ソフトバンクやホンダが出資するGM傘下の自動運転開発会社Cruiseが従業員8%を解雇

GM(ゼネラル・モーターズ)傘下の自動運転開発会社Cruise(クルーズ)は、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック渦中のコストを削減しようと、1800人超いる従業員の8%近くを解雇する。同社はソフトバンク・ビジョン・ファンド、ホンダ、 T. Rowe Price&Associatesの支援を受けている。

CruiseのCEOのDan Ammann(ダン・アマン)氏が送ったメモによると、解雇はプロダクト、マーケティング、ライドシェア事業部門の従業員が対象となる。この解雇のニュースは最初にBloomberg(ブルームバーグ)が報じた。

「解雇される従業員には退職手当が支払われ、医療給付も年末までCruiseが負担する」とメモにはある。同社の広報担当Milin Mehta(ミリン・メータ)氏は解雇の事実を認めた。

「変動の大きな時代に、我々は幸いにも極めて明快なミッションと豊富な資金を持っている。本日取ったアクションは、我々がエンジニアリング開発やエンジニアリング人材に賭けていることを反映するものだ」とメータ氏はTechCrunchへの電子メールで述べた。

「解雇は、新型コロナウイルスのパンデミックの中で最も必要とされているところにリソースをシフトさせる」とメモの中に概要が示されている幅広い戦略の一部だ。Cruiseはまた、リモートセンシング技術ライダーに取り組んでいたカリフォルニア州パサデナにあるオフィスも閉鎖する。ライダー開発チームはサンフランシスコのオフィスに移る。

「解雇はするものの、同社は引き続きエンジニアを採用する」とメモにはある。

Cruiseは「エンジニアリングの最も重要なエリアで積極的に採用を進める。目下、要となるテック目標の追求をサポートする幹部を求めている」とアマン氏はメモに書いている。「今年バランスを取るために、これから人材を採用し、エンジニアリングチームを拡大させる予定だ」。

画像クレジット: Cruise

“新型コロナウイルス

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(翻訳:Mizoguchi

フォードが自動運転車両によるサービス開始を2022年に延期、新型コロナの影響で

Ford(フォード)は4月28日、自動運転車両によるサービス開始を2022年に延期すると明らかにした。新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックを受けてGTM(Go-To-Market)戦略を見直した結果だ。

計画の後ろ倒しは、4月28日の市場がクローズした後に発表された同社の四半期決算の中で明らかにされた。第1四半期決算は20億ドル(約2130億円)の赤字で、前年同期は11億ドル(約1170億円)の黒字だった。新型コロナウイルスの事業への影響はまだ続いており、第2四半期は赤字幅が大きくなると同社は予想している。

フォードは、米国で自動運転車両のパイロットを立ち上げた他の企業と少し異なる。同社は2021年の商業展開前に統合される2つのプロジェクトを並行して進めてきた。自動運転ビジネスモデルがどうなるかをテストして追求する一方で、それとは別に自動運転車両テクノロジーを開発していた。

同社が2017年に10億ドル(約1070億円)を出資したピッツバーグ拠点のArgo AIは、フォードの自動運転車両向けにバーチャル・ドライバー・システムと高解像度マップの開発を手掛けている。フォードはWalmart(ウォルマート)やDomino’s(ドミノ)、Postmates(ポストメイト)、その他いくつかのローカル事業会社などのパートナーとのパイロットプログラムを通じて、GTM戦略をテストしてきた。

フォードは4月28日、新型コロナウイルスが顧客の行動にもたらすであろう長期的な影響を精査する必要があると述べた。自動運転車両計画に関する同社の声明文は以下の通りだ。

現在の事業環境、そして新型コロナウイルスによる顧客の行動への長期的な影響を精査する必要性を考慮し、フォードは自動運転サービスの開始を2022年にシフトさせることを決めた。顧客の行動を理解することは新たなモビリティサービスを信頼のもとに構築し、人々の暮らしをより簡単なものにするために重要な部分だ。

顧客の行動の変化を研究するのに時間を割くことで、顧客の新たな需要に応じるためにGTM戦略を精査したり、変更したりすることができる。精査の一環として、我々が構築している顧客エクスペリエンスが人々に、我々の車両の中で自分自身や荷物が安全で守られているという安心感を提供しているかどうかも確認したい。

新型コロナウイルスはすでに消費者の行動に影響を及ぼしている。最初に新型コロナウイルスが発生した中国において、フォードはオンライン販売を導入した。CEOのJim Hackett (ジム・ハケット)氏は、今や中国における販売の3分の1がオンラインでのものだと語った。

同社はまた、特定のプロダクトに対する需要も変化すると予想している。「このパンデミックは今後数年にわたって顧客の暮らしや仕事に影響を及ぼすと考えている。今後の生活で重要なものとしてタッチゼロ(セルフサービス)があるが、特に商品の配達やマイクロモビリティの分野で自動走行導入への関心に拍車がかかるだろう」と最高執行責任者のJim Farley(ジム・ファーレイ)氏は決算発表時に語った。

決算発表の一環で公開したスライドで、フォードは「AlgoへのVWの中間投資は予定どおり」とした。VWグループは2019年7月に資本と資産で26億ドル(約2770億円)をArgo AIに投資すると発表した。

Fordの自動運転以外の車、デザインを新しくしたF-150トラックやハイブリッドバージョンなどの発売は予定通りだ。同社は中型SUVであるFord Bronco(フォード・ブロンコ)の発表も計画していて、そして今後3年間で中国でFordとLincoln(リンカーン)の車30種(うち10種は電気自動車)を発売する計画だ。

新プロダクトの小型オフロード車両や電動Mustang Mach-E(マスタング・マッハ-E)、ブロンコの立ち上げのタイミングは、生産が戻ってオペレーションの準備が把握でき次第アップデートすると同社は述べた。

“新型コロナウイルス

画像クレジット: Ford Motor

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(翻訳:Mizoguchi

フォードが自動運転車両によるサービス開始を2022年に延期、新型コロナの影響で

Ford(フォード)は4月28日、自動運転車両によるサービス開始を2022年に延期すると明らかにした。新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックを受けてGTM(Go-To-Market)戦略を見直した結果だ。

計画の後ろ倒しは、4月28日の市場がクローズした後に発表された同社の四半期決算の中で明らかにされた。第1四半期決算は20億ドル(約2130億円)の赤字で、前年同期は11億ドル(約1170億円)の黒字だった。新型コロナウイルスの事業への影響はまだ続いており、第2四半期は赤字幅が大きくなると同社は予想している。

フォードは、米国で自動運転車両のパイロットを立ち上げた他の企業と少し異なる。同社は2021年の商業展開前に統合される2つのプロジェクトを並行して進めてきた。自動運転ビジネスモデルがどうなるかをテストして追求する一方で、それとは別に自動運転車両テクノロジーを開発していた。

同社が2017年に10億ドル(約1070億円)を出資したピッツバーグ拠点のArgo AIは、フォードの自動運転車両向けにバーチャル・ドライバー・システムと高解像度マップの開発を手掛けている。フォードはWalmart(ウォルマート)やDomino’s(ドミノ)、Postmates(ポストメイト)、その他いくつかのローカル事業会社などのパートナーとのパイロットプログラムを通じて、GTM戦略をテストしてきた。

フォードは4月28日、新型コロナウイルスが顧客の行動にもたらすであろう長期的な影響を精査する必要があると述べた。自動運転車両計画に関する同社の声明文は以下の通りだ。

現在の事業環境、そして新型コロナウイルスによる顧客の行動への長期的な影響を精査する必要性を考慮し、フォードは自動運転サービスの開始を2022年にシフトさせることを決めた。顧客の行動を理解することは新たなモビリティサービスを信頼のもとに構築し、人々の暮らしをより簡単なものにするために重要な部分だ。

顧客の行動の変化を研究するのに時間を割くことで、顧客の新たな需要に応じるためにGTM戦略を精査したり、変更したりすることができる。精査の一環として、我々が構築している顧客エクスペリエンスが人々に、我々の車両の中で自分自身や荷物が安全で守られているという安心感を提供しているかどうかも確認したい。

新型コロナウイルスはすでに消費者の行動に影響を及ぼしている。最初に新型コロナウイルスが発生した中国において、フォードはオンライン販売を導入した。CEOのJim Hackett (ジム・ハケット)氏は、今や中国における販売の3分の1がオンラインでのものだと語った。

同社はまた、特定のプロダクトに対する需要も変化すると予想している。「このパンデミックは今後数年にわたって顧客の暮らしや仕事に影響を及ぼすと考えている。今後の生活で重要なものとしてタッチゼロ(セルフサービス)があるが、特に商品の配達やマイクロモビリティの分野で自動走行導入への関心に拍車がかかるだろう」と最高執行責任者のJim Farley(ジム・ファーレイ)氏は決算発表時に語った。

決算発表の一環で公開したスライドで、フォードは「AlgoへのVWの中間投資は予定どおり」とした。VWグループは2019年7月に資本と資産で26億ドル(約2770億円)をArgo AIに投資すると発表した。

Fordの自動運転以外の車、デザインを新しくしたF-150トラックやハイブリッドバージョンなどの発売は予定通りだ。同社は中型SUVであるFord Bronco(フォード・ブロンコ)の発表も計画していて、そして今後3年間で中国でFordとLincoln(リンカーン)の車30種(うち10種は電気自動車)を発売する計画だ。

新プロダクトの小型オフロード車両や電動Mustang Mach-E(マスタング・マッハ-E)、ブロンコの立ち上げのタイミングは、生産が戻ってオペレーションの準備が把握でき次第アップデートすると同社は述べた。

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画像クレジット: Ford Motor

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(翻訳:Mizoguchi

TuSimpleが量産型自動運転トラック技術に向けてサプライヤーZFと提携

自動運転トラックのスタートアップであるTuSimpleは、自動車サプライヤーZFと提携し、センサーなどの自動運転車技術の、商用規模での開発と生産を始める。

4月に開始予定であるこのパートナーシップは、中国、ヨーロッパ、そして北米をカバーする予定だ。両社は、カメラ、ライダー、レーダー、そして中央コンピューターなどの、自動運転車両技術に必要なセンサーを共同開発する。パートナーシップの一環として、ZFはTuSimpleの自律システムを検証して、車両に統合するためのエンジニアリングサポートを行う。

2015年にローンチされたTuSimpleは、中国や、サンディエゴ、そしてアリゾナ州ツーソンで事業を展開している。同社はこれまで「フルスタックソリューション」に取り組んできた、この言葉は自動運転に必要な、すべての技術要素を開発して統合することを意味する業界用語である。TuSimpleが開発しているのはSAE(米国自動車技術協会)の定義によるレベル4システムである。これは特定の条件下(領域内)で車両がすべての運転を行う自動運転だ。

TuSimpleは、この新しい自動運転技術産業の他の企業たちが行き詰まる中で事業を拡大し、投資家を引き付けることになんとか成功した。同社はこれまでに、Sina、UPS、そしてティア1サプライヤーのMando Corporationといった投資家たちから約3億ドル(約326億円)を調達している。現在、アリゾナ州とテキサス州の間で毎週40台以上の自動運転トラックが、約20回の自動運転走行を行っている。すべてのトラックには、ハンドルの前に人間が安全オペレーターとして同乗している。

TuSimpleのチーフプロダクトオフィサーであるChuck Price(チャック・プライス)氏は声明の中で、この提携はTuSimpleが自動運転トラックを市場に投入するための重要なマイルストーンだと語っている。TuSimpleの計画は、同社の自動運転ソフトウェアと、ZFの自動車品質製品を開発する能力を組み合わせることだ。

だがこのパートナーシップが、TuSimpleのすべての課題を取り除いてくれるわけではない。開発から出荷への移行には、さらに多額の投資が必要だ。もし企業がテスト段階から商用展開に移行できたとしても、利益率を上げるためには、日常業務を効率的に進める必要がある。

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(翻訳:sako)

Helm.aiが無人運転車用AI向け無人学習技術に14億円調達

4年前、数学者のVlad Voroninski(ブラド・ボロニンスキー)氏は、自動運転技術開発における数々のボトルネックの一部を深層学習が取り除く可能性を見い出していた。

そして現在、彼がTudor Achim(チューダー・アーキム)氏と2016年に共同創設したスタートアップHelm.aiは、A.Capital Ventures、Amplo、Binnacle Partners、Sound Ventures、Fontinalis Partners、SV Angelなどによるシードラウンドで1300万ドル(約14億円)を調達したことを発表し、沈黙を破った。

これにはBerggruen Holdingsの創設者のNicolas Berggruen(ニコラス・バーグルエン)氏、Quoraの共同創設者のCharlie Cheever(チャーリー・チーバー)氏とAdam D’Angelo(アダム・ダンジェロ)氏、NBA選手のKevin Durant(ケビン・デュラント)氏、David Petraeus(デイビッド・ペトレイアス)大将、Maticianの共同創設者でCEOのNavneet Dalal(ナブニート・デーラル)氏、Quiet Capitalの業務執行社員Lee Linden(リー・リンデン)氏、Robinhoodの共同創設者のVladimir Tenev(ウラジミール・テネフ)氏など数多くのエンジェル投資家も参加している。

Helm.aiは、この1300万ドルのシード投資を、工学技術の高度化、研究開発、人材増員、さらに顧客の囲い込みと契約の実行にあてる予定だ。

同社はソフトウェアのみに特化している。自動運転車に必要となるコンピューター・プラットフォームやセンサーは作らない。そうした変化の激しい分野には依存せず、わかりやすく言えばHelm.aiは、センサーのデータや人の行動を理解しようとするソフトウェアを作っているのだとボロニンスキー氏は言う。

それなら、他の企業でもやっていることのように思える。だが注目すべきは、Helm.aiのソフトウェアへのアプローチだ。自動運転車の開発者は、その多くが自動運転車のいわゆる「頭脳」の訓練と改善を、シミュレーションと路上テスト、そして人の手でアンノテーションされた大量のデータセットの組み合わせに頼っている。

Helm.aiは、その工程をスキップすることでスケジュールを短縮しコストを削減できるソフトウェアを開発したという。同社では、人間の教師を必要としない学習アプローチを使い、ニューラルネットワークを訓練できるソフトウェアを開発している。膨大な走行データも、シミュレーションも、アンノテーションも不要だ。

「自動運転車のAIソフトウェア開発は、非常に長い戦いであり、コーナーケースの無限の海を渡らなければなりません」とボロニンスキー氏。「本当に重要なのは効率化の度合いです。ひとつのコーナーケースを解決するのに経費はいくらかかるのか、どれだけ早くできるのか。そこを私たちは改革したのです」。

ボロニンスキー氏は、UCLA時代に自動運転に初めて興味を抱いた。そこで彼は、米国防高等研究計画局主催のロボットカーレース、DARPAグランド・チャレンジに参加したことのある学部教師からその技術を教わった。やがてボロニンスキー氏は次の10年の応用数学に興味が移り、カリフォルニア大学バークレー校で数学の博士号を取得し、MIT数学科の教師になった。だが、いずれは自動運転車に戻ろうと考えていた。

2016年に深層学習にブレイクスルーがあり、ここへ戻る機会が得られたとボロニンスキー氏は話している。彼はMITを去り、後にNetskope(ネットスコープ)に買収されることになるサイバーセキュリティーのスタートアップSift Security(シフト・セキュリティー)を辞めて、2016年11月にアキーム氏とHelm.aiを創設した。

「私たちは、従来のアプローチでは対処できていないと思われる重要な課題を特定したのです」とボロンスキー氏。「早々にプロトタイプを作ったことで、それでやっていけると確信できました」

Helm.aiは、まだ15人の小さなチームだ。彼らは2つの使用事例に向けたソフトウェアのライセンシング事業を目指している。ひとつは、レベル2(新しい規定ではレベル2+)の乗用車向け高度運転補助システム、もうひとつはレベル4の自動運転車両隊だ。

Helm.aiにはすでに顧客がある。名前は明かせないが、その中には試験運用段階を終えたものもあるとボロニンスキー氏は話していた。

画像クレジット:Helm.ai

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(翻訳:金井哲夫)

地図サービスのTomTomとTRI-AD、デンソーの3社が自動運転向け高精度地図作成で協業

オランダを拠点とする地図サービスなどを運営するTomTom(トムトム)は3月11日、トヨタ自動車のグループ会社で自動運転などを研究するトヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)とデンソーとの協業を発表した。併せて、自動運転技術に不可欠な地図データを高速かつ高精度に生成するための実証実験に成功したことを明らかした。

TomTomは、アップルの「マップ」アプリに地図データが採用されていた企業で、最近では中国ファーウェイが同社とナビゲーションとマッピング、交通情報へのアクセスの提供について契約合意している。

関連記事:ファーウェイは失ったGoogleマップの代わりを求めTomTomを頼る

3社が合同で実施した実証実験は、デンソーの車両センサーを搭載したTRI-ADの試験車を利用し、TRI-ADの自動地図生成プラットフォーム「Automated Mapping Platform」(AMP)とTomTomのクラウドベースのトランザクション・マップ・プラットフォームを併用。車両センサーが道路上で観測した情報を収集し、それらの情報をAMPがデータ形式の変換・補正を実行、TomTomのトランザクション・マップ・プラットフォームに反映されるという流れだ。このシステムが実用化されれば、地図上とは異なる現在の道路や周辺環境を随時クラウド上で管理・更新可能になる。既存の地図データと組み合わせることで、最新かつ詳細な地図が手に入る。

自動運転のWaymoが初の外部資金調達で約2430億円を確保

以前はGoogleの自動運転車プロジェクトで、現在はAlphabet傘下となっているWaymo(ウェイモ)は3月2日にSilver Lake、Canada Pension Plan Investment Board(カナダ年金制度投資委員会)、Mubadala Investment Companyがリードするラウンドで22億5000万ドル(約2430億円)を調達したと発表した。

Waymoにとって初の外部資金調達となる。その他の出資者はMagna、Andreessen Horowitz、AutoNationそして親会社のAlphabetだ。

「我々はOEMやサプライヤーパートナー、提携企業、そして世界で最も経験のあるドライバーを構築して展開しようとしているコミュニティとコラボしながら、ミッションに対して常にチームスポーツのように取り組んでいる」とWaymoのCEO、John Krafcik(ジョン・クラフシック)氏は3月2日に投稿したブログの中で述べた。「今日、我々は投資家と重要な戦略的パートナーを加えることでそのチームを拡大する。こうしたパートナーは過渡期にあるプロダクトをつくるのに成功しているテック企業をサポートしたり、投資したりといった何十年にもわたる経験を我々にもたらす。今回注入される資本とビジネスの知見により、世界中でWaymo Driver展開をサポートするために、Alphabetとともに我々は従業員やテクノロジー、オペレーションにさらに投資する」

今回のラウンドは、Waymoが営利企業になろうと努めてきたさまざまな活動に続く動きだ。活動の多くはフロリダのような新ロケーションでのマッピングと、自動運転車両テクノロジーのテストだ。その一方で、カリフォルニア州マウンテンビューや、フェニックスエリアで展開する車両の拡大も続けてきた。

Waymoは長らくテストと、フェニックス郊外での自動運転車両を使ったWaymo Oneと呼ばれるオンデマンド配車サービスの立ち上げに注力してきた。

しかし他方面での拡大も行ってきた。配達や輸送、カスタムライダーセンサー販売開始計画など、自動運転車両技術を応用したロボティクスやセキュリティ、農業テクノロジーなど自動運転車両以外の企業向けの新たな事業の模索だ。

2020年1月、Waymoはテキサスとニューメキシコの一部でマッピングと、自動運転長距離トラックのテストを行うことを発表した。

Waymoはまた買収や提携を通じても事業を拡大させてきた。2019年12月に同社は、オクスフォード大学コンピューターサイエンス部門からのスピンオフであるLatent Logicという英国企業を買収した。同社は、Waymoのシミュレーション研究を強化しうるイミテーションラーニングと呼ばれる機械学習のフォームを使っている。この買収でWaymoは同社初の欧州エンジニアリングハブをオクスフォードに設置する。

2019年春にWaymoは、4月に廃業したロボティックスタートアップのAnkiからエンジニア13人を採用した。このロボティクス専門家の中にはAnkiの共同創業者で前CEOのBoris Sofman(ボリス・ソフマン)氏も含まれる。ソフマン氏は自動運転トラック輸送部門のエンジニアリングを率いている。

Waymoはまた、フランスや日本で商業自動運転車両を乗客輸送と荷物配達でどのように活用できるかを調べる独占的パートナーシップRenault(ルノー)、そして日産と結んだ。

画像クレジット: Waymo

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(翻訳:Mizoguchi

Lyftが自動運転プログラムを加速、2019年の加州での走行距離は6.9万km

1年前、Lyft(リフト)は米国カリフォルニア州の車両管理局(DMV)に、2018年の自律走行車両テスト活動について1つの短い段落にまとめたレポートを提出した。

「Lyftはレポート対象期間中、カリフォルニアの公道で自律走行モードで車両を走らせていない」と書かれている。「よって、報告すべき自律走行モードオフ事案もない」とした。

しかし2019年のデータでは状況は異なる。今週初めにカリフォルニア州DMVが明らかにしたデータによると、Lyftは2019年にカリフォルニアの公道で自律走行車両19台を使ってテストを行った。レポート対象期間の2018年12月から2019年11月にかけて、19台は自律走行モードで4万3000マイル(約6万9200km)を走行した。

レポートは、Lyftがレベル5として知られる自動運転車両プログラムを加速させようとしていることを示す最新のサインだ。

州内の公道での自律走行車両テストを管轄するカリフォルニア州DMVは、自律走行車両の台数や総走行距離などのデータを含む年次レポートの提出を企業に求めている。そして「自律走行オフ」の報告も求めている。自律走行オフは自動運転車両が技術の不具合により、もしくはセーフティー・ドライバーが安全上の理由からマニュアル操作を行った時に自律走行モードをやめることを指す。

Lyftの自律走行距離は、83万1000マイル(約134万キロ)走ったCruise、145万マイル(約233万km)走ったWaymoのようなすでに確立した存在のAVデベロッパーには遠くおよばない。また、2019年に公道で自律走行テストを行った36社の総距離において微々たるものだ。

自律走行車両が走行した総距離は2019年に前年比40%増の287万マイル(約460万km)となった。BaiduやCruise、Pony.ai、Waymo、Zooxが大幅に距離を伸ばしたことによるところが大きい。テストの許可を取得した企業の数は2019年に60社に増え、うち58%の企業が実際に公道でテストを実施した。2918年にテスト許可を持っていた企業は48社で、テストを実施したのは62%だった。

LyftはAptivのような自動運転車両の開発会社と提携する以上の取り組みを行っていることをレポートは示している。LyftとAptivは2018年1月にラスベガスでロボタクシーパイロット事業を立ち上げた。LyftのライドシェアネットワークにAptivの車両が組み込まれているこのプログラムでは今月10万回超の乗車があった。常にセーフティドライバーが運転席に乗り込んでいて、駐車場やホテルのロビーエリアでは自動運転は行わない。

Lyftのレベル5プログラムは2017年7月に立ち上げられた。レベル5というのはSAE(米自動車技術協会)が定めている基準で、あらゆる状況で自動走行が可能であることを指す。現在Lyftは、レベル5プログラムで従業員400人を米国、ミュンヘン、ロンドンに配置している。

カリフォルニアの公道でのテストは、パロアルト在住のLyft従業員向けのパイロットとして2018年11月に始まった。Lyftのオフィスと通勤列車Caltrainの間といった決められたルートでオンデマンド乗車を提供した。

以来、同社はパイロット事業の対象やエリアを拡大してきた。2019年後半までに、四半期あたりの自動走行距離はそれまでの6カ月間に行ったものの4倍超となった。

Lyftはまた東パロアルトに2019年11月に開設した専用コースでもテストを行っている。「公道を走らせる前にソフトウェアをテストすることを目的に、この施設に交差点や信号、合流ポイントなどを設けることができる」とLyftはTechCrunchに話した。

画像クレジット:Lyft

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(翻訳:Mizoguchi

Nuroの新型配達ロボに米政府は無人運転車として初の安全基準の適用除外を認定

去年、ソフトバンク・ビジョンファンドから9億4000万ドル(約1030億円)の投資を受けた自動配達のスタートアップであるNuro(ニューロ)は、無人運転配達車の安全規定適用除外を米連邦政府から初めて認められた企業となった。

米運輸省道路交通安全局から適用除外の認定を受けたのは、Nuroの(先週木曜日に初めて公開された)R2と呼ばれる最新型低速電動車だ。レストランや食料品店などの業者が、近隣の配達サービスに使用する。これはNuroのみならず、自動運転車業界にとって、ひとつの到達点であり、連邦政府がこの技術をどのように規制するかを示す指標ともなる。

R2は間もなく、ヒューストンでNuroの自動運転版プリウスの隊列に加わり、消費者への配達を公道で行うことになると同社は話している。この展開は、2018年にKroger(クロガー)と提携しアリゾナで行った配達サービスの試験運用に続くものだ。当初、この試験にははトヨタのプリウスが使われていたが、後にR1配達ロボットに切り替えられた。

Nuroの第2世代低速配達車両R2は、無人運転を行う目的で設計され、自動運転システムのみを使って運用される。人間のドライバーは乗車しないため、従来の乗用車に欠かせなかった、あるいは連邦政府が義務づけていた、サイドミラーや透明なフロントガラスなどの装備は必要ない。

「低速自動運転配達車なので、ドライバーを乗せるために運輸省が以前から義務づけていたミラーやフロントガラスなどの装備は、もう意味がありません」と、米国運輸長官であるElaine L. Chao(エレイン・L・チャオ)氏は声明の中で述べている。

米運輸省の安全基準適用除外によって、R2は、サイドミラー、フロントガラス、前進時にオフになるリヤビューカメラの3つの装備なしに運用が可能になった。これは現在GMが、自動運転ユニットCruiseで申請しているものとは違う。Cruiseは低速車とは見なされないため、適用除外を受けなければならない項目がずっと多いのだ。

この3つの適用除外だけでも、手続きにはかなりの時間がかかった。Nuroは道路交通安全局と3年間協議を重ねてきた。適用除外の申請書を提出したのは2018年10月だ。「適用除外を受けた車両であっても、安全基準を完全に満たした車両と同じだけの安全性を確保できることを証明しなければなりません」とNuroの最高ポリシー及び法務責任者David Estrada(デイビッド・エストラーダ)氏は言う。

新しいR2配達ロボットは、通常ならサイドミラーが取り付けられる部分の車体断面の幅が狭く、角も丸くなっている。こうしたデザインにより、自転車やその他の「傷つきやすい通行者」のために道を空けることができるとNuroでは話している。

R2には、ライダー、レーダー、カメラが装備され、車体の周囲360度の視覚情報を「ドライバー」に送るようになっている。だがそこでも、適用除外が必要だったとエストラーダ氏は話す。道路交通安全局の適用除外により、R2は前進時でもリアビューカメラを作動させておくことができる。新しい乗用車には、人間のドライバーが車を前進させるとオフになるリアビューカメラの搭載が義務づけられている(注意が散漫になるのを防ぐためだ)。人間が乗らないのであれば、その心配はいらないとNuroは指摘する。

この適用除外には条件がある。Nuroは、自動運転システムに関する報告書を提出し、R2を実働させるときに適切に当局に通知するという条件付きで、2年間の適用除外が許されている。またこの適用除外は、2年の期間中に5000台以下のR2を製造し運用することをNuroに許可している。

R2は、ミシガン州に本拠を置くRoush Enterprises(ラウシュ・エンタープライゼズ)と提携して国内で設計生産されるが、これ以前の車両よりも耐久性の高い車体を注文に応じて作ることができ、衝撃を吸収し内側にへこむことで衝突時に歩行者などの車外の人や物を守る前面構造になっていると同社は説明している。

さらにこの車両は、ドアを改善して大きな画面を車体に備えることで、客が操作して荷室のロックを外せるようにしている。荷室の容量はR1よりも65%ト大きくなり、温度調整も可能なので、惣菜や料理も含む、傷みやすい食品を新鮮に保つことができるようになった。

画像クレジット:Nuro

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(翻訳:金井哲夫)

自動運転技術開発のAuroraがカリフォルニアで客を輸送できるように

TechCrunchは、Aurora(オーロラ)が米国カリフォルニア州当局から自動運転車両による乗客輸送の許可を得たことを確認した。

カリフォルニア公益事業委員会(CPUC)がAuroraに許可を出した。米国時間1月29日にウェブサイトに掲示され、これによりAuroraはカリフォルニア州の自動運転車両による乗客輸送サービスパイロット事業に参加することになる。

「今回得た許可で、我々はAurora Driverによる乗車を提供する。カリフォルニアと委員会にとって我々は良きパートナーであることを示している」とAuroraの広報は話した。Auroraはいつから客の輸送を始めるのか、詳細は明らかにしなかった。同社のこれまでの取り組みからして、広範なロボタクシーとはならなさそうだ。

Auroraはこれまでロボタクシーサービスの運行を計画したことはない。その代わり、自動運転スタックの構築と車両プラットフォームに統合するためのパートナーとの協業にフォーカスしてきた。Auroraが「Aurora Driver」と呼んでいる技術は、セダンやSUV、ミニバン、商用バン、クラス8大型トラックなど、複数のメーカーが手掛けた6つの車両プラットフォームに統合された。この統合は商業展開されていない。

ピッツバーグ、パロアルト、そしてサンフランシスコに拠点を構えるAuroraは、公道テストに使用する1ダースほどの車両を所有する。同社はChrysler(クライスラー)ブランドのミニバンであるPacificaで自動運転システムのテストを開始し、「今後この車両を改善させていく」と話していた。

Auroraは早くから注目を集めていた。Sterling Anderson(スターリング・アンダーソン)氏、Drew Bagnell(ドリュー・バッグネル)氏、Chris Urmson(クリス・アームソン)氏と、Google(グーグル)、Tesla (テスラ)、そしてUber(ウーバー)で自動運転車両プログラムを率いた著名な3人が共同で創業したからだ。2019年2月にAuroraはシリーズBラウンドで5億3000万ドル(約578億円)超を調達した。本ラウンドはSequoia Capitalがリードし、Amazon(アマゾン)とT. Rowe Price Associatesも巨額を投資した。この超大型の資金調達でAuroraのバリュエーションは25億ドル(約2725億円)超になった。これまでに調達した資金は6億2000万ドル(約676億円)超だ。

CPUCの許可は、カリフォルニア州で自動運転車両をテストするためのカリフォルニア州車両管理局(DMV)が発行する許可とは異なるものだ。現在、65社が同州の公道で自動運転車両をテストするための許可を得ている。

これまでに、AutoX、Pony.ai、Waymo、そしてZooxだけがCPUCの許可を取得していた。Zooxが一番乗りした企業で、2018年12月に取得した。

CPUCの許可取得で、Auroraは客を輸送するのに自動運転車両を使用することができる。ただしいくつか注意点がある。まず、客に料金を請求できない。この点について自動運転車両デベロッパーは変更を求めてロビー活動を行なっている。それから車両の運転席には必ずセーフティードライバーを配置しなければならない。企業はまた、DMV発行の許可も取得する必要がある。

Auroraが取得した2023年1月まで有効の許可では、同社は客を乗せて走行したトータル距離と安全プロトコルをCPUCに報告することになっている。

画像クレジット:Aurora

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(翻訳:Mizoguchi

Uberの自動運転車ユニットがワシントンDCのマッピングを開始

UberのAdvanced Technologies Group(ATG、先端技術グループ)は、今年市内で開始する予定の自動運転車テスト計画に先立って、ワシントンDCのマッピングを開始する。

画像クレジット: Uber

同社の広報担当者によれば、当初3台のUberの車両がエリアをマッピングする予定だ。これらの車両は人間によって運転され、2人の訓練を受けた従業員が同乗している。上部に備えられたセンサー部品(カメラと回転するライダーが装備されている)を用いてセンサーデータを収集することになる。

集められたデータは高解像度マップを作成するために使用される。また同じデータは、Uberの仮想シミュレーションおよびテストコース上のテストシナリオにも使用される。Uberは、2020年末までにワシントンDCで自動運転車の運用を開始する予定だ。

少なくとも他に1社が、ワシントンDCで自動運転車をテストしている。フォードは2018年10月に、ワシントンDCで 自動運転車をテストする計画を発表している。Argo AI(アルゴAI)がフォードの自動運転車用に設計された仮想ドライバーシステムと高解像度マップの開発を担当している。

フォードとフォルクスワーゲンが支援するArgoは、2018年にワシントンDCのマッピングを開始した。テストは2019年の第1四半期に開始されることが計画されていた。

Uber ATGは、2018年3月に米国アリゾナ州テンペで、人間が同乗したテスト車両の1台が歩行者をはねて死亡させて以来、目立たないように活動してきた。同社は、事故の直後には自動運転車両に関わる全活動を中断していた。

その9カ月後、ペンシルベニア州交通局から公道上での自動運転車運用に対する承認を受けて、Uber ATGはピッツバーグで自動運転車の路上試験を再開した。同社は、サンフランシスコなどのほかのマーケットでのテストは再開していない。

Uberはほかに、ダラス、サンフランシスコ、そしてトロントの3つの都市でデータ収集とマッピングを行っている。これらの都市では、ワシントンDCと同様に、人間がUberのテスト車両を運転している。

Uberは、トヨタ、自動車部品メーカーのデンソー 、そしてソフトバンク・ビジョンファンドから10億ドル(約1100億円)の資金を調達して、2019年4月に自動運転車事業をスピンアウトした。この調達時には、Uber ATGの評価額は72.5億ドル(約7900億円)と発表されていた。この時点では、トヨタとデンソーが共同で6億6700万ドル(約730億円)を提供し、残りの3億3300万ドル(約370億円)をビジョンファンドが投入した。

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(翻訳:sako)

自動運転レベル3に欠かせない500mの遠距離計測が可能な3D-LiDARセンサーをパイオニア子会社が発表

パイオニアスマートセンシングイノベーションズは1月8日、500mの遠距離計測が可能な3D-LiDARセンサーの試作機を米国ラスベガスで開催されているコンシューマー・エレクトロニクス・ショー「CES2020」に出品したことを明らかにした。同社は自動運転関連事業を承継する新会社として2019年10月に設立された、パイオニアの連結子会社。

同社は、キヤノンと条件付き自動運転である自動運転レベル3以上の実現に不可欠とされる「3D-LiDARセンサー」を共同開発しており、CESにはパイオニアのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems、微小電気機械システム)ミラーを用いたスキャン技術とキヤノンの光学技術を用いた波長905nm量産モデルも展示、。3D-LiDARセンサーは、両社のコア技術をベースに韓国SK Telecom(SKテレコム)の送受信技術を加えることで、計測距離を大幅に伸長させた波長1550nmのモデルとなり、500mの遠距離かつ高解像度な計測が可能とのこと。具体的には、SKテレコムが開発した、1550nm波長レーザー送信モジュールと単一光子検出器を利用する。

2020年秋から量産を開始する、準広角短距離用、中距離用、長距離用、広角タイプのモデルに、今回の遠距離モデルを加えることで、セキュリティ、交通監視用途や、路側センサーなどのモニタリング用途、自動運転車両における遠距離計測など、さまざまな市場、お客様のニーズに対応することが可能なるという。各LiDARセンサーを使用して、物体検知や自車位置推定などを高精度に行えるソフトウェアも開発・提供する。

パイオニアスマートセンシングイノベーションズは、今後も3D-LiDARセンサーの高性能化、小型化、ソフトウェアの開発を進め、2021年以降の実用・商用化を目指す。

参考資料:2020年秋より量産を開始する「3D-LiDARセンサー」‟2020モデル”について

自動運転OS開発のティアフォーと韓国LGが自動運転のクラウドシミュレーターで戦略的提携

オープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware」を開発・提供しているティアフォー(Tier IV)は1月8日、韓国LGエレクトロニクスとの戦略的提携を締結した。LGが自動運転向けに開発したLGSVLシミュレータを利用して、Autowareの各種実証実験をさらに進めていく。

ティアフォーの創業者でCTO、Autoware Foundationの理事長を務める加藤真平氏。2019年11月に開催したTechCrunch Tokyo 2019では、JapanTaxiとの協業で自動運転タクシーの実証実験を進めることを発表した

LGSVLシミュレーターは、LGが3Dゲーム開発環境として知られるUnityで開発したソフトウェアだ。シミュレータ上に構築した仮想マップ上で多数のNPC車両を走らせ、その中で自動運転のアルゴリズムを検証できる。ティアフォーでは2019年2月にLGSVLシミュレータを利用した自動運転の実証実験についてブログ記事で触れており、今回の戦略的提携によって自動運転技術の精度がさらに増すことが期待される。また同社は、LGSVLシミュレーターとAutowareを使った自動運転チュートリアルも公開している。

ティアフォーの創業者でCTO、そしてAutoware Foundationの理事長を務める加藤真平氏はリリースの中で「ティアフォーは、今回の戦略的パートナーシップ、そしてLGSVLシミュレーターとAutowareの統合により、自動運転のシミュレーション環境を誰でも簡単に使えるソフトウェアとして提供する予定です。この環境を使うことで、Autowareベースの自動運転車で効率的で費用対効果の高いテストと検証を実現できるでしょう」と語る。

シリコンバレーにあるLGのAdvanced Platform Labでエンジニアリング担当副社長を務めるSeonman Kim(キム・ソンマン)氏は「高性能シミュレーションエンジン、広範なデータおよびコンテンツ生成パイプライン、シームレスなローカルおよびクラウドシミュレーションの統合機能により、LGはさまざまなユースケースをシミュレーションの力で解き放つことができる独自のポジションにいます。LGSVLシミュレータとAutowareを組み合わせることにより、両社は共同で自動運転開発のパイプラインを有効にし、より安全でより信頼性の高い製品とサービスを短期間で作成できます」と語る。

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ベンツ「Sクラス」で自動運転のライドシェア、実証実験が開始

ダイムラーとボッシュはカリフォルニア州サンノゼで、自動運転車を使ったライドシェアの実証実験を開始した。両社はこの実証実験で、共に目指しているレベル4、5の自動運転の実現に必要な情報が得られることを期待している。

この実証実験では、車体にメルセデス・ベンツ「Sクラス」ベースのプロトタイプを使い、選ばれた参加者に対し、サンノゼ付近でシャトルサービスを提供。セーフティー・ドライバーが乗車しモニターすることで、安全面への配慮を行う。参加者はDaimler Mobility AGが開発したアプリを使い、配車依頼、そして目的地の指定などの操作を行う。

サンノゼでシビック・イノベーションとデジタル戦略を担当するDolan Beckel氏は、「我々としては、自動運転車がいかに安全性を高め交通渋滞を緩和し、モビリティをより利用しやすく、持続可能かつインクルーシブにしていくのか、知りたいと思っている」とコメント。サンノゼには、自動運転車が行き交う未来の交通システムにむけての準備、といった狙いがある。

ダイムラーとボッシュはこれまで数年間、自動運転技術を共同で開発してきた。7月には無人駐車機能を運用する認可をドイツの規制当局から得たことも大きな話題となった。

「自動運転はタクシーから」Autowareが作り出す未来

11月14日(木)・15日(金)の両日、東京・渋谷ヒカリエで開催中のTechCrunch Tokyo 2019。14日午前のFireside Chatでは「自動運転OS『Autoware』が作り出す未来」と題して、ティアフォー取締役会長兼CTOの加藤真平氏が登壇。自動運転の最新テクノロジーと近い将来の姿について語った。またサプライズゲストとしてJapanTaxi代表の川鍋一朗氏も登場。当日発表されたばかりの自動運転タクシーの社会実装に関する協業について、2人に語ってもらった。モデレーターはTechCrunch Japan編集統括の吉田博英が務めた。

写真左からティアフォー取締役会長兼CTO 加藤真平氏、JapanTaxi代表取締役社長 執行役員CEO 川鍋一朗氏

お年寄りから子どもまで幅広く使える自動運転へ

ティアフォーは自動運転技術を開発するスタートアップ。登壇した加藤氏は、オープンソースの自動運転プラットフォーム「Autoware」の開発者でもある。加藤氏は「自動運転技術ははやっていて、いろいろなやり方がある。我々は自分たちだけで実装を目指すというよりは、まわりのパートナー企業とアライアンスを組んで、シリコンバレーや中国のテック企業と渡り合っていくという戦略で事業を進めている」と話す。

加藤氏は「自動運転はまだ今日の社会には浸透していない。現在“自動運転”と言われているものには、さまざまな意味がある」という。

「半自動運転機能については、ちょっと高いクルマであれば、高速道路や一部の一般道でレーン維持をするものや、衝突回避をするものが出てきている。だが、今までのそういう自動運転機能から一歩先に進んで、AIやハイテクを搭載する自動運転は、1社ではシステムを作ることはできないと私は考えている。いかにパートナーとアライアンスを組むかというのが、自動運転を実現するために技術面でも大事なことだと思っている」(加藤氏)

戦略はいかにパートナーを集めることができるかにかかっている、という加藤氏。「ティエアフォーとしては、自分たちが作ってきたソフトウェアを自在化するというよりは、オープンソースとして一般に公開して、一緒にアライアンスを組んでビジネスや研究開発をしていこうというのがスタイル」と語る。

加藤氏は広くアライアンスを組むことで「開発者だけでなく、結果としてお年寄りから子どもまで、幅広く使える大変高い水準の技術になると思う」として、ティアフォーが掲げるビジョン「Intelligent Vehicles For Everyone」の“Everyone”の意図するところについて説明する。

Autowareの長所については「自動運転に必要な全ての機能が1つのパッケージとしてまとまっている点だ」と加藤氏。「だから、クルマがあり、センサーがあれば、ソフトウェアをダウンロードして、一般道を走りたい、限定された地域を走りたいといった目的に応じて、機能を変えられる」と述べている。

「Autowareは1つの自動運転システムをつくるためのものというよりは、いろいろな自動運転システムを作るためのプラットフォーム。Linuxでもいろいろな機能があり、サーバーを開発する場合とデスクトップを開発する場合とで使い方が違うと思うが、Autowareも一緒。物体を認識する機能、行動を計画する機能など、いろいろな機能が入っていて組み合わせることができるところが強みになっている。全ての機能がオープンで1つのソフトウェアに入っているというのは、世界的に見てもAutoware以外にない。シェアをカウントしたことはないが、7〜8割のシェアを取っているのではないか」(加藤氏)

自動運転の現状と近未来

自動運転を巡る現状について加藤氏は、「各社の競争が激しく、また自動運転と言ったときに、いろいろな人がいろいろな捉え方をしている」と話している。「先に挙げたとおり、半自動運転でよければ、市販のクルマを買えば既に機能が付いている。ただし一歩先に行けば、人間がドライバー席に座らず、全てAIとコンピュータで運転するという未来があり、その中でも種類が分かれている。分かりやすいのは、姿かたちは今のクルマとあまり変わらないが、そのクルマが進化して自動運転機能を持つというもの。もうひとつは新しいモビリティとしてクルマの原型をとどめていなくてもよく、『もうこれはロボットだよね』というタイプだ」(加藤氏)

「今の自動車の延長上にある自動運転は、一般道を走る目的のために開発されている」という加藤氏は、ティアフォーがAutowareで開発する自動運転車の走行の様子とソフトウェアを動画で紹介。「3次元を認識する点が今の市販車と大きく違うところ。レーンをカメラで見るというだけでなく、3次元を捉えられるカメラを使って、高度なAIを搭載し、細かい制御をするところまでティアフォーは来ている」と説明する。

世界的には「Googleなどは技術力ではティアフォーの先を行っているが、ティアフォーに追いついていない自動運転企業の方が圧倒的多数。すごくばらつきがある」としながら、加藤氏は「総じて今、一般道で、運転席に人を乗せなくても走れるようになってきた、というのが現状だと思う」と分析する。

実用化という面では「法規制や倫理感、産業構造を変えてしまう、といった社会の問題があり、テクノロジーだけの問題ではない」と加藤氏。ただし「少し視点を変えて、一般道ではなく公園や倉庫内などの屋内などであれば、自動運転は今年来年というより『もう既に来ている』」とも話している。

ティアフォーでは、3Dプリンターで試験用の機体を用意し、設計を細かく変えながら量産化できると判断できれば製造にまわす、というスタイルで、公道以外で利用できる自動運転モビリティの実証実験を行い、開発を進めている。「こういうモビリティであれば、技術面では十分な水準まで来ている。安全をどう担保するかという面で細かい課題は残っているが、来年ぐらいには公園などの敷地内でハンドル、アクセル、ブレーキが付いていないクルマが走っているのではないかと考えている」(加藤氏)

現在、日本の行政では一般道で走るタイプと、限定された地域内を走るタイプの2通りの自動運転車の実現を推進していると加藤氏。「来年のオリンピック開催は経済的にも、技術実証の場としても機会と捉えられていて、いろいろな企業がこれにタイミングを合わせて開発を進めている」として、トヨタの自動運転モビリティ「e-Palette(イーパレット)」を紹介した。

「e-Paletteは既に、アクセル、ブレーキ、ステアリングがついていないモビリティ。これが来年、オリンピックの選手村を、選手を乗せて20台近く走ると言われている。こうした限定されたエリアをターゲットとした自動運転機能については、これまでに取り組んできた実績もあって、ティアフォーが開発したものがe-Paletteに採用されたのだが、とてもいい経験となった」(加藤氏)

「世界連合軍でAutowareを作るのが我々の野望」

アメリカでもUberやGoogleからスピンオフしたWaymoが自動運転技術を開発しているが、国ごとの特性に応じた仕組みはやはり、必要なのだろうか。

加藤氏は「私の仮説では、汎用の自動運転システムというか、自動運転に限らず、汎用のAIを開発するのは難しいと思っている」という。「各社とも、ある地域用に作り込んで自動運転を実用化する技術力はあるが、全世界に対応するのは遠い話になる」と加藤氏は述べ、当面は「陣取り合戦がビジネスの戦略としては大事になるだろう」と見通しを示した。

「アジア、アメリカ、ヨーロッパと、走行環境、法律、通信インフラなど、いろいろなものが国ごとに違う。例えばGoogleもあれだけ投資をして自動運転を開発しているが、まだネバダ州とカリフォルニア州の2州での展開だ。これはほかの州では技術的にできないということではなく、州ごとに微妙に異なる規制が変わるので、対応が難しいということ。ある程度、汎用的な技術はできると思うが、最終的に法律や社会のあり方といったことを考えると、ひとつのAI、ひとつのシステムで全ての地域に対応するのは難しいのではないかと思う」(加藤氏)

Autowareの利用は、日本、中国といったアジア圏が多めだが、アメリカやヨーロッパでも広く使われていると加藤氏はいう。ヨーロッパについては「オープンソースなので、ダウンロードして使っている人たちはいるが、僕らとのつながりがまだない」とのこと。「オープンソースにしているのは、なるべく広めて、使ってくれる企業や研究者とコラボレーションしたいという戦略から。アジア、アメリカについては国際団体の『The Autoware Foundation』にも多く加盟してもらっているが、ヨーロッパはこれからだ」と話している。

「世界連合軍でAutowareを作るのが我々の野望。まだ国際団体を作ってから1年経っていないので、来年はヨーロッパやアフリカなどにも広めていきたい」(加藤氏)

今実際に、どんな業界で自動運転が取り入れられようとしているのか、加藤氏に聞いてみた。「現段階ではR&Dがちょうど沸騰してきているところ。3次元処理ができるようになってきたり、シミュレーターがリアルになってきたりで、ようやく一般公道を走る準備ができてきたというのが私の印象だ」(加藤氏)

中でも「タクシーが分かりやすい」と加藤氏。「タクシーは、最も自動運転が社会に貢献できるアプリケーションなのではないかと考えているので、タクシーの自動運転はぜひ実現したい」と語る。

まさにこの日の朝、自動運転タクシーの社会実装に向けて、ティアフォーとJapanTaxiをはじめ数社との協業が発表されたのだが、「タクシーとの連携については、実は3年ほど前から日本交通、JapanTaxiと話を進めている」と加藤氏が説明。ここでゲストとして、JapanTaxi代表取締役社長の川鍋一朗氏が登場した。

「自動運転はタクシーから実装される」

自動運転タクシーというと、しばしば課題に挙げられるのが「ドライバーはどうなるのか」という話だ。川鍋氏は「雇用の未来など、センセーショナルに取り上げるときに必ず『タクシーやトラックの運転手がいなくなる』と語られるが、実際には運転手不足などにより採用を進めていくと、年間10%ずつぐらい入れ替わっていくので、今後10年で対応できるスピード」と述べ、「仮に全自動運転タクシーが東京を走ったとしても、恐らく無人運転ではない、という状況が長く続くのでは」と続けた。

「タクシーを利用するときに、普通に1人で乗るときもあれば、障害者の方が乗る、子どもだけで乗る、観光の方が乗るといった、人がいた方がいいシチュエーションはまだまだ多い。日本交通では新卒で乗務員をたくさん採用しているが、彼らにも『運転という機能はだんだん減るが、人間力、ホスピタリティという面が必ず上がるので、絶対に職にあぶれるということはない』と話している」(川鍋氏)

加藤氏は「これからは、テクノロジー単体に価値を見出すのはすごく難しくなっていく」として「社会のどの部分にテクノロジーを入れていくか、我々のようなテクノロジーを開発する側が考える責任を持っている」と語る。

「自動運転タクシーは実現できる。ただ、使い方を間違えたら産業構造を破壊してしまう。また、そもそも価値を最大化しようとしたら全部テクノロジーでやる、というのは恐らくあり得ないことだ。うまく社会や人間とテクノロジー、AIとが共存するというのは、テクノロジーだけでなく社会の課題だと思う。今のドライバーと少し役割は変わるかもしれないが、ドライバーという職業がなくなるということは、私もないと思う」(加藤氏)

加藤氏は技術開発としてだけでなく、産業、社会として成立させるという点を「楽しんでいるし、興味を持っている」と語っている。

川鍋氏はまた「単にA地点からB地点まで人を運ぶだけなら自動運転になるだろうが、今の日本の課題は人口減少であり、過疎化である。『移動しなければならないのに、お金が負担できない』という状況がすごく増えるはずだ。税金で埋めることになるだろうが、税金にも限りがある。そうすると社会として、最小負担額で何か移動できる物体を作らなくてはいけなくなる。そこには人を1人乗せるだけでなく複数人乗せることになるし、物も載せていかなければいけなくなるだろう」と貨客混載の可能性について述べている。

「相乗りタクシーシャトル的なものに、郵便物も小包も載せ、後ろを開けるとコンビニエンスストアのようなものが出てくる。そういう未来になるのではないか。地方では、今、ドライバーの有効求人倍率は6倍ぐらいある。これをよく見ると、トラック、バス、タクシー、宅配便、郵便とそれぞれが運転手を募集している状況。この全部が一緒になれば、6人が1人にはならないまでも、2〜3人にすることはできるのではないか。そうならざるを得ない社会的要請が日本にはあり、自動化された運転が進む社会的基盤がある」(川鍋氏)

加藤氏は「社会を中心とした考え方をしないと、新しいテクノロジーをプロダクト化できなくなってきているが、そこがむしろ差別化要因」と語っている。「どうやってリアルワールドをテクノロジーと僕らがうまく融合させていくか。テクノロジーはグローバル化し、テクノロジーそのものに差異はなくなっていく。5年もすれば、自動運転技術はみんなできるようになっていくので、差別化できるのは社会といかに融合するかという部分になる」(加藤氏)

川鍋氏は「自動運転は100%、タクシーから実装される」と予言する。「祖父がタクシー会社を創業した時には、日本製のクルマはなく、トヨタが日本車を作り始めたときにタクシー業界が真っ先に使った。タクシーは一般車両の6〜7倍の距離、年間10万キロを走る。タクシーが使って、壊れまくったという日本車を直してまた使って、というプロセスがあった。オートマチック車ができたときも、タクシーから導入された。早く壊れることで実証実験になっている。自動運転車両も最初は価格が高いはずだが、社会的にも認知を高めようというときに、必ずタクシーが役に立つと考えている」(川鍋氏)

本日の発表ではティアフォーとJapanTaxi、損害保険ジャパン日本興亜、KDDI、アイサンテクノロジーの5社が協業して、2020年夏、都内で実際に日本交通のタクシーが実証実験を行うことが明らかになった。川鍋氏は「これまでは『自動運転車両をタクシーにする』という話だったが、タクシー専用車両を使ってくれなければ、いつまでも実証実験の域を出ない。タクシー専用車両を使って自動運転ができないか、加藤氏に相談した」と打ち明ける。

この車両は2020年1月に開催される自動運転Expoでお披露目されるという。また、都内での実証実験では、一般ユーザーがJapanTaxiのアプリを使って、自動運転タクシーが呼べるようになる予定だそうだ。

「モビリティの変化の度合いは、タクシーが一番大きいと考えている。変化した頃に『タクシー』と呼ぶかどうかは分からないが、自動運転の度合いが高まれば、運転手はアルバイトの乗務員でもよいということになり、ホスピタリティがある人でいいということになるはずだ。貨客混載になるならば、完全自動運転車では荷物にロックをかけ、受け取りにQRコードを使い、といったことになり、設備投資が大変なことになるので、必ず有人になると私は考えている」(川鍋氏)

「テクノロジーが進めば、タクシードライバーも含めて、特集能力を持たなくても、いろいろな職業に就くことができるようになる。オリンピックの頃には自動運転タクシーが都内を走っているはずなので、ぜひアプリをダウンロードして利用してみてほしい」(加藤氏)

Lyftが自動運転試験車にクライスラーのミニバンを追加、新試験施設も建設

ライドシェア事業を展開しているLyftは、今年も自動運転車の経験を積み重ねるべくテストの拡大を続けている。同社によると、6カ月前に比べて四半期単位のテスト走行距離は4倍に増え、全世界で約400人が自動運転技術を専門に開発している。

来年に向けて同社は、新しいタイプの自動運転試験車を車列に加える。Chrysler(クライスラー)のハイブリッド・ミニバンのPacificaだ。これはGoogleの関連会社であるWaymoが現在自動運転車(AV)のベースにしている車種でもある。Pacificaは大きなスライドドアと広くて快適な室内をもつ理想的な乗用車であり、ライドシェアリング用にも非常に適している。実際、Lyftはこの車の「サイズと機能性」および、LyftのAVチームが自動運転ライドシェアリング体験を「実験」する際にそうした特徴から得られる恩恵のためにこの車種を特に選んだと言っている。現在Lyftは、試験車を路上で走らせるための準備を進めている。

Lyftは今年5月にWaymoと提携し、アリゾナ州フェニックスで自動運転車のパイロットテストを行った。その時出会ったPacificaとの体験が今回の選択につながった可能性が高い。Waymoとの提携によってLyftは、自動運転車によるライドシェアリングの乗客の体験に関する多くの情報を得ることができた。WaymoのほかにLyftはAptivとも提携して、ラスベガスで自動運転車を展開している。

これまでFord Fusion(フォード・フュージョン)だけだった試験車にPacificaを追加したLyftは、現在同社の自動運転プログラムの中心地であるレベル5エンジニアリングセンターに加えて第2の施設を開設する。新たな試験施設はレベル5エンジニアリングセンターと同じくカリフォルニア州パロアルトに設置される。両者を近くに置くことで「実施できる試験の数を増やす」とLyftは言っている。新しい試験場には、交差点、信号、合流、横断歩道など公道に近い環境が作られ、リアル世界のさまざまな運転状況をシミュレーションする。現在Lyftはカリフォルニア州コンコルドにあるサードパーティー製の試験施設、GoMentum Stationを利用しているが、新しい施設はこれを置き換えるのではなく、補完することになる。

一方Lyftは、社員による自動運転サービスの利用拡大も続けている。2019年に同社の社員向け自動運転経路は3倍に増えており、今後も「急速に」カバー地域を増やしていくと語った。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Ghostの目標は今ある自家用車に自動運転機能を後付けして2020年に公道を走ること

新しい自動運転車の会社が路上に出現した。だが、実は2017年から誰にも知られずに存在はしていた。急成長するこの業界のマジョリティーとは異なり、この新参企業はロボットタクシーサービスを提供するわけでも、部品メーカーや自動車メーカーに自動運転システムを販売するわけでもない。自動配送サービスを目指しているわけでもない。

Founders Fund(ファウンダーズ・ファンド)のKeith Rabois(キース・ラボア)氏、Khosla Ventures(コースラ・ベンチャーズ)のVinod Khosla(ビノッド・コースラ)氏、Sutter Hill Ventures(サター・ヒル・ベンチャーズ)のMike Speiser(マイク・スパイサー)氏から6370万ドル(約70億円)の投資を受け、11月7日にステルスモードを解除したGhost Locomotion(ゴースト・ロコモーション)は、あなたの車をターゲットにしている。

ゴーストが開発しているのは、自家用車をハイウェイで自動運転できるようにするキットだ。同社は2020年の出荷を予定している。価格は未定だが、Tesla(テスラ)の完全自動運転機能付きオートパイロットのオプション(FSD)よりも安価になるという。FSDの価格は現在7000ドル(約77万円)。

このキットは、高度な安全運転支援システムを自動車にもたらすものではない。人による運転操作をコンピューターに任せ、運転者が携帯電話を見たり、さらには居眠りもできるようにするというものだ。

このアイデアは、Comma.ai(カンマ・エーアイ)が開発中のものや、テスラが目指しているもの、またはCruise(クルーズ)の初期のビジネスモデルによく似ていると感じられるかもしれない。しかし、ゴーストのCEOで共同創設者のJohn Hayes(ジョン・ヘイズ)氏は、それとは違うと話している。

独特なアプローチ

この業界で最大のプレイヤーであるWaymo(ウェイモ)、クルーズ、Zoox(ズークス)、Argo AI(アルゴ・エーアイ)は、都市環境での自動運転という非常に難しい課題に取り組んでいると、つい最近行ったTechCrunchのインタビューでヘイズ氏は語った。

「ハイウェイでの運転課題に実際に取り組んでいる企業は、ひとつもないように見えます」とヘイズ氏。彼はゴーストの前、2009年にPure Storage(ピュア・ストレージ)という会社を興している。「その当時、これはとても簡単なことで、自動車メーカーがいつ実現してもおかしくないと言われていました。しかし、まだそうはなっていません」。

ヘイズ氏の話では、自動車メーカーは高度な運転支援システムを進歩させ続けているという。その中でもっとも発達したシステムは、主要な2つの運転操作が自動化されていることとSAE(自動車技術会)が定めた自動運転レベル2の基準を満たしている。そのいい例がテスラのオートパイロットシステムだ。これを有効にすると、ハンドル操作が自動化され、交通を意識したクルーズコントロールが実行される。つまり、周囲の車の流れに沿って速度が調整されるのだ。しかし、その他のレベル2システムと同様、運転者がかならず介在しなければならない。

ゴーストは、ハイウェイ上では運転者を運転から完全に解放したいと考えている。「私たちは、昔ながらのスタートアップの姿勢を、なんとかそこに反映したいと考えています。つまり、一般消費者に自動運転を提供できる、私たちだけで完結できるもっともシンプルな製品は何か? です」とヘイズ氏は言う。「だから、みなさんが今乗っている車を、私たちが自動運転化するのです」。

そのキットとは

ゴーストは、ソフトウェアとハードウェアの両面からその課題に取り組んでいる。

キットには、センサーやコンピューターなどのハードウェアが含まれている。これらはトランクに収められ、車のCAN(コントロールエリアネットワーク)に接続される。CANのバス型ネットワーク回線は、実質的に自動車の神経回路であり、これを通してさまざまな部品が互いに通信し合う。

キットを取り付けるには、自動車にはCANバスと電子制御式のステアリングが必要となる。カメラセンサーは車体の周囲に配置される。カメラは、リアビューモニターの背後に設置された別のカメラとともに、後部ナンバープレートの取り付け金具と一体化したものに統合される。

カメラを搭載した3つめの装置は、ドアの窓枠に取り付けられる。

基本的に、このキットは後付け製品となる。まずは最も人気の高い20の自動車ブランドに対応させ、その後、対応車種を増やしてゆく予定だ。

ゴーストは、消費者が実物を見て、そこで取り付けが行える小売りスペースの展開を計画している。しかし最終的には、GPSや衛星ラジオがそうなったように、最初から車に組み込まれるようになるとヘイズ氏は信じている。

ハードウェアは、目で見てわかりやすいゴーストの部品だが、同社の75名の従業員は、ほとんどの時間を運転アルゴリズムの開発に費やしている。そこに、ゴーストの強みがあるとヘイズ氏は話している。

ゴーストの自動ドライバーの育て方

ゴーストは、自動運転技術を開発する企業のほとんどが行っている公道での走行試験をしていない。カリフォルニア州には、車両管理局から自動運転技術の公道テストの許可(安全のためかならず人間が運転席に座ることを条件に)を取得した企業が36社ある。

ゴーストのアプローチはすべて、人間の運転者は基本的に正しいという原則に基づいている。同社は、運転経験が豊富な人の車に取り付けた装置で録画した動画データを大量に収集することから始めた。そしてゴーストは、それぞれの映像で何が起きているかを特定する複数のモデルを使い、運転者の動きを測定して、どのように運転するかといった他のデータと組み合わせた。

ハイウェイでの車線に沿った走行、ブレーキング、車線変更といった通常の運転のモデルにデータをマッチングさせるのは簡単だった。しかし、それではハイウェイの自動運転の課題は解決できない。なぜなら、急ハンドルや、そこからの立て直しといった非常事態に対応できるドライバーをいかに構築するかが重要なポイントだからだ。

ゴーストのシステムは、収集した大量のデータの中から、注目すべきシナリオを機械学習によって抽出し、それに基づき学習モデルを構築している。

ゴーストのキットは、Uber(ウーバー)やLyft(リフト)、通勤で長距離を運転する人たちの車にすでに取り付けられている。ゴーストでは数十名の運転者を募集して、年末までに数百台の車にキットを取り付けたいとしている。来年までには、数千台の車にキットが取り付けられるとヘイズ氏は話していた。すべてはデータ収集が目的だ。

共同創設者でCTOのVolkmar Uhlig(ボルクマー・ウリグ)氏を含む同社の幹部陣とその他の従業員の経歴からは、ソフトウェア開発と、それをハードウェアに組み込む際のアプローチ方法の秘密が垣間見える。

従業員たちはデータ科学者とエンジニアだ。ロボティクス畑ではない。LinkedInで履歴を見てみると、他の自動運転車関連企業の出身者は一人もなく、有能な人間を競合他社から引き抜くのが当たり前の今の時代に、とても珍しいことだ。

たとえばウリグ氏は、IBM Watson(ワトソン)研究所で経歴をスタートさせ、Adello(アデロ)を共同創設し、プログラマチック・メディア・トレーディング・プラットフォームのアーキテクトとして同社を支えた。それ以前に、Teza Technologies(テザ・テクノロジーズ)で高頻度取引のためのプラットフォームを作っている。コンピューター科学の博士課程にいた間にも、彼はL4Ka::Pistachioマイクロカーネルの構築に参加していた。これはAppleとAndroidの30億台以上のモバイルデバイスに使われている。

もしゴーストが、すべてのアプローチに焼き付けられているとヘイズ氏が言うこのアプローチの有効性を示すことができれば、個人所有の自動運転者が来年にはハイウェイを走ることになる。米幹線道路交通安全局の介入もあり得るが、テスラと同様、ゴーストのアプローチは規制から外れたスイートスポットを叩くだろう。「そこは政府がまだ規制をかけようとしていない場所だ」とヘイズ氏は語る。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

運転手のいないWaymoの自動運転配車サービスを利用して感じたこと

「おめでとう! この車はあなただけのもの。前列に誰も乗っていません」とWaymo(ウェイモ)のアプリからのポップアップ通知にはある。「この乗車は違ったものになります。車には誰も乗っておらず、Waymoが運転を引き受けます。この無料乗車を楽しんで!」。

ほどなくして、誰も乗っていないChrysler Pacifica(クライスラー・パシフィカ)のミニバンが現れ、フェニックス郊外チャンドラーの公園近くの目的地まで運んでくれる。フェニックスでは、Waymoが2016年から自動運転車両をテストしてきた。Googleの自動運転プロジェクトとして始まり、Alphabet傘下のWaymoは以前にも自動運転車両のデモを実施している。12人以上のジャーナリストがキャッスルにあるWaymoのテスト施設で運転手なしの乗車を2017年に体験している。全盲のSteve Mahan(スティーブ・マーハーン)氏も2015年、オースティンの一般道路でWaymoのFireflyプロトタイプでドライバーレス乗車を体験した。

しかし今回のドライバーレス車両への乗車は異なるものだ。無防備な左折が含まれるだけでなく、混雑した道路やWaymo Oneアプリが使用されるからだ。つまり、ドライバーレス配車サービスの始まりとなる。このサービスは現在アーリーライダープログラムのメンバーが使用していて、ゆくゆくは一般にも提供される。

これは同社が展開を約束し、何年もの間達成できていなかったマイルストーンだ。

WaymoのCEOであるJohn Krafcik(ジョン・クラシク)氏は、2017年にリスボン・ウェブ・サミットでのステージで「完全自律走行車の時代がきた」と宣言した。クラシク氏の自信、それに伴うブログ投稿は、「自律走行に向けた競争はほぼおしまい」であることを暗示した。しかし実際はおしまいではなかった。

クラシク氏のコメントから約2年が過ぎ、コンピューターではなく人間が運転する車両がフェニックスの道路で展開されている。アリゾナでのWaymoのほとんどの自動運転車両の運転席にはセーフティードライバーが乗り込んでいる。そしてごく少数のドライバーなしの車両はテスト使用に限定されてきた。

いくらか進歩はあったものの、ドライバーレスの未来というWaymoの約束は、停滞によって永遠の幻であることを運命付けられていたようだった。しかしそれもこれまでの話だ。

Waymoはどれくらいのドライバーレス乗車を提供するのかは明らかにしないが「オペレーションを引き続き強化する」と表明している。私たちが知っている事実は次の通りだ。アーリー・ライダー・プログラムには数百人の顧客がいて、こうした顧客がサービスを利用できる。アーリー・ライダーはドライバーレス車両の乗車をリクエストはできない。その代わり、ライダーの近くにドライバーレス車がいれば提供される。

もちろん、このマイルストーンには留意点もある。Waymoはこの「完全ドライバーレス」の乗車を特定のエリアに限定して実施している。アーリー・ライダー・プログラムのメンバーは居住地の郵便番号に基づいて選ばれていて、秘密保持誓約書に署名する必要がある。そして乗車は、今のところ無料だ。

私はシートベルトを締め、誰も座っていない運転席を調べたが、それでも不安を感じずにはいられなかった。少なくとも動いている間は。

「これで仕事は終わり」と思うのは間違いだろう。ユビキタスな自律走行をようやく手にしたというより、ドライバーレスモビリティの開発という長いであろう章の始まりだ。

未来的な楽しいドライブ

ドライバーレス車両の乗車は未来的な楽しいドライブのように聞こえる。しかし、人間の不在が多くの実務的、そして心理的な困難を伴うことは初めから明らかだ。

シートに座ってベルトを締めて態勢を整えるやいなや、ドライバーレス乗車についての質問や懸念を解決するため、車は自動的にWaymoの乗客サポートチームにコールする。これは乗車体験における、わずかな人の介在となる。

私は2016年後半から公道を走行する自動走行車両に乗車してきた。そうした乗車の全ては、運転席にセーフティードライバーが乗っているものだった。

時速45マイル(時速約72km)で走る車両の空の運転席を見るのは、あるいは郊外を走りながらハンドルが勝手に動くのを見るのは、当然のことながらシュールなものだ。この感覚は「1カ所を除いてすべてが普通の絵」というような夢に似ている。「人の顔をした時計、ブーツを履いた猫が杖を持って歩いている」というような夢だ。

公園からコーヒーショップまでの10分の乗車は「自動走行」車両のものとかなり似ていた。信号が黄色になった時の左折や、周囲の交通状況に応じてどう加速するかなど、自動運転システムの運転に感銘を受ける時もあった。車両は停止ラインのところで意図的に少しずつ前に進むという、人が行うような運転スキルをマスターしているようにも思えた。

過度に注意深いスペース感覚、必要以上の経路探索といったいくつかの典型的なクセだけが、コンピューターがコントロールされているという事実に反した。典型的な乗客、特に運転チューリングテストのバージョンを定期的に練習しない人はそうした癖に気づかないかもしれない。

「十分安全」はどれくらい安全?

公道を走行する完全ドライバーレス車に私を乗車させるというWaymoの決断は、同社の自信を示している。しかし同社はその自信の元を強調することができなかった。

WaymoのプロダクトディレクターSaswat Panigrahi(サスワット・パニグラヒ)氏は、Waymoがチャンドラーでにおいてドライバーレスでどれくらい走行してきたか、そしてWaymoドライバーが完全ドライバーレス乗車のリスクに対応できるほどに「十分安全」だったことを証明する特定のベンチマークを明らかにするのは却下した。現実世界における1000マイルと、シミュレーションでの100億マイルを引用しながら、 Panigrahi氏はWaymoの自信は「全体論の絵」から来ている、とした。

「自律走行運転は一つのメトリックだけに頼れないほどに複雑なものだ」とPanigrahi氏は話した。

自立走行分野に関して最もある疑問が「十分安全というのがいかに安全なのか」ということであることを考えた時、それはたとえフラストレーションがたまるものであっても、道理にかなった議論だ。私のドライバーレス乗車がWaymoの幅広いテクニカル面での熟達を、または比較的難しくないルートで単なる自信を反映しているかどうかは、なんとも言えない。

Waymoのドライバーレス乗車は現在のところ無料で、チャンドラー、メサ、テンピーの一部を含む限定されたエリアで提供されている。ドライバーレスの範囲はWaymoがフェニックス郊外で提供しているスタンダードな乗車の範囲よりも狭い。これは、自信のレベルがまだ、かなり状況によって異なることを示唆している。セーフティードライバーが乗り込んだWaymo車両ですら、配車サービスで最も人気の目的地の1つである空港への乗車提供は行なっていない。

ドライバーレスの複雑さ

Panigrahi氏はドライバーレス乗車の増加についての質問をそらし、数字は増え続けていて、今後も増加が見込まれると述べるにとどまった。Waymoは全部でおおよそ600台の自動運転車両を保有している。同社によると、それらの大半はフェニックスにある。

しかしながら、Panigrahi氏は車両台数の制限は、研究から得たことをアーリー・ライダーの体験に活かすためだと明らかにした。

「これは、他の誰かから学ぶことができない体験だ。本当に新しいものなのだ」とPanigrahi氏は述べた。

ドライバーレスモビリティの最も難しい課題は、運転席に誰も乗っていない状況に乗客が接したときのみ発生する。たとえば、ドライバーレスのWaymoが緊急車両を感知して脇に車両を停め、緊急サービスがコントロールすることを可能にするテクノロジーやプロトコルを開発するのは、集中的なテストと地元当局とのコラボを必要とする複雑なタスクだった。

「これは、完全ドライバーレスを実施する前に取り組んでいたことだった。私たちはあまり心配していない」とPanigrahi氏は話した。

ユーザーの体験はドライバーレス配車サービスの別の要点となる。Waymoがかなりの時間とリソースを注いできたエリアだ。ドライバーがいなくなると、ユーザーの体験はかなり困難な課題を抱えることになる。

ピックアップやドロップオフ、行き先の変更など、乗客とUberまたは Lyftドライバーとの間で交わされる毎日のやり取りは、ドライバーがコンピューターの場合複雑なものになる。Waymoのユーザー体験研究のチームがまだ取り組んでいると認める分野だ。

走行レーンを維持したり、障害物を避けたりといった特定の運転能力において、コンピューターとセンサーはすでに人間を上回っているかもしれない。しかし人間が備えるフレキシビリティと適応能力に欠けている。

人間はあまり努力しないでもできることだが、いかに複雑な状況をコントロールしたり回避したりできるか、という学習はかなりの経験とテック企業が嫌っていると思われる行動心理学のような分野の研究を要する。

テックの問題だけではない

Waymoの初期のドライバーレス乗車は、テクノロジーだけでは解決できない新たな課題が満載の開発新段階の始まりを意味する。人間の行動の研究、都市部の道路の端での確率的な相互作用におけるノウハウの構築、そして地元当局との関係とプロトコルの向上は、すべてかなりの時間を要するものだ。これらはWaymoがテクノロジーだけで取り組める課題ではなく、他人を理解できる人間による骨の折れる作業を要する。

こうした課題のいくつかは、比較的簡単だ。たとえば、ウォルマートの入り口にかなり近いところで客を降ろすのは実際にはかなりの歩行者がいるためにあまり利便性のいいものではない、ということをWaymoが認識するのに時間はさほどかからない。しかし、ピックアップとドロップオフが1つの原理(たとえば入り口近くがいい、というものなど)に基づかないことを理解するのは、Waymoの車両がマスターすべき、密かな難題となる。

自動運転の拡大ペースは遅く、フラストレーションがたまるが、Waymoがそうした課題を抱え、解決するために時間をかけているという事実は心強い。

自動運転テクノロジー開発の初期段階では、コンピュータードライブの製造という、純粋にテクニカル的な課題にフォーカスしていた。Waymoのコンピューター“ドライバー”を社会に組み込むには、人々が互いに、そして周囲の環境とどのようにやり取りすかという、よりミステリアスで複雑なものを理解することが要求される。

自動走行モビリティが根本的にいかに我々の社会や町に影響を及ぼすかを考えたとき、テクノロジー業界を引っ張るデベロッパーの1つが人々を理解し、受け入れるのに時間を費やしているというのには安心感を覚える。

【編集部注】筆者のEd Niedermeyerは、作家・コラムニストでポッドキャスト「The Autonocast」の共同主宰者。今年8月に「The Unvarnished Story of Tesla Motors」を出版した。

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi)

イーロン・マスクがテスラのフル自動運転機能を「アーリーアクセス」として年内公開すると発表

Tesla(テスラ)のCEOを務めるElon Musk(イーロン・マスク)氏は米国時間10月23日の決算電話会見で、同社のフル自動運転モードを早ければ今年末に完全実装リリースする可能性があると語った。提供形態は「アーリーアクセス」、事実上の限定ベータとなる見込みでマスク氏はだ確定ではないと念を押した。

「厳しい日程だが、年内にフル自動運転の少なくとも限定リリースはできそうだ」と同氏が会見で語った。そして、年内の限定プライベートベータについて「確実ではない」が「順調に進んでいるようだ」と付け加えた。

これに先立ち、テスラの自動無人運転パーキングロット「Smart Summon」が先月提供された。これは、テスラオーナーが駐車場内で車を呼び出すと歩道まで迎えにきてくれる仕組みだ。初期のテスト利用での成否はさまざまだったが、改善されたソフトウェアアップデートを「来週頃」に公開すると語った。

このSmart Summonのアップデートは、9月末にリリースされて以来「100万回以上」利用された結果のデータに基づいて改善されている。

テスラが公開を予定しているフル自動運転(FSD)モードを利用するには、オーナーはFSDアップグレード・パッケージを所有している必要がある。このパッケージは、8月に価格が6000ドルから7000ドルに価格改定された。

Teslaは今年4月から新しい自動運転コンピューターを全新車に搭載し、独自のカスタムチップへと移行した。これはSD機能をソフトウェアのみのアップデートで実現するためで、かつて同社は前の世代の自動運転コンピューターでも可能だと言っていたが、そのチャレンジが予想以上に困難だったことは明らかだ。同機能の公開時期も複数回延期されている。

マスク氏はその後の質問に対して、「アーリーアクセス」の公開は今年遅くになるかもしれないが、「ドライバーが注意を払わなくてもいいほど信頼性の高い」フル自動運転は「来年末」までかかるだろうと答えた。

ここでの「全機能実装済みFSD」の意味を明確にするために、同氏は後にテスラの自動運転技術の評価基準を紹介し、「無人運転は可能だがときおり監視と介入が必要」であると説明した。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ドライバー向け音声ゲームの開発のDrivetimeにアマゾンやグーグルが約12億円を投資

完全な自動運転車は、もう目の前まで来ているかも知れない(いや、まだ先かも)。それに向けて、ドライバーが運転席で時間をつぶすための車内用アプリを開発する、あるスタートアップが投資ラウンドを獲得した。

Drivetime(ドライブタイム)は、運転中に音声で楽しめるクイズや、ゲームや、インタラクティブストーリーを作っているが、このほどゲーム関連スタートアップに多額の投資を行っているMakers Fund(メイカーズ・ファンド)主導による1100万ドル(約11億8000万円)の投資を獲得した。これには、Amazon(アマゾン)がAlexaファンドを通して、Google(グーグル)はGoogle Assistant Investmentsを通して参加している。

現在、Drivetimeのプラットフォームには8つの“チャンネル”があり、限定的な無料版と有料サブスクリプション版(月9.99ドルまたは年99.99ドル)でゲームやストーリーが楽しめるようになっている。同社は、今回の投資を使ってカタログの内容を増やす計画を立てているが、同時に、自身も長年にわたり車内体験のための音声サービスやコンテンツの充実に力を注いでいる今回のビッグネームの戦略的投資会社との関係を、さらに深めるためにつぎ込むという。

共同創設者でCEOのNiko Vuori(ニコ・ブオリ)氏は、究極の目標をTechCrunchにこう話した。「Drivetimeを車のための『インタラクティブ・コンテンツのシリウスXM』に成長させ、独立したコンテンツのチャンネルを数百に増やす」(【訳注】シリウスXMは米国とカナダで通信衛星を使い放送を行っているデジタルラジオ局)。

この目標のために、今回の投資にともない、Drivetimeは米国時間9月9日、鍵となるコンテンツの契約を発表した。

Drivetimeは、米国の長寿クイズ番組「Jeopardy!」(ジェパディ!)と提携して、プラットフォームにクイズチャンネルを開設し、ドライバーが自分の知識を試したり、他のドライバーや知っている人たちと競ったりできるようにする。「ジェパディ!」チャンネルは、同テレビ番組が持つ膨大な知的財産からコンテンツの提供を受ける。さらに、ナレーションは番組司会者のAlex Trebek(アレックス・トレベク)氏が務めるなど、細かい部分にも凝っている。またプレミアムユーザーには、平日に毎日新しいクイズが出題される。

「ジェパディ!」ゲームのソーシャル要素は、できるべくしてできた。サンフランシスコに本社を置くDrivetimeの創設者はみな、ソーシャルゲームの大手Zynga(ジンガ)の出身者だ。ブオリ氏と共同創設者のJustin Cooper(ジャスティン・クーパー)氏、 Cory Johnson(コリー・ジョンソン)氏は、ともにジンガを退社したあと、Rocket Games(ロケット・ゲームズ)という別のスタートアップで働いていた。ロケット・ゲームズは大手ゲーム会社Penn National(ペン・ナショナル)に1億7000万ドル(約183億円)のイグジットを達成している。この記録的な成功例は、この新しいスタートアップに今回のそうそうたる顔ぶれが投資を決める理由にもなっている。

「ソーシャルおよびインタラクティブのフォーマットは、音声エンターテインメントの次なるフロンティアです」と、Makers Fundの投資パートナーであるJay Chi(ジェイ・チ)氏は声明の中で述べている。「10年来の仕事仲間であり、新しいプラッフォフォーム構築では記録的な業績を残したニコ、ジャスティン・クーパー、コリー・ジョンソンは、最高のチームとしてこのアイデアを実現してくれます」。

「ゲームと娯楽は、アレクサの使用事例として顧客が最も好むものです。Alexaが多くの車両に統合されることで、このカテゴリーは人気を増す一方となります」と、AmazonのAlexaファンドでディレクターを務めるPaul Bernard(ポール・バーナード)氏は、また別の声明で述べている。「Drivetimeは、車の中で楽しむ音声主体のゲームへの特化で際立っています。私たちは、彼らと共にアレクサオート体験を拡大し、運転席に座る顧客にできる限り楽しい時間を提供することを大変に楽しみにしています」

今回の3つの投資企業からの投資に先立ち、Drivetimeはおよそ400万ドル(約4億3000万円)の資金調達を行っている。Felicis Ventures(フェリシス・ベンチャーズ)、Fuel Capital(フュエル・キャピタル)、Webb Investment Network(ウェブ・インベストメント・ネットワーク、メイナード・ウェブ氏のファンド)、Access Ventures(アクセス・ベンチャーズ)などからの支援だ。

現在の彼らのアプリのインストール数とユーザー数についてはブオリ氏は明言を避けたが、調査会社App Annie(アップアニー)の資料によれば、大ヒットとまではいかないが、iOSAndroidでそこそこの数字を記録している。

その代わりに、Drivetimeは別の数字に目を向けさせたがっていた。実質的な市場規模だ。北米だけで1億1000万人のドライバーが利用しているという。

そして、これまで順調に築き上げてきたこの実績の上に「ジェパディ!」チャンネルが加わることになる。現在、最も人気が高いカテゴリーがクイズだ。2番目が曲当てクイズ、3番目が朗読となっている。

Drivetimeの前提が面白い。ドライバーは囚われの身の顧客であり、今までは彼らのために提供される娯楽は比較的限定的で、音楽かおしゃべりぐらいしかなかったというものだ。

しかし、個人向けのアシスタントアプリやAmazon Echoなどの家庭用ハブに後押しされて、自然言語に対応した音声ベースのインターフェイスやインタラクティブ機能が発達したことで、新たな機会が開かれた。ドライバーがもっと積極的に参加できる、インタラクティブな音声ベースのコンテンツが開発できるようになったのだ。

交通事故を誘発しないかと心配されるかもしれない。第4代米国大統領の名前や、米国憲法の父と呼ばれた人が誰だったかを思い出そうと(同じ人です)気が散ってしまうことはないのか。

ブオリ氏は、それは逆だと主張する。声を出すことが要求されるインタラクティブなゲームに参加することで、ドライバーの注意力は高まるというのだ。

「安全には何重にも気を遣っています」と彼は言う。「ひとつには、 Alertness Maintaining Tasks(注意力維持作業、AMTs)の安全に関する考え方を採り入れています。また、私たちの製品は予防策にもなります。Drivetimeで遊んでいる間は、その他のことに気を取られることがありません」

現在のコンテンツは、運転中にするべきではない行為にドライバーが向かわないよう抑制する効果があるということだが、運転の必要性が少なくなれば、ドライバーが時間をつぶすためのコンテンツを提供するという別のチャンスも増えてくるのは明らかだ。

長い目で見ると、「ジェパディ!」との契約は、その他の人気テレビ番組を基にしたチャンネルの開設につながる可能性がある。「ジェパディ!」の権利を持つSony Pictures Television Games(ソニー・ピクチャーズ・テレビジョン・ゲームズ)は、「Wheel of Fortune」(ホイール・オブ・フォーチュン)と「Who Wants to Be a Millionaire」(フー・ワンツ・トゥー・ビー・ア・ビリオネア、訳注「クイズ$ビリオネア」のオリジナル版)の権利も持っている。

「Sony Pictures Television Gamesと共同で、世界で最も偉大なクイズ番組「ジェパディ!」を、最も娯楽に飢えているオーディエンス、つまり、毎日家と職場の間を行き来している北米の1億1000万人の通勤者に提供できることを、とてもうれしく思っています」とブオリ氏は声明の中で話している。

面白いことに、AlexasのスキルやGoogle Homeやその他のスマートホームハブのアプリが成長し、アプリの操作や情報の検索を音声で行う方法が人気を呼んでいるにも関わらず、ブオリ氏によれば、Drivetimeと同じ方法でドライバーに音声ベースの娯楽を提供する競合アプリ開発企業がひとつも現れていないという。

そのためDrivetimeは、今のまま余裕をもってユーザーを増やすことができる。さらに、レガシーな知的資産の有効活用や新しいビジネスを求めるパブリッシャーやコンテンツ企業との契約も楽に増やせる。

「Drivetimeは、車に乗ったドライバーのための安全で刺激的な娯楽開発の先陣を切る開拓者です」と、Googleアシスタント投資グループの代表Ilya Gelfenbeyn(イリヤ・ジェルフェンベイン)氏は声明で述べている。「移動中に音声を使って生産性を維持する人たちが、どんどん増えています。AndroidやiOSのスマートフォンでGoogleアシスタントを使ってテキストメッセージを送ったり、電話をかけたり、手を使わずに遊んだり。私たちはDrivetimeと同じビジョンを掲げています。日々の通勤をもっと楽しくするために、彼らと仕事をするのが楽しみです」

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(翻訳:金井哲夫)