RPAソフト市場の成長は2023年から横ばいになるとフォレスターが予測

2021年、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は大人気で、マーケットリーダーのUiPathが大きな評価額で上場し、また大きな安定企業が小さなベンダーの買収を始めるなど、話題も多かった。しかしそれでも、RPAは以前から常によりインテリジェントでノーコードな方法へと移行していく前にレガシーのプロセスを扱う、過渡期的な自動化ソリューションと考えられてきた。

Forrester Researchの最新データもそんな説を支持し、RPAの市場は2025年に65億ドル(約7560億円)に達するが、しかしその頃から企業はAIを本格的に導入したオートメーションのソリューションへ移行していくため、RPAの成長は横ばいになると予想している。

RPA市場に関する最新の報告で、同社は次のように述べている。「2021年のすごい成長は2022年も続くと予想される。それはパンデミックを契機とする自動化の需要や目下進行中のデジタルトランスフォーメーションの事業によるものだ。しかし2023年以降は、成長率は横ばいになっていくだろう」。

2018年の報告書は、2019年の市場を11億ドル(約1280億円)と予想しているため、2025年の65億ドルという予想は確かに大きいが、しかしSalesforce1社の直近の四半期の売上が70億ドル(約8143億円)であるため、それに比べればまだかなり小さい。

複雑なソリューションの実装を助けるサービスの市場は、RPAのソフトウェアの売上に比べて相当堅調な成長が予想されている。Forresterによると、RPA関連のサービスの売上は2025年に160億ドル(約1兆8614億円)に達して、それらに実装を助けてもらうRPAソフトウェア本体の売上のほぼ3倍になる。サービスとソフトウェアを合わせれば、2025年は250億ドル(約2兆9085億円)という、はるかに大きな市場規模になる。

画像クレジット:Forrester Research

ForresterのアナリストであるLeslie Joseph(レスリー・ジョセフ)氏による、サービスの売上の定義は「サービスのベンダーが、プロダクトに関するコンサルティングや開発、実装、メンテナンス、サポートなどのサービスを提供して得る売上」だ。サービスベンダーとは、AccentureやIBMやEYのような、システムインテグレーターやコンサルティングやアドバイスを提供する企業だ。彼らが、RPAソフトウェアのパートナーやリセラーのこともある。

Forresterの予想では、これまでRPAソフトウェアへ行っていたお金の一部が広義のAIオートメーションソリューションへ行くようになる。なお、RPAの「R」はロボティクスだが、それは本当の意味のAIではない。この場合のロボットとは、一連の高度な手作業に多くを依存していたタスクをを完遂する、スクリプトのようなものだ。それと比較するとノーコードのオートメーションによるソリューションは、ワークフローを容易に作れて、おそらくコンサルティングの助けが要らないものだ。AIがタスクをインテリジェントに実装する方法を提供し、これまでのように本格的で高度なコーディングによって定義された一連のワークを次々こなしていくのではなく、データに基づくステップを踏んでいく。

UiPathが2021年に350億ドル(約4兆707億円)の評価額で、IPOの前の最後のプライベートな資金調達として7億5000万ドル(約872億円)を調達したとき、投資家たちは熱狂したが、しかしそれでもこの下落が起こっている。米国時間3月9日の同社の時価総額は150億ドル(約1兆7438億円)ほどで、2021年は年間を通してソフトウェア企業が株式市場で不振だったことを考慮に入れたとしても、確かに急落だといえる。

一方、SAPがSignavioを買収し、ServiceNowがIntellibotを買収、そしてSalesforceがServicetraceを持っていくといった重要な整理統合もあった。RPA専業ベンダーのトップスリーの1つであるBlue Prismは、Vista Equityのパートナーたちからの申し出を断った後で、SS&Cからの16億ドル(約1860億円)を受け入れた。この取引は今月後半に完了すると予想されている。

RPA市場について2021年に5社の投資家にアンケートした際、特にRPAという技術の有意性が長期的にはいかにして担保されるかを聞いた。投資家たちの答えは、市場が今後も継続的に大きくなる、というものだったが、Forresterが正しければ、顧客が最新のAIによるオートメーションサービスを求めるにともなって、市場は変わっていくかもしれない。

画像クレジット:Sean Gladwell/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アプリに音声と動画によるコミュニケーション機能を組み込むVoximplantがベータ版をリリース

ここ数年、音声やビデオのコミュニケーション機能をアプリやサービスに統合するためのサービスが急増している。Twilioや、Googleが開発する自然言語処理(NLP)プラットフォームのDialogflowなどだ。

サンフランシスコを拠点とするVoximplantも同様のサービスを開発し、Avatarプロダクトのベータ版を公開した。同社はこれまでにBaring Vostok Capital Partners、RTP Ventures、Google Launchpad Acceleratorから1010万ドル(約11億6200万円)を調達した。

同社はすぐに使える自然言語処理サービスを提供しており、開発者はこれを利用してアプリに自然言語処理機能を組み込んでスマートIVR(自動音声応答システム)や音声ボット、チャットボットの機能を追加し、インバウンド通話の自動化、FAQ、インタラクティブなアンケート、NPS(ネットプロモータースコア)、コンタクトセンターの自動化などに活用できる。

Voximplantによれば、同社のサービスでは開発者が複雑なバックエンドのロジックを構築する必要はなく、ノーコードのエディターと会話型AIにより、AI搭載ボットを開発してチャットや電話と簡単に統合できるという。

同社はさらに、機械学習に関する部分はすべてプラットフォームが処理するため、開発者は基本的なJavaScriptの知識があれば十分だと説明している。

Voximplantの共同創業者でCEOのAlexey Aylarov(アレクセイ・アイラロフ)氏は発表の中で「次世代のCPaaS(Communications Platform as a Service)はインテリジェントなサービスとプログラミングが簡単なオムニチャネルのコミュニケーション機能を融合したものであり、これを実現することで現在と将来の当社顧客に最大の価値をもたらすと確信しています」と述べている。

画像クレジット:Flashpop / Getty Images

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(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)

自動接客ツールanybotを開発・運営するエボラニが3.4億円調達、ノーコード・ローコードのミニアプリの構築基盤化を加速

自動接客ツールanybotを開発・運営するエボラニが3.4億円調達、ノーコード・ローコードのミニアプリの構築基盤化を加速

接客用のチャットボットやミニアプリなどを構築できる「anybot」(エニーボット)を開発・運営するエボラニ(Evolany)は2月21日、合計3億4000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リード投資家のネットスターズ、またAMD1号ファンド(プレミアグループ)、D4V1号投資事業有限責任組合、個人投資家や銀行。

ネットスターズ、プレミアグループ、既存株主LINE社などとともに、小売やサービス業を中心に、anybotのノーコード・ローコードのミニアプリの構築基盤を進化させ、従来より「早く・安く・ストレスのない」ソリューションを企業に届けることで、LINEミニアプリの普及および日本のDX化推進に貢献するとしている。また、世界に受け入れられるようなサービス提供へのチャレンジをスタートさせたいという。

anybotは、チャットボットやミニアプリ、電話自動応答のIVRといった接客ツールを、ノーコード・ローコードで実現できる構築基盤。すべてのデータを自動的にCRM(顧客関係管理)に保存しセグメント化を行うため、導入企業は、ユーザーとの間でLINE・メール・Messenger・Instagramなどにまたがったやり取りを実現できる。また、様々なステップ配信やセグメント配信も自動で行える。接客に必要な各種予約機能、会員証・ECや決済、クーポンといったキャンペーン機能も備えており、企業の集客からリピート率・ロイヤリティ向上、業務効率化などの課題解決を支援する。

エボラニは「最も役に立つ・感動する接客体験を。」をミッションに掲げ、2018年3月に設立。「町の店長に届けられる自動化社会へ。」をモットーとし、流通・サービス業の現場における集客および活性化の課題を解決するためプロダクトの改善を行ってきた。多様な業種の約3500社にサービスを提供しているという。

その企業にとって価値の高いユーザーフローをノーコードで作れる豪Upflowyが約4.6億円調達

新型コロナウイスルによるパンデミックが消費者の行動と購入パターンに影響を与え、この不確実性の時代にはデータドリブンな意思決定が、プロダクトやサービスがユーザーにとって本当に利益になるために重要になってきた。UpflowのCEOであるGuillaume Ang(ギヨーム・アン)氏によると、その上でオンラインのトランザクションを行えるSaaSプロダクトの需要が激増しているという。

Upflowyには、企業が価値の高いユーザーフローを作り出すためのツールがある、と同社は考えている。このオーストラリアのスタートアップは、最近400万ドル(約4億6000万円)を調達したばかりで、ドラッグ&ドロップでA/Bテストができるツールや、企業は利用に際してコーディングを一切行わなくていいウェブやモバイル上の個人化ツールを提供ししている。上記最新の投資はCounterpart Venturesがリードし、これまでの投資家であるTidalやGlobal Founders Capital、Black Nova、およびAntlerが参加した。

ウェブサイトやアプリ上で売上に結びつくサインアップを獲得するためには相当な時間と費用を要し、そのために多くの企業が苦労している、とアン氏は語る。起業家やマーケター、そして特にスタートアップがコンバージョン率とユーザーフローを上げるために、アン氏と2人の共同創業者Matthew Browne(マシュー・ブラウン)氏とAlexandre Girard(アレクサンドル・ジラール)氏は2020年にUpflowyを創業した。同社によると、これまでの企業は、開発チームや技術者チームに頼んでプロダクトを改良することに追われ、マーケティングに力を入れることがお留守になっていたという。

Upflowyの創業者。左からCTOのアレクサンドル・ジラール氏、CIOのマシュー・ブラウン氏、CEOのギヨーム・アン氏。

新たな資金の大部分は、予測的個人化など、主にデータサイエンス方面の能力拡大や新機能の開発に充てたいとのこと。さらにまた、人員を増やし、フルタイムの社員を30人以上にしたいという。

「エンゲージメントの貧しいフォームがコンバージョン率を60%も下げ、広告費の大きな無駄遣いになってることに気がつけば、そこから上昇が始まる。それが、最初のステップです。ユーザーの見込み客としての選別をもっと効果的に行っていけば、勧める製品や個人化もより適切になり、見込み客が購入客になります(コンバージョンする)。Upflowのデータ視覚化とA/Bテストを利用すれば、客離れのような行動がどこで起こるのか明確に把握することができ、その後の実験や最適化もより効果的になります」とアン氏は語る。

アン氏によると、現在のUpflowのユーザーは数百社で、ファッションのブランドやスポーツチームなど消費者対象だけでなくB2BやSaaS、ヘルスケア方面の企業もいる。過去数週間で毎週、ユーザー数が増え、アクティベーション率が40%増加し、月間ユーザー数は倍増している。

「オーストラリアのテクノロジー業界は世界のイノベーションを動かしている」とアン氏は声明で語っている。「私たちもすでに、活動もテストも世界レベルで行いプラットフォームの有効性を確信しています。見込み客が企業で最初に行うことはサインアップのフオーですが、私たちは初めて、そのフローを作りやすく、そしてライブにすることができました。そのためには情報の流れを改善し、見込み客があらゆるルートをスマートに動き回れるようにしています」。

パンデミックのおかげでUpflowは、最初からリモート企業としてスタートすることができた。初期の2020年には、リモートファーストの企業はまだ珍しいコンセプトだったが、それでも世界中から人材が集まった。2022年は米国に進出して、そこでのプレゼンスを大きくしたいとアン氏はいう。

Upflowyに投資しているAPAC OptimizelyのsoマネージングディレクターであるDan Ross(ダン・ロス)氏は次のように語る。「Upflowは、ほとんどすべての企業が直面している問題を解決しました。完全なサインアップフローを迅速に作って、何回もテストしながら改良していけるツールは他にはありません。しかも、他のプラットフォームへデータを供給して、ビジターを顧客にコンバートする過程を見ることもできます」。

また、Counterpart VenturesのゼネラルパートナーPatrick Eggen(パトリック・エゲン)氏は、声明で次のように述べている。「現代の企業は、データ収集と顧客体験の間にある摩擦を取り除くシンプルなノーコードのソリューションを必要としています。技術者がウェブ体験を作り出す、テストも改良もできない雑なソリューションが市場に多い中で、Upflowyはこの市場の見方を変えて、消費者が求めるウェブ体験をチームが作れるようにしています」。

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(文:Kate Park、翻訳:Hiroshi Iwatani)

人が世界を理解するように因果関係をAIの意思決定に導入するノーコード技術のcausaLensが51.8億円調達

今日までの人工知能の最も一般的なアプリケーションの1つは、過去のデータで訓練されたアルゴリズムを使って予測を行い、将来の結果を判断するというものである。しかし、普及が必ずしも成功を意味するわけではない。予測AIは、結果につながる多くのニュアンス、コンテキスト、因果関係の推論を除外する。一部の人たち指摘しているように(そして私たちが見てきたように)、これは予測AIが生み出す「論理的な」答えがときとして悲惨なものになることを意味している。causaLens(コーザレンズ)というスタートアップは、因果推論(causal inference)技術の開発を行っている。この技術は、AIベースのシステムにニュアンス、推論、因果関係の知覚能力を導入する上でデータサイエンティストを必要としない、ノーコードのツールとして提供されており、この問題を解決できると同社は考えている。

causaLensのCEOで共同創業者のDarko Matovski(ダーコ・マトフスキー)氏は、AIが「人間が世界を理解するように世界を理解し始める」ことを目指していると語る。

同社は米国時間1月28日、このアプローチが初期にある程度成功し、1年前にステルス状態から脱して以来収益が500%成長したことを受けて、4500万ドル(約51億8000万円)の資金調達を行ったことを発表した。これはラウンドの「最初のクロージング」と表現されており、引き続きオープンで、規模拡大のポテンシャルを秘めていることを示唆している。

Dorilton Ventures(ドリルトン・ベンチャーズ)とMolten Ventures(モルテン・ベンチャーズ、Draper Esprit[ドレイパー・エスプリ]からブランド名を変更したVC)がこのラウンドをリードし、以前からの支援者であるGeneration Ventures(ジェネレーション・ベンチャーズ)とIQ Capital(IQキャピタル)、そして新たな支援者としてGP Bullhound(GPブルハウンド)も参加した。情報筋によると、ロンドンに拠点を置くcausaLensは、同ラウンドで約2億5000万ドル(約287億8000万円)と評価された。

causaLensの現在の顧客やパートナーには、ヘルスケア、金融サービス、政府機関の他、多岐にわたる業界の組織が名を連ねている。こうした組織は、成果に到達する過程において、AIベースの意思決定だけではなく、より多くの因果関係のニュアンスを取り入れる目的で、同社の技術を活用している。

この仕組みの実例を挙げると、同スタートアップのパートナーの1社であるMayo Clinic(メイヨー・クリニック)は、causaLensを使って癌のバイオマーカーを同定している。

「人間の身体は複雑なシステムであり、基本的なAIパラダイムを適用することで望みどおりのパターンや相関関係を見つけることは可能ですが、成果を得ることはできません」と、同スタートアップのCEOで創業者のDarko Matovski(ダルコ・マトフスキー)氏はインタビューで語っている。「ですが、因果関係の手法を応用して、相違する身体がどのように機能するのかを理解すれば、ある組織が別の組織にどのような影響を与えるのか、その本質をより深く理解することができます」。

関連するすべての変数を考慮すると、それは人間にとって、あるいは人間のチームにとっても、計算することはほぼ不可能なビッグデータの問題である。しかしコンピューターにおいては、対処すべき必要最低限のものと位置づけられる。これは癌の治療法ではないが、この種の研究は、関与する多くの組み合わせに応じた多様な治療法を検討する上で、意義のある一歩である。

causaLensの技術は、ヘルスケア分野でも、あまり臨床的ではない形で応用されている。世界有数の経済大国に属する公衆衛生機関(causaLensはそれについて公表を控えている)は、同社のCausal AIエンジンを使用して、特定の成人が新型コロナウイルスのワクチン接種を躊躇している理由を特定し、その人たちを参加させるためのより良い戦略を考案した(ここでは複数の「戦略」が運用上の細目となっている。対象者によってさまざまな理由を含む複雑な問題であるということに要点がある)。

金融サービスのような領域の他の顧客は、causaLensを使って、ローン評価などの分野における自動化された意思決定アルゴリズムに情報を与えている。従来のAIシステムは、過去のデータのみを使って意思決定にバイアスを導入するものであった。一方ヘッジファンドでは、causaLensの活用により、市場のトレンドがどのように発展して投資戦略に反映されるかについてより深い洞察を得ている。

そして興味深いことに、自動運転輸送の世界に新たな顧客の波が現れているかもしれない。これは、人間の推論の欠如によって分野の進歩が妨げられてきた領域の1つである。

「どれほど多くのデータが自律システムに送られても、それは歴史的な相関関係にすぎません」とマトフスキー氏はこの課題について語っている。同氏によると、causaLensは現在、2つの大手自動車会社と同社の技術の「数多くのユースケース」について協議を進めているが、その中でも特定のユースケースとして「世界がどのように機能するかをシステムが理解する」ような自動運転に注目しているという。「それは、赤信号や停車中の車に関連する相関ピクセルだけではなく、その車が赤信号で減速することでどのような結果が生じるのかも考慮したものです。私たちはAIに推論を導入しています。自動運転において、Causal AIは唯一無二の希望です」。

AIを仕事で使用している人たちが、システムをできる限り正確にしたいと考えるのは当然のことのように思える。それは、そもそもなぜCausal AIによる優れた改善がAIアルゴリズムや機械学習に組み込まれていないのかという疑問を抱かせる。

初期の段階において、推論や「なぜ」と返答することの追求を優先していなかったわけではないとマトフスキー氏は説明する。「人々は長い間、科学の中で因果関係を探求してきました。ニュートンの方程式は因果を示すものであると主張することもできます。それは科学において極めて基本的なことです」。しかしAIの専門家たちは、機械にそれを教える方法を解明できなかったのである。「それは難しすぎました」と同氏は語る。「アルゴリズムとテクノロジーが存在していませんでした」。

同氏によると、その状況は2017年あたりから変化し始めたという。それは研究者らが、AIにおける「推論」や因果関係の表現方法について、既存の成果への貢献を示す信号を発見する(過去のデータを使って成果を決定するのではなく)ことに基づいて検討し、それに立脚したモデルを構築するという初期アプローチを発表し始めた時期である。興味深いことに、これはマトフスキー氏が言及している、仕事をするために大量のトレーニングデータを取り込む必要がないアプローチである。causaLensのチームは、博士号にかなりの比重が置かれている(同スタートアップはここで本格的にドッグフーディング[事前に自身で有用性を確かめる]を実践したといえるかもしれない。チームを編成する際に5万人の履歴書を検討している)。そしてこのチームは、そのバトンを受け取って、それで走り続けてきた。「以来、指数関数的な成長曲線を描いています」と同氏は語っている(その詳細はこちらで確認できる)。

AIに依存する大規模プロジェクトで因果推論の進歩を活用する方法を検討しているのは、causaLensだけではない。Microsoft(マイクロソフト)、Facebook(フェイスブック)、Amazon(アマゾン)、Google(グーグル)など、AIに多額の投資をしている大手テック企業もこの分野に取り組んでいる。スタートアップの中では、Causalis(コーザリス)も特に医薬とヘルスケアでCausal AIを使う機会に焦点を当てており、Oogway(ウーグウェイ)は消費者向けのCausal AIプラットフォームを構築しているようである。これらはすべて、特定の商用、そしてより一般的なユースケースの両方をカバーする、より広範で大規模な当該技術市場が開拓される機会を示している。

「AIは、現実世界におけるポテンシャルを実現するために、因果推論に向けた次のステップを踏み出さなければなりません。causaLensは、Causal AIを活用して介入をモデル化し、機械駆動型の内省を可能にした最初の企業です」とDorilton VenturesのDaniel Freeman(ダニエル・フリーマン)氏は声明で述べている。「このワールドクラスのチームは、本格的なデータサイエンティストの心を掴む洗練性と、ビジネスリーダーに力を与えるユーザビリティを備えたソフトウェアを開発しました。Dorilton Venturesは、次のステージでcausaLensをサポートすることに大きな喜びを感じています」。

「どの企業もAIを採用するようになるでしょう。単に採用できるからではなく、採用する必要があるからです」とMolten Venturesの投資ディレクターであるChristoph Hornung(クリストフ・ホルヌング)氏は付け加えた。「私たちMoltenは、因果性がAIのポテンシャルを引き出すために必要となる重要な要素であると確信しています。causaLensは、最適なビジネス上の意思決定へとデータを変換する能力が証明されている、世界初のCausal AIプラットフォームです」。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

モバイルアプリのテストをノーコードで自動化するWaldoが約17.2億円を調達

「ノーコード」でテストを自動化するツールのWaldo(ウォルドー)が1500万ドル(約17億1800万円)を調達した。モバイルアプリの開発チームはWaldoを使ってスクリプトのコードを1行も書くことなくテストをセットアップし、継続的インテグレーション(CI、Continuous Integration)パイプラインにシームレスに統合できる。

このシリーズAラウンドを主導したのはInsight PartnersのJoshua Zelman(ジョシュア・ゼルマン)氏で、Matrix PartnersとFirst Round Capitalも参加した。他にNicolas Dessaigne(ニコラ・デセーニュ)氏、Ben Porterfield(ベン・ポーターフィールド)氏、Tyler Gaffney(タイラー・ギャフニー)氏、Keenan Rice(キーナン・ライス)氏といったビジネスエンジェルも投資した。Waldoは今回得た資金で従業員を増員し、Go-To-Market戦略を固めていく考えだ。

Waldoをよく理解するために、まずはモバイルのテストについて考えてみよう。小規模な開発チームは通常、実際にテストをすることに多くの部分を頼っている。スマートフォンを数モデル所有し、アプリの開発ビルドをそのデバイスで実行する。うまくいかないことがあればバグを見つけて修復する。

アプリやチームが大規模になると、手作業でのテストでは追いつかなくなる。テスト用のスクリプトを書くことはできるが、それは開発の時間がさらにかかる厄介なタスクだ。資金が十分にあってテスト用スクリプトに開発の時間を使うことができるか、時間が経つにつれて開発者がそのスクリプトを放置してしまうかの、どちらかだ。

Waldoは3つ目のやり方があると考えた。この4年間、同社はセットアップもメンテナンスも簡単なテスト用プラットフォームを開発してきた。開発者はWaldoのプロダクトを使い始めるときに、アプリのパッケージ(開発環境で作成した.ipaまたは.apkのファイル)をこのプラットフォームにアップロードする。

するとWaldoはそのアプリをブラウザウインドウで実行する。これはそのアプリのライブバージョンで、開発者はローカルのエミュレータと同様に操作できる。ボタンをタップし、ログイン画面でパスワードを入力し、画面を指でスワイプするような操作だ。

Waldoはテストのステップをすべて記録する。このテストを本番環境で使用すれば、Waldoは同じステップを実行して問題があれば、つまりテストの最後のステップまで到達しなければ、アラートを出す。テストはCIワークフローから直接トリガーされる。つまりGitリポジトリに新しいコードをコミットすれば、アプリは自動でWaldoに送られる。

画像クレジット:Waldo

時間が経っても適切に動作するのは、Waldoが画面の構造を理解するからだ。例えば、開発者はテストに戻って画面のエレメントを特定することができる。同社の共同創業者でCEOのAmine Bellakrid(アミン・ベラクリド)氏は筆者に対し「ウェブページでウェブインスペクタを開き、HTMLを見ていると想像してみてください」と説明した。

このようにすれば、開発者は画面の類似性は一定のしきい値以上であると判断し、一部のエレメントを手動で構成できる。例を挙げると、テキストボックスを選択することができれば他の言語でも大丈夫だと考えられる。

時間をかけてテストをパスしたり失敗したりするように調整した後は、実際にエンド・ツー・エンドのテスト用プラットフォームを利用できる。Waldoはユーザーインターフェイスだけを見ているのではなく、アプリを操作して分析のためにイベントをチェックする。例えばWaldoのテストを本番サーバに対して実行すれば、問題なくログインできたことによりWaldoはサーバが適切に動作していると判断する。

裏側ではWaldoはアプリをパッケージし直し、コードを追加してアプリに関する情報を抽出できるようにする。その後、アプリをサーバ上のシミュレータで実行する。Waldoはエミュレータからも情報を取得する。

ベラクリド氏は「我々のゴールはパイプラインをなくすことです。我々はアプリをApp Storeに提出する前の最後のテストです」と述べた。Waldoの顧客で健康保険アプリのAlanにはQAチームがない。開発者がQAを担当して欲しいと考えているからだ。一方、こちらも保険会社であるLemonadeにはすでにQAチームがあるが、Waldoのようなプロダクトを利用することで時間を節約しワークフローを改善できる。

ベラクリド氏は「モバイルではスピードが勝敗を分けます」という。テストは多くのモバイル開発チームのボトルネックだ。Waldoのテストを組み込むことで、幅広いテストをカバーしアプリを迅速にリリースできるようになる。

画像クレジット:Waldo

画像クレジット:Daniel Romero

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(文:Romain Dillet、翻訳:Kaori Koyama)

ノーコードの没入型ゲーム制作プラットフォーム「Yahaha Studios」が2022年ローンチに先駆けて約57.3億円調達

Roblox(ロブロックス)をはじめ、Overwolf(オーバーウルフ)などのようなユーザー生成ゲーミング体験の成功は、ゲームを作るコンセプトを大衆化し、それをメインストリームに導いた。そして今、Unity(ユニティ)、Microsoft(マイクロソフト)、EA(エレクトロニック・アーツ)のベテランたちが立ち上げたスタートアップが、クリエイターに没入型ゲーム制作の場を提供する新しいプラットフォームと、同じ考えを持つ人々のための関連コミュニティの構築に向けて、2022年中のローンチの準備を進めている。これに先立ち、同社は5000万ドル(約57億3000万円)の資金調達を明らかにしている。

フィンランドのエスポーに本拠を置き、研究開発の拠点を上海に構えるYahaha Studios(ヤハハ・スタジオ)は、まだ商用プロダクトをローンチしていない。しかしそれは、ノーコードの「ゲームのためのメタバース」として何を構築しているかを表している。そこでは人々がコミュニティに集まり、仮想と現実世界の要素を組み合わせたゲームを構築し、プレイすることができる。

同社が調達した5000万ドルは、明確にいうと新たな資金調達ではない。この資金は、約2年前になる2020年の6カ月間に、3回のラウンドを経て集められた。

同社によると、5Y Capital(五源資本)が「ラウンド1」を、HillHouse(高瓴)が「ラウンド2」を、Coatue(コーチュー)が「ラウンド3」を主導した。初期の投資家はその後のラウンドにも参加しており、ZhenFund(真格基金)、Bertelsmann Asia Investments(贝塔斯曼亚洲投资基金 )、Bilibili(ビリビリ、哔哩哔哩)、Xiaomi(シャオミ、小米科技)などが出資者に名を連ねている。TechCrunchが確認したところによると、Yahahaの評価額は3億ドル(約344億円)から5億ドル(約573億円)の範囲になる(「数億ドル(数百億円)」というのがTechCrunchが取材したときに使われたフレーズである)。

Yahaha Studiosのローンチはさらに数カ月先になるかもしれないが、その一方で、少数の初期ユーザーグループ(約220人)によるDiscord(ディスコード)コミュニティを粛々と運営してきた。プロダクトのアルファ版は2022年の第2四半期にローンチされることを同社は筆者に伝えている。広報担当者によると、これ以上の資金調達は予定していない。

「メタバース」という言葉はすぐに過度に使われるようになった。多くの企業が、拡張現実と仮想現実の技術を組み合わせて、まったく新しい種類のデジタル体験、ゲーミングやその他を作り出すことを約束し、この漠然とした空間への道を切り開いていると主張する。Yahahaはいくつかの理由から、群衆とは一線を画し、早くから投資家の注目を集めていたようである。

第1に同社の創業者たち、CEOのChris Zhu(クリス・ジュー)氏、COOのPengfei Zhang(ホウヒ・チャン)氏、CTOのHao Min(ハオ・ミン)氏の存在がある。3人はともにクロスプラットフォームゲームエンジンのUnityでエンジニアとして働いており、長年の経験を有している。

チャン氏はこの15年間フィンランドに住んでおり、そこで同社はスタートしているが、それはYahahaがエスポーを拠点とする唯一の理由ではない。Supercell(スーパーセル)のような企業もヘルシンキ郊外を起源としており、この地域には、チームを作り新しいゲーミングイノベーションを活用していく強力なエコシステムが備わっている。

YahahaのプラットフォームはUnityとのパートナーシップで構築されていることを同社は明らかにしている。その連携によって、より多数のクリエイターが参加し、より豊富なクロスプラットフォームゲームプレイ、コミュニティが生まれることになる。

第2に、Yahah自体の根底にあるコンセプトは、現在テック業界で人気のある2つのテーマ、ユーザー生成コンテンツとノーコード開発にフォーカスしている。UGCはこの数十年の間、オンラインエンターテインメントの一部として人気を博してきたが、TikTok(ティックトック)やInstagram(インスタグラム)のようなプラットフォームは「クリエイター」、すなわち自らが生成したコンテンツを中心に巨大なオーディエンスとビジネスを構築する人々への新たなフォーカスを生み出している。

Twitch(トゥイッチ)やDiscordなどのプラットフォームはゲームプレイヤーからセレブを作り出したが、クリエイターが実際のゲームを中心に巨大なコミュニティを構築するのを容易にするようなプラットフォームは、まだあまり存在しない(Robloxは部分的にこれに対処しているが、ソーシャルプラットフォームのようには感じられない)。これがYahahaが目指しているものであり、うまく機能すれば、非常に興味深いものにつながる可能性がある。

一方、プラットフォームを「ノーコード」のフレームワーク上に構築することは、より多くの人々がYahahaを利用する可能性を高めるのに役立つであろう。ノーコードのアプリケーションの多くはエンタープライズITの分野に置かれていたが(例えばCRMと会計ソフトの統合の容易な構築)、消費者向けのサービス、特にクリエイターコミュニティにサービスを提供するためのものが増えてきていることは興味深い。

「5000万ドルの投資の達成は、私たちにとって極めてエキサイティングなことです」とCEOのクリス・ジュー氏は声明で述べている。「メタバースが成長し続ける中、Yahaha Studiosは次世代エンターテインメントの先駆けとなる重要な役割を担っています。世界中のユーザーを仮想エンターテインメントでつなぐことで、Yahahaはゲーム開発者とゲーマーの双方に、独自のクリエイティブでソーシャルな体験を提供します。Yahahaを通じて私たちは、実績のある開発者から、初めてゲームを制作する開発者に至るまで、あらゆるレベルのクリエイターに力を与えます。誰もが仮想世界でクリエイターになることができるのです。私たちは2022年に本格的にローンチし、チームを成長させ、コンテンツ制作の未来に向けたビジョンの第一段階を実現できることを、心から楽しみにしています」。

画像クレジット:Yahaha Studios

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

技術者ではないチームに専門知識不要のデータ探索機能を提供するCanvas

Canvasの創業者たち。左からプライド氏、ザパート氏、ビュイック氏(画像クレジット:Canvas)

世の人たちにスプレッドシートを捨てさせようとするスタートアップがある一方で、協調データ探索ツールを開発しているCanvas(キャンバス)は、技術者ではないチームがデータチームの手を煩わせることなしに必要な情報にアクセスできるように、スプレッドシートに似たインターフェースを全面的に採用している。

Luke Zapart(ルーク・ザパート)氏は、Flexport(フレックスポート)の元同僚であるRyan Buick(ライアン・ビュイック)氏ならびにWill Pride(ウィル・プライド)氏とともに2020年末にCanvasを立ち上げた。ザパート氏はFlexportで働いていた際にデータ検索で苦労を重ねた経験から、Canvasで「Looker(ルッカー)を取り込んだFigma(フィグマ)」を開発しているのだと語る(Lookerは著名なBIツール、Figmaも著名なウェブデザインツールの名前)。

「多くのデータチームは、処理能力を溢れる量の平凡で退屈なデータ要求に忙殺され、ビジネスチームは何日も答を待つのを諦めて、結局ビジネスインテリジェンス(BI)ツールの前に座って『CSVにエクスポート』ボタンを押して、Googleスプレッドシート上でピボットしているのです」とザパート氏は説明する。「根本的に、企業内のビジネス側とデータ側の信頼関係が崩れてしまったのです。それがきっかけで、私たちはFlexportを離れ、本当にその問題を理解して解決しようと努力したのです」。

さらに、データ業界は現在「ルネッサンスを経験」しており、伝統的なビジネスインテリジェンスツールが、焦点を絞ったクラス最高のツールによって解体されている、と彼は付け加えた。しかし、ビジネスユーザーは、SQL(Structured Query Language)に精通していたり、充実したデータチームを抱えていない限り、最新のデータスタックがもたらす多くのメリットを享受することができない。

Canvasはスプレッドシートベースのワークスペースとして開発されたもので、ビジネスチームはSQLクラスを受講することなく独立した意思決定を行うことが可能となり、データチームは戦略的な作業に集中する時間を得ることができるようになる。

その仕組みは以下のようなものだ。まずユーザーは、自分の「白いキャンバス」からスタートし、データチームが提供する定義の表から探しているデータを選ぶことができる。データを見つけたら、表をキャンバスにドラッグ&ドロップして、Googleスプレッドシートと同じように操作する。例えば「ピボット」ボタンを使って、ある指標を抜き出し、グラフやチャートを作成することができる。

ビュイック氏は「チャートを対話的に操作し、キャンバスの好きな場所にドラッグすることができます」という。「ここからがFigmaのようなルック&フィールになるのですが、これはデータを扱うための新しい方法であることがわかりました。なぜなら、解決するために考えようとしている問題がどのようなものであろうとも、反復したりプロトタイプを作成したり、メンタルモデルに合わせたりすることがずっと簡単になるからです」すばらしい特徴は、ビジネスチームが行き詰まることを知っているからこそ、コラボレーションを活かせるようにしている点です。他の人をチームにタグつけしてチェックを依頼することができます」。

ビュイック氏によると、データチームへの質問の数を減らせるだけでなく、Canvasが、すでにdata build tool(DBT)でモデル化されているビジネスロジックを簡単に再利用できる手段であることを理解したスタートアップたちも、このツールを採用しているという。

Canvasの例画像クレジット:Canvas

米国時間1月28日には、Sequoiaが主導し、Abstract Ventures、SV Angel、および20数名の個人投資家グループが参加したラウンドで420万ドル(約4億8000万円)を調達し、プラットフォームを一般公開した。この投資家のリストには、データのエキスパートであるSegmentのCalvin French-Owen(カルバン・フレンチ・オーウェン)氏、FivetranのTaylor Brown(テイラーブラウン)氏、CensusのBoris Jabes(ボリス・ジャベス)氏、DataDogのOlivier Pomel(オリヴィエ・ポメル)氏、事業家であるLatticeのJack Altman(ジャック・オルトマン)氏、DoordashのTony Xu(トニー・シュー)氏、FlexportのRyan Petersen(ライアン・ピーターセン)氏、WebflowのBryant Chou(ブライアント・チョウ)氏、InstacartのMax Mullen(マックス・マレン)氏、そしてエンジェル投資家らが名を連ねている。

ビジネスチームのためのデータワークスペースを構築するのは大変な作業であることを認識した、Canvasの創設者たちは、資金調達を行う決定を下した。ザパート氏は、世界的なデータ専門家やデータ分野の企業の創業者などの、一緒に仕事をしたいと思えるような投資家を慎重に検討したと述べている。

現在、従業員は6名で、数少ない有料顧客と協力しているデザインパートナーがいる。新たな資金は、エンジニアの増員に充てられ、セルフサービスモデルを含む同社のロードマップを構築するとともに、一連の製品発売に利用され、同社はさらなる市場開拓と製品開発戦略を展開して行く予定だ。最初の10~20件の顧客を獲得した時点で、次の資金調達ラウンドを検討するとザパート氏は述べている。

SequoiaのパートナーKonstantine Buhler(コンスタンティン・ビューラー)氏によると、同社には「結束力が高く技術的に強いチーム」があり、その最新のデータスタックは、優れた企業の構築に使われ、企業顧客にサービスを提供する機会を生み出しているという。彼はCanvasの中で、そのようなスタック全体に対する協調的なフロントエンドを開発している企業を目にした。

「データをExcel(エクセル)にダウンロードしてピボットテーブルを作成するのではなく、すべてのデータを1つの場所に保存できるという利点があります」とビューラー氏は付け加えた。「ここでは、システムに接続するだけで、目の前で結果を見ることができるのです。彼のチームはFlexportでもすばらしい仕事を一緒にしてきましたが、今回は非常に重要で誰にでも関連している問題に取り組んでいます。大きなビジョンは、セルフサービスを作ることができるかどうかにかかっています。それは、データへのアクセスを民主化して、完全なアクセス権を持つ少数の人たちだけではなく、社内のすべての人たちにデータを開放することによって力を与えることのできる、非常に大きなきっかけなのです」。

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(文:Christine Hall、翻訳:sako)

産業用ロボットのノーコードプログラミングを実現する独Wandelbotsが新たに約95.7億円調達

ドイツのドレスデンを拠点とするWandelbotsは、2017年にDisrupt Berlinのステージに登場して以来、数年の間に健全な額を調達してきた。ノーコードのロボットソフトウェア企業である同社は2018年には680万ドル(約7億7000万円)を調達し、コロナ禍が製造業を一気にスローダウンさせたことで自動化への期待が高まっていた2020年6月には、3000万ドル(約34億2000万円)を調達した。

中央ヨーロッパ時間1月25日、同社は8400万ドル(約95億7000万円)のシリーズCを調達したことを発表し、これにより累計資金調達額は1億ドル(約113億9000万円)を軽く超えた。今回のラウンドはInsight Partnersがリードし、83North、Microsoft(マイクロソフト)、Next47、Paua、Atlantic Labs、EQTなどの既存の投資家が参加している。

Wandelbotsのミッションは一見シンプルなもので、多くの企業がこの分野での解決を目指している。ロボットのソフトウェアレイヤーは、工場でロボットを導入する際の参入障壁をどうしたら下げられるのか。具体的には、多くの外部サポートや多額の資金、ロボットのコーディングノウハウを必要とせずに、企業がロボット軍団を実装するにはどうすればよいのか。同社のソリューションは「TracePen」と呼ばれるインタラクティブなティーチングシステムで、このツールを使い人間のインストラクターが模倣すべき動作をデモンストレーションし、ロボットを訓練する。その後、ソフトウェア上で動作を微調整することができ、コーディングは不要だ。

「Wandelbotsのミッションが現実のものとなったことを大変誇りに思います」と、共同設立者兼CEOのChristian Piechnick(クリスチャン・ピエニック)氏はリリースで述べている。「当社のプラットフォームは、人間中心のロボットソリューションを業界で加速させるのに役立っていくことでしょう」。

画像クレジット:Wandelbots

今回の資金調達は、同社がロボットティーチングソフトウェアの開発者コミュニティの構築に取り組んでいる中で実施された。具体的には、開発者がWandelbotsプラットフォーム上で独自のティーチングアプリケーションを作成できるようにすることを目指している。Wandelbotsは現在、BMWやVWなどの顧客にロボットを提供しているUniversal RobotsやYaskawaを含む、より幅広いシステムとの相互運用性の実現にも取り組んでいるという。

またWandelbotsは、追加の雇用を行い、米国やアジアなどの市場にグローバルな事業を拡大する予定だ。

画像クレジット:Wandelbots

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

「ノーコード」ブームの継続を感じさせるSoftrのシリーズA資金調達

テクノロジー系市場では数年前、ローコードやノーコードのアプリケーションやサービスの増加について議論があった。世界的に開発者の人材が不足していることもあり、より簡単にソフトウェアを作成できるようにするためのソフトウェアの開発が進んだが、ノーコードやローコードの開発ツールは、新たにエキサイティングな技術的負債を増やすための非常に優れた方法に過ぎないと考える人もいた。

しかし、ここ1年ほどはそんな議論も影を潜め、技術者ではない人々に力を与えるローコードの可能性を十分に備えた製品を開発している企業は、順調に成長していることに気づいた。

Softr(ソフター)はその好例で、同社は先日、シリーズAラウンドで1350万ドル(約15億円)の資金を調達したことを発表した。TechCrunchでは2021年初頭に、Softrが220万ドル(約2億5000万円)の外部資金を集めたシードラウンドを実施したことを報じている

関連記事:ノーコードでAirtableを利用したウェブサイト・アプリの作成を簡単にするSoftrが2.3億円調達

今回のシリーズAラウンドは、FirstMarket Capital(ファーストマーケット・キャピタル)が主導し、テクノロジー業界から多くの個人が参加した。筆者は少し前にこの案件の気配を、Box(ボックス)やGlossier(グロッシアー)に在籍していたAshley Mayer(アシュレイ・メイヤー)氏から聞いていた。前回、Softrに出資したAtlanticLabs(アトランティックラボ)も、同社のシリーズAに参加している。

ベルリンを拠点とするこのスタートアップ企業は、顧客がAirtable(エアテーブル)のデータベース上に簡単にアプリを構築できるようにするプラットフォームを提供している。しかし、同社は現在の任務にとどまらず、かなり大きな野望を持っている。

TechCrunchは、SoftrのMariam Hakobyan(マリアム・ハコビアン)CEOとのインタビューで、同社がそのソフトウェアを使ってアプリを作成するために利用できるデータベースの種類を増やす予定であることを知った。また、同社ではコンポーネント(Softrができることを公式の機能よりも拡張するためのもの)とテンプレート(我々の理解では、箱から出してすぐに使えるアプリ)の両方のマーケットプレイスを開設することも計画しているという。

ハコビアン氏によれば、Softrはやがて1つのエコシステムになることを目指しているという。Googleスプレッドシートやその他のデータソースのサポートを追加することは、その取り組みに役立つだろう。

同社では、ノーコードのサービスが「ただ引き継がれていくだけ」で、同社はその下流に向かって泳いでいると考えていると、ハコビアン氏は語る。

ハコビアン氏は、現在のソフトウェア市場において、なぜノーコードサービスや、さらにいえばより一般的なローコードサービスが好調なのかということに関して、いくつかの傾向を挙げている。1つ目は、需要に見合うだけの開発者が市場にいないということ。これはよく理解されている。彼女のもう1つの主張は、世代論的なものだ。ハコビアン氏によると、Z世代はそれ以前の世代に比べて技術的な知識が豊富で、伝統的な本業を確保することにはあまり興味がなく、自分でツールなどを作る方法を探しているという。

Z世代がノーコードを促進させるというのは、理由をはっきり指摘できなくても、頭では理解できる。次の四半期に向けて注目していきたい。

次に、市場におけるSoftrの実績について見ていこう。この会社は製品を市場に投入してからまだ日が浅いので、前年同期比の成長率を厳しく評価することは難しいが、初期のデータをいくつか紹介すると、同社の登録ユーザー数は現在3万人で、有料会員数は1000人を超えているという。同社の主な顧客は、中小企業であることを明らかにしている。これは、現在の競争が激しい開発者市場に、中小企業ではなかなか手が出せなくなっていることを考えると、理に適っている。

Softrがどれだけ早く自社サービスにより多くのデータソースを追加できるか、そして計画中のマーケットプレイスをどれだけ早く展開できるかに注目したい。Softrがエコシステムになるかどうかは、その時点で市場が決めることだろう。

画像クレジット:Visual Generation / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

中小企業の営業とサポートチーム向け自動化プラットフォームSaaS Labsが約48億円を調達

SaaS Labs(SaaSラボ)は、中小企業の営業およびサポートチーム向けの自動化プラットフォームを積極的に成長させるため、前回の資金調達完了から3カ月足らずで新たな資金調達ラウンドで4200万ドル(約48億490万円)を調達し、2社のスタートアップを買収した。

SaaS LabsのシリーズBラウンドは、Sequoia Capital India(セコイア・キャピタル・インディア)が主導した。このラウンドには、既存の出資者であるBase 10 Partners(ベース10パートナーズ)とEight Roads Ventures(エイト・ロード・ベンチャー)の他、起業家の Anand Chandrasekaran(アナンド・チャンドラセカラン)氏、Allison Pickens(アリソン・ピケンズ)氏、Michael Stoppelman(マイケル・ストッペルマン)氏、Amit Agarwal(アミット・アガーワル)が参加している。今回の資金調達は、カリフォルニアとノイダを本拠地とする同スタートアップが10月に行った1800万ドル(約20億5800万円)のシリーズA調達に続くものだ。

大企業やエンタープライズ向けには、営業やサポート業務の効率化をもたらすツールが数多く存在する。しかし、中小企業には同じことは当てはまらない。これが、Gaurav Sharma(ガウラブ・シャルマ)氏が米国で立ち上げたHelloSociety(ハローソサエティ)というベンチャー企業で得た学びである(この会社は、New York Timesに買収された)。

彼はTechCrunchのインタビューで「中小企業は、彼らの指先にあるソフトウェア製品を見てみると、それほど愛されておらず、十分なサービスを受けられていないことがわかる」と語っている。それに比べて大企業は「エージェントの生産性を向上させるためのすばらしいツールにアクセスできる」と彼は述べている。

SaaS Labsはこの6年間、中小企業の営業チームやサポートチームを強化するために「同じくらい強力」なAI搭載ツールを構築してきた。これらの製品はノーコードソリューションであり、導入のためにITチームを持つ必要性を排除している。

「これらのツールはまた、非常に手頃な価格で、中小企業が依存する他のビジネススタックやオンプレミスのハードウェアソリューションとシームレスに統合することができます」と同氏は語る。

現在、1500万人以上の販売・サポート担当者が直面している課題は、コールログやCRMツールを手動で更新しなければならず、そのツールは上司にリアルタイムの更新情報を提供するようには設計されていないということだ。このため、彼らのコミュニケーションチャネルにギャップが生じ、リアルタイムに介入することができないのだ。

中小企業が営業やサポートチームのためにクラウドベースのコンタクトセンターを数分で立ち上げることができるSaaS LabのJustCallのダッシュボード(画像クレジット:SaaS Labs)

「顧客とのコミュニケーションを行う5人のチームを持つと、大混乱が起こり始めるものです。例えば、JustCall.ioは100以上のビジネスツールと統合されており、これらのチームが利用することができます。JustCallは1億件以上の通話データベースを持ち、機械学習によって通話の品質やプレイブックやワークフローが守られているかどうかを確認することができます。管理者は、すべての通話をふるいにかけるのではなく、評価の低い通話だけを見ることができるのです」と同氏はいう。

このスタートアップは、全世界で6000社以上の顧客を獲得している。小規模な企業であれば、月々25ドル(約2800円)程度の支払いで利用でき、ビジネスの成長とともに年額数万ドル(数百万円)の支払いに移行していくのが一般的である。

顧客のうち70%以上が米国、10%が英国に拠点を置いている。顧客にはGrab(グラブ)、GoStudent(ゴースチューデント)、Booksy(ブックシー)、HelloFresh(ハローフレッシュ)などが含まれる。

同スタートアップは何年も黒字を続けており、2021年は売上を2.5倍に伸ばしたという。

米国時間1月20日には、2つの買収も発表した。ポーランドに拠点を置くCallPage(コールページ)は、営業チームがリードと即座につながるためのコールバック自動化ツールで、フランスに拠点を置くAtolia(アトリア)は生産性とコラボレーションツールである(彼らのチームは、正社員としてSaas Labsに参加する予定だ)。シャルマ氏は、これらの買収はSaaS Labsの製品提供の幅を広げ、さまざまな市場での足跡を深めるのに役立つと述べている。

シャルマ氏によると、今回の資金の一部は、さらに多くのスタートアップを買収するために投入される予定だという。

「当社は十分な資本を有していますが、今回の資金調達により、成功した事業をさらに強化したり、優れた人材をグローバルに採用したり、革新的な製品を発売したり、ブランドマーケティングに注力したり、戦略的M&Aを積極的に行うために必要な資金を確保することができるようになります。中小企業が営業、サポート、マーケティングなどさまざまな機能を現代化するためにソフトウェアを導入し続ける中、SaaS Labsはこの機会を捉え、今後5~7年で30倍の成長を遂げることができると確信しています」。と述べている。

彼は、今後4~5年以内にSaaS Labsを上場させることを視野に入れているという。

「SaaS Labsは、中小企業向けのマルチチャネルの顧客コミュニケーションプラットフォームを構築しています。一連の製品を通じて、デジタルの効率性とオフラインのコミュニケーションチャネルの親密性を融合させた体験を提供しています」と、Sequoia Capital IndiaのMDであるTejashwi Sharma(テジャシュウィ・シャルマ)氏は声明で述べている。

「例えば、同社の主力製品であるJustCallは、大きなインパクトを与えることができました。顧客は、平均して1人のエージェントが手作業で行う時間を週に12時間短縮したと報告し、顧客満足度は30%向上しました。Sequoia Capital Indiaは、顧客コミュニケーションの未来を築くガウラブとそのチームと提携できることをうれしく思っています」とも述べている。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ノーコードで営業やマーケティングのためのデモが作れるWalnut、4カ月で700%の成長を遂げ約40億円調達

ヨアヴ・ビルナー氏とダニー・フリードランド氏(画像クレジット:Walnut)

企業の営業やマーケティングのためにノーコードでデモを作ることができるサービスWalnutが、8月の1500万ドル(約17億2000万円)のシリーズAに続き、シリーズBの3500万ドル(約40億円)の資金調達ラウンドを発表した。

Walnutのノーコードプラットフォームは、カスタマイズされた製品デモを迅速に作成し、営業やマーケティングのプロセスに統合することができ、さらにデモから洞察を得ることができる。

共同創業者でCEOのYoav Vilner(ヨアヴ・ビルナー)氏によると、シリーズA以降同社は、年間経常収益が700%という驚異的な成長を示した。同社は現在、Adobe、Dell、Medallia、NetApp、Treasure Data、Funnel、People AI、ContractBookといった100近いSaaSの顧客と提携している。

「発表直後から、多くの投資家が関心を寄せてくれた。当初の予定では、もっと後に資金調達するつもりだったが、このペースを維持していることから、今がチャンスだと思いました。ラウンドの間隔が3カ月というのは珍しいことですが、私たちが作っているものは、間違いなくもっと資金が必要な状態だったのです」とビルナー氏はいう。

最前のラウンドをリードしたFelicis Venturesは、これまでの累積で同社に5600万ドル(約64億1000万円)を与えている。ビルナー氏によると、Felicisという社名は彼がこれまで何度も耳にした名前であり、共同創業者のDanni Friedland(ダニー・フリードランド)氏もFelicisのSaaSとソフトウェアを対象とする投資に関心を示し、Walnutに合ってると感じた。

Felicisに加わったのは既存の投資家NFXとEight Roads Ventures、そしてA Capital、および戦略的エンジェル投資家のグループ、すなわちSalesforceの社長でCMOのSarah Franklin(サラ・フランクリン)氏、Oktaの共同創業者Frederic Kerrest(フレデリック・ケレスト)氏、TripActionsの共同創業者でCEOのAriel Cohe(アリエル・コーエ)氏、Papaya Globalの共同創業者でCEOのEynat Guez(アイナット・ゲズ)氏だ。

この新たな資金でWalnutは、米国とヨーロッパとイスラエルのチームを現在の55名から合わせて100名近くに増員できるとビルナー氏はいう。またもちろん、技術と製品開発にも注力する。

「ようやく需要を満たし、国を越えて人材を増やし、さまざまな接点での販売を促進するためのより広いプラットフォームを構築できるようになる。まだ名前すらない新しいカテゴリーを作っていますが、私たちの目標は販売スペースに革命を起こすことです。」と彼は付け加えた。

FelicisのゼネラルパートナーViviana Faga(ビビアナ・ファガ)氏と副社長のJake Storm(ジェイク・ストーム)氏はこのラウンドのリード投資家で、Walnutが行っていることを「sales experience」と呼び、同社は市場開拓のチームが顧客と対話できるようにしているという。ただしパンデミックである現在、誰も営業に会いたいとは思わないため困難な仕事だとファガ氏はいう。

それでもファガ氏は、Walnutのようなツールにとって今は好機だという。企業は、デモにますます力を入れようとしているからだ。また、営業チームだけが利用するのではなく、マーケティングやカスタマーサクセスチームもこの技術を採用するようになっている。ストーム氏によると、その結果、現在のWalnutはより効率的な販売の実現とボトムアップの成長に向けた取り組みという2つの波に乗っているという。

「ヨアヴ(・ビルナー)とダニー(・フリードランド)に会った時、私たちは彼らが巨大なチームを作ることを知っていたし、Walnutを使いたいと願うユーザーのウェイトリストを見て、私たちはそれが世界で必要な解決策であることを知りました」とファガ氏は付け加えた。

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ユーザーのオンボーディングを改善する分析とノーコードが特徴のツール「Appcues」が約36.8億円を調達

アプリの世界では、ユーザーのオンボーディングは長い間ずっと続いている課題だ。開発者はデザインや技術上の制約に取り組む。配信元とユーザーとではサービスに関わる際の優先事項が異なるだろう。サービスのコンテンツは常に変化する。そしておそらくなんといっても、人は1人ひとり違うので、アプリのエクスペリエンスも1人ひとり違う。

ボストンに拠点を置くAppcuesは、オンボーディングの問題を特定し、それをすばやく解決するための非テクニカルなローコードのソリューションを提供するスタートアップだ。同社は米国時間1月18日、3210万ドル(約36億8200万円)のシリーズBラウンドを発表した。この資金調達は、オンボーディングの問題を解決するツールが市場で求められていることに加え、Appcuesにそのトラクションがあることの表れだ。

Appcuesの共同創業者でCEOのJackson Noel(ジャクソン・ノエル)氏は発表の中で「プロダクトのエクスペリエンスはこれまで以上に重要になっています。しかしプロダクトで何かをするのに何週間もかかることもいまだにあります」と述べた。Appcuesは、同社のツールでインサイトと利用者のオンボーディングの修正を数時間で顧客に提供できるとしている。

シリーズBを主導したのはNewSpringで、新たに投資するColumbia Partnersと、これまでに投資していたSierra VenturesおよびAccompliceも参加した。Appcuesは今回の資金でプロダクト開発を進め、海外に進出する計画だ。同社はこれまでに4800万ドル(約55億560万円)近くを調達した。判明している限りでは、同社の評価額は2億〜3億ドル(約229億4000万〜344億1000万円)あたりだ。

堅調に成長している中での今回の資金調達となった。Appcuesによれば、Freshworks、FullStory、Lyft、Zapier、Kaplan、Hopin、Pluralsight、Vidyardなどおよそ1500社の顧客を獲得しているという。同社のクラウドベースのプラットフォームはこれまでに2億人以上のユーザーに対して約20億回のエクスペリエンスを提供した。

Appcuesは2014年にマーケッターが開発者の手を借りることなくサイト上で利用しやすいプロンプトを作成できるSaaSのツールセットから事業を始め、その時点でユーザーのオンボーディングのフローに力を入れていた。現在の同社のプロダクトは、わかりやすく機能を使えるようにし、フィードバックのアンケートに誘導し、訪問者に発表を読んでもらうフローもカバーしているが、設計の前提は変わらない。技術系でない人がデジタルインターフェースの動作を向上させるダイアログを作れるようにするということだ。

そのプロセスはSDKから始まる。SDKはアプリのコードベースにインストールすることも、セグメントで統合することもできる。このSDKがサイト上のイベントをトラックし、動作のベースとなる。

ノエル氏はインタビューで、SDKがAppcuesの動作のポイントだと述べた。同氏は「外部アプリではなくネイティブの拡張機能のように感じられます。我々のゴールはこの領域にさらに力を入れてユーザーが最高のプロダクトエクスペリエンスを作れるようにすることです」と説明した。そして、アプリのフローや社員トレーニングなどに主眼を置いた同様のジャンルにおける他プロダクトとの違いはこの点であるとも述べた。

Appcuesの利用者としてはUX担当者、プロダクトマネージャー、インタラクティブマーケティング担当者、そしてもちろん開発者が考えられる。利用者はChromeの拡張機能からデータにアクセスしてアプリやサイトが意図した通りに動作している部分、していない部分を確認し、それに応じてイベントやフローを新しく作成する。ユーザーがどこからアプリに入ってきたか、すでにどのように使っているかに応じてセグメントを分け、それぞれに別のフローやイベントを作成できる。そして新しいフローが効果的に動作しているかどうかを追跡して調整したり、必要があれば新しいフローを追加したりする。

現在は以前に比べて間違いなくユーザーエクスペリエンスが重視されている。動作が良くないものはユーザーに短時間で見切られてしまう(デジタルサービスなら選択肢はいくらでもある)。企業はどんどん複雑さを増してデジタルの入れ物に何もかも詰め込み、しかもその入れ物が顧客にエンゲージする唯一のプラットフォームだったりする。ここでうまくいかなければ、これまでには存在しなかったような経緯で企業を左右しかねない。

だからこうした問題を解決するテクノロジーを構築しようとする企業がたくさんあるのも当然であり、それは大きなビジネスになり得る。この分野には株式公開を果たしたWalkMe、こちらもIPOの準備中であるPendo、組織内ユーザーのオンボーディングに重点を置くWhatfixなど、多くの企業がある。

Appcuesのツールセットについて特筆すべき点は技術系でないユーザーを対象としていることだが、分析にも力を入れている。両者は、誰にとってどんな問題があるかを把握するのにも、修正の試みがうまくいっているかどうかを判断するのにも役に立つ。

ユーザーのオンボーディングを調整するための高度な、あるいはたくさんのツールがあるとしても、最初の段階でのシンプルなニーズはなくならず、むしろ重要性を増す一方だ。

NewSpringの共同創業者でゼネラルパートナーのMarc Lederman(マーク・レダーマン)氏は発表の中で次のように述べた。「この5年間、我々はソフトウェア企業のプロダクトエクスペリエンスがビジネスの成功における最も大きな力になるという変化を目撃してきました。我々はAppcuesが顧客に与える影響に大きな期待を寄せ、Appcuesのこれからの成長段階でジャクソンとチームを支援できることを楽しみにしています」。

画像クレジット:Appcues

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Kaori Koyama)

ソフトバンクがマーケティング最適化のためのAIインフラ企業Pixisへの資金注入主導、新社名で新年度をスタート

Pixisの創業者。左からシュバム・A・ミシュラ氏、ヴルシャリー・プラサード氏、ハリ・ヴァリヤート氏

Pyxis One(現Pixis)は、シリーズCの資金調達で1億ドル(約114億円)を調達し、同社がいうところの「完全なマーケティング最適化のための、世界で唯一のコンテキストコードレスAIインフラ」の開発を続けている。

SoftBank Vision Fund 2(ソフトバンク・ビジョン・ファンド2)がこのラウンドを主導し、新たな投資家であるGeneral Atlantic(ジェネラル・アトランティック)と、既存の投資家であるCelesta Capital(セレスタ・キャピタル)、Premji Invest(プレミジ・インベスト)、Chiratae Ventures(チラタエ・ベンチャーズ)が参加した。今回の資金調達は、Pixis(ピクシス)が1700万ドル(約19億4400万円)のシリーズBを発表してからわずか4カ月で行われ、これまでの総資金調達額は1億2400万ドル(約141億円)に達した。

カリフォルニアに拠点を置く同社は、3年前にShubham A. Mishra(シュバム・A・ミシュラ)氏、Vrushali Prasade(ヴルシャリー・プラサード)氏、Hari Valiyath(ハリ・ヴァリヤート)氏の3人によって設立された。ミシュラ氏はTechCrunchに対し、このチームが一緒に立ち上げた会社はこれで2つ目で、最初の会社はゲーム分野の人工知能だったと語っている。

会社が発展するにつれ、チームはほとんどの人が「Pyxis」を「y」ではなく「i」で綴っていることに気づき、クリーンで均整をとるために会社名を変更したと、彼は述べている。

Pixisを立ち上げる前、共同創業者たちはマーケティング責任者や収益責任者に、顧客のプライバシーを尊重するために企業が独自のシステムを導入しなければならない「Cookieなき」世界で、SaaS企業を迅速に拡大する方法について話をしたそうだ。

「この準備ができている人はあまりいません。私たちは、8秒以内に導入できるノーコードAIソリューションを構築することでそれを解決しています」。とミシュラ氏はいう。

実際、同社はマーケティングキャンペーンにAI最適化を加えるための自己進化型ニューラルネットワークのAIモデルを現在50個持っており、今後6カ月で200個にスケールアップする予定だ。Pixisは、ノーコードソリューションによって人々が部分的にデータサイエンティストになるというビジョンを信じている、とミシュラ氏は語った。

そして、それは「ノーコード」というだけのただの戦略ではなく、本当にノーコードであることを強調した。AIマーケティングモデルを徹底的にいじったり、データサイエンティストのチームを集めて何かを開発したり、30分のトレーニングを受けてボタンを押すだけで製品やプラグインを導入できるようにするため、このインフラは製品群のように構築されている。

シリーズCは、2018年からの600%の収益成長を受けたものだ。Pixisは1月中に100社以上の顧客を獲得し、すべて中堅から大企業の範囲に入るとミシュラ氏は述べた。PixisのAIインフラを利用する顧客は、毎月数時間にも及ぶ手作業の業務節約時間に加え、獲得コストが20%減少したと同氏は付け加えた。

今回の資金調達は北米、欧州、APACに拡大するAIプラットフォームとプラグインの拡張に役立てられるという。

「2022年は私たちにとって新たな夜明けです」とミシュラ氏はいう。「2021年は、BTCとDTCマーケティングへのソリューションを立ち上げていましたが、2022年の第1四半期の終わりには、B2Bとソフトウェア企業へのソリューションを提供する予定です」。

一方、SoftBank Investment Advisers(ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズ)のパートナーPriya Saiprasad(プリヤ・サイプラサド)氏は、Pixisの特徴として「Cookieのない世界でより良い意思決定を促すために、マーケティング機能に最先端のデータサイエンス能力を装備する」デマンドジェネレーションのための真のエンド・ツー・エンドのインフラであるとメールで述べている。

マーケティングは企業にとって大きな予算項目だが、メッセージングやビジュアルのためのツールがないために、適切なタイミングで適切なチャネルを通じて適切な顧客をターゲットにできないと、その支出の多くが無駄になってしまうため、彼女は同社の製品が「ゲームチェンジャー」であると考えている。

「Pixisのプロダクトマーケットフィットの検証は、同社が立ち上げからわずか3年で達成したその目覚しい成長率と、忠実で熱心なグローバル大企業の顧客基盤に支えられています」とサイプラサド氏は付け加えた。「2021年に企業がデジタルマーケティングに費やした費用は推定4550億ドル(約52兆円)という市場規模と、さまざまな業種に対応できるPixisのプラットフォームにより、Pixisがこの勢いを持続するための大きな走路があると考えています」。

General AtlanticのマネージングディレクターであるShantanu Rastogi(シャンタヌ・ラストーギ)氏も、データ共有に関する新たな制限の結果、マーケティングエコシステムがシフトする中、Pixisはこれに対応し、予測AIモデルを活用してマーケティングの効率化を実現し、顧客に新しい投資収益率を生み出していると指摘している。

ラストーギ氏は「Pixisは、これまで時代遅れの技術に頼っていたプラットフォームを『十分である』と受け入れてきた業界に、自動化と統合をもたらそうとしています。今回の投資で、グローバルに成長・拡大しようとする有能なチームを支援できることをうれしく思います」。と語っている。

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

自動外観検査AIをノーコードで開発可能なAI開発プラットフォームを提供するMENOUが約2.5億円のシリーズA調達

自動外観検査AIなどをノーコードで開発可能なAI開発プラットフォームを提供するMENOUが約2.5億円のシリーズA調達

自動外観検査システムなどAIによるディープラーニング技術を身近にするソリューションを提供するMENOU(メノウ)は1月11日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による約2億5000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先はニッセイ・キャピタル、DEEPCORE、三菱UFJキャピタル。累計資金調達総額は約3億7000万円となった。

調達した資金は、検査AIをノーコードで開発するAI開発プラットフォーム「MENOU-TE」(メノート)の機能拡張、また検査工程を自動化するための導入支援サービスである「MENOU-IN」(メノーイン)をより多くの企業に提供できる体制を整える。

MENOU-TEでは、AIとルールベースのハイブリッドな検査を構築し、導入するまでの開発を容易にする体制を整える。また、機能開発を加速し、プログラミングやAI、画像処理の専門人材がいなくてもAIの社内開発が可能になるMENOU-TEの利便性や使いやすさつかいやすさを増していく計画という。

MENOU-TEは、ディープラーニングの検査AIを、ノーコードで開発可能なソフトウェア。GUIによるアノテーションラベリング(学習操作)や解析精度の視覚化と最適化支援、ルールベース解析とのハイブリッドな推論・検査といった機能を備える。これらにより、画像検査やAIの専門知識のない技術者であっても、製造現場に必要な外観検査・画像検査を実施する環境を構築できる。

自動外観検査AIなどをノーコードで開発可能なAI開発プラットフォームを提供するMENOUが約2.5億円のシリーズA調達

MENOU-INは、検査AIの総合的な導入支援サービス。外観検査の画像取得に向けた照明やカメラなどの最適な撮像構成を提案しつつ、運用やメンテナンス体制も含めたAI外観検査導入を総合的にサポートする。企業内のAI・DX人材の育成を行うトレーニングなども行うなど、開発人材育成も支援する。

MENOUは、日本の製造業にとって身近なAIを普及させることをミッションに掲げ、ニコンのエンジニアが2019年6月に設立したAIスピンアウト。独自のAI開発プラットフォームを中心に、様々な製造業への導入支援を展開している。MENOU-TEは、直感的操作でアノテーションができるだけでなく、AI開発に必要なファイル管理、モデル管理を一括管理できる統合開発環境を提供し、導入後もメンテナンスしやすい画像検査を可能にするという。

MENOU-TEを用いたMENOUチームの解析画面。外観検査に特化したソフトウェアだが、人物特定AIなども短時間で実現できるという

MENOU-TEを用いたMENOUチームの解析画面。外観検査に特化したソフトウェアだが、人物特定AIなども短時間で実現できるという

日立ソリューションズ、熟練面談者のノウハウをノンコーディングでAIモデル化できる「面談支援AIサービス」開始

日立ソリューションズ、熟練面談者のノウハウをノンコーディングでAIモデル化する「面談支援AIサービス」を1月5日開始

日立ソリューションズは、熟練面談者のノウハウをノンコーディングでAIモデル化し、面談の課題解決支援に利用できる「面談支援AIサービス」を2022年1月5日から開始する。これは、スマートフォンやPCのブラウザー上において、熟練面談者のノウハウを学習したAIモデルが、面談を受ける被面談者の受け答えから表情や言葉を分析し、特性の評価予測が行えるというもの。

企業における面談には、採用面談のほかにも、事業の効率化を進めるために従業員に対して定期的に行うものもある。特に「ジョブ型人材マネージメント」では、人材の有効活用のために質の高い面談がさらに重要になってくる。しかし、面談者の経験や好みによって評価にばらつきが出たり、熟練面談者の都合がつかず、経験の浅い面談者が対応しなければならなかったり、面談者と被面談者とのスケジュールが折り合わないなど、様々な課題がある。

そこで日立ソリューションズでは、評価したい指標と、被面談者に対する熟練面談者の評価結果を学習させたAIモデルを作成可能となる「面談支援AIサービス」を開発した。これを使うことで、経験の浅い面談者でも熟練者に近い対応ができるようになるほか、被面談者の評価が定量化できるという。また、面談者が立ち会わない、アバターを使った「セルフ面談」も可能になる。日立ソリューションズは、製造や建設分野などの無期雇用派遣事業を展開するUTグループと概念検証(PoC)を行ったところ、「AIモデルの予測が熟練面談者の評価と比較しても大差なく、実用可能であることを確認」できたとのことだ。

「面談支援AIサービス」の特徴は次のとおり。

  • 定量的で高水準な評価支援:熟練面談者と同等の評価を行うAIモデルの評価予測を、面談者が参考にすることで、キャリア面談などの効率的な実施を支援
  • ノンコーディングでAIモデルを作成
    評価したい指標と、被面談者に対する熟練面談者の評価結果を学習させるだけで、効率的にAIモデルが作成できる。評価したい指標は、企業や組織、業務ごとに設定可能
  • AI育成による継続的な精度向上:AIモデルが熟練面談者の評価結果と異なる結果を出した場合は、業務のプロフェッショナルである熟練面談者が評価結果の違いをAIモデルにフィードバックすることによって、評価の精度を継続的に向上させることが可能(この機能は2022年春に導入予定)
  • 面談者の育成:経験の浅い面談者は、熟練面談者のノウハウを学習したAIモデルのスキル評価結果を活用することで、あたかも熟練面談者が寄り添うように面談を行うことができ、判断基準を学ぶことで、スキルアップを図れるという

これは、月額式のクラウドサービス。月額料金は、月あたり200回や1000回など、面談回数や用途・規模に応じて個別に見積もられる。また、画面カスタマイズ、API連携、動画の特徴量分析なども個別に対応可能とのことだ。

溢れる企業のデータを整理整頓しすぐ有効に使えるようにする、ノーコードのデータパイプライン「Hevo」が約34.2億円調達

企業が日々生成する大量のデータを整理整頓して有効利用に備えるSaaSを提供しているHevoが、その好調な1年の締めくくりとして3000万ドル(約34億2000万円)の資金を調達した。

サンフランシスコとベンガルールに本社を置く同社の3000万ドルのシリーズBは、Sequoia Capital IndiaがリードしQualgroやLachy Groom、Chiratae Venturesなど多くの投資家が参加した。これで、創業5年の同社の総調達額は4300万ドル(約49億1000万円)になった。

企業には、マーケティングやエンジニアリング、デザインなど多くの部門があり、それぞれが自分の業務のためにさまざまなサービスやプラットフォームを利用している。しかしそれらが日々生成するデータは、各部門のサイロに収容されているので、全体としてのリアルタイムの可視性を欠き、次の行動や意思決定の助けにならない。

Hevo Dataが作ったデータパイプラインは、さまざまなソースからのデータの統合と取り込みをとても簡単なものにし、それらを1つのダッシュボード上に可視化する。また、さらにそれらのデータをSnowflakeやGoogle BigQuery、Amazon Redshiftなどのクラウドデータウェアハウスに入れる。同社のCEOで共同創業者のManish Jethani(マニッシュ・ジェタニ)氏が、インタビューでこう説明してくれた。

「企業は社内のいろいろなところで、いろいろなタイプのソフトウェアを使っていますが、そのデータに他の部門からもアクセスできなければ、自分のところのデータの本当の意味すら理解できません」。それは、人体における血液の流れと一緒だと彼はいう。

「たとえばマーケティングに何千ドルも投資したら、実際に買った人と買わなかった人の数や購入の頻度を知る必要があります。購入単価も知りたい。これらのデータから、今後の適正なマーケティング予算がわかってくる。そしてこれだけの知見のために、マーケティングと受注のデータ、財務データ、それに顧客サポートのデータも必要になります」。

ジェタニ氏は、彼の以前のスタートアップGrofersに売ったSpoonJoyで、このような問題に苦戦していた。Grofersというやや大きなスタートアップで知ったのは、大きな企業でもデータの問題に悩んでいるということだ。ジェタニ氏によると、AmazonやFlipkartぐらい大きくなれば、独自のワークフローと大きなデータ専門部署を作って対応しているだろうという。

同社が提供するサービスは販売CRM、広告チャネル、マーケティング技術、財務システムソフトウェア、顧客サポート製品など、複数の異種ソースやアプリケーションからのデータを組み合わせて、ビジネスと顧客に関する360度のビューを構築すると、ジェタニ氏はいう。

Hevoが提供する人気のインテグレーション例。

Hevoの付加価値の1つは、ノーコードプラットフォームであることだ。データを中央のハブに流すための統合を確立するのに、個人はそれほど時間をかけず、また技術的な理解も必要ないという(例えば、IFTTTでアクションを設定するのと同じくらい簡単にアクセスできる)。Hevoはデータベース、SaaSアプリケーション、クラウドストレージ、SDK、ストリーミングサービスなど、100以上の統合機能をあらかじめ備えている。

同社は、40カ国以上の複数のカテゴリーで1000社以上の顧客を獲得しており、今後、より大きな市場を開拓するために、新たな資金を新製品開発に投じる予定だ。Hevoは、この1年間に500%という驚異的な成長を遂げたという。同社が取り組んでいる新商品の1つに、ユーザーが収集したデータを分析できるようにするインサイトプラットフォームがある。

また「Reverse ETL」と呼ばれるプロダクトも開発中で、これは分析以外の用途でも顧客のデータ活用を支援することを目的としているという。

「データは、この10年間で最も重要なビジネスインプットの1つになっています。Hevo Dataは、データの双方向モビリティを実現するための基盤インフラを構築しています」と、Sequoia IndiaのMDであるTejeshwi Sharma(テジェシュウィ・シャルマ)は声明で述べている。

「組織内でモバイルデータが増えれば増えるほど、その有用性は高まります。私たちは、同社の製品DNAに感銘を受けました。広く愛されている製品の秘密は、洗練された技術と消費者レベルの体験という二面性を兼ね備えていることなのです。Sequoia Capital Indiaは、Hevoとのパートナーシップをさらに強化し、シリーズBラウンドをリードできることをうれしく思っています」。

画像クレジット:Hevo

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(文:Manish Singh、翻訳:Hiroshi Iwatani)

リコーのアクセラレータープログラムTRIBUS採択企業ユニフィニティーが現場効率化アプリの自動作成サービスβ版を無償提供

ゼロワンブースターは12月17日、リコーとともに運営するアクセラレータープログラム「TRIBUS」(トライバス)において採択されたユニフィニティーが、現場効率化ノーコードアプリの自動作成サービスβ版の無償提供を発表した。

同サービスにより、現場効率化用途のカスタムアプリを無料で試作し、DXプロジェクトの検証や新規事業のPoCをスムーズに進められるという。申し込みは、「無料アプリを申し込む」より行える。

TRIBUSは、リコーが社内外からイノベーターを募り、リコーのソースを活用してイノベーションにつなげるプロジェクト。資金や先進技術にとどまらず、リコーグループ社員が社内外で得た知見を活かしサポートする。ユニフィニティーは、これまでに蓄積したアプリ開発のノウハウに加え、サービス企画、プロジェクトマネジメントや製品デザイン、販売・開発体制の構築に至るまでTRIBUSから多くの支援を受けて、現場効率化ノーコードアプリの自動作成サービスを実現した。

同サービスでは、カメラやバーコードリーダー、GPSなどを活用して現場を効率化するモバイルアプリが無料で作成できる。豊富な画面パターンとカスタム機能を組み合わせることで、様々なアプリを表現可能という。また、1カ月間無料で試用可能なUnifinity Platformの専用開発ツール「Unifinity Studio」を用いれば、さらに細かい部分のカスタマイズも行える。


ユニフィニティーは、「テクノロジーの力をもっと身近に」をキーワードに掲げてアプリのノーコード開発プラットフォーム「Unifinity」を提供するスタートアップ。AIやクラウドといった様々な先端テクノロジーを誰でも活用できるアプリを、誰でも作れるようにすることで、あらゆる人が自分だけのアプリで働くことができる社会を目指している。

ゼロワンブースターは、「日本を事業創造できる国にして世界を変える」という企業理念のもと、大手企業とスタートアップ企業が相互に補完し合い、イノベーションを共創して事業の成長を加速するオープンイノベーションプログラム「コーポレートアクセラレーター」や、社内起業家を発見・育成するプログラム「イントラプレナーアクセラレーター」を展開している。

レブコムの音声解析AI電話MiiTelがノーコードのワークフロー自動化ツールZapierと連携開始

レブコムの音声解析AI電話MiiTelがノーコードのワークフロー自動化ツールZapierと連携開始

RevComm(レブコム)は12月10日、同社音声解析AI電話「MiiTel」(ミーテル)と、Zapierのワークフロー自動化ツール「Zapier」との連携を開始したと発表した。従来のSalesforce、Slack、Kintoneなどとの連携に加えて新たにZapierとも連携可能となったことで、より様々なアプリケーションやサービスと組み合わせる形で業務を自動化しやすくなった。

Zapierは、複数のウェブアプリやサービスを連携させることで、日々の業務で発生する定型的な作業をプログラミング不要で自動化できるツール。「Googleスプレッドシート」「Chatwork」「Microsoft Teams」など、3000以上のアプリケーションやサービスをサポートしている。RevCommは、MiiTelが生成する様々なデータを各種サービスと連携させることで、業務効率のアップ、また新たなインサイトの発見に役立てられるとしている。

Zapier連携機能では、現在4つの「Trigger」(トリガー。処理開始のきっかけとなるイベント)を利用できる。

Zapier連携機能で利用できるTrigger

  • Incoming unanswered:不在着信。利用例は、「不在着信があった場合に、Gmailへメッセージを送信」など
  • Phone analysis completed:音声解析完了。利用例は、「MiiTelの音声解析完了時に、応対履歴を利用中のSFAやCRMへ連携」など
  • Video analysis completed:動画解析完了。「MiiTel Live」「MiiTel for Zoom」(ベータ版)利用ユーザー向けの機能。利用例は「ミーティング動画の解析完了時に、音声認識結果をGoogle ドキュメントとして保存」など
  • Answering Machine recorded:留守電録音。利用例は、「留守番電話があった場合に、Chatworkへ留守番電話の通知メッセージを送付」など

ノーコードのセキュリティ自動化プラットホーム「Torq」が約57億円調達

オレゴン州ポートランドのTorqは、セキュリティをノーコードで自動化するスタートアップで、以前はStackPulseという名称だった。同社は米国時間12月7日、Insight PartnersがリードするシリーズBのラウンドで5000万ドル(約56億9000万円)を調達したことを発表した。上場企業であるエンドポイントセキュリティのプラットフォームSentinelOneが新たな投資家としてラウンドに参加し、またこれまでの投資家であるGGV CapitalとBessemer Venture Partnersも参加した。Torqの総調達額は、これで7800万ドル(約88億7000万円)になる。

関連記事:小さな企業でも突然のシステム障害に迅速に対処できるようにするStackPulseが29億円調達

最近では、ノーコード / ローコードのプラットフォームが流行しているが、セキュリティ分野ではあまり見かけない傾向にある。NS1、eToro、Armis、Healthy.ioなどがユーザーとして名を連ねるTorqは、使いやすいグラフィカルなインターフェースを用いて、セキュリティチームがセキュリティ製品間のルーティング・ワークフローを自動化することを支援する。その点では、Microsoft Power Automateとあまり変わらず、セキュリティに特化している点では同じだ。

Torqは、現代の企業がデータの安全性を保つために導入している複雑に入り組んだセキュリティツールをまとめることができるという点で期待されている。サービスのワークフローは、一定の間隔で、またはアラートから起動することができる。例えば、クラウドリソースへの特権的なアクセスを求める従業員からのSlackリクエストに反応したり、疑わしいファイルの分析プロセスを自動化したりするような、シンプルなワークフローだ。

画像クレジット:Torq

LemonadeのCISOであるJonathan Jaffe(ジョナサン・ジャッフェ)氏によると「Torqのオートメーションで私たちチームのセキュリティ管理が変わりました。一例を挙げると、Torqを使ってウェブアプリケーションのファイアウォールのブロッキングのルールを管理すると、悪質なトラフィックのブロックに要する時間が70分の1になり、捕捉率は90%を超えました。これはとても大きな改善です」という。

TorqのCEOで共同創業者のOfer Smadari(オフェル・アダリ)氏によると、以前の資金調達から今回までの間、同社はユーザー体験の改良に集中してきた。「ユーザー体験への投資を増やし、ユーザーが他のシステムにもっと容易に接続できて、複雑なワークフローを簡単に作ることが可能で、インターフェースのスピードと応答性を上げるようにしました。また、創業時から一貫して、大小さまざまなエンタープライズをサポートできるためにスケーラビリティとレジリエンスに重点的に投資してきました」と氏は述べている。

特に今回の資金で重点投資を行いたいのが、サービス利用がかなり大規模になっている顧客や見込み客への対応だ。アダリ氏によると、同社のサービスの上で顧客が動かしているワークフローの平均数が毎週2〜3倍ずつ増加している。「顧客は、一度始めたらその後の拡張はとても速い。私たちが、そんな成長をサポートできるほどのサービスのデプロイになっていることを、有事になる前に確認しなければならない」という。

Torq自身は、セキュリティのチームをルーチンワークから解放してセキュリティ業界の人材不足に対応することが目的でも、しかしアダリ氏によると、同社にとって当面の最大の課題が雇用だ。

しかしInsight PartnersのマネージングディレクターであるSteve Ward(スティーブ・ワード)氏は次のように述べている。「短期間でTorqが成功したことは、プラットフォームがビジネスのあらゆる側面にわたってより良い保護の提供を目指すセキュリティチームの仕事を楽にしてくれることの証明だ。同社の直感的なプロダクトと経験豊富なチームにより、Torqは急速に業界のリーダーになりつつある。成長を続けているTorqとの提携は、私たちを元気にしてくれます」。

画像クレジット:Torq

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)