LINEの論文6本が世界最大規模の音声処理関連国際学会「INTERSPEECH 2021」で採択

LINEの論文6本が世界最大規模の音声処理関連国際学会「INTERSPEECH 2021」で採択

LINEは8月30日、世界最大規模の音声処理に関する国際会議「INTERSPEECH 2021」において、国内トップクラスとなる6本の論文が採択されたことを発表した。これらの論文は、8月30日より9月3日にかけてオンライン開催される「INTERSPEECH 2021」で発表される。

INTERSPEECHは、International Speech Communication Association(ISCA)が主催する国際会議で、2021年は22回目の開催となる。約2000件の投稿から約1000件の論文が採択されている。

採択されたのは、高速な音声認識を実現する手法として注目されている非自己回帰型音声認識の性能向上に関するもの、音声の適切な位置に無音区間(ポーズ)を挿入することで合成音声の品質を向上させる句境界予測の研究に関するもの、NAVERと共同で進めているParallel WaveGAN(PWG)をより高品質にするための取り組みとなるMulti-band harmonic-plus-noise PWGの研究に関するものなどとなっている。

LINEは、AI事業を戦略事業の1と位置付け、NAVERとの連携も行いながら、AI関連サービスや新機能の創出を支える技術の基礎研究に力を入れているという。データ基礎開発、データ分析、機械学習、AI技術開発、基礎研究の各チームが事業や担当領域を超えて連携し、研究、開発、事業化のサイクルのスピードアップを目指しているとのことだ。

「INTERSPEECH 2021」に採択された6本の論文は以下のとおり。

  • Relaxing the Conditional Independence Assumption of CTC-based ASR by Conditioning on Intermediate Predictions」(中間予測の条件付けによるCTCベースの自動音声認識における条件付き独立性仮定の緩和)。Jumon Nozaki、Tatsuya Komatsu
  • 「Acoustic Event Detection with Classifier Chains」(分類子チェーンによる音響イベントの検出)。T.Komatsu、S.Watanabe、K.Miyazaki、T.Hayashi
  • Phrase break prediction with bidirectional encoder representations in Japanese text-to-speech synthesis」(日本語の文章読み上げ合成における双方向エンコード表現を使用した句境界予測)。Kosuke Futamata、Byeongseon Park、Ryuichi Yamamoto、Kentaro Tachibana
  • 「High-fidelity Parallel WaveGAN with Multi-band Harmonic-plus-Noise Model」(マルチバンド高調波ノイズモデルを使用した高忠実度並行WaveGAN)。Min-Jae Hwang、Ryuichi Yamamoto、Eunwoo Song、Jae-Min Kim
  • 「Efficient and Stable Adversarial Learning Using Unpaired Data for Unsupervised Multichannel Speech Separation」(教師なしマルチチャンネル音声分離のための対応のないデータを用いた効率的で安定的な敵対的学習)。Yu Nakagome、Masahito Togami、Tetsuji Ogawa、Tetsunori Kobayashi
  • 「Sound Source Localization with Majorization Minimization」(メジャー化最小化による音源定位)。Masahito Togami、Robin Scheibler

【コラム】データサイエンティストは恐れずに新しい分野に挑戦せよ

編集部注:本稿の執筆者Ilyes Kacher(イリエス・カーシャー)氏は、商品画像をオンラインで一括編集するAIベースのプラットフォーム、autoRetouch(オートレタッチ)のデータサイエンティスト。

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私はフランス出身のデータサイエンティストで、コンピュータービジョンの研究技師としての経験を日本で積んだ後、母国に戻った。しかし今、私はコンピュータービジョンのハブとは思えないドイツのシュツットガルトでこれを書いている。

ただし、みなさんが想像するであろうドイツの自動車技術の仕事をしているのではない。代わりに、パンデミック下の驚きべきチャンスを最もありそうもない場所で私は見つけた。そこはシュツットガルトのeコマースに特化したAI駆動の画像編集スタートアップで、あらゆる小売製品のデジタルイメージングプロセスを自動化している。

日本での経験は、仕事で海外に移住することの難しさを私に教えた。日本では、プロフェッショナルネットワークとの接点を持つことが往々にして必要だ。しかしここヨーロッパでは、多くの都市にアクセスできることが利点だ。パリ、ロンドン、ベルリンなどの都市は、特定技術のハブとして知られていると同時に、多様な雇用機会を提供している。

パンデミックのために完全リモートワークが増加している中、職探しの範囲を広げることで、興味にあう機会がより多く提供される。

意外な分野で価値を見つける、たとえば小売業

私は今、高級小売業からスピンオフしたテック企業で、自分の専門技術を製品画像に応用している。データサイエンティストの視点からアプローチすることで、私は小売業のように巨大で確立した業界への新たな応用に価値を認識見出した。

ヨーロッパには世界的に有名なブランドがいくつもあり、中でもアパレルと靴が代表的だ。その豊かな経験が、数十億の製品と数兆ドル(数百兆円)の市場にイメージング技術を応用するチャンスを生み出している。小売企業の利点は、定常的に画像を処理することで、AI企業が収益を上げ、利益を上げる可能性もあるベースを作ってくれていることだ。

もう1つ、探求すべき分野として、研究開発部門の一部にあることの多い独立部門がある。私は相当数のAIスタートアップが、非常にニッチなクライアントの研究コストとその結果得られる収益のために利益を上げていない分野に取り組んでいるところを見てきた。

データを持っている企業は収益見込みのある企業

私が特にこのスタートアップに惹かれたのは、そのデータアクセスの可能性だった。データはそれ自体非常に高価であり、多くの企業は限られたデータしか利用できない。B2BやB2Cレベル、中でも小売業やフロントエンドのユーザーインターフェースに関わるデジタルプラットフォームと直接つながりのある企業は狙いどころだ。

こうした顧客エンゲージメントデータを活用することは全員の利益になる。将来の研究開発や分野内のその他のソリューションに応用できる他、自社の他部門と協力して弱点を解決することにも使える。

さらにこれは、ブランドが影響を与えるユーザーの関連分野への関心が高ければ高いほど収益の可能性が大きくなることを意味している。私からのアドバイスは、データがすでに管理可能なシステムに保存され、アクセスが容易な企業を探すことだ。そういうシステムは研究開発に有用だ。

難しいのは、多くの企業がそういうシステムを導入していないこと、あるいはシステムを活用できるスキルを持つ人がいないことだ。もし、深い洞察を語れなかったり、システムが未導入の会社があったら、データ活用の方法を導入するチャンスを探してみて欲しい。

ヨーロッパでは最善策には自動化プロセスの開発が関わっている

私は、プロセスとコアシステムを作るチャンスをくれるアーリーステージ企業の成功の秘訣を知っている。私が働いていた会社は、入社当時まだ新しく、ある分野のためにスケーラブルなテクノロジーを開発する仕事をしていた。チームが解決すべき課題はすでに解決していたが、山ほどあるその他の問題を解決するために行うべきプロセスはたくさんあった。

1年に渡る大量一括画像編集を自動化するプロジェクトは、開発しているAIが、同時に複数の可変要素(複数の画像とワークフロー)を横断して独立に動くことように作られていれば、既存の有名ブランドには出来ないことをするテクノロジーだということを教えてくれた。ヨーロッパでこれを実行している企業はほとんどないため、それができる人材は切望されている。

というわけで、ちょっとしたカルチャーショックを恐れることなく、飛び込んでみてはいかがだろうか?

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画像クレジット:Warit Silpsrikul/EyeEm / Getty Images

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(文:Ilyes Kacher、翻訳:Nob Takahashi / facebook

金融業界が機械学習を簡単に利用できるようにする「Taktile」

金融サービス企業のための機械学習プラットフォームに取り組む新しいスタートアップのTaktileを紹介しよう。機械学習を金融商品に生かそうとする企業は同社が初めてではない。しかし同社はAIモデルを簡単に使い始め、移行できるようにすることで競合との差別化を狙う。

数年前、どのピッチのプレゼンにも「機械学習」と「AI」のフレーズがあったころ、金融業界に的を絞ったスタートアップもあった。銀行や保険会社は山ほどデータを集めているし顧客の情報もたくさん知っているのだから当然だ。銀行や保険会社はこうしたデータを使って新しいモデルをトレーニングし、機械学習アプリケーションを展開できるだろう。

新しいフィンテック企業は社内にデータサイエンスチームを作って自社プロダクトのための機械学習に取り組み始めた。Younited CreditOctoberといった企業はリスク予測ツールを融資の判断に役立てている。これらの企業は独自にモデルを開発し、過去のデータに基づいてそのモデルを動かすと有効であることを把握している。

しかし金融業界に古くからある企業はどうだろうか。既存の銀行のインフラと統合できるプロダクトの開発に取り組んでいるスタートアップはいくつかある。AIを使って疑わしい取引を見つけたり返済能力を予測したり保険請求の不正を検知したりすることができる。

保険に特化したShift Technologyのように成長しているスタートアップもある。しかし概念実証をしてそこで終わってしまうスタートアップが多い。その先に、長期にわたる有意義なビジネスの契約はない。

Taktileは取り入れやすい機械学習プロダクトを開発することでこうした問題を克服したいと考えている。同社はIndex Venturesが主導するシードラウンドで470万ドル(約5億1700万円)を調達した。このラウンドにはY Combinator、firstminute Capital、Plug and Play Ventures、数人のビジネスエンジェルも参加した。

同社のプロダクトはそのまま使えるモデルでもカスタマイズモデルでも動作する。顧客は自社のニーズに応じてモデルをカスタマイズできる。モデルはTaktileのエンジン上でデプロイされメンテナンスされる。顧客のクラウド環境でもSaaSアプリケーションとしても動作する。

導入後はAPIコールを使ってTaktileのインサイトを活用できる。プロダクトに他社のサービスを統合するのと同様の動作だ。Taktileは自動で下された決定に関する説明や詳細なログを提供して、できるだけ透明性を高めようとしている。データソースとしては、データウェアハウスやデータレイクのほかERPやCRMシステムにも対応している。

まだ初期段階のスタートアップであり、Taktileのビジョンが成功するかどうか気になるところだ。同社はすでに経験豊富な支援者たちを説得している。今後に注目しよう。

画像クレジット:Taktile

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(文:Romain Dillet、翻訳:Kaori Koyama)

電話対応をリアルタイムでサポート、カスタマーサービス向け会話型AIを開発するLevel AIが約14.3億円獲得

Level AIは、Alexaプラダクトチームの元メンバーが立ち上げたアーリーステージのスタートアップ企業で、顧客とのやり取りをリアルタイムに理解することで、企業がカスタマーサービスの電話対応をより迅速に対処できるよう支援したいと考えている。

同社は米国時間8月25日、Battery Venturesを中心とした1300万ドル(約14億3100万円)のシリーズAを発表するとともに、シード投資家のEniac、Village Global、および無名のエンジェル投資家からの支援を得て、一般公開を開始した。BatteryのNeeraj Agrawal(ニーラジ・アグラワル)氏は、今回の契約に基づき、同社の取締役に就任する。同社の報告によると、初期の200万ドル(約2億2000万円)の資金調達を含め、現在1500万ドル(約16億5100万円)を調達しているとのことだ。

創業者のAshish Nagar(アシシュ・ナガー)氏は、Amazon(アマゾン)のAlexaチームでプロダクトの運営に携わり、Alexaに今よりさらに進化した人間らしい会話をさせるための実験的なプロジェクトに取り組んでいた。技術がまだそこまで到達していないため実現はしなかったが、会話型AIへの理解を深めることができ、2019年にはその知識をカスタマーサービス領域に生かすためにLevel AIを立ち上げた。

「私たちのプロダクトは、電話対応のスタッフがより良いパフォーマンスを発揮し、顧客からの問い合わせをより迅速に解決し、より迅速にそれらを対処できるようリアルタイムでサポートする。そして通話後には、その通話の品質管理やトレーニング監査を行っている監督者が、5~10倍速く仕事ができるようになる」とナガー氏は説明する。

同氏によると、Level AIソリューションにはいくつかの工程が含まれるという。1つ目は、会話の内容をテクノロジーが理解できるように意味のある塊に分解して、リアルタイムに理解することだ。そして、その情報をもとに、バックグラウンドで稼働しているワークフローと照合し、有用なリソースを提供する。最後に、収集したすべての会話データを使って、企業がこれらの活動から学ぶのを支援する。

「すでにあるすべての通話データ、メールデータ、チャットデータを新しいレンズで見ることで、スタッフをより効果的にトレーニングでき、プロダクトマネージャーなど、ビジネスの他の分野にも新たな識見を提供することができる」とナガー氏はいう。

これは、感情を見たり、使われているキーワード分析を用いて行動や理解を促すものではないということを明確に強調している。それは、顧客の問題が解決するよう、通話のやりとりの中の言語を本当の意味で理解しようとし、より適切な情報をスタッフに提供することだと言っている。そのためには、人の意図をモデル化し、記憶し、同時に複数のことを理解する必要がある。これは彼がいうように、そもそも人間がどのように対話するのかということであり、これがまさに会話型AIが模倣しようとしていることでもある。

まだ完全ではないが、技術の進歩が許す限り、これらの問題の解決に1つ1つ取り組んでいる。

同社は2018年に立ち上がり、最初のアイデアはフロントラインで働く人たちのための音声アシスタントを作ることだったが、ナガー氏は顧客と話しているうちに、本当の需要はここではなく、会話型AIを使って人間の労働者を増強させること、それが特にカスタマーサービスにあるということを知った。

彼は代わりにそれを作ることに決め、2020年3月にはプロダクトの初期バージョンを発表した。現在、同社には米国とインドに分散して27名の従業員が在籍しているが、ナガー氏はリモートでどこでも採用できることで、社内の多様性を推進しつつ、最高の人材を獲得できると信じている。

今回のラウンドでリードインベスターを務めるアグラワル氏は、同社を、正しい情報をリアルタイムでスタッフに提供するという根本的な課題の解決に取り組む会社だと考えている。「彼が作ったものは、リアルタイムであることを念頭に置いている。これは、カスタマーサービスのスタッフを支援するための聖杯のようなものだ。通話が終わった後に情報を提供することもでき、それはそれで便利だが、(中略)通話中に情報を提供することで真の価値を発揮する。そこに本当の意味でのビジネス価値がある」と彼はいう。

ナガー氏は、この技術が営業など他の業務にも応用できることを認めているが、当面はカスタマーサービスに注力していくつもりだ。

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(文:Ron Miller、翻訳: Akihito Mizukoshi)

クリーン電力サービスの「アスエネ」がAI活用の温室効果ガス排出量管理SaaS「アスゼロ」を正式リリース

クリーン電力サービスの「アスエネ」がAI活用の温室効果ガス排出量管理SaaS「アスゼロ」を正式リリース

クリーン電力サービス「アスエネ」を提供する気候変動テック領域スタートアップ「アスエネ」は8月26日、AIなどのテクノロジーを活用したSaaSプラットフォーム型温室効果ガス排出量クラウド「アスゼロ」の正式リリースを発表した。脱炭素を目指す企業や自治体に向けた、温室効果ガス排出量およびカーボンフットプリントの算定・報告・削減・カーボンオフセットなどの一括管理と、業務自動化による工数削減が低コストで行えるというサービスだ。

「アスゼロ」には次の3つの特徴がある。

  • スキャンするだけ自動でCO2見える化:企業や自治体などにおいて、自社だけでなく、サプライチェーン全体の温室効果ガス(GHG)排出量のデータ回収と算出を自動化。請求書やレシートをアップロードするだけで自動入力とGHG排出量をAIが自動算定
  • 分析・報告まるごと自動化:GHG排出量の分析をAIが自動支援。CDP、SBT、省エネ法などへの報告を代行・自動化。分析作業もAIを活用し自動化する
  • CO2削減もまとめておまかせ:GHG排出原因に応じて、再エネ100%電力提供、省エネなど最適な手法を提案。地産地消型クリーン電力、オンサイト・オフサイト両方対応のコーポレートPPA、クレジットオフセット、省エネソリューションなど最適なCO2削減手法を提案する

今後は、AIやブロックチェーンなどの最先端テクノロジーを活用し、脱炭素化への取り組みの自動化、非改ざん性の高い証明力の徹底や、ICP(社内炭素価格)機能の導入などを目指すという。またグローバル展開も視野に入れている。

アスエネでは、「再エネ100%、CO2排出量ゼロでコストも10%削減できる地産地消型クリーン電力」という電力サービス「アスエネ」を展開しており、アスゼロでは、このサービスの利用も提案に組み込まれている。

デジタル映画コレクションのMovies AnywhereがAI利用のライブラリー整理機能を追加

Movies Anywhere(ムービーズ・エニウェア)は複数サービスを横断してデジタル映画のコレクションを管理できるアプリだ。このほど、同アプリは膨張するライブラリーを整理しやすくする機能を追加した。

米国時間8月24日、Movies AnywhereはAIを利用した新機能「My Lists」を公開している。ライブラリーの映画をジャンル、俳優、シリーズ、テーマなどさまざまな要素に基づいて自動的にグループ分けする。

巨大なライブラリーを持つデジタル映画コレクターも、この機能を使えば、作品探しはNetflix(ネットフリックス)などの最新ストリーミングサービスと同じように推奨作品をスクロールしていくだけでよくなる。つまり、これまでのように購入順やアルファベット順に並んだ購入済み作品の無限に続くページをスクロールしていく代わりに、コンテンツが見つけやすいように整理されたリストをざっと見るだけでライブラリーに入っているもの簡単に見つけられる。

例えばあるシリーズの全作品を購入している場合、専用の列にまとめて表示される。これまで同じシリーズの作品の間に別の作品が挟まれた状態で探さなくてはならなかったのと比べて大きな改善だ。

「アクションスリラー」などの特定のカテゴリーや「強い女性の友情」などといった中心テーマの作品をたくさん持っていることに気づくこともあるだろう。映画の他の上映作品を絞り込むのに役立つかもしれない。

こうしてアルゴリズムが生成したリストは、編集することも可能で、タイトルを追加、削除したり、リスト全体を削除することもできる。

画像クレジット:Movies Anywhere

自分でリストを作ることもできる。お気に入りや家族と見たい映画のリストなど、好きなようにコレクションを編成できる。この機能は、買ったけれどもまだ見る時間を作れていない映画の「今度見る」リストを作るのにも使える。

Movie Anywhereアプリは何年も前からあるが、2017年の新プラットフォーム移行後、現在はDIsney(ディズニー)、Universal(ユニバーサル)、WB(ワーナー・ブラザーズ)、Sony Pictures(ソニー・ピクチャーズ)、および20th Century Fox(20世紀センチュリー・フォックス)が共同運営している。デジタル映画コレクターに向けた最大のセールスポイントは、さまざまなサービスから購入した映画をすべて一か所で管理できることだ。たとえばiTunes(アイチューンズ)、Vudu(ヴードゥー)、Prime Video(プライム・ビデオ)、YouTube(ユーチューブ)、Xfinity(エックスフィニティー)などが提供するデジタル・ダウンロードもそうだ。これまでは、あるタイトルを買ったかどうかを知るために、アプリからアプリへと切り替えなくてはならなかった。

My Listsは、アプリを最新であると感じさせるために同社が追加してきた数多くの機能の1つだ。たとえば2020年は、Screen Pass(スクリーンパス)というデジタル映画貸し借り機能を導入しており、その前にはユーザーが最大9人の友だちと鑑賞できる Watch Togetherという共同鑑賞機能を公開した。

新しいMy Listsは、Movies Anywhereのモバイルアプリ、デスクトプ版、およびストリーミングデバイスのナビゲーションバーで本日から利用できる。

関連記事:友人に映画を貸し出す「Screen Pass」機能をMovies Anywhereが正式公開
画像クレジット:Movies Anywhere

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

機械学習で消費者トレンドをリアルタイムとらえ企業の迅速な対応をサポートするAi Palette

消費者製品の製品開発は、調査やプロトタイピングやテストなどで2年以上を要する場合もある。しかしソーシャルメディアのある社会では、人びとはトレンドがもっと早く店頭でカタチになることを期待している。2018年に創業されたAi Paletteは、機械学習を利用してトレンドをリアルタイムで発見し、早ければ数カ月でその商品開発を実現させる。すでにクライアントとしてDanone(ダノン)やKellogg’s(ケロッグ)、Cargill(カーギル)、Dole(ドール)などを抱える同社は、米国時間8月24日、pi VenturesとExfinity Venture Partnersがリードする応募超過のシリーズAで440万ドル(約4億8000万円)を調達したことを発表した。

このラウンドにはさらに、これまでの投資家であるフードテックのベンチャーAgFunderとDecacorn Capital、そして新たな投資家としてAnthill Venturesが参加した。これでAi Paletteの総調達額は、2019年のシードラウンドを含めて550万ドル(約6億円)になる。

Ai Paletteはシンガポールに本社があり、主な技術者たちはベンガルールにいる。顧客ベースは東南アジアに始まり、その後中国や日本、米国、ヨーロッパへと拡大した。

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Ai Paletteは現在15の言語をサポートし、したがって多くの種類のAIベースのツールを利用して消費者向けパッケージ製品(CPG)のトレンドを予想できる。今回の投資は主に市場拡大と、特にデータサイエンス方面の技術者の増員に当てられる。

Ai Paletteを2018年に創業したCEOのSomsubhra GanChoudhuri(ソンブラ・ガンチョウドリ)氏とCTOのHimanshu Upreti(ヒマンシュウ・ウプレティ)氏は、ロンドンのインキュベーター / アクセラレーター事業であるEntrepreneur Firstで出会った。それまでガンチョウドリ氏は、世界最大の香料メーカーGivaudanで営業とマーケティングを担当していた。その仕事を通じて彼は、スナックやファストフードや包装製品などさまざまな消費者製品のイノベーションの過程を見てきた。彼は見てきた企業の多くが、2年という製品のイノベーションサイクルでは需要に追いつけないことを理解し始めていた。そこで以前Visaなどで仕事をしたことのある、高度な機械学習とビッグデータ分析のエキスパートであるウプレティ氏は、数ペタバイトという大量のデータを処理できるモデルを作った。

Ai Paletteの最初のプロダクトであるForesight Engineは、原材料や香味などのトレンドを調べて、その人気の理由を分析し、需要の継続期間を予想する。それはまた、まだ満たされていない需要である意味する「空白の商機」を見つける。例えば、新型コロナ(COVID-19)の流行で、人々の食生活が変わった。1日に6回もテレビを観ながら健康スナックを食べるようになったため、企業は新しい種類の製品を発売するチャンスがあるとガンチョウドリ氏はいう。

ウプレティ氏によると、Foresight Engineは状況に即した情報も提供できる。「例えば、ある食品が外出先で食べられているのか、それともカフェで食べられているのか。社会的的に消費されているのか、個人的に消費されているのか。子供の誕生日会では何が流行っているのか?特定の製品や成分について、画像は製品の組み合わせや製品のフォーマットに関する情報を提供します」。

このプラットフォームが利用するデータのソースは、ソーシャルメディア、検索、ブログ、レシピー、メニュー、企業のデータなどさまざまだ。ガンチョウドリ氏によると「各市場で人気の高いデータセットは分析に際してプライオリティを上げる。たとえば地元のレシピやフードデリバリーアプリには、そのときのトレンドが見られることが多い。そしてそれらのデータを時系列で追えば、かなり高い確度で成長の軌跡を判断できる」。

たとえばAi Paletteが新製品開発に貢献した例として、特定の国のポテトチップやソーダが挙げられる。彼らはForesight Engineを使って人気上昇中のトレンドを知るだけでなく、長期的な人気になりそうなものを知り、無駄な投資を避けようとした。

パンデミックの間、Ai Paletteの顧客の多くが、そのツールを使って新しいトレンドや消費者の行動パターンに応じようとした。中でも多くの市場で関心が高かったのは、健康食品や免疫力を高める食材だ。たとえば東南アジアではレモンとにんにくの需要が増え、米国ではアセロラやマリファナがトレンドになった。

一方、中国では健康より味が優先されたとガンチョウドリ氏はいう。「おそらく平常時感覚への回帰が優先されたのではないか」とのこと。さらにインドでは、パンデミック対策として商店は棚持ちの良い商品を歓迎したが、消費者の多くは退屈をまぎらわすために、一風変わったスナックを求め、中でもキムチなどの韓国系香辛料に人気があった。

Ai Paletteは使える言語が多いため、機械学習を利用する他のトレンド予測プラットフォームとの差別化という点で有利だ。現在サポートしている言語は、英語、簡体中国語、日本語、韓国語、タイ語、ベトナム語、インドネシア語、マレー語、タガログ語、スペイン語、フランス語、ドイツ語となる。今後はヨーロッパ各国やメキシコ、ラテンアメリカ、中東もターゲットにする予定だという。

画像クレジット:Ai Palette

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hiroshi Iwatani)

建設・土木の生産支援クラウド「Photoruction」の開発・運営を手がけるフォトラクションが7.6億円調達

建設・土木の生産支援クラウド「Photoruction」の開発・運営を手がけるフォトラクションが7.6億円調達

建設・土木の生産支援クラウド「Photoruction」(フォトラクション)の開発・運営を行うフォトラクションは8月25日、第三者割当増資による7億6000万円の資金調達を発表した。引受先は、慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)、GMO VenturePartners、既存株主のDBJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル。調達した資金により、PhotoructionおよびAIを活用しデスクワークや雑務を代行するアウトソーシングサービス「建設BPO」の開発とカスタマーサクセス、採用と組織体制の強化を実施していく予定。

建設業界では、国内建設投資額が平行線になると予測され、今後も多くの需要が見込めるという。しかし、法改正により2024年には残業規制がかるのに加え、労働人口が100万人減ると予想されており、労働力不足のために1人当たりの生産性向上や人材リソースの確保は待ったなしの状況となっているという。そこで同社は、人材とテクノロジーへの投資を継続的に実施することで、国内60兆円を超える建設産業の生産性向上をさらに加速するとしている。

2016年3月設立のフォトラクションは、「建設の世界を限りなくスマートにする」をミッションとし、建設現場の生産性向上をアプリケーションとデジタルアウトソーシングで支援するサービスとして、Photoructionを提供している。同サービスは2017年末に工事現場の写真管理アプリケーションとしてスタートし、現在ではスーパーゼネコンをはじめ10万超の建設プロジェクトで活用されるようになった。また2018年には、建設業務に特化したAIの研究開発も開始。2021年1月に建設BPOをリリースした。

建設・土木の生産支援クラウド「Photoruction」の開発・運営を手がけるフォトラクションが7.6億円調達

同社は、SaaS×AIにより、業務の効率化だけではなく1人当たりの労働時間を増やせるよう、新しい生産性向上サイクルの可能性を追求するとしている。
建設・土木の生産支援クラウド「Photoruction」の開発・運営を手がけるフォトラクションが7.6億円調達

すべての歯科医を虫歯を迅速に見つける「スーパー歯科医」にすることを目指すAdra

ヘルスケアのさまざまな分野がそうであるように、歯科も着々とテクノロジーを取り入れている。その多くは歯科矯正の分野だが、Adraなどのスタートアップは歯科医の日々のワークフロー、特に虫歯の発見にAIを活用しようとしている。2021年に世界の歯科医療の市場規模は4350億8000万ドル(約47兆6800億円)になると見られている。

シンガポールを拠点とするAdraは2020年に構想を開始し、2021年に創業した。共同創業者のHamed Fesharaki(ハメド・フェシャラキ)氏は歯科医として10年以上のキャリアがあり、シンガポールで2カ所の医院を経営している。

フェシャラキ氏によれば、歯学部でX線画像の読み方は習うがきちんと読めるようになるには数年かかるという。また歯科医は患者の間を飛び回っているので、X線画像を読む時間が数分間しかないこともしばしばだ。

こうしたことから、共同創業者のYasaman Nematbakhsh(ヤサマン・ネマトバクシュ)氏によれば、歯科医は最大40%の確率で虫歯を誤診するという。同氏のバックグラウンドはイメージングで、見えにくいガンをAIで特定する機器を開発していた。フェシャラキ氏はこれを歯科にも応用できるのではないかと考えた。

フェシャラキ氏はTechCrunchに対し、Adraは経験豊富な歯科医のような見方を提供することですべての歯科医を「スーパー歯科医」にしようとしていると語った。同社のソフトウェアを使うと歯科のX線写真から虫歯などの歯の問題を短時間で検出でき精度は25%向上するため、歯科医院ではその分患者により良い医療を提供し収益を増やせる。

Adraのソフトウェアのサンプル(画像クレジット:Adra)

フェシャラキ氏は「我々は経験豊富な歯科医の視点を活かし、X線写真を画像に変換することによって問題点を表示して、何に着目すればいいかを理解できるようにします。最終的に判断するのは歯科医ですが、我々が経験的な要素を取り入れることで歯科医が比較検討をするのに役立ち、助言を提供できます」と述べた。

問題のある箇所とその程度をすばやく示すことで、歯科医は治療法を決めることができる。例えば詰め物をするのかフッ素を使うのかしばらく様子を見るのか、ということだ。

もう1人の共同創業者であるShifeng Chen(シーファン・チェン)氏とともにAdraはYコンビネーターの夏学期を終了し、これまでに25万ドル(約2700万円)を調達した。フェシャラキ氏は、正式にシード資金調達を実施しエンジニアを増やしてユーザーエクスペリエンスの向上や機能の追加に取り組む意向だ。

同社はいくつかの歯科医院で試験運用をしており、米国食品医薬品局の認可取得に向けて試験をする医院をさらに増やしたい考えだ。フェシャラキ氏は認可を受けるまで6〜9カ月かかるだろうと予測している。認可の後、2022年後半か2023年前半に製品として販売を開始できるだろう。

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画像クレジット:Adra

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(文:Christine Hall、翻訳:Kaori Koyama)

企業のコンプライアンス対応を自動化するRegologyのプラットフォーム

どこの国にも独自の法律、規則、規制があり、それらは定期的に変更されるので、そのすべてに対応することは非常に困難だ。そのため、通常は大勢のスタッフが事に当たり、スプレッドシートを埋めていくような、非効率的な手順が必要とされる。アーリーステージのスタートアップ企業であるRegology(レゴロジー)は、この問題にAIアルゴリズムによる自動化を導入することで、このような状況を変えたいと考えている。

同社は米国時間8月19日、Acme Capital(アクメ・キャピタル)が主導するシリーズAラウンドで、800万ドル(約8億8000万円)の資金を調達したと発表。この投資ラウンドには、既存投資家のGagarin Capital(ガガーリン・キャピタル)とPine Wave Investments(パイン・ウェーブ・インベストメント)も参加した。

当社の共同設立者でCEOを務めるMukund Goenka(ムクンド・ゴエンカ)氏は、15年以上にわたり銀行業務に携わってきた経験の持ち主で、規制に対応することの難しさと、対応できなかった場合の財務上の影響を目の当たりにしてきた。そして、大規模な国際的企業に、各国の無数の規制に対応する方法を提供するために、Regologyを設立した。

ゴエンカ氏によると、同氏の会社は法律のデータベースを作成することから始まったという。「当社では、常に更新される非常に大規模な法律のデータベースを構築しており、これは5つの大陸と多くの国や地域をカバーしています。また、法案から法律、規制に至る法律制定の全プロセスや、多くの機関とその定期的な更新を毎日カバーしています。さらに、さまざまな業界や項目の分野もカバーしています」と、ゴエンカ氏は説明する。

しかし、この会社はそれだけで止まらない。顧客の企業がビジネスを行っているあらゆる場所で、コンプライアンスを自動化するフレームワークを提供し、顧客が長期的にコンプライアンスを維持できるように、常に法律やアップデートを確認しているのだ。同社のターゲットはフォーチュン500の大企業であり、ゴエンカ氏は具体的な企業名を挙げることはできなかったが、最大手のハイテク企業や銀行が含まれていると述べている。

2017年に創設された同社は、現在20名の正社員を抱えており、年内には少なくともその倍に増員することを計画している。すでに25カ国の規制環境に目を配っている同社の事業においては、多様性が不可欠であると、ゴエンカ氏はいう。それぞれの国がどのように機能しているかを理解することは、同社の事業にとって不可欠であり、そのためには多様な人材が必要となる。

ゴエンカ氏によると、同社は新型コロナウイルスが流行するずっと前からリモートで業務を行っているという。今でもパロアルトに小さなオフィスがあるが、オフィスを再開しても問題ないと判断された場合でも、ほとんどの業務でリモートを維持するつもりだという。

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ソフトバンクの人型ロボット「Pepper」が「りんな」を手がけるrinnaのAI会話エンジン最新版を採用

ソフトバンクの人型ロボット「Pepper」が「りんな」を手がけるrinnaのAI会話エンジン最新版を採用

rinnaは8月20日、法人向けAIチャットボット開発プラットフォーム製品「Rinna Character Platform」新バージョンが、ソフトバンクロボティクスのヒューマノイドロボット「Pepper」(ペッパー)に採用されたと発表した。

rinnaは、MicrosoftのAI&リサーチ部門でAIチャットボットの研究を行っていたチームがスピンアウトして2020年6月に設立したAI開発企業。ディープラーニング技術を活用し、AIが文脈に応じた会話文を自動生成して人間と自然に会話する「共感チャットモデル」、AIが話し声や歌声で豊かに感情表現することを可能にする「音声合成システム」などの技術を発表してきた。これら技術は、rinnaが運営するLINE上のAIチャットボット「りんな」、法人向けAIチャットボット開発プラットフォーム製品「Rinna Character Platform」に応用されている。

Rinna Character Platformは、会話内容や音声表現をカスタマイズしてキャラクター性を持たせたAIチャットボットを開発可能。2021年春リリースの新バージョンでは、新開発のチャットエンジン「Style Transfer Chat」(STC)を使用することで、大規模会話データから構築した事前学習済みモデルに、作り上げたいキャラクターの性格や口調を反映した少量の会話データを追加学習させるだけで、キャラクター性を反映した自由会話が可能という。

また新バージョンでは、外部サービスと柔軟に連携でき、WebHookフィルターを利用しユーザーが自由に機能を拡張可能。カスタム機能はどのような言語でも開発可能という。カスタム機能とチャットボットのサーバーを分離し、チャットボットの各モジュールを小さくシンプルにすることで、耐障害性とセキュリティも向上させた。

ソフトバンクロボティクスのPepperでは、2019年からRinna Character Platformを採用しているという。同新バージョンの最新チャットモデルの効果により、Pepperの会話機能が向上し、Pepperが提供するサービスの顧客満足度が高まることが期待されるとしている。また、Rinna Character Platformの新しいアーキテクチャによってシステムの導入が容易になるとともに運用効率と耐障害性が向上し、自由会話のAIチャットボットをより低コストで安定したサービスとして提供できるようになるとした。

AI創薬のMOLCUREが総額8億円調達、製薬企業との共同創薬パイプライン開発やグローバルを主戦場とした事業展開を加速

AI創薬のMOLCUREが総額8億円調達、製薬企業との共同創薬パイプライン開発やグローバルを主戦場とした事業展開を加速

AIを活用した新薬開発を行うMOLCURE(モルキュア)は8月18日、第三者割当増資による総額8億円の資金調達を発表した。引受先は、ジャフコ グループ、STRIVE、SBIインベストメント、日本郵政キャピタル、GMOベンチャーパートナーズ、日本ケミファ。今後は、国内外の製薬企業との共同創薬パイプライン開発を推進するとともに、グローバルを主戦場とした事業展開をさらに加速する。

有効な治療薬のない疾患は3万以上存在するとされるものの、製薬業界では創薬の難易度が年々高まり、開発効率が下がっているのが現状だ。製薬企業が医薬品を市場に提供するまでには約10年という期間、また約1000億円という巨額なコストが必要といわれており、新たな技術や開発手法が求められている(How to improve R&D productivity: the pharmaceutical industry’s grand challenge)。

これに対して、MOLCUREが提供するバイオ医薬品分子設計技術は、AIとロボットを活用し自動的に大規模スクリーニングと分子設計を行えることから、既存手法と比較して、医薬品候補分子の発見サイクルを1/10以下に効率化すること、また10倍以上多くの新薬候補の発見、従来手法では探索が困難な優れた性質を持つ分子の設計を行えるという。現在同技術を活用し、製薬企業とパートナーシップを組んで新薬開発を行っているそうだ。AI創薬のMOLCUREが総額8億円調達、製薬企業との共同創薬パイプライン開発やグローバルを主戦場とした事業展開を加速

特に、2021年に製薬企業と実施した共同創薬パイプライン開発では、既存のバイオテクノロジー実験ドリブンな手法と比較して100倍以上の結合力を持つ分子を大量に設計することに成功したという。また世界で初めて、ある創薬標的に対して効果を持つ分子の設計にも成功し、AIを活用した創薬事例で大きな成果を残したとしている。

MOLCUREが提供する技術は、圧倒的に多くの優れた医薬品分子を探索できる点や、業界トップの研究者集団が提供するAI×バイオ医薬品開発の質の高いノウハウが支持されているとしている。共同で創薬パイプライン開発を行っているパートナーとしては、これまでに米Twist Bioscience、日本ケミファをはじめ(2021年8月18日時点の例)、製薬企業・製薬バイオテック企業など累計7社10プロジェクトで利用されているそうだ。

AI創薬のMOLCUREが総額8億円調達、製薬企業との共同創薬パイプライン開発やグローバルを主戦場とした事業展開を加速

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カテゴリー:バイオテック
タグ:医療 / 治療(用語)AI / 人工知能(用語)創薬(用語)MOLCURE(企業)ロボット(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

特別なハードウェアを使わずに誰でもAIの開発ができるようにするThirdAIの技術

ヒューストンに拠点を置くThirdAI(サードAI)という企業は、GPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)のような特殊なハードウェアを必要とせずに深層学習技術を高速化するツールを構築している。同社はシード資金として600万ドル(約6億6000万円)を調達した。

Neotribe Ventures(ネオトライブ・ベンチャーズ)、Cervin Ventures(セルヴァン・ベンチャーズ)、Firebolt Ventures(ファイアボルト・ベンチャーズ)が共同で主導したこの出資は、従業員の増員とコンピューティングリソースへの投資に使用すると、Third AIの共同創業者でCEOを務めるAnshumali Shrivastava(アンシュマリ・シュリヴァスタヴァ)氏はTechCrunchに語った。

数学の素養があるシュリヴァスタヴァ氏は、もともと人工知能や機械学習に興味があり、特にAIをより効率的に開発する方法について再考していた。それはライス大学に在籍していた時に、AIでディープラーニング(深層学習)をどうやって実行するかについて検討したことがきっかけだった。そして2021年4月、同氏はライス大学の大学院生たちとThirdAIを起ち上げた。

ThirdAIの技術は「深層学習へのよりスマートなアプローチ」を目的に開発されたもので、大規模なニューラルネットワークを学習させる際に、アルゴリズムとソフトウェアの革新的な技術を用いて、汎用の中央処理装置(CPU)をGPUよりも高速に機能させることを目指していると、シュリヴァスタヴァ氏はいう。多くの企業は何年か前にCPUを放棄し、高解像度の画像や動画をより迅速に同時レンダリングできるGPUを用いるようになっている。しかし、GPUにはあまり多くのメモリが搭載されていないため、ユーザーがAIを開発しようとすると、ボトルネックになることが多いとシュリヴァスタヴァ氏は語る。

「深層学習の状況を見ると、技術の多くは1980年代から使われているものであり、市場の大部分、約80%がGPUを使用し、高価なハードウェアと高価なエンジニアに投資して、AIの魔法が起こるのを待っているのです」と、同氏は続けた。

シュリヴァスタヴァ氏と彼のチームは、将来的にAIがどのように開発されていく可能性が高いかを検討し、GPUに代わるコストを抑えた方法を生み出したいと考えた。彼らのアルゴリズム「サブリニア・ディープラーニング・エンジン(劣線形深層学習エンジン)」は、専用のアクセラレーション・ハードウェアを必要としないCPUをGPUの代わりに使用する。

Neotribeの創業者兼マネージングパートナーであるSwaroop “Kittu” Kolluri(スワループ・”キットゥ”・コルリ)氏は、この種の技術はまだ初期段階にあると述べている。現行のやり方は手間とコストと時間がかかる。例えば、より多くのメモリを必要とする言語モデルを実行している会社では問題が発生するだろうと、同氏は続けた。

「そこにThirdAIの出番があります。今までできなかったことが可能になるのです」と、コルリ氏は語る。「それが、我々が出資しようとした理由でもあります。コンピューティングだけでなく、メモリも含めて、ThirdAIの技術は誰でもそれができるようにします。ゲームチェンジャーになるでしょう。深層学習に関する技術がもっと洗練されるようになってくれば、可能性は無限に広がります」。

AIはすでに、ヘルスケアや地震データ処理など、最も困難な問題のいくつかを解決する能力を備えた段階にあるが、AIモデルの実行が気候変動に影響を与えるという問題もあると、同氏は指摘する。

「深層学習モデルを訓練することは、1人で5台の自動車を所有するよりもコストがかかります」と、シュリヴァスタヴァ氏は語る。「AIの拡大に向けて、我々はそういうことについても考える必要があります」。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:ThirdAI人工知能深層学習資金調達機械学習

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

AIを使ってチップ製造を大幅にスピードアップするMotivoが約13億円を調達

チップデザインは試行錯誤を繰り返す骨折りの仕事であり、世に出すまでに何年もかかる。チップ業界のベテランが興した創業5年のスタートアップMotivo(モティボ)は、AIを使ってチップデザインにかかる時間を年単位から月単位にスピードアップするためのソフトウェアを手がけている。同社は米国時間8月12日、1200万ドル(約13億円)のシリーズAを発表した。

Intel Capitalが新規投資家のStorm Ventures、Seraph Groupとともにラウンドをリードし、Inventus Capitalも参加した。その前のシードラウンドを含めMotivの累計調達額は2000万ドル(約22億円)になった。

Motivoの共同創業者でCEOのBharath Rangarajan(バラース・ランガージャン)氏はチップ業界で30年働き、いくつかの基本的なトレンドや問題を目にした。まず、チップデザインのプロセスは非常に時間がかかるものであり、有望な候補を生み出してマーケット展開するまでに数年かかる。

さらに、ますますパワフルになっているチップにより多くのエレクトロニクスを搭載するというムーアの法則にしたがって、これらのデザインは複雑さが増している。そしていざ製造段階になると、製造のために多くの無駄が生じる。ランガージャン氏は人工知能がデザインプロセスで機能するよう、そして製造サイクルで高精度を確保しながらチップをより早くマーケットに投入できるようにするために会社を興した。

「人間並みの判断力を持たせるためにAIエンジンを訓練し、問題を起こすことなくデザインに関する製造可能性のためにデザイン面で多くのことができます。反復ループを回避し、またコードや認証、タイミングもデザインできます。これらの作業は週単位や月単位、あるいは1日単位となります」と同氏は話す。

同社の最終的な目標は、ソフトウェアと知能を活用してチップデザインの過程を3年から3カ月に凝縮させることだ。まだそこには至っていないが、すでに問題に取り組み始め、チップのレイアウト、チップを動かす潜在的なRTLコード、そしてチップ上のさまざまなピースやエレクトロニクスがどのようにつながっているかを示すネットリストに着目した作業プロダクトを持っている。

差異化要因の1つは、同社がなぜ取り組むことを決めたのかを説明するためにAIを透明性あるものにしようとしていることだ。「AIの多くがブラックボックスです。自動運転車がなぜこの点で急に逸脱することにしたのかはわかりません。当社のAIは理解可能なものです。なぜAIがそのように、あるいは別のようにチップを変更するよう言っているのかを説明することができるよう、ソリューションを構築しました」とランガージャン氏は説明する。

同社は有料の顧客を抱えている。社名は明らかにできないが、おそらくこの種のソフトウェアに限定したマーケットがあり、チップ企業、特に今回のラウンドのリード投資家であるIntel Capitalがそこには含まれると知識に基づいて推測できるはずだ。Motivoの現在の従業員数は15人で、うち12人がフルタイムで働いている。今後どうなるかにもよるが、同社は来年、従業員数を2倍あるいは3倍に増やす計画だ。

特定のエンジニアリングを専門とする人材を求める企業にとって採用は常に難しいものだ。しかし、同社のチームはすでにかなり多様性に富んでいる、とランガージャン氏は話し、創業したときのように今後も引き続き多様性を促進することを明確にしている。「会社に加わる正しい人物を見つけなければなりません。あらゆる優秀な人やバックグラウンドを持つ人を求めます。実際、多様な方が良いのです。当社は、この業界で育ち、多くの経験を持っている人を獲得しました。そしてかなり多様性に富んだチームを築きました」とランガージャン氏は述べた。

現在のところ、出社を望む人は出社し、まだワクチンを接種していない小さな子どもを抱えている人など、出社を望まない人は引き続き在宅で働けるハイブリッド勤務体制を継続する計画だと同氏は話した。そうしたフレキシブルさはオフィスが完全再開した後も継続する。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Motivo資金調達チップ人工知能

画像クレジット:Monika Sakowska / EyeEm / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

AIと機械学習で将来的な人材戦略を予測するretrain.aiが約7.7億円を調達

世界経済フォーラムによれば、オートメーションにより2025年までに8500万人が職を失い、同時に9700万人の新たな雇用が創出されるという。良いニュースのように聞こえるが、多くの人が将来の仕事のために再びトレーニングを受ける必要があるという厳しい現実だ。

多くのスタートアップが従業員のスキルに関するこうした問題の解決に取り組み、人材育成、神経科学に基づく評価、人材配置の予測テクノロジーに着目している。このようなスタートアップにはPymetrics(5660万ドル、約62億1000万円を調達)、Eightfold(3億9680万ドル、約435億3000万円を調達)、EmPath(100万ドル、約1億1000万円を調達)などがある。しかしこの分野はまだこれからだ。

retrain.aiは自社を「人材インテリジェンスプラットフォーム」企業と宣伝している。同社はこれまでに投資していたSquare Peg、Hetz Ventures、TechAviv、.406 Ventures、Schusterman Family Investmentsから追加で700万ドル(約7億7000万円)を調達した。また戦略的投資家としてSplunk Venturesが加わった。このラウンドにより、調達金額の合計は2000万ドル(約22億円)となった。

retrain.aiはAIと機械学習を活用して、行政や組織が将来の業務のために人材の再トレーニングやスキルアップを実施し、多様性に取り組み、従業員と求職者のキャリアマネジメントができるように支援するという。

同社の共同創業者でCEOのShay David(シェイ・デビッド)博士は「データの力で世界の労働市場で広がりつつあるスキルギャップを解決するエキサイティングなジャーニーにSplunk Venturesが加わることを喜んでいます」と述べた。

retrain.aiは、企業が「多数のデータソースを分析してスキルセットの需要と供給を理解する」ことにより将来的な人員の戦略に取り組むための支援をするとしている。

新たに得た資金は、米国内での事業拡大、人材の雇用、製品開発に充てられる。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)

ストリーミングサービスのPlexが「音響的に似ている」曲を集めたプレイリストを作る機能を公開

メディアソフトウェアメーカーのPlexは、2020年にサブスク専用音楽アプリPlexampをリリースした。このアプリ名は、かつてのWinampに代わるものを目指すことを表している。米国時間8月12日、同社はPlexampアプリをアップデートし、Super Sonicという新機能を搭載した。これは例えば音楽のジャンルが一致するというようにメタデータだけを使うのではなく、「音響的に」似ている曲を集めたプレイリストを作れる機能だ。

同社は、ユーザーのライブラリにある曲が別の曲とどのように関連するかを音で判断するためにSuper Sonicを開発したと説明する。これは多くの曲を含むカタログにアプローチする方法のひとつで、雰囲気やトーン、テンポなどの属性に基づいて曲を分類するPandoraのMusic Genome Projectのようなものを思い起こさせる。

画像クレジット:Plex

しかし熟練の音楽学者が多くの属性をもとに曲を解析するMusic Genome Projectとは異なり、Super Sonicはテクノロジーを使う。

Plexampの新しい音響解析機能は、ニューラルネットワークとAIを活用してライブラリ中のすべての曲、アルバム、アーティストをマッピングする。Super Sonicはその解析の中から50ほどのパラメーターを抜き出して、適切に重みづけする。「音響的に似ている」とはN次元の空間において2つの点が近いことを指しているとPlexは説明する。

この新機能の設定にはCPUにかなり大きな負荷がかかり、ライブラリのサイズによるが数時間から数日かかることもある。しかし完了後はこの機能を使って音楽を発見できる。メタデータが少ない、あるいはまったくないインディーズや無名の音楽をたくさん聴く人にとっては、特に有効だろう。

解析が完了すると、新しいRelated Tracks(関連のある曲)機能で音響的に似ている曲が表示される。標準的なメタデータだけでは一致しない曲が出てきて驚くこともありそうだ。

もうひとつ、Mixes for You(あなたのためのミックス)にはユーザーがヘビロテした曲が集められ、さらに最近のお気に入りの他に音響的に似た曲も追加される。サーバーは以前に聞いていた曲をベースにしたミックスもいくつか作るので、さらにさまざまな曲が見つかる。

人気があったが数年前にメタデータプロバイダーの変更に伴って廃止されたPlex Mixに代わるものとして、新しいラジオ機能も公開する。音響的に似ている曲やアルバム全体を再生するTrack RadioとAlbum Radioに音響のデータが使われる。

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Super Sonic以外の新機能としては、アルバムをタイプごと(「デモ」や「ライブアルバム」など)に整理したり絞り込んだりする機能がある。またOn This Day(この日)機能では、アルバムの節目、例えばアルバムが20年前、30年前、50年前にリリースされたといったことがわかる。

画像クレジット:Plex

新しい音響解析機能を使えるのは有料のPlex Passのサブスク利用者で、macOS、Windows、LinuxのいずれかのマシンでPlex Media Server v1.24.0を動作させる必要がある。ただしARMのCPUには対応していない。

画像クレジット:Plex

Plexはパワーユーザーにもっとアピールできるサブスクリプションにしようと以前から取り組んできた。登録ユーザーはおよそ2500万人だが、パワーユーザーは多くない。しかし現在、同社の利益はサブスクの売上に完全に依存しているわけではない。無料の広告付きストリーミング市場に進出し、資金調達も実施した

現在Plexは、ストリーミング事業をレンタル、購入、サブスクリプションといった分野に拡大しようとしている。しかしSuper Sonicを見ればわかるように、Plexはデジタルメディアのコレクターや大ファンであるコアなオーディエンスにアピールするテクノロジーを今後も探り続けるだろう。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

新規の酵素遺伝子や反応経路を探索可能なプラットフォームを手がけるdigzymeが約1.5億円のプレシリーズA調達

新規の酵素遺伝子や反応経路を探索可能なプラットフォームを手がけるdigzymeが約1.5億円のプレシリーズA調達

digzyme(ディグザイム)は8月10日、プレシリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による約1億5000万円の資金調達を7月30日に実施したことを発表した。引受先はDEEPCORE、ANRI、Plug and Play Venturesなど。

2019年8月設立のdigzymeは、「バイオインフォマティクスで物質生産プロセスに変革を起こし、環境と経済を両立する。」をミッションに、新規の酵素遺伝子や反応経路を探索可能なプラットフォーム「digzyme Moonlight」を展開している東京工業大学発スタートアップ。

酵素は、化学反応を引き起こす触媒として食品・化学品・日用品など様々な分野で活用されている。とりわけ化学品開発においては、生物が持っている酵素を利用し無機物から有機物を作り出す物質生産(バイオプロセス)が地球環境に対する負荷が少ないことから、近年その活用ニーズが大きく高まっている。

digzymeは、酵素の持つ「Moonlighting」と呼ばれる機能に着目し、生体内の本来とは異なる複数の用途に使用可能な反応を持つ酵素と、その反応経路を遺伝子解析を使って見つけ出すという。化合物生産・分解において、環境負荷の低い選択肢を効率よく提案することを可能にするとしている。

ただバイオプロセスの産業化には課題が多く、「人間の経験や偶然に頼っている割合が大」とdigzymeは話す。そこでdigzymeは、物質生産の開発コストの低減、多様なバイオ化学品の生産、より広い市場へのバイオプロセスおよびバイオ化学品の導入を可能にするソリューションとして「生命科学と情報科学を融合させたバイオインフォマティクスを中心としたプラットフォーム技術」を提供している。

今回調達した資金は、「酵素開発プラットフォームの強化として、収率を向上させるための酵素改変技術の拡張と、これを活用した具体的な開発パイプラインの立ち上げ研究」に向けられるという。

2021年度には、複数の開発パイプラインの立ち上げと「酵素探索研究」を予定しており、その中には「カンナビジオール合成」と「リグニン分解」がある。

このうちカンナビジオール(CBD。CannaBiDiol)は大麻草に含まれる成分で、期待が集まっている化合物。大麻および大麻草は、規制部位か否か、またテトラヒドロカンナビノール類(THCs)という向精神作用物質が含まれていることなどから、「大麻取締法」「麻薬及び向精神薬取締法」により厳しく取締が行われる一方、そのような作用のない、リラックス効果や癲癇治療効果があるカンナビノール類(CBDs)に関しては「大麻等の薬物対策のあり方検討会」において議論がなされているという。ただ、すでに複数企業がCBD合成系の開発を手がけているものの、経済的コストの低い持続的な生産に至らず高収率化が課題となっているそうだ。

また、CBDsとTHCsは1種類の酵素の微妙な違いにより合成経路が分岐するため、純粋なCBD合成には厳密な制御が必要となる。実際日本国内において、CBD製品の中に微量なTHCが混入が確認されたため販売が停止された例もある。これら課題について、digzymeは酵素開発技術を活かしその解決を目指すとしている。

リグニンは、木質バイオマスの約3割を占める物質ながら、同じ木質バイオマスのセルロースやヘミセルロースと比べて分解が難しいため利用されずに残ったり、使うにしても事前に化学薬品やエネルギーを投入して分解してやる必要がある。だが、「うまく分解できれば、さまざまな高付加価値なバイオ化学品の製造に利用できる可能性」を秘めているという。digzymeは、広い遺伝子資源の中から有効な酵素を探索し、改変を行うことで高効率なリグニン分解系の開発に着手する。

現在、digzyme Moonlightは共同研究を通じて解析サービスを提供しており、今後は委受諾契約などによる提供を行うとのこと。

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医療現場のバラバラな書類からデータ構造を解明するMendelが約19.7億円調達

医療業界には膨大なデータが存在するが、データが非構造化されていたり、バラバラな場所に存在していたりするため、多くの場合その価値を理解することは難しい。

情報の内容を取り込み、整理するためのAIプラットフォームを構築しているスタートアップ企業Mendel(メンデル)は2021年6月上旬、その成長を継続し「臨床データ市場」を構築するための1800万ドル(約19億7100万円)の資金調達を発表した。またこの資金は、カリフォルニア州サンノゼとエジプトのカイロにある2つのオフィスで、技術面やサポート面での人材を増やすためにも使用される予定だ。

今回のシリーズAラウンドには、DCMを筆頭に、OliveTree(オリーブツリー)、Zola Global(ゾラグローバル)、MTVLPの他、以前からのサポーターであるLaunch Capital(ローンチキャピタル)、SOSV、Bootstrap Labs(ブートストラップラブズ)、UCSF Health Hub(UCSFヘルスハブ)の会長であるMark Goldstein(マーク・ゴールドスタイン)も参加している。

メンデルによると、研究機関や製薬会社の間では、患者の長期的な治療や経過をより良く理解するために、より優れたデータを収集することへの関心が高まっている。特により広範なユーザーにおいてのデータ収集に関心が高まっており、これは現在人の観察や試験の実施が困難だからという理由だけではなく、AIを使用して大きなデータセットを活用することで、より良い洞察を得ることができると考えられているからだ。今回の資金調達はこうした見解に基づくものだ。

これは例えば、具体的な病気の症状や病理の特定だけでなく、具体的な治療コースに対する反復的でより典型的な反応を積極的に特定する上で重要となる。

メンデルについては、2017年に、定期的に実施されているさまざまな臨床試験とがん患者をよりよくマッチングさせるための200万ドル(約2億1900万円)のシードラウンドを同社が受けた際の記事を書いた。この際のアイデアは、特定の臨床試験は特定のタイプのがんや患者のタイプに対応しているため、新しいアプローチを試したいと思っている人には、適しているアプローチとそうでないものがあるというものだった。

しかし結局のところ、マッチングアルゴリズムを機能させるために必要なデータに問題があったということが、メンデルのCEOであり創業者のKarim Galil(カリム・ガリル)博士によって明らかになった。

彼はインタビューでこう述べた。「トライアルビジネスを立ち上げようとする中で、もっと基本的な問題が解決されていないことに気づいたのです。それは、患者さんの医療記録を読んで理解することでした。それができなければ、臨床試験のマッチングはできません」。

「そこで当スタートアップは、少なくとも3年間は研究開発屋になって、その問題を解決してからトライアルを行うことにしました」と彼は続けた。

今日、非構造化情報を解析してより良い洞察を得ようとしているAI企業は数多くあるが、メンデルは、個別の業種や専門分野に特化したAI知識ベースを構築しているハイテク企業の代表格と言える(例として、GoogleのDeepMind(ディープマインド)も医療分野でのデータ活用を検討している主要なAIプレイヤーだが、別の業種なら法律や経済業界に注力しているEigenが挙げられる)。

自然言語を「読む」ことの問題は、医療の世界ではこれが想像以上にニュアンスに左右されるということだ。ガリル氏は、英語の「I’m going to leave you」というフレーズになぞらえて、これが例えば部屋を出て行くという意味と、人間関係から抜け出すという意味があると説明する。真の答えは ─ 人間である私たちは、真実でさえわかりにくいことがあるとわかっているが─ 文脈の中でしか見つからない。

ガリル氏は、医師とその観察記録も同様であると述べる。「行間には多くのことが隠されていて、問題は人(や状況)によって異なることもあります」。

この分野に取り組めば、利益を得られることがわかっている。

メンデルは、臨床環境とAIアルゴリズムの構築の両方において豊富な経験を持つチームによって構築されたコンピュータビジョンと自然言語処理を組み合わせて使用しており、現在、臨床データの抽出を自動化するツール、OCR、記録を共有する際に個人を特定できる情報を自動的に再編集・削除できる特別なツール、臨床データを検索するための検索エンジン、そして例の臨床試験と人とのより良いマッチングを可能にするためのエンジンを提供している。顧客は、製薬会社やライフサイエンス企業、リアルワールドデータとリアルワールドエビデンス(RWDとRWE)のプロバイダー、研究グループなどだ。

またメンデルは、今回の資金調達と同時に、多くの医療機関で利用されているオンラインファックスソリューション「eFax」との提携を発表し、医療の世界にはまだやるべきことがたくさんあることを強調している。

私の子どもたち(10代)は「Fax」が何であるかさえ知らないかもしれないが、ヘルスケアや医療の世界では、Faxは人と人との間で文書や情報をやり取りするための最も一般的な手段の1つであり、現在では業界の90%がFaxを使用している。メンデルとのパートナーシップにより、これらのeFaxが「読まれ」、デジタル化され、より広範なプラットフォームに取り込まれ、そのデータをより有用な方法で活用できるようになるだろう。

メンデルの役員であり、DCMのパートナーでもあるKyle Lui(カイル・ルイ)氏は、声明の中でこう述べている。「世界のヘルスケア業界がAIを活用することには大きな可能性があります。メンデルは、医療機関がAIを使用して臨床データを自動で意味がわかるものにするための、ユニークでシームレスなソリューションを生み出しました。私たちは、次の成長段階に向けて引き続きチームと協力していくことを楽しみにしています」。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:Mendel資金調達医療人工知能コンピュータービジョン自然言語処理

画像クレジット:National Cancer Institute / Unsplash

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

「LoL」などに対応、ゲーム中にAIがアドバイスしてくれるアプリをSenpAI.GGが開発

ほとんどの人気が高いオンラインゲームでは、上手い人と下手な人の間には膨大な差がある。カジュアルなプレイヤーは、他のカジュアルなプレイヤーとであれば互角に戦えるかもしれないが、気まぐれに現れるプロのプレイヤーは、まるで別のルールでプレイしているかのように、全員を噛み砕いてしまう。

そんなとき、AIで生成された声が耳元でアドバイスしてくれたら、その差を少しでも縮めることができるかもしれない。Y Combinator(Yコンビネータ)の最新バッチで登場したSenpAI.GGという会社は、そう考えている。

前述したようなギャップは、その多くが、練習、筋肉の記憶、そしてはっきり言えば、生まれつきの能力に起因する。しかし、ゲームがリリースされてから時間が経ったり、大規模になったり、複雑になったりすると、優秀なプレイヤーはある重要なリソースを豊富に持とうとする傾向がある。たとえ、それを収集することが楽しいと思わなくても。そのリソースとはつまり、情報だ。

この距離ではどの銃が一番ダメージが大きいか?このマップであのキャラに対抗するにはどのキャラが最適か?ゲームを起動したときに画面に表示された「マイナーアップデート」で一体何が変わったというのか?おい待てよ、俺のお気に入りの武器はなんで急に操作しづらくなったんだ?

プレイヤーが新たな戦術を発見したり「メタ」が変化していく中で、これらすべての情報を常に把握しておくことは、それだけで大変なことである。そのためには、多くのTwitch(ツイッチ)ストリームに目を配り、多くのReddit(レディット)のスレッドを掘り下げ、多くのパッチノートを精読する必要がある。

SenpAI.GGは、そのような情報をより多く自動的にすくい上げ、新たなプレイヤーがより早く上達できるように支援することを目指している。同社のデスクトップクライアントは、役立つと思われる情報や、ゲーム後の戦略の分析をユーザーに提示し、まだ追えていないものについては、ゲーム中に音声で知らせてくれる。

現在のところは「League of Legends(リーグ・オブ・レジェンド)」「Valorant(ヴァロラント)」「Teamfight Tactics(チームファイト タクティクス)」といったゲームに対応しており、提供される情報はゲームごとに異なる。例えば「LoL」では、両チームの選択したチャンピオンを見て、最も役に立つチャンピオンを推薦してくれる。Valorantでは、チームメイトの1人の体力が低下していることを音声で知らせたり(そのチームメイトが回復してくれと叫び始める前に)、リロードを忘れているときや、スパイク(ゲームを終わらせる爆弾)が爆発するまでの時間を教えてくれる。

League of Legendsのゲーム中に、役に立つ情報をオーバーレイ画面で提供してくれるSenpAI.GGのアプリ(画像クレジット:SenpAI.GG)

情報を提供することと同じくらい重要なのが、提供しない情報だ。SenpAI.GGの創設者であるOlcay Yilmazcoban(オルカイ・イルマズコバン)氏とチャットで話したところ、同氏は「アシスタント」と「チートツール」の間には明確な境界線があることを非常に意識しているようだった。同社では、一線を越えることなく、プレイヤーがBANされないように、一定のルールを守っている。

例えば、アプリがプレイヤーに代わってアクションを起こすことはない。「あのチームメイトを回復させたほうがいい」と音声で伝えることはあっても、プレイヤーの代わりにボタンを押したりはしない。プレイヤーのスクリーンに表示されているものから、リアルタイムで洞察を生成するだけであり、実行中のプロセスの裏に隠されたものは一切ない。また、同じアプリを起動しているチームメイトから見えているからといって、他のプレイヤーに敵の位置を知らせたりすることもない。つまり、けっして「ウォールハック」と呼ばれる行為を可能にするツールではなく「あなたの肩越しに画面を見てアドバイスしてくれる優秀なプレイヤー」だと考えて欲しい。SenpAI.GGは、各ゲーム開発者が定めている競技上の公平性に関するガイドラインの範囲内で、承認された / 提供されたAPIとのみ連携すると述べている。

これは良いアイデアだ。なぜなら、決して古くならないからだ。新しいゲームをサポートするたびに、新しい潜在的な顧客を得られることになる。一方で、古いゲームでは使えなくなったり、知識が古くなって役に立たなくなったりもしない。ゲームに必要な情報をまとめた大きな本は、ゲームが出てから時間が経ち、パッチが増えるにつれて、より大きく、より複雑になりがちだ。何年もプレイしているゲームの中には「おっと、いま手にした銃は、前にプレイしたときよりも反動が大きくなっていますよ」と言ってくれる音声アシスタントが欲しいと思うものがある。SenpAI.GGはまだそこまでは行っていないものの、成長していける余地は非常に大きい。

イルマズコバン氏によると、現在のアクティブユーザー数は40万人以上で、同社のチームでは11人が働いているとのこと。アプリの基本使用料は無料だが、今後は月額数ドル(約数百円)で高度な機能を提供することも計画しているという。

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カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:SenpAI.GGアプリゲーム人工知能

画像クレジット:SenpAI.GG

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

1050社超が利用するAI搭載不動産管理プラットフォーム「管理ロイド」開発・運営のTHIRDが3000万円調達

1050社超が利用するAI搭載不動産管理プラットフォーム「管理ロイド」開発・運営のTHIRDが3000万円調達

AI搭載の不動産管理SaaS「管理ロイド」を開発・運営するTHIRDは8月5日、新株予約権付社債による3000万円の資金調達を7月30日に実施したと発表した。引受先は、野村不動産ホールディングスのCVCファンド「NREG イノベーション 1号投資事業有限責任組合」。また同社は2020年8月、双日商業開発、東急不動産ホールディングス、森トラスト、東京建物、阪急阪神不動産CVCファンドより資金調達済みで、これにより累計調達額は4億7000万円となった。

THIRDは、前回の資金調達以降、「AIによる自動検針」に限定した契約プランの導入、多言語化(日本語、英語、中国語、ベトナム語、インドネシア語)、電子押印への対応を実施。管理ロイドの機能拡充を通じて、不動産管理業界のDX推進に貢献してきたという。今回の資金調達では、引受先および不動産管理会社における管理ロイド導入拡大に資する人材採用などはじめ、管理ロイドに蓄積されたデータを活用した、修繕工事の自動見積査定機能の開発などに対し積極的な投資を行う。

管理ロイドは、ペーパーレスによる管理、AIによる画像解析でミス防止、各種報告書作成の自動化、不具合管理の自動化を提供するSaaS型ソフトウェア。2019年にリリースし。コロナ禍における不動産管理業務の抜本的な効率化、省人化、ペーパーレス化や現場情報の遠隔確認のニーズの高まりも追い風となり、2020年8月末時点では550社の不動産管理会社が利用しており、2021年7月末時点には1050社以上に利用社数が増加したという。

1050社超が利用するAI搭載不動産管理プラットフォーム「管理ロイド」開発・運営のTHIRDが3000万円調達

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