新型コロナショックによる「分母効果」のVCへの影響は?

資産運用会社にとってこの数週間はとにかく恐ろしかった。過去数週間市場が停滞していただけでなく(米国の財政出動法案の署名以降わずかに回復した)、さまざまな資産の日々のボラティリティ(資産価格の変動の激しさを表すパラメータ)が大きく、ポートフォリオのバランスを保つことが非常に難しくなっている。例えば、原油のベンチマークは米国では1バレル20ドル未満と、この20年近くで初めて目にする水準だ。

それに関連して、多くのVC(ベンチャーキャピタル)にとって大きなストレスとなっている、いわゆる分母効果(デノミネーターエフェクト)について書いてみたい。

分母効果のVCへの影響を語る前に、まず定義したい。LP(リミテッドパートナー)は資本を配分する役割がある。つまりLPは戦略に基づき多様な資産に資金を投資する。例えばあるLPの戦略は「株式60%、債券40%」、また別のLPは「株式40%、債券30%、VC 10%、ヘッジファンド10%、天然資源10%」といった具合だ。

すべてのファンドに独自の目標がある。大学基金のように、通常業務で発生する支払いのために手元流動性を必要とするファンドもある。一方、政府系ファンドのようにはるか将来に目線を置き、資産の長期保有を気にしないファンドもある。ポートフォリオマネージャーの役​​割は、ファンドの目的に沿って資産に投資することだ。

ファンドマネージャーは運用の一環として定期的にポートフォリオのバランスを見直し、採用した戦略に沿って資産を運用する。Wealthfrontのような最新の資産管理サービスを個人で使用している人なら慣れ親しんでいるはずだ。毎期(数カ月、四半期、年度など)、異なる資産の間で振替を行ってポートフォリオを調整し、元々の戦略に立ち返る。株式は60%が目標だが、実際のポートフォリオが70%になっているなら、サービス側で10%を自動的に売却し他の資産に投資する。

つまり割合は「あるアセットクラスに投資した資金」を「ポートフォリオの総資金」で割って算出する。実に簡単な算数だ。ここからが複雑になる。例えば、あなたが100万ドルのポートフォリオを管理していて、比較的流動性の高いNasdaq(ナスダック)に70%(70万ドル)を投資し、残りの30%(30万ドル)はVCファンドに投資しているとしよう。VCファンドは非常に流動性が低く、投資資金の回収に10年以上かかることもある。

Nasdaqが9817.18の史上最高値を記録した2月19日の時点で、あなたの資金はバランスが取れていたとする。Yahooファイナンスによると、Nasdaqはその後20.57%下落した。つまり、ポートフォリオ全体の価値は約85万6010ドル(株式は55万6010ドル、VCは30万ドルのまま)になる。

VCへの投資を増減させていないのに、ポートフォリオはVCのアセットクラス(投資対象としての資産の種類)に大きく偏ってしまう。株式は556010÷856010=ポートフォリオの約65%を占めるが、VCは約35%となり、当初の戦略で計画した30%から増加している。

歪んでしまったバランスを元に戻す必要があるが、それはできない。VCファンドには10年の資金サイクルがあるため(もっと長い場合もある)、VCへの投資資産を一部売却し、株式を購入してポートフォリオのバランスを取り直すことはできない。ポートフォリオマネージャーは事実上行き詰ってしまう。

これが「分母効果」だ。ある資産の価値が下がったら、他の資産を売却してポートフォリオを適切に再調整すべきだが、VC、プライベートエクイティ、不動産、天然資源などの資産は、短期や中期での売却が極めて難しい。

ポートフォリオの一部としてのVC投資

以上が分母効果の概要だ。VCや、回り回って創業者にとってこれは実際のところ何を意味するのか。

VCにとって今日の大きな課題は、LPの多くがまさに上記の状況にあるということだ。アセットクラスとしてのVCが過剰投資になっているだけでなく、LPは巨大な流動性危機と戦っている。LPは資金に働いてもらうために、VC投資の縮小を望んでいる(場合によってはそれが必須だ)。LPは新しいファンドへの投資を削減するだけでなく、既にコミットしたファンドへの投資も控えたい。

皮肉なのは、多くのスタートアップのバリュエーションが下がっていることを考えれば、まさに今がもっと投資をすべき時期だという点だ。それが分母効果がもたらす根本的な緊張関係だ。恐れが引き起こす心理状態や投資家の無関心の問題ではなく、戦略的思考がもたらす問題であって、ファンドの目的からすれば合理的なのだ。

LPには対処方法に関して2つの戦略がある。まず、GP(ゼネラルパートナー)に嵐が去るのを待つよう持ちかける。そうすればLPには若干の余裕が生まれるかもしれない。キャピタルコールの金額を減らすべく、投資のペースを遅くするようGPに働きかけるわけだ。また、新しいファンドへの投資を中断したり、投資にかける時間を引き延ばし、投資のタイミングをもっと分散させることもできる。

次にセカンダリーマーケットでVCファンドの投資持ち分を売却し、流動性を確保する方法がある。マーケットは小さいが非常に興味深い手段だ。筆者の同僚のConnie Loizos(コニー・ロイゾス)が先週、このアングルについて書いた内容は、マーケットがスタートアップの価値を見極めるまで時間がかかるため、セカンダリーマーケットで取引が始まるのはしばらく先だということだ。

要するに、分母効果により、LPは今後数カ月以内にポートフォリオ再調整のために必要なことはすべて実行することになる。市場が急速に回復すれば、VCやその他のオルタナティブアセットへの投資をすぐに再開する可能性がある。だがマーケットの厳しさが長引けば、ポートフォリオマネージャーがポートフォリオをあるべき姿へ戻すため、VCのアセットクラスにはさらに下落圧力がかかると予想される。5年生の算数と複雑な金融システムが支配する世界だ。

画像クレジットRalf Hiemisch / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

グローバル・ブレインがヤマトHDやエプソンとCVCを設立、物流やインクジェット技術の革新に期待

独立系ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレインは、3月31日にヤマト運輸を参加に持つヤマトホールディングス、4月1日にセイコーエプソンと、CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)をそれぞれ設立することを発表した。

写真に向かって左から、グローバル・ブレインCEOの百合本 安彦氏、ヤマトホールディングス代表取締役社長の長尾 裕氏

ヤマトホールディングスとは、運用期間10年間、総額50億円規模のKURONEKO Innovation Fund(YMT-GB 投資事業有限責任組合)を設立。物流やサプライチェーンに変革を起こしうる技術・ビジネスモデルを有する、シード、アーリー、ミドルの各ステージのスタートアップを投資対象とし、ヤマトホールディングスとグループ各社が擁する経営資源のオープン化を通じて、物流・関連市場における成⻑モデルの創出を目指す。なお、日本国内のスタートアップ企業を中心に投資を進めていく予定だが、北米や欧州、アジアでの投資も視野に入れているとのこと。GP(無限責任組合員)はヤマトホールディングスが務める。

セイコーエプソンとは、セイコーエプソンが新たに設立したエプソンクロスインベストメントという子会社とEP-GB投資事業有限責任組合を設立。運用総額は50億円を予定しており、GP(無限責任組合員)はグローバル・ブレインが務める。同CVCは、インクジェット技術を中心としたコアデバイスなどの社内資源を擁するエプソングループがグローバル・ブレインと組んで、財務的なリターンの獲得のほか、グループとの協業やオープンイノベーションを加速させるのが狙い。既存事業の成⻑と新規事業の創出に取り組んでいくという。なお、エプソンクロスインベストメントの代表取締役には、4月1日にセイコーエプソン代表取締役社長兼CEOに就任した小川恭範氏が兼務する。

ニッセイ・キャピタルが第3期アクセラレーションプログラムの春期募集を開始、採択社には500万円のプレシード出資

ニッセイ・キャピタルは4月1日、スタートアップ企業向けのアクセラレーションプログラム「50M」の第3期春バッチの募集を開始した。過去に募集した1期、2期は年1回の募集だったが、3期からは、4月(春バッチ)、10月(秋バッチ)の年2回募集となる。Demodayの参加者についても、4500万円の追加出資を得られたシリーズS(50M型S種優先株式)に到達、もしくは到達見込みの企業のみに変わる。さらに、シリーズSに到達しなかった場合、翌年度以降の「浪人」が可能なの新ルールも設けられた。

3期春バッチの募集要項は以下のとおり。

  • 募集期間:5月6日まで
  • プログラム事前説明会:4月6日、13日、20日
  • 実施期間」2020年6月〜2021年3月(最大10カ月間)
  • 申込方法:公式ウェブサイトからエントリー
  • Demo Day(採択企業による発表会):2021年3月中旬

従来同様、同プログラムに採択された企業は500万円の出資、前述のように進捗に応じてシリーズSとして4500万円の追加投資を受けられる。さらに、50Mプログラムの卒業生に対してはシリーズA以降も1社当たり累計30億円程度の追加投資の可能性もある。

採択企業は、ベンチャーキャピタリストと週1回のメンタリングや起業支援、事業開発・拡大、資金調達戦略に関するレクチャーを受けられるほか、事業進捗報告のために月1回ピッチイベントに参加。そのほか、東京・丸ノ内にあるニッセイ・キャピタル内の50Mシェアオフィスへの入居、AWS、GCP、HubSpotなどの各種スタートアッププログラムの優待提供などの特典がある。

2019年4月に募集した2期では約100社から10社が採択されたほか、1期、2期の採択企業への投資総額は24.3億円に達している。

起業家と投資家の合同経営合宿「Incubate Camp 13th」が10月2日、3日に開催決定

シード、アーリーステージのスタートアップを中心に投資を進めているベンチャーキャピタルのインキュベイトファンドは4月1日、起業家と投資家の合同経営合宿「Incubate Camp 13th」を10月2日、3日に開催することを発表した。スケジュールは以下のとおり。

  • エントリー受け付け開始:4月1日(書類選考通過者には順次連絡)
  • 説明会:4月18日、4月25日
  • エントリー締め切り:8月31日
  • 面接期間:7月1日~8月9日(出場が決定した企業に順次連絡)
  • 合同経営合宿:10月2日、3日

今年は新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で各地自体から外出自粛要請などが出されている現状を踏まえ、選考プロセスをオンラインで完結させるのが特徴だ。なお、エントリー後は希望者に対して全員と面談を実施する。面談では、資金調達や事業計画、ピッチの相談などが可能だ。面談希望者は、エントリーフォーム内の質問項目でメンタリングを「希望する」を選べばいい。

また、エントリーしたスタートアップで早期の資金調達が必要な場合は、インキュベイトファンドがパートナーファンドのGPとともに月1回開催している即断即決ピッチイベント「Circuit Meeting」への参加推薦や、連携しているVCやアクセラレーターを紹介などが受けられる。

Incubate Campでは、エントリーした企業の中から選考を通過した16名の経営者をキャンプ(1泊2日の合宿プログラム)の参加者として招待。キャンプでは、ベンチャーキャピタリスト16名とディスカッションを重ねて事業プランをブラッシュアップする。さらに、エントリー後やキャンプ参加後の資金調達機会に加えて、構築した関係性の中で事業の支援を継続的に行っていく。

株式上場やM&Aなどでイグジットを果たした企業

Incubate Campは、過去12回の開催で累計の参加者は約220名。その中で、20社の企業が株式上場や企業による買収などでイグジットを実現しており、累計調達額は約270億円超となっている。

10月2日、3日に参加するゲストキャピタリストや審査員は順次公表予定とのこと。なお。過去の参加ゲストキャピタリストは以下のとおり(五十音順)。

  • アーキタイプ:中嶋 淳氏
  • iSGSインベストメントワークス:五嶋一人氏
  • ANRI:佐俣アンリ氏、河野純一郎氏
  • East Ventures:松山太河氏
  • インキュベイトファンド:赤浦 徹氏、本間真彦氏、和田圭祐、村田祐介氏
  • インスプラウト:三根一仁氏
  • インフィニティベンチャーズ:小野裕史氏
  • WiL:伊佐山 元氏、松本真尚氏
  • グローバル・ブレイン:立岡恵介氏
  • グロービス・キャピタル・パートナーズ:今野 穣氏、高宮慎一氏
  • XTech Venures:西條晋一氏
  • Coral Capital:James Riney氏
  • サイバーエージェント・キャピタル:近藤裕文氏
  • サムライインキュベート:榊原健太郎氏
  • GMO Venture Partners:村松 竜氏
  • C Channel:森川 亮氏
  • ジェネシア・ベンチャーズ:田島聡一氏
  • STRIVE:堤 達生氏
  • スマートニュース:鈴木 健氏
  • セプテーニ・ホールディングス:佐藤光紀氏
  • W Ventures:新 和博氏
  • DeNA:原田明典氏
  • DNX Ventures:倉林 陽氏
  • ニッセイ・キャピタル:永井研行氏
  • B Dash Ventures:渡辺洋行氏、西田隆一氏
  • ベンチャーユナイテッド:丸山 聡氏
  • メルカリ:小泉文明氏
  • ヤフー/YJキャピタル:小澤隆生氏、堀 新一郎氏
  • ユナイテッド:金子陽三氏

消費者向けテクノロジーの新時代

世間はパンデミック一色だが、TechCrunchはスタートアップ世界の明るい話題を探し回っている。特にいろいろな状況にも関わらず実際に資金が流れている事柄に着目している。

D2Cの将来

先週の初めに、私たちはトップD2C投資家へのサーベイを行った。苦労しているセクターリーダーはいるものの、彼らは極めて楽観的であるように見えた。例えば、以下のものはLightspeed Venture PartnersのNicole Quinn(ニコール・クイン)氏が、投資家の活動と現在の投資状況を比較して述べたものだ。

私が主張しているのは、投資家たちが最近のいくつかのIPOのユニットエコノミクスを見て、それが全てのD2Cにも当てはまると考えるのは弱気過ぎるということです。実際には、美容のように製品マージンが90%を超える企業が多い分野や、Rothy’s(ロシーズ)のように口コミ効果の高い真のブランドがある分野があり、そうした分野では平均よりもはるかに優れたユニットエコノミクスが、不公平なほどの優位性を企業に与えています。

サーベイへのその他の回答者としては、Lerer HippeauのBen Lerer(ベン・ラーラー)氏とCaitlin Strandberg(ケイトリン・ストランドバーグ)氏、NorthzoneのGareth Jefferies(ガレス・ジェフリーズ)氏、Betaworks VenturesのMatthew Hartman(マシュー・ハルトマン)氏、Initialized CapitalのAlexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏、AccelのLuca Bocchio(ルカ・ボッキオ)氏などが含まれる。

またサーベイとは別に、TechCrunchのConnie Loizos(コニー・ロイゾス)はAlexsis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏への個別インタビューを行っている。

不動産テックは(さらに)リモートになる

TechCrunchのArman Tabatabai(アルマン・タバタバイ)は、数カ月前に不動産ならびに不動産テック分野の投資家サーベイを実施したが、物理空間の将来が現在直面している問題を考慮すると、今回のウイルス問題を取り込んだ更新版が必要とされている。Dreamit VenturesのAndrew Ackerman(アンドリュー・アッカーマン)氏による明快な説明は次のとおりだ。

住宅の家主や不動産管理者をターゲットにしたスタートアップが、大いなる勝ち組になる可能性があります。テナントをより快適な場所にする住宅用のテナントアメニティプラットフォーム(例:Amenify)や、メンテナンス依頼の自動化(例:TravtusAptly)、メンテナンス自体の簡素化(例:NestEgg)、あるいは荷物の受け取りなどのオペレーションを楽にしてくれるビジネス(例:LUXER ONE)などが、突如上位に意識されるようになりました。

VCの投資家たちは「私に考えさせるな」とよく口にしますが、現在私たちは新型コロナウィルス(COVID-19)が私たちのポートフォリオにとって何を意味しているかを真剣に考えている最中です。なのでもし私たちが通常よりも投資の決断をすることが遅くなっても仕方がないと思って下さい。とはいえ、私たちの最高のリターンの中には、困難な時期に行われた投資からもたらされたものもあるという事実は強く認識しています。幸い、私たちはどんどん考えを進めています。

消費者向けテクノロジーの新時代

大勢の人間が自宅に留まっていることに、SaaS企業が新たな成長の機会をみているのは当然のことだ。しかし、仕事以外には何が行われているのだろうか?TechCrunch記者のJosh Constine(ジョシュ・コンスティン)は、自宅パーティーの復活、人気のソーシャルネットワークへのZoomの統合、およびその他のトレンドをまとめて、全体像をエレガントに説明している。ソーシャルツールがこれまで皆が期待していたようなやり方で本当に使われているのだ!

自慢することが何もないときのソーシャルメディアとは何だろう?私たちの多くが、それがはるかに楽しいことに気が付きつつある。私たちは、ソーシャルメディアを競争の場にしてしまっていたが、プレーの喜びを全身で受けとるのではなく、ずっとスコアボードを見つめていたのだ。しかし、ありがたいことに、Zoomには「いいね!」の数はない。永続的なものは残されない。これにより、私たち意思決定を頻繁に支配する、外部からの批評から解放されるのだ。どのように見られるかを気にするものではなく、どのように感じられるものかになり始めたのだ。それは私を安らかな気持ちにさせるだろうか、笑わせるだろうか、あるいは私の孤独を和らげてくれるのだろうか?やってみればよい。読書したり、入浴したり、あるいはボードゲームをプレイしたりするために家にいても見逃すものはないので、もうFOMO(fear of missing out、なにかを見逃すのではないかという脅迫観念から繰り返しSNSなどをチェックしてしまうこと)に怯える必要はない。自分の好きなことをしよう。

詳細な内容はTechCrunchのこの記事で確認してほしい。そして次に、これが向かっている場所、つまり仮想世界!?に関して私たちがまとめている記事を読んでほしい。TechCrunchのコラムニストであるEric Peckham(エリック・ペッカム)は先月の8部構成のシリーズでこの広大なトピックを分析し、先週にはTechCrunchの社内インタビューに応じて、今回のパンデミックが現在のトレンド与える影響をどのように見ているのかを説明した。

1年間で20億人以上の人々がビデオゲームをプレイしている。その意味で、市場への浸透度には驚くべきものがある。しかし、少なくとも私が米国のデータを見る限りでは、特定の日にゲームをプレイする人口の割合は、特定の日にソーシャルメディアを使用する人口の割合よりもはるかに低いままだ。

ゲームがソーシャル化し、ゲームプレイの目的を超えて人がたむろするための仮想世界になればなるほど、携帯電話で何かをできる5分の空き時間を、ソーシャルおよびエンターテインメントへの接点としての仮想世界に目を向ける人間は増えるだろう。ソーシャルメディアが、こうした人生のちょっとした空き時間を埋めてくれるのだ。MMOゲームは今のところそのような存在ではない。現在のゲームはゲームプレイに集中するようにデザインされているため、時間がかかるし、途切れずに集中する必要があるからだ。友達とたむろしながら探検を行うことができるRobloxのような仮想世界は、ユーザーの時間をInstagramと直接奪い合うことになる。

パンデミックにより一部のSEM価格が下落

TechCrunch記者のDanny Crichton(ダニー・クライトン)は、データサイエンティストとして、テクノロジーセクター全体で100を超えるユニコーンを分析し、パンデミック/景気後退によってそのキーワードの広告価格がどのように変化したかを調べた。

驚くべきことではないが、ほとんどすべての広告の価格が落ち込んでいる(いくつかの非常に興味深い例外を除く)。しかし、オンライン広告のパフォーマンスにおけるスタートアップ企業間のばらつきは、フードデリバリーやエンタープライズソフトウェア業界、そしてGoogle、Facebook、その他のデジタル広告ネットワークの長期的な収益パフォーマンスについて多くを語っている。

クラウドアイスクリームコーン画像

大規模テック企業は、スタートアップを支援するためにもっと多くのことをすべき

私が言いたいのは、強力な開発者向けプラットフォームを提供することに加えて、ということだ。TechCrunchのJosh Constine記者は、圧倒的優位な企業の課すホスティングとそれに関連する費用は、社会貢献として、あるいは自分自身のエコシステムを潰してしまわないように、徴収を見送られるか支払いを猶予されるべきだと訴えた

Google、AmazonそしてMicrosoftたちは家主なのだ。コロナウィルスによる経済危機の中で、スタートアップは家賃の支払いを猶予される必要がある。彼らは現金不足に陥っている。収益の流入が止まり、ベンチャー融資のような資本市場にはためらいがあるために、スタートアップや中小企業は、膨大な数の従業員を解雇したり、事業停止を行うリスクに直面している。一方、ハイテク大手は十分な現金を所有している。この10年間の成功が意味しているのは、嵐を数か月は乗り切ることができるということだ。だが彼らの顧客にはそれはできない。

その一方で、スタートアップ世界に対して友好に振る舞わない既存勢力から、マーケットシェアを奪おうと狙う中規模のスタートアップにとっては、今こそ良いチャンスなのだ。

その他もろもろ

  1. さまざまな人気SF小説を書き、たまにTechCrunchへの寄稿も行うEliot Peperは、「Uncommon Stock:Version 1.0」というタイトルの新刊を出版した。これは偶然麻薬カルテルと遭遇してしまったちいさなスタートアップの話だ。このニュースレターの現在の購読者は、上のリンクをクリックすると無料でダウンロードすることができる(米国時間の日曜日に終了する)。
  2. 私はSXSWでリモートワークについてのパネルをモデレートすることを計画していたが、他のイベントによってそれはとって代わられた。そのパネルは、Hiredのマーケティング担当副社長であるKatrina Wong(カトリーナ・ウォン)氏、Gitlabのリモート責任者のDarren Murph(ダレン・マーフ)氏、そしてBuildstackの創業者であるNate McGuire(ネイト・マクグワイヤ)氏らが参加したパネルとして、Zoomで行われた。そのビデオは現在ここから視聴することができる。リモートファーストになるためのコツを専門家たちの口から学んでほしい。

#EquityPod ポッドキャストより

Alexから、

NatashaDanny、そしてAlexの3人は、スタートアップに焦点を当てたトピックのために集まった。もちろん世界はCOVID-19のニュースで溢れている。実際関連のニュースもいくつか取り上げた。だがEquityはその原点に戻り、スタートアップとアクセラレータについて話そうと思う。今週は以下のような話題を取り上げた。

  • 500 Startupsからのビッグニュース、および アクセラレータの最新デモデーのお気に入りの企業について。Y Combinatorだけが唯一のアクセラレーターではないので、TechCrunchは500とその最新参加企業にも目配りを行っている。私たちは、インフルエンサー市場、ゴミ処理、eスポーツ問題に取り組む、目立ったスタートアップをいくつか取材した。
  • Plastiqは7500万ドル(約81億円)を調達して、人びとや企業がどこでも自分のクレジットカードを使えるように支援しようとしていた。だが、パンデミックのためにそれはクローズできなかった。
  • Stripeが主導するFastの最新の2000万ドル(約22億円)のラウンドについても話題にした。誰もが覚えているように、Stripeは最近では、SequoiaがFinixへ投資した資金を(Stripeと直接競合するという理由で)諦めたことで話題になった。1。しかし、それは過ぎた話だ。Fastが開発しているのは、高速で独立していると考えられているインターネット用の新しいログインならびにチェックアウトサービスである。
  • こうしたStripeの話題は、それに対抗できるスタートアップの1つであるBrexを思い出させる。これまでに知られているだけで3億ドル(約324億円)を超えるベンチャーキャピタル資金を集めているこのスタートアップは、最近3社を買収した
  • 私たちは、D2Cベンチャー調査のハイライトから、特定のチャネルでの顧客獲得コストの上昇、総利益率の重要性、および寝具通販のCasperが、業界の真の先駆者ではなかった理由に焦点を当てて話し合った。

ポッドキャストはここから聞くことができる

原文へ

(翻訳:sako)

今が資金調達のアプローチを再考する絶好の機会かもしれない

多くの創業者は新しい資金調達ラウンドで新年をスタートする。昨年のデータをみると、VC(ベンチャーキャピタル)が最も多くピッチ資料をレビューしたのは3月、10月、11月だった。

だが現在、新型コロナウイルスのパンデミックが多くの産業の動きを止めている。資金調達に関しては次の2四半期に影響が及ぶという警告も出ている。

当社(DocSend)は2020 DocSend Startup Indexのデータをレビューし、Pitch Deck Interest Metric(ピッチ資料への関心度合いの指標)を継続的に記録している。サンフランシスコでは外出禁止令が出ていて、多くのVCが社内プロセスを「オールリモート」の世界にあわせて変えるよう急ぐ中、ピッチ資料への関心度合いは2019年の同じ週と比べて11.6%低下した。これまで関心は低下しているものの、依然多くの動きが観察されるため、VCは引き続きピッチ資料を読んでいる模様だ。当社は今後数週間Pitch Deck Interest Metricをモニターしていく。

もしあなたの会社がアーリーステージのスタートアップで、資金調達活動中か今後予定している場合、投資家と会う前に資金調達に向け準備できることがある。

The Pitch Deck Interest Metricは、2019年の同じ週と比べて11.6%下落した

投資家の期待は変化しつつあり、その傾向は続く

あなたが資金調達ラウンドを始めようとしているなら、50人以上の投資家に連絡し、20〜30回のミーティングを行い、タームシートに署名する前に約20週間費やす準備が必要だ。多くの時間とエネルギーを投入しなければならないわけだが、特に経済が低迷する情勢にあり、あなたがほぼ確実に新しい事業領域に参入するとなれば当然だ。

すでにラウンドを開始しているものの、さらに進めるべきか迷っているなら、筆者が書いた中止して体勢を整えるべきか、なお進めるべきか、そのタイミングを知ることについての記事を読んでほしい(Extra Crunch会員限定記事)。

資金調達ラウンドの成功には多くの要因が絡む。投資家の期待も常に変化する。特にプレシードラウンドに関してはそうだ。

投資家は市場に対応したプロダクトを探しており、期待するコンテンツが目玉になっているピッチ資料が見たい。今後数カ月でこの点が強調されると予想する。VCには今、ピッチ資料を確認するだけでなく、投資を計画している企業のデューデリジェンスに費やす時間があるからだ。当社の新しいレポートで、資金調達戦略を軌道修正するプレシードのスタートアップへのアドバイスについて概説している。

優れたパワーポイントだけでなく、MVPに注力しよう

当社の分析で明らかになったのは、ファンド側でプレシードマネーを投入する前に必要とされる準備の水準に変化が生じているということだ。以前は、プレシードのスタートアップはMVPP(Minimum Viable PowerPoint、実用最小限のパワーポイント)だけで乗り切れた。だが今、投資家が掛け金を積んでいる投資先は、アルファ版、ベータ版、または出荷実績のあるプロダクトを開発し、既に市場に参入しているプレシードのスタートアップだ。

実際、成功したピッチ資料を提示した会社の92%がアルファ版、ベータ版、または出荷実績のあるプロダクトのいずれかを持っていた。一方、失敗したピッチ資料を提示した会社で、何らかのプロダクトが準備できていたのは68%だけだった。

経済が景気後退に近づくにつれ、VCは投資に慎重になることが予想される。足下のデータは、使えるプロダクト(live product)をすでに持つ会社が選好されることを示している。MVP(Minimum Viable Product、実用最小限のプロダクト)がある方がいい。来たるべきプレシードラウンドに備え、または新鮮な視点とともにラウンドに再挑戦するために、時間や労力を費やしてプロダクトを準備する価値はある。

ピッチ資料を見直す

とはいえMVPがあっても、ピッチ資料の再検討は一考に値する。良いテストを紹介したい。ピッチ資料の説明に3〜4分(VCから与えられる時間はこれだけだ)を使って、何も知らない友人や家族にあなたのビジネスを売り込む。その後、彼らにあなたの会社を一文で説明してもらおう。あなたの会社が何をしているか、そして会社が解決を目指す問題を彼らが明確に説明できない場合、おそらくピッチ資料を見直す必要がある。

最近の当社のレポートによると、ミーティングで使う説得力のあるピッチ資料を作成する際に「少ないほど良い」という態度がプレシードマネー獲得での成功を呼びやすいようだ。

ピッチ資料は今、名刺に代わる重要な役割を持つ。新型コロナパンデミックによって、コミュニティイベントはオンラインになりつつある。そのため1対1でのやり取りが少なくなると予想される。VCに対面で提案する機会がすぐにやってくることはないだろう。飛び込みでメールを送る場合であっても、ポートフォリオカンパニー(VCの投資先)から温かい紹介を受ける場合であっても、ピッチ資料から始める必要がある。

資金調達ラウンドではプロダクトがより重要な役割を果たすものの、投資家がプロダクトの評価に費やす時間が減少する傾向は続いている。ピッチ資料が軸となることに変わりはなく、最も効果的な方法でストーリーを伝えられるよう練っておく必要がある。投資家がピッチ資料に目を落とす時間は平均3分21秒しかない。平均的なピッチ資料のスライドの数は20にすぎない。

ピッチ資料を見直すなら、スライドに適切なコンテンツが適切な順序で掲載されていることを確認すると良い。成功したピッチ資料では失敗に終わったものに比べ、投資家はプロダクトのスライドに約50%以上、ビジネスモデルのスライドには18%以上時間をかけて読んだ。また、成功したピッチ資料ではソリューションのスライドもじっくり読まれた。

数は大事だが、程度問題だ

再検討する価値がある次のポイントは、連絡をとった投資家の数、開いたミーティングの数、資金調達ラウンドに費やした週数だ。一般的に、成功した資金調達ラウンドで連絡をとった投資家は平均で56人、開いたミーティングは26回だ。成功したプレシードのスタートアップが資金調達にかけた週数は平均して20.5週間だ。

資金調達の点では、投資家へコンタクトするメリットは減っている。60〜70人を超える投資家にピッチ資料をを送ったり、20〜30回を超える会議を行ったりする必要はない。今それ以上の回数をかけているなら、もはや時間あたりのROIには影響しない。進行中の危機によりVCの投資意欲に影響を与えているため、今も積極的に活動するVCに絞って短いリストを作り、ピッチした方がうまくいく。70人を超える投資家に連絡したが「No」の壁にぶち当たっているなら資金調達はいったん中止し、これまでに受けたフィードバックに対処することをお勧めする。どのタイミングで中止して再考すべきか、あるいは引き続き進めるべきかについての詳細はこちらの記事を読んでほしい(Extra Crunch会員限定記事)。

また、プレシードのスタートアップが検討すべき点に、会社の創業者の数がある。当社のデータによると、投資家は2〜3人の創業者のチームを好むが、多すぎるよりは1人の方が好ましいことを示している。5人の創業者のチームは平均19万5085ドル(約2100万円)、3人の創設チームは平均51万1522ドル(約5500万円)を獲得している。

今が共同創業者を見つける良い時期かもしれない。多くの人が自宅で仕事をしていたり失業していたりするため、あなたのアイデアを提示して、必要なテクノロジー担当創業者を連れてくる機会になり得る。ソーシャルディスタンス(社会的距離)の要請があるため、随所でオンラインのグループやイベントが生まれている。創業者が自分だけのため前進できないと心配している場合は、新しいコミュニティに時間を投資しても良いかもしれない。

新しい視点を得る

多くのスタートアップにとって、特に多数の資金調達が行われるシリコンバレーにいない場合、資金調達のプロセスは非常にわかりにくい。DocSendによるデータ分析の目的はプロセスにいくらかの透明性をもたらすことだ。そして見通しを提供する。

だが創業者がすべきことは、もしまだなら、新しい視点を得ることだ。自分の内輪の知り合い以外の専門家に相談してほしい。メンターやアドバイザーがいないなら見つけてほしい。プロダクトのアイデアや市場の状況について異なる見方をしてほしい。特にコミュニティイベントが仮想化している今、物理的な場所は、スタートアップコミュニティに参加したり、プロダクトや会社に関するフィードバックを提供してくれる人を見つける際の制約にはならない。

資金調達はアートでもありサイエンスでもある。当社のデータから得た洞察をあなた自身のコミュニティから得た知見と組み合わせれば、体勢を立て直し、会社を売り込み、うまく運べば良い結果を得るのに役立つはずだ。

【編集部注】筆者のRuss Heddleston(ラス・ヘドルストン)氏はDocSendの共同創業者兼CEO。以前はFacebookの製品マネージャーだった。Facebookが同氏のスタートアップであったPursuit.comを買収した。Dropbox、Greystripe、Truliaにも在籍した経験がある。フォローはこちら:@rheddleston@docsend

画像クレジット: Tara Moore (opens in a new window)/ Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

Y Combinatorが新型コロナウイルスと戦うスタートアップを急募

Y Combinatorは、スタートアップのアクセラレータとして新型コロナウイルス(COVID-19)と戦うチームを優先的に支援し、危機の解決に役立ちたいと考えている。そうしたスタートアップに迅速にベンチャー投資が行われるような環境が整備される。

Y Combinatorの最新のバッチ、2020年の冬学期のクラスのプレゼンは新型コロナウイルスの感染拡大が始まった時期にあたっていたため、急きょオンラインに切り替えられて先週実施された。 その後わずか1週間で、状況はさらに深刻化した。YCでは「パンデミックに関連する課題に取り組むスタートアップによる新しいクラスを導入する考えだ」と述べている。

YCは、特にリソースを割くべき分野をいくつか公表した。 これには、新型コロナウイルスの検査、診断、治療、ワクチン、医療設備、モニターとデータインフラストラクチャーなどが含まれる。例示された分野を目指すスタートアップは、Y Combinatorのファーストトラック(最優先コース)に乗せらる。つまり即座にリモートクラスへの加入が認められ、資金の提供が行われる。YCのCEO、 Michael Seibel(マイケル・サイベル)氏は次のようにツイートしている。

Y Combinatorの新型コロナウイルス対処を以下に公開

YCは「我々は今回の危機に役立つスタートアップを求めているが、同時に危機が一段落した後も維持可能なビジネスに投資したい」として、サイトに次のように書いている。

「現在の危機に立ち向かおうとするスタートアップがなんらかの影響を与えることに成功するためには人が可能だと考えるよりも速く動かねばならない。 創業者はその領域の専門的知識をあらかじめ持っている必要があると同時に、短期間でグローバルに大きな影響を与える方法についての準備と計画も用意されなければならない。また危機後も持続可能なビジネスへの道筋も必要だ。

Y Combinatorはスタートアップへの資金提供の詳細を説明すると同時に、すでにポートフォリオに含まれている企業の新型コロナウイルス問題への取り組みを支援するためのハブとなるサイトを開設した。

画像:Getty Images

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

ソフトバンクがWeWork株3210億円買い戻しの約束に尻込みか

Wall Street Journalによると、SoftBank(ソフトバンク)は、WeWorkの既存株主から30億ドル(約3210億円)相当の株を買い取る約束を回避する手段として、規制当局の捜査を利用している。

WeWorkの華々しいIPOの失敗は、数十億ドルの価値がある後期ステージ投資を行った人々にとって良い時間に終わりがくる前兆だった。そして株式の買取りプランは、ソフトバンクの数ある投資先の中で最も問題を抱える高額高価値の非上場スタートアップの問題を、少しでも軽減しようとする取り組みの一部だった。

買い戻し計画から外れることになる1人は、元CEOのAdam Neumann(アダム・ニューマン氏)で、自身のWeWorkの持ち株に対して9.7億ドル(約1040億円)を受け取ることになっていた。

Wall Street JournalはWeWork株主宛の通知を引用し、もしソフトバンクが買い戻し行わなければ、WeWorkに命綱の50億ドル(約5350億円)を与えるという同社の約束を守ることもなくなるだろうと報じた。

WSJの記事によると、株式買い戻しの契約自体は取り消されておらず、新型コロナウィルス・パンデミックによる世界経済の減速を鑑みて再交渉することになるとみられている。

これまでのところSEC(証券取引委員会)と米司法省、およびニューヨーク州議会はソフトバンクに対して、WeWorkのビジネス慣行および投資家との意思疎通に関する情報を提供するよう求めている。

画像クレジット:Theo Wargo / Getty Images

原文へ

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

S&PがSoftBankの長期債見通しを「弱含み」に、債権格付はBB+を維持

日本の巨大通信事業グループSoftBankにはこの数週間に多数の悪材料に見舞われている。Wall Street Journalの調査報道によれば、Vision Fundのトップは、企業スパイ会社を使って同業他社を妨害していたという。世界最大級の「もの言う株主」のヘッジファンドであるElliott Managementは、SoftBankに投資して貸借対照表と取締役会の透明性を高めて株価を上昇させることを求めている。

さらに弱り目に追い打ちをかけるニュースがあった。

S&P Global Ratingsはグループの債務見通しを「安定」から「ネガティブ」(弱含み)に格下げした。同時に長期債権発行体格付けは従来どおりBB+であることを確認した。BB+は一般に投機的ないし投資に適さないグレードと見なされている。

S&Pはこの発表で、特にSoftBankの自社株買について懸念を抱いていると述べた。公開市場で投資家から株式を買い取るためには多額のキャッシュが必要なため、現金流動性が低下するだろうという。先週発表されこのプログラムは48億ドル(約5141億円)の自社株買いで、「財務の健全性と信用格付けを優先する財務方針を守る意図に疑問(を生じさせた)」としている。

同僚のArman Tabatabai(アルマン・タバタバイ)と私は、TechCrunch Extra(有料)で2018年末にSoftBankの強迫観念的借り入れ行動の背景を探ったが、この分析は市場が右肩上がりで新型コロナウイルスもまだ流行していない時期のものだった。

しかし現状では、SoftBankの巨額債務は最近の経済に関する記憶の中で最大級の惨事に向かいかねない。

SoftBankの債務よる業容拡張は、SprintとT-Mobileという通信事業者の合併プロジェクトでことに目立った。これは最近米司法省の反トラスト局によって承認されたが、Vision Fundの投資を含めて数百億ドル(数兆円)の借り入れを必要とした。Financial Timesが2017年に報じたところではVision Fundは約款の規定により、投資家への利益還元は最低限のものだ

投資家はVision Fundから投資の見返りとして「優先ユニット」を提供される。これにより、12年のファンドのライフサイクルを通じ、毎年7%のリターンが保証されるクーポンを受け取ることができる。

ここ数日の株価の壊滅的な下落を考えると、大型の新規上場が起きる可能性はほとんどない。するとVision Fundの流動性はどうなるのか? また経済全般の悪化を考えると、合併したSprintとT-Mobileは巨大な債務負担をどうやって返済するのか?

SoftBankの強みは、誰にとっても必須なサービスを提供していることだ。 これが、長期債権発行体としての格付けがダウンしなかった大きな理由だろう。誰もがモバイルネットワークを必要としている。しかしながら債務がますます積み上がり、新型コロナウイルスによって経済に混乱がもたらされる中、Vision Fundの将来はさらに見えにくくなっている。

画像:Alessandro Di Ciommo/NurPhoto (opens in a new window)/ Getty Images

[原文へ]

滑川海彦@Facebook

Y Combinatorがデモデーを3月16日に1週間前倒し、ビデオプレゼンはなしに

先週、Y Combinatorは「新型コロナウイルスに対する懸念」を理由として、今年冬学期のデモデーをオンライン化すると発表した。 当初、サンフランシスコのピア48ビルで2日間にわたって実施されるはずだったが、3月23日にオンラインでホストされるということだった。

昨夜、さらに予定が変更され、YCはデモデーを1週間前倒しして開催は3月16日(日本時間3月17日)となった。

Y CombinatorのCEOでパートナーのMichael Seibel(マイケル・サイベル)氏の発表によれば、これは「投資家の動きが速まってきた」ことによるものだという。サイベル氏は次のように書いている。

この数日、投資家の多くが起業家への働きかけを加速している。投資決定を行うことが急がれており、Y Combinatorは投資家のこのようなペースに合わせてスケジュールを1週間前倒しすることとした。YC W20イベントはオンラインのデモデーとして3月16日(日本時間3月17日)に開催さる。

3月16日にYC Demo Day Webサイトが公開される。これは投資家と起業家がこれまで5年間利用してきたサイトを改良したバージョンだ。このサイトを通じて投資家はスライド1枚の事業サマリー、簡単なチームの背景、メンバーの略歴を知ることができる。またチームを事業内容や本拠地でソートすることもリスト化してスプレッドシートに出力することもできる。

これまでデモデーでは参加チームがステージ上でプレゼンテーションを行っており、Y Combinatorは当初、このプレゼンを「事前に録画して、すべての投資家に同時に公開される」と述べていた。今回の発表では「事業の概要スライド、チームの背景、略歴」だけになるようだ。スケジュールの前倒しに合わせて内容が修正されたのだろう。

TechCrunnchの取材に対して、Y Combinatorはオンラインのデモデーにはビデオプレゼンテーションは含まれないと確認した。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook

市場の荒れ模様は続いているが株価水準は回復、SaaSが遅れる

トランプ大統領の「今年中は給与税をゼロにする」という大盤振る舞いの約束はビジネスにバラ色の楽観的なメガネをかけさせる効果があったようだ。

米国の株式市場は売り一色の惨状から一転して回復基調となった。主要インデックスは引けにかけて軒並み上昇した。昨日の下落を帳消しにするほどの値上がりではなかったが、右肩上がりに慣れていた市場にとっては正常への復帰に近かった。

値動きが平常なときであれば驚くべき上げ幅だが、今日はダウ平均が4.89%、1167.1ドルもアップし、S&P 500は4.94%(135.7ドル)、Nasdaqは4.95%(393.6ドル)とそれぞれ上げた。

ところがBessemer-NasdaqのCloud Indexによると、SaaS・クラウド株は3.1%しか戻していなかった。つまりNasdaq全般のアップに遅れを取っている。SaaS、クラウド関連株の昨日の下落(率)が他カテゴリーよりもよりも大きかったうえに、回復も遅れている。 SaaS・クラウド株はここしばらく新しいソフトウェア企業の代表として株式市場でリーダーを務めてきたが、ここにきて株価の調整が入っているかもしれない。SaaS・クラウドプレミアムは低下する可能性がある。

しかし乱高下は広い範囲で続いており、bitcoinは底を打ち、石油も急上昇した。それでも株式市場は高値までは回復していない。ダウは15%安で、今日回復する前に52週の安値を付けている。 S&Pも最近付けた52週の高値と比べて15%以上ダウンしている。Nasdaqはこれよりわずかに大きくダウンし52週の高値から15.2%安だ。

急落を完全に回復するには本日ぐらいの値上がりがさらに数回必要だ。しかも頭上には次のような暗雲が垂れ込めている。ニューヨーク州ニューロシェルに新型コロナウィルスのために検疫隔離施設が設置された。石油、天然ガス企業の債務はひどいものだ。また政府の救済策も具体性を欠いている。

米国時間3月11日の取引では乱高下が収まり、TechCrunchでも我々(WellcomとShieber)が速報を出すのを止めることができるようになることを期待したい。

ちなみにApple(アップル)とMicrosoft(マイクロソフト)はそれぞれ1兆ドル企業だ。そのためこの大混乱の中でもテクノロジー株は全体としてはほとんど損失を被っていない。ともあれNasdaqは対前年では12.6%上っている。

画像:monsitj / Getty Images

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

米株式市場で初のサーキットブレーカー発動、S&P 500が7%安で自動的に15分間取引停止

世界では新型コロナウイルスへの懸念が引き起こした混乱が続いている。

3月9日朝、米国の株式市場ではS&P 500の下落が7%に達したために、いわゆる「サーキットブレーカー」が落ちた。これは市場の混乱を避けるために組み込まれた自動的な取引停止システムだが、実際に作動したのは今回が初めてだ。

寄り付きから市況は売り一色だった。取引開始後数秒でダウは872.42ドル(S&P 500はNasdaqは90.16ドル(6.96%)下げて1205.58ドルとなった。

S&Pがさらに下落して7%に届いためシステムは自動的に15分間取引を停止した。S&P指数でサーキットブレーカーを落とす場合、7%の下落で15分間の停止、13%でさらに15分間延長、20%で終日停止となる。取引開始の鐘がなって30分後にはダウは6%割り込んで1571.87ドルとなった。

ニューヨークの株式市場で史上初めてサーキットブレーカーが作動し、15分間取引が停止された。これは(S&P 500指数の)下落が7%に達したため。次は13%下落、その次は20%(でサーキットブレーカーは落ちる)。

世界の市場では、日本市場が約5%、中国(上海総合指数)が3%、オーストラリアが7%以上、韓国が4%を超えて下落した。英国ではロンドン市場とFTSE Russelが7%を超えて下落している。

他の経済指標の低下もひどいものだ。原油価格もダウンしているし、米国国債利回りは最低を記録している。暗号通貨でさえ今日は大幅安だ。bitcoinは8000ドルを下回っており、他の暗号通貨の価値も下がっている。

スタートアップに影響が及ぶまでにはまだ少し時間がかかるだろう。しかし、あらゆる企業の価値が低下する場合、関連するスタートアップ、それどころか競合するスタートアップの価値さえ低下せざるを得ない。2019年にきわめて楽観的な展望による会社評価額で巨額の資金を調達したスタートアップにとって、評価額が低下すれば大惨事だ。

また、ベンチャーキャピタルと未公開株式に対する最大の資金の出し手に対する影響も考えねばならない。原油価格の大幅ダウンはオイルダラーを原資にして投資ファンドに巨額の資金をつぎ込むことを困難にする。オリガルヒと呼ばれるロシアの新興財閥や中東の王族からの出資はすでに保留にされている可能性がある。そうであればSoftBankのVision Fund 2成立の可能性をさらに狭めるものだ。

過去数年、ミレニアル世代ために豪華なレストランや郊外のゴルフコースなど金のかかる産業が軒並み苦境にあるとジョーク混じりで報告されている。ベビーブーム世代は国債と金持ち階級を強化し、大きな犠牲を払って戦争をした挙げ句、株式を暴落させているのではないか。どっちもどっちだ。

ともかく市場の現場はこのとおりだ。SaaS株でさえ寄り付きで4.84%安だった。

画像:Mario Tama / Getty Images News

【Japan編集部追記】S&P500は7.60%安(2746.56ドル)で引けている。アメリカYahooのS&P 500

[原文へ]

滑川海彦@Facebook

新型コロナ対策でY Combinatorもデモデーをオンライン化する

シリコンバレーを代表するスタートアップアクセラレーターのY Combinatorが新型コロナウイルス、COVID-19に対する懸念から2020年のデモデーはオンラインで実施すると発表した。TechchCrunchはこれまでもデモデーを報じている。このイベントでは、100以上のスタートアップのデモにアメリカと世界のベンチャーキャピタリスト、ジャーナリストが参集してきた。

Y Combinatorはブログで「オンラインではデモデーのすべての側面を再現することはできないが、ファウンダー、投資家に最高の体験を提供すべく最善を尽くす」と述べた。この発表によれば、第30回のデモデーは事前に録画され、米国時間3月23日に投資家に公開される。

長い歴史があるデモデーは、独特の魅力があるイベントだ。Y Combinatorのアクセラレータークラスに参加したスタートアップのファウンダーたちにとって、この日は体験の頂点になる。大勢の聴衆が詰めかけ、小切手帳が開かれ、嵐のようにキーボードを打つ音がひびく。ファウンダーたちは何度も投資の申し出を受けるだろうし、ツイートされることも間違いない。リモート開催は残念ながらこうした興奮の一部を捨てることになる。

Work Life Venturesのファウンダー、Brianne Kimmel(ブリアン・キンメル)氏は、「YCに参加することができたスタートアップに対する投資家の意欲は高く、数十社の有望なスタートアップにはデモデーの数週間前にはすでに資金が提供される」と述べた。キンメル氏はYCの2016冬学期のクラスに参加しており、過去4回のデモデーには投資家として参加した。

「YCデモデーは初期段階のスタートアップエコシステムの頂点だが、多くの投資家はファウンダーがステージに登場するはるか前に支援したいチームを選び、支援している」とキンメル氏はいう。

キンメル氏は2019年のデモデーに先立ってTandemに投資した。2020年もすでにプロジェクト管理プラットフォームのAccordに投資しているという。

Y Combinatorはデモデーのオンライン化にともない、プレゼンのデジタル化以外にも、「各チームの経歴、背景をまとめた文書を追加し、プレゼンテーションスライドにアクセスできるようにする」という。また投資家とファウンダーチームが一対一のオンラインミーティングを実行することを支援するソフトウェアも提供する。

ベンチャーキャピタル、Fifty Yearsの創立パートナーであり、自身もY Combinatorの2012年夏学期のOBであるSeth Bannon(セス・バノン)氏は「ファウンダーはその投資家と今後10年間付き合っていかねばならないかもしれない。それを判断するには人と人との直接の対面が非常に重要だ」という。

バノン氏はTechCrunchのインタビューに対して「デモデーではごく数時間のうちに100人以上と直接話し合うことができた。とえはいえ、(オンライン化は)YCにとって正しい決断だと思う。ファウンダーとスタートアップコミュニティの安全を確保することが最優先だ。困難な決断を下したYCを称賛したい」と語った。

Handle(YC 2019冬)のCEOであるChris Woodward(クリス・ウッドワード)氏は「デモデーの当日に直接投資家に会えないことは打撃だと思うファウンダーもいるだろう。しかしデモデーの後に投資家とのもっと長いミーティングを設定するよいチャンスだと考えたほうがいいと思う」と語った。

他のテクノロジー系の大型カンファレンスも、新型コロナウイルス問題から開催をキャンセルしたりオンラインイベントに移行させたりしている。 米国時間3月5日に、B2Bソフトウェアを紹介するJason Lemkin(ジェイソン・レムキン)氏のカンファレンス、SaaStrが2020年9月に延期されると発表された。 アクセラレーターである500 Startupsもデモをオンライン化。参加チームのプレゼンはリアルタイムでストリーミングされるという。これらの決定は投資機会を完全に奪うことなくアクセラレーターを機能させていくことが狙いだ。

「過去15年間、スタートアップへの投資家はYCに参加したすべてのチームをサポートしてきた。今回のクラスでも同じことになると信じている」とY Combinatorは記事を結んでいる。

[原文へ]

滑川海彦@Facebook

物言う株主はTwitterの収益力強化のために経営刷新を要求

ニューヨークのアクティビスト投資企業Elliott Management(EM)がある企業に目をつけるときは、通常、その企業が期待以下の業績で、ポテンシャルのほとんどが眠ったままであることを意味している。米国時間2月28日のロイターの記事は、同社がTwitterの株を大量に買って取締役会の椅子を狙っている、と報じている。

複数の情報筋がこの情報を確認し、購入した株式は総株数の4〜5%の範囲だ、としている。同社は3名ないし4名の取締役の座を得て、すでに報道されているJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏に代わるCEOの任命をはじめ、大きな変化を要求するものと見られる。

その情報筋の説では、まずドーシー氏はSquareをはじめとして副業が多すぎるし、他にも暗号通貨やアフリカへの関心が大きくなっているため、Twitterには彼に代わってフルタイムで専門職の最高経営責任者が必要であるという。ただしドーシー氏を完全に下ろすというのではなく、もし彼が他のプロジェクトを捨てるなら、EMは喜んで彼をつなぎとめるとのことだ。

また同社は、プロダクトマネージャーのような重要なポジションの役員交代がコンスタントに行われていることを懸念しており、安定させたいと考えている言われている。Elliotのターゲットがどれもそうであるように、Twitterの業績もずっと低空飛行だが、現在よりも大きな収益を得るポテンシャルは十分にある。

過去にもそうであったように、ある時点でElliotは、同社が見出した問題の概要を記した公開書簡を株主たちと共有し、その中でより安定高収益な未来への道筋を示すだろう。同様の書簡を同社は2019年にはeBayに送り、計画の実行を近く開始すると発表した。Twitterの場合も同じパターンになると見てよいだろう。

この動きを、Elliotの創業者で代表でもあるPaul Singer(ポール・シンガー)氏の政治姿勢との関連で見ないわけにはいかない。しかし彼は共和党の有力なスポンサーだが、今回は金が目的であり政治は関係ないと情報筋は言う。

情報筋の説によると、このファンドは年金基金や慈善団体の基金など、多数の投資家を管理している。そういう団体には受託者責任というものがあり、したがって投資の意思決定に政治が入り込むことは、ある情報筋の言葉では「ばかばかしい」ことだという。しかしTwitter上では先週末から、シンガー氏の政治的な動きだという声が多い。

いずれにせよTwitterには大きな変化が訪れて、その波はユーザー体験や新製品、そして広告の増加にも反映されるだろう。ドーシー氏に代わる新しいボスは、このプラットホームが持つ財務的ポテンシャルを解き放つだろう。

本記事を書いている米国時間3月2日の時点でTwitterの株価は、このニュースの影響で8%あまりも上がった。

関連記事: Elliott Management letter puts eBay on notice to improve stock performance, sell StubHub…Elliott Managementの書簡はeBayの株のパフォーマンス向上とStubHubの売却を示唆(未訳)

[原文へ]
(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

4億回ダウンロードされた音楽アプリの販売元MWMが約60億円調達

人気の音楽アプリの販売元であるMWMが、5000万ユーロ(約60億円)の資金調達ラウンドを完了した。Blisce/がラウンドを主導し、Idinvest Partners、Bpifrance(フランスの大規模ベンチャーファンド)、AglaéVenturesそしてXavier Nielも参加した。

MWMが提供するアプリにはedjing Mix、Beat Maker Pro、Drum Machine、Beat Snap 2、TaoMix 2、Guitar、Drumsなどがある。同社は制作から学習、ゲームそしてユーティリティに至るまで、音楽のより広い分野をカバーするために徐々に拡大してきた。

次の段階でMWMは音楽を超えて拡大し、クリエイティブな分野の新しい領域に取り組みたいと考えている。そして何年もかけて4億回を超えるアプリダウンロードを達成したMWMは、その成功を重ねることができる絶好の立ち位置にいるようだ。

クリエイティブな分野にはビデオや写真の編集といった、すでにかなり混み合っているカテゴリーもある。しかしMWMは、モバイルクリエイティビティアプリのためのAdobeのような存在になることを狙っている。

なお、このスタートアップはハードウェア製品も発売した。最新の製品Phaseを使えば、旧来のターンテーブルをデジタルDJコントローラーに変身させることができる。受信機をミキサーに接続したら、2つのターンテーブル上にセットしたレコードの中央に小さな送信機をそれぞれ置くだけでいい。

MWMの創業は2012年だ。これで合計6000万ユーロ(約72億円)の資金を調達したことになる。同社は現在、パリとボルドーにオフィスを構え、70人の従業員を擁している。

原文へ
(翻訳:sako)

注目が集まるオンラインイベントのプラットフォームを提供するRun The Wolrd

このところ毎日、イベントがキャンセルされたニュースを聞く。もちろん新型コロナウイルスに対する懸念が原因だ。Microsoftはゲーム開発者のカンファレンス、GDCへの参加を取り止めたと発表した。Facebookも5月に予定されていたF8 2020の開催をキャンセルした。

F8はFacebook最大のイベントであり、毎年大勢の参加者を集めてきただけにキャンセルの影響は極めて大きい。 Facebookはイベントのオフラインで行うものを中止したものの、他はオンラインでストリーミングする計画だ。

Facebookであれば、こうした大規模イベントのオンライン化は社内のテクノロジーを利用して行えるだろう。しかしそうしたリソースを社内にもたない場合、新しいオプションがある。社員18人、創立1年半になるRun The Worldは台湾と中国にもエンジニアのチームを持つマウンテンビューのスタートアップだ。

Run The Wolrdはオンラインイベントの組織、運営に必要な参加登録、チケット販売、ビデオカンファレンス、ソーシャルネットワークなどを含むプラットフォームを提供する。パンデミックに対する懸念からイベントのオンライン化を考えている主催者には理想的なサービスだ。

このスタートアップに対する最大の投資家はシリコンバレーを代表するベンチャーキャピタル、a16nとして知られるAndreessen Horowitzで、すでに430万ドル(約4億6500万円)のシード資金を投じている。株主にはGSR Ventures、Pear Ventures、122 West Ventures、Unanimous Capitalに加え、エンジェル投資家でFacebookグループのCalibraのバイスプレジデントであるKevin Weil(ケビン・ワイル)氏、Patreonの共同ファウンダー、Sam Yam(サム・ヤン)氏、Jetblue Airwaysの会長であるJoel Peterson(ジョエル・ピーターソン)氏らが参加している。

写真左のRun The Worldの共同ファウンダー、CEOのXiaoyin Qu(シャオイン・ク)氏はFacebookとInstagramでエンタテインメント関係のプロダクトのリーダーを務めた。ク氏によれば「エンタテインメント分野のインフルエンサーやクリエーターに関係あるすべて」を扱ったという。

ク氏はスタンフォード大学のMBAを中退して、写真右のXuan Jiang(スアン・チアン)氏とともにこのスタートアップを始めた。チアン氏はFacebookでク氏の元同僚でジョージア工科大学のコンピュータ科学の修士だ。Facebookではイベント、広告、ストーリーの上級エンジニアだった。

Andreessen Horowitzのジェネラル・パートナーのひとりででこの投資をまとめたConnie Chan(コニー・チャン)氏にク氏について教えられ、私はク氏に2月27日にインタビューすることができた。

ク氏によれば、このスタートアップを始めたきっかけは中国で医師、医療研究者として働く母親の体験だった。2018年に髄膜炎の専門家としてシカゴのカンファレンスに参加したとき、やはり髄膜炎を研究しているドバイの医師と知り合い、貴重な知見を交換することができた。

シリコンバレーの起業家やジャーナリストのようにいつも世界を飛び歩いている人間にはさほど特別な経験には思えないが、ク氏の母親にとっては大事件だった。中国からの出国手続き、アメリカのビザ取得の煩雑さはいうまでもなく、チケットの購入や宿泊にはひと財産が必要で、旅行時間も非常に長い。しかもこの旅は35年の医師生活で初めての海外出張だったという。

ク氏は「スタンフォードだったら毎日のようにカンファレンスが開かれているので、キャンパスを歩いていれば避けるのが難しいくらいだ」とジョークを言う。

多くのファウンダーと同様、ク氏も自分自身や身近な人々が現実に遭遇した「痛点」を解決するために創業した。ク氏の場合は、母親が中国にいながらリモートワークで参加し、髄膜炎の研究に役立つ情報を得られるオンラインで行われるカンファレンスのプラットフォームを作ろうとした。

このプラットフォームの提供は図らずも絶好のタイミングとなっている。現在、多くの人々が集まるイベントを計画している主催者はRun The Worldが提供するようなオンラインイベントへの切り替えを真剣に検討しているところだ。

ク氏のスタートアップが実際にサービスの提供を始めたのは4カ月前に過ぎないが、すでに数十回のイベントをホストしており、予定されているイベントは数百にも上る。ク氏によれば、ユーザーの1社は wuhan2020という武漢のオープンソースコミュニティーで、新型コロナウイルス対策に役立つソリューションを求めて3000人以上のデベロッパーがリモートワークによるハッカソンを実施している。

このプラットフォームはラオスにおけるゾウの保護に関するカンファレンスを実施し、2週間で15カ国から3万ドル(約324万円)の寄付を集めることができた。主催者は乏しい予算しかなかったが、まったくムダのない低予算でオンラインイベントを開催し、経済的に余裕ある人をはじめとした多くの人々から寄付をつのることができた。

Run The Worldはこうした小型、低予算のイベントを効率的にホストできるのも強みだ。たとえばエンジニア向けにデートのテクニックをコーチするというイベントではわずか40人を対象にしたワークショップを開催することができた。ク氏によれば主催者は1300ドル(約14万円)の収入を得ることができた。

このスタートアップのビジネスモデルはごく単純で、カンファレンスのチケット販売額の25%を得るのと引き換えにイベントの主催に必要なサービス一切を提供する。これにはカンファレンスの紹介、告知のテンプレートから参加登録、チケットの販売と支払い(Stripeを利用)、カンファレンスのストリーミング、専用のソーシャルネットワーク、イベント終了後のフォローアップなどが含まれる。さらに現実のカンファレンスにおけるカクテルパーティーをオンライン化した参加者同志をマッチングして数分間親しく会話できる機能も含まれる。

【略】

Run The Worldが規模を拡大すれば「(副作用を取り除くための)新しい方法を考えねばならないだろう」とク氏は言う。

FacebookとInstagramにおける経験が、プラットフォームの構造や成長を勢いをづけるビジネスモデルについての洞察を与えたことは間違いない。ともあれク氏は「200万人を集めるイベントを扱いたいとは思わない。むしろ50人が集まるイベントを200万回扱いたい」と述べた。

[原文へ]

滑川海彦@Facebook

SparkLabs Groupがスマートシティ技術のためのアクセラレータープログラムを開始

米国時間2月27日、スタートアップのためのアクセラレーターとベンチャーファンドから構成されるSparkLabs Groupが、新たにSparkLabs Connexを開始したと発表した。SparkLabs Connexは不動産テック(PropTech)とIoTに特化したプログラムで、シリコンバレー、ソウル、深圳、台北、シンガポールのスタートアップのエコシステムに参入する。

画像:4X Image / Getty Images

このプログラムは、AI、5G、LPWAN(Low-Power Wide Area Network)、eSIM、セキュリティといったグリーンビルディング(環境に配慮した建物)やスマートシティプログラムに不可欠な技術に取り組むスタートアップを支援する。シンガポールを拠点とするIoT、モビリティ、スマートシティの顧問会社、CRA & Associatesの創業者であるCharles Reed Anderson(チャールズ・リード・アンダーソン)氏が、マネージングパートナーとしてSparkLabs Connexを率いる。

SparkLabs Connexには、パートナーとしてNokia、True Digital、Beca、Skyroamが参加している。また台湾の台北、韓国で開発が進められている松島新都市、オーストラリアのダーウィンも参加し、スタートアップが開発する技術のテストと活用に協力していく。さらに、スマートシティのグローバルネットワークを作る台北市の取り組みであるGo Smartと、フランス、スペイン、日本、韓国、台湾でスマートシティ技術のテストをしているUrban Technology Allianceとも連携する。

報道発表の中でアンダーソン氏は「SparkLabs ConnexをIoT、スマートシティ、PropTechのエコシステムのイノベーションハブにしたい。スタートの時点で有力なパートナーシップを幅広く結ぶことができ、さらに今後もこれを広げていく計画で、とても楽しみにしている。SparkLabs Connexは単なるアクセラレーターではなく、エコシステムのための事業だ。スタートアップ、パートナー、投資家に対してユニークなバリュープロポジションができると確信している」と述べている。

[原文へ]

(翻訳:Kaori Koyama)

モバイルアプリグロースハッキングのApp SamuraiがシリーズAに到達し約2.7億円調達

サンフランシスコに本拠を置くモバイルアプリのグロースハッキングのApp SamuraiがシリーズAの段階に達した。同社は212 Venturesがリードし500 Startups、Spark、Degerhan Usluelが参加したラウンドで240万ドル(約2億6500万円)を調達した。これまでの調達資金の総額は460万ドル(約5億円)となる。資金は新プロダクトの開発と世界各地へのビジネスの展開に当てられる。

2016年に創立されたApp Samurai Groupはモバイルアプリの開発企業の成長とマーケティングを助けるさまざなツールを用意している。App Samuraiはユーザーの獲得を助けるプラットフォームだが、この他モバイル広告の詐欺をリアルタイムで検知するInterceptd、アプリごとのユーザーエンゲージメントを計測するStorylyも提供している。

今回の資金調達について共同ファウンダー、CEOのEmre Fadillioglu(エムレ・ファディリオグル)氏は声明を発表し 「 240万ドル(約2億6500万円)の資金調達は 2020年に向けた当社の戦略に基づくものだ。我々は最高の人材を集め、ビジネスを国際的に拡大していきたい。優先順位としてはまず最高の人材を集めることだ。これにより透明性の高い効率的なモバイルマーケティングのエコシステムを確立していくことを目指す」と述べた。

同社の直接的なライバルはTraffic Guard、Scalarr、Forensiq, Machine、21 Metrics、FraudScore、FraudLogixなどの各社だ。間接的なライバルとしてはAdjust、AppsFlyer、Tune、Kochavaなどが考えられる。
画像:Getty Images

[原文へ]

滑川海彦@Facebook

参照系AI開発する東北大学発のAdansonsが仙台市主催のピッチコンテストで審査員賞を獲得

仙台市とMAKOTO Capitalは2月25日、仙台国際センターにて「TGA Festival 2020」を開催した。同イベントは、両者が共同展開している東北地方発のスタートアップを支援するプログラム「TOHOKU GROWTH Accelerator」の一環だ。MAKOTO Capitalは、仙台を拠点に東北地方の企業へのファンド投資やアクセラレータープログラムなどを手掛ける企業。仙台国際センターは、仙台地下鉄東西線の国際センター駅が最寄り駅で、同駅付近には、東北大学川内キャンバスや日本フィギュアスケート発祥の地である五色沼などがある。

TOHOKU GROWTH Acceleratorでは、事業開始を目指す若手起業家や家業を持つイントレプレナー(社内起業家)向けの「TGA Studio」、次のステージを目指して資金調達を計画しているスタートアップ向けの「TGA Growth」という2つのコースが設けられており、TGA Festival 2020ではその成果を発表するピッチイベントが開催された。ここでは「TGA Growth Course PITCH」について紹介する。今年は5社がピッチに参加し、以下の6名が審査員を務めた。

  • KDDI経営戦略本部副本部長・松野茂樹氏
  • プロトスター取締役CCO・粟島祐介氏
  • 経営共創基盤(IGPI)マネージャー・山下 翔氏
  • ブラッククローキャピタル代表取締役/アナムネ代表取締役・菅原康之氏
  • NTTドコモ・ベンチャーズ代表取締役社長・稲川尚之氏

来場者の投票で決まるオーディエンス賞は、福祉施設に所属する障がい者が制作したアート作品の版権管理や企業とのコラボレーションを展開するヘラルボニーが受賞。また、イベントのメインスポンサーを務めるKDDIは、企業のIoT事例をシェアできるプラットフォーム「IoT-OneBox」などのサービスを展開するiOT.RUNにスポンサー賞を授与した。そして審査員賞を獲得したのは、東北大学発AIベンチャーのAdansonsとなった。一方「TGA Studio Course PITCH」の審査員賞は、コミュニティマネージャー支援サービス「TAISY」を運営するfunky jumpが受賞した。

iOT.RUN(KDDI賞)

Raspberry PiをベースにしたIoTデバイス「Tibbo-Pi」と、Tibbo-Piで開発したプロダクトをシェアリングできるプラットフォーム「IoT-OneBox」などを開発。Tibbo-Piは、誰でもIoT機器を自作できるのが特徴。ボード上に用意されたスロットに、光センサーやオン/オフといった単機能の部品「Tibbit Blocks」をはめ込んでプログラムを組んでいくことで、「室内の明るさを監視して暗くなったらLEDライトを点灯させる」などの動作を実現できる。

各企業がTibbo-Pi上で開発した各機能は「IoT-OneBox」プラットフォームを通じて他社に販売できる。Tibbo-Piを使えば、作業者や設備管理の稼働分析、不良品やダウンタイムの削減などが可能なIoTデバイスを開発できるそうだ。

Adansons(審査員賞)

2019年6月設立の東北大学発AIベンチャー。独自のAI技術「参照系AI」(AI‐R)を活用した情報解析、導入支援、APIによる提供などを行っている。災害や製造現場などでの異常検知、画像処理、音声処理など応用範囲は多岐にわたる。

既存のAI解析サービスに比べ、データ数と計算時間が10分の1で済み、高品質であることが特徴だ。具体的には、音声による咳の疾患推定や重・移動解析による運転の疲労度推定などが可能。

グッドツリー

さまざまなシニア向け情報サービスを提供。独自開発した介護ソフト「ケア樹Free」を介護施設無償提供している。介護ソフトとは、介護事業者が介護保険の報酬請求を効率化するためのプロダクト。既存のソフトは使用料が高価なうえ使いづらい、蓄積したデータを生かしづらいといった不満があったことから、ソフトのコア機能を無償提供。まずは多くの介護施設に自社開発のソフトを無償で使ってもらい、iPadのへの記録や伝送、写真撮影・保存など必要な機能を有料オプションとして販売している。

今後はケア樹Freeなどで蓄積されたデータを解析したサポートサービスに力を入れる。その1つである「ケア樹たのむ」では、ケアプランの作成や行動変容の促し、生活リズムの可視化などが可能になるという。

ヘラルボニー(オーディエンス賞)

福祉施設に所属する障がいを持つアーティストとともに、新たな文化をつくるアートメゾンブランドを運営。福祉施設からアート作品を借り受け、デジタルデータの管理や契約手続き代行、イベントなどの企画などの事業を通じて、福祉施設とアート作品を制作したアーティストにアート使用料を還元する。

クライアントや代理店からは、アート作品を利用した企画提案や運営など請け負い、企画費やアート使用料を徴収する。現在、2000点ほどのアート作品のデジタルデータを保有している。直近ではJR東日本スタートアップの採択企業となり、JR品川駅構内でアートTシャツを販売している。

関連記事:JR東日本スタートアップが品川駅にSTARTUP_STATIONをオープン、nanoblock版高輪新駅やリサイクルTシャツを展示

ストーリーライン

コーヒーの生産加工、コーヒーの輸入販売、コンサルティング、ブランディングプロモーションなどを手掛ける。カフェインレスコーヒー、いわゆるデカフェコーヒーを未来のコーヒーのスタンダートと位置付け、東北大学との共同研究により生まれた「超臨界CO2抽出」の技術を使うことで安価かつ高品質なデカフェコーヒーを製造する技術を擁する。

従来のデカフェコーヒーは手間と時間がかかるため、コストを抑える目的で通常のコーヒーよりも品質の劣る豆を使うことも多く、味もいまひとつ。超臨界CO2抽出の技術を使えば、収穫したコーヒー豆を二酸化炭素で洗い流すことでカフェインを除去できるという。今後は仙台に「CRAFT DECAF LAB」を設置して実証実験を進めていくという。契約農場のあるルワンダでコーヒー前の栽培・収穫・加工まで行い、2023年には世界に輸出販売していく計画もある。

なお「TGA Festival 2020」の全セッションは以下ですべて視聴可能だ。

南米の投資家の間でホテル投資が人気

南米の大手ベンチャーキャピタル投資家たちの一部が、現在ホテルチェーンを支援している。

実際、コロンビア最大のホテルチェーンであるAyendaが、新しい調達ラウンドで870万ドル(約9億7000万円)を調達した。

Kaszek Venturesが主導したこのラウンドは、コロンビアおよび周辺地域における、Ayendaの継続的な拡大をサポートすることになる。このホテルチェーンは、既にコロンビア国内で150のホテルを運営しており、最近の発表によればペルーにも進出を果たした。

資金は、Kaszek VenturesおよびIrelandia Aviation、Kairos、Altabix、そしてBWG Venturesなどの戦略的投資家たちから調達した。

2018年に設立された同社は、現在コロンビア内にそのブランド名の下で4500室以上を運営し、国内最大のホテルチェーンとなっている。

ベンチャーファームによる実店舗チェーンへの投資は、北米よりも新興市場ではるかに一般的だ。Ayendaへは、ソフトバンクグループがインドのホテルチェーンOyoに対して行った大きな賭けや、昨年末にLvYue Groupに対してTencent(テンセント)、Sequoia China、Baidu Capital、そしてGoldman Sachsたちが投資した(発表によれば)「数億ドル規模」(数百億円規模)の投資行動を反映したものだ。

「私たちは大きな産業を再定義しようとする企業を探しているのですが、そこで出会ったのがAyendaだったのです。彼らはこの地域で、前例のない方法でホテル業界を変えようとしているのです」と語るのはKaszek VenturesのパートナーであるNicolas Berman(ニコラス・バーマン)氏だ。

Ayendaは、フランチャイズシステムを通じて独立したホテルと連携し、ホテルの稼働率とサービスを向上させている。ホテルは、チェーンへの参加を申請し、営業開始の承認を受ける前に、最大30日間の審査プロセスを経る必要がある。

アイルランド航空のマネージングパートナーであるDeclan Ryan(デクラン・ライアン)氏は、次のように述べている。「最高のコストパフォーマンスの下に幅広いホテルの選択肢を提供することで、利用客はより頻繁に移動し、経済を活性化させてくれます」。

同社は、2020年にそのホテルに、100万人以上のゲストを迎えられることを期待している。客室は、アメニティと24時間体制のカスタマーサポートチームを含め、1泊20ドルで提供されている。

Oyoの話は、ホテルチェーンへのベンチャー投資拡大を検討している企業にとって、警告を発する物語かもしれない。かつて高く持ち上げられたこの企業は、私たちが書いたように、厳しい批判の対象となってきた。

New York Times(NYT)は、インドのテクノロジーコミュニティで注目を集めている、ハイテク採用の低予算ホテルチェーンOyoに関する詳細なレポートを公開した。NYTの記事では、Oyoは無認可の部屋を提供し、その感心できない慣行の中でも特に、トラブルを抑止するために警察官を買収していたと書かれている。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドからの数十億ドルに支えられたOyoが、インド版WeWorkになるかどうかが真の懸念材料である。インドのスタートアップエコシステムは、r成長しシリコンバレーの競合相手とぶつかるようになるにつれて、多くの障壁に直面する可能性がある。

トップ画像クレジット:inxt /Shutterstock

原文へ

(翻訳:sako)