人びとのスクリーン時間をより多く消費している。また、ByteDanceが ビデオゲームメッセージングに参入することで、テンセントのコア市場に侵入しつつある兆候が現れている。

テンセントはまた、WeChatの成長の鈍化についても心配しているのかもしれない。この減速の一因は、アプリが既に膨大な利用者ベースに到達した(毎月10億人以上のユーザー)からであり、成長は必然的に落ち着いてきていたのだ。中国のPC時代を席巻した、テンセントのメッセンジャーであるQQの最盛期に始まった、モバイルインターネット革命のスタート時に、WeChatはテンセントへタイムリーな後押しを与えた。現在テンセントは、WeChatアプリを若返らせるための画期的な機能や、WeChatとQQの成功を再現する新しいソーシャルネットワークといった、新しい成長エンジンを必要としているようだ。

テンセントは、中国の他のすべての大手インターネット企業と同様に、ハイテク業界の変化する環境に対応するために、常に新製品をテストしていることに留意する必要がある。テンセントは社内で「競馬」と呼ばれている手段によって、各部門を競わせることで有名だ。WeChatもおよそ10年前にこの動きから生み出されたものだ。こうしたプロジェクトのほとんどは成功しないが、開発プロセスの大部分が標準化されているため、テンセントのような巨人にとっては、新しいアプリの作成コストは無視することが可能だ。必要なのは、WeChatのAllen Zhang(アレン・チャン)氏のような先見の明を持つ人が率いる、10人余りの従業員からなるスカンクワーク(革新技術開発)チームなのだ。

その他の注目情報

GPUで知られるチップメーカーのNvidia(エヌビディア)はすでに、自動運転の分野で約370の自動車メーカー、ティア1サプライヤー、開発者、そして研究者たちと協力している。今週、そのパートナー集団に中国最大の配車企業であるDidi Chuxingが加わった。両社は共同で、Didiのレベル4自動運転車(基本的な状況下で、人間の介入なしに動作することができる)用のGPUの開発に取り組むことを、声明で述べている。8月に自動運転部門を別の会社に分離したDidiは、先月の業界会議の中で、上海の路上で自動運転車のテストをもうすぐ開始する計画があると発表している。

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(翻訳:sako)

銀行統合プラットフォーム「Send」が25種類の通貨でPSP送金できる「Curve Send」を提供開始

Curveは、「over the top」と呼ばれる銀行プラットフォームを開発・運営している英国ロンドンを拠点とするスタートアップで、複数の銀行カードを1枚のCurveカードとアプリに統合できるサービスを提供している。このほど家族や友人への送金が簡単にできる新サービスを開始した。

「Curve Send」と名付けられた新機能は、Curveに紐付けられた銀行のデビットカードを通じてどこの銀行口座にも25種類以上の通貨で送金できる。技術的にはVisaとMastercardのAPIを利用しており、Curveを仲介者とすることによってカードネットワーク全体を実質的に1つのネットワークのように使える。

「Curve Sendはあらゆるカードを1つにまとめることで、複数の銀行口座や複数の通貨を使う人への送金で多くの人が体験している面倒なプロセスを省略し、金融の分断化問題を即座に解決できる」と同社は説明する。

Curve Sendで送金するには、Curveアプリを開き、連絡先から送金相手を選んで金額を指定したら、送金元として使用する銀行カードを選ぶ。受け取る側には通知が送られ、キャッシュカードの写真を撮るよう依頼される。するとCurveがカードネットワークを通じて相手の銀行口座に直接送金する。

「Curve Sendを利用した送金の支払いや受け取りに手数料はかからない」と同社。FXも「ミッドマーケット」レートで取り扱い手数料はかからない。Curveの無料プランユーザーは月額500ポンドまで、Curve BlackとCurve Metalのユーザーは上限なしだ。

Curveの創業者でCEOのShachar Bialick(シャチャー・ビアリック)氏はTechCrunchへのメールで、「Curveは実質的に通貨取引所として機能している」と語った。VisaとMastercardを統合し、Curveが2つのカードネットワーク間の連携を支援することで、ピア・ツー・ピア支払いを可能にしている。「過去2ヶ月間テストしてきたが、利用者の反応はすこぶる良い」と同氏は語る。

CurveのOSプロダクト責任者であるDiego Rivas(ディエゴ・リバス)氏は声明で、顧客は家族や友達に数回のタッチで送金したいと思っている。しかし、さまざまなオプションやチャレンジャーバンクと呼ばれる新規の金融サービスの台頭によって手順は必要以上に複雑化し、送金するだけのためにアプリを3つも4つも立ち上げなくてはならない。このプロセス全体を10倍簡単にしたいとわれわれは考えた。今はシンプルで賢いプラットフォームを使うことで、どんな口座からどんな口座へも安心確実に送金できるようになった」とコメントしている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Rippleが約220億円を調達して国際決済における暗号通貨XRPの普及に注力

暗号通貨を利用して国際送金サービスを提供しているRipple(リップル)が、シリーズCで2億ドル(約220億円)を調達した。ラウンドをリードしたのはTetragon、これにSBIホールディングスとRoute 66 Venturesが参加した。Fortune誌によると、同社の評価額は現在100億ドルである。

RippleのCEOであるBrad Garlinghouse(ブラッド・ガーリングハウス)氏は、発表声明で「現在の財務状況はとても良いので、私たちのビジョンは達成できる。ブロックチェーンの分野は成長が鈍化したり閉鎖したところも多いが、当社は勢いを加速し2019年全体を通じて業界のトップだった」と述べている。

Rippleが力を入れているのは、国際決済などの送金業務で、独自のブロックチェーンXRP Ledgerを持つ暗号通貨XRPをそのために用いている。XRPトークンの現在の時価総額は、bitcoinとEthereumに次いで3番目に大きい。

CoinMarketCapによると、XRPトークンの時価総額は現在84億ドル(約9200億円)だ。XRPは分散型の暗号通貨だが、時価総額のかなりの部分をRippleがコントロールしている。保有していることそれ自身に価値がある。Rippleは2019年の第三四半期には、XRPトークンで6624万ドル(約72億円)を売却した

Rippleは、暗号通貨(そして特にXRP)は国境を越える取り引きに大きな便宜をもたらす、と考えれれている。そして暗号通貨は、従来の外為ソリューションに比べて安価で手続きが迅速である可能性があります。

同社は金融機関に、国際決済のためのバックエンド通貨をRippleNetに切り替えるよう、説得してきました。

RippleNetには現在300の顧客が存在し、特にRippleは送金サービスMoneyGram(マネーグラム)の株を10%取得して、同社が少なくとも部分的にRippleNetに切り替えるよう促している

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

PayPalがオンライン決済の中国GoPayの買収を完了、海外オンライン決済サービスとしては中国初

PayPal(ペイパル)は12月19日朝、GoPay(Guofubao Information Technology)が発行する株式の70%を買収したと発表した。これにより、PayPalは中国でオンライン決済サービスを提供する初の外国企業による決済プラットフォームとなる。株式の買収は中国人民銀行に9月30日に承認されていて、このほどクローズした。ディールの詳細は非公表だ。

GoPayはオンライン決済とモバイル決済のライセンスを保有し、主にeコマースやクロスボーダーコマース、観光などの業界向けの決済プロダクトを提供している。PayPal同様、GoPayも顧客がオンラインショッピングをする際に小売がウェブサイト上で支払いを受け付けられるようにする。中国の決済マーケットは、AliPayやWeChat Payなどeウォレットプロバイダーを含む地元企業が主導しているが、PayPalがサービスを展開する余地は残されている。中国では毎年、電子決済が数十億ドルではなく、数兆円規模で行われている。

Frost & Sullivanの予測によると、モバイル決済だけみてもマーケットは2017年の29兆9300億ドル(約3300兆円)から2023年には96兆7300億ドル(約1京580兆円)へと年21.8%ペースで成長することが見込まれている。これは部分的にはeコマース需要の増加による。アクティブモバイル決済客の総数は2023年までに9億5600万人に達するとも予想されている。中国マーケットではまた、クロスボーダー決済も増加していて、特にeコマース、旅行、海外教育などの部門で顕著だ。2016年には6兆6600億ドル(約730兆円)に達した。

米国の金融機関は長い間、中国進出に苦心してきた。2018年に中国中央銀行は外国の決済サービス企業に門戸を開くと述べていたが、承認は遅々としていた。2018年11月なってようやく、American Express(アメリカン・エキスプレス)が中国でのクレジットカード決済サービス展開が許可された初の米国企業となった。VisaとMastercardも同様に参入を試みている。

「この歴史的な買収を完了させることができうれしく思う。これでダイナミックな中国マーケットに参入できる」とPayPalの会長でCEOでもあるDan Schulman(ダン・シュルマン)氏は買収クローズに関する声明文で述べた。「弊社にとって重要なステップであり、中国の金融機関やテクノロジーのプラットフォームの強力なパートナーとなることができる。中国のeコマースと決済エコシステムの成長に貢献することを楽しみにしている」。

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(翻訳:Mizoguchi)

SBIが中国・平安グループと連携、地方銀行にAIやブロックチェーンの技術を注入

SBIホールディングスは12月19日、中国の民間金融機関である平安グループ(Ping An Insurance Group Company of China)との提携を発表した。平安グループの完全子会社であるAn Ke Technologyと子会社であるOneConnect Financial Technologyと共同で、SBI OneConnect Japanを設立する。出資比率は、SBIグループが60%、平安グループが40%。世界最大級の金融グループのテクノロジーがSBIグループの力を借りて日本進出を果たすことになる。

SBI OneConnect Japanでは、SBIグループが取り組んでいる地方創生、地方銀行の活性化事業に、OneConnectのフィンテックプラットフォームをカスタマイズして提供する。平安のOneConnectは、AIやブロックチェーンを活用して、銀行や保険、投資などのサービスやツールをモバイルやオンラインで提供している企業。リリースから3年程度で、銀行は618行、保険会社は84社、そのほかの金融機関を合計すると3700社を超える企業にソリューションを提供している、中国では国内の商業銀行をはじめとした銀行の99%、保険会社の46%をカバーする。

なお平安グループのOneConnectはソフトバンク・ビジョンファンドなどが株主となっており、12月4日は、ニューヨーク証券取引所に上場。ただし、IPO時に想定された株式公開価格は当初よりも大幅に下がっているなど、現在のところ、米国市場での評価はいまひとつだ。

関連記事:OneConnectのIPO評価額の急下落から見える急成長急燃焼企業の危うさ

詳細は追って記載する。

すべてのチューリップはいずれ枯れる、2020年の差し迫る仮想通貨の価値半減のウワサ

最近、仮想通貨にとって不幸な日が続いている。夏の間に一部回復した後、ビットコインやその他の仮想通貨の価値は、ここ数週間で急落した。1カ月前を振り返ると、ビットコインの価値は1コインあたり約8500ドル(約93万円)だった。しかし現在の価値は2000ドル近くも下がっている。

イーサリアムの値は先日6%下がり、リップルはさらに悪く7%の下落だ。ビットコインキャッシュも同日に7%下がっている。大きな下げ幅だ。どれも、ビットコイン支持者を増やすような段階ではない。なお仮想通貨関連のフォーラムを見ると、ビットコインはわずかな間しか売られておらず、後に再び上昇するという。そうだといいのだが。たとえ、2020年の差し迫る価値半減のウワサが、強気の影響を持たないとしても。

しかし、2019年も終わりに近づいてきた今、ビットコインなどの仮想通貨にとって、事態ははそれほど素晴らしくはない。ここでは、英国のロックバンドであるAlan Parsons Projectの不朽の言葉を引用しておこう。

上がったものは下がる

立ち上がったものは朽ちる

そして、人生には

悪い兆しがある!

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

OneConnectのIPO評価額の急下落から見える急成長急燃焼企業の危うさ

先週、OneConnect(ワンコネクト)が米国でIPO(株式上場)を計画しているという話が我々のもとに飛び込んできたが、それは無理のある話だった。この会社の株式公開は興味深く、同時に重要なものだった。そこで、私たちが見落としている問題とこのIPOが気になる理由を理解するために、ちょっと考えてみよう。

新規株式公開を行ったOneConnectは、中国の銀行や選ばれた海外企業にサービス近代化のための金融技術を売る企業だ。OneConnectの収益の大半は製品の使用料であり、APIコールを含む商取引による収益の4分の3を占める。

ソフトバンクビジョンファンドが支援するこの企業は、新規公開株価を1株あたり10ドルに設定したが、先週は、1株10ドルと変わらない株価で取り引きを終えた。

OneConnectは、米国内ではほかと特段変わらないIPO上場を果たした中国企業であり、大勢の中のひとつに過ぎない。なのに、どうしてこんなにその上場が問題視されているのか?

理由はいくつかある。この上場により、ソフトバンクとビジョンファンドにまたしてもリクイディティ(市場流動性)問題が増えるためでもある。2つめのビジョンファンド(ビジョンファンド2)のエンジンを盛んにふかす日本のこの複合企業体には、その勝者を選ぶ能力の見返りと証明、そして資本投入で自らに燃料を注ぐことが鍵となる。だから、OneConnectが公開企業として成功することがとても重要なのだ。

そして我々、市場のオブザーバーにとって同社の上場は、金融の観点から2倍の興奮をもたらすものだった。いや、OneConnectは儲かっていない(むしろその逆だ)。興味がそそられるのは、投資の誘いをしている間に、売り上げが大きく下落していたことだ。WeWork(ウィワーク)後の世界では、それは流行遅れとされているはずだが。では、どれだけの評価額になったかを見てみよう。

OneConnectの価値は?

OneConnectは、株式公開価格を9ドルから10ドルを目指していた。なので、実際の価格はその最高値ということになる。とはいえ、最初から幅が非常に狭かったこともあり、大きな効果は得られなかった。OneConnectが当初は12ドルから14ドルとしていた株式公開価格(こちらのほうがずっと標準的だが)から下げた価格帯であることを思うと、なおさら効果は薄かった。そうして、同社は期待されていた最高値を実現できたのだが、あくまで価格帯を下げたうえでのことだ。

結果として、ニューヨーク・タイムズが株式公開価格から計算したOneConnectの評価額は、およそ37億ドル(約4050億円)だった。TechCrunchが独自に計算したところでは、ややマシな38億ドル(約4160億円)だった。いずれにせよ、がっかりする額だ。

Crunchbaseのデータによれば、2018年の初めにOneConnectがソフトバンク・ビジョンファンドから資金調達をしたときは、投資前の企業価値68億ドル(約7450億円)に対して6億5000万ドル(約712億円)が投資されている。それにより、この中国平安グループの企業の投資後の価値は74億5000万ドル(約8160億円)となった。現状で株式公開価格を下げなければならなかったことは、OneConnect自身にも、中国平安にもソフトバンクにも痛手だ。

なぜこんなに安いのか

最初に、ちょっと考えてみようと言ったからには手短に話そう。OneConnectは事業で大幅な損失を出したが、同社の不採算性が深刻なだけに、一般投資家への影響が思っていたより大きかったのだ。

OneConnectは、2019年の第1四半期から第3四半期までの間に、なんとか70%以上の増収を果たし、その時点での総収入は2億1750万ドル(約238億円)を記録した。ところが、その期間の売上高はわずかに7090万ドル(約77億7000万円)と、営業経費を賄える程度だ。だが、この会社の費用構造の規模はその売上高をずっと上回る。

その同じ9カ月の間、OneConnectでは、セールスとマーケティングの経費だけで総利益を上回った。そんなわけで、OneConnectの2019年の第1から第3四半期の営業経費は2億2760万ドル(約250億円)にのぼり、その時期の営業損失は1億5660万ドル(約17億2000万円)となってしまった。

つまりOneConnectは、成長すればするだけ大量の現金を燃やすことになる。今もまだ投資を求めて精力的に動いているものの、収益性の改善からはほど遠い状態というのが流行っているらしい。ある意味、OneConnectがそれを裏付けている。独立するためには、急激な評価額の下落に耐えなければならなかった。その事実ひとつだけでも、市場のムードは一変してしまった。

画像クレジット:Roberto Júnior on Unsplash

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(翻訳:金井哲夫)

ギグワーカーの財務管理を支援するフィンテックアプリのPortifyが約10億円調達

Portify(ポーティファイ)は、英国ロンドンのフィンテックスタートアップで、ギグワーカーなどの柔軟に働く現代の「自営業者」に財務管理を支援するアプリや金融商品を提供している。同社は、シリーズAで700万ポンド(約10億円)を調達した。1年前にはシードで130万ポンド(約1億9000万円)を調達している。

今回のラウンドはRedalpineがリードした。RedalpineはN26、Taxfix、Finiataなどにもアーリーインベスターとして投資している。既存の投資家からはKindredとEntrepreneur First(EF)が参加した。

PortifyはEFの卒業生でCEOのSho Sugihara(ショウ・スギハラ)氏とCTOであるChris Butcher(クリス・ブッチャー)氏が2017年5月に創業した。経済的に不安定な形態で働く労働者が直面する問題に立ち向かう。柔軟な働き方をする、いわゆるギグエコノミーの労働者、商店やクリエイティブ業界などの自営業者が対象だ。

同社は、モバイルアプリからアクセス可能な独自の金融商品を多数提供する。また、オープンバンキングを利用して、現在の資産・負債・収入に関する情報を提供し、短期および長期の財務計画を支援する。最近まで、同社のマーケティング・営業戦略は主にB2B2Cで、Deliverooなどのギグエコノミープラットフォームとのパートナーシップによるものだった。現在はB2Cに手を広げている。

「労働者が特定のパートナープラットフォームで働いていなければ、アプリにアクセスできなかった」とPortifyの共同創業者兼CEOのスギハラ氏は言う。「ターゲットとなる現代的な労働者の特性に100%照準を合わせ、経済面で彼らを社会に包摂したかった。だが、初期のユーザーを観察してわかったのは、現代的な労働者の多くが「credit Invisible」「thin file」(いずれもクレジットカードの使用履歴などの信用情報が十分に蓄積されていない人々)で、基本的な金融商品が利用できないということだ」。

「信用情報が蓄積されていない理由はさまざまだが、主な原因は、収入パターンが不安定、最近英国へ移民してきたばかり、信用情報がないためにクレジット商品を使ったことがない、といったものだ」。

スギハラ氏によると、信用情報不足の労働者の多くはギグ(単発の仕事)や一時的な人材派遣プラットフォームで収入を得ているが、プラットフォームを頻繁に切り替えている労働者も多い。零細の商店経営者や、被雇用者だが一時的に副業に携わる労働者が含まれる。

「あらゆる信用情報不足の労働者を経済的な面で社会に包摂するという使命を果たすため、アプリをできるだけ使いやすくすることが重要だと思った」と彼は説明した。「つまり、ユーザーがアプリストアからアプリを直接ダウンロードできることが大事だ」。

Portifyは、調達した資金でマイクロビジネス向けに個人ローンを提供し、信用情報構築を支援する予定。すでに今年初めにアプリでクレジットサービスを始めた。

「当社のリボルビングクレジット枠は現在250ポンド(約3万6000円)が上限だ」とスギハラ氏は言う。「特定の要件を満たすユーザーについては、500〜1000ポンド(約7万3000円〜14万6000円)に引き上げる予定だ。現代的な労働者の多くが、小規模企業や個人商店であり、収入や売上高の変動などの中小企業に典型的な問題に直面している。大きめの中小企業のキャッシュフローの問題を解決する手段は数多くあるが、現代的な労働者向けには乏しい。消費者・ビジネスいずれにも当たらないということで見落とされてしまう。既存の金融機関は彼らにサービスを提供する最善の方法を知らないのだ。ここに大きなチャンスがあり、追いかけている」。

Portifyは主要な信用調査機関と協力して、ユーザーの同意を得たうえでアプリが生成したデータを共有し、ユーザーの信用度向上に役立てている。

「クレジットにアクセスできないことは、現代的な労働者にとってストレスが大きい」とスギハラ氏は説明する。「現代的な労働形態で週80時間以上働き、全国平均以上の収入を得ていても、フルタイムの仕事をしていないために、住宅ローンはもちろんのこと、基本的な個人ローンを組むのにも苦労することがある。単にフルタイムの仕事に就いておらず、既存の金融機関のチェックリストでチェックを入れられないからだ。ユーザーはこの問題を解決するために当社の支援を必要としている」。

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(翻訳:Mizoguchi)

高価な株式でも0.000001株から取引できるRobinhoodの1株未満取引

Amazon株は1株1700ドル(約19万円)以上するため、資金力がない投資家は取引から締め出されている。株の取引を身近にするために、Robinhood(ロビンフッド)は「1株未満」取引の取り扱いを始めた。株数で注文する場合、0.000001株から注文可能で、金額は1セント単位で四捨五入される(ただし投資金額は1ドルから)。金額で注文する場合はやはり1ドルから。手数料はかからない。

同社は100万分の1単位による購入を可能にして、Square Cashが最近発表した1ドルから投資できる1株未満取引の魅力を低下させた。Robinhoodのユーザーは、サインアップ後、1株未満取引への先行申し込みが可能だ。「当社のコアバリューの1つは、『参加は力』だ」とRobinhoodの共同CEOであるVlad Tenev(ブラッド・テネブ)氏は述べた。「当社が行うことはすべてコアバリューに根ざしている。1株未満取引は、さらに多くの人々に投資への道を開く可能性があると信じている」。

1株未満取引があれば、誰も株式取引を諦める必要はない。Robinhoodは、これまでに調達した9億1000万ドル(約1000億円)の資金も利用して、現在1000万人のユーザー数をさらに増やせる。Charles SchwabやE*Tradeのような従来の証券会社がRobinhoodの手数料無料の株式取引を真似し始めた今、同社は包括的な金融ツールで先を行く必要がある。ただし今年は、Schwab、Square、Stash、SoFiがすべて1株未満取引を始めたため、この点では追いつかれつつある。Bettermentは2010年から1株未満取引を提供している。

Robinhoodは、資金力に乏しいユーザーに向け多様な新機能を提供している。10月に発表した現金管理機能は、待機リストに入った最初の80万人のユーザーに提供されている。同機能は、Robinhoodに預けた金額に年利1.8%の利息を付与するだけでなく、支払いや幅広いATMネットワークで引き出しができるMastercardデビットカードを提供する。これは1年前に失敗した年利3%のRobinhood Checkingの縮小版焼き直しだ。当初のバージョンは保険が確保できず廃止された。今回のバージョンは付保されている。

さらに、Robinhoodは来年初めに、要望が多い2つの機能をリリースする。「配当再投資プラン」は、ユーザーが受け取る配当を株式やETFに自動的に再投資する機能だ。「継続投資」のほうは、ユーザーが毎日、毎週、隔週、毎月などの一定間隔で株式に投資できる。上記に加えて可能になった仮想通貨取引により、Robinhoodは競合他社によるコピーが難しい総合金融サービスに進化しつつある。

Robinhoodの1株未満取引の仕組み

「投資したいのであれば、手元資金の量は問題にならない。1株未満取引で、Amazon、Apple、Disney、Berkshire Hathawayなどの数千銘柄の株式やファンドへの投資機会を提供する」とRobinhoodのプロダクトマネージャーであるAbhishek Fatehpuria(アビシェク・ファテピュリア)氏は述べた。

ユーザーは、市場が開いている時間帯に、1ドル以上なら0.000001株という小さい単位でリアルタイムで1株未満取引の注文を出せる。時価総額が2500万ドル(約27億円)を超える1株当たり1ドル以上の株式が対象となり、4000種類の株式とETFが手数料なくリアルタイムで取引できる。

「参加は力だと信じている。当初から、誰もが金融システムに参加できるよう、取引手数料や口座維持最低残高などの障壁を打破することに力を注いできた」とファテピュリア氏は言う。「当社には独自のユーザー基盤がある。ユーザーの半分は当社で初めて投資する。ユーザーの年齢の中央値は30歳だ。当社は、新しい世代に株式市場へのアクセスを提供する機会を手にしたのだ」。

Robinhoodは、他のスタートアップや金融大手が追いつく前にフリーミアム投資ツール市場を制覇するつもりだ。来年の英国での立ち上げの待機リストも開設した。同社にとって初の海外市場となる。だが先月、Alpacaが誰でも株式仲介アプリを作成できるAPIで600万ドル(約7億円)を調達し、Atom FinanceはRobinhoodのアプリ内機能と競合する無料の投資調査ツールで1250万ドル(約14億円)を調達した。Robinhoodは、ユーザーが限度額を超えて借入をして取引する事態を招くという恥ずかしい失敗もしている。

「素早く動いて何でも壊してしまえ」という考え方は、金融に適用されると新たな危険を引き起こす。投資の機会を多くの人に提供するという目標を達成するために多くのプロダクトに手を広げるなら、Robinhoodは急ぎたいという衝動を抑えなければならない。

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(翻訳:Mizoguchi)

BloombergターミナルのライバルAtom Financeがフリーミアムモデルの刷新に向け約14億円を調達

ウォール街で勝ちたいならYahoo Financeでは物足りないが、かといってBloomberg(ブルームバーグ)ターミナルを導入すると年間なんと2万4000ドル(約260万円)もかかる。そこでAtom Financeが、プロの投資家が行うリサーチを身近にする無料のツールを開発した。Robinhoodが株の取引コストをゼロにしたとすれば、Atom Financeはどの株を買うべきか判断するコストをゼロにする。

Atomは12月12日、財務モデリング、ポートフォリオトラッキング、ニュース分析、ベンチマーキング、ディスカッションツールへアクセスできるモバイルアプリを立ち上げた。かつてSaaSで起きたのと同様のコンシューマーライゼーション(組織ではなく個人をエンドユーザーとしてプロダクトを設計すること)だ。「投資調査ツールは、消費者の経済面の生活を豊かにするには欠かせないものであり、他の分野で起こっているのと同じようなイノベーションのスピードとアクセスのしやすさがあって然るべきだ」とCEOのEric Shoykhet(エリック・ショイケト)氏は言う。

Atom Financeは 12月12日の会見でTechCrunchに対し、General CatalystがリードするシリーズAで1060万ドル(約12億円)を調達したことを明らかにした。非公表だった190万ドル(約2億1000万円)のシードに続くラウンドになる。調達した資金でより専門的な調査ツールをプレミアム機能として立ち上げ、早期の収益化を目指す。

Atom Financeは6月の先行立ち上げ以来、すでに10万人のユーザーと4億ドル(約440億円)の資産を抱える。「Atomは、金融ニュースメディアとレポートの利用方法を根本的に変える」。Twenty Minute VCポッドキャストの創設者であり、Atomの投資家であるHarry Stebbings(ハリー・ステビングズ)氏は語った。

個人投資家は大企業と比べて不利な立場にある。大企業には人工知能、高価な調査レポート、市場に張り付いたトレーダーなどの資源がある。だが、個人が長期的な視点で、財務的な柔軟性を持つことの重要性が高まっていることは明らかだ。学生ローンの金額は増え、オートメーションが雇用を脅かす時代だからだ。

「我々の使命は二階建てだ」とショイケト氏は述べた。「あらゆるデバイスから簡単にアクセスできる直観的なプラットフォームで投資調査ツールを合理化すること、その上でかつてウォール街の専門家しか利用できなかった企業向けレベルの投資ツールをもっと身近にすることだ」

トレーディングフロアの知見を一般に

ショイケト氏は、Blackstone and Governors Laneの投資家として、アマチュアとプロ向けの調査プラットフォームの違いを目の当たりにした。だが、ある分野で最高と思われるソフトウェアでさえ、消費者向けモバイルアプリに期待される使いやすさを欠いていた。Atom Financeによると「例えば、ブルームバーグは1982年以来、コアプロダクトに大きな変更を加えていない」という。

Atom Financeチーム

ショイケト氏は1年前、その空白を埋めるべくブルックリンでAtom Financeを創業した。同社がウェブiOSAndroidアプリとして提供する5つのプロダクトは、決して複雑だと思わせない投資意思決定支援ツールに仕上がっている。

  • Sandbox:事前に変数が入力された、コンセンサス予測による即席財務モデリングツール。変数は自動更新され、モデルも自動で再計算される
  • Portfolio:リンクした投資口座に関わる各種統計、リアルタイムの損益計算書、投資間の分散をモニターする
  • X-Ray:ニュース、SECファイリング、議事録、各種分析を一覧できる金融検索エンジン
  • Compare:企業とセクター平均を比べるベンチマークテーブル
  • Collaboration:ディスカッションボードとグループチャットで他の投資家と知見を共有する

「Sandboxの機能により、ユーザーはスプレッドシートにデータをエクスポートすることなく、プラットフォーム内で簡単な財務モデルを直接作成できる」とショイケト氏は言う。「この機能によってユーザーの時間が節約される。新しい情報を入手しても、ユーザーがモデルへの入力を手動で更新する必要がなくなる」。

ショイケト氏は「既存のソリューション(Yahoo Finance、Google Finance)は初歩的すぎて詳細な分析ができないか、または個人投資家には価格が高すぎる(Bloomberg、CapIQ、Factset)」と述べ、Atom Financeをその中間に位置付ける。

Atomは、現在の無料モデルと今後の有料モデルの両方で、AIを駆使する金融リサーチプラットフォームであるSentieoに勝つことを目指す。Sentieoは1年前に1900万ドル(約21億円)を調達した。利用料金は月々500〜1000ドル(約5万5000円〜11万円)。BamSECやWallMineなどの安いツールは、多くの場合、アーニングスコール(投資家向けの電話による決算説明会)の議事録やSECファイリングを取り込む機能に限られている。Robinhoodには独自のアプリ内ツールがあるため、Atom Financeの競争相手か買収者になる可能性がある。

ショイケト氏は、Atom FinanceがBloombergのような定評あるツールとの厳しい競争に直面することを認めた。「既存のソリューションは、当社がターゲットとする市場、特にプロの投資家の間で大きなブランド力がある。ユーザーの信頼を得るために、当社は圧倒的なユーザー体験を提供し続けなければならない」と同氏は説明した。ユーザーの機密データを守るため、完璧なプライバシー、セキュリティ、正確性も不可欠だ。

General Catalyst、Greenoaks、Global Founders Capital、Untitled Investments、Day One Venturesや多数のエンジェルからこれまでに調達した1250万ドル(約14億円)により、Atomはフリーミアムモデルを刷新する。 Robinhoodは、無料ユーザーを、お金を借りて取引できるサブスクリプション層に変換することで大きな成功を収めた。同様に無料モデルにすることで、SoFi、Silver Lake、Blackstone、Citiから集まったAtomの8人のチームは、プレミアム層を形成するための堅固な基盤を構築できた。

フィンテックには、時にドライで冷酷な資本主義を感じることがある。だがショイケト氏は、新しい世代に富を創造する方法を提供することがAtom Financeの存在理由だと主張する。「この分野には長い間、真のイノベーションが存在しなかった。 これほど大切な分野で考えられないことだ。使いやすいツールを身近にし、消費者を教育することが重要だ。それが投資に関わる生活を豊かにすることになる」

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(翻訳:Mizoguchi)

B2B決済企業Bill.comのIPO公募価格は赤字経営のスタートアップに朗報?

B2B決済企業であるBill.comは米国時間12月12日、IPOの公募価格を1株あたり22ドル(約2400円)強に設定した。同社はIPOで982万株を売却し、約16億ドル(約1754億円)の評価額のもとに、約2億1600万ドル(約237億円)を調達する予定だ。

画像クレジット: Chris Liverani

同社のIPOにおける公募価格は、上場を目指す赤字経営の企業にとっては、やや不確実な時期に設定された。WeWorkによるIPOの混乱によって、成長志向の企業が株式公開時に投資家の関心を高めることに苦労するかもしれないという懸念が生じていたからだ。

しかし、Bill.com のIPOは、すべての赤字会社が同様ではないことを明らかにしている。同社の公募価格設定は、投資家たちの損失に対する懸念よりも、その成長ストーリーにより強く共感したことを示している。同社はこれまで1株当たり16ドルから18ドル(約1800円から2000円)のIPO価格帯を目標としていた。しかし、その価格帯は本日の価格設定の前に、昨日1株あたり19ドルから21ドル(約2100円から2300円)に引き上げられていた。

財務履歴

Bill.comのIPOが、スタートアップにとって何を意味するのかを理解するために、同社が未公開の間にどれくらいの資金を調達したか、そしてその財務状況がどうであったかを思い出してみよう。

同社は未公開時期に行ったシリーズとベンチャーラウンドを通して、3億4710万ドル(約381億円)を調達してきた。その中には2017年の1億ドル(約110億円)や、2018年の8800万ドル(約96億円)が含まれている。米国カリフォルニア州パロアルトに本拠を置く同社は、未公開時期の後期には、Franklin TempletonJP Morgan、そしてTemasekからも調達している。それ以前には、EmergenceDCMIcon VenturesFinancial Partners Fund、そしてScale Venture PartnersなどからBill.comは資金を調達していた。

Crunchbaseのデータによれば、同社は2018年の調達後における評価額は、きっちり10億ドル(約1100億円)だった。これによりIPOが行いやすくなり、最近増加したBill.comの個人投資家たちにも価値が増したこととなった。

IPOに向けて、Bill.comはともに増加した売上損失の両方を公表した。

  • 第3四半期売上:3520万ドル(約39億円)、前年比56.9%増
  • 第3四半期純損失:570万ドル(約6億円)、前年比544.3%増

1年前の第3四半期の100万ドル(約1億円)以下の損失と見比べると、同社の純損失の伸びは実際よりも悪いものに見える。しかし、利益への道を探している投資家たちには、計算ベースの大きさに関係なく、その方向性やペースは気にしていないのかもしれない。

1年前よりも多くの損失を出しながら公募価格帯を引き上げてきた企業に、さらに上回る公募価格がついたという事実は、IPOウインドウが閉じられてしまったのではと考える企業たちの懸念を和らげるはずだ。もし損失が収益に対して割合として少なく成長が堅調であれば、決して可能性は閉じられていない。

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(翻訳:sako)

Disrupt BerlinでのStartup Battlefieldファイナリスト5社が決定

現地時間12月11日、ドイツ・ベルリンで開催されたDisrupt Berlinのステージに14社のスタートアップが立ち、ライブのデモと彼らの起源とビジネスモデルに関するプレゼンテーションを行い、業界のエキスパートである審査員たちの質問に答えた。そこからTechCrunchは、審査員たちの意見も参考に、5社のファイナリストを選んだ。彼らの製品は、生産性ツールから大気汚染に至るまで実にさまざまだ。

これらのファイナリストたちは明日12月12日の決勝のステージで、新たな審査員を前に再びプレゼンを行う。その実況はTechCrunchのウェブサイトでも見られる。そして優勝チームは5000ドルの賞金と、由緒あるDisrupt Cupを1年間管理する権利を勝ち取る。以下が、そのファイナリストだ。

Gmelius


Gmeliusは、Gmailの中に作業スペースを作り、チームが次々と新しいソフトウェアを導入するのではなく、既存のさまざまなツールで仕事ができるようにする。GmeliusはGmailの作業スペースに、受信トレイの共有やヘルプデスク、アカウント管理、オートメーションツールなどさまざまな機能を加える。関連記事はこちら

Hawa Dawa

Hawa Dawaは、衛星や大気質監視ステーションなどからのデータを組み合わせて大気汚染のヒートマップを作り、そのマップをAPIのサブスクリプションとして都市や企業に売る。データの利用はハードウェアを特定しないが、同社は大気質センサーを装備していない企業や都市のために、独自のIoTセンサーを作って提供している。関連記事はこちら

Inovat

Inovatは、旅行者に対する付加価値税の還付手続きを容易にする。アプリとOCRと機械学習を併用してレシートを解釈し、取られすぎの税金を計算して、正しい形式の申告書類をオンラインで、または税関に直接提出する。関連記事はこちら

Scaled Robotics

Scaled Roboticsのロボットは、建築現場の3D進捗マップを数分で作る。精度は高く、梁の1〜2cmのずれでも見つける。現場監督はそのマップを見て細部の状況をチェックできる。現場に残された残骸が多すぎるという検知もできる。関連記事はこちら

Stable

Stableが提供するソリューションは自動車保険並にシンプルだ。同社は世界中の農家を、価格変動から護る。このスタートアップを利用して、小さなスムージーショップからコカコーラのような大企業に至るまで、何千種類もの農産物や包装資材、エネルギー製品などに保険を付けることができる。関連記事はこちら

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

既存の銀行や保険会社にスタートアップに比肩する開発スピードを与えるFintechOSとは?

ここ数年、N26やMonzoといったフィンテックのスタートアップが勃興してきて、チャレンジャーバンクなどのプロダクトで文字どおり既存勢力にチャレンジしている。でも、大きな銀行がこのゲームに参戦したくなったらどうなるだろうか?ルーマニアのFintechOSは、まさにそれを狙っている。既存勢力がこの競争の激しい新世界で互角に競争できるようにするというのだ。

FintechOSは、既存の銀行や保険会社にプラグアンドプレイ、つまり接続すればすぐに使えるプロダクトを提供する。これにより、新興勢力よりも速く機敏に顧客のニーズに反応しサービスを提供できるようにする。

同社は米国時間12月10日、Earlybird Venture CapitalのDigital East FundとOTB Venturesが率いるシリーズAのラウンドで1400万ドル(約15億2000万円)を確保した。これには、既存の投資家Gapminder VenturesとLaunchubも参加した。

新たな資金は、ヨーロッパにおける成長と拡大、そして東南アジアと米国の進出に使われる。

従来的な銀行や保険会社はFintechOSのテクノロジープラットホームを利用して、急速に変化している顧客の期待に応え、プロダクトとサービスの個人化を数カ月や数年でなく数週間で実現して、フィンテックスタートアップのスピードと柔軟性に遅れないようになる。

そのために銀行や保険会社はマルチクラウドのSaaSを立ち上げ、クラウドとオンプレミスにまたがる実装により既存の技術基盤との共存を図る。すでに同社はMicrosoft(マイクロソフト)やEY、Deloitte(デロイト)、Publicis Sapient(ピュブリシス・サピエント)、CapGemini(キャップジェミニ)などとパートナーして複数市場への進出を狙っている。

2017年にベテランの起業家であるTeodor Blidarus(セオドア・ブリダウス)氏とSergiu Negut(セルグ・ネグート)氏が始めた同社は、今では3つの大陸の計20カ国に顧客がいる。

CEOで共同創業者のTeo Blidarus(テオ・ブリダウス)氏は 「既存の金融業に新境地を拓く我々のアプローチは、技術よりも顧客が動因だ。FintechOSを作ったのは金融業界に変化をもたらし、既存の銀行や保険会社がフィンテックのスタートアップよりも早く行動および反応できるようにし、彼らがスマートで対応の速い顧客体験を作れるようにするためだ」と語る。

また、EarlybirdのパートナーであるDan Lupu(ダン・ルプ)氏は「FintechOSは今ブームになりつつある新しいマーケットのパイオニアだ。彼らは金融機関が市場や規制の変化にもっと素早く反応できるように、業界を変えたいと願っている。金融サービスの未来を作っていく旅路に参加できたことを、誇らしく思う」と述べた。

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa