アメリカのYahooは今日(米国時間12/9)、中国のeコマースの巨人Alibaba株を売却する計画を撤回したというテレビ報道が事実であると確認した。このニュースを受けて、市場が開く前の時間外取引だが、Yahoo株は上昇中だ。
今月初め、Yahoo取締役会がAlibaba株の売却という選択肢を検討中だという報道が行われた。この噂で Yahoo株は一時、7%アップした。
CEOのMarissa Mayerはこの7月、eコマースのAlibaba資産を分離し、会社を分割する計画を発表していた。.
しかし最近、数週間、320億ドルもの資産の行方について不透明性が高まっていた。この問題に関するアメリカ内国歳入庁の見解が不明なため、投資家は巨額の課税が行われる可能性を恐れたものとみられている。「もの言う株主」は Yahooを訴える構えをみせていた。
今日、Yahooの発表によれば、「取締役会は、わが社の長期的な株主価値の最大化を図るための最良の方策を慎重に検討した」という。その結果、Yahoo取締役会は「Alibaba資産を新会社に移して売却する」案を全員一致で棚上げすることとした。
Yahooによれば、同社は今後「逆オプション」を検討していくことになる。これはYahooは別会社を設立しここにAlibaba関連以外の本体の資産と債務(つまりインターネット事業のすべて)を移管するという計画だ。その結果、Yahooは相互に独立な株式公開企業2社に分割される。
この「逆分割」案は、Alibaba株を売却した際に課せられるおそれのある巨額の課税に対する投資家の懸念に配慮したものと思われる。
ただし今回の2社分割案もまだ多くの第三者の承認を必要とする。株主の承認はもちろんだが、SEC(証券取引委員会)への申請書の提出と承認が求められる。すべて順調にこうした承認が得られたとしても、会社分割の完了には1年以上必要とするだろうとYahooは述べている。
CEOのMayerはこの決定にコメントし、「 Alibaba資産を分離することはわれわれが継続中であるビジネスの改革の重要な一部をなす」と従来からの見解を繰り返した。【略】
しかし、Yahooから高価値のAlibaba資産を分離することは本体事業を買収しやすくする効果もありそうだ。ただしこれは本体に従来Yahoo傘下にあったどの事業資産が継承されるかによって大いに変わってくる。
Finacial Timesの記事によれば、いくつかの未公開株式会社とメディア・インターネット関係の広告会社がYahooの買収に興味を示しているという。今週月曜にはVerizon(注)が「仮に可能なのであればYahoo買収に関心がある」と述べている。
インターネット事業が分離されればYahooは現在とはまったく異なる性格の企業になるだろう。他国の巨大eコマース事業の15%の権利を保有するもものの、自らは積極的なインターネット事業者ではなくなるわけだ。
Mayerは2012年7月に GoogleからスカウトされてYahooの CEOに就任した。【略】3年後の現在もYahooのサービスは生き残りのために苦闘を続けている。特にモバイル・サービスのイノベーションでは出遅れぎみだ。また広告売上ではGoogleやFacebookなどの企業に厳しい戦いを迫られている。それでもMayerはこの秋、Googleとの検索広告契約をさらに3年延長する契約をまとめることに成功している。
今回のYahooの新しいプランについて、 Gartnerグループのリサーチ担当副社長、Andrew Frankはわれわれの取材に対して、「Yahooのコアビジネスには依然として成功の可能性があると思う。Yahooは多様なデジタル・メディアを抱える独立の企業として発展することができる。しかしこの道を選ぶとなると、株主からの相当の圧力を受ける覚悟が必要だろう」と述べた。
Frankはまた「これは以前からの私の持論だが、Yahooはテクノロジーの革新者というよりもメディア企業としてうまくやっていける可能性が高い。しかしメディアとして成功するためにはポートフォリオのコンテンツのブランド価値の向上と管理の努力が必要とされる。もし独立企業としてこれが難しいなら、他の巨大企業の傘下に入り、自身としてはコンテンツの配布、広告、新規ユーザーの獲得などの分野に専念するというオプションも有望だろう」と付け加えた。
(注):VerizonはTechCrunchの親会社AOLのさらに親会社となる。
[原文へ]
(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)