インフルエンサーマーケ支援のトリドリが12億円のシリーズB調達、人材採用・プロダクト開発・プロモーションを強化

各種インフルエンサーマーケティング事業を展開するトリドリ(toridori)は2月28日、シリーズBラウンドとして第三者割当増資による総額12億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リードベンチャーのGlobal Catalyst Partners Japan、既存投資家の三菱UFJキャピタル、セレス、イノベーションエンジン、新規投資家のXTech Ventures、スリーエスキャピタル、ファーストアドバイザーズ、HIRAC FUND(マネーフォワードベンチャーパートナーズ)。シリーズAラウンドおよびこれまでの借入金も含め、累計調達額は24億円を突破した。

調達した資金により、インフルエンサーと企業を繋ぐマーケティングプラットフォーム「toridori marketing」(トリドリマーケティング)と「toridori base」(トリドリベース)(Android版iOS版)の成長を加速させる。より使いやすいサービスへと進化させるための人材採用、プロダクト開発、戦略的プロモーションにあてる予定。

企業用サービスtoridori marketingと、インフルエンサー専用案件管理アプリtoridori baseは、中小企業・個人事業主などの事業者に対してインフルエンサーを活用したマーケティング支援を行うサービス。企業がmarketing上でPR案件依頼募集を行うと、商品を紹介したい全国のインフルエンサーがbaseアプリを利用し立候補する形式で、どこのエリアの企業でも利用しやすいとしている。利用料金は月額制で、登録インフルエンサーは約2万5000人。現在はPR実績が15万件を超えるという。

2016年6月設立のトリドリは、「『個の時代』の、担い手に。」をミッションとして、インフルエンサーマーケティングに特化した各種サービスを提供している。toridori marketingとtoridori baseのほか、インフルエンサー成果報酬型広告「toridori ad」、YouTubeコンサルティング「toridori studio」といった事業を展開し、インフルエンサーの個性を最大化し企業プロモーションに活用するサービスを提供している。

LinkedInがイスラエルのウェブ分析Oribiを92〜104億円で買収、マーケティングテクノロジーの拡充を図る

専門分野に関して人々とつながり、仕事を探したい人のためのソーシャルネットワークで、8億1000万人以上のユーザーがいるMicrosoft(マイクロソフト)傘下のLinkedIn(リンクトイン)は、独自プラットフォーム上で長年、マーケティングや広告のビジネスをしている。同社は米国時間2月28日、インターネットのさらに幅広い範囲にわたる分析やインサイトを提供したいという同社の野望を示していると考えられる買収を発表した。LinkedInが買収したのは、マーケティングのアトリビューションテクノロジーを専門とするテルアビブのスタートアップ、Oribiだ。この買収により、LinkedInはイスラエルに初めてのオフィスを開設することになる。

買収を発表したブログ記事では条件は明らかにされていないが、情報筋によると買収額は8000万〜9000万ドル(約92億1600万〜103億6800万円)とのことで、他のメディアでもこの金額が報じられている。PitchBookのデータによると、OribiはSequoia、TLV Parnters、Ibexなどから2800万ドル(約32億2500万円)近くの資金を調達し、Google(グーグル)のローカルアクセラレーターとしても若干の資金を得ている。

この買収は2つの点で興味深い。1つめとして、これはLinkedInが同社の中で急速に成長している分野であるマーケティングと広告のサービスへの投資を続けていることの現れだ。最高プロダクト責任者のTomer Cohen(トマー・コーヘン)氏は米国時間2月28日のブログ記事で、マーケティングサービスの売上は対前年比で43%成長したと記している。しかしLinkedIn上では5700万社ほどの企業が「ブランドのページを作成」し、毎週2万4000件以上のバーチャルイベントが作成されていることを考えると、利用している企業にさらに機能とツールを提供すればさらなる成長の余地が大いにあることは明らかだ。ここ数年で、LinkedInはこの分野を拡大するための買収を1件しかしていない。その1件は、2019年Drawbridgeの買収だ。

そしてもう1つ、Oribiの買収はLinkedInのマーケティングに関する大きな変化をはっきりと示している。以前にTechCrunchでお伝えしたように、Oribiのミッションはウェブ分析を民主化することだ。つまり同社は、小規模な企業が簡単に独自の分析を構築、実行してマーケティング戦略の影響を測定できるようにすることを目指している。大企業ならそのためのチームがいるだろうが、小さい組織はリソース不足のためたいてい諦めざるを得ない。

Oribiの創業者でCEOのIris Shoor(アイリス・ショーアー)氏は以前にTechCrunchに対し「アナリティクス企業の多くは、ハイエンドを狙っています。もっぱら技術的なリソースや他とのインテグレーションに基づいたソリューションを提供しています。Mixpanels風、Heap Analytics風、Adobe Marketing Cloud風といったものです」と述べていた。

注目すべき点として、OribiはGoogle Analyticsなどと競合している。つまりLinkedIn(そしてこれに関連してMicrosoft)が、Googleの圧倒的なデジタル広告・マーケティングマシンに立ち向かっていくことにもなる。

米国時間2月28日にコーヘン氏は次のように記している。「Oribiのテクノロジーを我々のマーケティングソリューションプラットフォームに統合することで、お客様はさらに充実したキャンペーンのアトリビューションを利用して広告戦略のROIを最適化できるようになります。お客様は自動のタグとコードフリーのテクロノジーを活用して、ウェブサイトのコンバージョンを簡単に測定し効果的なオーディエンスを構築できます。しかもすべてプライバシーを最優先に設計されています」。

LinkedInはOribiの従業員が何人ジョインするかを明らかにしていない。ただし「創業者で経験豊かな起業家であるアイリス・ショーアー氏を含むOribiのチームの数人」がLinkedInにジョインして、LinkedInの新しいテルアビブオフィスで働くと記されている。

画像クレジット:LinkedIn China via Weibo

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Kaori Koyama)

LeadGeniusの共同創業者、ウェブ会議による市場調査ツールMarvinでユーザー中心設計の原点に立ち返る

Prayag Narula(プラヤグ・ナルラ)氏と彼の弟Chirag Narula(チラグ・ナルラ)氏は、GongとChorus.aiがセールスコールに対して行ったことを、製品・マーケティングリサーチの通話に対して実現しようとしている。

2020年に彼らは、企業が顧客ニーズをよりよく理解するためのユーザーリサーチプラットフォーム「Marvin」を開発した。これは部分的に、プラヤグ・ナルラ氏の経歴に由来している。彼は、マーケティングテクノロジー企業LeadGeniusを共同設立して長年にわたり経営し、3000万ドル(約34億6600万円)以上のベンチャー資金を調達し、従業員が数百人になるまで成長するよう導いた人物だ。

営業やマーケティングのバックグラウンドを持たない彼は、LeadGeniusに友人を雇うことにし、その友人がパンデミックの始まりとともに最終的にCEOに就任した。同時にプラヤグ・ナルラ氏はCEOを退いたが、取締役には残った。

「Marvinはある意味、私がユーザー中心設計のルーツに立ち返った結果です」と彼は語る。「営業チームは顧客と話をして売上を上げたいと考え、カスタマーサクセスチームはアップセルを求めています。製品チームやデザインチームの場合、唯一のアジェンダは、その製品で顧客の生活をいかに改善するかということです。これはユーザーエンゲージメントの最も純粋な形であり、我々はこれを活用したかったのです」。

ナルラ氏はさらに、LeadGeniusではそれを実現するための適切なツールがなかったと説明する。今日に至っては、ビデオ会議のおかげで、会話を録音し、情報を得ることが簡単にできるようになった。しかし、ユーザー中心であることの価値を理解しながらも、何から始めればいいのかわからないという企業が増えている。

Marvinの共同創業者プラヤグ・ナルラとチラグ・ナルラ氏(画像クレジット:Marvin)

Marvinの技術は、Zoom(ズーム)などのビデオ会議ツールにプラグインし、通話中にメモを取るインタビューおよびユーザーリサーチツールである。また、インタビューのスケジュール設定や、録音した内容をキーワードやハッシュタグで検索可能なインサイトに変換するなど、ユーザー調査のあらゆる側面を自動化することができます。

「企業は、顧客と対話し、フィードバックを得て、調査を行うことに多くの時間を費やしています」とナルラ氏はいう。「このすべてがZoomで行われているのです。当社は、このような会話をより効率的かつコラボレーティブにするお手伝いをします」。

Lattice(ラティス)やSimon-Kucher(サイモン・クチャー)など、すでに数千社の顧客がMarvinを使用しており、毎週何千分もの録音を行っている。多くのユーザーは、この技術を活用して顧客と対話し、課題を理解し、デザインや製品へのフィードバックを得ている。それらの会話からパターンを見つけ出し、各チームで共有することができる。また企業によってはこのツールを経営コンサルタントとして使い、業界の専門家に話を聞いたり、学術的な研究の参照にするのに利用している。

米国時間2月23日、同社はプライベートベータを終了し、先に行われたプレシードラウンドで380万ドル(約4億3900万円)を獲得したことを発表した。同ラウンドはSam Altman(サム・アルトマン)氏のApollo ProjectsとFuel Capitalが共同で主導し、Scrum Ventures、Hack.VC、Global Founders Capital、House Fund、Gaingelsおよびエンジェル投資家のグループが参加した。

今回の資金調達により、Marvinは、ユーザーインタビューの実施、整理、分析、共有をより効果的に行えるよう、チームと製品開発の規模を拡大することが可能になるとのこと。同社の成長の大部分は、この5カ月の間に起こった。現在の従業員数は20名で、全体的に採用活動を行っている。

プラヤグ・ナルラ氏は「2021年の第3四半期に有料ユーザー数がゼロだったのが、1000以上に達したので、今度はそれを数千の有料ユーザーに拡大する時です」と述べている。

画像クレジット:Marvin

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(文:Christine Hall、翻訳:Den Nakano)

イベントマーケティングは「チームスポーツ」、Vendeluxは最高の投資利益率のために企業を指導

イベントや会議、展示会などに参加し、多くのきっかけや機会を生み出すという点でうまくいった場合、それは良い経験だ。しかし、イベントがあまりうまくいかないとき、それは時間とお金の浪費という点でリスクになりえる。

Shutterstock(シャッタースクトック)の元幹部、Alex Reynolds(アレックス・レイノルズ)氏とStefan Deeran(ステファン・ディアラン)氏の2人は、APIとコンピュータビジョンの収益化に一緒に取り組み、そうしたいまいちなイベントにいくつか参加した経験から、どのイベントをリストのトップにもってくるか、会社のどのチームメンバーが行けば投資対効果を最大化できるかを判断する、より良い方法があるはずだと考えた。

「イベントマーケティングは、チーム全体で行う大規模なスポーツのようなもの、との結論に至りました」とレイノルズ氏はTechCrunchに語った。「経営陣、営業チーム、さまざまなマーケティングチーム、運営、調達が関わってきますが、そのコラボレーション、説明責任、可視性を支援するプラットフォームや記録システムがないのです」。

その結果、例えば、毎年開催される3万以上の展示会のうち、どの展示会に出展べきか、過去にその展示会でどれだけの収益を上げたかなど、企業が基本的な質問に答えるのは非常に難しい、と同氏は話す。Shutterstockのイベントチームとマーケティングチームの協力を得て、レイノルズ氏とディアラン氏は社内でプロセスを作成する方法を考え、チャネルからのROI(投資利益率)が劇的にアップするのを確認した。

そこで2人は、このアプローチが他のビジネスでも有効かどうかを検証することにした。2021年末にVendulux(ヴェンディラクス)の構築を開始し、すでにActiveCampaign、Gainsight、Gorgiasなど十数社の顧客が、講演者、スポンサー、参加者といったデータを含め、3万以上の対面およびバーチャルイベントの独自データベースにアクセスしている。

Vendeluxは、一般に公開されているソースからデータを取得し、特定のイベントにどのスポンサーや講演者が参加するかを表示することができる。また、ユーザーは、LinkedInの連絡先も含め、自分のCRM(顧客管理)から情報をアップロードすることもでき、とある企業が今後イベントに参加する予定があるか、自分のネットワークの誰かがイベントで講演するかどうかを逐一確認することができる。

1月に一般向けにサービスを開始したVendeluxは、前月比で2桁の売上増を記録している。同社は米国時間1月28日、Tenacity Venture Capitalがリードし、Earl Grey、Shafqat Islam、Avi Muchnikなどの戦略的エンジェル投資家が参加したシードラウンドで240万ドル(約2億7000万円)を調達したと発表した。

Vendeluxのエクスプローラータブ(画像クレジット:Vendelux)

今回の資金調達は、主に製品開発とチーム拡大に充てられる。このラウンドを完了する前、創業者たちは自己資金で運営していた。しかし、レイノルズ氏は、顧客からの問い合わせと機能の構築を両立させることが難しくなってきたと述べた。

「火に少し燃料を注ぐのに、そしてチームを強化するのに適した時期だと思ったのです」と同氏は付け加えた。「製品面では、統合の点でまだまだ追加したいことがたくさんあります」。

一方、レイノルズ氏とディアラン氏は、会社の成長に探索、実行、評価の3段階でアプローチしている。同社は現在、イベント・インテリジェンス分野の探索に注力しており、今回のシードラウンドで実行に移すことになる。

企業がどこに行き、誰を派遣すればよいかがわかったら、次のステップとして、創業者たちが検討しているのは、事前に十分なミーティングを予約し、発生しているデータを把握し、担当者のパフォーマンスやROIをリアルタイムで確認できるようにするすことだ。

「イベントマーケティング担当者は、大規模な計画を立て、適切な場所にすべての人を集めるという、マーケティングチームの縁の下の力持ちのような存在ですが、説明責任と可視性を促進するためのプラットフォームを持っていません」とレイノルズ氏は付け加えた。「当社はそのような記録システムとなり、企業がどこに向かうべきか、それが価値の観点から何を意味するのかについて、よりデータに基づいた決定を下すことをサポートしたいと考えています」。

画像クレジット:Vendelux / Vendelux founders Stefan Deeran and Alex Reynolds

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

「思わず開きたくなる営業メール」の制作を支援するDyspatch

Dyspatchのマット・ハリスCEO(画像クレジット:Dyspatch)

マーケターの中には、より多くのお金を稼ぐためには、より多くのEメールを送らなければならないと考える人がいる。Dyspatch(ディスパッチ)の創業者でCEOのMatt Harris(マット・ハリス)氏は、これを「Eメールの法則」と呼んでいる。

「結局、そうしたEメールすべてが、開封エンゲージメント率の低下を招いています」と同氏はTechCrunchに語った。「さらに、Eメール中心ではない新しい世代が社会人になっています。彼らはそもそもEメールの使い方から学ぶ必要があります」。

ほとんどのマーケターは、Eメールマーケティングに関する研修を受けておらず、むしろ実地で学ぶスキルになっていると同氏は付け加えた。時が経つにつれて、人々は自分でデザインし、自らが使うEメールシステムにコードの行をコピー&ペーストするようになった。

Eメール配信のためのツールやリソースが複数登場し、それが課題となった。なぜなら、人々はさまざまなEメールシステムの使い方を学ばなければならず、また、頼るコードが常に機能するとは限らないからだ。

ハリス氏は、2018年にSendwithusというソリューションからスタートした。これはEメール領域における開発者向けの製品だった。その後、同氏とそのチームはEメール制作が大きな問題であると認識し、Eメールのデザインにドラッグ&ドロップのアプローチをもたらすためにDyspatchにピボットした。同社のEメール制作ツールは、基本的に、Eメールをうまくデザインしている人たちからヒントを得て、それを広く利用できるようにしたものだ。

Dyspatchは、Google(グーグル)のAMP for Emailを活用し、AMPメールの要素を非技術系ユーザーでも簡単に実装できるインタラクティブなメール製品「Apps in Email」を2021年発表した。

このツールは現在300社以上の顧客に利用されている。その中にはCanva(キャンバ)も含まれている。同社はAMPメールを利用してコメント返信通知でエンゲージメントを高めている。

「Dyspatchは、私たちのチームがEメール制作に費やす時間を大幅に削減し、コンテンツ制作の規模を拡大することを可能にしました」とCanvaのライフサイクルマーケティング担当グローバルヘッド、Megan Walsh(ミーガン・ウォルシュ)氏は声明で述べた。「私たちは週に20通以上のEメールを制作しています。このプラットフォームは、エンジニアリングの努力なしに、すべてのEメールがブランドに則り、ローカライズされ、すぐ答えが返ってくることを保証してくれます。また、AMPコメント返信メールにインタラクティブ性を持たせることもできました。Dyspatchチームは、このプロジェクトにとても協力的で、ユーザーにも大好評でした」。

Dyspatchの予約デモ(画像クレジット:Dyspatch)

Dyspatchはすでに、フル機能のインタラクティブAMPメールキャンペーンを経て、ブランドのEメールエンゲージメントが500%、Eメールコンバージョンは300%増加することを証明することができるとハリス氏は述べている。

同社は現在、新規顧客の増加をサポートするために、市場開拓チームと技術チームの規模を拡大する段階にあり、そのために600万ドル(約6億8400万円)のシード資金を調達した。Gradient Venturesがこのラウンドをリードし、Initialized Capital、Baseline Ventures、Blue Run Ventures、Scott Banister、VanEdge Partnersが参加した。Dypatchとって今回が初めての資金調達だが、前身の会社と合わせて合計1100万ドル(約12億5400万円)を調達した。

また、Dyspatchは今回の資金調達により、Oracle EloquaやSalesforce Marketing CloudなどのEメールサービスプロバイダーとの連携をさらに進め、ユーザーがどのリソースを使ってEメールを送信しても、シームレスなメールワークフローを確保できるようにする予定だ。

同社は、このアプリをどれだけの人が使っているかを重視している。顧客数はこの1年で2倍以上に増えた。ハリス氏の目に映る繰り返しのパターンの1つは、顧客が毎年戻って来て、さらにユーザーを増やす動きだ。例えば、ある有力顧客は、契約初年度に当初10席のユーザーシートを購入したが、半年でそれを10倍に増やした。

今後は、サードパーティに技術を開放し、Eメールでのカレンダー予約など、顧客から要望のあった機能を構築していく。

「今は、アプリ、アンケート、承認アプリのビルディングブロックを構築していますが、私たちのDNAはエンジニアリング会社ですので、サードパーティが私たちのマーケットプレイスでアプリを構築できるようにしたいと考えています」とハリス氏は付け加えた。

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

Customer.ioのホームページから学ぶコンバージョン率の改善方法

サイト訪問者を顧客へと転換させることができるホームページは、スタートアップが所有できる最も有用な資産の1つである。

コールドトラフィック(そのサイトで紹介されているビジネスについて知らない訪問者)を顧客へと転換させることができるようになれば、新たなオーディエンスを獲得するために、より多くの時間とリソースを注ぐことができる。

この記事では、マーケターが自分でキャンペーンを設計し、そのようにしてカスタマイズしたキャンペーンを実施するためのマーケティング自動化プラットフォームCustomer.ioのホームページを分析してみようと思う。Customer.ioの顧客リストには、大企業からスタートアップまで、数千の企業が名を連ねている。

ランディングページの主なセクションすべてを分析して、スタートアップのホームページのコンバージョン戦略やコピーライティング戦略に使える点に注目する。

サイト訪問者の注意を一瞬で惹きつける

初めてのサイト訪問者の目に最初に映るのは、ウェブサイトを開いた際にスクロールしなくても見ることができる部分、つまり「ATF(アバッブ・ザ・フォールド)」と呼ばれる領域である。訪問者がそのまま閲覧を続けるか、そのサイトから離れてしまうかは、このATF領域が訪問者にとってどの程度役立つかどうかによって決まるため、ATFは非常に重要な部分である。

Customer.ioのATF領域は、ヘッダー、サブヘッダー、CTA(行動喚起)、顧客からの推薦コメント、視覚に訴える画像という5つの要素で構成されている。1つずつ見ていこう。

画像クレジット:Demand Curve

内容の濃いヘッダーで、訪問者が知りたい情報を伝える

ATF領域では、その企業が何をしているのか、なぜそれが重要なのかを、正確かつ簡潔に説明する必要がある。

訪問者がそのヘッダーを読むだけで、どんなスタートアップなのか、なぜそのスタートアップの製品を使うとよいのかを理解できれば、そのヘッダーは全体的に効果的なヘッダーだということができる。

Customer.ioのヘッダーでは、同社の製品が「messaging workflows(メッセージング・ワークフロー)」という2つの言葉で説明されている。Customer.ioを使えば、ユーザーが理想とするワークフローを構築できるというメリットがあること、つまり全面的にカスタマイズが可能であるということをヘッダーから読み取ることができる。

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サブヘッダーでさらに詳細を説明する

サブヘッダーでは、ヘッダーで掲げている顧客へのメリットをどのように実現させるか、という点を説明する。Customer.ioのサブヘッダーでは、同社のメッセージング自動化プラットフォームを使って、ユーザーが独自のワークフローを構築できることが説明されている。

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サブヘッダーで製品の対象者について簡単に言及することも効果的な場合がある。Customer.ioのサブヘッダーでは、同社の製品の対象者が明確に指定されているため、ユーザーは「自分はハイテクに精通したマーケターだろうか」と考える。自分がそのようなマーケターだと思えば、サイトの閲覧を続けるだろう。あるいは、自分はその対象者には当てはまらないと思えばサイトを離れるだろうが、それはそれでまったく問題ない。

画像クレジット:Demand Curve

Customer.ioのサブヘッダーは「データドリブンなメッセージングによって顧客をより深く理解できるため、収益が増加する」という、ユーザーに提供できる最大のメリットについて言及して締めくくられている。

画像クレジット:Demand Curve

コンバージョン率を高めるCTAを作成する

CTA(行動喚起)とは、サイト訪問者と企業との関係をさらに深めるために訪問者側の行動を促すためのサイト構成要素である。このように、訪問者側からの行動を促す何らかの仕組みがないと、訪問者を顧客に転換させることは非常に難しい。

大抵の場合は、ATF領域の中に配置するCTAは1つだけにして、ユーザーが通る道を1つに限定することが好ましい。ただし、例えば、デモをリクエストするCTAを配置したのに、デモを申し込む人が少ないことに気づいた場合は「無料トライアル」など2つ目のCTAを配置して試してみるのもよいかもしれない。Customer.ioのサイトでは後者が採用されている。「無料トライアル」のCTAがなければ、数多くの見込み顧客を逃す可能性があることを知っているのだろう。

Customer.ioは、上記のように複数のCTAをユーザーに提示しているとはいえ、本当はデモを申し込んで欲しい、というのが本心である。そのため、デモをリクエストするためのCTAは他のCTAよりも強調された表示になっている。全体デモを申し込むユーザーの方が、コンバージョンへと至る確率も、サイトに留まる確率も他のユーザーより高くなることを、同社は理解しているのだろう。

画像クレジット:Demand Curve

画像を使って説明する

その製品ならではの価値をサイト訪問者によりよく理解してもらうために画像が役立つ場合に限り、ATF領域に画像を配置することはよいアイデアだと言える。実際のところ、企業のランディングページで目にするイラスト画像やストック画像は無作為に選ばれたような意味のないものが多い。

イラスト画像を使うな、と言っているわけではない。使うなら、自社の製品の価値を示すような方法で使う必要がある。Customer.ioのサイトでは、プッシュ通知のタイミングを遅らせるワークフローを視覚的に説明する画像が効果的に使われている。

画像クレジット:Demand Curve

顧客からの推薦コメントを掲載して信用を高める

顧客からの推薦コメントは、信頼を獲得するうえで必要不可欠なものである。さらに、他の顧客からの評価を掲載することには「皆がその製品について知っている中で、自分だけがチャンスを逃している」とサイト訪問者に感じさせるという目的もある。Customer.ioは、すでに3400社の企業が同社の製品を使用している、とサイトに掲載することにより、信用を確立し、ユーザーの不安を払拭している。また、顧客の中でも著名な企業のロゴを掲載することにより、伝えたいポイントをさらに強調している。

画像クレジット:Demand Curve

その製品ならではの機能を伝える

機能に関する説明は、ランディングページの大部分を占める。機能は、ユーザーにとってその製品が価値のあるものかどうかを判断する材料になる。同時に、ユーザーが抱くであろう懸念や反論についても、機能説明の部分で先を見越して対応する必要がある。

機能を説明する文章を作成する際の定石は、その文章を読む人が直面している問題について強調することだ。顧客が自身の抱える悩みについて説明する際によく使うフレーズを繰り返し使うことができるだろう。

Customer.ioのサイトを閲覧するのは、ハイテクに精通しているマーケターだが、彼らが抱える喫緊の課題を、サイトのコピー文によってさらに誇大する必要はない。Customer.ioは、それよりも、同社の製品を使うことによってユーザーの仕事がどれほど楽になるのかという点をアピールすることに焦点を当てている。

画像クレジット:Demand Curve

1つのセクションに多くの情報が存在する場合は、目立つ画像を使って訪問者の視線を誘導することができる。Customer.ioのサイトでは、黄色い電球の画像を使って、タイトルから段落、画像、顧客からの推薦コメントへと順に読み進めやすいように構成されている。

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顧客からの推薦コメントを機能説明のセクションに組み込むことにより、機能説明の信用度を高めることができる。下記の画像で示されている通り、Customer.ioのサイトでは、実際のマーケターからのコメントを掲載して、タブウィジェットとして埋め込まれているそのセクションをさらに読み進めたいと訪問者に感じさせる仕組みになっている。掲載されているマーケターと同じ役職に就いている人であれば特に、他社の事例について読み、その決定に賛同する傾向が強い。

画像クレジット:Demand Curve

訪問者がウィジェットに興味を示さない場合は、タブや矢印などのナビゲーション方法をいくつか組み合わせて試してみることができる。

画像クレジット:Demand Curve

二次的な機能で見込み顧客に安心感を与える

サイト訪問者は、ランディングページをスクロールしながら半分ほどまで読み進めたところで疲れを感じる可能性がある。より楽に読み進めてもらうためには、各機能の重要な点を目立たせることができる。Customer.ioのサイトでは、高度なメッセージング・ワークフローを構成するそれぞれのパーツを目立たせて「本当にこれ全部できるの?」と、訪問者にうれしい驚きを提供する仕組みになっている。

画像クレジット:Demand Curve

顧客が自社で活用する方法を説明して、機能を際立たせる

機能について説明する文章には常に顧客にとってのメリットを盛り込む必要がある。顧客が即座に思いつくであろう反論に注意を向けることによっても、同じ目的を達成することができる。信頼に足る企業であることを顧客に感じさせ、顧客に論理的に訴求できるためだ。

Customer.ioのサイトでは自在にカスタマイズできることが強調されているが、そのうちユーザーは、論理的な思考のスイッチが入って「ちょっと待て。同じようなものを以前にもセットアップしようとしたけど、うまくいかなかったじゃないか」と考えるようになる。Customer.ioのサイトでは、技術的な仕様を掲載することにより、そのような考えに前もって対応している。

さらに「わずか数回のクリックで」という表現を強調し、使い方が簡単で、セットアップにわずかな時間しかかからないことをアピールしている。

画像クレジット:Demand Curve

セグメンテーション機能の画像は、Customer.ioの製品を使うことにより、顧客のエンゲージメントが高まることを示唆している。

画像クレジット:Demand Curve

ホームページのコピー文で反論に対応する

マーケターは、キャンペーンのために何千通ものメールを送信することが、どれだけ神経をすり減らす作業となるかを知っている。Customer.ioはこの悩みに注意を向け、テクニカルサポート用のチームとサービスがあることを強調して、その悩みへの答えを即座に提供している。

「自分が送信したメールが届かずに返ってきたり、迷惑メールフォルダに振り分けられたりすることは避けたい。リスクを取ってこのようなサービスを使うべきかどうか、わからない」と考えるユーザーもいるかもしれない。Customer.ioが配信率を最大化するためにユーザーのメールを分析することを確約しているのはそのためだ。

一部のユーザーは、当然のことながら、自社のデータを得体の知れないテック企業に渡して分析してもらうのは怖い、と感じるかもしれない。その点の信用度を高めるために、Customer.ioはデータの保護を保証している。

画像クレジット:Demand Curve

業界における信用を証明する

統計を使うことにより、信用があることをすぐに証明できる。例えば、ある企業が2021年だけで5億3500万件のウェブフックを送信したという事実を伝えれば、それはつまり、その企業が数多くの企業を顧客として抱えており、それらの顧客が同社の製品を使用していることを示すことになる。

扱うことができるデータの量について説明する際にも、文章より画像を活用した方が簡単だろう。

画像クレジット:Demand Curve

最終CTAと顧客からの推薦コメントで締めくくる

Customer.ioのランディングページでは、最後の数セクションで、プライバシー、セキュリティ、信頼について言及されており、それには理由がある。ユーザーの悩みを解決する機能をどれだけ用意したとしても、信頼を築くことなしにユーザーを勝ち取ることはできないことを、Customer.ioは知っている。だからこそ、同社は、どれだけの数の企業が同社に信頼を寄せているか、という点に言及してコピー文を締めくくっており、CTAのすぐ右側に、顧客企業のロゴを配置している。こうすることにより、サイト訪問者が同社に対して持つ信頼感をさらに高めることができる。

画像クレジット:Demand Curve

今回の分析を自社のホームページ作成に役立てるには

今回の分析を自社のホームページ作成に役立てるための主なポイントを以下にまとめてみた。

  • 製品の対象者は誰かを正確にユーザーに伝える。そうすることにより、対象者に該当するユーザーはより注意深くサイトを閲覧するようになり、対象者には該当せず、結局は購入に至らない訪問者をサイトから去らせることができる。
  • デモのリクエストをメインのCTAとしており、コンバージョン率が思わしくない場合は、無料トライアルをCTAとして追加してみる。
  • 画像のスタイルは重要ではない。重要なのは、製品の価値をユーザーに理解してもらうのに役立つ画像を使うことである。
  • 顧客の課題を解決する製品なのであれば、課題自体をそれ以上強調する必要はない。サイト訪問者が感じていることを見極めて、彼らの問題を解決する方法を提示する。
  • 特定の職業を対象とする製品である場合は、同じ職に就いている人たちからの推薦コメントを掲載する。その際には必ずその社名と役職名も掲載する。
  • サイト訪問者がタブウィジェットをあまり見ていないことに気づいたら、複数のナビゲーションオプションを試してみる。
  • 製品に対する最大の反論がセキュリティと信頼なのであれば、その反論に対応するために十分過ぎるほどのスペースを割いても問題ない。‍

画像クレジット:Klaus Vedfelt / Getty Images

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(文:Joey Noble、翻訳:Dragonfly)

英国の暗号資産ブームに影、マーケティングと利用に関する制限を検討

広告によって盛り上がりを見せている英国の暗号資産取引ブームは、大幅な速度制限に向かうようだ。同国の金融監視当局は、暗号資産をカバーするために規制当局の権限を拡大することを政府が現地時間1月18日に確認したのに続き、暗号資産のマーケティングに関する規則を強化し、利用対象に制限を設ける可能性もあると述べた。

近年、暗号資産の広告がロンドン中のビルボードに貼られ、取引ブームを煽っているが、広告基準監視当局から何度か叩かれている

広告規制局は2021年12月、「消費者の経験の浅さを無責任にも利用し、投資のリスクを説明しなかった」として7つの暗号資産広告を禁止し、暗号資産の広告に関する新しいガイダンスを作成することを望んでいると述べた。

しかし、金融監視当局の介入が、英国の暗号資産バブルを大幅に減衰させることになりそうだ。

金融行動監視機構(FCA)は、2021年に発表した「消費者投資戦略」に沿って、ハイリスク投資の「容易さとスピード」についての懸念に対応するため、今回の変更案を発表した

FCAが2022年夏までに明らかにするという新しい暗号資産規則の計画には、 暗号資産のマーケティングと利用に関する制限案が含まれている。

「FCAは、適格な暗号資産を『制限付き一般向け投資』に分類する計画で、消費者は制限付き、富裕層、洗練された投資家に分類される場合のみ、暗号資産の金融プロモーションに対応することができる」と規制当局は書いている。

「このようなプロモーションを行う企業は、明確で公正、かつ誤解を招かないという要件など、FCA規則を遵守しなければならない」と付け加えている。

規制当局は、3月23日を回答期限として、この提案に関するコンサルティングを行っている。

FCAの市場担当エグゼクティブディレクターであるSarah Pritchard(サラ・プリチャード)氏は「あまりにも多くの人々が、理解できない商品に投資させられています。それはリスクが大きすぎます。消費者が安心して投資するためには、明確で公正な情報と適切なリスク警告が必要であり、これは我々の消費者投資戦略の主要目的です」と述べた。

政府は1月18日、誤解を招く広告に対処するため、暗号資産のプロモーションを金融プロモーション法の範疇とするよう立法することを確認し、次のように書いている(あるいは、警告している)。「これは、適格な暗号資産のプロモーションが、流動資産、株式、保険商品などの他の金融プロモーションと同じ高い基準でFCA規則の対象となることを意味します」。

財務大臣のRishi Sunak(リシ・スナック)氏は声明の中で「暗号資産は、人々に取引や投資の新しい方法を提供し、刺激的な新しい機会を提供することができます。しかし、誤解を招く主張で消費者に製品が販売されないことが重要です」と付け加えた。

「消費者の保護を徹底すると同時に、暗号資産市場のイノベーションを支援しています」。

FCAが2021年夏に発表した暗号資産消費者調査によると、(英国人口約5200万人のうち)約230万人が暗号資産を所有しており、これは英国人の4.5%弱に相当する。2020年にFCAは、約190万人の英国人が暗号資産を保有していると発表しており、つまり前年比21%増となっている。

暗号資産を保有する英国人についての他の推定値は、ここ数カ月の暗号資産宣伝によってさらに大きなものとなっている(しかし、暗号資産取引宣伝はそれ自体がしばしば宣伝バブルの内側にある)。

英国では暗号資産取引に関するマーケティングが盛んで、人々の間の認知度は高まっているようだ。FCAは、成人の78%が暗号資産について聞いたことがあると報告しており、これは2019年の42%、2020年の73%から増えている。

しかし、FCAは、認知度の上昇にもかかわらず、暗号資産に対する理解度は低下していることも確認し「一部の暗号資産ユーザーは、自分が何を購入しているのかを十分に理解していない可能性がある」ことを示唆した。本当にそうなのだろうか。

FCAの調査では、暗号資産をギャンブルと考える暗号資産ユーザーは減少し(47%から38%に減少)、主流の投資の代替または補完と考えるユーザーが増え、暗号資産ユーザーの半数がより多く投資するつもりだと回答している。

つまり、無知な英国人が、輝かしい暗号資産のマーケティングに包まれたねずみ講のようなものにお金をつぎ込むのを阻止するために、英国政府と金融規制当局が、そろそろ規制強化に踏み切るときだと判断した理由は理解できなくはない。

他の国も同様の措置を取っている。

ちょうど今週、シンガポールの金融規制当局が暗号資産マーケティングに対する独自の締め付けを発表した(Nikkei Asiaより)。

さらに進んでいる国もある。中国インドでは暗号資産の禁止が計画されている。

自由奔放な取引お祭りはまだ終わっていないが、世界中の規制当局が暗号資産ランドのギャング・パラダイスに徐々に迫っている。

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画像クレジット:Cory Doctorow / Flickr under a CC BY-SA 2.0 license.

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

ソフトバンクがマーケティング最適化のためのAIインフラ企業Pixisへの資金注入主導、新社名で新年度をスタート

Pixisの創業者。左からシュバム・A・ミシュラ氏、ヴルシャリー・プラサード氏、ハリ・ヴァリヤート氏

Pyxis One(現Pixis)は、シリーズCの資金調達で1億ドル(約114億円)を調達し、同社がいうところの「完全なマーケティング最適化のための、世界で唯一のコンテキストコードレスAIインフラ」の開発を続けている。

SoftBank Vision Fund 2(ソフトバンク・ビジョン・ファンド2)がこのラウンドを主導し、新たな投資家であるGeneral Atlantic(ジェネラル・アトランティック)と、既存の投資家であるCelesta Capital(セレスタ・キャピタル)、Premji Invest(プレミジ・インベスト)、Chiratae Ventures(チラタエ・ベンチャーズ)が参加した。今回の資金調達は、Pixis(ピクシス)が1700万ドル(約19億4400万円)のシリーズBを発表してからわずか4カ月で行われ、これまでの総資金調達額は1億2400万ドル(約141億円)に達した。

カリフォルニアに拠点を置く同社は、3年前にShubham A. Mishra(シュバム・A・ミシュラ)氏、Vrushali Prasade(ヴルシャリー・プラサード)氏、Hari Valiyath(ハリ・ヴァリヤート)氏の3人によって設立された。ミシュラ氏はTechCrunchに対し、このチームが一緒に立ち上げた会社はこれで2つ目で、最初の会社はゲーム分野の人工知能だったと語っている。

会社が発展するにつれ、チームはほとんどの人が「Pyxis」を「y」ではなく「i」で綴っていることに気づき、クリーンで均整をとるために会社名を変更したと、彼は述べている。

Pixisを立ち上げる前、共同創業者たちはマーケティング責任者や収益責任者に、顧客のプライバシーを尊重するために企業が独自のシステムを導入しなければならない「Cookieなき」世界で、SaaS企業を迅速に拡大する方法について話をしたそうだ。

「この準備ができている人はあまりいません。私たちは、8秒以内に導入できるノーコードAIソリューションを構築することでそれを解決しています」。とミシュラ氏はいう。

実際、同社はマーケティングキャンペーンにAI最適化を加えるための自己進化型ニューラルネットワークのAIモデルを現在50個持っており、今後6カ月で200個にスケールアップする予定だ。Pixisは、ノーコードソリューションによって人々が部分的にデータサイエンティストになるというビジョンを信じている、とミシュラ氏は語った。

そして、それは「ノーコード」というだけのただの戦略ではなく、本当にノーコードであることを強調した。AIマーケティングモデルを徹底的にいじったり、データサイエンティストのチームを集めて何かを開発したり、30分のトレーニングを受けてボタンを押すだけで製品やプラグインを導入できるようにするため、このインフラは製品群のように構築されている。

シリーズCは、2018年からの600%の収益成長を受けたものだ。Pixisは1月中に100社以上の顧客を獲得し、すべて中堅から大企業の範囲に入るとミシュラ氏は述べた。PixisのAIインフラを利用する顧客は、毎月数時間にも及ぶ手作業の業務節約時間に加え、獲得コストが20%減少したと同氏は付け加えた。

今回の資金調達は北米、欧州、APACに拡大するAIプラットフォームとプラグインの拡張に役立てられるという。

「2022年は私たちにとって新たな夜明けです」とミシュラ氏はいう。「2021年は、BTCとDTCマーケティングへのソリューションを立ち上げていましたが、2022年の第1四半期の終わりには、B2Bとソフトウェア企業へのソリューションを提供する予定です」。

一方、SoftBank Investment Advisers(ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズ)のパートナーPriya Saiprasad(プリヤ・サイプラサド)氏は、Pixisの特徴として「Cookieのない世界でより良い意思決定を促すために、マーケティング機能に最先端のデータサイエンス能力を装備する」デマンドジェネレーションのための真のエンド・ツー・エンドのインフラであるとメールで述べている。

マーケティングは企業にとって大きな予算項目だが、メッセージングやビジュアルのためのツールがないために、適切なタイミングで適切なチャネルを通じて適切な顧客をターゲットにできないと、その支出の多くが無駄になってしまうため、彼女は同社の製品が「ゲームチェンジャー」であると考えている。

「Pixisのプロダクトマーケットフィットの検証は、同社が立ち上げからわずか3年で達成したその目覚しい成長率と、忠実で熱心なグローバル大企業の顧客基盤に支えられています」とサイプラサド氏は付け加えた。「2021年に企業がデジタルマーケティングに費やした費用は推定4550億ドル(約52兆円)という市場規模と、さまざまな業種に対応できるPixisのプラットフォームにより、Pixisがこの勢いを持続するための大きな走路があると考えています」。

General AtlanticのマネージングディレクターであるShantanu Rastogi(シャンタヌ・ラストーギ)氏も、データ共有に関する新たな制限の結果、マーケティングエコシステムがシフトする中、Pixisはこれに対応し、予測AIモデルを活用してマーケティングの効率化を実現し、顧客に新しい投資収益率を生み出していると指摘している。

ラストーギ氏は「Pixisは、これまで時代遅れの技術に頼っていたプラットフォームを『十分である』と受け入れてきた業界に、自動化と統合をもたらそうとしています。今回の投資で、グローバルに成長・拡大しようとする有能なチームを支援できることをうれしく思います」。と語っている。

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

コンバージョン率を上げるコピーを書くために避けるべきポイント10選

コピーライティングとは、単に商品を売るために適切な言葉を組み合わせればよいというものではない。売り手がメッセージを発信してユーザーとつながるための手段だ。いくつかの単語を改善するだけで、人々を効果的に説得し顧客獲得につながるコピーを書くことができる。

Demand Curveでは、何千社ものスタートアップが最初の顧客を掴んで成長率を上げることができるよう支援してきたが、その過程で、ランディングページ、広告、メールなどの場面で、コピーの説得力を低下させコンバージョンを妨げるよくある誤りがあることに気づいた。

本稿では、より良い結果を出すためにコピーライティングで避けるべきよくある誤りとその修正方法をまとめてみた。

受動態で書かない

できるかぎり、能動態で書くこと。能動態にすることで、文の主語が強調され、コピー文が短く、かつわかりやすくなる。

次の2つの文の違いを考えてみて欲しい。

  • 当社の製品で緊急の課題をすべて解決してください(能動態)
  • すべての緊急の課題は当社の製品で解決されます(受動態)

マーケティング用のコピーライティングで製品の利点を説明する際には、能動態がとりわけ重要だ。顧客を主役として(顧客の目線で)アクション文として書くこと。顧客が受け取るモノや体験を主語にするのではなく、顧客を主語にする形で文を組み立てることで、製品の利点を思い描きやすくなる。

いくつか例を挙げてみよう。

  • Netflix: Watch anywhere. Cancel anytime.(どこでも観て、いつでもキャンセル)。(悪い例:「Content can be watched anywhere. Your subscription can be canceled anytime.」)。
  • Goodreads:Meet your next favorite book.(次のお気に入りを見つけよう)。(悪い例:「Your next favorite book is waiting to be discovered.」)
  • Mint:Put an end to late fees.(延滞料をなくそう)。(悪い例:「Late fees will end.」)

さらに強い印象を与えるには、生き生きとしたわかりやすい動詞を使うとよい。

一般的な文言

作家で文芸評論家のF. L. Lucas(F.L.ルーカス)が「人に好印象を与えるためではなく人の役に立つために書け」と述べたことは有名だ。それでも多くのコピーライターたちが「ナンバーワンソフトウェア」とか「最高のプラットフォーム」といった一般的なフレーズを使っている。しかし、こうしたフレーズは、読み手に好印象を与えることはあっても、実際に有益な情報を提供することはない。

ルーカスのいうとおり、コピー文は読み手の役に立つものであるべきだ。それには、具体的に書くのが一番である。大げさな主張などの一般的文言を使わずに、読み手のニーズにストレートに応えることだ。

下記のような方法で、コピーに具体性を加えることができる。

ターゲットオーディエンスが考えそうな反論に応える

こちらからのオファーに見込み客が抵抗を示すことを予想し、対応する。例えば、Audible(オーディブル)は「トライアル期間終了前にメールでご案内を差し上げます」と約束することで、いきなりサブスクリプション料を請求されるのではと懸念している顧客に安心感を与えている。

2人称視点で書く

製品を見込み客に直接関連付ける。例えば、ウェディング企画会社Zola(ゾラ)のサービス紹介ページには「私たちはいつもお2人のようなカップルとお話しています。私たちの仕事の中心にあるのはお2人です」と書かれている。このように書くと、3人称でより広く新郎新婦に言及するというより、むしろ個人的に会話しているように感じられる。

例を挙げる

貴社製品の実際の使用例、実際の顧客が貴社製品の利点を享受している例を考える。例を挙げることで、見込み客は貴社製品が自分たちのシナリオに合っているかどうかを判断できる。箇条書きの最後の2つの例は、この記事のヒントを適用する方法についての詳細な基準点になっている点に注目して欲しい。

明確な目的または結果がない

複雑な製品は販売サイクルが長くなることがよくあるが、これは見込み客が理解する必要のある情報が大量にあるからだ。

効果的なコピーライティングは人々を購買行動へと促す。コピーの目的は結局、読み手を説得することだ。結果が出ないならそれはコピーではない。文学だ。

この罠にはまらないようにするには、目的とする結果から逆算して考えてみるとよい。あなたのコピーを読んだ人にどうして欲しいのか。1つ1つの文によって見込み客がアクション(購買)に近づくようにする。

人事ソフトウェア企業Gusto(ガスト)が良い例を提供してくれている。以下に同社のコピーを示す。

「当社ではお客様の個別のニーズに合わせたプランをご用意しています。まずは簡単な質問にお答えください」。このコピーの後に2つのCTAボタンが表示される。1つはアンケートを開始するボタン、もう1つ(「Learn More」ボタン)は、ユーザーを詳細な製品ページに誘導するボタンだ。

「お客様のビジネスに最適なプランを見つけてください」。このテキストの下に「担当者と話す」ボタンが表示される。

「ステップ1:お客様のビジネスとご予算に合ったプランを選択してください」。ここからリンク先の価格ページに移動し、製品比較表が表示される。

見込み客のモチベーションに沿っていない

我々は自分たちを理性的な存在だと考えがちだが、実際にはそうではない。このことは、とりわけ、消費習慣において明らかとなる。我々は感情に動かされて購入し、購入したことを論理で正当化することがよくある。

これをコピーライティングの視点から考えると、見込み客の基本的な願望と感情的な動機に沿ってコピーを作る必要がある。

例として、Wix(ウィックス)とSquarespace(スクエアスペース)のホームページに使用されているヘッドラインを見てみよう。

画像クレジット:Demand Curve

ウィックスのヘッドラインは「Create a website you’re proud of(自慢のウェブサイトを作成しよう)」となっており、単なるウェブサイトではなく見栄えの良いウェブサイトを作りたいというユーザーの願望を引き出している。

画像クレジット:Demand Curve

それに対して、スクエアスペースのヘッドライン「Everything to sell anything(売るための道具はすべて揃っています)」はユーザーの目的に感情的に寄り添っているという感じはぐっと抑えられており、あらゆる製品やサービスを売るための道具一式を提供していることを主張しようとしている(見込み客を説得するために論理的推論を使用した例)。

しかし、実際には、複数の会社を経営しているとか、広範な製品を販売しているといった状況にない限り、大半の見込み客はこうしたツールをすべて必要とすることはない。そうした見込み客で優先度がより高いのは、審美的に楽しいサイトを作成することだ。ウィックスのサイトのヘッドラインはこの目的に適っている。

複雑な言い回しと業界用語

読みやすさとは、書かれたテキストのわかりやすさのことだ。記事の読みやすさが低ければ、分かりづらい。逆もまた然りだ。

なぜ読みやすさが重要なのか。平均的な米国人にとって、7年生(12~13歳)の読解レベルで書かれたコンテンツが最も分かりやすいという研究結果が出ている。文のレベルがそれより高くなると、分かりづらくなる。

読み手を混乱させたり、自分は頭が悪いと読み手に思わせたりするようなコピーはダメだ。結局、何かを読むために時間を費やしたいと思っている者などいないのだから。

分析ツールHotjar(ホットジャー)は製品ページで、同社のソフトウェアの機能について次のようなフレーズを使って説明している。

  • ユーザーが貴社サイトをどのように体験しているのか把握する。
  • ユーザーの振る舞いを視覚化する。
  • ユーザーがどこでクリック、移動、スクロールするかを確認する。

こうした表現はシンプルで分かりやすい。「ヒートマッピングおよびコンバージョンファネルテクノロジー」とか「ウェブサイト視覚化ソフトウェア」といったフレーズよりもはるかに効果的だ。そうした専門用語を使うと分析ツールの知識がない読み手は圧倒されてしまう。

つまり、12歳の子どもに話しかけるときに使うのと同じ語彙で書くことだ。Hemingway App(ヘミングウェイ・アプリ)やGrammarly(グラマリー)などのツールを使えば、コピーの読みやすさを判定できる。

長い文

これは読みやすさの項で最初に指摘した点と関連する。長い文に比べ短い文は分かりやすい。さほど労力をかけなくても読み切ることができる。

解決策は、1文で1つのアイデアを表現することだ。冗長な言い回しは削る。

ウェブサイトで見つけた短くてパンチの効いたコピーをいくつか紹介する。

  • Morning Brew(モーニング・ブリュー):最新の情報とエンターテインメントを無料で。
  • HubSpot(ハブスポット):卓越したカスタマーエクスペリエンスを楽しく作成しよう。
  • Tuft and Needle(タフト・アンド・ニードル):違いを見て感じてよく考えてください。

オーディエンスの語彙で語っていない

良いコピーは情報を伝えるが、卓越したコピーは読み手の心に深い印象を残す。読み手とより深く共鳴するコピーにするには、読み手の語彙を使うことだ。

その良い例として犬愛好家向けサブスクリプションサービスBarkBox(バークボックス)のコピーがある。バークボックスのサイトでは「zoomies(犬が興奮して走り回る様子を示すスラング)」や「doggos(犬を示すスラング)」などの語彙を使って熱心な犬愛好家であるターゲットオーディエンスに語りかけている。

画像クレジット:Demand Curve

同様に、スポーツ用具販売のBrooks Running(ブルックス・ランニング)は製品コピーにランニング関連用語を組み込んでいる。「オーバープロネーション(ランニングなどで、着地の際に足首が内側に傾くこと)」や「ニュートラルランニングゲイト」、および同社のターゲットオーディエンスであるランニングコミュニティに固有の用語で表現される状態に最適なシューズであることを強調している。

想定する顧客の語彙は、次の方法で知ることができる。

  • オーディエンスが参加しているFacebook(フェイスブック)グループ、subreddits(サブレディット)、その他のコミュニティをチェックしてみる。
  • 営業電話、顧客レビュー、サービスチケットを確認する。
  • 見込み客にインタビューする。

よく使われる独特の言い回しやフレーズをメモしておき、コピーに取り入れよう。

弱いヘッドライン

ヘッドラインが強いと人はそのコンテンツを読み続ける。強いヘッドラインと弱いヘッドラインを分ける2つの決定的な特徴がある。

  • 読み手の好奇心を刺激する。
  • 何らかの価値を約束する。

これはランディングページのヘッドラインだけでなく、メールの件名、ブログの投稿の見出し等にも当てはまる。

より目を引くヘッドラインを書くには、以下のいずれかの方法を試してみるとよい。

  • 恐怖感や切迫感を生み出す。例:「あなたの信用度を損なう10の事実をご存知ですか」。
  • 複雑で難しそうなトピックを単純化する。例:「ビットコイン最小必須ガイド」
  • サイトの価値を明確にする。例:「時間と空間とお金を節約するための最高のトラベルハック」
  • よくある反論を認識する。例:「あがり症でもプロのように話す方法」

客観的な評価を組み込まない

読み手はセールストークのにおいをすぐに嗅ぎ分け、嫌う。あからさまなセールストークは一方的で押し付けがましく感じられることがよくあるからだ。誇張したり大げさに言ったりしているのではと懐疑的になることもある。

客観的な評価(他の人が貴社製品を評価している証拠)を追加することで、人は、貴社のコピーを押し付けがましいとかいかさまだとか思わなくなる。つまり、他の人に貴社のセールスを肩代わりしてもらうわけだ。

客観的な評価をコピーに組み込む方法は他にもある。

  • 顧客レビューの気の利いた表現を見出しとして使う
  • 自社製品の顧客数に言及する
  • 結果や利点を数量化する
  • インフルエンサーや大手ブランドなど、自社製品を使用している有名な顧客の名前を挙げる
  • 自社または自社製品が獲得した賞や上位ランキングに言及する

いくつか例を挙げてみよう。

  • Wise(ワイズ):「個人や企業がWiseを使って毎月70億ドル以上を送金し、毎日300万ドルの隠れた手数料を節約しています」。
  • Mailchimp(メールチンプ):「MailchimpはG2によって2021年の世界最高ソフトウェア企業の1つに選ばれました」。
  • Headspace(ヘッドスペース):「数百万人が使っているHeadspaceであなたの生活にマインドフルネスを。平均評価星9、全プラットフォームで7000万ダウンロード」。

特長を強調している

一部のコピーライターは、製品の派手な特長を重視する傾向がある。製品に画期的なテクノロジーが含まれている場合は特にそうだ。こうした特長はもちろん重要だが、それを取り上げても見込み客の最も重要な質問、つまり「私にはどんな利点があるの」という質問に答えていることにはならない。

そのため、コピーでは、製品の特長を強調するのではなく、それによって顧客にもたらされる利点を重視するようにしたい。

例えば、Venmo(ヴェンモ)のウェブサイトでは、同社アプリ独自のさまざまな利点が紹介されている。

  • 「友人と一緒に行った長距離ドライブ、ピクニック、あるいはテイクアウトの料理まで、あらゆる活動の代金を精算します」機能:連絡先に登録された友人とのモバイル送金
  • 「いつでも正しい相手に支払います。同姓同名の人は大勢います。正しい支払い相手を迅速に見つけます。推測する必要はありません」機能:個人QRコード。
  • 「アニメーションステッカー、Bitmoji、絵文字で支払いメモをパーソナライズできます」機能:ソーシャルフィード

機能を利点という切り口で捉えるには、顧客が直面する可能性のある実生活でのシチュエーションを関連付けてみるとよい。機能がもたらす価値ではなく、その機能が威力を発揮する場面が重要なのだ。

まとめ

コピーライティングで犯しがちな誤りを明確にすることはコンバージョン率を向上させるための最初のステップにすぎない。次のステップは実際にコピーを変えることだ。

以下に、本稿で推奨した修正ポイントをまとめておく。

  • 能動態で書く。
  • 例を挙げて具体的に、2人称視点で。
  • 読み手を購買行動に導く。
  • 見込み客の基本的なモチベーションに応える。
  • 複雑な言い回しではなく簡単な言い回しを選択する。
  • 文は短くする。
  • ターゲットオーディエンスの語彙を使って書く。
  • 好奇心を刺激し価値を約束するヘッドラインにする。
  • 客観的な評価を活用する。
  • 製品の機能ではなく利点を重視する。

ランディングページであれ、広告表現であれ、メールであれ、上記の修正を適用することで、コンバージョン率を上げることができる。

編集部注:Joyce Chou(ジョイス・チョウ)は、スタートアップ企業のためのグロース・マーケティング・インサイトを執筆す。Demand Curveのシニアコンテンツリードを務める。

画像クレジット:enviromantic / Getty Images

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(文:Joyce Chou、翻訳:Dragonfly)

ZOZO研究所のマーケティング施策論文がAI分野の国際会議NeurIPS 2021で採択、 ZOZOTOWN実データとソフト実装公開

ZOZO研究所のマーケティング施策論文がAI分野の国際会議「NeurIPS 2021」で採択、 ZOZOTOWN実データとソフト実装公開

ZOZOグループの新規事業開発などを行うZOZO NEXTは12月2日、同社の研究機関ZOZO研究所の所員らが執筆したマーケティング施策に関する論文が、機械学習分野の国際会議「NeurIPS 2021」(12月6日から14日にかけてオンライン開催)の投稿論文を扱う一部門「Datasets and Benchmarks Track」で採択されたことを発表した。タイトルは「再現可能かつ実データに基づいたオフ方策評価に向けた大規模データセットとソフトウェアの構築」。NeurIPSは、ICML、ICLRなどと並ぶ、機械学習の分野で権威あるトップカンファレンスの1つ。

この論文は、ZOZO研究所研究員の松谷恵氏、コーネル大学に在学する齋藤優太氏、粟飯原俊介氏、イェール大学助教授の成田悠輔氏の共著。研究所では、深層学習などのAI技術を研究しているが、その一環として、ZOZOTOWNにおけるマーケティング施策の意志決定に活用するアルゴリズムの評価と検証を効果的・効率的に行うための研究に着手し、その手法の提案に至った。

これまでは、新しく開発した意志決定アルゴリズムを評価するには、実際のサービス環境に実装し、ユーザーの反応を見ることが必要だった。しかしそれには、膨大な実装コストが必要なことに加えて、動作実績のある既存アルゴリズムとの入れ替えなどによりユーザー体験が悪化するという課題がある。

これに対して、実サービス環境に実装しない形でアルゴリズムの性能を予測できる手法として、蓄積されたデータセットを利用する「オフ方策評価」が研究されてきたが、実用性の高いオープンなデータセットが存在していないために、研究は進んでいなかった。

そこで同研究所は、ZOZOTOWNで実際の推薦アルゴリズムで取得された2600万件の推薦データからなる大規模実データ「Open Bandit Dataset」と、その実装基盤となる独自開発のソフトウェア「Open Bandit Pipeline」を、論文発表にともないオープンソースとして公開することにした。これらを使うことで、他の研究機関でもオフ方策評価や意志決定アルゴリズムの性能評価が行えるようになる。

論文で提案された手法は、ZOZOTOWNのマーケティング施策にも実際に導入され、クリック率や購買率の向上に貢献しているとのことだ。

転職した過去の顧客に接触できるようになる、予測マーケティングと営業インテリジェンスツールのUserGemsが約23億円調達

商談に関心を示さない相手に割く時間を削減しつつ、商談が成立する可能性がある見込み顧客と接触する方法を見つけることは、営業とマーケティングの世界においていわば究極のゴールである。この度、UserGems(ユーザージェムズ)という名のスタートアップが、AIとデータマッピングを組み合わせて、B2Bの営業・マーケティングで手応えが得られそうな顧客候補を予測、特定するプラットフォームを開発、2000万ドル(約23億円)を調達したことを発表した。このプラットフォームにより、以前に取引があったが現在は別の仕事に転職している顧客と接触することが容易になる。この種の課題に取り組むセールステックに好機が訪れているようだ。

今回のシリーズAラウンドは、Craft Ventures(クラフト・ベンチャーズ)がリードし、Battery Ventures(バッテリー・ベンチャーズ)とTiger Global(タイガー・グローバル)が新たに参加した。また、以前から同社に投資しているUncork Capital(アンコーク・キャピタル)や、個人エンジェル投資家も参加しており、同ラウンドの調達額は合計2240万ドル(約25億5000万円)となった。

UserGemsは現在、Procore(プロコア)、Medallia(メダリア)、UserTesting(ユーザーテスティング)、Sisense(サイセンス)、BrightTALK(ブライトトーク)など、90社ほどの中堅企業を顧客に持つ。今回調達した資金は、製品開発と人材に投資する予定だ。

サンフランシスコに本社を置くUserGemsには、アイデアやビジネスが予期せぬ場から生まれて創業に至ったという興味深い背景がある。

UserGemsのCEO兼共同創業者であるオーストリア人のChristian Kletzl(クリスチャン・クレッツル)氏は、ノースウェスタン大学でMBAを取得してシカゴに住んでいた時、当時欧州のPwC(ピーダブリューシー)で働いていた双子の弟Stephen(スティーブン)に、米国に移住して一緒にスタートアップを立ち上げようという話を持ちかけた。

彼らは、書籍、電化製品などの中古品をより効率的に販売するeBay(イーベイ)やCraiglists(クレイグリスト)と同じ業界に参入すべく、ShelfFlip(シェルフフリップ)というeコマースソリューションを開発した。当初、彼らはこのアイデアでY Combinator(Yコンビネーター、YC)に応募し、合格したのだが、ShelfFlipのコンセプトはそれ以降、跳躍する様子はなかった。

クリスチャンは次のように語る。「私たちはShelfFlipでYCに参加したが、YC参加中にそのアイデアを捨てた。YC参加中に方向転換をした企業が数多くあることを知って力を得て、もう一度、新しいアイデアを一から考えた。数多くのYC同期企業やその他の企業と話をして、SmartHires(スマートハイヤーズ)のアイデアを生み出した」。SmartHiresは、同じ投資ポートフォリオ内のスタートアップの情報を参照できるネットワークだ。

TechCrunchは以前にこちらの記事で、2015年冬期のYCに参加した彼らのSmartHiresについて取り上げている。

クリスチャンとスティーブンのクレッツル兄弟が開発したSmartHiresには、顧客(特に、クリスチャンが「SmartHiresのメインの柱」の1つと呼ぶ顧客)が、ある企業から別の企業へと転職していくのをトラッキングできるソフトウェアが含まれている。スタートアップでは社員の入れ替わりが激しい。そのため、クレッツル兄弟がこのアイデアをYC同期に話したところ、SmartHiresに対してというより、そのアイデアに対して熱心な反応が返ってきた。

「私たちが実際に立ち上げた会社よりも、そのアイデアに関心を持った人の方が多かった。そこからUserGemsが生まれた。つまり、YC参加中に私たちは2回も方向転換をしたことになる」とクリスチャンは回想する。

UserGemsは「営業とマーケティングの動向」と「労働力の最新の動き方」という2つの基本的なアイデアに基づいて開発されている。

労働力に関しては、終身雇用の時代のみならず、同じ企業に数年務める時代もすでに終わりを迎えて久しく、今は「大退職時代」に入っている、とクリスチャンは指摘する。

UserGemsは、Google検索からニュース記事まで多岐にわたる公開された情報源から情報を収集、処理しているが、同社がトラッキングのために利用するデータベースやウェブサイトによると、最低でも20%の人が毎年転職するという。つまり、ある人が現在就いている職に翌年もとどまっているかどうかを定期的に予測するのは難しいということだ。

営業・マーケティングについては、デジタル時代の最中でデータドリブン化が飛躍的に進んだ。人々に関する情報をかつてなく大量に入手できるようになり、大人数に対して一斉にマーケティング目的の接触を図る作業を管理するソフトウェアや、それを実行するチャンネル、その成果を測定する分析ソリューションなども、かつてなく増えている。それでも、企業についてすでに知っている、あるいはその企業が売るものにすでに関心を持っている人にアプローチした方が、営業・マーケティングが成功する「命中率」は、各段にアップする。

UserGemsは基本的に、これら2つの状況を合わせたソリューションだ。営業・マーケティングツールとして、企業がすでに使用しているCRMと統合し、その企業と以前取引があった顧客をトラッキングすることにより、その顧客が別の職場に移っても取引が継続できるようにして「マーケティング対象の最有力候補」を作る。「これこそ、営業プロセスで使える宝の山だ」とクリスチャンは語る。

UserGemsが行っていることは、ある意味では新しいことではない、とクリスチャンは指摘する。優秀な営業担当者は元来、有望な営業先の記録を常に保持して定期的にチェックしている。その作業を基本的に誰でも「大規模に」行えるようにしたのがUserGemsだ。

これは、UserGemsが構築したプラットフォームの第1段階にすぎない。営業先の情報が集まると、ユーザーが誰と接触しているかを機械学習アルゴリズムが学習しはじめ、類似商品の利用状況や他のシグナルに基づいて、次にアプローチすべき営業先がレコメンドされるようになる。そのようにして、ユーザーは購買へとつながる可能性がより高い営業先を見きわめることができる。

UserGemsは、一方では、ZoomInfo(ズームインフォ)、LinkedIn(リンクトイン)など、特定の企業にいる的確な見込み顧客を探せるプラットフォームと競合している。また、もう一方では、一般的に「予測的営業」と呼ばれるセールステック分野で、急激に成長中のスタートアップであるPeople.ai(ピープルドットエーアイ、新型コロナウイルス感染症の影響で多少成長に陰りが見えたものの、持ち直して現在の評価額は10億ドル(約1140億円)を超えている)、LeadIQ(リードアイキュー)、6sense(シックスセンス、現在の評価額は20億ドル[約2280億円]以上)などと同業である。しかし、この分野は、頻繁に転職が繰り返される現在の傾向がこれからも続き、そのことが営業面での課題をさらに複雑にすることを考えると、その課題を解決するためのよりスマートなアプローチが今後も注目を集める分野だと言える。それこそ、エンタープライズ向けスタートアップの大型追加投資ラウンドにいくつも参加してきたTiger Globalのような投資会社がUserGemsに早期から投資している理由の1つだ。

Craft Venturesのパートナー兼COOであるBrian Murray(ブライアン・マレイ)氏は、声明の中で次のように語っている。「B2B営業・マーケティング担当者は現在、営業先のことを深く理解する点で困難に直面している。彼らの大半が、同じ方法で見込み案件を創出し、一般的な内容の営業用メールやそれに続くメールを何百通も送っている。多くの営業チームが目標を達成できず、顧客獲得コストが跳ね上がっていくのはそのためだ。UserGemsは、過去のユーザーが将来の商機であり、急成長中のチームにとって紛れもない価値を持つ財産となって、パイプラインを拡大し、勝率を高め、顧客離れを減らすということを理解している」。

画像クレジット:MicroStockHub / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

AIを活用しブランド・小売業者向けCRMを自動化するOmetriaが約45.5億円調達

ヤプリがノーコードの顧客管理システム「Yappli CRM」を提供開始、ポイント・電子マネーの発行やマーケ施策をワンストップで

2019年にシリーズBで2100万ドル(約23億9000万円)を調達したOmetriaは、ブランドや小売業者がマーケティングメッセージをパーソナライズできる「AIを活用した」カスタマーマーケティングプラットフォームを提供していた。

今回同社は、InfraVia GrowthがリードするシリーズCのラウンドで4000万ドル(約45億5000万円)を調達した。これには、従来からの投資家であるOctopus VenturesやSonae IM、Summit Action、Adjuvo、Columbia Lake Partners、さらに会長のLance Batchelor(ランス・バチェラー)氏ら初期の投資家も参加した。同社の資金調達額は、これで7500万ドル(約85億4000万円)になる。

同社によると、特に現在、消費者データの共有のされ方や共有先について、消費者自身がコントロールを握るようになってるため、この資金で同社のプロダクトとエンジニアリングのチームのサイズを今の3倍にするという。

新しいスタッフも雇用した。新しいチーフテクノロジーオフィサー(CTO)はSizmekのCTOだったMarkus Plattner(マーカス・プラットナー)氏、最高収益責任者は元App Annieの専務取締役Paul Barnes(ポール・バーンズ)氏、マーケティングのトップCMOは元Simon DataでTinycluesのMichelle Schroeder(ミシェル・シュローダー)氏だ。

OmetriaのCEOで創業者のIvan Mazour(イワン・マズア)氏によると「リテールのマーケターたちはみんな異口同音に個人化の重要性を主張してきましたが、消費者の1人としてインボックスを見るかぎり、マーケティングテクノロジーのベンダーはどこもそれを実現していません。その顧客体験のギャップの原因は、彼らのテクノロジースタックにある。Ometriaは、そのギャップを埋めるために創業されました」という。

InfraVia CapitalのパートナーであるGuillaume Santamaria(ギヨーム・サンタマリア)氏は「コマースの成功は、優れた顧客体験を作り出してブランドを差別化する能力にかかっています。Ometriaは、それを達成するためのソリューションを提供しています」という。

Ometriaの主な競合相手は、メールサービスのEmarsysやSailthru、Selligent、Bronto、Dotmailerなど、消費者行動マーケティングツールのCloudIQやSaleCycle、Yieldify、そしてカスタマーインサイトのMore2やAgileOneなどとなる。

同社の「共同マーケター」プラットフォームは、データサイエンスを利用して個人化されたマーケティング体験を作り最適化する。その主な顧客企業は、Steve Madden、Aden + Anais、Pepe Jeans、MADE.com、Notonthehighstreet.com、Hotel Chocolat、Feeluniqueなどだ。

さらにマズア氏は「現在、リテールのマーケターたちは、顧客の期待に沿えないという問題を抱えています。100万の人間がいて、30種類のタッチポイントがあると考えると、その多様性が膨大な数であることがわかるでしょう。それはSMSやメールだけではありません。このニーズに応える方法は、人間とマシン / コンピューターインテリジェンスのハイブリッドだけです」と付け加えた。

画像クレジット:Ometria

原文

(文:Mike Butcher、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【コラム】スタートアップが口にするマーケティング策としての「インパクト」に投資家が惑わされないようにするための3つのサイン

2021年の初めに出されたEUの報告書によれば、42%の企業が自社の持続可能性のレベルを誇張していることがわかった。このような「グリーンウォッシュ」があまりにも横行するようになったため、ある団体が企業の真の環境負荷を計算し、誤解を招くようなマーケティングを避けるためのプラットフォームを立ち上げたほどだ。


現在、世界的なインパクト投資市場の規模は7150億ドル(約81兆5100億円)と言われており、成長を続けている。しかし、良いことをしているビジネスに資金を投入しようと躍起になっているベンチャーキャピタル、エンジェル、セレブリティたちは、十分なデューデリジェンスを行っていない。

創業者の中には、トレンドに乗って投資家の注目を集めるために、インパクトと自分を結びつける者もいる。自分のことを「インパクトプレナー」(impactpreneur)と呼ぶ者がいるのはそれが理由だ。

インパクトを与えることと、マーケティングのためにストーリーを押し出すこととは紙一重の差であるため、スタートアップの真正性を見誤ると投資家は資金と評判を失うことになる。多数のスタートアップ企業と仕事をする中で、私はスタートアップ企業が本当に変革を起こそうとしているのではなく、単にインパクトを利用して世間の注目を集めようとしているだけのことを示す3つの兆候を見出した。

インパクト指標を記録・追跡していない

もし企業が、自分たちが重視していると主張しているインパクトを測定していなければ、それは赤信号だ。本当にインパクトを与えようとしているスタートアップ企業なら、自分たちの目標は何か、どうやってそこに到達するのか、そしてその過程でどのような指標をモニターするのかを明確に定義している。

私の立ち上げたFounder Institute(ファウンダー・インスティテュート)では、スタートアップ企業がインパクトのステップを段階的に追跡するのに役立ついくつかの「インパクトKPI」を定義している。

例えば成功した女性創業者の数を増やすことを目的とした女性主導のアクセラレータープログラムなら、月ごと、年ごとの女性参加者数、事業を立ち上げた参加者数、それらの事業がどれだけの資金を得たかなどの評価指標を設けることができる。一夜にしてインパクトを生み出すことはできないものの、道筋を細分化することで、企業はインパクトへの道筋を切り拓き、改善していくことにコミットしていることを示せる。

また、そうしたインパクト指標を追跡することで、企業は公表しているインパクトに対して十分な説明責任を果たすことができる。実際の指標が悪くても公表を行う企業は、何が悪かったのかを深く追求し、状況を改善するための計画を立てていく姿勢を持つことが多い。

そのすばらしい例の1つが、2020年チームの多様性に関する目標を達成できなかったことを認める報告書を発表した、Duke Energy,(デューク・エナジー)だ。この指標を改善するために、同社は新たにチーフ・ダイバーシティ&インクルージョン・オフィサー(多様性並びに包含性担当責任者)を採用し、サービスを提供するコミュニティ内の平等性を推進するために400万ドル(約4億6000万円)を投じた。

私たち投資家はまた、スタートアップ企業が主張していることを実践しているのかどうかを見極めるために、そうした指標が企業全体に浸透しているかどうかを確認しなければならない。例えばより多くの人が教育を受けられるようにしたいと主張している企業なら、創業者は社内の研修プログラム、提供コース、開発計画、展開などに関する指標を提供することができるはずだ。

もし企業がこうした情報を持っていないとしたら、それはその会社のインパクトが外面的な目標のみを対象としていて、社内のオペレーションに組み込まれていないことの表れかもしれない。

CMOがインパクト戦略の責任者である

インパクトの責任は、最終的にはCEOの肩にかかっているはずだ。これは当たり前のように聞こえるかもしれないが、もしインパクトに関する会話や報告をする中心人物がマーケティング最高責任者(CMO)であるとしたら、それは極めて問題だ。

インパクトがマーケティングの立場だけから考えられていた場合、思いつきのインパクトやお手軽なインパクトが生み出されてしまう可能性は高い。インパクト戦略の直接的な成果ではなく短期的な成果を振り返って成功に満足しがちだからだ。例えばあるスタートアップ企業は、2020年にカーボン排出量を10%削減したと主張しているが、実際にはパンデミックの際に業務を停止したことによる減少だった。

同様に、スタートアップのインパクト目標があまりにも良すぎるように見える場合、それはたいてい見掛け倒しなのだ。マーケティング部門は世間に打って出ようとする際に大きく語りがちだ(Theranos[セラノス]のことを思い出そう)。しかし、インパクトを与えるためには、企業は月を目指す前に地に足をつけて行動しなければならない。

例えばExxonMobil(エクソンモービル)は、実験的に開発した藻類バイオ燃料を、輸送時の二酸化炭素排出量を削減する手段として宣伝した。だが消費者は、同社が二酸化炭素排出量を実質ゼロにできていないことを指摘した上で「よりセクシーな」インパクトのある代替品を求めた。

進捗ではなく予想である

創業者が資金調達をする際に、最も破壊的な側面を強調するのは当然のことだ。いわく、貧困をなくし、格差をなくし、気候変動の影響を減らすことができるなどなど。このような約束は投資家を驚かすかもしれないが、実現手段を担保したものでなければならない。

投資家なら誰でも、スタートアップのピッチデッキに書かれた財務予測のなかに盛り込まれた楽観的な気分を見て取ることができる。重要なのは数字ではなく、その背後にあるプロセスだ。インパクトの場合もまったく同じだ。

もしスタートアップを描き出すものが、インパクト目標の未来の数字だけならば、投資家は警戒すべきだ。数字よりも実現手段の方がはるかに多くを語ってくれる。

例えば、GSKは2030年までにネット・ゼロ・カーボンになるという野心的な計画を発表しているが、再生可能な電力、電気自動車、グリーンケミストリーへの切り替えといった主要な活動の内訳をみることで、同社が実際にそのインパクトに向かって動いているかどうかを確認できる。たとえトータル・ネット・ゼロに到達していなくても、意思は明確であり、やがて前進はしていくだろう──たとえペースは遅くとも。

Theranosの事例から学んだことがあるとすれば、企業が資金調達の際に、インパクトの魅力の嗅ぎ分けに敏感になったということだ。投資家が、真のインパクトとマーケティング上の策略とを見分けることができれば、自分自身を守ることができるだけでなく、その投資資金を実際に変化起こせる場所に投入することができる。

編集部注:著者のJonathan Greechan(ジョナサン・グリーチャン)は、世界最大のプレシードアクセラレーターであるFounder InstituteのCEOで共同創業者。

画像クレジット: alexkar08 / Getty Images

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(文:Jonathan Greechan、翻訳:sako)