ソフトバンクグループが同社初の特別買収目的会社のIPO申請を米国時間12月21日に行うとの報道

Axiosによると、SoftBank Investment Advisers(ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズ)は米国時間12月21日月曜日にも、同社初の特別買収目的会社(SPAC)の新規株式公開(IPO)を通じて、5億〜6億ドル(約518〜621億円)の資金調達を申請する可能性があるという。

ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズは2つのビジョンファンドを運用しており、今後もさらに2つのSPACを計画していることが報じられている。

ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズのRajeev Misra(ラジーヴ・ミスラ)CEOがMilken Institute Global Conferenceで講演した際に、SPACを計画していること(CNBC記事)を明らかにしたのは2020年10月のことだった。特別買収目的会社によりビジョンファンドが民間企業に投資する別の方法を提供できるだけでなく、一般の投資家がSoftBank(ソフトバンク)のポートフォリオに投資することを可能にする。

特別買収目的会社は他の企業の合併や買収を目的に設立される非上場企業であり、伝統的な株式市場への上場への上場に代わるものとして、2020年になって人気を集めている。

これはソフトバンクにとって初のSPACとなるが、同社の投資先企業の1つである不動産プラットフォームのOpenDoorは、最近SPACを通じて上場した。もう1つの投資先であるインドネシアのeコマース大手のTokopediaも、パンデミックの影響でIPO計画が中断した後、Richard Li(リチャード・リー)氏とPeter Thiel(ピーター・ティール)氏が支援するSPACを通じての上場を検討している(Financial Times記事)。

TechCrunchはソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズにコメントを求めている。

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

不正会計の中国「ラッキンコーヒー」が罰金186億円支払いで米証取委と和解

多くの問題を抱えた中国のコーヒーデリバリースタートアップであるLuckin Coffee(ラッキンコーヒー)は、売上高や経費、損失を数億ドル(数百億円)水増しした件で1億8000万ドル(約186億円)の罰金を支払うことに同意して米証券取引委員会(SEC)と和解した。

SECが米国時間12月16日夜に発表した(WSJ記事)。Luckinの不正会計は2020年初めに米投資会社のMuddy Waters(マディ・ウォーターズ)が最初に指摘した。疑惑に対し、Luckinは4月に内部調査を立ち上げると話した。6月にはSECがLuckinの上場廃止を検討すると述べ、7月にLuckinは粉飾を認めた(未訳記事)。

一連の騒ぎのわずか1年前にLuckinはNASDAQ上場を通じて6億5100万ドル(約670億円)を調達した(未訳記事)。同社は2017年10月に創業され、スタートアップから最速で上場企業となった企業の1社だった。

Starbucks(スターバックス)の中国におけるかなりのシェアの一部を取り込もうとしていたLuckinは、少なくとも2019年4月から2020年1月にかけて売上高を3億ドル(約309億円)超水増しした疑いがある、とSECは発表した。一部の従業員が、同社の経費を1億9000万ドル(約196億円)超を水増し、「事業データベースを捏造して、虚偽の売上高を反映させるために会計・銀行記録に手を加えた」ことも発覚した。

Luckinは、ニューヨーク州南部地区地方裁判所に提出された訴状にある疑いを肯定も否定もしていない。和解は裁判所の判断次第であり、証券保有者への資金振込は中国当局の承認が必要だ。

Luckinの不正会計の事実が調査で明らかになったことを受け、中国の当局は9月にLuckinと同社の不正に関わった45社に計900万ドル(約9億円)の罰金を科している(Reuters記事)。

詐欺スキャンダルにもかかわらず、Luckinの事業は現在も通常通り展開されている。同社と店舗のオペレーションは現在「安定かつ普通」だと同社は12月17日の発表文で述べた。

「Luckinは引き続き当局に協力し、コンプライアンスを優先します。一方で経営陣と従業員は社の安定経営に努めます」。

空売りを行う投資会社は2020年、米国で上場している中国企業を追いかけ回した。Wolfpack Research(ウルフパック・リサーチ)はレポートでBaidu(バイドゥ)が出資する中国の大手ビデオストリーミングサービスiQiyiが決算を粉飾していると指摘し、SECが調査する事態となった(CNBC記事)。中国のオンライン塾運営会社GSX Techeduも、Citron Researchによる不正会計の指摘を受けて同様にSECの調査を受けた(WSJ記事)。

「外国企業とその役員、ディレクターに米国の企業や役員と同じような責任を持たせることに多くの課題がある一方で、外国企業が連邦証券法に違反したときは投資家を保護するために我々は利用できるあらゆるリソースを今後も活用します」とSECのディレクターであるStephanie Avakian(ステファニー・アヴァキアン)氏はLuckinについての声明文の中で述べている。

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(翻訳:Mizoguchi

インドネシアのロジスティクス事業拡大に向けてWaresixがTrukitaを買収

写真左はWaresix共同設立者・最高経営責任者Andree Susanto(アンドリー・スサント)氏、右はTrukita共同設立者・最高経営責任者Ady Bangun(アディ・バングン)氏

インドネシア最大級の物流管理スタートアップであるWaresixは、「ファーストマイル」に注力するTrukitaを買収した。この用語は、サプライチェーンのうち、港から倉庫まで商品が輸送される部分を指す。

Waresixのプラットフォームは、サプライチェーンとロジスティクスチェーンのあらゆる部分をデジタル化するが、現在はミッドマイルロジスティクスサービス、つまり倉庫から流通業者への輸送に注力している。Trukitaは1万台以上のトラックによるネットワークを所有しており、両社の組み合わせにより、「インドネシア最大のロジスティクステクノロジープロバイダーの1つとなりました」と、Waresixの共同設立者で最高経営責任者を務めるAndree Susanto(アンドリー・スサント)氏は述べている。WaresixとTrukitaはどちらも企業を荷主や倉庫に接続することで事業を展開しており、今回の買収により顧客のコストを削減することが可能になる。

Waresixは2020年9月、EV Growth、Jungle Ventures、SoftBank Ventures Asiaなどの投資家から2019年を上回る約1億ドル(約103億円)の資金調達を行った(PR Newswire記事)と発表した。同社は世界で4番目に人口の多いインドネシア全土で、375以上の倉庫と4万台以上のトラックを扱っており、現在は100以上の都市にサービスを提供している。

インドネシアは1万7500以上の島々からなる群島であり、そのうち6000の島々が人が住んでいる。そのため、インドネシアの地理はロジスティクス企業、特に大都市以外で事業を展開している企業にとって、他では見られない問題を生じさせる。商品が最終目的地に到着するまでに、サプライチェーンは複数の船やトラック、そしていくつもの倉庫をまたがって使用しなければならないのだ。物流コストの高さはインドネシア経済に大きな影響を与えており、政府は現在、より多くのインフラを整備したり、データベースを統合したり、輸出入ライセンスを簡素化するための取り組みを行っている(The Jakarta Post記事)。

インドネシアの複雑なロジスティクス事情はWaresix、Kargo、Ritaseのような物流スタートアップを誕生させた。これらの企業は、中間業者を排除し、リアルタイムで出荷を管理し、データ分析を利用して、サプライチェーンにおける非効率性を発見することに力を注いでいる。

Trukitaは2017年に設立された。その投資家にはAstra International、EverHaüs、Plug and Playなどが名を連ねている。

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(翻訳:TechCrunch Japan)

新型コロナで悪化するテクノロジー依存:脱するために今できること

著者紹介:Stuart Wall(スチュアート・ウォール)氏は、スモールビジネスの拡張を手助けするクラウドベースのカスタマーコミュニケーション・プラットフォームSignpost(サインポスト)を創設したテクノロジーエグゼクティブであり起業家。

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新型コロナのパンデミック(世界的流行)により、アメリカにおけるテクノロジー依存が加速した。依存によって多くの人が悲しみや不安にかられたり、やる気を失っている

Facebook(フェイスブック)やTikTok(ティックトック)、 Snapchat(スナップチャット)などの企業では、我々が彼らの製品を頻繁に使用すればするほど、より多くの広告収益を得ている。こうした企業はプッシュ通知やパーソナライズされたフィードを使用して我々消費者を惹きつけ、感情を操り行動に影響を与えている。

こういった企業の商売は実に順調だ。今アメリカ人は、デバイスを毎日5時間以上使用している

だから何なのか?Netflix(ネットフリックス)の「The Social Dilemma(監視資本主義 デジタル社会がもたらす光と影)」で語られるように、テック企業は引き続き自社の利益の動機に従って、我々を惹きつけることだろう。政府が、砂糖や違法薬物の消費よりも不健康なテクノロジーの消費のコントロールに関与する可能性は低いだろう。我々自身がコントロールする必要があるのだ。

私の見解はテック企業の元CEO、そしてテクノロジー依存者としてのものだ。私が創業したマーケティングプラットフォームは1億ドル(約104億円)以上集め、350名の従業員を持つ会社に成長し、去年プライベートエクイティ会社に売却した。私はその中で、酷いテクノロジーの習慣をいくつか身に着けてしまった。メールは常にチェックし、対面でのやり取りもプッシュ通知があれば中断していた。

昨年家族を訪ねたときには、私のテクノロジー依存は落ちる所まで落ちていた。そこで私はスマホを置き、重度のパーキンソン病を患う母と一緒にガーデニングに励むことにし、意図的にゆっくりと行動した。

禁断症状に苦しむ中毒者のような気分だった。スマホはまるで磁石のように、未読の仕事メールやニュース速報を確認するように私を引き寄せていたのだ。テクノロジーの使い過ぎにより、脳の配線回路が変わり、生活意識の質は下がり、疎外されているような感覚に陥っていた。

私は今年の初めにCEOを辞め、空いた時間を利用してマインドフルネス、神経の可塑性、テクノロジー依存症について学んだ。また最も重要なことだが、テクノロジーの使用を管理する戦略を作った。これにより気分は優れ、より生産的になった。

私が学んだことをお伝えしたい。

テック企業は我々の脳につけ込んで、注意を引こうとしている

一部のテック企業は我々の注意を引くために、UCLAの精神医学者Daniel Siegel(ダニエル・シーゲル)氏が「一階脳」と呼ぶ、脳の最も古い部分をターゲットにしている。一階脳には、脳幹と辺縁域があり、本能と衝動(闘争・逃走)や強い感情(怒りや恐怖)をコントロールする。反対に二階脳には大脳皮質があり、思考、想像、計画といった複雑な精神機能をコントロールする

一階脳は反応性で、緊急事態から我々を守るように設計されている。素早い判断ができ、意識をハイジャックして、強い感情を通じて行動を促すことができる。この一階脳が、 注意を引きたい製品のターゲットとなる。怒りを覚えるようなヘッドラインや、素早く反応したくなるTikTokの通知は、我々の一階脳に訴えかけてくるのだ。

反応的な状態の時間が長いと、脳の回路が変わってしまう

脳は訓練によって変わるものだ。研究では、我々の脳は神経細胞の発火パターンで再プログラミングされることが分かっている。神経系は、神経可塑性と呼ばれるプロセスで反復的な集中や行動を通じて再配線したり、変換したりすることができるのだ。

繰り返しデバイスを使用することは、神経可塑性の最適な例だろう。プッシュ通知に反応したり、無限スクロールで動画を視聴したり、SNSで社会的評価を求めたりなどにより多くの時間を費やすことで、脳の回路は再配線され、同じことをさらにやりたくなってしまうのだ。

企業による注意を引きつける力が増すと我々の依存はどんどん進む

多くのテック企業は、自社製品の過剰使用がもたらす問題について把握しているが、このアテンションプロフィットプールの分け前を減らすために必要な抜本改革をする企業はない。もしそんな企業があれば、別の企業がその後釜に座るだけだ。

こうした企業は、甘いドリンクを販売しているのだ。その味は飛躍的に改善された、今までにない最高に甘いドリンクだ。飲めば飲むほど、やめられないのだ。我々は消費と習慣をコントロールしなければならない。テクノロジーダイエットをする必要があるのだ。さもなければ、病的肥満に相当する精神病に悩まされることになる。

習慣を変えることで、より生産的で幸せになるように脳を再配線できる

テクノロジーの消費を食品の消費のように考えると、テクノロジー製品は、情報の質と配信方法に基づき、4つの食品グループに分けられる。コンテンツの質は重要だ。コンテンツには価値があるもの(MITのオンラインコースウェアなど)や重要なもの(仕事用のメールなど)があるが、その一方でほとんどは、役に立たない(TikTokなど)。

また配信方法も重要だ。健全なプラットフォームでは、ユーザーに主体性が与えられ、必要なときに役立つコンテンツが引き出されるようになっている。一方で有害なプラットフォームはプッシュ通知に頼ることが多く、何か別のことをしているときに、あまり役に立たない情報を送ってくるのだ。私の経験から、テクノロジーダイエットを実施するためにできる3つのステップを紹介したいと思う。

1. 一階脳を強化する製品を排除する(プッシュ通知される品質の低いコンテンツ)

自制には限度がある。甘いドリンクが要らないなら、家の中には置かないことだ。我々は、今までに開発された中でも最も注意散漫になるアプリを、常に手に届くところに置いている。こうしたアプリが一階脳を食い物にし、より有意義な思考をハイジャックし、ほとんどの人にネガティブな価値を植え付ける。最も効果的な防衛策はこれらを生活から排除することだ。こうしたアプリはそもそも使用すべきではない。

助言:私はiPhoneとMacBookにApple(アップル)のコンテンツ制限を使用している。TikTok、Instagram、Facebook、Snapchatといった明らかな元凶と、個人的に害となっているZillow(ジロー)、StreetEasy(ストリートイージー)、NYPost(NYポスト)も追加した。上書きコードは妻が持っている。必要に応じて解除できるが、生活意識に入ることがない程度に、困難なプロセスとなっている。

2. 二階脳を強化する製品をより多く消費する(必要に応じて利用できる質の高いコンテンツ)

優良なコンテンツは知識やスキルを広げてくれ、思いやり、想像力、マインドフルネスに繋がる方法で二階脳の再配線に貢献する可能性がある。

優良コンテンツの消費は実りのあるものだが、努力が必要になる。途切れることのない集中力が求められる。無意識に消費してしまう甘いドリンクと違い、生野菜は意図的に消費する必要がある

助言:お気に入りの「生野菜」のリストを作ろう。私の生野菜リストは、Kindle(キンドル)、Feedly(フィードリー)、テック系の定期刊行物、お気に入りのキュレーションプラットフォームのHackerNews(ハッカーニュース)、Product Hunt(プロダクトハント)だ。人気急上昇中のマインドフルネスアプリの1つCalm(カーム)も入っている。ホームスクリーンに入れているアプリはこれだけだ。おかげでもっと頻繁に使うようになっている。食べ物のダイエットのように、「良い」消費を達成するための目標を設定し、進捗状況をモニターしている。

定期的にテクノロジー断ちをすることもお勧めする。私は息子と散歩するときや、友達とディナーに行くときはスマホを家に置くようにしている。また二階脳の再配線を促す、ハイキングや楽器を習うなどのテクノロジーを使用しないアクティビティもお勧めだ。

3. 生産性ツールの消費パターンを再設計する

Eメールはほとんどの人にとって必要なものだろう。生産的になれる可能性もある。だが平均的なメッセージの質は低く、常にオンで、頻度が高く、デフォルトでプッシュ通知になっているデザインにより、我々の生産性はベストな状態ではなくなっている

助言:私は緊急を要したり、タイムリーなメッセージではないものすべての通知をオフにしている。テキストメッセージやLyft(リフト)、Tovala(トバラ)オーブンなどがその例だ。Boomerang(ブーメラン)のChrome(クローム)拡張機能では、1時間ごとにすべてのEメールを配信するように設定できる。 Eメールを1時間ごとにバッチ処理することで、中断を大幅に減らすことができる。応答に影響することはない。

我々は、食品、製品、セキュリティなど、近代の祖先も嫉妬するような相対的に豊かな世界で生活しているが、豊かさは我々を幸せにはしていない。記録によると、我々世代は最も幸せではないらしい。大の大人が強い感情、情動、衝動ばかりに気をとられて、ひっきりなしにかんしゃくを起こしている、一階脳の感情を集めた中で生きているように思われる。

だがまだ希望はある。

個人的には、たった数ヶ月でもテクノロジーダイエットは効果があったと思う。衝動的になることが減ったし、より気を配れるようになった。従業員ならば、アテンションエコノミーから利益を得る企業で働くことを辞めることができる。マネージャーならば、夜はデバイスをオフにし、Slack(スラック)の通知をオフにして本当のバケーションを取るように、チームに強く主張できる。親ならば、子供が健康的な消費パターンを築けるように助けることができる。

集団行動と脳の回路の再配線によって、政治の方向性を変えたり、21世紀において最も重要な課題を協力して解決できるかもしれない。

アメリカのイノベーションにより、アテンションエコノミーは圧倒的な勢いをつけてきたが、今度はそのイノベーションでテクノロジーの使い方を正す時がきたのではないだろうか。

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(翻訳:Dragonfly)

中国のドローン大手DJIが支援するアグリテック企業FJ DynamicsにTencentが投資

2018年にTencentは、中国の伝統的な産業が最近ますますテクノロジーを利用して生産性を上げているため、自分たちもエンタープライズへの注力を増やすと宣言した(未訳記事)。同社の産業プロジェクトは、AIを利用して医療画像を選別したり、同社のメッセージサービスWeChatを利用して小売企業のための顧客管理ツールを作るなどさまざまだ。

最も新しいところでは、TencentはFJ Dynamicsに投資した。この中国のスタートアップは、スマートトラクターや田植え機など農業を自動化するソリューションを販売しているほか、港や工場用の無人車を世界中の顧客に販売している。Tencentとそのほかの匿名投資家からの投資は数億元(数十億円)に達している、とTencentは12月15日に発表している

2017年に創業されたFJ Dynamicsは、中国の複数の有名企業とつながりがある。たとえば同社の株主の中には、ドローンのメーカーであるDJIや中国の国有自動車製造企業であるDongfeng Asset Managementがいる。FJ Dynamicsは、その名前にも同社を知る手がかりがある。すなわちFJは「Feng」と「Jiang」の省略形であり、さらにそれらはDongfengとDJIの中国語綴から取られている。創業者でCEOのWu Di(ウー・ディー)氏もDJI出身で、氏はそこでチーフサイエンティスト(搜狐)としてチップの研究開発を率いた。

 

おもしろいことに、DJI自体も最近では農業用ドローンを強力にプッシュしている。

Tencentの投資部門のマネージングディレクターであるJeffrey Li(ジェフリー・リー)氏は、2020年4月のスピーチで次のように述べている。「中国社会はいま、生産性の向上に向けて舵を切りつつあり、そこにエンタープライズサービスの成長機会がある。米国では大量のベンチャー資本とプライベートエクイティ投資がエンタープライズにフォーカスした企業に投じられているが、中国では消費者を対象とする企業に比べるとエンタープライズにフォーカスしたビジネスは投資全体のごく一部でしかない。この傾向が変わって、投資が産業分野にも向かっていくためには時間がかかるだろう」。

中国で登記している企業であるFJ Dynamicsによると、同社はR&Dセンターが中国とスウェーデンとオランダにある。

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タグ:FJ DynamicsDJITencent投資農業中国

画像クレジット:FJ Dynamics

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

レディー・ガガの元マネージャーらがテクノロジーでアーチストを支える「Q&A」を創業

Q&A」は、音楽産業のためのテクノロジーを開発するスタートアップで、共同創業者は業界のインサイダーでレディー・ガガの最初のマネージャーだったTroy Carter(トロイ・カーター)氏と、彼の長年の協力者であるSuzy Ryoo(スージー・リュウ)氏だ。米国時間12月14日、同社はその「Venice Innovation Labs」という部門を通して、一連の新しいソフトウェアプロダクトをローンチした。

レコード会社は、それらの新しいツールを使って新曲をベータテストし、アーチストを管理し、楽曲を容易にかつ効率的に配布できる、と同社の声明で述べている。

新部門からの最初のリリースはStreamRateで、新曲がリリースされる前に感情分析を行う。Venice For Labelsは、複数のアーティストやマネージャー、モニターなどの間でのギャラなどの分配を管理し、レーベルがその一覧リストを調べられるようにする。

同社はまた、アドバイザーチーム「Premium Services」による戦略的マーケティングにより、宣伝などに人間的なタッチを加える。北米ではRay Kurzeka(レイ・クルゼカ)氏、英国ではMatt Ott(
マット・オット)氏がチームのリーダーとなる。

「テクノロジーは音楽の消費方法を急速に変えつつあるが、私たちの業界のインフラはまだ十分に整備されていない。私たちはレーベルが喜ぶ、美しくて直感的なツールや、彼らを変えるようなサービスを密かに開発してきた。私たちのビジョンは、才能あるアーティストと彼らを日々サポートするレーベルを強化するための本物のコミュニティを作ることだ」とQ&Aの社長であるスージー・リュウ氏はいう。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

中国が独禁法違反でアリババとテンセント子会社に罰金処分

中国政府は、国内で最も影響力のあるインターネット企業のパワーを抑えにかかっている。市場監督管理総局は米国時間12月14日、過去の買収案件で当局に申請して承認を得なかったとしてAlibaba(アリババ)とTencent(テンセント)のスピンオフのeブック(未訳記事)会社China Literature(チャイナ・リタラチャー)に罰金を科すと発表した。

Alibabaの中国大手モール運営会社Intownへの株式投資(未訳記事)、China LiteratureのフィルムスタジオNew Classics Media買収(未訳記事)が対象だ。公告によると、Alibaba、China Literatureともに50万元(約800万円)の罰金が科される。何十億ドル(何千億円)という買収規模に比べて罰金の額は取るに足りないものだが、今回の罰金は業界にとって警告となるはずだ、と当局の広報担当は記者会見で述べた。

Alibabaは近年、積極的な買収を通じてオフライン小売に事業を拡大してきた。デジタルエンターテイメント帝国を築いたTencentも同様に事業を拡大するために外部パートナーに投資してきた。

AlibabaとChina Literatureは当局に買収を申請しなかった。しかし買収はいずれも「マーケットの競争を阻害するもの」とみなされなかった。そのため、市場管理当局は中国の独禁法に則って買収を破棄するのではなく罰金を科した、と述べた。

China Literatureはコンプライアンスと申請の要件に取り組むために当局の命令に厳密に従っていると話した。Alibabaにもコメントを求めたが連絡がなかった。

一方、Tencentが出資しているゲームストリーミング大手HuyaとDouyuの合併もまた当局の調査を受けている。

AlibabaとChina Literatureは、市場集中違反で「持分変動事業体(VIE)である企業に中国が罰金を科した初のケースとなる。VIEの企業構造は、外資企業がコントロールしつつ国内企業として運営することができるため、中国のインターネット企業では人気だ。しかしこれは規制の抜け穴となるとして議論を呼んでいる。

2019年1月にパブリックコメントの募集を開始した中国の独禁法は現在、見直しが進んでいる、と当局は記者会見で述べた。先月、中国政府はインターネット企業の独占的な行動に照準を合わせた規制の草案を公開した(未訳記事)が、業界専門家はこの規制は複雑なものになると指摘した。

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(翻訳:Mizoguchi

グーグル、Intel、Zoomらが企業にもっとChromeを普及させるための同盟を結成

Google(グーグル)とBox、Citrix、Dell、Imprivata、Intel、Okta、RingCentral、Slack、VMware、Zoomなど業界の大物たちのグループが米国時間12月10日、Modern Computing Allianceという団体の立ち上げを発表した。

この新しい同盟のミッションは、「エンタープライズ顧客の利益のために『シリコンからクラウドへ』のイノベーションを推進し、差別化された最新のコンピューティングプラットフォームを強化し、統合されたビジネスソリューションのための追加の選択肢を提供する」ことだ。

誰がこのミッション・ステートメントを書いたとしても、実際に何も言わずにどれだけの言葉を使えるかを見ようとしているのは明らかだ。

この同盟の真の狙いはこうだ。そのホームページにChromeという言葉はまったく登場しないし、グーグルのパートナーたちも言及していないが、本音はエンタープライズでのChromeとChrome OSの採用を推進することだ。グーグルの広報担当者は「この同盟の目的は、Google Chromeのエコシステムにおけるイノベーションと相互運用性を推進してエンタープライズ顧客の選択肢を増やし、今日企業が直面している最大の技術的課題のいくつかに対処する手助けをすること」だという。

なぜ「Chrome Enterprise Alliance」という名前にならないのかよくわからないが、でもModern Computing Allianceには別の狙いもあるのだろう。Microsoft(マイクロソフト)がいないことが、それを説明している。また、これが固定メンバーではなく今後増えていくことも、ほぼ確実だろう。

同盟はグーグルをリーダーとし、今日的なウェブアプリケーションをエンタープライズの領域に持ち込むことを狙っている。そしてそのために、パフォーマンスとセキュリティとアイデンティティとマネジメントと生産性に力を入れていく。そしてもちろんそのすべては、ChromeとChrome OSの上で良好に動き、相互運用性がある。

グーグルのChrome OS担当副社長であるJohn Solomon(ジョン・ソロモン)氏は「テクノロジー産業はオープンで多様性に富むエコシステムに向かって進化しており、それは選択の自由と、複数のスタックにまたがる統合を可能にするものだ。この現実は、課題と機会の両方を提示している」と述べている。

エンタープライズがクラウドへの移行が進むと、以前よりも良質なウェブアプリケーションや、ときには先進的なウェブアプリケーションが、ネイティブなソリューションと同じように良好に動くことが当然のように大きな目標になり、そのためにこのような複数企業の協力関係も見られるようになる。しかもパンデミックに見舞われている現在では、それが緊急の課題にもなっている。この同盟の計画では2021年の前半に何らかのプロダクトをリリースすることになっているが、まだその具体的なかたちはない。おそらくそれは、どんなブラウザーでも良好に動くものになるのだろう。こうしたいわゆる「同盟」は途中で立ち消えになってしまうものも多いため、今後にしっかりと注目したい。

おまけ。テクノロジー業界も、昔からこのような同盟に事欠かない。たとえばこの1991年の楽しい記事には、IntelとIBMとMIPSなどからなる(The New York Times記事)CPU同盟が紹介されている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

パンデミックにも負けずスモールビジネスは前向きな精神を貫く、アメリカン・エクスプレスの調査報告

企業も消費者も、みんなが前代未聞のこの現状を受け入れ、回復力を保とう奮闘している。回復には時間がかかるだろうが、最新の調査では適切な資源と準備さえあれば、いまも未来も、あらゆる障害を乗り越えられるという前向きな姿勢を貫く起業家精神の強靱さと、スモールビジネス経営者の根性が証明された。

American Express(アメリカン・エキスプレス)が初めて行った起業家精神に関する調査Entrepreneurial Spirit Trendex(アントレプレニューラル・スピリット・トレンデックス)が中小企業1000社を対象に行ったアンケート調査から、米国の起業家精神に関する大変に注目すべき洞察が得られた。パンデミックの渦中においても、スモールビジネス経営者の75%は事業の回復に対して前向きな考えを持ち、82%が将来の危機にはもっとうまく対処する心構えができたと考えているという。

スモールビジネスは積極的に助言を求めている

前例のないこの難局をうまく乗り切るために、企業経営者たちは適切な支援が得られる情報源を探している。企業は積極的にバーチャル会議やオンラインセミナー(47%)、バーチャルイベント(44%)、危機を乗り切るための助言と情報(44%)、ストレスを解消し気持ちを豊かに保つ方法が学べるもの(42%)を積極的に探している。

最大の懸案はキャッシュフロー

当然のことながら、経済危機においては81%の企業経営者がキャッシュフロー管理(Kabbageサイト)を優先させ、サービスのオンライン化など、支出削減と売上げ向上のための方法を特定しようとする。この調査で示された対策の順位は次のとおりだ。

  • マーケティングを強化する(41%)
  • 製品またはサービスをオンライン化する(40%)
  • 支出を減らす(36%)
  • 収入源を多様化する(35%)

方向転換を繰り返す

いまのままの事業方針でパンデミックに対処できるスモールビジネスなど、ほとんど存在しない。多くの企業にとって、2020年は方向転換の年だったが、その傾向は2021年も続くであろうことがこの調査から見てとれる。

データによると、企業経営者の76%はビジネスモデルの方向転換をしたか、方向転換の途中だと答えている。さらに、すでに方向転換を果たした経営者のうちの73%が、来年もまた方向転換をするだろうと考えている。事業の健全性を保つには、変化する市場の要求に対応できるよう、常に敏捷でいることが極めて重要となる。これはパンデミックでなくてもいえることだ。

態度を明らかにする

パンデミックを乗り切ることと同時に、企業経営者には現在、人種間の公平のための歴史的な戦いが強いられている。人種間の不公正への異議や、人種間の公平化を推進する団体への金銭的貢献の表明を通じて、改革に向けて戦っている経営者は多い(43%)。

また企業経営者は、自社の改革も実施している。調査に応じた経営者の73%は、職場の多様性を高めようとしている。そこで優先される課題の順位は次のとおりだ。

  • 多様な従業員がより強い仲間意識が持てるように企業文化を徹底的に改善する(54%)
  • 雇用と求人の手順を変える(47%)
  • 将来、人種間の不公正に対処するための測定可能な目標を立てる(47%)

2020年は大変に多くのスモールビジネスが倒産に追い込まれたが、起業家精神はいまだ健在であり、その気持ちが前進を続け、改善を重ね、成功を目指す力になっていることが今回の調査でわかった。American Expressの報告書全文はこちらで読める

【Japan編集部】著者のKathryn Petralia(キャサリン・ペトラリア)は、American Express(アメリカン・エキスプレス)傘下でスモールビジネスのキャッシュフロー対策を支援する企業Kabbage(キャべッジ)の共同創設者であり社長。

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(翻訳:金井哲夫)

DoorDashとC3.aiがIPO直後に急騰

誰が何といおうとも、IPOは起きる。

DoorDashとC3.aiという、高い価値がつけられた米国テクノロジーユニコーン2社の株価は、米国時間12月9日の取引開始直後急騰した。

DoorDashの株価は約83%高の186.51ドル(約1万9477円)だ。昨夜、同社はIPO価格を1株当り102ドル(約1万652円)に設定(未訳記事)し、90~95ドル(約9399〜9921円)に引き上げたIPO価格範囲(未訳記事)をさらに上回った。

そしてこれを書いている現在、C3.aiの株価はさらに鋭く151%上がって105.58ドル(約1万1026円)になっている。同日設定されたIPO価格は1株当り42ドル(約4386円)だった。同社はIPO価格範囲を31~34ドル(約3237〜3551円)から36~38ドル(約3760〜3968円)へと引き上げた(未訳記事)。

どうやら大衆投資家は、選ばれたレイトステージ・ユニコーンの成長と利益の可能性に対する熱意が非上場市場の民間投資家よりも強いようだ。ちなみに今年DoorDashは評価額約160億ドルで4億ドルを調達している。

12月9日現在、「非希釈化」ベースで同社の時価総額は約590億ドル(約6兆1615億円)だ。この数値は、ストックオプションその他の報酬のかたちで生まれる可能性のある株を加えると急激に上昇する。

TechCrunchはDooDashのCFOおよびC3.aiのCEOと本日話す予定だ。

次に控える多くの会社にとって、この日の朗報は大歓迎だ。本日、この後価格を決めるAirbnbは1株当り株価を高く設定できるかもしれない。そしてAffirmとUpstartとRobloxとWishの最終IPO価格決定が近づく中、2社のデビュー直後の急騰は彼らにとっても後押しになるだろう。

なぜこの2社は急激に上昇しているのか? 読者と私の予想は同じだが、要因として考えられるのは大衆投資のブームと、もしかしたら発行済株数の少なさかもしれない。いずれにせよどちらの両社にとっても夢の1週間だ。まず、予想以上の資金を獲得した後、一般投資家から熱狂的な歓迎を受けたのだから。

この最新の評価額をどう理解すべきだろうか?何が起きているのかを完全に理解するには時期尚早だ。もっと多くの取引と多くの株が動きだせば2つの会社の安定した価値をはっきりと把握できるだろう。

それまでは、じっとしてYahoo Financeを見ることにしよう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Nielsenが現状に合わせて従来のテレビ放送とデジタル配信の視聴率調査統合を準備

Nielsen(ニールセン)は、テレビ視聴率の調査を、リアルタイムで見る人と、さまざまな配信サービスやデバイスを使ってオンデマンドで見る人とが混在する世界を反映させた方式に刷新する。

同社は長年にわたりテレビ視聴率調査の標準的方式を提供してきたが、テレビがデジタルで視聴できるようになり、物事は大変に細分化されてしまった。そこで、間もなく運用が開始されるNielsen One(ニールセン・ワン)プラットフォームは、他社とそう変わらない新しいデジタル視聴率調査方式を提供するだけではなく、Nielsenの中核的な測定基準を刷新するものとなる。

「私たちの主な目的は、測定方法が複数メディアをまたぐ広告枠買い付けの妨げになっている現状を打開することです」とNielsen視聴率調査ジェネラルマネージャーScott Brown(スコット・ブラウン)氏は話す。

2022年秋にNielsen Oneの運用が開始されると、テレビ番組の視聴に関するNielsenの報告には、昔ながらのかたちでテレビを観ている人の数だけでなく、視聴者の現実の数が反映されるようになる。

さらに、オンライン世界のプログラマティック広告や、同等の広告枠買い付けツールが従来型のリニアなテレビ放送にも広がりつつあることを考えれば、「みんなが同じ広告を見る」という考え方は捨て去るときがきたとブラウン氏はいう。

つまり、このプラットフォームはNielsenのC3とC7という視聴率基準から「離れる」ことを意味する。この基準とは、テレビ番組の広告を、C3は3日間、C7は7日間の放映の間にどれだけの人が見たかを示す値だ。

ブラウン氏によれば、Nielsenは各プラットフォームごとに、何人の人が広告を見たかをきめ細かく調査できるようになるという。「個々の広告に推定視聴者数が示される」ことになり、2024年秋までには従来型測定方法の全廃を目指す。

画像クレジット:Nielsen

またNielsen Oneのスタートにともない、ブラウン氏が「新しいデータバックボーン」と呼ぶものが導入され、Nielsenのクライアントは、同社が報告書で示す数値の元となるデータに、もっと直接的にアクセスできるようになる。

このデータを提示するためには、テレビ視聴率の一般調査員「パネル」の協力に今後も依存することになるが、これからは「本当のクロスプラットフォーム」のデータになる点が違うとブラウン氏は話す。同社は、Amazon(アマゾン)、Hulu(フールー)、Roku(ロク)、Vivio(ビジオ)、Google(グーグル)およびYouTube(ユーチューブ)をすでに利用しているパートナー企業から追加データを引き出すことにしている。

多くのネットワークやメディア企業が独自の配信サービスを立ち上げたり買収したりしているが、誰もがNielsenで視聴率や広告の検証をしたがっているはずだとブラウン氏は示唆する。だが、Netflix(ネットフリックス)やDisney+(ディズニープラス)などの一部のサービスはインセンティブが低い。広告ではなくサブスクリプションのビジネスモデルに依存しているからだ。

「すべての視聴率がわかります」と彼はいう。「しかし私たちに寄り添い、一体となれる企業には、より細かい数値と、より総合的な調査を提供できるようになります」。

私は、オンラインの世界で議論されている大きな問題についても尋ねてみた。Facebook(フェイスブック)は動画を3秒間見たかどうか、Netflixは、番組の「視聴することを選んでいる」人が少なくとも2分間見たかどうかをチェックしているが、実際に何をもって1回のインプレッションと数えるのか?

「はっきり公表できるものとしては、最終的な答えは出ていません」とブラウン氏。だがNielsenでは、2021年にこの問題を細かく整理する作業部会を設ける予定だ。同時に、「1秒単位の解像度で測定」できる技術を構築し、どのようなルールが決められようとも対応できる体制を整える。

「現在の細分化された測定環境では、複数のプラットフォームにまたがるキャンペーンの計画、実施、検証が過度に複雑になり、予測がますます困難になっています」とデジタルエージェンシーEssence(エッセンス)の最高メディア責任者Adam Gerber(アダム・ガーバー)氏は声明の中で述べている。「アドレサブル広告モデルへ移行し、リーチを優先化し、成果をあげるための最適化を行うようになるほど、一貫した単一ソースによる測定ソリューションが必須となります。Nielsenの複数メディアにまたがるこの新しいアプローチは、総合的なキャンペーンを成功させたい広告主が求める信頼性と透明性を届ける重要なステップとなります」。

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(翻訳:金井哲夫)

イーロン・マスク氏がカリフォルニアに愛想を尽かしてテキサスへ転居

SpaceX(スペースX)とTesla(テスラ)のCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は米国12月8日、テキサス州に転居したと述べ、ここ数カ月流れていたカリフォルニア州を去るだろうという憶測を認めた。カリフォルニア州に対してマスク氏はかなり批判的になっていた。同氏はウォールストリートジャーナル紙のCEOカウンシル年次サミットでのインタビューで転居したことに言及した。

マスク氏がテキサス州に引っ越すつもりだと友人に語ったというCNBCの報道を、同氏は肯定した。

転居は、テキサス州で進められているSpaceXとTesla関連の数多くのプロジェクト、マスク氏のロサンゼルスにあるいくつかの家の売却、そしてカリフォルニア州当局の新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック対応への不満と一致する。マスク氏は5月に同州アラメダ郡を相手取って訴訟を起こし、本社や将来のプログラムをテキサス州かネバダ州にすぐさま移すと脅した。訴訟は、フリーモントにあるテスラの工場が新型コロナで発令された外出禁止令の最中に再開できるかどうかをめぐる衛生当局との応酬がエスカレートした結果だ。

インタビューの中でマスク氏は、カリフォルニア州は恵まれたな地位を当然のものだと考え、独りよがりになっていると語った。

マスク氏がテキサス州に引っ越すだろうという憶測はテスラがCybertruckとModel 3、Model Yを生産する工場の設置でオースティン近くを選び、建設を開始した後に流れ始めた。同氏の別企業であるSpaceXはテキサス州ボカチカにロケット打ち上げサイトを計画している。ブルームバーグは12月7日、マスク氏が自身の財団をオースティンに移し、これは同氏がテキサス州に引っ越したか引っ越そうとしているもう1つのサインだと報じた。

テキサス州は近年、オースティンやヒューストン、ダラスの急成長でホットスポットとなっている。パンデミックの間、カリフォルニアを拠点としていたテックワーカーがシリコンバレーやサンフランシスコといった高級エリアから脱出するにつれ、テキサス州の勢いは増した。

同州はまたマスク氏にとって別の大きなメリットがある。州所得税がないことだ。

カリフォルニアはまだSpaceXとテスラの運営においてメジャーハブだ。SpaceXの本社はホーソーンにあり、テスラの本社はシリコンバレーにある。Model 3やModel X、Model S、Model Yを組み立てるテスラのメイン工場はフリーモントに立地する。

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タグ:イーロン・マスクテキサスカリフォルニアTeslaSpaceX

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(翻訳:Mizoguchi

お手頃価格で住宅提供するConnect Homes、新たな資金調達と元Apple幹部の起用

Greg Leung(グレッグ・レオン)氏はApple(アップル社)での長年の勤務の後、スマートロック会社であるOtto(オット社)に所属していたが、Connect Homes(コネクトホームズ社)からの話が持ち上がったときにはすでに退職をしていた。

市場に出回っているプレハブ工法の住宅よりもずっと安い費用で、都心部へのアクセスが良好な場所にスターターホーム、つまり初めて住宅を購入する人のためのお手頃価格の住宅を建設する、というConnect Homesの売り込みは彼の心を捉えた。

「これは美しい製品でありながら、従来の住宅建設の概念を覆し変革するような方法で作られています」とレオン氏は語る。

住宅は14の標準化された構成で成り立ち、460平方フィート(約42.7m²)から3200平方フィート(約297m²)まで拡張可能だ。Connect Homesが競合他社とは決定的に違うのは、6日間で完全な住宅を建設できるスピードだとレオン氏は言う。

さらに、住宅は通常の配送ネットワークで輸送可能で、列車で国内のどの場所でも持ち運べるという。「輸送コンテナに合うサイズのモジュールを建設しているので、輸送のためにユニットを組み変える必要がなく、通常のインターモーダル輸送ネットワークが使えるのです。」と同氏は説明する。

Connect Homes製のプレハブ住宅の内装。画像クレジット:コネクト・ホームズ社

Connect Homes製の小さい方の住宅は、すべて込みで17万4000ドル(約1800万円)、297m²の住宅は82万5000ドル(約8600万円)だ。これは現在の注文住宅の費用の約半額に相当する。

「きれいでモダンな住宅を従来の注文住宅の半額で提供しています。」と同氏は言う。

「現在は、新しいトラクトハウス(同じ業者が作った住宅団地)、集合住宅そして高層ビルの3種類の新築住宅を建設しています。ベイエリアやLAにある70%の建物は70年代に建てられたものです。つまり小さすぎて時代遅れかつ、エネルギー効率が悪い住宅が大多数であるので、既存の土地を利用して開発を行うインフィル開発の機会はあります。住宅建設には、100万ドル(約1億円)から150万ドル(約1臆5千万円)かかるため、私たちを除き、誰も都市のインフィル市場に手を付けていません。」と続けた。

レオン氏の関心は、新規住宅所有者のために竣工した88のプロジェクト以外にも向けられている。カリフォルニア州のサンバーナーディーノ市に工場を持ち、ロサンゼルスに本社を構える同社は、地方自治体や政府の一時シェルターや住む家がない人に向けた暮らしの場に対する考え方を変えようとしている。

建築家であるJared Levy(ジャレッド・レヴィ)氏と Gordon Stoddard(ゴードン・ストダード)氏は、Marmol Radziner(マモールラドジナー社)のプレハブ建築部で勤務していた。Connect Homesは、彼らによって設立され、プレハブの未来のビジョンを作るため2700万ドル(約28億円)の資金を調達した。

その資本には、最近確保した500万ドル(約5億2千万円)ラウンドが含まれ、会社の再建、住宅工事と平行して展開型シェルターを建設できる建設技術の見直しに充てられる。これは北カリフォルニアでの経験によって国が住宅問題に直面している事実を敏感に理解していたレオン氏にとってもう一つの魅力となった。

同社が開発したシングルモジュールシェルターは、輸送可能で、1日で現場に設置することができる。自社開発の12メートル×2.4メートルのモジュールに発電機を追加するわけだが、これはそのシェルターがトレイラーのような柔軟性を備えていることを意味する。それでも住居としての準備は24時間で完了する。

「私たちは、地方自治体や第三者のサービスプロバイダーにこれを販売して、消費者に入居してもらうよう設計しました。」と同氏は言う。

新製品の顧客には、オーハイ市のタチャー高校やLife Moves(ライフムーブズ社)との提携で実現したカリフォルニアのマウンテンビューのプロジェクトが挙げられる。

シェルターの価格帯は、1ベッドルームあたり2万ドル(約208万円)から3万ドル(約312万円)またはモジュールあたり(約834万円)だ。この価格は、恒久的支援住居の1ベッドルームに地域が支払う50万ドルから100万ドル(約5千200万円から1億400万円)と比べて信じられないほど有利だとレオン氏は述べる。

しかし、仮設住宅に対する同社の豪華な代替住宅をもってしても、依然として、国内の都市が抱える住宅問題を解決できているわけではない。

「私たちは注文住宅を問題の一部と認識しており、この対極を行こうとしています。シェルターは緊急のニーズに対してとった対応でした。私たちには問題を解決するための革新的な能力があったのです。私はこの問題に対して素晴らしい人材や新しい工夫が適用されているとは思いません。そしてそれは多くの人の幸せと健康に影響を及ぼしています。この問題に一生取り組んでいくことになるかもしれません。」とレオン氏は述べる。

接地されたコネクト・ホームズ社製住宅の外観。画像クレジット:Connect Homes社

Brick and Mortar Ventures(ブリック&モーター ベンチャーズ社)の創設者兼経営者であるDarren Bechtel(ダレン・ベクテル)氏によると、建設業界の再建のための新しい成功例を作ろうとするこの試みこそが、Brick and Mortar Venturesの関心をひきつけ、同社が現金500万ドル(約5.2億円)でConnect Homesの資本増強を行うための交渉の席につく要因となったとのことだ(この500万ドルは最近Connect Homesが確保したものだ)。

Bechtelエンジニアリングおよび建設グループの跡継ぎであるベクテル氏は、業界に関して深い知識を有しており、Connect Homesを従来の建設概念を壊すことができる最高の賭けだと認識している。

ベクテル氏は、建設業界についてこう語る。「現在は、既存のものよりも安い費用で住宅を建設することはできません。しかし建設を製造として再考することにより、費用を効果的に削減できる環境が生み出されると考えています」。

「建設は長い間、原始的な製造方法にのっとっていました。従来の製造や自動車製造との違いは、住宅がある程度の規模に達したら、その住宅を効率的に製造場所から最終目的地の現場に輸送することが難しいことです。」と同氏は続ける。

同氏はこれを主要な問題として認識する一方で、これこそConnect Homesが解決できる問題だと期待している。「使用できる道路は限られており、インターモーダル輸送を利用できるよう標準化するか、走行許可を得る必要があります。輸送問題を解決できるよう本物の部品キットを作成しているのであれば、現場で仕上げるための技術者が必要となるでしょう。」と同氏は語る。

多くの場合、住宅建築業者は垂直的な統合を目指している。しかしベクテル氏によると、Connect Homesは、製品のライフサイクルと顧客体験を監視するAppleのようなアプローチを取っているという。「これが製品を世界規模で届け、住宅界のVWやアウディを製作するやり方です。住宅は最も高価な買い物です。ですがほとんどのケースが注文住宅であるというのは理にかなっていません。」と同氏は言う。

ベクテル氏は、主にカリフォルニアのアクセサリー住居ユニット(Accessory Dwelling Unit:ADU)市場をターゲットにしている企業と、より大きな志を持つConnect Homesを違うものととらえている。

「ADUの売買を行っている多くの人は、もう一軒ゲストハウスを持っています。彼らは自分自身のためにより広いスペースを欲しいと思っているのです。」と彼は述べた。「中密度または高密度エリアにある敷地面積の広い古い物件の区画を取得でき、そこに新しく2つまたは3つの住宅ユニットを作成できれば、はるかに大きな規模で住宅の品質と数量の両方を劇的に改善することができます。」とベクテル氏は述べる。

同氏は、これがConnect Homesの最終的な目標で、市場が回復する準備ができているのと同じように、同社も市場に戻ってくるだろうと述べた。

さらに同氏は「住宅のニーズが大きく回復すると確信しています。また1世帯の家族向けの住宅市場も回復します。」と続けた。これが現実のものとなったら、Connect Homesは新しい需要を満たすためのスケールアップに取り組む予定だ。

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タグ:住宅 資金調達

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(翻訳:Dragonfly)

創業者であることの知られざる代償

もし筆者が、文化の観点から、グローバルなテクノロジーシーンを1つにまとめているものを1つ選ぶとしたら、スタートアップの創業者に注がれる尊敬と畏敬の念を挙げる。

結局、我々の多くが自分の会社を作りたいという野心を抱いている。それは比類のない自由、後世に残る遺産、名声、富、そして善をなす能力をもたらしてくれる。ソーシャルメディアでも従来のメディアでも、創業者の偉業はその大小を問わず天賦の才のおかげだとして日常的に褒め称えられている。多くの起業家が粉骨砕身の努力と目を見張るような成功を披露するために必死に努力している。あらゆる創業者がその才能と労力の結果として夢見た人生を生きている、と部外者は思いがちだ。

もちろん、オンラインで投影されるほとんどの画像と同様、現実はまったく異なる。創業者であることの代償、つまりメンタルヘルスへの影響が語られることはほとんどない。

米国立精神衛生研究所による最近の研究(AP News記事)では、起業家の72%がメンタルヘルスの問題により直接的・間接的に影響を受けていることがわかった。一般人では48%だ。ダメージは愛する人にも及ぶ可能性がある。起業家の23%が、問題を抱える家族がいると報告している。これは非起業家より7%高い。

筆者は決してメンタルヘルスの専門家ではない。だが、筆者自身の経験と、一緒に仕事をした何十人もの事業主と話した内容の両方から筆者が学んだのは、創業者であるということは本質的に孤独な仕事だということだ。プレッシャーは大きく、すべての意思決定に不確実性がともなう。常に失敗への恐れが付きまとう。こうした問題は、対処しなければ深刻な事態に陥る可能性がある。

状況は悪化しているようにみえる、というのが受け入れがたい真実だ。Michael A. Freeman(マイケル・A・フリーマン)博士が2015年に実施した同様の調査(PDFファイル)では、創業者のメンタルヘルス問題の発生率は50%とより低い。異なる研究成果の比較は正確さを欠く。だが、世界的な不況により多くの企業がいかにダメージを受け、在宅勤務により孤立感がいかに深まったかをみれば、スタートアップを取り巻く環境が今年厳しくなったことがわかる。そうした要素に加わるのは、いかにソーシャルメディアがハッスルカルチャー(長時間のハードワークを称賛する文化)と創業神話への不健康なまでの崇拝を助長しているかということだ。

多くの創業者が筆者に語ったのは、24時間年中無休で働くことを祝福し、絶えず何かを売り、資金を調達し、何百万ドル(何億円)も稼ぐスタートアップの達人と比較すると、自分は不十分で罪悪感があると常に思っているということだ。彼らは、もっと一生懸命働き、もっとうまくやるべきだと感じている。ちょうど彼らが本で出会ったすべての人々と同じように。

では、どう対処すべきか。最初のステップは話すことだ。これは、すべてが常にうまくいくとは限らない、ということに向き合える環境を確保することを意味する。ビジネス上の懸念についてではなく、個人的な心配について創業者仲間と話すことにより、目からウロコが落ちることがある。筆者は我々のコミュニティーでそうしたことが起こるのを目の当たりにしてきた。それはいわば「裸の王様」を体験する瞬間だ。

批判を気にせず、天才で、不休で働く創業者という神話は、突然自分は一人ではないと気付くと、一吹きの煙とともに消えることもある。自分が感じた懸念、不安、不確実性がごく一般的なものだと気づくわけだ。

経験豊富な創業者は、スタートアップの世界に不慣れな人々に貴重な支援を提供できる。失敗と成功の両方の経験を共有し、対処方法を披露することができる。筆者が創業者に強くお勧めしたいのは、仲間と潜在的なメンターの両方に積極的に助言を求めることだ。ビジネス上のガイダンスを求めるのとまったく同じ方法だ。

次に、創業者にまつわる文化や神話にどう取り組むべきかについて答える必要がある。ビジネスオーナーが知っておくべきは、オンラインで称賛される並外れた「サクセスストーリー」の多くが、文字通り例外的だということだ。

同様に、すべての時間を労働に捧げることが成功する唯一の方法だという原則を掲げる人々は、せいぜい彼らにとって何がうまくいったのか話しているにすぎず、最悪の場合、注目を集めるために自らを演じている。彼らの投稿へどう反応すべきか慎重に考える必要がある。進んで支援することと、不健全または有害な行動や哲学を広めることの間には微妙な境界線がある。

結局のところ、スタートアップシーンにおける成功はすべて相対的なものだ。ワークライフバランスが良く、まともな収入が得られる会社を持つことを目標とする人もいる。自分が望む方法で好きなことができれば良いという人もいる。億万長者となる人はごくわずかであり、次のFacebookを築くのは極めて少数だ。筆者が強調してもしきれない点は、創業者が自分の目的と野心に関する見通しは持ち続けながら、オンラインから聞こえてくる雑音を無視することがどれほど重要かということだ。

もっと広く言えば、メディアを含む業界が創業者をどのように見ており、また代表しているかについてより賢明になる必要がある。広まっている神話の中には、世界最大のテック企業がガレージから資金なしで始め、創業者の天才と冷酷な態度が大企業への成長に寄与したというものがある。

現実には、そうしたテック企業の大多数は、ほぼ初日から家族や関係者からかなりのシード資金を受けていた。また、そうした創業者らは周りに非常に才能のある人々がすぐに集まり、彼らが多くの重労働を行い、そして大きな声では言えないが、トラックに満載の幸運に恵まれた。要するに、業界で長く広まる超人的な創業者像は、ほぼすべての場合ナンセンスだ。

同様に、成功と失敗をどう捉えるかについても問題がある。

先に述べたように、成功はほとんどの場合、最も基本的な数値で表される。「ユニコーン」というレッテルはあまりによく使われるため、多くの人はそれが少数の投資家により会社に与えられた単なる評価であることに気づかない。それは、ビジネスが従来の意味で実際に成功したのかどうか、つまり金を稼いだのかどうかを反映しているわけではない。一般的にスタートアップの世界では、大きなイグジットや「ユニコーンステータス」を達成した創業者を祝福し、偶像化する。人を雇用し、新技術を開発して特許を取得し、きちんとした利益を上げ、税金を支払う何千もの中小企業についてはあまり語られない。

失敗とともに別の問題が発生する。スタートアップの世界では、失敗をゴルフコースでのパーくらいのものとして軽くみている。一見すると業界の優れた長所の1つだ。人々が恥を恐れず試みることを可能にする。ただし実際には、ほぼすべての創業者が現実に抱える恐怖を矮小化している。あなたが何年もの人生を捧げ、多額の資金を費やし、またあなたを頼るスタッフもいるなら、失敗を単に掃いて捨てることはできない。失敗を単にプロセスの一部として考えるだけでは、懸念の本当の原因にオープンな方法で対処し議論することはできない。「早く失敗しなさい」は、それに耐えられる人にのみ機能する。

個々に見れば、こうした問題はホワイトノイズにすぎないように思われるかもしれない。苦しんでいる創業者にとっての治療法は、単にソーシャルメディアから離れることかもしれない。残念ながらそれほど単純ではない。ソーシャルメディアや従来のメディアは、スタートアップの文化を創造するのではなく、誇張している。すべてのテック会議や交流会で同じ言い回しが使われる。それに合わせて、創業者に期待されているのは、恐れを知らず、天才的で、先見の明があることだ。そうした標準からの逸脱は、例えばメンタルヘルスに関する危うさを主張することなどは、おそらく失敗に終わる。

スタートアップの世界は、多様性に関しては欠点があるにもかかわらず、一般的に世界で最も進歩的、協調的でオープンな業界の1つだ。そうした長所は、メンタルヘルスについて話すことへの抵抗感に立ち向かい、人々が一人で苦しむことがないよう支援の輪を広げるには理想的だ。

それらを実現するには、創業者であることについての神話や聖人伝を排除し、経営の現実が実際に何をともなうのかについてもっと正直になる必要がある。

編集部注:筆者のJames Sutcliffe(ジェームズ・サトクリフ)氏は、高成長スタートアップの創業者のためのコラボレーションプラットフォームであるThe Founding Networkの創業者でCEO。

カテゴリー:その他
タグ:メンタルヘルス

画像クレジット:Nomadsoul1 / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

全米労働関係委員会がグーグルを従業員の監視やその他の労働違反で告発

団体交渉や不正労働行為などにおいて労働法の遵守を強制する政府機関であるNational Labor Relations Board(全米労働関係委員会、NLRB)は米国時間12月2日、2019年11月の数名の従業員の解雇について調べた結果、Google(グーグル)に対して告発状を出した。その告発では、グーグルが社員を監視し、また一般的に労働関係法7条に保証されている労働者の権利を実行した従業員を妨害、制限および強要したとしている。

またNLRBは、グーグルが「その従業員が組合やそのほかの労働者が保護される共同活動を形成、参加、援助することを妨げた」とその訴状で主張している。

解雇された同社社員の1人、Laurence Berland(ローレンス・バーランド)氏は声明で次のように述べている。「この訴状が明らかにしているのは、企業の倫理の問題や経営のあり方に関する発言権が労働者にあることだ。ひと握りのテクノロジー長者の権力が我々の生活と社会をコントロールしているとき、このことを見つけたことは重要だ。NLRBが確証しているように労働者には発言し、組織を作る権利があるが、経営陣がその社会で演じようとしている役割に関する倫理的懸念を我々が振り払うことはできないし、振り払うべきでもない」。

元グーグル社員のバーランド氏とKathryn Spiers(キャスリン・スパイアーズ)氏はこれより前に、国レベルの訴えをNLRBに提出していた(未訳記事)。その訴えは、グーグルは組織を作ろうとしたとして彼らを解雇したが、組合を作ることは保護された活動だと主張している。彼らはさまざまなテーマに関して組織を作ろうとした。臨時労働者や派遣労働者、契約社員などに対するグーグルの待遇、組織を作ろうとした社員に対する報復、同社が不法移民の阻止で悪名高い関税国境取締局の仕事をしていることなどだ。

また2019年の11月にグーグルは、Rebecca Rivers(レベッカ・リバーズ)氏とバーランド氏を、会社のポリシーに違反したとして休職扱いにした。当時グーグルは、彼らは自分の仕事に関係のない秘密文書を検索、共有し、一部のスタッフの個人的なカレンダーを見たと述べていた。2人を支持する抗議活動の後、リバーズ氏とバーランド氏、Paul Duke(ポール・デューク)氏、そしてSophie Waldman(ソフィー・ウォルドマン)氏は解雇されている。

グーグルの広報担当者はTechCrunch宛の声明で次のように述べている。「グーグルは何でも社内で議論する企業文化を支持しており、社員には絶大なる信頼を置いている。もちろん社員には労働者としての保護された権利があり、私たちもそれを強力に支持しているが、それと同時に情報のセキュリティも真剣に重視している。私たちの決定と法的立場については、それらが正しいという確信がある。問題の事案で社員たちがとった行為は、私たちのポリシーへの重大な違反であり、信頼して委ねている責任の受け入れがたい侵犯である」。

この直前にNLRBは、グーグルの受託企業であるHCLに対して公式の訴状を出している(VICE記事)。そこで同社は、組合を作った労働者の権利を何度も踏みにじったとしている。今後についてバーランド氏とスパイアーズ氏は、NLRBの訴追によりグーグルが復職と損害賠償を受け入れることを期待している。ただしこの訴えの次のステップは、行政審判官による調査と聴聞に応じることだ。

カテゴリー:その他
タグ:Google

画像クレジット:Mason Trinca / Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アリババとエチオピア航空が中国の新型コロナワクチンを輸送する低温物流設備を準備

中国は新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチンを他の国々、特に緊密な関係にある国(Nature Research記事)と共有することを約束している(The New York Times記事)。​同国はワクチンを国際的に展開する準備はできていないが、大量輸送のためのインフラ整備進めている。

​今週、Alibaba(アリババ)はエチオピア航空と提携し、中国から他の国に温度管理がシビアな医薬品を輸送できるコールドチェーン(低温物流)を導入すると発表した。​航空貨物は、中国初となる国境を越えた医療用コールドチェーン施設がある深圳空港から週に2回、ドバイとアディスアベバ経由で各国に向けて出発する。

​「ワクチンの準備が整い次第、それを輸送する能力を私たちは確保しました」とアリババの物流部門であるCainiaoの広報担当者はTechCrunchに語った。

深圳は、中国におけるもう1つの大手物流事業者であるSF Expressの本拠地であり、同社はワクチンの保管と出荷にも取り組んでいる(SF Expressリリース)。

アリババの路線は、物流部門Cainiaoによって運営されており、同社は200以上の国と地域で事業を展開している。新型コロナ​のワクチンは通常、低温で保管する必要があるが、このワクチンを空輸することは国際航空運送協会の認定を受けている(IATAリリース)。たとえば客室には温度管理のモニターが設置され、エチオピア航空の貨物ターミナルには-23°Cから25°Cの間で温度調整可能な設備が備わっている。

​Cainiaoの国際サプライチェーン部門のゼネラルマネージャーであるJames Zhao(ジェームズ・ジャオ)氏は「コールドチェーン航空輸送の開始により、グローバルな物流能力がさらに強化され、新型コロナウイルスワクチンをはじめとする医薬品のグローバルな流通にワンストップソリューションを提供できるようになりました」と述べている。

​中国は新型コロナウイルスの大流行時、個人用保護具(PPE)の主要な輸出国(PBS記事)であり、またCainiaoからSF Expressまで、中国の物流大手はいずれも、医療救援物資の輸送に特化したプログラムを迅速に導入した。

カテゴリー:その他
タグ:Alibaba新型コロナウイルスCOVID-19中国ワクチン

画像クレジット:Cainiao Logistics

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(翻訳:TechCrunch Japan)

テック企業数十社がフランス主導の下「善のためのテック」宣言に署名

2年ほど前、フランスのEmmanuel Macron(エマニュエル・マクロン)大統領はTech for Good Summit(善のためのテック・サミット)を主催した(未訳記事)。50社のテック企業のCEOが招かれ、テック業界の課題が話し合われ、声明が発表された。

通常ならテック企業のCEOたちは、パリで開催される技術系見本市Viva Technology(ビバ・テクノロジー)に先立って顔を合わせることになっている。しかし、2020年のViva Technoloyは中止を余儀なくされたため、テック企業のCEOたちは一堂に会して、みんなで記念写真を撮って、よりよい世界を作ろうと宣言することができなかった。

そこで数十社のテック企業CEOたちは、共通の誓いを立てることにした。一部の技術革新が良いインパクトを社会に与えている一方で、テック業界が完璧ではないことを彼らは自覚している。

「そうした進歩が、独占や組織的地位の悪用、インターネットの断片化といった不公正な競争を含む、外部へのネガティブな影響によって妨げられていることを考慮するに、適切なセーフガードがなければ、テクノロジーによって基本的な自由や人権が脅かされたり、民主主義が弱体化させられることもあり得ます。それに対抗する適切な手段がなければ、一部の個人や団体が、紛争に乗じるなどして犯罪目的でテクノロジーを悪用する事態は避けられません」と誓約には語られている。

この誓約に署名した企業は、たとえば児童の性的虐待やテロリスト関連のコンテンツなどの有害コンテンツに対処する際に力を合わせることになっている。彼らは「ヘイトスピーチ、誤情報、言論操作に責任を持って対処する」と約束している。

また興味深いことに「事業を行う国の税制に適正に従うこと」という同意も含まれている。これは、フランス政府と米国政府との間に現在進行形で横たわっている問題だ。OECDとEUは、事業を行う各国の税務当局への報告義務を負わせるために、巨大テック企業に課税する案も検討されている。

この他、あらゆる種類の差別などに対抗するためのプライバシー、社会的包括性、多様性、公正性に関する誓約もある。その名が示すとおり、この誓約はテクノロジーを善なる目的に使用することを中心に据えている。

それでは、この誓約に署名した人たちを紹介しよう。Alphabet(アルファベット)、Google(グーグル)のSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏、Facebook(フェイスブック)のMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏、 Microsoft(マイクロソフト)のBrad Smith(ブラッド・スミス)氏、Snap(スナップ)のEvan Spiegel(エバン・スピーゲル)氏、Twitter(ツイッター)とSquare(スクエア)のCEO、Jack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏といった有名どころも名を連ねている。その他の企業には、Cisco(シスコ)、Deliveroo(デリバルー)、Doctolib(ドクトリブ)、IBM、OpenClassrooms(オープンクラスルーム)、Uber(ウーバー)なども参加している。

Mozilla Foundation(モジラ財団)、Simplon(シンプロン)、Tech fo Good Fance(テック・フォー・グッド・フランス)といった非営利団体もいくつか署名した。

だがもっとおもしろいのは、ここに名前が載ってない企業だ。Amazon(アマゾン)とApple(アップル)は誓約に署名しなかった。アップルとは交渉が持たれたが、結局同社は参加しないことを選んだ。

「アマゾンは署名を拒んだ。あなたたちから、その理由を直接聞いて欲しい」とフランス大統領に近い情報筋からいわれた。フランス政府は、特にアマゾンのケースを非難している。

拘束力のない誓約なのに、これは奇妙だ。「税金には適正に応じます」と口でいっておいて、自分は払うべきものはきちんと払っていると主張するのは自由だ。節税と脱税は違うのだから。もっといえば、「デザイン段階からプライバシーを考慮した」製品を作っていると公言しつつ、実際はパーソナライズ広告やマイクロターゲティングで企業全体を支え続けるなどということもできてしまう。

いい換えれば、Tech for Good Summitは、記念写真を撮るため会だ(下の2018年の写真のように)。テック企業のCEOたちは、政府首脳のように扱われたいと願い、マクロン大統領はテクノロジーに通じた大統領という地位に身を置きたい。そんな彼らにとって、これはWin-Winの関係であり、その他全員にとっては時間の無駄ということだ。

一部の非営利団体やガバナンスグループは、実際にデジタルコモンズの設立に向けて努力している。しかし、巨大テック企業はその同じ言葉を、イメージアップのための形だけの環境保護キャンペーンに利用している。

2018年、数百の団体がパリコールに署名した。2019年、ソーシャルメディア最大手企業がクライストチャーチコール(未訳記事)に署名した。そして今度は「the Tech for Good Call」だ。これらのコール(宣言)は、決して適切な規制に置き換わるものではない。

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画像クレジット:Charles Platiau / AFP / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

Stripeの10.4兆円もの評価額はどう考えたらよいのだろうか

The Exchangeの感謝祭特別エディションへようこそ。今回は簡潔に済ませる予定だ。しかし、話すことはたくさんあるので、静かにというわけにはいかない。

The Exchangeでは、Slack(スラック)とSalesforce(セールスフォース)の取引に対してはここで考察している (未訳記事)。昨日の朝食にパイを食べていて、見逃していたのなら追いついて欲しい。さて、残念なことに、私はなぜPalantir(パランティア)の株価が急騰しているのかが理解できない。普通なら私達はそれについて議論し、その上昇が未公開SaaS企業たちの下位層にどのような意味を持つのかを議論するだろう。しかし、その公開市場における値動きは人為的な上昇のように思えるので、私たちはただ待つことにする。

この気持の良い土曜日(米国時間11月28日)にお話ししたいのは次の話題だ。Bloombergによれば、Stripeが市場の価値を高めていて、その評価額は「700億ドル(約7兆3000億円)以上、または大幅に高い1000億ドル(約10兆4000億円)に達し得る」という。

いやあ、こいつはすごい。もしその価格だとするなら、計算方法にもよるがStripeは世界で1番または2番目に価値のあるスタートアップになるだろう。スタートアップという言葉は、それだけの価値のある会社のために使うべき奇妙な言葉だが、Stripeはまるで救命ボートのように非公開の状態にしがみついていて、外部の資金調達を続けている。おそらく利益よりは成長に重点を置いているようだ。そうしたテックスタートアップの特徴を保っていることを考えると、私たちはStripeをスタートアップと呼ぶことができるだろう。

だがそれは奇妙な話だ、なにしろ1000億ドル(約10兆4000億円)という評価額を考えると、Stripeには12桁(数千億ドル、数十兆円)の巨額の価値が生まれる可能性があるからだ。とにかくいまはそれで済んでいるという事実以外に、なぜStripeが非公開なのかを説明できる良い理由は見つからない。

とにかく、報じられているその価格は、正気なものなのだろうか?おそらくそうだろう。しかし、彼らにも彼らの理屈がある。ここしばらくの四半期における、堅調な支払い量を指し示している(未訳記事)、Square(スクエア)とPayPal(ペイパル)の収益を思い起こそう、これらはStripeの最近の成長の良い前触れとなっている。また、14カ月ほど前には、Stripeは「年間数千億ドル(数十兆円)規模のトランザクション」をすでに処理していた(The New York Times記事)。

現時点で興味深い計算を行うことが可能だ。たとえば2019年9月時点でのStripeの取扱量は2000億ドル(約20兆8000億円)だったが、現在は4000億ドル(約41兆6000億円)となっている。これを年換算の数字だと考えることにする。Stripeは1回のトランザクションに対して2.9%と0.30ドル(約31円)の手数料を請求する。まあここでは計算のシンプルさと控えめな数字を目的として、3%としておこう。計算してみると、その結果は120億ドル(約1兆2000億円)となる。

さあそうしてみると、同社の評価額が1000億ドルとなることも有り得そうだ(取扱高1500億ドル、約15兆6000億円)に対しての収益は45億ドル、約4675億円。そして、Stripeの粗利益率はSlackと同じではない。

こう見ると、Stripeの新しく噂される価格が、まったく荒唐無稽なものとは思えない理由が、徐々にわかってくるのではないだろうか。もしStripeの成長物語を信じているなら。その内容をさらに良いものと考えることができる。そして、世の中の競争相手たちも、そうした議論を支える材料となる。Squareの株式は2020年に3倍以上になった。PayPalの価値も2倍以上となってる。Adyen(アディエン)の株式はほぼ倍になった。これらは、新しい資本を調達し、積極的な価格を確保しようとしている最終段階のスタートアップに対する、公開市場からの援護射撃の一種だ。

まとめると、Stripeの噂される新しい評価額には合理的な裏付けが可能だ。それがいまだに非公開企業である点は不合理だが。

マーケットノート

その他のことなど

EdTechといえば、Equity(エクイティ)のNatasha Mascarenhas(ナターシャ・マスカレニャス)氏と私たちの勇敢なプロデューサーであるChris Gates(クリス・ゲイツ)が、教育技術市場に関する特別エピソードポッドキャストをまとめた。ここ(未訳記事)で聴くことができる。おすすめする。

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画像クレジット:Nigel Sussman

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(翻訳:sako)

LAのアイコン的起業家、Zappos元CEOのトニー・シェイ氏が死去、46才

ネット靴店Zappos(ザッポス)の元CEO、Tony Hsieh(トニー・シェイ)氏が亡くなった。46才だった。靴の会社を大手に育ててAmazon(アマゾン)に売却し、成功で得た収益をテックと広範なビジネス投資でネバダ州ラスベガスの荒廃地域の再生を進める巨大プロジェクトに使ったことで知られる。

死因は住宅火災で負った怪我だったという。シェイ氏の広報担当者がTechCrunchに明らかにした。シェイ氏は火災のときに兄(弟)と一緒コネチカット州にいた。シェイ氏の他にけが人がいるかどうかは不明。

シェイ氏の最終的な死亡原因はまだ調査中だ。新たな情報が入り次第アップデートする。ダウンタウンプロジェクト(ラスベガスの古く荒廃した地区を再生させるためのシェイ氏の巨大な取り組みだ)を運営するDTPカンパニーズの声明は文末にある通りだ。

シェイ氏死去のニュースを受け、感謝祭週末の最中にあったラスベガスのコミュニティには衝撃が走った。観光に大きく依存しているラスベガスは、新型コロナウイルスパンデミックで甚大な影響を受けている街だ。

シェイ氏は聡明で、風変わりで、そして心の優しい人だった。多くの人が直接その優しさに触れ、しばしば先見の明を持つ人だと評した。

誇張ではなかった。シェイ氏はベイエリアに育ち、LinkExchange(リンクエクスチェンジ)という最初に興したマーケティングテック会社を1998年、わずか24才のときにMicrosoft(マイクロソフト)に売却した。

そこで得た収益の一部を使ってシェイ氏はVenture Frogs(ベンチャーフロッグス)というベンチャーキャピタル会社を興した。そこでの初期の投資の1つは、Nick Swinmurn(ニック・スウィンマーン)氏が1999年に創業したShoeSite.com(シューズサイト・ドットコム)だった。当時は靴のショッピング方法の変革期にあり、人々はオンラインで購入するようになっていた。

シェイ氏は投資においても本質的に起業家で、その後ShoeSite.comでより実践的な役割を果たした。ShoeSite.comは後にZapposに社名を変更した。ZapposのCEOとしてシェイ氏は2004年に顧客サービス事業を拡大するために同社をベイエリアからラスベガス郊外に移し、従業員に権限と動機付けを与えるためのフラットなマネジメントという強固な精神の下に運営した。同氏のリーダーシップによりZapposは大きな成長を遂げた。2009年にZapposを約12億ドル(約1250億円)で売却した(当時のeコマーススタートアップにとっては実に巨額だった)。

その後もシェイ氏は会社の経営を続け、収益を次の大きなプロジェクトに注ぎ込んだ。そのプロジェクトとは都市の活性化だ。

ラスベガスは感情に●訴えない街だ。砂漠の真ん中に位置し、ラスベガスは斬新で一見無限に見え、そして土台となる成長を追い求めてきた。何年もの間、それはダウンタウンの「老舗」ラスベガス企業の巨大な跡地を意味した。ダウンタウンは空っぽで、その大部分はついには犯罪と貧困の温床となっていた。他の多くの都市中心地と同様、悪循環に陥っていた。人々は新しい住宅や会社の建設に注力し、そのため古いエリアは一層無視されるようになり、脆弱になった。

シェイ氏は、明らかに衰退した様子にあった20世紀の現代主義の繁栄をダウンタウンの魅力として見出した。そしてそのエリアのかなりの部分の買い占めを進めた。アパートのビル、住宅、零細企業の建物、古いカジノ、ホテル、空いている駐車場などだ。

シェイ氏は不動産王になることだけを見据えていたわけではなかった。それは明らかに彼が興味を注いだところではあったが、と同時に彼が最もよく知るものでラスベガスを復興する狙いがあった。そのよく知るものとはテックだ。

シェイ氏はそのエリアに起業家を引き込み、また雇用をもたらそうと、スタートアップにかなりの額を投資し、事業を興すためにラスベガスに引っ越してくるのをサポートした。

この取り組みにはかなり多くの風変わりな要素があった。必ずしもすべてが押しの強い事業だったわけではなく、スケールの大きな楽しみを持とうとする側面もあった。大規模イベントBurning Manに触発されて、シェイ氏は砂漠でのフェスティバルのために建てられたいくつかの建築物をお金を払ってダウンタウンまで運び、設置した。

筆者がラスベガスでシェイ氏と過ごした忘れられないいく晩かは、ラスベガスにおける同氏のプロフィールで最も知られるようなものだ。

ある夜、カジノからバーへ、そしてレストランへと回り、最後には素晴らしいピアノカラオケに辿り着いた。そこで彼の子供の頃からの親友と筆者はDuran Duran(デュラン・デュラン)をデュエットで歌い、シェイ氏はフェルネ・ブランカ(アルコール度数の高い薬草系のお酒)をがぶ飲みした。どこへ行っても彼の周りには人が集まった(歩きながらも多くの女性から「ハイ、トニー」と声をよくかけられた)。これはマフィアのボスが昔やっていたことのようではないかと思ったのを覚えている(彼の友達が顧問で筆者がその夜の訪問客という役だ)。

もちろん、ダウンタウンプロジェクトは壮大なビジョンであり、他の多くのものと同じように、浮き沈みがあった。

そうしたものは驚くことではない。単に存在することだけでは十分とは限らない。テック分野で成功するというストライク率は実際にはかなり低い。

そして風変わりなアプローチはいつも良い風に作用するわけではない。ときには実際にどうなっているのか不明瞭ということもある。いい例を挙げよう。シェイ氏は2020年初めに21年間務めたZapposのCEOを突然辞任し、その理由は明かさなかった。

それでもZapposとシェイ氏がラスベガスで築いたもの、彼の取り組み、壮大なビジョンは、わずかなイマジネーション、かなりの努力、そして永続性でテック産業が手にすることができる、テックマネーを含めたインパクトという重要な遺言だ。

シェイ氏の家族、多くの友人、そしてシェイ氏が創造をサポートしたテックビジネス界で関わりのあった人々にお悔やみを申し上げる。

DTPの声明は以下の通りだ。

こんにちは、Megan Fazio(メーガン・ファジオ)と申します。Tony Hsieh(トニー・シェイ)氏が描いた「ダウンタウンプロジェクト」として知られたDTPカンパニーズで広報を担当している者です。誠に残念ながら、トニー・シェイ氏が2020年11月27日、愛する家族に見守れる中、やすらかに逝去したことをご報告させていただきます。

トニーの優しさや寛容さは、彼の周りの人々の琴線に触れました。そして永遠に世界を明るく照らし出します。幸福を届ける、というのが常に彼の信念でした。彼の旅立ちを嘆き悲しむのではなく、ともに彼の人生を祝福していただければと思います。

DTPカンパニーズ従業員やスタッフを代表してトニーの家族、そして愛する人、ビジョナリー(先見の明を持つ人)、友人としてのトニーを失くした彼の友人たちに心より哀悼の意を表します。トニーはDTPカンパニーズの結びつきの強いファミリーの中で仲間や同僚みんなに高く評価されていました。この心引き裂かれる悲劇に、トニーを知っている多くの人が揺さぶられています。

この非常に困難な時期に、引き続きトニーの家族のプライバシーを尊重していただきますようお願い申し上げます。

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タグ:Zapposラスベガス

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(翻訳:Mizoguchi

ロックバンドWeezerのフロントマンはコンピュータサイエンスの学生として二足の草鞋を履く

「やあ、僕がWeezer(ウィーザー)のリバースです」と、Rivers Cuomo(リバース・クオモ)は微笑みながら手を振った。ときおりカメラから目をそらしながら、彼は精一杯のインフォマーシャルピッチを始めた。「ツアーに参加していて、楽屋やツアーバスに座っていると想像してみてください。そして舞台裏にいます。あなたはステージ恐怖症で、ストレスでいっぱいです。あちらこちらに歩き回っています。その状況に加えて、ツアーマネージャーが何度も声をかけてきて、さまざまな移動に関する質問をしてきます」。

インターネットピッチ動画を見る限り、それは普遍的なものとはいえない。どちらかといえば、この3分間のクリップは、見ている人を最後まで惹きつける魅力には欠けている。最後に近い場面では、クオモ氏はマルーンのSpaceXパーカーを着て、プライベートジェットへのタラップを昇っていく。飛行機のドアが閉じると、Weezerのフライングロゴ「W」が現れる。

「GitHubからDrivetimes(ドライブタイムス)を今すぐダウンロードしよう」と、クオモ氏はナレーションで付け加えている。「これはCS50Xの成果です」。

これは最高に洗練されたアプリ宣伝ビデオではないし、クオモ氏のセールストークは、ベンチャーキャピタルにシードラウンドを申し込むつもりならもう少し洗練させた方が良いだろう。しかしオンラインプログラミングコースの最終プロジェクトとしては、それは見るべきものに仕上がっている。コードのページ、Google(グーグル)のスプレッドシート、主観ショットなどに交互に挟まれた映像は、Pixies(ピクシーズ)との共同ツアーの最中にクオモ氏が撮影したものだ。

この結果、クオモ氏はコースで95点を獲得した。

現在の構成では、ツアースケジューリングツールDrivetimeの魅力は限られているものの、クオモ氏の最終プロジェクトであるハーバード大学のフォローアップコースCS50Wの成果物は、四半世紀以上のキャリアを追う彼のファンたちにすぐに明かされた。今週クオモ氏は合計86時間以上に及ぶ2400個以上のデモ音源を投入した。1976年から2015年にかけてのもので、曲の品質はテープ録音されたスケッチから洗練された形態までさまざまなものが含まれている。それらの曲は、最終的にWeezerの13枚のアルバムの中に収録されたものもあれば、サイドプロジェクトに取り込まれたものもある。どこにも使われなかったものもある。

クオモ氏の「Mr. Rivers’ Neighborhood」サイトを通じて入手可能になっているが、トラックは9つのバンドルにまとめられ、それぞれ9ドル(約940円)で入手することができる。「ところで」とクオモ氏は、免責事項の一番下に書く。「このマーケットは、僕がウェブプログラミングのために履修しているコースの最終プロジェクトの成果物です」。

プラチナセールスを記録するロックスターは、実は5年にわたって、コンピュータープログラミングの学生としての日々も過ごしていたのだ。

「僕はいつでもスプレッドシート使いでした」と、クオモ氏はTechCrunchに語る。「2000年頃、Microsoft Access(マイクロソフト・アクセス)から始めて、次にExcel(エクセル)に移ったと思います。自分の曲やデモやアイデアを、とにかくすべて追跡するためです。スプレッドシートはますます複雑になり、その結果『まあこれじゃ、数式の中にとても扱いにくいコードを書いているようなものだな。おそらくきちんとプログラミングをやるべきなのだろう』と考えるようになりました」。

現実世界で成功したミュージシャンとしては、それは奇妙な副業だろう。しかし、クオモ氏にとっては、それは次の論理的なステップなのだ。Weezerの同名デビューアルバムの大成功を受け、彼はハーバード大学の2年生として入学し、1年間を寮で過ごした。結局このときには、クオモ氏はバンドの人気作となったアルバム「Pinkerton」を録音するために学校を去ることになったが、1997年と2004年に2度再入学を行い、2006年には英語の学士号を取得して最終的に卒業した。

CS50(コンピューターサイエンス履修コース50)でクオモ氏は、ハーバード大に戻ることとなった —— 少なくとも気持ちの上では。このコースは大学がオンラインで主催し、無料でコンピュータサイエンス入門を行うものだ。

「僕はいくつかのオンラインコースを見て回って、魅力的に感じられるものを探していました。そしてハーバードのCS50が非常に人気が高いことを知りました」とクオモ氏は語る。「そのときは『まあ一丁試してみるか』といった感じで、すぐにとりかかったわけではありませんでした。最初の週のコースはScratch(スクラッチ)を使用していました。ご存知かどうかはわからないけれど、それはクリックアンドドラッグで行うプログラミングで、ちょっとしたビデオゲームを作ることができます」。

6週間のコースを彼は6カ月かかって修了した。同じ年、2人の子供の父親でもあるミュージシャンは、何十ものショーで演奏し、グラミー賞にノミネートされたWeezerの10枚目のアルバム「White Album」を録音した 。

クオモ氏はいう「コースの途中でPython(バイソン)に出会ったときには、その強力さに驚きました。僕にとってそれはとても直観的だったのです。おかげでたくさんのことを行うことができました。そしてコースが終わるまで、旅を続けるミュージシャンとしての日々の生活を本当に管理し、自分のスプレッドシートを管理し、クリエイティブ・アーティストとしての仕事の管理にも役立つプログラムを書き続けていたのです」。

クオモ氏にとって、生産性が大きな問題だったことはない。バンドは2020年に「Black Alibum」の後2枚のアルバムを完成させていたし、彼はすでに別の2枚の仕事にも取りかかっていた。より大きな問題に思えたのは、そうした考えを整理することだった。だからスプレッドシートとデータベースの出番があったのだ。

「数千」ものスプレッドシートがやがてデータベースとなり、クオモ氏自身のデモや彼が研究した他のアーティストたちの作品がカタログ化された。

「何年もの間、それは時間の無駄もしくは道楽のように思えていました」と彼はいう。「僕はそうした古いアイデアをただカタログ化するのではなく、新しい曲を書いたり、曲のレコーディングを行うべきだったのです。でも何年も経った後でようやく、僕はこうした古いアイデアをとても効率的に活用できることに気がつきました。なにしろ自分で書いたPythonプログラムに対して『おい、126BPMでキーはAフラットの曲を全部見せてくれ。ただし3度のスケールとメロディでスタートしてドリアンモード、そしてマネージャーが3つ星以上のスコアをくれたやつだ』と命令できるのですからね」。

彼は、このやり方はファンが望んでいるであろうロックンロールのロマン主義に、ある意味欠けていることを認めている。しかしクオモ氏は、分析的なページ上で創作をしていたとしても、まだそこには魔法が残されていると主張する。

クオモ氏にとって、生産性が大きな問題だったことはない。彼の生産性のレベルを考えると、むしろそれらの思考のすべてを整理することの方が難しい可能性が高い。だからスプレッドシートとデータベースが必要となったのだ。

「私たちが伝統的に人間の創造性だと考えているものの中には、自発性とインスピレーションの余地がまだたくさんあります」とクオモ氏は説明する。「この領域における僕のヒーローの1人が、Igor Stravinsky(イーゴリ・ストラヴィンスキー)です。『音楽の詩学』という彼の講義録があります。そして、彼はその講義録にメモを添えています。彼は自分の能力の1つしか使っていない作曲家には興味がないといっています、それは『クリエイティブゾーンにいるとき、自分の頭に自発的に飛び込んでくるものを書くだけです。それ以外のツールは何も使いません』というような作曲家のことです」。

「彼がいっているのは、『いや、私が聴きたいのは、自由に使える能力や、すべての直観を使いながら、同時に自分の持っているものすべてを分析し分類し活用する、知性と能力を駆使する作曲家の音楽なのです』ということです。僕はそうすることが、最もワイルドで予測不可能でクリエイティブな作品になることがわかったのです」。

そして作曲数そのものが不足することはなかった。クオモ氏は、バンドは今年の「Black Album」に加えて2枚のアルバムを完成させて、さらに個人的にさらに2枚のアルバムに着手していたという。18ヶ月のメジャーレーベルのアルバムリリースサイクルに何十年もの時間を詰め込んで、Demosプロジェクトを手掛けたあと、彼はファンに直接音楽をリリースするための、より多くの方法を見つけることに新たな関心を持つようになったという。

「自分としては、大きなマーケットを本当に理解していたり、世界に最大の影響を与える方法を知っていたりしているとはとても思えませんね」と彼はいう。「僕のマネージャーはそれが得意ですが、彼に対してこんなことを話したばかりです『なあ、ここに何かを感じるよな。なんといっても、本当に楽しいし、ファンも本当に喜んでくれている。みんなも気軽に参加してくれるしね』。コーディングは簡単ではありませんが、みなさんには、数クリックをするだけで、この音楽すべてを手にしてもらうことができます。値段も安いし、中間業者もいません。PayPalは多少手数料がかかりますが、メジャーレーベルほどではないですしね。だから、これは『何か』なのです。そして、僕から聞き手に直接伝えることができるのは、本当に素晴らしい何かなのです」。

いまのところ、コンピュータサイエンスは彼の時間の多くを占め続けている。クオモ氏自身は、働いている時間の約70%をプログラミングプロジェクトに費やしていると見積もっている。水曜日の夜には、彼は(数十年にわたる情熱を注いている)瞑想サイトのためのプログラミングを手伝い、さらにハーバード大学のフォローアップコースのCS50Mを受講する予定だ。このコースはモバイルアプリの開発を中心にしたものだ。

とはいえ、すぐに自分の本業を辞める予定はない。

「スタートアップとかに就職したり、誰かのウェブサイトの保守をすることは想像もできませんね」と彼はいう。「とはいえ、ロックスターとウェブ開発者の間の線が徐々にぼやけてきているので、ミュージシャンたちが技術ツールをますます活用できるようになるでしょう。音楽ソフトだけでなく、聞き手とのつながりをコードする中で現れる、配信や組織や創造性の手段をどんどん活用していきたいと思っています」。

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(翻訳:sako)