VISAがNFC-A/B非接触決済による国内キャッシュレス化を強力推進へ

ビザ・ワールドワイド・ジャパンは2月19日、同社のキャッシュレス、非接触決済の推進ついての発表会を開催した。発表会には代表取締役社長を務めるスティーブン・カーピン氏が登壇。「日本がキャッシュレス化に遅れているのは、習慣ではなく混乱が起きてることが原因」と説明した。

すでに米国と日本以外は半分が非接触の決済が浸透している一方で、日本ではいまだにATMに並んで現金を引き出し、店舗でも現金を支払うことで時間を無駄にしていることを同氏は指摘。同社によると、40%のユーザーが政府が進めている「キャッシュレス・消費者還元事業」後にキャッシュレスの支払い頻度が高くなると回答しているほか、90%がクレジットカードを利用、52%が最も使うキャッシュレスの決済手段としてクレジットカードを挙げているという。また、Visaのタッチ決済利用者の42%のユーザーが、よりキャッシュレスになったと回答している。さらに、Visaデビット利用後は12%現金利用が減少したというデータもあるそうだ。

VISAカードの発行枚数は1億6000枚超。そのうち1900万枚が非接触決済のVISAタッチ搭載カードとのこと(2019年12月末現在)。VISAタッチ搭載カードは、過去1年で3.8倍の発行枚数、対応端末数も3.8倍となっている。スーパーマーケットでの利用は2019年10月〜12月までの3カ月で3倍に伸びたという。

現在、VISAタッチ決済が可能なのは、ローソンやマクドナルド、すき家、Japan Taxi、関西3空港(関西、伊丹、神戸)など。2020年3月中には、イオン本体やイオンモール、ドラッグストアチェーンのウェルシア、コンビニエンスストアのミニストップなどイオングループ各店舗が対応する。

さらに開催まであと4カ月を切った東京五輪については、ワールドワイドスポンサーを務めており、各種プロモーションでキャッシュレス化を推進するという。

発表会にはJapanTaxiの川鍋一朗氏も登壇。同氏が会長を務める日本交通では現在約75%の配車がJapanTaxiのアプリを使っていることを明らかにした。またJapanTaxiのキャッシュレス決済端末を導入している日本交通のタクシーでは、62%が現金以外(キャッシュレス)での決済を選んでいるという。

川鍋氏は今後のタクシーについて、大型化、そして相乗りが進むという。自動運転も普及し、ドライバーは乗務員として利用者へのサービス提供などが主業務になると予想。さらには将来的には、貨客混載、つまり人と荷物を混載して運ぶ役目をタクシーが担うことも目指しているという。

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発表会ではキャッシュレスプロモーター施策も発表された。キャッシュレス・アンバサダーには「メイプル超合金」、タイムトラベルナビゲーターには昨年のM-1グランプリで決勝進出を果たした「ぺこぱ」が就任する。タイムトラベルナビゲーターは、ぺこぱの漫才中に松蔭寺太勇が使う「時を戻そう」というフレーズから設定された役職だ。

タクシー配車サービスのJapanTaxiがDeNAのMOVを吸収、DeNAはJapanTaxiの共同筆頭株主に

日本交通ホールディングスとディー・エヌ・エー(DeNA)は2月4日、両社それぞれが運営しているタクシー配車サービスの、JapanTaxiとMOVを4月1日に統合することで合意した。今後DeNAは、日本交通ホールディングスとともにJapanTaxiの筆頭株主となり、社名も変更予定とのこと。今回の事業統合によって配車可能な車両数は約10万台となる。また、全国に展開しているJapanTaxiの営業エリアに加え、東京、神奈川、京阪神に展開しているMOVの営業エリアが加わることで大都市圏でのサービスの利便性が向上すると考えられる。

徳島拠点の電脳交通がJapanTaxiやドコモ・JR西のCVCなどから2.2億円調達、タクシーを軸に交通空白地帯の解消目指す

徳島を拠点とする電脳交通は、第三者割当増資による2.2億円の資金調達を発表した。引受先は既存株主である、JapanTaxi、NTTドコモ・ベンチャーズ、JR西日本イノベーションズ、ブロードバンドタワー、個人投資家。NTTドコモ・ベンチャーズはNTTドコモの、JR西日本イノベーションズは西日本旅客鉄道(JR西日本)の100%子会社のCVCだ。2018年にこれらの株主から約1.8億円の資金を調達しているので、累計調達額は4億円となる(エンジェルラウンド合わせると累計4.1億円)。今回調達した資金は、営業拠点の拡大、カスタマーサクセス体制の構築、パートナー企業開拓、社員採用強化などに投下される。

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同社は、配車手配やコールセンター業務といったタクシー会社のバックオフィスのクラウドシステムを開発・提供する、2015年12月設立のスタートアップ。代表の近藤洋祐氏は、祖父から受け継いだ地元のタクシー会社である吉野川タクシーの代表取締役でもあり、自らもタクシードライバーの経験がある人物。2019年2月にはJR西日本、日本交通、篠山市(現・丹波篠山市)と連携し観光客向けタクシー乗り放題サービス、2019年3月にはNTTドコモと山口市阿東地域を運行エリアとするタクシー事業者2社と連携した公共タクシー運行といった実証実験を進めてきた。また、同社のタクシー配車システムは2019年12月時点で、全国18都道府県、約3000台のタクシー車両に搭載されているという。

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また同社は、地域交通の課題解決を目指す自治体・企業との新たな連携のかたちとして「地域交通アライアンス」の発足も発表。少子高齢化によって公共交通の縮小傾向が続いている中、交通空白地帯で住民や観光客の移動を担う「足」の維持・確保をタクシーを軸に目指していく。

同アライアンスで推進するのは以下の3点。

  1. 電脳交通が持つ既存配車システム機能を地域交通の課題解決に向けてカスタマイズ。必要に応じて新規開発し、ソリューションとしてパッケージングの上で提供
  2. 自治体および運行事業者に対するヒアリングやPoC実施/本格運用に向けた具体的な施策実行の伴走支援
  3. 自治体や運行事業者といった運用側のプレイヤーと、そのためのソリューションを持つ企業サイド双方の開拓、マッチングやコーディネートの実施

さらにNTTドコモとは、今春をメドに国内の2地域で公共タクシーの実証運行を予定しており、現在運行に必要な新機能の開発を進めているとのこと。

ドコモやJapanTaxiがお台場でMaaS実証実験、専用アプリでマルチモーダルルート検索が可能に

ナビタイムジャパン、ドコモ・バイクシェア、JapanTaxi、東京臨海高速鉄道、一般社団法人東京臨海副都心まちづくり協議会、KDDIは1月9日、お台場エリアの観光情報の提供と移動支援のためのMaaS実証実験アプリ「モビリティパス」を発表した。1月16日から一般配布される。

具体的には、お台場エリアの地図や観光関連記事、スポット情報を閲覧できるほか、エリア内で利用できるクーポンを配信する。移動支援については、りんかい線だけでなく。シェアサイクル、無料の予約制シャトル「東京臨海シャトル」などの移動手段を組み合わせたマルチモーダルルート検索機能を備える。

しかも、ルート検索の結果画面から、シェアサイクルの1日パスの購入や予約、東京臨海シャトルの予約が可能となっている。なお、東京臨海シャトルは今回のアプリの公開に併せて運行される期間限定シャトルで、1月16日〜2月12日ままでの期間限定で10時~19時の営業時間内に、勝どき〜お台場回遊、お台場回遊の2ルートで運行される。実証実験のため料金は無料だ。

今回公開されるモビリティパスは、東京都が公募した「MaaS社会実装モデル構築に向けた実証実験プロジェクト」に基づく実証実験の一環として提供される。実証実験を通じて、国内外の観光客のスムーズな移動と回遊率向上を図り、観光活性化を目指すのが目的だ。なお、アプリ内でアンケートに回答すると、りんかい線1日乗車券のプレゼントキャンペーンも実施される。

「自動運転はタクシーから」Autowareが作り出す未来

11月14日(木)・15日(金)の両日、東京・渋谷ヒカリエで開催中のTechCrunch Tokyo 2019。14日午前のFireside Chatでは「自動運転OS『Autoware』が作り出す未来」と題して、ティアフォー取締役会長兼CTOの加藤真平氏が登壇。自動運転の最新テクノロジーと近い将来の姿について語った。またサプライズゲストとしてJapanTaxi代表の川鍋一朗氏も登場。当日発表されたばかりの自動運転タクシーの社会実装に関する協業について、2人に語ってもらった。モデレーターはTechCrunch Japan編集統括の吉田博英が務めた。

写真左からティアフォー取締役会長兼CTO 加藤真平氏、JapanTaxi代表取締役社長 執行役員CEO 川鍋一朗氏

お年寄りから子どもまで幅広く使える自動運転へ

ティアフォーは自動運転技術を開発するスタートアップ。登壇した加藤氏は、オープンソースの自動運転プラットフォーム「Autoware」の開発者でもある。加藤氏は「自動運転技術ははやっていて、いろいろなやり方がある。我々は自分たちだけで実装を目指すというよりは、まわりのパートナー企業とアライアンスを組んで、シリコンバレーや中国のテック企業と渡り合っていくという戦略で事業を進めている」と話す。

加藤氏は「自動運転はまだ今日の社会には浸透していない。現在“自動運転”と言われているものには、さまざまな意味がある」という。

「半自動運転機能については、ちょっと高いクルマであれば、高速道路や一部の一般道でレーン維持をするものや、衝突回避をするものが出てきている。だが、今までのそういう自動運転機能から一歩先に進んで、AIやハイテクを搭載する自動運転は、1社ではシステムを作ることはできないと私は考えている。いかにパートナーとアライアンスを組むかというのが、自動運転を実現するために技術面でも大事なことだと思っている」(加藤氏)

戦略はいかにパートナーを集めることができるかにかかっている、という加藤氏。「ティエアフォーとしては、自分たちが作ってきたソフトウェアを自在化するというよりは、オープンソースとして一般に公開して、一緒にアライアンスを組んでビジネスや研究開発をしていこうというのがスタイル」と語る。

加藤氏は広くアライアンスを組むことで「開発者だけでなく、結果としてお年寄りから子どもまで、幅広く使える大変高い水準の技術になると思う」として、ティアフォーが掲げるビジョン「Intelligent Vehicles For Everyone」の“Everyone”の意図するところについて説明する。

Autowareの長所については「自動運転に必要な全ての機能が1つのパッケージとしてまとまっている点だ」と加藤氏。「だから、クルマがあり、センサーがあれば、ソフトウェアをダウンロードして、一般道を走りたい、限定された地域を走りたいといった目的に応じて、機能を変えられる」と述べている。

「Autowareは1つの自動運転システムをつくるためのものというよりは、いろいろな自動運転システムを作るためのプラットフォーム。Linuxでもいろいろな機能があり、サーバーを開発する場合とデスクトップを開発する場合とで使い方が違うと思うが、Autowareも一緒。物体を認識する機能、行動を計画する機能など、いろいろな機能が入っていて組み合わせることができるところが強みになっている。全ての機能がオープンで1つのソフトウェアに入っているというのは、世界的に見てもAutoware以外にない。シェアをカウントしたことはないが、7〜8割のシェアを取っているのではないか」(加藤氏)

自動運転の現状と近未来

自動運転を巡る現状について加藤氏は、「各社の競争が激しく、また自動運転と言ったときに、いろいろな人がいろいろな捉え方をしている」と話している。「先に挙げたとおり、半自動運転でよければ、市販のクルマを買えば既に機能が付いている。ただし一歩先に行けば、人間がドライバー席に座らず、全てAIとコンピュータで運転するという未来があり、その中でも種類が分かれている。分かりやすいのは、姿かたちは今のクルマとあまり変わらないが、そのクルマが進化して自動運転機能を持つというもの。もうひとつは新しいモビリティとしてクルマの原型をとどめていなくてもよく、『もうこれはロボットだよね』というタイプだ」(加藤氏)

「今の自動車の延長上にある自動運転は、一般道を走る目的のために開発されている」という加藤氏は、ティアフォーがAutowareで開発する自動運転車の走行の様子とソフトウェアを動画で紹介。「3次元を認識する点が今の市販車と大きく違うところ。レーンをカメラで見るというだけでなく、3次元を捉えられるカメラを使って、高度なAIを搭載し、細かい制御をするところまでティアフォーは来ている」と説明する。

世界的には「Googleなどは技術力ではティアフォーの先を行っているが、ティアフォーに追いついていない自動運転企業の方が圧倒的多数。すごくばらつきがある」としながら、加藤氏は「総じて今、一般道で、運転席に人を乗せなくても走れるようになってきた、というのが現状だと思う」と分析する。

実用化という面では「法規制や倫理感、産業構造を変えてしまう、といった社会の問題があり、テクノロジーだけの問題ではない」と加藤氏。ただし「少し視点を変えて、一般道ではなく公園や倉庫内などの屋内などであれば、自動運転は今年来年というより『もう既に来ている』」とも話している。

ティアフォーでは、3Dプリンターで試験用の機体を用意し、設計を細かく変えながら量産化できると判断できれば製造にまわす、というスタイルで、公道以外で利用できる自動運転モビリティの実証実験を行い、開発を進めている。「こういうモビリティであれば、技術面では十分な水準まで来ている。安全をどう担保するかという面で細かい課題は残っているが、来年ぐらいには公園などの敷地内でハンドル、アクセル、ブレーキが付いていないクルマが走っているのではないかと考えている」(加藤氏)

現在、日本の行政では一般道で走るタイプと、限定された地域内を走るタイプの2通りの自動運転車の実現を推進していると加藤氏。「来年のオリンピック開催は経済的にも、技術実証の場としても機会と捉えられていて、いろいろな企業がこれにタイミングを合わせて開発を進めている」として、トヨタの自動運転モビリティ「e-Palette(イーパレット)」を紹介した。

「e-Paletteは既に、アクセル、ブレーキ、ステアリングがついていないモビリティ。これが来年、オリンピックの選手村を、選手を乗せて20台近く走ると言われている。こうした限定されたエリアをターゲットとした自動運転機能については、これまでに取り組んできた実績もあって、ティアフォーが開発したものがe-Paletteに採用されたのだが、とてもいい経験となった」(加藤氏)

「世界連合軍でAutowareを作るのが我々の野望」

アメリカでもUberやGoogleからスピンオフしたWaymoが自動運転技術を開発しているが、国ごとの特性に応じた仕組みはやはり、必要なのだろうか。

加藤氏は「私の仮説では、汎用の自動運転システムというか、自動運転に限らず、汎用のAIを開発するのは難しいと思っている」という。「各社とも、ある地域用に作り込んで自動運転を実用化する技術力はあるが、全世界に対応するのは遠い話になる」と加藤氏は述べ、当面は「陣取り合戦がビジネスの戦略としては大事になるだろう」と見通しを示した。

「アジア、アメリカ、ヨーロッパと、走行環境、法律、通信インフラなど、いろいろなものが国ごとに違う。例えばGoogleもあれだけ投資をして自動運転を開発しているが、まだネバダ州とカリフォルニア州の2州での展開だ。これはほかの州では技術的にできないということではなく、州ごとに微妙に異なる規制が変わるので、対応が難しいということ。ある程度、汎用的な技術はできると思うが、最終的に法律や社会のあり方といったことを考えると、ひとつのAI、ひとつのシステムで全ての地域に対応するのは難しいのではないかと思う」(加藤氏)

Autowareの利用は、日本、中国といったアジア圏が多めだが、アメリカやヨーロッパでも広く使われていると加藤氏はいう。ヨーロッパについては「オープンソースなので、ダウンロードして使っている人たちはいるが、僕らとのつながりがまだない」とのこと。「オープンソースにしているのは、なるべく広めて、使ってくれる企業や研究者とコラボレーションしたいという戦略から。アジア、アメリカについては国際団体の『The Autoware Foundation』にも多く加盟してもらっているが、ヨーロッパはこれからだ」と話している。

「世界連合軍でAutowareを作るのが我々の野望。まだ国際団体を作ってから1年経っていないので、来年はヨーロッパやアフリカなどにも広めていきたい」(加藤氏)

今実際に、どんな業界で自動運転が取り入れられようとしているのか、加藤氏に聞いてみた。「現段階ではR&Dがちょうど沸騰してきているところ。3次元処理ができるようになってきたり、シミュレーターがリアルになってきたりで、ようやく一般公道を走る準備ができてきたというのが私の印象だ」(加藤氏)

中でも「タクシーが分かりやすい」と加藤氏。「タクシーは、最も自動運転が社会に貢献できるアプリケーションなのではないかと考えているので、タクシーの自動運転はぜひ実現したい」と語る。

まさにこの日の朝、自動運転タクシーの社会実装に向けて、ティアフォーとJapanTaxiをはじめ数社との協業が発表されたのだが、「タクシーとの連携については、実は3年ほど前から日本交通、JapanTaxiと話を進めている」と加藤氏が説明。ここでゲストとして、JapanTaxi代表取締役社長の川鍋一朗氏が登場した。

「自動運転はタクシーから実装される」

自動運転タクシーというと、しばしば課題に挙げられるのが「ドライバーはどうなるのか」という話だ。川鍋氏は「雇用の未来など、センセーショナルに取り上げるときに必ず『タクシーやトラックの運転手がいなくなる』と語られるが、実際には運転手不足などにより採用を進めていくと、年間10%ずつぐらい入れ替わっていくので、今後10年で対応できるスピード」と述べ、「仮に全自動運転タクシーが東京を走ったとしても、恐らく無人運転ではない、という状況が長く続くのでは」と続けた。

「タクシーを利用するときに、普通に1人で乗るときもあれば、障害者の方が乗る、子どもだけで乗る、観光の方が乗るといった、人がいた方がいいシチュエーションはまだまだ多い。日本交通では新卒で乗務員をたくさん採用しているが、彼らにも『運転という機能はだんだん減るが、人間力、ホスピタリティという面が必ず上がるので、絶対に職にあぶれるということはない』と話している」(川鍋氏)

加藤氏は「これからは、テクノロジー単体に価値を見出すのはすごく難しくなっていく」として「社会のどの部分にテクノロジーを入れていくか、我々のようなテクノロジーを開発する側が考える責任を持っている」と語る。

「自動運転タクシーは実現できる。ただ、使い方を間違えたら産業構造を破壊してしまう。また、そもそも価値を最大化しようとしたら全部テクノロジーでやる、というのは恐らくあり得ないことだ。うまく社会や人間とテクノロジー、AIとが共存するというのは、テクノロジーだけでなく社会の課題だと思う。今のドライバーと少し役割は変わるかもしれないが、ドライバーという職業がなくなるということは、私もないと思う」(加藤氏)

加藤氏は技術開発としてだけでなく、産業、社会として成立させるという点を「楽しんでいるし、興味を持っている」と語っている。

川鍋氏はまた「単にA地点からB地点まで人を運ぶだけなら自動運転になるだろうが、今の日本の課題は人口減少であり、過疎化である。『移動しなければならないのに、お金が負担できない』という状況がすごく増えるはずだ。税金で埋めることになるだろうが、税金にも限りがある。そうすると社会として、最小負担額で何か移動できる物体を作らなくてはいけなくなる。そこには人を1人乗せるだけでなく複数人乗せることになるし、物も載せていかなければいけなくなるだろう」と貨客混載の可能性について述べている。

「相乗りタクシーシャトル的なものに、郵便物も小包も載せ、後ろを開けるとコンビニエンスストアのようなものが出てくる。そういう未来になるのではないか。地方では、今、ドライバーの有効求人倍率は6倍ぐらいある。これをよく見ると、トラック、バス、タクシー、宅配便、郵便とそれぞれが運転手を募集している状況。この全部が一緒になれば、6人が1人にはならないまでも、2〜3人にすることはできるのではないか。そうならざるを得ない社会的要請が日本にはあり、自動化された運転が進む社会的基盤がある」(川鍋氏)

加藤氏は「社会を中心とした考え方をしないと、新しいテクノロジーをプロダクト化できなくなってきているが、そこがむしろ差別化要因」と語っている。「どうやってリアルワールドをテクノロジーと僕らがうまく融合させていくか。テクノロジーはグローバル化し、テクノロジーそのものに差異はなくなっていく。5年もすれば、自動運転技術はみんなできるようになっていくので、差別化できるのは社会といかに融合するかという部分になる」(加藤氏)

川鍋氏は「自動運転は100%、タクシーから実装される」と予言する。「祖父がタクシー会社を創業した時には、日本製のクルマはなく、トヨタが日本車を作り始めたときにタクシー業界が真っ先に使った。タクシーは一般車両の6〜7倍の距離、年間10万キロを走る。タクシーが使って、壊れまくったという日本車を直してまた使って、というプロセスがあった。オートマチック車ができたときも、タクシーから導入された。早く壊れることで実証実験になっている。自動運転車両も最初は価格が高いはずだが、社会的にも認知を高めようというときに、必ずタクシーが役に立つと考えている」(川鍋氏)

本日の発表ではティアフォーとJapanTaxi、損害保険ジャパン日本興亜、KDDI、アイサンテクノロジーの5社が協業して、2020年夏、都内で実際に日本交通のタクシーが実証実験を行うことが明らかになった。川鍋氏は「これまでは『自動運転車両をタクシーにする』という話だったが、タクシー専用車両を使ってくれなければ、いつまでも実証実験の域を出ない。タクシー専用車両を使って自動運転ができないか、加藤氏に相談した」と打ち明ける。

この車両は2020年1月に開催される自動運転Expoでお披露目されるという。また、都内での実証実験では、一般ユーザーがJapanTaxiのアプリを使って、自動運転タクシーが呼べるようになる予定だそうだ。

「モビリティの変化の度合いは、タクシーが一番大きいと考えている。変化した頃に『タクシー』と呼ぶかどうかは分からないが、自動運転の度合いが高まれば、運転手はアルバイトの乗務員でもよいということになり、ホスピタリティがある人でいいということになるはずだ。貨客混載になるならば、完全自動運転車では荷物にロックをかけ、受け取りにQRコードを使い、といったことになり、設備投資が大変なことになるので、必ず有人になると私は考えている」(川鍋氏)

「テクノロジーが進めば、タクシードライバーも含めて、特集能力を持たなくても、いろいろな職業に就くことができるようになる。オリンピックの頃には自動運転タクシーが都内を走っているはずなので、ぜひアプリをダウンロードして利用してみてほしい」(加藤氏)

タクシー相乗りアプリのNearMeが3億円調達、相乗りシャトルなどのサービス認知向上を進める

タクシー相乗りアプリ「nearMe.」(ニアミー)を提供する社Near Meは9月11日、プレシリーズAで3億円の資金調達を発表した、調達方法は、ニッセイ・キャピタル、DBJキャピタル、東急不動産ホールディングス(TFHD Open Innovation Program)、SMBCベンチャーキャピタルの計4社を引き受け先とする第三者割当増資。今回調達した資金は、人材の採用、事業会社との連携、nearMe.やスマートシャトルの認知向上などに投下される。

nearMe.は、同じ方向のタクシーを利用する人々をマッチングして相乗りを実現するサービス。道路運送法では、タクシーは1回の運送につき1つの運送契約という決まりがあり、原則として相乗りは禁止されている。しかしnearMe.では、最後までタクシーに乗る利用者がすべてのタクシー料金を支払うので、タクシー会社側からすると1つの運送契約と見なされるため合法となる。

相乗りした乗客は、nearMe.アプリに登録したクレジットカード経由で、最後までタクシーに乗車している利用者にキャッシュレスで料金を支払う仕組みだ。女性同士や顔見知りだけなど、相乗り相手を選ぶこともできる。

距離や人数によって異なるが、一人でタクシーに乗るよりもタクシー料金が20~40%程度安くなる。nearMe.側はマッチングした複数の利用者の合計金額から手数料を取ることでマネタイズする。

8月にはJapanTaxiと提携したことで、nearMe.アプリからJapanTaxiのアプリを呼び出して、その場でタクシーを配車することも可能になった。そのほか同社は、地方のハイヤー会社と組んだ実証実験も進めている。

関連記事:タクシー相乗りアプリのnearMe.でJapanTaxiの配車が可能に

8月下旬からは、nearMe.のテクノロジーを活用して、東京都区内から成田空港までの相乗りシャトルバスサービスも開始。乗車地は、新宿区、渋谷区、世田谷区、港区、台東区、墨田区、千代田区、中央区、文京区に限られるが、料金は成田空港までの距離に関係なく一律3980円となる。

関連記事:都内から成田空港まで一律4000円弱、NearMeの相乗りシャトルバスが運行開始

メルカリのキャッシュレス決済「メルペイ」でタクシー料金のQRコード決済が可能に

メルカリ子会社でキャッシュレス決済サービスを運営するメルペイは4月15日、「JapanTaxiタブレット」を導入している全国約1万台のタクシーで、メルペイのQRコード決済が可能になったことを発表した。

JapanTaxiタブレットは、タクシー配車サービスを提供しているJapanTaxiが、提携するタクシー車内に設置しているデバイス。北海道、東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県、京都府、大阪府、福岡県などのエリアで営業している約1万台のタクシーで利用できる。

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    タクシー設置のタブレット端末で「QRコード決済」を選択
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    「QRコード決済」画面から「メルペイ」を選択
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    「メルカリ」アプリの「メルペイ」タブから「コード払い」を選択
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    タクシー設置のタブレット端末のカメラでQRコード読み取り
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    コード決済完了
メルペイで決済する場合は、客席に備え付けのJapanTaxiタブレットでQRコード決済を選び、このタブレットを使ってスマホに表示したメルペイのQRコードを読み取らせればいい。JapanTaxiタブレットは料金メーターやタクシー運営会社の決済システムにつながっているので、利用者はタブレット上の操作だけで決済が可能になる。

メルペイの導入事例としては、牛めしの松屋をはじめとする松屋フーズ各店に続く大型案件となる。メルペイは、コード決済だけでなくNTTドコモのNFC(FeliCa)決済のiDにも対応しており、コンビニや駅売店などさまざまな場所でも使える。2次流通である中古品の売買から始まったメルカリ経済圏は今回のJapanTaxiとの提携により、一時流通の一般的な商品の購入、飲食、タクシーによる移動までをカバーすることになった。

JapanTaxiのタブレット端末に世界74言語の通訳機能が追加、ソースネクストと業務提携

JapanTaxiは3月28日、AI通訳機「ポケトーク」を提供するソースネクストとの業務提携を発表した。2019年6月より、JapanTaxiが全国1万台のタクシーに提供する車載型タブレット端末「広告タブレット」および「決済機付きタブレット」にソースネクストの通訳機能が追加される。

ソースネクストのポケトークは2018年12月時点で世界74言語に対応。ボタンを押しながら話しかけるだけで、まるで通訳がいるかのように対話ができるデバイスだ。ソースネクストはこの通訳機能をSDK化し、JapanTaxiのタブレット端末に機能を導入する。乗客がタブレット上でポケトークを起動し、タブレット下部に搭載されたマイクに向けて話すと、運転手側のタブレットに日本語が表示され、音声も流れる仕組みだ。

JapanTaxiのタブレット自体はこれまでも多言語化されていたが(英語、韓国語、中国語)、タクシー運転手との会話まではカバーしきれていなかった。この提携によって通訳機能が追加されることで、外国人乗客の利便性は大きく改善されることになる。

JapanTaxiは今回の業務提携について、「JapanTaxiでは2020年までにタブレット搭載タクシーを5万台まで増やす計画があり、この度の本タブレットへの通訳機能追加により、タクシー業界の課題である増え続けるインバウンド需要の対応を加速させ、顧客サービスの向上に繋げていく予定」とコメントしている。

JapanTaxiがNTTドコモから約22億円調達、提携タクシーでd払いが可能に

日本交通のグループ会社で、タクシー配車アプリの「全国タクシー」などを提供するJapanTaxiは7月30日、NTTドコモとの資本業務提携を締結したと発表した。これにより、NTTドコモからJapanTaxiへの出資総額は22億5000万円だ。

全国タクシーのダウンロード数は現時点で500万件。車両登録数は日本全体のタクシー車両の4分の1にあたる6万台以上だという。JapanTaxiはこの全国タクシーのほかにも、QRコードによる決済機能がついたデジタルサイネージ「Tokyo Prime」を展開中だ(Tokyo Primeについてはこちらの記事も参考にしていただきたい)。今回の資本業務提携により、NTTドコモの「d払い」など新しい決算手段が追加される予定。

QR決済機能付きデジタルサイネージの「Tokyo Prime」

また、両社は共同で、数時間後にある特定のエリアにいる人の数を予測する「近未来人数予測」などのNTTドコモの技術と、JapanTaxiが展開する配車プラットフォーム、広告プラットフォームを組み合わせた新サービスの開発も目指す。

JapanTaxiは今回の資金調達以前にも、2018年2月にトヨタから約75億円を、そして未来創生ファンドから10億5000万円を調達している。同社とNTTドコモはこれまでにも、全国タクシーとNTTドコモのAIエージェントサービス「my daiz」の連携を行うなどしていたが、その連携をさらに深めるために今回の資本業務提携の締結が決定されたようだ。

「全国タクシー」のJapanTaxiが未来創生ファンドから10.5億円を資金調達、累計調達額は91.5億円に

タクシーアプリ「全国タクシー」を運営するJapanTaxiは2月26日、スパークス・グループが運営する未来創生ファンドを引受先とする第三者割当増資により、10.5億円の資金調達を実施すると発表した。

JapanTaxiは、タクシー会社・日本交通の傘下でタクシーアプリをはじめとするモビリティ分野のソフトウェア、ハードウェアを開発するITベンチャーだ。2011年よりタクシー配車アプリの全国タクシーを提供開始。2017年12月には累計400万ダウンロードを突破した。車両登録数は全国のタクシー車両の約4分の1となる約6万台で、タクシー配車アプリとしては国内トップのシェアを誇る。

JapanTaxiは2017年6月に未来創生ファンドから5億円を調達。その後10月にタクシー会社2社から総額1億円、今年の2月8日にはトヨタ自動車から約75億円の出資合意を発表しており、今回の調達金額を合わせると、累計金額は91.5億円となる。ちなみにトヨタ自動車は未来創生ファンドにも出資している。

これまでの調達についてJapanTaxiでは「少子高齢化が進み、さらに重要性が高まる『移動』の課題を解決するとともに、『移動』に伴い発生するデータの利活用により、日本のモビリティ革命を実現し、社会インフラの進歩に貢献していく」と述べている。

また全国タクシーアプリについては今後、操作性の向上や配車時間の短縮、新機能の追加などで、2020年までに配車可能タクシー台数を9万台(全国のタクシー台数の約4割)、累計アプリダウンロード数を1600万を目指すという。

タクシー配車サービス関連では、ソフトバンクが中国の滴滴出行(DiDi)と、日本のタクシー事業者向けサービスにおいて協業することを2月9日に発表。ソフトバンクと滴滴はUberへの投資も行っており、そのUberは、日本のタクシー会社では第一交通産業と提携すべく、協議・検討を進めているところだ。

またソニーも日本でタクシー会社6社との連携により、AIを使った配車サービスを始めることを2月20日に発表している。こちらに参画するのはグリーンキャブ、国際自動車、寿交通、大和自動車交通、チェッカーキャブ無線、日の丸交通の各社で、合計すると都内では最大規模の1万台の車両をかかえている。

JapanTaxiがライドシェア実証実験に参加、公式アプリ「相乗りタクシー」をリリース

日本交通の関連会社で、タクシー配車アプリ「全国タクシー」を運営するJapanTaxiは1月22日、国土交通省のライドシェア実証実験に参加するための公式アプリ「相乗りタクシー」をリリースした。

このアプリでは、ユーザーが乗る場所と行き先を指定することで、付近にいる同方向への相乗り希望ユーザーを検索してマッチング。乗車地や降車地が離れすぎているユーザー同士や、合理的なルートを算出できない位置にいるユーザー同士では相乗りが成立しないようになっているので、必ず通常のタクシー料金より安くなる仕組みだ。

同乗者がマッチして、ユーザー双方が相乗り条件に合意すると、近くのタクシーが配車システムで自動的に手配され、ユーザーの指定した場所へ順番に迎車に向かう。料金は乗車前に、ユーザーの乗車距離に応じて振り分けられた金額を確認できる。支払いは事前にアプリに登録したクレジットカードで行われる。

実証実験は1月22日から3月11日まで行われる。実験には日本交通グループの300台のタクシーが参加。配車エリアは東京都23区と武蔵野市、三鷹市だが、22日から23日にかけての大規模な積雪予報を受けて、安全性の面から、配車自体の開始は1月24日午前9時にずれ込むことになった。

アプリのダウンロードと会員登録は1月22日時点から受け付けており、実験期間中限定で公開される。提供されるのはiOS版のみとなる。

また相乗りタクシーは、ヴァル研究所、NTTドコモ、ナビタイムジャパン、日本航空の4企業とパートナーとしてサービス連携し、終電後などの交通手段としての利用促進や、ポータルサイトからの利用促進などを行っていく。

なお、ライドシェア実証実験には、大和自動車交通グループの参加も決まっている。こちらは既存の配車アプリ「大和自動車交通タクシー配車」内で、相乗りのマッチング機能を提供。アプリの地図上でターミナル駅近辺に配置された「乗場」アイコンをタップすることで、各乗場の相乗り募集を確認し、アプリ内で「相乗り乗車券」を購入するスタイルとなっている。

日本では、Uberが2012年に進出して、2014年3月にハイヤーの配車サービスを開始しているが、ライドシェア事業に関しては規制の壁があり、現在もサービス実現には至っていない。Uberが2015年2月に福岡で実施していた実験は国交省による行政指導で中止されている。

大和自動車交通のアプリでの相乗りのフロー

タクシーで「コンプレックス商材NG」な動画広告、日本交通とフリークアウトが新会社設立で

フリークアウトの本田謙社長(左)と日本交通の川鍋一朗会長(右)

フリークアウトの本田謙社長(左)と日本交通の川鍋一朗会長(右)

タクシーの広告といえば、消費者のコンプレックスに訴求するリーフレットを思い浮かべる人は多そう。例えば、飲むだけで痩せたり薄毛が治ることを謳うチラシ。僕も「ハゲの99%が治るって本当?」といったコピーに釣られ、手に取ったことはある。

いわゆる「コンプレックス商材」ではなく、大手のブランド広告を獲得しようと、都内タクシー最大手の日本交通がデジタルサイネージ事業に乗り出した。東京都心のタクシー100台にタブレット端末を設置し、全国規模で商品やサービスを展開する「ナショナルクライアント」の動画広告を配信する。

翌年に日本交通のタクシー3500台、2020年までに全国のタクシー5万台への導入を見込む。全国のタクシー会社に対してはタブレットを無償配布し、広告収益を分配することで普及を図る。

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大手ブランド広告を取り込む

日本交通とフリークアウトが合弁会社「株式会社IRIS」を設立し、動画広告商品「Tokyo Prime」を開発。都心でタクシーを利用する高所得者向けの「プレミアムメディア」という位置づけで、フリークアウトの顧客である航空会社や飲料メーカー、トイレタリー企業などを中心に販売していく。

デジタルサイネージは前部座席背面にタッチパネル対応の10インチタブレットを設置。乗客が運転手に行き先を告げてメーターが稼働した時点(つまり、もっともアテンションが集まるタイミングらしい)で、最長3分の動画広告を流す。丸の内や六本木のタウン情報なども提供する。

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僕も試してみたが、座って一息ついたタイミングで動画が流れると目を奪われる。見たくない場合はタブレットを操作して動画を消すことも可能だ

日本交通によれば、都内のタクシー平均乗車時間は18分間。その間に動画広告を流すことで、企業のブランドを深く浸透させられるとアピールする。

日本交通の川鍋一朗会長は、「都心のタクシー利用者は可処分所得が高く、繰り返し乗車するのが特徴。これまではこうした高所得者層へのマーケティングに注力できていなかった」と語る。

合弁会社のIRISでは広告掲載基準を厳格化。「コンプレックス商材」「ギャンブル」「美容整形」などの広告を掲載不可とし、大手のブランド広告を取り込む狙いだ。

デジタルサイネージ参入を支えた格安MVNO

ビーコンを使った「Physical Web(フィジカルウェブ)」にも対応し、車内で視聴した動画に関連するURLをスマートフォンにプッシュ通知する。この機能はスマホのGoogle Chromeで「フィジカルウェブ」とBluetoothを有効にしている場合のみ有効だ。

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タブレットはインターネット常時接続で、データ通信にはIoT向けの格安MVNOサービス「SORACOM Air」を採用した。通信料金が安い深夜に動画をダウンロードしたり、昼間はAPI経由で帯域制限するなどして、通信料を1台につき月額1000円以下に抑える。

このように低コストで運用できるサービスがあったことが、デジタルサイネージに参入できた要因でもあるようだ。

タクシーならではのターゲティング

日本交通とフリークアウトは今年1月、位置情報と連動するマーケティング事業で提携。日本交通子会社のJapanTaxiが提供する配車アプリ「全国タクシー」の位置情報を、フリークアウトの広告配信に活用する取り組みを始めていた。

フリークアウトにとって、デジタルサイネージは初の事業領域となる。本田謙社長は「今から行く場所がわかれば、乗車中に目的地に関連する広告が配信しやすくなる」と、タクシーならではのターゲティングに期待を寄せる。

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「全国タクシー」の位置情報をもとに、特定エリアにいる訴求したいターゲット層のみに対して、即座にオンライン上で広告を配信できる

フリークアウトは、広告主が広告を配信したいユーザー層を定義し、必要な広告枠をリアルタイム入札で買えるDSP(デマンドサイドプラットフォーム)を手がける。広告主は購買データや性別年齢、興味などでユーザーを絞り込めるが、これらに「今から行く場所」が加われば、より効果的な広告が打てるというわけだ。

ただし、「乗車時に目的地がわかる」というのは、配車アプリで降車地点を指定した場合に限られる。今後は、乗車時に運転手に目的地を伝える際、タブレットの音声認識で目的地を推定することも視野に入れている。

2020年までに多言語化、売上高100億円へ

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富士キメラ総研の予測によれば、2020年の国内デジタルサイネージ交通広告の市場規模は800億円。IRISは2020年までに全国5万台に導入し、売上高100億円を見込んでいる。インバウンド需要に向けて、デジタルサイネージの多言語化や決済対応も進める。

IRISは日本交通子会社のJapanTaxiが51%、フリークアウトが49%を出資。代表取締役には、JapanTaxi CMOの金高恩氏とフリークアウト経営企画室長の溝口浩二氏が就任した。