新規の酵素遺伝子や反応経路を探索可能なプラットフォームを手がけるdigzymeが約1.5億円のプレシリーズA調達

新規の酵素遺伝子や反応経路を探索可能なプラットフォームを手がけるdigzymeが約1.5億円のプレシリーズA調達

digzyme(ディグザイム)は8月10日、プレシリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による約1億5000万円の資金調達を7月30日に実施したことを発表した。引受先はDEEPCORE、ANRI、Plug and Play Venturesなど。

2019年8月設立のdigzymeは、「バイオインフォマティクスで物質生産プロセスに変革を起こし、環境と経済を両立する。」をミッションに、新規の酵素遺伝子や反応経路を探索可能なプラットフォーム「digzyme Moonlight」を展開している東京工業大学発スタートアップ。

酵素は、化学反応を引き起こす触媒として食品・化学品・日用品など様々な分野で活用されている。とりわけ化学品開発においては、生物が持っている酵素を利用し無機物から有機物を作り出す物質生産(バイオプロセス)が地球環境に対する負荷が少ないことから、近年その活用ニーズが大きく高まっている。

digzymeは、酵素の持つ「Moonlighting」と呼ばれる機能に着目し、生体内の本来とは異なる複数の用途に使用可能な反応を持つ酵素と、その反応経路を遺伝子解析を使って見つけ出すという。化合物生産・分解において、環境負荷の低い選択肢を効率よく提案することを可能にするとしている。

ただバイオプロセスの産業化には課題が多く、「人間の経験や偶然に頼っている割合が大」とdigzymeは話す。そこでdigzymeは、物質生産の開発コストの低減、多様なバイオ化学品の生産、より広い市場へのバイオプロセスおよびバイオ化学品の導入を可能にするソリューションとして「生命科学と情報科学を融合させたバイオインフォマティクスを中心としたプラットフォーム技術」を提供している。

今回調達した資金は、「酵素開発プラットフォームの強化として、収率を向上させるための酵素改変技術の拡張と、これを活用した具体的な開発パイプラインの立ち上げ研究」に向けられるという。

2021年度には、複数の開発パイプラインの立ち上げと「酵素探索研究」を予定しており、その中には「カンナビジオール合成」と「リグニン分解」がある。

このうちカンナビジオール(CBD。CannaBiDiol)は大麻草に含まれる成分で、期待が集まっている化合物。大麻および大麻草は、規制部位か否か、またテトラヒドロカンナビノール類(THCs)という向精神作用物質が含まれていることなどから、「大麻取締法」「麻薬及び向精神薬取締法」により厳しく取締が行われる一方、そのような作用のない、リラックス効果や癲癇治療効果があるカンナビノール類(CBDs)に関しては「大麻等の薬物対策のあり方検討会」において議論がなされているという。ただ、すでに複数企業がCBD合成系の開発を手がけているものの、経済的コストの低い持続的な生産に至らず高収率化が課題となっているそうだ。

また、CBDsとTHCsは1種類の酵素の微妙な違いにより合成経路が分岐するため、純粋なCBD合成には厳密な制御が必要となる。実際日本国内において、CBD製品の中に微量なTHCが混入が確認されたため販売が停止された例もある。これら課題について、digzymeは酵素開発技術を活かしその解決を目指すとしている。

リグニンは、木質バイオマスの約3割を占める物質ながら、同じ木質バイオマスのセルロースやヘミセルロースと比べて分解が難しいため利用されずに残ったり、使うにしても事前に化学薬品やエネルギーを投入して分解してやる必要がある。だが、「うまく分解できれば、さまざまな高付加価値なバイオ化学品の製造に利用できる可能性」を秘めているという。digzymeは、広い遺伝子資源の中から有効な酵素を探索し、改変を行うことで高効率なリグニン分解系の開発に着手する。

現在、digzyme Moonlightは共同研究を通じて解析サービスを提供しており、今後は委受諾契約などによる提供を行うとのこと。

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カテゴリー:バイオテック
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TechCrunch Japan

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