中国のeコマース大手JD.comが一部従業員にデジタル人民元での給与支払いを開始

中国のデジタル通貨導入計画は、同国のハイテクコングロマリットから多くのサポートを得ている。Alibaba(アリババ)と競合する中国のネット通販大手JD.com(京東商城)は中国時間4月26日、一部のスタッフに対し、同国の物理的な通貨の仮想版であるデジタル人民元での給与支払いを開始したと発表した(2021年1月から導入とのこと)。

中国ではここ数カ月、デジタル通貨の実験が盛んに行われている。先進的な経済政策で知られる南部の都市、深圳では、2020年10月に50万人の住民に1000万元(約1億7000面円)相当のデジタル通貨を配布し、そのお金で特定のオンラインおよびオフライン店舗で買い物ができるようにした。

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中国の他のいくつかの大都市も、深圳に追随している。これらの地域の住民は、デジタル人民元の受け取りと支払いを開始するために、指定された銀行を通じて申請する必要がある。

このデジタル人民元構想は、中国の規制当局、商業銀行、テクノロジーソリューションプロバイダーが一体となって進められている。中央銀行の指示の下、中国工商銀行(ICBC、Industrial and Commercial Bank of China)をはじめとする中国の6つの主要行がデジタル人民元を中小銀行やテクノロジーソリューションプロバイダーに配布し、新しいデジタル通貨のユースケースを増やすというもので、一見すると現物の人民元の流通を模したスキームに見える。

例えば、JD.comは中国工商銀行と提携してデジタル収入を入金している。同社は、中国で初めてデジタル人民元で給与を支払う組織の1つとなった。2020年8月には、東南部の蘇州市でも一部の公務員の給与支払いにデジタル通貨が導入された。

中国の大手テック企業は軒並み、中央政府が資金の流れをより正確に把握できるようにするため、デジタル人民元エコシステムの構築に積極的に参加している。

JD.com以外では、動画配信プラットフォームのBilibili(ビリビリ)、オンデマンドサービスプロバイダーのMeituan(美团、メイトゥアン)、そして配車アプリのDidi(滴滴出行、ディーディー)も、ユーザーが支払いをする際にデジタル元に対応し始めた。ゲーム・SNS大手のTencent(テンセント)は「デジタル人民元事業者」の1つとなり、デジタル通貨の設計、研究開発、運用業務に参加していく。IPOが頓挫した後、大規模な改革を行っているJack Ma(ジャック・マー、馬雲)氏のAnt Group(アント・グループ)は、中央銀行と手を組み、デジタルでお金を動かすためのインフラ構築にも取り組んでいる。通信機器大手のHuawei(ファーウェイ)は、同社のスマートフォンの1機種にウォレットを搭載し、デバイスがオフラインでもデジタル人民元を瞬時に使用できるようにした。

【更新】デジタル給与の導入時期を明確にするため、本記事は更新された。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:JD.com中国デジタル通貨デジタル人民元

画像クレジット:Costfoto/Barcroft Media / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

ファーウェイは自動車メーカーになることを否定し一次サプライヤーを目指す

ここ数カ月、中国のハイテク企業が次々と自動車分野への進出計画を発表している。検索エンジンを提供するBaidu(バイドゥ)をはじめとするインターネット企業の中には、自動車を生産するために従来の自動車メーカーと協力することを決断した例もある。Xiaomi(シャオミ)は(自社でスマートフォンを製造しているにもかかわらず、)ソフトウェアサービスで収益を上げるライトアセット企業であることを何年も強調してきたが、ここに来て自動車製造に参入する。業界関係者の間で次は誰かという話になれば、Huawei(ファーウェイ)の名前が挙がるのは当然だろう。

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通信機器やスマートフォンのメーカーであるHuaweiは、製造業としての歴史やサプライチェーン管理の経験、ブランド認知度、広大な小売ネットワークなどの点で、いくつかの純粋なインターネット企業よりも自動車の製造に適しているはずだ。しかし、同社は自動車ブランドを立ち上げるという報道を繰り返し否定し、Huaweiの役割は、自動車メーカーやOEM(相手先ブランドによる製造)企業の一次(ティア1)サプライヤーであることだとしている。

同社の輪番制会長であるEric Xu(エリック・シュー)氏は、最近、深圳で開催された同社の年次アナリスト会議で、Huaweiは自動車メーカーではない、と繰り返し述べている。

「2012年以来、中国の主要な自動車OEM企業の会長やCEO、ドイツや日本の自動車メーカーの幹部と個人的に関わってきた過程で、自動車業界にはHuaweiが必要だと気づきました。Huaweiのブランドが必要なのではなく、彼らは未来志向の自動車を作るために私たちのICT(情報通信技術)を必要としているのです」とシュー氏は語り、2018年に発案されたこの戦略に変わりはないという。

自動車の製造業は主に3つの役割で構成されている。1つ目はAudi(アウディ)、本田技研工業、Tesla(テスラ)といったブランド力のある自動車メーカー。間もなくApple(アップル)もここに名を連ねるであろう。そしてBosch(ボッシュ)やContinental(コンチネンタル)などの老舗やここで取り上げているHuaweiなど、自動車の部品やシステムを自動車メーカーに直接供給するティア1企業。さらにNVIDIA(エヌビディア)、Intel(インテル)、NXP(エヌエックスピー)などのチップサプライヤーで、業界のプレイヤーたちが高度な自律運転車に向けて邁進する現在、その役割はますます重要になっている。Huaweiも自動車用チップを自社で製造している。

中国でロボタクシーを開発するスタートアップの幹部は「Huaweiは、次世代のBoschになることを狙っています」と、匿名でTechCrunchに話す。

Huaweiは、ティア1サプライヤーとしての地位を明確にしていて、これまでにBAIC(北汽集団)、Chang’an Automobile(長安汽車)、Guangzhou Automobile Group(広州汽車集団)という3つの主要な顧客を獲得している。

「このような綿密な協力関係は、あまり多くはないでしょう」とシュー氏は断言する。

レベル4の自律走行は実現したか?

画像クレジット:Arcfox Alpha S

中国国営自動車メーカーBAIC傘下の新しい電気自動車ブランド、Arcfox(アークフォックス、極狐)は、現時間4月17日、(「Powered by Intel」ではなく)Huawei Insideの略語であるHuaweiの「HI」システムを搭載したAlpha Sモデルを初公開した。価格は38万8900~42万9900元(約650万~720万円)で、HuaweiのKirinチップを搭載したOS、HarmonyOS上で動作するアプリ、自動運転、急速充電、クラウドコンピューティングなど、Huaweiの機能を複数搭載している。

おそらく最も注目されるのはAlpha Sがレベル4を達成したことで、この点はHuaweiがTechCrunchに断言している。

ほとんどの場面で人間の介入を必要としない、つまりドライバーがハンドルから手を離してうたた寝することができることを意味する大胆な発言だ。

しかし、この主張にはいくつかの含みが残る。Huaweiの自律走行担当ゼネラルマネージャーであるSu Qing(スー・チン)氏は、最近のインタビューで、Alpha Sは「スキル」の面ではレベル4だが「法的」責任の面ではレベル2だと話している。中国では、安全運転者のいない自律走行車のテストが許可されているのは、制限された地域でごく少数の企業に限られており、都市部の道路を走る消費者向け無人走行車にはほど遠い。

結局、Huaweiの「レベル4」機能はデモの中で示されたに過ぎない。デモでは、Arcfoxの車両が(安全を確保するためにドライバーを乗せた状態とはいえ)人の介入なしに中国の混雑した都市を1000km走行している。この車の自動化を実現するのは、3つのLiDAR、6つのミリ波レーダー、13の超音波レーダー、12のカメラなどのセンサー群と、Huawei独自の自動運転用チップセットだ。

シュー氏はこの車の能力について「Teslaよりもはるかに優れている」と語る。

Huaweiの車両は、厳密な意味ではレベル4ではないという意見もある。この議論は、言葉の問題のようにも見える。

シュー氏は「あなたが今見ているHuaweiの車はレベル4であると断言できますが、あえてドライバーを乗せています」と話す。「レベル4のことは、あなたが長距離のMPI(Miles per intervention、ドライバーの介入を必要としない平均走行距離)を達成してから議論しましょう。これはただのデモです」。

前述のロボタクシー企業の幹部は「ドライバーを排除できなければ、レベル4ではありません」と主張する。「デモは簡単ですが、ドライバーの排除は非常に難しいのです」。

「Huaweiが主張するテクノロジーは、レベル4の自律走行ではありません」と、別の中国自律走行車スタートアップの役員は話す。「レベル4の現在の課題は、ドライバー不在にできるかどうかではなく、どうすれば常時ドライバー不在にすることができるか、ということです」。

レベル4であろうとなかろうと、Huaweiは自動車の未来への投資を止めるつもりはないようだ。シュー氏はアナリスト会議で、2021年はスマートカーの部品や技術に10億ドル(約1080億円)以上を投じる予定だと話している。

5Gの未来

5Gが無人運転車の開発を加速する上で重要な役割を果たすと考える人も多く、世界最大の通信機器メーカーであるHuaweiは、世界各地の5Gの展開で多くの利益を上げるだろう。しかし、シュー氏は、5Gは自動運転車にとって必須ではないと主張する。

「自律走行を実現するためには、クルマ自体が自律的である必要があります。つまり、外部からのサポートなしに車両が自律的に走行できなければならない、ということです」とシュー氏。

「自律走行のために5Gや5.5Gに完全に依存すれば、必ず問題が生じます。5Gの基地局に問題が起きたらどうなるか、想像してみてください。モバイルネットワーク事業者は、自社のネットワークをエリア全域に隈なく広げ、どのような状況でも絶対に問題が起こらないようにして、高いレベルの耐障害性を確保しなければなりません。モバイルネットワーク事業者にとっては非常に高いハードルとなり、非現実的です」。

Huaweiは、Boschの市場を乗っ取ることができれば、ティア1サプライヤーとしては十分に満足なのかもしれない。多くの中国企業が、将来の制裁を見越して、あるいは単に堅牢性に劣らない安価な代替品を求めて、欧米の技術サプライヤーから中国国内のサプライヤーへとシフトしている現在において、ArcfoxはHuaweiの自動車分野における野心の切っ先に過ぎない。

カテゴリー:モビリティ
タグ:中国電気自動車Huawei自動運転5GBosch

画像クレジット:Baidu’s autonomous driving car

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(文:Rita Liao、翻訳:Dragonfly)

中国版UiPath、RPAスタートアップLaiyeが54億円のシリーズC+を完了

CEOのワン・グアンチュン氏(画像クレジット:Laiye

ここ数カ月、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)が話題になっている。ニューヨークを拠点とするUiPath(ユーアイパス)は、2021年2月に350億ドル(約3兆8000億円)という驚異的な評価額を得た後、新規株式公開(IPO)に向けて動き出した。そして中国では、同国産のRPAスタートアップLaiye(ライヤ、来也)が話題になっている。

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キーボード操作やマウスクリックなどの、職場のありふれた作業を模倣するソフトウェアを開発しているLaiyeが、シリーズC+ラウンドで5000万ドル(約54億円)を調達したことを発表した。今回の資金調達は、北京を拠点とする同社が、シリーズCラウンドの第1回目の資金調達を行ってから約1年後に行われた。

Baidu(バイドゥ、百度)の元従業員たちが率いる設立6年目のLaiyeは、公開情報によれば、これまでに1億3000万ドル(約140億4000万円)以上を調達している。

今回のシリーズC+ラウンドを主導したのは、中国の金融コングロマリットであるPing An(ピン・アン、平安)のアーリーステージ戦略投資ビークルであるPing An Global Voyager Fundと、政府支援のファンドであるShanghai Artificial Intelligence Industry Equity Investment Fundだ。その他、Lightspeed China Partners、Lightspeed Venture Partners、Sequoia China、Wu Capitalが投資に参加している。

RPAツールは、オフィスでの共同作業に支障を及ぼしてきた新型コロナウイルス(COVID-19)の中で、ワークフローを自動化する方法を探している企業を魅了していいる。とはいえ、この企業向け技術であるRPAは、パンデミックの前からすでに注目を集めていた。私の同僚であるRon Miller(ロン・ミラー)記者は、2021年4月、UiPathがS1(IPO目論見書)を申請した直後に次のように書いている

「このカテゴリーは、その時点ではレガシーな文脈での自動化を扱うことで人気を集めていた。それは、既存技術に深く絡みつかれている企業、すなわち実質的にはクラウド化されていないすべての企業が、古いプラットフォームを大手術したり置き換えたりしなくても自動化することができるというものだ(高価でリスクの高い大工事は普通のCEOならやりたがららないものだ)」。

たとえば一例として、かつて蘭州市の社会保障担当者は、年金受給者の情報を入力し、その内容が正しいかどうかを手作業で確認していたが、LaiyeのRPAソフトウェアを使用することで、口座照合作業時間を75%短縮することができた

また、中国南部のいくつかの都市では、国勢調査の自動化にLaiyeのチャットボットが活躍し、国勢調査員が一軒一軒家を訪問する必要がなくなった。

Laiyeによれば、2020年の第4四半期に、同社のRPAエンタープライズ事業がプラスのキャッシュフローを達成し、チャットボット事業が黒字化したという。その無料版は40万人以上の開発者が使っているが、同時にLaiyeはフリーランス開発者と自動化を必要とする小規模な企業をつなぐボットマーケットプレイスも運営している。

Laiyeはグローバルにサービスを展開しており、現在はアジア、米国、ヨーロッパに展開できているという。

Laiyeの会長でCEOであるWang Guanchun(ワン・グアンチュン)氏は「Laiyeは、今後3年間で、世界最大のソフトウェアロボットの開発者コミュニティを育成し、世界最大のボットマーケットプレイスを構築することを目指しています。そして2025年までには少なくとも100万人のソフトウェアロボット開発者を認定する予定です」と語る。

「より多くの人間の労働者がRPAやAIの知識でアップスキルできるようになれば、デジタル・ワークフォースとインテリジェント・オートメーションがすべての職業に浸透すると信じています」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:LaiyeRPA中国資金調達

画像クレジット: LaiyeCEOのワン・グアンチュン氏)

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(文:Rita Liao、翻訳:sako)

批判が高まる中、テスラが中国向けの新車両を検討中

Tesla(テスラ)は、その電気自動車の品質に関する苦情の衝撃が中国のインターネット上で広がる中で、中国の消費者に合わせた車両の開発に取り組んでいる。

Teslaの副社長であるGrace Tao(グレース・タオ)氏は、今週開催された上海モーターショーの中で、中国のビジネスニュースの21st Century Business Herald(21世紀ビジネスヘラルド)に対して、Teslaが中国向けにゼロから設計した新製品を検討していると述べた。この中国で開発された車両は、世界でも販売される予定だと彼女は付け加えた。

中国時間4月19日に開催された同イベントでは、1人の女性がTeslaのブースに現れ、Tesla車の上によじ登って、同社製のブレーキに欠陥があると叫んだ。その後、この女性は車両を傷つけたとして拘束されたが、TeslaはマイクロブログプラットフォームWeibo(ウェイボー、微博)上で、彼女のクルマが事故を起こしたのは品質上の問題ではなく、制限速度を超過したためだと書き込んだ

しかし、その様子を撮影した動画がネット上で拡散されたため、当の抗議者は多くの人の共感を集めることになった。それに乗じて多くのユーザーが、Teslaの問題を訴えたのだ。「Tesla stand turned into stage for defending rights」(Teslaのブースが権利を守る舞台となった)というハッシュタグを付けた投稿が、Weibo上で2日間に2億2千万回以上の閲覧回数を記録した。

Tesla中国は、事件を受けてWeiboに掲載した声明の中で「私たちは当初から、国や権威ある第三者機関と協力して、みなさまから寄せられた問題を徹底的に検証したいと考えています。そのようにすることで、消費者のみなさまのご安心いただきご理解いただきたいと願っています」と述べている

「しかしながら、まだその願いは叶えられていません。それは、お客さまとの私たちのコミュニケーション方法に問題があるのだと思われます。また、お客様がこれらの問題をどのように解決なさりたいのかを、私たちが決めることはできないのです」。

欧米同様、中国でもTeslaはカルト的な人気を博している。また同社は、Apple(アップル)と並んで、中国で確固たる地位を築いている数少ない米国のハイテク企業の1つだ。2020年Teslaは、全世界で約50万台の自動車を出荷し、中国は同社の収益の20%を占めている。

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しかし、その一方で、中国国産車メーカーたちとの競争も激化している。Xpeng(シャオペン、小鵬)、Nio(ニオ)、Li Auto(リオート、理想汽車)などの資金力のあるスタートアップや、Huawei(ファーウェイ)などのハイテク企業の支援を受けた既存の自動車メーカーが、Teslaの市場を奪う準備をしている。中国でデザインされた車両はすでに、愛国心の強い人たちの間で受け入れられつつある

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中国政府がTeslaに対してより厳しい目を向けていることも同社にとって不利な材料だ。2021年1月には、中国内で数万台のリコールを実施した直後に、品質問題の件で現地の規制当局に召喚されている。中国政府は、国家安全保障上の懸念から、軍事施設でのTeslaの使用を制限していると、2021年3月にThe Wall Street Journalが報じている。それを受けてElon Musk(イーロン・マスク)氏は、もし自社のクルマがスパイに使われたら、会社は閉鎖されるだろうと述べた

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カテゴリー:モビリティ
タグ:中国Tesla電気自動車

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(文:Rita Liao、翻訳:sako)

中国の自動運転車両スタートアップWeRideが米サンノゼでの無人テスト許可を取得

このほど3億1000万ドル(約339億円)を調達した中国の自動運転車両スタートアップWeRide(ウィライド)が、米国カリフォルニア州サンノゼの公道で無人の車両をテストする許可を取得した。無人運転車両テストの許可を取得したのはAutoX、Baidu、Cruise、Nuro、Waymo、Zooxに続き7社目となる。

自動運転車両開発の初期段階においては、テストの許可はセーフティドライバーが運転席に乗ることが必須だった。セーフティドライバーが乗り込んでの自動運転車両テストの許可は現在56社が取得している。人間が運転席に乗り込まないドライバーなしのテストの許可は新たな指標となり、商業ロボタクシーや配達サービスを米国で展開したい企業にとっては必須のステップだ。

カリフォルニア州内の自動運転車両テストを管轄するカリフォルニア州自動車管理局(DMV)は、今回の許可でWeRideはサンノゼ内の特定の道路でドライバーなしで自動走行車両2台をテストできる、と述べた。WeRideは2017年からドライバー付きでの車両テストの許可を持っている。同社はまた、どのように、そしていつ車両をテストするか規制されている。DMVによると、無人自動運転車両は時速45マイル(約72km)以下で走行し、テストは月曜日から金曜日の間に行う。ただし濃い霧や雨の場合、テストは不可だ。

カリフォルニア州でドライバーなしでのテストを行う許可を取得するには、企業は数多くの安全や登録、保険に関する要件を満たさなければならない。ドライバーなしテスト許可を申し込む企業は保険の証拠か500万ドル(約5億5000万円)相当の債券を提出し、車両がドライバーなしで走行できることを証明しなければならない。そして、連邦自動車安全基準を満たすか国道交通安全局からの免除を取得している必要があり、SAEレベル4あるいはレベル5の車両でなければならない。かつ、テスト車両は絶えず監視され、テクノロジーでつながったリモートオペレーターを訓練する必要もある。

ドライバーなしテスト許可所有事業者はまた、ドライバーなしテスト車両の衝突をすべて10日以内にDMVに報告し、離脱の年次報告を提出しなければならない。

WeRideのオペレーションの大半は中国で行われている一方で、今回の許可取得は同社が引き続き米国にも関心を持っていることを示している。中国・広州に本社を置くWeRideはR&Dとオペレーションセンターを北京、上海、南京、武漢、鄭州、安慶、そしてシリコンバレーに置いている。2017年創業の同社は2021年2月に広州で配車事業運営の許可を取得した。

同社は中国で最も資金を調達した自動運転車両テクノロジーのスタートアップで、出資者にはバスメーカーのYutong、中国の顔認証企業SenseTime、そしてとRenaultと日産、三菱の戦略ベンチャーキャピタル部門Alliance Venturesが含まれる。その他、CMC Capital Partners、CDB Equipment Manufacturing Fund、Hengjian Emerging Industries Fund、Zhuhai Huajin Capital、Flower City Ventures、Tryin Capital、Qiming Venture Partners、Sinovation Ventures、Kinzon Capitalも投資している。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:WeRide自動運転ロボタクシー中国カリフォルニア

画像クレジット:WeRide

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

中国当局がジャック・マー氏のAnt Groupに決済における「反競争的な行為の是正」を要請

Ant(アント)の事業見直しの詳細が明らかにされた。中国人民銀行(中央銀行)が中国時間4月12日に発表したところによると、Jack Ma(ジャック・マー)氏が率いるAlibaba(アリババ)傘下のフィンテック企業Ant Group(アント・グループ)は、金融持株会社となり、融資や利益創出の方法について規制当局の監視がより強化されることになるという。

Antは、Alibabaマーケットプレイスのオンライン決済処理会社としてスタートし、その後、決済、融資、ウェルスマネジメント、保険などの事業を展開するフィンテック帝国へと発展した。既存の金融業界への参入は中国ではあまり歓迎されていなかったが、数年前から大手銀行や従来の資産運用会社と競合するのではなく「テクノロジープロバイダー」として位置づけられるようになった。

そうした努力にもかかわらず、中国政府はフィンテックの巨人となったAntをさらに抑制したいと考えていた。

当局が同国のインターネット大手の力を抑制しようとする中、Antが2020年11月に予定していたIPOは頓挫していた。政府がAntに課した「是正計画」と呼ぶものの一環として、同社は「反競争的な行為を是正する」とあるが、これには、消費者に提供する決済手段の選択肢の拡大、ユーザーを誘導してローンを組ませるというような悪質な手法を排除することが含まれる。

また、世界中に10億人以上の年間ユーザーを擁し、そのほとんどが中国にいるAntは、ユーザーデータの独占をやめ、個人情報と国家情報の安全を確保するよう求められている。

さらに金融持株会社としてAntは、金融商品の流動性リスクをコントロールし、世界最大級のマネーマーケットファンドの規模を縮小する必要がある。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Ant Groupジャック・マー中国Alibaba

画像クレジット:Gao Yuwen/VCG via Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

中国が独占禁止にいよいよ本腰、アリババに約3010億円の記録的な罰金

中国の規制当局は、Alibaba(アリババ)が同国最大のインターネット複合企業の支配権を握ろうとしている中、独占禁止法に違反したとして、180億元(約3010億円)という記録的な罰金を科した。

2020年11月、中国はそのインターネット経済を対象とする包括的な独占禁止規制を提案した。12月下旬、国家市場監督管理総局(State Administration for Market Regulation、SAMR)は、当局がAlibabaの金融関連会社であるAnt Groupの新規株式公開を中止した数週間後に、Alibabaに対する反トラスト調査を開始したと発表した。

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中国における最上位の市場規制機関であるSAMRは現地時間4月10日に、Alibabaは2015年以来中国の商業者に、PinduoduoやJD.comなど複数のサービスから自由に選ぶのではなく、1つのeコマースプラットフォーム上でのみ販売すよう強制してその「市場支配力を乱用した」と発表した。ベンダーたちは、Alibabaの巨大なユーザーベースを利用するためにはAlibabaの側につくよう、圧力を受けることが多かった。

2020年の終わりごろより、TencentやAlibabaなどの大手インターネット企業は、過去の買収承認を得なかったなどの理由で、反競走的な行いに対するさまざまな罰金を科せられた。それらの罰金の総額は、テクノロジー企業が彼らの市場集中から得る利益に比べると微々たる額だ。その帝国の分割を命じられた企業は1社もなく、ユーザーは依然として、お互いに他社をブロックするスーパーアプリ間を渡り歩かなければならなかった。

関連記事:中国が独禁法違反でアリババとテンセント子会社に罰金処分

しかし最近の数週間で、中国の独占禁止当局がより深刻になっている兆候がある。Alibabaに対する最新の制裁金の額は、同社の2019年の売上の4%に相当する。

「本日、中国の国家市場監督管理総局から行政処分決定が出されました」とAlibabaは声明で述べた。「私たちは誠意をもってこの刑罰を受け入れ、私たちの決意を確実に遵守します。社会に対する責任を果たすために、法に則り誠実に行動し、コンプライアンス体制を強化し、イノベーションによる成長を目指します」。

テクノロジー企業が互いの間に築いてきた厚い壁も崩れ始めた。Alibabaの幹部Wang Hai(ワン・ハイ)氏が最近認めたところによると、AlibabaはWeChatのミニプログラムプラットフォーム上で同社のショッピング情報アプリを実行するための申請書を提出した。

何年もの間、AlibabaのサービスはTencentの広大なライトアプリのエコシステムに存在しておらず、現在では何百万ものサードパーティーのサービスが存在している。逆に、WeChatは決済手段としてAlibabaのオンライン市場には存在しない。もし承認されれば、WeChatを搭載したAlibabaのミニアプリは、両社の長い対立の前例を破ることになる。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:中国Alibaba独占禁止法eコマース

画像クレジット:Qilai Shen/Bloomberg via Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

中国が独占禁止にいよいよ本腰、アリババに約3010億円の記録的な罰金

中国の規制当局は、Alibaba(アリババ)が同国最大のインターネット複合企業の支配権を握ろうとしている中、独占禁止法に違反したとして、180億元(約3010億円)という記録的な罰金を科した。

2020年11月、中国はそのインターネット経済を対象とする包括的な独占禁止規制を提案した。12月下旬、国家市場監督管理総局(State Administration for Market Regulation、SAMR)は、当局がAlibabaの金融関連会社であるAnt Groupの新規株式公開を中止した数週間後に、Alibabaに対する反トラスト調査を開始したと発表した。

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中国における最上位の市場規制機関であるSAMRは現地時間4月10日に、Alibabaは2015年以来中国の商業者に、PinduoduoやJD.comなど複数のサービスから自由に選ぶのではなく、1つのeコマースプラットフォーム上でのみ販売すよう強制してその「市場支配力を乱用した」と発表した。ベンダーたちは、Alibabaの巨大なユーザーベースを利用するためにはAlibabaの側につくよう、圧力を受けることが多かった。

2020年の終わりごろより、TencentやAlibabaなどの大手インターネット企業は、過去の買収承認を得なかったなどの理由で、反競走的な行いに対するさまざまな罰金を科せられた。それらの罰金の総額は、テクノロジー企業が彼らの市場集中から得る利益に比べると微々たる額だ。その帝国の分割を命じられた企業は1社もなく、ユーザーは依然として、お互いに他社をブロックするスーパーアプリ間を渡り歩かなければならなかった。

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しかし最近の数週間で、中国の独占禁止当局がより深刻になっている兆候がある。Alibabaに対する最新の制裁金の額は、同社の2019年の売上の4%に相当する。

「本日、中国の国家市場監督管理総局から行政処分決定が出されました」とAlibabaは声明で述べた。「私たちは誠意をもってこの刑罰を受け入れ、私たちの決意を確実に遵守します。社会に対する責任を果たすために、法に則り誠実に行動し、コンプライアンス体制を強化し、イノベーションによる成長を目指します」。

テクノロジー企業が互いの間に築いてきた厚い壁も崩れ始めた。Alibabaの幹部Wang Hai(ワン・ハイ)氏が最近認めたところによると、AlibabaはWeChatのミニプログラムプラットフォーム上で同社のショッピング情報アプリを実行するための申請書を提出した。

何年もの間、AlibabaのサービスはTencentの広大なライトアプリのエコシステムに存在しておらず、現在では何百万ものサードパーティーのサービスが存在している。逆に、WeChatは決済手段としてAlibabaのオンライン市場には存在しない。もし承認されれば、WeChatを搭載したAlibabaのミニアプリは、両社の長い対立の前例を破ることになる。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:中国Alibaba独占禁止法eコマース

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(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

中国のハードウェアメーカーたちが世界進出のためにクラウドファンディングを活用

ハイテク企業が密集している深圳の南山区で開催されたIndiegogo Chinaのイベント(画像クレジット:TechCrunch)

ここ数年、中国のハイテク企業たちは欧米市場で苦戦を強いられてきた。Huawei(ファーウェイ)とDJIは貿易制限の影響を受け、TikTok(ティックトック)とWeChat(ウィーチャット)は米国内でアプリが禁止される恐れがある。全体として国外に拠点を持つ中国企業たちは、地政学的緊張の高まりにますます警戒を強めている。

だがそんな中で、カリフォルニア州に本社を置くクラウドファンディングプラットフォームのIndiegogo(インディーゴーゴー)が、中国の消費財メーカーを対象に深圳(シンセン)でイベントを開催した。そのイベントでは、ポータブル発電機を製造するスタートアップから、53年の歴史を持つ家電大企業のMidea(ミデア)まで、さまざまな規模の企業が、Indiegogoの中国担当者が話す欧米の消費者へのアプローチ方法の説明に、熱心に耳を傾けていた。

部屋を埋めた起業家たちに対して、Indiegogo ChinaのジェネラルマネージャーであるLi Yongqin(リー・ヨンチェン)氏は「第1段階は、自分たちの声を世の中に届けることです。私たちはそれを成し遂げて来ました」と強く訴えた。「次は、勇気を持って潮目に乗り、世界中のユーザーに愛されるブランドを目指して挑戦することです」。

Mideaグループの海外eコマース事業を統括するChen Zhenrui(チェン・シェンルイ)氏は「クラウドファンディングは、消費者を理解するための極めて直接的な手段となります」という。IndiegogoやKickstarter(キックスターター)などのプラットフォームは、個人や組織が多くの人々からプロジェクト資金を調達する手段を提供する。ほとんどの場合、プロジェクト支援者は、資金を提供したプロジェクトから特典や謝礼を得ることができる。

Mideaは2020年、Indiegogo上で発売した新しいエアコンユニットのために150万ドル(約1億6000万円)を調達したが、2019年に同社が生み出した420億ドル(約4兆6000億円)の年間収益に比べれば、ほぼ無視できる金額だ。しかし、Indiegogo上での3600人の支援者からのサポートは、単なる実験以上の結果を示した。

わずか数週間でMideaは、窓枠にぴったりと収まって、騒音を遮断し、エネルギーを節約できるコンパクトなエアコンが、多くの米国の消費者を魅了することを学ぶことができたのだ。中国の他の老舗家電メーカーと同様に、Mideaも数十年前から輸出を行ってきた。

だが「これまでの海外ビジネスの大部分は、伝統的なB2Bによる輸出でした。世界に通用するブランドになるには、まだまだ遠いと思っています」とチェン氏はいう。

Mideaが初めてIndiegogoに登場したとき、キャンペーンページに「このプロジェクトは詐欺だ」というコメントを残したユーザーがいた。フォーチュン・グローバル500に選ばれた企業が、なぜIndiegogoに参加しているのかというのが理由だ。

チェン氏は当時を振り返って「そのときは何度かのやり取りを通して、お互いを知ることができました。結局そのユーザーは私たちを大いに応援してくれました」という。そしてMideaはIndiegogoの支援者たちから寄せられた何十もの提案を製品の改良に活かしたのだと付け加えた。

Indiegogo Chinaのゼネラルマネージャーであるリー・ヨンチェン氏は、会場に集まった起業家たちに、世界中のユーザーに愛されるブランドを開発するよう、強く呼びかけた(画像クレジット:TechCrunch)

中国の老舗メーカーが、クラウドファンディングに挑戦するケースがますます増えている。サウンドシステムのホワイトレーベルメーカーとして創業し、南部の沿岸都市アモイに拠点を置くPadmate(パッドメイト)が、Pamu(パム)という新しいイヤフォンブランドを立ち上げた。

PadmateのディレクターであるEdison Shen(エディソン・シェン)氏によれば、eコマースのような新しい小売チャネルによって旧来の流通業者が圧迫されているために、従来のような輸出は難しくなっているという。自身のブランドを作り、消費者に直接アプローチすることで、工場の利益率も向上する。Padmateは2018年にIndiegogoに参入し、ワイヤレスヘッドフォンのキャンペーンの1つでは660万ドル(約7億2000万円)以上を集めた。

Indiegogoに参加したプロジェクトのほとんどが、900万人が利用するそのクラウドファンディングサイトから、主流のプラットフォームへと歩みを進める、Amazon(アマゾン)へ出品し、Google(グーグル)やFacebook(フェイスブック)へ広告を掲載するのだ。こうした米国の大規模テック企業たちは、中国内では中核的なサービスを提供していないものの、Amazonのように中国にスタッフを常駐させたり、Facebookのように現地の広告代理店と仕事をしたりと、何らかの形で中国での事業展開を行っている。

Indiegogo自身は、5年前に中国の深圳にオフィスを開設した。Indiegogoのグローバル戦略担当ゼネラルマネージャーであるLu Li(ルー・リー)氏によれば、それ以降中国を拠点とするプロジェクトが、同プラットフォームを通じて3億ドル(約328億9000万円)以上の資金を調達しているという。中国は現在、同社で最も成長している市場であり、2020年に100万ドル(約1億1000万円)以上を調達したキャンペーンの40%以上を占めている。

IndiegogoのライバルであるKickstarterも、中国からのプロジェクトが急増し、2020年の調達額は過去最高の6050万ドル(約66億3000万円)に達した。ブルックリンに拠点を置く同社は、最近中国市場の調査に協力してくれる、深圳または隣接都市である香港の請負業者を探し始めた。

「ここ数年、クラウドファンディングのコツをつかんで、自社ブランドをグローバルに展開する中国企業が増えています。そのため(中国発の)『大ヒット』キャンペーンも増えています」とリー氏は指摘する。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Indiegogo中国クラウドファンディング

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(文:Rita Liao、翻訳:sako)

植物性由来肉のBeyond Meatが中国に初の生産工場を開設

Beyond Meatがスターバックスのメニューとして中国でデビューしてから約1年、カリフォルニアの植物ベースのタンパク質企業は上海近くに生産施設を開設し、中国のサプライチェーン資源を活用し、製品の二酸化炭素排出量を削減する可能性を求めて、上海近郊に生産施設を開設した。

上海から85km離れた嘉興市に位置するこの工場は、Beyond Meatにとって米国外で初めてのエンド・ツー・エンドの製造施設になるとNASDAQに上場している同社は、米国時間4月7日の発表で述べた。

この1年で、Beyond MeatやEat Justなどの外国企業の進出に加えて、Hey MaetやStarfieldなどの国内スタートアップへの資本注入が相次ぎ、中国の代替タンパク質市場における競争は激化した。

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Beyond Meatは、競走を恐れていない。中国の代替タンパク質業界に関するTechCrunchの記事に感想を求められた同社代表者は「Beyond Meatが競合他社について考慮していることは何もない」と述べている。

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中国には食肉代替製品に対する巨大でまだ満たされていない市場があるだけでなく、中国自身が植物性タンパク質の主要なサプライヤーでもある。中国の食肉代替製品のスタートアップは最初から原価の有利性を享受し、また増加するミドルクラスの味覚をより反映した消費者製品の支援を競う投資家たちの関心にも事欠かない。

そのため中国に何らかの製造施設を持つことは、中国市場に真剣に取り組んでいる外国勢にとってほとんど必須の前提条件だ。以前、Teslaは安い電気自動車を提供するために上海にGigafactoryを作った。生産の地域化はまた、サプライチェーンの短縮により企業の持続可能性目標の達成を助ける。

Beyond Meat自身の言葉によると、嘉興の工場は中国国内の生産と流通を迅速させ、かつ大規模化できるだけでなく、Beyond Meatの原価構造と事業の持続可能性を改善するという。

この米国のフードテック大手はローカライゼーションに真剣で、中国では同社の旗艦製品であるバーガーのパティと豚挽肉の模造製品を販売するが、後者は世界最大の豚肉消費国向けに特別に製造されている。大豆と米を主原料とする豚挽肉もどきはさまざまな中国料理に使用でき、同社の上海とロサンゼルスのチームのコラボレーションの成果でもある。

嘉興の工場は製造だけでなく、中国市場向けの新製品の研究開発も行う。またBeyond Meatは2021年、ヨーロッパ初となる自社生産工場も設ける。

Beyond Meatの創業者でCEOのEthan Brown(イーサン・ブラウン)氏は「中国には長期的な成長を期待する地域としての本格的な投資を行う」と述べている。「この新しい製造施設は、私たちが中国の消費者に人間と地球の両方にとって良い植物由来のおいしいタンパク質を届けようと努力することによって、価格と持続可能性の両方を目標に近づける役割を果たすでしょう」。

Beyond Meatの製品は中国主要都市のスターバックスやKFC、AlibabaのスーパーマーケットであるHema、およびその他の小売店で販売されている。

カテゴリー:フードテック
タグ:Beyond Meat中国植物由来肉タンパク質

画像クレジット:Beyond Meat China

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(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アマゾンの元セキュリティ担当幹部による中国企業がサイバー脅威に対抗するためのツール「ThreatBook」

ThreatBookの創業者兼CEOであるフェン・シュー氏。

中国では、経済活動や公共活動がよりオンライン化するようインターネット社会を推進している。その過程で、大量の市民や政府のデータがクラウドサーバーに転送され、情報セキュリティへの懸念が高まっている。ThreatBookというスタートアップは、この革命にチャンスを見出し、悪意のあるサイバー攻撃から企業や官僚を守ることを約束している。

設立6年目になるThreatBookの創業者兼CEOであるFeng Xue(フェン・シュー)氏は、TechCrunchのインタビューに答えてこう語った。「中国では数十年前からウイルス対策ソフトやセキュリティソフトが普及していましたが、最近まで、企業はコンプライアンス要件を満たすためだけにそれらを調達していました」。

2014年頃から中国ではインターネットの普及が急速に進み、データが爆発的に増えていった。結果、それまで物理的なサーバーに保存されていた情報が、クラウドに移行した。企業は、サイバー攻撃を受ければ多大な経済的損失を被る可能性があることを認識し、セキュリティソリューションに真剣に取り組み始めた。

その一方でサイバースペースは、国家間の競争が繰り広げられる戦場としても注目されている。悪意のあるアクターは、国の重要なデジタルインフラを標的にしたり、大学のデータベースから重要な研究成果を盗んだりする。

ThreatBookを設立する前にはAmazon China(アマゾン中国)で最高情報セキュリティ責任者(CISO)を務めていたシュー氏は「国家間のサイバー攻撃の量は、地政学的な関係を反映しています」という。同氏はそれ以前は、Microsoft (マイクロソフト)の中国におけるインターネットセキュリティディレクターを務めていた。

「2つの国が同盟関係にあれば、お互いに攻撃する可能性は低くなります。中国は地政学上、非常に特殊な立場にあります。他の超大国との緊張関係に加えて、近隣の小国からのサイバー攻撃も多発しています」。

他の新興SaaS企業と同様、ThreatBookはソフトウェアを販売し、年間サービスのサブスクリプション料金を請求している。現在の顧客の80%以上は金融、エネルギー、インターネット産業、そして製造業などの大企業だ。政府契約の割合はより少ない。ThreatBookは、2021年3月に実施したシリーズEラウンドで5億元(7600万ドル、約83億5000万円)を調達したことで、Hillhouse Capitalを含む投資家からの調達資金総額は10億元(約168億円)を超えた。

シュー氏は同社の収益や評価額については明らかにしなかったが、同社の顧客の95%が年間契約の更新を選択していると述べた。また同社は、中国のNASDAQに相当する上海証券取引所のスターマーケット(Science and Technology Innovation Board、科創板)の「予備的要件」を満たしており、条件が整えば上場する予定だとも。

「同業他社は上場までに7~10年かかります」とシュー氏はいう。

ThreatBookは、2019年にNASDAQへ上場したシリコンバレー発のCrowdStrike(クラウドストライク)と同社を比較しており、企業のファイアウォールの外から内部ネットワークに接続する従業員のノートPCやモバイル端末などのような「エンドポイント」を監視することで脅威を検出する。

ThreatBookも同様に、企業の従業員の端末にインストールされ、脅威を自動的に検出してソリューションを提示するソフトウェア・スイートを有している。

「社内にたくさんのセキュリティカメラを設置するようなものですね」とシュー氏はいう。「しかし重要なのは、問題を発見した後、お客様に何を伝えるかです」。

中国のSaaSプロバイダーは、まだ市場を啓蒙し、企業に支払いを働きかける段階にある。ThreatBookがサービスを提供している3000社のうち、有料なのはわずか300社だけなので、収益化の余地は十分にある。金融機関は年間数百万元(100万元、約1700万円)の支払いに応じるが、テックスタートアップの場合はその数分の1の支払いを望むなど、支出意欲はセクターによっても異なる。

シュー氏は、ThreatBookをグローバルに展開するというビジョンを持っている。同社は2020年に海外進出を計画していたが、新型コロナのパンデミックに道を阻まれた。

「東南アジアや中近東の企業からも問い合わせを頂いています。欧州や北米のように成熟したサイバーセキュリティ企業がある市場でも、当社が活躍する余地があるかもしれません」とシュー氏は語った。「我々が差別化を図ることができれば、既存のセキュリティソリューションがあったとしても、お客様は当社を検討してくれるかもしれません」。

カテゴリー:セキュリティ
タグ:ThreatBook中国資金調達

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

中国へ並行輸入されたゲーム機がグレーマーケットから姿を消す

世界最大のゲーム市場である中国では、コンソールゲーム(家庭用据え置き型ゲーム機)の存在感は相対的に小さく、少なくとも公式発表されている数字では、モバイルゲームやPCゲームと比べて、その収益は長年にわたり微々たるものだった(詳しくは後述)。熱烈なコンソールゲームのファンによるコミュニティは残っているものの、最近は機器やカートリッジの入手が困難になっている。

ゲーマーの投稿をもとにTechCrunchが調べたところによると、淘宝網(タオバオ)のグレーマーケットでビデオゲーム機を販売する業者の一部が今週、販売と出荷を停止している。ここで何が起こっているのかを検証する前に、少し業界の歴史を振り返る必要があるだろう。

2000年、中国では10代の若者のゲーム依存症に対する懸念が高まり、コンソールゲームの販売と輸入が禁止された。それでも輸入されたゲーム機は、一部の熱心なプレイヤーをターゲットにしたグレーマーケットに存在していた。その一方で、PCやモバイルのオンラインゲーム産業は、手頃な価格とゲームの仕組みに組み込まれたソーシャル体験のおかげで繁栄した。

2015年に中国がコンソールゲームに対する規制をようやく解除すると、Sony(ソニー)やMicrosoft(マイクロソフト)などの大手企業はすぐに対応し、現地のパートナーを通じて自社製品の中国語版を発売する。Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)は、それ自体も世界最大のゲーム会社であるTencent(テンセント)との待望の提携により、2019年より中国の販売店に並び始めた。しかし、中国本土版のゲーム機は厳しい規制の対象となっており、ユーザーの選択肢が検閲官の承認を受けた狭い友好的な範囲に限られるため、グレーマーケットの大部分は存続していた。

関連記事:Nintendo SwitchがTencent経由で中国発売へ

というわけで、多くの中国のプレイヤーは、PlayStation(プレイステーション)やXbox(エックスボックス)、Nintendo Switchの輸入版とそのゲームを見つけるため、バザールのような場所に実店舗を構える電器店や、オンラインのマーケットプレイスを利用している。これらの製品は一般的に、国外の正規品を非正規のルートで輸入する並行輸入によって中国に持ち込まれるものだ。そのようなゲームは通常、現地のパブリッシャーでも取得が困難な中国のゲーム認証を取得せずに販売されている。

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淘宝網に出店している大手ゲーム機輸入業者のうち、いくつかの業者が営業を停止している。スクリーンショット:TechCrunch

淘宝網から削除された輸入ゲーム機やゲームの数は不明であり、また、何がきっかけで販売停止になったのか、その理由も明らかになっていない。46万2000人のフォロワーを持つ淘宝網で最大級のコンソールゲーム販売者であるTGBUS(電玩巴士)は、現在商品の掲載数が0件となっている。TechCrunchが質問したところ、カスタマーサービスの担当者は「倉庫で水漏れが発生したため、一時的に出荷を停止している」と答えた。さらに突っ込んで尋ねると、その人物は「電気機器の故障」が原因だと言った。

他の業者は、サービス停止の理由を「特別な理由」とし、回答を濁らせている。「Shanghai Gaming Console Store(上海コンソールゲーム販売店)」を名乗る業者は、淘宝網からの要請で業務を停止したと述べ、それ以上は詳しい説明をしなかった。

淘宝網を運営するAlibaba(アリババ)からのコメントは現時点で得られていない。

今回の出来事は、大規模な商売をしているほとんどのゲーム機販売業者に打撃を与えているようだ。輸入されたカートリッジやゲーム機は、淘宝網の小規模な販売店や、Pinduoduo(拼多多:ピンデュオデュオ)のような他のプラットフォームでは、適切なキーワードで検索すればまだ見つけることができる。

ユーザーの中にはこの動きを、中国がゲーマーのプレイできるものに対する締め付けをさらに強めていると見る向きもある。2020年、Apple(アップル)の中国のApp Store(アップストア)では、中国が公式に許可していないゲームを一掃するため、数千ものゲームが削除された。政治的な理由でゲームが消されることもある。「どうぶつの森」は、香港で最も有名な民主主義活動家の1人がこのゲームを抗議の場として使用した後、淘宝網や拼多多のグレーマーケットストアから撤去された。

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税関職員が定期的に並行貿易を取り締まっていることを指摘するユーザーもいる。並行貿易とは、一般の旅行者を装った商人が商品を運び、輸入税を逃れるというものだ。いずれにせよ、コンソールゲームのグレーマーケットが打撃を受けたのは今回が初めてというわけではない。グレー商品の中には、爆発的に売れる前にこっそりと持ち込まれるものがある。例えば、中国では数週間前から、まだ中国版が発売されていないNintendo Switch専用の新作「Monster Hunter Rise(モンスターハンターライズ)」が大きな関心を集めており、それが平行輸入を促進しているのではないかと見られている。

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:淘宝網(タオバオ)中国グレーマーケット任天堂Nintendo Switch

画像クレジット:VCG/VCG via Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

スマホ事業不振のHuaweiはIoTに活路を見出そうとしている

米国・中国間の貿易摩擦に苦しんでいるHuawei(ファーウェイ)は、中国内外の多くのハードウェアメーカーに対抗することになる、他のスマートデバイスでの機会模索を余儀なくされている。

中国テック大手Huaweiの2020年の売上成長は緩やかなものとなり、わずか3.8%増の8914億元(約15兆435億円)で、純利益は3.2%増の646億元(約1兆895億円)だった。こうした決算内容はHuaweiの予測と一致した、と同社は現地時間3月31日に深圳で開いた年次報告会で述べた。報告会は上場していない企業の内情を垣間見る稀な機会だ。

決算の数字を比較すると、Huaweiの売上高は2019年に19%、2018年に19.5%成長していた。

2020年の減速は主に、米国が核となるチップセットの同社への輸出と消費者にとって重要なGoogleサービスの提供を禁止したのち、中国外でのスマートフォン売上高がスランプに陥ったことだ。しかしこうした困難な状況は、同社が事業を多様化し、スマホ事業の損失を相殺するペースを加速させてきた。

過去2年間、HuaweiはAR / VRヘッドセット、タブレット、ラップトップ、テレビ、スマートウォッチ、スピーカー、ヘッドフォン、車載システムなど多数のスマートデバイスでの取り組みを増やしてきた。

世界中でスマート車両がブームとなっているなか、特に同社の車産業への進出はかなり脚光を浴びた。ロイターはこのほど、Huaweiが独自ブランドの車を生産すると報じている。この件について同社は否定している。今日の年次報告会で同社の輪番会長Ken Hu(ケン・フー)氏は、Huaweiが独自の強みを発揮し、車載オペレーティングシステムやスマートコックピットなど特定の構成要素やサービスを供給するだけだと繰り返した。

Huaweiのコネクテッドプロダクトの基盤はXiaomi(シャオミ)のスマホとOSを中心としたIoT戦略を彷彿とさせる。両社の違いは、Huaweiは通信インフラのサプライヤーでもあるということだ。

英国などいくつかの国で、5G推進計画からHuaweiを除外する動きがあるにもかかわらず、Huaweiの通信部門の2020年売上高は前年と同程度だった。新型コロナウイルスパンデミックが通信事業にとってプラスに作用し、人々が家から働いたり教育を受けたりしたのにともない、ネットワークソリューションに対する世界の需要が高まった、とフー氏は述べた。

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HuaweiのIoT推進では初期の牽引力を示したが、競争は激しい。スマートウォッチが2020年の売上高に主に貢献したもの1つだった、と同社は話した。

グローバルではApple(アップル)がウェアラブル部門のトップで、調査会社IDCによると、Appleの2020年のマーケットシェアは34.1%だった。Huaweiはシェア9.8%で3位につけているが、国内のライバルXiaomiのシェアは11.4%と後塵を拝している。

全体的にHuaweiは2020年に成長を維持するために国内マーケットに大きく依存していた。国別では総売上高の65.5%を中国が占め、前年比15.4%増だった。一方、欧州、中東、アフリカの売上高は12.2%減、中国以外のアジアは8.7%減、北米・南米は24.5%減だった。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Huawei中国決算発表

画像クレジット:Ken Hu, Huawei’s rotating chairman

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

シャオミがEV事業に参入、10年で1.1兆円の投資目標

数週間にわたる噂の後、Xiaomi(シャオミ、小米科技)がEV(電気自動車)事業への参入を正式に認めた。中国のスマートフォンおよびIoT企業である同社は、スマートEV事業を運営するための完全子会社を設立すると、投資家に宛てた告知で中国時間3月30日に発表した。

シャオミはこの子会社に当初100億元(約1700億円)を投入する。今後10年間の投資目標は総額100億ドル(約1.1兆円)だという。シャオミの創業者兼CEOであるLei Jun(レイ・ジュン、雷軍)氏が、この新しいEV事業のCEOを兼務する。

シャオミがこれまでの多くのハードウェアデバイスと同様に、自社ブランドで自動車を販売し、生産はメーカーに委託するのかどうかは、告知からは不明だ。シャオミは以前から、ライトアセットのビジネスモデルを持つ「インターネット企業」を自称してきた。同社のゴールは、価格の安い無数のハードウェア製品を動かすサービスを販売することにより、利益の大部分を得ることだ。

シャオミの担当者によると、今回の告知以上の詳細な情報はないとのこと。

シャオミは、過熱しているEV業界に参入する最新の中国ハイテク企業だ。中国の検索エンジン大手Baidu(百度)は、2021年1月に自動車メーカーのGeely(吉利汽車集団)の協力を得てEVを製造すると発表したばかり。2020年11月には、Alibaba(アリババ)と中国の国有自動車メーカーSAIC Motor(上海汽車集団 )が手を組んでEVを生産すると発表した。配車サービス大手のDidi(ディーディー)とEVメーカーのBYD(比亜迪)も、ライドシェア用のモデルを共同設計している。

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これらのテック巨人たちは、XPeng(小鵬汽車)、Nio(上海蔚来汽車)、Li Auto(理想汽車)など、すでに複数のモデルを発表し、しばしばTeslaと比較される、より専門的なEV新興企業の数々と競合している。EVメーカーは車内エンターテインメントから自律走行まで、さまざまな機能に投資して差別化を図ろうとしている。

シャオミにとって自動車メーカーとしての明らかな強みは、広大な小売ネットワークと国際的なブランド認知度だろう。また、スマートスピーカーや空気清浄機など、同社のスマートデバイスの一部は、セールスポイントとして車に簡単に組み込める。もちろん、真のチャレンジは製造にある。携帯電話の製造に比べ、自動車産業は資本集約的で、長く複雑なサプライチェーンを必要とする。シャオミがそれを成し遂げることができるかどうか、見守っていきたい。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Xiaomi電気自動車中国

画像クレジット:Zhe Ji / Contributor / Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

TuSimpleのIPO申請で明らかになった中国と関係がある自動運転スタートアップのハードル

米国と中国の政府が技術的なデカップリング政策を推進する一方で、民間のテック企業は両国のリソースを活用し続けている。自律走行車の分野では、中国のスタートアップ企業、あるいは中国とのつながりが深いスタートアップ企業が米中両国で事業を事業を展開したり、投資を模索するのはよくあることだ。

しかしこれらの企業が成熟してグローバルに展開するにつれ、中国との関係がより綿密に調査されるようになってきた。

サンディエゴに本社を置く自動運転トラック企業のTuSimpleは、今週NASDAQ(NASDAQ)にIPOを申請したが、その目論見書には、中国の資金源による規制リスクが記載されていた。

関連記事:中国の自動運転トラックスタートアップTuSimpleがIPO申請

米国時間3月1日、対米外国投資委員会(CFIUS:Committee on Foreign Investment in the United States)は、中国最大のマイクロブログプラットフォームSina Weibo(新浪微博)を運営するSina Corporation(新浪公司)の関連会社であるSun Dreamによる投資について、TuSimpleに書面による通知を求めた。Sun DreamはTuSimple社の最大の株主であり、クラスA株式の20%を保有している。WeiboのCEOであるCharles Chao(チャールズ・チャオ)氏とCFOのBonnie Yi Zhang(ボニー・イー・ジャン)氏は、ともにTuSimple社の取締役だ。

米国政府がSun Dreamの投資が同国の国家安全保障を脅かすと判断した場合、同投資家はTuSimpleから投資撤退するダイベストメントを指示される可能性があると、その要請書は指摘している。

WeRide.ai、Pony.ai、AutoXなど、中国に拠点を置く自律走行スタートアップはカリフォルニア州に研究所を置き、米国でのテストを行うための規制当局の許可を得ているが、ほとんどの企業は米国での商業計画を明らかにしていないようだ。

一方TuSimpleは今のところ米国に焦点を当てており、同社のレベル4セミトラックのうち50台は米国で、そして20台は中国で使用されている。

中国の自動運転スタートアップのある幹部は、匿名でTechCrunchにこう語った。「中国と強い繋がりがあることが、彼らの米国に焦点を当てた戦略にとって足かせになり得ます」。

TuSimpleは、IPO前の沈黙期間中であるためコメントを差し控えた。

このような障害は、米国市場(またはその同盟国)を狙う中国系テック企業にとっては目新しいニュースではない。有名な例では、CFIUSはByteDance(バイトダンス)が10億ドルを投じて買収したMusical.lyをTikTok(ティックトック)に統合する際に、国家安全保障に関する調査を開始した。2020年12月の時点では、CFIUSはByteDanceとの間で売却完了に向け「交渉を行っている」とロイターが報じていた

自動運転関連のベンチャー企業は中国との関係を断ち切るためにダイベストメントという道もあるが、Momentaの幹部が指摘したように、グローバルな結びつきが強い業界で短期的にサプライチェーンの独立性を実現するのは、より複雑なことかもしれない。

カテゴリー:モビリティ
タグ:TuSimple新規上場中国

画像クレジット:TuSimple

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

H&Mが新疆ウイグル自治区の綿花不買を理由に中国のアプリから削除される

新疆の綿花産業で強制労働が行われていると主張し、それに対する「深い懸念」を表明した声明を共産党の組織が激しく非難したことを受けて、H&Mは中国の主要なeコマースとサービスのアプリから削除された。消費者がオンラインショッピングに親しんでいる国において、オンライン攻撃はH&Mの収益に劇的な影響を与える可能性がある。

現地時間3月25日の朝「H&M」を検索してみたところ、AlibabaのTaobaoやJD.com、Pinduoduo、MeituanのショップリストアプリDianping、TencentとBaiduの地図アプリなど、中国の主なオンラインプラットフォームでの検索結果はゼロだった。

AlibabaのTaobaoマーケットプレイスで「H&M」を検索しても結果はゼロだった

自社アプリやウェブサイトを中心にオンライン販売を行っている一部の欧米諸国とは異なり、H&Mは、中国でサードパーティーのeコマースプラットフォームのネットワークに流通を利用しており、個別のアプリやウェブサイトに代わっていくつかの「スーパーアプリ」が大部分を占めている。例えば、多くの国際的なブランドは、淘宝網(タオバオ)を通じて独自の公式ストアを運営し、WeChat内で動作するライトアプリを持っている。

中国本土は、2020年のH&Mの売上高で四大市場の1つであり、中国の146都市で445の実店舗を運営していた。

水曜日、ネットキャンペーンに精通していることで知られている党の青年部である共産主義青年同盟はマイクロブログプラットフォーム「Weibo(微博)」に投稿し、H&Mが新疆ウイグル自治区に関する綿産業についてのうわさを流したと非難した。このソーシャルメディアへの投稿はインターネット上で広く怒りを呼び、1日に38万3000回も「いいね」が押され、何万人ものユーザーがH&Mのボイコットを呼びかけた。

2020年の新疆ウイグル自治区に関するH&Mの声明がなぜ復活したのか、中国のインターネット大手がH&Mのオンラインストアやオフライン情報の上場を取り消すよう政府の命令を受けたのかは不明だ。

中国政府は、反テロ対策の一環として、新疆ウイグル自治区での人権侵害の申し立てを繰り返し否定しており、少数民族のイスラム教徒が多数を占める最西端の省「職業教育訓練センター」を運営していると述べている。

関連記事:フェイスブックが中国ハッカーによる偽アカウントでの海外ウイグル人標的の不正行為を摘発

明らかなのは、中国と西側諸国との間の外交的緊張が今週、高まっているということだ。新疆は、他の問題とともに、近年の中国と米国の政治的駆け引きの中心にある。中国のいくつかの国営報道機関は、国内のインターネットプラットフォームによるH&Mの商品の撤去を引用した記事で、H&Mの全国的なボイコットを呼びかけた。

JD.com、Pinduoduo、Tencent、Alibaba、Baiduはこの件についてコメントを避けた。Meituanはすぐに連絡が取れなかった。

綱引き

新疆ウイグル自治区の人権問題をめぐり、英国、カナダ、欧州連合(EU)、米国が中国政府関係者への制裁措置を発表した数日後に、青年団のコメントは発表された。これに対して中国政府は、EUの企業や個人に対する広範な制裁措置を発表。これらの企業や個人は、中国との取引を禁じられている。

H&Mは物議を醸した声明を取り下げたようだ。オンライン上の騒動に対応して、スウェーデンのアパレル大手はWeiboに投稿し「世界中のサプライヤーが持続可能な開発の目標を遵守することを保証する」とし「いかなる政治的姿勢を示すものでもない」と述べている。

さらに「H&Mは常に中国の消費者を尊重しており、中国における長期的な投資と開発にコミットしている」と付け加えた。

持続可能な綿花生産を推進し、Nike、Adidas、IKEAなど多くの多国籍ブランドをメンバーとする「Better Cotton Initiative(ベターコットンイニシアチブ)」をインターネットユーザーがターゲットにするようになったことで、他の外国ブランドもH&Mと同様に注目を集めている。BCIは2020年10月、人権上の懸念を理由に、新疆ウイグル自治区から調達した綿の認可を一時停止すると発表した。米国政府は2020年に、新疆ウイグル自治区の綿花に対する制裁措置を開始している。

カテゴリー:その他
タグ:H&M中国eコマース

画像クレジット:Roman BalandinTASS/Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

フェイスブックが中国ハッカーによる偽アカウントでの海外ウイグル人標的の不正行為を摘発

Facebook(フェイスブック)は米国時間3月24日水曜日、中国を拠点とするハッカー集団がFacebookを利用してウイグル人コミュニティを標的とした不正行為を行っていたことを明らかにし、その対策を発表した。

セキュリティ研究者の間で「Earth Empusa」「Evil Eye」「Poison Carp」などと呼ばれているこのグループは米国、トルコ、シリア、オーストラリア、カナダなどの海外在住者を含む約500人のウイグル人をFacebook上で標的にしていた。このハッカーたちはFacebook上の偽アカウントを使って、活動家やジャーナリストなどの共感を得られる人物を装い、ターゲットをFacebook外の危険なウェブサイトに誘導した。

Facebookのセキュリティチームとサイバー犯罪対策チームは2020年にこの活動を確認し、ハッカー集団への影響を最大化するために脅威を公開することを選択した。

Facebookは、同プラットフォームでのソーシャルエンジニアリングの取り組みは 「パズルの一部」 だとしているが、ハッキンググループの活動のほとんどはオンライン上で行われている。彼らは標的のデバイスにアクセスしようとする試みに焦点を当てており、その中には水飲み場型攻撃、祈り用アプリを提供する偽Androidアプリストア、ウイグル語のキーボードアプリのダウンロードが含まれる。

ダウンロードされたこれらの偽アプリはActionSpyとPluginPhantomという2種類のトロイの木馬型マルウェアを使用して、デバイスに感染した。iOSデバイスでは、Insomniaとして知られるマルウェアを利用した。

Facebookによれば、今回のハッカーがターゲットとしたユーザーの数は比較的少ないものだったが、少数のターゲットをうまく選択することで大きな影響を与えることができると強調している。Facebookのセキュリティポリシー責任者であるNathaniel Gleicher(ナサニエル・グレイチャー)氏は「監視やさまざまな二次的影響を想定することができます」と述べている。

ウイグル人はイスラム教徒が多数を占める少数民族で、中国の新疆ウイグル自治区で強制労働収容所に入れられるなど、中国政府による残虐な弾圧に直面し続けている。

Facebookは、自社で判断する技術的指標がない場合はより広範なセキュリティコミュニティに判断を委ねると述べ、今回の調査結果を中国政府にリンクすることを避けた。研究者たちは、隣接するハッキングキャンペーンは中国政府がすでに国内で支配下に置いているコミュニティの監視を拡大しようとする取り組みだと考えている。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Facebook中国ウイグルハッキング

画像クレジット:NurPhoto / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:塚本直樹 / Twitter

中国自動車メーカーGeelyがTeslaら対抗でラグジュアリーなEVブランド「Zeekr」を立ち上げ

中国の自動車メーカーであるGeely Automobile Holdings(吉利汽車集団)はTesla(テスラ)や他の中国企業によって独占されてきたラグジュアリーな電気自動車(EV)マーケットのシェアを獲得しようと、プレミアムなEVの新ブランドを立ち上げる。

「Zeekr」という新ブランドの車両は親会社のZhejiang Geely Holding Group(浙江吉利控股集団)によって生産される。2021年第3四半期に出荷が始まる見込みだ。

最初にロイターが報じ、そしてGeelyが現地時間3月23日に認めたZeekrの立上げは、同社が中国でTeslaと勝負しようとしていることを示している。Teslaは中国で成功を収めており、直近の四半期決算によると2019年に29億ドル(約3150億円)だった中国での売上高は2020年に倍以上に増え、66億ドル(約7170億円)だった。しかし世界最大のEVマーケットである中国での競争相手はTeslaだけではない。

Zeekrはラグジュアリーなクルマを展開している中国のスタートアップであるLi AutoやNIOと争わなければならない。Geelyは2020年に販売台数が最も多かった中国ブランドで、4四半期連続で首位を維持したが、3月23日に公開された決算発表では2020年の純利益は32%減少した。

Zeekrブランドの車両はオープンソースのEVテクノロジーSustainable Experience Architecture(SEA)を使ってGeely Holdingが製造する。SEAでの航続距離は435マイル(約700km)でスマートコネクティビティオプションも提供すると同社は述べた。Geelyはこのアーキテクチャを傘下の9つのブランドで展開し、他のメーカーに販売する計画を持っている(GeelyはDaimler AGの少数株主であり、Volvo Carsの親会社だ)。

Geely Holdingの創業者Eric Li(エリック・リ)氏は、他の自動車メーカーがこのアーキテクチャーにアクセスできるようにするつもりだ、と声明で述べた。

SEAプラットフォームは、自らをEV生産とテクノロジーの主要ソースと位置づけるGeelyの計画の1つのピースにすぎない。GeelyとVolvo Carsは2021年2月、合併する計画を打ち切ったが、その代わり全ブランドや他のメーカーのEV向けの次世代のハードウェアとソフトウェアを開発する独立した会社を立ち上げると発表した。2社は新たなコラボの下でバッテリーと電動モーターを共同で調達する。

Geely Holdingはまた他メーカーのための生産でも大きな役割を引き受ける準備をしている。Apple(アップル)のメインサプライヤーである中国企業Foxconn Technology Group(フォックスコン・テクノロジー・グループ)と合弁会社を立ち上げる計画は、自動車メーカーの委託生産を狙っている。中国のテック大手Baidu(百度)とEVを製造するための別の会社で提携し、ここでもSEAプラットフォームを活用するとGeelyは述べた。Baiduは自動運転などインテリジェントな運転テクノロジーを開発していて、これは新会社に貢献することになるかもしれないと話した。

ZeekrはGeelyとGeely Holdingが共同所有し、持株比率はGeelyが51%、Geely Holdingが49%で、共同で20億元(約333億円)投資する。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Geely電気自動車Zeekr中国

画像クレジット:GREG BAKER/AFP/Getty Images / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

「TikTok」の親会社ByteDanceはゲーム業界にどう切り込むか

ショート動画アプリ「TikTok」の親会社であるByteDance(バイトダンス)は、ここ数年、広告以外にも収益源を多様化し、数億人のユーザーを収益化する方法を模索している。その中で、ByteDanceはゲームもターゲットとしているが、ゲームといえば中国のインターネット経済において歴史的に「儲かる」ビジネスである。

市場調査会社Newzoo(ニューズー)の調査によれば、中国は世界最大のゲーム市場であり、2020年には408億5000万ドル(約4兆5000億円)の収益を生み出している。米国は369億2000万ドル(約4兆円)で、中国には及ばなかった。

利益が大きい分競争も激しく、ゲーム業界はTencent(テンセント)とNetEase(ネットイース)という2強が長期間市場を支配し、Mihoyo(ミホヨ)やLilith(リリス)のような小さなプレイヤーが躍進しつつある。市場調査会社のAnalysys(アナリシス)の2019年の調査では、Tencentが中国のゲーム市場の半分以上を独占し、NetEaseが約16%、37 Interactive(37インタラクティブ)が約10%を占めており、小規模なライバルたちに残された余地はほぼない。

この中で、ByteDanceは2021年2月、同社のゲーム事業に初めて「Nuversegame」というブランド名を付け、ウェブサイトを開設して邁進している。同社の戦略は、ジャンルを限定しないポートフォリオ、人材の大量採用、実証済みの収益化スキーム、そして国内および海外市場への同時展開である。Kevin Meyer(ケビン・メイヤー)氏は、ByteDanceでの在籍期間は短かったものの、ゲームを含む複数の海外事業を担当した。

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ゲームに関しては「ダビデ」という立場のByteDanceではあるが、「ゴリアテ」に屈する気はないようだ。同社ゲーム部門の幹部の1人であるYan Shou(ヤン・シオウ)氏は、1年前にSNSに投稿した記事の中で次のように書いている。「ゲームはコンテンツビジネスだ。辛抱強く投資を続ければ、独占を打ち破ることができる」。

人材争奪戦

近年、ByteDanceは、BATの元従業員を大量に採用している。BATとは中国でもっとも名の知られた3大ハイテク企業Baidu(バイドゥ)、Alibaba(アリババ)、Tencent(テンセント)の頭文字である。ヤン氏自身も、2015年のByteDance移籍以前は、Tencentで2年以上にわたり戦略を担当していた。変化の激しい中国のハイテク業界において、引き抜きや移籍はよくあることだが、ByteDanceの手厚い待遇は有名だ。将来ByteDanceが上場する際に受け取れるであろう従業員オプションに魅了される技術者も多い。

さらに、AlibabaやTencentは設立から20年以上が経過しており、キャリアアップの余地が限られていることに閉塞感を持つ野心的なスタッフもいるだろう。それに比べて、ByteDanceは設立から9年しか経っていない。北京を拠点とするテクノロジー企業のヘッドハンティング担当者は、ByteDanceはまだ急成長の段階にある、とTechCrunchに話す。

「設立から10年も経過していないというByteDanceの若さと、同社が産み出す新しいビジネスは、こういった技術者が夢を実現するための打ってつけのプラットフォームになる」とヘッドハンターはいう。

ByteDanceはゲーム分野でも積極的に採用活動を行っている。ある関係者によると、2020年のわずか1000人であった同社のゲーム部門の従業員数は、3000人近くまで増加しているという。これらの従業員は北京、上海、杭州、深圳など、中国の主要なハイテク拠点に散らばっており、ByteDance傘下のさまざまなゲームスタジオで仕事をしている。

3000人規模のチームとはどのぐらいの規模だろうか。中国第3位のゲーム会社である37 Interactiveは、2021年1月時点で約4000人のゲームスタッフを擁している(同社幹部談)が、この規模になるまでには10年の歳月を要した。ByteDanceがゲーム事業を模索し始めたのはわずか5年ほど前のことだ。

ByteDanceはこの記事についてコメントを控えている。

ゲームの工場

遅れて参入したメリットもある。Tencentをはじめとする先行企業のゲーム市場への取り組みは、ByteDanceの学習の機会となった。ByteDanceは、手軽なモバイルゲームから、変則的なデザインやテーマを持つインディーズタイトルまで、多様なジャンルを同時に手がけている。市場調査会社Niko Partners(ニコパートナーズ)のゲームアナリストであるDaniel Ahmad(ダニエル・アーマド)氏によれば、この取り組み方こそがByteDanceとTencentの違いである。Tencentは、2000年代にボードゲームやカードゲームに参入した後、徐々に他のジャンルにも進出し、世界最大のゲーム会社となった。

もちろん、最初から多様なポートフォリオを目指すことができるのは、ByteDanceのような資金力のある企業だけだろう。ショート動画アプリ「Douyin」(「TikTok」の中国版)やニュース収集配信サービス「Toutiao」を中心とした広告ビジネスをうまく活用し、70億ドル(約7600億円)以上を自己資本調達してきたByteDanceは、ゲームだけでなく、教育SaaSなどの水平展開にも資金を投入することが可能であった。

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ByteDanceは、他のハイテク企業からの人材の引き抜きに加えて、中小企業を飲み込んで労働力を増強している。公開されている情報によると、2018年以降、同社は少なくとも11社のゲーム会社に投資しているが、そのうち6社は完全買収で、買収した資産や人材は、その後、同社のゲームスタジオに組み込まれている。ByteDanceでは買収による雇用も実績のある手法だ。「Douyin」の立ち上げに貢献したプロダクトマネージャーであるKelly Zhang(ケリー・チャン)氏も、自身の写真共有スタートアップがByteDanceに買収された後に同社に移籍している。

多くのゲーム会社と同様、ByteDanceの収益化スキームは、サードパーティタイトルの配信とオリジナル作品の制作という2つの柱で構成されている。高品質なゲームの開発には時間がかかるが、この収益化スキームにより、ゲーム部門は、自社の作品が金のなる木になることに賭ける一方で、ある程度の収益を得ることができる。カジュアルゲームはレベルアップのタイミングで配信される広告に最適である。複雑なゲームはユーザーのロイヤリティにつながるため、(広告よりも)アプリ内課金で収益を上げる方が自然である。

ByteDanceがライセンスをもつカジュアルゲームの中には、カーレースゲームの「Drift Race」、音楽ゲームの「Yinyue Qiuqiu」、パズルゲームの「Brain Out」など、これまでに中国のiOS無料ゲームのトップ10にランクインしたものがある。これらのコラボレーションはまだ大きな利益を生んでいるわけではないが、ユーザーを引きつけるという点で、同社のトラフィック戦略の実行可能性を証明している。

2019年、ByteDanceは同社のアプリ全体で15億人の月間ユーザーがいると発表した(アプリ間でユーザーが重複することもある)。ByteDanceがゲームをマーケティングする方法の1つは、ユーザーのコンテンツフィードにネイティブ広告を挿入することだ。「動画はインタラクティブで使いやすく、クリックしやすいため、従来の広告よりもはるかに高いコンバージョンを得ることができます」とNiko Partnersのアーマド氏はいう。

広告がユーザーに、スタンドアロンのゲームアプリのダウンロードを促す場合もあるが、DouyinとToutiaoは、WeChatや中国の多くの人気アプリと同様に、プラットフォーム内でサードパーティの「ミニアプリ」をサポートしている。ユーザーはWeChatと同じように、Douyinでもミニゲームをプレイすることができるというわけだ。

月間数億人のユーザーを抱えるByteDanceは、すでにユーザーの嗜好や行動を十分に把握し、どのようなゲームを推奨すればよいかを理解している。理論的には、視聴したり反応したりするユーザーが増えるほど、推奨はより正確になる。

同社のゲーム開発者ハンドブックによると「ByteDanceのアルゴリズムはターゲットを絞った推奨により、ミニゲームをさまざまな形で自動的にユーザーに提示する」「すべてのゲームには、公平かつ平等に、ユーザーに見てもらえるチャンスがある」とのことだ。

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:ByteDance中国

画像クレジット:Games published by ByteDance

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(文:Rita Liao、翻訳:Dragonfly)

中国がアプリによる過剰なユーザーデータ収集を5月から禁止

中国の最高規制機関である国家インターネット情報弁公室、工業情報化部、公安部、国家市場監督管理総局が共同で発表した文書によると、2021年5月1日以降、中国のアプリはユーザーに過剰な個人データの提供を強制できなくなる。

中国では、アプリがユーザーに機密性の高い個人情報の提供を求め、共有を拒否したユーザーはアクセスを拒否されることがよくある。ナビゲーションマップを使用するための位置情報のように正当なものもあるが、モバイル決済を行うための生体認証など不要なものも多い。

TechCrunchで報じたように、中国当局は2020年12月に、さまざまなアプリが収集する権利を持つデータの許容範囲を示した。

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新たな文書によると、人気が高まっている「ミニプログラム」など、あらゆる形態のアプリがこの要件の対象となっている。「ミニプログラム」とは、アプリストアをインストールしなくてもWeChatやAlipayといった包括的なネイティブアプリを通じてアクセスできるライトアプリのことだ。

現在のところ、この文書はガイドラインに過ぎず、規則をどのように施行するか、違反者をどのように処罰するかについては明記されていない。この文書は、データ保護に関して中国が少しずつ前進していることを示しているが、人々の日常生活が急速にデジタル機器と結びついているため、規制当局は規則を更新し続けなければならないだろう。

ここ数カ月の間、中国は、かつて同国が誇っていたテクノロジーの寵児たちを厳しく取り締まっている。中国は「プラットフォーム経済」を抑制するために包括的な独占禁止法を導入し、Ant GroupのIPOは失敗AlibabaとTencentは反トラスト的だと罰金が科されている。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:中国アプリ個人情報データ保護

画像クレジット:Alibaba

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(文:Rita Liao、翻訳:Katsuyuki Yasui)