ノイズを排除し営業担当者が最も有望な見込み客に注力できるようにする支援ツールをScratchpadが発表

Scratchpad(スクラッチパッド)は、人気の高いCRM(顧客関係管理)アプリケーションであるSalesforce(セールスフォース)の上位レイヤーとして機能することによって、Salesforceに情報を簡単に入力できる方法を提供する製品として誕生した。しかし、同社の創業者たちは、Scratchpadが単なる営業支援ツールに留まるべきではないことを認識していた。同社は米国時間3月23日、Scratchpadを営業担当者の中心的なワークスペースにするために、インテリジェンスを活用して取引を成立させる可能性の高い見込み客を探し出すことができる新機能を発表した。

Scratchpadの共同設立者でCEOのPouyan Salehi(プーヤン・サレイ)氏によれば、同社は営業担当者とその働き方を観察することに、多くの時間を費やしてきたという。それによって、Salesforceに案件データを入力する方法を簡略化するというアイデアが生まれたわけだが、彼らの中には、営業担当者が日々経験している通知に関するノイズを軽減する方法を見出したいという思いが高まってきた。

画像クレジット:Scratchpad

「営業担当者の人々は、通知やアラートに追いかけられて、仕事の流れが乱れたり、途切れたりします。それが、なかなか仕事が進まない原因となっているのです」と、サレイ氏は説明する。そこで同社は、このようなノイズを排除し、営業担当者にとって最も重要な情報を表示する方法を検討し始めたという。通常、それは最も早く成約できる案件であり、そのためには、どこに最も力を入れるのが合理的なのか、次に何をすべきなのかを、はっきりさせるということだ。

「私たちは、営業のための最優先受信箱というコンセプトを思いつきました。つまり、重要な通知やアラートをすべて収納するコンテナです。そして、大きな差別化要因は、ユーザーにそれらの通知を与えるだけでなく、それに対して非常に迅速かつ簡単にアクションを起こす方法を提供することです」と、サレイ氏は語る。

営業担当者が見る通知は、カスタマイズが可能であり「Scratchpad通知ビルダー」と呼ばれるシンプルなワークフローエンジンで、通知を作成できる。サレイ氏はこれを、営業チームが自分たちの働き方に適ったワークフローを構築するための最初のステップと位置づけている。

同社は1月に3300万ドル(約40億7000万円)のシリーズB資金調達を発表している。今回の発表は、少なくともその資金の一部を投入し、同社が製品の機能を拡張して、よりプラットフォーム的な感覚を持たせようとしていることの表れだ。

画像クレジット:Westend61 / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

LINE起点CRMを構築するマーケティングSaaS「MicoCloud」のMicoworksが12億円調達、新規プロダクト開発注力

LINE起点CRMを構築するマーケティングSaaS「MicoCloud」のMicoworksが12億円のシリーズA調達、新規プロダクト開発注力

顧客体験のパーソナライズによって興味や関心に応じた個別のメッセージを届けるコミュニケーションプラットフォーム「MicoCloud」(ミコクラウド)を開発・提供するMicoworks(ミコワークス)は2月9日、シリーズAラウンドとして、第三者割当増資および新株予約権付社債による総額約12億円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は、ALL STAR SAAS FUND、Eight Roads Ventures Japan。累計資金調達金額は約20億円となった。

MicoCloudは、LINE公式アカウントを起点にCRMを構築し、パーソナライズされたコミュニケーションで顧客のファン化を促進させ、企業の売上増加につなげるコミュニケーションプラットフォーム。顧客データに基づいた個々の興味・関心に合ったメッセージを発信することで、集客からファン化までをサポート。様々なデータを一元管理をはじめ、複数拠点・複数スタッフからのアクセスなども可能で、業務の効率化にも貢献する。2021年12月末時点には導入アカウント数が500を超え、約500万人のエンドユーザーに利用されているという。BtoC事業を展開する企業を中心に、美容サロンや学習塾、百貨店や小売業、人材紹介業、不動産業など、幅広い業種での導入実績があるそうだ。LINE起点CRMを構築するマーケティングSaaS「MicoCloud」のMicoworksが12億円のシリーズA調達、新規プロダクト開発注力

Micoworksは今回の資金調達により、MicoCloudの開発体制の増強と、さらなる機能拡充・EC特化の新規プロダクト開発に注力したいという。また、セールスやマーケティングへの投資、CxOクラスとマネージャークラスの採用を強化し、中長期的な成長の加速を目指す。現在は日本およびアジアで普及しているLINEを起点にMicoCloudを提供しているが、将来的には他サービスへの対応や、年代・性別・居住地だけでなく顧客ごとのリアルタイムデータを反映してマーケティングを行なうダイナミックセグメンテーションの活用も視野に入れているという。

新世代チームコラボレーションツールAirtableのようなCRM構築を目指すAttio

Attioは、AirtableNotionZapierのような新世代のコラボレーションツールをよく知ってる人たち向けの新しいCRMだ。同社が作ろうとしているのは、ユーザーの顧客やサプライヤーやパートナーに関する重要な情報をすべて収められるプロダクトだが、それにはまた同時に、データを容易に編成し、一覧し、操作できる柔軟性がある。

AttioはPoint Nineがリードする770万ドル(約8億9000万円)のシードラウンドを調達し、これにBalderton CapitalHeadlineが参加した。同社の以前からの投資家であるPassion Capitalと、数名のエンジェル投資家も参加した。後者はFrontの共同創業者でCEOのMathilde Collin(マチルデ・コリン)氏、Loomの共同創業者でCTOのVinay Hiremath(ヴィネイ・ヒレマス)氏、LoomとHyperの共同創業者であるShahed Khan(シャヘド・カーン)氏、そしてIndeedの共同創業者であるPaul Forster(ポール・フォースター)氏らとなる。

投資家のリストがこんなに長いのも、創業者の経歴を見ればうなずける。Attioの共同創業者でCEOのNicolas Sharp(ニコラス・シャープ)氏は以前Passion Capitalのアソシエイトで、その後Alexander Christie(アレクサンダー・クリスティー)氏とともにAttioを起業。彼は、同社のディールフロー(取引の流れ)部分の処理に多大な時間を投じた。

シャープ氏は特に、AirtableとNotionからヒントを得たという。「現在、ビジネスソフトウェアの世界にはすばらしいことが起きつつあり、特に変化が著しいのはCRMです。今のCRMは、顧客が望むものを何でも作ることができます。その一方で、このようなことが起こっており、それ自体が興味深いものです。CRM市場では、新しい販売方法のパラダイムシフトが起きています。今や、さまざまなチャネルを通じて関係性を育むことが重要になっています」。

つまりCRMソフトはもはや、営業のチームに限定されていないということだ。現在では、A社で仕事をしている多くの人たちが、B社のさまざまな人たちとやりとりをしている。そのような状況で、単一のコンタクトポイントにこだわっていると全体の把握も、追跡もできなくなってしまう。

画像クレジット:Attio

Attioは、既存のさまざまなツールからデータを取り込む。アカウントをセットアップするときは、自分のチームのコンタクト(連絡先)もインポートする。また、メールの会話をCRMのプラットフォームと同期できる。共有のレベルは、メタデータだけか、または件名とメタデータかのどちらかを選ぶ。そしてもちろん、カレンダーの同期もできる。

そうやって設定したあと、AttioはユーザーデータをTwitter、LinkedIn、Facebookといったサードパーティのソースから自動的に補足する。自分の会社と特定のコンタクトとの最近の対話のタイムラインを見ることもでき、他の企業を検索して、その企業にいる自分が知っている人を調べることもできる。

さらにおもしろいのは、コレクションの構築だ。コレクションは、特定のプロジェクトのためのコンタクトのリストだ。例えばすべての投資家のコレクションを作ったり、営業のための情報通信チャネル(いわゆる「コネ」)のコレクションを作れる。知っている記者たちのコレクションもあるだろう。

コレクションの見方は、いろいろある。Airtableのように、行と列からなるスプレッドシート状のインターフェースで、データを加えてもよい。あるコレクションに必要になったら、新しい属性の列(カラム)を増設できる。

あるいは、コンタクトをあるカラムから別のカラムに移動できる。カレンダー形式でもよい。それぞれのビューは、さまざまなフィルターや整列(ソート)の基準でカスタマイズできる。

画像クレジット:Attio

Attioは、多くのSaaS同じような設計なので、チームで利用するのに適している。タブ方式で最新のアクティビティをそれぞれで確認できるし、タスクを作って注記を加えれば、そこからチームとしてのプロジェクトが始まる。

現在、同社には120社ほどの有料顧客がおり、Coca-ColaやSupercell、Saltpay、Causal、Upfront Venturesなどの企業でチームが利用している。しかし、このようにしてCRMを「再発明」しよとしているのはAttioだけではない。競合他社には、最近紹介したFolkや、4DegreesAffinityなどがいる。

シャープ氏がこのプロダクトを思いついたときは、競争がまだそれほど激しくなかった。「当時はNotionが開業したばかりでしたし、みんな新しいスプレッドシートや新しいノートアプリのようなものを開発していました。新しい原理をCRMに応用しようとしている人は皆無でした」とシャープ氏はいう。

ユーザーにとっては、CRMプラットフォームの選択肢は大きく増えた。この分野がどのように進化していくのか、興味深く見守っていきたい。

画像クレジット:Attio

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hiroshi Iwatani)

AIを活用しブランド・小売業者向けCRMを自動化するOmetriaが約45.5億円調達

ヤプリがノーコードの顧客管理システム「Yappli CRM」を提供開始、ポイント・電子マネーの発行やマーケ施策をワンストップで

2019年にシリーズBで2100万ドル(約23億9000万円)を調達したOmetriaは、ブランドや小売業者がマーケティングメッセージをパーソナライズできる「AIを活用した」カスタマーマーケティングプラットフォームを提供していた。

今回同社は、InfraVia GrowthがリードするシリーズCのラウンドで4000万ドル(約45億5000万円)を調達した。これには、従来からの投資家であるOctopus VenturesやSonae IM、Summit Action、Adjuvo、Columbia Lake Partners、さらに会長のLance Batchelor(ランス・バチェラー)氏ら初期の投資家も参加した。同社の資金調達額は、これで7500万ドル(約85億4000万円)になる。

同社によると、特に現在、消費者データの共有のされ方や共有先について、消費者自身がコントロールを握るようになってるため、この資金で同社のプロダクトとエンジニアリングのチームのサイズを今の3倍にするという。

新しいスタッフも雇用した。新しいチーフテクノロジーオフィサー(CTO)はSizmekのCTOだったMarkus Plattner(マーカス・プラットナー)氏、最高収益責任者は元App Annieの専務取締役Paul Barnes(ポール・バーンズ)氏、マーケティングのトップCMOは元Simon DataでTinycluesのMichelle Schroeder(ミシェル・シュローダー)氏だ。

OmetriaのCEOで創業者のIvan Mazour(イワン・マズア)氏によると「リテールのマーケターたちはみんな異口同音に個人化の重要性を主張してきましたが、消費者の1人としてインボックスを見るかぎり、マーケティングテクノロジーのベンダーはどこもそれを実現していません。その顧客体験のギャップの原因は、彼らのテクノロジースタックにある。Ometriaは、そのギャップを埋めるために創業されました」という。

InfraVia CapitalのパートナーであるGuillaume Santamaria(ギヨーム・サンタマリア)氏は「コマースの成功は、優れた顧客体験を作り出してブランドを差別化する能力にかかっています。Ometriaは、それを達成するためのソリューションを提供しています」という。

Ometriaの主な競合相手は、メールサービスのEmarsysやSailthru、Selligent、Bronto、Dotmailerなど、消費者行動マーケティングツールのCloudIQやSaleCycle、Yieldify、そしてカスタマーインサイトのMore2やAgileOneなどとなる。

同社の「共同マーケター」プラットフォームは、データサイエンスを利用して個人化されたマーケティング体験を作り最適化する。その主な顧客企業は、Steve Madden、Aden + Anais、Pepe Jeans、MADE.com、Notonthehighstreet.com、Hotel Chocolat、Feeluniqueなどだ。

さらにマズア氏は「現在、リテールのマーケターたちは、顧客の期待に沿えないという問題を抱えています。100万の人間がいて、30種類のタッチポイントがあると考えると、その多様性が膨大な数であることがわかるでしょう。それはSMSやメールだけではありません。このニーズに応える方法は、人間とマシン / コンピューターインテリジェンスのハイブリッドだけです」と付け加えた。

画像クレジット:Ometria

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hiroshi Iwatani)

つまり個人向けCRM、ビジネスもプライベートな人間関係もより良く管理するClayの新ツール

シードファンドングで800万ドル(約8億8000万円)を調達した新興スタートアップClay(クレイ)が、人生で出会う人達により深く配慮できるよう設計されたシステムを構築した。いわば、個人向けCRMのようなものだと考えるとわかりやすい。Clayでは、メールとカレンダーを、TwitterやLinkedInなどのソーシャルアプリと接続して、出会う人達のコレクションを構築する。そして、その人たちのエントリーに、今後会うときに思い出す必要のある適切な情報(職歴、最近のツイート、出会ったきっかけ、最後に話した内容など)を登録する。

また、各エントリーにあなた自身のメモを追加したり、クリックするだけでリマインダーをアクティブ化して特定の人たちをフォローし続けたり、エントリーをグループ化することもできる。さらには、コマンドバー、キーボードショートカット、ホーム画面ウィジェットも用意されている。

Clayの目指すところは、住所録でもなければ、CRMシステムのような売上やパイプライン管理を重視したものでもない。

Clayの創業者たちは、このアプリのことを「人々のホーム」と呼んでいる。つまり、人が誰とどのように知り合ったのかを追跡するより個人的なシステムを実現する新しい空間を市場に形成しようとしているのだ。

画像クレジット:Clay

Clayの共同創業者兼共同CEOである2人の企業家Matthew Achariam(マシュー・アチャリアム)氏とZachary Hamed(ザッカリー・ハミド)氏は、それぞれ異なるスタートアップで働いていた頃に出会った。Clayを立ち上げる前、アチャリアム氏は、Y Combinatorの支援を付けた分析会社Custoraで製品を担当し、ハミド氏はGoldman SachsのウェブプラットフォームMarqueeの製品管理チームを率いていた。

「人と人同士の関係は私たちのキャリアの中で本当に重要な役割を演じてきたと考えています。だからこそ、そこに飛び込んでみたかったのです」と、何がClayを立ち上げてみたいという関心を掻き立てたのかという質問に答えて、ハミド氏はこのように語った。

Clayを使い始めるにはまず、アカウントに接続する(Clayアプリにはウェブ版、デスクトップ版、モバイル版がある)。現時点では、Microsoft Outlook / Office 365、Googleカレンダー、Gmail、Twitterがサポートされている。Zapier統合を介してこれ以外のサービスを追加することもできる。セットアップが完了すると、会議や人とのつながりが自動的に追跡されるようになる。また、登録済みの人のエントリーには、ウェブから探索した詳細な情報(LinkedInやツイートに記載されているバックグラウンドや職歴など)が追加される。

人のエントリーにはその人との出会いの経緯も登録される。人と出会ったきっかけは時間が経つと忘れてしまいがちだからだ。例えばLinkedInを介してできたつながりや、直接またはオンライン会議で出会ったといった情報が記載される。

Clayのデスクトップアプリを介して、ClayをiMessageと接続することで、登録されている人たちのエントリーに電話番号や最後に話した内容などを追加することもできる。ClayはiMessageメッセージの内容をインポートすることはないが、iMessageとの統合を実現するには、正式なAPIやSDKが提供されていないという問題に対応する必要がある。つまり、この機能を実現するにはディスクへのフルアクセスが必要となる。そうなると、高いセキュリティ許可を与えることになるため、心良く思わない人もいるだろう。

画像クレジット:Clay

2人の創業者によると、Clayはプライバシーとセキュリティを重視して構築されているという。同社のプライバシーポリシーはわかりやすく書かれており、各外部システムとの統合について、取り込まれるデータとその使用方法が説明されている。現時点では、Clayのサーバー上および転送中のデータは暗号化されているが、最終的には、(調達した資金の一部を使用して)Clayの処理をすべてユーザーの端末上で実行することを目指している。

「完全にユーザーの端末上で動作するようにしたいと考えています。データを一切保存しないようにしたいのです」とハミド氏はいう。「これは技術的に極めて複雑な仕事になります。ですから、Clayの創業当初はとても手が出せませんでしたが、今は十分な資金も得られたので、そこを最終的な目標としています」。

とはいえ、Clayはその安全性をユーザーに分かってもらうのにかなり苦労する可能性がある。というのは、ユーザーは過去に「スマートな」住所録と称しながら実はユーザーのプライベートデータを乱用していた製品に何度も痛い目に遭わせられているからだ。2020年だけでも、この分野の新興スタートアップSunshine Contacts(サンシャインコントラクツ)がユーザーの自宅住所を広く配信していたことが判明している(しかも、これらのユーザーはアプリに登録もしていなかった)。他にもたくさんの似たようなアプリが開発されたが、ユーザーのプライバシーより収益を上げることを優先したために、ことごとく失敗に終わっている。

アチャリアム氏は、これまでに登場したこれらの製品の問題は、多くの場合、そのビジネスモデルにあったと確信している。

「ビジネスモデルは、この分野に参入する際に真剣に検討していたことの1つです。というのも、これまでにこの分野に登場したすべての製品は、我々とは生理的に合わないか、ビジネスモデルに問題があったために破綻していたからです」とアチェリアム氏は、スマート住所録市場の歴史について語る。「多くの製品が最初からユーザーの登録情報を利用して利益を上げることを考えていました。ユーザーはアプリを無料で使っていました。持続可能なビジネスモデルは存在せず、どこかの時点で、このトレードオフ状態を解消する必要がありました」と同氏はいう。

画像クレジット:Clay

Clayは従来とは違ったやり方を選択している。最初から料金プランを設定して、製品だけで持続可能にしたのだ。現在は月20ドルとかなり高めの価格設定だが、最終的には徐々に価格を下げ、無料プランも導入する予定だ(学生や非営利団体などは、事前にメールで要求することで、安価なプランを利用できる)。

テスト期間中、Clayは、さまざまなタイプの多くのユーザーたちに採用された。主なユーザーとして、生徒とその親を覚えたい教師、有権者を追跡したい議会選挙の候補者、顧客とそのペットを覚えたい獣医師などがいた。

「私たちは意図的に業界や分野を超えて利用されるようにしました。技術的な問題や投資家からの反発があるとは思いませんでした。とにかく広範囲のユーザーの確保を目指しました」とハミド氏はいう。

Clayは2019年から2020年にかけてのシードファンディングで合計800万ドル(約8億8000万円)を調達した。このファンディングを率いたのは、Forerunner Ventures(フォアランナーベンチャーズ)およびGeneral Catalyst(ゼネラルカタリスト)からの参加者たちだった。

エンジェル投資家として、LinkedInの前CEO Shannon Brayton(シャノン・ブレイトン)氏、Eventbriteの前CEO Kevin Hartz(ケビン・ハーツ)氏、NFLプレイヤーで慈善家で投資家のKelvin Beachum(ケルビン・ビーチャム)氏、Casperの共同創業者兼Communications and Brand担当副社長Lindsay Kaplan(リンゼイ・キャプラン)氏、Airtableの前マーケティング担当部長Zoelle Egner(ゾエレ・エグナー)氏、RelateIQの前CTO Adam Evans(アダム・エバンス)氏、マイクロソフトの前戦略担当部長Charlie Songhurst(チャーリー・ソンガースト)氏、フェイスブックの前製品管理副社長Sam Lessin(サム・レッシン)氏、Moatの前CEOでオラクルのSVP Jonah Goodhart(ヨナ・グッドハート)氏、Chapter One VenturesのJeff Morris Jr.(ジェフ・モリスJr.)氏などがいる。

「新型コロナウイルス感染症の拡大で、人々はすでに当然だったことを改めて認識するようになっています。人々の関係は、オンラインでのやり取りによって生まれ、メッセージアプリによって強化されるなど、デジタル化が進んでいます。このように人々が継続的につながることができるにもかかわらず、同時にますます孤立しているのはどういうわけでしょうか」とForerunner GPのBrian O’Malley(ブライアン・オマリー)氏はClayに投資した理由について語った。「問題は既存のソーシャル関連製品が利用者にエンドユーザーとしてサービスを提供していない点にあります。個々のユーザーは、人材採用担当者や無名の広告主に利用されているだけなのです。Clayは個々のユーザーのつながりを推進するあらゆるシグナルを把握するために構築された最初のリレーションシップソフトウェア企業であり、広範な人々と良質な関係を構築できます。Clayはユーザーのネットワークはユーザーのものであり、ユーザーにその所有権限が与えられるべきであることを理解しています」。

Clayは現在、ウェブサイト経由でサインアップできる。

画像クレジット:Clay

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

ヤプリがノーコードの顧客管理システムYappli CRM公開、ポイント・電子マネー発行やマーケ施策をワンストップで提供

ヤプリがノーコードの顧客管理システム「Yappli CRM」を提供開始、ポイント・電子マネーの発行やマーケ施策をワンストップで

アプリの開発・運用・分析をノーコードで提供するアプリプラットフォーム「Yappli」(ヤプリ)を提供するヤプリは10月11日、顧客管理、ポイント・電子マネーの発行、アプリマーケティング施策をワンストップで実現する「Yappli CRM」(ヤプリ シーアールエム)のリリースを発表した。

同社によると、Yappliは現在550社以上の企業に導入されているという。CRMについては、従来導入企業側で用意してもらっていたが、Yappli導入が広がる中、CRMを利用していないケースや、開発済みのCRMがいわゆる「レガシーシステム」(過去の技術や仕組みで構築されているシステム)となっており、拡張性や保守性に課題を感じているケースが増えていたそうだ。

この課題を解決するために生まれたサービスが、ノーコードでCRMを開始できる「Yappli CRM」としている。ヤプリでは、これまで顧客側の基幹システムとの連携を実現しおり、その知見をベースにモバイル時代に最適化されたCRMの開発に取り組んだという。

  • ノーコードの顧客管理システム:CRMに必要な、顧客の会員登録、認証、情報管理などをすべて搭載。アプリを軸に顧客管理システムを開始できる
  • ポイント・電子マネーの発行:ポイントカードと電子マネーを外部サービス連携なしで発行・管理可能。会員ランク別のポイント発行にも対応
  • 1to1の顧客体験を実現:顧客のタイミングに合わせた多彩なシナリオ設計によるプッシュ通知やクーポン・ポイント付与などの機能を提供
  • シームレスなサービス連携でアプリデータを活用:アプリの場合、顧客の購入データだけでなく購買後の行動データも多く取得できまる。それらデータを外部メールサービス、MA、CDPなどと連携させ、データドリブンなマーケティングに活用できる

Folkは営業以外のチームにも役立つ新しい連絡先関係管理ツール

Folk(フォーク)」は、欧州のスタートアップスタジオであるeFounders(eファウンダーズ)から起ち上げられた新しい生産性向上ツールだ。このスタートアップは、Accel(アクセル)が大勢のビジネス・エンジェルを集めて行ったシード資金調達ラウンドで、330万ドル(約3億6000万円)を調達した。

専門的な環境での連絡先や人間関係の管理を行うツールと聞いても、他のいくつもの企業がすでに解決してしまっていると思うかもしれない。このようなCRMと呼ばれる考え方に基づいて、いくつもの製品や企業が登場している。人気の高いCRMプラットフォームには、Salesforce(セールスフォース)やHubSpot(ハブスポット)などがある。あなたの営業チームもきっとCRMを愛用していることだろう。

しかし、CRMとは具体的にどのような意味なのだろうか?それはCustomer relationship management(顧客関係管理)だ。もしあなたが顧客を持たないチームで仕事をしているのであれば、CRMは最も適切なツールとはいえない。例えば、広報チームはジャーナリストと、物流チームはサプライヤーと、イベントチームはさまざまな種類のパートナーを相手に仕事をしている。

これらのチームでは、おそらくCRMを使っていないだろう。代わりに共有のスプレッドシートに頼っていたり、情報がサイロ化してしまったりということがよくあるはずだ。Folkは、企業のこのような営業以外のチームのための関係管理ツールになりたいと思っている。

同社はこの新しいコンタクトツールのカテゴリーに名前を付けようと考えて、Extended Relationship Manager、略して「xRM」と呼ぶことにした。「xRMの『x』は『誰でも』を意味します。これは顧客の管理だけでなく、例えば、ジャーナリスト、サプライヤー、パートナーなどの管理にも使用できるのです」と、FolkのThibaud Elziere(ティボー・エルジエール)CEOは声明の中で述べている。

画像クレジット:Folk

Folkは視覚的にはスプレッドシートのように見える。ユーザーは特定の情報を持つ列を追加することができ、タグを使ってプロジェクトの進捗状況を把握することもできる。Airtable(エアテーブル)と同じように、表示をフィルタリングしたり、データを並べ替えたり、表をさまざまな方法でソートすることなどもできる。

連絡先をクリックすると、専用の連絡先ページが開く。これによって快適にデータを変更したり、より多くの情報を見ることができる。コメントの追加したり、連絡先を同僚に割り当てたり、その連絡先とのやり取りを見返したりもできる。

画像クレジット:Folk

Folkにミーティングの予定を入力したり、メールのやり取りをコピー&ペーストしたりする必要はない。Folkは、Gmailや Googleカレンダーのアカウントから自動的にデータを引き出すからだ。これによって、チームの誰かがパートナーと密に連絡を取り合っているかどうかを、チーム全体で確認することができる。いくつかの連絡先をチームの他のメンバーと共有し、個人的な連絡先は自分だけが見られるようにするという選択も可能だ。

今回の投資ラウンドには、Accelに加えて、企業の運営に関わるような35人の投資家も参加している。どこの会社のどんな役職にある人物が投資しているかは、この記事の最後に掲載した表で確認できる。

FolkのCEOであるティボー・エルジエール氏が、eFoundersの共同設立者でもあることも注目に値するだろう。このスタートアップスタジオからは、Front(フロント)、Aircall(エアコール)、Spendesk(スペンデスク)など、いくつもの人気の高いSaaSツールが誕生している。エルジエール氏が使っているFolkの画面には、Folkを商業的に成功させるために活用できる幅広い連絡先のネットワークが、インプットされているに違いない。

Folkのシードラウンドに参加したビジネスエンジェルのリスト

 

画像クレジット:Jostaphot / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

共有受信メールボックスのFrontがより深いCRM統合を備えた顧客中心の機能を導入へ

カスタマーコミュニケーションプラットフォームのFront(フロント)が、米国時間9月15日、3つの新機能を紹介するイベントを開催する。これらの新機能は、Frontのユーザーインターフェイスから直接顧客に関するより多くの情報を表示することに重点を置いている。

Frontをご存知ない方のために説明すると、同社は、チームとして受信メールを操作できるようにする「共有メール受信ボックスプロダクト」の会社としてスタートした。例えば企業がsupport@companyname.com、sales@companyname.com、jobs@companyname.comなどのメーリングリストを使っている場合、複数のチームメンバーがFrontを使って受信メールを見ることができる。

返信する前に、そのメールを特定のチームメンバーに割り当てて会話の優先順位付けをしたり、コメントセクションで現在の会話について話し合ったり、送信する前にメールの下書きを他のメンバーに見せたりすることができる。

時間が経つうちに、Frontはより多くの通信チャネルを統合するように進化してきた。いまでは、SMSでのメッセージ交換、ウェブサイト上での顧客とのライブチャット、Facebook(フェイスブック)メッセージなどにFrontを使用することができる。同社はまた、より強力な機能でも製品を改良してきた。

例えば簡単な「if this then that」(もし…だったら…する)ルールを使用してワークフローを自動化するルールを設定することができる。これは、作業を複数のチームメンバーに分配し、適切な人が受信メッセージをできるだけ早く確認できるようにするための良い方法だ。

米国時間9月15日に同社が発表する新しい機能は、営業、サポート、カスタマーサクセスチームなどの、より大きな顧客とやり取りするチームに特に役立つ機能だ。まず第一に、Frontのユーザーは、受信トレイからやり取りしている顧客について直接詳しく知ることができるようになる。

新しくなったコンテキストパネルは、クライアントのために複数のメンバーがやりとりして対処しているチームにとって、より役立つものになる。誰か特定の人の過去の会話を表示する代わりに、このクライアントのために働いているすべての人の過去の会話を表示することができる。

Frontは、Salesforce(セールスフォース)やHubSpot(ハブスポット)などのCRMとすでに統合されている。今回の新機能で、データをコンテキストパネルに簡単に取り込むことができるようになった。アカウント所有者の名前、顧客セグメント、およびこの顧客とのSLA(サービスレベル契約)コミットメントを確認できる。

画像クレジット:Front

次に、FrontはCRMとの緊密な統合による、新しい自動ルーティング機能を追加している。例えばCRM上でアカウント所有者の名前を見つけて、受信するメールをそのアカウント所有者に直接割り当てることができる。

もしSalesforce上でアカウント所有者が変更された場合には、Front内のルールも自動的に更新される。重要な顧客からメッセージを受信した場合には、CRMから年間収益データを取得し同時にVIPタグを設定することもできる。

画像クレジット:Front

最後に、Frontはまもなく分析ページをアップグレードする。例えば特定のアカウントに対するチームのパフォーマンスを追跡し、それをSLAと比較することができるようになる。

これらのアップデートは、Frontを、高額B2B契約を結んでいる大企業のクライアントに対して、より適切に機能するツールとして位置付けることになるだろう。現在のFrontの顧客には、Shopify(ショッピファイ)、Dropbox(ドロップボックス)、Flexport(フレックスポート)、Checkout.com(チェックアウト・ドット・コム)、Lydia(リディア)、Airbnb(エアービーアンドビー)などが並んでいる。

画像クレジット:Front

画像クレジット:Mark König/Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:sako)

理髪店にテクノロジーで活気をもたらすtheCut

theCutの共同創業者オビ・オミルJr.氏とクッシュ・パテル氏(画像クレジット:theCut)

理髪店の経営のバックエンドをテクノロジーで支えるTheCutが、新たに450万ドル(約4億9000万円)を調達した。

Nextgen Venture Partnersがこのラウンドをリードし、Elevate VenturesとSingh CapitalとLeadout Capitalが参加した。創業者のObi Omile Jr.(オビ・オミルJr.)氏によると、これで2016年創業以来の同社の調達総額は535万ドル(約5億9000万円)になる。

オミル氏とクッシュ・パテル氏が開発したこのモバイルアプリは、理髪店の情報やレビューをこれからお客になるかもしれない人たちに伝え、その一方で理髪店のためのバックエンド部分で予約やモバイルの決済、料金表示などを管理する。

「クッシュも僕も、散髪ではひどい目に遭っているから、良い床屋を見つけるためのアプリを作ろうと決めたんだ」とオミル氏はいう。「立派な床屋さんがいることは知ってるけど、それを見つける方法がない。Googleで検索しても、理髪師個人のことはわからない。theCutでは個人の理髪師を見つけられるし、自分の好みに合っているか、ひどい髪にされるおそれはないかなどもわかる」。

アプリは、理髪店用のアプリとしてはおそらく初めて、クライアントのリストを作り、ヘアスタイルの写真を保存し、来店履歴や支払い額を記録できる。決済機能により、売上アップにつながる今のトレンドに合った追加サービスをお薦めすることもできる。また顧客は、理髪師のプロフィールや、仕上がりの写真、格付け、レビュー、提供サービスの一覧そして料金を確認することができる。

オミル氏によると、米国には理髪師が40万から60万人ほどいて、激しく成長している市場の1つになっている。そこで今度新たに得た資金は、社員を増やし、マーケティングを強化して全国市場に対応していくことに当てたいという。

「今回はどうやら大当たりのようだし、業績も伸びているから、今のうちは雇用増進モードだ」とオミル氏は語る。

実際に、同社の理髪店からの売上は2016年の創業以来今日までで5億ドル(約548億6000万円)を突破、ユーザーは毎月10万以上増えている。このアプリ経由で行われる予約は1カ月平均で150万件だ。

次のステップとしてオミル氏が考えていいるのは、デジタルストアのような新しい機能を理髪店に提供することだ。またユーザーサイドでは、カードリーダーを利用してデジタルの決済ができるようにすることだ。それにまた、theCutの上で理髪店 / 理髪師と顧客が、個人的な関係を持てるようにしたいという。

「自分たちが作るソフトウェアによって理髪師を元気づけ、アプリを通じてその人の最高の真価が発揮できるようにしたい」とオミル氏はいう。「顧客との人間関係ができれば、新製品や新しい整髪体験のおすすめなどもできるようになる」。

今回の投資の一環として、Leadoutの創業者でマネージングディレクターのAli Rosenthal(アリ・ローゼンタール)氏が同社の取締役会に加わる。彼女によると、オミル氏とパテル氏は、ベンチャーキャピタリストがいつも探しているタイプの創業者だ。つまり、自らのマーケットの市場のエキスパートであり、データドリブンな技術の持ち主だ。

「彼らに会ったときには、資金などほとんどない状態ですでに成果を上げていた。彼らは元気活発なコミュニティを作っていたし、そのモダンなテクノロジー機能は、彼らの顧客のニーズにぴったり合っていた」とローゼンタール氏はいう。

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

中・大病院向け地域医療連携SaaS「foro CRM」でデータの一元管理・分析を可能にするメダップが6億円調達

中・大病院向け地域医療連携SaaS「foro CRM」でデータの一元管理・分析を可能にするメダップが6億円調達メダップ(MedUp)は8月31日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による総額6億円の資金調達が完了したと発表した。引受先は、DNX Ventures、ALL STAR SAAS FUND、モバイル・インターネットキャピタル。シードラウンド以来の調達総額は約8億円となった。

調達した資金は、病院経営の非効率をDX化におけるデータドリブンで解決するため、人材採用の強化、プロダクト開発、マーケティング投資に活用する予定。中・大病院向け地域医療連携SaaS「foro CRM」のさらなる市場拡大と開発体制の強化に投資し、将来的には地域連携以外の病院経営に関わる課題の効率化に向けたプロダクト開発も検討する。

2017年8月設立のメダップは、「DXで、病院を最先端の業界にする」をビジョンに、医療従事者の労働量や医療費などが持続可能な形で、医療サービスの質が改善される世界を実現することを目指すスタートアップ。

同社のforo CRMは、前方連携のマーケティング・営業・カスタマーサクセスをワンストップで実現する地域医療連携強化支援サービスという。済生会熊本病院との共同開発により、病院のオペレーションに特化した形でで連携活動に重要な分析・管理・共有機能を搭載している。

メダップによると、病床機能分化や地域包括ケアシステムの実現に伴い、患者への医療提供や病院経営における医療機関同士や介護施設などとの連携の重要性が高まっているものの、地域連携活動では多様な活動やデータが存在することから、活動記録の一元管理および効果検証が困難という課題があるという。

これら課題に対して、foro CRMは地域連携活動記録にプラットフォームを提供し、データの一元管理を可能にするとしている。さらに、それらをDPCデータ、紹介・逆紹介データなどと結び付け、連携活動の戦略立案と効果検証を可能にする。また同社専門家のサポートにより、確実にDPC対象病院とクリニックの効果的な意思疎通を実現するという。

Salesforceは配信メディア「Salesforce+」発表、ビジネスコンテンツのNetflixを狙う

Salesforce(セールスフォース)はSlack(スラック)を280億ドル(約3兆1000億円)の巨大買収を行ったばかりで、その過程で多額の負債を生み出したが、それは多額の資金を支払ったことが理由ではない。

米国時間8月10日、このCRMの巨人は、Salesforce+(セールスフォースプラス)でストリーミングメディアに参入することを発表した。Salesforce+は、ビデオに焦点を当てた今後のデジタルメディアネットワークであり、同社の発表によれば「世界中の視聴者にDreamforce(ドリームフォース、Salesforceの年次コミュニティ会議)の魔法をすばらしいスピーカーとともにお届けします」というものだ(それがすばらしいものであるか否かは、見る人の目で決まるが)。

2020年来Salesforceは、各企業が完全なデジタルエンティティへの迅速な変革を行おうと苦労しているところを目撃してきた。Slackの買収は、進化する市場に対するSalesforceの対応の一部だが、同社は、24時間体制でビジネスコンテンツを提供するオンデマンドビデオサービスでさらに多くのことができると考えている。

Salesforceの社長でCMOのSarah Franklin(サラ・フランクリン)氏は、公式投稿の中で、彼女の会社は「新しいデジタルファーストの世界で成功する方法を再考する必要があった」と述べている。その答は、より大きなSalesforceコミュニティを、新しいライブおよび録画されたビデオの強化でまとめることに関係しているようだ。

Salesforceのグローバルブランドマーケティング担当シニアバイスプレジデントであるColin Fleming(コリン・フレミング)氏によるQ&Aの中では、彼はそれを会社がずっと共有してきたコンテンツを進化させる方法だと述べている。「パンデミックを受けて、私たちは人びとがコンテンツを消費しているメディアの状況を調べ、その結果B2Bの場におけるホワイトペーパーの時代は、もはや人びとにとって興味をひかないものであると判断しました。私たちはクッキー不要の未来を見つめています。そして消費者の世界を見て、Salesforceのためにそれを振り返り『なぜ私たちもこれについて考え直さないのか』と問いかけています」とQ&Aの中で語っている。

会社が注ぐ労力は小さなものではない。Axios(アクシオス)によれば、立ち上げを支援するために、プロジェクトには「50人の編集主幹」がいて「Salesforceの何百人もの人々が現在Salesforce+に取り組んでいる」とのことだ。

特に注目すべきは、Salesforceには短期的にはSalesforce+の収益化計画がないということだ。このサービスは無料で、外部の広告は掲載されない。Salesforce+は、9月のDreamforceとともに公開され4つのチャンネルが提供される、それらはニュースとアナウンス用のPrimetime(プライムタイム)、トレーニングコンテンツ用のTrailblazer(トレイルブレイザー)、サクセスストーリー用のCustomer 360(カスタマー360)、業界固有の情報提供用のIndustry Channels(インダストリー・チャンネルズ)だ。

同社は、この発表をDreamforceと組み合わせることで、Salesforceが作り上げてきたものへの関心を引きつける役に立つことを期待している。Dreamforceでのお披露目後、Salesforce+は興味深い領域へと進む予定だ。それにしても、Salesforceの顧客やその大規模なビジネスコミュニティは、同社が「あらゆる役割、業界、基幹業務に魅力的なライブコンテンツとオンデマンドコンテンツ」と呼び「魅力的なストーリー、思慮深いリーダーシップ、専門家のアドバイス」と表現するものをどれくらい本気で望んでいるのだろうか?

Salesforceは、歴史上最も成功したSaaSファーストの企業と見なされているため、人びとが耳を傾けたいと思っているという意見はあるかもしれない。5月の最新の四半期決算報告では、同社は前年同期比23%増の59億6000万ドル(約6597億円)の収益を発表し、年間収益予想は250億ドル(約2兆7670億円)に近づいた。同社はまた、多額の現金を生み出している。しかし、現金を豊富に持つからといって、この新しいストリーミングの取り組みが、リターンも限られた膨大なコストがかかる金食い虫となるのではないかという疑問を消し去ることはできない。

このサービスは、LinkedIn(リンクトイン)フィードにビデオ形式で命が吹き込まれたもののように聞こえるかもしれない。少なくとも、これはおそらく史上最大のコンテンツマーケティングスキームだが、ビジネスユニットとして、または将来のその他の収益化計画(広告など)を通じて、それ自身で利益を得ることができるのだろうか。

CRM Essentials(CRMエッセンシャルズ)の創業者で主席アナリストであるBrent Leary(ブレント・レアリー)氏は、Salesforceがこの冒険で広告収入に注目し、すべてをSalesforceプラットフォームに結び付けようとしているのだという。「顧客は、個別のショーのスポンサーになったり、ショーを宣伝したり、場合によってはショーでコラボレーションをしたりすることができます。そうしたオプションをROIで追跡しながら、ショーから生成された各種の引き合いに直接結び付けることができます。これをすべて1つのプラットフォームで行うことができるのです。そして、コンテンツは添えられた広告とともに続きます」とレアリー氏はTechCrunchに語る。

それがこの冒険の最終的な目標であるかどうかはまだわからないが、Salesforceは、少なくとも現実の世界ではDreamforceコンテンツに対する市場の欲求があり、最後にライブイベントを開催できた2019年には10万人以上が関わったことを実証している。こうした文脈を考慮すると、パンデミックにより、ほとんどの従来のカンファレンス活動はデジタル運営に移行した中で、Dreamforceおよび関連するタイプのコンテンツをビデオ形式で1年中利用できるようにすることは、ある程度意味があるだろう。

実は、会社がマーケティング予算への大幅な追加を正当化する方法を興味深く見守っている。ビデオ製品からのROIの計測は、直接収益化されない場合には、それほど簡単ではない。そして遅かれ早かれ、それはビジネスに直接的または間接的な影響を与えるか、ベンチャーの目的に関して株主からの質問に直面する必要に迫られることになるだろう。

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(文: Alex Wilhelm、Ron Miller、翻訳:sako)