Googleが日本で複数のAI関連事業を立ち上げ、UNIQLOとパートナーシップ

Googleが今日(米国時間9/18)東京で行われたCloud Next 2018イベントの場を利用して、日本市場にフォーカスした二つのイニシアチブを発表したのは、当然のことだ。このイベントはメインのカンファレンスがサンフランシスコで行われ、複数の国際的イベントが東京など各地で行われる。

発表には、ベーシックなアップデートとしていくつかの日本語ローカライゼーションも含まれ、その中には、CourseraのコースMachine Learning with TensorFlow on Google Cloud Platformの日本語化や、クラウド技術者の資格検定Associate Cloud Engineerの日本語化、50種のクラウド実践演習(各30分)Qwiklabsの日本語化などがある〔日本語化の例はここで〕。

さらにGoogleは、東京にAdvanced Solutions Labを立ち上げる。同様のラボは、アイルランドのダブリンとカリフォルニアのサニーベール、そしてニューヨークにもある。それらはGoogleのエキスパートたちによる4週間の機械学習教育訓練コースを軸として、機械学習のさまざまな学習オプションとコラボレーションによる演習経験を提供する。

(写真: Hitoshi Yamada/NurPhoto via Getty Images)

Googleは今日、新しいテクノロジーの採用をめぐって、ユニクロの親会社Fast Retailingとのパートナーシップを発表した。社名が示すように同社は小売業の高速化に関心があり、成長の加速化のためにGoogleのG Suiteや機械学習ツールを利用していきたいようだ。このパートナーシップ事業の名前は、’Ariake’である。

Fast RetailingのCEO Tadashi Yanaiはこう言っている: “全社員が情報にアクセスできるようにすることが、Ariakeプロジェクトの基盤のひとつだ。それによって社員たちは、論理や判断、共感といった人間の特性を生かした意思決定ができるようになる。毎シーズン、事業計画を書いているが、G Suiteのような共同作業ツールを使えば、それらを全社員が共有できる。Google Cloudとのパートナーシップは、需要予測のようなものをとっくに超えて、全社員の協働的な仕事のやり方を抜本的に変えた”。

画像クレジット: Tomohiro Ohsumi / Getty Images

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

インスタ参入のUUUM代表インタビュー:創業2期目に踏んだアクセルと、時代に合わせた変化の重要性

YouTuberを中心にクリエイターのサポート事業を行うUUUM。彼らがインスタグラム・マーケティングのレモネードを買収し、これまでの主戦場であったYouTubeを超え、Instagramの領域にも参入したというニュースは先日お伝えした通りだ。

TechCrunch JapanではUUUM代表取締役社長の鎌田和樹氏にインタビューを実施し、2017年8月の上場から約1年というタイミングでの振り返りと、今回の買収の背景を聞いた。

創業2期目に踏んだアクセル

僕が子どもだった頃と比べると、若者のコンテンツ消費のあり方は大きく変わった。昔は、テレビという画面の中には“芸能人”と呼ばれるヒーローたちがいて、テレビ局が決めた放送時間に合わせてテレビの前に座ったものだ。でも今の若者たちにとってのヒーローはYouTuberに、テレビはスマホに移り変わりつつある。そして、視聴する時間とその内容も、彼らの思い通りに選択できるようになった。

そんな時代背景を追い風に、UUUMの数字は好調だ。2015年4Q時点での所属チャンネル数は1141チャンネル。それが、2018年4Qには5877チャンネルと3年で約5倍に増えた。3ヶ月間の合計再生回数も同期間で約20億回から約95億回へと、こちらも5倍近く増えている。決算数字も順調に推移し、直近の決算期である2018年5月期の売上高は117億円、営業損益も7億1000万円の黒字となった。

UUUM代表取締役の鎌田氏はこれまでの経営を振り返り、UUUMがこの成長曲線を描けた理由として、動画という“情報量が多いフォーマット”が時代の要請とともに定着し、2015年のいわゆる“動画元年”から市場自体が急速に成長したこと、そして、有名になるための手段としてメディアに載るのではなく、自分という存在をみずからの手で発信できる環境が整ったことをあげた。

でも、いま鎌田氏が言ったのはすべて外部環境の話だ。どれだけ鎌田氏が謙虚になろうとも、スタートアップを日々取材するTechCrunch Japanは、UUUMと同じように動画という領域に着目をし、そこでビジネスを成り立たせようとした人が沢山いたこと、そしてそれに失敗した人が沢山いたことも知っている。

個人が動画をアップロードするという、ある種クリエイターの“頑張り”に大きく依存するものを、UUUMがビジネスとして成り立たせることができた理由はなんだろうか。

鎌田氏はそれについて、「UUUMがこの領域をビジネスとして成り立たせることができたのは、早い時期からYouTubeからの広告収入や企業とのタイアップなどで“動画だけによる収益基盤”を築くことができたからです。他社では、動画は作ってもその制作費とインカムがずれてしまい、結果的にオプション的なビジネスとしてコマースなどを始める例が多い。また、各事務所それぞれに1〜2人ほどはいる有名なクリエイターを、先を見越して100人、1000人という単位で増やす努力をしてきたことも要因の1つ」と語った。

動画というフォーマットが求められる時代に合わせ、その動画で稼ぐ方法を模索し、収益基盤を作る。そして、すぐに次のサイクルを見越して有力なクリエイターを戦略的に獲得する。その投資を早い時期から行ってきたことが成長の要因だと鎌田氏は言う。

UUUMが成長のために大きくアクセルを踏み込んだのは、創業から第2期目にあたる2015年5月期のことだ。この年、UUUMは売上高こそ前期の約1億6000万円から約13億円へと急速に伸ばしている。しかしその一方で当期純損益を見ると、約1800万円から約2億7000万円へと赤字幅も大きく拡大していることが分かる。

「この領域は参入障壁が低いと言われてきたが、第2期目の段階で人材獲得などに大きく投資を行い、新規参入がしにくくなる状況を作った。取引先各社との連携を重視し、今の六本木にオフィスを移したのもこの頃だ。クリエイターがUUUMで最大限活躍するためには、彼らとの関係構築も必要。そこにも時間とお金を大きく投資した。クリエイターの成長に僕らが負けていてはダメだったんです」(鎌田氏)

先を見越し、時代に合わせて変化する

これまで、メディアや登壇の場で鎌田氏が繰り返し強調してきたのは、コンテンツとそれを作るクリエイターがもっとも重要だということだ。それを考えれば、彼が早い時期から有力なクリエイターを100人、1000人単位で獲得しようとしてきたのにも納得がいく。

9月14日、これまでYouTubeを主戦場として闘ってきたUUUMがインスタグラムマーケティングのレモネードを買収し、Instagram領域にも参入すると発表したのは冒頭でもお伝えした通りだ。これまでの鎌田氏の話を聞くと、これもUUUMが時代の移り変わりに合わせて変化し、次の世代のクリエイターを惹きつけるための一手であると思えてくる。

「YouTuber」という言葉が一般化するよりずっと昔、YouTubeに動画を投稿する人たちが活動する場所は、YouTubeでしかなかった。でも、ここ最近「YouTuber」という言葉よりも「インフルエンサー」という言葉の方をよく耳にするようになったことからも分かるように、彼らが活動する領域の境界線が消えつつある。

「動画を投稿するクリエイターをメインにサポートしてきたUUUMが、静止画のInstagramをメインに活動するレモネードを買収すると聞くと、『ちょっとズレてるのでは』と思う人もいるでしょう。でも、プラットフォーム間の垣根は無くなってきている。例えば、(UUUMに所属するYouTuberの)はじめしゃちょーのTwitterアカウントのフォロワー数は日本で7位(記事執筆現在)。タイアップを検討するクライアントからの要望も、YouTubeと他のSNSを組み合わせた“立体的な“ものに変わった」(鎌田氏)

これまではYouTube内でのタイアップ案をメインに提案していたUUUMにとって、Instagramも交えた提案も可能になったことは、彼らのタイアップビジネスにとって大きなメリットなる。しかし、他社より早い段階で、そして大規模に他のプラットフォーム(SNS)へと活動領域を拡大することは、次の世代の優秀なクリエイターを累乗的に増やすことにもつながる。

レモネードがサポートするインスタグラマーは現時点で約3000人。これはUUUMがサポートするYouTubeチャンネル数である約6500チャンネルのおよそ半数にあたる数字だ。UUUMは今回の吸収合併により、その3000人のクリエイターたちと新たに関係値を築けることになる。

さらに、UUUMのクリエイターの活動領域をInstagramに、そしてその他のプラットフォームへといち早く広げることができれば、それはすなわちクリエイターにとっての“安心感”につながり、これから芽が出る新しい世代のクリエイターを惹きつける要因にもなる。

「クリエイターとして成功するまでの障壁の一つに、マネタイズできるまでの期間が長すぎて、途中で諦めてしまうというものがある。今回の買収により、UUUMのサポートがより立体的なものになることで、そのマネタイズまでのポイントをさらに短くできるかもしれない。そうすれば、個人が発信するという文化をさらに加速できる」(鎌田氏)

レモネードの買収は、UUUMにとって初めての買収だ。鎌田氏はインタビューの中で、他のプラットフォームへの拡大はInstagramに留まることはないと話した。これまでの活動から「YouTubeのUUUM」と呼ばれてきた彼らの変化が始まろうとしている。

TC Tokyo:モバイル決済の“大型ルーキー”PayPay、3億人のユーザーを抱えるインドのPaytmが登場

11月15日、16日の2日間で開催予定のスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2018」。僕たちが年に1度のこの大イベントで、モバイル決済の“大型ルーキー”とも言えるPayPayのキーパーソンたちに登壇いただくことが決定したのでお知らせしたい。

PayPayはソフトバンクとヤフーの合弁会社。同社は2018年7月、バーコードやQRコードを使ってスマホで決済ができる新サービス「PayPay」を発表したばかりだ。サービスインは今年の秋頃を予定している。PayPayでは、ユーザーがアプリを使って店舗のレジ付近などに置かれたQRコードを読み取る方式と、ユーザーがバーコードやQRコードを提示して店舗のレジでスキャンしてもらう方式の2つの手段を提供する予定。支払方法はクレジットカードと電子マネーから選択できる。

このサービスを提供するにあたって、PayPayはインドの決済サービス事業者のPaytm(ペイティーエム)と連携。Paytmはソフトバンクのビジョン・ファンドから約1400億円の出資を受けたことでもニュースになった。2018年7月時点で日本の人口の約2倍にあたる3億人のユーザーと、800万の加盟店を獲得する急成長中のスタートアップだ。

ヤフーの決済サービス「Yahoo!ウォレット」が持つ顧客基盤が活かせる(Yahoo! JAPAN IDと連携できる)ことなどから、後発ながら他社サービスを脅かす大型ルーキーとして業界から注目を集める存在だ。

今年のTechCrunch Tokyoでは、PayPayのキーパーソンである2人の人物に登壇いただく。まず1人目は、PayPay代表取締役の中山一郎氏だ。

中山氏は大学卒業後、国際デジタル通信(現 IDCフロンティア)に入社。同社取締役を経て、2013年4月より代表取締役社長に就任した。その後ヤフーに入社し、宿泊施設予約サイトなどを運営するグループ子会社の一休で代表取締役副社長、ヤフーの執行役員コマースカンパニーO2O統括本部長などに就任。そして今年6月より、PayPayの代表取締役社長を務めている。中山氏は言わずもがな、PayPayの舵取りを担う人物。壇上では、後発のスマホ決済サービスとしての戦い方や、欧米や中国などに比べ普及が遅いと言われる日本におけるスマホ決済の未来について聞きたいと思う。

2人目は、PayPayとの連携を発表したインドのネクスト・ユニコーン、PaytmとPayPayの主要人物であるハリンダー・タカール氏だ。

ハリンダー氏は設立当初のPaytmにジョインしたあと、2011年〜2014年まで同社のCEOを務めていた人物。2014年からはカナダのグループ会社Paytm LabsでCEOを務め、同国における決済プラットフォームを統括する。また、2018年6月よりPayPayのCTOにも就任している。ハリンダー氏には、インドとカナダを含む諸外国と日本市場の違い、日本市場に参入するうえでの難しさ、そして技術の面から見たPayPayの優位性などを聞いてみたい。

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車椅子型パーソナルモビリティのWHILLが50億円調達、B向け新事業や自動運転機能を準備中

車椅子型のパーソナルモビリティ(個人向け移動デバイス)を開発するWHILLは9月18日、SBIインベストメント、大和証券グループ、ウィズ・パートナーズ、および既存投資家から約50億円を調達したと発表した。2016年5月に調達した約20億円など過去のラウンドを合わせると、累計調達金額は約80億円となる。

WHILLは「すべての人の移動を楽しくスマートにする」ことをミッションに、車椅子型のパーソナルモビリティを開発する日本のスタートアップだ。同社は2014年9月にフラグシップモデルである「WHILL Model A」の販売を開始。つづく2017年4月にはModel Aよりも価格を抑えた普及価格帯モデルの「Model C」を発表している。それぞれの販売数などは非公開だが、WHILL代表取締役の杉江理氏によれば、「Model Aの販売台数は『1000台以上』というところだが、Model Cの販売台数は近い将来1万台に届く勢いだ」と語る。

WHILLにとってメインの販売チャネルは、医療機器などを取り扱う販売代理店経由でのセールスだ。創業当初より日本とアメリカにオフィスを構えていたWHILLは、2018年1月より日本に加えて北米でもWHILLの販売を開始。2018年6月にはイギリス、イタリアなどヨーロッパ地域にも進出している。

このように、これまでは個人に向けてパーソナルモビリティを販売してきたWHILLだが、同社は今後、移動をサービスとして展開するMaaS(Mobility as a Service)事業を新たに立ち上げることによってBtoBの領域にも注力する。空港、商業施設、スポーツ施設などの施設を通して、長距離の移動が困難な人たちに向けてWHILLを貸し出すというサービスだ。また、そのために必要な「自動停止機能」や「自動運転・自動追従機能」などの実装に向けてパートナー企業らと研究を進めている最中だという。

現時点では具体的な導入先、料金プラン、そしてWHILLに搭載される新機能などの詳細は明らかにされていない。しかし、杉江氏によれば、WHILLは2019年に開催するCESへの出展を予定しており、その場でこのMaaS事業の詳細を発表するとしている。

WHILL代表取締役の杉江理氏

VCと起業家の合宿プログラム「Incubate Camp」:ピッチ最優秀賞はD2CファッションブランドのIMCF

国内の有力VCと起業家による1泊2日の合宿型アクセラレーションプログラム「Incubate Camp」が、9月14日と15日の2日間で開催された。同プログラムは今年で11年目の開催だ。運営元のIncubate Fundは日本のスタートアップ投資業界を長らく支えてきた存在で、1999年の設立以来、GameWith、サイボウズ、gumiなど今や上場企業となったスタートアップを輩出してきた。

Incubate Campの特徴は、複数のVCファンドから招待されたキャピタリストが「メンター」となり、起業家と二人三脚で事業計画をさらに練り込んでいくという点だ。

メンターとなるベンチャーキャピタリストは、起業家による初日のプレゼンテーションと1対1のメンタリングを経て、合宿終了までタッグを組むことになる起業家を選出する。選出はドラフト方式だ。その後、メンターと起業家の両名は夜通し会話を重ね、2日目の最終プレゼンに備えるというシステムだ。この記事では、その最終プレゼンで最優秀賞を獲得したスタートアップを紹介しよう。

合計16社が参加したIncubate Camp 11thのピッチイベントで優勝したのは、D2Cモデルのファッションブランドを複数展開するIMCFだった。

写真左より、IMCF代表取締役の吉武正道氏と、メンターを務めた伊藤忠テクノロジーベンチャーズの河野純一郎氏

IMCFは日本発のグローバルファッションブランドを創出することを目指すD2C型ファッションブランドだ。従来はファッションデザイナー自身が行っていた販促やセールスなどのビジネス業務をデザイナーから切り離し、それを自社で引き受ける。そうすることでデザイナーは本来のやるべき「デザイン」に集中でき、結果的に複数ブランドを素早く立ち上げることを可能にしているという。

IMCFはこれまでに3つのファッションブランドを立ち上げ、そのすべてが単月黒字化している。代表取締役の吉武正道氏は「どんなデザイナーでも、最低限のマネタイズを実現することはできる」と話す。現在はファッションデザイナーとの相性がよいInstagramを中心にマーケティング実施。2018年4月には6000万円の資金調達も実施している

IMCF以下、2位は採用管理システムのHERP、3位は遠隔医療のAMI、4位は同点で在留外国人向け不動産プラットフォームの東京ハースと、睡眠データによる組織改善サービスのO:(オー)だった。また、前日のプレゼンからの“伸び幅”が一番大きかった起業家に贈られる「ベストグロース賞」を受賞したのは、サロン型ファッションブランドのモデラートだった。

Incubate Campに参加した全16社については、近日公開予定の記事で紹介する予定だ。

筋トレやランニングなどの“独りフィットネス”をプロトレーナーが音声でサポートする「BeatFit」

最近、都市部を中心に24時間営業のジムが増えている。マシン特化型で、セルフサービスでトレーニングを行うため、比較的低価格で、いつでも好きなときに利用できるのが特徴だ。ただ「いつでもできる」「自分でできる」というのは反面、自らモチベーションを上げて、やる気をコントロールする必要があるのも確か。これは24時間ジムに限ったことではなくて、ランニングやウォーキングなどでも同じことだ。

ともすれば、くじけやすく怠けがちな私たちの心を励ますように、トレーニングの管理やフィットネスの支援をする、さまざまなアプリが誕生している。「BeatFit」もそうしたアプリのひとつ。ランニングや筋トレなど、1人で行うフィットネスをプロのトレーナーによる音声ガイドでサポートするというものだ。

トレーナーの音声ガイドに加えて、BeatFitでは、トレーニングに合ったノリのいい音楽も流れる。4月にベータ版が登場したBeatFitは、アウトドアランニング、ランニングマシン、インドアバイク、筋力トレーニング、ストレッチといったジャンルで、運動レベル別・時間別にコンテンツを配信。レベルは初心者から上級者まで幅広く、運動時間も6分から60分まで選ぶことが可能だ。アプリは最初の1カ月は無料、その後は月額980円の定額で、全コンテンツを利用できる。

現在BeatFitでは、120を超えるクラス(トレーニングコンテンツ)を配信。9月1日には「トレーニングログ機能」「お気に入り機能」「フィルター機能」を追加し、またジャンルに「ヨガ・瞑想」を加えて、正式版としてリリースした。主に24時間ジムを利用するユーザーを中心に利用されており、アプリの利用をInstagramやTwitterなどに投稿する「熱量のあるユーザー」も増えているという。

トレーニングを長く続けるための購読型アプリ

アプリを運営するBeatFitは2018年1月の設立。創業者であるCEOの本田雄一氏、CPOの永田昌一氏、COOの宮崎学氏の3人が共同で代表取締役を務める。3人がBeatFitの着想を得たのは2017年12月のことだ。それまではフィットネスについて別々のアイデアを持ち、議論も白熱したというが、BeatFitで構想が一致してからは、スピーディーに起業が決まり、開発がスタートしたという。

CEOの本田氏は、福岡で一度起業した後、2015年から2017年にかけてアメリカへ留学。アメリカのフィットネス文化に触れ、日本でもこのジャンルは伸びると感じたが「ジャンルに、はやり廃りがある」ことに懸念があったという。そこで「プラットフォームとしてコンテンツを提供する形にすれば、流行に左右されないサービスができる」と考えたそうだ。

「もともとフィットネスおたくだった」という本田氏は、パーソナルトレーナーを付けることで「体が変わったことを実感した」という。「でも週2回で数万円から数十万円の費用がかかるトレーナーは、高額すぎてサステナブルでない。これを継続させるためにはどうすればいいか、ということを考えていた」(本田氏)

プロダクトのデザイン・開発を担当する永田氏も、本田氏と同時期にアメリカへ留学している。留学中、高齢者向けVRシステムの開発を手がける中で「お金があれば施設へ入ることはできるが、そこで過ごす人が必ずしも幸せでないのでは、と感じ、健康寿命について考えた」という。

また、永田氏は留学中に10Kgほど太り、帰ってきてからトレーニングを始めたが、継続して運動することが難しかったそうだ。ところが「トレーナーを付けてみたら全然違った」という。「2時間かけてジムにいて運動していたことが、トレーナーを付けることで30分で効率よくできる。トレーナーの重要さが分かった」(永田氏)

COOの宮崎氏は、電通からSpiral Venturesへ移り、プリンシパルとしてシンガポールに在住。その後、スパークスグループで未来創生ファンドの運用に携わった。スパークスでは、リハビリ系ロボットへの投資なども行っていた宮崎氏。投資先への助言の合間に、医師から聞いた「ロボットなどの機器はある。だがリハビリを続けるためのモチベーションを保つ仕組みがない」という言葉が印象深かった、と話している。

宮崎氏は「以前から、アメリカやシンガポールなど医療保障が十分でない国では、健康習慣への関心が強かったが、近年は日本でも24時間営業のフィットネスジムが増え、少子化時代を見据えた医療費問題などもあって健康意識が高まっている。またApple WatchやFitbitなどのウェアラブル端末も普及した」と日本のフィットネス市場を分析する。

その一方「パーソナルトレーナーについては、RIZAPのCMが話題になるなど、存在は知られるようになったが、いざ依頼するとなると金額が高いため、短期間の利用で終わってしまう人が多い」と宮崎氏。「継続して運動を続けるためには、アプリを通じて、低価格でトレーニングのクラスをサブスクリプション(購読)型で受けられるのは理にかなっている」と話す。

本田氏も「サブスクリプション型はフィットネスジムと構造が似ている。1回通うのも100回通うのも同じ額なら、多く通おうと考えるものだ。お金を払うから行く、続けられる、というスタイルはヘルスケアと相性が良い」と述べる。

こだわり抜いた音声コンテンツによるガイド

BeatFitでは「音声」ガイドのみで、トレーニングが進められる点がキモとなっている。世の中を見ると、YouTubeを始め、アプリでも、動画でトレーニング内容が見られるものが多い。そうした中で、あえて音声にこだわる理由を宮崎氏に聞いた。

「確かにビデオコンテンツは多いし、動きをどうするかを確認するには有効だ。でも『じゃあトレーニング中に動画を確認しながら運動するか?』と言われたら、どうだろう。BeatFitでは運動しながら聞く、ということにこだわって『聞くだけで分かるコンテンツづくり』に注力している」(宮崎氏)

確かに私も、BeatFitでいくつかのクラスを試してみて、ストレッチでどこの筋を意識すればいいのか、足や手の形や位置はどうすればいいのか、といった点をトレーナーが声できめ細かく指示してくれるので、気持ちよく運動できるな、という印象を持った。ただ、例えばヨガのポーズなど、自分が一度も見たこともやったこともない動きを、音声の指示だけで正しくやるのは、さすがに難しいのではないかと感じた。

こうした分かりにくい部分については、近日中に、要所要所を短い動画で事前にチェックしてからトレーニングできるように、機能とコンテンツを追加するとのことだった。開発中のバージョンを見せてもらったところ、音声ガイドを一時停止して、動画で動きを確認してからまた元のトレーニングに戻る、といったことも可能になるようだ。

だが、あくまで「動画はサブで、メインは音声」とのこと。その背景には「音声ベースだと安く、大量に、高品質なコンテンツが提供できる」側面もあるという。「動画ではちょっと間違えた、というときにうまく編集することが難しく、一から撮り直しになってしまう。音声のみなら、簡単に編集できるので多くのコンテンツが供給できる」(本田氏)

BeatFitでは、オフィスに録音ブースとトレーニングができる空間を備えた、自社スタジオを構えている。本田氏は「自社スタジオがあることで、たくさんのクラスを用意することができ、更新も頻繁に行える。結果としてユーザーがいろいろなトレーニングを選べて、飽きずに続けられる」と話す。

BeatFitのコンテンツにはもうひとつ特徴がある。トレーナーの音声ガイドの後ろでBGMとして流れる音楽だ。洋楽ポップスやロック、ヒップホップなどのヒット曲をふんだんに使い、リズムに合わせて楽しくトレーニングができるようになっている。

「音楽にトレーナーの声を掛け合わせ、DJプレイに近いような、高度なコンテンツづくりを行っている。こうした加工をともなうコンテンツでは、音楽の権利処理のハードルが高い。そこをきちんと押さえている点も我々のアドバンスだ」(宮崎氏)

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同社は9月3日、シードラウンドで総額1億200万円の資金調達実施を発表した。資金のうち、8200万円はJ-KISS型新株予約権方式により、SIG Global Japan Fund、MTパートナーズ、谷家衛氏、宗清晶氏、Asia Venture Group、ほか個人投資家から調達。また日本政策金融公庫から2000万円の融資を受けている。

資金調達を受けて、BeatFitでは、よりよいコンテンツづくりとソフトウェアの改良を目指す。また、健康増進への取り組みを保険料に反映する、健康増進型の保険を導入している生命保険会社や、フィットネスジムなど、法人とのアライアンスも進めたいとしている。さらにフィットネスマシンやウェアラブル端末との連携、AIスピーカーによるサジェスチョンなどにも取り組んでいく構えだ。

本田氏は「BeatFitは、パーソナルトレーナーの市場を食いに行くものではなく、共存できると考えている」と話している。「費用面で頻繁にはトレーナーが付けられない、という方が、合間で自習的に使ってもらうことで、トレーニングを継続して行うことができる。フィットネスジムでも、インストラクターがいないときや、グループレッスンの待ち時間などに活用してもらえれば」(本田氏)

「YouTubeのUUUM」がInstagramにも参入、インスタ・マーケティングのレモネードを5億円で買収

UUUMは9月14日、Instagram上でコンテンツを発信するインスタグラマーと、彼らとのタイアップを行いたい企業とをマッチングする「influencer One」を提供するレモネードの全株式を取得して吸収合併すると発表した。買収総額は約5億円だ。レモネード代表取締役の石橋尚也氏は合併後、UUUMの執行役員に就任する。

HIKAKINやはじめしゃちょーなど、有名YouTuberが多く所属するUUUM。同社がサポートするYouTubeチャンネル数は最新の数字で6570チャネル。うち専属契約を結ぶクリエイターは270名にのぼる。また、所属チャネルの月間再生回数は40億回(2018年8月)を突破するなど、YouTuberマネジメントの領域では圧倒的な強さを誇る。

これらの事実から「YouTubeのUUUM」とも比喩されることもある同社だが、これからはそうとも呼べなくなるかもしれない。レモネードの買収は、UUUMがYouTuberに加えてインスタグラマーのサポートに乗り出すことも意味するからだ。

現在、influencer Oneに登録するインスタグラマーの数は2800人。そこにUUUMが現在サポートを行うYouTubeチャンネル数を加えると、UUUMはこれからのべ1万人近くのクリエイターのサポートを行うことになる。

UUUM発表資料より

また、今回の買収によりUUUMがサポートするクリエイターが活躍できる場が増えることも大きなメリットの1つだ。今や、YouTuberとして成功するためにはInstagramをはじめとするSNSの活用が必須の時代。UUUMからYouTubeチャンネルの運用だけでなく、Instagramの運用についてもサポートも受けられるとなれば、さらに多くの有力クリエイターがUUUMに集まってくる。UUUMとしても、YouTube内での広告・タイアップ企画だけでなく、Instagramも絡めた提案が可能になることは大きなビジネスチャンスにつながる。

TechCrunch Japanでは、UUUM代表取締役の鎌田和樹氏に買収の背景と今後の戦略について聞き、近日中にはインタビュー記事を公開する予定だ。

元グノシー松本氏がDMMの新CTO就任、『モチベーション×能力』で測る組織づくりへ

「最初に会ったとき、この人は宇宙人だと思った」ーーこれは、DMM最高経営責任者の片桐孝憲氏が同社の新しいCTOのことを表した言葉だ。

DMMは9月14日、グノシー元CTOの松本勇気氏を新たに迎え、同社の新しいCTOとして起用する人事を発表した。TechCrunch Japanでは片桐氏と松本氏の両名にインタビューを行い、その背景を聞いた。

新CTOに就任する松本氏は、大学在学中に学生ベンチャーのLabitなど複数のスタートアップにてiOS/サーバーサイドの開発を担当し、2013年1月にグノシーに入社した。2014年6月には開発本部執行役員に就任。そして2015年からはグノシーのCTOとして、KDDIと共同開発した「ニュースパス」の立ち上げや、ブロックチェーン事業子会社のLayerXの立ち上げなどを手がけてきた人物だ。

ニュースパスチームの立ち上げの際には、松本氏はCTOの役職を返上してみずから開発の現場に参画。立ち上げから8ヶ月でチームのかたちを作り、再びCTOに就任した。

一方のDMMでは、片桐氏がCEOに就任した直後から、前CTOの城倉和孝氏と新しいCTOの招聘を検討していた。城倉氏から「自分の代わりにCTOになってほしいヤツがいる」と紹介されたのをきっかけに、松本氏と片桐氏が出会ったのは2018年春ごろのことだ。

当初、片桐氏は松本氏が「DMMに来てくれる可能性は低いだろう」と思っていたが、可能性を探るためにまずは3人で食事に行くことにした。

「(松本氏は)宇宙人みたいな人だなと思った。僕がDMMに入ってすぐの頃からCTO探しは続けていたが、DMMにフィットしてかつ未来が見える人はなかなか見つからなかった。みんな大人過ぎるなと。その一方、松本くんは飄々としていて、自分にもよく分からないような新しい未来の話をしてきた。彼のようにエンジニアとして具体的にビジネスの話をできる人もなかなかいない」(片桐氏)

松本氏を新しいCTOとして迎え入れたいと思うDMMだったが、当時の松本氏はグノシーを退職したあと独立して起業することも検討していた。そこで片桐氏と城倉氏は、月に一度のペースで松本氏との“親睦会”を行うことにした。松本氏を連れてDMMのマイニングファームを見せたり、金沢にある開発拠点を訪れ、現地のスーパー銭湯のサウナで語り合い、そのままその銭湯で一泊するなんてこともあったそうだ。

一方の松本氏は片桐氏について、「楽しそうに仕事をする人だと思った。僕自身も仕事においてモチベーションは非常に重要だと思っているので、ここに来れば何か楽しいことができると思いました」と話す。2018年6月にDMM会長の亀山敬司氏と面会する際には、8割方こころは決まっていたという。

創業19年目のカルチャーを作り変える

そもそもDMMが新しいCTOを探し始めたのは、片桐氏がCEOに就任してすぐのことだった。その背景には、以前からビジネス寄りの人材が多かったDMMを“テックカンパニー”にしたいという想いがあった。

「自分が最高経営責任者に就任するとき、亀山さんとも『DMMが今よりももっとテック寄りの企業になれたら成長が加速する』と話していた。僕が呼ばれたのもそのためだ。それを実現するために、技術的な方針を示してくれる人、エンジニアの見本となるような人物が必要だと思っていた」と片桐氏は話す。

片桐氏は現時点のDMMについて、「テックカルチャーが育つ余地はまだある」と評する。社内にはエンジニア出身の事業部長が少ないなど、改善の余地は大きい。

これまでにもテックカルチャーを根付かせるための改革を進めてきたが、片桐氏が松本氏に期待するのは、その改革をさらに加速させ、DMMを技術思考の会社へと作り変えることだという。

「Netflixは目標とするテックカンパニーの1つ。自分の親がNetflixを利用しても、『なんか面白い映画がどんどん出てくるな』くらいにしか思わないだろう。そんな風に、ユーザーが全然気づかないところで、実はデータ分析やテクノロジーが活かされている点が素晴らしいと思う」(片桐氏)

では、そのテックカンパニーを作りあげるためにはどうするか。

これからはじまるDMMの組織改革について、松本氏は「チームの総力を測る方程式は、『モチベーション×能力』だと思っている。チーム全体のモチベーションを高めるには、会社の戦略や文化に共感してくれる人を採用し、そういう人たちがモチベーションを高く維持したまま働けるような仕組みを作らなければいけない。ビジネスとエンジニア、どちらが偉いということではなく、どちらも対等に会話できる環境を作っていきたい」と話した。

総勢450人のDMMエンジニアを率いる29歳の新CTOの前には、創業から19年間で培ったカルチャーを作り変えるという大仕事が待っている。

高齢者の運転見守りサービス「SmartDrive Families」が正式リリース、月額2480円

自動車の走行データを活用した各種サービスを提供するスマートドライブは9月14日、高齢の家族などの運転見守りサービス「SmartDrive Families(以下、Families)」を正式リリースした。

高齢化が進む日本では、高齢ドライバーによる運転事故は社会課題の1つだ。法律として免許を返上する年齢を定めるべきなどの議論はあるが、運転のスキルや安全性は個人によって大きく異なる。特に、僻地に住む人たちにとってはクルマは生活に欠かせない移動手段であり、できるだけ長く免許を保持したいというのが正直なところだろう。

そんな課題を解決するため、スマートドライブが開発したのがFamiliesだ。クルマのシガーソケットに専用デバイスを差し込むだけで、運転の安全度や特徴などの走行データを取得することができる。取り付け工事も不要で、約5秒で取り付けが完了する。月額料金は2480円だ。

走行データは専用のスマホアプリから見ることができる。クルマの現在地、走行ログ、急操作のアラートなどをリアルタイムで確認することが可能だ。それぞれ走行ログごとにハンドリング、加速、減速のスコアを確認できるため、運転の“クセ”を把握して今後のアドバイスにつなげることもできる。

スマートドライブはこれまでに保険会社などと共同で、数万車分の走行データを分析。そのノウハウをもとにスコアリングしている。

スマートドライブ代表取締役の北川烈氏によれば、同社は今後、ランキングや運転診断レポートなどの新機能の追加、Familiesの走行データと保険料金との連動などにも取り組んでいくという。また、自治体との連携して免許返納の判断にデータを活かすことも将来的に進めたいとしている。

スマートドライブは2013年10月の創業。2018年8月には産業革新機構などから17億円を調達している。

駐車場シェアの「akippa」と「Smart Parking」が強気の事業提携ーー“パーキング3.0の時代へ”

左から、akippa代表取締役CEO金谷元気氏、シード代表取締役の吉川幸孝氏

総務省による「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」(平成30年)によると、日本人のシェアリングサービス利用経験は1位が駐車場、2位がライドシェアと民泊。駐車場シェアリングは日本のシェアリングを牽引していると言って良いだろう。

そんな中、駐車場予約アプリ「akippa」を運営するakippaと駐車場シェアリングサービス「Smart Parking」などを展開するシードは9月13日、駐車場シェアビジネスの拡大・進化を目指し事業提携したと発表した。

ソフトバンクやNTTドコモなど大手企業による駐車場シェア事業への参入も活発になってきているが、協業を発表したばかりの両社は「そこまで脅威に感じていない」と説明するなど、とても強気だ。

当日、都内で開催された会見でシード代表取締役の吉川幸孝氏は「まだまだ市場ができあがっていないので、市場を作っていくことを優先するべき」と説明。大手が参入することにより駐車場シェアリングがより一般層にも普及するため、むしろ大手の参入を歓迎していると話した。一方、akippa代表取締役CEO金谷元気氏は「現在15社ほど参入しているが、akippaはユーザーのシェア50%を獲得している」と述べ、同社の市場での強さを強調した。「楽天もリクルートも既に(市場から)撤退している」(金谷氏)

2009年2月設立のakippaは契約のない月極駐車場やマンションの駐車場などさまざまなスペースを15分単位・1日単位で預託できるアプリakippaを運営。会員数は2018年9月の時点で90万人、年内には100万人の到達を目指している。駐車場数は2018年9月の時点で2万3000拠点、業界トップの数を誇っている。

2002年4月設立のシードが運営するSmart Parkingは駐車場シェアリングシステムで、駐車場オーナーと使いたいユーザーをマッチングするサービスだ。空き駐車スペースにシードが提供するIoT端末搭載のカラーコーン「ビーコーン」を設置することで、ノーコストで時間貸し駐車場として収益を得ることが可能。ユーザーはアプリをダウンロードすることで駐車場の検索・入出庫・清算の全てをスマホで完結できる。同社は全国の5万件以上のコインパーキングを検索でき、AIが最適な位置・料金の駐車場をランキング形式で提案してくれる「パーキングライブラリ」も運営している。

今回の事業提携を期に両社は4つの取り組みを進めていくと説明した。

まず1つ目がSmart Parkingの駐車場のakippaへの掲載。Smart Parkingの駐車場の一部をakippa上に掲載し予約制を導入する。

2つ目がシードのビーコーンのakippaへのOEM提供。これによりakippaの駐車場でもSmart Parkingの駐車場体験ができるようになる。

3つ目がパーキングライブラリからakippaへの送客。akippaは新規ユーザーの獲得を見込め、シードは予約制駐車場の掲載が増えることでアプリユーザーの選択肢を増やし、利便性を高めることができる。

最後に4つ目が相互代理店として駐車場オーナーの異なるニーズに対応すること。営業先の駐車場が自社のサービスにマッチしない場合、相互にオーナーを紹介しあう。

提携スケジュールは以下の通りだ。

金谷氏は当日の会見で「時間貸し駐車場業界の変貌」に関しても説明してくれた。1971年にパーキングメーターが道路上に設置され時間貸し駐車場という概念が日本に生まれた頃を「パーキング1.0」、90年代にコインパーキング登場した頃を「パーキング2.0」、そして2010年代後半からの駐車場シェアリングの時代を「パーキング3.0」と位置付けていた。今回の業務提携により、日本での「パーキング3.0」時代が更に拡大・進化することを期待したい。

導入社数1万6000社のSmartHR:LINEとの連携、拡張機能ストアなど「次の一手」を語る

SmartHRは9月11日、同社が主催するイベント「SmartHR Next」のなかで、LINEなどの外部サービスとの連携強化、そして拡張機能ストアの「SmartHR Plus」など、今後のSmartHRの成長を担う新しい事業戦略を発表した。SaaSとして提供してきた労務管理クラウド「SmartHR」をプラットフォーム化するという構想だ。

TechCrunch JapanではSmartHR代表取締役の宮田昇始氏にインタビューを行い、その戦略の背後にある想いを聞いた。

「やらないこと」を追求する

プラットフォーム化構想を支える柱の1つである外部サービスとの連携では、勤怠管理サービスの「人事労務freee」や「ジョブカン」、福利厚生サービスの「RELO  CLUB」、そしてチャットアプリの「LINE」との連携を準備中であることが明らかとなった。

具体的な連携内容についてはまだ明らかにされていないが、LINEとの連携では、従業員がチャットボットと会話するだけで年末調整を完結することができる機能や、LINEで給与明細を受け取れるような機能が考えられると宮田氏は言う。LINEとの連携は来年をめどに実現する予定だ。

もう1つの柱である拡張機能ストアのSmartHR Plusの公開は、同社が“スタートアップらしさ”を追求したからこそ生まれた戦略だ。

「スタートアップのSmartHRでは、『やらないこと』を決めています。1つは、多様なニーズすべてに応えようとして機能を増やしすぎた“中途半端なプロダクト”を出さないこと。もう1つは、利益のための囲い込みはしないということです」と宮田氏は話す。

多様化するニーズにどう応えるか

SmartHRが拡張機能ストアの公開に踏み切るのは、SmartHRを利用する企業が抱えるニーズが多様化したためだ。SmartHRのリリースは2015年11月16日。TechCrunch Tokyoのスタートアップバトルの登壇中に正式ローンチを発表した。リリースから約2年10ヶ月が経過したいま、SmartHRの利用企業数は1万6000社を超える。

リリース直後から約1年間は、従業員数が1000人に満たないスタートアップや中小企業に導入される例が多かった。SmartHR自身もその層をターゲットとしたプロダクトづくりを行っていたという。

しかし、2017年春頃になると状況は一変する。従業員数が1000人以上の企業がSmartHRを導入する事例が急速に増え、IT系スタートアップが多かった導入企業の業種も、飲食、アパレル、レジャー施設などに多様化した。

「その頃、社内でも従業員数が1000人を超す企業を受け入れるかどうかという議論が起こりました。マネタイズのことだけを考えれば従業員数が多いことは嬉しいかぎり。でも、当時のプロダクトがその企業規模に耐えうる仕様ではなかったのです」(宮田氏)

複数の事業所をもつ企業の場合、従業員の社会保険証に記載された番号がそれぞれの事業所ごとに異なることがある。しかし、当時のSmartHRは1つの番号しか登録できず、そもそも複数事業所に対応してなかった。もっと細かい例でいうと、従業員が多い企業が人事データのCVSファイルをSmartHRにアップロードしようとすると、時間がかかりすぎてタイムアウトエラーが出てしまうということもあった。

そういった仕様上の欠陥だけでなく、規模の大きな企業ならではのニーズも浮き彫りになった。飲食店など、全国各地に事業所が散らばる企業では、紙の雇用契約書を作成し、それを本部に郵送するだけでも大きな手間がかかる。

その課題を解決するために開発されたのが、SmartHRが2018年8月にリリースした「雇用契約機能」だ。これを利用すれば、オンライン上で雇用契約の締結が完了するため、紙の契約書の作成や郵送に時間を取られる心配もない。従業員すべてが1フロアのオフィスにいる企業がSmartHRを導入していた時代には誕生しなかったであろう機能の1つだ。

企業規模の大きなユーザーのニーズに応えるため、SmartHRは2017年春頃から細かなプロダクト改善を重ねていく。しかし、ユーザーのニーズに応え続けることは重要ではあるが、業種や規模の異なる企業のニーズに応えてSmartHRの標準機能を増やし続けると、誰のためのプロダクトなのか分かりにくくなる。宮田氏が言うところの「中途半端なプロダクト」だ。

追加的な機能を“拡張機能”として用意し、サードパーティアプリもそこに並べるという戦略は、それを防ぐためのアイデアだ。先述した雇用契約機能も、じつはSmartHRの標準機能としてではなく、拡張機能として提供されている。

同社は今後、ガラケーしか持たない従業員が多い企業でもSmartHRを利用できるように、店舗や工場に備え付けられたiPadにインストールできる専用アプリや、来年リリースを予定している「HRレポート」や「すごい社員名簿」が自動作成できる機能などを自社開発の拡張機能として提供していく。また、来年をめどにサードパーティの拡張機能も提供開始する予定だ。

「バックオフィス系のサービスは、何かと機能を広げがちです。SmartHRをプラットフォーム化することで、単体だと満たせなかったニーズも満たせるようになる。必要なときに、必要な分だけ使えるサービスを目指したい」(宮田氏)

東京にあるAI企業を地図化した「Tokyo AI Map」公開、本郷・渋谷に拠点が集中

AI専門メディアの「AINOW」は9月12日、東京で人工知能関連ビジネスを展開する企業を地図上にマッピングした「Tokyo AI Map」を公開した。

このマップは東京都内にある、AI関連企業169社をピックアップしたもの。AINOWによれば、2018年9月現在、都内でAI企業が密集している地域は、本郷、渋谷、有楽町の3エリアだという。

東京大学のキャンパスもある本郷は、大学構内にアントレプレナープラザがあり、AI関連スタートアップが入居する。5月に資金調達を行ったAidemyなど、UTEC(東京大学エッジキャピタル)が出資する企業も多い。またディープコアが開設したAI特化型インキュベーション拠点「KERNEL HONGO」が存在するのも、このエリア。昨年、東証マザーズに上場したPKSHA Technologyも、本郷に拠点を持つ。

7月に「SHIBUYA BIT VALLEY(シブヤ・ビットバレー)」プロジェクトが始まり、Googleが再びオフィスを移転する渋谷にも、多くのAI関連企業がオフィスを構える。現時点では特に道玄坂上方面に、LeapMindfluctSELTECHといった企業が集中。ほか、8月に資金調達を行ったAI-OCRツールのAI insideやファッションAIのSENSYなども渋谷にある。

また大手企業や外資企業が集まる有楽町エリアには、最先端のAI技術を駆使する大手企業と、AI業界で勢力を加速する新興AI企業が共存しているという。

最近スタートアップが集まり、五反田バレーとして注目される五反田にも、マツリカレッジ空色などのAIを活用する企業が存在。今後、ほかのAI関連企業の進出も増えるかもしれない。

AINOWでは、昨年9月にもB向け人工知能業界をまとめたカオスマップを公開している。今回公開されたTokyo AI MapはAINOWのサイト内で、2019年のカレンダー付きPDFとしてダウンロードすることができる。

訪日外国人向けショッピング支援アプリ「Payke」運営が10億円を調達

商品に付いているバーコードをスキャンすることで、訪日外国人が自国語で商品情報を確認できるショッピングサポートアプリ「Payke(ペイク)」。同アプリを提供するPaykeは、8月30日に総額10億円の資金調達を実施していたことを明らかにした。第三者割当増資の引受先はEight Roads Ventures Japan、SBIインベストメント、沖縄振興開発金融公庫、SMBCベンチャーキャピタル、INTAGE Open Innovation Fund。Paykeの累計調達額は、12.2億円となる。

Paykeは2014年11月の設立。2015年11月にリリースされたアプリ、Paykeは、商品バーコードをスキャンすることで、商品に関する情報を母国語で見ることができるというもの。原材料や使い方などの基本情報のほか、商品の魅力や製造秘話、ユーザーの口コミも確認でき、商品をインバウンド観光客へ訴求することが可能となる。

現在アプリは、英語、繁体字、簡体字、韓国語、日本語、タイ語、ベトナム語の7言語に対応。ユーザーの95%以上が外国人ユーザーだ。2017年1月には台湾、香港、マカオのアプリストアで1位を獲得しており、アジア各国のユーザーに利用されているという。

また、Paykeでスキャンされた商品データについては、「いつ」「誰が」「どこで」「何を」スキャンしたかを収集。メーカーなどの企業向けに、商品や店舗に対する「興味」データとして一部提供され、インバウンドマーケティングに活用されている。

小売店向けには、スマホアプリと同じサービスが店頭で利用できるタブレット端末もレンタルで提供。アプリをインストールしていない観光客に貸し出すことで、購入率や購入単価向上、対応スタッフの人件費削減につながるとして、店舗での導入が進んでいるという。

Paykeは2018年8月現在、総ダウンロード数が約70万にのぼる。商品登録点数は2018年5月の段階で25万アイテムを突破。メーカーへ提供するB2Bサービスの導入数も、2018年8月現在で約1200社に達している。

VRイベントプラットフォーム「cluster」運営が4億円をシリーズBラウンドで調達

VRイベントプラットフォーム「cluster」を提供するクラスターは9月12日、シリーズBラウンドで総額約4億円を調達したことを明らかにした。第三者割当増資の引受先はXTech Venturesグローバル・ブレインKDDIの各社が運営するファンド。また資金調達にあわせ、前ユナイテッド取締役の手嶋浩己氏が社外取締役として就任した。

クラスターは、VR上で音楽ライブやイベントなどを開催できるプラットフォームclusterを運営する。cluster上では同時に最大5000人と接続が可能。クラスターが目指すのは“ひきこもりを加速させる”バーチャル上でのエンタメ体験の提供だ。

例えば、バーチャルYouTuber(VTuber)をはじめとしたバーチャルアイドルが増える中、リアルタレントが行うような商業活動をバーチャル上でもできるように、有料イベントを開催できるチケット機能を7月にcluster上で公開している。

今回の資金調達でクラスターは、事業拡大に向けたプロダクト開発や人材採用強化を図る。

クラスターは2016年4月に5000万円を調達2017年5月に2億円を調達しており、これまでの累計調達額は約6.5億円。2017年6月よりcluster正式版を提供している。

TC Tokyo「超早割チケット」の発売は9月18日まで!スタートアップバトル本登録は9月30日まで!

今年も11月15日(木)と16日(金)に渋谷ヒカリエで開催される日本最大級のスタートアップ・テクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo」。現在発売中のお得な「超早割チケット」の発売が9月18日の23時59分までとなっているので、来場する予定だがまだチケットを予約していないみなさんにはこのチャンスを逃さないでほしい。通常の「一般チケット」は4万円(税込)だが、超早割チケットは1万8000円(税込)だ。

チケット購入はこちらから

TechCrunch Tokyoは僕たちTechCrunch Japanが毎年開催している、日本最大級のスタートアップ・テクノロジーのイベント。今年で8回目の開催となり、昨年は約2500名が来場した。

そんなTechCrunch Tokyoの主役は何と言ってもスタートアップのみなさんだ。例年、イベント最大の目玉とも言える「スタートアップバトル」では創業3年未満の新進気鋭のスタートアップがステージ上で熱いピッチバトルを繰り広げる。

例年100〜150社から応募が寄せられているスタートアップバトル。今年の参加者の本登録は9月30日23時59分までとなっているのでそれも併せてお知らせしたい。応募資格は以下の通りだ。

  • 未ローンチまたは2017年10月以降にローンチしたデモが可能なプロダクトを持つスタートアップ企業であること。
  • 創業年数3年未満(2015年10月以降に創業)で上場企業の子会社でないこと。

投資家や大企業の新規事業担当者も多く参加するTechCrunch Tokyoでは、スタートアップバトルをきっかけに出資が決まったり、優秀な人材の採用につながることも少なくない。みなさんの応募を心待ちにしている。

応募はこちらから

クックパッドの考えるスマートキッチンの未来――人と機器の協調で豊かな料理体験を

「これまでクックパッドではレシピを提供することで献立の意思決定の支援をしてきたが、レシピを見つけた先にある“物理的な料理”の部分は十分に支援できていなかった。その物理的な料理が抱える課題を、ハードウェアとレシピを組み合わせて解決していく」――クックパッドの金子晃久氏は、同社が実現しようとしているスマートキッチンの構想についてそう話す。

以前TechCrunchでも紹介したように、クックパッドでは5月に“人と機器とレシピ”をつなぐサービス「OiCy」を発表した。これはクックパッドに投稿されたレシピを機器が読み取れる形式(MRR: Machine Readable Recipe)に変換してキッチン家電に提供することで、レシピに合わせて機器を自動で制御できるというもの。将来的には「人と機器が協調する」ことで、手料理をもっと楽しくしようという試みだ。

この取り組みを担っているのが、2018年の初めにクックパッドで発足したスマートキッチングループ。今回は同グループでグループ長を務める金子氏に、クックパッドのスマートキッチン構想の背景から、今後の展望について聞いた。

スマートキッチンでは人と機器が協調する

クックパッドのスマートキッチン構想の世界観を掴むには、同社が公開しているレシピ連動調味料サーバー「OiCy Taste」の動画を見るのが手っ取り早いかもしれない。

OiCy Tasteはレシピとつながった調理機の一例(コンセプトモデル)として開発されたもの。クックパッドのレシピを選ぶだけで必要な分量の調味料を自動で計量でき、人数の変更や味つけのアレンジにも対応する。

スマートキッチングループでは、チーム内で試すのはもちろん、ユーザーテストも実施。そこで見えてきたのが、レシピと機器がつながることで「“楽”と“美味しい”を両立できること」と「流れを止めない料理体験を実現できること」だったという。

「一般的に料理は楽をしようとすると上手くいかなくて失敗したり、美味しく作ろうとすると楽じゃなかったりする。そこに(OiCy Tasteのような)機械があることで、“ラクにおいしく”を両立することができた。またデータの世界に持ってくることによって、人数変換や味付けのアレンジも自在にできる」(金子氏)

楽と美味しいの両立は、もともと開発前から実現したい目標だったという金子氏。一方の「流れを止めない料理体験」については、実際に試した際に初めて発見したものなのだそうだ。

「人間と機械が分担して作業することで、野菜を切ったり炒めたりしている間に調味料が出てきて、混ぜるだけで完成するという新しい料理体験が実現できた」(金子氏)

このキッチン体験がさらに進むとどうなるのか。まずは時間や場所を超えて料理を再現できるようになる、というのが金子氏の考えだ。

たとえばお母さんやおばあちゃんの味をレシピとして残しておくと、いつでも再現できるようになる。もしくはレストランで美味しいものを食べた際、仮にそのレシピをダウンロードすることができれば、自宅で簡単に再現できるようになる。

この“再現”という考え方は、クックパッドが目指すスマートキッチンにおける重要な鍵だ。

「再現が土台になると、人間の好奇心やクリエイティビティが復帰して創意工夫ができるようになる。創意工夫のように人間が得意とする部分と、レシピの忠実な再現や正確な温度管理など機械が得意とする部分を持ち寄り協調することで、豊かな料理体験を創る。これがクックパッドの目指しているスマートキッチンだ」(金子氏)

家事をするようになって気づいた料理の面倒くさい部分

そもそもこのスマートキッチンの構想やOiCy Tasteのアイデアは、どういう背景で生まれたものなのだろうか。金子氏に聞いてみたところ、どうやら前職のソニー時代に「個人的な理由」で立ち上げようとしていたプロジェクトが発端のようだ。

「家事分担で週に4日間料理をすることになり、そこでいろいろな課題に気づいた。もともと料理が好きでも得意でもなかったのでレシピを忠実に再現しようとすると、すごい面倒なことが多くて。その典型が調味料を取り出して計る作業。機械がやっても同じような結果になるのであれば、自分ではなく機械に任せてもいいのではないかなと思った」(金子氏)

ここ数年の間に“レシピを見つける”ことはクックパッドなどレシピサイトによって簡単になったけれど、その先の“料理をする”部分は未だにアナログな要素が多い。「せっかく簡単にレシピが見つかるのだから、そのままシームレスに機械を動かせればもっと簡単に料理ができるはず」(金子氏)だと考え、まずはプロトタイプ作りにとりかかった。

プロトタイプに使ったのは洗面所で見かけた時にひらめいたというハンドソープディスペンサー。新しく購入してきたものを分解し、Arduino(ハードウェアのプロトタイプ作りなどによく活用されるマイコンボード)とつなぎハックすることで、OiCy Tasteの原型を作ったという。

クックパッドとの出会いは「周りにも話をしてみて『行けるんじゃないか』と思い、本格的に事業としての立ち上げを検討していた」時のこと。事業を立ち上げるにはレシピが必要になるため、クックパッドの担当者と会ったのが最初だ。

その時の担当者が、現在は事業開発部Cookpad Venturesグループ長の住朋享氏。1年〜1年半ほど情報交換をする中で、最終的には同社のレシピやユーザー基盤といった資産を活用して「その立場で周りのメーカーの協力を仰ぎながら進めるのが1番の近道」(金子氏)だと判断し、2018年1月にクックパッドに加わった。

楽しいところしかない料理体験の実現目指す

クックパッド 研究開発部 スマートキッチングループ グループ長の金子晃久氏 (写真提供:SKS Japan)

金子氏によると、プロトタイプを作っていた当初から人と機器の協調というイメージが合ったわけではないそう。最初は「目の前の自分の料理を楽にしたい、とにかく面倒な作業を機械にやってもらって、料理が楽しくなれば」と思っていたという。

それならば完全に機械によって自動化された方が楽な気もするのだけれど、どうやらそういうわけでもないらしい。

「自分の場合は家族のために料理を作る。その際に自分で作った場合とそうではない場合で明確な違いがあった。自分で作った時は料理を通じて子どもとつながっている感覚があって、仮に多少味付けを失敗したとしても、それがコミュニケーションの要素になる」(金子氏)

特にその“つながり”を強く感じるようになったのが、家事代行を頼んだ時だったそう。金子氏は「結果として自分で作るよりも美味しい料理を食べられたが、その一方で家族とのコミュニケーションやつながりをなくしてしまった感覚になった」と当時の心境を振り返る。

「完全に自動化するのではなく、何かしら自分がやっている部分が絶対に必要なのだと思った。システム的にはOicyのテーマは人と機械の協調。でもユーザー体験としては、たとえば日々忙しくて料理の時間があまりないけれど家族のために手料理を作りたい人が、機械の力を借りながら自分で料理をした感覚を味わえるようなものにしたい」(金子氏)

クックパッドでは料理の楽しさを“新発見”と“再発見”に分解して考えているそう。「料理にはもともと楽しい要素があるが、忙しい中で義務としてやっていると、それが薄れてしまう。機械のサポートで、その楽しさを再発見できるようにする」(金子氏)

最終的には「楽しいところしかない料理体験」を提供したいと話す金子氏。自身の場合は「親子丼で最後に卵をふわっと固めるところだけをやりたい」らしく、野菜を切ったり味付けをする部分は機械に任せたいそうだ。

もちろん人によってこだわりのポイントは違えど、本当に自分がやりたいことやアレンジしたい工程だけを人力でやって、あとは機械にお任せする。金子氏はグランピング(グラマラスとキャンピングを掛け合わせた言葉。重い荷物を持参したりテントを設営したりといった負担のない、贅沢なキャンプ)を例に、同じような世界観を料理においても実現したいという。

メーカーや機器を超えて繋がるレシピ

クックパッドは8月に開催されたスマートキッチン・サミット・ジャパン 2018内で、スマートキッチンの方向性と目標を示す「スマートキッチンレベル」を発表している。

クックパッドが発表した「スマートキッチンレベル」。今後はメーカーと協力しながら、自動運転における「自動運転レベル」のように業界全体で共通の目標となるような指標を作っていきたいという

このレベルに沿って考えると、現在はいくつかのメーカーの製品がレベル2に差し掛かっている段階だろうか。たとえばシャープの場合、ヘルシオなど一部の製品はレシピアプリ「COCORO KITCHEN」と繋がることで、アプリで気になったレシピを家電に送ったりすることが可能だ。

ただし現在は各メーカーがそれぞれ規格を持って各々で開発を進めている状況。これが加速するとユーザーは調理機器を同一メーカーの同一シリーズで揃えていない限り、機器が変わるごとに別々のレシピを立ち上げる必要が出てきてしまう。

OiCyが直近で目指しているのは、この「メーカーや機器の壁」を取っ払い、複数の機器が“同じレシピ”を参照して調理を実行できる「レベル3」のプラットフォームだ。海外も合わせると約400万レシピを保有するクックパッドの基盤を生かし、それらのレシピを機器が読み取れる形式に変換して提供する。

豊富なレシピという資産があるからこそできる取り組みではあるものの、もちろん簡単なことではない。これはクックパッドがCGM(ユーザー投稿型のメディア)であるがゆえの課題でもあるが、各ユーザーごとにレシピの書き方や表現も異なるため、それをきちんと機械が読み取れるように変換するのには時間を要する。

「まずは関係ない情報を除き、レシピだけの情報を抽出する。その上で漢字やカタカナ、ひらがなの表記の揺れや文法の違いなども含めてどのように対応していくかが1番のハードルだ。今は(人間が作った)ルールベースと機械学習ベースの2つのアプローチを考えているが、どちらにせよ最初は人力でやっていく必要がある。まずは数百レベルから、そこにルールを入れることでレシピが一桁増えるイメージ」(金子氏)

クックパッドでは2019年のスマートキッチン・サミット・ジャパンまでを目処に「国内向けにMRR提供サービスの開始」「海外展開」「さらなるコンセプトモデルの公開」を目標としている。

まずはレシピ数を絞ってもいいので着実に繋いでいくことを目指し、徐々に対応機器の拡大や海外展開も進めていく方針だ。8月にはパートナー企業10社を発表していて、対応製品の開発の話も始まっているという。

「スマートキッチンの構想はクックパッド単体ではできない。OiCyが『Open integration, Cooking with you』の略であるように、パートナーと一緒になって新しい料理体験を作っていければと考えている。クックパッドはハードウェアメーカーではないので、機械が読み取れるレシピをしっかりと提供することで、パートナーのモノづくりやコトづくりをサポートしていきたい」(金子氏)

8月に発表されたパートナー企業10社

ビデオ:TechCrunch Tokyo2017ーーマネーフォワード 辻庸介氏の講演を初公開!

現在お得な「超早割チケット」が発売中で11月15日(木)と16日(金)に渋谷ヒカリエで開催される日本最大級のスタートアップ・テクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo 2018」。開催までいよいよあと約2ヶ月というところだが、今日は昨年のTechCrunch Tokyo2017に登壇いただいたマネーフォワード代表取締役社長 辻庸介氏の講演動画を公開したのでお知らせしたい。

これまでは記事のみでの紹介だったが、TechCrunch Tokyoではどのような講演が期待できるのか皆さんに知ってもらいたいと思い、フル尺のビデオを公開することにした。

マネーフォワードは2017年9月に東証マザーズへの上場を果たしたが、2012年5月に創業した同社はその翌年に開催されたTechCrunch Tokyo 2013のスタートアップバトルに参加していた。

それから4年後のTechCrunch Tokyo 2017、Fireside Chatに登壇した辻氏は創業当初の資金調達や人材採用における失敗を赤裸々に語ってくれた。

今年のTechCrunch Tokyo 2018にはGitHub CSOのJulio Avalos氏dely代表取締役の堀江裕介氏、アメリカのドローンスタートアップTop Flight TechnologiesでCEOを務めるLong Phan博士、そして今年上場したHEROZ代表取締役 林隆弘氏の登壇が決定しているとお伝えしてきたが、今後も続々とアナウンスしていくので期待して待っていてほしい。

おっと、言い忘れるところだったが、通常料金よりも大幅に割引された超早割チケットは9月18日までの発売となっている。来場を検討している皆さんにはこのチャンスを逃さないでほしい。

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語学学習のQ&Aアプリ「HiNative」が6.5億円調達、登録ユーザー数は1年強で3倍以上に

写真左より、YJキャピタル代表取締役の堀新一郎氏、Lang-8代表取締役の喜洋洋氏

外国語学習者向けのQ&Aアプリ「HiNative」を運営するLang-8は9月10日、YJキャピタル、大和企業投資、FFGベンチャービジネスパートナーズ、個人投資家の千葉功太郎氏などから約6億5000万円を調達したと発表した。

これまでにもTechCrunch Japanで紹介してきたHiNativeは、外国語を学習する人向けに開発されたQ&Aアプリだ。たとえば、「〇〇は英語で何と言う?」などと質問すると、その言語のネイティブスピーカーが回答してくれる。テキストでの回答のほか、音声で回答する機能もある。また、そのように語学学習に直接つながる質問だけではなく、日本語を学ぶ外国人が「(就活の)合同説明会では履歴書は必要ですか?」など、その国の文化や慣習についても盛んにQ&Aが行われているのが特徴だ。

HiNativeは2014年11月にサービスリリースされ、2018年8月時点で登録ユーザー数は341万人だという。Lang-8は2017年6月にはユーザー数が100万人を突破したと発表していたから、そこから1年と少しの期間でユーザー数を3倍以上に伸ばしていることが分かる。サービスが対応する言語も110言語にまで増え、240の国と地域で利用されるようになった。

今回のラウンドに参加しているYJキャピタルは、2年前に行われた前回ラウンドで、「HiNativeがもつ可能性に自信が持てなかった」という理由から出資を見送ったという経緯がある。そのYJキャピタルで代表取締役を務める堀新一郎氏も、現在のLang-8については「この2年間でKPIが強烈な右肩上がりで成長を遂げている」とコメントしている。

「コミュニティの価値はユーザー数が増えれば増えるほど高まっていく。ユーザーが増えたことで回答者の層が厚くなり、ユーザーにとっての価値もさらに高まる。まずはユーザー数を数千万人規模にまで伸ばしたい」(Lang-8代表取締役の喜洋洋氏)

ユーザー数の伸長に貢献したのは、Lang-8が以前から注力してきたYouTuberマーケティングだ。これは、外国語学習の領域で影響力のあるYouTuberと直接契約を結び、HiNativeを実際に使用する動画をアップロードしてもらうなどの施策。Lang-8はこの施策を国内だけでなく海外のYouTuberに対しても行っており、その結果、登録ユーザー数の約97%が海外ユーザーなのだという。ここ最近では、ベトナムなど東南アジアからの登録が伸びているそうだ。

今回のラウンドで約6億5000万円を調達したLang-8。同社はこの資金を利用して、海外利用比率のさらなる向上を目指すための新規ユーザーの獲得、回答率やスピードの改善などのサービス向上、マーケティング施策などの強化を行っていく。

「HiNativeを通して目指すのは、世界中のネイティブスピーカーがもつ知と経験の共有だ。(冒頭で紹介した)合同説明会の例など、たとえ特別な知識や経験がなくとも、ネイティブスピーカーの『当たりまえ』が誰かにとっては非常に価値のある情報になり得る。HiNativeを利用すれば、疑問に対してすばやく適切な答えがかえってくるという世界を早く作りたい」(喜氏)

元サイバー西條晋一氏が代表を務めるXTech、エキサイトにTOBを実施

元サイバーエージェント役員の西條晋一氏が代表を務めるXTechは9月7日、子会社のXTech HPを通じてエキサイトの普通株式を公開買付け(TOB)により取得すると発表した。取得価格は1株あたり875円。最終的には、エキサイトの全株式を取得し完全子会社化することが目的のようだ。期間は2018年9月10日から10月24日まで。決済の開始日は10月31日。

XTechは既存産業×テクノロジーで新規事業を創出するコンセプトの会社で、今年の1月に設立されたばかり。XTechの子会社でベンチャーキャピタル事業を手掛けるXTech Venturesは9月3日、元ユナイテッド取締役の手嶋浩己氏を共同創業者兼ジェネラルパートナーとして迎えたことを発表していた。

エンジニア向けニュースアプリのMewcketが6000万円調達、ダイレクトリクルーティング機能も

エンジニア向けニュースアプリ「Mewcket」を提供するMewcketは9月7日、ベンチャーユナイテッドから6000万円を調達したと発表した。

Mewcketはエンジニア向けの記事をまとめたニュースアプリだ。同アプリでは記事全文を自然言語処理にかけてキーワードなどを抽出し、それぞれの記事の特徴を分析。そして、ユーザーの趣向に合った記事をAIがリコメンドするという機能が特徴的だ。

Mewcketはもともと、エンジニア向けの求人情報を閲覧できるスマホアプリとして始まったが、その後、その求人アプリにも搭載されていたエンジニア向けニュースの配信機能に特化したかたちへピボットした。Mewcket代表取締役の小林奨氏によれば、現在のアプリは「毎月約1000人」のペースで会員登録者数が伸びているという。

また、同社は今回の資金調達と同時に、企業がMewcketに登録するエンジニアを直接リクルーティングできる機能を追加。機能の公開時点で数十社からの申込みがあるという。小林氏によれば、すでに記事それぞれのキーワードや特徴を抽出しているMewcketでは、それを読むエンジニアの興味分野やスキル、転職意向などをある程度数値化することが可能だという。Mewcketのダイレクトリクルーティング機能を利用する企業は、それらの情報をもとにエンジニアの勧誘活動を行うというわけだ。

今回6000万円の資金調達を実施したMewcketは、2016年8月の設立。2017年10月に同社が数千万円(金額非公開)を調達したというニュースはTechCrunch Japanでも紹介した。Mewcketは今回調達した資金をもとに、エンジニアの採用を加速するとしている。