リモートワークが世界中に広がる中、分散型ワークフォース向け人事プラットフォームのOysterが約21億円調達

物理的なオフィス、または1つの国といった枠をはるかに超えてリモートワークが拡大し、こうした労働力を管理していく必要性が生まれる中、企業の人材管理支援に使用される人事テクノロジーにスポットライトが当てられている。急成長を遂げるHRスタートアップの1つが米国時間2月2日、事業を大きく拡大するための資金調達ラウンドを発表した。

Oysterは、人事サービスを提供するスタートアップで、「知識労働」分野の請負業者やフルタイムの従業員の雇用、新人研修、そして給与計算、福利厚生、給与管理といったプロセスを支援するプラットフォームを提供している。このOysterがシリーズAラウンドで2000万ドル(約21億円)を調達した。
同社はすでに100カ国で事業を展開しており、CEOのTony Jamous(トニー・ジャマウス)氏はインタビューで、市場を拡大するとともに、特に新興市場での人材採用に対処するための新サービスを導入する計画だと語った。ジャマウス氏はJack Mardack(ジャック・マーダック)氏と同社を共同設立している。

現在Oysterは、候補者の調達や面接、評価のプロセスをカバーしていない。それらは同社が独自の技術を構築したりパートナーと提携し、ワンストップサービスの一環として提供し得る分野と考えられる。同社は開拓可能な潜在要素として、バーチャルジョブフェアの開催を試みている。

「今後10年間で15億人の知識労働者が労働人口に加わりますが、そのほとんどは新興経済圏からの人々です。一方、先進国では約9000万人分の雇用が満たされない状態になります」とジャマウス氏はいう。「グローバルに分散した雇用形態をとることで強力な人材力を得ることができますが、その場合人事や給与システムに大きな課題を抱えることになります」。

資金調達を主導したのはB2BベンチャーキャピタルのEmergence Capitalで、同社はZoom、Salesforce、Bill.com、以前TechCrunchの姉妹メディアであったCrunchbaseなどを支援している。Slackの戦略的投資機関であるSlack Fundと、シードラウンドで同社を支援したロンドンのConnect Venturesも参加している。この投資はOysterの急成長を加速させ、人々がどこからでも仕事ができるようにするという同社の使命を支えるものとなるだろう。

Oysterの評価額は公表されていない。同社はこれまでに約2400万ドル(約25億円)を調達している。
世界的なパンデミックのため、旅行をはじめ地域活動までもが大幅に制限され、多くの人々が自宅での日常生活を余儀なくされていることで私たちの世界が縮小している一方、雇用の機会と組織の活動範囲が大幅に拡大しているのは皮肉なことである。

公衆衛生の危機から導入されたリモートワークは、企業が従業員をオフィスから切り離すことにつながり、その結果、場所を問わず最高の人材を発掘して活用する道が開かれた。

こうした傾向は2020年になって顕著になったと言えるかもしれないが、クラウドコンピューティングとグローバル化のトレンドの後押しを受けて、実はここ数年で徐々に注目を集めつつあった。ジャマウス氏は、Oysterのアイデアは何年も前から考えていたものだったが、同氏がその前に在籍していたスタートアップNexmo(2016年にVonageに約243億円で買収されたクラウドコミュニケーションプロバイダー)での経験の中でそれがより明確なものになったと語った。

「Nexmoでは優れた地域雇用者になることを目指していました。私たちは2つの国に拠点を置いていましたが、あらゆる場所で人材を必要としていました」 と同氏は続けた。「そのために何百万ドル(何億円)も費やして雇用インフラを構築し、フランスや韓国など各国の法律に関する知識を深めました」 。同氏はすぐにこれが極めて非効率的な仕事のやり方であることに気づいた。「私たちは複雑で多様な問題が発生することを想定していませんでした」。

Nexmoを去り、エンジェル投資(分散型の巨大企業Hopinなどを支援)を行った後、同氏は次のベンチャー事業として労働力の課題に取り組むことを選択した。

それは2019年半ば、パンデミック以前のことであった。あらゆる企業が分散型労働力の課題に対処する方法を模索するようになった現在、同氏の判断は時機を得たものとなった。

新興市場へのフォーカスはジャマウス氏の個人的背景と無関係ではない。同氏は17歳のときにレバノンからフランスに留学し、それ以来、基本的に海外で生活してきた。しかし先進国から新興市場に参入する多くの人々と同様、彼は母国の技術を持った人材はその国の住民や国自身が自らの生活を向上させるために活用し、発展させる価値があるものであることを認識していた。同氏はテクノロジーを活用することでそこに貢献できると考えていた。

このより広範な社会的ミッションを背景に、Oysterは現在B-Corporationとしての認定を受けようと申請中である。

個人的な経験に基づいて人材管理会社を設立したのはジャマウス氏だけではない。Turingの創業者たちはインドで育ち、遠く離れた場所の人々と働いていた自分自身のバックグラウンドをTuring設立の動機の一部として挙げている。Remoteの創業者はヨーロッパ出身だが、世界中にいる人材を活用するという同様の前提の下にGitLab(ここで彼は製品責任者を務めていた)を設立した。

実際、この事業に取り組んでいるのはOysterだけではない。分散型ワークの領域でADP社のような存在になることを目指しているHRスタートアップのリストにはDeelRemoteHibobPapaya GlobalPersonioFactorialLatticeTuringRipplingが名を連ねている。これらは2020年資金を調達したHRスタートアップのほんの一部であり、他にも数多くのスタートアップが存在する。

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Oysterの魅力は、サービスの提供方法がシンプルな点にあるように思われる。請負業者とフルタイム従業員に対するオプションがあり、また海外における人材配置の本格的な大規模展開も可能だ。必要に応じて従業員の福利厚生も追加できる。さらに、より大きな予算の中で雇用がどのように適合するかを見極めるためのツールや、各地域の市場での報酬についての指標を提供するツールも備えている。料金は請負業者を対象とする場合は1人あたり月額29ドル(約3千円)から、全従業員を対象とする場合は399ドル(約4万2千円)、より大規模な導入向けには他のパッケージも用意されている。

Oysterはローカルパートナーと協力してこれらのサービスの一部を提供しているが、プロセスをシームレスにするための技術を構築した。他のサービスと同様、同社は基本的に現地のプロバイダーとして顧客の代わりに雇用と給与を処理するが、企業自身のポリシーと現地の管轄区域のポリシー(休暇、解雇条件、産休などの領域で互いに大きく異なる場合がある)の整合性を確保した契約条件の適用が可能となっている。

「資金力のある競合企業もいくつか存在します。資金力があるということは大抵は適切なシグナルです」とOysterの投資を主導したEmergenceでパートナーを務めるJason Green(ジェイソン·グリーン)氏は語っている。「ですが、競争をリードする企業に賭けたいと思うなら、実行力に着目すべきです。今、私たちは実行力を発揮した実績のある企業に投資しています。ジャマウス氏は会社を設立し、それを売却した経験のある起業家です。彼は収益を生み出した実績があり、ビジネスを構築する方法に精通しています。しかしそれ以上に大切なのは、彼の仕事は使命感に支えられていることです。それはこの事業分野において、そして従業員にとって大きな意味を持つでしょう」。

カテゴリー:HRテック
タグ:Oyster資金調達リモートワーク移民

画像クレジット: Tara Schmidt / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

ドローンソリューションによる建設・電力・エネルギー業界DXを推進するテラドローンが15.1億円調達

ドローンソリューションによる建設・電力・エネルギー業界DXを推進するテラドローンが15.1億円調達

ドローンソリューションを通じた建設・電力・エネルギー業界などのDXを推進するテラドローンは2月15日、シリーズAにおいて、第三者割当増資および複数の金融機関などからの融資による総額15億1000万円の資金調達を発表した。引受先は、国際石油開発帝石、並ナントCVC2号投資事業有限責任組合(ベンチャーラボインベストメント、南都銀行100%子会社の南都キャピタルパートナーズ)。

調達した資金により、既存の点検・測量領域における顧客基盤の拡大、ドローン運航管理技術のさらなる開発に取り組み、業界全体の業務改善・コスト削減に貢献していく。

点検分野においては、オランダのグループ会社Terra Inspectioneeringが独自開発した、超音波検査機能搭載のUTドローンに関して、国内導入を本格化させていくという。UTドローンは、プラント内における貯蔵タンクや煙突、電力施設のボイラー、焼却炉の点検に活用可能としている。

また測量分野では、従来の約1/3の導入価格を実現した「Terra Lidar」を活用し、各顧客に適したソリューションを提供。また、計測したデータを一括解析し、解析時間を大幅短縮するSaaS事業「Terra Lidar Cloud」のさらなる充実を図る。

運航管理分野では、ドローンの社会実装が進展する中、空の産業革命を見据え、複数台ドローンの安心安全な自律運転を可能とするプラットフォーム技術、UTM(無人機運航管理システム。Unmanned Traffic Management)の開発をさらに拡充していく。2020年開催「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会(第14回)」における「空の産業革命に向けたロードマップ2020」において、2022年度までにレベル4(有人地帯での目視外飛行)の実現が掲げられており、これをにらんだものとなっている。

2016年創業のテラドローンは、東京本社含め、全国に拠点を構え、海外においても欧州・東南アジアを中心に事業展開する、世界最大の産業用ドローンソリューションプロバイダー。2020年度は増収増益を達成、海外法人含めた連結ベースでは約20億円の売上となる見込み。

日本では大手ゼネコン・建設コンサルなどからの案件を中心に、世界でもトップクラスとなる1500件以上のドローン測量/点検実績を持つという。現在、測量分野では独自技術による高精度かつ大幅な低価格化を可能とした「Terra Lidar」(特許取得済)を提供。

点検分野では、海外グループ子会社で欧州の大手オイル&ガス会社を中心に200件以上の実績を持つTerraInspectioneeringと連携し、特許取得済みのUT(超音波探傷検査)ドローンを用いた検査技術を導入。運航管理分野では、JAL、KDDIなどと共同でドローン社会の実現に向け運航管理プラットフォーム「Terra UTM」の開発を行っている。

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微生物発酵技術で作られた代替肉をNature’s Fyndが米国で販売開始

イエローストーン国立公園の原野で発見された微生物から生み出した新しい食品を提供するフードテクノロジー企業Nature’s Fynd(ネイチャーズ・ファインド)は、同社初となる製品の予約販売を開始した。

乳製品ではないクリームチーズや、動物の肉を使わない朝食用パテを売りにしているNature’s Fyndは、Al Gore(アル・ゴア)氏のGeneration Investment Management(ジェネレーション・インベストメント・マネジメント)や、Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏が出資する投資ファンドであるBreakthrough Energy Ventures(ブレイクスルー・エナジー・ベンチャーズ)などの本格的な投資家を引きつけることに成功している。同社は前回の最終ラウンドの資金調達で8000万ドル(約84億4000万円)を調達した。

最近ではさまざまなバクテリアや菌類、植物を使って肉の代替品を作る革新的な製品が続々登場している。Nature’s Fyndはその波に乗る企業の1つだ。2020年、代替肉を開発している企業に投資された額は合計で10億ドル(約1055億円)を超えた。投資家はこの業界への関与を緩める気配がない。

従来の朝食製品に代わる、動物性を含まず遺伝子組み換えでないFy Breakfast Bundle(ファイ・ブレックファスト・バンドル)の発売は、市場参入を目指すNature’s Fyndによる最初の商業的な試みとなる。

同社によると、この限定発売のバンドルは14.99ドル(約1580円)+送料で販売され、米国の48州で購入できるという。

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Nature’s Fyndの製品は、同社の主任科学者がイエローストーン国立公園周辺の微生物を調査中に発見したバクテリアを利用する発酵技術を用いて作成したものである。

Nature’s Fyndは、発見した微生物の回復力と効率性を高く評価しており、従来の畜産に必要な土地、水、エネルギー資源のごく一部のみを利用し、より持続可能な生産プロセスを実現するという。

「私たちは、より少ない資源でより多くのことを行う方法が見つかると考える楽観主義です。当社の革新的な液体・空気表面発酵技術を用いて、人々の身体に栄養を与え、来たるべき世代のために地球を育む持続可能な食品の数々を生み出しています。私たちは今回、初めての製品となるFy Breakfast Bundleを限定発売することで、この旅のスタート地点に立つことができ、本当に興奮しています」と、Nature’s FyndのThomas Jonas(トーマス・ジョナス)CEOは述べている。「私たちは消費者を徹底的に調査してきました。あらゆる場面でおいしい肉や乳製品の代替品を提供するFy Breakfast Bundle独自の汎用性が消費者に強くアピールすることはわかっています」。

Nature’s Fyndのトーマス・ジョナスCEO

カテゴリー:フードテック
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画像クレジット:Nature’s Fynd

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

互いの顔がパズルで隠されたところから始まるデートアプリを開発したJigsawが、約4億円の資金を調達

「反表面的」なデーティング(出会い系)アプリのJigsaw(ジグソー)が、270万ポンド(約4億円)のシード資金を調達し、米国での事業拡大に向け一歩先んじた。今回のラウンドは、オンライン・デーティング企業の潜在需要発掘を行うRelationship Corp(リレーションシップ・コープ)という会社が先導し、米国と英国の「主に」テクノロジー部門に投資するエンジェル投資家からの支援を受けている。

社名が示すように、Jigsawは出会いの化学変化を求めて他の独身者の写真をスワイプするという業務処理に、「表面的な要素を抑えた」体験を提供することで、少々謎めいた楽しみを追加する。

彼らの(特許を取得した)反表面的な仕掛けは、最初は策略じみているように見え、赤面してしまうかもしれない。これは文字通り、ユーザーの顔の上にデジタルジグソーパズルを重ね合わせ、対話を重ねるごとに徐々にピースが取り除かれていき、アプリ内であらかじめ設定された量のエンゲージメントを達成すると初めて顔が現れるというものだ。

アプリのFAQによると、写真にデジタルフィルターの類を使用することは禁止されており、「本当の」自撮り写真のみとなっている。そのため、可愛い猫耳などを追加したりすることはできない。

同社はまだいくつかのトリックを袖の下に隠しているが、将来の計画はその時が来るまで公開したくないようだ(そのアプリに例えて言うならば、今のところ同社の製品のロードマップは半分完成したジグソーパズルというところか)。

Jigsawは英国のスタートアップ企業で、最高経営責任者を務めるAlex Durrant(アレックス・デュラント)氏と、最高個人情報責任者のMax Adamski(マックス・アダムスキー)氏が、2016年に共同で創設した。彼らは当時、大学生の友人同士だった。数多くのデーティングアプリがあまりにも表面的であるため、人々が不満を抱いていることを発見した彼らは、2018年に仕事を辞めてプロジェクトに専念。2019年にパズルで顔を覆ったデーティングアプリを発表し、昨年11月には米国に進出した。

Jigsawは現時点で、これら2つの市場で約15万人以上の登録ユーザーを抱えており、米国では5万人が登録している。新しい資金が潤沢にある今、彼らは大西洋を越えて本格的な事業展開に乗り出そうとしている。

デュラント氏によると、チームは今後の6カ月間に米国で50万人のユーザーを獲得することを目標にしているとのこと。米国のデーティングアプリでは、表面的なスワイプが少ない傾向にあるため、Jigsawにとって参入の勝算があると彼らは考えている。

「私たちは頭がおかしいわけではないので、人の顔にパズルを重ねたほうがよく見えると思っているわけではありません。パズルは表面的なデーティング業界に向けて私たちが立てた中指です」と、デュラント氏は言う。「パズルはあなたが仰るように、ユーザーが外見を超えてお互いを見られるように、そして、より有意義で持続的な相互作用を推進するために存在しています」。

現在のところ、Jigsawの顔を覆う仕掛けは、16個のピースで構成されたパズルによるものだ。全ての写真は、まず「こっそり覗かれるように」1つのピースが取り外されるところから始まる。そして誰かがその写真を気に入ると(マッチングが成り立つと)もう1個のピースが取り除かれるので、2つのピースが開いた状態でチャットが始まることになる。

さらにお互いがメッセージを交換するごとにパズルのピースが取り除かれていき、最終的には全てのピースが消えて顔が完全に明らかになる。うまくいけば、その時点で会話が途切れることもないだろう。

「お互いに6つ以上のメッセージ(合計12個)をかわすことが、有意義な会話には最低限必要であると我々は考えています」と、デュラント氏は言う。「そのため、現在のジグソーパズルは、7回のメッセージが交換されると(合計14個のピースが取り除かれると)、その下にある顔が完全に見えるようになっています。この数字はテストによって決められたもので、今のところユーザーにとってのスイートスポットとなっています」。

デーティングアプリのユーザーが、心ないスワイプをせず、より多くのチャットをかわすように、顔のビジュアルを覆うというコンセプトは、Jigsaw独自のものではない。「デーティングアプリ疲れ」を軽減するために「公開を遅らせる」仕掛けを施したアプリはたくさんある。別のアプリであるINYNは、プロフィールが表示される速さを制限している。

また、チャットをするまでユーザーの写真をぼかしてしまうアプリには「Taffy(タフィ)」がある。イスラム教のマッチングアプリ「Veil(ベール)」では、「デジタルベール」機能(不透明フィルター)が用意されており、相互にマッチするまで男女ともすべてのプロフィール写真に適用される。

Willow(ウィロー)」のような他の「反表面的」なデーティングアプリは、Q&A形式のアプローチを試みており、互いの質問に答えていくと、さらに多くの写真が見られるようになっている。このように、全てが明らかになるまで時間が掛かるように作られたアプリは数多い。

しかし、Jigsawはこのような「ゆっくりと明らかにする」形式に、おそらく最も視覚的にわかりやすい(そしてゲーム的な)仕掛けを採用した。それは直ぐに明らかになるものの、しかし「恋は盲目」になりがちな他のデーティングアプリの平均に比べれば、ゆっくりと明らかになることは確かだ。

我々が確認したところによると、そのシード投資はユーザーを買うためでもないようだ。

Relationship Corp. は、デーティングアプリにユーザー獲得/トラフィック生成サービスを提供しており、投資先にもそれらのアプリが含まれる。だが、デュラント氏によれば、Jigsawの場合はストレートなエクイティ投資であるという。つまり、その成長する能力に自信を持っているようだ。

「彼らは非常に地味だが、業界ではよく知られています」と、デュラント氏はシード投資を先導した投資家について語る。「同社のCEOであるSteve Happas(スティーブ・ハパス)氏は、以前ProfessionalMatchを起ち上げた人物で、(投資の一環として)当社の諮問委員会のメンバーでもあります。私たちには彼らと協力してユーザーを獲得する選択肢もありましたが、そうではなく、彼らは私たちの内部チームを顧問としてサポートしてくれています」。

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画像クレジット:Jigsaw
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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Amazon上のFBA店を大量に買い漁るThrasioがさらに約790億円調達

Amazonマーケットプレイスのロールアップが快調に進んでいる。最近の動きとしては、このプラットフォーム上のサードパーティーセラーを整理統合する初期からの事業者であるThrasioが、小規模なセラーたちに規模の経済による良質な管理と成長を提供するという約束を掲げて、7億5000万ドル(約791億8000億円)の資金を調達した。評価額は30億ドル(約3167億3000万円)と40億ドル(約4223億円)の間、また、それより高いとも言われるが、広報担当者は「100億ドル(約1兆558億円)に満たない」としか述べていない。

この投資は同社の既存の投資家であるOaktreeとAdventがリードし、以前からの匿名の投資家たちも参加した。資金支援者たちのリストにはPeak6、Western Technology Investment、Jason Finger(ジェイソンフィンガー)氏(初期のフードデリバリーSeamlessの共同創業者)らがいる

Thrasioはその資金を、Amazon FBAを利用しているサードパーティーセラーをさらに多く買収することに投じるつもりだという。FBAとは「Fulfilment By Amazon」の頭字語で、セラーは商品をAmazonに送るだけで、その後の販売、発送、決済処理をすべてAmazonがやってくれるというものだ。

「Thrasioは例外的な成長を続けています」と、Carlos Cashman(カルロス・キャッシュマン)氏とともに同社を設立したJoshua Silberstein(ジョシュア ・シルバースタイン)はいう。「Thrasioは例外的な成長を続けています」とCarlos Cashmanと共に会社を設立し、共同で指揮しているJoshua Silbersteinは述べた。「過去2カ月で、我々は毎日150万ドル(約1583億7000万円)の収益を得ています。Thrasioは毎週2、3件の取引を行っています」。

Thrasioは今日まで100社近くのFBA企業を買収したが、その過程で6000社の候補企業を評価し、1万4000種類の商品カテゴリーの、それぞれ売上最上位の製品を検討してきた。

6000は大きな数字に聞こえるかもしれないが、ある推計によると、Amazon上には約500万のサードパーティーセラーが存在しており、2020年だけでも100万以上のセラーが参加、現在も指数関数的に増加している。

チャンスの大きさと、Amazonが証明したeコマースの世界におけるスケールメリットが、現在、スタートアップが多くのセラーをロールアップ(大量買収)しようと狙っている理由だ。

Thrasioによる7億5000万ドルの資金調達は、全額がVCによる株式投資だ。同社の広報担当者によると、評価額は公表しないが、2021年1月に5億ドル(約527億4000万円)の融資ラウンドを完了したときには、評価額30億ドルと報じられた。

しかしそれは負債のラウンドであるため、この度の株式投資にそのまま当てはまる評価額とは限らない。2つを並べることも、間違っているかもしれない。合理的な推計としては、それは30億ドルと40億ドルの間で、それより大きい可能性もある、という表現になる。

「それより大きい」と表現できるのは広報担当者がそう言ったからだけではなく、eコマースにおけるこの特殊な分野が現在、特に過熱しているからだ。

Thrasioのニュースが入ってきたのは米国時間2月9日午後であり、それはライバルのBrandedが1億5000万ドル(約158億2000万円)の資金で独自にロールアップ事業を立ち上げたと報じてからわずか数時間後だった。Brandedの場合、重要なのは共同創業者に、ヨーロッパの資金量豊富なVC企業Target Globalが含まれていることだ。

しかもThrasioとBrandedには、Berlin Brands GroupSellerXHeydayHeroesPerchといった既存のライバルがいる。彼らが、将来性のある小さなサードパーティーのマーチャント(商業者)を買うために集めた資金は、ゆうに10億ドル(約1054億7000万円)を超えるだろう。

Thrasioによると、同社の資金調達はすばやく進み、既存の株主たちが11.1%希釈され、株と負債で1株あたり1.75ドルを調達したことになる。

Thrasioのプロダクトには、Thrasioというブランドはつかない。しかし私の推測では、Thrasioもそのライバルたちも、もっと高品質を示唆するような鋭角性を狙っているのだろう。現在、これらセラーの一部のいい加減な命名は避けると思われるが、とにかく今後を見守りたい。

同社が保有するブランドの例としては、深部マッサージのVybe Percussionや、光治療のCircadian Optics、スキンケアのSdara Skincareなどが挙げられる。

競合製品の中には本当に優れた製品もあるため、Thrasioは買収したブランドのマーケティングとアナリティクスに力を入れると述べ、「有名ブランドと競合し、プロダクトへの信頼をすばやく獲得して、消費者が信頼して日常的に使用するアイテムに育てたい」という。

FBA企業をロールアップしていく熱病のようなペースは、いかにもバブルを思わせる。特に、若いスタートアップ各社はどこも、Amazon上のセラーを買い上げて整理統合していく戦略が利益を生むことをまだ実証していないからだ。

唯一、利益を報告しているロールアップ企業であるBerlin Brands Groupは、利益は同社が新たに作ったさまざまなサードパーティーセラーから得ており、買収した企業からではない。昔の有名ブランドが、ロールアップで息を吹き返した例もまだない。

Thrasioは今まさに、投資で大きくなるか、ならないかの瀬戸際にいる。2018年に創業されたわずか3歳の企業だが、この分野では最も古く、実績もある企業になっている。

「10年後には、全方向的なリテールが消費者製品全体のエコシステムのバックボーンになります。今は、その創生期です。毎日のように市場構造そのものが進化し、変形しています。私たちのバランスシートは、昨日までの戦いに勝つために作られてはいません。1つの業界の、地殻変動的な変化にともなって加速される商機を追うべく設計されているのです」とキャッシュマン氏は語る。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Thrasio資金調達Amazon

画像クレジット:Angela Kotsell/Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Hiroshi Iwatani)

オンラインチケット販売TIGET運営のgrabssが2.3億円調達、音声通話サービスTHISIS新開発

オンラインチケット販売「TIGET」運営のgrabssが2.3億円調達、音声通話サービス「THISIS」開発

grabss(グラブス)は、岩崎通信機を引受先とした第三者割当増資および既存株主数名への株主割当増資などによる2億3000万円の資金調達を発表した。

調達した資金は、経営基盤の強化、また岩崎通信機との共同開発事業、grabssの得意分野であるWebRTC技術を活用した新音声通話サービス「THISIS」(ディスイズ)の立ち上げ、オンラインチケットサービス「TIGET」(チゲット)のマーケティング施策のほか、開発、販売体制の充実など事業強化にあてる。

grabssと岩崎通信機は、2019年12月より、岩崎通信機のアプリ不要の国産ウェブ会議システム「Waaarp」をはじめとするWebRTC関連製品の共同開発を実施しているという。

今後はさらに両社の強みを融合させ、アフターコロナを見据えた様々なサービス展開により、日本企業のDX推進に貢献していくとしている。

音声通話サービス「THISIS」

THISISは、WebRTC技術を使った高品質な音声通話サービス。利用者は、電話番号の代わりに専用URL(THISIS ID)を取得することで、ウェブブラウザー経由で通話を受けられる。

また発信者は、スマートフォンやPCのウェブブラウザーにTHISIS IDを入力するだけで通話の発信が行える。THISISを使えば、プライベートの携帯番号やLINE IDを知られることなく、自分のスマートフォンで通話が行える。発信者は、電話などの回線契約、会員登録、友達申請、専用アプリなどは一切必要ない。

オンラインチケット販売「TIGET」運営のgrabssが2.3億円調達、音声通話サービス「THISIS」開発

THISISアプリでTHISIS IDを公開しておくと、誰でもこのIDに対して通話の発信を行える。インターネットを介した通話により、通信料以外の料金も発生しない。カスタマーセンターや飲食店、各種予約窓口として、THISIS IDをウエブサイトや名刺などに掲載すれば顧客と通話可能としている。

営業時間や休業日に合わせた着信可能日時の設定や、通話に出られない場合のメッセージ表示機能も実装している。

THISISアプリ同士の通話のほか、転送も可能。内線通話のように使うことができ、ニーズに合わせた連絡網の構築も行えるとしている。

grabssは、今後、グループ着信やチャットなど、コミュニケーションツールとしてのさらなる機能充実を図り、フリーランス、個人事業主、中小企業を中心に利用者獲得を進めていく。

オンラインチケット販売サービス「TIGET」

grabssは、オンラインチケット販売プラットフォームサービス「TIGET」を2013年より展開。ライブアイドルや、芸能人、アーティストのライブイベントのチケット販売をオンライン化することにより、多くのファンにイベント情報を提供してきたそうだ。

grabssは、オンラインライブイベントの強化を新たな目標と定め、オンラインイベント独自の魅力的な機能の開発や大規模配信イベントの安定的な開催の実現への投資を進めるという。

オンラインチケット販売「TIGET」運営のgrabssが2.3億円調達、音声通話サービス「THISIS」開発

2012年10月設立のgrabssは、TIGETのほか、WebRTCで構築した少人数向け無料ビデオ会議サービス「BIZMEE」(ビズミー)などを提供。

BIZMEEは、サーバーを経由せず、ユーザー同士が直接接続しビデオ会議を行える。顧客から「自社専用のカスタマイズをし、自社のドメインでビデオ会議として利用したい」といった要望があり、法人向けカスタマイズによる専用会議室の導入をこれまで以上に進めていくとしている。

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秘密計算・AI解析技術の研究開発を手がけるEAGLYSが約8億円調達、秘匿データ連携・解析強化

秘密計算・AI解析技術の研究開発を手がけるEAGLYSが約8億円調達、秘匿データ連携・解析強化

秘密計算およびAI解析技術に関する研究開発を手がけるEAGLYS(イーグリス)は2月15日、第三者割当増資による総額約8億円の資金調達を発表した。引受先は、Emellience Partners、椿本チエイン、テックアクセル1号投資事業有限責任組合(テックアクセルベンチャーズ)、セグエグループ。

EAGLYSは、あらゆるデータを安全に活用できる社会の実現に向け、「AIアルゴリズム設計・解析技術」と「秘密計算を中心としたセキュアコンピューティング技術」をコアの強みとして事業を推進。今回調達した資金により、「サービスの社会実装の加速に向けた株主体制構築による販売促進・事業成長」「DataArmor(データアーマー)シリーズの追加機能開発、データ利活用領域での販売力強化」「クラウド上でのデータ連携・分析サービス、リモートAI解析サービスの垂直立上げ」を中心に強化する。

「DataArmor」シリーズ

EAGLYSは、企業のデータ利活用におけるセキュリティ・プライバシーを強化するソリューションとして、秘密計算を中心としたセキュアコンピューティング技術によりデータを秘匿化したまま共有・検索・分析やAI解析が可能なDataArmorシリーズを展開。

2020年1月にデータを秘密計算技術により常時秘匿化したまま共有・検索・分析が行えるプロキシー型ソフトウェア「DataArmor Gate DB」をローンチ。データベースのセキュリティ高度化や企業間のセキュアなデータ利活用・分析環境の構築を推進してきた。

またAIアルゴリズムを秘匿化できる「DataArmor Gate AI」、クラウド上のバーチャルセキュアルーム「DataArmor Room」の開発・提供に取り組み、グループ企業内や企業間におけるセキュアなデータ利活用環境の構築や協業検討を積極的に進めている。

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AI解析サービス

AI解析サービスでは、精度・頑丈性が高い独自のAIアルゴリズム設計・解析技術やデータ生成技術を強みに、企業のDX構想策定からAI設計・開発までを支援。今後も強みである画像解析、異常検知・故障予測、品質管理などのAI解析技術を中心にDX実現に取り組んでいく。

リモートAI解析ソリューション

リモートAI解析ソリューションは、クラウド上での機密データ・パーソナルデータの保護、リモート環境でのAI解析・データ分析に向けた環境構築サービス。

コロナ禍を受け、高いセキュリティレベルを維持しつつ、リモートおよびオンラインで生産性の高いデータ分析を実施したいというニーズは高まっているという。

EAGLYSが強みを持つ解析環境の仮想化技術と秘密計算技術を組み合わせ、クラウド上にセキュアなバーチャル空間を構築することでリモート環境下でのセキュアなAI解析・データ分析の実現に取り組んでいる。

2016年12月設立のEAGLYSは、統計学や機械学習、計算機科学、応用数学や高機能暗号・秘密計算など、各専門領域や複合領域に専門を持つ多国籍の博士メンバーからなる研究開発スタートアップ。

「あらゆるデータを安全に利活用し、価値に変える」という事業コンセプトで、DXに重要なAIとデータセキュリティの2軸を柱としており、AIアルゴリズム設計・解析技術と秘密計算を中心としたセキュアコンピューティング技術の両軸で企業のDX・データ利活用・事業創出を支援できることを強みとしている。

事業として、AI構築・研究支援をはじめ、セキュアなリモート分析・AI解析環境や企業間データ連携・外販基盤の設計・構築を支援。セキュアコンピューティング技術を活用した自社製品DataArmorシリーズもソフトウェア提供を開始し、日本を代表する大手企業各社と協業を進めているそうだ。

EAGLYSは今回資金調達を通じ、安全にデータを利活用できる社会の実現に向けたサービス機能の強化、セキュアなデータ利活用環境の構築を推進していく。

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カテゴリー:セキュリティ
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トップクリエイターから学べる動画プラットフォーム「your school」を手がけるTranSeが1億円調達

トップクリエイターから学べる動画プラットフォーム「your school」を手がけるTranSeが1億円調達

TranSeは2月15日、プレシリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による総額1億円の資金調達を発表した。引受先は、PKSHA SPARXアルゴリズム1号、W ventures、Skyland Ventures、岩崎翔太氏、大島礼頌氏。トップクリエイターから学べる動画プラットフォーム「your school」(ユアスクール)への事業投資および積極的な採用活動に取り組む。

your schoolは、エデュテインメント(Edutainment)領域の動画プラットフォームとして、TranSeが2020年10月に立ち上げた新規事業。各分野で活躍するトップクリエイターのストーリー・スキル・価値観を通した、高い体験価値の学びと選択肢の広がりを提供するという。

今後は事業投資および積極的な採用活動に取り組み、ビジョン「『動画』で個を拡張する」の実現を目指すとともに、動画という手段を起点とした個のエンパワーメントに引き続き取り組んでいく。

2018年4月設立のTranSeは、累計会員数1600名を超える国内最大級の動画コミュニティを主軸としたスタートアップ。同社取締役CSOおよびYouTubeクリエイターの大川優介氏を起点としたコミュニティ「TranSe Salon」事業、動画制作のパーソナルトレーニング「OneSe Personal」事業に加えて、your schoolを運営している。

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ワインのレコメンドとマーケットプレイスアプリ「Vivino」が約164億円調達

ワインに興味がある人なら誰でも一度はVivino(ヴィヴィーノ)を頼って購入すべきワインを探したことがあるだろう。人々がより上質なワインを楽しめるよう、2010年よりサービスを提供している同社とそのアプリだが、今回のシリーズDラウンドでは1億5500万ドル(約164億円)の調達に成功した。この調達額はこれまでに同社が調達してきた合計額の倍以上に当たる。2018年には2900万人だったユーザーベースが5000万人にまで成長した現在、Vivinoは巨額な資本を注入して同社のコア技術とパーソナライズドレコメンデーションエンジンを大幅に強化するとともに、主要な成長市場での同社の存在感を世界的に拡大したいと考えている。

Vivinoはさまざまな面で興味深い企業だが、特に注目すべきなのは同社の設立当初のビジョンと現在のビジョンがほとんど変わっていないという点だ。創設者でCEOのHeini Zachariassen(ハイニ・ザチャリアッセン)氏は筆者とのインタビューにて、同アプリが、目まぐるしく変化するスタートアップの世界の中ではごく当たり前の大きな転換というものに、いかに無縁であるかを語ってくれた。

「私が10年前にプレゼンをした際の資料を見返してみると、『ワインボトルをスキャンしてから購入しましょう』というようなことが書いてありますが、これは誰が見ても理に適っていますし、だからこそほとんど何も変わっていません」と同氏はいう。

「アプリを作るのは、あのプレゼン資料を作るよりもかなり難しいですよ」と同氏はおどけるが「でも何も変わっていません。このモデルであるべきだということは常にわかっていました」と振り返る。

そのコアバリューこそが、人々が同社のアプリをダウンロードして使用する理由である。レストランでワインメニューに目を凝らしている時や、ワインショップに並ぶワインボトルを眺めている時など、アプリを使用するきっかけとなるシナリオは似たり寄ったりだ。筆者自身は、「ワイン、おすすめ、アプリ」などと検索した際にApp Storeで偶然見つけたVivinoをインストールしたのだが、数分後にはラベルやメニューの写真を撮っていた。最初はおすすめのワインから始まるが、以来、自分の好みを入力していくうちによりパーソナライズされた提案を受けられるようになった。

画像クレジット:Vivino

Vivinoが世界中の大小の業者と築き上げたパートナーシップのおかげで、同社のマーケットプレイスでは気に入ったワインをアプリ上で直接購入することが可能だ。ワインの販売元がユーザーにどのような対応をしたかは、アプリの提供元であるVivinoの評価に直接つながるため、パートナーに関しては高い基準を維持するよう努めているとザチャリアッセン氏はいう。

より幅広い地域のより多くの業者と関係を築いていくということは、主要な成長市場に対応するための拡大目標の1つでもあるが、同社はレコメンデーションエンジンの改善と拡大にも巨額の資本を投入する予定だ。Vivinoが10年かけてほぼゼロから作り上げたワインデータベースはもとより、さまざまな構成要素に大きな改善が施されることになる。

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「商用化される前の時点で直面した最も高いハードルは、やはりデータの構築作業でした」とザチャリアッセン氏。「集計されたデータはどこにもなかったため、まったくゼロの状態からデータを作り上げる必要がありました。ワインボトルの写真を撮って、誰かがデータを入力するという作業を毎日繰り返しました。今では15億枚のワインラベルの写真がありますが、この大量のデータを構造化された方法で構築するためには10年の歳月がかかったわけです」。

ワインはロングテール市場である傾向が著しく、個人の好みが強く表れる分野であり、同社の経験からしてもそれが今後大きく変わることはほとんどないとザチャリアッセン氏はいう。需要と供給の両面において地域に密着したVivinoのマーケットプレイスのアプローチはこの分野のニーズへの対応に適しているが、これに対するVivinoの仕事はまだ始まったばかりだと同氏はいう。これまでの控えめな資金調達額と比べると大規模なラウンドとなった今回だが、なぜこのタイミングなのかと尋ねてみた。

Vivinoのワインアプリ、サンフランシスコにて(画像クレジット:Nader Khouri 2018) 

「我々はある意味で、臨界点に達したと感じています。2020年は大規模な成長を遂げ、【略】実際に売上高は2億5000万ドル(約264億円)にまで達し、このユニットエコノミクスで考えると、当社は非常に順調と言えます。しかし同時に、弊社は他のマーケットプレイスとは物事の順序が異なります。たとえばUber(ウーバー)の場合、市場に参入してマーケティング活動や需要を構築するために多くのお金を使い、その上で供給を構築するということになります。我々の場合は需要がすでに存在するという時点で異なります。世界中にすでに5000万人のユーザーがいるため、我々はその需要に従うという形になるのです」。

「しかしネックなのは、弊社は現在17か国でワインを販売する200人規模の企業だという点です。つまり我々はどの市場でも比較的手薄になっています。このモデルで事業がうまくいくことはわかったから、それぞれの市場にもっと多くのリソースを投入して、実際に各市場にもっと深く入り込んでいこうと考えたわけです」。

ザチャリアッセン氏によると、同社はこれまでマーケティングにあまり費用を費やしてこなかったとのことで、今後は有機的な成長を促すためにより多くのコストをかけていくつもりだという。また、ユーザーは既存のアプリに十分満足しているようであるものの、「まだまだ多くの可能性を実現する」ため、プロダクトエンジニアリングに力を入れていきたいと同氏はいう。

Vivinoはワインのローカルな魅力を維持しながらも、オンライン上のグローバルなマーケットプレイスのメリットを提供するアプローチにより、これまで長い間地域の専門業者や個人のワインセラーなど特定の情報のみに限定されていた製品カテゴリーの近代化に取り組んできた。そして今、同社が見出した水面下に隠れた巨大な需要に取り組んでいくわけだが、今回の新たな資金調達はその目的の実現に向けて大いに役立つことだろう。

1億5500万ドルのシリーズDラウンドは、スウェーデンのKinnevik(キネヴィック)が主導し、Sprints Capital(スプリンツ・キャピタル)、GP BullHound(GPブルハウンド)の他、シリーズAを主導した既存投資家のCreandum(クリーンダム)も参加している。これにより同社の資金調達総額は2億2100万ドル(約233億円)となる。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Vivino資金調達ワイン

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Dragonfly)

エレベーターホール向けデジタルサイネージ「東京エレビGO」を手がける「東京」が3.6億円を調達

エレベーターホール向けデジタルサイネージ「東京エレビGO」を手がける「東京」が3.6億円を調達

エレベーター向けスマートディスプレイを設置し、広告配信事業を行う「東京」は2月15日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による総額3億6000万円の資金調達を発表した。引受先は、リード投資家の三菱地所、XTech Ventures(XTV)およびエンジェル投資家。

調達した資金は、主に機器設置費用・営業費用に充当し、より多くのオフィスビルの物件価値向上を目指す。また、放映コンテンツ開発および他メディアとの連携にも注力し、広告視聴者にとって有益なコンテンツ配信を進めていく。今後、オフィスワーカーが情報に触れるタッチポイントを増やし、成長産業であるデジタルサイネージ業界をより一層活気溢れるものとすべく邁進していくとしている。

2017年2月設立の東京が手がける「東京エレビGO」は、エレベーターホールに独自開発のデジタルサイネージを展開する「無人コンシェルジュ」サービス。エレベーターホールに配置したスマートディスプレイを通じて、快適性向上のためのコンテンツ放映やビル管理者からのお知らせを配信可能。東京都心部のオフィスビルを中心に合計700台以上設置しており、2021年12月末までに累計2000台の設置を目標としているという。

東京エレビGOは、端末費、設置工事費や保守などの運用費は無料としており、付加的な設備や長時間の工事なども不要。ウェブベースのインターフェイスにより誰でも手軽にコンテンツを配信・管理できるとしている。

また同社は2019年11月、三菱地所とspacemotionを設立し、日本初となる「エレベーター内プロジェクション型メディア事業『エレシネマ』」を展開。エレベーター外・エレベーター内の両面から顧客体験の向上を目指している。

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カテゴリー:IoT
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確定拠出年金プロバイダーのHuman Interestが約58億円の資金を調達、18カ月ほどで約10倍に成長

中小企業(SMB)向けの確定拠出年金401(k)プロバイダーであるHuman Interest(ヒューマン・インタラスト)は米国時間2月11日、シリーズCで5500万ドル(約58億円)の資金を追加したと発表した。

このニュースにはいくつかの注目される理由がある。1つ目は、サンフランシスコを拠点とする同社が2020年に2つのトランシェですでに5000万ドル(約52億5000万円)を調達していたこと。2つ目は、既存の支援者の大半が、新たに投資したNEAのスピンアウトであるNewView Capital(ニュー・ビュー・キャピタル)に加わり、Human Interestにさらなる資本を投入したことだ。

そして3つ目、今回のエクステンション(12月にクローズしているが最近やっと発表された)で、Human Interestの評価額は、数カ月前に行われた前回の資金調達から事実上倍増したことだ。

CEOのJeff Schneble(ジェフ・シュネブル)氏は、会社の現在の評価額を明らかにしなかったが、次回のラウンドで資金が「過去と同じステップアップを遂げた場合」、Human Interestは「ユニコーンになる可能性がある」と述べた。

今回のエクステンションで、Human Interestは2015年の創業以来、総額1億3670万ドル(約143億6000万円)を調達したことになる。

Human Interestの成長は目を見張るものがある。シュネブル氏によると、2019年初頭には月に約10万ドル(約1050万円)の純新規収益を追加していたが、現在では月に100万ドル(約1億500万円)以上の純新規収益を追加しているという。このスタートアップ企業の目標は、年末までに月間収益が200万ドル(約2億1000万円)を超えることだ。

「私たちは過去18カ月ほどで約10倍に成長しましたが、ここで止まるつもりはありません」と、シュネブル氏はTechCrunchに語った。「我々の目標は、次の3年で1億ドル(約105億円)以上のARR(年間経常収益)を達成し、3~4年後には株式公開できるようになることです」。

創業以来、Human Interestは全米の3000社近い企業が8万人以上の従業員に退職金口座を提供するのを支援してきたという。

新型コロナウイルス感染症の流行という困難は、同社のビジネスに興味深い変化ももたらした。2020年以前、同社の顧客の約85%が初めて401(k)を利用する顧客だったが、2020年はその数が約50%に減少した。これは、より多くの企業が既存のプランからHuman Interestに移行したことを意味する。

「景気後退と多くの不確実性により、売り込みはより容易になりました。我々がより負担の少ない金額の商品を提供することができるからです」と、シュネブル氏はいう。

Human Interestによれば、これはテック系のスタートアップ企業から法律事務所まで、歯医者から犬の散歩代行業者まで、製造業から非営利の社会正義団体まで、「あらゆる種類の中小企業」に機能するという。同社の顧客には、サンフランシスコのベイエリアの電機会社、デンバーのピザチェーン、シアトルを拠点とするガソリンスタンドとコンビニエンスストアのチェーンなどが含まれている。

シュネブル氏は、設立から数年しか経っていないにもかかわらず、同社をスタートアップとは考えていないという。

「私たちは、何十年も存続し、株式公開が可能な本当に大きな会社を作りたいと思っているのです」と彼は言った。「もし会社を売ろうとしていたら、違うやり方をしていたかもしれません」。

Human Interestの従業員は、1年前の100人強から現在は約300人にまで増加した。2021年はエンジニアリングチームの規模を2倍にする予定だ。

先を見据えると、同社は単に「同じことをもっとやりたい」だけであると、シュネブル氏は語る。

「新商品は必要ありません」と、彼はTechCrunchに語った。「今やっていることをやるだけで、非常に多くの道があります。それで他から市場シェアを奪っているのです」。

Human Interestはまた、2020年にサードパーティのプロバイダーから社内に移行したプラットフォームのテクノロジー改善にも注力を計画している。シュネブル氏によると、同社はこの移行により過去6カ月間で利幅を2倍に拡大するとともに、プラン管理者や参加者への取引手数料を削減したという。

「金融サービスの商品は、回を重ねるごとに悪くなっていくことがよくあります」と、シュネブル氏はいう。「私たちはその反対になりたいと考えています。2021年は私たちのプラットフォームを、できるだけすばらしいものにすることに焦点を当てています」。

Human Interestによると、同社は2020年に退職プランの管理を簡素化し、「退職後の貯蓄をあらゆる職種の人々が利用しやすいものにする」ための取り組みとして、Complete(コンプリート)とConcierge(コンシェルジュ)という新しいサービスも開始したという。

「既存の大手企業は、中小企業にとって無理なく払える価格で利用しやすいプランを作る方法を見つけられていませんでした」と、シュネブル氏は語った。「私たちは、この国の退職危機を恒久的に打開するためには、何か違うことをしなければならないと考えていました」。

401(k)の分野は確かに成長している。サンマテオを拠点とするGuideline(ガイドライン)という会社は、中小企業にも焦点を当てており、2020年7月にはAl Gore(アル・ゴア)元米国副大統領のGeneration Investment Management(ジェネレーション・インベストメント・マネジメント)とGreyhound Capital(グレイハウンド・キャピタル)が共同で先導したシリーズDラウンドで、8500万ドル(約89億円)の資金調達を発表。後にAmerican Express Ventures(アメリカン・エキスプレス・ベンチャーズ)も投資家として加わったことが明らかになった。

20億ドル(約2010億円)以上の運用資産を持ち、Plaid(プレイド)も支援しているNewView Capitalは、新たなHuman Interestの投資家として、後期ステージの資金調達と「重要な運用サポート」のマッチングを目指している。

NewViewの創業者でありマネージングパートナーであるRavi Viswanathan(ラビ・ヴィスワナータン)氏は、Human Interestが中小企業のために401(k)を提供するためのプロセスと管理を簡素化し、「ソフトウェアと自動化により、より低い手数料で提供できる」ことに感銘を受けたと述べている。

NewViewのチームは、より多くの雇用者が401(k)を提供できるようにしたいという同社の想いにも惹かれた。Ankit Sud(アンキット・スッド)氏とChristina Fa(クリスティーナ・ファ)氏はブログ記事の中で次のように書いている。

「Vanguard(バンガード)やFidelity(フィデリティ)のような従来の401(k)プロバイダーは、大企業向けのプランを設計し、価格を設定しています。管理上の負担と高額な手数料のため、中小企業のオーナーには手の届かないものとなっています。実際、中小企業は労働人口の3分の1を雇用しているにもかかわらず、従業員に401(k)プランを提供している会社はその10%に過ぎません。Human Interestは、現在も退職金プランを提供していない90%の中小企業に、シンプルで無理なく負担できる401(k)プランをもたらすことができます」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Human Interest資金調達401(k)

画像クレジット:Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

米国の転職者の確定拠出年金を集約するCapitalizeがシリーズAで13.1億円を調達

米国で会社を辞めたことのある人なら、確定拠出年金の401(k)をそのまま置いてきたかもしれない。

そしてもしあなたが多くの米国人と同じく数年ごとに転職しているなら、複数の401(k)プランが複数の会社に分散してそれぞれ処理されている可能性が高い。

多くの人が分散した口座をまとめる手間をかけようとはしないので、年とともにお金を失っているおそれがある。

そこへ登場したのがCapitalize(キャピタライズ)だ。ニューヨーク拠点のスタートアップは、まさにこの問題を解決するべく、散逸した401(k)口座を見つけ、IRA(個人退職年金)を設定して年金プランをまとめるところまで、本人が手間をかけずにできるプラットフォームを提供する。無料で。

この会社は、プラットフォームを拡大するためにシリーズAラウンドで1250万ドル(約13億1000万円)を調達した。Canapi Venturesがラウンドをリードし、既存出資者のBling Capital、Greycroft、RRE Ventures、およびWalkabout Venturesも参加した。

オーストラリア出身のGaurav Sharma(ガウラヴ・シャルマ)氏は、金融業界で長年仕事をした後に同社を共同設立した。

「私が投資を楽しんでいたとき、いろいろと内面を探るうちに401(k)市場全体にあるさまざまな問題を見つけました」と同氏は振り返った。「その1つは、個人の年金口座が雇用者と紐づけられていることです」。

シャルマ氏によると、転職する人の約3分の1が、401(k)プランを現金清算して付随する違約金を払っているという。

「別の数百万人は、長年放置したままにしています。それはお金の移動手続きが複雑だからです」と彼は言った。

シャルマ氏は、CTOのChris Phillips(クリス・フィリップス)氏と2人で2019年後半にCapitalizeを設立し、2020年3月にはBling Capitalのリードで200万ドル(約2億1000万円)のシードラウンドを完了した。そして2020年9月に正式スタートしたこのロールオーバープラットフォームは、以来1000万ドル(約10億5000万円)近くの資金を扱ってきた。

「2020年夏、パンデミックの影響で多くのレイオフがありました」とシャルマ氏は語った。「だから、ベータテスト中の早期ユーザーの多くは、レイオフにあった人たちでした」。

私はCapitalizeの提供するものが、他のファイナンシャルアドバイザーと何が違うのか、気になって尋ねてみた。シャルマ氏によると、違いはそのプロセスと資格要件にあるという。

「アドバイザーは手続きの一部を助けてくれますが、やり方はまったくの手作業です。その点、私たちは、消費者が退職年金を見つけまとめるのを手伝うオンラインプラットフォームを持っています」とシャルマ氏は語った。「しかも、アドバイザーを頼むためには数十万ドル(数千万円)の資産を持っている必要があります」。

それがシャルマ氏を動かした理由の1つだった。

「たとえ資産が500ドル(約5万2500円)でも50万ドル(約5250万円)でも、私たちはお手伝いします」と彼は言った。

上にも書いたとおり、Capitalizeのサービスは消費者にとって無料だ。サイトへ行けば、彼らが統合プロセスを引き受けてくれる。IRAを開設する必要があれば、それもプラットフォームが助けてくれる。

「IRAについては、フィンテックプロバイダーの商品と有名企業の商品とを比較できるようにしています」とシャルマ氏は説明した。もしCapitalizeが、フィンテックプロバイダーと関係を築いていれば、紹介報酬を受取る。これはNerdWalletやPlicygenius、Credit Karmaなどと同様のビジネスモデルだ。

そして、ユーザーがすでにIRAを持っている場合でも、Capitalizeは年金の統合を手助けする。

またCapitalizeは雇用主向けにも、辞めていく社員を支援するための「オフボーディング」サービスを無料で提供している。「転職のタイミングですばやくロールオーバー(資金移動)するため」だとシャルマ氏は語った。

「これは雇用者にとってもすばらしいことで、管理費用を節約し、受託者リスクを減らすことにもつながります」とつけ加えた。

Canapi VenturesのパートナーであるJeffrey Reitman(ジェフリー・ライトマン)氏は、43の銀行とLP(リクイディティ・プロバイダー)が参加している彼のフィンテックベンチャーファンドが、Capitalizeのチームとプラットフォームにいくつかの点で魅力を感じたと語った。

彼はまずシャルマ氏について、求人、会社構築、意思決定に関して「最高のアーリーステージCEOの1人」と評した。

Canapiでは、自社の副社長らと家族にCapitalizeが早期ベータだったころにサービスを試用させた。

ライトマン氏によると、プラットフォームは「魔法のように働いて手続きのストレスを大いに取り除いてくれた」と言っていたとのこと。

「そんなに良い反応を示す人が近くにいるということは、有望なサービスであることの証拠です。出資を決める後押しになりました」とライトマン氏はいう。

Capitalizeの「ミッション主導」アプローチにも魅せられているライトマン氏は、銀行とLPの約80%がIRAなどの年金商品を扱っていることを指摘した。

「その多くは本質的にデジタルなので、銀行が商品群をさらにデジタル化するために行おうとしていることと、Capitalizeができるだけ多くの人たちの摩擦を減らすためにやろうとしていることとの間には、たくさんのシナジーがあるはずです」。

将来に向けて、Capitalizeは新たな資金を使ってサービスの改善と合理化を行い、テクノロジーへの投資をつづけていくつもりだ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Capitalize資金調達401(k)

画像クレジット:lvitma / Shutterstock

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nob Takahashi / facebook

3Dプリント、ロボッティクス、自動化で手頃な価格の家を建てるMighty Buildingsが約42億円調達

その昔、家を3DプリントするというのはSFだった。

近年住宅は、どんどん高価になっている。特にサンフランシスコ周辺の値上がりは極端だ。そこでもっと手頃な価格の住宅を建設しようとテククノロジーの活用に創造的努力を振り向ける企業が出てきた。

オークランドに本拠を置くスタートアップMighty Buildingsは、3Dプリント、ロボッティクス、自動化を利用して「美しく持続可能で手頃な価格」の住宅を建設しようと試みている。同社はシリーズBのラウンドで4000万ドル(約42億円)を調達した。この資金によ、従来の建設よりも「労働時間を95%削減し、廃棄物は10分の1、スピードは2倍」という3Dプリントによる住宅建設が可能だとしている。たとえば350平方フィートのワンルームならわずか24時間で3Dプリントできるという。

創立後4年になるMighty Buildingsの取り組みはKhosla Venturesの目に止まり、今回のラウンドはKhoslaとZeno Venturesが共同でリードした。

Mighty Buildingsは2020年8月にステルスモードから抜け出した。Khoslaの運営パートナーであるRyno Blignaut(リノ・ブリノー)氏は「このスタートアップは住宅建設のコストと二酸化炭素排出量の両方を50%以上削減できる可能性がある」と考えている。

共同ファウンダーであるCOOのAlexey Dubov(アレクセイ・ドゥボフ)氏によれば、同社は3Dプリントとプレハブを組み合わせたハイブリッドアプローチで住宅建設を行っている。現在の住宅建設業界はコンクリートとスチールに大きく依存しているが、Mighty社はLSM(ライトストーンマテリアル)と呼ばれる独自の熱硬化性複合材料を発明した。

同社によれば、この素材は3Dプリンティングに利用可能で、即座に硬化し、積層間の強度も高く、強固なモノリシック構造を作ることができる。つまりコンクリート型枠の工事のようにオーバーハングや天井などの部分にサポート型枠を必要とせず、一挙に3Dプリントできる。つまり建築の壁だけでなく全な躯体を出力できる。

また複合材の後処理に同社はロボットアームを利用する。これにより、断熱材の必要な箇所への注入が自動化される。3Dプリンティングとロボット機能を組み合わせると建設プロセスの最大80%を自動化できるという。

KhoslaはMighty Buildingsのこうした革新的な建設アプローチに強く惹かれた。

ブリノー氏は「Mighty Buildingsは建物を素材の制約から解き放ち、セメントや鋼材の使用量を劇的に削減することでコストを低下させ、手頃な価格の住宅の供給を増やすとともに、全体として資源やエネルギー持続可能性を向上させることができると考えています」とメールで述べている。

同社は創立以後、多数のADU(追加居住ユニット)を出力・設置しており、現在も注文を受け付けている。ユニットの面積は864平方フィート(80平米)から1440平方フィート(134平米)で、価格は30万4000ドル(約3200万円)から42万500ドル(約4420万円)と見積もられている。サンフランシスコ周辺ではこの規模の住宅は100万ドル(約1億500万円)以上することが珍しくない。

ADUは3Dプリントされたがパネルが外殻をなし、浴室などの要素はオークランドにある同社の8万平方フィートの生産施設でプレハブ生産されている。

現在、同社はカリフォルニアでのみ住宅建設を行っているが、ドゥボフ氏は「同様の施設を作るのは簡単であり、他の地域にも進出したい」としている。

2021年、Mighty Buildingsは住宅デベロッパー向けに計画しているB2Bプラットフォームの一部として、Mighty Kit Systemと多層階の建物をプリントできる新しい繊維強化材料を販売する予定だ。同社はすでに一戸建て住宅とのデベロッパーとの契約を確保してる。今回調達した資金の一部はさらなる自動化によって生産能力を増強するため利用される。

Mighty Buildingの中長期のビジョンは建築家が独自のプランを設計者ンしデベロッパーがMighty Factoryを使用してそうした住宅を低価格で大規模に生産することだ。住宅建設のサービス化、つまりPaaS(プロダクション・アズ・ア・サービス)の実現を目指している。

3Dプリントで住宅を建設しているスタートアップは他にもある。2020年8月、オースティンを拠点とするICONは、シリーズAラウンドで3500万ドル(約36億8000万円)の資金を調達した。同社も3Dプリンター、ロボティクス、先端材料を使用して手頃な価格の家を建てることを目指している。ドゥボフ氏によると、両社における最大の違いは、ICONが建設の大部分を現場で行うのに対し、Mighty Buildingsがあらかじめ工場で製造した材料によるプレハブ工法とのハイブリッドだという点だ。

Mighty Buildingの今回のラウンドには、シリーズAの投資家、Bold Capital Partners、Giant Ventures、Core Innovation Capital、Foundamentalに加えて、ArcTern Ventures、Abies Ventures、Modern Venture Partners、MicroVentures、One Way Ventures、Polyvalentなどの新規投資家を含め12社以上の投資家が参加した。Mighty Buildingsは、Y Combinatorのトップ企業リストにも選ばれており、会社評価額は1億5000万ドル(約15億4000万円)を超えている。ただし同社は現在の評価額を明らかにすることを避けた。

Khoslaのブリノー氏は、「建築は都市景観を作る主要な部分であるだけでなく、リソースの消費も巨大です。米国の炭素排出量では建設、建築は運輸交通や一般産業よりも大きい部分を占めています」と述べた。

KhoslaはOri Living、Vicarious、Katerra、Arevoなどこのような課題に取り組む他の企業にも投資している。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Mighty Buildings3Dプリント建築資金調達住宅

画像クレジット:MightyBuildings

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:滑川海彦@Facebook

缶入り飲料水がLAベンチャー最大のイグジットとなるのか

ロサンゼルスに本社を置く創業10年のインキュベーター兼ベンチャー企業Science Incは2021年1月最終週の初めに3億1050万ドル(約378億円)を調達し、NASDAQにブランクチェックカンパニー(SPAC)を立ち上げた。創業者のPeter Pham(ピーター・ファム)氏とMike Jones(マイク・ジョーンズ)氏は、この資金をモバイル、エンターテインメント、消費者直接取引(D2C)サービスの分野で会社を上場させるために使用するとしている。

株式公開を考えている投資先企業があるとしても、先日の対談では語らなかっただろう。しかし、もしそうであれば、興味深い候補がいくつか存在するはずだ。ファム氏は、South by SouthwestフェスティバルのダンスフロアでアマチュアのeスポーツプラットフォームであるPlayVSの創業者であるDelane Parnell(デレイン・パーネル)氏に会ったことをきっかけに、同プラットフォームの育成に貢献した。同氏はまた、Credit Suisse(クレディ・スイス)との連携を報じられているマイクロモバイル企業Birdの出資者でもある。そして山の水をアルミ缶で売る、冗談混じりのマーケティング戦略を持つLiquid Deathの創設と成長にも貢献している。しかもファム氏によると、これはかなりの売り上げを出したようだ。

関連記事:「渇きを殺せ」などヘヴィメタルっぽいミネラルウォーターなどを販売するLiquid Deathが24.3億円調達

ただしこれはあながち冗談でもない。実際に飲料水は2016年以来米国で最も売れているパッケージ飲料なのだ。

両氏は長時間におよんだTechCrunchとの対談の中で、2021年に強力な消費者ブランドを構築する方法について分野を問わず語ってくれた。その対談の全容はこちらで聞くことができる。また長さとわかりやすさを考慮して軽く編集した大筋を以下に記載するので、参照いただけたらと思う。

TechCrunch(以下、TC):新しいSPACを設立しましたね。潜在的なターゲットについてお伺いします。ご自身がこれまでに関わった企業、あるいはScienceで資金を調達した企業を検討していますか?

マイク・ジョーンズ氏(以下、MJ):いいえ、SPACは独立した組織です。私たちは100社をはるかに超える企業群が、スタック内で私たちが求めている資質に適合すると考えています。これらの企業は私たちが(彼らに対する)投資エクスポージャーを持っているかもしれませんし、持っていないかもしれませんが、分析のプロセスはScienceのポートフォリオに依存していません。

TC:そうなるとその可能性は否定できないのですね。

MJ:独立した取締役を置いていますので、ポートフォリオ内の企業を検討する場合には異なるプロセスが実行されます。しかし現時点はターゲット候補となる適切な範囲を集積しているところです。その後正式なプロセスに進みます。

TC:どのような指標に注目していますか?あなたはD2Cをはじめとする企業に携わる専門家です。ターゲットとしている企業は収益性の高い企業である必要がありますか?

MJ:私たちが関心を寄せている多様な見込み企業は、特定のレベルの収益性や売上が必要条件となっているわけではありません【略】セクター内で成功する企業を生み出すと私たちが考える重要な指標や収益要因については公開していません。しかし、私たちはデータに特化したチームです。次世代を担うジェネレーションZとミレニアル指向のマーケティングの最前線にいます。大ブレイクするブランドになり得るための要素とは極めて特定的なもので、それを我々は求めているのです。

TC:お2人はソーシャルメディア分野に精通されています。Clubhouseのように多くの注目を集めている新しいソーシャルメディア事業が出現していますね。Scienceの中核事業に話を移しますが、この分野での投資は検討していますか?

ピーター・ファム氏(以下、PP):YouTubeがマーケティングのプラットフォームになったのは10年前です。そして6年か7年程前にInstagramが(マーケティングのプラットフォームになりました)。Snapchatに続いてInstagram Stories(が登場し)、次にTikTok、そしてさらに新たなプラットフォーム、それがClubhouseです。常に新しいものが現れています。

Facebook、Instagram、Snapchatから目を離すことはできませんが、Clubhouseはまるで別物です。ほとんどラジオのようなものですが、参加型です。South by Southwestに行くとまるで24時間SWSXパネルのようです。聴衆の中にいながら、手を上げて、ステージ上に引き上げてもらえば、あなたはパネルの一員になれる、という実に興味深い動的な体験ができます。それが多くの人々を魅了する理由であり、自分を知ってもらい、より多くの聴衆に自分の声を届ける機会が得られる場となります。

TC:その成長が持続可能だと思われる理由をお聞かせください。

PP:マーケターがプラットフォームに参入する瞬間です。本物のマーケター、つまりお金の稼ぎ方についての方法や不動産の手に入れ方、不動産を売って収入を得る方法などを販売するタイプのマーケターが現れたとき、それはアービトラージ(裁定取引) になります。基本的には非常にスマートな人たちで、費す時間ごとに多くのお金を稼ぐことができます。ROI、顧客獲得コスト、収益の面で他人がやっている他のことに時間を費やすよりも価値があることを認識しています。

TC:2021年、Scienceのポートフォリオ企業はこういったプラットフォームをどのように利用していくでしょうか?あなたはLiquid Deathの投資家です。2020年末に4000万ドル(約42億2200万円)を調達したサブスクリプション下着企業MeUndiesの成長を支援しました。また初期のDollar Shave Clubに関わっていました。水や下着、カミソリなどでどのようにして切り拓いていくのでしょうか。

PP:プラットフォームは、常に単なる踏み台に過ぎません。ゲームのルールやフィードは変化するので、長期的にこれらの場所を当てにすることはできません。10年前、Dollar Shave Clubをローンチしたとき、私たちのホームページにはYouTubeの動画が自動再生されていました。その当時は、誰かに何かを買ってもらうためにYouTube動画を投稿することについて考えた人はいませんでした。MeUndiesはInstagramを使っていました。サブスクリプション方式の下着を想像した人はいたでしょうか。けれどクリスマス、新年、バレンタインデー、セント・パトリック・デーなどの祝日が毎月のようにやってきます。そのときに合わせて着ることができる何かおもしろくて楽しいものがあったらいかがでしょうか?

Liquid Deathに関しては、まだInstagramとTikTokにフォーカスしています。しかし、どのようなケースにおいてもブランドは、誰かがそのブランドについて好意的に話し、支持してくれるような存在にならなければなりません。

マイクは私たちのデータ面を控えめに表現していますが、私たちは絶え間なく、それぞれのビジネスに関して起きているすべてのことを測定しています。それには、彼らのソーシャルリーチ、彼らのエンゲージメント、ビジネスの維持、顧客が戻ってくる頻度、私たちがそれぞれの個人からどれだけの収益を生み出しているかそしてそれぞれのマーケティングの価値が何に値するかなどが含まれます。これらはすべて(私たちが決定する)この複雑なエンジンにつながります。背後にビジネスは存在するのか。Facebookに頼らずに自力で成長できるのか。ほとんどの企業では、自分自身のコミュニティやブランド、オーディエンスを構築する方法を理解していなければ、最終的にはGoogleかFacebookが勝者となってしまいます。

TC:今はどのようにコミュニティを構築しているのですか?

私は個人的に4000缶を配りました。Liquid Deathの初期の頃は10代の若者たちに手渡していて、10人中6人が写真を撮って友達にスナップを配信しました。その瞬間を何度も目にして、これはうまくいくと確信しました。3月、4月、5月にInstagramのフィードがいかに退屈だったか気づいたと思いますが、それはみんなが家にいて何もすることがなかったからです。しかし私たちはコンテンツの一部を提供することができました。

TC:Liquid Deathは現在、セブン-イレブンを含むいくつかの店舗で販売されています。人々はオンラインで購入していますか?何パーセントの人がサブスクリプションを利用していますか?

PP:1 / 3の顧客がオンライン(サイト)で商品を購入しています。24ドル(約2500円)の帽子と45ドル(約4700円)のパーカーも扱っており、コンスタントに製品を提供しています。ブランドであり、ライフスタイルとも言えます。CEOのMike Cessario(マイク・セサリオ)は、お気に入りのバンドのようなものを作っていると表現しています。海に捨てられてしまう(ペットボトルのような)プラスチックではなく、砂糖も入っていません。また飲酒運転につながるお酒でもないため、この製品のファンになることができるのです。

絶妙なセンスがあり、誰かに伝えたくなる理由となります。アイスブレーカーにもなり得るし、楽しく、どうしようもなく、呆れてしまうけどおもしろい。それでこそみんあにとって話す価値があり、見る価値があります。

こういった軌道は測定するのが難しいかもしれませんが、実際に見てよく観察し、繰り返し見られるようなら結果は明らかだと言えます。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Science Inc資金調達ロサンゼルスSPAC

画像クレジット:Liquid Death

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

企業投資市場の成長にともないRampがゴールドマン・サックスから160億円の借入枠を確保

企業支出市場で競争するスタートアップであるRamp(ランプ)は米国時間2月10日、ゴールドマン・サックスから1億5000万ドル(約160億円)のデットファシリティを確保したと発表した。Rampは2020年初めに2300万ドル(約24億円)をシリーズAで調達後、同年12月下旬に3000万ドル(約32億円)をシリーズBで調達していた

TechCrunchはRampの共同創業者でCEOのEric Glyman(エリック・グリマン)氏と新しいクレジットアクセスについて話した。同氏は、それが確保されるまでは、Rampは顧客の企業支出を自社の貸借対照表から賄っていたと述べている。同社がより多くの顧客を獲得するにつれ、その方法では難しく非効率的になることが予想される。今回の迅速な資金調達により、実際そうなりつつあったことが示された。

TechCrunchが報じたようにこの大きなスタートアップカテゴリーは成長している。Ramp、BrexAirbaseDivvyTeampayなどが企業の支出をめぐって競争している。そうしたスタートアップは通常、カードへの請求に応じて企業にクレジットを提供し、インターチェンジの収入を回収し、場合によってはソフトウェアの収入も得る。

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Rampはプロダクトの仕事を支えるために新しいクレジットファシリティを使用する予定だとグリマン氏は述べ、リボルビングデットへの新しいアクセスによりソフトウェアへの投資に資本が解放されると指摘した。

これまでのところ、Rampのモデルは機能しているようだ。同社はTechCrunchに2020年11月から12月にかけて47%成長したと語った。これは収益ではなく取引量に関する数字である。ただし同社は取引量に応じて収益を上げるため、同じ期間に収益が急速に拡大したと推測できる。

首の後ろがチクチクする感じは正しい。Rampは今や十分な規模であり、単なるパーセンテージの成長指標よりも固い数値を開示できるはずだ。同社は約18カ月前に設立された後、2020年の秋に1億ドル(約105億円)の支出(割合ではなく合計数値)に達したことを私たちは知っている。そこから、同社の現在の支出ベースを見積もることができる。

関連記事:企業投資の獲得争いが激化する中、支出管理のRampが約31億円調達

Rampは節約に焦点を当て、コーポレートカードという包みにくるんで、同社のソフトウェアパッケージに賭けている。同社は、顧客が経常的な支払いやその他の「悪い」支出を根絶する支援をする。

同社は競争にさらされている。Rampのライバルは、コーポレートカード製品の上にソフトウェアを位置づけている。TechCrunchの問いは、成熟しつつある企業支出分野のすべてのプレーヤーが、クレジットに関するサービスに加えソフトウェアレイヤーの料金を請求することになるかどうかだ(たとえばTeamPayはソフトウェア収益と取引量の結果の両方をTechCrunchに開示した)。

もしそうなら、企業支出のTAM(Total Addressable Market、実現可能な最大市場規模)は大きくなるはずだ。

企業の支出管理の分野で何が起こっているのかを理解するために、過去10年ほどのベンチャーキャピタルの世界の変化を思い起こしてほしい。昔、ベンチャーキャピタルはスタートアップに投資する資金を保有していた。現在の基準ではそれほど大きい金額ではなく、少数のプレイヤーに集中していた。資金は希少だった。したがって、ベンチャーキャピタリストはあなたを彼らのところに連れて行き、投資1ドルに対してより多くの株式を要求し、今日求められる水準のサービスを提供しなくてもよかった。しかし今やベンチャーの世界には資金が豊富にあるため、投資条件はより寛大になった。そして、単に資本へのアクセスを提供することに加えて、VCはおそらくスタートアップの採用活動や、さらに多くのことを支援したいと考えている。

企業の支出も同じだ。クレジットカードとコーポレートカードを提供することは、もはやほとんど当たり前のことになった。リボルビングチャージカードに加えてソフトウェアの価値が競争の対象になっている。

Rampがソフトウェアを拡張しながら、顧客ベース、支出、収益の点でどれだけ速く成長できるかを見届けたい。そして、どのライバルが最新のものをニュースとしてぶち上げられるか。見ていて楽しい分野だ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Ramp資金調達

画像クレジット:Bryan Mullennix / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

「匿名」フィンテックスタートアップMillionsが3.2億円調達、Twitterで現金をプレゼント中

「匿名性」を維持するスタートアップMillionsがシードラウンドで300万ドル(約3億1700万円)を調達し、現在Twitterのアカウントで無料の現金をばらまいている。ユーチューバーのDavid Dobrik(デビット・ドブリック)氏らに着想を得たこのコンセプトには、新企業への注目を集める狙いもあるが、同時にブランドがより直接的にギブアウェイに参加できるような次なるビジネスモデルも築き上げている。

もちろん、ブランドや現金のギブアウェイという考え方は新しいものではない。ソーシャルメディアのパーソナリティやPublishers Clearing Houseのような従来型の懸賞以外にも、モバイルゲームのHQ Triviaはつい最近、ライブトリビアゲームにプレイヤーを引きつけようとブランドのギブアウェイを統合する試みを行った。しかしHQ Triviaにおいてはその新奇性が薄れていき、内部での争い悲劇に対処しながら最終的に閉鎖され、オーディエンスを維持することができなかった。

関連記事:一斉風靡したクイズアプリ「HQ Trivia」が買収中止で急遽閉鎖

Millionsのアイデアはそれとは違う。毎週のライブゲームに代わり、ユーザーがTwitterアカウント@millionsをフォローすると、何らかのギフトや現金のギブアウェイに毎月参加することができる。たとえば同アカウントは今月「100万ドルの懸賞金」をローンチしている。ユーザーはTwitterで@millionsをフォローし、Millions.appを訪れて6つの数字を入力する。この6つの数字がすべて一致すれば、100万ドル(約1億円)を獲得することができるわけだ(詳細は後述)。

同スタートアップは2021年3月「Are you my number neighbor?(番号のご近所さんですか?)」というゲームをローンチする予定だ。このゲームでユーザーはウェブサイトに自分の電話番号を入力し、それがウェブサイトにある電話番号から1桁違うだけであれば10万ドル(約1千万円)を獲得できる。

こういった行為は投資家の金をばらまいているだけのようにも見えるが、実際はブランド認知を高め、顧客を獲得するためのものである。

画像クレジット:Millions、MyCard, Inc.

「論議を呼ぶトピックではあるものの、顧客獲得コストについて考えた時、儲かるのはFacebookやInstagram、Apple、Googleだけです。お金は人々ではなくソーシャルネットワークに流れていくのです」と匿名希望のMillions共同設立者はいう。「彼らは人を獲得しようしていますが、お金は決してくれません。Millionsの方法では実際に人々がお金を受け取ることが可能で、我々が広告を出す必要もありません。私たちは人々に直接お金を渡し、そして彼らが私たちのエコシステムをフォローし、アップデートをサブスクライブし、将来のローンチを見てくれることを期待しています」。

Millionsの最終的なより大規模な計画は、ゲームを通じて獲得した顧客をフィンテックのプレーに移行させることに帰結する。そしてこれにもまた現金獲得が関わってくるという。

TechCrunchは、同スタートアップの動向を知るためのディスカッションの中で、当面はゲームの遊び心と匿名性を保ちたいとする共同創設者の名前を明かさないことに同意している。一方、アクセスが容易で一般に公開されているデータを特筆するのは、契約違反ではないということをお伝えしておきたい。我々はこの事業の背後にある法人としてMyCard Inc.という会社がMillionsのウェブサイトの規約で言及されていることを確認した。このSECへの提出書類にはKieran O’Reilly(キーラン・オライリー)氏とRory O’Reilly(ローリー・オライリー)氏の名前が記載されており、同社は300万ドルの資金調達を2020年12月に行っている。前述の名前はgifs.comを運営する兄弟と同じ名前である。

同スタートアップのシードラウンドに参加した投資家にはGiant Ventures、8VC、Supernode、Twitterの共同創設者Biz Stone(ビズ・ストーン)氏、ItalicのCEOのJeremy Cai(ジェレミー・カイ)氏、Allbirds共同創設者兼CEOのJoey Zwillinger(ジョーイ・ズウィリンガー)氏、Casperの共同創設者Neil Parikh(ニール・パリク)氏とLuke Sherwin(ルーク・シャーウィン)氏、MSCHFで戦略・成長部門ヘッドを務めるDaniel Greenberg(ダニエル・グリーンバーグ)氏、Deel Alex BouazizのCEO、Hellosaurus James RubenのCEO、Beek Pamela ValdesのCEO、FacebookのPayments GatewayチームでPMを務めるLuis Vargas(ルイス・バルガス)氏、Block Renovationsの共同創設者Koda Wang(コーダ・ワン)氏、Nebula GenomicsのCEOの Kamal Obbad(カマル・オブバッド)氏、Warby Parker and Harryの共同創設者および上級幹部からDave Gilboa(デイブ・ギルボア)氏、Neil Blumenthal(ニール・ブルメンタール)氏、Jeff Raider(ジェフ・レイダー)氏などのほか、フィンテックエンジェル投資家が名を連ねている。

一部の投資家は同社について公に称賛しており、また日常的な行動に対して顧客に報酬を与えるMyCard製品の登場をほのめかしている。

「同社は、毎日必然的に行っているクレジットカードのスワイプのようなありふれた日常の行動から、人々に喜びを与えるものを作り出しています。私たちはMillionsに投資しましたが、それは同社が人々の生活をときめかせるからです。また、使いにくい航空会社やホテルのポイントを貯める従来型のポイントモデルには疲労感があり、刷新の機が熟していると考えています」とAllbirdsの共同創設者兼CEOのJoey Zwillinger(ジョーイ・ズウィリンガー)氏は語っている。

「Millionsは比類のない魅力的な顧客体験を通して非常にロイヤルな参加者を獲得しています。100万ドルのギブアウェイはこの先の展望の氷山の一角にすぎません。彼らは私が知っている中で最も強力な創設者に数えられ、まさに奇跡的な成功を手にした起業家たちです」とItalicのCEOであるJeremy Cai(ジェレミー・カイ)氏はいう。

MSCHFで戦略・成長部門ヘッドを務めるDaniel Greenberg(ダニエル・グリーンバーグ)氏は「私がMillionsに投資したのはそのトレンドがはっきりしているからです。人はお金を勝ち取ることを好みますし、ここで何かが起きつつあるのは明らかです。Millionsは驚きの方法でお金を提供することに献身的であり、それに関わることができてうれしく思います」と語っている。

しかしMillionsは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックと政府の支援不足による不況のため、人々がお金を切望している時に登場している。パンデミックは階級格差を悪化させ、人々(ローマ教皇を含めて)は資本主義が崩壊したのではないかと疑った。GameStopの熱狂の背後にある「金持ちを食う」という思想を煽り、さらにこうした状況は、ドブリック氏の行為Lexy Kadey(レクシー・ケイディ)氏によるTikTokの「Venmo Challenges」(店員やファストフード店の従業員に数百ドル、時には千ドルのチップを渡し、彼らが喜びを露わにする様子をフィルムに収めている)のような他の活動にも暗い影を落としている。

Millionsの共同創設者は、今が困難な時期であるという事実を認めつつも、それこそが同製品が理に適っている理由だと主張している。

「パンデミックや格差の『1%対99%』など、今世界で起きていることを考えてみると、人々が求めているものは希望と資金なのです」と彼らは説明する。「この2つの要素を持つ製品を組み合わせることができれば、人々に楽しみや感動、希望を与えることができますし【略】これは本当にすばらしいことだと思っています」。

【注記】多くの懸賞と同様、勝つための「チャンス」を求めてプレーするものである。だがこの場合、1万ドル(約100万円)が1名への賞金として保証されている。Millionsのウェブサイトにはデジタルプロモーション会社のRealtime Mediaがゲームの運営に関わっていると記載されている。ただしプログラムを保証する保険プロバイダーは実際にはHCCとなっている。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Millions資金調達

画像クレジット:Millions/MyCard, Inc.

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

B2B営業のためのプラットフォームAccordがシードで約6億円調達

B2B営業に注文をもたらすことにフォーカスしているアーリーステージスタートアップAccord(アコード)の創業者たちは、あなたが想像するようなエンジニア創業者ではない。その代わりRoss Rich(ロス・リッチ)氏、Ryan Rich(ライアン・リッチ)氏の兄弟は、この手の直接販売にありがちな問題を目の当たりにしてきた営業担当者だった。

2019年11月、2人はAccordを立ち上げて、売り手と買い手の両方のニーズを考慮するB2B営業のためにプラットフォームに欠けていると彼らが確信しているものを構築するために、給料の良いGoogle(グーグル)とStripe(ストライプ)での仕事を辞めることを決めた。

Accordはシードラウンドで元雇用主のStripeとY Combinatorから600万ドル(約6億3000万円)を調達し、事業を開始しようとしている。創業者たちは仕事を辞めてからYCに申し込み、プロダクトをまだ持っていなかったにもかかわらず洞察と業界での経験でインキュベーターに強い印象を与えたことは注目すべきだろう。

プロトタイプの原型はアイデアを書いたものだった(画像クレジット:Accord)

営業スキルはあるが、プログラミングの能力を欠いていると2人は認識し、アイデアを現実のものとすべく、すぐさま3人目のパートナーとしてWayne Pan(ウェイン・パン)氏を迎え入れた。今日では、有料の顧客を抱える実際に機能しているプログラムを持っている。彼らはB2Bの営業担当者とバイヤーがやり取りできるオンラインハブのようなものを構築した。

共同創業者のロス・リッチ氏が指摘するように、こうした種の販売は多い場合平均14人が買い手となるコンシューマーバラエティとはかなり異なる。あまりにも多くの人が意思決定プロセスに関わると、すばやい対応が困難になる。

「アプリケーションの中で共有された次のステップとマイルストーン、バイヤーが非同期的に追跡できるもの、1つの書類やプレゼンテーションのための何百通もの電子メールやスレッドの分類を避けるためのリソースハブ、適切な人が適切なときに輪にいるようにするステークホルダー・マネジメントを当社は提供します」とリッチ氏は説明した。

Accordはまた、興味をそそるデータがきちんと営業データベースで追跡されるようにするためにSalesforce(セールスフォース)のようなCRM(顧客管理)を取り込んでいる。同時に、スタートアップにとってこのプラットフォームが人的交流のための場所であってほしいともリッチ氏は話す。自動の電子メールやテキストの代わりにAccordは人が実際に交流できる場所を提供していて、人の要素はこうした種のディールに固有の複雑さを減らすのに重要だと同社は確信している。

600万ドルのランウェイとY Combinatorでの経験を得て、創業者たちはこれまで以上に一致団結して市場開拓を進める準備が整っている。Accordのスタッフは現在9人で、営業専門の2人の創業者をのぞき、大半がエンジニアだ。リッチ氏は2021年何人が雇用する意向を示したが、今後数カ月内に確定させると言い、現時点では実際に何人採用するかはまだはっきりしていない。

採用にともない、Accordは女性数人にエンジニアリングチームに加わってもらうことを考えている。多様性は早期に始めなければ、後からはなおさら難しくなると同社は認識している。「9、10人採用しようと誰かに声をかけ、そうした人たちが『このチームを信用し、これが働きたいカルチャーだろうか』と思案するとき、(早期の多様性のあるグループの雇用は)混ぜ合わせるだけです」。多様性がありインクルーシブな職場を作りたいなら、その投資は早く開始しなければならない、とリッチ氏は話す。

Accordのチームはまだ初期段階にあるが、B2Bの営業チームがこれまで以上に緊密かつ効果的に顧客と協業するのをサポートするプロダクトを構築していて、Accordはこの分野での経験と業界の知識があることから成功に向けいい位置につけているようだ。

関連記事:セールスフォースへのデータ入力をシンプルにするScratchpadがシリーズAで13.7億円獲得

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Accord資金調達B2Bセールステック

画像クレジット:Accord

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

現金払いの住宅ローン融資を提供するUpEquityが約26億円を株式と負債で調達

オースティンを拠点とするUpEquity(アップエクイティ)は、消費者に資する住宅ローン業界を目指し、事業を拡大するために2500万ドル(約26億円)を株式と負債で調達した。

最高経営責任者のTim Herman(ティム・ハーマン)氏は、2兆ドル(約210兆円)の米住宅市場で同氏が非効率だと思うものを機会として利用するために住宅ローン会社を設立した。

ハーマン氏によると、既存の金融サービス会社や不動産テクノロジー会社は、市場の非効率性の原因ではなく、症状に対処しているという。

同社は「無料」で現金を提供するが、住宅購入者に対して実行するローンの2.5%を請求する。住宅購入者がオファーを行う際に必要な現金を、銀行から住宅ローンを借りる通常の手続きの前に提供する。その後、住宅所有者はUpEquityに直接支払いを行い、住宅ローンを返済する。

「当社の現金オファーは保証のように機能します。エスクロー期間中の住宅ローンの利用を可能にします」とハーマン氏は述べた。

米国海軍兵学校の卒業生で戦闘機のパイロットだったハーマン氏は、不動産が同氏とその家族に開かれた真の富の創造への唯一の道だと考えた。長い年月がかかっていたし、利用可能な投資資金も不足していた。

ハーマン氏は海軍を経てハーバードビジネススクールに行き、共同創業者となったLouis Wilson(ルイ・ウィルソン)氏に出会った。2人がUpEquityを始めたのは、ボストンでビジネススクールに在籍していたときだ。

その後、住宅市場は活況を呈し、規制環境が比較的緩和されたため、オースティンに移転した。

最終的に顧客へ売り込んだのは、全額現金でオファーを行う能力だ。これにより、住宅購入をクロージングする可能性が劇的に向上する。ハーマン氏によると、住宅は米国人の約90%にとって買う余裕のないぜいたく品だ。住宅の売り手にとってマイナス面はない。買い手が住宅購入に至らない場合、UpEquityが住宅を所有する。

同社がこれまでに行った300件の取引のうち、失敗したのは2件のみだ。

UpEquityのような企業が、融資を始めるために750万ドル(約7億9000万円)のベンチャー資金(株式)と1750万ドル(約18億4000万円)のベンチャーデット(負債)を調達できたのはそういうわけだ。

今回のAラウンドはNext Coast Venturesがリードした。UpEquityは資金をプロダクトの開発に使用すると述べた。開発により、同社の販売チャネルとして機能する不動産業者がクローズするまでの期間を10日短縮できるという。

「当社の目標は、最終的に消費者に資する住宅ローン業界とすることです」とハーマン氏は述べた。「この資金調達は、消費者、不動産業者、ベンチャー投資家が、個人の目標達成のためだけでなく、アメリカンドリームを達成するために住宅購入プロセスから摩擦を取り除くことが持つ力を理解していることの表れです」

これまで同社はテキサス州からコロラド州、フロリダ州、カリフォルニア州に事業を拡大しており、2020年には1億ドル(約105億円)の住宅ローンを組成した。

「限られた供給と厳しい競争に直面しながら不動産が進化し続ける中、UpEquityは不動産テックの成長をリードします」とNext Coast VenturesのマネージングディレクターであるThomas Ball(トーマス・ボール)氏は述べた。「ほとんどのイノベーションはフロントエンドに注力してきましたが、これまで、借り手が申込書を提出した後に起こるプロセスを加速しようとした人は誰もいませんでした。UpEquityにはチーム、才能、テクノロジーがあります。それらにより単に成功するだけでなく、住宅ローン市場のリーダーとして台頭し革新を進めます」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:UpEquity資金調達不動産

画像クレジット:Jorg Greuel )/ Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

南アフリカのVC企業Knife Capitalが資金52.5億円確保、シリーズB10〜12社への投資を計画

南アフリカのベンチャーキャピタルであるKnife Capital(ナイフ・キャピタル)は、シリーズBの資金調達を目指すスタートアップ企業のために5000万ドル(約52億5000万円)の資金を調達している。同社のKnife Fund III(ナイフ・ファンドIII)はAfrican Series B Expansion Fund(アフリカのシリーズB拡張ファンド)と呼ばれ、南アフリカのスタートアップ企業の積極的な拡大に直接投資することを目指すものだ。また、同社はアフリカの他の地域を拠点とする企業に向けた共同投資も計画している。

その最初の投資ファンドは、Knife Capital Fund IまたはHBD Venture Capital(HBDベンチャー・キャピタル)として知られ、Eben van Heerden(エベン・ファン・ヘールデン)氏とKeet van Zyl(キート・ファン・ジル)氏が運営するクローズド・プライベート・エクイティ・ファンドだった。これによって同社はいくつかのスタートアップ企業に着手資金を提供した。また、そのポートフォリオからは、VISAによるフィンテック系スタートアップのFundamo(ファンダモ)の買収や、UberEats(ウーバーイーツ)によるorderTalk(オーダートーク)の買収など、重要なエグジットも生まれた。

2016年にこのVC会社は、Knife Capital Fund IIとして現在の所得税法第12J条(アーリーステージの企業に対するVCなどからの投資については100%の税控除を行う法案)を利用した投資オファーを開始。主にシリーズAステージに投資する同ファンド(KNF Ventures)は、8つのスタートアップをポートフォリオに抱えている。同社は2020年、このFund IIを拡張して新規投資家に開放する意図をTechCrunchに語っていた。その計画は、スタートアップ企業にネットワーク、資金、拡大の機会へのアクセスを与えることだった。

「南アフリカやアフリカの企業の国際化を支援したい」と、共同経営パートナーのAndrea Bohmert(アンドレア・ボーマート)氏は当時語っていた。その証拠に、同社のポートフォリオ企業の1つであるDataProphet(データプロフェット)は、米国と欧州に進出するために600万ドル(約6億3000万円)のシリーズAを調達している。

ボーマート氏がTechCrunchに語ったところによると、第3のファンドを設立した目的は、南アフリカのベンチャーキャピタルの資産クラスを特徴づけてきた深刻なシリーズBの資金調達ギャップに対処するためだという。この問題は、南アフリカのスタートアップ企業にとって、ビジネスの潜在能力を十分に発揮できなかったり、早期に撤退せざるを得なくなる結果を招くことがあった。

「最近では、200万ドル(約2億1000万円)から500万ドル(約5億2500万円)の資金調達が可能な企業が増えています。それらの企業は、自国内で事業を展開している限り、私たちの場合は南アフリカですが、現地のコスト構造から、それだけの資金があれば成功を収めることができるでしょう」と、ボーマート氏はいう。「しかし、これらの企業が国際的な牽引力を得て、母国以外の国でインフラを構築する必要が出てくると、そのためには多額の資金調達が必要になります。現在のところ、南アフリカ企業がより大きな市場に打って出るための資金調達を積極的に展開し、500万ドル以上の小切手を書ける南アフリカのVCファンドは、おそらくNaspers Foundry(ナスパーズ・ファンドリー)以外にはほとんど存在しません」。

その結果、アフリカは国際的なVCのインキュベーターになってしまったとボーマート氏は主張している。そのような国際的なVCは、高額の小切手を書くことはできるが、多くのスタートアップがまだ現地で必要とするサポートを提供することはできない。

同様に、国際的な投資家が南アフリカで積極的に現地の共同投資者を探してラウンド投資を行っている例もあるが、現地でそのような共同投資者が見つからない場合、投資を進めるチャンスを失うことになりかねない。Knife Capitalは、このファンドを立ち上げることで、このようなギャップを埋めたいと考えていると、ボーマート氏は語っている。

「私たちは、国際化を目指す南アフリカのテクノロジー企業のために、シリーズB投資の話し合いをリードできる国際的な投資家から、共同投資を行うために選ばれる地元のリード投資家になりたいと考えています」。

Knife Capitalは先週、南アフリカに拠点を置く投資会社のMineworkers Investment Company(MIC、マインワーカーズ・インベストメント・カンパニー)から1000万ドル(約10億5000万円)を確保した。この公約により、MICは他の国内外の投資家と並んで、このファンドのアンカー投資家となる。

MICのCIOであるNchaupe Khaole(チャウプ・カオール)氏は、地元の機関投資家がベンチャーキャピタル投資にアプローチする方法を変える動きは、以前からMICのパイプラインの中にあったと説明する。そしてKnife Capitalとの提携により、このアイデアは具体化し始めている。

「我々のコミットメントは、経験豊富なプレイヤーとして当社が持つ多くの強みとともに、今回の投資を実現するものになるでしょう。その1つは、我々と提携することで南アフリカ経済に実際に目に見える変化をもたらすと、ポートフォリオ内の企業を感化させる当社の能力です。今回の資金調達ラウンドの成功の鍵となる触媒となることを嬉しく思います」と、カオール氏は述べている。

その他の詳細としては、Knife Capitalは2021年5月までに最初のクローズを行い、年末までに最終クローズを行うことを目標としている。その大半は共同出資となり、10から12社の企業が資金を受ける計画だ。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Knife Capital南アフリカ資金調達アフリカ投資

画像クレジット:Knife Capital

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

良質な情報のひと口サイズの「知識ハック」をそろえるUptime

自らを「知識ハッキング」アプリと称するのUptimeは、2021年1月にiOSで公式にローンチし、そのあと1600万ドル(約16億8000万円)のシード資金を調達した。

「マイクロラーニング」のプラットフォームとして位置づけられるUptimeは、書籍や学習コースやドキュメンタリーなどから5分間の「知識ハック」を提供する。そのアイデアは、ユーザーが貴重な時間をあまり使わずに「信頼できる著者やインストラクター、クリエイターなどからアイデアや知見をすばやくつかみ取る」というものだ。コンテンツ作者はその見返りとして、新たな作品の購入者になるかもしれないオーディエンスにリーチできる新たな道を見つけることができる。作者はThe New York Timesのベストセラーで紹介されている人や、興味深い学習コースの提供者、アカデミー賞を獲得したドキュメンタリー映画の作者など、さまざまだ。

このアプリは、コンテンツアグリゲータであり、コンテンツ発見サービスであり、コンテンツの作者にとっては見込み客生成システムでもある。集中する時間が短いミレニアル世代やZ世代をターゲットにしていると、同社は述べている。

「個々の知識ハックはユニークなビジュアルストーリーであり、ユーザーにインスピレーションを与え、効果的で楽しく参加することができ、共有することができる形式で提供されます。そのことを専門家のチームも確認しています。ハックの終わりには、本を買ったり、ドキュメンタリーの全編を見たり、学習コースに登録したりするといったオプションが提供される」という。

画像クレジット:Uptime

シード資金の投資者はUptimeの創業者たち、連続起業家のJamie True(ジェイミー・トゥルー)氏とJack Bekhor(ジャック・ベコール)氏となる。彼らは以前、2018年に3億2500万ドル(約341億円)で買収されたLifeWoksを創業している。また、YouTubeとFacebookの元役員であるPatrick Walker(パトリック・ウォーカー)氏や、David Alliance(デビッド・アライアンス)卿、Tescoの元CEOであるTerry Leahy(テリー・レイフィー)卿、そしてFederal Street SPVなどが投資に参加している。

「世界のEdTech市場の規模はおよそ890億ドル(約9兆3400億円)と推定されています。多くの人がオンラインのコースに数百ドル(数万円)を投じてソフトスキルを磨いたり、ドキュメンタリーを視聴したりしています。それは教育コンテンツの作者にとって大きな商機ですが、消費者は過剰な情報に悩まされ、飽和したマーケットの中で良質なコンテンツがなかなか見つけることができず、途方に暮れています」とUptimeの創業者の1人、パトリック・ウォーカー氏は述べている。

「Uptimeで作りたかったのは、知識のワンストップショップのようなものです。ベストセラーのリストや、無数のデジタルコースやドキュメンタリーのビデオプラットフォームの中から最適なコンテンツを見つけるのは、今や個人にとって至難の業。Uptimeは、信頼できる専門家や組織やソースから厳選した最良のコンテンツを紹介することができます。ユーザーは興味あるトピックを選び、ひと口サイズの見やすいコンテンツから、必要な知識の要点にアクセスできるのです」。

Uptimeの創業者によると、同プラットフォームは勉強の意欲はあるが十分な時間やエネルギーといったリソースがない人向けのものだ。「Z世代やミレニアル世代の人たち、それに親たちにとって理想的なものです。勉強してキャリアアップをしたい人、建設的で元気が出るコンテンツを得たい人にも向いています」とウォーカー氏はいう。

人の仕事で稼ぐ、寄生虫的なアグリゲーターがまた1つ増えただけだという批判ももちろんあるだろう。しかし創業者たちは、このアプリはコンテンツの作者に新しいオーディエンスをもたらす「味見」サービスだ、と主張している。

「どの知識ハックも、最後に本を買ったり、コースを受講できたりするためのリンクがあります。そこから、新しいオーディエンスが得られるはずです。私たちが打診した著者やクリエイターはほぼ全員、作品がUptimeで紹介されることを喜んでいます。Lily Cole(リリー・コール)氏やOobah Butler(ウーババトラー)氏、Tara Swart(タラ・スワート)博士などが、私たちをサポートしてくれています。Uptimeはユーザーとコンテンツクリエイターの両方に利益をもたらすのです」とウォーカー氏はいう。

カテゴリー:EdTech
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(文:Steve O’Hear、翻訳:Hiroshi Iwatani)