ノーコードのセキュリティ自動化プラットホーム「Torq」が約57億円調達

オレゴン州ポートランドのTorqは、セキュリティをノーコードで自動化するスタートアップで、以前はStackPulseという名称だった。同社は米国時間12月7日、Insight PartnersがリードするシリーズBのラウンドで5000万ドル(約56億9000万円)を調達したことを発表した。上場企業であるエンドポイントセキュリティのプラットフォームSentinelOneが新たな投資家としてラウンドに参加し、またこれまでの投資家であるGGV CapitalとBessemer Venture Partnersも参加した。Torqの総調達額は、これで7800万ドル(約88億7000万円)になる。

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最近では、ノーコード / ローコードのプラットフォームが流行しているが、セキュリティ分野ではあまり見かけない傾向にある。NS1、eToro、Armis、Healthy.ioなどがユーザーとして名を連ねるTorqは、使いやすいグラフィカルなインターフェースを用いて、セキュリティチームがセキュリティ製品間のルーティング・ワークフローを自動化することを支援する。その点では、Microsoft Power Automateとあまり変わらず、セキュリティに特化している点では同じだ。

Torqは、現代の企業がデータの安全性を保つために導入している複雑に入り組んだセキュリティツールをまとめることができるという点で期待されている。サービスのワークフローは、一定の間隔で、またはアラートから起動することができる。例えば、クラウドリソースへの特権的なアクセスを求める従業員からのSlackリクエストに反応したり、疑わしいファイルの分析プロセスを自動化したりするような、シンプルなワークフローだ。

画像クレジット:Torq

LemonadeのCISOであるJonathan Jaffe(ジョナサン・ジャッフェ)氏によると「Torqのオートメーションで私たちチームのセキュリティ管理が変わりました。一例を挙げると、Torqを使ってウェブアプリケーションのファイアウォールのブロッキングのルールを管理すると、悪質なトラフィックのブロックに要する時間が70分の1になり、捕捉率は90%を超えました。これはとても大きな改善です」という。

TorqのCEOで共同創業者のOfer Smadari(オフェル・アダリ)氏によると、以前の資金調達から今回までの間、同社はユーザー体験の改良に集中してきた。「ユーザー体験への投資を増やし、ユーザーが他のシステムにもっと容易に接続できて、複雑なワークフローを簡単に作ることが可能で、インターフェースのスピードと応答性を上げるようにしました。また、創業時から一貫して、大小さまざまなエンタープライズをサポートできるためにスケーラビリティとレジリエンスに重点的に投資してきました」と氏は述べている。

特に今回の資金で重点投資を行いたいのが、サービス利用がかなり大規模になっている顧客や見込み客への対応だ。アダリ氏によると、同社のサービスの上で顧客が動かしているワークフローの平均数が毎週2〜3倍ずつ増加している。「顧客は、一度始めたらその後の拡張はとても速い。私たちが、そんな成長をサポートできるほどのサービスのデプロイになっていることを、有事になる前に確認しなければならない」という。

Torq自身は、セキュリティのチームをルーチンワークから解放してセキュリティ業界の人材不足に対応することが目的でも、しかしアダリ氏によると、同社にとって当面の最大の課題が雇用だ。

しかしInsight PartnersのマネージングディレクターであるSteve Ward(スティーブ・ワード)氏は次のように述べている。「短期間でTorqが成功したことは、プラットフォームがビジネスのあらゆる側面にわたってより良い保護の提供を目指すセキュリティチームの仕事を楽にしてくれることの証明だ。同社の直感的なプロダクトと経験豊富なチームにより、Torqは急速に業界のリーダーになりつつある。成長を続けているTorqとの提携は、私たちを元気にしてくれます」。

画像クレジット:Torq

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

AWS、ローコードのアプリ開発ツール「Amplify Studio」を発表

2021年のre:InventカンファレンスでAWSは米国時間12月2日、Figmaに接続されるノーコード / ローコードサービスで、これによりデベロッパーはクラウドに接続されたアプリケーションを迅速に開発することができるAmplify Studio発表した。Amplify Studioは既存のAWS Amplifyサービスの拡張で、ウェブアプリケーションやモバイルアプリを作れるという基本機能は同じだが、Amplify Studioはドラッグ&ドロップのインターフェースなので使いやすい。

AWSは、Studioを人気のあるユーザーインターフェースデザインツールFigmaに接続するという、おもしろいことをしている。これによりデザイナーはインターフェースをFigmaで作り、そのあとデベロッパーがそれを自分のバックエンドデータに接続してStudioの中でアプリケーションのロジックを作る。そのためAWSが自分のツールを作る必要がなく、Amplify StudioがFigmaのデザインをReact UIのコンポーネントのコードに翻訳する。

画像クレジット:AWS

AWSのRene Brandel(ルネ・ブランデル)氏は、声明で「Studioの新しい『UI Library』(プレビュー)で、FigmaとAmplify Studioのコンポーネントを同期できます。またAmplifyには便利なFigmaファイルがあるため、仕事の開始が早い。AmplifyのFigmaファイルには、UIのプリミティブと既成のコンポーネントの両方があります。さらにStudioは、Figmaで作られた新しいコンポーネントも同期できます」。

画像クレジット:AWS

AmazonのWerner Vogels(ワーナー・ヴォゲルス)CTOによると、同社はこれを今でもデベロッパーファーストのサービスと見なしており、特にフロントエンドのエンジニアが対象だ。つまり、まだあちこちにコードを少し書かなければならないということだが、それによりデベロッパーは自分のアプリケーションを既存のDevOpsのパイプラインにエクスポートすることが容易にできる。

Amplify Studioでは、必要なら一部の既成コンポーネントを、AWS Cloud Development Kitを使って、デベロッパーがAmplify Studioの中でオーバライドしてもよい。AWSによると、これのおかげでデベロッパーは、ニーズや成長に応じてアプリケーションをスケールできないといった壁にぶつかることがない。

画像クレジット:AWS

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

AWSがノーコードのMLサービス「Amazon SageMaker Canvas」を発表

AWSは米国時間11月30日、新しい機械学習(ML)サービス「Amazon SageMaker Canvas」を発表した。新サービスは既存の機械学習サービスとは異なり、高度な技術を持つデータサイエンティストやエンジニアではなく、企業内のあらゆるエンジニアやビジネスユーザーをターゲットオーディエンスにしている。SageMaker Canvasは、ポイント&クリックインタフェースを使って、誰でも機械学習の予測モデルを構築できることを約束している。

この謳い文句に聞き覚えがあるとすれば、それはAzureなどが同様のツールを提供しているからかもしれないが、それでもAWSには、多くの企業がすでにすべてのデータをAWSに保存しているという利点があるかもしれない。

画像クレジット:Amazon

「SageMaker Canvasは、Amazon SageMakerと同じ技術を活用し、データを自動的にクリーンアップして結合し、何百ものモデルを内部的に作成し、最もパフォーマンスの高いモデルを選択して、新しい個別予測またはバッチ予測を生成します」とAWSのAlex Casalboni(アレックス・カザルボーニ)氏は今回の発表で書いている。「二値分類、多クラス分類、数値回帰、時系列予測など、複数の問題タイプをサポートしています。これらの問題タイプにより、コードを1行も書かずに、不正行為の検知、解約の削減、在庫の最適化などのビジネスクリティカルなユースケースに対応することができます」とも。

当然のことながらこのサービスは、AWSのフルマネージド機械学習サービスであるSageMakerに支えられている。

ここでの基本的なアイデアは、ベーシックなCSVファイルに至るまで、ユーザーはあらゆるデータセットを使用することができ、そのデータセットのどの列をCanvasが予測すべきかをユーザーが決めるということだ。しかし、従来のMLツールに比べてはるかに簡単なユーザーエクスペリエンスではあるが、ドラッグ&ドロップとまではいかないのが現状だ。結局のところ、AWSだからだ。全体としては、最新のノーコードアプリケーションというよりも、AWSコンソールでの作業に近いものとなっている。

画像クレジット:Ron Miller

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

ローコード / ノーコードアプリの安全性確保を支援するZenityが約5.8億円調達

基幹業務のアプリケーションの構築にローコード / ノーコードのツールを採用する企業が増えており、そのエコシステム内にツールのセキュリティにフォーカスした新たなサービスが登場しているのも当然かもしれない。テルアビブのZenityはそんな企業の1つで、同社は現地時間11月23日、ステルスを抜けて500万ドル(約5億8000万円)のシードラウンドを発表している。そのラウンドはVertex VenturesとUpWestがリードし、GoogleのCISOだったGerhard Eschelbeck(ゲルハルト・エッシェルベック)氏や、SuccessFactorsのCIOだったTom Fisher(トム・フィッシャー)氏といった多くのエンジェル投資家が参加している。

Zenityによると、従業員たちが自分でアプリケーションを作るようになり、RPA(ロボットによる業務自動化)などのツールを採用するようになると、新たなアプリが、ハッキング行為やランサムウェアなどに対して、これまでなかったようなドアを開いてしまうこともある。

Zenityの共同創業者でCEOのBen Kliger(ベン・クリガー)氏は、このような状況について「企業は現在、大々的にローコード / ノーコードを採用していますが、そのリスクやリスクに対して自分たちが共有すべき責任について理解していません。弊社はCIOやCISOたちをサポートし、彼らがローコード / ノーコードアプリケーションをシームレスに統括できるようにし、不意のデータ漏洩や事業への妨害、コンプライアンスのリスク、悪質な侵害などを防ぐ」と述べている。

Zenityのプラットフォームは、企業にその組織内のローコード / ノーコードアプリケーションのカタログを作らせ、問題の可能性を減らし、彼らの組織のための自動的に施行できるガバナンスのポリシーをセットアップする。同社によると、従来的なセキュリティサービスの方法はローコード / ノーコードのアプリケーションに適用できないにもかかわらず、そんなツールへのニーズだけが独り歩きで増えている。しかもそれを使っているデベロッパーにセキュリティの経験や知識がない。中にはソフトウェア開発の経験知識のないデベロッパーもローコード / ノーコードの世界にはいるだろうという。

画像クレジット:Zenity

同社はCEOのクリガー氏とCTOのMichael Bargury(マイケル・バーガリー)氏が創業した。2人とも、それまではAzureに在籍し、Microsoftのクラウドセキュリティチームで仕事をしていた。

Zenityのアドバイザーで元OracleとQualcommのCIO、そしてeBayのCTOでもあるTom Fisher(トム・フィッシャー)氏は次のように述べている。「ビジネスを邪魔せずローコード / ノーコードのソリューションにありがちなリスクとセキュリティの脅威を減らすことが難題です。Zenityには、ガバナンスとセキュリティツールの完璧な組み合わせと、ビジネスに対するプロのアプローチが備わっているため、企業のデベロッパーは安心してともにセキュリティを構築できます」。

画像クレジット:Zenity

[原文]

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

データ活用支援のDATAFLUCTが2.5億円の資金調達、マルチモーダルデータプラットフォーム開発を強化

画像や動画、音声、文書などの異なる様式のデータを統合的に処理する「マルチモーダルデータ」の活用サービスを提供するDATAFLUCT(データフラクト)は11月22日、日本政策金融公庫の融資により2億5000万円を資金調達したことを発表。今回の資金調達は、「新株予約権付融資制度」を活用した融資により実施した。同制度は、新たな事業に取り組み株式公開を目指すベンチャー企業を対象に、融資と同時に日本政策金融公庫が新株予約権を取得することで無担保で資金を供給するというもの。これによりDATAFLUCTの資本性および負債性資金の累計調達金額は6億9000万円となった。

DATAFLUCTは2019年の創業以来、「データを商いに」というビジョンのもと、社会課題の解決を軸に各業界に特化したデータサイエンスサービスを展開。11月時点で公開したサービス数は20を超える。スタートアップの活躍が期待されるESGやSDGsの視点からも新たな課題に取り組み、7月には「脱炭素」を事業機会に変えるアイデアとして、決済データから消費のカーボンフットプリントを可視化するサービスを公開し、事業化に向けた取り組みを進めている。

企業の9割以上の企業がDXに着手できていないという現状の中(経済産業省「DXレポート2(中間取りまとめ)」)、DATAFLUCTは多数の大手企業のDXを支援してきた。今回調達した資金は、マルチモーダルデータプラットフォームサービスを中心とした新規サービス開発および既存サービスの強化、マーケティング強化にあてられる。構造化・非構造化を問わず、あらゆる種類のデータをつなげて資産化し、ノーコード、エンドツーエンドで活用できる環境を提供する「マルチモーダルデータプラットフォーム構想」の実現に向け、新規サービスの投入および既存サービスの強化に順次取り組む予定。

11月下旬には、ノーコードのエンドツーエンド機械学習プラットフォーム(マルチクラウドAutoML)「DATAFLUCT cloud terminal.」をリニューアル。12月中旬には新規サービスとして、社内に散在するデータや外部のオープンデータの集約のほか、非構造化データの構造化などの前処理をAI技術で実行しカタログ化するデータレイク/データウェアハウス「AirLake」(エアーレイク)を提供開始する予定。データ活用支援のDATAFLUCTが2.5億円の資金調達、マルチモーダルデータプラットフォーム開発を強化

今後も、SCM(サプライチェーンマネジメント)のための需要予測プラットフォームサービスやノーコード対話型BIプラットフォームサービスを投入し、オールインワンでソリューションを提供するため事業の強化を目指す。これまでに分析の材料とされていなかったデータを利用したり、データ同士を新たに組み合わせられる環境を提供することで、これまでにない洞察を獲得できる「データの資産化」を推進するサービスを継続的に開発し、専門知識や技術の有無にかかわらず利用できるUI/UXの採用によってデータ活用人材の拡張を図りたいという。

オンラインの接客機能をノーコードで構築するプラットフォームEasySendが63億円以上を調達

ノーコードは、これまで非技術系の従業員が何かをしたいときに技術の専門家に頼らざるを得なかった企業で、ITのさまざまなレイヤーに浸透しつつある。そしてノーコードのツールを開発するスタートアップの事業は急成長し、多額の資金を調達している。

最新の事例を紹介しよう。EasySendはテルアビブのスタートアップで、コーディングの言語をまったく知らなくても顧客とやりとりする機能をドラッグ&ドロップのインターフェイスで構築できるプラットフォームを開発している。そのEasySendがシリーズBで5050万ドル(約57億5700万円)を調達した。同社はこの資金でプラットフォームで利用できるテンプレートを増やし、人材を雇用し、事業開発をしていく。

このラウンドを主導したのはOak HC/FTで、これまでに支援していたVertex IL、Intel Capital、Hanaco Ventureも参加した。EasySendによれば、これとは別にSilicon Valley Bankから500万ドル(約5億7000万円)のベンチャーデットによる調達も実施したという。EasySendのCEOで、COOのOmer Shirazi(オメル・シラジ)氏、CTOのEran Shirazi(エラン・シラジ)氏とともに同社を創業したTal Daskal(タル・ダスカル)氏はEasySendのバリュエーションを明らかにしていないが、前回のバリュエーションの5倍になったと述べた。

参考までに以前の数字をあげると、PitchBookは同社の前回ラウンド時のバリュエーションを3140万ドル(約35億8000万円)と推定しており、この数字が正しいとすれば現在のバリュエーションはおよそ1億5700万ドル(約178億9800万円)となる。いずれにしてもEasySendは、特に米国の売上が10倍とビジネスを急速に成長させている。

現在EasySendはおよそ100社の顧客を抱え、その分野は教育、行政、金融サービス、保険など多岐にわたる。特に金融サービスと保険の分野に強く、Cincinnati Insurance、NJM Insurance Group、PSCU、損保ジャパン、Petplanなどが同社を利用している。

同社の調達金額の合計は7150万ドル(約81億5100万円)となった。

EasySendがターゲットとしているのは、紙のフォームを作って顧客の情報を集め、非技術系の従業員がそうした資料を扱うことが多い市場だ。

企業が顧客サービスをバーチャルの環境に移行する傾向が急激に進むにつれて、企業は紙ベースの業務から離れることを求められている。ダスカル氏によれば「企業がデジタルカスタマージャーニーをゼロから作るための支援をする」ことに、EasySendのチームはチャンスを見出した。同社はまず旧来型の銀行に目をつけたが、類似する多くの市場に同様の問題とソリューションの可能性があることにすぐ気づいた。

さらにコロナ禍もその展開に影響を与えた。多くの企業で「デジタルトランスフォーメーション」と呼ばれる変化が推進され、紙ベースのオフライン業務を急速に減らしていった。これによりさらに多くの企業が、従業員に配慮しデジタルツールを使って仕事をする手段の1つとしてEasySendを利用するようになった。

そして、アナログツールを置き換えるデジタルツールは往々にしてアナログより機能が多い。EasySendがこれまでも開発し、今後充実させていこうとしている領域の1つが分析だ。分析機能があればユーザーは自分が構築した顧客とのやりとりに関するエンゲージメントを追跡できる。ダスカル氏はTechCrunchに対し、近いうちにAIのインサイトを強化してトレンドや予測のデータをもっと提供できるようにすると述べた。

EasySendは今後の投資で「カスタマージャーニー」のユースケースを充実させていくだけではなく、RPAなどのテクノロジーを取り入れて他の業務とも統合できるプロセスを開発する計画だ。IDの確認、電子署名などのテクノロジーといった他社の新しいサービスを組み合わせれば、さらに複雑で幅広い接客を扱える可能性がある。

Oak HC/FTのパートナーであるDan Petrozzo(ダン・ペトロゾ)氏は発表の中で「今日、企業が競争力を持つためには、これまで以上に優れた顧客体験を創造する必要があります。EasySendは、企業がデジタル・エクスペリエンスを迅速かつ効率的に顧客に提供する方法を変革しました。企業をデジタル時代に導く点でユニークな立場にあるEasySendには、今後大きな成長の機会があると信じています。投資はその結果です」と述べた。

画像クレジット:EasySend

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Kaori Koyama)

プレイも開発も、Manticoreのゲーム制作プラットフォームCoreは「メタバースの入り口」

自称「終わりなきアーケード」のCoreは、90年代のサイバーパンク熱の夢が現実のものとなったようだ。プレイ可能なゲームライブラリでもあり、ノーコードのゲームクリエイターでもある。すべてがネオンライト。この新しいプラットフォームは、誰もが最近話題にしていそうなこのメタバースのビジョンを驚くほど巧みに具現化している。

「マルチバースへのポータル」と謳うCoreは、長年の命題をテストする準備が整っている。構築すれば実現に向かう。RobloxやFacebookのような巨大企業は大規模なプラットフォームを確立しているかもしれないが、Coreはクリエイターにとってもプレイヤーにとっても非常に魅力的な基盤を築いている。

ログインすると、プレイヤーはコアの中心的なハブに移動する。そこはテーマパーク、ハイテクモール、カジノがちょうどよく交差した場所で、エンターテインメントやショッピングは重力の影響を受けずにあらゆる方向に広がっている。巨大なネオンサインに誘導され、プレイヤーは多種多様なユーザー生成バーチャルワールドに飛び込んでいく。服やゲーム内のギアを交換したり、友人を誘って自分と一緒に参加させたりするのも、ほんの数回クリックするだけで実行できる。

Coreが「Fortnite」(フォートナイト)によく似ているとしても、それは偶然ではない。Manticore Games(マンティコア・ゲームズ)が作ったCoreは、FortniteのメーカーであるEpic(エピック)のUnreal Engine(アンリアル・エンジン)で動く。Epicは2019年に同社への1500万ドル(約17億円)の投資ラウンドを主導しており、同プラットフォームはPC向けのEpic Games Store(エピック・ゲームズ・ストア)を通じてのみ提供されている。Manticoreは2021年3月、大手投資家からさらに1億ドル(約114億円)を調達し、クリエイタープラットフォームを公開した。

画像クレジット:Manticore Games

Coreはまだ誰もが知っている名前ではないかもしれないが、メタバースを熱望する人なら克服しなければならない課題の1つをすでに解決している。Coreでプレイしていたとき、ある場所から別の場所への移動の体験があまりにもシームレスで、間違った場所に迷い込んでしまったことがよくあった。これはユーザーのミスだろうと思うが、Deadmau5(デッドマウス)のショーや、肥大化したディストピアの荒れ地、アイソメトリックな海賊ゲームなど、さまざまなポータルを経由して瞬時に移動することは、こうしたゲームに10年以上携わってきた中で、最もシームレスなオンラインマルチプレイヤー体験といえるものだった。

Coreはすばらしい。メタバースのビジョン構築で最も成功した企業の1つRoblox(ロブロックス)に対して際立つ攻撃力を示している。Fortniteと同様、Coreのグラフィックは非現実的ながら、あまりにも非現実的というものでもない。Robloxの13歳以下の層は年齢を重ねている。この層はRobloxが意欲的に構想を練っているファクターだ。そしてそれほど若くないプレイヤーたちは遠からず、より成熟した雰囲気のある新しいバーチャルハウスを探すようになるかもしれない。

野心的なedgelord(背伸びをした思春期の若者のような意味のスラング)なら、Coreの豊富なカスタム衣装やアバターのセレクションに自分が真剣になるような要素を見出すだろう。あるいは子猫になるかもしれない。

画像クレジット:Manticore Games

Deadmau5、メタバースの住人

Coreのコンテンツのほとんどは、UGC、つまりユーザー生成コンテンツである。これは時代を定義するオンライン現象を象徴している、やや新しい呼称だ(頭字語から総合格闘技を連想しても自分を責めないで欲しい)。しかしManticoreには、ミュージシャンやブランドと提携し、テーマを絞ったゲーム内体験を提供する余地も十分にある。

DJとEDMのフェスティバルの常連であるDeadmau 5は先に「メタバースの恒久的居住地」として描かれた広大でカラフルな一連の体験をローンチした。Coreはその大部分がユーザー作成のゲームで構成されているが、エンターテインメントや教育にも適している。一部のユーザーはゲーム開発の講座をホストし始めたと同社のチームは指摘する。

RobloxのLil Nas X(リル・ナズ・X)やFortniteのAriana Grande(アリアナ・グランデ)のような他のバーチャルワールドの最近のショーとは異なり、Deadmau 5をテーマにしたコンテンツはデビューした後もライブのままで、探索の可用性を広げている。Manticoreのチームはこれを、コメディグループPenn and Teller(ペン&テラー)のようなパフォーマーがラスベガスで進行中のショーのためにキャンプする様子になぞらえている。しかしラスベガスと違って、パフォーマーは同時に2つの場所に滞在できる。Deadmau 5は2021年10月半ば、Ethereum(イーサリアム)ベースのバーチャルプラットフォームDecentraland(ディセントラランド)で開催される音楽フェスティバルに参加することを発表した。

筆者は早めの内覧として、Deadmau 5ことJoel Zimmerman(ジョエル・ジマーマン)氏と一緒にこのショーを鑑賞した。同氏は自身のトレードマークである巨大な動物のヘルメット(ネコだろうか?)とサイボーグの天使の翼を身にまとい、一方筆者はメタバースの小さな黒いドレスともいえる地味な黒のパーカーを選んだ。

ジマーマン氏は、Deadmau 5マウスが飾られたゲーミングチェアに座って現実世界でくつろぎながら、Coreの中をあちこち飛び回り、筆者にこう語った。「私がこれに惹かれたのは、すべてがモジュール化されていて、クリエイターたちにより多くのツールを提供しているからだと考えています」。

画像クレジット:Manticore Games

バーチャルコンサートに期待されるように、このインタラクティブなパフォーマンスには、溶けるようなサイケデリック感のあるビジュアル、ミニゲーム、ターンテーブルの耳がついた威嚇的なChain Chump(ワンワン)風マウスなどがそろっている。ジマーマン氏、そしてCoreの共同創業者であるFrederic Descamps(フレデリック・デスキャンプス)氏とJordan Maynard(ジョーダン・メイナード)氏も、筆者と一緒にこのショーを少なくとも10回は回ったが、全員が本当に楽しんでいるようだった。

ある時、筆者は溶岩に落ちたか、巨大な金属の拳の一撃を受けてコンベヤーベルトにぶつかってしまったようで、近くにはDeadmau 5をテーマにした悪役がそびえ立っていた。「死ぬことを疑似体験できる唯一のインタラクティブコンサートになると思います」とメイナード氏。このショーは、視覚的にも楽しく、創造的にもインタラクティブで、最終的にはFortniteのコンサートのようなものになっていた。

Oberhasli(オーバーハスリ)と呼ばれるこの精巧なバーチャル体験は、薄気味悪いジャングルの廃墟から、浮遊する宇宙ゴミでいっぱいの不気味な世界まで、ゲーム開発の経験のないファンたちによるユニークな世界も見せてくれる。Core Deadmau 5のパフォーマンスは10月中旬に行われ、現在はオンデマンドで、EDMをバックにたくさんの要素が詰め込まれた世界に浸りたい人たちに向けて配信される。

画像クレジット:Manticore Games

クリエイターのためのCore

後にDiscord(ディスコード)で行われた電話会議の場では、Coreツアーはあらゆる人に寄り添う形で展開されており、破壊可能な壁の裏の秘密の門を走り抜けたり、ゲームのジャンルを超えて世界を飛び回るような体験が、コードやゲーム開発経験を必要としない、驚くほど洗練されたものに仕上がっていた。Wi-Fi接続が悪かったとしても、ゲームの世界から別の世界へと移動するのにほんの数秒しかかからない。World of Warcraft(ワールド・オブ・ウォークラフト)の暗いポータルのようなものを通り抜けて、最後にはアイソメトリックな海賊船で航海に出た。

このWoW(World of Warcraft)に向けた賛同は、おそらく偶然ではないのだろう。デスキャンプス氏は、真剣な長年のプレイヤーにしかできないような、キャプチャされたゲームプレイで構築されている物語風のムービー、WoWマシニマの全盛期への郷愁に満ちていた。デスキャンプス氏とメイナード氏は以前、10年以上にわたって忠実に支持されているファンタジーMMOのRift(リフト)にも関わっていた。(メイナード氏は7人目の従業員だった。)最近では誰もがそのメタバースを称賛しているが、驚くべきことに、この分野において、何年も前から人々を結びつけてきたシームレスなバーチャルゲームの世界にルーツを持つ企業はほとんどない。

画像クレジット:Manticore Games

Coreで何かを作ることがいかに簡単かを強調すべく、メイナード氏は、私たちがプレイできる1人称視点のシューティングゲームを手早く作成した。それはドラッグ・アンド・ドロップのプロセスで、Coreのシステムを使って作られたオリジナルのゲーム内アセットの膨大なライブラリに、おそらく2分ほど入り込むだけだった。いくつかの3Dオブジェクトが用意されており、テンプレート(バトルロワイヤル、レース、ダンジョンクローラーなど)からゲームモードを選ぶと、Coreのモジュール式サンドボックスに組み込まれている洗練されたプレイ可能なゲームにほぼたどり着く。冷たい雪景色や不毛な砂漠の中でのゲーム設定も、ドラッグ・アンド・ドロップと同じくらいシンプルな操作で、環境に広がりを与えてくれる。

ゲームプレイはさておき、Robloxで目にするUGCよりCoreゲームの方が何光年も先を行っているように見えるが、プラットフォームのユーザーはそのことを特に気に留めていないようだ。ビジュアルスタイルやゲームのジャンルの広さも、他のプラットフォーム上の同じようなUGCから抜け出してきた人たちにとっては驚きに値するだろう。

コンテンツを作成するコアユーザーには、Manticoreが「perks」と呼ぶ収益化のオプションがかなり充実している。これには、ゲーム内のコスメティックアイテムの提供だけでなく、プレミアムゲームへの課金、Fortniteのようなバトルパスの販売、サブスクリプションモデルの導入などが含まれている。収益の配分は50対50で、Robloxがクリエイターに渡す25%と比べると寛大だ。また、Coreでは他のモジュール式ゲーム制作プラットフォームと同様に、誰もがクリエイターであり、開発経験は必要ではない

現在のところCoreはPC限定だが、Manticoreは2022年からiOSを含む他のプラットフォームにも展開する予定だ。ゲーム制作はPCに限定されるだろうが、同社は誰もがどこでもCoreのゲームをプレイできるようにしたいと考えている。プラットフォームにとらわれないビジョンは、初期のFortniteや最近のRobloxを確実に後押ししたものだ。

「ゲーム開発はお菓子作りに似ています。非常に正確な手順と技術が必要で、何週間もかけて繰り返し行うものです」とデスキャンプス氏はいう。しかしCoreでは、技術的なことを抜きにして、通常は長引いてしまうプロセスを数分で終わらせることが可能。残りの時間を実験やプレイに充てることができる。

「マリオカートにポータルガンを取り入れたらどうだろう?」というメイナード氏の質問にも、間違いなくその場で答えが出ただろう。

画像クレジット:Manticore Games

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Dragonfly)

Cascade Labsが現場が使えるノーコードのデータ自動化プラットフォームで約6億円調達

Cascade Labsは、オペレーションチームによるデータワークフローの自動化を助ける。そのときチームは同社のノーコードツールを使って、さまざまなデータソースからデータを取り込み、必要に応じて変換し分析する。そしてその結果に基づいて、特定のプロセスが起動される。同社は米国時間11月9日、First Round Capitalがリードするシードラウンドで530万ドル(約6億円)を調達したことを発表した。このラウンドには、Redpoint PartnersやSusa Ventures、それに多くのエンジェル投資家が参加している。

Cascade Labsは、CEOのJake Fuentes(ジェイク・フェンテス)氏とCTOのJon Brelig(ジョン・ブレリグ)氏が共同で創業した。フェンテス氏は以前、パーソナルファイナンスサービスLevel Moneyを共同で創業しているが、同社は2015年にCapital Oneが買収している。ブレリグ氏は以前、InfoScout(現Numerator)を共同で創業。CTOだったが、2019年9月にCascade Labsの創業に参加した。

画像クレジット:Cascade Labs

ブレリグ氏によると、InfoScoutでは多くのOpsやアナリストたちがデータの分析に関しては高度なスキルを持っているが、その後、ワークフローの自動化に関しては技術がないことを見てきた。たとえばそれは、各週の複雑な報告書を、大量の手作業なしで作る、といった技術だ。

一方、フェンテス氏は、同じ問題をやや違う視点で見ていた。「自分の最後の企業をCapital Oneに売ったが、ご想像どおりそこは、分析が重視されるところです。しかし、仕事をよく知っている現場の人間が、我々にはアクセスできた大量のデータにアクセスできる範囲は、依然として限られていました。そこで私はCapital Oneを辞めた後、ジョンとこの問題を話し合うようになった。InfoScoutとCapital Oneで企業は違うけど『たぶんこれは実際には同じ問題なんだ』という認識からCascadeがスタートしました」。

企業がデータにアクセスして探求するツールは、当然ながらすでにたくさんあったが、フェンテス氏たちのチームは、データを調べることと実際にそれを活かすことの間に断絶がある、と主張している。「たとえばCapital Oneで必要とされていた偽のオペレーションが、まさにそのタイプだ。そしてInfoScoutは顧客に正しく奉仕することが必要だった。データをオペレーションに正しく活かすには、現在そこらにあるのとはやや違ったツールが必要だと思っている」とフェンテス氏は語る。

画像クレジット:Cascade Labs

きれいなダッシュボードをいくら作っても、データツールを作ることはできない。たとえばそのデータはスクーター企業を助けて、充電や修理のための夜間ピックアップをやることになるかもしれない。Cascade Labsでは、オペレーションのチームが、最もありふれたソースからデータを取り出すことができる。必要ならそれは、CSVのファイルでもよい。そしてそれを軸に、ワークフローを作る。それはごくベーシックなDXかもしれないし、その他の標準的なデータ操作かもしれない。Cascade Labsは、ちょっとした予測能力も提供する。通常は、それらのワークフローの終わりにはアクションがある。それは、修理が必要なスクーターの車種をメールで尋ねるというアクションかもしれない。

投資家を代表してFirst RoundのパートナーであるBill Trenchard(ビル・トレンチャード)氏は次のように語る。「今も進行中のトランスフォーメーションの先頭にはLookerがいたと思う。それは、実際にビジネスを動かしている組織の適切な人たちに、適切なデータをどうやって届けるか、という問題だ。その点でCascade Labsがやってることは、進化だと思う。彼らが今いる場所は、ノーコードのツールと、非技術系のクリエイターがまるでエンジニアのように作れるという、2つの動きの交差点だ。それが、モダンなデータスタックの勃興です。両者の組み合わせで企業はデータを、これまでありえなかったまったく新しい方法で活用できます」。

彼によると、ダッシュボードを作るような統合ツールは今たくさん出回っているが、Cascade Labsの仕事は正しいデータを正しい人に届けることだという。

画像クレジット:Cascade Labs

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Landing AIがデータセントリックMLOpsツールで次世代AIを実現するため約64.5億円の資金を確保

Landing AI(ランディングAI)は、主力製品の発売からわずか1年余りで、製造業者がより簡単かつ迅速に人工知能システムを構築・導入できるツールの開発を続けるために、5700万ドル(約64億5000万円)のシリーズA資金を獲得した。

元GoogleとBaiduのAI第1人者であるAndrew Ng(アンドリュー・ン)氏が立ち上げた同社は、AIとディープラーニングを応用して製品の欠陥をより迅速かつ正確に見つけることができる目視検査ツール「LandingLens」を開発した。

ン氏は、産業界はAIの構築にデータセントリック(=データ中心)アプローチを採用すべきだと述べている。これは、メーカーがAIモデルに何をすべきかを教えるためのより効率的な方法を提供するもので、マウスを数回クリックするだけで高度なAIモデルを1日足らずで構築できるノーコード / ローコード機能を備えている。

「我々はデータセントリックAIのムーブメントをキックオフし、他の企業がそれを話題にし始めたことを非常に喜ばしく思っています」。と同氏はTechCrunchに語った。「製造業では、工場ごとに異なることをしているので、多くのマンパワーを雇うことなく、1万社のメーカーが1万種類のモデルを作るのをいかに支援するかが問題になります」。

創業者兼CEOのアンドリュー・ン氏(画像クレジット:Landing AI)

マッキンゼーの調査によると、AIは2030年までに世界の経済に13兆ドル(約1470兆円)の実現価値を生み出すと予想されている。ン氏は、さまざまなAIモデルを構築することが依然として困難であるため、まだその多くが実現されていないと語る。

同氏は、Landing AIがこれらのモデルを構築するためのコードを解明したと考えており、製品のマーケットフィットを確認し、製品をより良くするためにチームを拡張できるようにしたいと考え、シリーズAラウンドを調達した。

インダストリアルIoT(IIoT)に特化した投資会社であるMcRock Capitalがこのラウンドを主導し、Insight Partners、Taiwania Capital、Canadian Pension Plan Investment Board(CPP Investments)、Intel Capital、Samsung Catalyst Fund、Far Eastern GroupのDRIVE Catalyst、Walsin Lihwa、AI Fundが参加した。

Landing AIは製品の構築に向けて前進しているが、ン氏は、同社がデータセントリックAIムーブメントの初期段階にあることから、さらなる進歩を遂げ、まだ不足している技術を革新していきたいと述べている。

例えば、以前、3億5千万のデータポイントを持つ音声認識システムを構築した際、それだけ多くのデータポイントのために発明されたAI技術は、欠陥を見つけるための画像が限られている製造現場ではうまく機能しないことがわかったという。データセントリックな動きの一環として、50枚以下の画像を活用して、何が欠陥なのかを明確に示すことで、ドメインエキスパートを支援するツールを開発している。

ン氏は次のように述べている。「当社はこれが機能する段階に達しており、すべてをスケールアップしたいと考えています。どうやってレシピを解読してAIを他の業界に持っていくか、何年も前から関心を持ってきましたが、データセントリックAIでようやくそれが実現しつつあります」。

画像クレジット:Landing AI

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(文:Christine Hall、翻訳:Aya Nakazato)

AIを活用したエンジニアリング卓越性プラットフォームのPropeloがシリーズAで約13.6億円を調達

ここ数年、DevOpsツールの数は飛躍的に増加しており、それにともない、企業がソフトウェア開発プロセスを改善するためにそうしたツールが生み出すデータの量も増加している。しかし、ほとんどの場合、これらのデータは単にダッシュボードの中でばらばらに分析されている。Propelo(旧社名:LevelOps)は、この混沌とした状況に秩序をもたらしたいと考えており、機械学習(ML)を活用した分析サービスとノーコードのロボティックプロセスオートメーション(RPA)ツールを組み合わせた「AI駆動のエンジニアリング卓越性プラットフォーム」を構築し、ユーザーがこれらのデータポイントを実用的なものに変えられるようにすることを目指している。

同社は米国時間11月4日、Decibel Partnersが主導するシリーズAラウンドで1200万ドル(約13億6000万円)の資金調達を実施したと発表した。このラウンドには、Fike Ventures、Eniac Ventures、Fathom Capitalも参加した。

Propeloの創業者兼CEOであるNishant Doshi(ニシャント・ドーシ)氏は、2015年にPalo Alto Networks(パロアルトネットワークス)が買収したSaaS型セキュリティサービス、CirroSecureを共同創業した経験がある。その後、Palo Alto Networksに数年間在籍し、シニアディレクターやエンジニアリング担当VPとして、DevOpsツールの爆発的な普及を身をもって体験した。開発プロセスをよりよく把握するために、チームはJira、GitHub、Salesforceなどのソースからデータをつなぎ合わせる必要があった。

画像クレジット:Propelo

「これは手作業が多く、多大なリソースを必要とします」と同氏は語る。「ビジネスの核心にフォーカスしていないのに、解決策を探そうとすると、いつも別のツールが必要になってしまうのです。また、それらのツールを手に入れても、何を測定すればよいのかわかりません。当社のような専用のソリューションがもたらす進歩にアクセスできず、さらに重要なのは、行動可能性がないということです」。

画像クレジット:Propelo

そして、最後の部分がキーポイントだとドーシ氏は強調する。優れたデータや分析結果があっても、その情報に基づいて実際に行動を起こすことができなければ、開発プロセスを改善することはできない。PropeloのRPAツールを使えば、ユーザー(同社によれば、主にエンジニアリング・リーダーシップ・スタックのユーザーを対象としている)は、企業内のDevOpsプロセスを改善するための多くのタスクやワークフローを簡単に自動化することができる。

このサービスは現在、Jira、GitHub、GitLab、Jenkins、Gerrit、TestRailsなど、約40種類のDevOpsツールと連携している。Propeloは、AIを活用することで、ユーザーが隠れたボトルネックを発見したり、スプリントが失敗しそうなタイミングを予測したりできる。実際、データの衛生管理やJiraチケットの更新は、ほとんどの開発者があまり考えたくないことなので、Propeloは定期的に開発者にそれを促すことができる。

現在のPropeloのユーザーには、Broadcom(ブロードコム)やCDK Globalなどがいる。Broadcomでセキュリティ技術とエンドポイントソリューションを担当するエンジニアリングVPのJoe Chen(ジョー・チェン)氏はこう述べている。Propelo は、DevOps の摩擦を減らし、無駄な動作を減らす方法について、スクラムチームごとの非常に細かいレベルで、データに基づいた洞察を提供してくれます。これは、追加技術投資の効率を最大化し、エンジニアのペインポイントを取り除くのに役立ちます」。

画像クレジット:

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

あるスタートアップが消費者向けトレーディングのブームを変える

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

みなさん、お元気でお過ごしだろうか。今回は取り上げる話題が山のようにある。消費者向けフィンテック市場における魅力的なスタートアップのラウンドに関するメモ、AppianのCEOであるMatt Calkins(マット・カルキンス)氏と決算説明会に行ったインタビューによるローコードの世界に関するメモ、そしてIPOたち、Kidas(キダス)のベンチャーキャピタルラウンド、ビルの「公開」、NFTなどをすばやく紹介していく。では始めよう!

あるスタートアップが消費者向けトレーディングのブームを変える

Robinhood(ロビンフッド)は、投資やトレーディングに対する消費者の関心の波に乗り、株式を公開するまでに至った。最近では、いくつかの失敗があったものの、同社は株式の購入だけでなく、より魅惑的なオプション取引に対する市場の関心の高さも証明している。

今回話題にしたいのは後者だ。シカゴにゆかりのある分散型スタートアップOptions AI(オプションズAI)が、410万ドル(約4億6000万円)のシードラウンドを実施した。私はこの会社の創業メンバーを知っていたので、会社についでも以前から知っていたものの、これまであまり書く機会がなかった。

だがAkuna Capital、Miami International Holdings、Optiver Principal Strategic Investmentsの3社のリードインベスターなどから資金を調達したいま、取り上げる時期にきたといえるだろう。

基本的にオプションは複雑であり、トレーディングに臨む多くの人々は、手をつけようとする時に。良い選択をするためのツールや洗練された技術を持ち合わせていない。私の意見を疑うなら、トレーディングをやっている友人にオプション戦略について聞いてみると良いだろう。きっと複雑さが理解できるやりとりになる筈だ。

Options AIは、トレーダーが執行する前に対象のトレードをよく確認して、マルチレッグオプションなどを扱う際により良い選択ができるようなツールを開発した。これは非常に優れたツールで、以前からオプション取引の仕組みや価格付けについて漠然としか理解していなかった私にとっては、しっかり理解を深めるのに役立った。

しかし、Options AIが私の興味を引いた理由は、チャートが優れているということだけではない。もう1つの理由は、トレードに課金することだ。このスタートアップは、トレードコストを一律5ドル(約567円)としているため、Robinhood(ロビンフッド)やWebull(ウィブル)などが近年追求してきた無料トレーディングの流れに逆らって泳いでいることになる。

現在、Options AIは株式オプションを扱っているが、The Exchangeには、そのうち暗号資産や先物オプションを追加するかもしれないと語っている。同社は現在の状況を、これまで開発しテストしてきた場所から頭を出した状態だと述べ、初期の人気とユーザーデータから何かを掴んだと考えている。もちろん、新しい投資家たちもそう思っているだろう。

さらに話を進める前に、オプションに関するデータを。大手消費者向けトレーディングプラットフォームが、なぜオプション取引に興味を持つのだろうか?なぜなら、めちゃくちゃ儲かるからだ。例えばオプショントレーディングのおかげで、Robinhoodは2021年第3四半期に6400万ドル(72億6000万円)の収益をあげた。一方株式トレーディングの収益は5000万ドル(56億7000万円)だった。これはビッグビジネスなのだ。

また、一律手数料とPFOF(ペイメント・フォー・オーダーフロー)の収入があることで、Option AIは十分な数の人々を集めることさえできれば、かなり魅力的な市場ポジションを得ることができる。スタートアップのターゲットユーザーは誰だろう?トレードを始めてはみたものの、もう少し専門的なツールが欲しいという人に向いていると思う。そしてRobinhoodの数字は、そのようなユーザーが相当数存在する可能性を示している。

Option AIのトレーディングの成長データを得たときに続報をお知らせする。

SaaSの価格設定を揺るがす

これまでTechCrunchは、SaaSの価格設定の議論を、サブスクリプションとオンデマンドまたは使用量ベースの価格設定レンズを通して検討してきた。現在、多くのスタートアップ企業が、(オンデマンドの価格設定がより理にかなった)APIとして誕生しているため、このレンズは市場の進化を見る上で良い視点になっている。また、市場にはSaaS疲れも見られる。

そんな中、Appian(アピアン)は少し変わったことをしている。先週、同社のCEOであるMatt Calkins(マット・カルキンス)氏を決算説明会の後でつかまえて、ローコード市場、プロセスオートメーション、プロセスマイニングについての話を中心に聞いてみた。Appianは、顧客が自動化すべき点をプロセスから抽出し、必要に応じて設計や自動化を行うことができるソフトウェアセットを提供している企業だが、私たちはその内容はもちろん、価格についても話し合った。

Appianは、利用無制限の価格設定を用意している。これは、使用量に上限のないSaaSのようなものだ。SaaSはアカウントやアプリケーションごとに価格が設定されることが多いのだが、カルキンスらはSaaSとオンデマンドの良いところをミックスしたような試みをしている。もっと簡単に言えば、1年分のサービスを定額制にして利用制限を設けないことで、顧客にAppianのサービスをたくさん使ってもらい、そのプラットフォームにどっぷりとハマってもらおうとしているのだ。

カルキンス氏は、公開企業のCEOとしては不自然なほど「無制限プランは、一部のお客様にとって非常にお得なプランになるかもしれません」と明言した。カルキンス氏は、価格設定に「イノベーション」を起こしたいと口にする。彼は、利用無制限の価格設定モデルを提供することで、顧客がAppianの技術を使って多くのものを作り、他の価格設定メカニズムで支払うよりも少ない金額で済ませる可能性があるものの、それは顧客にAppianの技術を全面的に使ってもらうためのコストに過ぎないと強調した。

上手く行けば、Appianは利益率の高い高収益を生み出すことができる長期顧客を持つことになるだろう。悪い取引ではない。

IPOまとめ

  • HashiCorp(ハシコープ)が上場を申請したので、その数字を調べてみた。結果はこちらで
  • 消費者直販のAllBirds(オールバーズ)は、IPOの価格を予定レンジよりも高く設定し、取引開始時にはさらにポイントを上昇させた。価格情報はこちら、財務情報はこちら
  • NerdWallet(ナードウォレット)は、IPOの価格を中程度に設定したが、その後高値で取引された。その後、少しずつ価格は下がったが、それでも見事なデビューを果たしている。金融関連の報道はこちらこちら。(そして、元TechCrunchのFelicia Shivakumar[フェリシア・シバクマール]氏にもエールを送りたい。彼女はかつて、私がTCのためのビデオショーを立ち上げる際に手伝ってくれた。非常に優れた人間であると同時に、現在はNerdWalletで働いている!)。
  • Nubank(ヌーバンク)が株式公開を申請したことで、その経営の数字の一端が明らかになった
  • Bird(バード)のSPAC取引が完了したが、初日は ベストではなかった
  • そして最後に、Backblaze(バックブレイズ)は自社のIPOに向けて最初の価格設定を行った。これは、同社の手堅い収益規模を考えると魅力的なことだと思う。

その他のこと

  • 先週私の目に飛び込んできたKidas(キダス)は、親と協力して子どもたちがオンラインゲーム環境で安全に過ごせるようサポートするスタートアップだ。これまでの控えめな資金調達に加えて、今回200万ドル(約2億2700万円円)を調達した。同社はThe Exchangeに対して「親御さんにとっては、他の方法では得られない新しい情報が得られ、それによって好きなものを介してお子さんたちとより良い関係を築くことができます」と語っている。
  • 私は権力者が配下の者のデジタル活動の制約を強めるようなことは、決して良いことだとは思わない。しかし、ゲームの世界ではコミュニケーション手段が急速に多様化しているため、保護者は何らかの監視を必要とするだろう。
  • 注目すべきは、そのツールがゲームプレイを妨げないことだ、つまりアンチチートソフトウェアを反応させないということである。これは本当に本当に重要なことだ。
  • 会社の詳細はまた別の機会に紹介するが、本拠地はフィラデルフィアで、私はそこに惹かれた。
  • ビルが「公開」された:私たちのIPOのセクションとは関係しないが、私が動向を薄くトラッキングしているLEX Capital Markets(レックス・キャピタル・マーケット)というスタートアップが、1つのビルを債権化して公開した。この会社は、実にすてきなモデルを提供している。覗いてみる価値があるだろう。
  • そして最後に、最近のNFT(非代替性トークン)報告の延長だが、、Mythical(ミシカル)がNFTを取り入れたゲームのために1億5000万ドル(約170億円)を調達したところだ。NFTの風はそこに向かっているのかもしれない。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

DXを推進する日清食品がアプリを内製、ノーコード・ローコードで営業担当が25時間で完成

日本マイクロソフトが10月11日から14日にかけて開催中の「Microsoft Japan Digital Days 2021」では、生産性や想像力を高め、組織の競争力に貢献するソリューションや、その導入事例について学べるプログラムが提供されている。

Day 2の10月13日13時5分に行われたセッション「外注から内製化へ。製造業が取るべき次なる一手!日清食品グループが実現した『低コスト』『高スピード』のアプリケーション開発の世界」では、IT企業ではない日清食品がDX推進の一環として行ったアプリ内製化について語られた。その様子をレポートする。

登壇者は日清食品ホールディングスのCIO成田敏博氏と情報企画部係長武田弘晃氏だ。

老舗食品製造企業がアプリ内製化に取り組むようになった背景

日清食品ホールディングスCIO成田敏博氏

日清食品は1948年に設立された70年を超える老舗の食品製造企業だ。売上収益は約5000億円、営業利益が約550円という企業規模である。

2030年に向けた成長戦略テーマ「既存事業のキャッシュ創出力強化」「EARTH FOOD CHALLENGING 2030」「新規事業の推進」を達成するのに欠かせないのが「フードテックイノベーション」であるとしており、デジタルのみならずビジネスの変革も含むためNBX(日清ビジネストランスフォーメーション)としてDXに取り組んでいる。

取り組みを大きく2つの柱に分けており、その柱の1つ「効率化による労働生産性の向上」内に「ツールの最大活用」がある。

同社では、従業員にSurface Proを支給しており、ほとんどの業務がSurface Pro、つまりノートPCで行われているが、工場内作業中、取引先への移動中などではモバイル端末のほうが操作しやすい。腰を落ち着けて作業できる環境であっても、スキマ時間にノートPCを取り出し、起動し、テザリングをし、検索するといった動作は時間や手間がかかる。

そのため、ツール開発に「モバイルファースト」を掲げ、できるだけモバイルで業務を行えるようにすることを目指した。

しかし、製造業のためエンジニアを多数抱えることは現実的ではない。かといって外注では社内のニーズに迅速に対応できない。

そこで、2021年に入ってから内製化のため「ノーコード・ローコード」でのアプリ開発を検討。Power Appsを活用したアプリ開発に取り組むことになったのだ。

25時間で開発した営業活動を助ける商品検索アプリ

日清食品ホールディングス情報企画部係長武田弘晃氏

どの企業でもそうだが、日清食品グループでも営業担当者は商談など外回りが多い。移動中やスキマ時間に、得意先から質問されるであろう商品について調べるには、ノートPCよりモバイル端末に優位性がある。

とはいえ、商品データベースにアクセスするには、支給されているノートPCからしか行えず、開くのが難しい場合は社内の営業事務担当者に当該製品の検索を依頼していたという。場合によっては、検索してもらったものが正しいかを確認後、取引先へメールしてもらうということも行っていた。

これでは、営業事務担当者は、その都度、行っていたかもしれない作業の手を止めて、依頼に応えなければならないし、外回りをしている営業担当者にもストレスがかかってしまう。

そこで、すでにMicrosoft Listsに格納している商品データベースをスマホで検索できるような商品検索アプをMicrosoft Power Appsで開発することにした。

アプリの開発に要した時間は、開発のためのトレーニング、フィードバックを受けての修正の時間も含めてわずか25時間。内訳は、ハンズオントレーニングが2時間、大枠の作成に10時間、日清らしいデザインや使い勝手の追加に7時間、営業戦略部門へβ版の説明を行うのに1時間、そしてフィードバックを受けて行った機能の追加開発に5時間だ。

同アプリの特徴としては、商品検索時に品目コードでも略号でも商品名でも検索できること、入力文字列も全角半角、大文字小文字、ひらがな・カタカナを問わず直感的に利用できること、フィルターやソートはコンボボックスではなくワンタップで検索できるボタン形式を採用していること、ヘルプのキャラクターに同社のキャラクター「ひよこちゃん」を使っていることなどがある。

また、閲覧履歴を設けて移動中に調べた商品情報にすばやくアクセス可能にした他、手元にある商品のバーコードをスマホカメラで読み取って、当該商品の情報もクイックに得られるようにした。

フィードバックによって追加された機能は、商品情報を得意先へメール送信するというもの。おかげで、社内にいる営業事務担当者へ都度連絡する必要がなくなったという。

Power Appsを選んだ理由として武田氏が挙げた理由は3つ。1つ目はすでに同社内で使ってたMicrosoft 365製品群との相性が良いこと、2つ目はその契約範囲内で使えたため追加コストがかからなかったこと、最後は短期間でユーザーが望む機能拡張が行われていることだ。

これまでは、Microsoftパートナー企業に開発を依頼していたという武田氏。しかし「それでは社内ナレッジが蓄積できず、いつまでたっても自社開発が行えない」と考えた。それでは、社内のニーズに迅速に応えるというNBX取り組みの趣旨に反してしまう。

そこで、MicrosoftパートナーであるAvanade(アバナード)に、アプリ開発のハンズオントレーニングや開発に必要な情報のQ&Aといったサポートを依頼。その甲斐あって、25時間という短時間でのアプリ開発に成功した。

アプリβ版を営業戦略部門へ公開した際の反応は「早く使いたい」「いつから使えるの?」といったポジティブなもの。「ユーザーが、使ってハッピーになれるUI / UXであると確信した」という。

完成版のリリースには、事前告知として全国の営業担当者向けにデモを行い、ついでリリース時にイントラネットとオンライン社内報などを使って告知を行った。その結果、使い勝手の良さもあいまってリリースから短期間で浸透し、多くの人が利用するようになった。

成功の要因は開発環境にPower Appsを選んだこととユーザーファーストの思想

Microsoft 365とのシームレス連携を考えてPower Appsを選んだ日清食品グループだが、メリットが多かったという。それはUIの作成が容易だったこと、標準機能が充実していること、ローコードであることだ。

Power Appsを選んだこと以外に、プロジェクトの成功要因として、武田氏は3つのものを挙げた。

1つ目はユーザーファーストに基づいた開発を行ったこと、2つ目ははUI / UXにこだわったこと、最後はAvanadeのサポート力の高さだ。

「ソリューションファーストだったら、ユーザーがハッピーになるソリューションを開発できなかったはず。また、日清らしい親しみやすさや直感的な操作感へのこだわりをもって開発したため、ユーザーが使いたいと思うようなものを作ることができた。そしてこれらは、アプリ開発において不慣れだった自分たちの質問や相談にクイックに応じてくれたAvanadeの高い技術力なしにはなし得なかった」(武田氏)

外部にツール開発の依頼を出していれば得られなかったナレッジは、部内で共有した。それにより、Power Appsができることを把握し、アプリのメンテナンスも行えるようになり、ユーザーのニーズにアプリ開発で応えられるかもしれないという選択肢を持つことができ、同社のモバイルファーストをさらに推進することが期待される。

日清食品グループでは「ハッピー」「クリエイティブ」「ユニーク」「グローバル」という4つの思考をバリューとして捉えている。

アプリ開発の内製化は、ユーザーが抱く課題を解決するものになるため、またノートPCでは作業しづらい環境でもモバイルで業務ができるため、さらに使いたくなるUIであるため、ユーザーにハッピーをもたらすものとなる。

「製造、販売、倉庫といったそれぞれの現場で業務をしやすくするため、またBCP対策としても有効なモバイルファーストを今後も推進していくことで、日清食品グループのDX化をさらに推進していきたい」と武田氏は述べて、セッションを終了した。

中高生向けに「はじめてのAppSheet」、エクシードがGoogleのノーコードツールAppSheet用教材を11月から提供開始

中高生向けに「はじめてのAppSheet」、エクシードがGoogleのノーコードツール「AppSheet」用教材を11月から提供開始

子ども向けプログラミング教室「Tech for Elementary」(TFE)の運営などを行うエクシードは10月13日、中高校生向けにGoogleのノーコードツール「AppSheet」が楽しく学べる教材「はじめてのAppSheet」を、TFE向け教材として2021年11月より提供開始すると発表した。

TEFでは、「ひとりでも多くの子どもたちにプログラミングの機会を提供する」というミッションのもとで、映像授業をベースとしたプログラミング教室を、フランチャイズ事業として展開している。そこでは、ビジュアルプログラミング言語「Scratch」の他、その次の段階として本格的なテキスト形式のプログラミング言語を使ったアプリ開発なども教えているが、プログラミング言語へ歩を進める生徒は全体の2割前後しかいないという悩みを抱えている。

その原因としては、プログラミング言語が難しい、教えられる講師が少ない、追加の授業料を払える保護者が少ない、中学生になると勉強や部活で忙しいといったことが考えられる。そこでエクシードは、Scratchと本格的なプログラミング言語をつなぐ中間的な存在として、GoogleのAppSheetを採り入れ、ノーコードでの本格的なアプリ開発のための映像授業を開発した。

AppSeetは、GIGAスクール構想で導入されている端末のうち約40%を締めるChromeOSで利用できるスプレッドシート「Google Sheets」との親和性がよく、無料で使えるなどの点で選ばれた。本格的なアプリやインターフェイスが構築でき、テキスト形式のプログラミング言語や「情報」科目への興味につながること、さらに、将来の進学や就職にも役立つことが期待されている。

中高生向けに「はじめてのAppSheet」、エクシードがGoogleのノーコードツール「AppSheet」用教材を11月から提供開始

GIGAスクール構想で導入されている端末のOSシェアは、ChromeOSが40.1%、Windowsが30.4%、iOSが29.0%となっている。その他には、AndroidとMacOSを含む。文部科学省「GIGAスクール構想の実現に向けた端末の利活用等に関する状況(令和3年7月末時点)について(速報値)

エクシードは今回の教材提供を、「中高生という時期において、テクノロジー教育が断絶してしまうのではという危惧、危機感と、DX人材や市民開発者の早期育成を民主化することで、IT人材の量的確保に貢献できるのでは、という希望が伴ったもの」だとと話している。

グーグルがGmailに自動化サービス「AppSheet」導入、JiraがChatとSpacesをサポート

Google(グーグル)は米国時間10月12日、同社の自動化サービス「AppSheet」の新機能を発表した。Googleのノーコードプラットフォームを利用する開発者は、Gmailと直接やり取りするカスタムアプリケーションや自動化機能を作成できるようになる。開発者は、動的メールを利用して、ユーザーがGmailの受信トレイの中で起動・実行できるアプリケーションを開発することができるようになる。2019年にGoogleが動的メールを発表して以来、それが可能なことはわかっていたが、多くの開発者がこの機能を実際に利用しているとは言えない状況だ。

AppSheetの開発者は、例えば、ユーザーがメール上ですぐに更新できる承認ワークフローや資産管理システムを開発できるようになる。

AppSheetの創業者で、同社をGoogleに売却したCEOのPraveen Seshadri(プラビーン・セシャドリ)氏は、AppSheetのミッション全体の中で今回のステップは小さいながらも重要だと述べた。同社のミッションは、多くのユーザーが自分のアイデアを実用的なソフトウェアに変換したり、開発者(同氏は「クリエイター」と呼ぶ)がユーザーにリーチしたりすることを可能にすることだ。

「今、私たちが取り組んでいるのは、言ってみれば『どうすればクリエイターと呼ばれる人々、つまり、物事をより良く動かす方法や自動化する方法などのアイデアを持つ人々に、それらを開発してもらうか』ということです。従来はアプリを作っていましたが、最近では『アプリをいかにエンドユーザーの体験に深く統合するか』ということを目指しています。これは、開発者がワークスペースプラットフォームを使って行ってきたことであり、今はそれを非開発者にまで広げようとしているのです」とセシャドリ氏は語る。

画像クレジット:Google

一般的に、ビジネス上の問題に最も近いのはビジネスユーザーであり、セシャドリ氏が指摘するように、彼らは通常、自動化ソリューションに何を求めているかを知っている。同氏は、ビジネスユーザーは自分でコードを書けないかもしれないが、AppSheetが宣言的アプローチに重きを置いているため、ユーザーは「その成果を達成するための非常に退屈なステップ」ではなく、成果に集中できると主張する。しかし同氏は、ほとんどのビジネスで、ノーコードのユーザーと従来のエンジニアが一緒に働いているとも指摘する。ノーコードアプリケーションの基盤となるデータベースを誰かが構築し、維持しなければならないからだ。

チームが現在注目しているのは、AppSheetプラットフォームの機能拡張に加え、それがエンドユーザーにどのように利用されるかということだ。

「従来は、アプリケーションを開発する場合、アプリケーションにアクセスして、そこで何かをしなければなりませんでした」とセシャドリ氏はいう。「私が経費精算レポートを作成しなければならないとします。そのために、経費精算レポートのアプリケーションを開きます。それは、ウェブページか何かでしょう。そして、それを実行します。さて、次に採用活動に関して何かをしなければならないとします。それを扱うアプリケーションにアクセスするでしょう。ありがちなのは、あらゆる場面で、ユーザーの文脈を変えてしまうということです。私たちが今取り組んでいるのは、クリエイターが作ったAppSheetアプリケーションをGmailに取り込むことです。そうすれば、ユーザーはその時の文脈から離れずに済みます。仕事の方からユーザーにやって来たり、アプリケーションの方がユーザーにやって来たりするわけです」。

セシャドリ氏は、Google Workspaceの中ではGmailが明確な出発点だというが、全体的な目標は、ユーザーの側に寄っていき、可能な限りユーザーが現在の仕事の文脈から離れないようにすることだ。

画像クレジット:Google

上記と関連して、次のことも注目に値する。Googleは、Atlassian(アトラシアン)と新たに統合し、その結果、JiraがGoogle ChatとSpaces(旧称「Rooms」)に組み込まれる。ユーザーはChatやSpaceからJiraの新しいチケットを作成したり、チケットのプレビューを見たり、アクティブな課題を追跡したりすることができる。Slack(スラック)やMicrosoft Teams(マイクロソフトチームズ)のユーザーはすでに利用している機能であり、Googleは単にツールボックスの足りない部分をを埋めたにすぎない。

「現代の仕事では、人々はこれまで以上に文脈やツールをすばやく切り替える必要があります」とAtlassianのチーフプロダクトオフィサーであるJoff Redfern(ジョフ・レドファン)氏は話す。「私たちは、ユーザーが日々頼りにしているツール間のオープンなエコシステムと緊密な統合が、彼らの成功に不可欠であると考えています。2017年以降、Gmailと統合した当社のTrelloは700万人以上にインストールされました。本日、AtlassianとGoogleの連携に基づき、JiraとGoogle ChatおよびSpacesが統合され、職場での協業をさらに推進できることをうれしく思います」。

画像クレジット:Sean Gallup/Getty Images / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

スマホからノーコードでウェブサイトを作るUniverseがテーマやブロックの新機能を公開

モバイルでウェブサイトを構築できるプラットフォームのUniverseがアップデートを公開し、同社のグリッドベースのウェブビルダーに高度な制作用コントロール、便利なテーマ、ブロック機能などが追加された。Universeを使うとスマートフォンから直接、コーディングをすることなくシンプルなグリッドシステムでオリジナルのサイトを作ったりeコマースのストアを開設したりすることができる。新たなアップデートであるGRID System IIは、これまでの複雑なコーディングのプロセスを直感的なジェスチャーにして、ウェブサイトをもっと簡単に作れるようにすることを目指している。

Universeの創業者でCEOのJoseph Cohen(ジョセフ・コーエン)氏はTechCrunchのインタビューで「Universeの特徴はグリッドシステムで、今回はそのグリッドシステムの大幅なアップデートを発表しました。これにより、専門知識がなくてもこれまで以上に多くのことができるようになります」と語った。

コンテンツをドロップできる広いグリッドが用意されたプラットフォームで、シンプルなブロックをベースにしてウェブサイトを作っていく。今回のアップデートでは制作用のコントロールが再設計されてグラフィカルインターフェイスが改善し、グリッド内のブロックのパディングやテキストの細かな間隔をコントロールできるようになった。コーエン氏は、グリッドを詰めて最大7列にすることができるようになったと述べた。新しいインターフェイスではカラー選択ツールも強化されている。

さらに、30種類の新しいテーマから好みのものを選んだり、オリジナルのテーマを作ったりすることもできるようになった。テーマが登場する前は、ブロックの1つ1つにその都度スタイルを設定していた。今回のアップデートでテーマが導入され、フォントやページの背景、ボタンの色といったデザイン要素に一貫性を持たせることができる。テーマを使うと、テキスト、背景、見出し、カラーなどがサイト全体の外観に適用される。

コーエン氏は「我々はサイト全体に適用できる、30種類の魅力的なテーマを作りました。ユーザーがオリジナルのテーマをゼロから作ってもかまいません。我々が提供するテーマの中のいずれかを適用したりカスタマイズしたりすることができます。変更を加えると、サイト全体に反映します。テーマは基本的に、サイト全体にわたってすべてのスタイルを美しく、使いやすく変更する手段です」と説明した。

新しいテキストスタイルを利用して、テキストをタイトル、サブタイトル、キャプションなどに分類することもできる。タイトルのインジケータを使うとサイトのSEOが向上し、アクセシビリティも拡張されるとUniverseは説明している。

新しいレイヤー機能も追加され、ブロックの上にブロックを重ねられるようになった。これまでは画像のブロックとテキストのブロックというように2つのブロックを重ねることはできなかった。今回の新しいレイヤー機能を使うと、ウェブサイトのデザインに関する制作の自由度がずっと高くなる。

さらにUniverseは、1つのサブグリッド内で複数のブロックを組み合わせて集合体を作る、新しいグリッドブロック機能も公開した。サイトにブロックを追加するとそのブロック内に別のグリッドが作られるもので、フォトギャラリーなどを追加するのに使える。グリッドブロックでブロックをグリッド上に正確に配置した後、サブグリッドをページ上の任意の場所にドラッグできる。

UniverseはShopifyやWixといった人気ウェブサイト構築ツールの競合だと思う人もいるかもしれないが、コーエン氏はまったく違うものだという。

画像クレジット:Universe

同氏はこう説明する。「我々はグリッドと呼ばれる新しいインターフェイスを開発しました。これは基本的には、テック系でない人、あるいはプロのデザイナーではない人が完全にオリジナルのウェブサイトを構築できるようにするものです。Squarespace、Shopify、Weebly、 Wixなどのシステムがありますが、これらはデスクトップベースでテンプレートベースのウェブサイトビルダーです。Universeで利用できるテンプレートはありますが、テンプレートベースではありません。テンプレートで制限されないため、グリッドそのものが制作のためのインターフェイスです」。

利用状況についてコーエン氏は、コロナ禍で多くの人がビジネスや副業を始めてウェブサイトを作ろうとしたことからUniverseのユーザーが増えたと語る。同社はコロナ禍の初期に、サイトで製品を販売し出荷できるようにした。そのためユーザーは、Shopifyなど他社のeコマースツールに登録する必要がなかった。

同氏は「コロナ禍が始まってからの1年半、当社は急速に成長しました。全体としては、作成されたアクティブなサイトの数が10倍ほどになりました」と述べた。

またコーエン氏は「リンクインバイオ」サイトを求めるインフルエンサーのユーザーが増えていると語る。「リンクインバイオ」サイトとは、Instagramのプロフィールの最後に書いておいてInstagram外のウェブサイトに誘導するURLのことだ。誘導先のサイトは、製品を販売したり、他のソーシャルメディアアカウントにリンクしたり、ポートフォリオを紹介したりするのに使われることが多い。同氏によれば、Universeで作られるサイトの40%が「リンクインバイオ」で、このようなサイトがコマースと並んでUniverseで最も大きく成長している領域だという。

Universeには現在数十万のアクティブなサイトがあり、同社は今後もプラットフォームの成長に合わせてコンシューマにとって使いやすいアップデートをリリースしていく予定だという。

コーエン氏は「今回のアップデートで我々は飛躍を遂げましたが、今後もこのグリッドシステムの改良を長く続け、いずれはインターネット上で可能なことはすべて我々のグリッドシステムで実現できるようになるでしょう。中心となっている制作の機能だけでなく、ビジネス構築に関わるコマースの機能も充実させていきます」と語った。

画像クレジット:Universe

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(文:Aisha Malik、翻訳:Kaori Koyama)

データ+AI企業Databricksがローコード・ノーコード機能拡張のため8080 Labsを買収

Databricks(データブリックス)は米国時間10月6日、ドイツのスタートアップである8080 Labsを買収したと発表した。8080 Labsは、Pythonベースのデータ分析・操作ツールPandasの人気GUIである「bamboolib」を開発している。bamboolibは、データサイエンティストがコードを書くことなく、迅速かつ容易にデータを探索し、変換することを可能にする。8080 Labsは、bamboolibの無料コミュニティ版と、企業向けの機能を追加した有料プロ版を提供していた。Databricksは、これらのUIにフォーカスした機能を自社のLakehouse Platformに統合し、ローコード・ノーコード機能を拡張していく予定だ。

今回の買収は、8月に16億ドル(約1783億円)のシリーズH資金調達ラウンドを終了して以来、Databricksにとって初めての買収となる。当時、DatabricksのAli Ghodsi(アリ・ゴディシ)CEOは、この分野で資本力のある競合他社に対抗するために資金調達を行ったと話していた。競争の激しい分野で急成長している企業にありがちなことだが、そのためには、エンジニアリング人材とソフトウェア機能の両方を手に入れるための買収が必要になる。

ゴディシ氏は本日の発表でこう述べている。「2020年のRedashの買収と合わせて、ローコード・ノーコードのソリューションを好むより多くのユーザーに当社のユーザーベースを拡大していきます。Databricksにシンプルな機能を導入することは、専門知識の有無にかかわらず、より多くの人が大規模なデータセットを簡単に分析・探索できるようにするための重要なステップです」。

Databricksにとって今回の買収は、専門知識を持たないシチズンデータサイエンティストに同社のプラットフォームを提供することに新たな重点を置くことを意味する。「データとAIがあらゆる規模の企業にとって戦略的な優先事項になるにつれ、組織内の誰もがデータに基づいて質問したり行動を起こしたりする権限を持つことが重要になっています」と同社は声明の中で述べている。Databricksは、同社の自動機械学習ツールと組み合わせることで、より幅広いユーザーがデータから価値を引き出すことができるようになると主張している。また、プロの開発者にとっても、同社のUIツールでデータ変換を構築し、よりカスタムな実装が必要になったときにPythonコードをエクスポートすることで、負担が軽減されるとしている。

8080 Labsの共同設立者であるTobias Krabel(トビアス・クラベル)氏はこう述べた。「我々は、複雑なデータタスクをシンプルにし、データサイエンスと機械学習のパワーをあらゆるスキルセットのデータチームが利用できるようにするために8080 Labsを設立しました。オープンソースをルーツとし、レイクハウスというカテゴリーでデータ環境を再構築するという素晴らしいビジョンを持つDatabricksには無限の可能性があると考えており、チームの一員としてその旅に加われることをこの上なく嬉しく思っています」。

8080 Labsは4人のビジネスエンジェルからエンジェル資金を調達していたが、詳細は公表していない。

画像クレジット:Artur Debat / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

オーティファイがノーコードAI利用ソフトウェアテスト自動化プラットフォーム強化で11.2億円のシリーズA調達

写真左からCEO近澤良氏、CTO松浦隼人氏、COO清水隆之氏(画像クレジット:Autify)

Autify(オーティファイ)のCEOで共同創業者の近澤良氏は、過去10年間、日本、シンガポール、サンフランシスコでソフトウェアエンジニアとして働く中で、ソフトウェア開発業界には「ソフトウェアテストに時間がかかりすぎる」という共通の問題があることに気づいた。

近澤氏と共同創業者の山下(サム)颯太氏は2016年にサンフランシスコで、ソフトウェアテストの自動化を開発し急速に変化する市場において開発者が高品質なソフトウェアを顧客に迅速に提供できるようにするために、Chaloを立ち上げた。

Chaloのソフトウェア・テスティング・オートメーションは、コード不要のプラットフォームを使って、人手不足と技術的困難の問題を解決する。

日本時間10月6日、Chaloはモバイル向けネイティブアプリテストのローンチやグローバル展開に向けた新製品開発のために、1000万ドル(約11億2000万円)のシリーズAラウンドを行ったことを発表した。

今回の資金調達によって、Chaloの調達額は1220万ドル(約13億6000万円)に達したと近澤氏はいう。完全なリモートカンパニーであるChaloは、全世界に30名の従業員を抱えている。

シリーズAを主導したのはWorld Innovation Lab(WiL)である。新規投資家としてUncorrelated Venturesと個人投資家のJonathan Siegel(ジョナサン・シーゲル)氏が参加した。既存の出資者であるArchetype Ventures、Salesforce Ventures、Tablyも今回のラウンドに参加している。

グローバルな同業他社の大半は、ローコードのテスト自動化ソリューションを提供しており、さまざまなコーディングスキルを持つソフトウェア開発者が作業を迅速に行えるようにすることを目標としている。しかし、日本を含むいくつかの国では、ローコードアプローチでは解決できない深刻な開発者不足の問題に直面していると、WiLのパートナーである久保田雅也氏はTechCrunchのインタビューで述べている。

久保田氏はTechCrunchの取材に対し「ローコードのソリューションは、技術に精通した企業では有効かもしれませんが、ノーコードは世界中のさらに大きなマスマーケットを獲得することができるでしょう」という。

「これまでソフトウェアのテスト自動化は、コードを書ける人しかできませんでしたが、ノーコードソリューションとしてのChaloを使うことで、誰でもテストを自動化できるようになるので、開発者にも非開発者にもメリットがあるのです」と近澤は続ける。

ウェブとモバイル向けのChaloの主な機能は、クロスブラウザかつマルチデバイスでの並行テスト、AIによる自動修復、ビジュアル回帰テストの3つだ。声明によれば、ChaloのAIは、ソースコード/UIの変更を検知し、実行に際してテストシナリオを自動的に修正する一方で、ビジュアル回帰テストでは変更を自動的に検知し、ユーザーがメンテナンスなしでテストを実行することを可能にするという。

世界の多くの企業でリモートワークが標準となりつつある中で、ソフトウェア開発者やQAチームは、手動テスト用のモバイルデバイスを準備・管理することがますます困難になっている。Chaloのモバイル用ノーコードテストシステムを使うことで、プログラミングの知識や自動化のスキルがなくても、ウェブブラウザ上でモバイルアプリを操作するだけで、誰でも簡単にソフトウェアのテストシナリオを作成、実行、自動化することができる。近澤はこのことで、OS、画面サイズ、ネットワーク事業者、ユーザーシナリオなどの異なる組み合わせの実際のモバイル機器を用意する必要がなくなるという。

今回ローンチされた「Autify for Mobile」は、モバイル・ネイティブ・アプリケーションのテスト効率を向上させるもので、ウェブアプリケーションとモバイル・ネイティブ・アプリケーションのテストを同一プラットフォーム上で管理することにより、QAの生産性を飛躍的に向上させることを目的としている。

近澤氏によれば、Autify for Webは2019年10月にサービスを開始し、日本、米国、シンガポールの他、欧州も含んで、Unity、DeNA、ZOZOなどの、B2CおよびB2BのSaaS顧客が多数存在しているという。

現在は、米国と日本の2つの市場に集中しているが、今後はさらにグローバルな展開を進めていく予定だと近澤氏はいう。

久保田氏はTechCrunchの取材に対し「Chaloは最初からそうしたグローバルビジョンを持っていて、それはよく考え抜かれた市場戦略に裏付けられています。グローバル展開が難しくなることが多い日本のユーザーだけに向けたソリューションをカスタマイズするのではなく、Chaloは本当の最初からグローバルスタンダードで設計を行うことにしたのです」と語る。

Global Market Insightsの調査によれば、ソフトウェアテスト市場は2027年までに600億ドル(約6兆7100億円)の増加が見込まれている。

近澤氏は「世界の企業の75%がソフトウェア開発のテストを手動で行っている中で、Chaloは自動テストのためのノーコードアプリケーションを提供することを通して、1兆3000億ドル(約145兆2800億円)規模の世界のテスト市場をディスラプトしたいと考えています」という。「『ノーコード』、『AI利用』、『カスタマーサクセス』という、テストの自動化に対するChaloの3つのアプローチは、労働力不足、高い保守費用、技術的な難しさなど、とても長い間テスト市場を悩ませていた課題の解決に役立ちます。何よりもすばらしいのは、Chaloが開発のどの段階でも製品の品質を犠牲にすることなく、問題に対処できていることなのです」。

久保田氏は「Chaloがテスト市場で勝てる理由は、開発者不足が日本だけの問題ではないからです。たとえば米国でも、労働統計局の発表によれば、2026年にはエンジニアの不足数が120万人を超えると言われています」という。

Chaloは、技術系企業だけでなく、技術者が十分にいないような地域や業界の企業でも、ソフトウェア開発の改善を可能にできると久保田氏は述べている。

Sensor Towerのデータを引用した同社の声明によると、モバイルアプリに対する世界の消費者支出は、2019年には前年比30%増で2020年には1110億ドル(約12兆4000億円)に達しており、市場は急速な成長を続けている。

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(文:Kate Park、翻訳:sako)

ノーコードイベントプラットフォームeventos提供のbravesoftが約7億円調達、マーケ・プロダクト開発・技術研究強化

ノーコードイベントプラットフォーム「eventos」を提供するbravesoftが約7億円調達、マーケ・プロダクト開発・技術研究強化ノーコードイベントプラットフォーム「eventos」(イベントス)を提供するbravesoft(ブレイブソフト)は10月5日、第三者割当増資および銀行融資により約7億円の資金調達を発表した。引受先は、マイナビ、オー・エル・エム・ベンチャーズ、イノベーション・エンジン、VOYAGE VENTURES、岡三キャピタルパートナーズ、名古屋テレビ・ベンチャーズ、近鉄ベンチャーパートナーズ、ほか1社。調達した資金は、マーケティング・プロダクト開発・技術研究に投資する。

eventosは、ノーコードで自社のイベントプラットフォームを構築できるSaaSサービス。イベントのウェブサイト制作、申込フォーム、会員管理、チケット販売、出展者ブース、オンライン開催、イベント公式アプリの構築まで、プログラミング不要で自由に自社イベントプラットフォームを構築可能という。これまで300件以上のイベントに導入され、累計100万人以上の体験をアップデートしたとしている。ノーコードイベントプラットフォーム「eventos」を提供するbravesoftが約7億円調達、マーケ・プロダクト開発・技術研究強化ノーコードイベントプラットフォーム「eventos」を提供するbravesoftが約7億円調達、マーケ・プロダクト開発・技術研究強化

無料プランも開始、ノーコードでサイトの構成要素を更新・評価・改善し煩雑な作業を軽減できるKARTE Blocks正式公開

無料プランも開始、ノーコードでサイトの構成要素を更新・評価・改善し煩雑な作業を軽減できるKARTE Blocks正式公開

プレイドは9月14日、タグを1行貼るだけでサイトのあらゆる構成要素をノーコードで更新・評価・改善できる法人向けサイト管理システム「KARTE Blocks」について、正式版の提供開始を発表した。2020年7月のクローズドβ版以降、新機能追加や改善アップデートが加えられている。

また同時に、無料プランの提供も明らかにした。サインアップや契約プラン変更、オンボーディングなどすべての手続きがオンラインで完結する、フリーミアムモデルへと進化させたとしている。

無料プランと有料プランの差分は月間合計ページビュー数や扱えるページ数などで、無料でもKARTE Blocksのすべての機能を使用できる。いつでもオンラインで始められるため、実際に試してみてから有料プラン(月額2万9000円から)の利用へ進める。

無料プランの主な上限項目(詳細は公式サイト参照)

  • 設定ページの月間合計ページビュー数:1万PVまで
  • ページ登録数:5ページ
  • アカウント数:20個
無料プランも開始、ノーコードでサイトの構成要素を更新・評価・改善し煩雑な作業を軽減できるKARTE Blocks正式公開

KARTE Blocks料金プラン

現在、コーポレートサイトやECサイト、また広告や検索の結果たどり着くLP(ランディングページ)など、生活者と企業をつなぐ接点としてサイトの重要性は増しているものの、日々の更新業務の運用体制や評価・改善手法には課題が少なくない。

プレイドによると、サイト内のバナーやテキストの変更時にその都度システム部門や外部の制作会社に対する依頼・調整、付随する様々なオペレーションが発生し、多くの時間やコストがかかっているケースは数多いという。担当者はそれら煩雑な作業に追われ、本質的なサイト改善に向き合う時間を確保できなかったり、改善すべき箇所に気付いていてもシンプルに実行する手段がなかったりという課題があるそうだ。

同社は、これらをサイト運営における「負」の側面ととらえており、デジタルシフトが進み顧客接点としてのサイトの存在感が増すごとに、直接的には価値創出につながらないコストとして企業に重くのしかかっているとしている。

このためKARTE Blocksでは、これら「負」に向き合うものとして開発した。サイトをブロックの集合体と捉え、ブロックごとに更新・評価・改善できる新しいサイト管理システム「BMS」(Block Management System)に基づき、サイトにタグ1行を入れるだけで、サイト運営に関わる更新・評価・改善をノーコードで誰でも簡単に、どこでも自由に行える。既存サイトを後から自由に編集可能とすることで、あらゆるサイト運営者の手間やコストの解消に貢献するという。無料プランも開始、ノーコードでサイトの構成要素を更新・評価・改善し煩雑な作業を軽減できるKARTE Blocks正式公開

また今回、無料プラン提供開始・フリーミアムモデル化を採用。企業規模に関わらずサイトの更新・改善に携わる者であれば誰でもKARTE Blocksを利用し、サイト規模や実現したい内容に応じてコストを最適化しながら、ノーコードで直感的なサイト運営を行えるようにした。

 

ノーコードアプリ開発プラットフォームapplimoを運営するドコドアが約1億円のシリーズA調達

ノーコードアプリ開発プラットフォームapplimoを運営するドコドアが約1億円のシリーズA調達

ノーコードアプリ開発プラットフォーム「applimo」(アプリモ)を運営するドコドアは9月10日、シリーズAラウンドにおいて、総額約1億円の資金調達を完了したと発表した。引受先は、Mirai Nihon Ventures、Apaman Network、システムソフト。

調達した資金は、さらなる機能開発やマーケティングの分野において活用する。現在搭載している、会員ログイン・クーポン・スタンプ・アンケート・ギャラリー・来店予約などの機能に加えて、新たに多くの機能を実装させるべく開発を進めているという。ノーコードアプリ開発プラットフォームapplimoを運営するドコドアが約1億円のシリーズA調達

ドコドアによると、過去のウェブ開発は多額の資金が必要としたものの、現在ではWordPressやWiXといったCMSが出現し、開発単価が大幅に下落したという。一方アプリ開発市場は、スマートフォンが出現してから生まれた新興市場ということもあり、開発単価が高止まりしているとした。

そこでドコドアは、アプリ版CMSであるapplimoによって、ウェブ開発市場でのCMS同様に、開発単価の下落インパクトをアプリ開発市場に与え、市場のゲームチェンジャーとなることを目指しているとした。