GMがカリフォルニアでのリチウム抽出プロジェクトに投資、優先権を獲得

General Motors(ゼネラルモーターズ、GM)は米国産のリチウムに投資する。同社は米国時間7月2日、ロサンゼルス近くのソルトン湖地熱地帯からリチウムを採取するオーストラリア企業のプロジェクトの初の投資家になったと明らかにした。リチウムは電気自動車(EV)のバッテリーの重要な要素だ。GMはControlled Thermal Resources(CTR)の「Hell’s Kitchen(ヘルズ・キッチン)」リチウム採取プロジェクトで生産されるリチウムの優先権を獲得する。

ヘルズ・キッチンプロジェクトでは2024年からリチウムを生産する見込みだ。生産されたものはGMのUltiumバッテリーセルに使用される。Ultiumバッテリーセルは現在行われている認証とテストを経てLG Energy Solutionとの合弁会社が生産する。GMの電動化戦略と電池エンジニアリング担当ゼネラルディレクターであるTim Grewe(ティム・グレーヴェ)氏は、どれくらいの量のリチウムをGMが獲得することになるのか具体的には示さなかったが「(GMの)北米のリチウムのかなりの量になる」ことを予想している、と述べた。

GMや他の自動車メーカーが、電動化の目標を達成するにはかなりのリチウムを必要とする。GMは2035年までに内燃エンジンから完全移行することを目指している。しかしそうした大規模な移行はかなりの競争に直面することを意味する。それは顧客の獲得だけでなく、バッテリーのような重要なパーツを構成する鉱物のソースについてもそうだ。

一般的に、リチウムは岩石を砕いて採掘するか、塩水から鉱物を抽出して生産される。どちらの手法も環境への負荷のために非難されている。CTRのプロジェクトが抜きん出ているのは、リチウムを生産するのにソルトン湖地熱地帯で生み出される再生可能な地熱エネルギーを使うという点だ。ソルトン湖地熱地帯は、すでに地熱発電所11カ所が稼働しているインペリアル・バレーの広い範囲を占める。

再生可能エネルギーによる給電に加え、プロジェクトは使用した塩水を地下に戻し、採掘の廃棄物など生産にかかる尾鉱を残さないクローズドループ直接抽出工程をとる、とCTRは話す。

世界のリチウムの大半はわずかな国で生産されていて、主にチリ、オーストラリア、中国、アルゼンチンだ。米国にはリチウム生産サイトが1カ所だけある。ネバダ州にある化学製造大手Albemarleが所有する塩水採取サイトだ。しかし近年、鉱物の国内生産を促進する動きが増している。これは主に2つのトレンドによるものだ。1つは、部分的にはバッテリーを搭載する電気自動車への移行により急増が見込まれる、鉱物に対する需要予想。もう1つは先端技術において米国の競争力を保ち続けるという超党派の意向だ。

カリフォルニア州エネルギー委員会によると、現在の世界のリチウム需要の3分の1をカリフォルニア州のリチウム鉱床で賄える可能性がある。CTRのプロジェクトは、ソルトン湖の広大な塩水田からリチウムを抽出することを目指している多くの取り組みの1つだ。

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タグ:GMリチウム電気自動車バッテリー

画像クレジット:General Motors

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

ボルボが次世代自動車の方向性を示すEVコンセプトカー「Concept Recharge」を発表

Volvo Cars(ボルボ・カーズ)は、2030年までにラインナップを完全に電動化したいと考えている。それを実現するための計画と、次世代の自動車がどのようなものになるのかを、同社は中央欧州時間6月30日に明らかにした。

しかし、ボルボは単独でそれを開発するつもりはない。同社は将来のモデルラインナップを、Northvolt(ノースボルト)やGoogle(グーグル)、Luminar(ルミナー)などのパートナー企業と協力して構築する計画について詳しく説明した。そして同社の次世代電気自動車の「マニュフェスト」として、フラットなフロア、車内に備わる2つのスクリーン、観音開き式のドアを特徴とするコンセプトカー「Concept Recharge(コンセプト・リチャージ)」の画像を初公開した。

Volvo Concept Recharge(画像クレジット:Volvo Cars)

Concept Rechargeのルーフには、Luminar製のLiDARセンサーが搭載されている。これは、2021年6月初めに発表された、ボルボの次期フラッグシップ電動SUVにLuminarのテクノロジースタックが標準装備されるという発表に沿ったものだ。

バッテリーに関しては、ボルボはスウェーデンのバッテリー開発企業であるNorthvoltと共同で、航続距離1000キロメートルを可能にするパックを開発しており、Northvoltがそれを実現すれば、エネルギー密度の面で大きな功績となるだろう。両社は、2026年までに巨大バッテリー工場を欧州に建設することを目指し、新たに50%ずつの出資で合弁会社を設立する。この工場では最大で年間50ギガワット時のバッテリーパックを製造する能力を有するという。また、ボルボは2024年より、スウェーデンのスケレフトーにあるNorthvoltのバッテリー工場から、年間15ギガワット時のバッテリーを調達する予定だ。

将来のボルボの車両は双方向充電が可能になる。これは、EVを移動可能な発電機として使用したり、あるいは車載バッテリーパックに蓄えておいたエネルギーを電力網に放出し、ミニ発電所としての役割を果たせる機能だ。

ボルボは同社独自のOSである「VolvoCars.OS」が、Googleが主導するインフォテインメントシステムや、Linux(リナックス)、QNX、そして車載電子制御ユニット用のAUTOSAR(オートザー)などを含む、基礎的なオペレーティングシステムの「アンブレラシステム」として機能すると述べている。車両には最大100個の電気制御ユニットが搭載されるが、これらはNVIDIA(エヌビディア)と共同で開発した3基のメインコンピューターで構成されるコアコンピューティングシステム上で動作する。

また、ボルボは主力の電気自動車SUVに、Luminarのセンサー群と、ボルボのソフトウェア部門であるZenseact(ゼンセクト)の技術を搭載する計画についても、より詳細に説明した。ボルボの経営陣は、自動運転システムのレベル(米国自動車技術者協会が区分けした自動運転化のレベルを測る尺度)を尋ねる質問には答えず、今後導入する自動運転走行システムについては「要監視」または「監視不要」という言葉で説明したいと述べた。ボルボのシステムでは、ドライバーの監視が必要な「クルーズ」と、監視を必要としない「ライド」という2つのモードに分けられ、将来は監視不要な機能を徐々に導入していくとしている。

将来的にこのシステムは、顧客から大量の運転データを収集することになるが、ボルボはそれを無駄にするつもりはない。同社は、運転自動化機能を利用した顧客から(顧客の同意を得て)収集した情報を処理するデータファクトリーの構築を目指しているという。これらのデータを活用してシステムを改善していき、それを無線アップデートを介して顧客の車両に反映させる予定だ。

「私たちは、この会社を単なる従来型のプレミアムな会社から、急速に成長している新しいプレミアムな電気自動車セグメントのリーダー的な会社へと変えていく必要があります」と、ボルボ・カーズのHåkan Samuelsson(ホーカン・サムエルソン)CEOは語っている。「私たちは内燃機関を理解したように、電池を理解する必要があります」。

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タグ:Volvo CarsEVコンセプトモデルLiDAR

画像クレジット:Volvo Cars

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

北米ホンダ初の電動SUV「プロローグ」は2024年初めに発売、EV量販モデル第1弾はGMと共同開発

ホンダの米国法人であるAmerican Honda Motor Co.(アメリカン・ホンダモーター)は、同社にとっては北米で初のフル電動SUVを2024年初頭に発売すると発表した。これは、2020年代半ばまでにガソリン車からの脱却を目指す同社の取り組みの一環だ。「Prologue(プロローグ)」という車名は、ホンダが「新しい電動化時代」と呼ぶものの序章を意味している。

Prologueは、ゼネラルモーターズ(GM)の「アルティウムセルズ」EVプラットフォームとバッテリーパックを採用した、今後発売される2車種のホンダ車のうちの1つだ。もう1車種はAcura(アキュラ)ブランドの電動SUVで、2024年にデビューする予定。GMはOEMメーカー2社の間で長年続いているパートナーシップの一環として、これら2車種を北米の同社工場で製造する。

ホンダは価格やクルマの外観などを含め、これらの新型SUVの重要な詳細については今のところ口を閉ざしている。しかし同社は、Tesla(テスラ)の「Model Y(モデルY)」、Ford(フォード)の「Mustang Mach-E(マスタング・マッハE)」、Volkswagen(フォルクスワーゲン)の「ID.4」などのライバルに対抗し、競争の激しい電動SUV市場に参入することになる。

ホンダは、GMやVolvo(ボルボ)を含む他の自動車メーカーとともに、北米地域での野心的な電動化目標を設定している。同社の三部敏宏社長は2021年4月、バッテリー式・燃料電池EV販売の割合を2030年までに40%、2035年までに80%まで引き上げ、2040年までに内燃エンジン車の販売を全廃するという目標を掲げた。その一環として、ホンダは独自の新EVプラットフォーム「e:Architecture(e:アーキテクチャー)」を開発し、2020年代後半に発売するEVモデルに採用する計画があると発表した。

また、ホンダは米国時間6月28日、Battery Resourcersとの間で、ホンダとアキュラのEVに搭載されたバッテリーをリサイクルする契約を締結したと別途発表した。これらのバッテリーは、まずマサチューセッツ州ウースターにあるリサイクル会社のサイトで処理され、その後、2022年に稼働する予定の商業規模の工場で処理されるとのこと。Battery Resourcersは最近、新工場の開設を含む事業拡大のために2000万ドル(約22億1000万円)のシリーズBを調達していた。

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画像クレジット:Geoff Robins / AFP / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

世界最高速度の時速408キロに挑戦、英新興バイクメーカーが「風穴付き電動バイク」WMC250EVを発表

世界最高速度の時速408キロに挑戦、英新興バイクメーカーが「風穴付き電動バイク」WMC250EVを発表

White Motorcycle Concepts

英国の新興バイクメーカーWhite Motorcycle Conceptsが「初の作品」と称する電動バイク ”WMC250EV” をシルバーストーンサーキットで発表しました。このバイクは、数か月前に元GPライダーのマックス・ビアッジがVoxan Wattmanで記録した電動バイクの最高速度記録408km/hを打ち破るという大いなる野望とともに姿を現しました。

このバイクの最大の特徴は、バイクのノーズからテールまで、巨大な”風穴”が貫通しているということ。この穴 ” V-Air(特許取得済) ” が車体の発生する空気抵抗を70%も削減するうえ通常のバイクの5倍の力で前輪を地面に設置させると説明されます。この構造は内燃エンジンをフレームに固定する必要がなく、重量のあるパワートレインやバッテリーを低い位置に配置できる電動バイクだから実現できました。またライダーはバイクに跨った際、形状的に完全にバイクに一体化するようになります(一番上の写真、ライダーが乗っているのにお気づきでしょうか)。

世界最高速度の時速408キロに挑戦、英新興バイクメーカーが「風穴付き電動バイク」WMC250EVを発表

White Motorcycle Concepts

なかなか奇抜なバイクですが、このバイクはWRCを始めとするモータースポーツ分野で活躍してきたプロドライブでル・マン・プロトタイプカーを開発し、さらにオーストラリアV8スーパーカーシリーズ、そしてメルセデスF1チームで活躍してきた、この道25年のエンジニアWhite Motorcycle Concepts創設者のロバート・ホワイト氏が開発しました。彼は4輪レースで培ってきた速さを追求するための技術を2輪の最高速挑戦にも応用したとのこと。

電動バイクとしては後輪を駆動するのに30kWのモーターを2基搭載。さらに前輪にも20kWモーターを2基搭載して合計100kW(134ps)のAWD化。前輪にも駆動力を与えることで設置性を高める効果が得られるとのことです。その他、WMC250EVは全長2.44m、ホイールベース1,800mmのロングホイールベースを採用しています。15kWのリチウムイオンバッテリーを搭載し、部品のほとんどはカーボンまたはアルミニウム、総重量は300kg程度とのこと。

世界最高速度の時速408キロに挑戦、英新興バイクメーカーが「風穴付き電動バイク」WMC250EVを発表

White Motorcycle Concepts

ホワイト氏はWMC250EVを使い、これから1年のあいだにマックス・ビアッジとVoxan Wattmanが打ち立てた11の電動バイクによるFIM世界記録を打ち破るとしています。そしてうまく行けば、この空力技術は将来開発されるであろうブランドの市販モデルに応用されるかもしれません。

ちなみに、4輪ではかのロータスが、2000馬力の電動ハイパーカー”エヴァイヤ”でボディに大きな風抜き穴を採用しています。また徹底的に速さを追求するF1の世界では、過去に車体下部の空気を巨大なファンで吸い出して路面に吸着するブラバムBT46Bというマシンが、かのニキ・ラウダのドライブでデビューウィンを果たし、翌レースからすぐに規則違反として使用禁止にされました。

(Source:White Motorcycle ConceptsEngadget日本版より転載)

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タグ:電気自動車 / EV(用語)電動バイク(用語)White Motorcycle Concepts(企業)

ボルボの次世代電動フラッグシップSUVはLuminarのLiDARセンサーが標準装備に

Volvo Cars(ボルボ・カー)とLuminar Technologies(ルミナー・テクノロジーズ)が、パートナーシップをさらに強化する。両社は米国時間6月24日、Luminarの自動運転機能スタック(LiDARセンサーや独自の認識システムを含むハードウェアとソフトウェアの組み合わせ)が、2022年にボルボから登場する電動フラッグシップSUVに標準で搭載されることを発表した。

Luminarは2020年5月にボルボとの生産契約を発表したが、その時点ではLuminarのスタックは、ボルボの車両に追加費用が必要なオプションとして用意される予定だった。しかし、今回の発表によると、ボルボの「XC90」の後継モデルに全車標準で装備されることになったという。

ただし、Highway Pilot(ハイウェイ・パイロット)と呼ばれる機能を利用したい場合は、追加料金を支払う必要がある。この機能は、高速道路の認可された区間・条件下で自動運転走行が可能になるというもので、ドライバーは完全に運転から開放される。現在の路上で一般的に実用化されている多くのシステムのように、人間の運転者が監視を続ける必要さえなくなるという。市販の自動運転システムでは最も高性能なものになるが、顧客がこの機能を望むのであれば、そのための費用を払わなければならない。

この機能は、安全な状況でなおかつ合法的に使用が許可された区間であることが確認された場合のみ作動すると、両社はプレスリリースで述べている。顧客が追加料金を払わずに使える機能は、自動緊急ブレーキや車線逸脱防止支援など、自動車事故の最も一般的な原因を未然に防ぐための一連の安全機能だ。

画像クレジット:Volvo Cars

今回発表されたボルボとの契約は、Luminarにとって大きな恩恵となることは間違いない。ボルボの車両に標準で装備されるとなれば、生産量が増加することに加えて、全車両を合わせると何万キロメートルもの走行距離をシステムが経験することになるため、自動運転スタックにフィードバックできる貴重なデータを得ることができる。また、このシステムは無線でのアップデートが可能なので、時間の経過とともにシステムが「賢く」なっていくため、ドライバーにとっても恩恵がある。

ボルボはまだ、Highway Pilotの価格を明らかにしていない。また、新車購入時にオプション料金として払うことになるのか、それとも月額使用料を払う必要があるのかも、現時点では不明だ。しかしボルボによれば、完全自動運転が実現する際には、すべての車両が「ハードウェア的には準備が整った状態」になっているとのことだ。

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タグ:Volvo CarsLuminar TechnologiesLiDAR自動運転電気自動車

画像クレジット:Volvo Cars

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【コラム】さらなる電化の普及にはまったく新しいバッテリー技術へのアプローチが必要だ

世界経済の広範な電化への移行により、輸送、家電、医療機器、家庭用エネルギー貯蔵などの業界にわたって、長寿命で高速充電のバッテリーに対する需要が高まっている。この移行のメリットは十分理解されているものの、実際には、バッテリーのイノベーションは社会の大望に追いついていない。

世界の気温が今後5年間で「パリ協定で示された1.5℃の制限を超えて上昇する」可能性は40%と予測する報告もあり、完全に商業化するまでにさらに10年かかることも考えられる次世代バッテリーの開発には、無駄な時間を費やす余裕がほとんどないことは明らかである。

電力供給への圧力の高まりに対応する上で、充電式バッテリーを迅速に拡張して温室効果ガスの排出を世界的に抑制し、気候危機の最悪のシナリオを回避する唯一の方法は、バッテリー構築に対するまったく新しいアプローチである。

バッテリーイノベーションへの挑戦

過去数十年にわたり、バッテリーの専門家、自動車メーカー、Tier 1サプライヤー、投資家などが、主にバッテリー化学に焦点を当てた次世代バッテリーの開発に世界中で数十億ドル(約数千億円)を費やしてきた。しかし、業界は依然として、バッテリーの普及を妨げている2つの大きな技術的課題に取り組んでいる。

  1. エネルギーと電力のトレードオフ:現在製造されているバッテリーはいずれも、電力とエネルギーとのトレードオフに直面している。バッテリーは、より多くのエネルギーを蓄えるか、さもなくばより高速で充電 / 放電を行うか、である。つまり、電気自動車に関して言えば、1つのバッテリーで航続距離の長さと高速充電を両立させることはできない。
  2. アノードとカソードのミスマッチ:今日最も有望とされるバッテリー技術は、リチウムイオンバッテリーセルを構成する一対の電極の負極であるアノードのエネルギー密度を最大にする。しかし、アノードはその正極であるカソードよりもすでに大きなエネルギー密度を有している。一定のバッテリーサイズから最大のエネルギー貯蔵容量を得るには、カソードのエネルギー密度が最終的にアノードのエネルギー密度と一致する必要がある。カソードのエネルギー密度を向上させる突破口がなければ、今日最も期待されているバッテリー技術の多くは、その潜在能力を十分に発揮することができないであろう。現在のところ、一般に使用されているリチウムイオンバッテリーは、オール電化の将来の幅広い用途のニーズを満たすことができない。多くの企業が新しいバッテリー化学を通じてこれらの要求に取り組み、高電力対エネルギー密度比をさまざまな成功の度合いに最適化しようと試みてきたが、大規模化と商業化に必要な性能指標の達成に近づいている企業はほとんどない。

固体バッテリーは究極の目標だろうか?

バッテリーの研究者たちは、高エネルギー密度と安全性の向上を実現する能力を持つ固体バッテリーを、バッテリー技術の究極の目標としてきた。しかし最近まで、この技術は実用性に欠けていた。

固体バッテリーは非常に高いエネルギー密度を有し、可燃性の液体電解質を使用しないため、潜在的により高い安全性が見込まれる。しかし、この技術はまだ初期段階にあり、実用化までの道のりは長い。固体バッテリーの製造プロセスは、特に今後数年間に50ドル(約5500円)/kWhという積極的な低コスト化の実現を目指す自動車業界にとって、コスト低減に向けて改善される必要がある。

固体状態技術の具現化における別の実質的な課題は、単位体積当たりのカソードに蓄積され得る総エネルギー密度の限界である。このジレンマに対する明白な解決策は、より厚いカソードを備えたバッテリーを得ることであろう。しかし、カソードが厚くなると、バッテリーの機械的および熱的安定性が低下する。この不安定性は、層間剥離(材料が層に破壊される破壊モード)、亀裂、および分離を引き起こし、これらすべてが早期のバッテリー故障の原因となる。さらに、カソードを厚くすると拡散が制限され、電力が減少する。その結果、カソードの厚さには実用的な限界があり、アノードの電力を制限している。

シリコンを使用した新しい素材の採用

ほとんどの場合、シリコンベースのバッテリーを開発している企業は、グラファイト(黒鉛)にシリコンを30%まで混ぜてエネルギー密度を高めている。Sila Nanotechnologies製のバッテリーは、シリコン混合物を使用して高エネルギー密度を実現している。別のアプローチは、Ampriusの製品のように、非常に薄い電極と高い製造コストという制約を受ける100%純粋シリコンのアノードを使用して、さらに高いエネルギー密度を生成することである。

シリコンはかなり大きなエネルギー密度を提供するが、これまでその採用を妨げてきた重大な欠点が存在する。この材料は、充放電時の収縮と膨張に起因するバッテリー寿命と性能の制限をともない、製造業者が商業的に採用する前に解決しなければならない劣化の問題につながっている。こうした課題にもかかわらず、一部のシリコンベースのバッテリーはすでに商業的に導入されており、自動車分野ではテスラがEVへのシリコン採用をリードしている。

電化の必須条件は、バッテリー設計に新たな重点を置くことである

バッテリーアーキテクチャとセル設計の進歩は、既存および新興のバッテリー化学による画期的な改善の可能性を大いに示している。

メインストリームの観点から最も注目すべきは、おそらくTeslaが2020年のバッテリーデーに発表した「ビスケット缶(円筒形)」バッテリーセルだろう。リチウムイオン化学を引き続き採用しているが、アノードおよびカソードとバッテリーケーシングの間の正極と負極の接続点として機能するタブを外し、代わりにセル上端すべてを電極にする設計を施している。この設計変更により、航続距離を向上させながら製造コストを削減し、DC電力で高速充電する際にセルが遭遇する可能性のある熱障壁の多くを取り除くことが可能になる。

従来の2D電極構造から3D構造への移行は、業界で注目を集めているもう1つのアプローチである。3D構造により、あらゆるバッテリー化学において、アノードとカソードの両方で高エネルギーおよび高出力性能が得られる。

3D電極はまだ研究開発と検証の段階にあるものの、市場競争力のある価格で高性能製品を製造することにより、2倍のアクセス可能容量、50%の充電時間短縮、150%の長寿命化を実現する。したがって、広範な用途のためのエネルギー貯蔵の可能性を最大限に引き出すべくバッテリー性能を向上させるためには、バッテリーの物理的構造を変更することに力点を置いた解決策を開発することが重要である。

バッテリー競争を勝ち抜く

性能の向上だけでなく、生産性とコスト削減も完璧に実現することが、バッテリー競争における優位性につながる。2027年までに2797億ドル(約30兆円)に達すると予測されている、急速に拡大するバッテリー市場で大きなシェアを獲得するには、世界各国が低コストのバッテリー製造を大規模に展開する方法を見つけていく必要がある。既存の組み立てラインや材料に組み込むことができる「ドロップイン」ソリューションと革新的な生産方法の優先順位づけが鍵となる。

バイデン政権による米国の雇用計画は、野心的な炭素削減目標を達成しつつ、電化のリーダーになるという米国の目標にとって、国内のバッテリー生産の重要性を強調している。こうした取り組みは、バッテリー市場で重要な競争力を維持し、1620億ドル(約18兆円)規模の世界EV市場で最大のシェアを獲得する能力を確立する上で重要な役割を果たすだろう。

突き詰めて言えば、完全な電化に向けた競争で勝利する技術は、性能に最大の影響度を有し、低コストで、既存の製造インフラとの互換性を備えたものとなる。総合的なアプローチを採用し、最先端の化学を微調整しながら、革新的なセル設計にさらに注力することで、世界が切望しているバッテリー性能と迅速な商業化における次のステップに到達することができるであろう。

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タグ:バッテリーコラム電気自動車Tesla

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(文:Moshiel Biton、翻訳:Dragonfly)

フォードがEVバッテリー管理ソフトウェアのElectriphiを買収、法人顧客向けEV事業を強化

Ford(フォード)は法人顧客向けの電気自動車(EV)2種、E-Transit貨物バンF-150 Lighting Proを準備中だ。そして現在、同社はバッテリー管理と車両モニタリングソフトウェアのスタートアップElectriphi(エレクトリフィ)の買収で未来のEV法人事業を完成させようとしている。

買収取引条件は公開されなかった。Fordは創業3年のサンフランシスコを拠点とするElectriphiが、2030年までに充電だけで10億ドル(約1100億円)超の売上高を達成すると期待している。新部門Ford Proは充電にとどまらず財政面での野心を抱えている。ハードウェアとその周辺のもの、そして新たなサービスで、2019年に270億ドル(約2兆9810億円)だった売上高が2025年までに450億ドル(約4兆9690億円)になると予想している、と述べた。

30人のチームのElectriphiは新設のFord Proに加わる。Ford ProはE-Transit貨物バンとF-150 Lighting Proピックアップトラックの法人顧客へのサービス提供に注力している。Fordは2021年後半に顧客へE-Transitの納車を開始する。全電動Lightingピックアップトラックの商用モデルであるF-150 Lighting Proは2022年春にマーケット投入される見込みだ。

「法人顧客が電気自動車を管理車両に加えるにつれ、顧客は車両が毎日充電され、仕事に使う準備ができているようにするために車両デポ充電ステーションのオプションを求めています」とFord ProのCEOであるTed Cannis(テッド・カニス)氏は述べた。「Electriphiの既存の高度なテクノロジーIPをFord Proの電動車両とサービスのポートフォリオに持ってくることで、我々は法人顧客向けのエクスペリエンスを向上させ、車両デポ充電のための単一ソリューションになります」。

Electriphiは、州や連邦政府の命令で重量車や中型商用車が電動化されることが明白になった2018年に創業されたと共同創業者でCEOのMuffi Ghadiali(マフィ・ガディアリ)氏は最近のTechCrunchとのインタビューで語った。Electriphiは米国内外でスクールバスや公共バスなどを含む商用電動車両を展開する部門にフォーカスしてきた。

「今後10年で何が起こるのかを考えてみてください。エネルギーとソフトウェア向けのモビリティでかなりのトランフォーメーションを目にします」とガディアリ氏は話した。「リスクは高く、事は一刻を争います」。同氏は2020年代末までにゼロエミッション車両に移行することを求める、今後出される命令に車両オペレーターが神経質になっている、と指摘した。「すべての車両を10年で交換するためには、ただちに動き始めなければなりません。『このトランジションの間にも車両オペレーションを止めないようにしなければ』というはずです」。

Fordは2021年初めにElectriphiに接触した。ElectriphiはFordとの取引の前に約1100万ドル(約12億円)のバリュエーションで420万ドル(約4億6400万円)を調達した。

FordのフォーカスはE-TransitとLightning Pro向けのソフトウェア構築である一方で、同社がElectriphiの顧客ベースに引き続きサービスを提供するのはあり得る。

「興味深いことに、基本的なFordのプラットフォームはさまざまなタイプの車両やスクールバスで使われていることがわかりました」とガディアリ氏は話した。「ですので、我々が行っていることに関連があるため、どの部門に我々が関与しないことになるのか明言は困難です。もちろん、我々はFordが2022年に始める大量出荷に照準を当てています」。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Ford電気自動車買収

画像クレジット:Ford

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

電気自動車のCanooがオクラホマに工場を建設、2023年から生産開始

SAPC(特別買収目的会社)との合併を通じて最近公開企業となった電気自動車(EV)スタートアップCanoo(カヌー)は最大2000人が働く工場をオクラホマに建設する計画だ。新たにCEOに指名されたTony Aquila(トニー・アクイラ)氏が米国時間6月17日に行われた投資家向け説明会で明らかにした。

工場はオクラホマ州のタルサから約45分のプライアーにあるミッドアメリカ工業団地内の400エーカー(約1.62平方キロメートル)の敷地に建設される。Canooが「メガマイクロファクトリー」と表現する工場は塗装、修理、総組立のプラントを擁し、2023年の開所が予定されている。周辺には多くの製造・ロジスティック企業が立地している、とアクイラ氏は述べた。

「信じられないほど成長すると考えているハブです」と同氏はイベントで話した。「それに加えて、北米のロジスティックと動きのど真ん中に位置し、どこにでもアクセスし、日帰りできることはかなり重要です」。

初のEVを2022年第4四半期に発売すると明らかにしているCanooはまた、工場建設の間、最初の生産を行うためにオランダ拠点の委託製造メーカーVDL Nedcarと提携すると発表した。

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Canooの今回の発表の1年近く前に、オクラホマはTeslaの工場誘致で破れている。Teslaは東海岸の顧客に販売するCybertruck、Tesla Semi、Model Y、Model 3を生産する工場の建設地として最終的にオースティン近くを選んだ

「とても胸躍らせています。我々は売れ筋の州で、生産に最適なところです」とオクラホマ州知事のKevin Stitt(ケビン・スティット)氏は述べ、同州の電気代が米国で最も安いことも指摘した。同州の安い電気代はGoogleのような企業をひきつけてきた。Googleはプライアーでデータセンターを稼働させている。

Canooの投資家説明会は、同社のビジョンの特定のカ所にフォーカスしているエンジニア、デザイナー、役員らを特集した。同社は消費者と商業客向けのプロダクトに注力している。同社のすべてのEVは同じスケートボードを共有し、ユニークな車両とするために組み合わせ可能な種類の異なるキャビンと「トップハット」を使う。電気マイクロバスやピックアップトラック、B2B応用のためのものなど、すでにいくつかの車両を発表した。CTOのPete Savagian(ピート・サバジアン)氏によると、同社は従業員数も増やし、2021年第1四半期末で約435人になった。そして2021年末までに690人へとさらに増やす計画だ。

投資家説明会は、多難続きだった同社をアクイラ氏が舵取りするようになってから初の大きな公開イベントだった。

Canooは2017年にEvelozcityとして始まり、Faraday Futureの元幹部のStefan Krause(ステファン・クラウス)氏とUlrich Kranz(ウーリッヒ・クランツ)氏によって創業された。2019年春に社名をCanooに変更し、その数カ月後に初の車両をデビューさせた。ユニークな外観の車両と、サブスクでのみ提供するという初期計画で投資家とメディアの注目を集めた。同社はまたHyundai(現代自動車)と共同開発の提携も獲得したが、アクイラ氏の2021年3月のコメントによると、この取引は2021年初めにCanooが事業モデルを変更し、エンジニアリングサービスを他のメーカーに提供しないと決めた後に反故になった。

Canooはまた、共同創業者も失った。まずクラウス氏で、直近ではクランツ氏が社を去った。そして5月、同社は米証券取引委員会の調査を受けていることを明らかにした。5月17日に発表された四半期決算によると、調査は広範にわたり、特別買収目的会社Hennessy Capital Acquisition Corp.のIPO、Canooとの合併、Canooのオペレーション、ビジネスモデル、売上高、収益戦略、顧客契約、収益、そして直近の幹部の退職などが対象となっている。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

リンカーン初の電気自動車は2022年発売、続いて3台の新型EVが登場予定

Lincoln Motor(リンカーン・モーター)は、2022年にブランド初の電気自動車を発売し、続いて3台のEVを市場に投入すると発表した。これは2020年代が終わるまでにすべてのポートフォリオを電動化するという、同社が掲げた目標の一環だ。

最初の電気自動車は、リンカーンの100周年を記念して市場に登場する予定だ。またそれは、この高級車ブランドがラインナップ全車の電動化を目指していると最初に報道されてから約4年後のことになる。

GMの高級車ブランドであるCadillac(キャデラック)と同様、リンカーンのラインナップには完全な電気自動車がまだない。しかしリンカーンは、2025年までに全世界における販売台数の半分をゼロエミッション(排ガスを一切出さない)車にするという高い目標を掲げている。これらの新型車は、2025年までに電気自動車に300億ドル(約3兆3000億円)を投資するという(リンカーン・ブランドの親会社である)Ford(フォード)の公約の下に計画されているものだ。

今回のリンカーンの発表は、フォードやその競合他社から発表された一連のEV関連ニュースに続くものでもある。ライバルのGMは米国時間6月16日、EVと自動運転車に350億ドル(約3兆9000億円)を投資する計画を発表した。これは、同社が2020年11月に公約した投資額から、さらに80億ドル(約8860億円)増えたことを意味する。

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リンカーンのEVは当初、Rivian(リヴィアン)のスケートボード型プラットフォームをベースに使用して作られる予定だったが、その計画は2020年4月に破棄された。両社は当時、まだ将来的に共同でクルマを開発する計画があると述べていた。リンカーンの広報担当者は、そのような共同開発計画がまだ残っていることを認めたが、それ以上の情報は明らかにしなかった。

当面、リンカーンの電気自動車は、フォードが開発した新しいEV専用アーキテクチャをベースにすることになる。フォードは5月に投資家向け説明会で、小型SUVおよびセダン用と大型ピックアップ用という2つのフレキシブルなプラットフォームを開発していることを発表した。これは、現行のFord Mustang Mach-E(フォード・マスタング・マックE)やFord F-150 Lightning(フォードF150ライトニング)に採用されているアーキテクチャとは別物だ。

新しいフレキシブルなプラットフォームは、後輪駆動または四輪駆動にすることが可能で、Lincoln Aviator(リンカーン・アビエーター)とFord Explorer(フォード・エクスプローラー)のEVバージョンの車台になることが期待されている。

リンカーンによると、同ブランド初の完全な電気自動車は、プラグインハイブリッドSUVのアビエーターとCorsair(コルセア)に続く電動モデルになるとのこと。リンカーンは、この新しいEVがどのようなモデルになるかを明らかにしていないが、2021年の上海モーターショーで公開されたコンセプトセダン「Zephyr Reflection(ゼファー・リフレクション)」(トップ画像)に似たデザインになることを示唆している。このコンセプトカーは特別に中国市場に向けて製作されたものだが、リンカーンのEVは米国と中国の両方で販売される予定だ。

リンカーンは新型EVのインテリアについても情報を公開している。ミニマリスティックで広々とした空間に、さらなる開放感が得られるパノラミックルーフを備えた車内を、メーカーは「聖域(sanctuary)」という言葉で表現している。同社の次期EVで最も注目すべき点は、Android OSをベースとしたデジタルプラットフォームを採用し、サードパーティ製アプリやサービスの利用や、ソフトウェアのリモートアップデートが可能になることだろう。

リンカーンの新型EVには、高速道路の特定区間でハンズフリー走行が可能になるなど、高度な運転支援機能も搭載される予定だ。

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タグ:Lincoln Motor電気自動車Ford

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ボルボの高級EVブランドPolestarが初のフル電動SUV「Polestar 3」を米国で生産へ

Volvo Car Group(ボルボ・カー・グループ)の独立したEVパフォーマンスブランドであるPolestar(ポールスター)が、初のフル電動SUVを米国で製造することになった。

同社は中央ヨーロッパ時間6月16日、この「Polestar 3(ポールスター3)」の組み立てを、サウスカロライナ州リッジビルにあるVolvo Cars(ボルボ・カーズ)との共同工場で行うと発表した。Polestar 3は、EVセダン「Polestar 2(ポールスター2)」と、ハイブリッドグランドツアラー「Polestar 1(ポールスター1)」に続くモデルとなる。Polestar 3の生産は、2022年にグローバルで開始される予定だ。

PolestarのDennis Nobelius(デニス・ノベリアス)COOは、米国での生産により、納期の短縮、世界各地への車両輸送にともなう環境負荷の低減、Polestar 3の価格低減が可能になると述べている。

「これらすべてが、重要な米国の販売市場において、ブランドの競争力をさらに高めます」とノベリアス氏は語った。

また、Polestarは2021年、米国内に約25カ所のリテールスペースを開設し、顧客が同社の車両を試乗できるようにするとともに、無料のピックアップ&デリバリーサービスや出張サービスを提供する予定だという。

Polestar 3は米国の顧客向けに設計されており、同ブランドの車両としては初めて米国で製造されるモデルになる。今回の発表は、PolestarがChongqing Chengxing Equity Investment Fund Partnership、Zibo Financial Holding、Zibo Hightech Industrial Investmentが主導した最初の外部ラウンドで5億5000万ドル(約607億円)を調達してから2カ月後のことだ。そのラウンドには韓国のグローバルコングロマリットであるSK Inc.(SKグループ)をはじめ、さまざまな投資家が参加した。

Polestarは、かつてVolvo Cars傘下のハイパフォーマンスブランドだった。2017年には、Tesla(テスラ)が最初に満たしそれ以来席巻しているニッチ分野である、エキサイティングで運転するのが楽しい電気自動車の生産を目的としたEVパフォーマンスブランドとして再編成された。Polestarは、Volvo Car Groupと中国のZhejiang Geely Holding(浙江吉利控股集団有限公司)が共同で所有している。Volvo Carsは2010年にGeely(ジーリー、吉利汽車)に買収された。

Polestarは設立以来、中国に製造施設を開設し、グローバルな販売・流通体制を構築して、Polestar 1とフルEVのPolestar 2で2車種を発売してきた。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Aya Nakazato)

GMが3.8兆円をEV開発へ投資、従来の計画に8850億円上乗せ

General Motors(ゼネラル・モーターズ)は米国時間6月16日、2025年までに電気・自動運転車に350億ドル(約3兆8722億円)を投資すると述べ、これまでに明らかにしていた額を引き上げた。2020年11月に発表した計画の額に80億ドル(約8850億円)を上乗せする。

同社は2025年までにグローバルマーケットでEV30種を展開し、2035年までに全ゼロエミッションに移行する目標を打ち出している。新たな投資で、GMは新しい電動商用トラックを北米の計画に追加し、米国での電動SUV組立能力を拡大すると述べた。

新たなEVモデルの充実したポートフォリオを構築するのに加えて、同社はEV革命をリードしようと多面的なアプローチを取って来た。同社はまた、LG Chem(LG化学)とのジョイントベンチャーUltium Cells LLCのもとに2つの新規バッテリー工場にも投資している。そしてGMは2016年に過半数の株式を購入した自動運転部門Cruise(クルーズ)にも投資した。

今回のニュースの前日には、Cruiseが電気自動運転車両Originの商業化に向け、GMの金融部門から50億ドル(約5531億円)の融資を受けたと明らかにした。Originの商業生産は2023年の開始が見込まれている。

GMはまたホンダとのジョイントベンチャーHYDROTECで水素燃料電池も製造している。GMは6月16日、第3世代のHYDROTEC電池を2020年代半ばまでに展開することも明らかにした。GMは大型トラックデベロッパーNavistar、そして航空機向けの水素燃料電池システムを開発しているLiebherr-Aerospaceとパートナーシップを結んでいる。

GMは6月15日に、燃料電池とEVバッテリーをWabtec Corporationに供給するとも述べた。Wabtec Corporationはピッツバーグ拠点の会社で、世界初のバッテリーlocomotiveを手がけている。

「GMはグローバルでの年間EV販売台数を2025年までに100万台超にすることを目指しています。そして当社は展開を促進するために投資額を増やします。というのも、米国で電動化のモメンタムがあり、当社のプロダクトポートフォリオに対する顧客の需要を目にしているからです」とCEOのMary Barra(メアリー・バーラ)氏は声明文で述べた。

Fordも同様にEV投資を増やすことを5月に発表した。それまで同社は2023年までに220億ドル(約2兆4337億円)としていたが、2025年までに300億ドル(約3兆3187億円)投資すると述べた。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

10分で満充電にできるEVバッテリー交換のAmpleがENEOSと日本国内での交換インフラ展開、運営で提携

電気自動車のバッテリー交換を行うスタートアップのAmple(アンプル)は、何年にもわたって技術開発に取り組んできたが、2021年6月、日本とニューヨークへの拡大を促進するための2つのパートナーシップを締結した。2014年に設立され、先の3月にステルス状態を脱したこのスタートアップは、日本の石油 / エネルギー企業であるENEOS(エネオス)と提携し、日本国内でバッテリー交換インフラを共同で展開・運営することを米国時間6月15日に発表した。

両社は今後1年間、配車サービス、タクシー、自治体、レンタカー、ラストワンマイル配送などの企業を対象に、Ampleの全自動交換技術を試験的に導入する。また、AmpleとENEOSは、交換ステーションがエネルギーグリッドのバックアップ電源などの、他の用途にも使えるかどうかも評価する。まだパートナーシップは立ち上げの段階で、発表されていることは少ない。たとえばAmpleは、パイロットプログラムいつ日本のどこで始まるのかについては明らかにしていない。しかし、詳細には乏しいものの、ENEOSが関心を見せたことは、(少なくともAmpleの)バッテリー交換技術が信奉者を集めつつあることを示している。

今回のENEOSの発表は、Ampleが配車サービス、タクシー、ラストマイル配送用のEV(電気自動車)レンタル会社であるニューヨーク市のSally(サリー)との提携を行った数日後に行われた。Ampleの創業者でCEOのKhaled Hassounah(ハレド・ハッソウナ)氏によると、AmpleとSallyは、2021年の第4四半期までにニューヨークで5~10カ所のステーションを展開し、2021年には他の市場にも進出する予定だ。

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AmpleとSallyのパートナーシップは、数カ月後にはサンフランシスコにも拡大する。サービスを利用するコストにもよるが、少なくともカリフォルニア州では、配車サービスのドライバーにとっては有利な取引になるかもしれない。カリフォルニア州では2030年までにUber(ウーバー)とLyft(リフト)のドライバーの90%がEVに乗る必要があるとする法令が出されたばかりだ

「最終的には、交換ステーションをガソリンスタンドのようにどこにでもあるものにすることが目標です」とハッソウナ氏はTechCrunchに語った。

Ampleはこの3月に、ベイエリアで5カ所の交換ステーションの発表を行うと同時にステルス状態から抜け出した。また、Uberとの提携により、ドライバーはAmpleのバッテリー技術を搭載したクルマをAmpleから直接借りることができる。

Ampleのポリシー兼国際支援担当副社長のLevi Tillemann(レビ・ティルマン)氏は、TechCrunchの取材に対して「Ampleアーキテクチャは、あらゆる最新の電気自動車に統合できるよう設計されています」と答える。「一般的な電気自動車では、バッテリーパックをクルマから取り外すことは想定されていませんが、Ampleシステムを使えば、純正のバッテリーパックとまったく同じ寸法のアダプタープレートを備えたバッテリーパックと交換することができます。そのアダプタープレートこそが、バッテリー交換を可能にするためのアーキテクチャなのです」。

Ampleの標準化されたバッテリーモジュールは、Ampleプラットフォームで動作するように設定されたどの車両でも動作します、とティルマン氏はいう。今回のAmpleとSallyの提携により、Ampleはビジネスモデルを実証するために立ち上げた、自社による車両運行からの脱却を始めることができる。同社は、Sallyをはじめ、将来的にはおそらく他のフリート会社やレンタル会社とも協力して、Ample対応の車両を作っていく予定だ。

「Ampleのバッテリー交換技術は、どんな電気自動車にも対応していて、純正バッテリーとの置き換えが可能で、しかもクルマの改造(ハードウェア、ソフトウェアのいずれも)を必要としないので、EVインフラの導入にかかるコストと時間が劇的に削減されます」とハッソウナ氏はいう。

配車サービスのドライバーがEVへの乗り換えを躊躇する理由の1つに、バッテリーの充電時間がある。ハッソウナ氏によると、バッテリー交換には現在10分しかかからないが、年内には5分に短縮することを目指しているそうだ。より効率的でシームレスなプロセスを実現することで、配車サービスのドライバーや物流企業が切り替えを行う後押しをすることができるだろう。

「現在、ドライバーはエネルギーも含んでスワップサービスに対して1マイルあたり10セント(約11円)を支払っています。航続距離は車種やバッテリーサイズによって異なります」とハッソウナ氏は語る。「サービスの価格は電気料金によって変わりますが、ガソリンに比べて1~2割程度安くなることを目標にしています」。

ドライバーがバッテリーを交換したいときは、Ampleのアプリを使って近くのステーションを探し、自動交換を始める。各ステーションでは、1時間あたり5~6台程度のサービスが可能だが、年内にはその倍のサービスが可能になると見込まれている。とはいえ、これは各ステーションでの利用可能電力量にもよる。

ティルマン氏は、Ampleの拡大に伴い、既存のOEMパートナーと協力して、生産ラインで新車にAmpleの製造用プレートを取り付けるという選択肢を消費者に提供できる日を目指しているという。

彼は「私たちのユニットのコストは、バッテリースワップシステムにとって非常に有利なものです」という。「展開に大きなコストがかからないために、比較的少数の車両でも、バッテリー交換アーキテクチャーは経済的で収益性が高くすることができるのです」。

以前にAmpleに投資を行ったENEOSは、同社によれば、次世代のエネルギー供給に取り組んでいるとのことだ。同社はまた、水素についても検討しており、最近ではトヨタが日本で建設中の未来型試作都市「Woven City(ウーブン・シティ)」と提携した。同市は水素を使って電力を供給する予定だ。

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(文: Rebecca Bellan、翻訳:sako)

KiaとUberが提携し欧州20マーケットのドライバーにEV車両を割引価格で提供

Kia(起亜自動車)のe-Niroとe-Soulの購入、リース、ローン、レンタルにかかる特別ディールを欧州の20マーケットに住むUberドライバーに提供するためにUber(ウーバー)とKia Europeがタイアップする。配車サービス大手Uberの二酸化炭素排出抑制の目標達成に向けた最新の取り組みだ。

Uberは2030年までに欧州全体でゼロエミッションモビリティプラットフォームになることに注力していて、同年までにドライバー3万人にKiaのBEV車両に乗り換えて欲しいと考えている。KiaはUberがドライバーに電気自動車の割引価格を提供する取り組みに加わる最新の自動車メーカーとなる。2021年5月にUberは、配車サービスドライバー向け専用電気自動車の生産でEVメーカーArrivalとの提携を発表した。そして2020年9月にはUberはカナダと米国のドライバーに全電動Chevrolet Boltを割引価格で提供すべくGM(ゼネラル・モーターズ)と提携した

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欧州連合が最近制定した法律は、2030年までに二酸化炭素排出量を1990年代に比べて少なくとも55%削減することを目指している。UberのKiaとの提携は、欧州で二酸化炭素排出に関する規制がますます厳しくなることを予想してのことだ。規制に対応するためにUberはまた、2025年までに欧州のプラットフォームでEV10万台超を所有し、アムステルダム、ベルリン、ブリュッセル、リスボン、ロンドン、マドリッド、パリでの走行の半分をゼロエミッション車によるものにすることを目指している。

Kiaは2026年までに11種のEVモデルを発売する準備を進めていて、自社のBEV普及のために今回の提携を活用したいと考えている。e-Niroクロスオーバーは航続距離239マイル(約384km)で、DC急速充電を使えば54分でリチウムイオンバッテリーの80%を充電できる。可愛らしい小型デザインのサブコンパクトクロスオーバーe-Soulの航続距離は243マイル(約391km)だ。

しかし割引があっても、Uberのロンドン拠点ドライバーがEVを購入できるポータルのPartnerPointで提供されているKiaモデルはまだかなり高価だ。Kiaが提供している割引幅は8%で、一方日産の割引幅は13%、Hyundai(現代自動車)は22%だ。Kiaの割引後の車両価格は2万9877.40ポンド(約463万円)〜3万6471.40ポンド(約565万円)で、これはロンドンのドライバーの年間給与とほぼ同額だ。

にもかかわらず、ドライバーはこの割引と、5%のローン利子やClean Air Feeなどその他のインセンティブを活用しているようだ。Clean Air FeeはEVのコストにあてるために1回の乗車あたり3ペンスを集めるというもので、Uberによるとドライバーは年平均3000ポンド(約46万円)を節約できる。

2019年にClean Air Planが導入されて以来、ロンドンでは完全電気自動車の乗車が350万回以上あった。ロンドンのプラットフォームに加わる新しい車の50%ほどが今では完全EVで、広域マーケットではこの数字は8%だ。過去1年でUberプラットフォーム上のEV台数は700台から2100台に増えた。同社は2021年末までにさらに倍増させたいと考えている。

今回の発表ではUberはまた、乗客が排気ガスの少ない車両の配車をリクエストでき、一方でドライバーがそうした乗車にかかるサービス料金の15%割引を受けられるUber Greenという取り組みを2021年末までに欧州60都市に拡大する計画だと述べた。このサービスは現在、ロンドンのゾーン1内から乗車する客にのみ提供されているが、今こそドライバーがプラットフォームを通じて安い維持費とさらなる潜在的な収入を手にするときだとUberは話す。

欧州のUberドライバーはドライバーアプリ、ダイレクトメール、ドライバー向けウェビナーでEVについての情報を収集できる、と同社は述べた。車両の価格はドライバーのローケーションによって異なることはない。

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

ジャガー・ランドローバーがディフェンダーベースの水素燃料電池EVを開発へ

Jaguar Land Rover(JLR、ジャガー・ランドローバー)は、新型SUVであるDefender(ディフェンダー)をベースにした水素燃料電池車の開発を進めており、2022年にはプロトタイプのテストを開始する予定だ。

Project Zeus(プロジェクト・ゼウス)という名のこのプロトタイプ計画は、2036年までにエグゾーストパイプからの排出ガスをゼロにするというJLRの大きな目標の一部だ。またJLRは、2039年までにサプライチェーン、製品、事業全体での炭素排出量をゼロにすることを約束している。

Project Zeusは、英国政府が出資するAdvanced Propulsion Center(英国の低排出技術推進機構)からも一部資金提供を受けている。また、AVL、Delta Motorsport(デルタ・モータースポーツ)、Marelli Automotive Systems(マレリ・オートモーティブ・システム)、UK Battery Industrialization Center(UKバッテリー・インダストリアライゼーション・センター)とも協力して、プロトタイプの開発を進めている。このテストプログラムは、ランドローバーの顧客が期待する性能や能力(牽引やオフロードなど)を満たす水素パワートレインを、どうすれば開発することができるかを技術者が検討できるようにすることを目的としている。

燃料電池は、水素と酸素を組み合わせて、燃焼することなく電気を作ることができる。この水素から発生した電気は、電気モーターの電力として使われる。一部の自動車メーカーや研究者、政策担当者たちは、水素を燃料とするFCEV(燃料電池車)は、短時間で燃料を補給でき、エネルギー密度が高く、寒冷時にも航続距離が短くならないという特徴から、この技術を支持している。この組み合わせが実現するのは、より長い距離を移動できるEV(電気自動車)だ。

FCEVとも呼ばれる燃料電池車は、燃料補給所(水素ステーション)が少ないこともあり、現在はほとんど市場に出回っていない。トヨタのMIRAI(ミライ)はその少ない例の1つだ。

だが国際エネルギー機関(IEA)のデータや自動車メーカーたちの最近の取り組みを見ると、この状況は変わりつつあるのかもしれない。2021年5月、BMWのOliver Zipse(オリバー・ジプシー)会長は、2022年には水素燃料電池を搭載したX5 SUVを少数生産する予定であると述べている。

世界のFCEVの台数は、2019年には前年の約2倍となる2万5210台になったことがIEAの最新データで明らかになった。2019年には落ち込みがあったものの、販売台数では米国がずっとトップで、それに中国、日本、韓国が続いている。

日本は、2025年までに20万台のFCEVを路上で走らせることを目標としており、インフラ面でもリードしている。日本は2019年の時点で113カ所の水素ステーションを設置しており、これは米国の約2倍の数だ。

ジャガー・ランドローバーの水素・燃料電池部門責任者のRalph Clague(ラルフ・クラグ)氏は、声明の中で次のように述べている「私たちは、水素が輸送業界全体の将来のパワートレイン構成において、果たすべき役割を知っています。また、バッテリー式電気自動車とともに、ジャガー・ランドローバーのワールドクラスの車両ラインアップにふさわしい能力と要件を備えた、エグゾーストパイプ排出ゼロのソリューションを提供していきます」。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:sako)

Lucid Motorsがオール電化セダン「Air」の全テクノロジーを披露、主要音声アシスタントはAmazon Alexa

Lucid Motors(ルシード・モータース)がオール電化セダンAirの最終バージョンを発表してから8カ月、同社はついにその車載テクノロジーの詳細を明らかにした。曲線を描く34インチディスプレイ、セカンドタッチスクリーンから、基盤となるソフトウェア、統合アプリ、そしてAmazon Alexa音声アシスタントに至るまで、同社が2021年後半に納車を開始すれば、ドライバーや同乗者はそれらを利用できるようになる。

同社のブランド名を冠したLucid User Experience(Lucid UX)が目指すところは、顧客が求めるテクノロジーを、複雑さや煩雑さを増すことなく、8万ドル(約878万円)から16万9000ドル(約1854万円)の価格帯のクルマに搭載することだ。

「使いやすさ、学習曲線の短さという確固とした原則を基盤にして、迅速なレスポンスと全体的なエレガントさを追求しました」とLucidの設計責任者Derek Jenkins(デレク・ジェンキンス)氏は最近のインタビューで語っている。「過度に技術的であったり、サイエンスフィクション的であったり、あるいはスプレッドシート風であることから離れて、当社のブランドやデザイン精神に一層適合するものへと真の意味で移行したいという気持ちがありました」。

その内装は、Tesla(テスラ)のModel 3やModel Yほどシンプルではないし、ドイツの高級車のようにぎっしり詰まった感じでもない。ジェンキンス氏とそのチームは、ゴルディロックスが選んだお粥のボウルのような「ちょうどいい」テクノロジーを意識した。

「プロジェクト初期に、私はいつもチームにこう伝えていました。『母親にこのクルマに乗ってもらうことを想定して、このクルマでまず実現することを見いだしたいと思っている』」とジェンキンス氏は続けた。「母親は、ライトのスイッチとドアのロックが左側にあることを直感的に認識できると思います。なぜならそれらは常にその場所にあるからであり、そのようなものを掘り下げる必要はありません。あるいは、母親であれば空調はおそらくスクリーン下部にあるだろうと考えるでしょう。大抵そのあたりにあり、伝統的な配置だからです。直感的でシンプルなものにすべきという思いを純粋に抱きながら、印象的な機能や進化するシステムの装備を考慮していきました」。

画像クレジット:Lucid Motors

ハードウェア

「ガラス製コックピット」と称される湾曲形状の34インチ5Kディスプレイは、ダッシュボードの少し上に設置されている。車内で最も視認性の高いハードウェアだが、特筆すべき要素はそれだけではない。Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)が56インチのハイパースクリーンに採用した技術を使用して、1枚のガラスプレートの下に3つのディスプレイを搭載。左端にあるのはタッチスクリーンで、Lucidはここにウィンドウのデフロスター、照明、ワイパー設定など、最も重要な車両コントロールを配備している。

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中央のディスプレイには、速度とバッテリー残量を表示するインストルメントクラスターが配されている。インストルメントクラスターの右側にはウィジェット機能が実装されており、ナビゲーションや音楽の再生など、ユーザーに応じてさまざまな情報を表示可能だ。インストルメントクラスターは、先進運転支援システムが作動しているかどうかをドライバーが確認する場所でもある。

ハンドルに向かって右側に、Lucidが「ホームスクリーン」と呼ぶタッチディスプレイが位置している。ナビゲーション、メディア、通信機能がここに搭載されている。

中央コンソールエリアには、Lucidが「パイロットパネル」と名づけた別の湾曲スクリーンがあり、そこにはクライメートコントロール、マッサージ機能を含む座席機能、その他の車両設定が映し出されている。ホームスクリーンにあるメニューを下のパイロットパネルにスワイプすると、音楽やナビゲーションの詳細なコントロールを表示することができる。また、ドライバーが追加的なタッチスクリーンを望まない場合は、パイロットパネルを格納して、その背後にあるストレージスペースを利用することも可能だ。

なお、アナログスイッチは、ドアとハンドル、そしてパイロットパネルと上部ホームスクリーンの間のスペースという3つの領域で車内に残されている。ドアに付いているのはウィンドウスイッチと内部ドアラッチだ。センターコンソールのディスプレイの真上には4つの物理的なボタンがあり、エアコンの温度や風量を設定できる。

画像クレジット:Lucid Motors

ハンドルにはタッチバーと2つのトグルがある。これらのボタンを使って、Alexa音声アシスタントの起動、先進運転支援機能のオン / オフの切り替え、クルーズコントロールによる追従走行の設定、ボリュームの制御などが行える。

「物理的なボタンやタッチスクリーン上でのデジタル操作といったアナログ操作に関する議論を通して、数多くの研究を重ねました」とジェンキンス氏。「その結果、人々がまだ物理的な操作を望んでいる重要な機能があることがわかりました」。

車両には32個のセンサーも搭載されており、その中には、車両の外側にあるノーズブレードの真下に位置する単一のLiDARも含まれている。その下に低めのエアインテークと前向きのレーダーが設置され、他のレーダーセンサーは外側のコーナーに配置されている。バックミラーの後ろのノーズとヘッダ部分には、外部カメラも装備されている。

車内には、インストルメントクラスターの下部に、ドライバーの方を向いたカメラが内蔵されている。このカメラはドライバーモニタリングシステムの一部で、先進運転支援システムが作動しているときに、ドライバーが注意を払っていることを確認するためのものだ。

他に特筆すべきハードウェアとして、Dolby Atmos(ドルビーアトモス)の21個のスピーカーで構成されるサラウンドサウンドシステムと、エアベントが醸し出すビンテージ風(そしてミアータ風)のディテールが挙げられる。Lucidは、ユーザーがデジタルタッチスクリーンを使って空気の流れの方向を変えるTesla Model 3とは異なり、人が触れて動かすことのできる物理的なエアベントをAirに持たせたいと考えた。しかしLucidは、チクレットスタイルのデザインで、空気の流れをオン/オフするためのサイドタブを追加した大きなエアベントは望まなかった。

解決策は、中央に丸いダイヤルが1つあるスリムダウンされたエアベントだった。ダイヤルをつまんで動かすことで空気の流れを変えることができる。また、特定のベントへの空気を遮断するための開閉も可能となっている。

「これは私たちには画期的なことでした」とジェンキンス氏は笑みを浮かべて語った。「60年代、70年代の車では極めてよく見られたことなので、画期的とは言えないかもしれませんね」。

ソフトウェア

物理的なタッチスクリーンやセンサーの裏側には、機能やサービスを提供するソフトウェアがある。

Lucidは、オープンソースのAndroid Automotiveオペレーティングシステムからスタートし、そこでアプリやその他の機能を構築した。Android Automotive OSは、Linux上で動くGoogleのオープンソースのモバイルオペレーティングシステムAndroidをモデルにしている。Googleはしばらく前から、このOSのオープンソース版を自動車メーカーに提供してきた。近年、自動車メーカーはGoogleと協力して、GoogleアシスタントやGoogleマップ、Google Playストアなど、Googleのすべてのアプリやサービスに組み込まれたAndroid OSをネイティブに構築している。Lucidは、Googleサービスプラットフォームのルートを辿ることはなかった。

Lucidはその後、各種のサードパーティーアプリをインフォテインメントシステムに統合した。そのリストには、現時点でiHeartRadio、TuneIn、Pocket Casts、Dolby Atmos、Tidal、Spotifyが名を連ねている。

Lucidはまた、デフォルトの統合音声制御システムとしてAlexaを採用。さらにLucid Airには、Android AutoとApple CarPlayの付属も予定されている。ユーザーのスマートフォン上で動作し、車のインフォテインメントシステムと無線通信するアプリだ。つまり、ドライバーはこれらのアプリでGoogleアシスタントやSiriにアクセスできる。ただし温度調整などの車両機能は制御できない。

加えて、モバイルとWi-Fi接続が統合され、ソフトウェアをワイヤレスでアップデートできる。Lucidはこの無線アップデート機能を通じて、新しいアプリやサービスを追加していくことが可能になる。

今後の展望

ジェンキンス氏によると、同社はすでに、駐車中にのみアクセスできるゲームやビデオストリーミングなど、さらなるコンテンツをインフォテインメントシステムに追加することを視野に入れているという。

Lucidの設計チームはさらに、Airの将来のモデルイヤーに向けて、リアエンターテインメントディスプレイなどのハードウェアベースの追加も検討している。

「おそらく2023年頃には、それを目にすることになるでしょう」とジェンキンス氏は語ってくれた。「リアシートはすばらしい空間ですから、この取り組みはとりわけ意味のあることだと考えています」。

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画像クレジット:Lucid Motors

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Dragonfly)

テスラが超高速モデル「Model S Plaid」の発売イベントを開催

Tesla(テスラ)はついに、待ちに待った、そして一度は予定を変更した、超高速モデル「Model S Plaid(モデルSプレイド)」の発売イベントを、カリフォルニア州フレモントの工場で開催した。同社CEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は「金曜日の夜に25台の納車から開始して、その後は週に数百台の規模へと拡大していき、次の四半期には週に1000台に達する予定」と、このイベントで語った。

このModel Sの最新仕様に大きなサプライズはなかった。新設計のバッテリーパック、改良されたヒートポンプ、そしてモーターにカーボンで覆われたローターを採用し、空気抵抗係数は0.208という新記録を達成した。この数値は、おそらく新進気鋭のEVメーカーであるLucid Motors(ルーシッド・モーターズ)を揶揄することになるだろうと、マスク氏は強調した。2021年末に生産開始が予定されているLucid Air(ルーシッド・エア)の空気抵抗係数は0.21だ。

Tesla Model SのデザイナーであるFranz von Holzhausen(フランツ・フォン・ホルツハウゼン)は「いくつかの記録を破る」ための準備として、ハンマーを振り回しながらイベントを開始。そして、ダブステップの心地よいサウンドに合わせて、黒く輝くモデルSでテストコースを走り、ステージに滑り込んできたマスク氏を紹介した。

「このフレモントで最初に製造されたModel Sを納車してから9年が経ちました。ほぼ10年目となる今、私たちはPlaidでまったく新しいレベルに到達したと思います」と、マスク氏は会場に集まった多くのファンに向けて語った。「ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、私たちの商品企画は映画『スペースボール』から取ったもので、星が格子状(plaid)に見えるほどの高速という意味です。なぜこのように馬鹿げたほど速いクルマを作るのか。それは持続可能なエネルギーの未来にとって、非常に重要な意味があると、私は考えているからです。電気自動車が、間違いなく最高のクルマであると、示す必要があるということです。持続可能なエネルギーのクルマは、最速のクルマであり、最も安全なクルマであり、あらゆる面で最も優れたクルマになる、ということを明確にする必要があるのです」。

この4ドアセダンの電気自動車は、0-60mph(約96km/h)を1.99秒で加速する。マスク氏によれば、これまで市販車が破れなかった2秒の壁を初めて破ったという。最高出力は1020馬力。最高速度は(適切なタイヤを装着した場合)時速200マイル(322km/h)に達する。そして1/4マイル(約400m)を9.23秒で走り切ることができると、マスク氏と同社のウェブサイトは述べている。バッテリーは1回の充電で390マイル(約628km)の距離を走行可能だが、デュアルモーター構成では412マイル(約663km)まで伸びると、マスク氏は付け加えている(Model S Plaidは3モーターを搭載)。急速充電の速度が向上したことにより、わずか15分の充電で187マイル(約300km)の距離を走ることができるという。

この新型Model Sには新しいバッテリーパックも搭載されているが、マスク氏はその詳細については語らなかった。モーターのローターにカーボンスリーブを採用したことについては、かなりの時間を割いて説明した。カーボンスリーブローターは、その難しさから量産型の電気モーターに採用されたのは初めてのことだとマスク氏は主張する。その結果、モーターの最大回転数は20000rpmに達した。

Plaidの空調システムを動かす新型ヒートポンプは、寒冷地における航続距離を30%向上させ、キャビンの暖房や凍結を溶かすために必要なエネルギーが50%少なくて済むため、寒冷地でのバッテリー劣化を抑えられると、マスク氏はいう。

画像クレジット:Tesla(スクリーンショット)

Model Sのインテリアにもいくつかのアップデートが施された。米国運輸省道路交通安全局も注目する大胆な操縦桿型ステアリングホイールや、横型になった17インチ「シネマティック・ディスプレイ」、ベンチレーション機能内蔵フロントシートなど、すでに明らかになっていたものもある。GPUはPlayStation 5(プレイステーション5)レベルらしい。TechCrunchは、このイベント中に、車内でCD Projekt Red(CDプロジェクトレッド)の「Cyberpunk 2077(サイバーパンク2077)」をプレイしている人がいたことに気づいた。

このクルマのソフトウェアは、ドライバーの行動から学習し、ドライバーのニーズに適応するように設計されている。例えば、自宅の車庫から公道までドライブウェイをバックで出ることが多い人の場合、クルマはその場所をジオコーディングし、 Autopilot(オートパイロット)システムがドライバーに代わって自動的にその動作を行うようになる。

「クルマがあなたの心を読み、あなたの必要な操作は最小限で済むようになります」と、マスク氏は述べている。

12万9990ドル(約1420万円、日本での価格は1599万9000円)からという価格で販売されるModel S Plaidの最初の納車は、その性能をさらに引き上げた「Model S Plaid+(モデルSプレイドプラス)」の生産取り止めをマスク氏が正式発表したのと同じ週に行われた。テスラが5月に自社ウェブサイトで予約受付を中止したことで、Plaind+の発売は中止されたのではないかと憶測されていた。

関連記事:マスク氏がTesla Model S Plaid+発売に対し正式にブレーキ

「今週、Model Sはプレイド速度へ」と、米国時間6月6日にツイートしたマスク氏は「Plaid+はキャンセルされました。必要ありません。Plaidのスピードがあまりにも速いので」と続けた。

マスク氏はこのクルマの運転感覚が「言葉では表現できない大脳辺縁系の共鳴」のせいで宇宙船に似ているとツイートしているが、それがどういう意味なのかはわからない。

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画像クレジット:Screenshot/Tesla

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

「アップルカー」実現に向け前進、BMW i3やi8の開発を指揮した新興EV企業Canoo元CEOがアップルに

Apple(アップル)は「Apple Car(アップルカー)」の呼称で噂されている自動車プロジェクトの開発を促進させるため、電気自動車会社Canoo(カヌー)の共同創業者で元CEOだったUlrich Kranz(ウルリッヒ・クランツ)氏を雇用したと、Bloombergが無名の情報源を引用して最初に報じた。TechCrunchがアップルに確認したところ、同社はクランツ氏の雇用を認めたが、職務内容や肩書きなどの詳細は明らかにしていない。

Canooが上場と新たなリーダーシップチームの結成に向けて舵を切った後、2021年4月にクランツ氏は同社の役職を辞任。それから数週間のうちにクランツ氏はアップルに引き抜かれたと報じられていた。今回のニュースが伝えられる数カ月前には、アップルのTim Cook(ティム・クック)CEOが、謎に包まれたApple Carに、自動運転技術が主要機能として搭載されることを示唆している。自動車業界の最先端で数十年の経験を持つ幹部を雇用したことは、アップルが自動車の製造計画を進めていることを明確に示すものだ。

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クランツ氏は、BMW AGの電気自動車部門で上級副社長を務めていた時に、スポーティな電気自動車「i3」と「i8」の開発を監督した。この経歴は、将来のApple Carにおける潜在的な美学について、我々にヒントを与えてくれるかもしれない。匿名の情報筋によれば、クランツ氏は、現在Apple Carプロジェクトの責任者を務めるDoug Field(ダグ・フィールド)氏の直属になるという。フィールド氏は、かつてTesla(テスラ)で「Model 3(モデル3)」の開発を指揮した人物だ。

アップルは依然として、その自動車の計画について口を閉ざしている。Reuters(ロイター)が12月に発表した記事によると、アップルは2024年までに「画期的なバッテリー技術」と「自動運転技術」を備えた電気自動車を生産する意向だという。それ以外には、どのようなクルマになるのか、どこが製造するのか、といったことは誰にもわからない。しかし、アップルがハードウェアとソフトウェアの両方を開発するだろうということは想像に難くない。

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画像クレジット:Canoo

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

新興EVメーカーFiskerは2027年までに気候変動に影響を与えないEVの製造を目指す

電気自動車メーカーのFisker Inc(フィスカー)は、2027年までに同社初のクライメイトニュートラルな(気候変動に影響を与えない)自動車を作り上げるというムーンショット目標を掲げている。

フィスカーはまだ実際にクルマを販売していない(クライメイトニュートラルであろうとなかろうと)ので、この目標は野心的と言える。「Fisker Ocean(フィスカー・オーシャン)」と名づけられた完全電気自動車のSUVは、2022年11月の生産開始を目指していまだ開発が続けられている途中にあるが、クライメイトニュートラルになるのはこのクルマではなく、Henrik Fisker(ヘンリック・フィスカー)CEOによれば、まだ発表されていない別のクルマになるという。同氏は米国時間6月8日、投資家向け報告の中でこの目標を明らかにした。

ヘンリック・フィスカー氏は、Aston Martin V8 Vantage(アストン マーティンV8ヴァンテージ)や、Aston Martin DB9(アストン マーティンDB9)、BMW Z8など、印象的なクルマのデザイナーとして有名になったシリアルアントレプレナーだ。同氏は投資家向けオンライン会見で、他にもいくつかの最新情報を提供した。フィスカー・オーシャンの航続距離は、これまで推定されていた300マイル(約483キロメートル)を超え、最大350マイル(約563キロメートル)になるという。株主に配布された年次報告書によると、オーシャンには3月の時点で1万4000件以上の予約が入っているとのことだ。

2020年10月に特別買収目的会社のApollo Global Management (アポロ・グローバル・マネジメント)との合併により29億ドル(約3170億円)の評価額で上場したフィスカーは、2025年までに4台の新型車を市場に投入することを目指している。そのうちの1台は、同社のFM29プラットフォーム・アーキテクチャーを採用した「UFO」と呼ばれる高級車になる可能性があると、フィスカーは火曜日に示唆した。

フィスカーのカーボンニュートラル計画

これまでさまざまな業界で多くの企業が、カーボンニュートラルの実現という公約を掲げてきた。ヘンリック・フィスカー氏は、そのクライメイトニュートラルという目標を達成するために、カーボンオフセットを購入するつもりはないことを、投資家に強調した。カーボンオフセットとは、企業がプロジェクトや製品でCO2削減を「主張」するために購入できるクレジットのことだ。代わりにフィスカーでは、サプライヤーと協力して、気候変動に影響を与えない材料や製造プロセスを開発すると述べている。

同社のウェブサイトでは、提案している戦略の一部が紹介されている。そこでは自動車のライフサイクルを「調達」「製造・組立」「物流」「使用段階」「廃車」という5つの段階に分け、それぞれの段階でいくつかのポイントを上げている。例えば「製造の現地化」とか「100%再生可能エネルギーの使用」などだ。しかし、このような計画を立てても、自動車生産においてクライメイトニュートラルを実現することは非常に難しい。例えば、自動車には脱炭素化が困難なことで知られる鉄鋼などの素材や部品が使われているからだ。

フィスカーによると、同社の製造パートナーはそれぞれにクライメイトニュートラルを目標として掲げており、それは自動車の受託生産会社であるMagna Steyr(マグナ・シュタイヤー)にも当てはまる。欧州でフィスカー・オーシャンを独占的に製造する契約を結んでいる同社は、欧州では2025年までに、グローバルでも2030年までにクライメイトニュートラルを実現する目標を立てている。また「Project PEAR(プロジェクト・ペアー)」と呼ばれるフィスカーが2番目に発売予定のより低価格なクルマで主要なパートナーとなるFoxconn(フォックスコン)も、今世紀半ばまでにゼロエミッションの実現を目指している。

このようなムーンショット目標は、製造プロセスの革新を促進し、他の自動車メーカーやサプライヤーが同じ目標を目指すことを助長する可能性がある。他の自動車メーカーのPolestar(ポールスター)やPorsche (ポルシェ)は、いずれも2030年を期限とするカーボンニュートラルを約束しており、Mercedes(メルセデス)はその目標を2039年に設定している。

フィスカーは、EV用バッテリーが使用できなくなった際のリサイクルや再利用の方法も考えているようだ。同社は推定15年とされる車両の寿命の全期間に渡るリースプログラムの拡張を計画しており、これが実際に導入されれば、理論上では、寿命を迎えた多くの車両をフィスカーが所有することになる。

関連記事:フォックスコンと米Fiskerが電気自動車製造に関する正式契約を締結

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

車部品サプライヤーのBoschがドイツにチップ工場を開所、コネクテッドカーに供給

ドイツのパーツサプライヤーのRobert Bosch(ロバート・ボッシュ)は現地時間6月7日、10億ユーロ(約1332億円)を投じたチップ工場をドイツ・ドレスデンに開所した。同社にとってこれまでで最大の投資だ。主に車産業の顧客に供給する同工場はコネクテッドEV(電気自動車)が定着しつつあることを如実に示している。

「どのパワートレインかにかかわらず、我々は常に半導体とセンサーを必要としています」と同社の車エレクトロニクスを担当する上級副社長Jens Fabrowsky(ジェンス・ファブロースキー)氏はTechCrunchに語った。

工場は半導体製造プロセスで最前線の処理、つまりウェハファブを行う。300ミリメーターのウェハは半導体のパッケージングと組立のために通常アジアの提携企業に送られる。

300ミリメーターは「テクノロジーの新しいフィールド」だとファブロースキー氏は説明した。Boschのドイツ・ロイトリンゲンにある工場で製造される150ミリメーターあるいは200ミリメーターのウェハとは対照的に、大きなサイズのウェハは1つでより多くのチップを製造することができるため、規模の経済性が向上する。

広さ7万7500平方フィート(約7200平方メートル)の工場はBoschがいうところの「AIoT」で操業する。この言葉は、同工場の特徴である完全に接続されデータ主導のシステムを示すために人工知能(AI)とIoTを組み合わせたものだ。Boschは約100台のマシーンでリアルタイムのデータを動かすだけでなく、電気や水、他の要素でも1秒あたり最大500ページの情報を持つ、とファブロースキー氏は話した。AIで駆動するアルゴリズムはコネクテッドセンサーからすぐさま異変を感知する。

かなり高度なオートメーションにもかかわらず、工場はフル操業となれば700人を雇用する。

この工場が現在続いている世界的な半導体不足の解決に貢献するかは不明だ。半導体不足により、General Motors(ゼネラル・モーターズ)やFord(フォード)などの車メーカーは製造量の抑制と製造施設の一時休止を余儀なくされた。

「当社が工場建設を決めた時点では、建設理由は純粋にテクノロジーでした。300ミリメーターを製造する必要があったのは明らかで、キャパシティ拡大に投資する必要もありました」とファブロースキー氏は話した。

工場は7月にパワーツール向けチップの製造を開始し、9月から車向けチップに取り掛かる。半導体チップを製造するのに、ウェハ施設だけで600もの工程があり、通常20週間以上かかると同氏は説明した。

Boschはロイトリンゲン工場のクリーンルーム施設を拡張するのに5000万ユーロ(約66億円)投資する、と同社役員のHarald Kroeger(ハラルド・クローガー)氏は6月7日の記者会見で述べた。

Boschは、工場建設のための支出を最大2億ユーロ(約266億円)助成するドイツの連邦経済エネルギー省のマイクロエレクトロニクス投資プログラムに適用を申請した。資金を受け取るには支出の証明を提出しなければならない、と広報担当は説明した。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

Lordstown Motorsが電動ピックアップトラックの生産見通しを大幅に下方修正、それでもさらに現金が必要か

Lordstown Motors(ローズタウン・モータース)と特別買収目的会社(SPAC)が見たキャッシュリッチの夢は、単なる願望に過ぎなかった……。同社が米国時間5月下旬に発表した第1四半期の業績は、赤字まみれの残念なものだった。

赤字の原因としては、予想を上回る費用の増加、さらなる資金調達の必要性、2021年のEndurance(同社初の車両)の生産台数が想定を下回り、約2200台から1000台に減少したことなどが挙げられる。要するに、同社は巷の予想よりも多くの現金を使ってしまい、Enduranceの量産が予定よりも遅れてしまったのだ。

2020年、SPACとの合併により上場した同社の株価は、合併後の最高値から急激に下落している。同社の株価は、米国時間5月24日に公表された2021年第1四半期報告書を受けて、取引終了後にさらに7%下落した。

関連記事:2020年に再び盛り上がる特別買収目的会社上場、今度はEVメーカーLordstown Motorsが株式公開

Lordstown Motorsは約1年前、社運をかけた全電動ピックアップトラックEnduranceの試作車を披露したが、投資家を盛り上げることはできなかった。

Lordstown Motorsは、CEOのSteve Burns(スティーブ・バーンズ)氏が所有していたWorkhorse Group(ワークホース・グループ)から派生した会社である。1998年に設立されたWorkhorse Groupは、バッテリーや電気輸送技術を扱う小さな上場企業であるが、さまざまな局面で苦しい経営を強いられていた。その分社であるLordstown Motorsは、11月にGMからオハイオ州ローズタウンにある57万6000平方メートルの工場を買収し、2021年後半から年間2万台の電気トラックの製造を開始するとしていた。

生産上の不幸、資本上の懸念

第1四半期の決算は収益ゼロ。1億2500万ドル(約136億円)の純損失を計上して5300万ドル(約58億円)の資本的支出を行ったLordstown Motorsだが、その多額の支出に見合うだけの成果を上げることはできなかった。

同社は報告書の中で、Enduranceの生産を2021年中に開始するが、その生産量は「せいぜい事前予想の50%程度」と述べている。それにもかかわらず、多額の現金を取り崩したことは、投資家にとってはうれしい話ではない。

バーンズ氏は米国時間5月24日に行った投資家との電話会議で「当社の調査によると、当社の自動車に対する需要は非常に旺盛である。しかし、資金の問題で、当社が期待する数の車両を製造できない可能性がある。そのため当社は常に資金需要と戦略的資本を含むさまざまな種類の資金調達を調査している」と話している。

先般のSPACとの合併による資金調達にもかかわらず、Lordstown Motorsの2021年末の流動資産はわずか5000万~7500万ドル(約55億~約82億円)であろうと予測される。2020年末の同社の手元の現金は6億3000万ドル(約688億円)、2021年第1四半期には5億8700万ドル(約640億円)だった。同社は、通常の事業費の現金支出に加えて「2億5000万~2億7500万ドル(約273億~約300億円)の資本的支出」を見込んでいる。

バーンズ氏によると、同社は資産担保型の資金調達について金融機関と協議中とのことだが、どの金融機関かは明かされていない。

「当社には負債がなく、多くの資産があり、多くの部品を購入しています。そのため、資金調達に協力してくれる企業があるのです」とバーンズ氏。Lordstownは、米国の「先端技術を利用した自動車製造に対する融資プログラム(Advanced Technology Vehicles Manufacturing、ATVM)」の対象になることも諦めていない。バーンズ氏が「2010年1月にATVMの融資を受けていなければTesla(テスラ)は存在していなかった」と繰り返す中、同社の経営陣によると、審査機関によるデューデリジェンスが何度か実施されたとのことだが、時期についてはコメントされていない。

SPAC合併後の企業にとって、Lordstownのいまひとつな業績と弱気な取引は、SPACを利用してEVやその他の自動車関連企業を上場させるブームが時期尚早であったかもしれないということを示している。

Lordstownは、2020年9月に時価16億ドル(約1750億円)のSPAC合併を発表し、株価は52週高値で1株31.80ドルまで高騰した(米国時間5月24日時点では8.77ドル)。

バーンズ氏は、ハブモーターの構造や物理的なシンプルさなど、同社が主張する競争優位性を自賛し、それが所有コストの軽減につながると話す。しかし同社は、EVに新規参入したRivian(リビアン)やTesla(Cybertruckを生産開始予定)、さらにはFord(フォード)のような歴史のあるメーカーとの厳しい競争にさらされている。Fordは2021年5月初め、同社の名を冠したF-150トラックモデルの電動モデルを発表したが、価格は4万ドル(約490万円)以下に設定された。

しかしバーンズ氏は、同社が競合他社と同位置にあり、自動車の需要に応じて「飛びかかれる」ようにしておきたいとの思いを繰り返し、Rivian R1TやFord F-150 Lightningには及ばないものの、約400kmの目標航続距離を達成する自信があると話す。

Lordstownは、2021年1月に10万件というマイルストーンを達成したと発表された予約注文について、ざっくりとした最新情報も公開した。バーンズ氏は、そのうち約3万台が「車両購入契約」と呼ばれるものに変更されたと話すが、そのうち何人がどの程度の支払いを行ったかについては言及せず「その契約の多く」が何らかの頭金を含む契約であると述べるにとどまった。

同社は、2台目の電動バンの開発にも着手しており、2021年の夏の終わりには試作車が完成する予定だ。

決算

Lordstownの第1四半期の業績に目を向けると、非常に複雑な製品のテストと生産規模の拡大に苦慮している収益を生み出す前の段階の企業であることがわかる。非常にコストの高い取り組みだ。

同社の計算書は次のとおりである。

画像クレジット:Lordstown

同社の販売管理費が以前よりも増加しているのは、研究開発費が急増していることに比べれば大したものではない。Lordstownの株式を保有している投資家は、早く製造が軌道に乗り、大量生産につながることを期待しているが、これは納得しがたい損益計算書だ。

2021年第1四半期、Lordstownは研究開発費として約9万1000ドル(約1000万円)を支出した。LordstownのCFOであるJulio Rodriguez(フリオ・ロドリゲス)氏は「予想を上回る研究開発費の増加は、サプライチェーンの逼迫(ひっぱく)やコロケーションによる部品コストの上昇が主な要因です。ベータ版のコスト、スピード配送を含む出荷コストの上昇、一時的な外部エンジニアリングへの依存の拡大はこの影響を受けたものです」と話す。

同社幹部は、自動車の予約注文を偽装していると主張する空売り筋のHindenburg Research(ヒンデンブルグ・リサーチ)の告発についても、簡単に言及した。Hindenburgによると「広範な調査の結果、Lordstownの注文はほとんどが架空のもので、資本を調達し、正当性を得るためのまやかしであることが判明した」とのこと。

バーンズ氏は投資家に対し、同社が報告書の疑惑を調査するために特別独立委員会を設立したことを伝えた。この委員会は、同社が協力している米国証券取引委員会による調査とは別のものだという。

なお、このようなLordstownの決算にもかかわらず、TeslaとNikola(ニコラ)の株価には大きな変化はなかった。

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画像クレジット:Lordstown Motors

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(文:Alex Wilhelm、Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)