イベントに行きたい人をつなげる「vivit」、インキュベイトとユナイテッドが出資

アクティビティの予約サービスと言えば、ヤフーと連携するカタリズムの「あそびゅー」や、実は10周年を迎えたそとあそびの「そとあそび」のほか、ウェブ制作会社LIGの子会社が提供する「TRIP」などもスタートしている。

また一方では、旅行やイベントに行きたい人がサイト上に集まり、みんなでイベントを企画したり参加したりするというようなサービスもじわじわと人気を集めている。旅行を中心としたtrippieceの「trippiece」も好調なようだし、クラブイベントや音楽フェスに特化したsameの「BANANA」などもある。

今回紹介するvivitの「vivit」も、オンラインで仲間を集めて、実際にイベントに行くことを目的としたサービスだ。同社は8月21日、インキュベイトファンドとベンチャーユナイテッドを割当先とした約3000万円の第三者割当を実施したことを発表している。

vivitでは、運営側がアウトドアやスポーツ、BBQなど、日帰りで楽しめるやイベントを紹介。ユーザーは興味あるイベントに「いってみたい!」ボタンを押すことで、同じく「いってみたい!」ボタンを押したユーザーとチャットしたり、さらに友人を招待したりして、実際の予定を決めていく。アカウントはFacebookと連携しているため、Facebookの友人がどういったイベントに興味を持っているかも知ることができる。

現状はイベントの企画までの機能しか提供していないが、今後はイベントの運営者と提携し、予約や事前決済といった仕組みを導入していく。将来的にはカスターマーサポートを置く予定もあるそうだ。また現在はSEOとソーシャル経由での集客に注力しているそうで、たしかに「ビッグボード(水圧で空を飛ぶスポーツ)」「デカスラ(東京サマーランドの新アトラクション)」といったワードでも検索結果の上位に表示されている。

vivitはインキュベイトファンドが主催するインキュベーションプログラム「Incubate Camp」第5期の出身。4月にvivitのクローズドベータ版を公開し、現在はオープンベータ版と位置づけている。

このサービス、機能だけでいうとTrippieceを思い浮かべたりしたのだけれども(ただしTrippieceはユーザーがイベントを企画する機能などがある)、vivit代表取締役の水谷寿美氏は想定するユーザー属性やイベントの種類がまったく異なると語る。「知らない人、仲良くないとも楽しめるように日帰りのイベントに限定する。ターゲットにするのは、『バリバリ旅行に行く人』『自分でFacebookのイベントを立ち上げる人』ではなく、『いろんなことに興味はあるけど自分から言えない人』。そんな人の背中を押すようなサービスにしたい」(水谷氏)


フリークアウトとはてな、広告主のブランド毀損防止で協業、はてブのスパム対策活用

フリークアウトは19日、自社開発するDSP「FreakOut」において、広告主のイメージ低下を招くサイトへの広告配信を除外するアドベリフィケーション機能を搭載した。FreakOutを利用する広告主は今後、自らが指定する不適切なサイトに広告が掲載されるのを防げるようになる。サイトを判定するアルゴリズムは、「はてなブックマーク」のスパム対策に使われている機械学習エンジンをもとに、フリークアウトとはてなが共同開発した。アドベリフィケーション経由の売り上げは両社でシェアする。

DSPで広告主のブランドが毀損するケースも

DSP(デマンドサイドプラットフォーム)は、広告主が広告を配信したいユーザー層を定義し、必要な広告枠をRTB(リアルタイム入札)で買えるプラットフォーム。フリークアウトは2010年に国内初のDSPをスタートし、現在の広告主は通信や航空会社、トイレタリーブランドなど約4500アカウントに上る。アドベリフィケーション機能は、ナショナルクライアントと呼ばれる、全国規模で広告・マーケティングを展開する企業が利用することが想定される。

フリークアウトによれば、広告主はFreakOutを通じて国内数千万サイトに広告を配信できるが、その中には自社ブランドを毀損するサイトが紛れ込んでいることもあるのだという。例えば、アダルトサイトや著作権を無視した違法サイトなどだ。FreakOut経由の広告かはわからないが、実際にこうしたサイトで一部上場企業の広告を見ることもある。FreakOutでアドベリフィケーションを導入したところ、全ドメインのうち0.17%がアダルトサイトだったのだという。

広告配信先サイトの内容は事前に審査しているが、対応しきれていないのが現状だ。その理由についてフリークアウトの溝口浩二氏は、「審査通過後にサイト管理者が故意にコンテンツを変えるため」と説明する。「不適切なサイト」の管理者からすれば、審査通過後に違法コンテンツを掲載してアクセス数を増やし、FreakOutやその他のDSPからブロックされるまでに、広告料収入を稼ごうとしているのだろう。

はてなと共同開発したアドベリフィケーション機能「BrandSafe はてな」は、広告主にとって意図していないサイトに広告が掲載されるのを防ぐものだ。広告配信先サイトの内容をリアルタイムに判定し、広告主が指定する不適切なサイトへの広告掲載を抑える。広告主は「アダルト」「違法ダウンロード」「2chまとめ」の中から、広告を配信したくないカテゴリーを選べる。

現時点ではすでに8社の広告主が導入している。その反応を見ると、アダルトや違法ダウンロードだけでなく2chまとめを遮断する広告主が多いのだという。「コンテンツ自体はひどくなくても、そこに出ている広告がアダルトだったり、アフィリエイトで肌の露出の多いフィギュアが出てきて『うっ』と来たりするんですよね」(溝口氏)。

3カテゴリーに絞ったのは「広告主のニーズが最も多かった」ため。今後、ニーズが高まれば「事件・事故に関するニュース記事にクルマの広告を出さない」「酒やタバコに関するページに子供向け商品の広告を出したくない」といった要望にも応えたいという。

フリークアウトは同機能の提供にあわせて、ネット上の違法・有害情報の通報窓口「インターネット・ホットラインセンター」(IHC)とも連携。広告料収入を目的とした違法・有害サイトのURL情報を提供してもらうことで、該当するサイトへの広告配信を自主的に停止する取り組みも始める。

なぜフリークアウトは「はてな」を選んだのか

ところでなぜ、フリークアウトはアドベリフィケーションの共同開発の相手にはてなを選んだのか。

フリークアウトはこれまでも欧米企業が手がけるアドベリフィケーションを試験的に導入していたが、「日本語の壁を超えられなかった」と溝口氏は語る。「例えば、2chまとめ系サイトだと、掲示板独特のネットスラングには対応できない」。そこで目を付けたのが、日本特有のネットカルチャーに強い「はてなブックマーク」(はてブ)のスパム対策技術だったわけだ。

はてブでは、広告・宣伝を目的として、新着エントリーや人気エントリーへの掲載のために行われる不正な行為を「スパム行為」とし、表示制限措置や利用停止措置の対象としている

スパム判定をするにあたっては機械学習エンジンを活用。過去のデータから導き出したルールを、新たに収集したデータに適用することで、そのサイトが不適切かどうかを判定している。はてブのタグやコメント、キーワード、はてなキーワードも考慮して判定するため、日本特有のネットスラングにも最適化されているのが強みなのだという。

はてなというと、はてブやはてなブログなどのコンシューマー向け事業が中心。しかし、最近では、企業のオウンドメディア構築支援「はてなブログMedia」や、ベータ開発中のクラウドサーバー管理ツール「Mackerel」を投入するなど、自社サービス開発で培った技術やノウハウを法人向けにも提供する動きが目立っている。アドベリフィケーション機能もその一環だ。今後はフリークアウト以外のDSPへの技術提供も視野に入れているといい、B2B向け事業が新たな収益の柱として育つのか注目だ。


ビジネスSNSの側面を持ち始めたWantedly、ソーシャル強化の狙い


Facebookのつながりを活用したソーシャルリクルーティングサイト「Wantedly」が19日、ユーザーがフォローする会社や知人の最新動向を一覧できるニュースフィード機能を導入した。ウォンテッドリー代表取締役の仲暁子によれば、最近のWantedlyは、イベントや仕事で会ったユーザー同士がつながったり、企業が自社ブランディングに活用するなど、求人以外の使われ方も目立ってきているという。Facebookライクなニュースフィード機能をリリースすることで、ユーザーと企業の距離感をさらに近づける狙いがあるようだ。

Wantedlyの月間ユーザーは約40万人に上り、1日あたり100組の知人の新しいつながりが生まれているのだという。ニュースフィードではこうした「仕事でつながった知人」の情報を一覧できるようになる。ニュースフィードで受け取れるのは、フォロー中の会社の投稿や知人の新しいつながり、知人の新しい紹介文(mixiの他己紹介的なメッセージ)、知人が書いた新しい紹介文、知人の応援している求人募集。まずはウェブ版から提供を開始し、順次モバイルにも対応していく。

ニュースフィードに先立ちウォンテッドリーは7月28日、求人企業が社内の活動や告知を投稿できる「会社フィード」機能をリリースした。Facebookのいいね!に近い機能だが、求人企業は自社をフォローしたユーザーのプロフィールを閲覧できる点が異なり、潜在的な採用候補者を抱えることができる。ユーザーにとっては、気になる求人企業を「フォロー」することで、Wantedlyの募集要項だけでは伝わりにくい会社の様子がわかるのがメリット。そのタイミングで仕事を探していなくても、フォローした企業が新たに求人募集した際にはプッシュ通知を受け取れるのも利点だ。

ビジネスSNSとしての側面を持ち始めたWantedlyだが、ニュースフィードや会社フィードといったソーシャル機能を強化する狙いは、「ユーザーが求人にエントリーする際の心理的なハードルを下げることにある」。というのも、ユーザーにとってWantedlyは、採用に至るまでに若干遠回りなサービスであるからだ。

ユーザーが求人企業にアプローチするには、企業のページの「話を聞きに行きたい」ボタンを押してエントリーした上で、企業に興味を持ってもらえた場合にオフィスに招待してもらう必要がある。(ユーザーのプロフィールを見た求人企業からスカウトのメールが届く場合もある)。さらに言うと、Wantedlyは他の求人サイトと異なり、報酬の記載欄が存在しない。条件面ではなく、やりがいや理念で仕事をマッチングすることを重視しているためだ。求人ページには、どんな人材を募集しているのかは事細かく紹介されているものの、待遇面は最終段階で詰めていく。

しかし、会社フィードで「会社をフォロー」するという選択肢ができたことで、ユーザーは気になる会社を気軽にウォッチできるようになったと、仲は語る。「今まではエントリーする人にとってハードルが高かったかもしれませんが、会社をフォローするだけなら心理的な負担は軽くなる。ユーザーとしてはフォローした後、その会社に興味を持てばエントリーすればいい」。


初期Gunosyライクなエンタメ特化型キュレーションアプリ「KOLA」

リリース当初の「Gunosy」は、自分好みのニュースが集まることをセールスポイントにしていたが、自分がフォローしたアーティストのニュースや動画が毎日届くキュレーションアプリ「KOLA」(コーラ)はそのエンタメ版のようなアプリだ。18日にバージョンアップしてレコメンデーションエンジンを搭載し、「ちょっと驚きのあるアーティスト」を推薦するようになった。その精度はアプリを使い込むほどに高まるのだという。KOLAは2014年1月、リクルート内の新規事業コンテストの一環でベータ版が公開された。好評だったことから継続開発し、このたび正式版のリリースとなった。現時点ではiPhoneアプリのみだが、Android版とiPad版も順次公開する。

レコメンデーションエンジンは、アプリで過去に閲覧したニュースや、自分と同じアーティストをフォローしている別のユーザーのフォロー情報を参考にして、オススメのアーティストのニュースを届ける。当然、似たような嗜好のユーザー同士であれば分かりやすいレコメンドになるが、「少し遠いけどもしかしたら好きかも」といったアーティストがオススメされる感じに近いのだろう。具体的には次のようなイメージだ。

KOLAは自分がフォローしているアーティストのニュースや動画を届けるタイムラインに加えて、ユーザー全体に人気のある「話題のニュース」も配信している。話題のニュースのコンテンツ自体は全ユーザーで同じだが、ユーザーの興味がありそうなニュースは拡大表示されるようなUIとなっている。例えば、ももいろクローバーZをフォロー中のユーザーには、ファン層が近い「でんぱ組.inc」のニュースを拡大表示している。

レコメンドエンジン以外でベータ版からアップデートした要素としては、コンテンツ配信の対象となる芸能人が、当初の邦楽アーティスト中心の約1500組から、洋楽アーティストやタレントを含む約10万組に拡大。これに伴い、コンテンツのニュースソースも5媒体から15媒体に増えた。ニュースは「ナタリー」や「Barks」などのエンタメサイトが含まれている。

現時点でマネタイズは考えていないが、年内にもネイティブ広告を導入するという。


グリー通期決算はヒット作不足で減収減益–今期はネイティブシフトし、新規事業も強化

グリーは8月13日、2014年6月期通期決算を発表した。売上高は1255億9800万円(前期比17.5%減)、営業利益は350億700万円(同28.0%減)、経常利益は360億5600万円(同32.3%減)、純利益は173億4700万円(同23.0%減)となった。

2014年度には早期退職による人員整理を実施してコスト削減や構造改革を進めた同社。フィーチャーフォン向けゲームの売上が減衰する一方で、スマートフォン向けの新規ヒットタイトルが思うように出ず、2期連続での減収減益となった。

2015年6月期には、これまで子会社を含めて300人体制だったネイティブゲームの開発体制を強化。現在非正規雇用を含めて1300人いるウェブゲームの開発者を教育し、年度内にネイティブアプリ1000人、ウェブ300人の開発体制を作るという。

ネイティブゲームの開発を300人から1000人に

グリー取締役執行役員の荒木英士氏は、同日開催の決算説明会において、これまでのネイティブゲーム不調の理由について、「打率向上(開発力強化、開発プロセスの改善)×打席数増加(開発人数やライン数の増加)が重要だが、ネイティブゲーム(をやる)と言い始めた頃には打率を上げる取り組みが十分でなかった」と説明。これを反省する形で1年かけて150人規模のネイティブゲーム専門チームを立ち上げ、今回発表した開発人員大幅強化に踏み切った。代表取締役社長の田中良和氏も「開発体制の強化を続けてきて、その結果がやっと出てきた。『これは行ける』と思っており踏み込んでいく」と語る。同社は2014年第4四半期の売上高266億円をボトムに売上の回復も期待する。

パブリッシング事業についても強化する。国内外のグリーの開発拠点や有力パブリッシャーとの連携により、クロスボーダー、クロスプラットフォームなゲームタイトルの配信を進める。

新規事業や投資も続々

今後は新規事業も強化していく。今春以降、ブランド品買取の「uttoku」、ホテルの直前予約サービス「Tonight」をはじめとして、複数の新サービスを提供。さらにはスマートニュースへの出資などを実施している(グリー取締役 執行役員常務の青柳直樹氏は、7月に福岡市で開催されたイベント「B Dash Camp」にて、1年で100億円の投資を実行すると発言している)。

田中氏は「スマートフォン」「シェアリングエコノミー」「既存のサービス、マーケットを変えていくようなもの」という3つのキーワードで注力分野について説明。青柳氏も、「投資も含めて一気呵成に新しいサービスを提供していく」と語った。なお新規事業については、TechCrunch Japanでは荒木氏へのインタビューを実施している。その詳細は近日中に紹介する予定だ。蛇足だが、決算説明会の資料でTonightは紹介されていたのだが、ラブホテル専用の直前予約サービス「Tonight for Two」は紹介されていなかった。それ以降に発表されたサービスは紹介されていたにも関わらず、だ。

説明会の質疑応答では、記者から「グリーはプラットフォーマーからネイティブゲームのソフトメーカーになるのか」という質問が飛んだ。GREEプラットフォームを中心とするウェブゲームの売上はまだ大きい(2014年度で1252億コイン中759億コイン)ものの減少傾向にあるし、同社はネイティブゲームの開発者を300人から1000人に増やすとしている。これに対して青柳氏は、「ウェブとネイティブで明確にポジショニングや戦略を変えている。引き続きウェブはプラットフォーム。ネイティブについてはデベロッパーであり、パブリッシャーとしてプラットフォーマーと協力していく」と回答した。

説明会で触れられなかった役員人事

ところで気になったのは、同日発表された役員人事だ。9月に開催予定の株主総会で、田中氏は代表取締役社長から代表取締役会長兼社長に、取締役執行役員副社長の山岸広太郎氏は取締役副会長になるという。

この点について説明会では何も語られなかった(かつ質疑の時間が限られていた)ので同社広報に尋ねたところ「ブランディングや業界内でのプレゼンス向上のために対外活動を強化するため会長職を設置する。また、田中の業務を補佐するために、共同創業者である山岸が副会長に就任する」との回答を得た。


クラウドソーシングの基盤をオープン化するランサーズの狙い、そして課題

既報のとおりクラウドソーシングサービス「Lancers」を手がけるランサーズが8月12日に新事業戦略発表会を開催した。この発表会でランサーズは、2014年第1四半期(4-6月期)の流通総額が49億円、契約金額が4億5000万円、さらに会員数は36万6000人、クライアント社数は9万1000社と実績を公開した。また同時に、パートナー企業が同社のクラウドソーシングサービスのプラットフォームを利用できるようになる新サービス「Lancers Open Platform」を発表した。

Lancers Open Platformでは、ランサーズが保有する36万6000人(2014年8月時点)の会員データを外部のパートナー企業に公開する。パートナー企業はランサーズの会員をディレクションして、独自にクラウドソーシングを活用したサービスを提供できる。

当初はイノーバ、サイバーバズ、ByThink、サムライト、KoLabo International、八楽、BIJIN&Co.、LOCUS、インフォテリア、ファストメディア、デジタルステージ、オルトプラス、サテライトプラスの計13社がパートナーとなり、コンテンツライティングや翻訳、動画制作といった事業を展開する。

またパートナーのうちサイバーバスやBIJIN&Co.、KoLabo Internationalなどは、自社が抱える会員に対して、ランサーズ経由での発注ができるようなスキームも作るとしている。

ランサーズでは2014年内に100社までパートナーを拡大する予定。また2015年以降にはパートナー数の制限を取り払い、すべての企業にAPIを提供するとしている。

ランサーズ代表取締役社長の秋好陽介氏は、2008年にスタートしたLancersは日本初のクラウドソーシングサービスであると説明(追記 8月13日11時15分:記事公開後に「サイトエンジン(当時はアルカーナが運営)のアポロンのほうがサービスとしては先ではないか?」というツッコミが入った。ランサーズは2008年12月、アポロンは2008年9月の開始だ。ただしアポロンはすでにサービスを停止している。ちなみにKAIZEN Platform CEOの須藤憲司氏がリクルート在籍時に手がけていたC-teamも2008年9月の開始なので、厳密には「サービスが現在も提供されており、かつさまざまな仕事に対応するクラウドソーシングのプラットフォーム」という意味では日本初ということになる)。登録するユーザーがチームを組むことで大型案件にも対応する「Lancers マイチーム」を2013年末から提供しているが、現在「(月額で)500%成長」と好調ぶりをアピールした。

ランサーズの期待、そして課題

秋好氏は自社の好調ぶりを語ったが、クラウドソーシング市場全体の成長も間違いないものだろう。説明会でも、矢野経済研究所の資料をもとに「2018年には1800億円超の市場規模に成長する」という予想が紹介された。だがランサーズに課題がないわけではない。

秋好氏によると、直近の月額契約金額は2億円を超える見込みとのことだが、流通金額(仕事の案件総額。4-6月で49億円)に対する契約金額(実際の成約金額。4-6月で4.5億円)は決して高いとは言えない。

説明会ではその点について記者からの質問がなされており、オープン化の詳細を説明した取締役COO事業開発部長の足立和久氏も、課題として認識している旨を答えている。ただこれはLancersに限らず、オンラインで要件定義からディレクションまでを完結するクラウドソーシングサービスそのものの課題でもある。今回のオープン化で提携企業がきっちりとディレクションに入るのであれば、解決できることもあるはずだ。

また社外を見てみると、競合と言われるクラウドワークスも急速に成長している。直近ではリクルートグループとの資本業務提携を発表した同社だが、流通総額(ややこしいのだけれど、クラウドワークスの言うところの流通総額とは実際の成約金額のことだ)は年間20億円規模とも5月に報じられている。僕が直近に複数の関係者から聞いたところでは、すでに月額の成約金額ベースでランサーズとほぼ同等だという話も聞く。

秋好氏は説明会で「2008年からビジョンは変わらない。時間と場所にとらわれない新しい働き方をつくる」と語った。ランサーズでは、Lancersを2020年に1000万人が利用するプラットフォームに成長させるという目標を掲げている。


ランサーズ、2014年第1四半期の契約金額は4.5億円

クラウドソーシングサービスのランサーズが8月12日に自社の戦略説明会を開催した。同社はその中でクラウドソーシングのプラットフォームをオープン化する「Lancers Open Platform」を発表した。
プラットフォームの詳細は後ほど紹介するとして、同社が公開した数字をまず紹介したい。
同社の2014年第1四半期(4-6月期)の流通総額は49億円、契約金額(実際に発注者と受注者との間で仕事が成約した金額)は4億5000万円だという。
同社が契約金額を公式に発表したのは今回が初めて。直近では月額2億円規模になる見込みだそうだ。また会員数は36万6000人、クライアント企業数は9万1000社となる。


RISING EXPO 2014優勝のスペースマーケット、今後はパートナーシップを強化

RISING EXPOのファイナリスト。前列中央がスペースマーケット代表取締役の重松大輔氏

サイバーエージェント・ベンチャーズ(CAV)が8月8日にイベント「RISING EXPO 2014 in Japan」を開催した。

このイベントでは、事前審査を勝ち抜いてきたスタートアップが、資金調達や事業提携を目指し、国内外のベンチャーキャピタルや大手事業会社の新規事業担当者を中心としたオーディエンスの前でプレゼンテーションを繰り広げる。

RISING EXPOは2012年から開催されており、2012年はコイニー、2013年はモイがそれぞれ優勝。その後両者は大規模な資金調達を実現するに至っている。また2014年には日本のほか、CAVが拠点を持つ東南アジア(シンガポール、インドネシアが中心)、韓国、中国の4地域でイベントを開催している。

今回登壇したのは合計15のスタートアップだが、見事優勝を勝ち取ったのは貸しスペースのマッチングサービス「スペースマーケット」を展開するスペースマーケットとなった。2位には鮮魚流通サービスを展開する八面六臂、3位にはインドネシアで女性向けアパレルのフラッシュマーケティングサービスを展開するVIP Plazaが入賞した。

スペースマーケットは4月のローンチ時にも紹介しているが、企業の持つ遊休スペースや利用時間外のスペースを、ミーティングや株主総会、研修、イベントなどで使いたい人に貸し出すためのマーケットプレイスだ。

イベント全部を見られなかったこともあって、イベント終了後に改めてスペースマーケット代表取締役 CEOの重松大輔氏に話を聞いたのだけれども、現在利用できるスペースはスタート時の4倍となる400スペース。利用時間外、遊休スペースを活用できるとあって、スペース管理者への営業も順調だという。

また重松氏の叔母が運営する東京・表参道のギャラリーがスペースマーケットに登録したところ、本来のギャラリーとしての利用以外に問い合わせ8件、成約3件、見積総額280万円と、それなりの実績を出しているそうだ。サービス全体での見積総額は1億円とのことだが、実績に関しては「まだまだこれから」(重松氏)とのことだ。

スペースマーケットでは今後、各種事業者とのアライアンスにも注力していく。例えば旅行代理店と組んで合宿プランを用意したり、ケータリング運営会社や研修運営会社と組んだサービス展開も予定しているそうだ。

RISING EXPOは応募条件に「1億円以上の資金調達を検討していること」という項目があるのだけれど、すでに同社も資金調達に向けて準備中とのことだ。

なお、今回のファイナリストは以下の通り。詳細はRISING EXPOのウェブサイトでも確認できる。

PurpleCow

iCARE

スペースマーケット

Pocket Supernova

ウタゴエ

オリフラム

グライダーアソシエイツ

トイロ

八面六臂

カブク

iCook.tw

必趣旅行

Tunedra

VIP Plaza

MatchMove Global


縁の下の力持ちでいい–DeNA原田氏が描くベンチャー投資戦略

ソーシャルゲームのプラットフォーマーとして君臨していたディー・エヌ・エー(DeNA)。2013年3月期までは好調な売上を達成した同社だが、直近の決算発表ではゲーム事業の売上減が続いている。だがそれを甘んじて受け入れる同社ではない。急ピッチでゲームの次の柱となる事業を模索している。8月6日の決算でも、新事業や投資についての説明があった。

同社では遺伝子検査の「MYCODE」や電子コミックの「マンガボックス」、動画ストリーミングの「SHOWROOM」といった事業を展開。また一方では、事業シナジーを狙ったベンチャー投資にも積極的な姿勢を見せている。2014年1月には社内に戦略投資推進室を設置。その動きをさらに加速させている。

DeNAのコーポレートサイトで開示しているのはゲーム動画共有プラットフォームを手がける米Kamcordやカップル向けアプリ「Between」を開発する韓国VCNCだけだが、クラウドソーシングサービス「Any+Times」のエニタイムズ、中高生向けIT教育のライフイズテック、駐車場の持ち主と一時利用者のマッチングサービス「あきっぱ」を手がけるギャラクシーエージェンシー、鮮魚流通サービス「八面六臂」の八面六臂、バイラルメディア「CuRAZY」のLAUGH TECHなどさまざまなスタートアップに出資しているのが分かる。

同社の投資事業について、元ミクシィ取締役であり現在DeNA戦略投資推進室 室長を務める原田明典氏に聞いた。

–改めてDeNAの投資スタンスを教えて下さい。

原田氏(以下敬省略):戦略投資なので、事業シナジーがベースになります。ですがDeNAもある意味ではまだまだベンチャー。次のコアとなる新事業を作り続けています。

そのため、戦略投資といってもゲーム事業とのシナジーだけを考えてやるわけではありません。ヘルスケアやマンガなどの領域でも投資をやっていきます。基本的には「ネットかつコンシューマー向けのモノ全部」です。マイナー投資をやる場合もあれば、マジョリティーを取る場合もあります。ケースバイケースです。

立ち上げをサポートするような投資もやりますし、ユーザー規模がある程度大きくなって、DeNAでサポートできることが見えてきたものにも投資します。VCNCやKamcordのように、すでに比較的ユーザーも多くなっているサービスのビジネスをどう成長させるかということも支援しています。

DeNAでは自社でもさまざまな分野の新事業を手がけています。そこ(新事業の方針)に乗っ取ったサービスであればM&Aもあり得ると思っています。ただし、M&Aに関しては、戦略投資推進室を設置した1月からの実績は今のところありません。

–投資する事業領域についてはどうお考えですか。

原田:内部的にはいろいろと(目標を)持っているのですが、詳細は社外に公表していません。大きくはプラットフォームやコミュニケーション、リアル産業変革という領域になります。

こう言ってしまうと「何でもアリ」というように聞こえてしまうかも知れませんが、モバイルやスマートフォンの登場によってチェンジするもの、FacebookやTwitterなどソーシャルメディアの普及後だからこそ成立するバリューに投資したいと考えています。

例えばPinterestやInstagramといった画像SNSはまだ日本ではそこまで普及していません。ここで海外で流行しているのと同様のサービスを持ってきてもはやりません。スマートフォンがはやっていないときにメッセージングサービスを持ってきても成功は難しい。環境の変化を見て、今から旬になるものを考えています。それで今の旬が何かというのは今は話せないのですが。

–ポートフォリオは一部しか公開していません。これまでの投資件数や投資額について教えて下さい。

原田:契約、入金前の段階の会社も含めて国内外で20〜30社というところです。ほぼ毎週ペースで投資の意思決定を実施しています。投資先が公開せず、DeNAの業績への影響が軽微なものについては、ステルスで(発表せずに)投資しています。前述の通り規模感はいろいろあるので、小さい金額であれば数カ月のデューデリジェンスをして……というのではなく、素早く関係構築するようにしています。投資額はアーリーステージで1000万円程度からです。大きい案件になると当然交渉もありますので、今後に期待頂ければと思います。

ベンチャー投資で重要なのは起業家のマインドです。我々は事業とチームの相性がよければ投資したいと思いますが、一方で投資を受ける側がファイナンスについてどう考えているかというとさまざまなケースがあります。投資についても今日明日で考え方が変わることがあります。なので先方の状況に合わせていかに対応できるか、柔軟さを維持できるようにしています。M&Aも同じです。ジャンルによってはスタートアップとしてやるより、(M&Aして)マスプロモーションやマーケティングで勝負する方がいいこともあります。

最近はスタートアップがマスに出て勝負するまでのリードタイムが短くなっている傾向にありますし、そういうところでバトンタッチ先を探している場合もあります。DeNAには社内のリソースもありますし、グロースステージの支援をするのは得意です。

–投資先がVCではなくDeNAに資金を求める理由をどうお考えですか。

原田:海外のプレーヤーは分かりやすいですね。彼らは日本やアジアに参入したいというニーズがあります。先日もKamcordは国内でゲームデベロッパー向けに勉強会を開催しましたが、資料1つとっても(自分たちだけで)日本向けに作るのは難しい。またBetweenのVCNCも国内のマーケットを分からないところがありました。例えばデザイン1つとっても、韓国は「かわいい系」でシリコンバレーは「クール系」が主流。日本はその中間といった国ごとのトーンがあります。そこでUIやデザインのトーンをチューニングするお手伝いなどもしています。

自社の新事業であるマンガボックスやMYCODEは、初期投資も大きく、スタートアップとは違う戦い方をしています。同様にこれまでプロダクトで勝負してきて、(マーケティングなどで)ぐっとスケールするときにお声がけ頂けると我々も支援しやすいと思っています。

一方で「これから起業する」という方もいます。そういう場合、インキュベイトファンドや川田さん(DeNA創業者の川田尚吾氏でエンジェル投資家)などのインキュベーターを紹介して、共同で投資することが多いです。例えばですが、創業期のオフィスを選ぶ場合であっても、「渋谷駅から南東50mくらい、築30年の物件の坪単価」といった具体的な情報を彼らは理解してています。

キャリアなんかもグロースステージの支援をすると言っていますが、私もキャリアに居た経験から(筆者注:原田氏はNTTの出身だ)すると、ネットベンチャーに対してキャリアができることは限られてきています。2005年頃にはもう公式サイトからのリンク、i-modeの規制緩和といったことしかできなくなっていました。あとはいかに料金を下げるかでしょうか。キャリアが手伝えることは世界的に減ってきています。なので、こういう(DeNAのような)クラスのネット企業が支援すれば、かつてのキャリアのように貢献できることがあるのではないでしょうか。

また、どれだけ「縁の下(の力持ち)」になるかがポイントになると思っています。DeNAが投資することがマイナスにならないように考えて、あまり前に出ないようにしています。例ですが、(ジャニーズ事務所の創業者である)ジャニー喜多川さんなどはメディアには出ず、徹底してタレントを輝かせていますよね。私も表に出てパフォーマンスをするのは違うと思っていますし、得意ではありません。

タレントプロダクションの話をしたので続けますが、実はプロダクションに学ぶことはいろいろあります。例えば楽曲提供1つとっても「このチームだからこのプロダクトだった」ということをよく考えていますよね。Snapchatだってスタンフォードの学生がやっていなければここまではやらなかったのではないでしょうか。私が「週末起業で作りました」といって提供していたら、「サラリーマンのチャットなんて使いたくない」となっていたかも知れません。どういうタレントがどういう事業をやるかを考えるのは重要ですよね。

–DeNAではどういう起業家やチームを求めているのでしょうか。

原田:人と事業との組み合わせで投資をします。日本にない事業、フロンティアタイプの事業であれば、右脳的なセンスというか直感的なセンスが必要で、エグゼキューション(実行、実現)力はその次です。

一方でそこそこ市場が見えていて、フォロワー戦略でも勝てる、実行力勝負をするという場合、エグゼキューション力が大事になります。そうなるとリードしている人と事業の相性、事業のフェーズというところを見ます。

例えばGunosyの木村さん(木村新司氏)やFablicの堀井さん(堀井翔太氏)、笠原さん(ミクシィ創業者の笠原健治氏)などもそうですし、DeNAの投資先で言うとVCNCのジェウク(パク・ジェウク氏)は学習力と実行力があります。プロダクトファーストではありますが、カカオトークなど競合サービスからもよく学習しています。このあとはマーケティング勝負です。スタートアップにはプロダクト勝負でいけるフェーズと、(競合が追いついてきて)プロダクト勝負ではなくマーケティング勝負になるフェーズがあります。ここで彼らがギアチェンジできれば、チームとして面白くなるでしょう。

–投資している地域について教えて下さい。

原田:(日本のほかは)ベイエリアが中心になります。USでの投資には、リサーチの目的もあります。単純にグロースしている会社をM&Aすると1、2ビリオンドルになるので、“ヘビー級の勝負”をするのはこれからですね。

米国を担当するのは、元カカクコムの安田(安田幹広氏)です。実は守安(DeNA代表取締役社長の守安功氏)と安田と私の元COOトリオで投資事業をやっています(筆者注:守安氏はDeNA、安田氏はカカクコム、原田氏はミクシィでそれぞれCOOを務めていた時期があった)。投資対象としては、自分たちで作れない、かなわないというようなサービスを見ています。安田はコマースが得意ですし、ソーシャルであれば僕、ゲームだと守安というように分担しています。

–投資は別として、原田さんが一番興味を持っているテーマを教えて下さい。

原田:シェア、シェアリングエコノミーです。地球の資源は有限で、それをなるべく共有化するものが一番興味あります。

コミュニケーションサービスをやっている中でシェアという概念に出会いました。ITよりもっとリアルな——既存の産業の中で——共有によって変わっていくものごとに興味を持っています。

最近ではIoTというテーマもよく挙がりますが、私は(世の中と)少し考えが違っていて、「いかにモノを最小化にとどめるか」ということこそがIoTなのだと思っています。専用機を増やすのではなくて、「これだけ最低限あればいいよね」というものを提供するということです。

IoTのバックボーンにIoL(Internet of Legacy)という考えがあると思っています。レガシー産業の専用機なんかもう必要ないのではないでしょうか。例えば駐車場で(発券したり、車をロックするような)専用機は必要ありません。投資先のあきっぱのようなサービスがあればいいでしょう。リクルートやSquareが手がけるレジサービスもPOSや専用機を必要としません。彼らはハードウェアをミニマイズしています。


「色で服を選ぶ」ニーズはあるか? ファッションECサイト「IROYA」が資金調達

洋服を選ぶ基準はブランドやデザイン、価格などさまざまだが、「IROYA(イロヤ)」は毎月設定する「色」に応じて、国内外の有名ブランド品から1点モノの古着までを販売するECサイトだ。東京・渋谷にはリアル店舗も構えていて、例えば「黄」の月には黄色いアイテムだけが並ぶ。ECサイトと店舗はデータベース連携していて、ユーザーは1点モノであってもどちらからも購入できるようになっている。

ファッションECといえばブランドやカテゴリー、検索で商品を探すものがほとんどだが、果たして、色で服を選ぶニーズはあるのか? この点についてIROYA代表取締役の大野敬太氏は、「色は購入決定のすべての要因にはならないが、ブランドを知らなかったり、気分で商品を買う人のタッチポイント(入り口)になる」と説明する。会員数は非公表だが、毎月のECサイトや店舗での購入リピート率は「1〜2割」といい、これまでの流通総額は「数千万円程度」に上る。

8月11日には、金額は非公表ながらも、ニッセイ・キャピタルに対する第三者割当増資を実施したことを発表した。これに先立ち6月には、はてなやバイドゥ、DeNAなどでエンジニアを務めていた水野貴明氏を取締役兼開発統括担当として、auのINFOBARのUIを設計したことで知られる奥田透也氏を社外取締役兼クリエイティブ統括担当として迎えるなど、チーム強化を図っている。

今後は、ユーザーが頻繁に閲覧する商品の色に合わせたコーディネートを提案するアプリを投入し、売上拡大を図る。IROYAが扱うアイテムはすべてRGBデータがタグ付けされていて、「赤寄りのオレンジ」や「ピンクがかった赤」などの色による精密なソートが可能となっている。コーディネート機能では、白のトップスに関しては「ピンクがかった赤」よりも「赤寄りのオレンジ」が似合うといった「左脳的なアプローチ」で提案するとともに、自社のスタイリストによるチェックで精度を上げていくという。


ミクシィとスマートニュースがネイティブ広告ネットワークで提携、mixiの広告枠を独占提供へ

既報の通り、スマートニュースが総額36億円の資金調達を実施した。出資元の1社であるミクシィの森田仁基社長は8日、決算説明会でスマートニュースと広告分野で業務提携を締結したと発表。スマートニュースが2014年12月に開始するネイティブ広告ネットワーク「スマートアド(仮称)」に対して、SNS「mixi」内に配信するネイティブ広告枠を独占提供することを明らかにした。これによりスマートニュースがスマートアドで獲得した広告主の広告が、mixi内のネイティブ広告枠に配信されることになる。

また、同社取締役の川崎裕一氏が8月11日付けで、スマートニュースのシニア・ヴァイス・プレジデント/執行役員広告事業開発担当に就任し、スマートアドの事業開発を担当することも発表された。川崎氏はスマートアドの広告配信先となる媒体の獲得や、mixiとのサービスのつなぎ込みを手がけていくという。スマートアドはミクシィの新規事業としての位置付けでもあり、mixi以外の媒体に配信するスマートアド経由の広告の売り上げは、両社でシェアすることとなる。


スマートニュースがグリー、Atomico、ミクシィなどから約36億円の資金調達

ニュースリーダーアプリ「SmartNews」を手がけるスマートニュースは8月8日、グリー、外資系ベンチャーキャピタルのAtomicoをリードインベスターとした総額約36億円の資金調達を実施したことを明らかにした。出資比率などは非公開。引受先はグリーとAtomicoのほか、ミクシィ、グロービス・キャピタル・パートナーズ、エンジェル投資家のWilliam Lohse氏(米Ziff-Davis Publishing元President)、川田尚吾氏(ディー・エヌ・エー共同創業者)、その他となっている。

ニュースリーダーアプリと言えば、「Gunosy」を提供するグノシーが、直近(3月、6月)にKDDIなどから合計24億円の資金調達を実施したことを明らかにしており、テレビCMを含めた大々的なマーケティングを展開。テレビCMによると、現在450万ダウンロードを突破しているという。またグライダーアソシエイツの「Antenna」もテレビCMや交通広告を展開している。それ以外にも、LINEの「LINE NEWS」やユーザベースの「NewsPicks」、JX通信社の「Vingow」などさまざまなサービスが提供されており、その覇権争いも激化している。

スマートニュースも7月末に400万ダウンロードという実績を発表しており、8月からはテレビCMを展開している。広告代理店関係者から6月に「資金調達すればすぐにもテレビCMを作成することになるだろう」といった話を聞いていたし、7月には複数の関係者から「すでに一部の資金が着金して、テレビCMの制作に入った」という噂も聞くことがあった。スマートニュースはバリュエーション(評価額)を公開していないが、200億円超のバリュエーションで資金調達を進めていたとの噂もある。

AtomicoはSkype創業者であるニクラス・ゼンストロームが手がけるベンチャーキャピタル。日本拠点では、元Skype日本代表の岩田真一氏が投資や投資先のビジネスマッチングなどを手がけている。ソフトバンクとガンホー・オンライン・エンターテイメントによるフィンランドのゲーム開発会社Supercellの買収のアレンジなども手がけている。この出資をきっかけに世界進出を進める。またグリーとはゲーム等の事業で、ミクシィとはネイティブ広告ネットワーク分野での業務提携を行うとしている。かつては国産SNSの競合とも言われたグリーとミクシィが1社に出資するのは、芸者東京エンターテインメント以来となるはずだ。

なお、スマートニュース創業メンバーであり、取締役を務めていた鈴木健氏が6月18日付けで共同代表に就任している。TechCrunchではこのあと鈴木氏らスマートニュースのメンバーに取材をする予定だ。


クラウドワークスがリクルートを割当先とした第三者割当増資–理由は資金ニーズより事業シナジー

クラウドソーシングサービス「クラウドワークス」を運営するクラウドワークスは8月8日、リクルートホールディングスの投資子会社である合同会社RSPファンド5号を割当先とする第三者割当増資を実施した。金額は非公開だが、数千万円程度と見られる。

同社はこれまでサイバーエージェント、電通といった事業会社のほか、ベンチャーキャピタルなどから約14億円を調達している。今回の調達は資金ニーズありきの資金調達というよりは、事業シナジーを狙ったもののようだ。

クラウドワークスは2014年7月までに会員登録数19万8000人。累計約3万6000社が発注。登録された仕事の予算総額は142億5000万円を突破。月間契約額も増加しているという。

クラウドワークス代表取締役社長の吉田浩一郎氏によると、今回の増資を契機にリクルートグループ全体でのクラウドワークスの利用を促していくという。あわせて、クラウドソーシングを活用したリクルートグループの新規事業も検討する予定だ。

ところでリクルートグループと言えば、2013年にオーストラリアのクラウドソーシングサービス「Freelancer.com」のM&Aに関する話題があった。今回の資金調達をきっかけにクラウドワークスがリクルートへのバイアウトを狙っているか吉田氏に尋ねたところ、「原則はIPOを目指す。ただし、リクルートとのシナジーを考えると、資本提携の比率を増やすといった選択肢は考えられる。だが100%のM&Aについては現段階ではあり得ない」ということだった。


韓国のマーチャントロイヤリティプラットホームSpoqaが$3.9Mを調達して日本に進出

TechCrunch Disrupt Tokyo 2011で審査員特別賞を取ったソウルのモバイルロイヤリティプラットホーム*Spoqaは、Daesung Private EquityグループとBokwang Investmentsが率いる投資ラウンドで390万ドルを獲得し、それを新たな燃料として韓国と日本での事業拡張に拍車をかける。〔*: ロイヤリティサービス、ロイヤリティプラットホーム、“ポイント屋さん”、loyality(忠誠心)とは、お店の継続的リピーターになる/すること。〕

Spoqaが運用するDodo Pointsは、地域の商業者(マーチャント)のためのタブレット上のロイヤリティプラットホームで、韓国のユーザが250万と言われる。2012年4月にローンチしたSpoqa自身の言によると、韓国で同社のDodoを使っている商業者は1500社という。.

顧客は買い物が終わって清算するときに電話番号をタブレットに入力してDodoのポイントを稼ぐ。そして後日、各店でそのポイントを使える。Dodoの、類似サービスとの差別化要因は、顧客のサインアップやアプリのダウンロードを必要としないこと。またお店はお客にSMSでクーポン(バーゲンチケット)を送れる。収益源は商業者が毎月払うライセンス料だ。

SpoqaのファウンダRichard Choiによると、もっと大きなアジア市場でなくまず日本への進出を選んだ理由は、日本は[地域商業者/フランチャイズ店]の比率が、他の地域よりも高いからだ。フランチャイズ店はとっくにどっかのポイントサービス(POP統合型)を使っているが、地域のパパママストアはまだまだこれからだ。というわけで、日本はSpoqaから見てビッグな市場なのだ。

Choiは曰く、“日本よりでかい市場はいくらでもあるが、うちで計量分析を行った結果としては、日本に大きな機会が輝いているのだ。まだサービスを日本語に翻訳する前から、日本にはわが社の得意先である商業者が何社もいる。テスト的にパイロットを行った結果としても、日本の機会と市場性はきわめて確実だ”。

日本のRakutenKakaoなどはモバイルファースト、オンラインファーストでオンラインツーオフライン(online-to-offline (O2O))のトランザクションをねらっているが、Choiによると、Spoqaのやり方は逆だ。

“うちはオンラインではなく、店頭、すなわちオフラインのトラフィックをタブレットで集める。そしてそのオフライントラフィックを、電話番号を利用してオンライン/モバイルのコンテンツに結びつける。うちはアジアにおける、このO2O(offline-to-online)のパイオニアだ。ここまで来るのに2年かかったが、今やユーザも商業者もJカーブで伸びている”、とChoiは意気軒昂だ。

Spoqaの競合相手はプラスチックカード(磁気カード)や紙製パンチカードによるロイヤリティ方式だが、カードを家に忘れてももらえるDodoポイントの方が、これからは有利かもしれない。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


【続報】LINEがgumiと資本業務提携、100億円規模のファンドでゲーム会社の世界進出支援も

LINE舛田氏(左)とgumi國光氏

LINEとgumiが資本業務提携に基本合意したとお伝えしたが、その続報をお伝えする。

LINEとgumiの提携は、両社が海外展開を推進する上で最適なパートナーと考えたためだ。LINEのゲーム事業はアジアや南米ではヒットしているものの、「アメリカでは十分ではない」(舛田氏)。LINEは海外アプリランキングで上位に入るヒット作「ブレイブフロンティア」を持つgumiにコンテンツを提供してもらうことで、LINEが浸透していない地域でのプレゼンスを高める狙いがある。

LINEが国内の企業に出資するのは初めて。今後はgumi以外の企業にも資本参加したり、ジョイントベンチャーと共同で開発したゲームをLINEプラットフォームを通じて世界に配信していく。

LINE GAMEはこれまで、短時間で遊べるカジュアルゲームを数多く投入し、今までゲームをしなかったユーザーを獲得してきた。しかし、LINEユーザーが増えるとともにニーズが多様化してきたことから、gumiが得意とする「ミッドコアゲーム」(カジュアルゲームよりもやりこみ要素があるゲーム)も展開していきたいと、舛田氏は話している。

gumiがLINE向けに開発するコンテンツは未定だが、LINEの友だちと一緒に遊べるようにするなど、コミュニケーション要素を盛り込んだ内容になる予定。コンテンツをダウンロードしたユーザーにはLINEのスタンプやフリーコイン(有料商品を購入できる)を配布したり、LINE内から誘導することも検討する。

國光氏によれば、世界における2012年のスマホゲーム市場規模は3000億円、2013年は1兆円、2014年は2兆円、2016年には5兆円に達する見込み。日本や欧米だけでなく、全世界の市場が同時に成長しているといい、「その中で圧倒的にナンバーワンになるには、単独でやるよりも、LINEさんと組んで世界を圧倒的に取りにいきたい」と意気込みを語る。

國光氏は「LINEのプラットフォームはテレビCM級の破壊力がある」と、そのプロモーション効果に期待しているようだ。来年中には世界のゲームパブリッシャーランキングで現在トップ3である「ガンホー、Supercell、Kingの一角に入り、再来年中にはぶっちぎり1位を取りたい」と話している。

App Annieによる2013年ゲームパブリッシャーランキング

LINEは同日、「GO GLOBAL with LINE」をキーワードに掲げ、国内のゲーム会社を対象とした100億円規模の投資ファンド「LINE GAMEGlobal Gateway」を設立することも発表した。ファンド運営会社として、新たにLINE Ventures株式会社を立ち上げ、舛田氏が代表に就任する。投資対象は「初期ステージだけでなく、世界にチャレンジしたいと考えているパートナー」。投資の条件は「LINE GAME向けにコンテンツを提供すること」で、他のプラットフォームに展開することも可能だという。ファンドは9月から運用を開始し、10社程度への出資を見込んでいる。

スマホゲームはいまや、資本力がモノを言う市場。國光氏によれば、ゲーム開発費は年々高騰していて、「怪盗ロワイヤルが500万円くらい、パズドラやブレイブフロンティアであれば1億円から1億5000円。最近はさらに、嫌になるくらい上がっている」。海外で勝負するには、現地の優秀なスタッフを雇用してローカライズしたり、大量にマーケティングを行うなど開発以外の費用も欠かせない。

そこでLINEが立ち上げたファンドでは、ゲーム開発を資金面で支援するとともに、LINE GAMEのプラットフォームを通じて海外展開を後押しする。海外で多数のユーザーを抱えるLINEのプラットフォームに乗ることで、ゲーム会社はかなりのマーケティングコストを圧縮できそうだ。なお、日本のゲーム会社に限定したのは、「日本で産声を上げて世界進出を果たしたLINEのロールモデルを日本企業に還元したかったから」と舛田氏は語る。

「日本もアメリカ、韓国、中国もスマートフォンのゲーム市場は成熟し、大資本を持ったメーカーがどんどん参入している状況。その中ではグローバルに通用するIP(知的財産:キャラクター)を使ったアプリがランキングに入る。こうした環境にスタートアップ企業がチャレンジするのは難しいので、ファンドを立ち上げて支援することにした。」

あまり知られていないかもしれないが、LINEで大きな売り上げを占めているのはゲーム事業だ。子会社を含む2013年の連結業績を見ると、LINEの売上高は518億円。このうち、基幹事業であるLINE事業が343億円を占める。LINE事業の内訳ではゲーム課金が60%と最も多く、スタンプ課金の20%を大きく引き離している。ゲーム事業はLINEの優等生ともいえるだろう。

今回、ゲーム関連の発表が相次いだが、LINEは今後、ゲーム会社になってしまうのか。この点について舛田氏は、「LINE=ゲームプラットフォームではないし、そうするつもりもない」と明確に否定している。「LINEはコミュニケーションやEC、ゲームどで構成されるプラットフォーム。ゲームはいち早く始めたのでロールモデルができているが、今後はゲーム以外でも資本提携やジョイントベンチャーでパートナー戦略を加速していく。」


Uberが東京でハイヤーだけでなくタクシーも開始、しかも既存業者の空車を使って

タクシー業界は規制が強く、既存事業者の効率も良い東京にUberが参入するのは難しいだろうというのが業界の観測だったが、新たな施策として8月5日16時から、東京都内でタクシーの配車サービスを開始する。これまでは都心部を中心にハイヤーのみを配車していたが、今後は都内全域で空車中のタクシーとユーザーをマッチングする。

東京ハイヤー・タクシー協会が毎年公表しているレポートによれば、都内にタクシーは約4万5000台あり、その数はハイヤーの約13倍。Uberは配車可能なタクシーの台数を明かしていないが、ハイヤーと比べて呼び出せる台数は相当数増えることが予想される。料金もハイヤーより安いので、ユーザーとしては選択肢が広がりそうだ。

Uberは2014年3月に六本木や渋谷などの都内一部でハイヤーの配車を開始。今回スタートしたのは、提携事業者のタクシーを配車する「uberTAXI(ウーバータクシー)」と、提携事業者の高級車種タクシーを配車する「uberTAXILUX(ウーバータクシーラックス)」の2サービス。世界のUberの中で前者はアジア初、後者は世界初となる。

サービス展開にあたってUberはタクシーを自前で保有せず、第2種旅行業者として、提携事業者とユーザーを結ぶ「仲介業者」となって配車する。

uberTAXIはアプリのマップ上から乗降車位置を指定して配車でき、事前に登録する決済情報によって降車時の支払いも不要となる。料金はタクシーのメーターに加えて、提携各社の規定に準ずる迎車料がかかる。つまり、料金は通常のタクシー配車時と変わらないということだ。料金面以外は、既存のハイヤー配車サービス「uberBLACK」の体験をタクシーに置き換えるものといえるだろう。

サービス内容は、タクシー大手の日本交通が提供する「全国タクシー配車」アプリとも似ている。全国タクシー配車は、日本交通だけでなく全国117提携事業者が保有する約2万台のタクシーに採用され、アプリ経由の売り上げだけで40億円を突破している。Uber Japan執行役員社長の髙橋正巳氏は、「全国タクシー配車を利用する事業者とも手を結んでいく」と言い、Uberと提携するメリットを次のように話す。

「都心はすぐにタクシーが捕まえられるので想像できないかもしれないが、都内のタクシーの実車率は43%と半数以下。uberTAXIでは、ドライバーが車両に搭載したUberのシステムで空車であることを登録すれば、スキマ時間に近くのUberのユーザーに乗車してもらって実車率を高めることができる。日本交通のアプリを導入している事業者のドライバーは、Uberと使い分けるかたちになるのではないか。」

なお、Uberと提携する事業者数やタクシーの台数、事業者が支払う手数料や契約内容はすべてブラックボックスとなっている。

世界初のサービスとなるuberTAXILUXは、タクシーよりもちょっとリッチな車種を配車できる。車種はトヨタクラウンロイヤルシリーズ、BMW7シリーズ、Lexus LS、トヨタアルファードなど。高橋氏の言葉を借りれば、「流しで拾おうとすると、運が良くなければ止められないタクシー」だ。料金はメーターと迎車料に加えて、ユーザーがUberに支払う手数料として500円がかかる。

タクシー配車の対応でサービス拡大に期待

Uberのサービス提供エリアは、台数の確保が困難なハイヤーのみを配車している際は渋谷や六本木、山手線の特定エリアなど「一部都心」だったが、タクシー配車に対応したことで「都内一円」に広がることになる。その先には、東京以外の国内主要都市での展開も視野にあるのかもしれない。この点について高橋氏に聞くと、「まずは東京でサービスを軌道に乗せたい」と前置きした上で、「東京に限定しなければならない理由はない」と可能性を否定しなかった。

さらに、いちユーザーとしてみれば、Uberに登録したドライバー(日本でいう「白タク」)と乗客をマッチングし、タクシーよりも低価格で利用できる「uberX」の上陸も期待したいところではある。日本語サイトに「uberX」のページはあるものの、タクシー業界の猛反発が予想されるし、合法的にサービスを提供するにはいくつもの超えなければならない壁がありそうだ。

ちなみに本日8月5日は、タクシーが日本で誕生した日にちなんで「タクシーの日」でもある。


弁当版Uber「bento.jp」とクックパッドが協業、レシピを商品化

スマートフォンで注文してから20分以内に弁当が届く「bento.jp」とクックパッドが協業する。bento.jpで本日から期間限定で、クックパッドに投稿されているレシピの中から、「暑い夏に弁当でおいしく食べられるレシピ」を日替わりで販売する。販売期間は8月4日から8日まで、および18日から22日まで。金額は800円で、配送地域は渋谷と六本木の一部地域となっている。

クックパッドはこれまで、カレーの人気レシピを大手スーパーの総菜として販売したり、パスタの人気レシピを大手コンビニで商品化するなど数々のコラボを行っている。bento.jpを運営する小林篤昌氏によれば、今回の協業で金銭的なやりとりは発生しないそうだが、「好評であれば新たなレシピも弁当化したい」と意気込んでいる。「つくれぽ1000人超え」のレシピが弁当になって注文後20分以内に届けば、かなりの反響があるかもしれない。

弁当版Uberを目指すというbento.jpは今年4月に渋谷と六本木でサービスを開始。当初は予想を上回る注文が殺到し、一部で配送が遅延したことから、いったんは対象エリアを渋谷に限定していた。その後、常時10人以上のスタッフで配送する体制を整え、7月30日に六本木エリアでの配送を再開している。

最近では、法人単位で販売する「シャショク」が好調のようだ。法人は福利厚生の一環として100円単位で弁当代を負担し、残りを社員が負担するというもの。会社が300円を負担すれば、社員は500円で弁当が買えることになる。これまでに、BASEやクラウドワークスをはじめとするスタートアップなど50社が導入している。bento.jpは50社突破を記念し、9月末まで300円の会社負担を0円にするキャンペーンを実施中だ。


「既存プレイヤーをひっくり返す」オンライン学習塾のアオイゼミが1.2億円調達

中高校生向けオンライン学習塾「アオイゼミ」を運営する葵が4日、ジャフコから1億2000万円の第三者割当増資を実施した。オンライン学習塾は教室のテナント代を抑えることで、生徒の教育コストを下げられるのが特徴。一般の学習塾もネット化を進めれば良さそうだが、オンライン学習塾の月額料金は高くても数千円程度。その倍以上の授業料を取る学習塾からしてみれば、既存の事業をカニバリズムで破壊してしまうことになりかねないのでアクセルを踏み込めないのだと、葵代表取締役の石井貴基氏は話す。7月に福岡で開かれたイベント「B Dash Camp」で「既存プレイヤーを一気にひっくり返したい」と意気込んでいたのが印象的だった。

アオイゼミは一般の学習塾のような教室ではなく、都内にある小さなスタジオで毎週月曜日から木曜にかけてライブ授業を配信している。中学生向けには日替わりで数学、社会、理科、英語の授業があり、金曜日は特別授業や再配信を行っている(国語は不定期)。会員登録をすれば、PCやスマホアプリから無料でライブ授業を受講でき、現在は3000人以上のユーザーがリアルタイムで視聴している。

有料会員になれば、過去に配信された3000件以上の授業がいつでも見られるほか、授業後の講師への個別質問が可能となる。月額料金は1教科2000円、2教科3500円、3教科4500円、4教科5000円。プレミアム会員には、成績が上がらなかった場合に全額返金するプログラムも用意している。

講師は社会を担当する石井氏のほか、有名予備校で教えた経験がある専属スタッフや現役大学生が担当。学習塾や通信教育でよくある「第一志望合格率」は86.3%を謳っている。今回調達した資金では、高校生向けの教材コンテンツを増やすとともに、システム開発を強化するためにエンジニア採用に注力する。9月上旬には、生徒の学習時間を把握できる保護者向けのアプリをリリースする予定だ。

生徒の心が折れないコミュニティを育成する


オンライン学習はやる気が続くかどうかが懸念されるところでもあるが、アオイゼミはユーザーが自主的に参加したくなる仕組みづくりで継続率を上げようとしている。例えば、ライブ授業中にはコメント欄を通じて講師にリアルタイムに質問できるほか、「なるほど!」や「わからないー」といった感情を表すスタンプが飛び交う。動画プレイヤーにテキストが表示されないニコニコ動画のような感じのインターフェイスは「みんなで勉強している一体感」を生み出し、生徒のやる気を刺激するのだという。

生徒同士が交流するSNSでは、勉強だけでなく遊びや恋愛に関する話題も投稿されるが、「学校の放課後感があっても構わない」と石井氏。「またアオイゼミでみんなと一緒に勉強しようか」と思ってもらうためのコミュニティ育成を重視しているのだという。「勉強だけが目的だと、どうしても途中で心が折れてしまいがち。この辺は実際の学習塾のマネジメントと変わりません」。志望校ベースのSNSでは生徒同士が励まし合ったり、切磋琢磨していて、実際に継続率向上につながっているそうだ。

既存のプレイヤーをひっくり返したいうアオイゼミだが、オンライン学習塾の競合も少なくない。例えば、リクルートの大学受験生向けサービス「受験サプリ」は、無料で大学入試の過去問をダウンロードしたり、大学入試センター試験の模擬テストを受けられる。月額980円を払えば大手予備校講師による動画を視聴可能で、無料ユーザーを含めて累計利用者は108万人に上る。教育専門出版社の旺文社は月額980円で600本以上の動画授業が見放題の「大学受験まなぞう」、個人情報の大量漏えいが話題となっているベネッセもライブ授業サービスを手がけているほか、現役大学生のボランティアが講師を務め、誰でも無料で授業を受けられる「manavee(マナビー)」などもある。


中高生向けIT教育のライフイズテックが3.1億円を調達–リクルートやDeNA、キッザニアとの協業も

中高生向けのプログラミングキャンプ「Life is Tech!」を展開するライフイズテックが8月4日、総額約3.1億円の資金調達を実施したことをあきらかにした。引受先はジャフコやEast Ventures、Mistletoe(孫泰蔵氏の投資会社)といったベンチャーキャピタルや個人投資家のほか、キッザニアを運営するKCJ GROUPやディー・エヌ・エー、リクルートホールディングスといった事業会社が名を連ねる。

Life is Tech!は、春休みや夏休みの3〜8日間を利用した短期集中型の「キャンプ」、1年間毎週通学して学ぶ「スクール」、インターネットを通して学ぶ「オンライン」の3つの形態で、スマートフォンアプリの開発や動画制作などを学ぶプログラムを運営している。これまでの5000人の中高生がプログラムに参加しており、今夏のプログラムにも約1300人が参加する予定。ちなみに参加者の約8割がパソコンやスマートフォンをほとんど触ったことがない初心者なのだそう。また全体の約4割がリピートして再びプログラムに参加するという。そしてさらに驚くのは、すでにここから2人の学生起業家が生まれているということだ(もちろん実績としてはこれからだけれども)。

同社はこれまでにサイバーエージェントから出資を受けており、小学生向けプログラミング教育事業を展開するジョイントベンチャーのCA Tech Kids社も2013年5月に共同で設立している。

日本のIT教育を全部やっていきたい

ライフイズテック代表取締役社長の水野雄介氏

これまでもLife is Tech!や受託でのプログラミング教育イベントの運営などを展開してきたライフイズテックだが、代表取締役社長の水野雄介氏は、「Life is Techだけでなく、日本のIT教育を全部やっていきたいと思った」と調達の意図について語る。同社が今回の調達で重視したのは協業。そのため、引受先にはVCに加えて複数の事業会社の名が連なる。KCJ GROUPとは、中高生向けのアントレプレナーシップ教育プログラムを展開する予定であるほか、DeNAやリクルートでもそれぞれ新事業について検討中だという。

協業に加えて、オンライン教育の強化やグローバル展開(すでにシンガポールで一度Life is Tech!を開催しているそうで、10月には現地法人を設立する)、学習管理システムの開発および販売なども進める。また、「Life is Tech! Stars」と題して、プログラム卒業生の起業家やAO入試合格者などを紹介しているのだが、将来的には卒業生への投資を含めた支援を検討しているという。「ITの世界でヒーローを生み出す仕組みを作りたい」(水野氏)。「IT教育全部」と聞くと最初はちょっと大げさとも思ったのだけれど、すでに東南アジアではすでにプログラム開催の打診を複数受けていたり、ニーズは明確に感じているそうだ。

ちなみに水野氏、慶応義塾大学大学院在学中に、2年間高校の物理非常勤講師を勤めたのち、人材コンサルティングに務めていた経験を持つ。学校教育から抜け出して、自身で教育のあり方を模索する中でLife is Tech!のプログラムにたどり着いたそうだ。

スタッフ育成、紹介も事業の柱に

実は今回の取材は、Life is Techのプログラムが開催されていた東京大学の中で行っている。そのため水野氏に話を聞く前に、プログラムの様子を見ていたのだけれど、これが非常に活気があるものだった。ある中学1年生の男の子は、前回「席替え」のためのくじ引きアプリを作っていたそうだが、現在はサーバサイドと連携した、ノートや写真の共有アプリを作っていた。もちろん今すぐこのアプリがヒットするかどうかは別の話だが、ここまで手がけられるものかと驚かされた。

また、プログラムでは4〜5人の中学生に対して1人の大学生がスタッフとして付いて指導を行っていたのだけれど、すでにこのスタッフの競争率は3倍(年間100人ほど採用するとのこと)になっているのだそうだ。そしてスタッフに採用されると60時間の研修を受ける必要があるとのことで、クオリティ管理には徹底している。そのためスタッフの学生に興味を持つ企業も多く、新卒としてスタッフの大学生を企業に紹介するといったケースもあるという。


はてな創業者の近藤社長が退任し会長に–新事業に注力

はてな代表取締役社長の栗栖義臣氏(左)と会長の近藤淳也氏(右)

2001年に京都で産声を上げたはてな。同社の創業者であり、代表取締役社長だった近藤淳也氏が社長職を退任することをブログで発表した。新社長にはサービス開発部本部長の栗栖義臣氏が就任し、近藤氏は代表取締役会長となる。また、取締役副社長の毛利裕二氏は取締役ビジネス開発本部長に、創業メンバーの大西康裕氏は執行役員サービス開発本部長にそれぞれ就任する。

新代表の栗栖氏は2008年にはてなに入社。任天堂「Wii U」向けのサービス「Miiverse(ミーバース)」のディレクターを務め、2013年にはサービス開発部本部長に就任している。

はてなは2001年に「人力検索はてな」を公開。その後もブログサービスの「はてなダイアリー」「はてなブックマーク」など主にコンシューマ向けのサービスを展開してきた。2004年には東京に本社を移転したが、2006年に米国にHatena Inc.を設立して近藤氏を中心としたメンバーが渡米。その後2008年には再び本社を京都に移した。最近では、サーバー監視ツール「Mackerel」の提供も始めている。

近藤氏は自身のブログで、新規事業を手がけるとしつつ、「これまで開発組織を卓越したマネジメント能力でまとめあげてきた栗栖に経営執行を託す。新たな役割分担に移行することで、より魅力的なはてなを作り上げ、会社の発展を促進することができると判断した」と説明。

ところではてなと言えば、2012年2月に転職サービスのビズリーチを通じて、上場に向けてのCFO募集を実施していた。すでにCFOは参画しており、「上場に向けての準備中」(はてな)とのこと。

ただ一方で近藤氏がブログでも「はてなの価値の核であると考えているユーザー様向けのサービスにおいては、必ずしも期待したとおりの目覚ましいサービスの成長や、新サービスの創出ができていないという自覚もある」と説明しているし、東京都とはてな本社のある京都との距離的な問題もあるのかも知れないけれど、あまり同社の大きな話題を聞くことがないのは事実だ。近藤氏も新しいサービスに注力するということだし、はてなが新体制で生み出すサービスが気になるところだ。