不正会計の中国「ラッキンコーヒー」が罰金186億円支払いで米証取委と和解

多くの問題を抱えた中国のコーヒーデリバリースタートアップであるLuckin Coffee(ラッキンコーヒー)は、売上高や経費、損失を数億ドル(数百億円)水増しした件で1億8000万ドル(約186億円)の罰金を支払うことに同意して米証券取引委員会(SEC)と和解した。

SECが米国時間12月16日夜に発表した(WSJ記事)。Luckinの不正会計は2020年初めに米投資会社のMuddy Waters(マディ・ウォーターズ)が最初に指摘した。疑惑に対し、Luckinは4月に内部調査を立ち上げると話した。6月にはSECがLuckinの上場廃止を検討すると述べ、7月にLuckinは粉飾を認めた(未訳記事)。

一連の騒ぎのわずか1年前にLuckinはNASDAQ上場を通じて6億5100万ドル(約670億円)を調達した(未訳記事)。同社は2017年10月に創業され、スタートアップから最速で上場企業となった企業の1社だった。

Starbucks(スターバックス)の中国におけるかなりのシェアの一部を取り込もうとしていたLuckinは、少なくとも2019年4月から2020年1月にかけて売上高を3億ドル(約309億円)超水増しした疑いがある、とSECは発表した。一部の従業員が、同社の経費を1億9000万ドル(約196億円)超を水増し、「事業データベースを捏造して、虚偽の売上高を反映させるために会計・銀行記録に手を加えた」ことも発覚した。

Luckinは、ニューヨーク州南部地区地方裁判所に提出された訴状にある疑いを肯定も否定もしていない。和解は裁判所の判断次第であり、証券保有者への資金振込は中国当局の承認が必要だ。

Luckinの不正会計の事実が調査で明らかになったことを受け、中国の当局は9月にLuckinと同社の不正に関わった45社に計900万ドル(約9億円)の罰金を科している(Reuters記事)。

詐欺スキャンダルにもかかわらず、Luckinの事業は現在も通常通り展開されている。同社と店舗のオペレーションは現在「安定かつ普通」だと同社は12月17日の発表文で述べた。

「Luckinは引き続き当局に協力し、コンプライアンスを優先します。一方で経営陣と従業員は社の安定経営に努めます」。

空売りを行う投資会社は2020年、米国で上場している中国企業を追いかけ回した。Wolfpack Research(ウルフパック・リサーチ)はレポートでBaidu(バイドゥ)が出資する中国の大手ビデオストリーミングサービスiQiyiが決算を粉飾していると指摘し、SECが調査する事態となった(CNBC記事)。中国のオンライン塾運営会社GSX Techeduも、Citron Researchによる不正会計の指摘を受けて同様にSECの調査を受けた(WSJ記事)。

「外国企業とその役員、ディレクターに米国の企業や役員と同じような責任を持たせることに多くの課題がある一方で、外国企業が連邦証券法に違反したときは投資家を保護するために我々は利用できるあらゆるリソースを今後も活用します」とSECのディレクターであるStephanie Avakian(ステファニー・アヴァキアン)氏はLuckinについての声明文の中で述べている。

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カテゴリー:その他
タグ:Luckin Coffee米証券取引委員会中国

画像クレジット:Luckin

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(翻訳:Mizoguchi

NASDAQ上場廃止が決まった中国Luckin Coffeeのチャールズ・ルー会長が解任

経営難に陥っている北京のコーヒーチェーンLuckin Coffee(ラッキン・コーヒー)の共同創設者で会長(現在は元会長)であるCharles Zengyao Lu(チャールズ・ゼンギャオ・ルー)氏が退任した。Luckinは米国時間7月13日に、同社の共同創設者で取締役でもありCEO代理を務めていたJinyi Guo(ジニー・ゴー)氏が、新たな会長兼CEOに任命されたことをSECへの提出書類で明らかにしている(Luckin Coffeeリリース)。

13日のSECへの提出書類によると、Luckin Coffeeはルー氏、David Hui Li(デイビッド・ホイ・リー)氏、Erhai Liu(エルハイ・リュー)氏、Sean Shao(ショーン・シャオ)氏という4人の取締役が取締役会を去って、2人の新しい独立取締役が任命されたとしている。今回新たに加わったのは、China University of Political Science and Lawのビジネススクールの副学部長であるJie Yang(ジー・ヤン)氏と、法律事務所のOrrick Herrington and Sutcliffeのパートナーで、El Paso Corporationのバイスプレジデント兼中国担当カントリーマネージャーを務めていたYing Zeng(イン・ゼン)氏だ。

同社の開示は、ルー氏がLuckin Coffeeの支配権守ろうとしていた数週間の争いの後に行われた。7月初めにLuckin Coffeeの取締役がルー氏を会長から解任しようとしたが、取締役会で十分な議決権を得られなかった(South China Morning Post記事)。

ルー氏を更迭する提案は6月26日に行われたもので、内部調査の結果、Luckin Coffeeの2019年の純収益が約21億2000万元(約325億円)も水増しされていたこと、取引の捏造が2019年4月から始まっており、ルー氏や元最高執行責任者のJenny Zhiya Qian(ジェニー・ジヤ・チェン)氏、その他数名の従業員が虚偽の報告に参加していたことが判明したためだ。

Luckin Coffeeは2020年6月にNASDAQが同社の上場廃止を決定したことを明かしており、同社が5月に米国で6億5100万ドル(約698億円)の株式を公開した後、不正行為の疑いで株価が急落していた。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

中国Luckin Coffeeの取締役会が会長追放の動き

息つく暇もない時がある。

中国に本拠を置くコーヒーチェーンとデリバリーのLuckin Coffee(ラッキンコーヒー)は6月26日朝、米取引所ナスダック上場維持の戦いをやめると発表後SEC(証券取引委員会)への提出書類で陸正耀(Lu Zhengyao)会長の辞任を要求したと表明した。

また別のSECへの提出書類で、同会長がSean Shao(ショーン・シャオ)独立取締役の解任を要求したと発表した。7月5日日曜日開催の臨時株主総会における株主投票で決議される。

すごい事になった。

事態は醜さを増している。Luckinは最近数カ月間の株価急落を引き起こした3億ドル(約320億円)の不正会計暴露の余波からの挽回を図っている。シャオ氏は、取締役会による不正会計の独立調査を主導してきた。

さて株主総会ではLuckinの株主(まだ株主はいるのだ)がどの取締役を再選または解任するか決める。コーポレートガバナンスがコントロールを失っているこの極端なケースで誰が選ばれるのか予断を許さない。

株主は、複数の現任取締役に加え、2名の独立取締役の新任についても投票する。候補者はZeng Ying(ゼン・イン)氏とYang Jie(ヤン・ジエ)氏で、それぞれビジネスおよび法務の分野で長い経験を有する。

以前から臨時株主総会が開催されることはわかっていた。ここに至り同社は態度を硬化し、投票を経て7月2日までに会長を追放しようとしている。臨時株主総会予定日の3日前だ。

正直、現時点では何が起こるかわからない。だが筆者が言えることは、Luckinの株価は米国26日金曜日に54%下落で終了し、時価総額はわずか数億ドル(数百億円)だということだ。ピーク時は120億ドル(約1兆3000億円)以上だった。誰が勝っても、手にするのは空の杯だ。

画像クレジット:FRED DUFOUR/AFP / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

中国Luckin Coffeeが不正申し立てを受け入れNASDAQ上場廃止へ

Luckin Coffee(ラッキンコーヒー)は、現代史で最も急成長したスタートアップの1社であり、2019年にIPOする見込みが最も高い会社の1つだった。だが数億ドル(数百億円)の不正の可能性があると同社が開示した今、旅は終わりの始まりの様相を見せている。

同社は米国6月26日にSECに提出した声明で、NASDAQ(ナスダック総合指数)による上場廃止の決定に異議を唱えることはないと表明した。中国に本拠を置くコーヒーチェーンである同社は、市場から退出させたいという意向を示す通知を証券取引所からここ数週間で2通受け取っていた。売買は6月29日火曜日の朝には正式に停止される。つまり、少なくとも当面は同社株が売買される最後の日は6月28日月曜日となる。

Luckinの物語は非常に刺激的だった。同社は創業わずか2年のスタートアップで、コーヒー「ショップ」を立ち上げ、世界中で存在感をもつStarbucks(スターバックス)よりも速くコーヒーを届けていた。Starbucksは中国に進出して20年以上、消費者に対し伝統的なお茶文化からの転換を働きかけてきたが、中国全域でLuckinに追い抜かれた。

その成長が昨年のデビューの際、ウォールストリートから大きな関心を集めた。目まぐるしい成長により同社の株価は急上昇した。ただ1つ問題があった。成長は明らかに現実からほとんどかけ離れていた。

同社の取締役会は今年4月、3億ドル(約320億円)の帳簿上の不正行為の調査を始め、関連会社が大量のコーヒーを購入したと見せかけ、売り上げを水増ししたことを発見した。この戦術により売上高と売上数量を増やし、会社の利益率を良く見せた(真面目な話、対価をもらって何も提供しないというのは非常に利益率の高いビジネスだ)。もちろん、これが10-Kフォーム(年次報告書)に記載され、SEC(証券取引委員会)に提出されれば不正となる。

これが消費者による同社アプリのダウンロード急増(未訳記事)を引き起こした。会社がつぶれる前に、クーポンやその他の景品を実際にコーヒーと交換しようと大挙して押し寄せたためだ。

上場廃止が差し迫った今、米国および世界中で会計基準の質が大きく懸念されている(未訳記事)。公開会社会計監視委員会を通じてではあるが、米国が中国で会社の帳簿記録を実際に検証する能力には限界がある(PCAOB記事)。EYのような監査人の検証にもかかわらず、Luckinのような不正スキャンダルが繰り返し発生してきた。EYはLuckinの監査人を務める(ウォールストリート・ジャーナル記事)。

議会は現在、現地の会社資料にアクセスできる法律制定に取り組んでいる(ウォールストリート・ジャーナル記事)。米国の市場にとっての不名誉を挽回するためだ。

しかし今週騒ぎになったのはLuckinの不正だけではない。ドイツのフィンテック決済会社であるWirecard(ワイヤーカード)は今週、ミュンヘンの裁判所で破産を正式に発表した。債権者からの数十億ドル(数千億円)の融資は凍結される可能性が高い。ドイツのイノベーションシーンにとっては大きな挫折となった。Wirecardは、ドイツのトップ企業で構成するDax 30インデックスの中では珍しいスタートアップだった。

Luckinに関しては、さらに多くのドラマが展開中のようだ。銀行は、会社とその会長の陸正耀(Lu Zhengyao)氏から資金を回収しようとしている(ウォールストリート・ジャーナル記事)。たぶん同社は将来、もっと多くの幸運(Luckin)に恵まれるだろう。

画像クレジット:Victor J. Blue/Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi