グリー通期決算はヒット作不足で減収減益–今期はネイティブシフトし、新規事業も強化

グリーは8月13日、2014年6月期通期決算を発表した。売上高は1255億9800万円(前期比17.5%減)、営業利益は350億700万円(同28.0%減)、経常利益は360億5600万円(同32.3%減)、純利益は173億4700万円(同23.0%減)となった。

2014年度には早期退職による人員整理を実施してコスト削減や構造改革を進めた同社。フィーチャーフォン向けゲームの売上が減衰する一方で、スマートフォン向けの新規ヒットタイトルが思うように出ず、2期連続での減収減益となった。

2015年6月期には、これまで子会社を含めて300人体制だったネイティブゲームの開発体制を強化。現在非正規雇用を含めて1300人いるウェブゲームの開発者を教育し、年度内にネイティブアプリ1000人、ウェブ300人の開発体制を作るという。

ネイティブゲームの開発を300人から1000人に

グリー取締役執行役員の荒木英士氏は、同日開催の決算説明会において、これまでのネイティブゲーム不調の理由について、「打率向上(開発力強化、開発プロセスの改善)×打席数増加(開発人数やライン数の増加)が重要だが、ネイティブゲーム(をやる)と言い始めた頃には打率を上げる取り組みが十分でなかった」と説明。これを反省する形で1年かけて150人規模のネイティブゲーム専門チームを立ち上げ、今回発表した開発人員大幅強化に踏み切った。代表取締役社長の田中良和氏も「開発体制の強化を続けてきて、その結果がやっと出てきた。『これは行ける』と思っており踏み込んでいく」と語る。同社は2014年第4四半期の売上高266億円をボトムに売上の回復も期待する。

パブリッシング事業についても強化する。国内外のグリーの開発拠点や有力パブリッシャーとの連携により、クロスボーダー、クロスプラットフォームなゲームタイトルの配信を進める。

新規事業や投資も続々

今後は新規事業も強化していく。今春以降、ブランド品買取の「uttoku」、ホテルの直前予約サービス「Tonight」をはじめとして、複数の新サービスを提供。さらにはスマートニュースへの出資などを実施している(グリー取締役 執行役員常務の青柳直樹氏は、7月に福岡市で開催されたイベント「B Dash Camp」にて、1年で100億円の投資を実行すると発言している)。

田中氏は「スマートフォン」「シェアリングエコノミー」「既存のサービス、マーケットを変えていくようなもの」という3つのキーワードで注力分野について説明。青柳氏も、「投資も含めて一気呵成に新しいサービスを提供していく」と語った。なお新規事業については、TechCrunch Japanでは荒木氏へのインタビューを実施している。その詳細は近日中に紹介する予定だ。蛇足だが、決算説明会の資料でTonightは紹介されていたのだが、ラブホテル専用の直前予約サービス「Tonight for Two」は紹介されていなかった。それ以降に発表されたサービスは紹介されていたにも関わらず、だ。

説明会の質疑応答では、記者から「グリーはプラットフォーマーからネイティブゲームのソフトメーカーになるのか」という質問が飛んだ。GREEプラットフォームを中心とするウェブゲームの売上はまだ大きい(2014年度で1252億コイン中759億コイン)ものの減少傾向にあるし、同社はネイティブゲームの開発者を300人から1000人に増やすとしている。これに対して青柳氏は、「ウェブとネイティブで明確にポジショニングや戦略を変えている。引き続きウェブはプラットフォーム。ネイティブについてはデベロッパーであり、パブリッシャーとしてプラットフォーマーと協力していく」と回答した。

説明会で触れられなかった役員人事

ところで気になったのは、同日発表された役員人事だ。9月に開催予定の株主総会で、田中氏は代表取締役社長から代表取締役会長兼社長に、取締役執行役員副社長の山岸広太郎氏は取締役副会長になるという。

この点について説明会では何も語られなかった(かつ質疑の時間が限られていた)ので同社広報に尋ねたところ「ブランディングや業界内でのプレゼンス向上のために対外活動を強化するため会長職を設置する。また、田中の業務を補佐するために、共同創業者である山岸が副会長に就任する」との回答を得た。


投稿者:

TechCrunch Japan

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