VALUが千葉功太郎氏から4500万円を調達、SNSを軸に継続的な関係性を築けるプラットフォームへ

個人個人が自分の価値を「模擬株式(VA)」として発行し、他のユーザーと取引できる斬新なサービスーー「VALU」をそのように紹介したのは、ベータ版がローンチされた翌日の2017年6月1日のこと。

ローンチ直後からインフルエンサーを始め続々とユーザーが集まり話題を呼んだ一方で、運営側が想定していた以上に投機的な使い方がされ、人気YouTuberの株式の大量売却騒動など問題も発生していた。

それ以降は誤解を招くとして「株式のように」という文言を削除。売却できるVA数を制限したり、短期的な売買ができない仕組みを取り入れたりなどルール作りを急ピッチで進めるとともに、社内の体制整備に力を入れてきたという。

そのVALUは7月24日、個人投資家の千葉功太郎氏から4500万円を調達したことを明らかにした。今回調達した資金を基にプロダクトの開発体制を強化する方針。現在iOSアプリの開発も進行中で、使い勝手を改善させながらさらなるグロースを目指す。

なお同社は昨年にも千葉氏から資金を調達をしているほか、過去にクリエイティブエージェンシーのPARTYや堀江貴文氏からも出資を受けている。

改めてVALUについて説明しておくと、同サービスは各ユーザーが自身のVAを発行し、売り出すことを通じて支援者(VALUER)を集めることのできるプラットフォームだ。VAの取引にはビットコインを用いる。VAには優待を設定することも可能。現在のユーザー数は約10万人、そのうち約2万人がVAを発行している。

ローンチ時には投機目的のユーザーが多かったが、それから約1年が立ちユーザー層にも少し変化があるようだ。現在は仮想通貨が好きな人や純粋に誰かを応援したいという人が利用者の中心。VAの発行者に関しても当初はインフルエンサーの存在が際立っていたが、今は色々な分野のクリエイターが増えてきている。

この1年で変わったのはVALUの中だけではない。「評価経済」や「信用経済」といったキーワードが徐々に浸透し始め、「タイムバンク」など個人の価値や信用に着目したサービスが台頭してきた(コミュニティやグループの価値に着目したサービスも同様に)。

その中でVALUの軸になっているのは、SNSをベースとしてVAの発行者と支援者が継続的な関係性を築けること。

「ファンクラブ会員権にも近いと思っている。(タイムラインを通じて)ユーザーに対して独自の情報を公開したり、その中で相互のコミュニケーションを楽しんだり、そういった空間を目指したい。イメージとしてはFacebookとTwitterの中間のようなコミュニティ。友達でもなくフォロワーでもなく、自分を応援してくれる特別なファンがついて、その人達と関係性を築ける場所にしていきたい」(小川氏)

小川氏の話を聞いているとオンラインサロンないし、「pixivFANBOX」のようなプラットフォームとかにも方向性としては近いのかなとも思ったけど、そことの違いは支援の仕方がポイントになるようだ。

具体的には上述したようなサービスは月額○○円のようなサブスクリプション型。VAを購入して(保有して)支援をするVALUとは形式が異なり、それによって発行者や支援者の捉え方や使い方も変わってくるという。

小川氏によると、徐々にVALUならではの新しい使い方も生まれているそう。例えばあるフリーランスのイラストレーターは、自身のコミュニティで出会ったアーティストのCDジャケットのデザインを担当。その報酬をお互いのVAを持ち合うことで支払う、といったことがあったのだとか。

今後もVALUでは軸となっているSNSの機能を中心にプロダクトを改善していく計画。冒頭で触れたアプリの開発も含め、今以上に発行者による情報公開や支援者とのコミュニケーションが取りやすいプラットフォームを目指していくという。

訪日外国人観光客と飲食店をつなぐオンラインサービス「日本美食」が農林中金などから10.1億円調達

訪日外国人観光客に特化した飲食・旅行のオンラインサービス「日本美食」を運営する日本美食は7月23日、農林中央金庫(以下農林中金)および複数の個人投資家らを引受先として、総額10億1000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

日本美食は「和食や日本のお酒を楽しみたい」というインバウンド観光客と、訪日客をより多く迎えたい飲食店とをつなぐオンラインサービス。「お店やサービスを探せない」「予約ができない」「決済ができない」といった訪日客の悩みと、「店を見つけてもらえない」「言葉や決済に対応できない」といった店側の集客・接客に関する課題を解決するために、日本の飲食店を紹介するメディア(広告)機能、4言語対応の予約・注文機能、店頭でのスマホ決済機能を備えたアプリを提供する。

スマホのQRコード決済では、アリペイをはじめとする14種類の決済ブランドに対応。中国のほか、世界44カ国の訪日観光客に利用されているという。また、飲食店側も初期費用不要で成果報酬型の手数料でサービスを利用できることから、多くの飲食店に導入が広がっているとのことだ。

日本美食は2015年12月の設立。2017年6月には1.3億円を資金調達している。

今回の農林中金からの資金調達は、日本の農林水産業の高付加価値化、国際競争力強化を支援するために2016年に設定された500億円規模の「F&A(Food & Agri)成長産業化出資枠」によるもので、インバウンドに関するものとしては初の投資案件となる。

同社は今回の農林中金による増資を機に、日本美食のサービスを農林中金と協業で地方にも広く展開し、訪日観光客と飲食店や農泊ツアーの旅行事業者などの受け入れ側双方の課題解決を目指す。サービスを通じて訪日観光客による国産農水産物の消費拡大と地域活性化に貢献していく、としている。

人材採用のOpen API構想を掲げるHERPが「Find Job!」「SCOUTER」とAPI連携開始へ

AI採用プラットフォーム「HERP」は、複数の求人媒体からの応募を自動で登録・通知し、まとめて管理できる採用管理システム「HERP ATS」を軸とした、採用担当者向けのSaaSだ。

サービスを開発するHERPは人材採用業界版のOpen API構想、「Open Recruiting API構想」を掲げる。企業の採用業務に関連するあらゆる情報をオープン化する、というこの構想については以前の記事でも詳しく紹介したが、HERPが目指すのは、エージェントや媒体に偏りがちな求職者の情報、企業の情報のオープン化による、採用業務の合理化だ。

7月23日、同社は構想の第1弾として、ミクシィ・リクルートメントが提供するIT・Web業界の転職・求人サイト「Find Job!」とSCOUTERが提供するソーシャルヘッドハンティングサービス「SCOUTER」とのAPI連携を開始すると発表した。Find Job!やSCOUTERを利用する企業向けにデータをオープン化し、まずは応募者情報の自動連携をHERP ATS上で8月からスタートする予定だ。

HERP代表取締役CEOの庄田一郎氏は、今回の連携について「両社とも(顧客である)採用担当者の利便性向上に対して思いを持っている点が、大きなポイント」と述べ、「HERPとの連携を通じて、媒体自体の利便性も向上すると考えてもらっている」と話す。

庄田氏は「今後さらに他社との連携も考えている」として「網羅性をできる限り担保していきたい」と構想実現に向けての意欲を強調した。

メルカリが3サービスを8月中に終了へ——「メルカリNOW」「teacha」「メルカリ メゾンズ」が対象

メルカリのグループ会社であるソウゾウは7月20日、現在提供している3つのサービスの提供を8月中に終了することを明らかにした。

対象となるのは2017年11月リリースの即時買取サービス「メルカリNOW」(終了日は8月20日)、2018年4月リリースのスキルシェアサービス「teacha」(終了日は8月21日)、2017年8月リリースのブランド品特化型フリマ「メルカリ メゾンズ」(終了日は8月31日)の3つ。提供終了までのスケジュールや詳細についてはそれぞれのサービスサイトにてアナウンスしている。

今回のサービス提供終了について、メルカリは「メルカリグループとして、これらのサービスを終了するとともに一部の機能を『メルカリ』のサービスに追加していくなどの経営資源の再配置を行い、『メルカリ』をはじめとする運営サービスのさらなる品質向上を目指します」とコメント。

同社では5月にも今回と同じく「グループ全体で経営資源を集中すべく」地域コミュニティアプリ「メルカリ アッテ」を終了していたが、今回は3サービスの終了を同時に発表。特にスキルシェアサービスのteachaは4月25日にリリースしたばかり。かなり迅速な意思決定といえるだろう。

なお上記のサービスは終了するが、ソウゾウでは今後もフリマアプリ「メルカリ」を超える新規事業の創出に取り組んでいくという。

ディズニーも出資する“MRお化け屋敷”運営のTYFFON、東急レクとタッグで国内出店加速へ

花火大会、海水浴、夏祭り——。夏といえば色々なイベントが多いシーズンだけど、僕個人としてはこの季節に無性に行きたくなるのがお化け屋敷だ。

今はそのお化け屋敷さえも“IT化”する時代。約1年前に紹介したTYFFON(ティフォン)が開発するMRホラーアトラクション「Magic-Reality: Corridor(コリドール)」は、まさにAR/VR/MR時代のお化け屋敷といえるだろう。

そんなコリドールなどが楽しめる施設「TYFFONIUM(ティフォニウム)」を2017年10月よりダイバーシティ東京内で展開しているTYFFON。同社は7月19日、東急レクリエーションと資本業務提携を締結し、国内でTYFFONIUMの出店を加速させることを明らかにした。

第1弾として、今秋に東急レクリエーション直営の「TYFFONIUM 渋谷店」のオープンを予定。同社によると今回の提携は「双方の強みを活かした店舗出店の取り組みが主幹となり、資本提携は提携を強固にするための補助的な位置付け」とのことで、調達額は数千万円規模になるという。

TYFFONについては前回の記事で詳しく紹介しているが、2011年11月の創業。2014年にディズニーのアクセラレーターの第1回プログラムに選ばれ、同社から出資を受けているほか、2017年にはインキュベイトファンドとアカツキが運営するファンドから100万ドルの資金調達を実施している。

現在同社が展開するTYFFONIUMで体験できるコリドールは、現実世界と仮想世界を融合させたMR(Mixed Reality)技術を活用するホラーアトラクション。周りから見れば体験者はカメラの付いたヘッドマウントディスプレイを装着して同じ所をぐるぐる回っているだけなのだけど、実際は巨大な化け物が襲ってきたり、ゾンビに遭遇したりといった恐怖体験をしているわけだ。

2017年12月からは独自の床振動システムを追加。僕もこの機能が追加された後に体験してみたのだけど、絶妙なタイミングで急に床が揺れるので何度もヒヤッとしたことを覚えている。

4月には新アトラクション「Magic-Reality: FLUCTUS(フラクタス)」を公開。こちらは最大5名で楽しめる、船上を舞台とした異世界ファンタジーとのこと。ホラー系が苦手だけどMRアトラクションを体験してみたいという人には良さそうだ。

TYFFONによるとTYFFONIUMの来場者数が認知度の拡大とともに右肩上がりで伸長。累計の来場者数は1万人を突破し、店舗単体での収益化を実現するに至っているという。

今回の提携は冒頭でも触れた通り「東急レクリエーションが持つエンターテインメント空間の運営力と、弊社が持つ次世代VRエンターテインメントコンテンツの創造力を掛け合わせることで、TYFFONIUMをより魅力的かつ身近なものにしていく」(TYFFON担当者)のが狙い。

今後は渋谷店のオープンを皮切りに、国内外で新店舗の展開を計画しているほか、ザッパラスと協同開発をしている「タロットVR:ボヤージュ・オブ・レヴリ 〜幻想の旅〜」(VR占いコンテンツ)など新コンテンツも順次リリースしていく予定だ。

富士急ハイランド、中国のQR決済 WeChat Pay全面導入――無人レジも

eng-logo-2015中国最大のIT企業、テンセントの手がけるQR決済サービス「WeChat Pay」が富士急ハイランドとタッグ。チケット購入から飲食までをカバーする『WeChat Pay スマート旗艦遊園地』として、全エリアでWeChat Pay決済を導入したと発表しました。

「WeChat Pay」は、中国のチャットアプリ「WeChat」に紐づく決済サービスです。中国を中心に8億人の月間アクティブユーザーを抱え、日本でも新千歳空港やドン・キホーテをはじめ、訪日客向けに導入が進んでいます。

WeChat Payで遊園地をスマート化

今回の提携により、eチケットや土産の購入から飲食にいたるまで、園内全体でWeChat Pay決済が利用可能に。また、最短30秒で商品を購入できるWeChat Pay専用の無人レジも設置するといいます。

富士急ハイランドによると、WeChat Payの導入で中国人観光客の売上増加が見込めるとのこと。また、勾配データなどに基づいて、中国人観光客に的確なマーケティング情報を伝えることで、園内の運営効率化や収益の増加を図れると言います。

来日したWeChat Pay事業副総裁のリ・バイコウ氏は「WeChat Payは決済だけでなく、公式アカウントやマーケティングのためのモーメンツ広告など、さまざまなソリューションを兼ね備えている」と語り、これら機能を活用してサービスの差別化を図れると強調しました。

Engadget 日本版からの転載。

ソフトバンクが滴滴出行と合弁会社を設立ーータクシー配車プラットフォーム提供へ

ソフトバンクは7月19日、世界最大級の交通プラットフォームを手掛ける中国の滴滴出行(DiDi)と、国内で次世代のタクシー配車サービスを提供することを目的に、合弁会社「DiDiモビリティジャパン」を設立したと発表した。

2018年の秋から順次、大阪、京都、福岡、沖縄、東京やその他の主要都市でトライアルとして無償でサービスを提供する予定だ。両社は2月に日本のタクシー事業者向けサービスにおいて協業することを明らかにしていた

DiDiモビリティジャパンは、DiDiの革新的な人工知能とデータ分析技術を活用し、全てのタクシー事業者が利用できるオープンなタクシープラットフォームを提供するために設立。機械学習をベースにした技術をスマート配車システムの需要予測に活用することで、タクシー配車サービスのさらなる最適化と乗客の利便性向上をサポートする。

新会社のプラットフォームには、タクシー事業者向けの管理コンソール、ドライバー向けのアプリケーション、そして乗客用のアプリケーションがある(トライアル開始とともにiOS版とAndroid版を提供予定)。

乗客はアプリを使い簡単にタクシーの配車サービスを利用でき、ドライバーの到着予測時刻も確認できる。アプリで決済を完了させる場合、主要なクレジットカードで支払いが可能だ。中国版DiDiアプリケーションの利用者は、日本国内でもAlipayまたはWeChat Payを選択できる。乗客向けおよびドライバー向けアプリには日本語・中国語間の自動翻訳機能が搭載される。

タクシー事業者は管理コンソールにより、配車状況やドライバーの稼働状況などの管理が可能。また、乗客からのドライバー評価を確認することでサービス向上に役立てることができる。

DiDiはアプリを通じ、5億千万人以上の利用者に「DiDi Taxi」「DiDi Express」「DiDi Premier」「DiDi Luxe」「DiDi Hitch」「DiDi Bus」「DiDi Minibus」「DiDi Designated Driving」「DiDi Enterprise Solutions」のほか、バイクシェアリング、カーシェアリング、フードデリバリーなどの幅広い交通手段を提供している。1日当たりの乗車数は3千万件に達している。

なおソフトバンク代表取締役社長執行役員兼CEOの宮内謙氏は本件について以下のようにコメントしている。「この合弁会社を通して、DiDiの最先端の交通プラットフォームサービスを日本市場に提供できることを大変うれしく思います。DiDiの卓越した技術革新力と、ソフトバンクの最先端の通信インフラを含む強固な事業基盤を融合させることで、日本の消費者とタクシー業界の方々へ新しい価値を提供できると確信しています」

働き方改革プラットフォームのチームスピリットがマザーズ上場へ

勤怠管理や経費精算、カレンダーなどの機能を一箇所に集約した業務管理プラットフォームの「TeamSpirit」。同サービスを提供するチームスピリットが7月19日、東京証券取引所マザーズ市場に新規上場を申請し承認された。上場予定日は8月22日だ。

有価証券報告書によると同社の平成28年8月期(第20期)における売上高は5億4027万円、経常損失が1億3853万円、当期純損失が1億3893万円、平成29年8月期(第21期)における売上高は7億7296万円、経常損失が9666万円、当期純損失が9736万円だ。

なお平成30年5月期(第22期第3四半期)までの各数値については売上高が8億8626万円、経常利益が7215万円、当期純利益が4914万円となっている。

株式の保有比率については、代表取締役の荻島浩司氏が36.35%を保有する筆頭株主。ついでDraper Nexus Technology Partners2号投資事業有限責任組合が13.58%、salesforce.comが12.64%と続く。

チームスピリットは有限会社デジタルコーストとして1996年11月に設立し、2008年4月に株式会社へ組織変更。現在の主力サービスであるTeamSpiritは2012年4月のスタートで、同年9月に商号をチームスピリットに変えた。

同社がDraper Nexus Venture Partnersやsalesforce、日本ベンチャーキャピタルから4億円を調達した2015年にTechCrunchでも紹介しているが、TeamSpiritは簡単に言えば従業員が日々利用するシステムを一つにまとめたプラットフォームだ。

具体的には勤怠管理、就業管理、経費精算、工数管理、電子稟議、SNS、カレンダーといった機能を備え、従来は複数のツールをまたいで入力していた作業を効率化。各従業員の働き方に関するデータがリアルタイムに蓄積されていくので、業務の削減だけでなく「トップパフォーマーの時間の使い方などを分析し、SNSでのコーチングに役立てる」なんてこともできる。

特に近年は働き方改革の実現に向けて生産性の向上を目指す企業も多く、そのためのサポートツールとしてのニーズも増えてきた。ビジネスモデルはユーザー数(ライセンス数)に応じたサブスクリプション型。2018年5月末時点で同サービスの契約社数は932社、契約ライセンス数は12万9944人となっている。

今後は同サービスの海外展開のほか、蓄積されたデータを活用した人的リスクの予兆管理や社内の業務改善、組織・人材の活性化など「AI×ビッグデータ」の新サービスも検討しているようだ。

ラストワンマイル無人化へZMPが宅配ロボの新モデル発表、デリバリーサービスの実証実験も

自動運転技術やそれを応用した宅配ロボットを開発するZMP。昨日は日の丸交通と都心部で自動運転タクシーの実証実験を開始することを発表していた同社だが、以前から開発を重ねていた宅配ロボットでも新しい動きがあるようだ。

ZMPは7月19日、宅配ロボット「CarriRo Delivery(キャリロデリバリー)」の量産前モデルを発表。同時にこのモデルを活用したデリバリーサービスの実証実験を開始することも明かしている。

冒頭でも触れたように、ZMPでは以前から自律移動技術を応用した宅配ロボットCarriRo Deliveryを開発してきた。荷台部には宅配ロッカーを搭載。カメラやレーザセンサで周囲の状況を360度認識しながら自律走行し、目的地まで荷物を届けられることが目標だ。

今回発表された新モデルは、実サービスに向けてデザインやユーザインタフェースなどをフルモデルチェンジしたもの。幅65cm、長さ95cm、高さ96cmと以前発表されていたモデルよりも小型化されたほか(1月時点のものは幅75cm、長さ133cm 、高さ109cm)、店舗のニーズに合わせて取り替え式のロッカーを採用し、ボックスの数や大きさを選べるようになった。

ちなみにスピードは前モデルと変わらず最大時速6kmだ。

またユーザー用と店舗用でそれそれアプリを準備。ユーザー用アプリでは商品の注文や決済、QRコード読み取りによるカギの解除が可能に。店舗用アプリでは店舗での注文管理や各ロッカーへの商品積込をサポートする機能を盛り込む。

そのほか各ロボットの位置やステータスの管理に加え、緊急時には遠隔操作ができる遠隔監視システムも用意しているという。

ZMPでは7月5日からローソンや慶應義塾大学SFC研究所と協力して、この新モデルを使った実証実験を開始。ユーザが注文から受取りまでをアプリで行い、CarriRo Deliveryが自律走行で届けるという実際のサービスに近い形になっていて、本実験を通じて実用化へ向けた開発をさらに加速させる方針だ。

ZMPと日の丸交通、都心部で自動運転タクシーの実証実験へ

自動運転技術やロボット開発のZMPは7月18日、タクシー事業の日の丸交通とともに、自動運転車両を使ったタクシーサービスの公道営業実証実験を都心部で実施すると発表した。乗客のいる自動運転車両のタクシーが、公道で営業走行を行うのは世界初だという。

実証実験が行われるのは、8月27日から9月8日の午前9時から午後5時まで。三菱地所と森ビルの協力で、大手町フィナンシャルシティ グランキューブと六本木ヒルズを発着地とする約5.3Kmを1日4往復し、車線変更や右左折、停止などをすべてシステムが自動で操作する(ただし、交通状況等により、同乗のドライバー、オペレーターが介入する場合がある)。

走行予定エリア(ZMPサイトより)

料金は片道1500円(税込)を予定。参加者を本日から専用サイトで募集し、予約可能者を抽選により決定するという。

ZMPは2001年1月の設立。ADAS(先進運転支援システム)・自動運転技術開発用プラットフォームのRoboCarシリーズやデータ計測サービスRoboTest、物流支援ロボットCarriRoなどを開発・販売する。2017年6月には総額15億円の資金調達を発表している。

同社は2014年から公道での自動運転実証実験を開始しており、2015年5月にはDeNAとの合弁会社「ロボットタクシー」を設立。その後、2017年1月にDeNAとの業務提携は解消したが、2017年12月には運転席にドライバーが乗車していない状態での公道実証実験を日本で初めて実施。今後も技術やサービスの実証実験を進め、2020年の自動タクシー実現を目指すとしている。

ウェアラブル会話デバイス開発のBONXがリコーから4.5億円を調達、音声ビッグデータの活用も

独自のイヤホン型ウェアラブルデバイスとアプリを連動させたコミュニケーションサービス「BONX」を提供するBONX。同社は7月17日、リコーと資本業務提携を締結したことを発表した。

今後リコーの顧客接点力などを活用してBONXのサービスを拡大させていくほか、両社のサービス間の連携を深めていく方針。また会話ビッグデータの活用にも取り組む。

なおBONXではリコーに対し約4.5億円の第三者割当増資を実施したことも合わせて発表している。

BONXについてはこれまでも何度か紹介しているが、片耳に装着する専用デバイス「BONX Grip」とスマホアプリを組み合わせて使う会話サービス。スマホとBluetoothを接続しておけば、携帯電波の入るところであれば、遠距離や悪天候でも相手と会話ができる。

人の声だけを高精度で検知し、機械学習により周囲の騒音環境に合わせて音声を自動的に最適化する発話検知機能や、誰かの電波状況が悪化しそうなときは音声で通知し、接続が切れても自動的に再接続処理を行う機能などを搭載。

もともと創業者の宮坂貴大氏の「スノーボード中に仲間と話したい」という思いから生まれたプロダクト。激しい向かい風の中でもクリアな会話ができるようにノイズキャンセリング機能も備えているので少々劣悪な環境であっても対応できる。

2017年12月からはビジネス用のコミュニケーションツール「BONX for BUSINESS」も提供を開始。30人までの音声グループコミュニケーションをスムーズに実現できることを特徴に、総合商社や物流企業、小売企業などで活用が進んでいるようだ。

冒頭でも少し触れた通り、今後BONXのソリューションをリコーの顧客接点力やサポート力を活かして拡販するほか、インタラクティブホワイトボードなどのリコー製エッジデバイスにBONXの技術やソリューションを組み込み、企業の働き方改革への取り組みを支援する計画。

また蓄積された音声コミュニケーションデータを用いて職場環境のモニタリングや効率化に活かすなど、会話ビッグデータの活用にも力を入れていくという。

なおBONXは2014年の創業。2018年2月に発表していたシリーズAラウンドでは慶應イノベーション・イニシアティブなどから総額4.5億円を調達。それ以前にも助成金や融資、VCからの出資などにより総額約3億円を集めている。

ブロックチェーン・アプリ開発ツールのTECHFUNDが1.2億円を調達、起業家への技術支援を加速

写真右からTECHFUND代表取締役の川原ぴいすけ氏、共同代表の松山雄太氏

スタートアップや起業家の技術的支援を行うTECHFUNDは7月17日、野村ホールディングスのコーポレート・ベンチャーキャピタルファンド、ユナイテッド、インフォテリア、西川潔氏、竹内秀行氏、そのほか数名の個人投資家を引受先とする1億円の第三者割当増資、ならびに西武信用金庫と日本政策金融公庫からの2000万円の融資により、総額1.2億円の資金調達を実施したと発表した。

同社は2018年6月21日に、ブロックチェーン・アプリケーションの開発を支援するサービス「ACCEL BaaS」β版をリリース。今回の増資をもとに、同サービスの開発を加速させるという。

ACCEL BaaSの強みは簡単にブロックチェーン・アプリケーションを開発できること。APIを呼び出してブロックチェーン・アプリケーションの開発に必要となる基本機能を実装することが可能だ。特定のプログラミング言語に依存しないため、ウェブだけでなくIoTや基幹システムなど多様なケースへの導入が想定されているという。

同サービスは頻繁に使われるスマートコントラクトをテンプレート化、そして設定をGUI化することで、Solidityなどのプロトコル固有の開発言語に習熟せずに、一般的なブロックチェーン機能を提供できるように設計されている。

また、各種ブロックチェーンのプロトコル間で互換性を担保。サービス開発の検証におけるプロトコル間のスイッチングコストを低減し、本番稼働までスピーディに移行できる。現在はEthereumのみの対応だが、NEOやLISKなど各種ブロックチェーンに順次対応していく予定だ。

代表取締役の松山雄太氏は「ブロックチェーンで何かをやろうと思った時に、実際にサービス化出来ないとうケースが非常に多い」と開発理由について説明。

共同代表の川原ぴいすけ氏は「僕たちのサービスを使うと、簡単なDapps(分散型アプリケーション)が5分くらいで作れたりする。そういった意味で、ブロックチェーン・アプリのケース・スタディーを爆発的に量産させたい。そうすることによって、イノベーションの波を作っていく、というところに寄与したい」と語った。

TECHFUNDは2014年10月9日に設立。お金の代わりに技術を投資することによってスタートアップを支援する技術投資ファンド(同社いわく世界初)として活動を開始した。これまで250チーム以上のメンタリング及びデューデリジェンスに携わり、6社への技術投資を実行したという。

だが、いわゆるコンサルティング・サービスを提供してきた同社がプロダクトをリリースするのは今回のACCEL BaaSが初めてだ。川原氏は「そういった意味では大きな転換期だ」と話した。

松山氏によると、これにより「より多くのスタートアップを支援できる」という。「色んなところに拠点を持つ、もしくは拠点がないスタートアップが多くなってきている」と説明し、「私たちがスタートアップを支援するには、物理的な支援よりも今回のツールのような間接的な形による支援が一番良いと思った」と述べた。

とは言え、ACCEL BaaSもリリースしてからまだ1ヶ月ほどしか経っていない。同社は調達した資金を「プロダクトの開発であったり、マーケティングに使用していく」という。

その上で、川原氏は「目指すべきところは ICOプラットフォームの創造。まずはDapps、ブロックチェーン界隈の市場をつくっていく必要がある」と語った。

「今回、インフォテリアというBCCC(Blockchain Collaborative Consortium、ブロックチェーン推進協会)を主導しているような株主にも参画していただいた。力を借りながら、“ブロックチェーンは必要だ”という市場を作るというのが、直近でやるべき事だと思っている」(川原氏)

Uber Eatsが京都と神戸にやってくる、7月下旬よりスタート

米国発のフードデリバリーサービス「Uber Eats」が京都と神戸でも利用可能になる。Uber Eatsは2016年9月に日本でサービスを開始。当初は東京の一部エリア限定のリリースだったが、2017年12月には東京23区全域と横浜へサービスを拡大。そして今回、Uber Japanは同サービスの利用可能地域を2018年7月25日の午前9時より京都、7月31日の午前9時より神戸に拡大すると発表した。

リリース当初は、京都と神戸ともに約100件のレストランの料理がデリバリー可能になる予定だ。同社は2018年4月に大阪12区の一部地域にも利用地域を拡大しており、今回の地域拡大により関東と関西地区の主要都市をカバーすることになる。

京都と神戸のUber Eatsで利用できるレストランの例は以下の通りだ。関西エリアに住んでいるTechCrunch Japan読者は体験してみるのもいいかもしれない。

Uber Japanのプレスリリースより

国産の生地と縫製技術を繋ぎ世界で戦える製品を、D2Cブランド「Foo Tokyo」が5000万円を調達

パジャマやナイトウェアなどリラックスタイムに使用する商品を扱うD2C(Direct to Consumer)ブランド「Foo Tokyo(フー トウキョウ)」。同ブランドを展開するNext Brandersは7月17日、5月からスタートしたECサイトをリニューアルオープンしたこと、および複数の投資家を引受先とした第三者割当増資と融資により総額5000万円を調達したことを明らかにした。

今回Next Brandersに出資したのは独立系VCのANRI、個人投資家の有安伸宏氏、ヘイ株式会社代表取締役社長の佐藤裕介氏。調達した資金は組織体制の強化、スキンケアやバスグッズなど商品の拡充、会員限定イベントなど各種マーケティング活動に用いるという。

熟練の技術を生かした心地いい製品をD2Cモデルで

Foo Tokyoは冒頭でも紹介した通り、「リラックスタイム」という時間帯にフォーカスしてオリジナルの製品を企画・制作し、自社のチャネルで販売しているD2Cブランドだ。

タオルの名産地として知られる愛媛県今治市発の「渡辺パイル」や、オリジルナルのストールが有名な静岡県掛川市発の「福田織物」を始め、世界的ブランドも愛用する国内の織物工場や熟練の技術を持つ縫製工場などと連携。

厳選した生地と高い技術を用いて作った「肌へのストレスを徹底的に排除した最高峰の心地良い製品」がウリだ。

Next Branders代表取締役社長の桑原真明氏によると、Foo Tokyoの特徴は「世界的ブランドと同クラスの製品を作れる」こと。確かにFoo Tokyoの製品を見ていると数千円台後半〜数万円台が多く、ガウンについては高いものだと15万円近くになる。

製造時には工場の空き時間を活用。自社で店舗を持たず、余分な在庫や広告費、人件費を抑えることなどによって「(世界的ブランドでは)約100万円などで売られてるいるような高品質なものを、十数万円で提供できる」環境を構築している。

5月のスタートから日が浅いため売上規模はまだ小さいというが、ミシュラン5つ星を獲得している京都の高級旅館にオリジナル商品の導入が決まっているほか、地上波CM撮影への衣装提供や大手百貨店での出店問い合わせもきているそう。7月20日からは表参道で3日間ショールームを開催する予定だ。

また本日リニューアルしたECサイトでは、自分の体のサイズと好みの生地(4種類)に合わせたガウンのカスタムオーダーも開始。これによってより個々に合った商品の提供を目指すという。

日本の生地と技術を用いて、世界で戦えるブランドを

「日本の生地や縫製技術を集結した製品で、世界で戦えるブランドを作りたい」——桑原氏が起業して自身でブランドを立ち上げた背景には、そのような思いがあるようだ。

もともと学生時代からアートやクリエイティブに関心があり、アパレル企業でのアルバイトやファッションショーに携わったこともあったという桑原氏。大学院卒業後に入社したメリルリンチ日本証券を経て、2017年12月にNext Brandersを設立した。

ファッション領域の中でリラックスタイムに軸を決めたのは「自分自身が仕事中心の日々を過ごしていた前職時代に、リラックスを渇望していた」(桑原氏)から。当時の自分と同じように疲れを癒したい人たちに対して、安らげる時間を提供することがFoo Tokyoの目標。ブランド名のFoo(ふぅ)も安らぎの一息の象徴からきているのだという。

「(寝るときなど)リラックスタイムこそ良いものを使いたいというニーズは一定数ある。またパジャマやナイトウェアのブランド自体はたくさんあるが、素材や技術など日本のものづくりの良さを発揮できているブランドとなれば、そこまで多くはない。日本発で本当に質の高いものを提供していきたい」(桑原氏)

写真左からNext Branders代表取締役社長の桑原真明氏、同社CISO 社外取締役の松宮大輝氏

Foo Tokyoではリラックスタイムに使用する商品という軸で、今後はコスメやシーツなどアパレル製品以外の開発にも取り組む計画。

また同ブランドでは会員登録をすると生地サンプルのついたパンフレットを郵送してもらえるのだけど、中長期的な構想としてはECサイトに蓄積されたデータなども活用しながら、各ユーザーに合った生地を用いた商品の企画やレコメンドの仕組みなども検討しているようだ。

「ECサイトのネックの一つが生地。実際に触ってみないと細かな肌触りの違いはわからない。人それぞれ気持ちいいと感じる生地は異なるので、Foo Tokyoにくれば常に自分にとって気持ちいいと思える商品が揃っている、見つかるという世界観を実現したい」(桑原氏)

CG業界に特化したマッチングプラットフォーム目指す「CGクラウド」

CGクリエイター向けに3DCG作品投稿サイト「CGクラウド」を提供するTANOsim(タノシム)は7月17日、同サイトをギャラリーサイトとしてフルリニューアルしたと発表。CG業界に特化したマッチングプラットフォームを目指し、さらに機能追加を図っていく。

TANOsimは2016年12月の設立。同社代表取締役社長の森本高廣氏はCG業界で15年の経験を持つ。3DCG制作のアニマでアートディレクターを務めた後、中国・大連で関連会社立ち上げにも参画。そうした中で「離れていても、どこでもいつでもCG制作の仕事を依頼できる環境ができないか」と考えたことが、TANOsim創業のきっかけとなった、と森本氏は話す。

「CG自体は制作に最新の技術を要する。またVR/ARなどの登場で需要も高まっている。ところが、仕事の進め方はアナログなまま。受注発注の仕組みも旧来のままで、クライアントはクリエイターの見つけ方や発注先がわからない。そこで、CGクリエイターのためのプラットフォームを開発しようと考えた」(森本氏)

CGクラウドは、最終的にはクリエイターと制作を依頼したい企業とのマッチングを目指している。「まずはクリエイターが集まれる場を提供したい」ということで、2017年8月にベータ版をリリース。約1年経った今回、各クリエイターの作品が一覧できるギャラリーサイトとしてリニューアルを行った。

CGクラウドのクリエイタープロフィール画面サンプル

クリエイターが作品投稿できるサービスとしてはpixivなどもあるが、森本氏によると「フルCGをアップできるサービスは国内ではCGクラウド以外にない」とのこと。

現在は300名の登録クリエイターに、TANOsimが依頼された仕事をアナログな形で紹介し、実プロジェクトをこなすことで収益を得ているが、「ゆくゆくはクリエイターへの仕事依頼や作品管理ができるプラットフォームとしてCGクラウドを強化し、手数料などで収益を得るビジネスを目指す」と森本氏は語る。

TANOsimでは、2017年8月にEast Venturesデジタルハリウッドから約1500万円、2018年4月には大和企業投資KLab Venture Partnersから約5500万円を資金調達している。日本政策金融公庫からの融資も合わせると、これまでの調達総額は約8500万円となる。

調達により、エンジニア、デザイナー、セールス採用の強化を図っていく、という森本氏。「クリエイターが未来を見られる形を(プラットフォームとして)作っていきたい」と話している。

TANOsim代表取締役社長 森本高廣氏

宇宙開発時代のソビエトから買った“ハエ”で世界を救う、農業スタートアップMUSCA

ハエのちからで世界の食糧危機を解決しようと取り組む、ちょっと変わったスタートアップがある。福岡県に拠点をおくムスカだ。彼らの武器は、45年の歳月をかけて1100世代の交配をくりかえしたイエバエだ。ムスカはこのハエのエリートたちを使って、家畜糞や食料廃棄物などから通常よりも早い速度で肥料と飼料を作りだす。

イエバエの幼虫は家畜糞を食べて成長し、家畜糞はイエバエの体液によって酵素分解されて肥料になる。幼虫は堆肥化の最中にお腹がいっぱいになると、自分から家畜糞から出て行くという習性をもつ。ムスカはその幼虫を魚の餌である飼料としても販売するため、1回の堆肥化プロセスで肥料と飼料の両方を生成できるのが、イエバエを利用した“ムスカシステム”の強みだ。

通常、微生物を使って家畜糞を堆肥化するのには2〜3ヶ月かかるが、交配を重ねたムスカのイエバエを利用すると1週間という短期間で堆肥化を終了することができるという。

国連の試算によれば、2050年までに世界の人口は90億人に達する見込みで、FAO(国際連合食糧農業機関)はその年までに食料生産を60%増加させる必要があると発表している。ムスカはイエバエを利用した短期間での肥料・飼料の生産システムを確立することで、その課題を解決しようとしているのだ。

ところで、スタートアップを紹介するTechCrunch Japanでは「45年の歳月をかけ」なんて言葉を使うことは滅多にない。ムスカがそのエリート・イエバエを手に入れた経緯を説明しておこう。

ムスカが保有するイエバエの交配は、冷戦時代のソビエトが宇宙開発に没頭していた時代に始まった。当時ソビエトが掲げた目標は有人火星探査だ。往復4年間にもおよぶミッションにおいて、限られたスペースしかない宇宙船に4年分すべての食料を積み込むことは不可能であり、宇宙船内で食料を自給する必要があった。そこで、宇宙船内における完全なバイオマス・リサイクルを目指し、ソビエトの科学者があらゆる動植物の中から目を付けたのがイエバエだった。有機廃棄物から短期間で貴重な動物性タンパクを生み出せるうえ、副産物である幼虫排泄物もまた、肥料として極めて効能が高く、まさにバイオマス・リサイクルに最適だったのだという。

その後、ソ連が崩壊し、お金に困った研究者がこのイエバエと関連技術を売りに出していたところ、ムスカ代表取締役の串間充崇氏が勤めていたフィールドがそれを購入し、同社の宮崎ラボで研究を継続することとなった。

フィールドは安全性や効果を立証するために宮崎大学や愛媛大学との共同実験を行い、2007年には国から肥料・飼料の販売許可も取得。その後、フィールドの保有するイエバエ及び関連技術・権利は、串間氏が設立したロシアの科学技術商社であるアビオス(2006年設立)に全て継承された。そして、2016年12月、アビオスからイエバエ事業だけスピンオフして生まれたのがムスカ(イエバエの学名、ムスカ・ドメスティカから社名が名付けられた)というわけだ。

イエバエをソビエトから購入してから約20年が経過した現在、同社はムスカシステムを使った量産体制を整えるための準備をしている最中だ。ムスカは現在、数十億円規模の資金調達ラウンドを実施中で、早ければ今年度中に第一号生産施設の着工を始めるという。

ムスカ代表取締役の串間充崇氏

スマートニュースのMAUが日米合算で1000万人突破、ダウンロード数は3000万件

スマートニュースは7月17日、同社が提供するニュースアプリ「スマートニュース」の月間アクティブユーザー数(MAU)が日米合算で1000万人を突破したと発表した。ダウンロード数は日米合算で3000万件。同社がアプリのMAUを公開するのは2017年10月ぶりで、前回公開時における日本版のMAUは600万人で、米国のMAUは非公開だった。今回の発表では日米の割合は非公開ではあるが、スマートニュースは順調に成長を続けているようだ。

スマートニュースが初めてMAUを公開したのは2014年12月のことだ。MAUが400万人を突破したことを発表するために「SmartNews Compass 2014」の壇上にあがったスマートニュース代表取締役の鈴木健氏は「(ニュースアプリは)実際に使われなければ意味がない」と話し、同氏がアクティブユーザー数という指標を重視していることを示した。

米国市場におけるスマートニュースの動向について、鈴木氏は「米国でも、スマートニュースは高い成長率を維持している。One product、 One Teamでサービスを改善するため、日本、米国ともに開発メンバーを大幅に強化しているところだ。そのため、エンジニアの採用が当面の大きな課題だといえる。アメリカという日本に比べて圧倒的に多様な国に適応するためには、機械学習などのテクノロジーによってパーソナライズド・ディスカバリーを実現することが重要であると考えている」と語る。

また、日本のスマートフォン利用者数は8000万人いるにも関わらず、ニュースアプリの利用者は2000万人ほどだという数字をもとに、「国内だけでも、まだ大きな成長の可能性がある」(鈴木氏)とコメントした。

スポーツチームに投げ銭できるサービスEngateを9月開始、NEMブロックチェーンでトークンを発行

エンゲートが開発を進めている新サービスEngateは、スポーツチームや選手に「投げ銭」して応援する「投げ銭コミュニティ」サービスだ。概要は次のようになる。運営元のエンゲートが「トークン」(企業ポイントのような概念)を発行し、同時に仮想通貨NEMのブロックチェーンに記録する。ファンはサービス上で日本円による支払でトークンを購入、スポーツチームの試合、練習風景のライブ配信やメッセージ動画などのコンテンツを見ながら、トークンを使って購入したデジタルギフトによる「投げ銭」で応援する。この2018年9月からサービスを開始する予定だ。

このサービスの大きな狙いは、スポーツチームとファンを結ぶコミュニティ上でトークンの流れを作りだし、スポーツチームの収入源となることである。別の言い方をすると、スポーツ×トークンエコノミーによるコミュニティ形成を狙う。「多くのスポーツチームと話をしてきた。話をすると、ほぼ『一緒にやりましょう』になる」とエンゲートCEOの城戸幸一郎氏は話す。トップリーグのスポーツチームはテレビ放映権や広告収入などの収入源があるが、地域リーグのチームは経営に苦しんでいる場合が多い。個人ファンが手軽に「投げ銭」できるサービスは、スポーツチームにとっては新たな収入源となる可能性があるのだ。

投げ銭を受け取ったスポーツチームに対しては、トークンの金額から運営会社エンゲートの手数料、スマートフォンプラットフォーム(App Storeなど)の手数料を差し引いて、PR協力費として支払う形とする。

既存の類似サービスとして、個人が配信する動画を見ながら投げ銭を送れる17 Live(イチナナ)Showroomがある。動画を見ながら「投げ銭」を送る点では似ている。ただし既存サービスとEngateが大きく違う点は、内部的な仕組みとサービス設計だ。ブロックチェーン技術を用いてトークン発行量を担保する仕組みを採用してトークン交換市場などに発展できる可能性を持たせ、またスポーツチームの応援、支援を目的としたトークンエコノミー形成を狙うサービス設計となっている。

現時点で、8競技20チームの協力を得ている。競技の種類はハンドボール、サッカー、フットサル、野球、格闘技、バスケットボール、バレーボール、ラグビーの各種。また、プレスリリースでは以下のチーム代表が賛同を表明している。

  • 徳島インディゴソックス(プロ野球独立リーグ・四国アイランドリーグplus所属) 球団オーナー 荒井健司氏
  • レイナ川内レディースサッカークラブ 代表 山口 純氏
  • フウガドールすみだ(フットサルクラブ) 代表 安藤弘之氏
  • 日本ハンドボール協会 会長 湧永寛仁氏
  • 日本ハンドボール協会 事務局長 清水茂樹氏

NEMブロックチェーンでトークンを発行

Engateでは、仮想通貨NEMのパブリック型ブロックチェーンにトークン発行を記録する。ただし、後述するようにEngateのトークンは仮想通貨とは異なる概念である。またICO(イニシャルコインオファリング、新規仮想通貨発行による資金調達)は計画していない。

パブリック型ブロックチェーンには、記録内容の改ざんが非常に困難という特徴がある。そこにトークン発行を記録すると、運営会社がトークン発行量を勝手に水増しすることはできなくなる。つまりトークンの発行数を証明し、希少性を担保できる強力な手段となる。NEMのパブリック型ブロックチェーンを活用する日本発のサービスは、政治×トークンエコノミーのPoliPoli(NEMを活用予定)、日本円連動の決済手段として使えるLCNEMステーブルコインが登場するなど、最近になって事例が増えつつある。NEMブロックチェーンをサービス基盤として利用する場合の主なメリットは、標準機能の範囲内で新トークン(モザイクと呼ぶ)を作りマルチシグの設定ができる点、機能がWeb APIの形で提供されていてWeb開発者にとってアプリケーション開発が容易な点である。

Engateでは、トークンの保管や移動はEngateのサービス内で完結する形とする。この点は他の仮想通貨ベースのトークンとは異なる設計である。「仮想通貨ベースのトークンを引き出して移動するには個人が秘密鍵を管理する必要があるが、ほとんどの人にはおそらく無理。それよりも、サービス内でトークンを扱える方がスポーツファンには親しみやすい」(エンゲート Blockchain PRの藤田綾子氏)。パブリック型ブロックチェーンでトークンの希少性を担保しつつ、サービス内で完結している点は、2017年にサービスを開始して話題になったVALU(Bitcoinのパブリック型ブロックチェーンとOpenAssetプロトコルを利用する)と仕組みが似ている部分があるといえるだろう。

発行するトークンの法的フレーワークは資金決済法が定める「仮想通貨」ではなく、同じ資金決済法で定める「前払式支払手段」とする。これはプリペイドカードや商品券と共通の枠組みである。前払式支払手段を用いるサービスとしては、他にSuicaなどの電子マネー、スマートフォン送金サービスのKyashなどがある。

エンゲート代表取締役の城戸幸一郎氏

エンゲートは、将来的には「スポーツ選手と会える権利」などの特典をトークン化し、ユーザー間での交換も可能とすることを考えている。また、若手選手を応援・育成するファンドや、トークン交換市場などのアイデアも温めている。トークンエコノミーという新ジャンルならではのアイデアだ。

エンゲートは2018年、楽天の執行役員を務めた城戸幸一郎氏らが創業した。現在のメンバーはフルタイムが3名、兼業を含めると10人弱とのこと。テックビューロでマーケティングと広報業務、それにプライベートブロックチェーン技術mijinのセミナー講師などを務めてきた藤田綾子氏がBlockchain PRとして参加、また元Orb共同創業者でP2P電力取引プラットフォームTRENDE創設者である妹尾賢俊氏がアドバイザーを務めている。3名のエンジェル投資家が出資しており、近いうちにシリーズA資金調達を予定しているとのことだ。

「cluster.」にVR上で有料イベントができるチケット機能、第1弾はVTuber輝夜月の音楽ライブ

2017年末あたりから、バーチャルタレント業界が急速に盛り上がってきている。

YouTube上で活動しているバーチャルYouTuber(VTuber)が一気に増え、多くのファンを獲得。ユーザーローカルが公開するVTuberのランキングを見ても、1位のキズナアイを筆頭にそのファン数や動画の総再生回数の多さに驚かされる。

今後バーチャル上で活動するタレントが増えれば、例えば握手会やライブといったイベント活動やグッズの販売など「リアルなタレントが行っているような商業活動」も本格化していくだろう。

VRイベントプラットフォーム「cluster.」が目指しているのも、まさに「バーチャル上の商業スペース」を作ること。その一歩として運営元のクラスターは7月12日より、cluster.上で有料イベントを開催できるチケット機能のβ版を公開した。

有料イベントの第1弾は、8月31日に開催が予定されている人気VTuber輝夜月(かぐや るな)の音楽ライブだ。

VR上で音楽ライブやコミケを

cluster.については過去に何度か紹介しているけれど、ユーザーがバーチャル空間上にルームを作り、イベントやライブを楽しむことができるプラットフォームだ。バーチャルなので広さや距離といった物理的な制約を受けないのが大きな特徴。数千名規模のイベントやカンファレンスにも対応する。

運営元のクラスターは2017年5月にエイベックス・ベンチャーズ、ユナイテッド、DeNA、Skyland Venturesおよび個人投資家らから2億円を調達。6月にcluster.の正式版をリリースした。

同社の創業者でCEOを務める加藤直人氏の話では、リリース以降ゲームやコミュニティのユーザー同士の会合、会社の会議など、幅広い用途で利用が進むも「どういうところでしっかりとビジネスを回していくのか」で悩んでいたという。

もともとcluster.を立ち上げた背景のひとつとして「VRヘッドセットを着けた時に、ここで音楽ライブができたらいいなと考えていた」こともあり、イグニスの子会社でVR領域の事業を手掛けるパルスと業務提携を締結。2017年の夏頃からバーチャルアイドルの活動サポートも始めていたそうだ。

「当初はバーチャルタレントがブームになるのは2〜3年後を想定していたので、長いスパンでの事業になると考えていた」(加藤氏)というが、冒頭でも触れたように一気にブームが到来した。

バーチャルタレントの場合、リアルなタレントとは違い握手会やオフ会などファンとの接点が少ないことが一つの課題。それを解決するために3Dアバターのアップロード機能などを拡充したところ、VTuberを中心とした利用が増えてきたという。

「VR上で音楽ライブやコミケができるようになる、そしてそれに自宅から参加できるようになるというのがひとつの目標だった。バーチャル上に商業スペースを作りたかったので、有料チケットやグッズの販売機能などは以前から準備に取り掛かっていた」(加藤氏)

輝夜月が「Zepp VR」でライブ開催へ

今回チケット機能のβ版がリリースされることによって、今後企業はcluster.を使ってバーチャル上で有料のイベントを開催できるようになる(現在は社数を限定し、問い合わせベースで提供)。

冒頭で触れた通り第1弾のイベントは、ソニー・ミュージックエンタテインメントが主催する「輝夜 月 LIVE@Zepp VR」。チケット価格は5400円となっていて、「高い」と思う人もいるかもしれない。

ただこの点について加藤氏は「そこでしか味わえない希少な体験を提供できれば成立しうると考えているし、むしろ安いとすら思われる文化になっていく可能性もある」という。

「(ネット上に)情報が増え、情報の価値自体は下がってきている。でもVRデバイスが届けるのは情報ではなく、体験。ユーザーが求めているのも体験であり、(デジタルコンテンツに対しても)希少な価値を感じることができればお金を払うと考えている」(加藤氏)

VR上でビジネスが成り立つ主要ジャンルは「ゲーム」「イベント」「成人向けコンテンツ」の3つというのが加藤氏の見解。クラスターが狙っていくのはこのイベントのニーズだ。

あくまでチケットはそのためのひとつの機能にすぎず、今後はバーチャルアイテムの購入機能を始め商業活動に必要な要素をアップデートしていく。

「バーチャル上の商業スペースのニーズは今後10年、20年のスパンで高まっていくはず。そこで必要となるインフラを作っていく。直近はバーチャルタレントがアーティスト活動をしやすい場所として機能を強化し、バーチャルイベントの箱となるサービスにしていきたい」(加藤氏)

GunosyとAnyPayがブロックチェーン関連事業を行う合弁会社「LayerX」の設立へ

写真左がLayerX代表取締役社長となるGunosy代表取締役 最高経営責任者の福島良典氏、右が代表取締役副社長となるAnyPay取締役の日向諒氏

GunosyAnyPayは本日7月12日、ブロックチェーン関連事業を行う合弁会社「LayerX(レイヤーエックス)」の設立について合意したと発表した。

同社の代表取締役社長はGunosy代表取締役 最高経営責任者の福島良典氏、代表取締役副社長はAnyPay取締役の日向諒氏、資本金は5000万円(株主構成はGunosy:50%、AnyPay:50%)となっており、設立は2018年8月1日を予定しているという。

新会社LayerXではブロックチェーン技術に特化したコンサルティングや開発、自社サービスの運営を軸に展開する方針。具体的にはトークンの設計コンサルティングや開発、ハッキングを防ぐコード監査、そして仮想通貨マイニングに関する事業などを検討しているそうだ。

これまでAnyPayではICOコンサルティング事業を展開。一方のGunosyでも2018年5月よりシェアオフィスなどの運営を手がけるツクルバと、ブロックチェーン技術の不動産領域への活用にむけた共同研究を開始している。

日向氏はTechCrunch Japanの取材に対し、「AnyPayがビジネス面、Gunosyが開発面でのサポート。合弁にして一緒にやっていくことで相乗効果が出てくる」と意気込んだ。

IDC Japanは2017年6月に発表した調査で「国内ブロックチェーン関連ソリューション市場の市場規模は今後急速に拡大し、2021年には298億円、2016年~2021年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は133.0%になる」と予測している。

そのような状況が背景にある中、福島氏は「おそらくこのブロックチェーンによる変化は数十年に一回あるか無いかの変化。ここに専念するというのが会社としての流れだ」と語った。

Gunosyは役割の明確化のために、代表取締役を2名体制から1名に変更。代表取締役 最高経営責任者は⽵⾕祐哉氏が勤め、福島氏はGunosy取締役 ファウンダー、そしてLayerX 代表取締役を兼任することになる。この異動は2018年8月24日に正式に決定される予定だ。

「代表である僕が新会社に専念する形になる。それだけ本気でこの領域を立ち上げる」(福島氏)

新会社LayerXはICO市場で技術的に⾼度で専⾨的なサポートへの需要が⾼まっていくと予測し、設立される。

コード監査事業に関しては、福島氏の話だと「スマートコントラクトでは一度コードをすると契約が自動的に執行されるため、性質上バグが入り込んでしまっても容易に修正できない。海外の大きなプロジェクトではプロフェッショナルに事前のコードチェックが当然のようにやられている」そう。今後日本でもブロックチェーンのアプリケーションが増えていく中で、同じような需要が増えていくことを見据えた事業になるという。

また、マイニングに関する事業に関して、「課題としては今、中国がマイニングのシェアの7割以上に到達している。この状態は仮想通貨・ブロックチェーンの未来を考えると良い状況ではない」と説明した上で、「日本の電気代とかだとなかなかマイニングするのが難しく、そもそもマイニング自体の専門的な知識も必要だ。たとえば僕たちが海外の良い場所を探してきてお客さんに提供できないか、といったことを検討している」と語った。

福島氏はGunosyの今後の方針に関して、「Gunosyはニュースアプリや、”LUCRA”のような女性向けメディアなどの”メディアの会社”としてやってきたが、本当の強みは裏側のアルゴリズムなどのテクノロジーの部分だ。メディアカンパニーというところから、テクノロジーの総合カンパニーに移行していく」と語った。

なお、Gunosyは同日、技術革新や規制緩和が期待できる領域のスタートアップに対する投資育成を行うコーポレートベンチャーキャピタル「Gunosy Capital」を設立することを発表した。「主にブロックチェーン/シェアリングエコノミー/AI 等のデジタル領域等、今 後規制緩和や技術革新が期待できる領域に対する投資育成」を目的としているという。設立は2018年9月1日を予定している。